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7620158測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム
<図1>
  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図1
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  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図14
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  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図15B
  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図15C
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  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図17
  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図18
  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図19
  • -測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム 図20
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-14
(45)【発行日】2025-01-22
(54)【発明の名称】測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08C 13/00 20060101AFI20250115BHJP
   G01D 21/00 20060101ALI20250115BHJP
   G01D 3/00 20060101ALI20250115BHJP
【FI】
G08C13/00
G01D21/00 M
G01D3/00 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2024179579
(22)【出願日】2024-10-15
【審査請求日】2024-12-17
(31)【優先権主張番号】P 2023203437
(32)【優先日】2023-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000145806
【氏名又は名称】株式会社小野測器
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大▲高▼ 政祥
(72)【発明者】
【氏名】翁 志強
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 道夫
(72)【発明者】
【氏名】足立 新
(72)【発明者】
【氏名】寺島 詳二
(72)【発明者】
【氏名】石畠 宏平
【審査官】細見 斉子
(56)【参考文献】
【文献】特許第7603189(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第103617140(CN,A)
【文献】特開2022-032631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367684(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08C 13/00
G01D 3/00,21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
時間的に変化する被測定信号を前処理する前処理部と、
前記前処理部が前処理した前処理信号を所定の第1ランダム行列Φに基づいて、ランダムに測定するランダム測定部とを備え、
前記前処理部は、前記被測定信号を特定周波数だけ下側に周波数シフトした信号に対してダウンサンプリングする
ことを特徴とする測定機器。
【請求項2】
前記前処理部は、前記被測定信号を所定の帯域幅で通過させるバンドパスフィルタと、該バンドパスフィルタの出力信号を特定周波数だけ上下に周波数シフトさせる乗算器と、該乗算器の出力信号の下側周波数の信号成分のみ通過させるLPFと、該LPFの出力信号をダウンサンプリングするダウンサンプリング部とを備える
ことを特徴とする請求項1に記載の測定機器。
【請求項3】
回転機器の回転位置または回転速度の情報を取得する回転情報取得部をさらに備え、
前記ランダム測定部は、前記回転位置または前記回転速度に同期してランダムに測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の測定機器。
【請求項4】
時間的に変化する被測定信号を前処理する前処理部と、該前処理部が前処理した前処理信号を所定の第1ランダム行列Φに基づいて、ランダムに測定するランダム測定部と、前記ランダムに測定したランダム測定値をベクトル表現したランダム測定ベクトルyと前記第1ランダム行列Φとを計測演算装置に送信する送信部とを備え、前記前処理部は、前記被測定信号を特定周波数だけ下側に周波数シフトした信号に対してダウンサンプリングする測定機器と、
前記ランダム測定ベクトルyを前記測定機器から受信する受信部と、前記ランダム測定ベクトルyを、前記第1ランダム行列Φと基底ベクトル{Ψ}を列とするn×nの直交基底行列ψとその係数xとの積Φψxで表現したとき、正則化係数λ0として、式(1)、式(2)で定義した式(3)が最小となるように、直交基底行列ψの係数x={x}を推定する推定部と、を有する計測演算装置と、
を通信可能に接続した計測システム。
【数1】
【数2】
【数3】
【請求項5】
前記推定部が係数xを推定する前の第1期間に、予め、前記ランダム測定ベクトルyおよび任意の第2ランダム行列に基づいて、最も誤差が少ない正則化係数λにおける交差検証の標準偏差以内で最大値になるように、前記正則化係数λ0を事前決定する正則化係数設定部と、
前記第2ランダム行列を、前記第1ランダム行列Φとして前記測定機器に設定させる設定部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の計測システム。
【請求項6】
前記第1期間で測定する被測定信号は、計測用センサで測定する信号であり、
前記第1期間の後の第2期間に、前記ランダム測定部がランダムに測定する被測定信号は、前記計測用センサよりも周波数特性が悪い汎用センサで測定するものであり、
前記第2期間に、前記ランダム測定部が出力するランダム測定ベクトルyを前記汎用センサの周波数特性で補正する周波数補正部をさらに備え、
前記推定部は、前記第2期間、前記周波数補正部の出力データを用いて、前記直交基底行列ψの係数x={xi}を推定する
ことを特徴とする請求項5に記載の計測システム。
【請求項7】
前記第1ランダム行列Φは、前記被測定信号をランダムに間引いたことを示す行列であり、
最も誤差が少ない正則化係数λにおける交差検証の標準偏差以内で最大値になる前記正則化係数λ0を決定する正則化係数設定部をさらに備える
ことを特徴とする請求項4に記載の計測システム。
【請求項8】
時間的に変化する被測定信号を所定のサンプリング周波数で、第1期間に逐次測定する逐次測定部と、
前記逐次測定部で測定した離散時間信号を離散フーリエ変換し、フーリエ係数を出力するDFT演算部と、
