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特許7620082センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法
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  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図1
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図2
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図3
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図4
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図5
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図6
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図7
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図8
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図9
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図10
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図11
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図12
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図13
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図14
  • 特許-センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法 図15
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20250115BHJP
   G05B 19/42 20060101ALI20250115BHJP
   B23K 9/127 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
B25J9/22 A
G05B19/42 J
B23K9/127 509B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023503769
(86)(22)【出願日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 JP2022007694
(87)【国際公開番号】W WO2022186054
(87)【国際公開日】2022-09-09
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2021032599
(32)【優先日】2021-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】内海 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂夫
(72)【発明者】
【氏名】松田 雄一
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-121637(JP,A)
【文献】特開2001-318715(JP,A)
【文献】特開2004-261878(JP,A)
【文献】特開2020-082287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/22
G05B 19/42
B23K 9/127
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する教示点生成装置であって、
前記ロボットに支持され、前記ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出するためのセンサと、
少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出部と、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する指令部と、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定部と、を備え、
前記探索点算出部による探索点の位置の算出と、前記指令部による前記ロボットの駆動と、前記教示点設定部による教示点の位置の設定とを含む設定制御を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定し、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記センサが作業位置を検出できない場合に、前記指令部は、予め定められた回転軸の周りに前記センサを回転するように前記ロボットを駆動し、
前記センサは、回転した後の位置において作業位置の検出を実施する、教示点生成装置。
【請求項2】
ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する教示点生成装置であって、
前記ロボットに支持され、前記ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出するためのセンサと、
少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出部と、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する指令部と、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定部と、を備え、
前記探索点算出部による探索点の位置の算出と、前記指令部による前記ロボットの駆動と、前記教示点設定部による教示点の位置の設定とを含む設定制御を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定し、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記センサが作業位置を検出できない場合に、前記探索点算出部は、教示点から探索点までの距離を現在の教示点から探索点までの距離よりも短くして、修正後の探索点の位置を算出し、
前記指令部は、前記ロボットの位置が修正後の探索点の位置に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動し、
前記センサは、作業位置の検出を実施する、教示点生成装置。
【請求項3】
前記ロボット装置の動作を手動にて操作する操作盤を備え、
前記操作盤は、教示点から探索点までの距離を調整可能な入力部を有する、請求項1または2に記載の教示点生成装置。
【請求項4】
前記探索点算出部は、教示点から探索点に向かう経路に沿った作業線が直線状の場合には、教示点から探索点までの距離を第1の距離に設定し、教示点から探索点に向かう経路に沿った作業線が曲線状の場合には、教示点から探索点までの距離を第1の距離よりも短い第2の距離に設定する、請求項1から3のいずれか一項に記載の教示点生成装置。
【請求項5】
作業の開始を示す教示点である開始教示点が予め定められており、
前記指令部は、開始教示点から予め定められた方向および予め定められた距離にて前記作業ツールをワークから退避させる制御を実施し、
前記作業ツールがワークから退避した状態を維持しながら前記設定制御を実施する、請求項1から4のいずれか一項に記載の教示点生成装置。
【請求項6】
作業の開始を示す教示点である開始教示点が予め定められており、
前記教示点設定部は、開始教示点から予め定められた方向および予め定められた距離にて前記作業ツールをワークから退避させた位置を、実際の作業を開始する前の接近点の位置として設定する制御と、作業の終了を示す教示点である終了教示点から予め定められた方向および予め定められた距離にて前記作業ツールをワークから退避させた位置を、実際の作業が終了した後の逃げ点の位置として設定する制御とを実施する、請求項1から5のいずれか一項に記載の教示点生成装置。
【請求項7】
前記ロボット装置の動作を手動にて操作する操作盤と、
前記設定制御にて生成された教示点に基づいて前記ロボットを駆動する再生制御を実施する再生制御部と、を備え、
前記操作盤は、前記ロボットの位置および姿勢を手動にて変更するように形成された入力部を有し、
