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特許7619998先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20250115BHJP
   A61K 35/745 20150101ALI20250115BHJP
   A61K 35/742 20150101ALI20250115BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250115BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250115BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20250115BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 9/02 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 9/50 20060101ALI20250115BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20250115BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20250115BHJP
   C12N 1/20 20060101ALN20250115BHJP
【FI】
A61K35/747
A61K35/745
A61K35/742
A61P9/00
A61P3/00
A61P43/00 121
A23L33/135
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/16
A61K9/02
A61K9/50
A61K9/08
C12N15/11 Z ZNA
C12N1/20 E
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022202756
(22)【出願日】2022-12-20
(65)【公開番号】P2024064924
(43)【公開日】2024-05-14
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】111140883
(32)【優先日】2022-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【微生物の受託番号】FIRDI  BCRC910828
【微生物の受託番号】FIRDI  BCRC911121
【微生物の受託番号】FIRDI  BCRC911120
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519298765
【氏名又は名称】葡萄王生技股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】陳 勁初
(72)【発明者】
【氏名】陳 炎▲錬▼
(72)【発明者】
【氏名】林 詩偉
(72)【発明者】
【氏名】陳 ▲彦▼博
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲啓▼憲
(72)【発明者】
【氏名】侯 毓欣
(72)【発明者】
【氏名】石 仰慈
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲静▼▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】陳 雅君
(72)【発明者】
【氏名】江 佳琳
(72)【発明者】
【氏名】蔡 侑珊
(72)【発明者】
【氏名】▲呉▼ 姿和
【審査官】六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/087280(WO,A1)
【文献】特表2021-529529(JP,A)
【文献】特開2022-164021(JP,A)
【文献】The FASEB Journal,2019年,Vol. 33, Suppl. 1,pp. 592.12,https://faseb.onlinelibrary.wiley.com/journal/15306860
【文献】BMC Genomics,2018年,Volume 19, Article number: 844,page.1-14,https://doi.org/10.1186/s12864-018-5261-1
【文献】Biology,2021年,Vol.10 No.11,1194, page.1-20,https://doi.org/10.3390/biology10111194
【文献】Frontiers in Nutrition,2021年,Volume 8, Article 748647,page 1-11,doi: 10.3389/fnut.2021.748647
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00-35/768
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム(Clostridium butyricum)菌株GKB7を含み、前記ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1は2018年02月12日に財団法人食品産業発展研究所生物資源保存研究センター(BCRC、台湾新竹食品路331号)に寄託され、寄託番号がBCRC 910828であり、前記ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24は2022年04月06日にBCRCに寄託され、寄託番号が BCRC 911121であり、且つ前記クロストリジウムブチリカム菌株GKB7は2022年04月01日にBCRCに寄託され、寄託番号がBCRC 911120である、先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上するための複合プロバイオティクス組成物であって、
前記先天的に有酸素運動能力が低い対象は、有酸素持久力運動能力で下位20%にランク付けされる第8世代の個体であり、
前記対象はマウスであり、前記対象は水泳訓練に1週間適応している、複合プロバイオティクス組成物。
【請求項2】
前記複合プロバイオティクス組成物は経口組成物である、請求項1に記載の先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上するための複合プロバイオティクス組成物。
