(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】空調装置および空調装置を備える車両の車室内照明装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20250116BHJP
B60H 1/24 20060101ALI20250116BHJP
B60Q 3/217 20170101ALI20250116BHJP
B60Q 3/20 20170101ALI20250116BHJP
B60Q 3/80 20170101ALI20250116BHJP
【FI】
B60H1/00 103U
B60H1/00 101Q
B60H1/24 661Z
B60H1/00 102J
B60Q3/217
B60Q3/20
B60Q3/80
(21)【出願番号】P 2021056477
(22)【出願日】2021-03-30
【審査請求日】2024-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154380
【氏名又は名称】西村 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100081972
【氏名又は名称】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】大島 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】押野 優汰
(72)【発明者】
【氏名】志田 隼人
【審査官】佐藤 彰洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-328486(JP,A)
【文献】特開2012-218466(JP,A)
【文献】特許第5805343(JP,B1)
【文献】特開2014-094708(JP,A)
【文献】特開2015-212125(JP,A)
【文献】特開2018-199391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 1/24
B60Q 3/217
B60Q 3/20
B60Q 3/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内に設けられた複数の空調風吹き出し口と、
複数の前記空調風吹き出し口に対応して設けられた複数の照明部と、
前記空調風吹き出し口から吹き出される空調風の状態を制御する空調制御部と、
前記空調風吹き出し口から吹き出される空調風の状態に応じて、前記照明部の照明形態を制御する照明制御部と、
乗員の生体情報を検出する検出部と、を備え、
前記検出部は、乗員から放出される飛沫を検出する飛沫センサであって、
前記空調制御部は、前記飛沫センサにより検出される飛沫の量に応じて、前記空調風の風量の制御および/または所定時間の室内換気を行い、
前記照明制御部は、前記照明部の照明形態を制御して、前記風量および/または室内換気時間に関する情報を照明光により表示させることを特徴とする空調装置。
【請求項2】
車室内に設けられた複数の空調風吹き出し口と、
複数の前記空調風吹き出し口に対応して設けられた複数の照明部と、
前記空調風吹き出し口から吹き出される空調風の状態を制御する空調制御部と、
前記空調風吹き出し口から吹き出される空調風の状態に応じて、前記照明部の照明形態を制御する照明制御部と、
乗員の生体情報を検出する検出部と、
車室内のシートに設けられて、乗員の着座および非着座を検出する着座検出部と、を備え、
前記検出部は、乗員から放出される飛沫を検出する飛沫センサであって、
前記飛沫センサは前記シートに対応して設けられ、
前記空調制御部は、前記飛沫センサによる飛沫の検出の後に、該飛沫センサが対応するシートに対応した前記着座検出部が非着座を検出すると、所定時間の室内換気を行い、
前記照明制御部は、前記照明部の照明形態を制御して、前記室内換気の実行中および完了を照明光により表示させることを特徴とする空調装置。
【請求項3】
請求項2に記載の空調装置において、