前記再生制御部は、再生制御を実施しているときに、作業の終了を示す教示点である終了教示点の近傍の予め定められた範囲において、前記作業ツールの移動速度が低下するように前記ロボットの駆動速度を低下させる制御を実施し、作業者の前記操作盤の操作に応じて再生制御を停止し、
前記教示点設定部は、作業者の入力部の操作に応じて終了教示点の位置を修正する、請求項1から6のいずれか一項に記載の教示点生成装置。
【請求項8】
ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する教示点生成方法であって、
少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する駆動工程と、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記ロボットに支持されたセンサにて前記ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程と、
前記センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程と、を含み、
探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定し、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、前記センサにて作業位置を検出できない場合に、予め定められた回転軸の周りに前記センサを回転するように前記ロボットを駆動する工程と、前記センサが回転した後の位置において作業位置を検出する工程とを実施する、教示点生成方法。
【請求項9】
ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する教示点生成方法であって、
少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する駆動工程と、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記ロボットに支持されたセンサにて前記ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程と、
前記センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程と、を含み、
探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定し、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、前記センサにて作業位置を検出できない場合に、教示点から探索点までの距離を現在の教示点から探索点までの距離よりも短くして、修正後の探索点の位置を算出する工程と、
前記ロボットの位置が修正後の探索点の位置に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する工程と、
前記センサにて作業位置検出する工程と、を実施する、教示点生成方法。
【請求項10】
ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成するロボット制御装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え
前記少なくとも1つのプロセッサは、
少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する駆動工程と、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記ロボットに支持されたセンサにて前記ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程と、
前記センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程と、を実行し、
探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定し、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、前記センサにて作業位置を検出できない場合に、予め定められた回転軸の周りに前記センサを回転するように前記ロボットを駆動する工程と、前記センサが回転した後の位置において作業位置を検出する工程とを実行する、ロボット制御装置。
【請求項11】
ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成するロボット制御装置であって、
少なくとも1つのプロセッサを備え
前記少なくとも1つのプロセッサは、
少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する駆動工程と、
前記ロボットの位置が移動点まで移動した後に、前記ロボットに支持されたセンサにて前記ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程と、
前記センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程と、を実行し、
探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定し、
前記ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、前記センサにて作業位置を検出できない場合に、教示点から探索点までの距離を現在の教示点から探索点までの距離よりも短くして、修正後の探索点の位置を算出する工程と、
前記ロボットの位置が修正後の探索点の位置に対応する移動点まで移動するように前記ロボットを駆動する工程と、
前記センサにて作業位置を検出する工程と、を実行する、ロボット制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの出力に基づいて教示点を生成する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロボット装置は、ロボットと、ロボットに取り付けられた作業ツールと、ロボットを制御する制御装置とを備える。制御装置は、作業プログラムに基づいてロボットおよび作業ツールを駆動する。作業者は、作業を行っている期間中のロボットの位置および姿勢を定めるために、予め教示点を教示することができる。作業プログラムは、教示点の位置に基づいて作成される。
【0003】
教示点の位置は、ロボット装置が行う作業の品質に大きな影響を与える場合がある。例えば、アーク溶接を行うロボット装置においては、ロボットは、溶接トーチを教示点に基づいて定められる作業経路に沿って移動する。作業経路が所望の経路からずれている場合には、溶接を行う位置がずれてしまう。
【0004】
このような溶接を行う位置のずれを修正するために、溶接トーチにレーザセンサを配置して、溶接を行いながら作業経路を補正する制御が知られている。例えば、溶接を実施しながら、レーザセンサにて溶接を行うべき作業位置を検出する。制御装置は、作業プログラムにより定められる作業経路をレーザセンサにて検出した作業位置に基づいて補正することが知られている(例えば、特開平9-277045号公報および特開平8-166813号公報)。
【0005】
また、始点と終点とを指定することにより予め作業経路を生成し、ロボットの位置を作業経路に沿って進行させながら、レーザセンサにて検出した溶接を行う位置を教示点に設定する制御が知られている(例えば、特開平7-104831号公報)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-277045号公報
【文献】特開平8-166813号公報
【文献】特開平7-104831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ロボット装置が高い品質にて作業を行うためには、正確に教示点を設定することが好ましい。作業プログラムに定められる教示点は、例えば、作業者が教示操作盤を操作して、作業ツールが所望の位置および姿勢になるようにロボットの位置および姿勢を変更する。そして、ロボットの位置および姿勢が所望の位置および姿勢になったときに、教示点に設定する教示操作を行うことができる。
【0008】
ところが、この教示操作を行うことが難しい場合がある。例えば、アーク溶接を行うためにロボットの位置および姿勢を手動で調整する場合に、溶接を行うべき溶接線と溶接トーチの先端点との間の距離は短くなる。作業者は、溶接トーチの先端点の位置を1mm以下の精度で調整しなければならない場合がある。教示点は溶接線に沿って多く設定しなければならないために、作業時間が長くなる。更に、作業者は高い技量が必要になる。特に、溶接線が曲線を含む場合には、溶接線が延びる方向が変化する範囲にて多くの教示点を生成する必要がある。作業者は教示点の生成のために多大な時間を要するという問題がある。