【請求項3】
前記複合プロバイオティクス組成物は医薬組成物又は食品組成物である、請求項2に記載の先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上するための複合プロバイオティクス組成物。
【請求項4】
医薬及び食品に許容される担体、賦形剤及び/又は添加剤を更に含む、請求項2に記載の先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上するための複合プロバイオティクス組成物。
【請求項5】
前記複合プロバイオティクス組成物の剤形は、粉剤、錠剤、顆粒剤、坐剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレー又は座剤を含む、請求項1に記載の先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上するための複合プロバイオティクス組成物。
【請求項6】
前記先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力に対する向上は、有酸素運動後の血清乳酸濃度及び血清尿素窒素濃度を低下させること、内臓脂肪割合を低下させること及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を向上させることを含む、請求項1に記載の先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上するための複合プロバイオティクス組成物。
【請求項7】
有効投与量の複合プロバイオティクスを含む経口組成物を先天的に有酸素運動能力が低い対象に少なくとも28日間連続投与することを備え、且つ前記複合プロバイオティクスは、ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1(BCRC 910828)、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24 (BCRC 911121)及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7 (BCRC 911120)を有効成分とする、先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上する組成物を調製するための複合プロバイオティクスの使用であって、
前記先天的に有酸素運動能力が低い対象は、有酸素運動能力の下位20%にランク付けされる第8世代の個体であり、
前記対象はマウスであり、前記対象は水泳訓練に1週間適応している、使用。
【請求項8】
前記先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力に対する向上は、有酸素運動後の血清乳酸及び血清尿素窒素を低下させること、内臓脂肪を低下させること及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を向上させることを含む、請求項7に記載の先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上する組成物を調製するための複合プロバイオティクスの使用。
【請求項9】
記複合プロバイオティクスの前記対象に投与される前記有効投与量は10.5mg/kg/日間~63mg/kg/日間である、請求項7に記載の先天的に有酸素運動能力が低い対象の運動持久力を向上する組成物を調製するための複合プロバイオティクスの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロバイオティクス組成物及びその使用に関し、特に、有酸素運動後の血清乳酸及び血清尿素窒素を低下させ、内臓脂肪を低下させ及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を向上させる先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
心肺フィットネス、筋肉フィットネス、柔軟性、年齢、性別、遺伝、体の体型、薬物、環境等の因子は、いずれも個体の運動パフォーマンスに影響を及ぼす。トレーニングや食事のコントロール等の「後天的」な努力で、全体的な運動能力を高めることができる。しかしながら、研究によると、同じ条件(例えば、性別、年齢、トレーニング内容等)でも、運動能力のパフォーマンスは、依然として「先天性体質」の影響を受ける。
【0003】
同じ母体からの同じ年齢で同じ性別の実験用マウス群の中で、この同じバッチのマウスの運動パフォーマンスは、正規分布ではなく、線形分布であることが分かった。つまり、先天的に運動能力の強いマウスもいれば、先天的に運動能力の弱いマウスもいる。そして、運動能力が最も強い者と最も弱い者との差が非常に大きい。先天的に有酸素運動能力の弱い者の体質を改善または調整することができれば、先天的に有酸素運動能力の強い者との後天的な運動訓練の成果の違いを小さくすることができる。
【0004】
ある研究によると、先天的に有酸素運動能力の弱い者は、その運動パフォーマンスが一般の同群よりも劣っているだけでなく、その生理組成と代謝に関する数値も劣っている。例えば、内臓脂肪[offal fat、例えば精巣上体脂肪パッド(epididymal fat pad)]の割合が高く、血糖値が高く、赤筋(red muscle)と白筋(white muscle)の比率が低い。例えば、自主ローラー走行運動の意志が高い又は低いマウスを、人間によって選択的に繁殖させた結果、これら2種類の先天的に運動能力に差がある動物は、健康、老化、寿命の延長、代謝症候群や心血管合併症等の慢性疾患のリスク因子に対する感受性が大きく異なることが分かった。
【0005】
先天的に運動能力の低い群は、生理、心理、行為と代謝疾患においての感受性が先天的に運動能力の高い群よりも著しく高い(Thyfault & Morris、2017)。従って、先天性体質を改善又は調整することができれば、運動パフォーマンスを向上させることができるだけでなく、代謝関連等の生理状態を改善し、病気の発生を効果的に予防することも期待できる。
【0006】
プロバイオティクス(Probiotics)は、一般的に、人間の健康に有益な細菌と定義されており、人体の腸管内で繁殖することができ、病原性がない。通常、プロバイオティクスは、体質を調節し、人体の一部の代謝経路を変えて、全体の胃腸道、代謝能力等の機能を改善することができる。
【0007】
