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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】光走査装置及び測距装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/481 20060101AFI20250116BHJP
   G02B 26/12 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G02B26/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020218902
(22)【出願日】2020-12-28
(65)【公開番号】P2022103971
(43)【公開日】2022-07-08
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000006220
【氏名又は名称】ミツミ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】山田 健介
(72)【発明者】
【氏名】西山 隆彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 豊樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐司
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-180103(JP,A)
【文献】特開平11-166969(JP,A)
【文献】特開2005-069975(JP,A)
【文献】特開2015-132599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48 - 7/51
G01S 17/00 - 17/95
G02B 26/10 - 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する発光部と、
前記光を走査させる光走査部と、
前記光走査部による走査光が物体で反射又は散乱された戻り光を受光する受光部と、
前記光走査部を制御する光走査制御部と、
基台部と、
前記発光部と前記受光部とを保持する保持部と、を有し、
前記光走査部は、
複数の反射面を含み、第1軸周りに回転しながら前記反射面で前記光を反射することで、前記第1軸周りに前記光を走査させる回転多面体と、
前記回転多面体を支持する支持部と、
前記第1軸に交差する第2軸周りに前記支持部を回転させることで、前記反射面で反射された前記光を前記第2軸周りに走査させる回転機構と、を有し、
前記発光部が発する光は、前記発光部が発する光の光軸と前記第2軸とが同軸となるように前記回転多面体の前記反射面に入射し、
前記戻り光は、前記戻り光の光軸と前記第2軸とが同軸となるように、前記回転多面体の前記反射面により反射され、
前記保持部と前記回転機構は、前記基台部の異なる領域に設けられており、
前記第1軸は、前記第1軸及び前記第2軸の両方に交差する方向に、前記第2軸に対して離間した位置に設けられており、
前記回転多面体は、前記第1軸を中心軸とする正多角柱であり、
前記第1軸の前記第2軸から離間した位置までの軸間距離dは、前記正多角柱における正多角形の内接円半径以下で、且つ下記の式で表される条件に従い、
前記回転多面体は、前記第1軸及び前記第2軸の両方に交差する方向に沿って、前記軸間距離dの取り得る範囲で位置が可変である光走査装置。
【数1】
(θは、前記回転多面体による前記第1軸周りの走査角度範囲の中央値となる角度方向と、前記第1軸及び前記第2軸の両方に交差する方向と、のなす角度を表し、Qは前記正多角形の外接円半径を表す。)
【請求項2】
前記回転多面体は、第1軸ドライバ基板によって前記回転多面体の回転数が制御され、前記光走査制御部の非制御対象であり、
前記回転機構は、前記光走査制御部によって制御される第2軸ドライバ基板によって回転駆動され、
前記回転機構の回転数は、前記光走査制御部の制御対象である請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記受光部は、前記回転多面体に含まれる前記複数の反射面のうち、所定の面で反射された前記走査光が前記物体で反射又は散乱された後、再び前記所定の面で反射された前記戻り光を受光する請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記戻り光を偏向させる光偏向部を有し、
前記光偏向部は、前記発光部が発する光を通過させる開口部を含む請求項1乃至3の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記回転多面体を回転させる回転駆動部は、前記回転機構に設けられている請求項1乃至の何れか1項に記載の光走査装置。
【請求項6】
請求項1乃至の何れか1項に記載の光走査装置と、
前記光走査装置による前記走査光が前記物体で反射又は散乱された前記戻り光に基づき取得される前記物体までの距離情報を出力する出力部と、を有する測距装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び測距装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発光部が発する光を走査させた走査光が、物体により反射又は散乱された戻り光を受光する光走査装置が知られている。
【0003】
また、第1軸心周りに揺動可能な可動部と、該可動部を揺動駆動する駆動部とを備えた第1偏向機構と、第1偏向機構を第1軸心とは異なる第2軸心周りに回転駆動する第2偏向機構と、可動部に設置され、投受光部から第2軸心に沿って出射された測定光を偏向反射する光偏向部と、上記駆動部を制御する揺動制御部とを有する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許6069628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の構成では、可動部の揺動を制御するため、制御が複雑になる場合がある。
【0006】
本発明は、制御を簡素化可能な光走査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る光走査装置は、光(L1)を発する発光部(3)と、前記光を走査させる光走査部(120)と、前記光走査部による走査光(L2)が物体(200)で反射又は散乱された戻り光(R)を受光する受光部(8)と、前記光走査部を制御する光走査制御部(150)と、基台部(1)と、発光部(3)と受光部(8)とを保持する保持部(2)と、を有し、前記光走査部は、複数の反射面(51)を含み、第1軸(A1)周りに回転しながら反射面(51)で光(L1)を反射することで、第1軸(A1)周りに光(L1)を走査させる回転多面体(5)と、回転多面体(5)を支持する支持部(9)と、第1軸(A1)に交差する第2軸(A2)周りに支持部(9)を回転させることで、反射面(51)で反射された光(L1)を第2軸(A2)周りに走査させる回転機構(10)と、を有し、発光部(8)が発する光(L1)は、発光部(8)が発する光(L1)の光軸と第2軸(A2)とが同軸となるように、回転多面体(5)の反射面(51)に入射し、戻り光(R)は、戻り光(R)の光軸と第2軸(A2)とが同軸となるように、回転多面体(5)の反射面(51)により反射され、保持部(2)と回転機構(10)は、基台部(1)の異なる領域に設けられており、第1軸(A1)は、第1軸(A1)及び第2軸(A2)の両方に交差する方向に、第2軸(A2)に対して離間した位置に設けられており、回転多面体(5)は、第1軸(A1)を中心軸とする正多角柱であり、第1軸(A1)の第2軸(A2)から離間した位置までの軸間距離dは、正多角柱における正多角形の内接円半径以下で、且つ下記の式で表される条件に従い、回転多面体(5)は、第1軸(A1)及び第2軸(A2)の両方に交差する方向に沿って、軸間距離dの取り得る範囲で位置が可変である
【数1】
(θは、回転多面体(5)による第1軸(A1)周りの走査角度範囲の中央値となる角度方向と、第1軸(A1)及び第2軸(A2)の両方に交差する方向と、のなす角度を表し、Qは正多角形の外接円半径を表す。)
【0008】
なお、上記括弧内の参照符号は、理解を容易にするために付したものであり、一例にすぎず、図示の態様に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、制御を簡素化可能な光走査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る測距装置の全体構成例を示す斜視図である。
