(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】超マクロポーラスZEO-1分子ふるい、その合成方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20250115BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20250115BHJP
B01J 37/10 20060101ALI20250115BHJP
B01J 29/70 20060101ALI20250115BHJP
B01J 29/89 20060101ALI20250115BHJP
B01J 20/18 20060101ALI20250115BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J37/08
B01J37/10
B01J29/70 M
B01J29/89 M
B01J20/18 A
B01J20/18 C
B01J20/30
(21)【出願番号】P 2023532663
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(86)【国際出願番号】 CN2021129234
(87)【国際公開番号】W WO2022111261
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】202011346698.4
(32)【優先日】2020-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111262220.8
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524315916
【氏名又は名称】吉林省吉諾貝爾科創有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲飛▼▲剣▼
(72)【発明者】
【氏名】高 子豪
(72)【発明者】
【氏名】黎 建
【審査官】玉井 一輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-536240(JP,A)
【文献】特表2013-511462(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105217651(CN,A)
【文献】特開平09-077511(JP,A)
【文献】特表2004-530620(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101696019(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 -39/54
B01J 21/00 -38/74
B01J 20/00 -20/28
20/30 -20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(TiO
2)
y・(HAO
2)
x・SiO
2(式中、Aはホウ素族元
素であり;0≦x≦1.
0であり;0≦y<0.
2である)の化学組成を有することを特徴とする、シリケート分子ふるい
であって、
分子ふるいの結晶構造が、(16+12)×(16+12)×(16+12)員環の三次元交差チャネルシステムを有し、下の表2に示されるX線粉末回折特性を有することを特徴とする、シリケート分子ふるい。
【表1】
【請求項2】
分子ふるいのフレームワークが、下の表1に示される位相幾何学的特徴を有することを特徴とする、請求項1に記載のシリケート分子ふるい。
【表2】
【請求項3】
(TiO
2
)
y
・(HAO
2
)
x
・SiO
2
において、AはAl又はBである、請求項1又は2に記載のシリケート分子ふるい。
【請求項4】
(TiO
2
)
y
・(HAO
2
)
x
・SiO
2
において、0.01≦x≦0.1であり、0.01≦y≦0.1である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリケート分子ふるい。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のシリケート分子ふるいの合成方法であって、
(1)ケイ素源、ホウ素族元素化合物、有機テンプレート、水、鉱化剤、及び任意選択により場合によってチタン源を混合して、混合物を得る工程;
(2)前記混合物を結晶化させる工程;
(3)結晶化された生成物をか焼して、テンプレートを除去する工程
を含み、
前記有機テンプレートが、以下の一般式:
【化1】
(式中、R
1がシクロヘキシルであり;R
2及びR
3がフェニル又はシクロヘキシルであり;R
4がC
1~8アルキ
ルであり;Xがリン又は窒
素である)
によって表される四面体空間配置を有する、方法。
【請求項6】
前記有機テンプレートが、以下の
【化2】
から選択される任意の1つ又は複
数
であることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(1)撹拌下で、ケイ素源、ホウ素族元素化合物、有機テンプレート、水、鉱化剤、及び任意選択により場合によってチタン源を割合において均一に混合し、rROH:aHF:yTiO
2:xA
2O
3:SiO
2:wH
2O(式中、Rは有機テンプレートの正電荷基を表し;Aはホウ素族元
素であり;r、a、x、及びwの対応する値の範囲が、r=0.1~5.0、a=0~5.0、x=0~1.0、y=0~0.2、w=1~10
0である)の化学組成を有する、得られた混合物によって反応ゲルを形成する工程;
(2)結晶化のために、前記反応ゲルを赤外線ランプ下又はオーブン内に配置し、過剰量の溶媒の除去後、反応ゲルをステンレス鋼オートクレーブに移して、密封条件下、かつ80~240
℃の温度において、1~60日
間反応させる工程;
(3)結晶化した生成物を洗浄し、乾燥させた後、これを400~650℃において、空気雰囲気中で2~5時間か焼して、テンプレートを除去する工程
を含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ケイ素源が、ケイ酸、シリカゲル、シリカゾル、オルトケイ酸テトラアルキル、及び水ガラスからなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項5~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ホウ素族元素化合物が、メタアルミン酸ナトリウム、アルミニウムイソプロポキシド、硫酸アルミニウム十六水和物、水酸化アルミニウム、及びホウ酸からなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項5~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
