(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】工業的噴霧用再帰反射性水性擬塑性ゲル組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/14 20060101AFI20250115BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20250115BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20250115BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20250115BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20250115BHJP
C09D 11/00 20140101ALI20250115BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20250115BHJP
B05D 5/06 20060101ALI20250115BHJP
B05D 1/36 20060101ALI20250115BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20250115BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C08L101/14
C09D201/00
C09D7/61
C09D5/00 Z
C09D7/65
C09D11/00
C08K3/40
B05D5/06 B
B05D1/36 Z
B05D1/02 Z
B05D7/24 303B
B05D7/24 303H
B05D7/24 303A
B05D7/24 301K
B05D7/24 301E
B05D7/24 302P
B05D7/24 302X
B05D7/24 302H
(21)【出願番号】P 2022524583
(86)(22)【出願日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 EP2020082283
(87)【国際公開番号】W WO2021099270
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-08-17
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】522166275
【氏名又は名称】インク インベント アイピー ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】INK INVENT IP B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】クノート, ヤックス アルテュール
(72)【発明者】
【氏名】メイネン, ポール ヴィレム
(72)【発明者】
【氏名】ケレス, ハラルド ポール
(72)【発明者】
【氏名】ミュイス, フィリップス ヤコブ
(72)【発明者】
【氏名】クノート, メンノ アルテュール
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-534576(JP,A)
【文献】特開2017-101194(JP,A)
【文献】特開2011-206655(JP,A)
【文献】特開2003-213213(JP,A)
【文献】特開2005-105222(JP,A)
【文献】特開2017-141320(JP,A)
【文献】米国特許第5516227(US,A)
【文献】国際公開第2001/016223(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
C09D 1/00- 13/00
C09D 101/00-201/10
B05D 1/00- 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01s
-1の剪断速度で5~200Pa・sである第1の粘度η
1、および100s
-1の剪断速度で第1の粘度よりも10~1000倍低い第2の粘度η
2を有する水性擬塑性ゲル組成物であって、前記水性擬塑性ゲルが、前記組成物の総重量に基づいて
・ 15~60重量%の水;
・ 20~60重量%の球状ガラスビーズであって、レーザー回折で測定したメジアン粒径D50が5~150μmであり、589nmの波長λで測定した屈折率が1.8~2.8であり、任意選択的に、前記球状ガラスビーズの少なくとも一部が、光反射性コーティングで半球状にコーティングされている、球状ガラスビーズ;
・ 0.15~1.5重量%の増粘剤;および
・ 0~50重量%の1つ以上のさらなる成分
からなり、粘度は、25℃の温度で、プレート-プレート形状および0.5mmのギャップ距離を有するレオメーターで測定される、水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項2】
0.1s
-1の剪断速度で第3の粘度η
3を有する、請求項1に記載の水性擬塑性ゲル組成物であって、
前記水性擬塑性ゲル組成物が、連続工程:
(i)前記水性擬塑性ゲル組成物を0.1s
-1の剪断速度に少なくとも30秒間供し、前記第3の粘度η
3を測定する工程;
(ii)前記水性擬塑性ゲル組成物を100s
-1の剪断速度に30秒間供する工程;
(iii)剪断速度を0.1s
-1に低下させる工程;および
(iv)前記水性擬塑性ゲル組成物の粘度を時間の関数として測定する工程
を含む方法の工程(iii)における剪断速度の低下から10秒以
内に、第3の粘度η
3の値の少なくとも20
%を回復し、粘度は、25℃の温度で、プレート-プレート形状および0.5mmのギャップ距離を有するレオメーターで測定される、水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項3】
25℃の温度で、10~0.1Hzの振動周波数において、プレート-プレート形状および0.5mmの間隙距離を有するレオメーターで測定されるtan(δ)値が、1未
満である、請求項1または2に記載の水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項4】
前記球状ガラスビーズが、589nmの波長λで測定して、2.0~2.
8の屈折率を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項5】
前記水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、0.20~1.4重量
%の前記増粘剤を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項6】
前記増粘剤が、ASEポリマー、HASEポリマー、HEURポリマー、液体アクリル架橋またはコポリマー分散液、アクリレートクロスポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマー、架橋ポリアクリル酸コポリマー、変性エチレン酢酸ビニルコポリマーワックスの非イオン性水性エマルション、変性尿素または尿素変性ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項7】
少なくとも1日間安定である、請求項1~6のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物であって、目視および触覚検査で沈降、離漿および分離が観察できない場合に安定であると見なされる、水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項8】
インク、塗料またはコーティング配合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物の調製方法であって
(i)水、球状ガラスビーズ、増粘剤および任意選択の1種または複数のさらなる成分を容器に添加する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物
を撹拌または均質化する工程;および
(iii)任意選択的に、工程(ii)の前または後にpH
を調整する工程
を含む調製方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物の調製方法であって
(i)水、球状ガラスビーズ、増粘剤の少なくとも一部および任意選択で1種または複数のさらなる成分の一部を容器に添加する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物
を撹拌または均質化する工程;
(iii)任意選択で、工程(ii)の前または後にpH
を調整する工程;
(iv)工程(ii)または(iii)で得られた組成物に1種または複数のさらなる成分の少なくとも一部を添加し、任意選択で増粘剤の一部を添加し、任意選択で水を添加する工程;
(v)工程(iv)で得られた混合物
を撹拌または均質化する工程;および
(vi)任意選択的に、工程(v)の前または後にpH
を調整する工程
を含む調製方法。
【請求項11】
再帰反射層で基材をコーティングする方法であって
(a)基板を提供する工程;
(b)任意選択で、工程(a)の前記基材に下塗り層を塗布する工程;
