(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】中継局、中継局の送信方法、及び、通信システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20250115BHJP
H04L 27/26 20060101ALI20250115BHJP
H04B 7/15 20060101ALI20250115BHJP
H04W 16/26 20090101ALI20250115BHJP
【FI】
H04B7/06 670
H04L27/26 300
H04B7/15
H04W16/26
(21)【出願番号】P 2022155253
(22)【出願日】2022-09-28
【審査請求日】2024-04-30
(31)【優先権主張番号】P 2022128097
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 賢一
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-514099(JP,A)
【文献】国際公開第2006/121381(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0341995(US,A1)
【文献】特開2010-233091(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0195657(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0190822(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/02-7/12
H04L 1/02-1/06
H04L 27/26
H04B 7/15-7/216
H04W 16/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信局から、一つのアンテナを有する受信局向けに送信された第1の無線信号に対する非再生中継を実行可能な中継局であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナの夫々に対応する複数の無線機と、
前記複数の無線機の動作を制御するコントローラとを含み、
前記複数の無線機の夫々は、
対応するアンテナによって受信された前記第1の無線信号をベースバンド信号に変換する受信機と、
前記ベースバンド信号に遅延を付与するFIRフィルタと、
前記FIRフィルタから出力された信号を、対応するアンテナから前記受信局向けに送信される第2の無線信号に変換する送信機とを含み、
前記コントローラは、前記複数の無線機の夫々において、前記FIRフィルタが前記受信機から入力されたベースバンド信号に対し、前記複数のアンテナ間で異なる遅延を付与するように、前記複数の無線機の夫々における前記FIRフィルタに異なる遅延量を設定する
中継局。
【請求項2】
前記コントローラは、前記受信局から前記中継局への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第1の伝搬遅延と、前記送信局から前記中継局への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第2の伝搬遅延と、前記中継局における信号の処理遅延とを用いて最大遅延を求め、前記最大遅延を超えない範囲において、前記各FIRフィルタが複数のアンテナの夫々に関して付与する遅延量を算出する
請求項1に記載の中継局。
【請求項3】
前記コントローラは、前記中継局が前記送信局及び前記受信局との通信に用いるサイクリックプレフィクス時間から、少なくとも前記第1の伝搬遅延、前記第2の伝搬遅延、及び前記処理遅延が減じられた前記最大遅延を算出する
請求項2に記載の中継局。
【請求項4】
前記コントローラは、複数のアンテナに関して遅延量が等間隔で付与されるように、前記複数の無線機に備えられた各FIRフィルタに設定する遅延量を算出する
請求項2又は3に記載の中継局。
【請求項5】
前記コントローラは、前記複数の無線機に備えられた各FIRフィルタに設定する遅延量をランダムに算出する
請求項2又は3に記載の中継局。
【請求項6】
前記コントローラは、前記第1の無線信号の受信、及び前記第2の無線信号の送信に係る自己干渉が抑圧されるように、前記FIRフィルタに対する重み付けを行う
請求項1に記載の中継局。
【請求項7】
前記複数のアンテナは、前記送信局によって少なくとも一つのアンテナを用いた送信ダイバーシティが適用された前記第1の無線信号を受信する
請求項1に記載の中継局。
【請求項8】
前記中継局は、前記中継局と通信する基地局、又は前記中継局の制御装置において算出された前記遅延量を取得する
請求項1に記載の中継局。
【請求項9】
複数のアンテナを有する中継局の送信方法であって、
前記中継局が、
一つのアンテナを有する受信局向けに送信局から送信された第1の無線信号を前記複数のアンテナの夫々によって受信することと、
前記複数のアンテナの夫々によって受信された前記第1の無線信号を前記複数のアンテナの夫々に対応するベースバンド信号に変換することと、
前記複数のアンテナの夫々に対応する複数のFIRフィルタを用いて、前記複数のアンテナに対応するベースバンド信号の夫々に、前記複数のアンテナ間で異なる遅延を付与することと、
前記複数のFIRフィルタの夫々から出力された信号の夫々を前記受信局向けの第2の無線信号に変換し、対応するアンテナから送信することと
を実行する中継局の送信方法。
【請求項10】
前記中継局が、
前記受信局から前記中継局への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第1の伝搬遅延と、前記送信局から前記中継局への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第2の伝搬遅延と、前記中継局における信号の処理遅延とを用いて最大遅延を求めることと、
前記最大遅延を超えない範囲において、前記複数のアンテナの夫々に関して付与する遅延量を算出することと
をさらに実行する請求項
9に記載の中継局の送信方法。
【請求項11】
前記遅延量の算出は、前記中継局が前記送信局及び前記受信局との通信に用いるサイクリックプレフィクス時間から、少なくとも前記第1の伝搬遅延、前記第2の伝搬遅延、及び前記処理遅延が減じられた前記最大遅延を算出することを含む
請求項
10に記載の中継局の送信方法。
【請求項12】
前記遅延量の算出は、前記最大遅延が等間隔で分割されるように、前記複数の
アンテナに夫々対応する複数のFIRフィルタ
の夫々に設定する遅延量を前記中継局が算出するこ
とを含む
請求項
10又は
11に記載の中継局の送信方法。
【請求項13】
前記遅延量の算出は、前記複数の
アンテナに夫々対応する複数のFIRフィルタ
の夫々に設定する遅延量を前記中継局がランダムに算出することを含む
請求項
10又は
11に記載の中継局の送信方法。
【請求項14】
前記中継局が、前記第1の無線信号の受信、及び前記第2の無線信号の送信に係る自己干渉が抑圧されるように、前記FIRフィルタに対する重み付けを行う
ことをさらに実行する請求項
9に記載の中継局の送信方法。
【請求項15】
前記第1の無線信号の受信は、前記送信局によって少なくとも一つのアンテナを用いた送信ダイバーシティが適用された前記第1の無線信号を受信することを含む
請求項
9に記載の中継局の送信方法。
【請求項16】
前記中継局は、前記中継局と通信する基地局、又は前記中継局の制御装置において算出された遅延量に基づいて、前記複数のアンテナ間で異なる遅延を付与する
請求項9に記載の中継局の送信方法。
【請求項17】
送信局と、
1つのアンテナを有する受信局と、
前記送信局から前記受信局向けに送信された第1の無線信号に対する非再生中継を実行可能な少なくとも一つの中継局と、
を含み、
