(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】光ファイバ処理工具
(51)【国際特許分類】
G02B 6/24 20060101AFI20250115BHJP
G02B 6/38 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
G02B6/24
G02B6/38
(21)【出願番号】P 2024087890
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】寺本 勝則
(72)【発明者】
【氏名】松田 貴治
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-163763(JP,A)
【文献】特開2008-176146(JP,A)
【文献】特表2019-522242(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0180298(US,A1)
【文献】国際公開第2022/208986(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/24
6/255
6/36-6/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一組の光ファイバを突き合わせて接続する光コネクタを保持するコネクタホルダと、
前記光コネクタに対して挿入および抜去可能に前記コネクタホルダに装着され、前記光コネクタに挿入された状態で前記一組の光ファイバを突き合わせ可能な状態とする楔と、
前記コネクタホルダから前記楔を脱着するリムーバーと、を備える、
光ファイバ処理工具。
【請求項2】
前記コネクタホルダは、前記楔と係合する係合部を備え、
前記リムーバーは、前記楔と前記係合部との隙間に挿入して、前記楔に対する前記係合部の係合を解除する挿入部を備える、
請求項1に記載の光ファイバ処理工具。
【請求項3】
前記楔には、突起部が設けられ、
前記係合部には、前記突起部と係合し、前記光コネクタに挿入可能な第1の位置と、前記光コネクタから抜き去り可能な第2の位置との間で、前記楔を移動可能に案内する案内孔が設けられ、
前記挿入部の先端には、前記楔と前記係合部との隙間に挿入した状態で、前記突起部との干渉を避ける凹部が設けられている、
請求項2に記載の光ファイバ処理工具。
【請求項4】
前記リムーバーは、前記挿入部が前記楔と前記係合部との隙間に挿入した状態で、前記楔を把持する把持部を備える、
請求項2または3に記載の光ファイバ処理工具。
【請求項5】
前記把持部は、前記コネクタホルダから前記楔を脱着可能な把持力を有し、前記把持力を超える力を加えると、前記楔の把持を解除可能である、
請求項4に記載の光ファイバ処理工具。
【請求項6】
前記コネクタホルダは、前記楔の向き違いの誤装着を防止する装着孔を備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光ファイバ処理工具。
【請求項7】
前記一組の光ファイバのうち、一方の光ファイバを保持し、前記一方の光ファイバの端部を前記光コネクタに向かって延出させるファイバホルダを備える、
請求項1~3のいずれか一項に記載の光ファイバ処理工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ処理工具に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、光ファイバ接続器を用いて光ファイバ同士の接続作業を行うための光ファイバ接続工具が開示されている。この光ファイバ接続工具は、2本の光ファイバをそれぞれ保持する一対の光ファイバホルダと、光ファイバホルダおよび光ファイバ接続器を支持する支持台と、光ファイバ接続器の素子間に挿入されることで前記素子間を開放する介挿片を有する第1および第2介挿部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記第1および第2介挿部材は、光ファイバ接続器に楔として挿入され、光ファイバ接続器の素子間を押し広げるが、繰り返し使用すると消耗してしまうため、楔が消耗してしまうと新しい光ファイバ接続工具に交換する必要があった。