前記空調制御部は、前記室内換気の実行中は車両のドアの開閉を禁止する指令を、ドア開閉を制御するドア制御部へ出力することを特徴とする空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調装置および空調装置を備える車両の車室内照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に乗車する乗員に感冒者が含まれている場合に、この感冒者のウィルス等が他の乗員付近に拡散されないように制御することが可能な空調装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような空調制御は自動で行われるので、乗員はどのような空調状態なのかを明確に認識するのが難しい。さらに、上述のように乗員に感冒者が含まれている場合には、どのような空調状態かが分からないとウィルス飛散への不安を感じることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様による空調装置は、車室内に設けられた複数の空調風吹き出し口と、複数の前記空調風吹き出し口に対応して設けられた複数の照明部と、前記空調風吹き出し口から吹き出される空調風の状態を制御する空調制御部と、前記空調風吹き出し口から吹き出される空調風の状態に応じて、前記照明部の照明形態を制御する照明制御部と、乗員の生体情報を検出する検出部と、を備える。前記検出部は、乗員から放出される飛沫を検出する飛沫センサであって、前記空調制御部は、前記飛沫センサにより検出される飛沫の量に応じて、前記空調風の風量の制御および/または所定時間の室内換気を行い、前記照明制御部は、前記照明部の照明形態を制御して、前記風量および/または室内換気時間に関する情報を照明光により表示させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、照明部の照明により空調状態を容易に認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、空調装置の制御系を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、車室内の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【
図3】
図3は、ドアトリムに設けられた照明部の第1の発光形態を示す図である。
【
図4】
図4は、ドアトリムに設けられた照明部の第2の発光形態を示す図である。
【
図5】
図5は、シートの足元付近に設けられた照明部の第2の発光形態を示す図である。
【
図6】
図6は、ピラーに設けられた照明部の第1の発光形態を示す図である。
【
図7】
図7は、照明部による残時間の表示形態を示す図である。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態を説明するブロック図である。
【
図9】
図9は、変形例2の照明装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
-第1の実施の形態-
図1は本発明の第1の実施の形態を説明する図であり、空調装置の制御系を示すブロック図である。
図1に示す空調装置1はオートエアコンの場合の構成を示したものであり、全体的な制御は空調ECU2によって行われる。空調ECU(Electronic Control Unit)2は、CPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムを格納したROM、データを一時的に格納するRAM 等のメモリと、その周辺機器(通信モジュールなど)を備えている。CPUは、メモリに格納されている制御プログラムに従い、空調制御部2Aおよび照明制御部2Bとして機能する。
【0009】
空調装置1は、希望温度を設定するための温度設定スイッチ3と、車室内外の情報を取得するためのセンサ4a~4c、5および6と、風量制御調整を行うためのブロアファン7と、温度調整や吹き出し口制御等を行うためのダンパ8a~8cと、車室内に設けられた照明部9a~9f,10a,10bとを備えている。内気センサ4aは、車室内の温度を検出する温度センサである。外気センサ4bは、車室外に設けられた温度センサで、外気の温度を検出する。日照センサ4cは日照量を検出するセンサであり、例えば、車室内のインストルメントパネル17のフロントシールドの近傍に配置される。飛沫センサ5は、乗員が咳やくしゃみをした際に飛散する飛沫を検出するセンサである。着座センサ6は、シートに乗員が着座しているか否かを検出するセンサであり、例えば、シートに設けられた圧力センサにより構成される。
【0010】
エアミックスダンパ8aは内外気切替を行うダンパであり、温度調整に用いられる。モードダンパ8bは吹き出し口の切換を行うダンパであり、各空調風吹き出し口に設けられたダンパにより構成される。モードダンパ8bの各ダンパの開度を制御することで、吹き出し口から吹き出される空調風のオンオフや風量の調整を行う。吸い込み口ダンパ8cは、内外気の切り替えを行うダンパである。
【0011】