近年、多くの研究により、プロバイオティクスが運動パフォーマンスを向上させる可能性があると提案されている。ある研究では、ラクトバチルスプランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)は一般のマウスの運動持久力のパフォーマンスの向上と運動後の血清における乳酸の蓄積の低減に役立つことが分かった。また、研究によって、リギラクトバチルスサリバリウス(Ligilactobacillus salivarius)は、一般のマウス運動後の血清における尿素窒素(blood urea nitrogen)、クレアチンキナーゼ(creatine kinase)等を低下させ、肝臓と筋肉内のグリコーゲン(glycogen)を向上させ、運動後の生理的回復時間を短縮できることが発現された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、現在の研究では、プロバイオティクスが一般の群(すなわち有酸素運動能力が一般の群)の運動パフォーマンスを高める評価のみを対象としており、「先天因子」の影響による運動成果を考慮しないため、先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善する複合プロバイオティクス組成物とその用途の開発が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の一態様は、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム(Clostridium butyricum)菌株GKB7を含む先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物を提供する。
【0010】
次に、本発明の別の態様は、有効投与量の複合プロバイオティクスを含む経口組成物を被験者に一定期間連続投与することを備え、且つこの複合プロバイオティクスが上記菌株を有効成分とする先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善する組成物を調製するための複合プロバイオティクスの使用を提供する。
【0011】
本発明の上記態様によれば、先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物を提出する。一実施例において、この先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物は、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム(Clostridium butyricum)菌株GKB7を含み、ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1は2018年02月12日に財団法人食品産業発展研究所生物資源保存研究センター(BCRC、台湾新竹食品路331号)に寄託され、寄託番号がBCRC 910828であり、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24は2022年04月06日にBCRCに寄託され、寄託番号がBCRC911121であり、且つクロストリジウムブチリカム菌株GKB7は2022年04月01日にBCRCに寄託され、寄託番号がBCRC 911120である。
【0012】
上記実施例において、前記複合プロバイオティクス組成物は、例えば経口組成物であってよく、例えば医薬組成物又は食品組成物であってよい。上記例示において、前記複合プロバイオティクス組成物は、医薬及び食品に許容される担体、賦形剤及び/又は添加剤を更に含む。
【0013】
上記実施例において、前記複合プロバイオティクス組成物の剤形は、例えば、粉剤、錠剤、顆粒剤、坐剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレー又は座剤を含んでよい。
【0014】
上記実施例において、前記先天的な有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスに対する改善は、酸素運動後の血清乳酸及び血清尿素窒素を低下させること、内臓脂肪を低下させること及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を向上させることを含む。
【0015】
本発明の別の態様によれば、有効投与量の複合プロバイオティクスを含む経口組成物を被験者に少なくとも28日間連続投与することを備え、且つこの複合プロバイオティクスがラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1(BCRC 910828)、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24 (BCRC 911121)及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7 (BCRC 911120)を有効成分とする先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善する組成物を調製するための複合プロバイオティクスの使用を提出する。
【0016】
上記実施例において、前記被験者は、例えば成人であってよく、且つ前記複合プロバイオティクスは、この被験者に対する有効投与量が例えば50mg/60kg体重/日間~300mg/60kg体重/日間であってよい。
【0017】
上記実施例において、前記被験者は、例えばマウスであってよく、且つ前記複合プロバイオティクスは、この被験者に対する有効投与量が例えば10.5mg/20g体重/日間~63mg/20g体重/日間であってよい。
(発明の効果)
【0018】
ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7を含む本発明の上記の先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物及びその使用を適用し、先天的に有酸素運動能力が低い被験者に一定期間連続投与して、効果的に有酸素運動後の血清乳酸及び血清尿素窒素を低下させ、内臓脂肪を低下させ及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を向上させ、更に有効成分としてさまざまな組成物の調製に用いられることができる。
【0019】
理解すべきなのは、前述の要約説明と以下の詳細説明は単なる例示であり、保護を求める発明のさらなる説明を意図している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