【0009】
また、ロボット装置にレーザセンサを取り付けることにより、実際の溶接の作業を行いながら、レーザセンサの出力にて溶接を行う作業経路を補正することができる。しかしながら、この制御を実施するためには、予め教示点を設定しておく必要がある。換言すると、作業経路の基準となる教示点を予め定めておく必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の教示点生成装置は、ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する。教示点生成装置は、ロボットに支持され、ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出するためのセンサを備える。教示点生成装置は、少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出部と、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する指令部とを備える。教示点生成装置は、ロボットの位置が移動点まで移動した後に、センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定部を備える。教示点生成装置は、探索点算出部による探索点の位置の算出と、指令部によるロボットの駆動と、教示点設定部による教示点の位置の設定とを含む設定制御を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定する。ロボットの位置が移動点まで移動した後に、センサが作業位置を検出できない場合に、指令部は、予め定められた回転軸の周りにセンサを回転するようにロボットを駆動し、センサは、回転した後の位置において作業位置の検出を実施する。
本開示の第2の教示点生成装置は、ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する。教示点生成装置は、ロボットに支持され、ロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出するためのセンサを備える。教示点生成装置は、少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出部と、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する指令部とを備える。教示点生成装置は、ロボットの位置が移動点まで移動した後に、センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定部を備える。教示点生成装置は、探索点算出部による探索点の位置の算出と、指令部によるロボットの駆動と、教示点設定部による教示点の位置の設定とを含む設定制御を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定する。ロボットの位置が移動点まで移動した後に、センサが作業位置を検出できない場合に、探索点算出部は、教示点から探索点までの距離を現在の教示点から探索点までの距離よりも短くして、修正後の探索点の位置を算出し、指令部は、ロボットの位置が修正後の探索点の位置に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動し、センサは、作業位置の検出を実施する。
【0011】
本開示の第1の教示点生成方法は、ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する。教示点生成方法は、少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する駆動工程とを含む。教示点生成方法は、ロボットの位置が移動点まで移動した後に、ロボットに支持されたセンサにてロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程を含む。教示点生成方法は、センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程を含む。探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定する。ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、センサにて作業位置を検出できない場合に、予め定められた回転軸の周りにセンサを回転するようにロボットを駆動する工程と、センサが回転した後の位置において作業位置を検出する工程とを実施する。
本開示の第2の教示点生成方法は、ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する。教示点生成方法は、少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する駆動工程とを含む。教示点生成方法は、ロボットの位置が移動点まで移動した後に、ロボットに支持されたセンサにてロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程を含む。教示点生成方法は、センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程を含む。探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定する。ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、センサにて作業位置を検出できない場合に、教示点から探索点までの距離を現在の教示点から探索点までの距離よりも短くして、修正後の探索点の位置を算出する工程と、ロボットの位置が修正後の探索点の位置に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する工程と、センサにて作業位置検出する工程とを実施する。
本開示の第1のロボット制御装置は、ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する。ロボット制御装置は、少なくとも1つのプロセッサを備える。少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する駆動工程とを実行する。少なくとも1つのプロセッサは、ロボットの位置が移動点まで移動した後に、ロボットに支持されたセンサにてロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程と、センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程と、を実行する。少なくとも一つのプロセッサは、探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定する。少なくとも1つのプロセッサは、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、センサにて作業位置を検出できない場合に、予め定められた回転軸の周りにセンサを回転するようにロボットを駆動する工程と、センサが回転した後の位置において作業位置を検出する工程とを実行する。
本開示の第2のロボット制御装置は、ロボットおよび作業ツールを備えるロボット装置の教示点を生成する。ロボット制御装置は、少なくとも1つのプロセッサを備える。少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程と、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する駆動工程とを実行する。少なくとも1つのプロセッサは、ロボットの位置が移動点まで移動した後に、ロボットに支持されたセンサにてロボット装置がワークに対して作業を行う作業線上の作業位置を検出する位置検出工程と、センサにて検出される作業位置に基づいて教示点の位置を設定する教示点設定工程と、を実行する。少なくとも1つのプロセッサは、探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、作業線に沿った複数の教示点の位置を設定する。少なくとも1つのプロセッサは、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、センサにて作業位置を検出できない場合に、教示点から探索点までの距離を現在の教示点から探索点までの距離よりも短くして、修正後の探索点の位置を算出する工程を実行する。少なくとも1つのプロセッサは、ロボットの位置が修正後の探索点の位置に対応する移動点まで移動するようにロボットを駆動する工程と、センサにて作業位置を検出する工程と、を実行する。
【発明の効果】
【0012】
本開示の態様によれば、自動的に教示点の位置を設定する教示点生成装置、ロボット制御装置、および教示点生成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態におけるロボット装置の概略図である。