図2図1のLD及びAPD周辺の構成例を示す部分拡大斜視図である。
図3図1のポリゴンミラー周辺の構成例を示す部分拡大斜視図である。
図4】実施形態に係る測距装置の全体構成例を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る測距装置が有する制御部の機能構成例のブロック図である。
図6】実施形態に係る測距装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】実施形態に係る測距装置による光走査例を示す図であり、図7(a)は測距装置を側方から視た図、図7(b)は測距装置を上方から視た図である。
図8】走査線の軌跡の一例を示す図である。
図9】走査線の軌跡の他の例を示す図であり、図9(a)は比較例を示す図、図9(b)は実施形態を示す図である。
図10】第1軸と第2軸の軸間距離の第1例を示す図である。
図11】第1軸と第2軸の軸間距離の第2例を示す図である。
図12】第1軸と第2軸の軸間距離の第3例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一の構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための光走査装置及び測距装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0013】
実施形態に係る光走査装置は、光を発する発光部と、該光を走査させる光走査部と、光走査部による走査光が物体で反射又は散乱された戻り光を受光する受光部と、光走査部を制御する光走査制御部とを有するものである。
【0014】
このような光走査装置は、物体で反射又は散乱された戻り光に基づき、物体までの距離を測定する測距装置等に搭載され、走査光を物体が存在する側に投光するために使用される。なお、物体までの距離は、物体と測距装置との間の距離と言い換えることもできる。
【0015】
ここで、例えば反射面を有する可動部を往復揺動させて光を走査させる構成を光走査部が含むと、可動部の揺動速度の変動を抑制する制御や、可動部の共振周波数の制御等で制御が複雑になる場合がある。
【0016】
実施形態では、光走査部は、複数の反射面を含み、第1軸周りに回転しながら発光部が発する光を反射面で反射することで、第1軸周りに該光を走査させる回転多面体を有する。また光走査部は、回転多面体を支持する支持部と、第2軸周りに支持部を回転させることで、回転多面体の反射面で反射された光を第2軸周りに走査させる回転機構とを有する。
【0017】
例えば、回転多面体はポリゴンミラーである。また回転機構はポリゴンミラーとその支持部を載置して回転可能な回転ステージである。回転多面体及び回転機構はそれぞれ一定の回転方向に連続回転するため、可動部の揺動速度の変動を抑制する制御や共振の制御等を行わなくてもよい。これにより、制御を簡素化可能な光走査装置を提供可能にする。
【0018】
以下、サービスロボットに搭載され、サービスロボットの進行方向又は周囲に存在する物体までの距離を測定可能な測距装置が備える光走査装置を一例として、実施形態を説明する。
【0019】
ここで、サービスロボットとは、工場内での資材運搬、接客施設での商品運搬及び案内業務、施設内警備、或いは清掃等の主に役務の目的で使用される自律移動型の移動体をいう。また移動体とは移動可能な物体をいう。
【0020】
サービスロボットに搭載される測距装置は、サービスロボットの進行方向又は周囲に存在する物体を検出したり、サービスロボットが動作する施設の施設内地図等を作成したりするために使用される。また測距装置は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置である。
【0021】
なお、以下に示す図でX軸、Y軸及びZ軸により方向を示す場合があるが、X軸に沿うX方向は、実施形態に係る測距装置が備えるポリゴンミラーの回転軸である第1軸に沿う方向を示す。Z軸に沿うZ方向は、実施形態に係る測距装置が備える回転ステージの回転軸である第2軸に沿う方向を示す。X軸とZ軸は交差する。Y軸に沿うY方向は、X軸及びZ軸の両方に交差する方向を示す。
【0022】
また、X方向で矢印が向いている方向を+X方向、+X方向の反対方向を-X方向と表記し、Y方向で矢印が向いている方向を+Y方向、+Y方向の反対方向を-Y方向と表記し、Z方向で矢印が向いている方向を+Z方向、+Z方向の反対方向を-Z方向と表記する。但し、これらは測距装置及び光走査装置の使用時における向きを制限するものではなく、測距装置及び光走査装置は任意の向きで配置可能である。
【0023】
<測距装置100の構成例>
まず、図1乃至図3を参照して、実施形態に係る測距装置100の全体構成例を説明する。図1は、測距装置100の全体構成の一例を説明する斜視図である。また図2は、LD及びAPDの周辺の構成の一例を説明する部分拡大斜視図である。図3はポリゴンミラーの周辺の構成の一例を説明する部分拡大斜視図である。
【0024】
図1乃至図3に示すように、測距装置100は、ベース板1と、保持部2と、LD(Laser Diode)3と(図2参照)、コリメートレンズ4と、ポリゴンミラー5と、穴あきミラー6と、受光レンズ7と、APD(Avalanche Photodiode)8と、イケール9と、回転ステージ10とを有する。
【0025】
ベース板1は、保持部2と回転ステージ10が設けられた基台部の一例である。但し、基台部はベース板1等の平板状の部材に限定されるものではなく、回転ステージ10と保持部2が設けられる構成部であれば如何なるものであってもよい。例えば後述するサービスロボットの筐体に保持部2と回転ステージ10を設ける場合には、サービスロボットの筐体が基台部に対応する。
【0026】
ベース板1は平板状の部材であり、平板の+Z方向側の面上の異なる領域に保持部2と回転ステージ10を固定して設けている。より詳しくは、ベース板1は、ベース板1の+Y方向側の領域に回転ステージ10をネジ等で固定し、また回転ステージ10の-Y方向側の領域に結合部材11を介して保持部2をネジ等で固定している。
【0027】
ベース板1の材質に特段の制限はないが、回転ステージ10は重量が大きい場合があるため、金属材料等の剛性が高い材料を含んでベース板1を構成すると好適である。
【0028】
保持部2は、天井パネル21と、背面パネル22とを組み合わせて構成されたで逆L字型の部材ある。天井パネル21及び背面パネル22はそれぞれ平板状の部材であり、天井パネル21と背面パネル22が結合することで保持部2を構成している。天井パネル21及び背面パネル22の材質に特段の制限はないが、例えば金属材料又は樹脂材料等を適用可能である。
【0029】
天井パネル21の-Z方向側の面には、LD3と、コリメートレンズ4と、穴あきミラー6とが固定されている。背面パネル22の+Y方向側の面には、受光レンズ7と、APD8とが固定されている。保持部2は、天井パネル21にLD3を固定して保持し、また背面パネル22にAPD8を固定して保持している。
【0030】
LD3は光を発する発光部の一例である。LD3はレーザ光を-Z軸方向側に発することができる。但し、発光部はLDに限定されるものではない。光を発することができれば、LED(light emitting diode)等のLD以外の発光部を用いてもよい。
【0031】
発光部が発する光は、CW(Continuous Wave)光であってもパルス光であってもよい。発光部が発する光の波長は特に制限されないが、近赤外波長領域等の非可視の波長領域のレーザ光を用いると、人間にレーザ光を視認させずに測距できるため、より好適である。
【0032】
コリメートレンズ4は、ガラス材料又は樹脂材料を含んで構成され、LD3が発するレーザ光を略コリメート(略平行化)する。コリメートレンズ4を必ずしも設けなくてもよいが、コリメートレンズ4を設けることで、LD3が発するレーザ光の広がりを抑制し、光利用効率を向上させることができる。
【0033】
コリメートレンズ4でコリメートされたレーザ光L1は、穴あきミラー6に設けられた貫通孔61を通過してポリゴンミラー5の反射面51に入射する。
【0034】
ポリゴンミラー5は、複数の反射面51を含み、第1軸A1周りに回転しながら反射面51でレーザ光L1を反射することで、レーザ光L1の反射光に対応する走査レーザ光L2を第1軸A1周りに走査させる回転多面体の一例である。なお、反射面51は複数の反射面の総称表記である。
【0035】
ポリゴンミラー5は、回転により第1軸A1を中心にした円の一部を描くようにして、反射面51による反射光を走査させる。第1軸A1周りに走査される光は、換言すると第1軸A1を中心にした円の円周方向に沿って走査される光である。