前記中継局は、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナの夫々に対応する複数の無線機と、
前記複数の無線機の動作を制御するコントローラとを含み、
前記複数の無線機の夫々は、
対応するアンテナによって受信された前記第1の無線信号をベースバンド信号に変換する受信機と、
前記ベースバンド信号に遅延を付与するFIRフィルタと、
前記FIRフィルタから出力された信号を、対応するアンテナから前記受信局へ送信する第2の無線信号に変換する送信機とを含み、
前記コントローラは、前記複数の無線機の夫々において、前記FIRフィルタが前記受信機から入力されたベースバンド信号に対し、前記複数のアンテナ間で異なる遅延を付与するように、前記複数の無線機の夫々における前記FIRフィルタに異なる遅延量を設定する
通信システム。
【請求項18】
前記コントローラは、前記受信局から前記中継局への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第1の伝搬遅延と、前記送信局から前記中継局への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第2の伝搬遅延と、前記中継局における信号の処理遅延とを用いて最大遅延を求め、前記最大遅延を超えない範囲において、前記各FIRフィルタが複数のアンテナの夫々に関して付与する遅延量を算出する
請求項
17に記載の通信システム。
【請求項19】
前記コントローラは、前記中継局が前記送信局及び前記受信局との通信に用いるサイクリックプレフィクス時間から、少なくとも前記第1の伝搬遅延、前記第2の伝搬遅延、及び前記処理遅延が減じられた前記最大遅延を算出する
請求項
18に記載の通信システム。
【請求項20】
前記コントローラは、前記最大遅延が等間隔で分割されるように、前記複数の無線機に備えられた各FIRフィルタに設定する遅延量を算出する
請求項
18又は
19に記載の通信システム。
【請求項21】
前記送信局が、少なくとも一つのアンテナを用いた送信ダイバーシティが適用された前記第1の無線信号を送信する
請求項
17に記載の通信システム。
【請求項22】
前記送信局が、前記中継局に指示を送信する基地局であり、
前記中継局が、前記基地局から受信された前記指示に応じて、前記FIRフィルタを用いた遅延の付与を行う
請求項
17に記載の通信システム。
【請求項23】
前記送信局が、前記中継局に指示を送信する基地局であり、
前記指示が前記基地局、又は前記中継局の
制御装置において算出された前記遅延量を含む
請求項
17に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、中継局、中継局の送信方法、及び、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
5th Generation Mobile Communication System(5G)等の無線通信においては、サブミリ秒以下の超低遅延通信が期待されている。一方で、通信サービス向上の観点では、セルのカバレッジエリアの拡大が望まれ、そのためには、中継局を介する中継通信が有効である。そこで、無線通信を行う端末局を中継局とする無線通信方法が提案されている。さらに、遅延の少ない中継技術として、中継局では復調及び復号は行わない非再生中継が望ましい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】H. Chen. A. B. Gershman, and S. Shahbazpanahi, “Filter-and-Forward Distributed Beamforming in Relay Networks with Frequency Selective Fading”, IEEE Trans. On Signal Processing, vol. 58, no. 3, March 2010.
【文献】能口、林、金子、酒井、“周波数領域等化システムのための単一周波数全二重無線中継,” 電子情報通信学会技術報告, vol. SIP2011-109, 2012年1月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、受信局が好適なダイバーシティ効果を得ることのできる中継局、その送信方法、及び、通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様の一つは、
送信局から、一つのアンテナを有する受信局向けに送信された第1の無線信号に対する非再生中継を実行可能な中継局であって、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナの夫々に対応する複数の無線機と、
前記複数の無線機の動作を制御するコントローラとを含み、
前記複数の無線機の夫々は、
対応するアンテナによって受信された前記第1の無線信号をベースバンド信号に変換する受信機と、
前記ベースバンド信号に遅延を付与するFIRフィルタと、
前記FIRフィルタから出力された信号を、対応するアンテナから前記受信局向けに送信される第2の無線信号に変換する送信機とを含み、
前記コントローラは、前記複数の無線機の夫々において、前記FIRフィルタが前記受信機から入力されたベースバンド信号に対し、前記複数のアンテナ間で異なる遅延を付与するように、前記複数の無線機の夫々における前記FIRフィルタに異なる遅延量を設定する中継局である。
【0006】
本開示の他の態様の一つは、
複数のアンテナを有する中継局の送信方法であって、
前記中継局が、
一つのアンテナを有する受信局向けに送信局から送信された第1の無線信号を前記複数のアンテナの夫々によって受信することと、
前記複数のアンテナの夫々によって受信された前記第1の無線信号を前記複数のアンテナの夫々に対応するベースバンド信号に変換することと、
複数のFIRフィルタを用いて、前記複数のアンテナに対応するベースバンド信号の夫々に、前記複数のアンテナ間で異なる遅延を付与することと、
前記複数のFIRフィルタの夫々から出力された信号の夫々を前記受信局向けの第2の無線信号に変換し、対応するアンテナから送信することと
を実行する中継局の送信方法である。
【0007】
本開示の他の態様の一つは、
送信局と、
1つのアンテナを有する受信局と、
前記送信局から前記受信局向けに送信された第1の無線信号に対する非再生中継を実行可能な少なくとも一つの中継局と、
を含み、
前記中継局は、
複数のアンテナと、
前記複数のアンテナの夫々に対応する複数の無線機と、
前記複数の無線機の動作を制御するコントローラとを含み、
前記複数の無線機の夫々は、
対応するアンテナによって受信された前記第1の無線信号をベースバンド信号に変換する受信機と、
前記ベースバンド信号に遅延を付与するFIRフィルタと、
前記FIRフィルタから出力された信号を、対応するアンテナから前記受信局へ送信する第2の無線信号に変換する送信機とを含み、
前記コントローラは、前記複数の無線機の夫々において、前記FIRフィルタが前記受信機から入力されたベースバンド信号に対し、前記複数のアンテナ間で異なる遅延を付与するように、前記複数の無線機の夫々における前記FIRフィルタに異なる遅延量を設定する通信システムである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、受信局が好適なダイバーシティ効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る通信システムの第1の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る通信システムの第2の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、中継局のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】
図4は、FIRフィルタの構成例を示す図である。
【
図5】
図5は、制御装置のハードウェア構成を例示する図である。