前記被測定信号または前記離散時間信号を前処理する前処理部と、
前記前処理部が前処理した前処理信号を用いて、所定の第1ランダム行列Φでランダムに測定または選択した第1ランダム測定値を出力するランダム測定値出力部と、
前記第1ランダム測定値をベクトル表現した第1ランダム測定ベクトルy1を、前記第1ランダム行列Φと基底ベクトル{Ψ}を列とするn×nの直交基底行列ψとその係数xとの積Φψxで表現し、正則化係数λ0としたとき、式(4)、式(5)で定義した式(6)が最小となるように、直交基底行列ψの係数x={x}を推定する推定部と、
前記第1ランダム測定ベクトルy1および前記第1ランダム行列Φに基づいて、最も誤差が少ない正則化係数λにおける交差検証の標準偏差以内で最大値になる前記正則化係数λ0を決定する正則化係数設定部とを有し、
前記前処理部は、前記被測定信号を特定周波数だけ下側に周波数シフトした信号に対してダウンサンプリングするものであり、
前記誤差は、前記推定部で推定した係数xと前記フーリエ係数とを用いて演算した、前記離散時間信号と前記第1ランダム測定値とのパワーの差分であり、
前記差分が所定範囲内である
ことを特徴とする計測システム。
【数4】
【数5】
【数6】
【請求項9】
前記パワーの差分は、前記係数xと前記フーリエ係数との差の二乗和である
ことを特徴とする請求項8に記載の計測システム。
【請求項10】
前記パワーの差分は、前記係数xを用いて演算したパワーと、前記フーリエ係数を用いて演算したパワーとの差分である
ことを特徴とする請求項8に記載の計測システム。
【請求項11】
時間的に変化する被測定信号を前処理する前処理過程と、
前記前処理過程が前処理した前処理信号を、所定の第1ランダム行列Φに基づいて、ランダムに測定するランダム測定過程とを備え、
前記前処理過程は、前記被測定信号を特定周波数だけ下側に周波数シフトした信号に対してダウンサンプリングする
ことを特徴とする計測方法。
【請求項12】
時間的に変化する被測定信号を前処理する前処理過程と、
前記前処理過程で前処理した前処理信号を、所定の第1ランダム行列Φに基づいて、ランダムに測定するランダム測定過程とをコンピュータに実行させ、
前記前処理過程は、前記被測定信号を特定周波数だけ下側に周波数シフトした信号に対してダウンサンプリングする
ことを特徴とする計測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラムに関し、例えば、超音波ホーンの振動を評価する測定機器に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波ホーンや回転機器等の振動機器は、材料や構造により共振点を有する。スペクトル分布で共振特性を評価することが多い。また、これらの振動機器は、材料の欠陥、疲労や経年変化などにより必然的に故障する。故障が生じると、機器のダウンタイムにつながり、経済的損失が生まれてしまう。そのため、回転機器の故障診断を行い、健康な状態に保つことが重要となる。振動機器の振動評価や故障診断は様々なセンシング方法により行われている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、圧縮センシング技術と、計測開始時間をランダムとして一定周波数での計測する手法(Random Start Uniform Sampling Method,以降RSUSM)とを組み合わせた技術が開示されている。圧縮センシング理論は、計測データがある基底(例えば、フーリエ基底)に対してスパース性を有すること、基底がインコヒーレントであること(Random sampling を行うこと)という条件を満たすなら、通常必要とされるよりもはるかに少ない測定データから信号を正確に復元することができる技術である。これにより、非特許文献1の技術では、モニタリングに必要な計測データを削減している。
また、特許文献1には、センサにIDを振り、サーバシステムで集中管理をしつつ、状況に合わせて温度補整や直線性を補整処理する計測データ提供サービスシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】加藤由幹,“サブナイキストサンプリングと圧縮センシングを用いたプロペラの故障診断”,日本機械学会第19回評価・診断に関するシンポジウム,2021年12月2-3日(開催日)
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6252669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1で使用している圧縮センシング理論は、計測データがフーリエ基底に対してスパース性を有することが必要である。しかしながら、周波数スペクトルが広がってしまい(つまり、スパース性が低い)、必要な精度で元の信号を復元することができないことがある。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、計測データの削減を図りつつ、元の信号の復元率を高くすることができる測定機器、計測システム、計測方法および計測プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決される。
時間的に変化する被測定信号を前処理する前処理部と、前記前処理部が前処理した前処理信号を所定の第1ランダム行列Φに基づいて、ランダムに測定する測定部とを備え、前記前処理部は、前記被測定信号を特定周波数だけ下側に周波数シフトした信号に対してダウンサンプリングすることを特徴とする測定機器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、計測データの削減を図りつつ、元の信号の復元率を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態である計測システムの構成図である。
図2】本発明の第1実施形態で使用される測定対象を評価する評価対象設備を示す構成図である。
図3】本発明の第1実施形態である計測システムで使用される前処理部の構成図である。
図4】前処理部における各部の波形の一例を示す図である。
図5】パラメータ設定期間(第1期間T1)とパラメータ設定後の計測期間(第2期間T2)との関係を説明するための図である。
図6】本発明の第1実施形態である計測システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図7】本発明の第2実施形態である計測システムの構成図である。
図8】本発明の第2実施形態である計測システムの動作を説明するためのフローチャートである。
図9】本発明の第2実施形態である計測システムで計測した周波数スペクトルを示す図である。
図10】本発明の第3実施形態である計測システムの構成図である。
図11】本発明の第4実施形態である計測システムの構成図である。
図12】本発明の第5実施形態である計測システムの構成図である。
図13】本発明の第5実施形態で使用される測定対象を評価する評価対象設備を示す構成図である。
図14】回転速度の高低による測定信号の差異を説明するための図である。
図15A】被測定信号の時間変化を示す図である。
図15B】回転機器の回転位相の時間変化を示す図である。
図15C】測定信号と回転位相との関係を示す図である。
図16】本発明の第6実施形態の計測システムの構成図である。
図17】計測用マイク、高周波計測用マイクおよびMEMS製の汎用マイクの周波数特性を示す図である。
図18】本発明の第7実施形態である計測システムの構成図である。
図19】本発明の比較例である計測システムの構成図である。