【0036】
ポリゴンミラー5は正六角柱状の部材である。正六角柱における正六角形の各辺に対応する外周面に、6つの反射面51が形成されている。ポリゴンミラー5は、アルミニウム等の金属材料で形成した略正六角柱状の部材の外周面を、切削又は鏡面研磨することで製作できる。但し、これに限定されるものではなく、例えば金属材料又は樹脂材料等で形成した略正六角柱状の部材の外周面に、アルミニウム等を鏡面蒸着してポリゴンミラー5を製作してもよい。
【0037】
なお、図1では、正六角柱状で反射面51の面数が6面であるポリゴンミラー5を例示するが、回転多面体はこれに限定されるものではない。例えば、正三角柱状で3面の反射面を有する回転多面体であってもよいし、正五角柱状で5面の反射面を有する回転多面体であってもよい。
【0038】
回転多面体の面数に応じて、回転多面体による光の走査角度範囲が異なる。例えば、面数が多いほど走査角度範囲は狭くなり、面数が少ないほど走査角度範囲は広くなる。要求される走査角度範囲に応じて回転多面体の面数を適宜決定することができる。
【0039】
ポリゴンミラー5には、ポリゴンミラー5の中心軸と回転軸が略一致するように第1軸モータが取り付けられている。ポリゴンミラー5は第1軸モータを駆動源にして第1軸A1周りに回転する。
【0040】
ポリゴンミラー5の回転方向は一定であり、例えば図1における第1軸回転方向A11に沿って連続回転する。但し、第1軸回転方向A11とは反対方向である一定の回転方向にポリゴンミラー5を連続回転させてもよい。
【0041】
ポリゴンミラー5の反射面51に入射したレーザ光L1は、反射面51で反射され、+Y方向側に照射される。ポリゴンミラー5の回転により、レーザ光L1の入射方向に対する反射面51の角度が連続的に変化することで、反射面51による反射光は第1軸A1周りに走査され、走査レーザ光L2として+Y方向側に照射される。
【0042】
なお、図1は、第1軸A1周りに走査される走査レーザ光L2のうち、任意のタイミングに+Y方向側に照射される1つのレーザビームである走査レーザ光L2を例示している。
【0043】
測距装置100の+Y方向側に物体が存在すると、走査レーザ光L2が物体で反射又は散乱された戻り光が測距装置100に戻される。戻り光は、再びポリゴンミラー5の反射面51に入射し、ポリゴンミラー5の回転により第1軸A1周りに走査される。この走査される戻り光のうち、穴あきミラー6に到達する戻り光は、穴あきミラー6によって-Y方向側に反射されて偏向される。
【0044】
本実施形態では、ポリゴンミラー5でレーザ光L1が反射される反射面51と、ポリゴンミラー5で戻り光が反射される反射面51は同じ反射面である。同じ反射面で反射された戻り光がAPD8で受光される。
【0045】
換言すると、APD8は、ポリゴンミラー5に含まれる複数の反射面51のうち、所定の面で反射された走査レーザ光L2が物体で反射又は散乱された後、再び所定の面で反射された戻り光を受光する。
【0046】
穴あきミラー6は、走査レーザ光L2が物体で反射又は散乱された戻り光を偏向させる光偏向部の一例である。この穴あきミラー6は貫通孔61を含む。貫通孔61は、LD3が発する光を通過させる開口部の一例であり、穴あきミラー6における反射面が設けられた領域の一部に形成されている。穴あきミラー6に入射する光のうち、反射面に入射する光は反射され、貫通孔61に入射する光は通過するようになっている。
【0047】
なお、本実施形態では、光偏向部が開口部としての貫通孔を有する構成を例示するが、これに限定されるものではない。光偏向部における反射面が設けられた領域の一部を透明にし、この透明な領域を透過させることで開口部として機能させてもよい。また、光偏向部としてビームスプリッターやハーフミラー等を用いることもできる。
【0048】
コリメートレンズ4でコリメートされたレーザ光L1は、穴あきミラー6の貫通孔61を通過してポリゴンミラー5の反射面51に入射する。一方、走査レーザ光L2が物体で反射又は散乱された戻り光は、穴あきミラー6の反射面によりAPD8に向けて反射される。
【0049】
穴あきミラー6で反射された光は、受光レンズ7により集光されながらAPD8に入射する。受光レンズ7は必ずしも設けなくてもよいが、受光レンズ7を設けると、APD8に入射するレーザ光の入射効率が向上する点で好適である。
【0050】
APD8は、走査レーザ光L2が物体で反射又は散乱された戻り光を受光する受光部の一例である。APD8は、アバランシェ増倍と呼ばれる現象を利用して受光感度を向上させたフォトダイオードの一種である。但し、受光部はAPDに限定されるものではなく、APD以外のPD(Photodiode)や、光電子増倍管等を用いてもよい。
【0051】
イケール9は、L字形に形成された部材であり、ポリゴンミラー5を支持する支持部の一例である。イケール9は、底面(-Z方向側の面)が回転ステージ10の載置面101に接触し、ネジ等により載置面101上に固定される。またイケール9は基板91を介し、底面に交差する前面(+X方向側の面)にポリゴンミラー5を固定する。イケール9の材質に特段の制限はないが、剛性を高く確保するために金属等の高剛性の材料を含んで構成されると好適である。
【0052】
回転ステージ10は、第2軸A2周りにイケール9を回転させることで、イケール9に固定されたポリゴンミラー5の反射面51で反射された走査レーザ光L2を、第2軸A2周りに走査させる回転機構の一例である。
【0053】
回転ステージ10は、ベース板1上で、保持部2が設けられた領域とは異なる領域に設けられている。従って回転ステージ10が回転しても、保持部2、並びに保持部2が保持するLD3及びAPD8はそれぞれ不動であり、ベース板1に固定された状態が維持される。
【0054】
回転ステージ10は、回転により第2軸A2を中心にした円の一部を描くようにして、ポリゴンミラー5の反射面51による反射光を走査させる。第2軸A2周りに走査される光は、換言すると第2軸A2を中心にした円の円周方向に沿って走査される光である。
【0055】
図3に示すように、回転ステージ10は、載置面101と、ベアリング102と、マグネット103と、モータコア104とを有する。
【0056】
載置面101は、第2軸A2(図1参照)周りに回転可能な面である。載置面101はイケール9を載置する。ベアリング102は、載置面101の回転を滑らかにする部材である。ボールベアリング又はクロスローラベアリング等の各種のものを適用できる。
【0057】
マグネット103は永久磁石である。モータコア104はモータを構成するステータの鉄心に該当する部材である。マグネット103とモータコア104とを含んでモータが構成されている。電流に応じてマグネット103が回転することで、ベアリング102を介して載置面101が回転可能になっている。
【0058】
回転ステージ10の回転方向は一定である。例えば図1における第2軸回転方向A21に沿って連続回転する。但し、第2軸回転方向A21とは反対方向である一定の回転方向に連続回転させてもよい。
【0059】
図1に示すように、LD3が発し、コリメートレンズ4でコリメートされたレーザ光L1は、第2軸A2に沿ってポリゴンミラー5の反射面51に入射するように、LD3、コリメートレンズ4及び回転ステージ10の位置及び角度が調整されている。
【0060】
例えば、測距装置100は、レーザ光L1の光軸と第2軸A2が同軸になるように構成されている。ここで、レーザ光L1の光軸はレーザビームの中心を通る軸を意味する。また同軸は複数の軸が略一致していることを意味する。
【0061】
走査レーザ光L2は、ポリゴンミラー5の回転により第1軸A1周りに走査されるとともに、回転ステージ10の回転により第2軸A2周りに走査される。測距装置100は、交差する2つの軸周りにレーザ光を走査させることができる。
【0062】
なお、本実施形態では、第1軸A1と第2軸A2が略直交する構成を例示するが、これに限定されるものではなく、第1軸A1に対して第2軸A2が傾いて配置されてもよい。
【0063】
また、図1乃至図3では、測距装置100が外装カバーを備えない構成を例示したが、測距装置100は、LD3、ポリゴンミラー5、APD8又は回転ステージ10等の構成部の一部又は全部を覆うための外装カバーを備えてもよい。
【0064】
外装カバーを備えると、測距装置100の内部へのゴミや埃等の侵入を防ぎ、ポリゴンミラー5等にゴミや埃等が付着することを防止できる。またポリゴンミラー5や回転ステージ10が高速回転すると、回転に伴う音が大きくなる場合があるが、外装カバーを設けることで音が周囲に伝わることを抑制できる。外装カバーの材質には、金属又は樹脂材料等を適用可能である。
【0065】