【
図6】
図6は、中継局における処理の説明図である。
【
図7】
図7は、中継局における処理の説明図である。
【
図8】
図8は、制御装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、中継局の処理例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、中継局の処理例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、変形例1における中継局の処理例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、変形例1における中継局の処理例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、変形例1における基地局の処理例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、変形例2における制御装置の処理例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、変形例2における基地局の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
Third Generation Partnership Project(3GPP(登録商標))では、基地局(Base
Station (BS)と呼ばれる)が、「送信ダイバーシティ(Tx diversity)」を提供する。
送信ダイバーシティは、基地局が、複数の送信アンテナを用いて、基地局から端末局向けの信号(下り信号と呼ばれる)を送信する機能である。送信ダイバーシティによれば、端末局が具備するアンテナ数が1本のみである場合であっても、端末局はダイバーシティ効果(ダイバーシティゲイン)を得て、SIR(信号対干渉比)の向上を図ることができる。
【0011】
5Gの通信システムでは、送信ダイバーシティが適用された基地局からの無線信号を、中継局が非再生中継により、端末局へ送信することが考えられる。このようなケースにおいて、中継局が有する複数のアンテナ間における無線信号の伝搬特性と、基地局-中継局間の無線信号の伝搬特性の相関が高い場合、端末局において十分なダイバーシティ効果が得ることができないおそれがあった。
【0012】
本開示では、中継局が複数のアンテナとFIRフィルタを具備し、非再生中継において、アンテナ毎に異なる遅延量を付与することで、複数のアンテナから送信される無線信号に対する遅延ダイバーシティを実現する。これによって、端末局におけるダイバーシティゲインの向上を図ることができる。但し、後述する中継局の構成は、送信ダイバーシティが適用されていない基地局(送信局)からの無線信号(例えば、基地局が1本のアンテナを用いて、1本のアンテナを有する端末局向けに無線信号を送信する場合)についても適用可能である。本開示において、「一つのアンテナを有する受信局」には、一つのアンテナを有する端末局だけでなく、2以上のアンテナを有しているが、送信局及び中継局からの無線信号の受信について1つのアンテナのみを使用する端末局も含まれる。
【0013】
本開示に係る通信システムは、送信局と、受信局と、少なくとも一つの(1以上の)中継局と、制御装置とを備えることができる。送信局は、例えば基地局であり、受信局は例えば端末局である。ただし、送信局が端末局で、受信局が基地局であってもよい。中継局は、例えば、小型基地局、移動基地局、スマートフォン、及び、車載器等である。送信局、受信局、及び、1以上の中継局間では、無線フレームのスロットタイミングが同期している。
【0014】
中継局は、無線信号の非再生中継を行う。非再生中継では、送信局から受信された無線信号(第1の無線信号)からベースバンド信号への変換が行われるが、ベースバンド信号に対する復調及び復号は行われない。ベースバンド信号に操作が施され、操作後のベースバンド信号が無線信号に変換され、アンテナから送信される。本開示に係る中継局は、複数のアンテナと、各アンテナに対する無線機とを含み、上記した無線信号の非再生中継は、アンテナ及び無線機毎に実行される。本開示では、複数のアンテナの夫々に対応するベースバンド信号に対する操作として、各無線機に含まれる各FIR(Finite Impulse Response)フィルタが、アンテナ間で異なる遅延を各ベースバンド信号に付与する。遅延の
付与によって、複数のアンテナから受信局向けに送信される無線信号(第2の無線信号)に遅延ダイバーシティを施すことができる。
【0015】
中継局は、コントローラ(制御部)を備え、コントローラは、中継局の各無線機に含まれるFIRフィルタに設定する遅延量を算出する。例えば、コントローラは、中継局が受信局から受信する信号の伝搬遅延である第1の伝搬遅延と、中継局が送信局から受信する
信号の伝搬遅延である第2の伝搬遅延と、中継局における信号の処理遅延とを用いて最大遅延を求め、最大遅延を超えない範囲において、各FIRフィルタに設定する遅延量を算出することができる。これにより、各FIRフィルタが、アンテナ間で異なる所望の遅延をベースバンド信号に付与することができる。
【0016】
コントローラは、例えば、コンピュータ、CPU(Central Processing Unit)等のプ
ロセッサ、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の演算回路(集積回路)、或
いはこれらの組み合わせである。通信システムが具備する制御装置は、上記した、コンピュータ、CPU等のプロセッサ、集積回路、或いはこれらの組み合わせによって構成可能である。制御装置は、中継局に対して指示を与え、中継局は、制御装置からの指示を受けて、上述した遅延の付与を行うことができる。また、制御装置が、上記した各FIRフィルタに設定する遅延量を算出し、上記した指示に含め、コントローラが指示に含まれる遅延量を各FIRフィルタに設定することも考えられる。
【0017】
本開示に係るFIRフィルタは、中継局において発生する、送信局から受信した無線信号と受信局へ送信する無線信号との間の干渉を抑圧するフィルタリングを行ってもよい。送信局から受信した信号と受信局へ送信する信号との間の干渉は、自己干渉(Self-interference: SI)とも呼ばれる。コントローラは、FIRフィルタに対し、自己干渉を抑圧
するための重みを設定することができる。
【0018】
また、本開示の態様は、上述した中継局、中継局の送信方法、中継局を含む通信システム以外に、中継局の送信方法を中継局に実行させるためのプログラム、及び、当該プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能で非一時的な記憶媒体としても特定することができる。
【0019】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。なお、実施形態では、通信システムとして5Gの通信システムを例示するが、本開示に係る送信局、中継局及び受信局の構成は、5G以外の通信システム(無線LAN等)に適用することが可能である。
【0020】
図1は、通信システムの第1の構成例を示す図である。
図1において、第1の構成例に係る通信システム100Aは、制御装置1と、基地局2と、中継局3と、端末局4とを有する。
図1では、少なくとも一つの中継局の一例として一つの中継局3を示すが、通信システム100Aは、基地局2と端末局4との間に2以上の中継局3(3-1,・・・,3-N(Nは中継局の数を示す整数))を含んでいてもよい。また、通信システム100Aにおいて、端末局4の数は、単数でも複数でもよい(
図1では一つの端末局4を例示)。
【0021】
制御装置1は、基地局2が接続されるネットワーク(例えばコアネットワーク)上の装置である。ただし、制御装置1がコアネットワーク自体であるか、またはコアネットワークに含まれるシステムであると考えることもできる。コアネットワークは、例えば、光ファイバ網を含む。制御装置1は、基地局2、中継局3、及び、端末局4を制御し、端末局4に通信サービスを提供する。