図20】本発明の変形例である計測システムで使用される前処理部の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているにすぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素は、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本発明の実施形態である計測システムの構成図である。
計測システム100は、測定対象30の特性(例えば、振動速度)をセンサ20で計測するものであり、ランダム測定機器10と計測演算装置50とが通信可能に接続されている。測定対象30は、例えば、超音波ホーンである。センサ20は、例えば、ドップラ振動計であり、測定対象30の振動速度を検出し、時間的に変化する被測定信号a(t)を出力する。
【0013】
ランダム測定機器10は、センサ20が出力する被測定信号a(t)を前処理し、前処理を行った前処理信号s(t)をランダムにサンプルするものである。ランダム測定機器10は、前処理部40と、測定部としてのランダム測定部1と、設定部としてのランダム行列設定部2と、受信部4とを備えて構成される。言い変えれば、ランダム測定機器10が実行する測定方法は、前処理過程と、ランダム測定過程とを含む。
【0014】
図2は、測定対象を評価する評価対象設備を示す構成図である。
評価対象設備150は、測定対象30と、センサ20とを備える。測定対象30は、例えば、超音波ホーンであり、振動子35と、ホーン36とを備える。振動子35は。圧電素子31とボルト32とを備える。圧電素子31は、張力に対して脆い(もろい)ため、ボルト32で締め付けて、圧縮荷重をかけた状態で使用される。ホーン36は、振動を増幅する。なお、測定対象30である超音波ホーンは、上下に立て掛けられて測定される。センサ20は、例えば、測定対象30の振動速度を検出するレーザドップラー振動計である。センサ20は、立て掛けられた測定対象30の振動子35の上面にレーザ光を当てて、振動速度を測定する。
【0015】
図3は、本発明の第1実施形態である計測システムで使用される前処理部40の構成図である。
前処理部40は、センサ20が出力する被測定信号a(t)を前処理し、前処理信号s(t)を出力する。前処理部40は、特定の周波数範囲f1~f2を0~f(周波数レンジHz)の範囲に表示するように周波数を変換する。この変換によって、Δ=f2-f1の幅がfの幅へM倍(Δ・M=f)に拡大表示される。この機能をズーム機能と称する。前処理部40は、サンプリング部41と、バンドパスフィルタ45と、周波数シフト42と、ローパスフィルタ(Low Pass Filter)43と、ダウンサンプリング部44とを備える。
【0016】
サンプリング部41は、被測定信号a(t)を第1サンプリング周波数(例えば、256kHz)でデジタル変換し、サンプリング信号SP(t)を出力する。バンドパスフィルタ45は、Zoomする周波数範囲f1~f2を通過させ、バンドパス信号BPF(t)を出力する。周波数シフト42は、バンドパス信号BPF(t)に対して、特定周波数(fm=30kHz)の周波数シフトを行っている。つまり、周波数シフト42は、第1サンプリング周波数fs1=256kHzのサンプリング信号SP(t)と、特定周波数(fm=30kHz)の正弦波信号M(t)とを乗算する乗算器である。この乗算器は、上側周波数(Fs1/2+fm=128kHz+30kHz)の信号成分FSh(t)と、下側周波数(Fs1/2-fm=128kHz-30kHz)の信号成分FSl(t)との双方の信号(出力信号)を出力する。
【0017】
つまり、信号成分FSh(t)は、サンプリング信号SP(t)を特定周波数(fm=30kHz)だけ上側に周波数シフトしたものである。また、信号成分FSl(t)は、サンプリング信号SP(t)を特定周波数(fm)だけ下側に周波数シフトしたものである。
【0018】
ローパスフィルタ43は、上側周波数(fs1+fm)の上側周波数成分FSh(t)を遮断し、下側周波数(fs1-fm)の下側周波数成分FSl(t)を出力する。つまり、ローパスフィルタ43は、サンプリング信号SP(t)を特定周波数(fm)だけ下側に周波数シフトした信号を出力する。これにより、サンプリング周波数を下げることができるので、サンプル数が低減する(Zoom機能)。ダウンサンプリング部44は、下側周波数成分FSl(t)を第1サンプリング周波数(例えば、fs1=256kHz)よりも低い第2サンプリング周波数(例えば、fs2=640Hz)でダウンサンプリングし、前処理信号s(t)を出力する。
【0019】
図4は、前処理部における各部の波形の一例を示す図である。
(a)は、サンプリング部41が被測定信号a(t)を第1サンプリング周波数でサンプルしたサンプリング信号SP(t)である。(b)は、30kHzで周波数シフトした信号FS(t)である。(c)は、ローパスフィルタ43を通過した下側周波数成分FSl(t)である。(d)は、下側周波数成分FSl(t)をダウンサンプリングした前処理信号s(t)である。
【0020】
図1の説明に戻り、ランダム測定部1は、前処理信号s(t)を第1ランダム行列Φにしたがってランダムにサンプルしたランダム測定値をベクトル表現したランダム測定ベクトルy=Φsの信号を計測演算装置50に出力(送信)する。ここで、測定期間を、測定パラメータ(例えば、後記する正則化係数λ)を設定するパラメータ設定期間(第1期間)と、パラメータ設定後の測定期間(第2期間)とに分ける。
【0021】
図5は、パラメータ設定期間(第1期間T1)とパラメータ設定後の計測期間(第2期間T2)との関係を説明するための図である。第1期間T1はt=0~t1であり、第2期間T2は、t=t2以降である。なお、t1~t2の期間は、測定中断期間である。
【0022】
第1期間T1に測定したランダム測定ベクトルを第1ランダム測定ベクトルy1=Φsとし、第2期間T2に測定したランダム測定ベクトル(第2ランダム測定ベクトル)をy=Φsとする。ここで、第1ランダム行列Φは、前処理信号s(t)の全ての時系列信号の列(離散時間信号s)をランダムに間引いたことを示す行列Φrや、離散時間信号sの測定開始タイミングをランダムにする計測を複数回行うことを示す行列Φrsu等がある。ランダムサンプリングを示す行列Φは、前処理信号s(t)を等間隔に取得した全ての時系列信号の列(離散時間信号s)をランダムに間引くように計測することを示す。
【0023】
行列Φrsuは、一度の計測で、一定周波数frsu(frsu<<サンプリング周波数fs)または一定周波数frsuのM点のデータを取るものとする。その結果、ランダム測定部1が前処理信号s(t)をサンプルするサンプル数は、離散時間信号sの数よりも減少する。ランダム測定部1は、前処理信号s(t)を圧縮サンプリング(CS:Compressed Sensing)するので、全ての時系列信号の列(離散時間信号s)を出力するよりも安価に製作することができる。
【0024】
ランダム行列設定部2は、ランダム測定部1で用いる第1ランダム行列Φを設定するものである。第1ランダム行列Φは、固定であってもよいが、本実施形態では、第2ランダム行列Φ0を初期値として、第2ランダム行列Φ0を更新することにより、第1ランダム行列Φとするものとする。受信部4は、ランダム行列設定部2の更新データ(第1ランダム行列Φ)を計測演算装置50から受信する。
【0025】