一方、楔以外の部品は、通常使用においては、まず消耗することはないため、楔の消耗によって新しい光ファイバ接続工具に交換すると、廃棄物が多く発生してしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、消耗品である楔のみ交換可能とすることで、廃棄物が削減できる光ファイバ処理工具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る光ファイバ処理工具は、一組の光ファイバを突き合わせて接続する光コネクタを保持するコネクタホルダと、前記光コネクタに対して挿入および抜去可能に前記コネクタホルダに装着され、前記光コネクタに挿入された状態で前記一組の光ファイバを突き合わせ可能な状態とする楔と、前記コネクタホルダから前記楔を脱着するリムーバーと、を備える。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様の光ファイバ処理工具において、前記コネクタホルダは、前記楔と係合する係合部を備え、前記リムーバーは、前記楔と前記係合部との隙間に挿入して、前記楔に対する前記係合部の係合を解除する挿入部を備えてもよい。
【0008】
本発明の第3の態様は、第2の態様の光ファイバ処理工具において、前記楔には、突起部が設けられ、前記係合部には、前記突起部と係合し、前記光コネクタに挿入可能な第1の位置と、前記光コネクタから抜き去り可能な第2の位置との間で、前記楔を移動可能に案内する案内孔が設けられ、前記挿入部の先端には、前記楔と前記係合部との隙間に挿入した状態で、前記突起部との干渉を避ける凹部が設けられていてもよい。
【0009】
本発明の第4の態様は、第2または第3の態様の光ファイバ処理工具において、前記リムーバーは、前記挿入部が前記楔と前記係合部との隙間に挿入した状態で、前記楔を把持する把持部を備えてもよい。
【0010】
本発明の第5の態様は、第4の態様の光ファイバ処理工具において、前記把持部は、前記コネクタホルダから前記楔を脱着可能な把持力を有し、前記把持力を超える力を加えると、前記楔の把持を解除可能であってもよい。
【0011】
本発明の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれか一つの光ファイバ処理工具において、前記コネクタホルダは、前記楔の向き違いの誤装着を防止する装着孔を備えてもよい。
【0012】
本発明の第7の態様は、第1から第6の態様のいずれか一つの光ファイバ処理工具において、前記一組の光ファイバのうち、一方の光ファイバを保持し、前記一方の光ファイバの端部を前記光コネクタに向かって延出させるファイバホルダを備えてもよい。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の一態様によれば、消耗品である楔のみ交換可能とすることで、廃棄物が削減できる光ファイバ処理工具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る光ファイバ処理工具の平面図である。
【
図6】第1実施形態に係る光ファイバ処理工具の底面側斜視図である。
【
図7】第1実施形態に係るリムーバーの斜視図である。
【
図8】第1実施形態に係るリムーバーの平面図である。
【
図9】第1実施形態に係るリムーバーの装着溝の拡大図である。
【
図11】第1実施形態に係るリムーバーによって楔をコネクタホルダから脱着する様子を示す斜視図である。
【
図12】第1実施形態に係るリムーバーによって楔をコネクタホルダから脱着する様子を示す斜視図である。
【
図13】第1実施形態に係るリムーバーによって楔をコネクタホルダから脱着する様子を示す斜視図である。
【
図16】第1実施形態に係る楔の装着孔の拡大図である。
【
図17】第2実施形態に係る光ファイバ処理工具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態の光ファイバ処理工具について図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る光ファイバ処理工具1の平面図である。
図2は、
図1に示すII-II断面図である。
図3は、
図2に示すIII-III断面図である。