本発明の上記の及び他の目的、特徴、メリット及び実施例をより分かりやすくするために、添付図面の説明は以下の通りである。
図1】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの前肢の握力を示す棒グラフである。
図2】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの負荷水泳力尽き時間を示す棒グラフである。
図3】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの経口ブドウ糖負荷試験を示す棒グラフである。
図4】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの運動後の血清乳酸濃度を示す棒グラフである。
図5】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの運動後且つ休息後の血清乳酸濃度を示す棒グラフである。
図6】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの運動後且つ休息後の血清尿素窒素濃度を示す棒グラフである。
図7】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの肝臓グリコーゲン濃度を示す棒グラフである。
図8】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの筋肉グリコーゲン濃度を示す棒グラフである。
図9】本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの精巣上体脂肪重量を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
引用文献による用語に対する定義又は使用法がここでの当該用語に対する定義と矛盾するか又は反対である場合、引用文献による用語に対する定義の代わりに、ここでの用語に対する定義は適用される。次に、上下文で別に明確に指示されない限り、単数形の用語には複数形の用語が含まれてよく、複数形の用語には単数形の用語も含まれてよい。
【0022】
前記のように、本発明は、先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物及びその使用を提供して、被験者に一定期間連続投与して、効果的に有酸素運動後の血清乳酸を低下させ、有酸素運動後の血清尿素窒素を低下させ、肝臓のグリコーゲン濃度を向上させ、筋肉のグリコーゲン濃度を向上させ及び/又は内臓脂肪を低下させることができる。
【0023】
一実施例において、ここで「複合プロバイオティクス」と呼ばれるのは、異なる種又は異なる属を含むプロバイオティクスを指してもよく、例えば、ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム(Clostridium butyricum)菌株GKB7を含み、ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1は2018年02月12日に財団法人食品産業発展研究所生物資源保存研究センター(BCRC、台湾新竹食品路331号)に寄託され、寄託番号がBCRC 910828であり、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24は2022年04月06日にBCRCに寄託され、寄託番号がBCRC 911121であり、且つクロストリジウムブチリカム菌株GKB7は2022年04月01日にBCRCに寄託され、寄託番号がBCRC 911120であり。注意すべきなのは、本発明は、特定の菌株の複合プロバイオティクスを選択する必要があり、これだけで、得られた複合プロバイオティクス組成物が先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスに対する改善等の効果を発揮することができる。複合プロバイオティクスは、上記特定の菌株から選ばれたものではなく、又は菌株を増減し又は一部又は全部同種の他の菌株に変更すれば、先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスに対する改善が得られる効果は予期できない。
【0024】
ここで「先天的に有酸素運動能力が低い者」と呼ばれるのは、Koch及びBrittion(2001)の発表した文献方法に従って、マウスの水泳持久力時間を高(high intrinsic;H)又は低(low intrinsic;L)有酸素持久力運動能力(aerobic exercise capacity;AEC)のスクリーニング指標とする。一実施例において、前記群における有酸素運動能力が下位20%の雄個体と雌個体を選択して、1回交配させて次世代の繁殖を行う。交配は、少なくとも1回を行ってもよいが、5回(含む)以上交配させる群が安定的であり、また8回(含む)以上交配させる群がより安定的である。一具体例において、第8世代交配した群を先天的に有酸素運動能力が低い(L-AEC)者として、後で運動パフォーマンスについて評価する。
【0025】
ここで「運動パフォーマンス」と呼ばれる評価項目は、有酸素運動後の血清乳酸濃度及び血清尿素窒素濃度、内臓脂肪割合及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を含んでよいが、これらに限定されない。一般的に、L-AEC者の運動パフォーマンスは、有酸素運動後の血清乳酸濃度及び血清尿素窒素濃度を向上させ、内臓脂肪を向上させ及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を低下させことを含んでよいが、これらに限定されない。従って、一実施例において、有効投与量の複合プロバイオティクスを含む経口組成物をL-AEC被験者に少なくとも28日間連続投与して、L-AEC者の運動パフォーマンスを著しく改善でき、有酸素運動後の血清乳酸を低下させ、有酸素運動後の血清尿素窒素を低下させ、肝臓のグリコーゲン濃度を向上させ、筋肉のグリコーゲン濃度を向上させ及び/又は内臓脂肪を低下させることを含むが、これらに限定されない。他の実施例において、上記複合プロバイオティクスにより改善されたL-AEC者の運動パフォーマンスは、前肢の握力を向上させ、有酸素運動パフォーマンスを向上させ、有酸素運動力尽き時間を遅らせ(負荷水泳力尽き時間の延長とも言われる)、グルコース代謝能力を向上させる(グルコース耐性の向上とも言われる)こと等を更に選択的に含んでよい。
