IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】二重織物およびそれを含む物品
(51)【国際特許分類】
   D03D 11/00 20060101AFI20250115BHJP
   D03D 15/283 20210101ALI20250115BHJP
   D03D 15/208 20210101ALI20250115BHJP
   D03D 15/275 20210101ALI20250115BHJP
   D03D 1/02 20060101ALI20250115BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20250115BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20250115BHJP
   B60R 21/235 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
D03D11/00 Z
D03D15/283
D03D15/208
D03D15/275
D03D1/02
D06M15/643
D06M15/564
B60R21/235
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023533771
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-15
(86)【国際出願番号】 KR2021019704
(87)【国際公開番号】W WO2022145872
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2020-0186478
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0184478
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョ ウン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,イル
(72)【発明者】
【氏名】キム,キ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ホ,ジン ウク
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ フン
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/008350(WO,A1)
【文献】特表2014-514470(JP,A)
【文献】特表2017-519125(JP,A)
【文献】特表2017-512917(JP,A)
【文献】特開2018-114958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D 1/00-27/18
D06M13/00-15/715
B60R21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターン(P1)を有する第1織物層(L1)所定のパターン(P2)を有する第2織物層(L2);および第1織物層と第2織物層が接合された接合部を含み、
前記織物層(L1,L2)のうちの一つ以上の表面には織物層と一体に形成された突出パターン(P3)が形成され、
前記突出パターン(P3)は5~100本のスレッド(thread)の間隔を占める大きさで形成された、
二重織物(ただし、前記スレッドは前記織物層(L1,L2)のパターン(P1,P2)を形成する個々の経糸および緯糸を意味する)。
【請求項2】
前記突出パターン(P3)は、5~50本のスレッド(thread)の間隔で離隔して形成された、請求項1に記載の二重織物。
【請求項3】
前記織物層(L1)のパターン(P1)と、織物層(L2)のパターン(P2)とは、互いに同一または異なる、請求項1に記載の二重織物。
【請求項4】
前記織物層(L1)のパターン(P1)と、織物層(L2)のパターン(P2)とは、それぞれ独立して、1×1の組織、2×2の組織、3×3の組織、朱子織、経リブ織、緯リブ織、またはその混合織である、請求項1に記載の二重織物。
【請求項5】
前記織物層(L1,L2)のパターン(P1,P2)を形成する経糸および緯糸の密度は40~80th/inchである、請求項1に記載の二重織物。
【請求項6】
前記突出パターンはメッシュ(mesh)形状を有する、請求項1に記載の二重織物。