(c)請求項1~8のいずれか一項に記載の水性擬塑性ゲル組成物を工程(a)の基材上または工程(b)の下塗りされた基材上に噴霧して、再帰反射層でコーティングされた基材を提供する工程;
(d)任意選択的に、工程(c)で得られた再帰反射層でコーティングされた基材を乾燥させる工程;および
(e)工程(c)で得られた再帰反射層でコーティングされた基材または工程(d)で得られた再帰反射層でコーティングされた乾燥基材を、1つまたは複数のさらなる透明コーティング層でコーティングし、続いて乾燥または硬化させる工程
を含む方法。
【請求項12】
水性擬塑性ゲル組成物が、スプレーガンを使用して工程(c)において基材に塗布される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の属する技術分野]
本発明は、水性擬塑性ゲル組成物およびその調製方法に関する。本発明はさらに、前記水性擬塑性ゲル組成物を用いて再帰反射層で基材をコーティングする方法、および前記方法によって得られる再帰反射層でコーティングされた基材に関する。
【0002】
[発明の背景]
再帰反射塗料、インクおよびコーティングは様々な用途に使用されている。例えば、暗い条件下で道路標識、道路マーカ、織物、自動車などの視認性を改善するためである。塗料、インクおよびコーティングは、典型的には、特定の屈折率を有する球状ガラスビーズを添加することによって再帰反射特性を備える。再帰反射は、球状ガラスビーズの上側表面を通る入射光の屈折、球状ガラスビーズの下側表面からの内部反射、およびその後の球状ガラスビーズの上側表面を出るときの光の屈折のタンデム作用によって生じ、入射光が来た方向に戻る。
【0003】
WO2004/017104A2は、再帰反射性微小球、結合剤系、および再帰反射性組成物に基づいて約2~約5重量%の量で少なくとも2つのチキソトロープ剤を含むチキソトロープブレンドを含む再帰反射性組成物を開示している。組成物は水を含むことができる。再帰反射性組成物は、塗料、インクおよびコーティングとして使用されることが意図され、噴射剤と共にエアロゾルアプリケーターを使用して基材に適用される。WO2004/017104A2の表1は、組成物中の成分のクラスの典型的かつ好ましい量を開示している。WO2004/017104A2の実施例1は、溶媒が未定義の脂肪族または芳香族ナフサであり、固体樹脂顆粒が未定義のアクリルタイプであり、第1のチキソトロープが未定義のポリ尿素タイプであり、第2のチキソトロープが未定義のスルホン酸カルシウム複合体である組成物を開示している。Brookfield#3スピンドルを用いて25℃で測定した実施例1の組成物の付随粘度は、0.5rpmで9000~30000cps、20rpmで600~1900cpsであろう。
【0004】
WO01/16223A1は、織物上に印刷するための再帰反射性インクに関する。WO01/16223A1の単一の実施例は、スクリーン印刷インクを開示している。このスクリーン印刷用インクは
・ 3部の409 AG Reflective Clear LFベース(水および球状ガラスビーズおよびマトリックス材料を含む);
・ 1部のGrancill PWX結合および仕上げ剤(揮発性成分として水分を含む);および
・ 409 AG Reflective Clear LFベースおよびGrancill PWXの合わせた容量に基づいて、2容量%のCX100架橋剤
からなる。
【0005】
409 AG Reflective Clear LFベースの粘度は約0.090~0.110センチストークスであると記載されている。動粘度v[cSt]は、以下のように動的粘度μ[Pa・s]に関連付けられる。
【0006】
【0007】
1300g/m3の409 AG Reflective Clear LFベースの密度ρの現実的な推定を考慮すると、409 AG Reflective Clear LFベースの動的粘度μは、0.12~0.14MPa・sである。当業者には理解されるように、水よりも7倍超低い粘度は、水、(かなりの量の)ガラスビーズ、結合剤、仕上げ剤、およびさらなる揮発性成分の混合物では単純に不可能である。最終スクリーン印刷インクの粘度は、WO01/16223A1の実施例には開示されていない。スクリーン印刷は、メッシュを使用して、ブロッキングステンシルによってインクに対して不浸透性にされた領域を除いて、ペースト状インクを基板上に転写する印刷技術である。ブレードまたはスキージをスクリーンを横切って移動させて、開いたメッシュ開口をインクで充填し、次いで逆方向のストロークによりスクリーンを接触線に沿って瞬間的に基板に接触させる。これにより、インクは基板を濡らし、ブレードが通過した後にスクリーンが跳ね返るときにメッシュ開口から引き出される。印刷分野の当業者に一般的に知られているように、スクリーン印刷用インクおよび専門的または工業的(高速)噴霧用インクのレオロジー特性は、それらを基材に塗布するために使用される技術が別個であるために基本的に異なる。スクリーン印刷インクは、専門的または工業的(高速)噴霧には適していない。
【0008】
WO00/42113A1は、液体キャリア媒体中にマイクロビーズを含む再帰反射性インクに関する。液体キャリア媒体は水であり得る。インクは、織物上へのスクリーン印刷を意図している。WO00/42113A1は、スクリーン印刷用インクの粘度が、10rpmで回転する#5スピンドルを使用するブルックフィールド粘度計で測定して、室温で10~30Pa・sであることを開示している。表1~4および6に開示されるインクは、水、増粘剤、およびガラスビーズを含む。粘度は、10rpmで回転する#5スピンドルを使用するブルックフィールド粘度計で測定して、室温で12.3~32Pa・sである。上記で説明したように、国際公開第01/16223A1号の文脈において、スクリーン印刷用インクおよび専門的または工業的(高速)噴霧用のインクのレオロジー特性は、それらを基材に塗布するために使用される技術が基本的に異なるため、基本的に異なることが印刷分野の当業者に一般に知られている。
【0009】
良好な安定性および噴霧性の両方を有する再帰反射性組成物を開発することは、球状ガラスビーズなどの再帰反射性粒子を維持するためにレオロジー改質剤が必要とされるため、課題である-典型的には、流体キャリアの密度よりも実質的に高い密度を有する-流体担体全体に均一に分布すると、一般に、噴霧中のレオロジー挙動に悪影響を及ぼす。
【0010】
棚上で安定であり、好ましくは専門的または工業的(高速)噴霧を使用して様々な基材に依然として容易に適用することができ、良好な品質を有する再帰反射層またはコーティングをもたらす再帰反射性インク、コーティングおよび塗料が必要とされている。
【0011】
したがって、本発明の目的は、塗料、インクまたはコーティングとして様々な基材に専門的または工業的に適用することができる水性再帰反射性組成物であって、前記水性再帰反射性組成物を、専門的または工業的(高速)噴霧などの噴霧によって基材に適用することができ、前記水性再帰反射性組成物が十分な安定性または貯蔵寿命を有する、水性再帰反射性組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、塗料、インクまたはコーティングとして、専門的または工業的(高速)噴霧などの噴霧によって様々な基材に専門的または工業的に適用することができ、層の良好なまたは改善された均質性および広角での再帰反射性、好ましくは層の良好なまたは改善された平滑性および清浄性などの良好なまたは改善された印刷またはコーティング品質をもたらす水性再帰反射組成物を提供することである。
【0013】
[発明の要約]
本発明者らは、0.01s-1の剪断速度で5~200Pa・sである第1の粘度η1、および100s-1の剪断速度で第1の粘度よりも10~1000倍低い第2の粘度η2を有する水性擬塑性ゲル組成物である水性再帰反射性組成物を使用することによって、目的の1つ以上を満たすことができることを予想外に確立した。
【0014】
したがって、第1の態様において、本発明は、好ましくは専門的または工業的(高速)噴霧用の水性擬塑性ゲル組成物であって、0.01s-1の剪断速度で5~200Pa・sである第1の粘度η1、および100s-1の剪断速度で第1の粘度よりも10~1000倍低い第2の粘度η2を有し、水性擬塑性ゲルが、組成物の総重量に基づいて
・ 15~60重量%の水;
・ 20~60重量%の球状ガラスビーズであって、レーザー回折で測定したメジアン粒径D50が5~150μm、好ましくは20~150μmであり、589nmの波長λで測定した屈折率が1.8~2.8であり、任意選択的に、上記球状ガラスビーズの少なくとも一部が、光反射性コーティングで半球状にコーティングされている、球状ガラスビーズ;
・ 0.15-1.5重量%の増粘剤;および
・ 0~50重量%の1つ以上のさらなる成分;
からなり、粘度は、25℃の温度で、プレート-プレート形状および0.5mmのギャップ距離を有するレオメーターで測定される、水性擬塑性ゲル組成物に関する。
【0015】
本発明者らは、この水性擬塑性ゲル組成物が、例えば工業的高速噴霧を使用して、様々な基材に適用され得、その結果、均質性および広角での再帰反射性などの優れた印刷またはコーティング品質を有する再帰反射性コーティング層が得られることを確立した。再帰反射性コーティングが1つ以上のさらなる透明コーティング層を備える場合、高い平滑性および良好な洗浄性を有する再帰反射性層を得ることができる。予期せぬことに、これらの結果は、水性擬塑性ゲル組成物を垂直に配置された基材の表面に適用した場合にも得ることができる。
【0016】