図1に示すように、光ファイバ処理工具1は、ファイバホルダ10と、コネクタホルダ20と、を備えている。ファイバホルダ10は、光ファイバFを保持可能である。コネクタホルダ20は、光コネクタ100を保持可能である。
【0017】
光ファイバFは、ベア部f1と、ベア部f1を覆う被覆f2と、を有する。ベア部f1には、コアと、コアを覆うクラッドと、が含まれる。ベア部f1は、例えばガラスによって形成されている。被覆f2は、例えば樹脂によって形成されている。光ファイバFは、光ファイバFの端部が所定の長さだけファイバホルダ10から延出するように、ファイバホルダ10に保持される。
【0018】
以下の説明において、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。図に示すように、X軸方向は、光ファイバFの端部がファイバホルダ10から延出する方向に設定されている。X軸方向は、光ファイバ処理工具1の長手方向と一致する。Y軸方向は、光ファイバ処理工具1の幅方向(短手方向)と一致する。Z軸方向は、光ファイバ処理工具1の高さ方向と一致する。また、XYZ直交軸の各軸の一方側を「+側」、それと反対側を「-側」と定義する。
【0019】
図1に示すように、ファイバホルダ10は、光ファイバFの端部を延出させた状態で、光ファイバFを保持する。ファイバホルダ10は、光ファイバFを挟み込むクランプ等を備える。ファイバホルダ10は、光ファイバFの端部を、X軸方向で光コネクタ100と対向する位置に保持する。
【0020】
図2に示すように、光コネクタ100は、フェルール101と、内蔵ファイバ102(光ファイバF)と、メカニカルスプライス103と、ハウジング104と、を有する。フェルール101は、内蔵ファイバ102が挿通されるファイバ孔が形成されている。内蔵ファイバ102は、フェルール101の-X側の端面(接続端面)と面一になるように配置されている。フェルール101の-X側の端面は、キャップ101aによって覆われている。
【0021】
内蔵ファイバ102は、フェルール101から+X側に延出している。内蔵ファイバ102の+X側は、メカニカルスプライス103の内部に位置している。メカニカルスプライス103には、+X側から、内蔵ファイバ102の接続対象である光ファイバFが挿入される。
図3に示すように、メカニカルスプライス103は、第1挟持片103A、第2挟持片103B、およびクランプ103Cを備える。
【0022】
クランプ103Cは、横断面視においてC字状であり、弾性を有する材質によって形成されている。第1挟持片103Aおよび第2挟持片103Bは、クランプ103Cの弾性復元力によってクランプ103Cの内面に保持され、互いに圧接している。第1挟持片103Aと第2挟持片103Bとの間の圧接面における一部には、挿入孔103aが形成されている。挿入孔103aには、内蔵ファイバ102および光ファイバFが挿入される。
【0023】
第1挟持片103Aと第2挟持片103Bとの間の圧接面における一部には、
図2に示す楔50が下方から挿入可能な拡開部103bが形成されている。楔50が拡開部103bに挿入されると、クランプ103Cの弾性力に抗して、第1挟持片103Aと第2挟持片103Bとの間が開かれ、光ファイバFを挿入孔103aに挿入可能となる。
【0024】
内蔵ファイバ102および光ファイバFがメカニカルスプライス103内で突き合わせられた状態で、楔50を拡開部103bから引き抜くことで、クランプ103Cの復元力によって第1挟持片103Aと第2挟持片103Bとの間が閉じられる。これにより、内蔵ファイバ102と光ファイバFが突き合わされた状態を保持することができる。
【0025】
図2に示すように、ハウジング104は、フェルール101、内蔵ファイバ102、およびメカニカルスプライス103を収容している。ハウジング104には、楔50の楔本体51が挿通される2つの挿通孔が形成されている。本実施形態では、楔本体51が-Z側からメカニカルスプライス103に挿入される。したがって、ハウジング104の挿通孔も下向きに開口している。図示される光コネクタ100は単一の内蔵ファイバ102を有する。しかしながら、光コネクタ100は複数の内蔵ファイバ102を有してもよい。
【0026】