【0026】
一実施例において、上記複合プロバイオティクスの各菌株の濃度は、特に制限されない。一例において、ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1(BCRC 910828)、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24 (BCRC 911121)及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7 (BCRC 911120)の重量(mg)比又は細菌数(CFU)比は、例えば、1:1:1であってよいが、他の例において、上記ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1(BCRC 910828)、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24 (BCRC 911121)及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7 (BCRC 911120)の重量(mg)比又は細菌数(CFU)比は、1:1:1以外の割合、例えば1:1:(>1~4)を採用してよい。
【0027】
適用時、複合プロバイオティクス組成物は、例えば、医薬組成物又は食品組成物のような経口組成物であってよい。前記複合プロバイオティクスの使用態様は、発酵液全体、菌泥(セルペレットとも言われ、cell pellet)、上澄み液及び凍結乾燥粉末を含んでよいが、これらに限定されない。上記実施例において、前記発酵液全体は、菌体と培養液を含む生成物を指す。前記菌泥は、発酵液全体から上澄み液を取り除いた後の生成物を指す。前記上澄み液は、発酵液全体から菌泥を取り除いた後の生成物を指す。前記凍結乾燥粉末は、発酵液全体、菌泥及び/又は上澄み液で製造される凍結乾燥粉末を指す。
【0028】
前記医薬組成物に適用される例は、医薬品を含んでよいが、これに限定されない。複合プロバイオティクスが食品組成物に適用される例は、一般食品、保健用食品、飲料、栄養補助食品、乳製品又は飼料等を含んでよいが、これらに限定されない。前記経口組成物の例において、複合プロバイオティクス組成物は、医薬及び食品に許容される担体、賦形剤及び/又は添加剤を更に選択的に含んでよい。他の例において、複合プロバイオティクス組成物の剤形は、粉剤、錠剤、顆粒剤、坐剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレー又は座剤を含んでよいが、これらに限定されない。
【0029】
上記先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善する組成物を調製するための用途として上記複合プロバイオティクスを使用する場合、有効投与量の複合プロバイオティクスを含む経口組成物を被験者に一定期間連続投与することができる。前記有効投与量は、被験者によって決められ、特に制限されない。例として、被験者が成人である場合、複合プロバイオティクスの成人への有効投与量は、例えば、50mg/60kg体重/日間~300mg/60kg体重/日間であってよいが、75mg/60kg体重/日間~200mg/60kg体重/日間であることが好ましく、また、約100mg/60kg体重/日間であることがより好ましい。別の例において、被験者がマウスである場合、複合プロバイオティクスのこの被験者への有効投与量は、例えば、10.5mg/kg/日間~63mg/kg/日間であってよいが、15.75mg/kg/日間~42mg/kg/日間であることが好ましく、また、約21mg/kg/日間であることがより好ましい。他の例において、前記投与期間は、例えば、連続の少なくとも28日間であってよく、又はより長くても短くてもよい。
【0030】
理解すべきなのは、下記特定の菌株、特定の配合、特定の使用投与量、特定の検出形態、観点、例示及び実施例は、単に例を挙げて説明するものであり、本発明の制限条件ではない。本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、本願に必要な技術的特性を簡単に判断ことができ、本発明に対して多様の変更や修飾を加えることができ、異なる用途及び条件に適用される。

実施例1
1.1 菌種源
【0031】
この実施例に使用される菌種は、特定の組合せのプロバイオティクスを含み、中にラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム(Clostridium butyricum)菌株GKB7が含まれる。ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1は2018年02月12日に財団法人食品産業発展研究所生物資源保存研究センター(BCRC、台湾新竹食品路331号)に寄託され、寄託番号がBCRC 910828であり、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24は2022年04月06日にBCRCに寄託され、寄託番号がBCRC 911121であり、且つクロストリジウムブチリカム菌株GKB7は2022年04月01日にBCRCに寄託され、寄託番号がBCRC 911120である。
【0032】
上記菌株GKLC1、菌株GKK24及び菌株GKB7は何れも人間の体から分離されたものである。例として、菌株GKLC1は母乳から分離されたものである。菌株GKK24は乳児の糞便から分離され、菌株GKB7は糞便から分離されたものである。菌株GKK24及び菌株GKB7のDNAを精製した後、菌株GKK24及び菌株GKB7の16s rRNA遺伝子の核酸断片配列を得るように、遺伝子の配列決定を行い、それぞれが配列識別番号(SEQ ID NO):1及びSEQ ID NO:2に示す通りであった。配列アラインメント後、菌株GKK24はビフィドバクテリウムラクティスであると同定され、菌株GKB7はクロストリジウムブチリカムであると同定された。上記のDNAの精製、遺伝子配列決定及び配列アラインメントは従来の方法で行われ、しかも後の菌株GKK24が先天的な有酸素運動能力を改善するための評価に影響を与えないので、説明を省略する。ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24は、グラム染色陽性、抗酸染色陰性、偏性嫌気性、非運動性であり、芽胞が無く、莢膜と鞭毛を持たない。クロストリジウムブチリカム菌株GKB7は、グラム染色陽性、偏性嫌気性、運動性であり、芽胞と鞭毛を持つ。
【0033】