【請求項7】
前記突出パターン(P3)を形成する経糸および緯糸の密度は20スレッド/インチ(th/inch)以下である、請求項1に記載の二重織物。
【請求項8】
前記パターン(P1,P2,P3)はポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリケトン繊維、炭素繊維およびセルロース繊維の中から選ばれる一つ以上の繊維で形成された、請求項1に記載の二重織物。
【請求項9】
前記繊維の繊度は300~1500dtexである、請求項8に記載の二重織物。
【請求項10】
前記織物層(L1,L2)の一面上に形成された樹脂コート層をさらに含み、
前記樹脂コート層は、シリコーン樹脂およびウレタン樹脂のうちの一つ以上を含む、請求項1に記載の二重織物。
【請求項11】
前記突出パターン(P3)は、前記樹脂コート層が形成された織物層の面とは反対の一面上に形成された、請求項10に記載の二重織物。
【請求項12】
前記樹脂コート層のコーティング量は30~150g/mの範囲にある、請求項10に記載の二重織物。
【請求項13】
一体型製織方式(OPW,One Piece Woven)を用いて、互いに分離された第1織物層(L1)と第2織物層(L2)とを同時に製織しながら、前記織物層(L1,L2)のうちの一つ以上の表面に、織物層と一体に形成された突出パターン(P3)を形成する段階;
を含み、
前記第1織物層と前記第2織物層が接結点で接合され、
前記突出パターン(P3)を5~100本のスレッド(thread)の間隔を占める大きさで形成する、二重織物の製造方法(ただし、前記スレッドは前記織物層(L1,L2)のパターン(P1,P2)を形成する個々の経糸および緯糸を意味する)。
【請求項14】
前記突出パターン(P3)をメッシュ形状に形成する、請求項13に記載の二重織物の製造方法。
【請求項15】
請求項1による二重織物を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互引用]
本出願は、2020年12月29日付の韓国特許出願第10-2020-0186478号および2021年12月22日付の韓国特許出願第10-2021-0184478号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は二重織物および物品に関する。具体的には、本出願は、突出パターンを有するガス膨張性の二重織物、および前記二重織物を含む物品(例:エアバッグ、救命胴衣など)に関する。
【背景技術】
【0003】
エアバッグは、衝突などといった外力が車両に加えられる場合、センサが衝突の衝撃を感知した後に、火薬を爆発させ、エアバッグクッションの内部に供給されたガスによってクッションが膨張することで車両利用者を保護する装置である。
【0004】
エアバッグが展開する状況で、エアバッグは、破損したガラス窓や車両内部のインテリアによって損傷する恐れがある。特に、自動車の転覆時には、ガラス窓に近接して位置したサイドカーテンエアバッグ(side curtain airbag)の損傷が最も大きいのであるが、このようにガラス破片などによって損傷したエアバッグは、本来の機能を果たせない。
【0005】
従来技術では、縫製や接合などによりエアバッグに補強布を重ねる方式で、エアバッグの耐衝撃性などを補強したのであるが、このような方式は、エアバッグのパッケージ(package)またはフォールディング(folding)の性能を低下させ、追加コストも発生させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願の一の目的は、ガス(例:空気)膨張性の二重織物を提供することにある。
【0007】
本出願の他の目的は、衝撃耐久性と引裂強度などが改善されたガス膨張性の二重織物を提供することにある。
【0008】
本出願のさらに他の目的は、前記二重織物を含む物品(例:エアバッグ、救命胴衣など)を提供することにある。
【0009】
本出願のさらに他の目的は、パッケージ(package)またはフォールディング(folding)の性能に優れるエアバッグを提供することにある。
【0010】
本出願のさらに他の目的は、補強布を継ぎ当てるか、織物同士の間の接着を追加することが要求されないなど、製織効率および工程性に優れるエアバッグを提供することにある。
【0011】
本出願の前記目的およびその他の目的は、以下で説明する本発明によって、すべて解決される。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本出願に関する一例において、本出願は二重織物に関するものである。前記二重織物は第1織物層(L1)と第2織物層(L2)を含む。