コネクタホルダ20の底部には、楔50を装着可能な装着孔21が形成されている。コネクタホルダ20は、光コネクタ保持部22と、リンク部30と、リンク作動部40と、を備えている。光コネクタ保持部22は、光コネクタ100を保持し、リンク部30およびリンク作動部40と共に、ファイバホルダ10に向かってX軸方向に相対移動可能にコネクタホルダ20に取り付けられている。
【0027】
リンク作動部40は、第1部材40Aと、第2部材40Bと、を備えている。第2部材40Bは、ファイバ付勢バネ43を介して光コネクタ保持部22の-X側に接続されている。第1部材40Aは、復帰バネ44を介して第2部材40Bの-X側に接続されている。第2部材40Bの下面側(-Z側)には、リンク支持部41が設けられている。第1部材40Aおよび第2部材40Bは、コネクタホルダ20に対して、X軸方向に相対移動可能である。第1部材40AがX軸方向に移動すると、第2部材40Bおよびリンク部30もX軸方向に移動する。
【0028】
ファイバ付勢バネ43は、メカニカルスプライス103の内部において、内蔵ファイバ102に光ファイバFを押し付けるための付勢力を発生させる。ファイバ付勢バネ43の付勢力は、内蔵ファイバ102と光ファイバFとの光学的接続を確保できるように設定される。復帰バネ44は、光コネクタ100に対して光ファイバFを接続した後、第1部材40A等を元の位置に復帰させる役割を有する。
【0029】
リンク部30は、楔50を押し下げるレバー31を備えている。レバー31は、リンク支持部41に軸支された回動軸31aを備えている。レバー31は、回動軸31a回りに回動可能である。第1部材40Aは、傾斜面42を有する。傾斜面42は、X軸方向において、レバー31と対向している。傾斜面42は、-X側に向かうにしたがって、+Z側に向かうように傾斜している。
【0030】
楔50は、光コネクタ100のメカニカルスプライス103に挿入および抜去可能であり、光コネクタ100に内蔵された内蔵ファイバ102と光ファイバFとの接続を可能とする。楔50は、楔本体51と、楔ホルダ52と、を含む。楔ホルダ52の下面は、外部に露出している。使用者は、楔ホルダ52の下面を押し上げることで、楔本体51を上方に移動させることができる。これにより、楔本体51をメカニカルスプライス103に挿入できる。
【0031】
リンク部30は、リンク作動部40の移動に連動し、楔50を、光コネクタ100のメカニカルスプライス103から抜去させる。具体的に、第1部材40Aを+X側に移動させると、傾斜面42がレバー31の-X側の端部に当接し、レバー31の-X側の端部が回動軸31aを中心に上方に回動する。レバー31の-X側の端部が上方に回動すると、レバー31の+X側の端部が下方に回動し、楔ホルダ52を下方に押し下げる。これにより、楔50を下方に移動させることができる。
【0032】
なお、楔50は、X軸方向に離間する2個の楔本体51を備えている。2個の楔本体51は、それぞれ楔ホルダ52に対してZ軸方向に相対移動可能であるが、移動ストロークが異なる。+X側に配置された楔本体51の方が、-X側に配置された楔本体51よりもZ軸方向の移動ストロークが長い。これにより、楔50が下方に移動した際に、-X側に配置された楔本体51をメカニカルスプライス103から先に抜去させることができる。つまり、内蔵ファイバ102および光ファイバFが突き合わされている部分を先に閉じることができる。
【0033】
ファイバホルダ10が保持する光ファイバFを、光コネクタ100に内蔵された内蔵ファイバ102と接続する際には、先ず、メカニカルスプライス103に楔本体51を挿入する。次に、リンク作動部40ごと、光コネクタ100をファイバホルダ10に近づける。これにより、ファイバホルダ10に保持された光ファイバFが、光コネクタ100におけるメカニカルスプライス103内に挿入される。
【0034】
そうすると、メカニカルスプライス103内で、光ファイバFと内蔵ファイバ102とが突き合せられる。このとき、ファイバ付勢バネ43による付勢力が作用し、光ファイバFと内蔵ファイバ102とが、適切な力で押しあてられる。次に、第1部材40Aをファイバホルダ10に向けてさらに押し込むと、レバー31が回転し、楔50が押し下げられる。楔50がメカニカルスプライス103から抜き取られることで、光ファイバFが光コネクタ100に対して固定される。以上により、光ファイバFと光コネクタ100の接続が完了する。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る楔50の側面図である。