【0022】
基地局2は、端末局4に無線アクセスネットワークを提供する。無線アクセスネットワークでの無線通信が可能なエリアは、セルとも呼ばれる。基地局2は、実施形態では、1以上のアンテナ(例えば、アンテナ#0及び#1)と、各アンテナに対応する無線機21と、制御回路22とを有する。制御回路22は、例えば、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1(基地局2)との通信、及び、中継局3及び端末局4との無線通信を制御する。
【0023】
中継局3は、基地局2と端末局4との無線通信を中継する。中継局3は、例えば、小型基地局、移動基地局、車載装置、及び、スマートフォン等である。中継局3は、非再生中継可能な構成を備える装置の中から制御装置1によって中継局として選定されることができる。制御装置1は、端末局4から接続要求の発生時に、基地局2が提供するセルの範囲に位置する1以上の中継局3を選択し、無線通信の非再生中継の指示を各中継局3に送信することができる。指示を受けた中継局3は、制御装置1によって選定された中継局3として動作する。
【0024】
中継局3は、基地局2と同様、1本以上のアンテナ(例えば、#0)と、各アンテナに対応する無線機31と、制御回路32(「コントローラ(制御部)」の一例)とを有する。
【0025】
端末局4は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、ウェアラブル端末、車載されたデータ通信装置等の移動局である。ただし、これに限られず、端末局4は、据え置き型の端末装置であってもよい。例えば、端末装置は、基地局2が提供するセルの範囲で無線アクセスネットワークに接続する。
【0026】
端末局4は、無線信号の受信に使用する1本のアンテナ(例えば、#0)と、当該アンテナに接続される無線機41と、制御回路42とを有する。例えば、セル内の移動局が基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求し、接続されることで、当該移動局が端末局4として動作する。セル内の移動局は、基地局2に直接無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。または、セル内の移動局は、セル内で中継局3として動作する装置を介して基地局2に無線アクセスネットワークへの接続を要求してもよい。端末局4は、1以上の中継局3のいずれかを介してまたは1以上の中継局3のいずれをも介さずに基地局2と通信可能な局ということができる。
【0027】
図2は、通信システムの第2の構成例を示す図である。通信システムとして、
図2に示すような第2の構成例に係る通信システム100Bが適用されてもよい。通信システム100Bは、
図1の通信システム100Aと比較において、以下の点で異なる。すなわち、通信システム100Bは、基地局2の代わりに、中央基地局2Aと、1以上の分散基地局2Bと有する。1以上の分散基地局2Bが個々に区別される場合に、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kのように枝番が付される。ここで、枝番Kは分散基地局数を示す整数である。
図2においては、分散基地局2B-1と2B-Kが例示されている。ただし、分散基地局2B-1、・・・、2B-Kが総称される場合には、単に、分散基地局2Bと記述される。
【0028】
中央基地局2Aは、制御回路22Aを有する。また、分散基地局2Bは、アンテナ#0及び#1に対応する無線機21Bを有する。中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとは、例えば、光ファイバC1又は無線ネットワークで接続される。中央基地局2Aと複数の分散基地局2Bとを接続する光ファイバC1のトポロジは、特定のトポロジに限定されない。例えば、光ファイバC1のトポロジは、ノード間の一対一の接続、中央基地局2Aから離れるにしたがって分岐するネットワーク、スター型のネットワーク、または、リングネットワーク等であってもよい。また、中央基地局2Aの制御回路22Aと分散基地局2Bの無線機21Bとの間を無線ネットワークで接続する場合に、採用される無線ネットワークの規格及び、プロトコルは特定のものに限定されない。
【0029】
制御回路22Aは、
図1の制御回路22と同様、プロセッサとメモリを有する。プロセッサは、メモリ上のコンピュータプログラムにより、制御装置1との通信、および中継局3、端末局4との無線通信を制御する。すなわち、制御回路22Aは、1以上の分散基地局2Bの無線機21Bを介して、中継局3及び端末局4との無線通信を制御する。中継局
3及び端末局4の構成は、通信システム100Aと同じであるので重ねての説明は省略する。
【0030】
通信システム100A及び100Bについて、前提として、以下の構成が採用されている。通信システム100A及び100Bでは、時分割多重による通信が行われ、アップリンク(上り回線)及びダウンリンク(下り回線)では同一周波数チャネルが使用される。また、基地局2、中継局3、及び、端末局4間では、無線フレームを構成する各スロットの開始タイミングは同期している。
【0031】
通信システム100A及び100Bでは、無線の変調方式として、CP-OFDM(Cyclic Prefix - Orthogonal Frequency Division Multiplexing)などのサイクリックプレフィクス(CP)を持つブロック伝送方式が採用されている。本実施形態では、CP-OFDMが適用されている場合について説明するが、CP-OFDM以外のCPを有するブロック伝送方式であってもよい。また、中継局3は、中継の対象となる端末局4がアップリンク及びダウンリンクにおいて使用するリソースブロック情報を共有している。
【0032】
なお、アップリンクは、端末局4から基地局2への方向のリンクである。ダウンリンクは、基地局2から端末局4への方向のリンクである。以下の説明は、ダウンリンク方向で非再生中継が行われる場合を例示する。すなわち、送信局は基地局2が「送信局」に相当し、端末局4が「受信局」に相当する。但し、実施形態において中継局3が行う非再生中継が、アップリンク方向の通信に適用されてもよい。
【0033】
中継局3は、中継信号、すなわち、端末局4向けに非再生中継される信号(第2の無線信号)に遅延を付与する。中継信号を端末局4に到着させるタイミングは、中継局3において算出される。中継局3は、各アンテナ(アンテナ#0及び#1)から送信される中継信号が所望のタイミングで端末局4に到達するように、基地局2と中継局3との間の電波の伝搬特性と、中継局3と端末局4との間の電波の伝搬特性と、中継局3における信号の処理時間に基づいて、付与すべき遅延時間(遅延量に相当)を算出する。電波の伝搬特性には、例えば、伝搬遅延、遅延の広がり、及び、位相回転量等が含まれる。ただし、電波の伝搬特性に含まれる情報はこれらに限定されない。伝搬遅延は、信号が送信側装置から送信されてから受信側装置に届くまでにかかる時間である。遅延の広がりは、受信側装置に信号が届き始めてから当該信号の受信が完了するまでにかかる時間である。
【0034】
図3は、中継局3のハードウェア構成の一例を示す図である。中継局3は、二つのアンテナ#0及び#1(複数のアンテナの一例)と、複数のアンテナ(アンテナ#0及び#1)に対応する複数の無線機31(無線機31#0及び31#1)と、制御回路32(コントローラの一例)とを備える。以下の説明において、無線機31#0と無線機31#1とを区別しない場合には、無線機31と表記する。
【0035】