【0013】
前記第1織物層(L1)は所定のパターン(P1)を有し、前記第2織物層(L2)も所定のパターン(P2)を有する。前記パターンは織物の織り方または視認される織物組織形態を意味する。
【0014】
前記二重織物はエアバッグに用いられ、ガス膨張性を有する。例えば、前記二重織物は2個の織物層(L1,L2)の接合によりガス膨張性を有することができる。具体的には、図1を参照して説明すると、前記二重織物は、第1織物層と第2織物層とが接合された接合部(C)を境界として、非膨張部(A)と膨張部(B)とに分離されうる。すなわち、前記二重織物は、非膨張部(A)、膨張部(B)および接合部(C)を含むか、または、非膨張部(A)、膨張部(B)および接合部(C)を形成することができる。上記のように形成された膨張部は、ガス膨張性を有し得るほどの密閉性を有することができる。例えば、前記接合部は、ガス膨張を発生させる気体を二つの分離された織物層の間から抜け出ないようにし、膨張する気体の圧力に耐えられるように構成することができる。そのため、ガスが流入すると、前記膨張部は膨らむこととなり、ユーザーを外部の衝撃から保護することができる。
【0015】
前記の第1織物層と第2織物層との間の接合方式は、特に制限されない。
【0016】
一つの例示において、前記の第2織物層と第1織物層とは、一体型の製織方式(one piece woven)により製造されたものであって、分離された二つの織物(層)が同時に製織されたのであり得、これらの織物層が接結点(または接結部)で接合されたものであり得る。ここで、接結点(または接結部)は前記接合部(C)に対応する。
【0017】
別の例としては、前記の第1織物層と第2織物層とが互いにそれぞれ製造された後、縫製、融着、または接着の方法により織物層の一部が接合されたものであり得る。織物層同士の間の接合が行われる領域または地点は、前記接合部(C)に対応する。
【0018】
工程の単純化、製造原価の節減などを考慮すると、一体型製織方式(one piece woven)により二重織物を製造することが好ましい。
【0019】
本出願の二重織物は、突出パターン(P3)を有する。具体的には、前記織物層(L1,L2)のうちの一つ以上の表面には、織物層と一体に形成された突出パターン(P3)が形成される。これと関連して、突出パターンが織物層と一体に形成されるということは、織物層(L1,L2)またはそのパターン(P1,P2)を製織するために用いられていた、経糸または緯糸のうちの一部が、突出パターン(P3)を形成するために用いられ、引き続き、再び織物層のパターン(P1,P2)の製織に用いられるということを意味する。このような製織は、例えば、ジャカード機構を用いて行われ、具体的にはジャカード機構を用いるOPW製織方式により行われる。したがって、本出願によれば、補強布を継ぎ当てるか、織物層を製造した後に追加的なパターンを取り付けるような追加の工程は必要としない。
【0020】
織物層(L1,L2)の表面上にて、前記突出パターン(P3)が位置する位置は特に制限されないが、例えば、前記突出パターン(P3)は、エアバッグの膨張の際に強い衝撃が加えられると予想される織物の特定の部分(領域)に局所的に形成される。そのため、以下の実験例で確認されるように、前記突出パターン(P3)は、エアバッグの展開時に破損点となり得る、織物層(L1,L2)の局所部分(領域)に対する耐圧性能を補完し、織物層の引き裂けを防止する。
【0021】
一つの例示において、前記突出パターン(P3)は、織物層(L1,L2)を形成する面(surface)の中でも、織物層(L1,L2)が互いに対向する一表面上に形成される。図1を参照すると、前記突出パターン(P3)は、ガスが流入して膨張する膨張部Bの内側をなす、織物層(L1,L2)の一面(すなわち、内側表面)上に形成される。他の例示において、前記突出パターン(P3)は、織物層(L1,L2)のそれぞれにおける内側表面に対向する表面、すなわち、外側表面上に形成される。また他の例示で、前記突出パターン(P3)は、織物層(L1,L2)の内側表面および外側表面上の両方に形成されることもありうる。
【0022】
一般に、織物層の一表面には、以下で説明するように樹脂コート層が形成されるが、コーティングのばらつきを防止する側面から、突出パターン(P3)は、樹脂コート層が形成された面の反対の一面上に形成されることが好ましい。例えば、二重織物の外側表面に樹脂コート層が形成される場合、二重織物の内側表面に突出パターン(P3)が形成されることが好ましい。