チタン源が、オルトチタン酸テトラブチル、四塩化チタン、三塩化チタン、及び硫酸チタンのうちの1つ又は2つ以上の混合物であることを特徴とする、請求項5~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
鉱化剤が、有機テンプレートのアルカリ水溶液由来のOH
-か、又は更に添加されるHF若しくはNH
4F由来のF
-であることを特徴とする、請求項5~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(2)における結晶化条件が、80~240
℃の結晶化温度、及び1~60日
間の結晶化時間を含むことを特徴とする、請求項5~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
混合物
が0.01質量ppm~10000質量ppmの種結晶を更に含むことを特徴とする、請求項5~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
種結晶が、請求項1~4のいずれか一項に記載の分子ふるいを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1~4のいずれか一項に記載の分子ふるい
、及び結合剤を含む、分子ふるい組成物。
【請求項16】
吸着剤又は触媒としての、請求項15に記載の分子ふるい組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特大のポア(細孔, pore)を有するシリケート分子ふるいZEO-1に関し、さらに、その合成方法、分子ふるいを含む分子ふるい組成物及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
分子ふるい物質は、共通の頂点を介したTO4(Tは、通常の環境下で原子価+4又は+3を有する酸化状態の原子、例えばSi、P、Al、B、Ge、Ga等を表し、T原子は四面体原子、すなわち、分子ふるいの骨格に関与する骨格原子を意味する)四面体により構成される、無機マイクロポーラス固体物質のカテゴリーである。一般的に、分子ふるいの組成は、以下の実験化学式:x(M1/nAO2):yYO2:zR:qH2O(式中、Mは原子価+nを有する1つ又は複数の有機又は無機カチオンを表し、Aは1つ又は複数の三価元素を表し、Yは1つ又は複数の四価元素、通常Siを表し、Rは1つ又は複数の有機分子を表す)により表すことができる。特定の合成方法により得られる特定の構造を有する分子ふるいでは、それが新たに合成された生成物であれ、か焼処理後の試料であれ、その化学組成は通常、特定の範囲の変動を有する。更に、分子ふるいの様々な結晶学的な構造は異なるチャネル構造を有し、X線粉末回折パターンにおいて完全に異なる回折パターンが得られることから、特定の構造を有する分子ふるいを区別するのに、X線粉末回折(XRD)が一般的に使用される。分子ふるいの最も重要な特質は、それらの変動可能なチャネル化学組成、調節可能なチャネルサイズ及びチャネル形状である。これらの優れた特質が、分子ふるい物質に、吸着、分離、触媒反応、マイクロエレクトロニクス、及び医療診断の分野における広範囲の用途を与える。
【0003】
異なる構造の分子ふるい物質の独自性は、それらの独自のX線粉末回折パターン及び異なる化学組成に反映される。X線粉末回折パターンにおけるピークの位置、相対強度及び幅は、化学組成、結晶サイズ及び結晶形状等に関連し、異なる試料のX線粉末回折パターンは、単位胞パラメーターの変動の影響を受けることもあり、パターンの差をわずかに引き起こしうる。更に、異なる構造の分子ふるい物質の独自性は、それら独自の位相幾何学的特質にも反映されうる。International Zeolite AssociationのStructure Commissionによる定義及び解釈によれば、特定の分子ふるい位相幾何学的フレームワークについて、配位シークエンス及び頂点記号が、組み合わされると他に類がなく、すなわち、これらは、異なる分子ふるいフレームワーク構造を明確に区別するのに使用可能である(International Molecular Sieve Associationの公式ウェブサイトhttps://europe.iza-structure.org/IZA-SC/DatabaseHelp_Structures.html#CSを参照のこと)。一般的に既知のLinde A型(ゼオライトA、US2882243を参照されたい)、ゼオライトY(US3130007を参照されたい)、ZSM-11分子ふるい(US3709979を参照されたい)、ZSM-12分子ふるい(US3832449を参照されたい)等の分子ふるいについて、これらは全て特異なX線回折パターンを有する。
【0004】
一方、同じ構造を有するゼオライトは一般的に、同じXRDパターンを有する。しかし、類似のXRDパターン及び同じ構造を有する2種のゼオライト物質は、フレームワーク元素が異なれば異なる物質と考えられる。典型例は分子ふるいTS-1(US4410501を参照されたい)及びZSM-5(US3702886を参照されたい)であり、ともにMFI位相幾何学的構造を有する。これらは、異なるフレームワーク元素ゆえに2種の異なる分子ふるい物質であるが、同じXRDパターンを有する。具体的には、ZSM-5分子ふるいはフレームワーク元素としてSi及びAlを含有し、ゆえに酸触媒反応の分野において主に使用され、一方でTS-1分子ふるいはフレームワークにSi及びTiを含有し、酸化工程中の触媒として主に使用される。
【0005】
更に、同じ位相幾何学的構造、すなわち、同じXRDパターン、及び同じ種類のフレームワーク元素を有するが、異なる相対含有量のフレームワーク元素を有するものも、異なる分子ふるいに属することがある。例えば、ゼオライトX(US2882244を参照されたい)及びゼオライトY(US3130007を参照されたい)は異なる分子ふるい物質と考えられ、ともにFAU位相幾何学的構造を有し、同じXRDパターンを有し、フレームワーク元素としてSi及びAlを含有するが、Si及びAlの相対含有量において異なる。
【0006】
チャネルの環の数に従って、分子ふるい物質は、窓環(window ring)8員環以下、10員環以下、12員環以下、及び12員環超に対応する、小ポア、中ポア、大ポア、及び特大ポア分子ふるいに分けられる。産業においてうまく応用されてきた分子ふるい物質のチャネルサイズは通常1nm未満であり、このことが、吸着、分離、及び触媒反応工程における反応基質の分子サイズ及び形状を大きく限定し、分子ふるい物質の実際の用途における制約となってきた。1nm~2nmの範囲のチャネル直径を有する安定な特大ポア分子ふるい、更にメソポーラス分子ふるいを開発しこれを得ることは、無機化学者にとって常に大きな挑戦であった。このクラスの物質は、石油化学、ファインケミカル、及び生命科学等の分野における新規の触媒用途への道を開くはずである。