無線機31#0及び31#1の夫々は、同じ構成を有している。すなわち、無線機31は、送信機311と受信機312とベースバンド回路313を有する。送信機311と受信機312とはサーキュレータ314を介してアンテナ(#0又は#1)に接続される。すなわち、サーキュレータ314の3つのポートに送信機311と受信機312とアンテナ(#0又は#1)とが接続される。アンテナ(#0又は#1)で受信された受信信号は、サーキュレータ314の1つ目のポートに入力され、2つ目のポートから受信機312に伝達される。送信機311からの送信信号は、サーキュレータ314の例えば3つ目のポートに入力され、1つ目のポートからアンテナ(#0又は#1)に伝達される。
【0036】
ここで、送信信号と受信信号の電力差は例えば約100dBほどである。一方、サーキュレータ314のアイソレーションは30dB程度であり、送信信号の一部は受信信号と
互いに干渉し合う。無線機31における送信信号の一部と受信信号との干渉は、自己干渉と呼ばれる。自己干渉は受信機312内のRadio Frequency(RF)アナログフィルタと
ベースバンド回路313に含まれるFIRフィルタ315を併用することで抑圧される。
【0037】
受信機312は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0又は#1)から受信信号(例えば、基地局2からの無線信号(第1の無線信号))を受ける。受信機312は、直交検波回路とアナログデジタル(AD)コンバータを有する。受信機312は、直交検波により受信信号をダウンコンバートし、さらにADコンバータによりデジタルデータに変換してベースバンド信号を得る。受信機312は、得られたベースバンド信号をベースバンド回路313に入力する。
【0038】
ベースバンド回路313は、FIRフィルタ315を含むディジタル回路である。FIRフィルタ315には、受信信号としてのベースバンド信号が入力される。FIRフィルタ315は、ベースバンド信号に混入し、自己干渉している送信信号を抑圧するとともに、ベースバンド信号を所定の遅延時間だけ遅延させる。ベースバンド回路313は、FIRフィルタ315の出力信号(FIRフィルタ315によってフィルタリングされた信号)を送信機311に入力する。このように、中継局3は,複数のアンテナに対応する複数のFIRフィルタを有している。
【0039】
送信機311は、デジタルアナログ(DA)コンバータと、変調回路とを有する。送信機311は、ベースバンド回路313からの受信信号をアナログ信号に変換し、変調回路により無線信号(RF信号、例えば、端末局4へ送信すべき第2の無線信号)を生成する。送信機311は、サーキュレータ314を介してアンテナ(#0又は#1)から無線信号を中継信号として送信する。
【0040】
制御回路32は、例えば、CPU等のプロセッサ、FPGA等の集積回路、或いはこれらの組み合わせによって構成することができる。制御回路32は、非再生中継処理の制御を行う。より具体的には、制御回路32は、伝搬路(パス)の伝搬特性の計測、アンテナに対応する遅延量の算出、FIRフィルタ315に対する遅延量の設定を行うことができる。また、制御回路32は、自己干渉の抑圧用の重みを計算し、その重みをFIRフィルタに設定することもできる。自己干渉抑圧用の重み設定はオプションである。制御回路32は、「コントローラ」の一例である。
【0041】
なお、中継局3のハードウェア構成は
図3に示されるものに限定されない。例えば、中継局3は、制御回路32が接続する、制御チャネル用のアンテナを別途備えてもよい。
【0042】
図4は、FIRフィルタ315の構成例を示す図である。FIRフィルタ315は、アンテナ#k(k=0,1,・・・,N_(R)-1)毎に用意される。FIRフィルタ315は、入力端子316と、出力端子317と、N_(D,k)段のタップ(T1、T2、・・・、TN_(D,k))を有する。アルファベットの後の下線以降のカッコ内の文字は、図中下付き文字に相当する。タップT1を除くタップの夫々は、入力信号を、遅延時間τ_(D)だけ遅延させる遅延器(遅延素子)Dと、複素数の重みw_(k)を乗じる乗算器MLとを含む。
【0043】
タップT1は、遅延器Dを持たず、入力端子316からの入力信号を乗算器MLにより重みw_(1,k)で重み付けする。タップT2は、入力信号を遅延器D(遅延時間τ_(D))により遅延させ、乗算器MLにより重みw_(2,k)で重み付けする。タップT3以降も同様である。したがって、最終段のタップTN_(D,k)では、タップT1への入力信号(FIRフィルタ315への入力信号)には、遅延時間τ_D×(N_(D,k)-1)が付与され、重みw_(N_(D,k))が重み付けされる。各タップ(T
1、T2、・・・、TN_(D,k))で処理された信号は、それぞれ、加算器ADにより加算され、出力端子317から出力される。以上の構成により、FIRフィルタ315への入力信号は、重み付け平均され、受信信号以外の干渉信号および雑音が除去されるとともに、遅延時間τ_(D)×(N_(D,k)-1)だけ遅延される。
【0044】
FIRフィルタ315の使用するタップ数N_(D,k)と、重みw_(k)、すなわち、w_(1,k)からw_(N_(D,k),k)は、制御回路32によって算出される。詳細は後述される。
【0045】
図5は、制御装置1のハードウェア構成を例示する図である。制御装置1はCPU11と、主記憶装置12と、外部機器を有し、コンピュータプログラムにより通信処理および情報処理を実行する。CPU11は、プロセッサとも呼ばれる。CPU11は、単一のプロセッサに限定されず、マルチプロセッサ構成であってもよい。また、CPU11は、Graphics Processing Unit(GPU)、Digital Signal Processor(DSP)等を含むものであってもよい。また、CPU11は、Field Programmable Gate Array(FPGA)等
のハードウェア回路と連携するものでもよい。外部機器としては、外部記憶装置13、出力装置14、操作装置15、および通信装置16が例示される。
【0046】
CPU11は、主記憶装置12に実行可能に展開されたコンピュータプログラムを実行し、制御装置1の処理を提供する。主記憶装置12は、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。主記憶装置12は、Dynamic Random Access Memory(DRAM)、Static Random Access Memory(SRAM)、Read Only Memory(ROM)等である。さらに、外部記憶装置13は、例えば、主記憶装置1
2を補助する記憶領域として使用され、CPU11が実行するコンピュータプログラム、CPU11が処理するデータ等を記憶する。外部記憶装置13は、ハードディスクドライブ、Solid State Drive(SSD)等である。さらに、制御装置1には、着脱可能記憶媒
体の駆動装置が接続されてもよい。着脱可能記憶媒体は、例えば、ブルーレイディスク、Digital Versatile Disc(DVD)、Compact Disc(CD)、フラッシュメモリカード等である。
【0047】
出力装置14は、例えば、液晶ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスパネル等の表示装置である。ただし、出力装置14がスピーカその他の音を出力する装置を含んでもよい。操作装置15は、例えば、ディスプレイ上にタッチセンサを重ねたタッチパネル等である。通信装置16は、例えば、光ファイバを介して基地局2およびインターネット等の外部ネットワークと通信する。通信装置16は、例えば、基地局2に接続されるゲートウェイおよびインターネット等の外部ネットワークと通信するゲートウェイである。通信装置16は、1台の装置であってもよいし、複数台の装置の組み合わせであってもよい。なお、制御装置1のハードウェア構成は、
図5に示されるものに限定されない。また、上述した中継局3の制御回路32は、上述したCPU11,主記憶装置12及び外部記憶装置13を備える装置として構成されてもよい。
【0048】
図6及び
図7は、中継局3における処理の説明図である。