計測演算装置50は、第2期間T2(図5)において、ランダム測定機器10から受信したランダム測定値(ランダム測定ベクトルy=Φs)から離散時間信号sを復元する。つまり、計測演算装置50は、ランダム測定機器10から受信した少ないデータ量のデータ(y=Φs)から全データ(離散時間信号s)を復元する。ここで、離散時間信号sは、基底ベクトル{Ψ}を列とするn×nの直交基底行列ψの係数xとしたとき、s=ψxで表現される。ここで、基底ベクトル{Ψ}は、例えば、時間tを変数とするフーリエ基底ベクトルである。なお、フーリエ基底ベクトルの時間分解能は、例えば、(ダウンサンプリング周波数/ダウンサンプリング数)/圧縮サンプリングの圧縮率、とする。
【0026】
計測演算装置50は、受信部55と、制御部60と、送信部56とを備えて構成されるPC(Personal Computer)である。受信部55は、ランダム測定機器10からランダム測定ベクトルy=Φsのデータを受信する。制御部60は、CPU(Central Processing Unit)を有するコンピュータであり、計測演算プログラムを実行することにより、推定部61と、正則化係数設定部62と、復元部63との機能を実現する。
【0027】
推定部61は、計測演算装置50が受信したランダム測定ベクトルy=Φsを用いて、n×nの直交基底行列ψの係数xを推定する。具体的には、LASSO(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)の手法を用い、正則化係数λ0としたとき、以下の式(1)が最小となるように、係数x={x}を推定する。
【数1】
【0028】
ここで、以下の式(2)、式(3)にて、数式内のノルムを定義している。
【数2】

【数3】
【0029】
Σ|x|は、i=1~Nまでxの絶対値を加算することを意味し、
Σ|x|は、i=1~Nまでxの絶対値の2乗を加算することを意味する。
なお、ランダム測定ベクトルyから第1ランダム行列Φとn×nの直交基底行列ψとその係数xとの積Φψxを減算した(y-Φψx)は、誤差を表現している。
【0030】
正則化係数設定部62は、第2期間T2(図5)においてn×nの直交基底行列ψの係数xを推定する前に、予め、第1期間T1において正則化係数λ0の値を、最も誤差が少ない正則化係数λにおける交差検証の標準偏差以内で最大値になるように設定する。このとき、第1ランダム行列Φは、ランダム測定機器10のランダム行列設定部2に格納している初期値(第2ランダム行列Φ0)を用いるが、適宜、変更しても構わない。
【0031】
復元部63は、第2期間T2において、n×nの直交基底行列ψと、推定部61で推定した係数x={x}とを乗算して、離散時間信号s=ψxを復元する。つまり、復元部63は、ランダムにサンプルしたランダム測定ベクトルy=Φsを用いて、離散時間信号sの全体を復元することができる。
【0032】
送信部56は、正則化係数設定部62で正則化係数λ0の値を決定するときに、第2ランダム行列Φ0を用いることなく、変更したときには、変更した第1ランダム行列Φをランダム測定機器10に送信する。これにより、ランダム測定機器10のランダム行列設定部2の値が第2ランダム行列Φ0から第1ランダム行列Φに更新される。
【0033】
図6は、本発明の第1実施形態である計測システムの動作を説明するためのフローチャートである。このフローは、測定対象30(図1,2)を変更したときの最初に起動する。これにより、計測演算装置50は、第1期間T1(図5)でパラメータ(正則化係数λや第1ランダム行列Φ)を事前決定し、第2期間T2(図5)で測定を開始する。また、ランダム行列設定部2には、予めランダム行列Φ=Φ0が設定(格納)されている。
【0034】
第1期間T1において、ランダム測定機器10の前処理部40(図1,3)は、センサ20から被測定信号a(t)の前処理を行い、前処理信号s(t)を出力する。そして、ランダム測定機器10のランダム測定部1(図1)は、前処理信号s(t)を事前取得する(ステップS1)。つまり、ランダム測定機器10は、第2サンプリング周波数(例えば、fs2=640Hz)でダウンサンプリングした離散時間信号sを取得する。ランダム測定機器10は、事前にサンプル取得した離散時間信号sを用いて、ランダム測定ベクトルy=Φsを演算する(ステップS2)。ステップS2の処理後、ランダム測定機器10は、ランダム測定ベクトルyを計測演算装置50に送信する(ステップS3)。計測演算装置50は、ランダム測定ベクトルyを受信し(ステップS4)、正則化係数λ=λ0を最も誤差が少ないλにおける交差検証の標準偏差以内で最大値になるように決定する(ステップS5)。このとき、正則化係数設定部62(図1)は、ランダム行列Φ=Φ0を使用するが、第1ランダム行列Φを適宜修正してから、正則化係数λ0を決定しても構わない。
【0035】
ステップS5の処理後、計測演算装置50は、適宜修正された第1ランダム行列Φをランダム測定機器10に送信する(ステップS6)。これにより、第1ランダム行列Φがランダム測定機器10に設定される。ランダム測定機器10は、第1ランダム行列Φを受信し、ランダム行列設定部2に設定されている第2ランダム行列Φ0を受信した第1ランダム行列Φに再設定する(ステップS7)。これにより、ランダム測定機器10は、測定開始の準備が完了する。
【0036】
第2期間T2(図5)において、ランダム測定機器10は、センサ20から前処理信号s(t)をランダムに取得する(ステップS8)。このとき、ランダム行列設定部2には、ステップS7で再設定された第1ランダム行列Φが格納されている。ステップS8の実行中に、ランダム測定機器10は、ランダムに取得した前処理信号s(t)を用いて、ランダム測定ベクトルy=Φsを演算する(ステップS9)。ステップS9の処理後、ランダム測定機器10は、ランダム測定ベクトルyを計測演算装置50に送信する(ステップS10)。計測演算装置50は、ランダム測定ベクトルyを受信し(ステップS11)、LASSOの手法を用いて、n×nの直交基底行列ψの係数x={x}を決定する(ステップS12)。ステップS12の処理後、計測演算装置50は、離散時間信号s=ψxを復元する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態の計測システム100によれば、前処理部40は、入力信号a(t)を第1サンプリング周波数fs1よりも低い下側周波数(fs1-fm)にシフトさせる。このため、前処理部40は、第2サンプリング周波数fs2でダウンサンプリングを行うことができる。その結果、前処理部40でダウンサンプリングを行い、さらに、ランダム測定部1でランダムサンプリングを行うので、サンプリング数が重畳的に低減する。言い換えれば、ランダム測定機器10が計測演算装置50に送信するランダム測定ベクトルyのデータ数が極めて少なくなる。逆に、サンプリング数を同一であれば、推定部61が推定する係数x={x}の周波数分解能が高まる。
【0038】
(第2実施形態)
前記第1実施形態では、「正則化係数λ=λ0を最も誤差が少ないλにおける交差検証の標準偏差以内で最大値」になるように決定した(図6のステップS5)。本実施形態では、その誤差を圧縮サンプリング(CS:Compressed Sensing)で演算したパワーの積和と、DFT(Discrete Fourier Transform)演算したパワーの積和との差で演算している。
【0039】
図7は、本発明の第2実施形態である計測システムの構成図である。
計測システム101は、ランダム測定機器11と逐次測定機器71と計測演算装置51とが通信可能に接続されて構成されたものである。
【0040】
ランダム測定機器11は、前記した前処理部40と、ランダム測定値出力部としてのランダム測定部1とを備えて構成される。特に、ランダムスタートを示す行列Φrsuのときには、サンプリング周波数fs=Nfrsuとなる。
【0041】