図5は、第1実施形態に係る楔50の底面図である。
図4に示すように、楔ホルダ52の下部には、レバー31が+Z側から当接可能な当接部53が設けられている。また、楔ホルダ52の側部には、Y軸方向に突出する突起部54が設けられている。
【0036】
図5に示すように、当接部53は、楔ホルダ52に対してY軸方向両側に張り出した矩形状を有する。突起部54は、楔ホルダ52に対してY軸方向両側に突出したピン形状を有する。突起部54は、2個の楔本体51のそれぞれのY軸方向両側に配置されている。突起部54は、楔ホルダ52に合計4個設けられている。
【0037】
コネクタホルダ20は、
図4に示すように、楔50と係合する係合部23を備える。係合部23には、突起部54をZ軸方向に案内する案内孔23aが形成されている。案内孔23aは、Z軸方向に延びる長孔であり、楔本体51をメカニカルスプライス103に挿入可能な第1の位置と、楔本体51をメカニカルスプライス103から抜き去り可能な第2の位置との間で、楔50を移動可能に案内する。
【0038】
図5に示すように、当接部53には、Z軸方向で突起部54に対向する位置に開口部55が形成されている。開口部55は、後述するリムーバー60の挿入部62が挿入可能な大きさを有する。具体的には、開口部55は、突起部54から係合部23が外れるように、突起部54のY軸方向の寸法及び係合部23のY軸方向の寸法の合計よりも大きくY軸方向に開口している。
【0039】
図6は、第1実施形態に係る光ファイバ処理工具1の底面側斜視図である。
図7は、第1実施形態に係るリムーバー60の斜視図である。
図8は、第1実施形態に係るリムーバー60の平面図である。
図6に示すように、コネクタホルダ20の底面には、リムーバー60を着脱可能に装着する装着溝24が形成されている。リムーバー60は、コネクタホルダ20から楔50を脱着する際に使用する。
【0040】
図7に示すように、リムーバー60は、ベース部61と、挿入部62と、把持部63と、を備えている。ベース部61は、矩形の板形状を有する。
図8に示すように、ベース部61の中央部には、貫通孔61bが形成されている。
図7に示すように、挿入部62は、ベース部61の片面側に立設している。挿入部62は、楔50と係合部23との隙間に挿入されることで、楔50に対する係合部23の係合を解除する。
【0041】
挿入部62の先端には、楔50と係合部23との隙間に挿入した状態で、突起部54との干渉を避ける凹部62aが設けられている。凹部62aは、U字状に形成されている。また、挿入部62の先端には、楔50と係合部23との隙間に挿入し易くなるように、外面側に傾斜部62bが設けられている。つまり、挿入部62は、先端に向かうに従って厚みが薄くなっている。
【0042】
挿入部62は、4個の突起部54に対応して、ベース部61に4個設けられている。挿入部62は、ベース部61の長辺に沿って設けられている。ベース部61の長辺の中央部には、外側に張り出した摘み部61aが設けられている。摘み部61aは、コネクタホルダ20から楔50を脱着させる際に、作業者が指をかける部分である。
【0043】
ベース部61の短辺の中央部には、挿入部62が楔50と係合部23との隙間に挿入した状態で、楔50を把持する把持部63が設けられている。把持部63は、挿入部62と同じ、ベース部61の片面側に立設している。把持部63は、ベース部61の短辺に配置され、ベース部61の長辺方向に離間して一対で設けられている。把持部63は、先端に内向きのフックを備えるスナップフィットである。楔50の楔本体51には、一対の把持部63が係止可能な、一対の被係止部56(
図5参照)が設けられている。
【0044】
図9は、第1実施形態に係るリムーバー60の装着溝24の拡大図である。
図10は、
図9に示すX-X断面図である。
図9に示すように、コネクタホルダ20の底面には、リムーバー60を着脱可能に装着する装着溝24が形成されている。装着溝24は、+Z側に向かって凹状に形成されている。
【0045】