【0023】
本出願の具体例において、前記突出パターン(P3)は、織物層(L1,L2)のいずれか一つ以上の表面上で1個以上形成される。または、前記突出パターン(P3)は、織物層(L1,L2)のいずれか一つ以上の表面上で2個以上形成されることができる。
【0024】
複数の突出パターンが織物層上に形成される場合、それぞれの突出パターンは肉眼で区別されうる。例えば、それぞれの突出パターンの形状、これらが占める面積および/またはこれらが離隔される間隔などを肉眼で確認できるのであり、これにより、それぞれの突出パターンが区別されうる(図2aを参照)。
【0025】
前記のような複数の突出パターンは同一または異なる形状を有し、かつ織物層上で繰り返し形成されることができる。
【0026】
一つの例示で、前記突出パターン(P3)は、少なくとも5~100本のスレッド(thread)の間隔サイズ(または間隔を占める大きさ)で形成される。ここで、スレッドとは、前記織物層(L1,L2)のパターン(P1,P2)を形成する個々(または一本)の経糸および緯糸を意味する。例えば、突出パターンが前記スレッド間隔の大きさで形成される場合、前記突出パターンが占める面積は、経糸方向および緯糸方向それぞれで少なくとも5本のスレッドからなる多角形(例:四角形)またはそれに準ずる面積であり得る(図2bを参照)。
【0027】
具体的には、前記突出パターン(P3)は、例えば、10本のスレッド以上、15本のスレッド以上、20本のスレッド以上、25本のスレッド以上、30本のスレッド以上、35本のスレッド以上、40本のスレッド以上または45本のスレッド以上の間隔サイズ(または間隔を占める大きさ)で形成される。また、前記間隔サイズ(またはスレッドで表される突出パターンが占める大きさ)の上限は、例えば、95本のスレッド以下、90本のスレッド以下、85本のスレッド以下、80本のスレッド以下、75本のスレッド以下、70本のスレッド以下、65本のスレッド以下、60本のスレッド以下、55本のスレッド以下、50本のスレッド以下、45本のスレッド以下、40本のスレッド以下、35本のスレッド以下、30本のスレッド以下または25本のスレッド以下であり得る。前記突出パターンが形成される間隔サイズを前記スレッド間隔の範囲内に調節する場合、張力ばらつきによる製織性能の低下を防止し、二重織物の衝撃耐久性を確保することができる。
【0028】
突出パターンを形成する経糸および緯糸のスレッド間隔は、前記範囲内で互いに独立して調節されうる。
【0029】
一つの例示で、前記突出パターン(P3)は一定の間隔で離隔して形成される。具体的には、前記織物層(L1,L2)のうちの一つ以上の表面に形成される複数の突出パターン(P3)は、少なくとも5~50本のスレッド(thread)の間隔を置いて形成される。例えば、突出パターン(P3)同士の間の間隔は10本のスレッド以上、15本のスレッド以上、20本のスレッド以上、25本のスレッド以上または30本のスレッド以上であり得るのであって、その上限は、例えば、45本のスレッド以下、40本のスレッド以下、35本のスレッド以下、30本のスレッド以下、25本のスレッド以下、20本のスレッド以下、15本のスレッド以下または10本のスレッド以下であり得る。
【0030】
別の例としては、前記突出パターン(P3)は一定の間隔で繰り返され得る。具体的には、前記織物層(L1,L2)のうちの一つ以上の表面に形成される複数の突出パターン(P3)は、少なくとも5~50本のスレッド(thread;th)の間隔を置いて繰り返し形成されうる。
【0031】
一つの例示において、突出パターン(P3)が形成される織物層のパターン(P1,P2)は、互いに同一であるかまたは異なってもよい。
【0032】
具体的な織物層パターン(P1,P2)の形状(または種類)は特に制限されない。例えば、前記織物層(L1,L2)は、それぞれ独立して、1×1の組織、2×2の組織、3×3の組織、朱子織、経リブ織、緯リブ織、またはその混合織であるパターン(P1,P2)を有することができる。
【0033】