逐次測定機器71は、前記した前処理部40と、逐次測定部73と、DFT演算部74とサンプリング周波数生成器76とを備える。サンプリング周波数生成器76は、前記した第2サンプリング周波数fs2のクロックを生成する。逐次測定部73は、第2サンプリング周波数fs2を用いて前処理信号s(t)を逐次測定する。逐次測定部73は、ランダムに測定しない点でランダム測定部1と相違する。
【0042】
DFT(Discrete Fourier Transform)演算部74は、逐次測定部73が出力する離散時間信号sを離散フーリエ変換し、演算結果(フーリエ係数xf={xf})を計測演算装置52に出力する。なお、前処理信号s(t)に対する演算をZoomDFTと称する。
【0043】
計測演算装置51は、第1期間T1(図5)でフーリエ係数xf={xf}を確認して、スパース性の判断を行い、パラメータ(正則化係数λ)を設定する。具体的には、第1期間T1において、計測演算装置51は、圧縮センシングの定数をcとしたとき、n>mかつ、n/s>n/mであることを確認する。ここで、圧縮後のサンプリング数をmとし、圧縮前のサンプリング数をnとし、0でないq(周波数)の成分数をsとする。その後、計測演算装置51は、パラメータ(正則化係数λ)を設定する。
【0044】
また、第2期間T2(図5)においては、計測演算装置51は、計測演算装置50(図1)と同様に、ランダム測定機器11から受信した少ないデータ量のランダム測定値(ランダム測定ベクトルy=Φs)から全データ(離散時間信号s)を復元する。
【0045】
計測演算装置51は、PCであり、計測演算プログラムを実行することにより、推定部61と、正則化係数設定部62と、復元部63と、復元誤差演算部54と、異常度演算部57と、報知部58との機能を実現する。
【0046】
復元誤差演算部54は、第1期間T1において、フーリエ係数xf={xf}と係数x={x}との差の二乗和を演算し、離散時間信号sと第1ランダム測定値(ベクトル表現したものが第1ランダム測定ベクトルy1)とのパワーの差分を求める。さらに、復元誤差演算部54は、そのパワーの差分を係数xの二乗和で除して復元誤差r((4)式)を演算する。復元誤差演算部54は、復元誤差rが所定範囲(例えば、0.01%,0.1%,1%,10%,20%)に納まることを確認するものであり、所定範囲に納まらなかったら正則化係数λ=λ0の修正を行う。
【0047】
【数4】
【0048】
異常度演算部57は、第2期間において、例えば、マハラノビス距離(オンライン)を用いて、異常度を演算する。報知部58は、異常度演算部57が異常を検知したとき、つまり、マハラノビス距離を用いた異常度が閾値を超えたときに、使用者に報知する。
【0049】
図8は、本発明の第2実施形態である計測システムの動作を説明するためのフローチャートである。
第1期間T1(図5)において、逐次測定機器71では、逐次測定部73が前処理信号s(t)を所定の第2サンプリング周波数fs2で逐次取得する(ステップS21)。ステップS21の処理後、逐次測定機器71は、DFT演算部74がフーリエ係数xf={xf}を演算し(ステップS22)、そのフーリエ係数xfを計測演算装置51に送信する(ステップS23)。
【0050】
計測演算装置51では、正則化係数設定部62が第1ランダム測定ベクトルy1=Φsを用いて、正則化係数λ0を決定する(ステップS24)。計測演算装置51では、フーリエ係数xfを受信し(ステップS25)、復元誤差演算部54が復元誤差rを演算するとともに、その復元誤差rが所定範囲内に納まっているか否か判定する(ステップS26)。復元誤差rが所定範囲外であるときには(ステップS26で所定範囲外)、計測演算装置51は、処理をステップS24に戻し、正則化係数設定部62に対して正則化係数λ0の再設定を行わせる。一方、復元誤差rが所定範囲内に納まったときには(ステップS26で所定範囲内)、計測システム101は、第2期間T2(図5)に移行する。
【0051】
第2期間T2では、ランダム測定機器11では、ランダム測定部1が前処理信号s(t)の測定値をランダムに取得し(ステップS27)、ランダム測定ベクトルy=Φsを計測演算装置51に送信する(ステップS28)。計測演算装置51では、ランダム測定ベクトルy=Φsを受信し(ステップS29)、推定部61が係数x={x}を推定する(ステップS30)。前処理信号s(t)に対する推定をZoomCSと称する。
【0052】
ステップS30の処理後、計測演算装置51では、異常度演算部57が異常度を演算すると共に、その異常度が閾値αを超えたか否か判定する(ステップS31)。異常度が閾値α以下であったら(ステップS31で閾値以下)、計測演算装置51が処理をステップS29に戻し、ランダム測定ベクトルy=Φsの受信を継続する。一方、異常度が閾値αを超えたら(ステップS31で閾値超)、計測演算装置51は、報知部58に対して、報知を行わせる(ステップS32)。
【0053】
図9は、本発明の第2実施形態である計測システム101で計測した周波数スペクトルを示す図である。
横軸は、周波数[Hz]であり、縦軸は、測定対象30が振動する速度[m/s]である。また、太い実線は、ZoomCSの結果である。また、細い実線がZoomDFTの結果であり、破線がZoomFFTの結果である。また、白丸(○)は、補正処理を行ったZoomDFTの結果であり、黒丸(●)は、補正処理を行ったZoomCSの結果である。つまり、縦軸の速度[m/s]は、太い実線が係数x={x}に対応し、細い実線や破線がフーリエ係数xf={xf}に対応する。
【0054】
ZoomFFTは、第1サンプリング周波数fs1=256kHzの被測定信号a(t)を第2サンプリング周波数fs2=640Hzでダウンサンプリングし、計512点のデータでFFT演算を行ったものである。つまり、周波数分解能は、640Hz/512=1.25Hzである。ZoomDFTは、第2サンプリング周波数fs2=640Hzで、40秒間ダウンサンプリングした計25600点のデータをDFT演算したものである。つまり、周波数分解能は、640Hz/25600=0.025Hzである。
【0055】
ZoomCSは、40秒間、計25600点のデータを640/50=12.8Hz毎にランダムサンプリングを行ったものである。つまり、ZoomCSは、640Hzでダウンサンプリングした512点のデータを、さらに1/50に圧縮サンプリングしている。つまり、周波数分解能は、(640Hz/512)/50=0.025Hzである。結果的に、ZoomCSは、25600点(40s)のデータの1/50の512点で、640Hzの25600点(40s)のデータを推定している。
【0056】
ZoomCS(太い実線)とZoomDFT(細い実線)とは、周波数分解能が双方共に0.025Hzであり、振動速度の周波数スペクトルが非常に良く一致している。そのため、復元誤差演算部54は、復元誤差rが所定範囲に納まっていることを確認することができる。つまり、復元誤差演算部54は、ZoomDFTによるフーリエ係数xf={xfi}と、ZoomCSによる係数x={xi}との差の二乗和を演算し、演算結果(パワーの差分)を係数xの二乗和で除した復元誤差r((7)式)が所定範囲に納まっていることを確認することができる。
【0057】
ところで、ZoomFFT(破線)の周波数スペクトルは、ZoomCSおよびZoomDFTと一致していない。これは、ZoomFFTの周波数分解能が1.25Hzであり、ZoomCSやZoomDFTと大きく異なっているからである。そこで、ZoomDFTおよびZoomCSの周波数スペクトルに対して、周波数分解能を変更する補正を行う。
【0058】