装着溝24のY軸方向で対向する内壁面には、リブ24aが設けられている。装着溝24の+X側の内壁面には、リムーバー60を着脱可能に装着する装着部24bが設けられている。リムーバー60が装着部24bに装着された状態で、リムーバー60と、装着溝24の-X側の内壁面との間には、隙間Sが形成されている。
【0046】
図10に示すように、装着部24bは、-X側に延びる棒状に形成されている。装着部24bの-X側の端部は、+Z側に向かって凸状に形成されている。装着部24bの-X側の端部は、リムーバー60の貫通孔61bに挿入され、ベース部61と係合している。装着部24bの棒状部分には、リムーバー60の+X側の移動を規制する規制部24cが設けられている。これにより、リムーバー60の挿入部62の先端が、装着溝24の+X側の内壁面に接触する等を防止できる。
【0047】
リムーバー60を装着部24bから取り外すには、リムーバー60を把持して-X側に引き抜く。リムーバー60と、装着溝24の-X側の内壁面との間には、隙間Sが形成されているため、リムーバー60を-X側に引き抜くことができる。リムーバー60を-X側に引き抜くと、装着部24bの-X側の端部が、下方に弾性変形して、リムーバー60の貫通孔61bと装着部24bとの係合が解除され、リムーバー60を装着部24bから取り外すことができる。
【0048】
図11~
図13は、第1実施形態に係るリムーバー60によって楔50をコネクタホルダ20から脱着する様子を示す斜視図である。
図14は、
図13に示す状態のときの断面図である。
図15は、
図12に示す状態のときの断面図である。
リムーバー60によって楔50をコネクタホルダ20から脱着する場合、先ず、
図11に示すように、リムーバー60を楔50に位置合わせする。
【0049】
次に、
図12に示すように、リムーバー60の挿入部62を、楔50と係合部23との隙間に差し込む。具体的には、
図15(a)に示すように、挿入部62の先端を、楔ホルダ52と係合部23との隙間に差し込む。そうすると、
図15(b)に示すように、係合部23がY軸方向外側に押し広げられ、突起部54と係合部23との係合を解除することができる。
【0050】
最後に、
図13に示すように、リムーバー60および楔50をコネクタホルダ20から脱着する。このとき、
図14に示すように、リムーバー60の把持部63は、楔ホルダ52の被係止部56に係止している。把持部63は、挿入部62が楔50と係合部23との隙間に挿入した状態で、楔50を把持するため、突起部54と係合部23との係合を解除した状態のまま、リムーバー60を引き抜くことで、楔50を脱着させることができる。
【0051】
把持部63は、コネクタホルダ20から楔50を脱着可能な把持力を有している。つまり、リムーバー60を持ち上げることで、楔50も持ち上げることができる。なお、把持部63に対して当該把持力を超える力を加えると、スナップフィットを弾性変形させて、楔50の把持を解除可能である。つまり、リムーバー60を楔50と共に廃棄することなく、リムーバー60から楔50を取り外すことができ、装着溝24に再び収容する(再利用する)ことができる。
【0052】
図16は、第1実施形態に係る楔50の装着孔21の拡大図である。
楔本体51が消耗した楔50を取り外したら、
図16に示すように、新しい楔50をコネクタホルダ20に装着する。コネクタホルダ20は、楔50の向き違いの誤装着を防止する装着孔21を備える。具体的には、装着孔21は、底面視で略凸状に開口している。
【0053】
この装着孔21に、底面視で略凸状の楔50を装着する場合、同じ向きでないと装着することができない。仮に、楔50を逆向きに装着しようとした場合、
図16において二点鎖線で示すように、楔50が装着孔21の開口周縁部に接触して、コネクタホルダ20に装着できないようになっている。これにより、楔50が正しい向きに装着できるため、
図2に示すように、メカニカルスプライス103から楔50を抜く際に、先ず-X側の楔本体51を抜き、次に+X側の楔本体51を抜くことができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態に係る光ファイバ処理工具1は、一組の光ファイバFを突き合わせて接続する光コネクタ100を保持するコネクタホルダ20と、光コネクタ100に対して挿入および抜去可能にコネクタホルダ20に装着され、光コネクタ100に挿入された状態で一組の光ファイバFを突き合わせ可能な状態とする楔50と、コネクタホルダ20から楔50を脱着するリムーバー60と、を備える。この構成によれば、消耗品である楔50のみ交換可能とすることができ、廃棄物を削減できる。