【0007】
シリケート物質の安定性により、シリケート特大ポア分子ふるい物質は、重要な用途の展望を有する。しかし、大ポア及び特大ポアシリケート分子ふるいは得るのが非常に困難であり、特大ポアチャネル構造を含有する既に合成されたシリケート分子ふるい物質は、数の上で非常に限定されることがよく知られている。これまでに、16員環超(16員環を含む)、例えば30員環ITQ-37[J. Sun et. al., Nature, 2009, 458, 1154-1157]、28員環ITQ-43[J. Jiang et. al., Science, 2011, 333, 1131-1134]及び18員環ITQ-33[A. Corma et. al., Nature 2006, 443, 842-845]、NUD-1[F.-J. Chen et. al., Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53,9592-9596]及びECR-34[K. G. Strohmaier et. al., J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 16035-16039]等を有する20種以下の特大ポアシリケート分子ふるい物質が存在するが、これらの言及された物質の大部分はゲルマノシリケート分子ふるいである。高価であることに加えて、ゲルマノシリケート分子ふるいは水を吸着し、次いでチャネルにおける有機物の除去後急速にフレームワーク崩壊を引き起こし、このことが、その大規模産業用途を厳しく限定しているのが実情である。
【0008】
広く産業化されているか又は産業触媒用途を有する分子ふるいは全て、多次元チャネルを有する分子ふるい、例えばZSM-5、ゼオライトY、ゼオライトA等である。これまで、報告された既知の構造を有する新規の分子ふるい全ての中で、安定な、純シリカ又は高シリカ特大ポア分子ふるいは全て、多次元特大ポアチャネルを有しない。多次元特大ポアを含有する分子ふるいは全て、常にゲルマノシリケートゼオライト又はアルミノホスフェート分子ふるい物質であり、それらの安定性及び高コストがそれらの用途を限定する。
【0009】
WO2013019462A1は、合成特大ポアシリケート分子ふるいEMM-23及びその合成方法を開示している。この方法は、純シリカフレームワークを有する物質を得るため、合成にジ四級アンモニウムカチオンを使用し、EMM-23のオープンチャネルは調節可能な21~24員環のものである。しかし、この構造はSi-OH(シラノール基)を含み、これがEMM-23のポアの利用可能な体積に影響を及ぼし、構造安定性を低下させる。
【0010】
US5489424は、特大ポアシリケート分子ふるいUTD-1及びその調製方法を開示しており、その有機構造指向剤は複雑な金属錯体(ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルトカチオン)である。US6043179は、特大ポアシリケート分子ふるいCIT-5及びその調製方法を開示しており、その有機構造指向剤は複雑な薬物誘導体(メチルスパルテイニウム(methylsparteinium)カチオン)である。これら2種の物質は、以下2つの欠点により産業において広く使用されていない:(1)これら2種のゼオライト構造は一次元14員環チャネルしか含有せず、このことが産業での触媒反応に必要な多次元チャネルの要件を満たさない、(2)これら2種の物質の合成に使用される有機テンプレートは極めて高価であり、ゆえに商業化のコストを増大させる。
【0011】
CN104370296Aは、特大ポアシリケート分子ふるいNUD-1及びその合成方法を開示する。このゼオライト構造は、二重四員環、三員環及び二重三員環がそれぞれ交互に連結し、それにより、十員環及び十二員環が交互に存在するチャネル構造を形成し、これら2種のチャネルがそれぞれ18員環チャネルと交差することを示す。しかし、分子ふるいはゲルマニウム含有分子ふるいである。
【0012】
したがって、多次元特大ポアを有する、ゲルマニウム不含、低コスト、且つ安定なシリケート分子ふるい物質の必要性が存在する。
【0013】
一方で、チタノシリカ分子ふるいは、1980年代初めから開発されてきた、ヘテロ原子を含んでいる新たな種類の分子ふるいである。現時点では、既知のチタノシリケートゼオライトは、MFI構造を有するTS-1、MEL構造を有するTS-2、ベータゼオライトTi-ベータ、並びにメソポーラス物質Ti-MCM-41及びTi-MCM-48等である。この種類の分子ふるいは、多くの有機酸化反応、例えばオレフィンエポキシ化、芳香族化合物の水酸化、シクロヘキサノンのオキシム化、アルコールの酸化等において、優れた触媒活性及び特異的酸化能を有する。これらは、酸化還元分子ふるい触媒として、産業において重要な応用価値を有する。一例としてTS-1を挙げると、Marco Taramasso et al., from Italyが、1981年にその調製方法を最初に開示した(GB2071071A、USP4410501を参照されたい)。これは、このゼオライト中のチタン原子による、有機化合物に対する良好な触媒酸化効果を有するだけでなく、高い安定性とともにZSM-5分子ふるいの形状選択効果も有する。TS-1が関与する有機物の酸化反応において、低濃度の過酸化水素が、良好な選択性を有する酸化剤として使用可能であり、このことにより、伝統的な酸化系と比較して、従来の酸化工程における産業上の複雑さ及び環境汚染等の問題が回避され、省エネルギー及び環境保護という比類ない利点が実現されうる。Dalian Institute of Chemical Physics in Chinaからの Li Canらによる研究によれば、フレームワークTi原子の直接的証拠は、紫外-可視吸収スペクトルにおける約220nmにおける吸収ピークであり、これがゼオライトフレームワーク中の四配位Ti原子を示し(Angew. Chem. Int. Ed., 1999, 38, 2220-2222を参照されたい)、四配位Ti原子が触媒反応中の活性中心である。
【0014】