ZoomDFT(○)およびZoomCS(●)は、周波数軸上での束ね処理が行われている。束ね処理とは、DFTを使用した周波数領域のリサンプリング処理であり圧縮率で束ねる方法である。この束ね処理によれば、補正処理を行ったZoomDFT(○)やZoomCS(●)と、ZoomFFT(破線)とがほぼ一致している。つまり、周波数分解能を同一にすれば、ZoomFFTの周波数スペクトルは、ZoomCSやZoomDFTの周波数スペクトルとほぼ一致する。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、復元誤差演算部54(図7)は、復元誤差rが所定範囲に納まっていることを確認することができる(S26(図8))。これにより、決定した正則化係数λ=λ0(S24(図8))が適切であると判断される。
【0060】
(第3実施形態)
前記各実施形態の計測システムでは、第2期間T2において、計測演算装置50,51が逐次受信したランダム測定ベクトルy=Φsを用いて、係数x={x}を逐次推定したが、計測演算装置が逐次受信したランダム測定ベクトルy=Φsを記憶部に格納し、記憶部に格納されたランダム測定ベクトルy=Φsを用いてバッチ処理することができる。
【0061】
図10は、本発明の第3実施形態である計測システムの構成図である。
計測システム103は、ランダム測定機器11と、計測演算装置52と、逐次測定機器71とを備えて構成される。ランダム測定機器11および逐次測定機器71は、前記第2実施形態と同一構成である。計測演算装置52は、前記第2実施形態の計測演算装置51(図7)に比較して、記憶部59を備えている点で相違する。
【0062】
記憶部59は、第2期間T2(図5)のランダム測定ベクトルy=Φsを記憶する。これにより、計測演算装置52は、第1期間T1において、受信した第1ランダム測定ベクトルy1=Φsを用いて、正則化係数λ=λ0を決定し、第2期間T2において、ランダム測定ベクトルy=Φsが記憶部59に記憶される。その後、バッチ処理で、復元部63は、離散時間信号s=ψxを復元する。
【0063】
(第4実施形態)
前記第2実施形態では、第1期間T1(図5)において、ランダム測定機器10(図1)が前処理信号s(t)をランダムに取得したが、前処理信号s(t)を所定の第2サンプリング周波数fs2で逐次測定し、逐次測定したデータに対してランダムに選択しても構わない。
【0064】
図11は、本発明の第4実施形態である計測システムの構成図である。
計測システム104は、ランダム測定機器11と、逐次測定機器71と、計測演算装置53とを備えて構成される。
ランダム測定機器11および逐次測定機器71は、前記第2実施形態と同一構成である。
【0065】
計測演算装置53は、前記第2実施形態の計測演算装置52と同様に、復元誤差演算部54,異常度演算部57、報知部58、推定部61,正則化係数設定部62、復元部63を備える。しかしながら、計測演算装置51は、ランダム選択部67およびスイッチ68を備えている点で前記実施形態の計測演算装置52と相違する。
【0066】
ランダム選択部67は、第1期間T1において、第1ランダム行列Φにしたがって、逐次測定部73が逐次出力する離散時間信号sをランダムに選択する。つまり、ランダム選択部67は、ランダム測定値出力部としても機能し、ランダム測定値をベクトル表現した第1ランダム測定ベクトルy1=Φsを出力する。スイッチ68は、端子jを端子hと端子iとの何れか一方に設定する1回路2接点スイッチである。i端子がランダム選択部67の出力に接続され、h端子がランダム測定部1の出力に接続され、j端子が推定部61の入力に接続される。推定部61では、使用するフーリエ基底ベクトル{Ψ}の変数は、時間tである。
【0067】
第1期間T1では、推定部61は、前記第1実施形態と同様に、ランダム選択部67が出力する第1ランダム測定ベクトルy1=Φsを入力して、n×nの直交基底行列ψの係数xを推定する。このとき、正則化係数λ0の値は、最も誤差が少ないλにおける交差検証の標準偏差以内で最大値になるように設定される。また、復元誤差演算部54は、復元誤差rが所定範囲内でないとき、正則化係数λ0を再設定する。なお、ランダム測定部1でも、第1ランダム測定ベクトルy1=Φsを出力するがスイッチ68で遮断される。
【0068】
第2期間T2では、推定部61は、第1期間T1で設定された正則化係数λ0を用いて、ランダム測定部1が出力するランダム測定ベクトルy=Φsを入力して、n×nの直交基底行列ψの係数xを推定する。さらに、前記第2,3実施形態と同様に、復元部63が離散時間信号sを復元する。
【0069】
(第5実施形態)
前記各実施形態の計測システムは、超音波ホーン等の振動を計測していたが、ベアリング等の回転機器33(図12)を測定対象にしても構わない。このときには、回転次数を用いた振動解析を行うことができる。
【0070】
図12は、本発明の第5実施形態である計測システムの構成図である。
計測システム105は、回転機器33の特性(例えば、振動)をセンサ21で計測するものであり、ランダム測定機器12と計測演算装置50とが通信可能に接続されている。回転機器33は、例えば、ベアリングであり、モータや発電機等の回転電機を含む。センサ20は、例えば、加速度センサであり、回転機器33の振動を検出する。また、回転角センサ39は、回転機器33の回転位置を示す回転位相θを出力する。
【0071】
ランダム測定機器12は、センサ21が出力する被測定信号a(t)を前処理し、前処理を行った前処理信号s(t)を回転位相θに同期して、ランダムにサンプルするものである。ランダム測定機器12は、前記第1実施形態のランダム測定機器10(図1)と同様に、前処理部40と、設定部としてのランダム行列設定部2と、受信部4とを備えている。しかしながら、ランダム測定機器12は、ランダム測定部1の代わりに、ランダム測定部5を有し、さらに、回転情報取得部3を備えている点でランダム測定機器10と相違する。回転情報取得部3は、回転機器33の回転位置を検出し、回転位相θの信号としてランダム測定部5に出力する。ランダム測定部5は、前処理信号s(t)を回転位相θに同期して、第1ランダム行列Φにしたがってランダムにサンプルしたランダム測定値をベクトル表現したランダム測定ベクトルy=Φsの信号を計測演算装置50に出力(送信)する。
【0072】
図13は、測定対象を検査する測定対象設備を示す構成図である。
測定対象設備151は、測定対象の回転機器33と、モータ38と、センサ21と、回転角センサ39とを備える。回転機器33は、例えば、内輪33aと外輪33bとを備えるベアリングである。回転機器33は、外輪31bに傷を付けたものを評価対象にしている。回転機器33の内輪33aは、モータ38によって回転させられる。回転角センサ39は、内輪33aの回転位置を検出し、回転位相θを出力する。センサ21は、回転機器33の振動を検出する加速度センサである。
ランダム測定部1は、前処理信号s(t)を回転位相θに同期して、第1ランダム行列Φにしたがってランダムにサンプルしたランダム測定値をベクトル表現したランダム測定ベクトルy=Φsの信号を計測演算装置50に出力(送信)する。
【0073】
図14は、回転速度の高低による前処理信号s(t)のサンプル数の差異を説明するための図である。
横軸が時間tであり、下図の縦軸が前処理信号s(t)である。前処理信号s(t)は、正弦波信号であって、時刻0~t1の1周期目が高回転速度であり、時刻t1~t2までの2周期目が低回転速度であるとする。下図では、回転位相に同期して前処理信号s(t)をサンプルした点を白丸(○)で示している。例えば、図14の下図では、回転位相の40°毎に白丸(○)を付している。また、上図の横線上には、同一タイミングの縦線を記している。高回転速度領域Aであっても、低回転速度領域Bであっても、1周期当りのサンプル数は等しい。
【0074】