【0055】
また、本実施形態では、コネクタホルダ20は、楔50と係合する係合部23を備え、リムーバー60は、楔50と係合部23との隙間に挿入して、楔50に対する係合部23の係合を解除する挿入部62を備える。この構成によれば、係合部23を押し広げて、楔50と係合部23との係合を解除することができる。
【0056】
また、本実施形態では、楔50には、突起部54が設けられ、係合部23には、突起部54と係合し、光コネクタ100に挿入可能な第1の位置と、光コネクタ100から抜き去り可能な第2の位置との間で、楔50を移動可能に案内する案内孔23aが設けられ、挿入部62の先端には、楔50と係合部23との隙間に挿入した状態で、突起部54との干渉を避ける凹部62aが設けられている。この構成によれば、挿入部62を楔50と係合部23との隙間に深く差し込めるため、係合部23を押し広げ易くなる。
【0057】
また、本実施形態では、リムーバー60は、挿入部62が楔50と係合部23との隙間に挿入した状態で、楔50を把持する把持部63を備える。この構成によれば、リムーバー60の楔50に対する挿入および引き抜きで、コネクタホルダ20から簡単に楔50を脱着させることができる。
【0058】
また、本実施形態では、把持部63は、コネクタホルダ20から楔50を脱着可能な把持力を有し、当該把持力を超える力を加えると、楔50の把持を解除可能である。この構成によれば、脱着した楔50をリムーバー60から取り外し、リムーバー60を再利用することができる。
【0059】
また、本実施形態では、コネクタホルダ20は、楔50の向き違いの誤装着を防止する装着孔21を備える。この構成によれば、新しい楔50に交換する際に、楔50の向き違いを防止できる。
【0060】
また、本実施形態では、一組の光ファイバFのうち、一方の光ファイバFを保持し、一方の光ファイバFの端部を光コネクタ100に向かって延出させるファイバホルダ10を備える。この構成によれば、光コネクタ100に光ファイバFを挿入することが容易になる。
【0061】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0062】
図17は、第2実施形態に係る光ファイバ処理工具1の平面図である。
図17に示すように、光ファイバ処理工具1は、ファイバホルダ10と、コネクタホルダ20と、ベース部材110と、被覆ストリッパ120と、ハンドル130と、ストリッパ支持台140と、ファイバ切断部150と、を備えている。
【0063】
光ファイバ処理工具1は、被覆除去機能、切断機能、および組付け機能を有している。
被覆除去機能とは、光ファイバFの被覆f2を当該光ファイバFから部分的に除去し、ベア部f1を露出させる機能である。切断機能とは、光ファイバFを切断する機能である。
組付け機能とは、光ファイバFを光コネクタ100に組み付ける機能である。ただし、光ファイバ処理工具1は、被覆除去機能、切断機能、および組付け機能のいずれか1つを有していなくてもよい。
【0064】
ファイバホルダ10は、ベース部材110に、Y軸方向に移動可能に取り付けられている。ファイバホルダ10は、Y軸方向において、被覆ストリッパ120に対応する位置と、コネクタホルダ20に対応する位置と、の間で移動可能である。コネクタホルダ20は、被覆ストリッパ120よりも奥側(+Y側)に配置される。
【0065】
ベース部材110は、ファイバホルダ10およびストリッパ支持台140を支持している。被覆ストリッパ120は、コネクタホルダ20よりも手前側(-Y側)に配置される。被覆ストリッパ120は、ファイバホルダ10から延出された光ファイバFの端部の被覆f2を除去する。被覆ストリッパ120は、ハンドル130の操作により作動される。
【0066】
ハンドル130の操作は、リンク機構を介して、被覆ストリッパ120に伝達される。ストリッパ支持台140は、コネクタホルダ20、被覆ストリッパ120、ハンドル130を保持する。ストリッパ支持台140は、ベース部材110に、X軸方向に移動可能に取り付けられている。