TS-1及びTS-2のポアサイズは約5.5オングストロームであり、Ti-ベータでは6.5オングストロームである。良好な形状選択性を有するには、反応物分子のサイズはゼオライトポアサイズより小さくあるべきであり、このことが言及されたゼオライト物質の更なる用途を極度に限定する。一方、一般的に、Ti-MCM-41及びTi-MCM-48は、15~100オングストロームサイズの調節可能なメソポアのみを有する。それゆえ、7~15オングストロームマイクロポアを含むチタノシリケートゼオライト物質がないが、これが必要であって、このポアサイズ(細孔サイズ)はちょうど、多数の高価値の化学物質の分子サイズの範囲である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第2882243号明細書
【文献】米国特許第3130007号明細書
【文献】米国特許第3709979号明細書
【文献】米国特許第3832449号明細書
【文献】米国特許第4410501号明細書
【文献】米国特許第3702886号明細書
【文献】米国特許第2882244号明細書
【文献】国際公開第2013/019462A1号
【文献】米国特許第5489424号明細書
【文献】米国特許第6043179号明細書
【文献】中国特許出願公開第104370296A号
【文献】英国特許出願公開第2071071A号
【文献】米国特許第P4410501号明細書
【非特許文献】
【0016】
【文献】https://europe.iza-structure.org/IZA-SC/DatabaseHelp_Structures.html#CS
【文献】J. Sunら, Nature, 2009, 458, 1154-1157
【文献】J. Jiangら, Science, 2011, 333, 1131-1134
【文献】A. Cormaら, Nature 2006, 443, 842-845
【文献】F.-J. Chenら, Angew. Chem. Int. Ed. 2014, 53,9592-9596
【文献】K. G. Strohmaierら, J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 16035-16039
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 1999, 38, 2220-2222
【文献】https://topospro.com/software/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
第1の態様において、本発明は、全く新しい特大ポア(extra-large pore)のシリケート分子ふるいZEO-1を提供する。これは、ゲルマニウムを含まず、高シリカ又は純シリカの特大ポアの分子ふるい物質であり、非常に重要な実用価値を有するだけでなく、分子ふるい構造ファミリーを豊富にするのに非常に重要な理論上の意義のあるものでもある。本発明の超マクロポーラスシリケート分子ふるいは、超マクロポーラス分子ふるい物質のファミリーに新たなメンバーを加えるだけでなく、産業上の触媒反応におけるそのような分子ふるい物質の使用についての新たな選択肢を提供する。更に、チタン原子が本発明のゼオライトZEO-1のフレームワーク中にうまく導入され、チタノシリケートの特大ポアのゼオライトの分野における不足を補い、産業上の触媒反応における分子ふるい物質の使用についての新たな選択肢を提供し、重要な実用価値を有する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のZEO-1分子ふるいは、(TiO2)y・(HAO2)x・SiO2(式中、Aはホウ素族元素、好ましくはAl又はBであり;0≦x≦1.0、好ましくは0≦x≦0.5、より好ましくは0≦x<0.2、最も好ましくは0.01≦x≦0.1であり;0≦y<0.2、好ましくは0.01≦y≦0.1である)の化学組成を有する。
【0019】
分子ふるいのフレームワークは、以下の表1に示される位相幾何学的特徴を有する。
【0020】
【0021】
T1~T21は、本発明の特大ポアゼオライトZEO-1の構造の、21個の位相幾何学的に特異なT原子を表し、N1~N12は、第1のシェル~第12のシェルのこれらのT原子の配位シークエンスを表す。T原子の命名の異なる順序により、異なる順序で命名された21個の位相幾何学的に独立したT原子は、この表における順序でのT原子の配位シークエンス及び頂点記号に1対1で対応しないことがありえるが、ZEO-1位相幾何学に属する構造は、この表における21個の位相幾何学的に独立したT原子の配位シークエンス及び頂点記号を全て含み、且つこれらのみを含み、配位シークエンス及び頂点記号は1対1で対応する。
【0022】
分子ふるいの結晶学的な構造は、(16+12)×(16+12)×(16+12)員環の三次元交差チャネルシステムを有する。
【0023】
分子ふるいは、以下の表2に示されているX線粉末回折特性を有する。
【0024】
【0025】
上記データにおいて、w、mw、m、s、及びvsは回折ピークの相対強度を表し、wは弱く、mwはやや弱く、mは中程度、sは強く、vsは非常に強く、これらは当業者に公知である。一般的に言えば、wは10未満であり、mwは10~20であり、mは20~40であり、sは40~70であり、vsは70超である。
【0026】
第2の側面において、本発明は、ZEO-1分子ふるいを調製するための方法であって、以下の工程:
(1)ケイ素源、ホウ素族元素化合物、有機テンプレート、水、鉱化剤(mineralizer)、及び任意選択により場合によってチタン源を混合して、合成混合物を得る工程;
(2)混合物を結晶化させる工程;
(3)結晶化された生成物をか焼して、テンプレートを除去する工程
を含み、
上記の有機テンプレートが、以下の一般式:
【化1】
(式中、R
1がシクロヘキシルであり;R
2及びR
3がフェニル又はシクロヘキシルであり;R
4がC
1~8アルキル、好ましくはC
1~4アルキル、より好ましくはC
1~2アルキルであり;Xがリン又は窒素、好ましくはリンである)
により表される四面体空間配置を有する、
方法を更に提供する。
【0027】
第3の側面において、本発明は、本発明のZEO-1分子ふるい及び結合剤(バインダー)を含む分子ふるい組成物を更に提供する。
【0028】
第4の側面において、本発明の分子ふるい組成物は、吸着剤又は触媒として使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】テンプレートを除去するための、温度600℃及び1000℃でのか焼前後での、本発明におけるチタン導入なしのZEO-1分子ふるいのX線粉末回折パターンである(波長:CuKα)。
【
図2】本発明におけるチタン導入なしの合成されたままのZEO-1分子ふるいのX線回折パターンである(波長0.457926オングストロームでシンクロトロン照射)。
【
図3】本発明におけるチタン導入なしのZEO-1分子ふるいの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【