空調制御部2Aは、車室内温度が設定温度になるように、各センサからの信号に基づいて空調風の温度、吹き出し風量および吹き出し口を演算し、演算結果に基づいてブロアファン7およびダンパ8a~8cを制御する。照明制御部2Bは、空調制御部2Aからの空調制御情報(吹き出し口、吹き出し風量、飛沫情報など)に基づいて、照明部9a~9e,10a,10bの照明状態(照明色や発光形態など)を制御する。
【0012】
図2は、車室の概略構成を模式的に示す斜視図である。車室100内には、フロント側のシート20a,20bとリア側のシート20c,20dとを合わせて合計4つのシート20a~20dが設けられている。各シート20a~20dは、乗員の臀部を支持するシートクッション21と、乗員の腰部および背部を支持するシートバック22と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト23とを有する。シートクッション21には、着座センサ6が設けられている。5a~5dは飛沫センサであり、各飛沫センサ5a~5dは対応するシート20a~20dと対向する位置に配置されている。
図2では、飛沫センサ5aはステアリングに配置され、飛沫センサ5bはインストルメントパネル17に設けられ、飛沫センサ5c,5dはシートバック22の背面側に配置されている。
【0013】
シート20aに対応して設けられたドア14aのドアトリムには、照明部9aが設けられている。シート20cに対応して設けられたドア14cのドアトリムには、照明部9cが設けられている。なお、図示は省略しているが、シート20b,20dに対応して設けられたドア14b,14dのドアトリムにも、照明部9a,9cと同様の照明部9b,9dが設けられている。また、シート20a,20bの足元には一対の照明部9e(シート20a側の照明部9eは不図示)が設けられており、シート20c,20dの足元には一対の照明部9fが設けられている。
【0014】
図2に示す例では、各ドア14a~14dのドアトリムに照明部9a~9dを設けているが、これに限らず、各シート20a~20dに着座した乗員が目視可能な位置に配置されるのが好ましい。例えば、シート20cに対応する照明部9cの場合、ピラー16、ドアトリム上~中部領域等に設けても良い。
【0015】
インストルメントパネル17の中央部および両サイドには、シート20a,20bに対応した空調風の吹き出し口18a,18bが設けられている。インストルメントパネル17の中央部のフロントシールド近傍には、デフロスタ用の吹き出し口18iが設けられている。一対の吹き出し口18aは運転者が着座するシート20aの方向に空調風を抜き出し、一対の吹き出し口18bは助手席側のシート20bの方向に空調風を抜き出す。インストルメントパネル17の下部には、シート20a,20bの足元に空調風を吹き出す吹き出し口18c,18dが設けられている。
【0016】
左サイドの吹き出し口18aの近傍に設けられたピラー19のトリムには、照明部10aが設けられている。図示は省略しているが、インストルメントパネル17の右サイドに設けられた吹き出し口18bの近傍に設けられたピラーのトリムにも、照明部10b(不図示)が設けられている。左右のピラー16には、シート20c,20dの方向に空調風を吹き出す吹き出し口18e,18fが設けられている。ただし、
図2では、右側のピラー16および吹き出し口18fは図示を省略している。また、シート20a,20bの下部には、シート20c,20dの足元に空調風を吹き出す吹き出し口18g,18hが設けられている。照明部9a~9f、10aおよび10bは、例えば、赤色で発光するLED、緑色で発光するLEDおよび青色で発光するLEDを備え、種々の色での照明色が可能に構成されている。
【0017】
図3および4は、ドアトリムに設けられた照明部9a~9dの発光形態を示す図である。
図3は第1の発光形態を示し、
図4は第2の発光形態を示す。なお、
図3および4では照明部9cを例に図示しているが、照明部9a,9b,9dも同様の構成である。
図3において、図示上側は照明オフ時の発光形態を示す、図示下側は照明オン時に発光形態(すなわち第1の発光形態)を示す。
【0018】
照明部9cは、複数の発光部91~96を備えている。各発光部91~96は、赤色のLED、緑色のLEDおよび青色のLEDを有しており、それぞれ種々の色で照明することができる。照明オフ時には全ての発光部91~96を消灯し、第1の発光形態では全ての発光部91~96を発光する。
図3では、発光している発光部91~96にハッチングを施している。すなわち、ハッチングで発光していることを表しており、
図4に示す第2の発光形態の場合も同様である。
【0019】
図4に示す第2の発光形態では、発光領域が車室の前方から後方に流れるような形態で照明を行う。
図4に示す例では、6つの発光パターンが所定の時間間隔Δtで繰り返される。以下では、