なお、1回転当りを1周期として1回発生する現象を回転1次成分、そのn倍を回転n次成分と定義し、X軸を次数にとりY軸を次数成分の振動騒音の大きさとして表して行う分析を「回転次数比分析」という。
【0075】
図15Aは、測定信号の時間変化を示す図である。横軸は時間tであり、縦軸は前処理信号s(t)である。また、図15Bは、回転機器の回転位相の時間変化を示す図である。
横軸は時間tであり、縦軸は回転位相θ(t)である。ここでは、前処理信号s(t)は、周波数が徐々に高くなる正弦波信号であるとする。前処理信号s(t)および回転位相θ(t)の複数の測定点a,b,c,dに黒丸(●)が付されている。
【0076】
図15Bにおいて、時間t=0で回転位相θ(0)=0であり、回転位相θ(t)は、時間経過(測定点a→b→c→d)と共に単調増加する。例えば、b点(図15A)では、3周期目の手前なので(360×4)°よりも少ない回転位相になっている。c点(図15A)では、5周期目の手前なので(360×4)°よりも多い回転位相になっている。d点(図15A)では、6周期後であり、(360×4)°と(360×8)°との間の回転位相になっている。
【0077】
図15Cは、測定信号と回転位相との関係を示す図である。
横軸は、回転位相θであり、縦軸は、前処理信号s(θ)である。
c-d間では、時間T3(図15A)が短いが回転位相幅Θ1は長く表現される。言い換えれば、図15Cのように、回転位相θを変数にすれば、回転機器33の回転速度が変化するものであっても、前処理信号s(θ)は、正弦波として評価することができる。
【0078】
以上説明したように,本実施形態の計測システム105(図12)によれば、ランダム測定部1は、回転機器33の回転位相θに同期して測定する。これにより、計測演算装置50(図12)の推定部61は、周波数毎の係数x={x}ではなく、次数比毎の係数x={x}を推定する。また、基底ベクトル{Ψ}は、例えば、回転位相θを変数とするフーリエ基底ベクトルであり、フーリエ基底ベクトルの1周期は、回転機器33の1回転となる。
【0079】
以上説明したように、本実施形態の計測システム105によれば、計測点数を減らした次数比分析を行うことができる。すなわち、計測システム105では、第1期間T1で測定された回転角速度(ω=dθ/dt)を基準に特定した次数比(特定次数比)での周波数成分(特定周波数成分)をZoomして測定することができる。
【0080】
(第6実施形態)
図16は、本発明の第6実施形態の計測システムの構成図である。
計測システム106は、前記実施形態の計測システム100(図1)と同様に、ランダム測定機器10と計測演算装置77とを備えて構成される。但し、ランダム測定機器13は、センサ20(図1)の代わりに、汎用センサ22を接続する。つまり、汎用センサ22は、ランダム測定機器13に含まれる前処理部40に接続される。汎用センサ22は、例えば、MEMS製の汎用マイクであり、センサ21(図12)として計測用センサを使用したときに比較して、周波数特性が悪い。
【0081】
図17は、計測用マイク、高周波計測用マイクおよびMEMS製の汎用マイクの周波数特性を示す図である。
横軸は、周波数[Hz]である。縦軸は、デシベルであり、基準周波数1kHzで0デシベルである。計測用マイクは、10Hz程度から20kHz程度までフラットな周波数特性を維持する。これに対して、MEMS製の汎用マイクは、20Hzから200Hz程度の低い周波数で出力が低下する。また、高周波計測用マイクは、10Hz~100kHz程度まで使用可能である。
【0082】
計測演算装置77(図16)は、周波数補正部69を備える点で、計測演算装置50(図1)と相違する。周波数補正部69は、受信部55で受信したランダム測定ベクトルyの周波数特性を補正する。具体的には、周波数補正部69は、20Hz~200Hz程度の低い周波数でゲインを高め、汎用センサ22を含めた周波数特性を計測用センサと同程度にする。
【0083】
(第7実施形態)
図18は、本発明の第7実施形態である計測システムの構成図である。
計測システム104は、前記第4実施形態の計測システム103(図10)と同様に、ランダム測定機器13と、計測演算装置78と、逐次測定機器71とを備える。ランダム測定機器13は、スイッチ7をさらに備え、スイッチ7が汎用センサ22および計測用センサ23の何れか一方に切り替えて、前処理部40に接続する点で、ランダム測定機器11(図10)と異なる。
【0084】
計測演算装置78は、周波数補正部69と、スイッチ68をさらに備える点で計測演算装置52(図10)と相違する。また、逐次測定機器72は、センサ21(図12)の代わりに計測用センサ23を接続する。この計測用センサ23は、計測用マイク(図17)であってもよい。さらに、計測用センサ23は、高周波(~100kHz)まで計測可能な高周波計測用マイク(図17)であってもよい。また、計測用センサ23は、ドップラ振動計であっても構わない。周波数補正部69は、記憶部59に接続され、記憶部59に記憶された汎用センサ22のデータ(ランダム測定ベクトルy=Φs)の周波数特性を補正する。これにより、汎用センサ22および周波数補正部69は、全体として計測用センサ23と同等になる。
【0085】
スイッチ7,68は、端子a,bの何れか一方を端子cに接続する2接点スイッチである。スイッチ7,68は、第1期間T1(図5)において、端子bに接続され、第2期間T2(図5)において、端子aに接続される。つまり、スイッチ2は、第1期間T1において、計測用センサ23と前処理部40とを接続し、第2期間T2において、汎用のセンサ21と前処理部40とを接続する。スイッチ68は、第1期間T1において、記憶部59と推定部61および正則化係数設定部62とを接続し、第2期間T2において、周波数補正部69と、推定部61および正則化係数設定部62とを接続する。
【0086】
(比較例)
前記各実施形態では、圧縮サンプリング(CS)により前処理信号s(t)を復元したが、圧縮サンプリングを行うことなく、DFT変換により前処理信号s(t)を復元させても構わない。
【0087】
図19は、本発明の比較例である計測システムの構成図である。
計測システム106は、測定機器14と計測演算装置70とが通信可能に接続されて構成されている。測定機器14は、前記した前処理部40と、逐次測定部6とを備える。前処理部40は、センサ20の被測定信号a(t)を前処理し、前処理信号s(t)を出力する。逐次測定部6は、前処理信号s(t)を第2サンプリング周波数fs2で前処理信号s(t)を逐次取得し、離散時間信号sを出力する。つまり、測定機器14は、前記各実施形態のランダム測定機器10(図1),11(図7,10,11),12(図12)に比較して、ランダムにサンプリングしていない点で相違する。
【0088】
計測演算装置79は、受信部55と、x演算部64と、復元部65とを備えて構成される。受信部55は、測定機器14から離散時間信号sを受信する。x演算部64は、フーリエ基底ベクトルψfの係数(フーリエ係数xf)を演算する。ここで、フーリエ基底ベクトルψfの変数は、時間である。つまり、x演算部64は、DFT演算部74(図7,10,11)と同様に、離散時間信号sを離散フーリエ変換する。復元部65は、フーリエ基底ベクトルψfとフーリエ係数xfを用いて、離散時間信号s=ψf・xfを復元する。
【0089】
また、逐次測定部6が前処理信号s(t)を第2サンプリング周波数fs2で逐次取得しているので、計測演算装置53では、高速フーリエ変換可能であるが、前記実施形態では、前処理信号s(t)をランダムサンプリングしているので、離散フーリエ変換することができない。しかしながら、前記各実施形態の計測演算装置50(図1),51(図7),52(図10),53(図11)では、LASSO(Least Absolute Shrinkage and Selection Operator)によるL1正則化を解くことによって、n×nの直交基底行列ψの係数xをスパースにしている。