図2】実施の形態におけるロボット装置のブロック図である。
図3】実施の形態におけるロボット装置が溶接を行っているときのワークおよび溶接トーチの斜視図である。
図4】実施の形態における溶接トーチおよびレーザセンサの拡大斜視図である。
図5】溶接を開始する開始教示点を設定するときのワークおよび溶接トーチの斜視図である。
図6】開始教示点から溶接トーチを退避したときのワークおよび溶接トーチの斜視図である。
図7】探索点に対応する位置まで溶接トーチを移動するときのワークおよび溶接トーチの斜視図である。
図8】2個の教示点に基づいて、探索点および次の教示点の位置を設定する制御を説明する図である。
図9】2個の教示点に基づいて、探索点および次の教示点の位置を設定する制御を説明する他の図である。
図10】実施の形態における設定制御にて生成された教示点を説明する図である。
図11】溶接トーチが終了教示点に対応する位置まで進行したときのワークおよび溶接トーチの斜視図である。
図12】レーザセンサにて溶接を行う作業位置を検出できなかった場合の制御の第1の工程を説明する図である。
図13】レーザセンサにて溶接を行う作業位置を検出できなかった場合の制御の第2の工程を説明する図である。
図14】直線および曲線を含む溶接線に沿って溶接を行うときの溶接経路の図である。
図15】実施の形態における再生制御を実施している時のワークおよび溶接トーチの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1から図15を参照して、実施の形態における教示点生成装置および教示点生成方法について説明する。本実施の形態においては、複数のワークをアーク溶接にて固定するロボット装置を例示して説明する。
【0015】
図1は、本実施の形態におけるロボット装置の概略図である。図2は、本実施の形態におけるロボット装置のブロック図である。図1および図2を参照して、ロボット装置8は、作業ツールとしての溶接トーチ2と、溶接トーチ2を移動するロボット1とを備える。本実施の形態のロボット1は、複数の関節部を含む多関節ロボットである。
【0016】
ロボット1は、ベース部14と、ベース部14に支持された旋回ベース13とを含む。ベース部14は、設置面に固定されている。旋回ベース13は、ベース部14に対して回転する。ロボット1は、上部アーム11および下部アーム12を含む。下部アーム12は、関節部を介して旋回ベース13に支持されている。上部アーム11は、関節部を介して下部アーム12に支持されている。ロボット1は、上部アーム11の端部に連結されているリスト15を含む。リスト15は、関節部を介して上部アーム11に支持されている。溶接トーチ2は、リスト15のフランジ16に固定されている。なお、作業ツールは、溶接トーチに限られずに、ロボット装置が行う作業に応じた任意の装置を採用することができる。
【0017】
本実施の形態のロボット1は、6個の駆動軸を有する。ロボット1は、上部アーム11等のロボット1の構成部材を駆動するロボット駆動装置を含む。本実施の形態のロボット駆動装置は、上部アーム11、下部アーム12、旋回ベース13、およびリスト15を駆動するための複数のロボット駆動モータ22を含む。関節部において、ロボット1の構成部材の向きが変化することにより、ロボット1の位置および姿勢が変化する。
【0018】
ロボット装置8の制御装置10は、ロボット1を制御するロボット制御装置4を備える。ロボット制御装置4は、プロセッサとしてのCPU(Central Processing Unit)を有する演算処理装置(コンピュータ)を含む。演算処理装置は、CPUにバスを介して接続されたRAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)等を有する。
【0019】
ロボット装置8は、溶接トーチ2にワイヤー19を供給するためのワイヤー供給装置18を含む。ワイヤー供給装置18は、溶接を実施するに伴って消耗するワイヤー19を溶接トーチ2に供給する。本実施の形態のワイヤー供給装置18は、ロボット1に固定されている。
【0020】
ロボット装置8の制御装置10は、溶接トーチ2およびワイヤー供給装置18を制御する溶接制御装置5を含む。溶接制御装置5は、プロセッサとしてのCPUと、CPUにバスを介して接続されたRAM等を有する演算処理装置を含む。また、溶接制御装置5は、溶接トーチ2およびワイヤー供給装置18に電気を供給する電気回路を含む。溶接制御装置5は、ロボット制御装置4と互いに通信ができるように形成されている。溶接制御装置5は、ロボット1の動作に応じて、溶接トーチ2に電気を供給したり、ワイヤー19を供給したりする。本実施の形態の溶接制御装置5は、ロボット制御装置4に制御されている。
【0021】
ロボット制御装置4は、作業者がロボット装置8を手動にて操作する操作盤としての教示操作盤3を含む。教示操作盤3は、ロボット1および溶接トーチ2に関する情報を入力する入力部3aを含む。入力部3aは、キーボードおよびダイヤルなどの部材により構成されている。教示操作盤3は、ロボット装置8の制御に関する情報を表示する表示部3bを含む。表示部3bは、液晶表示パネル等の表示パネルにて構成されている。なお、表示部3bは、タッチパネル方式の表示パネルを含んでいても構わない。この場合には、表示部3bは、入力部3aの機能を有する。
【0022】
ロボット制御装置4は、動作プログラム40に従ってロボットおよび作業ツールを駆動する。本実施の形態の動作プログラム40は、ロボット装置8にて溶接などの予め定められた作業を実施するための作業プログラム41を含む。作業プログラム41に定められた教示点に基づいてロボット1の位置および姿勢を変更する。溶接制御装置5は、作業プログラム41に基づいて、溶接トーチ2に電流を供給したり、ワイヤー供給装置18を制御したりする。
【0023】
ロボット制御装置4は、ロボット1および溶接トーチ2の制御に関する情報を記憶する記憶部42を含む。記憶部42は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、またはハードディスク等の情報を記憶可能な非一時的な記憶媒体にて構成されることができる。作業プログラム41および教示点生成プログラム47を含む動作プログラム40は、記憶部42に記憶される。
【0024】
作業プログラム41には、ロボット装置8を駆動するための教示点が定められている。ロボット制御装置4は、ロボット1および溶接トーチ2の動作指令を送出する動作制御部43を含む。動作制御部43は、作業プログラム41に従って駆動するプロセッサに相当する。プロセッサは、作業プログラム41を読み込んで、作業プログラム41に定められた制御を実施することにより、動作制御部43として機能する。または、プロセッサは、処理部51からの指令または再生制御部60からの指令に基づいてロボット1を駆動することにより、動作制御部43として機能する。
【0025】
動作制御部43は、ロボット1を駆動するための動作指令をロボット駆動部45に送出する。ロボット駆動部45は、ロボット駆動モータ22を駆動する電気回路を含む。ロボット駆動部45は、動作指令に基づいてロボット駆動モータ22に電気を供給する。また、動作制御部43は、溶接トーチ2の動作を制御する。動作制御部43は、作業プログラム41に基づいて溶接トーチ2およびワイヤー供給装置18を駆動する動作指令を溶接制御装置5に送出する。溶接制御装置5は、動作指令に基づいて溶接トーチ2およびワイヤー供給装置18に電気を供給する。
【0026】
ロボット1は、ロボット1の位置および姿勢を検出するための状態検出器を含む。本実施の形態における状態検出器は、ロボット駆動モータ22に取り付けられた位置検出器23を含む。位置検出器23の出力により、それぞれの駆動軸におけるロボット1の部材の向きを取得することができる。例えば、位置検出器23は、ロボット駆動モータ22が駆動するときの回転角を検出する。本実施の形態では、複数の位置検出器23の出力に基づいて、ロボット1の位置および姿勢が検出される。
【0027】
本実施の形態のロボット装置8には、ワールド座標系71が設定されている。図1に示す例では、ロボット1のベース部14にワールド座標系71の原点が配置されている。ワールド座標系71は、ロボット装置8の基準座標系とも称される。ワールド座標系71は、原点の位置が固定され、更に、座標軸の向きが固定されている座標系である。ロボット1の位置および姿勢が変化してもワールド座標系71の位置および向きは変化しない。ワールド座標系71は、座標軸として、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を有する。また、X軸の周りの座標軸としてW軸が設定される。Y軸の周りの座標軸としてP軸が設定される。Z軸の周りの座標軸としてR軸が設定される。
【0028】