図4】本発明のZEO-1分子ふるいのチャネル構造の図である。
【
図5】本発明のチタノシリケートZEO-1分子ふるい(その場(in-situ)で合成された試料及びか焼された試料)のX線回折パターンである(波長:CuKα)。
【
図6】本発明のチタノシリケートZEO-1分子ふるいの走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【
図7】本発明のチタノシリケートZEO-1分子ふるい(その場(in-situ)で合成された試料及びか焼された試料)の紫外スペクトログラムである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明のZEO-1分子ふるいの結晶構造が
図4に示されている。
図4から、ZEO-1結晶構造のa軸方向及びb軸方向両方に、貫通する16及び12員環チャネルが存在することが分かる。更に、ZEO-1結晶構造の(a+b+c)軸に近い方向に、16及び12員環チャネルが存在する。したがって、構造は、(16+12)×(16+12)×(16+12)員環の三次元交差チャネルシステムと記載される。
【0031】
本発明のZEO-1分子ふるいが、構造分析及び位相幾何学分析にかけられる。分子ふるいフレームワーク構造は、21個の位相幾何学的に独立したT原子、43本の位相幾何学的に異なる辺(隣接するT原子とT原子とにより構成される線)、41個の位相幾何学的に異なる面(T原子により構成される面)、及びT原子により構成される19個の位相幾何学的に異なるタイル(tile)を有する。中でも、ZEO-1物質のフレームワーク構造の21個の位相幾何学的に独立したT原子の位相幾何学的特質(配位シークエンス及び頂点記号を含む)が、表1に示されている。
【0032】
ZEO-1分子ふるいのフレームワーク構造中の19個の異なるタイルには、3種のスーパーケージ構造、すなわち、4つの16員環により構築される第1のスーパーケージ構造、2つの16員環及び2つの12員環による第2のスーパーケージ構造、並びに4つの12員環を含有する第3のスーパーケージ構造が存在する。4つの12員環を有するゼオライトY(構造コード:FAU)中のスーパーケージ(このスーパーケージは、ゼオライトYの重要な触媒中心でもある)と比較して、ZEO-1は、より大きなポアサイズ、より大きな利用可能な体積及びより豊富なチャネル多様性を有する。
【0033】
か焼後の本発明のZEO-1分子ふるいは、(TiO2)y・(HAO2)x・SiO2(式中、Aはホウ素族元素、好ましくはAl又はBであり、0≦x≦1.0、好ましくは0≦x≦0.5、より好ましくは0≦x<0.2、最も好ましくは0.01≦x≦0.1であり、0≦y<0.2、好ましくは0.01≦y≦0.1である)化学組成を有する。
【0034】
テンプレートの分子を除去するために、1000℃において3時間、空気中でか焼された後、本発明のZEO-1分子ふるいは安定なフレームワークを依然として維持し(
図2に示されるように)、他の報告された特大ポアの分子ふるい物質と比較して、より良好な安定性を示す。一方、ヘテロ原子、例えばアルミニウム、ホウ素などが、分子ふるいのフレームワーク中に直接導入されてもよい。これらの特徴が、分子ふるい物質に、吸着、分離、触媒反応等の分野における、可能性のある用途の展望を与える。
【0035】
本発明のチタン含有ZEO-1分子ふるいのX線回折パターンが
図5に示されている。
図1のZEO-1分子ふるいのX線回折パターンと比較して、回折ピークの類似の位置及び強度が観察され、得られたチタノシリケート物質がZEO-1ゼオライトの構造を有することを示している。
【0036】
本発明のチタン含有ZEO-1分子ふるいのSEM画像が
図6に示されており、合成されたままのチタン含有ZEO-1分子ふるいが、アモルファス化合物又はアナターゼ等の不純物なしに、均一な粒径及び良好な結晶化度を有することを示している。その紫外-可視スペクトルが
図7に示されている。か焼前後のチタン含有ZEO-1分子ふるいは両方とも、分子ふるいフレームワーク中で四配位状態であるTi原子に対応する約220nmにおける強い吸収ピークを有し、これは、Ti原子が、ZEO-1分子ふるいフレームワーク中にうまく導入されていることを立証している。
【0037】
本発明のZEO-1分子ふるいを調製するための方法において、有機テンプレートの具体的な例は、以下の表3に示されている任意の1つ又は複数を含むがこれらには限定されない。
【0038】
【0039】
有機テンプレートは、好ましくは、テンプレート1、テンプレート6、テンプレート7、及びテンプレート8からなる群から選択される任意の1つ又は複数、より好ましくはテンプレート6及びテンプレート8からなる群から選択される任意の1つ又は複数である。
【0040】
本発明のZEO-1分子ふるいの合成のための方法は、より具体的には以下の工程を含む:
(1)静的又は動的撹拌下で、ケイ素源、ホウ素族元素化合物、有機テンプレート、水、鉱化剤(mineralizer)及び任意選択により場合によってはチタン源を、均一に、割合で混合し、化学組成rROH:aHF:yTiO2:xA2O3:SiO2:wH2O(式中、Rは有機テンプレートカチオンを表し;Aはホウ素族元素、好ましくはAl又はBであり;r、a、x、及びwの対応する値の区間は:r=0.1~5.0、a=0~5.0、x=0~1.0、y=0~0.2、w=1~100、好ましくはr=0.1~5.0、a=0~5.0、x=0~0.1、y=0~0.2、w=1~100、より好ましくはr=0.1~2.0、a=0~2.0、x=0.005~0.05、y=0.01~0.1、w=5~30である)を有する反応ゲルを形成させた;
(2)結晶化のために、過剰量の溶媒を除去するために赤外線ランプ下又はオーブン内に反応ゲルを配置し、次いで、ゲルを、温度80~240℃、好ましくは120~220℃のステンレス鋼のオートクレーブに、1~60日間、好ましくは2~45日間、密封条件下で移した;
(3)結晶化後、洗浄、遠心処理、及び乾燥後、合成されたままの生成物を得た。次いで合成されたままの試料を、400~650℃において、空気中で2~5時間か焼して、テンプレートを除去した。
【0041】