【0090】
(変形例)
本発明は、前記各実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変形実施が可能であり、例えば、次のようなものがある。
(1)前記実施形態の前処理部40(図3)では、ズーム機能を行っていたが、エンベロープ処理を追加することができる。図20に示す前処理部49は、サンプリング部41と、BPF45aと、絶対値検波部47と、BPF45bと、周波数シフト42と、ローパスフィルタ43と、ダウンサンプリング部44と、BPF処理部46とを備える。これにより、前処理部49は、特定の周波数範囲f1~f2を0~f(周波数レンジHz)の範囲に表示するように周波数を変換する。
【0091】
サンプリング部41は、被測定信号a(t)を第1サンプリング周波数51.2kHzでサンプリングするものである。BPF45aは、サンプリング信号SP(t)の所定範囲(例えば、10kHz~15kHz)の周波数成分を通過させ、帯域通過信号BPF(t)を出力する。絶対値検波部47は、帯域通過信号BPF(t)を絶対値検波し、絶対値信号ABS(t)を出力する。BPF45bは、絶対値信号ABS(t)の所定範囲の周波数成分を通過させ、帯域通過信号BPF(t)を出力する。
【0092】
周波数シフト42は、BPF45bが出力するバンドパス信号BPF(t)に対して、特定周波数(fm=2kHz)の周波数シフトを行う。つまり、周波数シフト42は、第1サンプリング周波数fs1=51.2kHzのサンプリング信号SP(t)と、特定周波数(fm=2kHz)の正弦波信号M(t)とを乗算する乗算器である。この乗算器は、上側周波数(Fs1/2+fm=25.6kHz+2kHz)の信号成分FSh(t)と、下側周波数(Fs1/2-fm=25.6kHz-2kHz)の信号成分FSl(t)との双方の信号(出力信号)を出力する。
【0093】
つまり、信号成分FSh(t)は、バンドパス信号BPF(t)を特定周波数(fm=2kHz)だけ上側に周波数シフトしたものである。また、信号成分FSl(t)は、バンドパス信号BPF(t)を特定周波数(fm)だけ下側に周波数シフトしたものである。
【0094】
前記第1実施形態の前処理部40(図3)と同様に、ローパスフィルタ43は、下側に周波数シフトした信号成分FSl(t)を取り出す。ダウンサンプリング部44は、ローパスフィルタ43の出力信号LPF(t)を第2サンプリング周波数1.28kHzでサンプリングし、ダウンサンプリング信号DNSP(t)を出力する。BPF処理部46は、前処理信号s(t)を出力する。つまり、本変形例の前処理部49は、ズーム機能を実現した後に、エンベロープ処理を行っている。なお、図12(第5実施形態)の場合は、回転位相θに同期しているので、前処理部49のBPF処理部46の代わりに次数比BPF処理部(不図示)を用いたものが使用される。
【0095】
(2)前記各実施形態の計測システム100(図1),101(図7),103(図10),104(図11)では、ランダム測定機器10(図1),11(図7,10,11)と計測演算装置50(図1),51(図7),52(図10),53(図11)とを通信可能に接続していたが、一体構成としても構わない。このときには、ランダム測定部1は、シリアルデータであるランダム測定ベクトルyを受信部55(図1)に出力し、受信部55は、シリアルデータであるランダム測定ベクトルyを入力する。
【0096】
(3)前記実施形態では、LASSOの手法を用いたが、貪欲法や凸最適化に基づく手法,確率伝播法に基づく手法などさまざまな計算効率の高いアルゴリズムを用いて解くことができる。)
【0097】
(4)前記各実施形態では、離散時間信号sを離散フーリエ変換し、フーリエ係数fk={fki}のと推定部61が推定した係数x={x}との差分を演算し、その二乗和(パワーの差分)が所定範囲内であることを事前確認した。これに限らず、係数x={x}の二乗和の第1パワーを演算すると共に、フーリエ係数xf={xf}の二乗和の第2パワーを演算し、第1パワーと第2パワーとの差分を演算してもよい。
【0098】
(5)前記各実施形態では、前処理部40が被測定信号a(t)を受信し、サンプリング部41(図3)がサンプリング信号SP(t)を出力した。これに限らず、前処理部40がサンプリング信号SP(t)を受信しても構わない。いずれにしても、前処理部40が被測定信号a(t)を前処理している。
【0099】
(6)前記第2実施形態では、ランダム測定機器11(図7)および逐次測定機器71の内部に前処理部40(図3)を設けた。これに限らず、ランダム測定機器11の内部にのみ前処理部40(図3)を設け、逐次測定機器71に前処理部40を設けることなく、センサ20が出力する被測定信号a(t)を逐次測定部73に入力させても構わない。これによれば、DFT演算部74(図7)は、ダウンサンプリングしない信号FSl(t)(図3)に対してDFT演算を行う。
【符号の説明】
【0100】
1 ランダム測定部(測定部)
2 ランダム行列設定部(設定部)
3 回転情報取得部
4 受信部
5 ランダム測定部
6 逐次測定部
7 スイッチ
10,11,12,13 ランダム測定機器(測定機器)
14 測定機器
20 センサ(ドップラ振動計)
21 センサ(加速度センサ)
22 汎用センサ
23 計測用センサ
30 測定対象
33 回転機器
40 前処理部
41 サンプリング部
42 周波数シフト
43 ローパスフィルタ
44 ダウンサンプリング部
45 バンドパスフィルタ
46 BPF処理部
47 絶対値検波部
50,51,52,53 計測演算装置
54 復元誤差演算部
55 受信部
56 送信部
57 異常度演算部
58 報知部
59 記憶部
60 制御部(コンピュータ)
61 推定部
62 正則化係数設定部
63,65 復元部
64 x演算部
65 復元部
67 ランダム選択部
68 スイッチ
69 周波数補正部
71 逐次測定機器
73 逐次測定部
74 DFT演算部
76 サンプリング周波数生成器
77,78,79 計測演算装置
100,101,103,104,105,106 計測システム(計測演算システム)
a(t) 被測定信号
SP(t) サンプリング信号
s(t) 前処理信号(ダウンサンプリング信号)
y ランダム測定ベクトル(ランダム測定値y、第2ランダム測定ベクトル)
y1 第1ランダム測定ベクトル
Φ 第1ランダム行列(ランダム行列)
λ 正則化係数
x 係数
ψ 直交基底行列(直交基底)
ψf フーリエ基底ベクトル
【要約】
【課題】計測データの削減を図りつつ、元の信号の復元率を高くする。
【解決手段】時間的に変化する被測定信号a(t)を前処理する前処理部40と、前処理部40が前処理した前処理信号s(t)を第1ランダム行列Φに基づいて、ランダムに測定するランダム測定部1とを備え、前処理部40は、被測定信号a(t)を特定周波数だけ下側に周波数シフトした信号に対してダウンサンプリングする。また、ランダムに測定したランダム測定値をベクトル表現したランダム測定ベクトルyをランダム測定部1から受信する受信部55と、ランダム測定ベクトルyを、第1ランダム行列Φと基底ベクトル{Ψ}を列とするn×nの直交基底行列ψとその係数xとの積Φψxで表現したとき、正則化係数λ0として、直交基底行列ψの係数x={x}を推定する推定部61と、を有する計測演算装置を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16
図17
図18
図19
図20