本実施の形態では、作業ツールの任意の位置に設定された原点を有するツール座標系が設定されている。本実施の形態のツール座標系72の原点は、ツール先端点に設定されている。ツール座標系72は、座標軸として、互いに直交するX軸、Y軸、およびZ軸を有する。ツール座標系72は、X軸の周りのW軸、Y軸の周りのP軸、およびZ軸の周りのR軸を有する。図1に示す例では、ツール座標系72は、原点がワイヤー19の先端点に設定されている。また、ツール座標系72は、Z軸の延びる方向が溶接トーチ2の先端から突出するワイヤー19の延びる方向と平行になるように設定されている。
【0029】
ロボット1の位置および姿勢が変化すると、ツール座標系72の原点の位置および向きが変化する。例えば、ロボット1の位置は、ツール先端点の位置(ツール座標系72の原点の位置)に対応する。また、ロボット1の姿勢は、ワールド座標系71に対するツール座標系72の向きに対応する。
【0030】
ロボット装置8は、ロボット1および溶接トーチ2を備えるロボット装置8の教示点を生成する教示点生成装置を備える。本実施の形態においては、ロボット制御装置4が、教示点生成装置として機能する。ロボット制御装置4は、ロボット装置8が作業を行うワークの作業線上の作業位置を検出するためのセンサとしてのレーザセンサ27を備える。本実施の形態では、レーザセンサ27の出力に基づいて、ワーク81,82の溶接線上の作業位置としての溶接位置を検出する。また、教示点を生成するためにロボット装置8を駆動する教示点生成プログラム47が予め生成されている。
【0031】
ロボット装置8が作業を行う作業位置を検出するためのセンサとしては、レーザセンサに限られず、作業位置を検出可能な任意のセンサを用いることができる。例えば、センサとしては、3次元センサを採用することができる。3次元センサとしては、光飛行時間方式により距離画像を撮像するTOF(Time of Flight)カメラまたは2台の2次元カメラにて撮像される視差により、3次元の位置を検出するステレオカメラなどを採用することができる。
【0032】
ロボット制御装置4は、レーザセンサ27の出力を処理して教示点を生成する処理部51を含む。処理部51は、レーザセンサ27の出力に基づいて、溶接トーチ2が作業を行う作業位置を検出する作業位置検出部52を含む。処理部51は、少なくとも一つの教示点に基づいて作業線に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出部53を含む。処理部51は、ロボット1の位置が探索点に対応する移動点まで移動するようにロボット1を駆動する指令部54を含む。また、処理部51は、ロボット1の位置が移動点まで移動した後に、レーザセンサ27にて検出される作業位置に基づいて教示点の位置の設定を実施する教示点設定部55を含む。本実施の形態の教示点の設定には、教示点の位置の設定および教示点におけるロボットの姿勢の設定が含まれる。
【0033】
処理部51、作業位置検出部52、探索点算出部53、指令部54、および教示点設定部55のそれぞれのユニットは、教示点生成プログラム47に従って駆動するプロセッサに相当する。プロセッサが教示点生成プログラム47を読み込んで、教示点生成プログラム47に定められた制御を実施することにより、それぞれのユニットとして機能する。
【0034】
図3に、本実施の形態におけるロボット装置にて溶接を行っているときのワークおよび溶接トーチの拡大斜視図を示す。図1および図3を参照して、本実施の形態においては、架台89の上面にワーク81が配置されている。ワーク81の上面にはワーク82が配置されている。本実施の形態のワーク81,82は板状の部材である。本実施の形態のワーク81,82のそれぞれの表面は平面である。ワーク81,82は図示しない冶具により架台89に固定されている。
【0035】
ロボット装置8は、ワーク81の上面とワーク82の端面とが接触する部分を溶接する。ワーク81の上面とワーク82の端面との境界線が作業を行うべき作業線としての溶接線WL1になる。ロボット制御装置4は、矢印91に示すように、溶接トーチ2のツール先端点が溶接線WL1に沿って移動するように、ロボット1の位置および姿勢を変更する。溶接を行った部分には、ビード80が形成される。本実施の形態の教示点生成装置は、このような作業を行うロボット装置8の教示点を生成する。
【0036】
図4に、本実施の形態における溶接トーチおよびレーザセンサの拡大斜視図を示す。本実施の形態におけるレーザセンサ27は、ロボット1に支持されている。レーザセンサ27は、溶接トーチ2に支持部材27aを介して固定されている。本実施の形態におけるレーザセンサ27は、予め定められた出射角度の照射範囲30にてレーザ光を出射する。照射範囲30は、平面状になる。特に、本実施の形態の照射範囲30は、扇形になる。図4には、ワークの平面状の表面に対してレーザ光を照射したときの状態が示されている。ワークの表面には照射範囲30に対応してレーザ光が照射される照射線32が画定される。本実施の形態においては、レーザセンサ27における予め定められた点と照射線32の幅Wの中点を通る線を、照射範囲30の中央線31と称する。
【0037】
レーザセンサ27としては、扇形の照射範囲30にてレーザ光を出射する機構を有する任意のセンサを採用することができる。例えば、レーザ光が偏向走査されるセンサを採用することができる。レーザ光が偏向走査されるセンサは、レーザ光の出射方向を変更する揺動ミラーを含む。揺動ミラーが揺動することにより、レーザ光が予め定められた出射角度の範囲内にて出射される。また、このレーザセンサは、ワークの表面で反射したレーザ光を受信する受光素子を含む。揺動ミラーにて出射されたレーザ光の向きおよび受光素子におけるレーザ光の位置に基づいて、ワークにおいてレーザ光が反射した位置を検出することができる。特に、照射範囲の幅方向に沿った位置およびレーザセンサからワークの表面までの距離を検出することができる。レーザ光が反射した位置は、レーザセンサに対して設定されたセンサの座標系で算出することができる。
【0038】
レーザ光がワークの表面で反射した位置は、センサの座標系により算出することができる。そして、レーザ光の走査により検出された複数の位置を結ぶ線を生成することができる。複数の位置を結ぶ線に基づいて、溶接線上の溶接位置を検出することができる。例えば、複数の位置を結ぶ線が屈曲する点を、溶接を行うべき溶接位置に設定することができる。また、ロボット1の位置および姿勢に基づいて、センサの座標系にて表現される溶接位置を、ワールド座標系71にて表現される溶接位置に変換することができる。
【0039】
図5に、溶接を開始する開始教示点にロボットの位置を配置したときのワークおよび溶接トーチの斜視図を示す。作業者は、始めに、溶接の開始を示す教示点である開始教示点TPSを設定する。作業者は、ロボット1を手動にて駆動することにより、開始教示点TPSを設定することができる。作業者は、教示操作盤3の入力部3aを操作して、ロボット1の位置および姿勢を変更する。そして、溶接の開始点にワイヤー19の先端部(ツール先端点)が配置されるように、ロボット1の位置を調整する。また、溶接トーチ2が、所望の狙い角および前進角になるように、ロボット1の姿勢を調整する。なお、本実施の形態では、前進角を例に取り上げて説明するが、後退角であっても構わない。
【0040】
この時に、作業者は、レーザセンサ27が溶接線WL1の延びる方向に配置されるように、リスト15のフランジ16の回転位置を調整することが好ましい。特に、溶接を行うべき溶接線WL1がレーザ光の照射範囲30内に入るように、レーザセンサ27を配置することが好ましい。
【0041】
このように、本実施の形態においては、開始教示点を予め設定する。なお、開始教示点は、任意の方法にて設定することができる。例えば、作業者は、教示操作盤3の入力部3aから所定の座標系の座標値を入力することにより、開始教示点TPSを設定しても構わない。次に、作業者が教示操作盤3の入力部3aを操作することにより、ロボット制御装置4は、自動的に教示点を生成する制御を開始する。
【0042】
図6に、開始教示点から予め定められた方向に溶接トーチを退避したときの斜視図を示す。図1図2および図6を参照して、処理部51の指令部54は、開始教示点TPSから予め定められた方向および予め定められた距離にて溶接トーチ2をワーク81,82から退避させる制御を実施する。ここでの例では、指令部54は、ツール座標系72のZ軸の方向に、溶接トーチ2を移動するように、ロボット1の位置を変更する。ロボット1の位置は、開始教示点TPSから移動点MPSに移動する。矢印93に示すように、ワイヤー19の先端点は、開始教示点TPSから離れる方向に移動する。溶接トーチ2を退避させる方向としては、ツール座標系72のZ軸の方向に限られず、ワーク81,82から離れる任意の方向を採用することができる。この時に、レーザセンサ27にて、溶接線WL1を撮像可能な方向および距離にて溶接トーチ2を移動させることが好ましい。
【0043】
ロボット制御装置4は、溶接線WL1に沿って溶接トーチ2を移動させながら教示点の位置を設定する設定制御を実施する。本実施の形態においては、溶接トーチ2がワーク81,82から退避した状態を維持しながら教示点の位置の設定を繰り返す。すなわち、ツール先端点が溶接線WL1から離れた状態にて、溶接トーチ2を溶接線WL1に沿った方向に移動させながら教示点の位置の設定を行う。