ケイ素源は、ケイ酸、シリカゲル、シリカゾル、オルトケイ酸テトラアルキル、及び水ガラス、好ましくは水ガラス、シリカゾル、又はオルトケイ酸テトラエチルからなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。ホウ素族元素化合物は、メタアルミン酸ナトリウム、アルミニウムイソプロポキシド、硫酸アルミニウム十六水和物、水酸化アルミニウム、及びホウ酸、好ましくは、メタアルミン酸ナトリウム、アルミニウムイソプロポキシド、硫酸アルミニウム十六水和物、又はホウ酸からなる群から選択される少なくとも1つであってもよい。チタン源は、オルトチタン酸テトラブチル、四塩化チタン、三塩化チタン、及び硫酸チタンのうちの1つ又は2つ以上の混合物であってもよい。鉱化剤(mineralizer)は、有機テンプレートのアルカリ溶液由来のOH-、又は更に添加されるHF若しくはNH4F由来のF-であることができる。鉱化剤の添加は、分子ふるいの結晶化を加速させることができ、構造の指向性にとって有益となりうる。本発明の調製方法は、中性条件(鉱化剤としてF-を使用)及びアルカリ条件(HF不含、鉱化剤としてOH-を使用)の両方で、本発明のZEO-1分子ふるいを得ることができる。
【0042】
本発明の調製方法において、ゲルマニウム又はゲルマニウム含有化合物は使用されない。
【0043】
各種物質は、任意の順序で添加及び混合することができる。例えば、最初にホウ素族元素(Al又はB等)が、テンプレートの得られたアルカリ溶液に添加されて撹拌及び溶解されてもよく、次いで、適切なケイ素源及びチタン源が添加されることができる。必要であれば、均一に撹拌された後に鉱化剤が添加され、その系中の過剰量の溶媒を除去して標的のゲルを得るために、その物質が赤外線ランプ下又はオーブン内で加熱される。
【0044】
反応ゲルの調製前に、有機カチオン性テンプレートの全てが、イオン交換樹脂によって水酸化物形態に交換されてもよく、それらの濃度が、後の使用のために0.1M塩酸溶液によって定量化されるか、又はそれらが塩化物塩、臭化物塩、若しくはヨウ化物塩の形態で直接導入されてもよい。
【0045】
工程(2)において、オーブンの温度は、例えば80℃であってもよい。
【0046】
結晶化条件は、例えば、80℃~240℃、好ましくは120℃~220℃、より好ましくは140℃~210℃の結晶化温度;及び1~60日間、好ましくは2~45日間、より好ましくは3~30日間の結晶化時間を含んでいてもよい。
【0047】
本発明の調製方法における混合物は、種結晶を更に含んでいてもよい。種結晶の含有量は、0.01質量ppm~10000質量ppmであってもよい。本発明のZEO-1分子ふるいが種結晶として使用可能である。種結晶の存在は、反応工程を加速させ、反応コストを低減させることができる。
【0048】
工程(3)において、洗浄、遠心処理、及び乾燥は、当技術分野で従来既知の任意のやり方で実施することができる。例えば、洗浄は、水又はエタノールで複数回実施されることができ;かつ、乾燥はオーブン乾燥により行うことができる。
【実施例】
【0049】
本発明をより明確に説明するために、以下の実施例が提供される。いかなる意味でも、これらの実施例は、本発明の保護範囲を限定しない。
【0050】
実施例1:テンプレートの合成
テンプレートの合成についての一般的な工程を説明するため、テンプレート6を一例として挙げた。トリシクロヘキシルホスフィン28.04g及びアセトニトリル150mlを、250ml丸底フラスコ中で混合した。室温において、ヨウ化メチル21.29gを混合物に滴下により添加した。その系を室温において、撹拌下で2日間維持し、回転蒸発によって溶媒を混合物から除去して粗生成物を得て、これをエタノールで再結晶化して、収率96%で生成物40.55gを得た。生成物を、液体NMR(D2O)及びエレクトロスプレー質量分析によって特性分析して、標的化合物であることを確認した。
【0051】
生じた生成物を脱イオン水400mL中に分散させ、テンプレート剤6の水溶液を得るために、前処理済みの717強塩基型アニオン交換樹脂(製造業者:Sinopharm Group社、中国)を、カラム中でアニオン交換のために使用した。好適な量のこの溶液を秤量し、指示薬としてフェノールフタレインを使用して、0.1mol/L塩酸溶液で滴定した。滴定された構造は、ヨウ化物塩から水酸化物基への交換比最大97%であることを確認した。
【0052】
実施例2:ZEO-1分子ふるいの調製
(実施例2-1)
0.5のROH:0.5のHF:0.01のAl2O3:SiO2:5のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後の実施例1における好適な量のテンプレート溶液を秤量し、アルミニウムイソプロポキシド粉末0.04mmol(0.008g)をそこへ添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温で約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、その後、上記の比に従って対応する量のフッ化水素酸溶液を添加し、均一に撹拌し、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃のオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する5mLステンレス鋼オートクレーブに移し、175℃において28日間、密封条件下で結晶化させ、生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブン乾燥させた。生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、そのパターンをZEO-1のパターンとして確認した。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、生成物を水で洗浄し、遠心処理し、乾燥させた。元素分析は、Si/Al比が20.5であり、その分子式が(HAlO2)0.047・SiO2であることを示した。
【0053】
(実施例2-2)
0.5のROH:0.5のHF:0.02のAl2O3:SiO2:7のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後の実施例1における好適な量のテンプレート溶液を秤量し、アルミニウムイソプロポキシド粉末0.08mmol(0.016g)をそこへ添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温において約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、その後、上記の比に従って対応する量のフッ化水素酸溶液を添加し、均一に撹拌し、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃のオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する5mLステンレス鋼オートクレーブに移し、190℃で7日間、密封条件下で結晶化させ、生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブン乾燥させた。生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、パターンがZEO-1のパターンとして確認された。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、生成物を水で洗浄し、遠心処理し、乾燥させた。元素分析は、Si/Al比が14.6であり、その分子式が(HAlO2)0.064・SiO2であることを示した。