第2の態様において、本明細書に定義される水性擬塑性ゲル組成物の調製のための方法が提供される。当該方法は
(i)水、本明細書で定義される球状ガラスビーズ、本明細書で定義される増粘剤および本明細書で定義される任意選択の1種または複数のさらなる成分を容器に添加する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化する工程;および
(iii)任意選択的に、工程(ii)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程
を含む。
【0017】
第3の態様において、本明細書に定義される水性擬塑性ゲル組成物の調製のための方法が提供される。当該方法は
(i)水、本明細書で定義される球状ガラスビーズ、本明細書で定義される増粘剤の少なくとも一部、および任意選択的に本明細書で定義される1種以上のさらなる成分の一部を容器に添加する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化する工程;
(iii)任意選択で、工程(ii)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程;
(iv)工程(ii)または(iii)で得られた組成物に、本明細書で定義される1種または複数のさらなる成分の少なくとも一部を添加し、任意選択で本明細書で定義される増粘剤の一部を添加し、任意選択で水を添加する工程;
(v)工程(iv)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化する工程;および
(vi)任意選択的に、工程(v)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程
を含む。
【0018】
本発明の第4の態様において、本明細書に定義される水性擬塑性ゲル組成物の調製のための方法が提供される。当該方法は
(i)水、本明細書で定義される球状ガラスビーズ、本明細書で定義される増粘剤の少なくとも一部、および任意選択的に本明細書で定義される1種以上のさらなる成分の一部を容器に添加する工程;
(ii)好ましくは5~30℃の温度で、好ましくは5~15分間、工程(i)で得られた混合物を撹拌または均質化し、本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物の組成および特性を有する中間体水性擬塑性ゲル組成物を得る工程;
(iii)任意選択で、工程(ii)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程;
(iv)工程(ii)または(iii)で得られた中間体水性擬塑性ゲル組成物に、本明細書で定義される1種以上のさらなる成分の少なくとも一部を添加し、任意に本明細書で定義される増粘剤の一部を添加し、任意に水を添加する工程;
(v)工程(iv)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化し、水性擬塑性ゲル組成物を得る工程;および
(vi)任意選択的に、工程(v)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程
を含む。
【0019】
第5の態様において、本発明は、再帰反射層で基材をコーティングする方法に関する。当該方法は、
(a)基板を提供する工程;
(b)任意選択で、工程(a)の前記基材に下塗り層を塗布する工程;
(c)本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物を工程(a)の基材上または工程(b)の下塗りされた基材上に噴霧して、再帰反射層でコーティングされた基材を提供する工程;
(d)任意選択的に、工程(c)で得られた再帰反射層でコーティングされた基材を乾燥させる工程;および
(e)工程(c)で得られた再帰反射層でコーティングされた基材または工程(d)で得られた再帰反射層でコーティングされた乾燥基材を、1つまたは複数のさらなる透明コーティング層でコーティングし、続いて乾燥または硬化させる工程
を含む。
【0020】
第6の態様において、本発明は、本明細書に定義される基材をコーティングするための方法によって得られる再帰反射層でコーティングされた基材に関する。
【0021】
[定義]
本明細書で使用される「擬塑性ゲル」という用語は、剪断減粘挙動を示し、降伏点を有さないゲルに関する。
【0022】
本発明の擬塑性ゲルの文脈における「ずり減粘挙動」という用語は、擬塑性ゲルが最初に静的状態にあり、ずり速度を受けたときの粘度の低下に関する。
【0023】
用語「tan(δ)」(ここでδは位相シフトである)は、レオロジーの分野で一般に知られているように、比G”/G’によって定義される。G”は損失弾性率を表し、試料の粘性または液体様挙動を特徴付ける。G’は貯蔵弾性率を表し、試料の弾性特性または固体様挙動を特徴付ける。試料が純粋に粘性挙動を示し、弾性挙動がない場合、δ=90°、G’=0およびtan(δ)=∞である。試料が純粋に弾性挙動を示し、粘性挙動がない場合、δ=0°、G”=0およびtan(δ)=0である。試料が45°未満の非0位相シフトδを有する場合、tan(δ)は1未満であり、G’はG”よりも大きく、試料は、弾性挙動が粘性挙動を支配するという意味でゲル様挙動を示す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による水性擬塑性ゲル組成物の粘度対剪断速度プロファイルを示す。
【
図2】
図1の水性擬塑性ゲル組成物のチキソトロピー挙動を示す。
【
図3】本発明による水性擬塑性ゲル組成物の振動周波数の関数としてのtan(δ)プロファイルを示す。
【0025】
[詳細な説明]
第1の態様において、本発明は、好ましくは専門的または工業的(高速)噴霧用の水性擬塑性ゲル組成物であって、0.01s-1の剪断速度で5~200Pa・sである第1の粘度η1、および100s-1の剪断速度で第1の粘度よりも10~1000倍低い第2の粘度η2を有し、水性擬塑性ゲルが、組成物の総重量に基づいて
・ 15~60重量%の水;
・ 20~60重量%の球状ガラスビーズであって、レーザー回折で測定したメジアン粒径D50が5~150μm、好ましくは20~150μmであり、589nmの波長λで測定した屈折率が1.8~2.8であり、任意選択的に、上記球状ガラスビーズの少なくとも一部が、光反射性コーティングで半球状にコーティングされている、球状ガラスビーズ;
・ 0.15-1.5重量%の増粘剤;および
・ 0~50重量%の1つ以上のさらなる成分
からなり、粘度は、25℃の温度で、プレート-プレート形状および0.5mmのギャップ距離を有するレオメーターで測定される、水性擬塑性ゲル組成物に関する。
【0026】
好ましい実施形態において、水性擬塑性ゲル組成物は、少なくとも1日間、より好ましくは少なくとも2日間、少なくとも5日間、少なくとも10日間、少なくとも1ヶ月間、少なくとも2ヶ月間、少なくとも6ヶ月間、少なくとも1年間、少なくとも2年間安定であり、ここで、組成物は、視覚的および触覚的検査の際に、沈降、離漿および分離が観察され得ない場合、安定であると見なされる。
【0027】
本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物は、好ましくはインク、塗料またはコーティング配合物である。
【0028】
球状ガラスビーズ
先に定義したように、球状ガラスビーズの屈折率は、589nmの波長λで測定して、1.8~2.8である。
【0029】
「球状ガラスビーズ」における「ガラス」という用語は、本明細書で使用される場合、酸化物から作製された非結晶性、非晶質固体および透明材料を指す。球状ガラスビーズの屈折率は、ガラスの密度と密接に関係するが、その関係は線形ではない。ガラスの性質のために、密度はほぼその組成の加法関数である。1.5~2.8の屈折率を有する球状ガラスビーズの密度は、典型的には2.5~4.5g/cm3の間で変化する。
【0030】
ガラスに使用することができる酸化物は、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、ナトリウム、バリウム、バナジウム、チタン、ランタン、ストロンチウム、ジルコニウム、カリウム、マグネシウム、鉄、カルシウム、亜鉛、リチウム、バリウムおよび鉛の酸化物である。球状ガラスビーズは、例えば、シリカ(SiO2)、酸化ホウ素(B2O3)、五酸化リン(P2O5)、五酸化バナジウム(V2O5)、三酸化ヒ素(As2O3)、酸化ゲルマニウム(GeO2)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ナトリウム(Na2O)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化カリウム(K2O)、酸化鉄(Fe2O3)、酸化鉛(PbO)、酸化バリウム(BaO)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、酸化チタン(TiO2)、酸化リチウム(Li2O)、酸化ストロンチウム(SrO)、酸化ランタン(La2O3)、および酸化ジルコニウム(ZrO2)の様々な組み合わせを含むことができる。シリカおよび酸化ホウ素は一般に密度が最も低い。したがって、これらの酸化物を大きな重量百分率で含有するガラスは、一般に、低い屈折率を有するガラスビーズをもたらす。屈折率は、より高い分子量を有する酸化物を添加することによって増加させることができる。
【0031】
好ましくは、球状ガラスビーズはPbOを含まない。