一つの例示において、前記織物層(L1,L2)のパターン(P1,P2)を形成する経糸および緯糸の密度は、40~80th/inch範囲であり得る。具体的には、前記織物層パターン(P1,P2)を形成する経糸および緯糸の密度は、例えば、46th/inch以上、47th/inch以上、48th/inch以上、49th/inch以上、50th/inch以上、51th/inch以上、52th/inch以上、53th/inch以上、54th/inch以上または55th/inch以上であり得る。そして、その上限は、例えば、70th/inch以下、65th/inch以下または60th/inch以下であり得、具体的には59th/inch以下、58th/inch以下、57th/inch以下、56th/inch以下、55th/inch以下、54th/inch以下、53th/inch以下、52th/inch以下、51th/inch以下または50th/inch以下であり得る。前記範囲未満の場合、空気膨張に関する密閉性と機械的強度などを確保し難い。また、前記範囲を超える場合は、エアバッグのパッケージ性またはフォールディング性を確保し難い。特に制限されないが、前記密度は、ISO 7211-2(section 3.07)に準じて測定されうる。
【0034】
前記突出パターン(P3)は、織物層のパターン(P1,P2)と同一であるかまたは異なってもよい。同一ある場合、突出パターン(P3)は織物層のパターン(P1,P2)より粗く製織されたものであり得る。
【0035】
一つの例示において、前記突出パターン(P3)はメッシュ(mesh)形状を有することができる(図2a、図2bまたは3bを参照)。ここで、メッシュ(mesh)形状とは、例えば、経糸方向に並んで配列された2つ以上の経糸が、緯糸方向に並んで配列された2つ以上の緯糸と交差する形状を意味する。前記メッシュ形状は網形状またはネット(net)形状と混用し得る。このようなメッシュ形状は、二重織物の製織効率を低下させず、かつ以下の実験例で確認されるように二重織物の衝撃耐久性などを改善することができる。
【0036】
一つの例示において、前記突出パターン(P3)を形成する経糸および緯糸の密度は、織物層パターン(P1,P2)を形成する経糸および緯糸の密度より小さくてもよい。例えば、前記突出パターン(P3)を形成する経糸および緯糸の密度は、20スレッド/インチ(th/inch)以下、15th/inch以下、10th/inch以下または5th/inch以下であり得る。具体的には、前記突出パターン(P3)を形成する経糸および緯糸の密度の上限は、例えば、4th/inch以下または3th/inch以下であり得る。前記密度範囲内にて、張力ばらつきによる製織性能の低下を防止し、二重織物の衝撃耐久性を確保することができる。前記突出パターン(P3)を形成する経糸および緯糸の密度の下限は、例えば、1th/inch以上であり得る。
【0037】
前記パターン(P1,P2,P3)の製織に用いられる繊維の種類は、特に制限されない。例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アラミド繊維、ポリケトン繊維、炭素繊維およびセルロース繊維の中から選ばれる一つ以上の繊維が、前記パターン(P1,P2,P3)の形成に用いられる。
【0038】
一つの例示において、前記繊維の繊度は300~1500dtexの範囲内であり得る。該当繊度範囲を満たす場合、適切な機械的強度とともに軽量性を確保することができる。
【0039】
一つの例示において、前記二重織物は、二重織物膨張部での空気漏出を減らすために、織物層に対する樹脂コート層をさらに含む。具体的には、前記樹脂コート層は織物層(L1,L2)の一表面上に被覆され得る。「織物層の一表面上にコート層が被覆される」ことは、織物層(および/または織物層を形成する繊維)の表面に、コート層の形成物質による膜(コート層)が形成されることを意味する。
【0040】
前記コーティングに使用される樹脂は、例えば、シリコーン樹脂またはウレタン樹脂であり得る。しかし、コーティング樹脂は、これらに限定されるものではない。
【0041】
コート層の形成方式は、特に制限されない。例えば、ナイフコート法、ドクターブレード法、噴霧コート法またはディップ法などを用い、コーティング製剤またはコーティング組成物を前記織物層の表面にコートすることができる。
【0042】
一つの例示において、前記コート層は織物層(L1,L2)の両面または一面に形成されうる。例えば、コート層は、前記織物層(L1)と織物層(L2)とが互いに対向するそれぞれの一面(すなわち、内側表面)にコートされ得る。または、織物層(L1,L2)の内側表面に対向する面、すなわち、織物層(L1,L2)のそれぞれの外側表面にコート層が形成されうる。また他の例示では、織物層(L1,L2)の外側表面と内側表面との両方にコート層が形成されることもありうる。
【0043】