図6に示すように、中継局3では、制御回路32が、アンテナ#0について付与する遅延時間Δ_(0)と、アンテナ#1について付与する遅延時間Δ_(1)とを算出する。アンテナ#0及び#1の夫々に対応するFIRフィルタ315は、入力されるベースバンド信号に対して、SI(自己干渉)の除去と、遅延時間Δ_(0)又はΔ_(1)の付与とを行い、処理後の信号を出力する。
【0049】
図7は、中継局3のアンテナ数が2本(#0及び#1)であり、遅延時間Δ_(0)=0とし、Δ_(1)=Δ_(max)である場合の算出例を示す。中継局3は基地局2及
び端末局4とCP-OFDMを用いて通信する。遅延時間Δ_(0)及びΔ_(1)の算出は、無線フレーム毎または無線フレームを構成するスロット毎に行われる。
【0050】
CP-OFDMでは、スロットの先頭からサイクリックプレフィクス(CP)時間、すなわちCPの時間長(CP長=5μsec)が経過するまでの間に受信局に到来した無線信号は正常に合成され、ダイバーシティゲインの向上に寄与する。このため、
図7において、CP長(CP時間)は、許容遅延T_(CP)として示される。
【0051】
図7に示された“τ_(BS→R)”は、基地局2(BS)から中継局3(R)への無線信号の伝搬路(パス)における伝搬遅延を示す。伝搬遅延τ_(BS→R)は、例えば、中継局3で受信された、基地局2(BS)から端末局4(UE)へ送信される制御チャネル等のリファレンス信号から計測(算出)することができる。
【0052】
また、
図7に示す“τ_(R)”は、中継局3(R)における処理遅延であり、例えば、“FIRフィルタ315の遅延器数(N_(D,k)-1) × タップあたりの遅延時間τ_(D)”の算出式によって算出することができる。
【0053】
また、
図7に示された“τ_(UE→R)”は、端末局4(UE)から中継局3(R)への無線信号の伝搬路(パス)における伝搬遅延を示す。伝搬遅延τ_(UE→R)は、例えば、中継局3で受信された、端末局4(UE)から基地局2(BS)へ送信される制御チャネル等のリファレンス信号から計測(算出)することができる。
【0054】
また、
図7に示された“δ”は、計測偏差と遅延広がりを示す値である。δの値は、下り回線について算出する場合、中継局3(R)と端末局4(UE)との間のリファレンス信号の受信、及び端末局4(UE)から基地局2(BS)へのリファレンス信号の受信を通じて算出することができる。
【0055】
また、
図7に示す“Δ_(max)”は、許容遅延T_(CP)の間で、FIRフィルタ315に入力されたベースバンド信号に対して付与可能な遅延時間の最大値(最大遅延)を示す。最大遅延Δ_(max)は、例えば、算出式“Δ_(max)=T_(CP)-(τ_(UE→R)+τ_(R)+τ_(BS→R)+δ)”を用いて算出することができる。
【0056】
伝搬遅延τ_(BS→R)、処理遅延τ_(R)、伝搬遅延τ_(UE→R)、δ、及び最大遅延Δ_(max)は、制御回路32によって計測及び算出することができる。但し、当該計測及び算出は、制御回路32以外でなされてもよい。
【0057】
制御回路32は、不等式“Δ_(k)≦Δ_(max)”が満たされるように、中継局3(R)のアンテナ毎に異なる遅延時間(遅延量)Δ_(k)を算出し、Δ_(k)をFIRフィルタ315に設定する。但し、遅延時間Δ_(k)は、FIRフィルタ315が具備するタップあたりの遅延量(τ_(D))で離散化された状態で、FIRフィルタ315に設定される。
【0058】
例えば、制御回路32は、中継局3が有するアンテナの本数N_(R)に対して、アンテナ#kに対する遅延時間Δ_(k)を、算出式“Δ_(k)=k・Δ_(max)/(N_(R)-1)”を用いて算出することができる。この場合、アンテナの本数が2であれば、
図7に示されるように、遅延時間Δ_(0)は0となり、遅延時間Δ_(1)はΔ_(max)となる。すなわち、アンテナ#0からの無線信号(第2の無線信号)の送信タイミングは、処理遅延τ_(R)の終了直後となり、アンテナ#1からの無線信号(第2の無線信号)の送信タイミングは、アンテナ#0からの送信タイミングからΔ_(ma
x)経過したタイミングとなる。これにより、アンテナ#1から送信された無線信号は、τ_(UE→R)+δが経過する(CP時間が満了する)までに、端末局4に到達する。
【0059】
なお、アンテナの本数が3であれば、Δ_(0)は0となり、Δ_(1)はΔ_(max)/2となり、Δ_(2)はΔ_(max)となる。すなわち、無線信号の送信タイミングがΔ_(max)の開始時刻から等間隔でずれるように、各アンテナに対する遅延時間Δ_(k)が算出される。
【0060】
図8は、制御装置1の処理例を示すフローチャートである。
図8に示す処理は、例えば、制御装置1のCPU11によって行われる。ステップS01において、制御装置1は、中継局3に対して、制御チャネルによって中継許可を通知する(中継許可の指示を含むメッセージを送信する)。制御装置1は、あわせて、各中継局3が中継対象とする端末局4(UE)の識別情報を通知(送信)する。ステップS01は、例えば、基地局2(送信局)が下り回線を用いて端末局4(受信局)に無線信号の送信を開始する場合に行われる。このとき、基地局2は、複数のアンテナ(例えばアンテナ#0及び#1)を用いた送信ダイバーシティが適用された無線信号を送信する。但し、基地局2は、単一のアンテナを用いて送信ダイバーシティが施されていない無線信号を送信してもよい。
【0061】
ステップS02では、制御装置1は、中継許可を終了する条件が満たされたか否かを判定する。条件が満たされたと判定される場合、処理がステップS01に戻り、そうでない場合には、処理がステップS03に進む。
【0062】
ステップS03では、制御装置1は、終了処理を行う。例えば、制御装置1は、中継許可の通知を停止する。或いは、制御装置1は、中継を終了する指示を中継局3に送信する。その後、制御装置1は、処理を終了する。このように、中継局3による非再生中継は、制御装置1からの指示(中継許可)に基づいて行われる。
【0063】
図9及び
図10は、中継局3の処理例を示すフローチャートである。
図9及び
図10に示す処理は、例えば、中継局3の制御回路32によって実行される。また、
図9及び
図10に示す処理は、制御装置1からの中継許可を含む指示(制御信号)の受信を契機に開始される。
【0064】
ステップS001において、制御回路32は、中継局3(R)によって受信される、端末局4(UE)から基地局2(BS)へ送信する制御チャネル(制御CH)等のリファレンス信号を用いて、端末局4から中継局3への無線信号の伝送路(パス)の伝搬遅延τ_(UE→R)を計測する。対象の端末局4が複数(2以上)ある場合、制御回路32は、最大伝搬遅延となる数値をτ_(UE→R)に決定する。
【0065】
ステップS002において、制御回路32は、中継局3(R)によって受信される、基地局2(BS)から端末局4(UE)へ送信する制御CH等のリファレンス信号を用いて、基地局2から中継局3への無線信号の伝搬路の伝搬遅延τ_(BS→R)を計測する。
【0066】
ステップS003において、制御回路32は、中継局3によって受信される、中継局3が基地局2に対して送信する制御CH等のリファレンス信号を用いて、送信機311及び受信機312間の自己干渉(SI)における結合H_(SI)を計測する。
【0067】
ステップS004において、制御回路32は、結合H_(SI)に基づいて、自己干渉を抑圧するためのFIRフィルタ315の重みw_(k)を決定(算出)する。
【0068】
ステップS005において、制御回路32は、重みに要するタップ数N_(D,k)と
タップあたりの遅延時間τ_(D)とから処理遅延τ_(R)を算出する。例えば、制御回路32は、算出式“τ_(R)=(N_(D,k)-1)×τ_(D)”を用いてτ_(R)を算出する。
【0069】
なお、ステップS001からステップS005の処理の順序は例示であり、順序はどのように入れ替えてもよい。
【0070】
ステップS006では、制御回路32は、許容遅延T_(CP)と、伝搬遅延τ_(UE→R)と、伝搬遅延τ_(BS→R)と、処理遅延τ_(R)と、δとを用いて、最大遅延Δ_(max)を算出する。