【0032】
1.5~2.51の範囲の屈折率を有するガラスビーズおよびそれらの酸化物に関する組成は、WO2014/109564A1に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。2.15超の屈折率を有するPbOを含まない透明ガラスビーズは、米国特許第4082427号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
球状ガラスビーズは、透明である限り、着色された球状ガラスビーズであってもよい。着色透明ガラスから作製された着色球状ガラスビーズおよび同心透明着色コーティングを備えた球状ガラスビーズの両方が、本発明に包含される。色は、酸化物の組成によって生じる自然の色であってもよく、または特定の色を有する成分を添加することによって意図的に選択されてもよい。高い屈折率および高い透明性を有する着色ガラスビーズは、WO2014/109564A1に開示されている。
【0034】
したがって、一実施形態では、球状ガラスビーズの少なくとも一部は、着色透明ガラスから作製された球状ガラスビーズであり、および/または球状ガラスビーズの少なくとも一部、同心透明着色コーティングを備えている。
【0035】
球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定した場合、メジアン粒径D50を有する。したがって、メジアン粒径D50は、体積分布に基づく体積メジアンである。中央粒径D50は、球状ガラスビーズの集団の半分がその下にある直径である。この体積中央粒径は、当該技術分野においてDv50またはDv0.5と呼ばれることが多い。
【0036】
好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、25~100μm、好ましくは30~75μm、より好ましくは35~50μmの中央粒径D50を有する。
【0037】
別の好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、5~100μm、例えば5~75μm、5~50μm、5~45μm、5~40μmまたは5~35μmの中央粒径D50を有する。
【0038】
さらに別の好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、25~150μm、例えば50~150μm、75~150μm、100~150μm、110~150μmまたは115~150μmの中央粒径D50を有する。
【0039】
直径D10およびD90は、当技術分野において、それぞれDv10またはDv0.1およびDv90またはDv0.9と呼ばれることが多い。D10直径は、球状ガラスビーズの集団の10%がその下にある直径である。同様に、D90直径は、球状ガラスビーズの集団の90%がその下にある直径である。
【0040】
レーザー回折によって測定される、球状ガラスビーズの粒径分布のスパンは、以下の式によって定義される。
【0041】
【0042】
さらに好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、25~100μmの中央粒径D50および0~1、好ましくは0~0.7、より好ましくは0~0.5、さらにより好ましくは0~0.2、さらにより好ましくは0~0.1のスパンを有する。より好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、30~75μmの中央粒径D50および0~1、好ましくは0~0.7、より好ましくは0~0.5、さらにより好ましくは0~0.2、さらにより好ましくは0~0.1のスパンを有する。さらにより好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、35~50μmの中央粒径D50および0~1、好ましくは0~0.7、より好ましくは0~0.5、さらにより好ましくは0~0.2、さらにより好ましくは0~0.1のスパンを有する。
【0043】
別のより好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、5~35μmの中央粒径D50および0~2、例えば0~1.8、0~1.5、0~1.25および0~1、または例えば0.5~2、1~2および1.25~2のスパンを有する。
【0044】
別のさらにより好ましい実施形態では、球状ガラスビーズは、レーザー回折で測定して、10~25μmの中央粒径D50および0~2、例えば0~1.8、0~1.5、0~1.25および0~1、または例えば0.5~2、1~2および1.25~2のスパンを有する。
【0045】
当業者によって理解されるように、スパン=0は単分散球状ガラスビーズに対応する。
【0046】
好ましい実施形態において、球状ガラスビーズの少なくとも一部は、光反射性コーティングで半球状にコーティングされている。一例は、半球形アルミニウムコーティングである。これは可能であるが、ここに記載されるような効果を提供することは必須ではない。したがって、一実施形態において、球状ガラスビーズは、光反射性コーティングで半球状にコーティングされていない。
【0047】
好ましい実施形態において、球状ガラスビーズの量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、25~55重量%、より好ましくは26~52重量%、さらにより好ましくは27~50重量%である。
【0048】
実施形態において、球状ガラスビーズの量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、20~55重量%、20~50重量%、20~45重量%、20~40重量%、20~35重量%、20~30重量%または20~25重量%である。
【0049】
他の実施形態において、球状ガラスビーズの量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、22~60重量%、25~60重量%、30~60重量%、35~60重量%、40~60重量%、45~60重量%、50~60重量%または55~60重量%である。
【0050】
水性擬塑性ゲル組成物の特定の用途は、球状ガラスビーズの最適な屈折率を決定する。組成物が乾燥環境において、または乾燥条件下で再帰反射性を示す基材上に塗布され、再帰反射球状ガラスビーズの塗布層がさらなる層によってコーティングされていない場合、589nmの波長λで測定される球状ガラスビーズの屈折率は、1.8~2.8であり得る。
【0051】
一実施形態では、本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物は、589nmの波長λで測定して1.8~2.0の屈折率を有する球状ガラスビーズを含む。
【0052】
一方、組成物が湿潤環境で、または湿潤条件下で再帰反射性を示す基材上に塗布される場合、または再帰反射球状ガラスビーズの塗布層が1つ以上の更なる透明層によってコーティングされる場合、589nmの波長λで測定した球状ガラスビーズの屈折率は、好ましくは2.0~2.8、より好ましくは2.2~2.4である。乾燥条件下および湿潤条件下の両方で再帰反射性を示す組成物であって、再帰反射球状ガラスビーズの塗布層が1つまたは複数のさらなる透明層でコーティングされているかまたはコーティングされていない組成物は、異なる屈折率および任意選択で異なるサイズを有する異なる種類のガラスビーズを含むことができる。一実施形態において、本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物は、589nmの波長λで測定して、2.0~2.8、好ましくは2.2~2.4の屈折率を有する球状ガラスビーズを含む。
【0053】
別の実施形態において、本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物は、少なくとも2種類の球状ガラスビーズを含み、少なくとも1種類の球状ガラスビーズは、589nmの波長λで測定して、1.8~2.0未満の屈折率を有し、少なくとも1種類のさらなる球状ガラスビーズは、589nmの波長λで測定して、2.0~2.8の屈折率を有する。
【0054】
増粘剤
水性擬塑性ゲル組成物は、増粘剤を含む。いかなる理論にも束縛されることを望むものではないが、増粘剤は、水性擬塑性ゲル組成物中の球状ガラスビーズおよび任意選択でさらなる粒子状物質の沈殿および/または沈降を制限または防止すると考えられる。さらに、やはりいかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、増粘剤はゲル組成物に剪断減粘性挙動を与えると考えられる。
【0055】
実施形態において、増粘剤は、異なる増粘剤の混合物を包含する。好ましい実施形態では、増粘剤は単一の増粘剤からなる。
【0056】