いくつかの例において、上記ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7は、それぞれ固体培地に接種されて菌種を活性化した。好ましい具体例において、上記固体培地は市販のMRS(deMan、Rogosa and Sharpe)寒天又はRCM(Reinforced Clostridial Medium)寒天である。コロニー(colony)が生成した後、単一のコロニー(single colony)を取り液体培地に入れて液体培養を行った。好ましい具体例において、菌株の培養温度が25℃~40℃である。好ましい具体例において、液体培養の時間は16~24時間である。好ましい具体例において、液体培地は、MRS液体培地又はRCM液体培地である。液体培養完成後に発酵培養を行った。好ましい具体例において、発酵培地の配合処方は、表1に示されている。
【0034】
【表1】

1.2 凍結乾燥粉末の調製
【0035】
上記菌株GKLC1、菌株GKK24及び菌株GKB7は、それぞれ発酵培養により生長が終わった後、菌体と培養液を含む発酵液全体を収集し、1000rpm~15000rpmの速度で遠心分離を行って菌泥が得られた。得られた菌泥と保護剤(即ち、6重量%~50重量%の脱脂粉乳)を混合した後で凍結乾燥を行った。前記凍結乾燥は、勾配設定モードで事前凍結を行って、順次に20℃~0℃で1~4時間保存して、次に0℃~-20℃で4~8時間保存してから、-196℃~-30℃で8時間を超えるように保存した。好ましい実施態様において、凍結乾燥の温度と時間は、-40℃で2時間保存して、次に-20℃で2時間保存して、更に0℃で2時間保存して、最後20℃で約10時間以上保存した。それから、上記得られた凍結乾燥粉末を低温で保存した。別の好ましい具体例において、低温保存の温度は-30℃~4℃である。保存される凍結乾燥粉末は、以下の動物実験において実験動物に投与される複合プロバイオティクス組成物の原料として使用されてよい。

1.3 試験動物
【0036】
以下の実施例では、LASCOバイオテクノロジー会社から購入したそれぞれ重量が約35グラムである8週齢のICR品種の先天的に有酸素運動能力が低い雄マウスを共に24匹選択した。マウスは、ケージあたり3匹となるように標準飼育ケージに収容され、マウス室について、平均温度が約22±2℃であり、平均湿度が65±5%であり、12時間の昼光と12時間の暗闇にし、十分な飲料水と標準飼料を供給した。すべての動物実験プロセスは、国立体育大学実験動物介護及び使用委員会(IACUC)によって審査され承認され、承認番号IACUC-11011が取得された。試験動物は、体重に応じてS字型に配列させた後、対照群1群と実験群3群に分け、各群6匹にした。

1.4 先天的に有酸素運動能力が低いマウスの交配
【0037】
Koch及びBrittion(2001)によって発表された文献方法に従って、マウスに対して水泳持久力時間を高(high intrinsic;H)又は低(low intrinsic;L)有酸素持久力運動能力(aerobic exercise capacity;AEC)のスクリーニング指標とした。前記群における有酸素運動能力が下位20%の雄個体と雌個体を選択して、1回交配させて次世代の繁殖を行った。共に8回交配させ、第8世代の群を先天的に有酸素運動能力が低い(L-AEC)群とした。

1.5 先天的に有酸素運動能力が低いマウスのスクリーニング方法
【0038】
マウスが1週間適応した後、衰弱性水泳耐久試験を行った。試験において、マウス個体体重5%の鉛シートをマウス尾の付け根の位置に固定し、水深40センチ、面直径45センチのバケツに入れ、水温を28±1℃に制御して、マウスを衰弱するまで泳がせた後、溺れないように直ちに救出した。本試験において、水泳衰弱は、マウスがまっすぐに沈んでしまう、又は水中に沈んでから7秒間以内に自力で水面に戻って換気できないと定義した。衰弱性水泳持久力試験を共に2回行い、毎回72時間の間隔でマウスに体力を回復させ、個体の2回の水泳結果からより良い成績を取って他のマウスとの比較に用いられた。マウスが衰弱まで水泳した時間をその有酸素持久力運動のパフォーマンスとした。有酸素持久力運動パフォーマンスが悪いほど、その衰弱まで水泳した時間は短くなった。

1.6 試験設計
【0039】
試験動物に対して経口形態で毎日に滅菌水(対照群)又は実施例1のプロバイオティクス組成物(実験群)を4週間(即ち28日間)連続投与した。実験群のマウスに投与された複合プロバイオティクスの有効投与量は21mg/kg/日間(成人に対する有効投与量100mg/60kg体重/日間に相当する)である。4週間の摂取後、前肢の握力(forelimb grip strength、単位:g)、負荷水泳力尽き時間(単位:分間)、経口ブドウ糖負荷試験の血糖濃度(mg/dL)、運動後の血清乳酸濃度(単位:mmol/L)、運動後且つ休息後の血清乳酸濃度(単位:mmol/L)、運動後且つ休息後の血清尿素窒素濃度(単位:mg/dL)、肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度(mg/g肝臓又はmg/g筋肉)、精巣上体脂肪重量(内臓脂肪組織の割合を表してよい)の分析を行った。

1.7 データ統計
【0040】
本文に記載の数値は、平均値±標準偏差値(mean±SD)で示され、一元配置分散分析(One-way ANOVA)及び市販ソフトウェアで分析され、p<0.05で判断すると、統計的に有意な差異性を有することを示す。アスタリスク**はp<0.05を表し、アスタリスク***はp<0.005を表した。

実施例2、実施例1の複合プロバイオティクスによるL-AEC者の運動パフォーマンスの改善の評価
2.1前肢の握力(forelimb grip strength)の評価
【0041】
この実施例は、第29日に実施例1のプロバイオティクス組成物を投与して30分間後に前肢の握力に対するテストを行った。まず、マウスの尾の付け根を掴んで垂直に下げ、その両前肢がAIKOH電子式プッシュプルゲージ(Model-RX-5、Aikoh Engineering、Nagoya、Japan)の接続されたクロスバー(直径2mm、長さ7.5cm)を掴むようにした後、クロスバーから前肢が離れるようにマウスの尾を少し後方に引っ張り、プッシュプルゲージにより途中のマウスの前肢の握力の最大値を記録して、握力の評価指標とした。
【0042】
図1に参照されるのは、本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの前肢の握力(g)を示す棒グラフである。
【0043】