一つの例示において、前記突出パターン(P3)は、前記樹脂コート層が形成された織物層の面の反対の面上に形成される。具体的には、前記樹脂コート層が織物層の外側表面上にコートされる場合、突出パターン(P3)は、織物層(L1,L2)のうちの一つ以上の内側表面に形成されうる。
【0044】
一つの例示において、前記樹脂コート層のコーティング量は30~150g/mであり得る。具体的には、前記コーティング量の下限は、例えば、35g/m以上、40g/m以上、45g/m以上または50g/m以上であり得、その上限は、例えば、140g/m以下、130g/m以下、120g/m以下、110g/m以下、100g/m以下、90g/m以下、80g/m以下、70g/m以下、60g/m以下または50g/m以下であり得る。前記コーティング量が前記範囲未満の場合、エアバッグの通気量が多いことから、エアバッグが展開した後に一定の圧力で5秒以上膨らんだ状態を保持するのが難しい。そして、前記コーティング量が前記範囲を超える場合は、エアバッグが過度に厚くなって収納性が良くなく、エアバッグの展開時にエアバッグが構造物と接触して本来の機能を発揮し難い。特に制限されないが、前記コーティング量はISO 3801に準じて測定されうる。
【0045】
一つの例示において、樹脂コート層が形成された二重織物の重量(g/m)は450g/m以下であり得る。具体的には、前記コーティング織物の重量の上限は、例えば、400g/m以下または350g/m以下であり得、より具体的には、340g/m以下、330g/m以下、320g/m以下、310g/m以下または300g/m以下であり得る。そして、その下限は、例えば、280g/m以上、290g/m以上、300g/m以上または310g/m以上であり得る。コートされた二重織物の重量が前記上限を超える場合は軽量化が難しく、織物製造コストが増加し得る。そして、コートされた二重織物の重量が前記下限未満の場合は機械的物性が低下し得る。特に制限されないが、前記コーティング織物の重量はISO 3801に準じて測定されうる。
【0046】
一つの例示において、樹脂コート層が形成された二重織物の厚さは0.30~0.55mm範囲であり得る。具体的には、前記厚さの下限は、0.31mm以上、0.32mm以上、0.33mm以上、0.34mm以上または0.35mm以上であり得、その上限は、例えば、0.50mm以下、0.49mm以下、0.48mm以下、0.47mm以下、0.46mm以下、0.45mm以下であり得る。厚さが前記範囲の下限である場合は十分な機械的物性を確保しにくく、前記範囲を超える場合はフォールディング性が良くない。特に制限されるものではないが、前記厚さはISO 2286-3に準じて測定されうる。
【0047】
前記二重織物の用途は特に制限されない。例えば、ガス膨張性が求められる救命胴衣やエアバッグなどの用途に用いられうる。
【0048】
本出願に関する他の一例において、本出願は、前記構成の二重織物を製造する方法に関するものである。
【0049】
一つの例示において、前記二重織物の製造方法は、一体型製織方式(OPW,One Piece Woven)を用いて、互いに分離された第1織物層(L1)と第2織物層(L2)とを同時に製織しながら、前記織物層(L1,L2)のうちの一つ以上の表面に織物層と一体に形成された突出パターン(P3)を形成する段階を含む。ここで、前記方法は、前記突出パターン(P3)を、少なくとも5~100本のスレッド(thread)間隔の大きさで形成することができる。前記スレッドは、前記織物層(L1,L2)のパターン(P1,P2)を形成する個々(または一本)の経糸および緯糸を意味する。
【0050】
パターン(P1,P2,P3)の形状、突出パターン(P3)の位置、製織に用いられる繊維(緯糸および経糸)、コーティング、およびその他二重織物とその製造に関する説明は、上述した内容と同様であるため省略する。
【0051】
一つの例示において、前記方法は、織物層の表面上に、少なくとも5~100本のスレッド(thread)間隔で(または間隔を占める大きさで)、前記突出パターン(P3)を1または2以上形成することができる。具体的なスレッド間隔は上述したとおりである。
【0052】
一つの例示において、前記方法は、織物層の表面上に、少なくとも5~50本のスレッド(thread)間隔で前記突出パターン(P3)を繰り返して形成することができる。具体的なスレッド間隔、すなわち、突出パターン同士の間の離隔した距離は上述したとおりである。
【0053】
一つの例示において、前記方法は、40~80th/inch範囲内の経糸および緯糸の密度で前記織物層(L1,L2)のパターン(P1,P2)を形成することができる。具体的な密度は上述したとおりである。