増粘剤の1つの好ましい群は、ASEポリマー(アルカリ膨潤性エマルション)である。これらのポリマーは乳化重合を用いて製造される)。ASEポリマーは、親水性(メタ)アクリル酸モノマーと疎水性(メタ)アクリレートエステルモノマーとのバランスに基づいており、液体形態で高体積固体で供給することができる。ASEポリマーは、低pHから高pHへの変化(中和)に依存して、増粘をトリガーする。「トリガー」は、水溶性である(メタ)アクリル酸と水溶性でない(メタ)アクリレートエステルとを約50:50の比で生成することによってポリマー中に組み込まれる。酸が中和されていない(低pH)場合、ポリマーは水に不溶性であり、増粘しない。酸が完全に中和されると(高pH)、ポリマーは可溶性になり、増粘する。ASEポリマーは、低いpH(<5)で供給され、35%までの固形分で低い供給時粘度(<100cP)を維持する。約7以上のpHに曝されると、ASEポリマーは体積排除により組成物を可溶化し、膨潤させ、増粘させる。増粘の程度は、ポリマーの分子量に関連し得る。それらの性能は吸水性および膨潤性に依存するので、ASEポリマーは分子量が非常に高い傾向があり、それによりそれらを効率的に増粘させることができる。ASEポリマーが作り出すレオロジープロファイルは、典型的には急峻な剪断減粘性(擬塑性)であり、したがって、ASEポリマーは、非常に低い剪断速度で高粘度を構築するのによく適している。
【0057】
一実施形態において、ASEポリマーの親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0058】
別の実施形態では、ASEポリマーの疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸とC1~C4-アルコールとのエステル、特にエチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートからなる群から選択される。
【0059】
さらに別の好ましい実施形態において、ASEポリマーの親水性モノマーは、(メタ)アクリル酸、マレイン酸およびそれらの組合せからなる群から選択され、ASEポリマーの疎水性モノマーは、(メタ)アクリル酸とC1~C4-アルコールとのエステル、特にエチルアクリレート、ブチルアクリレートおよびメチルメタクリレートからなる群から選択される。
【0060】
一実施形態では、ASEポリマーは、ASEポリマーの重量に基づいて、10~90重量%の1種以上の親水性モノマーAに基づく繰り返し単位、及び、10~90重量%の1種以上の疎水性モノマーBに基づく繰り返し単位からなり、モノマーAおよびBの量が合計して100重量%となる。
【0061】
【化1】
式中、R
1およびR
2は独立して水素またはメチルであり、R
3はC
1~C
4-アルキルである。
【0062】
増粘剤の別の好ましい群は、HASEポリマー(疎水変性アルカリ膨潤性エマルション、これらのポリマーは、乳化重合を使用して製造される)である。HASEポリマーは、1つ以上の疎水性会合性モノマー(例えば、アクリル酸エステルおよび/またはビニルエステルモノマー)をASEポリマー組成物に添加することによって、ASEポリマー化学に基づいて構築されるコポリマーである。HASEポリマーは、それらのASE対応物のpH依存性挙動を保持するが、水を吸収することに加えて、HASEポリマーはまた、疎水性会合を介して増粘する。この機構は、会合性増粘(すなわち、会合性増粘剤)として公知である。(組成物中の任意の疎水性部分と会合する)。
【0063】
HASEポリマーの親水性および疎水性モノマーは、ASEポリマーに関して記載されたものと同じであり得る。好ましい疎水性会合性モノマーは、(メタ)アクリル酸およびC8~C22-アルコールの(メタ)アクリル酸エステルモノマーおよび/または(置換)ビニルアルコールおよびC8~C22-アルキル酸のビニルエステルモノマーである。別の好ましい実施形態では、1つ以上の疎水性会合性モノマーは、ステアレス-20メタクリレート、ベヘネス-25メタクリレート、ネオデカン酸ビニル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0064】
一実施形態において、HASEポリマーは、HASEポリマーの重量に基づいて、10~90重量%の先に定義された1種または複数の親水性モノマーAに基づく繰り返し単位と、10~90重量%の先に定義された1種以上の疎水性モノマーBに基づく繰り返し単位と、0.01~2重量%の1種以上の疎水性会合性モノマーCおよび/またはDに基づく繰り返し単位とからなり、モノマーA、B、CおよびDの量は合計で100重量%となる。
【0065】
【化2】
式中、R
4は水素またはメチルであり、R
5はC
8~C
22-アルキルであり、nは0~50の整数であり、R
6は水素またはメチルであり、R
7はC
8~C
22-アルキルである。
【0066】
増粘剤のさらに別の好ましい群は、疎水的に修飾されたエトキシ化ウレタン(HEUR)ポリマーである。ASEまたはHASE型増粘剤とは異なり、HEURポリマーは非イオン性であり、任意のpHで可溶性である。この溶解度は、水溶性であり、ポリマー構造の大部分を構成するポリマーのエチレンオキシド主鎖によるものである。したがって、HEURポリマーは、エチレンオキシド骨格と相互作用して構造を付与するために、組成物中に疎水性部分を必要とする。
【0067】
ASEポリマーの例としては、Rheovis(登録商標)1125(BASF Corporationから入手可能)、ACULYN(商標)33、ACULYN(商標)38、ACUSOL(商標)810A、ACUSOL(商標)830、ACUSOL(商標)835、ACUSOL(商標)842(全てDOW Chemicalから入手可能)、およびCarbopol(登録商標)Aqua30ポリマー(Lubrizol Corporationから)が挙げられる。。
【0068】
HASEポリマーの例としては、ACULYN(商標)Excel、ACRYSOL(商標)TT615、ACULYN(商標)22、ACULYN(商標)88、ACUSOL(商標)801S、ACUSOL(商標)805S、ACUSOL(商標)820およびACUSOL(商標)823(全てDOW Chemicalから入手可能)が挙げられる。。
【0069】
HEURポリマーの例としては、ACUSOL(商標)880、ACUSOL(商標)882、ACULYN(商標)44およびACULYN(商標)46N(全てDOW Chemicalから入手可能)が挙げられる。
【0070】
さらに別の実施形態では、増粘剤は、アクリレートクロスポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマーおよび架橋ポリアクリル酸コポリマーからなる群から選択され、特に、Carbopol(登録商標)AQUA SF-1ポリマー、Carbopol(登録商標)AQUA SF-1 OSポリマーおよびCarbopol(登録商標)Aqua SF-3ポリマーなどのLubrizol Corporation製のCarbopol(登録商標)ポリマー製品から選択される。
【0071】
さらに別の実施形態において、増粘剤は、液体アクリル架橋またはコポリマー分散物からなる群から選択される。
【0072】
さらに別の実施形態では、増粘剤は、BYKから入手可能なAquatix 8421などの変性エチレン酢酸ビニルコポリマーワックスの非イオン性水性エマルジョンから選択される。
【0073】
さらに別の実施形態では、増粘剤は、BYKから入手可能なRheobyk-420などの変性尿素または尿素変性ポリアミドから選択される。
【0074】
一実施形態において、増粘剤は、ASEポリマー、HASEポリマー、HEURポリマー、液体アクリル架橋またはコポリマー分散液、アクリレートクロスポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマー、架橋ポリアクリル酸コポリマー、変性エチレン酢酸ビニルコポリマーワックスの非イオン性水性エマルション、変性尿素または尿素変性ポリアミド、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0075】
別の実施形態では、増粘剤は、ASEポリマー、HASEポリマー、HEURポリマー、液体アクリル架橋またはコポリマー分散液、アクリレートクロスポリマー、架橋ポリアクリル酸ポリマー、架橋ポリアクリル酸コポリマー、変性エチレン酢酸ビニルコポリマーワックスの非イオン性水性エマルション、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0076】
別の実施形態では、増粘剤は、ASEポリマー、HASEポリマー、HEURポリマー、液体アクリル架橋またはコポリマー分散液、架橋ポリアクリル酸ポリマー、架橋ポリアクリル酸コポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0077】
さらに別の実施形態では、増粘剤は、ASEポリマー、HASEポリマー、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。一実施形態では、増粘剤は、ASEポリマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。別の実施形態では、増粘剤は、HASEポリマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0078】
好ましい実施形態において、増粘剤の量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、0.20~1.4重量%、より好ましくは0.25~1.3重量%、さらにより好ましくは0.30~1.2重量%である。
【0079】
いくつかの実施形態において、増粘剤の量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、0.15~1.4重量%、0.15~1.3重量%、0.15~1.2重量%、0.15~1.1重量%、0.15~1.0重量%、0.15~0.9重量%、0.15~0.8重量%、0.15~0.7重量%、0.15~0.6重量%、0.15~0.55重量%、0.15~0.5重量%または0.15-0.45重量%である。