【0044】
本実施の形態では、教示点の位置を設定する設定制御を実施する期間中は、ロボット1は、予め定められた姿勢に設定される。例えば、作業者は、設定制御を行うためのロボット1の姿勢をロボット制御装置4に予め入力しておくことができる。または、作業者が開始教示点TPSを設定した時のロボット1の姿勢が維持されても構わない。
【0045】
始めに、教示点設定部55は、開始教示点TPSの位置に基づいて、教示点TP1の位置を設定する。レーザセンサ27のレーザ光の照射範囲30の内部に作業線としての溶接線WL1が配置されている。照射範囲30は、溶接線WL1が延びる方向に交差している。作業位置検出部52は、レーザセンサ27の出力に基づいて溶接線WL1の位置、すなわち、溶接を行うべき溶接位置を検出する。本実施の形態における教示点設定部55は、この溶接位置を教示点TP1の位置に設定する。
【0046】
図7に、次の教示点の位置を設定する制御を説明する溶接トーチおよびワークの斜視図を示す。図8に、次の教示点の位置を設定する制御を説明する図を示す。図7および図8を参照して、処理部51は、既に設定された教示点TPS,TP1に基づいて、溶接線WL1に沿った次の教示点TP2を生成する。
【0047】
探索点算出部53は、少なくとも一つの教示点に基づいて溶接線WL1に沿った次の教示点を定めるための探索点の位置を算出する探索点算出工程を実施する。探索点算出部53は、矢印94に示すように、開始教示点TPSから教示点TP1に延びる直線を算出する。探索点算出部53は、矢印95に示すように、矢印94の直線の延長上に探索点SP2を設定する。基準となる教示点から探索点までの距離は、予め定めておくことができる。ここでの例では、教示点TPSから探索点SP2までの直線の距離を予め定めておくことができる。
【0048】
次に、指令部54は、ロボット1の位置が探索点SP2に対応する移動点MP2まで移動するようにロボット1を駆動する駆動工程を実施する。指令部54は、探索点SP2に対応するロボット1の位置である移動点MP2の位置を算出する。指令部54は、教示点TP1から探索点SP2に向かう方向および距離(矢印95に示す方向および距離)と同じ方向および同じ距離にて、ロボット1の位置を移動点MPSから移動した移動点MP2の位置を算出する。指令部54は、算出された移動点MP2の位置にロボット1が配置されるようにロボット1を駆動する。指令部54は、矢印96に示すように、溶接トーチ2を移動する。
【0049】
次に、作業位置検出部52は、レーザセンサ27にて溶接線WL1上の作業位置を検出する位置検出工程を実施する。作業位置検出部52は、ロボット1の位置が探索点SP2に対応する移動点MP2まで移動した後に、ワーク81,82に対して溶接を行う溶接位置をレーザセンサ27の出力に基づいて検出する。
【0050】
次に、教示点設定部55は、レーザセンサ27にて検出される溶接位置に基づいて教示点に設定する教示点設定工程を実施する。本実施の形態の教示点設定部55は、作業位置検出部52から溶接位置を取得して、この溶接位置を教示点TP2の位置に設定する。図7および図8に示す例では、探索点SP2に対して教示点TP2が僅かにずれている。
【0051】
本実施の形態においては、このような探索点算出部53による探索点の位置の算出と、指令部54によるロボット1の駆動と、教示点設定部55による教示点の位置の設定とを含む制御を、設定制御と称する。ロボット制御装置4は、設定制御を繰り返すことにより、溶接線WL1に沿った複数の教示点を生成する。また、ロボット制御装置4は、複数の教示点の位置を設定する。換言すると、ロボット制御装置4は、探索点算出工程と、駆動工程と、位置検出工程と、教示点設定工程とを含む設定工程を繰り返すことにより、溶接線WL1に沿った複数の教示点の位置を設定する。
【0052】
図9に、次の教示点の位置を設定する制御を説明する図を示す。図7および図9を参照して、処理部51は、教示点TP2の位置を設定する設定制御と同様の設定制御を繰り返す。本実施の形態の処理部51は、至近の制御にて設定された教示点TP1および教示点TP2に基づいて教示点TP3を設定する。
【0053】
探索点算出部53は、矢印96に示すように、教示点TP1から教示点TP2に向かう直線を算出する。探索点算出部53は、矢印97に示すように、矢印96に示す直線の延長上に探索点SP3を設定する。教示点TP2から探索点SP3までの距離は、予め定められた距離を採用することができる。例えば、教示点TP2から探索点SP3までの距離は、教示点TPSから探索点SP2までの距離と同一にすることができる。探索点算出部53は、前回の設定制御にて設定された教示点TP2の位置と、前回の設定制御にて設定された教示点TP2よりも前に設定された教示点TP1の位置とに基づいて、次の教示点TP3を定めるための探索点SP3の位置を算出する。
【0054】
指令部54は、探索点SP3に対応する移動点の位置を算出する。指令部54は、探索点SP2から探索点SP3に向かう方向および距離を算出する。指令部54は、探索点SP2から探索点SP3に向かう方向および距離と、移動点MP2の位置とに基づいて探索点SP3に対応する移動点の位置を算出する。指令部54は、探索点SP3に対応する移動点までロボット1の位置を移動する。ここで、指令部54は、探索点SP3に照射範囲30の中央線31が通るように、ロボット1の位置を変更する。本実施の形態では、この時の照射線32の延びる方向は、移動点MP2においてワーク81,82にレーザ光を照射した時の照射線32と平行になる。
【0055】
作業位置検出部52は、ロボット1を探索点SP3に対応する移動点まで移動した後に、レーザセンサ27の出力に基づいて溶接位置を検出する。そして、教示点設定部55は、作業位置検出部52が検出した溶接位置に基づいて教示点TP3の位置に設定する。
【0056】
図10に、設定制御を繰り返すことにより生成された溶接経路を示す。教示点TPS,TP1,TP2,TP3を通る経路は、作業経路としての溶接経路WP1になる。このように、本実施の形態の教示点生成装置は、設定制御を繰り返すことにより、教示点を生成すると共に教示点の位置を設定することができる。また、本実施の形態の教示点生成方法では、設定工程を繰り返すことにより、教示点を生成すると共に教示点の位置を設定することができる。
【0057】
教示点設定部55は、教示点の位置に基づいて作業経路を算出することができる。教示点設定部55は、作業経路に基づいて、それぞれの教示点におけるロボット1の姿勢を設定することができる。例えば、教示点設定部55は、生成された作業経路に基づいて、溶接トーチの姿勢が予め定められた前進角または後退角、および予め定められた狙い角になるようにロボット1の姿勢を設定することができる。教示点設定部55は、それぞれの教示点ごとにロボット1の姿勢を算出することができる。
【0058】
本実施の形態の教示点生成装置および教示点生成方法では、予め基準となるロボットの経路を生成しなくても、教示点を生成することができる。また、自動的に教示点を生成することができるために、技量の少ない作業者でも教示点を容易に生成することができる。また、作業者は、短時間に教示点を生成することができる。更に、センサにて溶接線上の溶接位置を検出するために、正確な位置に教示点を設定することができる。
【0059】
本実施の形態では、探索点算出部53は、前回の設定制御にて設定された教示点の位置と、前回の設定制御にて設定された教示点よりも前に設定された教示点の位置とに基づいて、次の教示点を定めるための探索点の位置を算出している。この制御により、既に設定された教示点を用いて次の教示点の近傍に探索点を設定することができる。特に、本実施の形態の探索点算出部53は、前回の設定制御にて設定された教示点の位置と、2回前の設定制御にて設定された教示点の位置とに基づいて、探索点の位置を算出している。すなわち、探索点算出部53は、連続する2つの教示点の位置に基づいて探索点の位置を算出している。連続する2個の教示点の位置に基づいて探索点の位置を算出する制御により、探索点に算出する計算量を少なくすることができる。
【0060】
なお、探索点算出部53は、3個以上の教示点の位置に基づいて、次の教示点に対応する探索点の位置を算出しても構わない。例えば、探索点算出部は、3個以上の教示点の位置に基づいて最小2乗法により直線を算出し、この直線上に探索点を設定しても構わない。また、上記の実施の形態においては、複数の教示点を結ぶ直線の延長上に探索点を設定しているが、この形態に限られない。例えば、探索点算出部は、複数の教示点を通る円弧などの曲線の延長線上に探索点を設定しても構わない。
【0061】