【0054】
一つの例示で、前記方法は、20th/inch以下、15th/inch以下、10th/inch以下または5th/inch以下の経糸および緯糸の密度で、前記突出パターン(P3)を形成することができる。具体的な密度は上述したとおりである。
【0055】
一つの例示において、前記方法は、前記織物層(L1,L2)の一表面上に、樹脂コーティング組成物(またはコーティング製剤)を塗布および硬化する段階をさらに含むことができる。
【0056】
一つの例示において、前記硬化は常温またはそれ以上の温度で行われる。前記常温は特に減温または加温が行われていない状態の温度であって、約15~35℃の温度を意味する。そして、常温以上の温度は、加温が行われた温度であって、35℃を超える温度、例えば、40~300℃範囲の温度を意味しうる。前記温度での硬化時間は、特に制限されず、例えば数秒(sec)ないし数十分(min)の間に前記硬化が行われうる。
【0057】
本出願に関するさらに他の一例において、本出願は、前記二重織物を含む物品に関するものである。このような物品の種類は、特に制限されないが、例えば、救命胴衣またはエアバッグであり得る。
【発明の効果】
【0058】
本出願によれば、収納性に優れ、かつ衝撃耐久性と引裂強度などが改善され、製織効率および製造工程性に優れるガス膨張性二重織物が提供されうる。また、本出願は前記のようなガス膨張性二重織物を含む物品(例:エアバッグ、救命胴衣など)を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本出願の一例による、エアバッグ用に用いられる二重織物を概略的に示す。図示のように、前記二重織物は、非膨張部(A)、膨張部(B)および接合部(C)を形成しうる。
図2a】本出願の一例による織物層(L1,L2)の表面および突出パターン(P3)を撮影したもの(1)である。具体的に、図2aは、第1織物層(L1)10と第2織物層(L2)20との互いに対向する一面(内側の一面として非コーティング面)のうちで、第1織物層10の内側の一面に、複数の突出パターン(P3)が形成された様子を撮影したイメージである。
図2b】本出願の一例による織物層(L1,L2)の表面および突出パターン(P3)を撮影したもの(2)である。具体的に、図2bは、突出パターン(P3)を拡大撮影したものであり、所定のスレッド間隔(例:5~100本のスレッド間隔)の大きさで、一定の面積を占めて形成された個々の突出パターン30を表示する。
図2c】本出願の一例による織物層(L1,L2)の表面および突出パターン(P3)を撮影したもの(3)である。具体的に、図2cは、突出パターン(P3)が形成された織物層の内側の一面とは反対の面であるコーティング面を撮影したイメージである。
図3a】織物層の表面上に形成されたメッシュ形状の突出パターンを説明するためのイメージ(1)である。具体的に、図3aは織物層(L1またはL2)が有するパターン(P1またはP2)を撮影したイメージである。
図3b】織物層の表面上に形成されたメッシュ形状の突出パターンを説明するためのイメージ(2)である。具体的に、図3bは、図3aの織物層パターン(P1またはP2)上にメッシュ形状の突出パターン(P3)が形成されたことを撮影したイメージである。ここで、図3bに関する具体例で織物層パターンの密度は57×48th/inchであり、突出パターンの密度は8×10th/inchであり、一つの突出パターンは緯糸および経糸方向で36本のスレッド間隔を占める大きさであり、各突出パターンは緯糸および経糸方向で8本のスレッド間隔だけ離隔するように形成される。
図4】後述する突き刺しテスト(Puncture test)を説明するための図である。
図5a】後述する引き裂き強度テスト(Tear strength test)を説明するための図(1)である。
図5b】後述する引き裂き強度テスト(Tear strength test)を説明するための図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、発明の具体的な実施例により発明の作用および効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されるものであり、 発明の権利範囲はこれによっていかなる意味でも限定されるものではない。
【0061】
<実施例および比較例>
<実施例>