【0080】
他の実施形態では、増粘剤の量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、0.20~1.5重量%、0.25~1.5重量%、0.30~1.5重量%、0.35~1.5重量%、0.40~1.5重量%、0.45~1.5重量%、0.50~1.5重量%、0.55~1.5重量%または0.6~1.5重量%である。
【0081】
水性擬塑性ゲル組成物中の水の量は独立して特定される。増粘剤が、例えば水中の分散液の形態で適用される場合、先に定義された増粘剤の量は、増粘剤の乾燥重量に関する。
【0082】
さらなる成分
好ましい実施形態において、1つ以上のさらなる成分は、湿潤剤、防腐剤、染料、発光剤(例えば、リン光剤および蛍光剤)、顔料、UV吸収剤、バインダーおよび樹脂、マイカフレーク顔料および金属フレークまたは粉末からなる群から選択される。
【0083】
使用され得る湿潤剤の非限定的な例は、2,3-プロパンジオール、エチレングリコールおよびブチレングリコールである。
【0084】
使用することができるバインダーおよび樹脂の例は、バインダーおよび樹脂の水性分散液などの水系バインダーおよび樹脂である。
【0085】
金属フレークまたは粉末を反射性顔料として使用することができる。例は、アルミニウム、青銅、銅、金、銀、スズおよびニッケルフレーク、好ましくはアルミニウムフレークである。フレークのサイズは、典型的には球状ガラスビーズのサイズよりも実質的に小さい。
【0086】
マイカフレーク顔料もまた、マイカフレークに基づく真珠光沢顔料などの反射顔料として使用することができる。
【0087】
実施形態において、1つ以上のさらなる成分の量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、0~45重量%、0~40重量%、0~35重量%、0~30重量%、0~25重量%、0~20重量%、0~15重量%、0~10重量%または0~5重量%である。
【0088】
他の実施形態において、1つ以上のさらなる成分の量は、水性擬塑性ゲル組成物の総重量に基づいて、5~50重量%、10~50重量%、15~50重量%、20~50重量%、25~50重量%、30~50重量%、35~50重量%、40~50重量%または45~50重量%である。
【0089】
水性擬塑性ゲル組成物中の水の量は独立して特定される。1つ以上のさらなる成分が、例えば水中の分散液の形態で適用される場合、先に定義された1つ以上のさらなる成分の量は、1つ以上のさらなる成分の乾燥重量、すなわち水を含まない重量に関する。
【0090】
レオロジー的挙動
水性ゲル組成物は擬塑性挙動を有し、これは降伏点を示すことなく剪断減粘挙動を有することを意味する。これは、組成物がゲル状であるが、静的/安定な状況(剪断なし)で依然として流動することができ、また、増加した剪断速度でゲル状である(かつ流動することができる)ことを意味する。換言すれば、水性ゲル組成物はゲル状であるが、それにもかかわらず注ぐことができる。さらに、静的/安定状態が、ゲルを特定の増加した剪断速度(ずり減粘挙動)に供することによって乱される場合、粘度は減少する。
【0091】
本発明による水性擬塑性ゲル組成物は、好ましくは、25℃の温度で、プレート-プレート形状および0.5mmの間隙距離を有するレオメーターで測定されるtan(δ)値が、10~0.1Hzの振動周波数で1未満であることを特徴とする。好ましい実施形態では、25℃の温度でプレート-プレート形状および0.5mmの間隙距離を有するレオメーターで測定されるtan(δ)値は、10~0.1Hzの振動周波数で0.1~0.9、より好ましくは0.2~0.8である。
【0092】
当業者には理解されるように、tan(δ)値は、線形粘弾性範囲内の好適な剪断歪みで測定される。
【0093】
先に定義したように、水性擬塑性ゲル組成物は、0.01s-1の剪断速度で5~200Pa・sである第1の粘度η1、および100s-1の剪断速度で第1の粘度よりも10~1000倍低い第2の粘度η2を有する。好ましい実施形態において、第1の粘度は、10~190Pa・s、より好ましくは14~180Pa・s、さらにより好ましくは16~150Pa・s、さらにより好ましくは18~120Pa・s、さらにより好ましくは20~80Pa・sである。別の好ましい実施形態において、第2の粘度は、0.05~2Pa・s、より好ましくは0.08~1Pa・s、さらにより好ましくは0.1~0.8Pa・s、さらにより好ましくは0.12~0.7Pa・s、さらにより好ましくは0.15~0.6Pa・s、最も好ましくは0.2~0.5Pa・sである。
【0094】
さらに別の実施形態では、水性擬塑性ゲル組成物は、0.01s-1の剪断速度で5~50Pa・sの第1の粘度η1、および100s-1の剪断速度で第1の粘度よりも10~200倍低い第2の粘度η2を有する。
【0095】
さらに別の実施形態では、水性擬塑性ゲル組成物は、0.01s-1の剪断速度で5~50Pa・sの第1の粘度η1、および100s-1の剪断速度で0.15~0.6Pa・s、好ましくは0.2~0.5Pa・sの第2の粘度η2を有する。
【0096】
さらに別の実施形態では、水性擬塑性ゲル組成物は、剪断速度0.01s-1で100~200Pa・sの第1の粘度η1、および剪断速度100s-1で第1の粘度よりも200~1000倍低い第2の粘度η2を有する。
【0097】
別の実施形態では、水性擬塑性ゲル組成物は、0.01s-1の剪断速度で100~200Pa・sの第1の粘度η1、および100s-1の剪断速度で0.15~0.6Pa・s、好ましくは0.2~0.5Pa・sの第2の粘度η2を有する。
【0098】
0.01s-1の剪断速度で測定された水性擬塑性ゲル組成物のゲル構造および第1の粘度は、球状ガラスビーズおよび任意のさらなる粒子状材料を懸濁液中に長期間維持するのに十分である。100s-1の剪断速度は、水性擬塑性ゲル組成物を基材に適用することができる(工業的)噴霧条件に典型的である。第2の粘度は100s-1で測定され、容易に噴霧することができる水性擬塑性ゲル組成物を提供するのに十分に低い。
【0099】
本発明者らは、本発明による水性擬塑性ゲル組成物が、100s-1の剪断速度を適用した後、比較的短時間で第1の粘度を回復することを確立した(チキソトロピー試験)。この現象は、たるみ挙動を示さない平滑で均質な層を得るために非常に有利である。
【0100】
したがって、好ましい実施形態では、本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物は、剪断速度0.1s-1で第3の粘度η3を有し、水性擬塑性ゲル組成物は、連続工程:
(i)前記水性擬塑性ゲル組成物を0.1s-1の剪断速度に少なくとも30秒間供し、前記第3の粘度η3を測定する工程;
(ii)前記水性擬塑性ゲル組成物を100s-1の剪断速度に30秒間供する工程;
(iii)剪断速度を0.1s-1に低下させる工程;および
(iv)前記水性擬塑性ゲル組成物の粘度を時間の関数として測定し、それを前記第3の粘度η3の値と比較する工程
を含む方法の工程(iii)における剪断速度の低下から10秒以内、好ましくは5秒以内、より好ましくは2秒以内に第3の粘度η3の値の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも70%を回復する。ここで、粘度は、25℃の温度で、プレート-プレート形状および0.5mmのギャップ距離を有するレオメーターで測定される。
【0101】
本発明の文脈で使用される「ある時間内に第3の粘度η3の値の少なくともx%を回復する」という表現は、粘度が実際にその時間内に値xη3/100に達することを意味する。
【0102】
この実施形態は、以下のように表現することもできる。好ましい実施形態では、本明細書で定義される水性擬塑性ゲル組成物は、0.1s-1の剪断速度で第3の粘度η3を有し、水性擬塑性ゲル組成物は、連続工程:
(i)前記水性擬塑性ゲル組成物を0.1s-1の剪断速度に少なくとも30秒間供し、前記第3の粘度η3を測定する工程;
(ii)前記水性擬塑性ゲル組成物を100s-1の剪断速度に30秒間供する工程;
(iii)剪断速度を0.1s-1に低下させる工程;および
(iv)前記水性擬塑性ゲル組成物の粘度を時間の関数として測定し、それを前記第3の粘度η3の値と比較する工程
を含む方法の工程(iii)における剪断速度の低下から10秒以内、好ましくは5秒以内、より好ましくは2秒以内に、第3の粘度η3の値の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも70%の第4の粘度η4に達するか、それを示すか、またはそれを有する。ここで、粘度は、25℃の温度で、プレート-プレート形状および0.5mmのギャップ距離を有するレオメーターで測定される。
【0103】
実施形態において、水性擬塑性ゲル組成物は、工程(iii)における剪断速度の低下から10秒以内に、第3の粘度η3の値の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%を回復する。
【0104】
実施形態において、水性擬塑性ゲル組成物は、工程(iii)における剪断速度の低下から5秒以内に、第3の粘度η3の値の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%を回復する。
【0105】