【0071】
ステップS007では、制御回路32は、遅延時間の計算方法が各アンテナからの無線信号の送信間隔が等間隔となる(すなわち、送信タイミングが等間隔で発生する)ような遅延を与える計算か、ランダムな遅延を与える計算かを判定する。等間隔の遅延を付与する計算の場合、処理がステップS008に進み、ランダムでの計算の場合、処理がステップS009に進む。なお、アンテナ本数が多く、等間隔では信号が重複することが確実な場合(Δ_(max)/(N_(R)-1)<δ(遅延広がり+偏差))には、ランダムに切り替えることが考えられる。
【0072】
ステップS008では、制御回路32は、中継局3のアンテナ本数N_(R)に対して、アンテナ#kに対する遅延時間を、算出式“Δ_k=k・Δ_(max)/(N_(R)-1)”を用いて算出する。その後、処理がステップS010に進む。
【0073】
ステップS009では、制御回路32は、算出式“Δ_(k)=x_(k)・Δ_(max)”を用いて遅延時間を算出する。このとき、x_(k)は一様分布(範囲は(0,1))に従うランダム変数を与えて計算する。
【0074】
ステップS010では、非再生中継が実施される。すなわち、制御回路32は、重みw_(k)と、遅延時間Δ_(k)を各FIRフィルタ315に設定する。各無線機31(31#0及び31#1の夫々)において、受信機312は、対応するアンテナ#0又は#1にて受信された基地局2(送信局)からの無線信号(第1の無線信号)をベースバンド信号に変換し、ベースバンド信号を対応するFIRフィルタ315に入力する。FIRフィルタ315は、重みw_(k)及び遅延時間Δ_(k)の設定に基づくフィルタリングを行う。FIRフィルタ315の出力信号は、送信機311に入力される。送信機311は、入力された信号を端末局4向けの無線信号(第2の無線信号)に変換する。第2の無線信号は、対応するアンテナ#0又は#1から放射(送信)される。当該処理は、無線フレームの下り回線の各スロットに対して行われる。但し、上り回線の各スロットについて行うことも可能である。
【0075】
ステップS011では、制御回路32は、中継許可の通知が継続しているか、すなわち、非再生中継処理を終了するか否かを判定する。このとき、非再生中継処理を終了すると判定される場合には、
図10の処理が終了し、そうでないと判定される場合には、処理がステップS001に戻る。なお、Δ_(max)の算出に用いるパラメータ(伝搬遅延、処理遅延、及びδ)は、スロット単位、或いは無線フレーム単位で更新される。
【0076】
実施形態によれば、通信システム100A及び100Bの夫々は、送信局(基地局2又は分散基地局2B-1)と、1つのアンテナを有する受信局(端末局4)と、送信局から受信局向けに送信された第1の無線信号に対する非再生中継を実行可能な少なくとも一つの中継局3とを含む。
【0077】
中継局3は、複数のアンテナ(アンテナ#0及び#1)と、複数のアンテナの夫々に対
応する複数の無線機31と、複数の無線機31の動作を制御するコントローラ(制御回路32)とを含む。複数の無線機31の夫々は、対応するアンテナ#0又は#1によって送信局(基地局2又は分散基地局2B-1)から受信された第1の無線信号をベースバンド信号に変換する受信機312と、ベースバンド信号に遅延を付与するFIRフィルタ315と、FIRフィルタ315から出力された信号を、対応するアンテナ#0又は#1から受信局(端末局4)へ送信する第2の無線信号に変換する送信機311とを含む。そして、制御回路32(コントローラ)は、複数の無線機31の夫々において、FIRフィルタ315が受信機312から入力されたベースバンド信号に対し、複数のアンテナ間で異なる遅延を付与するように、複数の無線機31の夫々におけるFIRフィルタ315に異なる遅延時間を設定する。
【0078】
上記した中継局3の構成によって、中継局3が複数のアンテナを用いて受信局に送信する第2の無線信号に、遅延ダイバーシティを与えることができる。これによって、受信局は、第2の無線信号についてのダイバーシティ効果を得て、SIR及びSINRの向上を図ることができる。
【0079】
このとき、送信局(基地局2又は分散基地局2B-1)から複数のアンテナを用いた送信ダイバーシティが適用された第1の無線信号が送信されている場合、中継局3におけるアンテナ毎に異なる遅延を付与することにより、受信局(端末局4)に直接に到達する第1の無線信号の伝搬特性と、第2の無線信号の伝搬特性との相関が低下する。これによって、受信局におけるダイバーシティゲインの向上を図ることができる。すなわち、受信局が好適なダイバーシティ効果を得ることができる。これに対し、第1の無線信号に送信ダイバーシティゲインが得られていない場合(送信ダイバーシティが適用されていない)でも、第2の無線信号に与えられた遅延ダイバーシティにより、受信局で好適なダイバーシティ効果を得ることができる。
【0080】
実施形態において、制御回路32(コントローラ)は、受信局から中継局3への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第1の伝搬遅延(τ_(UE→R))と、送信局から中継局3への無線信号の伝搬路における伝搬遅延である第2の伝搬遅延(τ_(BS→R))と、中継局3における信号の処理遅延(τ_(R))とを用いて最大遅延Δ_(max)を求め、最大遅延Δ_(max)を超えない範囲において、各FIRフィルタ315が複数のアンテナの夫々に関して付与する遅延時間を算出することができる。
【0081】
このとき、制御回路32(コントローラ)は、中継局3が送信局及び受信局との通信に用いるサイクリックプレフィクス時間(CP時間、すなわちT_(CP))から、少なくとも第1の伝搬遅延(τ_(UE→R))、第2の伝搬遅延(τ_(BS→R))、及び処理遅延(τ_(R))が減じられた最大遅延Δ_(max)を算出することができる。但し、Δ_(max)の算出式に示したように、δの値をさらに減じてもよい。
【0082】
制御回路32(コントローラ)は、複数のアンテナ#0及び#1に関して遅延時間が等間隔で付与される(最大遅延Δ_(max)が等間隔で分割される)ように、複数の無線機31に備えられた各FIRフィルタ315に設定する遅延時間Δ_(0)及びΔ_(1)を算出してもよい。換言すれば、複数のアンテナ#0及び#1の夫々から送信される無線信号の送信タイミングが等間隔で発生するように、各FIRフィルタ315に設定する遅延時間Δ_(0)及びΔ_(1)が算出されてもよい。
【0083】
また、制御回路32(コントローラ)は、複数の無線機31に備えられた各FIRフィルタ315に設定する遅延時間Δ_(0)及びΔ_(1)をランダムに算出してもよい。すなわち、等間隔以外の手法でアンテナ毎の遅延時間が算出されてもよい。
【0084】
また、実施形態における制御回路32(コントローラ)は、第1の無線信号の受信、及び第2の無線信号の送信に係る自己干渉が抑圧されるように、FIRフィルタ315に対する重み付け(重みw_(k)の設定)を行う。これによって、遅延付与とともに、自己干渉の抑圧を行うことができる。
【0085】
<変形例1>
上述した実施形態は、以下に説明する変形例1のように変形することができる。実施形態では、Δ_(k)を算出するためのパラメータ(伝搬遅延及び処理遅延など)を中継局3の制御回路32で計測または算出していた。変形例1では、遅延時間Δ_(k)を、中継局3の制御回路32の代わりに、基地局2の制御回路22(
図1)が行う場合について説明する。制御回路22は、分散基地局2B-1~2B-kの制御回路22A(
図2)であってもよい。
【0086】
以下、変形例1を実施形態との相違について説明する。変形例1における制御装置1の動作は、実施形態の動作(
図8)と同じである。これに対し、変形例1では、中継局3及び基地局2における処理(動作)が実施形態と異なる。
【0087】
図11及び
図12は、変形例1における中継局3の処理(動作)を示すフローチャートであり、
図13は、変形例1における基地局2の処理(動作)を示すフローチャートである。
【0088】