本実施の形態では、溶接トーチ2がワーク81,82から退避した状態を維持しながら設定制御を実施している。この制御を実施することにより、溶接トーチ2が、ワーク81,82に衝突したり、ワーク81,82の周りに配置されている固定部材等に衝突したりことを回避できる。例えば、ワークが曲がっている場合には、溶接トーチが探索点に対応する移動点まで直線状に移動すると、溶接トーチがワークに衝突する場合がある。溶接トーチがワークから離れた状態にて教示点の位置を設定することにより、溶接トーチと他の物との衝突を回避することができる。なお、溶接トーチをワークから退避させずに、設定制御を実施しても構わない。すなわち、ツール先端点が溶接線の近傍に配置された状態を維持しながら教示点の位置を設定しても構わない。
【0062】
本実施の形態のセンサは、予め定められた出射角度の平面状の照射範囲30にてレーザ光を出射するレーザセンサ27である。この構成を採用することにより、レーザ光の照射範囲30の幅方向および照射範囲30の中央線31を用いて、溶接トーチ2の位置を制御することができる。
【0063】
図11に、設定制御を繰り返して、レーザセンサにより検出される溶接位置が溶接の終了点まで到達したときのワークおよび溶接トーチの斜視図を示す。図11に示す例では、開始教示点TPS、教示点TP1~TP4、および終了教示点TPEが示されている。設定制御を終了する条件は、予め定めてくことができる。例えば、設定制御を終了する探索点の位置の範囲を予め定めておくことができる。探索点算出部53にて算出される探索点が予め定められた位置の範囲内に到達したときに、その探索点に対応して検出される教示点を、作業の終了となる教示点である終了教示点TPEに設定することができる。
【0064】
または、終了教示点の位置の範囲を予め定めておくことができる。新たに生成された教示点が終了教示点の位置の範囲内の点である場合に、その教示点を終了教示点TPEに設定して、設定制御を終了することができる。
【0065】
または、ロボットの位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、作業位置検出部52がレーザセンサ27の出力に基づいて溶接位置を検出できない場合に設定制御を終了しても構わない。この場合に、教示点設定部55は、既に設定されている教示点のうち最後に設定された教示点を、終了教示点TPEに設定することができる。
【0066】
または、レーザ光が溶接の終了点の近傍まで到達したときに、作業者は、教示操作盤3を操作することにより設定制御を終了しても構わない。そして、作業者は、教示操作盤3を操作することにより溶接トーチ2を移動して、終了教示点TPEを設定しても構わない。
【0067】
図12に、レーザセンサにて溶接位置を検出できない場合の制御を説明する図を示す。図12に示す例においては、溶接線WL4に沿って教示点を生成する。溶接線WL4は、曲率半径の小さな曲線状の部分を有する。ここでの例では、開始教示点TPSおよび教示点TP1に基づいて探索点SP2が算出されている。更に、探索点SP2に対応する移動点にロボット1の位置を移動して、教示点TP2の位置が設定されている。
【0068】
次に、探索点算出部53は、教示点TP1,TP2の位置に基づいて探索点SP3の位置を算出する。指令部54は、探索点SP3に対応する移動点の位置を算出する。指令部54は、レーザ光の照射範囲30の中央線31が探索点SP3を通るように、ロボット1の位置を変更する。ところが、レーザ光の照射線32は、溶接線WL4から離れている。このために、作業位置検出部52は、レーザセンサ27の出力に基づいて溶接位置を検出することができない。このように、ロボット1の位置が移動点まで移動した後に、レーザセンサ27の出力により溶接位置を検出できない場合がある。
【0069】
この場合に、指令部54は、予め定められた回転軸101の周りにレーザセンサ27を回転するようにロボット1を駆動することができる。図4および図12を参照して、ここでの例では、ロボット1のフランジ16の駆動軸が回転軸101に設定されている。指令部54は、矢印92に示すように、回転軸101の周りに溶接トーチ2を回転する制御を実施する。溶接トーチ2が回転することにより、レーザセンサ27が回転する。
【0070】
レーザセンサ27を回転する角度は、予め定めておくことができる。例えば、指令部54は、矢印97に示す教示点TP2から探索点SP3に向かう方向に対して、予め定めらえた角度の範囲にてレーザセンサ27を回転することができる。指令部54は、予め定められた角度ごとにレーザセンサ27の回転を停止することができる。そして、作業位置検出部52は、回転した後の位置において作業位置の検出を実施する。
【0071】
図13に、レーザセンサを回転したときの図を示す。図12および図13を参照して、回転軸101の周りにレーザセンサ27を回転することにより、照射線32の範囲内に溶接線WL4が通る状態になる。作業位置検出部52は、レーザセンサ27の出力に基づいて溶接位置を検出することができる。
【0072】
このように、レーザセンサ27の出力から作業位置を検出できない場合に、レーザセンサ27を回転して溶接位置の検出を実施する周辺探索制御を実施することができる。教示点設定部55は、周辺探索制御にて検出された溶接位置を教示点TP3の位置に設定する。この制御を実施することにより、溶接線WL4がレーザセンサ27の照射範囲30の近傍に存在する場合に、溶接位置を検出することができる。
【0073】
本実施の形態においては、レーザセンサ27を回転する回転軸として、フランジ16の駆動軸を採用しているが、この形態に限られない。レーザセンサは、任意の回転軸の周りに回転することができる。例えば、回転軸は、ツール座標系72のZ軸を採用することができる。また、回転軸は、ツール先端点を通る任意の軸を採用することができる。更には、溶接トーチから離れた位置に設定された回転軸を採用しても構わない。なお、図6を参照して、この周辺探索制御は、開始教示点TPSから移動点MPSに溶接トーチ2を退避した位置において、レーザセンサ27の出力から次の教示点TP1を検出できない場合に実施しても構わない。
【0074】
更に、図12を参照して、ロボット1の位置が探索点に対応する移動点まで移動した後に、レーザセンサ27にて溶接位置を検出できない場合には、探索点算出部53は、矢印97に示す教示点TP2から探索点SP3までの距離を短くする制御を実施することができる。すなわち、探索点SP2に対応する移動点から探索点SP3に対応する移動点に向かうときの溶接トーチ2の移動距離を短くする制御を実施することができる。
【0075】
探索点算出部53は、教示点TP2から探索点までの距離を、現在の教示点TP2から探索点SP3までの距離よりも短く設定する。すなわち、矢印97に示す移動距離を短くして修正後の探索点の位置を算出する。教示点TP2から修正後の探索点までの距離の設定方法は、予め定めておくことができる。そして、指令部54は、修正後の探索点に対応する移動点までロボット1を駆動する。この後に、作業位置検出部52は、レーザセンサ27の出力に基づいて溶接位置の検出を実施する。
【0076】
このように、レーザセンサ27の出力に基づいて作業位置を検出できない場合に、教示点から探索点までの距離を短くする移動距離変更制御を実施することができる。この制御を実施することにより、既に生成されている教示点から探索点までの距離が短くなる。溶接線WL4が曲がっていたり、屈曲していたりしても、探索点から溶接線までの距離を短くすることができる。この結果、レーザセンサ27により溶接位置を検出できる可能性が向上する。なお、移動距離変更制御は繰り返して実施することができる。例えば、移動距離変更制御を実施して、教示点から探索点までの距離を短くしても作業位置を検出できない場合には、更に、移動距離変更制御を実施することができる。
【0077】
上記の周辺探索制御と移動距離変更制御とは、組み合わせて実施することができる。例えば、処理部51は、周辺探索制御を実施しても溶接位置を検出できない場合に、移動距離変更制御を実施することができる。または、処理部51は、移動距離変更制御を実施しても溶接位置を検出できない場合に、周辺探索制御を実施することができる。
【0078】
図14に、直線状の溶接線および曲線状の溶接線を含む溶接線に対して教示点の位置を設定する制御を説明する図を示す。溶接線WL5は、直線状の部分と曲線状の部分とを含む。図14においては、それぞれの教示点TP1~TP6におけるレーザ光の照射線32が溶接線WL5上に示されている。前述の通りに、溶接線が曲線状の場合には、ロボット1の位置が探索点まで移動した後に、溶接線上の溶接位置を検出できない場合が有る。
【0079】
そこで、探索点算出部53は、教示点から探索点に向かう経路に沿った溶接線WL5が直線状の場合には、教示点から探索点までの距離を第1の距離に設定することができる。それぞれの区間IL1では、溶接線WL5は直線状に延びるために、教示点から探索点までの距離は第1の距離に設定される。一方で、探索点算出部53は、教示点から探索点に向かう経路に沿った溶接線WL5が曲線状の場合には、教示点から探索点までの距離を第1の距離よりも小さな第2の距離に設定することができる。それぞれの区間IL2では、溶接線WL5は、曲線状に延びるために、教示点から探索点までの距離は、第2の距離に設定される。区間IL2における教示点同士の間隔は、区間IL1における教示点同士の間隔よりも狭くなる。