一方で、外装カバーを設けると、外装カバーにおける走査レーザ光L2が出射する出射窓以外の部分が走査レーザ光L2を遮るため、走査角度範囲が制限され、測距装置100による物体200の検出範囲又は測距範囲が制限される場合がある。走査レーザ光L2の波長に対して光透過性を有する透明な樹脂材料で外装カバーを構成すると、このような走査角度範囲の制限を緩和できるため、好適である。
【0066】
次に図4は、測距装置100の全体構成の一例を示すブロック図である。図1乃至図3を用いて既に説明した構成については適宜説明を省略する。なお、図4における太い実線で示した矢印は光の流れを示し、太い破線で示した矢印は電気信号の流れを示している。
【0067】
図4に示すように、測距装置100は、受発光部110と、光走査部120と、出射窓130と、制御部140とを有する。
【0068】
制御部140は、外部コントローラ300、受発光部110及び光走査部120のそれぞれに電気的に接続し、信号及びデータを相互に送受可能である。また制御部140は、光走査部120を制御する光走査制御部150を含む。
【0069】
制御部140は、電気回路又は電子回路等を有する制御回路基板を含み、例えば背面パネル22(図1参照)等に設置されている。従ってポリゴンミラー5及び回転ステージ10が回転しても、制御部140を構成する制御回路基板は不動である。
【0070】
外部コントローラ300は、サービスロボットを制御するためのコントローラであり、ROS (Robot Operating System)を搭載するBoard PC(Personal Computer)等で構成されている。
【0071】
受発光部110は、LD基板111と、発光ブロック112と、穴あきミラー6と、穴あきミラーホルダ62と、受光ブロック113と、APD基板114とを有する。
【0072】
LD基板111は、制御部140からの発光制御信号に応じてLD3を発光させる電気回路を含む。
【0073】
発光ブロック112は、LD3と、LDホルダ31と、コリメートレンズ4と、コリメートレンズホルダ41とを含む。LDホルダ31はLD3を保持する部材である。コリメートレンズホルダ41はコリメートレンズ4を保持する部材である。穴あきミラーホルダ62は、穴あきミラー6を保持する部材である。
【0074】
受光ブロック113は、受光レンズ7と、受光レンズホルダ71と、APD8と、APDホルダ81とを含む。受光レンズホルダ71は受光レンズ7を保持する部材である。APDホルダ81はAPD8を保持する部材である。
【0075】
APD基板114は、APD8が受光した光強度に応じた電気信号である受光信号を制御部140に出力する電気回路を含む。
【0076】
光走査部120は、基板91と、回転ステージ10とを含む。基板91には、ポリゴンミラー5と、第1軸モータ161と、第1軸エンコーダ162と、第1軸ドライバ基板163と、同期検知LED164と、発電コイル165とが設けられている。また回転ステージ10には、第2軸モータ171と、第2軸エンコーダ172と、第2軸ドライバ基板173と、同期検知PD174と、給電コイル175とが設けられている。
【0077】
発電コイル165と給電コイル175の組は、給電部170を構成している。給電部170は、電磁誘導により第1軸モータ161等に非接触で給電できる。なお、給電とは電力を供給することをいう。
【0078】
第1軸モータ161は、ポリゴンミラー5を回転させる回転駆動部の一例である。第1軸モータ161には、DC(Direct Current)モータ又はAC(Alternating Current)モータ等を適用できる。
【0079】
第1軸エンコーダ162はロータリエンコーダであり、ポリゴンミラー5の回転角度を検出する検出部の一例である。
【0080】
第1軸ドライバ基板163は、第1軸モータ161に駆動信号を供給する電気回路等を含む基板である。第1軸ドライバ基板163は、第1軸エンコーダ162による検出信号に基づき、所定の回転数で回転するようにポリゴンミラー5を制御することができる。
【0081】
ここで、ポリゴンミラー5の回転数は、第1軸ドライバ基板163により制御され、光走査制御部150によっては制御されない。換言すると、ポリゴンミラー5の回転数は、光走査制御部150の非制御対象である。但し、ポリゴンミラー5の回転の開始及び停止は、光走査制御部150からの走査制御信号に基づいて行われる。なお、回転数の制御は、回転速度の制御と換言することもできる。
【0082】
同期検知LED164は、ポリゴンミラー5の回転角度に基づき、ポリゴンミラー5の回転に同期する同期信号を出力する同期出力部の一例である。
【0083】
具体的には、同期検知LED164は、第1軸エンコーダ162によるポリゴンミラー5の回転角度の検出信号に基づきパルス光を発する。同期検知LED164が発するパルス光はポリゴンミラー5の回転に同期する同期信号に対応し、同期検知LED164はパルス光を発することで同期信号を出力できる。
【0084】
発電コイル165は、電磁誘導により逆起電力を発生し、第1軸モータ161、第1軸エンコーダ162及び第1軸ドライバ基板163のそれぞれに給電するコイルである。
【0085】
第2軸モータ171は、回転ステージ10を回転させるモータである。第2軸モータ171には、DCモータ、ACモータ又はステッピングモータ等の各種モータを適用可能である。第2軸エンコーダ172は、回転ステージ10の回転角度を検出するロータリエンコーダである。
【0086】
第2軸ドライバ基板173は、第2軸モータ171に駆動信号を供給する電気回路等を含む基板である。第2軸ドライバ基板173は、光走査制御部150からの走査制御信号に基づき、回転ステージ10を回転させる。
【0087】
また、第2軸ドライバ基板173は、第2軸エンコーダ172が検出した回転ステージ10の回転角度を、第2軸回転角度信号として光走査制御部150にフィードバックする。光走査制御部150は、第2軸回転角度信号に基づき、回転ステージ10を制御できる。
【0088】
ここで、回転ステージ10の回転数は、光走査制御部150により制御され、光走査制御部150の制御対象である。
【0089】
同期検知PD174は、同期検知LED164が発するパルス光を受光した受光信号を、第2軸ドライバ基板173に出力する。例えば、同期検知LED164は、第1軸エンコーダ162がポリゴンミラー5の回転原点に対応する角度を検出したタイミングでパルス光を発する。
【0090】
同期検知PD174は、同期検知LED164が発したパルス光を受光することで、ポリゴンミラー5の回転への同期タイミングを検知する。第2軸ドライバ基板173は、同期検知PD174からの入力信号に基づき、ポリゴンミラー5の回転への同期タイミングを示す同期信号を制御部140に出力する。
【0091】
給電コイル175は、発電コイル165に対向配置され、第2軸ドライバ基板173から通流される電流に応じて、電磁誘導により発電コイル165に逆起電力を発生させるコイルである。
【0092】
例えば給電コイル175に電流を通流すると、電磁誘導により非接触で発電コイル165に逆起電力が発生する。発電コイル165は、発生した逆起電力を、第1軸モータ161、第1軸エンコーダ162及び第1軸ドライバ基板163のそれぞれに電力として供給できる。
【0093】
なお、本実施形態では、給電部170が電磁誘導により非接触給電する構成を例示するが、これに限定されるものではない。例えば給電部170は、回転接点により給電することもできる。ここで回転接点とは、回転体に配置された金属製リングとブラシを介して、回転体に電気的に接続する構成をいう。このような回転接点を用いて、外部から第1軸モータ161等に給電することもできる。
【0094】
図4に示すように、制御部140は、外部コントローラ300からの測距制御信号に応答して発光制御信号を出力し、LD基板111を介してLD3を発光させる。LD3が発してコリメートレンズ4でコリメートされたレーザ光L1は、ポリゴンミラー5の反射面51で反射され、出射窓130を透過して、測距装置100から外部に向けて走査レーザ光L2として照射される。
【0095】
出射窓130は、LD3が発するレーザ光の波長に対して光透過性を有するガラス材料又は樹脂材料を含んで構成されている。出射窓130は、測距装置100が装置全体を覆う不透明な外装カバーを備える場合に、走査レーザ光L2を透過して出射させる窓として機能する部材である。
【0096】
走査レーザ光L2が物体200により反射又は散乱された戻り光Rは、出射窓130を透過してポリゴンミラー5の反射面51に入射する。そして反射面51で反射され、穴あきミラー6によりAPD8に向けて反射される。
【0097】