図1に示すように、対照群のマウスの前肢の握力は約105gであり、菌株GKK24経口投与組のマウスの前肢の握力は約130gであり、菌株GKLC1経口投与組のマウスの前肢の握力は約130gであり、菌株GKB7経口投与組のマウスの前肢の握力は約134gであり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、確実にL-AECマウスの前肢の握力が有意に改善されることが実証された。

2.2 運動持久力-負荷水泳力尽き時間の評価
【0044】
前肢の握力試験完了後、マウス体重5%の鉛シートをマウスの尾の付け根に固定して、負荷水泳力尽き試験をマウスに行わせた。負荷水泳力尽き試験の1週間前に直径28cm、水深25cm、水温27±1℃の環境で動物に水泳適応を行わせた。1匹のマウスが水泳するように試験を行い、マウスをバケツに入れて、試験動物に強制的に泳ぐ動作をさせた。実験の全過程中、マウスの四肢を絶えずに運動させ、水面に浮かんで四肢が動かなくなる場合、その近くで撹拌棒でかき回した。運動持久力(負荷水泳で力尽き)パフォーマンスは、(水泳してから)マウスの頭が8秒間浮上することなく完全に水中に沈むまで記録された時間で示された。
【0045】
図2に参照されるのは、本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの負荷水泳力尽き時間(分間)を示す棒グラフである。
【0046】
図2に示すように、対照群のマウスの負荷水泳力尽き時間は約0.65分間であり、菌株GKK24経口投与組のマウスの負荷水泳力尽き時間は約1.20分間であり、菌株GKLC1経口投与組のマウスの負荷水泳力尽き時間は約0.94分間であり、菌株GKB7経口投与組のマウスの負荷水泳力尽き時間は約1.15分間であり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、何れもL-AECマウスの運動持久力を有意に改善できることが実証された。

2.3 経口ブドウ糖負荷試験(Oral Glucose Tolerance Test;OGTT)
【0047】
経口ブドウ糖負荷試験により、本特許の菌株が4週間投与された後の有酸素運動が弱い血統マウスのグルコース代謝能力を評価した。まず25%のグルコース溶液を配置してから、2.5g/kg BWの投与量で12時間断食したマウスに投与し、0、15、30、60、120分間の時点でロシュ血糖計(AccuChek(登録商標)、Germany)によってマウスの各時点での血糖値を分析した。
【0048】
図3に参照されるのは、本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの経口ブドウ糖負荷試験を示す棒グラフである。
【0049】
図3に示すように、グルコースが経口投与されてから、菌株GKK24、菌株GKLC1、菌株GKB7が経口投与された後のマウスは、その血糖変化(mg/dL、縦軸)が何れも対照群のマウスよりも低く、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、L-AECマウスのグルコース耐性の改善に確実に寄与することが実証された。

2.4 運動後、休息後の血清乳酸濃度の評価
【0050】
各組のマウスが無負荷で10分間水泳した後、及び20分間休息した後、その血液サンプルをそれぞれ採取し、1500xg、4℃で10分間遠心分離した後、全自動生化学分析装置(Hitachi 7060、Hitachi、Tokyo、Japan)により血清乳酸濃度を分析した。
【0051】
図4に参照されるのは、本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの運動後の血清乳酸濃度(mmol/L)を示す棒グラフである。
【0052】
マウスの運動後の血清乳酸濃度は図4に示すようなものである。対照群のマウスの血清乳酸濃度は約6.55mmol/Lであり、菌株GKK24経口投与組のマウスの血清乳酸濃度は約5.15mmol/Lであり、菌株GKLC1経口投与組のマウスの血清乳酸濃度は約4.81mmol/Lであり、菌株GKB7経口投与組のマウスの血清乳酸濃度は約5.04mmol/Lであり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、何れも運動後の血清乳酸の蓄積を有意に低下させることができることが実証された。
【0053】
図5に参照されるのは、本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの運動後且つ休息後の血清乳酸濃度(mmol/L)を示す棒グラフである。
【0054】
図5に示すように、マウスの運動後且つ休息後、対照群のマウスの血清乳酸濃度は約5.59mmol/Lであり、菌株GKK24経口投与組のマウスの血清乳酸濃度は約4.10mmol/Lであり、菌株GKLC1経口投与組のマウスの血清乳酸濃度は約3.60mmol/Lであり、菌株GKB7経口投与組のマウスの血清乳酸濃度は約3.87mmol/Lであり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、何れも運動後休息時の血清乳酸の除去効果を有意に向上させることができることが実証された。

2.5 運動後且つ休息後の血清尿素窒素濃度の評価
【0055】
各組のマウスが無負荷で90分間水泳した後、かつ60分間休息した後、その血液サンプルをそれぞれ採取し、1500xg、4℃で10分間遠心分離した後、全自動生化学分析装置(Hitachi 7060、Hitachi、Tokyo、Japan)により血清尿素窒素濃度を分析した。
【0056】
図6に参照されるのは、本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの運動後且つ休息後の血清尿素窒素濃度(mg/dL)を示す棒グラフである。
【0057】
図6に示すように、対照群のマウスの血清尿素窒素濃度は約39.10mg/dLであり、菌株GKK24経口投与組のマウスの血清尿素窒素濃度は約30.15mg/dLであり、菌株GKLC1経口投与組のマウスの血清尿素窒素濃度は約30.85mg/dLであり、菌株GKB7経口投与組のマウスの血清尿素窒素濃度は約30.70mg/dLであり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、何れも運動後休息時の血清尿素窒素濃度を有意に低下させることができることが実証された。

2.6 肝臓及び筋肉組織におけるグリコーゲン濃度の評価
【0058】