【0067】
ファイバ切断部150は、コネクタホルダ20よりも手前側(-Y側)に配置される。ファイバ切断部150のX軸方向における位置は、ベース部材110に対して固定されている。ファイバ切断部150は、被覆ストリッパ120により被覆f2が除去された光ファイバFのベア部f1を切断する。
【0068】
次に、以上のように構成された光ファイバ処理工具1を用いて光ファイバFを処理する際の作業手順および各部の作用について説明する。
【0069】
まず、ファイバホルダ10を、Y軸方向において、被覆ストリッパ120に対応する位置に移動させ、ハンドル130を操作して光ファイバFの被覆f2に切れ目を入れる。次に、ストリッパ支持台140を、ファイバホルダ10に対して-X側に移動させ、ベア部f1を露出させる。次に、ストリッパ支持台140と共にファイバ切断部150を移動させ、ベア部f1を適切な長さに切断する。
【0070】
次に、ファイバホルダ10を、Y軸方向において、コネクタホルダ20に対応する位置に移動させる。なお、コネクタホルダ20には、楔50が差し込まれた光コネクタ100が保持されている。次に、コネクタホルダ20ごと、光コネクタ100をファイバホルダ10に近づける。これにより、ファイバホルダ10に保持された光ファイバFが、光コネクタ100におけるメカニカルスプライス103内に挿入される。
【0071】
以後は、第1実施形態と同様であり、
図2に示すメカニカルスプライス103内で、光ファイバFと内蔵ファイバ102とが当接する。このとき、ファイバ付勢バネ43による付勢力が作用し、光ファイバFと内蔵ファイバ102とが、適切な力で押しあてられる。次に、第1部材40Aをファイバホルダ10に向けて押し込む。これにより、レバー31が回転し、楔50が押し下げられる。楔50がメカニカルスプライス103から抜き取られることで、光ファイバFが光コネクタ100に対して固定される。以上により、光ファイバFと光コネクタ100の接続が完了する。
【0072】
以上のような光ファイバ処理工具1においても、コネクタホルダ20やベース部材110の底面に、上述したリムーバー60を着脱可能に装着しておくことで、楔本体51が消耗した際に楔50のみを脱着することができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0074】
例えば、光ファイバ処理工具1にファイバホルダ10が無く、光ファイバFを光コネクタ100に直接挿入する形態であってもよい。
【0075】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…光ファイバ処理工具、10…ファイバホルダ、20…コネクタホルダ、21…装着孔、22…光コネクタ保持部、23…係合部、23a…案内孔、24…装着溝、24a…リブ、24b…装着部、24c…規制部、30…リンク部、31…レバー、31a…回動軸、40…リンク作動部、40A…第1部材、40B…第2部材、41…リンク支持部、42…傾斜面、43…ファイバ付勢バネ、44…復帰バネ、50…楔、51…楔本体、52…楔ホルダ、53…当接部、54…突起部、55…開口部、56…被係止部、60…リムーバー、61…ベース部、61a…摘み部、61b…貫通孔、62…挿入部、62a…凹部、62b…傾斜部、63…把持部、100…光コネクタ、101…フェルール、101a…キャップ、102…内蔵ファイバ、103…メカニカルスプライス、103a…挿入孔、103A…第1挟持片、103b…拡開部、103B…第2挟持片、103C…クランプ、104…ハウジング、110…ベース部材、120…被覆ストリッパ、130…ハンドル、140…ストリッパ支持台、150…ファイバ切断部、F…光ファイバ、f1…ベア部、f2…被覆、S…隙間
【要約】
【課題】消耗品である楔のみ交換可能とすることで、廃棄物が削減できる光ファイバ処理工具の提供。
【解決手段】光ファイバ処理工具1は、一組の光ファイバを突き合わせて接続する光コネクタを保持するコネクタホルダ20と、光コネクタに対して挿入および抜去可能にコネクタホルダ20に装着され、光コネクタに挿入された状態で一組の光ファイバを突き合わせ可能な状態とする楔50と、コネクタホルダ20から楔50を脱着するリムーバー60と、を備える。
【選択図】
図13