【0054】
(実施例2-3)
0.5のROH:0.01のAl2O3:SiO2:10のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後の実施例1における好適な量のテンプレート溶液を秤量し、アルミニウムイソプロポキシド粉末0.04mmol(0.008g)をそこへ添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温において約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、混合されたゲルを赤外線ランプ下に又は80℃のオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する15mLステンレス鋼オートクレーブに移し、175℃において30日間、密封条件下で結晶化させ、その生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブン乾燥させた。その生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、そのパターンはZEO-1のパターンとして確認された。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、生成物を水で洗浄し、遠心処理し、乾燥させた。元素分析は、Si/Al比が20.8であり、その分子式が(HAlO2)0.046・SiO2であることを示した。
【0055】
(実施例2-4)
0.5のROH:0.0167のAl2O3:SiO2:10のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後の実施例1における好適な量のテンプレート溶液を秤量し、アルミニウムイソプロポキシド粉末0.067mmol(0.013g)をそこへ添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温において約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃のオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する15mLステンレス鋼オートクレーブに移し、190℃で15日間、密封条件下で結晶化させ、生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブン乾燥させた。生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、そのパターンはZEO-1のパターンとして確認された。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、生成物を水で洗浄し、遠心処理し、乾燥させた。元素分析は、Si/Al比が14.5であり、その分子式が(HAlO2)0.065・SiO2であることを示した。
【0056】
実施例2-1~2-4は全て、か焼(600℃又は1000℃)後に、無傷の構造を有する分子ふるい物質を得て、その構造が安定であることを示していた。分子ふるいの合成されたままの粉末試料及び高温か焼後の分子ふるいのX線粉末回折パターンを
図1及び
図2に示した。好適なサイズを有するZEO-1試料の結晶を選択し、走査型電子顕微鏡写真を
図3に示した。
【0057】
(実施例2-5)
実施例2-1~2-4の分子ふるいを連続回転電子回折(continuous rotation electron diffraction)(cRED)試験にかけて、構造分析結果は、ZEO-1分子ふるい構造がI4
1/amd空間群の正方対称を有し、波長0.457926オングストロームのシンクロトロン照射回折の精密化後に得られた単位格子パラメーター(
図2)が、a=b=43.50217(10)Å、c=24.94918(9)Å、V=47214.8(3)Å
3であることを示した。
【0058】
cRED試験後に得られた結晶情報ファイル(CIFファイル)を使用して、位相幾何学的分析を実施した。位相幾何学的分析ソフトウェアはToposPro 5.3.0.2に基づき、また、分析工程及び方法は、ソフトウェアの公式ウェブサイト(ToposPro公式ウェブサイト:https://topospro.com/software/を参照のこと)において提供されている操作マニュアルに基づいていた。
【0059】
分析結果は、分子ふるいのフレームワーク構造が、21個の位相幾何学的に独立したT原子、43本の位相幾何学的に異なる辺、41個の位相幾何学的に異なる面、及びT原子により構成される19個の位相幾何学的に異なるタイルを有することを示した。ZEO-1分子ふるいのフレームワーク構造のより具体的な位相幾何学的な特徴を、表2に示した。
【0060】
実施例3:チタン含有ZEO-1分子ふるいの調製
(実施例3-1)
SiO2:0.02のAl2O3:0.04のTiO2:0.5のROH:20のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程によって調製した:交換後のテンプレート6の好適な量の塩基溶液を秤量し、アルミニウムイソプロポキシド粉末0.08mmol(0.016g)をそこへ添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温で約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、最後にオルトチタン酸テトラブチル0.08mmol(0.027g)を添加し、一晩撹拌し、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃のオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する15mLステンレス鋼オートクレーブに移し、190℃において30日間、密封条件下で結晶化させ、生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためオーブンで乾燥させた。その生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、パターンがZEO-1のパターンとして確認された。好適な量の試料を、600℃のマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、試料を水で洗浄し、乾燥させた。元素分析は、その分子式がH0.04Al0.04Ti0.04Si0.92O2であることを示した。