試験完了後、マウスの肝臓及び筋肉組織を取り、グリコーゲン濃度の分析を行った。0.5mlの10%氷過塩素酸で100mgの肝臓又は筋肉組織を均質化し、さらに、15,000xg、4℃で15分間遠心分離させた後、30μlの上澄み液を取り96ウェルプレートに加えて200μlのヨウ素―ヨウ化カリウム(iodine-potassium iodide reagent)と混合して、ヨウ素をグリコーゲンと10分間結合させて褐色を呈するようにし、ELISA(Tecan Infinite M200、Tecan Austria、Salzburg、Austria)により検出して吸光波長が460nmであった。Sigmaから購入した標準グリコーゲン(glycogen)を検量線として組織におけるグリコーゲン濃度(mg/g tissue)を換算して検出した。
【0059】
図7及び図8に参照されるのは、それぞれ本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウス肝臓(図7)及び筋肉(図8)のグリコーゲン濃度(mg/g liver)を示す棒グラフである。
【0060】
図7に示すように、対照群のマウス肝臓におけるグリコーゲン濃度は約7.36mg/g liverであり、菌株GKK24経口投与組のマウス肝臓におけるグリコーゲン濃度は約10.77mg/g liverであり、菌株GKLC1経口投与組のマウス肝臓におけるグリコーゲン濃度は約13.57mg/g肝臓であり、菌株GKB7経口投与組のマウス肝臓におけるグリコーゲン濃度は約14.31mg/g肝臓であり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、何れも肝臓におけるグリコーゲン濃度を有意に向上させることができることが実証された。
【0061】
図8に示すように、対照群のマウス筋肉におけるグリコーゲン濃度は約1.07mg/g筋肉であり、菌株GKK24経口投与組のマウス筋肉におけるグリコーゲン濃度は約2.21mg/g筋肉であり、菌株GKLC1経口投与組のマウス筋肉におけるグリコーゲン濃度は約2.24mg/g筋肉であり、菌株GKB7経口投与組のマウス筋肉におけるグリコーゲン濃度は約2.24mg/g筋肉であり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、何れも筋肉におけるグリコーゲン濃度を有意に向上させることができることが実証された。

2.7 精巣上体脂肪重量の評価
【0062】
試験完了後、マウスの精巣上体を取り、その重量を測量し、精巣上体脂肪組織の重量を記録して、内臓脂肪組織の割合を表してよい。
【0063】
図9に参照されるのは、本発明の一実施例による対照群及び実験群のマウスの精巣上体脂肪重量(g)を示す棒グラフである。
【0064】
図9に示すように、対照群のマウスの精巣上体脂肪重量は約0.42gであり、菌株GKK24経口投与組のマウスの精巣上体脂肪重量は約0.32gであり、菌株GKLC1経口投与組のマウスの精巣上体脂肪重量は約0.30gであり、菌株GKB7経口投与組のマウスの精巣上体脂肪重量は約0.31gであり、本発明のプロバイオティクス菌株をL-AECマウスに4週間連続投与した後、何れも内臓脂肪組織の割合を有意に低下させることができることが実証された。
【0065】
要するに、本発明において、特定の菌株、特定の配合処方、特定の使用投与量、特定の検出形態、又は特定の評価方法は、単に例を挙げて先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物及びその使用を説明するものである。しかしながら、当業者であれば、本発明の精神と範囲から逸脱しない限り、ラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7の2つ又は3つを併用し、他の菌株、他の配合処方、他の使用投与量、他の検出形態、又は他の評価方法も先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物及びその使用に適用でき、上記のものに限定されない。例として、複合プロバイオティクス組成物は、例えば、医薬組成物又は食品組成物であってよく、医薬及び食品に許容される担体、賦形剤及び/又は添加剤を選択的に含んでよく、粉剤、錠剤、顆粒剤、坐剤、マイクロカプセル、アンプル、液体スプレー又は座剤等の剤形に製造してよい。
【0066】
上記実施例によれば、本発明の先天的に有酸素運動能力が低い者の運動パフォーマンスを改善するための複合プロバイオティクス組成物は、以下のメリットがあり、この複合プロバイオティクス組成物はラクトバチルスラムノサス菌株GKLC1、ビフィドバクテリウムラクティス菌株GKK24及びクロストリジウムブチリカム菌株GKB7を含み、先天的に有酸素運動能力が低い被験者に一定期間連続投与された後、効果的に有酸素運動後の血清乳酸及び血清尿素窒素を低下させ、内臓脂肪を低下させ及び/又は肝臓及び筋肉のグリコーゲン濃度を向上させることができ、将来、有効成分として様々な組成物の調製に用いられることができる。
【0067】
本発明を複数の特定の実施例で上記の通り開示したが、他の実施例も実現され得る。従って、本発明の付記の請求項の精神及び範囲は、ここで含まれる実施例の記載のものに限定されない。
【符号の説明】
【0068】
無し
[生物材料の寄託]
国内寄託情報(寄託組織、日付、番号の順に注記されたい)
ラクトバチルスラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)菌株GKLC1は、台湾新竹食品路331号の中華民国財団法人食品産業発展研究所生物資源保存研究センターに寄託され、寄託日が2018年02月12日であり、寄託番号がBCRC 910828であり、2018年02月26日に前記菌株の生存は確認された。
ビフィドバクテリウムラクティス(Bifidobacterium lactis)菌株GKK24は、台湾新竹食品路331号の中華民国財団法人食品産業発展研究所生物資源保存研究センターに寄託され、寄託日が2022年04月06日であり、寄託番号がBCRC 911121であり、2022年04月14日に前記菌株の生存は確認された。
クロストリジウムブチリカム(Clostridium butyricum)菌株GKB7は、台湾新竹食品路331号の中華民国財団法人食品産業発展研究所生物資源保存研究センターに寄託され、寄託日が2022年04月01日であり、寄託番号がBCRC 911120であり、2022年04月15日に前記菌株の生存は確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
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