穴あきミラー6による反射光は、受光レンズ7により集光されながらAPD8に入射する。APD8がこの入射光を受光した受光信号は、APD基板114を介して制御部140に出力される。制御部140は、受光信号に基づき、物体200までの距離を示す距離情報を演算により取得し、この距離情報を外部コントローラ300に出力することができる。
【0098】
ここで、図4において、測距装置100が備える光走査装置400は、LD3(発光部)と、光走査部120と、APD8(受光部)と、光走査制御部150とを含んで構成されている。
【0099】
また、測距装置100は、サービスロボットが搭載するバッテリから供給される電力により動作可能である。但し、これに限定されるものではなく、測距装置100自身が搭載するバッテリから電力供給されてもよい、またサービスロボットの動作範囲が広くない場合等には、商用電源からケーブルを用いて給電されるように構成してもよい。
【0100】
<制御部140の機能構成例>
次に図5を参照して、測距装置100が有する制御部140の機能構成について説明する。図5は、制御部140の機能構成の一例を説明するブロック図である。
【0101】
図5に示すように、制御部140は、光走査制御部150と、発光制御部141と、距離情報取得部142と、距離情報出力部143とを有する。また光走査制御部150は、給電制御部151と、ポリゴンミラー制御部152と、回転ステージ制御部153とを有する。
【0102】
これらの機能は電気回路で実現される他、これらの機能の一部をソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)によって実現することもできる。また複数の回路又は複数のソフトウェアによってこれらの機能が実現されてもよい。
【0103】
給電制御部151は、給電部170による給電の開始及び停止を制御する。ポリゴンミラー制御部152は、第1軸ドライバ基板163を介してポリゴンミラー5の回転の開始及び停止を制御する。
【0104】
回転ステージ制御部153は、同期検知PD174が出力する同期信号と、第2軸エンコーダ172が出力する第2軸回転角度信号とを入力し、これらに基づき、第2軸ドライバ基板173を介して回転ステージ10の回転を制御する。
【0105】
発光制御部141は、LD基板111を介してLD3による発光を制御する。また発光制御部141は、LD3が発光した時刻を示す情報を距離情報取得部142に提供する。
【0106】
距離情報取得部142は、光走査装置400による走査レーザ光L2が物体200で反射又は散乱された戻り光Rに基づき、物体200までの距離情報を取得する。
【0107】
具体的には、距離情報取得部142は、物体200側に照射するレーザ光をLD3が発した発光時刻と、APD基板114を介して入力したAPD8が戻り光Rを受光した受光時刻との時間差に基づき、TOF(Time Of Flight)方式で距離情報を取得する。
【0108】
但し、これに限定されるものではない。測距装置100は、振幅変調したレーザ光を照射し、物体で反射又は散乱された戻り光と照射したレーザ光との位相差に基づき、距離情報を取得する位相差検出方式等を用いることもできる。
【0109】
距離情報取得部142は、距離情報出力部143を介して外部コントローラ300に距離情報を出力できる。
【0110】
<測距装置100の動作例>
次に、測距装置100の動作について説明する。図6は、測距装置100の動作の一例を示すフローチャートである。なお、図6は、測距装置100が起動した時点をトリガーにした動作を示している。
【0111】
測距装置100が起動すると、まずステップS61において、給電制御部151は、給電部170に給電を開始させる。
【0112】
続いて、ステップS62において、ポリゴンミラー制御部152は、第1軸ドライバ基板163を介してポリゴンミラー5の回転を開始させる。
【0113】
続いて、ステップS63において、回転ステージ制御部153は、同期検知PD174からの同期信号の入力を開始し、また第2軸エンコーダから第2軸回転角度信号の入力を開始する。そして回転ステージ制御部153は、同期信号と、第2軸回転角度信号とに基づき、第2軸ドライバ基板173を介して回転ステージ10の制御を開始する。
【0114】
続いて、ステップS64において、発光制御部141は、LD基板111を介してLD3にレーザ光を発光させる。
【0115】
続いて、ステップS65において、距離情報取得部142は、APD基板114を介してAPD8による受光信号を入力する。
【0116】
続いて、ステップS66において、距離情報取得部142は、物体200側に照射するレーザ光をLD3が発した発光時刻と、APD8が戻り光Rを受光した時刻とに基づき、物体200までの距離情報を取得する。
【0117】
続いて、ステップS67において、距離情報取得部142は、距離情報出力部143を介して距離情報を外部コントローラ300に出力する。
【0118】
続いて、ステップS68において、制御部140は、測距を終了するか否かを判定する。
【0119】
ステップS68で終了すると判定された場合には、動作はステップS69に進む。一方、終了しないと判定された場合には、ステップS64以降の動作が再度行われる。
【0120】
続いて、ステップS69において、回転ステージ制御部153は、第2軸ドライバ基板173を介して回転ステージ10の回転を停止させる。
【0121】
続いて、ステップS70において、ポリゴンミラー制御部152は、第1軸ドライバ基板163を介してポリゴンミラー5の回転を停止させる。
【0122】
続いて、ステップS71において、給電制御部151は、給電部170に給電を停止させる。
【0123】
このようにして、測距装置100は、走査レーザ光L2を走査させ、物体200による戻り光を用いて測距を行うことができる。
【0124】
次に図7は、測距装置100による光走査の一例を示す図である。図7(a)は測距装置100を側方から視た図、図7(b)は測距装置100を上方から視た図である。図7は、サービスロボット500に搭載された測距装置100がレーザ光を走査させる様子を示している。
【0125】
図7に示すように、サービスロボット500は、タイヤ501を有し、道路や床等の経路上を移動可能に構成された移動体である。測距装置100は、サービスロボット500が有する筐体の+Z方向側の面上に固定され、サービスロボット500とともに移動する。
【0126】
図7(a)に示すように、測距装置100は、第1軸A1に対応するX軸周りの走査角度範囲φzで走査レーザ光L2を走査させる。走査角度範囲φz内に存在する物体201により走査レーザ光L2が反射又は散乱された戻り光R1は、測距装置100に戻り、APD8により受光される。同様に走査角度範囲φz内に存在する物体202により走査レーザ光L2が反射又は散乱された戻り光R2は、測距装置100に戻り、APD8により受光される。
【0127】
また、図7(b)に示すように、測距装置100は、第2軸A2に対応するZ軸周りの走査角度範囲φxyで走査レーザ光L2を走査させる。走査角度範囲φxy内に存在する物体203により走査レーザ光L2が反射又は散乱された戻り光R3は、測距装置100に戻り、APD8により受光される。同様に走査角度範囲φxy内に存在する物体204により走査レーザ光L2が反射又は散乱された戻り光R2は、測距装置100に戻り、APD8により受光される。
【0128】
<走査線の軌跡例>
次に、測距装置100による走査レーザ光L2による走査線の軌跡について説明する。なお、本実施形態の用語における走査線とは、走査レーザ光L2の走査に伴い、伝搬方向における走査レーザ光L2の先端が描く線状のパターンをいう。
【0129】
図8は、測距装置100による走査線の一例を説明する図である。
【0130】
ここで、本実施形態では、回転ステージ制御部153は、回転ステージ10の回転数がポリゴンミラー5の回転数より速くなるように回転ステージ10を制御する。且つ、回転ステージ制御部153は、ポリゴンミラー5の回転数とポリゴンミラー5に含まれる反射面51の面数との積を、回転ステージ10の回転数で除算した商が非整数になるように、回転ステージ10を制御する。
【0131】
本実施形態では回転ステージ10の回転数を1200rpm、ポリゴンミラー5の回転数を180rpmとしている。
【0132】
また、本実施形態では回転ステージ10の回転数がポリゴンミラー5の回転数より速い構成としているが、ポリゴンミラー5の回転数が回転ステージ10の回転数よりも速くてもよい。
【0133】
換言すると、回転ステージ制御部153は、ポリゴンミラー5の回転数とポリゴンミラー5に含まれる反射面51の面数との積を回転ステージ10の回転数で除算した際に、割り切れなくなる(剰余が生じる)ように、回転ステージ10の回転数を決定する。
【0134】