図11において、ステップS001、S003、S004及びS005の処理は、実施形態(
図9)と同じである。これに対し、変形例1では、ステップS002の代わりに、ステップS005A及びS005Bが設けられている。中継局3の制御回路32は、伝搬遅延τ_(BS→R)を計測する設定が施されていると判定する場合に(ステップS005AのYES)に、ステップS002において説明したのと同様の手法で、伝搬遅延τ_(BS→R)を計測する。設定は、例えば、ディップスイッチのような機械スイッチの設定、フラグのようなソフトウェアスイッチの切り替えによって行うことができる。設定は、例えば、基地局2又は制御装置1から通知される指示に従って行われる。
【0089】
変形例1では、さらにステップS005Cが設けられている。ステップS005Cにおいて、中継局3の制御回路32は、伝搬遅延τ_(UE→R)と、処理遅延τ_(R)と、アンテナ本数N_(R)を基地局2へ送信する。但し、ステップS005Bにて伝搬遅延τ_(BS→R)が計測されている場合には、制御回路32は、伝搬遅延τ_(BS→R)も基地局2へ送信する。
【0090】
このように、変形例1では、設定に応じて伝搬遅延τ_(BS→R)が計測される。但し、ステップS005A及びS005Bの処理はオプションとしてもよい。或いは、ステップS005Aがなく、伝搬遅延τ_(BS→R)が計測され、基地局2へ送信される構成が採用されてもよい。
【0091】
図13のステップS101において、基地局2は、中継局3から送信された、伝搬遅延τ_(UE→R)と、処理遅延τ_(R)と、アンテナ本数N_(R)とを受信する。但し、ステップS005Cにて伝搬遅延τ_(BS→R)が送信されている場合には、伝搬遅延τ_(BS→R)も受信パラメータに含まれる。
【0092】
ステップS102では、基地局2の制御回路22は、受信されたパラメータ中に伝搬遅延τ_(BS→R)が含まれているか否かを判定する。このとき、伝搬遅延τ_(BS→R)が含まれていると判定される場合には、処理がステップS103に進み、そうでない
場合には、処理がステップS104に進む。
【0093】
ステップS103に処理が進んだ場合には、制御回路22は、中継局3からの伝搬遅延τ_(BS→R)を取得し、処理をステップS105に進める。ステップS104に処理が進んだ場合には、制御回路22は、中継局3からの計測値(伝搬遅延τ_(UE→R)と、処理遅延τ_(R)など)の通知(送信)に使用されるリファレンス信号から、中継局3と基地局2との間の伝搬遅延τ_(R→BS)を計測する。その後、処理がステップS105に進む。
【0094】
ステップS105では、制御回路22は、中継局3から通知された計測値をもとに、許容遅延T_(CP)より、最大遅延Δ_(max)を求める。最大遅延Δ_(max)は、例えば、計算式Δ_(max)=T_(CP)-(τ_(UE→R)+τ_(R)+τ_(R→BS)+δによって求められる。但し、ステップS103にて伝搬遅延τ_(BS→R)が取得されている場合には、上記の計算式において、τ_(R→BS)の代わりに、τ_(BS→R)が用いられる。なお、計算式におけるδは、計測偏差と遅延広がりを考慮して与える数値である。
【0095】
ステップS106では、制御回路22は、Δ_(k)≦Δ_(max)が満たされるように、中継局3のアンテナ毎に異なる遅延時間Δ_(k)を算出し、遅延時間Δ_(k)を中継局3へ送信する。遅延時間Δ_(k)の算出方法は、実施形態と同様の方法を適用することができる。
【0096】
図12におけるステップS006Aにおいて、中継局3は、基地局2から送信された、アンテナ毎の遅延時間Δ_(k)を受信する(S006AのYES)。すると、中継局3の制御回路32は、FIRフィルタ315に対し、重みw_(k)及び遅延時間Δ_(k)を設定し(ステップS007A)、非再生中継を実施する(ステップS008A)。
ステップS007A及びS008Aの処理は、実施形態におけるステップS010の処理(
図10)と同様であるので説明は省略する。
【0097】
このように、変形例1では、基地局2の制御回路22がアンテナ毎の遅延時間Δ_(k)を算出し、中継局3に通知(送信)する。中継局3の制御回路32は、基地局2で算出された遅延時間Δ_(k)を用いて、非再生中継を行う。なお、制御回路32は、ステップS008(ステップS010)において、端末局4向けの信号の送信タイミングが端末局4受信時にCP時間(T_(CP))内に収まるか否かを判定し、収まらない場合には、信号の送信を停止してもよい。停止の判定は、中継局3の制御回路32で行われても、基地局2の制御回路22で行われてもよい。
【0098】
図14は、変形例2における制御装置1の処理例を示すフローチャートであり、
図155は、変形例2における基地局2の処理例を示すフローチャートである。変形例2では、遅延時間Δ_(k)の計算を制御装置1が行う。
【0099】
図14における変形例2の処理では、実施形態における制御装置1の処理(
図8)におけるステップS01とステップS02との間に、ステップS01A、S01B及びS01Cが設けられている。
【0100】
ステップS01Aでは、制御装置1は、基地局2からパラメータを受信する。ステップS01Bでは、制御装置1は、パラメータを用いて、Δ_(max)を計算する。ステップS01Cでは、制御装置1は、中継局3のアンテナ毎の遅延時間Δ_(k)を計算する。ステップS01Bは、変形例1におけるステップS105と同様の処理であり、ステップS01Cは、変形例1におけるステップS016と同様の処理である。
【0101】
図14におけるステップS01、S02、及びS03の処理は、実施形態と同じであるため説明を省略する。変形例2のように、Δ_(max)及びΔ_(k)の計算は、制御回路22の代わりに、計算用のパラメータを基地局2から受信(取得)したネットワーク上の制御装置1が行うことができる。
【0102】
図15では、
図13に示したステップS105及びS106の代わりに、ステップS105A及びステップS106Aが設けられている。ステップS105では、基地局2のΔ_(max)及びΔ_(k)の計算用のパラメータとして、伝搬遅延τ_(UE→R)と、処理遅延τ_(R)と、アンテナ本数N_(R)と、伝搬遅延τ_(R→BS)又は伝搬遅延τ_(BS→R)とが制御装置1へ送信される。
【0103】
ステップS106Aでは、基地局2は、制御装置1からアンテナ毎のΔ_(k)を受信し、中継局3へ送信する。
図15におけるステップS101~S104の処理は、変形例1と同じであるため説明を省略する。変形例2における中継局3の動作は変形例1と同様であるので説明を省略する。変形例2のように、基地局2は、計算用のパラメータを制御装置1へ送り(ステップS105A)、計算結果を制御装置1から受け取り、中継局3に送ってもよい。変形例1及び変形例2に示したように、遅延時間Δ_(k)の算出は、中継局3の制御回路32(コントローラ)によって実行されてもよく、基地局2の制御回路32によって実行されてもよく、制御装置1によって実行されてもよい。すなわち、中継局3は、中継局3と通信する基地局2、又は中継局3の制御装置1(ネットワーク)において算出された遅延量(遅延時間Δ_(k))を取得してもよい。
【0104】
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0105】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは、柔軟に変更可能である。
【0106】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0107】
1・・制御装置
2・・基地局
3・・中継局
4・・端末局
11・・CPU
12・・主記憶装置
13・・外部記憶装置
16・・通信装置
21、31、41・・無線機
22、32、42・・制御回路
100A、100B・・通信システム
311・・送信機
312・・受信機
313・・ベースバンド回路
314・・サーキュレータ
315・・FIRフィルタ