いくつかの実施形態において、水性擬塑性ゲル組成物は、工程(iii)における剪断速度の低下から2秒以内に第3の粘度η3の値の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%を回復する。
【0106】
添付の実施例から明らかになるように、本発明による水性擬塑性ゲル組成物は、工程(iii)における剪断速度の低下からある期間後に、第3の粘度η3の値の約100%を回復することができる。
【0107】
水性擬塑性ゲル組成物の製造方法
一般的に言えば、水性擬塑性ゲル組成物の成分は任意の順序で添加することができる。全ての成分を混合した後、組成物は、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化される。好ましい実施形態において、増粘剤は、水、球状ガラスビーズおよび任意のさらなる成分を混合した後に添加される。撹拌または均質化は、水性擬塑性ゲル組成物中に気泡が含まれるのを回避するために、低い剪断速度で行うことが好ましい。
【0108】
先に説明したように、増粘剤の増粘効果はpHの値に依存し得る。したがって、水性擬塑性ゲル組成物の調製方法は、pHを調整する工程、例えばpHを6.0~11、例えば7.0~11、7.0~9.5または7.4~7.9の間の値に調整する工程を含んでもよい。pHは、希釈NaOHまたはAMP Ultra(登録商標)PC2000などのアミノメチルプロパノール中和剤を使用して適切に調整することができる。
【0109】
したがって、本発明の第2の態様において、本明細書に定義される水性擬塑性ゲル組成物の調製のための方法が提供される。当該方法は
(i)水、先に定義された球状ガラスビーズ、先に定義された増粘剤および先に定義された任意の1種以上のさらなる成分を容器に添加する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化する工程;および
(iii)任意選択的に、工程(ii)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程
を含む。
【0110】
工程(iii)におけるpHは、好ましくは7.0~9.5の間の値に調整される。
【0111】
しかしながら、異なる成分の添加は、プロセスの異なる段階で行うこともできる。したがって、本発明の第3の態様において、本明細書に定義される水性擬塑性ゲル組成物の調製のための方法が提供される。当該方法は
(i)水、先に定義された球状ガラスビーズ、先に定義された増粘剤の少なくとも一部、および任意選択的に先に定義された1種以上のさらなる成分の一部を容器に添加する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化する工程;
(iii)任意選択で、工程(ii)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程;
(iv)工程(ii)または(iii)で得られた組成物に、先に定義された1種以上のさらなる成分の少なくとも一部を添加し、任意に先に定義された増粘剤の一部を添加し、任意に水を添加する工程;
(v)工程(iv)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化する工程;および
(vi)任意選択的に、工程(v)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程
を含む。
【0112】
工程(vi)におけるpHは、好ましくは7.0~9.5の間の値に調整される。
【0113】
実施形態において、一方で工程(i)~(iii)を実施することと、他方で工程(iv)~(vi)を実施することとの間の時間は、数日もしくは数ヶ月またはさらに長くあり得る。
【0114】
水性擬塑性ゲル組成物の調製方法はまた、本明細書中で先に定義された組成および特性を有する中間の水性擬塑性ゲル組成物を製造し、続いて別の組成物を添加および混合して、最終の水性擬塑性ゲル組成物を得ることを包含し得るが、但し、最終の水性擬塑性ゲル組成物は、本明細書中で先に定義された組成および特性を依然として有する。
【0115】
したがって、本発明の第4の態様では、先に定義した水性擬塑性ゲル組成物を調製するための方法が提供される。当該方法は、
(i)水、先に定義された球状ガラスビーズ、先に定義された増粘剤の少なくとも一部、および任意選択的に先に定義された1種以上のさらなる成分の一部を容器に添加する工程;
(ii)工程(i)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間、撹拌または均質化して、本明細書で先に定義した水性擬塑性ゲル組成物の組成および特性を有する中間体水性擬塑性ゲル組成物を得る工程;
(iii)任意選択で、工程(ii)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程;
(iv)工程(ii)または(iii)で得られた中間体水性擬塑性ゲル組成物に、先に定義された1種以上のさらなる成分の少なくとも一部を添加し、任意に先に定義された増粘剤の一部を添加し、任意に水を添加する工程;
(v)工程(iv)で得られた混合物を、好ましくは15~30℃の温度で、好ましくは5~15分間撹拌または均質化し、水性擬塑性ゲル組成物を得る工程;および
(vi)任意選択的に、工程(v)の前または後にpHを、好ましくは6.0~11の間の値、より好ましくは7.0~11の間の値に調整する工程
を含む。
【0116】
工程(vi)におけるpHは、好ましくは7.0~9.5の間の値に調整される。
【0117】
実施形態において、一方で工程(i)~(iii)を実施することと、他方で工程(iv)~(vi)を実施することとの間の時間は、数日もしくは数ヶ月またはさらに長くあり得る。
【0118】
基板のコーティング方法
第5の態様において、本発明は、再帰反射層で基材をコーティングする方法であって、
(a)基板を提供する工程;
(b)任意選択で、工程(a)の前記基材に下塗り層を塗布する工程;
(c)先に定義した水性擬塑性ゲル組成物を工程(a)の基材上または工程(b)の下塗りされた基材上に噴霧して、再帰反射層で被覆された基材を提供する工程;
(d)任意選択的に、工程(c)で得られた再帰反射層でコーティングされた基材を乾燥させる工程;および
(e)工程(c)で得られた再帰反射層でコーティングされた基材または工程(d)で得られた再帰反射層でコーティングされた乾燥基材を、1つまたは複数のさらなる透明コーティング層でコーティングし、続いて乾燥または硬化させる工程
を含む方法に関する。
【0119】
水性擬塑性ゲル組成物を噴霧する工程(c)は、1つの工程で単一層を噴霧すること、または後続の噴霧工程で互いの上に複数層を噴霧することを含むことができる。
【0120】
一実施形態において、工程(b)が実施される。工程(b)で適用される下塗り層は、例えば、マイカフレーク顔料または金属フレークもしくは粉末を含む着色下塗り層であり得る。
【0121】
コーティングされる基材の形状は、噴霧によってコーティングされ得る限り、すなわち、水性擬塑性ゲル組成物の液滴が基材の表面に到達し得る限り、いかなる意味においても限定されない。実施形態では、基板は平面である。他の実施形態では、基板は湾曲している。さらなる実施形態では、基板は平面部分および湾曲部分を含む。
【0122】
本発明者らは、水性擬塑性ゲル組成物が、例えば工業的高速噴霧を使用して様々な基材に適用されて、優れた印刷またはコーティング品質、例えば均質性および広い角度での再帰反射性を有する再帰反射性コーティング層をもたらすことができることを確立した。再帰反射性コーティング層が1つまたは複数のさらなる透明コーティング層を備えている場合(すなわち、先に定義された基材をコーティングするための方法の工程(e)が行われる場合)、高い平滑性および良好な洗浄性を有する再帰反射層が得られる。予期せぬことに、これらの結果は、水性擬塑性ゲル組成物を垂直に配置された基材の表面に適用した場合にも得ることができる。
【0123】
好ましい実施形態において、基材は、織物、皮革、金属、コンクリート、ゴム、プラスチック、炭素繊維、およびそれらの組み合わせから選択される。本明細書で使用されるテキスタイルは、綿、ポリエステル、ナイロン、絹、羊毛、ビスコースおよびアクリルなどの織られたまたは編まれたテキスタイルファブリックを包含する。
【0124】
基材が作られる材料の種類にかかわらず、基材は、衣服、交通標識、車のシャーシ、自転車のフレーム、道路、舗道、およびガードレールからなる群から選択することができる。
【0125】
本発明による再帰反射性コーティングを備えた基材は、工程(e)において、1つ以上のさらなる透明コーティング層を備えてもよい。これらの1つ以上のさらなる透明コーティング層は、再帰反射層をスカッフィングおよび/または水分から保護する役割を果たすことができる。さらに、それらを使用して、再帰反射層でコーティングされた基材に特定の艶消しまたは艶/光沢のある外観を提供することができる。1つ以上のさらなる透明コーティング層は着色されていてもよい。任意の工程(e)において適用される1つ以上のさらなる透明コーティング層は、液体コーティング層、粉末コーティング層またはそれらの組み合わせを含み得、これらは、続いて硬化または乾燥される。
【0126】
工程(c)における噴霧は、好ましくはスプレーガンを使用して行われる。一実施形態では、噴霧は噴射剤を用いて行われる。好ましい実施形態では、噴霧は噴射剤を使用せずに行われる。
【0127】