このようにすることで、回転ステージ10を第2軸A2周りに1回転させるたびに、第2軸A2に沿う方向(例えば図8のZ軸方向)における第2軸A2周りの走査線の位置をずらすことができる。Z軸方向に位置をずらしながら、第2軸A2周りに複数回だけ走査線を描くことで、例えば、Z軸方向と、Z軸に直交する方向(例えば図8のX軸方向)とを含む所定面積の平面全体に走査線を描くことができる。
【0135】
図8において、走査線801乃至806は、回転ステージ10を第2軸A2周りに回転させた際の回転ごとの走査線を示している。走査線801は1回目の回転、走査線802は2回目の回転、走査線803は3回目の回転、走査線804は4回目の回転、走査線805は5回目の回転、走査線806は6回目の回転のそれぞれによる走査線を示している。
【0136】
回転ステージ10の回転の回数ごとに、第2軸A2周りの走査線の位置がZ軸方向にずれている。図8の例では、7回目の回転による走査線は、元の位置に戻って走査線801に重なり、8回目以降の回転による走査線も同様に、走査線802以降の走査線に重なるようになっている。
【0137】
回転ステージ10の回転に並行してポリゴンミラー5も回転しているため、図8に示すように各走査線は傾いている。また回転ステージ10の回転数がポリゴンミラー5の回転数より速いため、Z軸に対する走査線の傾きと比較して、X軸に対する傾きが小さくなっている。
【0138】
ポリゴンミラー5の回転数が回転ステージ10の回転数より速い場合には、X軸に対する走査線の傾きと比較して、Z軸に対する傾きが小さくなる。
【0139】
走査線が元に戻る周期と走査線の傾きは、回転ステージ10の回転数とポリゴンミラー5の回転数の比によって決定できる。換言すると、光走査制御部150は、ポリゴンミラー5の回転数に対して所定の比率になるように、回転ステージ10の回転数を決定し、制御することができる。
【0140】
なお、回転ステージ10の回転数と比較してポリゴンミラー5の回転数が十分に速く、回転ステージ10が1回転する間にポリゴンミラー5の回転で十分な本数の走査線を描ける場合には、1回転ごとに走査線の位置がZ軸方向にずれないように制御してもよい。この制御によっても、Z軸方向とX軸方向とを含む所定面積の平面全体に走査線を描くことができる。
【0141】
この場合には、回転ステージ制御部153は、ポリゴンミラー5の回転数とポリゴンミラー5に含まれる反射面51の面数との積を回転ステージ10の回転数で除算した商が整数になる、つまり割り切れる(剰余が生じない)ように回転ステージ10を制御する。これにより、回転ステージ10の第2軸A2周りの1回転ごとに、第2軸A2周りの走査線の位置はZ軸方向にずれなくなる。
【0142】
次に、図9は走査線の軌跡の他の例を示す図である。図9(a)は比較例を示す図、図9(b)は本実施形態を示す図である。図9(a)及び(b)におけるグラフの丸プロットは、走査レーザ光L2のビームスポット92を意味する。走査レーザ光L2の走査に応じてビームスポット92が走査され、走査線が描かれている。
【0143】
比較例は、揺動ミラーによりレーザ光を第2軸A2周りに往復走査させる構成による走査線90Xを示している。揺動ミラーは正弦波状の駆動波形で往復揺動している。正弦波状の駆動波形を用いる場合には、揺動ミラーの揺動速度が一定でないため、走査レーザ光L2における隣接するビームスポット間の間隔に粗密が生じる。
【0144】
走査線90Xにおける領域901aは、Z軸方向でビームスポットの間隔が密な領域を示し、領域901bは、Z軸方向でビームスポットの間隔が粗な領域を示している。また領域902aは、X軸方向でビームスポットの間隔が密な領域を示し、領域902bは、X軸方向でビームスポットの間隔が粗な領域を示している。図9(a)に示すように揺動ミラーによる光走査ではビームスポットに粗密が生じる。
【0145】
測距装置でビームスポットの間隔に粗密があると、距離の測定領域ごとで空間分解能が異なるものとなるため、好ましくない。ビームスポットの間隔の粗密をなくすためには、発光部の発光タイミング又は揺動ミラーの揺動速度の少なくとも一方を測定領域ごとで変化させる必要があり、制御が複雑になる。
【0146】
また往復揺動における往路と復路の両方で光走査する場合には、Z軸方向における位置によって、ビームスポットを照射したX軸方向における位置が往路と復路で異なるものとなる。これによりビームスポットの間隔の粗密が生じるため、粗密をなくすためにさらに複雑な制御が要求される。
【0147】
これに対し、本実施形態では、第2軸A2周りに略一定速度で回転させているときにポリゴンミラー5を略一定速度で回転させることで、走査レーザ光L2をラスタ走査できる。図9(b)に示すように、走査線90を形成するビームスポット92間の間隔は略一定で、X軸方向に沿う走査線90同士の間隔も略一定である。このように、本実施形態ではビームスポット92同士の間隔に粗密が生じない。従って、ビームスポット92同士の間隔の粗密をなくすための複雑な制御も不要となる。
【0148】
<測距装置100の作用効果>
次に、測距装置100の作用効果について説明する。なお、以下では測距装置100の作用効果として説明するが、測距装置100の用語を光走査装置400に置き換え、光走査装置400の作用効果ということもできる。
【0149】
近年、工場内での資材運搬、接客施設での商品運搬及び案内業務、施設内警備、或いは清掃等の主に役務の目的で、自律移動型のサービスロボットの開発及び導入が進んでいる。また、このようなサービスロボットの進行方向又は周囲に存在する物体を検出したり、サービスロボットが動作する施設の施設内地図等を作成したりするために、LiDAR装置等の測距装置が使用されることが多くなっている。
【0150】
測距装置には、例えば重力方向に交差する平面内で光を走査し、該平面内に存在する物体までの距離を測定する2次元測距装置が知られている。また重力方向に交差する平面内に加えて重力に沿う方向にも光を走査し、3次元空間に存在する物体までの距離を測定する3次元測距装置が知られている。
【0151】
3次元測距装置は、3次元的な広い範囲に存在する物体を検出し、測距を行える点で好適であるが、その反面で、装置の構造及び制御が複雑になり、また装置が高価になる場合がある。例えば2次元測距装置に対して3次元測距装置は20倍乃至30倍程度の価格が想定される。装置の構造及び制御の複雑さ、並びに装置の価格は、ロボットの中では比較的廉価なサービスロボットに測距装置を搭載するための制約の一つになり得る。
【0152】
また、3次元測距装置では、第1軸心周りに揺動可能な可動部と、該可動部を揺動駆動する駆動部とを備えた第1偏向機構と、第1偏向機構を第1軸心とは異なる第2軸心周りに回転駆動する第2偏向機構と、可動部に設置され、投受光部から第2軸心に沿って出射された測定光を偏向反射する光偏向部と、上記駆動部を制御する揺動制御部とを有する構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0153】
しかしながら、特許文献1の構成では、可動部を往復揺動させて光を走査するため、可動部の揺動速度の変動を抑制する制御等の複雑な制御が求められる。可動部を共振駆動させる場合には、共振周波数の制御も要求されるため、制御がさらに複雑化する。また光走査の走査角度範囲を広くすると、可動部の変形に対応するための制御等のより高度な制御が必要になる。
【0154】
また、揺動する可動部で光をラスタ走査するために鋸波状の駆動波形で可動部を駆動させる場合には、駆動波形を記憶する記憶装置や、不要な共振を抑制するための制御装置が必要になり、制御の複雑性と装置コストがさらに増大する。
【0155】
これに対し、本実施形態では、測距装置100が含む光走査部120は、複数の反射面51を含み、第1軸A1周りに回転しながら、LD3(発光部)が発するレーザ光を反射面51で反射することで、第1軸A1周りにレーザ光を走査させるポリゴンミラー5(回転多面体)を有する。また光走査部120は、ポリゴンミラー5を支持するイケール9(支持部)と、第2軸A2周りにイケール9を回転させることで、ポリゴンミラー5の反射面51で反射されたレーザ光を第2軸A2周りに走査させる回転ステージ10(回転機構)とを有する。
【0156】
ポリゴンミラー5及び回転ステージ10は、それぞれ一定の回転方向に連続回転するため、可動部の揺動速度の変動を抑制する制御や共振周波数の制御等の複雑な制御を行わなくてもよい。これにより、制御を簡素化可能な光走査装置を提供することができる。また、制御を簡素化することで、制御回路基板を小型化し、測距装置100をコストダウンさせることができる。
【0157】