【0080】
第1の距離にて探索点を検出する区間と、第2の距離にて探索点を検出する区間とは予め定めておくことができる。例えば、探索点の位置について、第1の距離にて探索点を検出する区間IL1の範囲と、第2の距離にて探索点を検出する区間IL2の範囲とを予め定めておくことができる。
【0081】
または、作業者は、教示操作盤3の操作にて教示点から探索点までの距離を変更することができる。本実施の形態の教示操作盤3の入力部3aは、教示点から探索点までの距離を調整可能に形成されている。例えば、距離を変更する距離変更ボタンが入力部3aに配置されている。距離変更ボタンが押されていない場合に、探索点算出部53は、教示点から探索点までの距離を第1の距離に設定することができる。また、距離変更ボタンが押されている場合に、探索点算出部53は、教示点から探索点までの距離を第2の距離に設定することができる。
【0082】
作業者は、溶接トーチ2が移動しながら教示点の位置を設定している期間中に、溶接トーチ2の位置を確認する。作業者は、距離変更ボタンの操作により教示点から探索点までの距離を変更することができる。作業者は、設定制御を実施している期間中に、溶接トーチ2の位置に基づいて手動にて教示点から探索点までの距離を調整することができる。なお、3個以上の移動距離を変更する区間が設定されていても構わない。また、3種類以上の移動距離にて、移動距離を変更しても構わない。
【0083】
図15に、設定制御にて生成された教示点に基づいて実際にロボット装置を駆動するときのワークおよび溶接トーチの斜視図を示す。図2および図15を参照して、ロボット制御装置4は、設定制御にて生成された教示点に基づいてロボット1を駆動する再生制御を実施する再生制御部60を含む。再生制御部60は、教示点生成プログラム47に従って駆動するプロセッサに相当する。プロセッサは、教示点生成プログラム47を読み込んで、教示点生成プログラム47に定められた制御を実施することにより、再生制御部60として機能する。
【0084】
再生制御部60は、教示点設定部55にて設定された教示点の位置を取得する。また、再生制御部60は、教示点設定部55にて設定された教示点におけるロボット1の姿勢を取得する。なお、再生制御を行う時のロボット1の姿勢は、設定制御を実施している時のロボット1の姿勢を採用しても構わない。再生制御部60は、溶接制御装置5を駆動しない状態にて溶接トーチ2を移動するように、ロボット1を駆動する指令を動作制御部43に送出する。作業者は、実際に溶接を行う時のロボット1の位置および姿勢の変化を確認することができる。
【0085】
ワイヤー19の先端点(ツール先端点)は、溶接線WL1に沿って矢印99に示すように移動する。この時に、作業位置検出部52は、レーザセンサ27の出力に基づいて溶接位置を再び検出しても構わない。教示点設定部55は、作業位置検出部52にて検出した溶接位置に基づいて、既に生成された教示点の位置を修正しても構わない。
【0086】
本実施の形態における再生制御部60は、再生制御を実施している時に、作業の終了となる終了教示点TPEの近傍において、溶接トーチ2の移動速度を低下する。再生制御部60は、ロボット1の駆動速度を低下させる制御を実施する。溶接トーチ2の移動速度を低下するロボット1の位置の範囲は予め定めておくことができる。また、再生制御部60は、終了教示点TPEに近づくにつれて、徐々にロボット1の駆動速度を低下させても構わない。
【0087】
作業者は、終了教示点TPEの近傍において、教示操作盤3を操作することにより、再生制御を停止する。次に、作業者は、教示操作盤3の入力部3aを操作して手動にてロボット1を駆動することにより、終了教示点TPEの位置を設定することができる。すなわち、作業者は、終了教示点TPEの位置を修正することができる。教示点設定部55は、作業者の入力部3aの操作に応じて終了教示点TPEの位置を修正する。修正後の教示点は、記憶部42に記憶させることができる。
【0088】
例えば、作業位置検出部52が溶接位置を検出できない場合に、設定制御を終了する場合がある。終了教示点は、所望の終了教示点からずれて設定される場合が有る。この場合に、作業者が手動にて終了教示点を修正することができる。または、溶接を終了する終了教示点は、ワークの品質に大きく影響する重要な教示点であるために、作業者により正確な終了教示点の位置を設定することができる。
【0089】
本実施の形態の再生制御部60は、終了教示点の近傍の予め定められた範囲において、ロボット1の駆動速度を低下させる制御を実施する。この制御を行うことにより溶接トーチ2の移動速度が低くなるために、作業者は、容易に所望の位置にてロボット1を停止させることができる。
【0090】
ところで、実際に溶接の作業を行う場合には、ロボット装置8は、実際の作業を開始する前に溶接トーチ2の先端点を開始教示点TPSの近くの移動点に配置した後に、溶接トーチ2を開始教示点TPSに近づける制御を実施する。このような開始教示点TPSの近くの移動点は、接近点と称される。すなわち、ロボット制御装置4は、ロボット1の位置を接近点に配置した後に、開始教示点TPSに配置する。
【0091】
図6を参照して、教示点設定部55は、開始教示点TPSから予め定められた方向および予め定められた距離にて溶接トーチ2を退避させたロボット1の位置および姿勢を接近点として設定することができる。例えば、教示点設定部55は、開始教示点TPSからツール座標系のZ軸の方向に溶接トーチ2を退避させた点を接近点として設定することができる。この制御により、作業者が接近点を教示しなくても、処理部51は、自動的に接近点に対応する教示点を生成することができる。また、処理部51は、複数の教示点を生成する制御を実施している期間中に、接近点を生成することができる。作業者が設定する教示点の個数を減らすことができる。
【0092】
また、図15を参照して、実際の溶接の作業が終了した場合には、ロボット装置8は、溶接トーチ2の先端点をワーク81,82から離れた点に配置した後に、次の作業を行うためにロボット1の位置および姿勢を変更する。すなわち、ロボット制御装置4は、ロボット1の位置を終了教示点TPEから退避した移動点に配置した後に、次の作業を行うためにロボット1の位置および姿勢を変更する。この移動点は、逃げ点と称される。本実施の形態の教示点設定部55は、終了教示点TPEが設定された場合に、自動的に逃げ点を設定することができる。
【0093】
教示点設定部55は、矢印100に示すように、終了教示点TPEから予め定められた方向および予め定められた距離にて溶接トーチ2をワーク81,82から退避させたロボット1の位置を逃げ点として設定することができる。例えば、教示点設定部55は、終了教示点TPEからツール座標系のZ軸の方向に溶接トーチ2を退避させた移動点を逃げ点として設定することができる。この制御により、作業者が逃げ点を教示しなくても、処理部51は、自動的に逃げ点に対応する教示点を生成することができる。作業者が設定する教示点の個数を減らすことができる。
【0094】
本実施の形態では、2つの部材が接触して角となる部分の溶接を行う隅肉溶接を例に取り上げて説明しているが、この形態に限られない。2つの部材の端面同士が対向するように溶接を行う突合せ溶接にも、本実施の形態の教示点を生成する制御を実施することができる。また、本実施の形態のワークの表面は平面であるが、この形態に限られない。曲面を含むワークに作業を行う場合にも、本実施の形態の制御を適用することができる。例えば、曲面に対して作業を行う場合に、教示点から探索点までの距離を短くすることにより、本実施の形態の制御を実施することができる。
【0095】
更に、本実施の形態では、アーク溶接を行うロボット装置を例に取り上げて説明しているが、この形態に限られない。作業線に沿って作業を行う任意のロボット装置に本実施の形態の制御を適用することができる。例えば、レーザ溶接を行うロボット装置または接着剤を塗布する作業ツールを備えるロボット装置に、本実施の形態における制御を適用することができる。
【0096】
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相等する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、請求の範囲に示される実施の形態の変更が含まれている。
【符号の説明】
【0097】
1 ロボット
2 溶接トーチ
3 教示操作盤
3a 入力部
4 ロボット制御装置
8 ロボット装置
10 制御装置
27 レーザセンサ
30 照射範囲
31 中央線
32 照射線
40 動作プログラム
52 作業位置検出部
53 探索点算出部
54 指令部
55 教示点設定部
60 再生制御部
81,82 ワーク
101 回転軸
TP1~TP6 教示点
SP1~SP3 探索点
MP2 移動点
WL1,WL4,WL5 溶接線
図1
図2
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