ジャカード機構を用いるOPW製織方式により二重織物を製造した。二重織物の製造の際に用いられた繊維はコーロン社のPET繊維(Secura-Stelen(登録商標))であり、第1織物層のパターン(P1)と第2織物層のパターン(P2)はそれぞれ1×1平織で製織した。この際、図3bのような突出パターンが第1織物層の内側表面(すなわち、第2織物層の一面と対向する第1織物層の内側一面)上に形成されるようにした。
【0062】
そして、各織物層の外側表面をウレタン樹脂(Covestro社のDLUコーティング剤を使用)でコートした後(コーティング量38g/m),熱風チャンバ(chamber)にて、80~180℃の温度にて約1.5分間で硬化した。
【0063】
製造されたコーティング二重織物の厚さは0.43mmであり、全体重量は302g/mである。
【0064】
<比較例1>
突出パターン(P3)が二重織物の内側表面に形成されていないことを除いては、同一にコーティング織物を製造した。
【0065】
製造されたコーティング二重織物の厚さは0.37mmであり、全体重量は297g/mである。
【0066】
<比較例2>
突出パターン(P3)が二重織物の内側表面に形成されていないことと各織物層の外側表面をシリコーン樹脂(Dow corning社のDC3760コーティング剤を使用)でコートしたこと(コーティング量約75g/m)を除いては、同一にコーティング織物を製造した。
【0067】
製造されたコーティング二重織物の厚さは0.36mmであり、全体重量は340g/mである。
【0068】
<実験1:機械的物性の評価>
1.突き刺しテスト(突き刺し強度,N)(Puncture test (Puncture force,N))
ASTM F1342にしたがい織物の物性を評価した。具体的には、実施例および比較例で製造された織物をASTM F1342のPuncture Strength測定治具(Jig)に固定させた後、プローブA(Probe A)を治具の突き刺しガイド孔(Puncture Guide Hole)に50.8cm/minの速度で貫入させた。そして、生地にパンク穴(Puncture)が発生する際の荷重と伸びの程度を測定した。ASTM F1342 Puncture Strength測定のジグ(Jig)とプローブA(Probe A)は、図4のような規格にしたがい製作される。
【0069】
2.引き裂きテスト(引き裂き強度,N)(Tear strength test (Tear force,N))
ISO 13937-2にしたがい織物の物性を評価した。具体的には、実施例および比較例で製造された織物を図5aのようにTrouser(ズボン)状の試験片に裁断し(単位cm)、サンプル(Sample)の両脚を上下方向に100mm/min速度にて引張させる。この際、図5bのような、時間による引き裂き強度(Tear Strength)グラフを得ることができる。このグラフのピーク(Peak)の開始から最後までを4等分した後に、それぞれの等分領域についての最大Peak2個ずつ、及び、最小Peak2個ずつの、合計16個の数値の算術平均を求めることで、引き裂き強度(Tear Strength)を求めた。
【0070】
その実験結果は下の表1のとおりである。
【0071】
【表1】
【0072】
<実験2:厚さ、重量およびフォールディング性の評価>
織物フォールディング(folding)の際の厚さは、生地の大きさおよび形状に応じて変動し得るので、同じ形状および仕様の生地を用いて実施例2と比較例3を構成した。具体的には、実施例2と比較例3の試験片に対して、同じ生地(PET 550dtex/144fを用い、緯糸と経糸の密度が57×48th/inのOPW生地を製作)に、同じポリウレタンコーティング剤を同一量(約35gsm)で塗布した。この際、前記生地は四角シート形状であり、面積はAである。
【0073】
ただし、実施例2は、前記生地に緯糸および経糸方向で36本のスレッドを占める突出パターン(8×10th/in(緯糸×経糸)密度)を形成し、緯糸および経糸の方向にて20本のスレッド間隔で、前記のような突出パターンが繰り返し位置して、前記生地面積(A)のうちの一部の面積(a)に均一に形成されるようにした(1 layer)。そして、比較例3は、前記製作された生地に、面積aを占める補強布(前記製作された生地と同一に製造され、面積のみ異なる)を継ぎ当てた(2 layer)。
【0074】
実施例2と比較例3の厚さ、重量およびフォールディング性を評価(5回測定に対する算術平均値)すると、下記のとおりである。
【0075】
【表2】
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5a
図5b