さらに回転による光走査であるため、光走査の走査角度範囲を容易に広げることができる。光走査の走査角度範囲が狭い場合には、所望の走査角度範囲を確保するために発光部と受光部の組を複数設ける構成にすることも考えられる。しかし、発光部と受光部の組を複数設けると、その分だけコストが増大し、また測距装置100の構成も複雑化する。本実施形態では、回転による光走査を行うことで、このようなコスト増大及び構成の複雑化を防止することができる。
【0158】
また、回転ステージ10を略一定速度で回転させながら、ポリゴンミラー5を略一定速度で回転させることでレーザ光を容易に等速でラスタ走査できる。これにより、走査されるレーザ光のビームスポット間の間隔を簡単な制御で略一定にし、測定領域ごとでの空間分解能を均一化できる。
【0159】
また本実施形態では、光走査制御部150は、ポリゴンミラー5の回転数を非制御対象とする。
【0160】
ここで、ポリゴンミラー5は回転ステージ10によるイケール9の回転に伴って第2軸A2周りにも回転する。光走査制御部150を構成する制御回路基板からポリゴンミラー5に制御のための配線を接続すると、ポリゴンミラー5の第2軸A2周りの回転に応じて配線が回転又は移動するため、配線の回転又は移動への配慮が必要になる。
【0161】
仮に制御回路基板を回転ステージ10上に設けたとしても、外部コントローラ300等と制御回路基板とを接続する配線が必要になり、ポリゴンミラー5の第2軸A2周りの回転に応じた配線等の回転又は移動への配慮が必要になる。
【0162】
ポリゴンミラー5の回転数を非制御対象とすることで、ポリゴンミラー5を制御するために光走査制御部150とポリゴンミラー5とを接続する配線が不要になる。その結果、ポリゴンミラー5の第2軸A2周りの回転に応じた配線等の回転又は移動への配慮が不要になり、測距装置100の構成をより簡素化することができる。
【0163】
また、ポリゴンミラー5は、一定の回転方向に略一定の回転数で回転するため、複雑な制御は要求されない。これにより、回転ステージ10上に設けられた第1軸ドライバ基板163に設けた、簡素化した制御回路をポリゴンミラー5の回転数の制御に適用可能とし、光走査制御部150は、ポリゴンミラー5の回転数を非制御対象とすることができる。
【0164】
また本実施形態では、測距装置100は、ベース板1(基台部)と、保持部2とを有し、保持部2と回転ステージ10は、ベース板1上の異なる領域に設けられている。これにより、保持部2並びに保持部2が保持するLD3及びAPD8(受光部)は、回転ステージ10が回転してもそれぞれ不動であり、ベース板1に固定された状態を維持できる。
【0165】
例えば、LD3及びAPD8が回転ステージ10により回転する構成にすると、LD3及びAPD8を制御するための配線等がLD3及びAPD8の回転に応じて回転又は移動することへの配慮が必要になる。
【0166】
これに対し、回転ステージ10が回転してもLD3及びAPD8を不動にすることで、配線等の回転又は移動への配慮を不要とし、測距装置100の構成を簡素化できる。また、LD3及びAPD8が回転ステージ10により回転する構成と比較して、LD3及びAPD8と制御部140との間でのデータの通信量を削減でき、通信量の削減に応じて測距装置100をコストダウンできる。
【0167】
なお、本実施形態では、ベース板1と保持部2が分離しており、ベース板1に保持部2を固定する構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えばベース板1と保持部2が一体に形成された構成にすることもできる。
【0168】
また保持部2が天井パネル21と背面パネル22とを含む構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、天井パネル21と背面パネル22等が一体化された1つの部材で保持部2を構成することもできる。
【0169】
また天井パネル21がLD3を保持し、背面パネル22がAPD8を保持する構成を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、天井パネル21又は背面パネル22の何れか一方がLD3及びAPD8の両方を保持する構成にしてもよい。
【0170】
ここで、測距装置100が外装カバーを備えない場合には、回転ステージ10は、第2軸A2周りにより広くレーザ光を走査させることができる。但し、背面パネル22のサイズに対応する第2軸A2周りの走査角度範囲では、背面パネル22で走査レーザ光L2が遮られて走査レーザ光L2を照射することができない。つまり、背面パネル22のサイズに対応する第2軸A2周りの走査角度範囲は、物体検出及び測距ができない死角範囲になる。
【0171】
そのため、背面パネル22、或いは背面パネル22に代えて回転ステージ10の-Y方向側に設ける構造物の第2軸A2周りの円周方向に沿うサイズをできるだけ小さくすると、上記の死角範囲を小さくできる点で好適である。
【0172】
例えば、受光レンズ7、APD8及び制御部140等を天井パネル21に固定し、背面パネル22に代えて天井パネル21を支持する支柱を保持部2が備える構成とする。この構成では、死角範囲は支柱の太さに対応する走査角度範囲のみとなるため、死角範囲がより小さくなる。これにより、第2軸A2周りのより広い走査角度範囲で、物体検出及び測距を行うことができる。
【0173】
また本実施形態では、APD8は、ポリゴンミラー5に含まれる複数の反射面51のうち、所定の面で反射された走査レーザ光L2(走査光)が物体200で反射又は散乱された後、再び上記の所定の面で反射された戻り光Rを受光する。この構成により、レーザ光L1及び走査レーザ光L2の光路と戻り光Rの光路の間で共通する光路が多くなる。その結果、これらを別々に設けた場合と比較して、測距装置100の構成を簡素化することができる。
【0174】
また本実施形態では、測距装置100は、走査レーザ光L2が物体200で反射又は散乱された戻り光Rを偏向させる穴あきミラー6(光偏向部)を有し、穴あきミラー6は、LD3が発したレーザ光L1を通過させる貫通孔61(開口部)を含む。
【0175】
この構成により、レーザ光L1の光路と戻り光Rの光路の間で共通する光路が多くなり、測距装置100の構成を簡素化することができる。また、貫通孔61はLD3が発するレーザ光L1を通過させるため、ビームスプリッター等を用いてレーザ光を透過させる場合と比較して、光透過面での多重反射等による光利用効率の低下や迷光を抑制し、測距精度をより向上させることができる。
【0176】
また本実施形態では、LD3が発したレーザ光L1は、第2軸A2に沿ってポリゴンミラー5の反射面51に入射する。例えば、レーザ光L1の光軸と第2軸A2が同軸になるように構成されている。
【0177】
この構成により、回転ステージ10が回転しても反射面51へのレーザ光L1の入射位置は変わらなくなる。そのため、第1軸A1周りの光走査及び第2軸A2周りの光走査を簡単な構成で行うことができる。
【0178】
また本実施形態では、ポリゴンミラー5を回転させる第1軸モータ161(回転駆動部)は、回転ステージ10に設けられている。
【0179】
ここで、例えばポリゴンミラー5と第1軸モータ161とをプーリ等の連結部材を介して連結させ、第1軸モータ161をベース板1等の回転ステージ10上以外の領域に設けた構成にすると、回転ステージ10の回転に伴う連結部材の回転又は移動への配慮が必要になる。
【0180】
これに対し、第1軸モータ161を回転ステージ10上に設けることで、このような連結部材の回転又は移動への配慮が不要になり、測距装置100の構成を簡素化することができる。
【0181】
また本実施形態では、測距装置100は、電磁誘導により第1軸モータ161に非接触で電力を供給する給電部170を有する。これにより、第1軸モータ161等に電力を供給するための配線を接続しなくてもよいため、回転ステージ10による第2軸A2周りの回転に応じた配線等の回転又は移動への配慮が不要になる。その結果、測距装置100の構成を簡素化することができる。
【0182】
また本実施形態では、測距装置100は、ポリゴンミラー5の回転角度を検出する第1軸エンコーダ162(検出部)と、ポリゴンミラー5の回転角度に基づき、ポリゴンミラー5の回転に同期する同期信号に対応する光を発するLED164(同期出力部)を有する。光走査制御部150は、LED164が発する光(同期信号)に基づき、回転ステージ10による回転を制御する。
【0183】
ポリゴンミラー5の回転に同期する同期信号を、パルス光を用いて非接触で回転ステージ10に供給することで、同期信号を供給するための配線の接続が不要になる。これにより、回転ステージ10による第2軸A2周りの回転に応じた配線等の回転又は移動への配慮を不要にできる。その結果、測距装置100の構成を簡素化することができる。
【0184】