【0061】
(実施例3-2)
SiO2:0.01のAl2O3:0.02のTiO2:0.5のROH:15のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後のテンプレート6の好適な量の塩基溶液を秤量し、アルミニウムイソプロポキシド粉末0.04mmol(0.008g)をそこへ添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、常温で約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、最後にオルトチタン酸テトラブチル0.04mmol(0.014g)を添加し、一晩撹拌し、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃のオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する15mLステンレス鋼オートクレーブに移し、175℃において30日間、密封条件下で結晶化させ、その生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブンで乾燥させた。生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、そのパターンはZEO-1のパターンとして確認された。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、試料を水で洗浄し、乾燥させた。元素分析は、その分子式がH0.02Al0.02Ti0.02Si0.96O2であることを示した。
【0062】
(実施例3-3)
SiO2:0.02のAl2O3:0.02のTiO2:0.5のROH:0.5のHF:7のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後のテンプレート6の好適な量の塩基溶液を秤量し、アルミニウムイソプロポキシド粉末0.08mmol(0.016g)をそこへ添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温で約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、その後オルトチタン酸テトラブチル0.04mmol(0.014g)を添加し、一晩撹拌し、最後に上記の比に従って対応する量のフッ化水素酸溶液を添加し、均一に撹拌し、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃においてオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する15mLステンレス鋼オートクレーブに移し、175℃において30日間、密封条件下で反応させ、生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブン乾燥させた。その生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、そのパターンはZEO-1のパターンとして確認された。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、試料を水で洗浄し、乾燥させた。元素分析は、その分子式がH0.04Al0.04Ti0.02Si0.94O2であることを示した。
【0063】
(実施例3-4)
SiO2:0.02のB2O3:0.04のTiO2:0.5のROH:10のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後のテンプレート6の好適な量の塩基溶液を秤量し、ホウ酸0.08mmol(0.005g)をそこに添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温において約2時間撹拌し、その結果、オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、最後にオルトチタン酸テトラブチル0.08mmol(0.027g)を添加し、一晩撹拌し、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃においてオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する15mLステンレス鋼オートクレーブに移し、190℃において30日間、密封条件下で反応させ、生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブンで乾燥させた。その生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、そのパターンを比較して、ZEO-1のパターンとして確認された。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、試料を水で洗浄し、乾燥させた。元素分析は、その分子式がH0.04B0.04Ti0.04Si0.92O2であることが示した。
【0064】
(実施例3-5)
SiO2:0.02のB2O3:0.02のTiO2:0.5のROH:15のH2Oのモル比に従って、分子ふるいの合成用のゲルを以下の工程により調製した:交換後のテンプレート6の好適な量の塩基溶液を秤量し、ホウ酸0.08mmol(0.005g)をそこに添加し、約半時間撹拌し、次いでオルトケイ酸テトラエチル2mmol(0.417g)を添加し、室温において約2時間撹拌し、その結果オルトケイ酸テトラエチルを完全に溶解させ、最後にオルトチタン酸テトラブチル0.04mmol(0.014g)を添加し、一晩撹拌し、混合されたゲルを赤外線ランプ下又は80℃においてオーブン内に配置して、過剰量の溶媒を理論上の質量まで除去した。最後に得られた混合物ゲルを、テフロン(登録商標)ライナーを有する15mLステンレス鋼オートクレーブに移し、175℃において30日間、密封条件下で結晶化させ、生成物を水で2回、エタノールで2回洗浄し、使用のためにオーブン乾燥させた。その生成物を直接、X線粉末回折による相の同定にかけ、比較して、ZEO-1のものであると確認した。好適な量の試料を、600℃においてマッフル炉内で、空気中で2時間か焼してテンプレートを除去し、その試料を水で洗浄し、乾燥させた。元素分析は、その分子式がH0.04B0.04Ti0.02Si0.94O2であることを示した。