任意の工程(d)における乾燥および工程(f)における乾燥または硬化は、周囲条件下で行うことができる。あるいは、高温および/または減圧下で行うことができる。
【0128】
好ましい実施形態において、水性擬塑性ゲル組成物は、工程(c)において、基材1m2当たり60~250gの量で、より好ましくは基材1m2当たり80~225gの量で、さらにより好ましくは基材1m2当たり90~205gの量で適用される。これらの量は、1工程で単一層として、またはその後の噴霧工程で互いの上に複数層として噴霧することができる。
【0129】
第6の態様において、本発明は、先に定義した方法によって得られる再帰反射層でコーティングされた基材に関する。再帰反射層で被覆された基材は、艶消しまたは光沢のある外観を有することができる。
【0130】
好ましい実施形態では、再帰反射層でコーティングされた基材は、好ましくは1つ以上のさらなる透明コーティング層でコーティングされている(すなわち、先に定義された基材をコーティングするための方法の工程(e)が行われる)は、コーティングされた基材の垂線から0~80°、例えば0~78°、0~75°、0~70°、0~65°、0~60°、0~55°、0~50°、0~45°、および0~40°の任意の角度で再帰反射層の再帰反射を示す。再帰反射層のこの再帰反射は、トーチのビームを再帰反射層に向けることによって決定され、ここで、目の視線はトーチのビームと実質的に一致し、再帰反射が観察されるかどうかを視覚的に決定することによって決定される。実験は、コーティングされた基材の垂線に対して0の角度で開始し、その後、再帰反射がもはや認められなくなるまで角度を徐々に増加させる。
【0131】
したがって、本発明は、上述の特定の実施形態を参照して記載されている。これらの実施形態は、当業者に周知の種々の改変および代替形態の影響を受けやすいことが認識される。
【0132】
さらに、本明細書およびその特許請求の範囲を適切に理解するために、「含む(to comprise)」という動詞およびその活用形は、その非限定的な意味で使用され具体的に言及されていない項目が除外されないことを意味するように、その非限定的な意味で使用されることを理解されたい。さらに、不定冠詞「a」または「an」による要素への言及は、その要素が1つしか存在しないことを文脈が明確に要求しない限り、その要素が2つ以上存在する可能性を排除しない。したがって、不定冠詞「a」または「an」は、通常、「少なくとも1つ」を意味する。
【0133】
[実施例]
<実施例1>
本発明による5つの水性擬塑性ゲル組成物を、周囲温度(約20℃)で成分を以下の順序で容器に添加することによって調製した:(1)脱塩水、(2)球状ガラスビーズ、(3)さらなる成分、(4)増粘剤。必要に応じて、AMP Ultra PC2000(さらなる成分)を添加してpHを調整した。得られた混合物を、再び周囲温度で約10分間混合した。種々の成分の量を表1に示す。以下の成分を使用した。
【0134】
球状ガラスビーズ
SFX 2.2(Jianxi Sunflex Light Retroreflective Material Co.,Ltd.から入手)、波長λ=589nmで測定した屈折率が約2.2であり、レーザー回折で測定したメジアン粒径D50が40.37μm、D10径が37.32μm、D90径が44.11μmであり、比重が約4.5g/cm3である。これらの球状ガラスビーズは、TiO2、BaO、ZnOおよびCaOを含む。
【0135】
さらなる成分
Kuncai Gold Finch 10~60μm、Kuncaiから入手。マイカ
Syntran KL219 CG、Interpolymerから入手;膜形成ポリマー
Optiphen、Ashland Specialty Ingredientsから入手;防腐剤
Syntran 5778、Interpolymerから入手;膜形成ポリマー
Citrofol、Jungbunzlauerから入手;可塑剤
Worlee Colour Yellow、Worleeから入手;顔料
AMP Ultra PC 2000、Angus Chemical Companyから入手;中和剤
Glitsa(登録商標) Normaal Gebruik Parketlak Kleurloos、Akzo Nobelから入手;水系寄木(parquet)ワニス
Ceta Bever(登録商標) Schuur&Tuinhuis Beits、Blank Transparant Zijdeglans、Akzo Nobel; 水系染色
Sikkens Autowave(商標) MM2.0、Akzo Nobelから入手、自動車用水性ベースコート
Acticide MBL、Thorから入手;防腐剤
【0136】
増粘剤
Carbopol(登録商標)Aqua SF-1、Lubrizolから入手、架橋アクリレートコポリマー増粘剤
Aquatix 8421、BYKから入手。 増粘剤、変性エチレン酢酸ビニルコポリマーワックスの非イオン性水性エマルジョン
Rheobyk-420、BYKから入手、変性尿素増粘剤
Rheovis(登録商標)AS 1152、BASFから入手、ASE増粘剤
ACULYN(商標) Excel、DOW Chemicalから入手、HASE増粘剤
【0137】
【0138】
<実施例2>
表1に示した5種の水性擬塑性ゲル組成物の安定性を、試料が沈降、離漿または分離(相またはその他)を示すかどうかの目視および触覚検査によって評価した。目視および触覚検査で沈降、離漿および分離が観察できない場合、試料は安定であると見なされる。合成直後の5つの組成物のpHおよびその後の安定性を表2に列挙する。
【0139】
【0140】
<実施例3>
表1に示す5つの組成物のレオロジー挙動を、プレート-プレート形状(PL40プレート)および0.5mmのギャップ距離を有するMalvern Kinexus Rheometerを用いて25.0℃の温度で測定した。
【0141】
本発明による5つの水性擬塑性ゲル組成物の粘度対せん断速度プロファイルを、約0.0001s
-1~1000s
-1の間で変化するせん断速度で、10試料/decadeで測定した。粘度対せん断速度プロファイルを
図1に示す。
図1から推測することができるように、全ての水性擬塑性ゲル組成物は剪断減粘挙動を示す。剪断速度0の限界における粘度対剪断速度プロファイルの形態は、組成物が降伏点を有さないことを示唆する。5種の水性擬塑性ゲル組成物は全て流動可能であった。
【0142】
続いて3つの剪断速度レジームを適用し、時間の関数として粘度を測定することによってチキソトロピー試験を実施した。第1のレジームでは、0.1s
-1の剪断速度を約30~60秒間適用し、粘度を2秒のサンプリング間隔で測定した。第2のレジームでは、剪断速度を100s
-1に増加させ、2秒のサンプリング間隔で30秒間粘度を測定した。第3のレジームでは、剪断速度を0.1s
-1に低下させ、1秒のサンプリング間隔で600秒間粘度を測定した。
図2は、
図1の5種の水性擬塑性ゲル組成物のチキソトロピー挙動を示す。
図2から推測することができるように、水性擬塑性ゲル組成物は全て、第3のレジームの開始から数秒以内に第1のレジームで測定された粘度の少なくとも50%を回復する。さらに、水性擬塑性ゲル組成物は、第1のレジームの粘度の値の約100%を回復することができる。
【0143】
さらに、周波数掃引試験を実施して、4つの水性擬塑性ゲル組成物の粘弾性挙動を評価した。損失弾性率G”、貯蔵弾性率G’およびtan(δ)を、線形粘弾性範囲内の適切な剪断歪みで、10Hz~0.1Hzの間で変動する振動周波数で、10サンプル/decadeで測定した。結果を
図3に示す。tan(δ)値は、振動周波数の範囲にわたって全て1未満であり、弾性挙動が粘性挙動を支配するという意味でゲル様挙動を示す。
【0144】
<実施例4>
実施例1に記載した5つの水性擬塑性ゲル組成物を、1.3mmのノズルを有するスプレーガン(DeViLBISS HVLP、DV1-C1 Plus)を用いて2.2バールの圧力で垂直に配置した平面金属試験プレート(10×15cm)に、基材1m2当たり約130gの量で塗布した。噴霧された層を周囲温度で風乾した。乾燥後、平滑性および均質性に関して非常に良好な品質を有する視覚的に魅力的な再帰反射層が得られた。したがって、垂直に配置された基板上への工業的な噴霧が、例えば垂れまたは不均質な層をもたらすことなく可能である。
【0145】
5つの水性擬塑性ゲル組成物でコーティングされた金属試験プレートを、透明な反応性Sikkens(登録商標)Aerodry 2成分ラッカー(Akzo Nobel)でさらにコーティングし、続いて硬化させた。得られた再帰反射層の再帰反射は、トーチのビームを再帰反射層に向け、眼の視線をトーチのビームと実質的に一致させ、再帰反射が観察されるか否かを視覚的に決定することによって決定した。実験は、コーティングされた基材の垂線に対して0の角度で開始し、その後、再帰反射がもはや認められなくなるまで角度を徐々に増加させる。再帰反射層で被覆された基材は、被覆基材の垂線から0~80°の全ての角度で再帰反射層の明瞭な再帰反射を示した。
【0146】
<実施例5>
実施例1の表1中の組成物の粘度は、10rpmで回転する#5スピンドルを使用するブルックフィールド粘度計で測定した。結果を表3に示す。
【0147】
【0148】
10rpmで回転する#5スピンドルを使用して得られるブルックフィールド粘度は、このように1.4~6Pa・sであり、これは、国際公開第00/42113A1号に開示されているようなスクリーン印刷(インク)に必要とされるより低い値をはるかに下回る。