但し、同期出力部は同期検知LED164を用いる構成に限定されるものではない。回転接点を用いてポリゴンミラー5から回転ステージ10に同期信号を供給することもできる。この場合にもパルス光を用いる場合と同等の作用効果を得ることができる。
【0185】
また本実施形態では、光走査制御部150は、ポリゴンミラー5の回転数に対して所定の比率になるように、回転ステージ10の回転数を制御する。例えば、光走査制御部150は、ポリゴンミラー5の回転数とポリゴンミラー5に含まれる反射面51の面数との積を回転ステージ10の回転数で除算した商が、非整数になるように制御する。
【0186】
これにより、回転ステージ10を第2軸A2周りに1回転させるたびに、第2軸A2に沿う方向(Z軸方向)における第2軸A2周りの走査線の位置をずらすことができる。Z軸方向に位置をずらしながら、第2軸A2周りに複数回だけ走査線を描くことで、例えば、Z軸方向とZ軸に直交する方向(X軸方向)とを含む所定面積の平面全体に、複雑な制御を行うことなく、走査線を描くことができる。そして、測距装置100における制御を簡素化することができる。
【0187】
なお、光走査制御部150は、回転ステージ10の回転数がポリゴンミラー5の回転数より速くなるように制御することもできるし、反対にポリゴンミラー5の回転数が回転ステージ10の回転数より速くなるように制御することもできる。
【0188】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る測距装置100aについて説明する。なお、第1実施形態で既に説明した構成部と同一の構成部には、同一の部品番号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0189】
本実施形態では、第1軸A1は、第1軸及A1及び第2軸A2の両方に交差する方向に沿って、第2軸A2に対して離間した位置に設けられている。またポリゴンミラー5は、第1軸A1及び第2軸A2の両方に交差する可変方向Bに沿って位置が可変である。可変方向Bにおけるポリゴンミラー5の位置が変化すると、可変方向Bに沿う、第1軸A1の第2軸A2から離間した位置までの軸間距離dが変化し、ポリゴンミラー5による第1軸A1周りの走査角度範囲の中央値となる角度方向Cが変化する。
【0190】
そのため、3次元空間内で物体200が存在しやすい方向等に応じて、軸間距離dを変化させ、角度方向Cを変化させることで、物体200をより検出しやすくする。
【0191】
ここで、図10乃至図12のそれぞれは、軸間距離dの一例を説明する図である。図10は第1例を示す図、図11は第2例を示す図、図12は第3例を示す図である。
【0192】
正多角柱のポリゴンミラー5を用いた場合、軸間距離dは、正多角柱における正多角形の内接円半径P以下で、且つ以下の(1)式で表される条件に従う。
【数1】
(1)式におけるθは角度方向Cと可変方向Bとのなす角度を表し、Qはポリゴンミラー5における正多角形の外接円半径を表す。
【0193】
図10において、軸間距離d1は、可変方向Bに沿う、第1軸A1の第2軸A2から離間した位置までの軸間距離を示している。Pは内接円52の内接円半径を示し、Qは外接円53の外接円半径を示している。角度方向C1は、第1軸A1周りの走査角度範囲φzの中央値となる角度に沿う方向である。角度方向C1と可変方向Bとのなす角度θ1は、軸間距離d1に応じ、(1)式から0[度]となり、角度方向C1と可変方向Bは略一致する。
【0194】
次に、図11に示す第2例では、図10に示した第1例と比較して、ポリゴンミラー5は+Y方向側に移動しており、軸間距離d2は軸間距離d1より小さくなっている。角度方向C2と可変方向Bとのなす角度θ2は、軸間距離d2に応じ、(1)式から+Z方向側に傾いた角度になり、角度方向C2は可変方向Bに対して+Z方向側に傾く。
【0195】
この構成では、測距装置100aは、第1例と比較して+Z方向側にややずれた走査角度範囲で第1軸A1周りの光走査を行うことができ、第1例と比較して+Z方向側に存在する物体200を検出しやすくなる。
【0196】
次に、図12の第3例では、図10示した第1例と比較して、ポリゴンミラー5は-Y方向側に移動しており、軸間距離d3は軸間距離d1より大きくなっている。角度方向C3と可変方向Bとのなす角度θ3は、軸間距離d3に応じ、(1)式から-Z方向側に傾いた角度になり、角度方向C3は可変方向Bに対して-Z方向側に傾く。
【0197】
この構成では、測距装置100aは、第1例と比較して-Z方向側にややずれた走査角度範囲で第1軸A1周りの光走査を行うことができ、第1例と比較して-Z方向側に存在する物体200を検出しやすくなる。
【0198】
なお、測距装置100aでは、ポリゴンミラー5の可変方向Bにおける位置を予め定めることで、軸間距離dを設定することができる。
【0199】
以上説明したように、本実施形態では、第1軸A1は、第1軸及A1及び第2軸A2の両方に交差する方向に沿って、第2軸A2に対して離間した位置に設けられている。可変方向Bに沿う、第1軸A1の第2軸A2から離間した位置までの軸間距離を選択することで、3次元空間内で物体200が存在しやすい方向等に応じて角度方向Cを異ならせ、物体200をより検出しやすくすることができる。
【0200】
また本実施形態では、可変方向Bにおけるポリゴンミラー5の位置に応じて軸間距離dを変化させることもできる。軸間距離dに応じて角度方向Cが変化する。そのため、3次元空間内で物体200が存在しやすい方向等に応じて軸間距離dを変化させて角度方向Cを変化させることで、物体200をより検出しやすくすることができる。
【0201】
なお、これ以外の効果は、第1実施形態で説明したものと同様である。
【0202】
以上、実施形態を説明してきたが、本発明は、具体的に開示された上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0203】
例えば、測距装置100又は100aが搭載される移動体は、サービスロボットに限定されるものではない。例えば移動体は、自動車、車両、電車、汽車又はフォークリフト等の陸上を移動可能なものや、飛行機、気球又はドローン等の空中を移動可能なもの、船、船舶、汽船又はボート等の水上を移動可能なものであってもよい。
【0204】
また、光走査装置400により走査される光は、レーザ光に限定されるものではなく、指向性を有さない光であってもよい。またレーダー等の波長の長い電磁波等を光の一種として用いることもできる。
【0205】
実施形態の説明で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係をこれに限定するものではない。
【0206】
また、機能ブロック図におけるブロックの分割は一例であり、複数のブロックを一つのブロックとして実現する、一つのブロックを複数に分割する、及び/又は、一部の機能を他のブロックに移してもよい。また、類似する機能を有する複数のブロックの機能を単一のハードウェア又はソフトウェアが並列又は時分割に処理してもよい。
【符号の説明】
【0207】
1…ベース板(基台部の一例)、2…保持部、21…天井パネル、22…背面パネル、3…LED(発光部の一例)、4…コリメートレンズ、5…ポリゴンミラー(回転多面体の一例)、51…反射面、52…内接円、53…外接円、6…穴あきミラー(光偏向部の一例)、61…貫通孔(開口部の一例)、7…受光レンズ、8…APD(受光部の一例)、9…イケール(支持部の一例)、91…基板、10…回転ステージ(回転機構の一例)、101…載置面、102…ベアリング、103…マグネット、104…モータコア、110…受発光部、120…光走査部、130…出射窓、140…制御部、141…発光制御部、142…距離情報取得部、143…距離情報出力部(出力部の一例)、150…光走査制御部、151…給電制御部、152…ポリゴンミラー制御部、153…回転ステージ制御部、161…第1軸モータ(回転駆動部の一例)、162…第1軸エンコーダ(検出部の一例)、163…第1軸ドライバ基板、164…同期検知LED(同期出力部の一例)、165…発電コイル、170…給電部、175…給電コイル、200…物体、300…外部コントローラ、400…光走査装置、500…サービスロボット、801乃至806…走査線、92…ビームスポット、A1…第1軸、A11…第1軸回転方向、A2…第2軸、A21…第2軸回転方向、B…可変方向、C、C1、C2、C3…角度方向、d、d1、d2、d3…軸間距離、L1…レーザ光(光の一例)、L2…走査レーザ光(走査光の一例)、P…内接円半径、Q…外接円半径、R、R1、R2…戻り光、φxy、φz…走査角度範囲、θ1、θ2、θ3…角度
図1
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