図4の上から順に第1の発光パターン、第2の発光パターン、第3の発光パターン、第4の発光パターン、第5の発光パターンおよび第6の発光パターンと呼ぶことにする。
【0020】
第1の発光パターンでは発光部91だけが発光し、第2の発光パターンでは発光部92だけが発光し、第3の発光パターンでは発光部93だけが発光し、第4の発光パターンでは発光部94だけが発光し、第5の発光パターンでは発光部95だけが発光し、第6の発光パターンでは発光部96だけが発光する。このような第1~6の発光パターンが時間間隔Δtで順に繰り返されることにより、照明部9cの発光領域が前方から後方に流れるように見える視覚効果が得られる。
【0021】
第2の発光形態では、発光領域が前方から後方に流れるような制御を行うことにより、吹き出し口18e等から吹き出される空調風の吹き出される方向(風向)を視覚化することができる。また、空調風の時間間隔Δtを、風量が大きい場合には小さく、風量が小さい場合には大きく設定することにより、風量の大小を照明領域の流れの速さで視覚化することができる。さらにまた、冷房時には照明光を寒色系の色(例えば青色)とし、暖房時には照明光を暖色系の色(例えば赤色)とすることで、冷房設定・暖房設定を視覚化することができる。暖色系の色としては赤色、橙色、黄色等があり、寒色系の色としては紺色、青色、水色等がある。
【0022】
図5は照明部9eの発光形態を示す図である。照明部9eは複数の発光部91~96が上側から下方向に並んで設けられており、
図3の場合と同様に全ての発光部91~96を発光させる第1の発光形態、
図4の場合と同様に発光領域が流れるように移動する第2の発光形態で発光させることができる。
図5は、発光領域が上側から下側へと流れるように移動する第2の発光形態を示したものである。なお、照明部9fも、照明部9eと同様の発光制御を行うことができる。
【0023】
第2の発光形態では、発光部91だけが発光する第1の発光パターン、発光部92だけが発光する第2の発光パターン、発光部93だけが発光する第3の発光パターン、発光部94だけが発光する第4の発光パターン、発光部95だけが発光する第5の発光パターン、発光部96だけが発光する第6の発光パターンを、時間間隔Δtで順に繰り返す。このような第2の発光形態で制御することで、空調風を下方へと吹き出す吹き出し口18c,18dの風向を、照明領域の移動形態で表現することができる。
【0024】
図6は照明部10aの発光形態を示す図である。照明部10aも照明部9eの場合と同様に発光部が上下方向に並んでいる。照明部10aの場合には、下から順に発光部101~106が並んでいる。
図6に示すように、照明オフ時には全ての発光部101~106を消灯し、第1の発光形態である照明オンの時には全ての発光部101~106を点灯する。
【0025】
第2の発光形態は図示を省略するが、発光部101だけが発光する第1の発光パターン、発光部102だけが発光する第2の発光パターン、発光部103だけが発光する第3の発光パターン、発光部104だけが発光する第4の発光パターン、発光部105だけが発光する第5の発光パターン、発光部106だけが発光する第6の発光パターンを、時間間隔Δtで順に繰り返す。そのように制御することで、空調風を上方へと吹き出す吹き出し口18iの風向を、照明領域の移動形態で表現することができる。なお、不図示の照明部10bも照明部10aと同様の発光形態で制御することができる。
【0026】
次に、空調制御部2Aによる空調制御、および、照明制御部2Bによる照明制御について説明する。
[1.空調制御]
最初に、空調制御について説明する。
図1に示す空調装置は、飛沫センサ5の検出結果に応じて2種類の異なる空調制御を行う。飛沫センサ5により飛沫が検出されない場合には、一般的なオートエアコンにおける通常の制御(以下では、第1の空調制御と呼ぶ)を行う。一方、飛沫センサ5により飛沫が検出された場合には、通常制御とは異なる第2の空調制御を行う。
【0027】
(1)第1の空調制御(通常制御)
第1の空調制御は、上述したように一般的なオートエアコンにおける通常制御であり、温度設定スイッチ3による設定温度と、内気センサ4a、外気センサ4bおよび日照センサ4cの各検出情報とに基づいて、車室内温度が設定温度になるような空調風の吹き出し温度および吹き出し口の開閉状態を演算し、その演算結果に基づいてブロアファン7および各ダンパ8a~8cを制御する。制御の詳細については説明を省略する。
【0028】
(2)第2の空調制御(飛沫検出時制御)
乗員が咳やくしゃみをしたことにより、飛散した飛沫が飛沫センサ5により検出された場合には、空調制御部2Aは第2の空調制御を実行する。乗員が感冒に罹っている場合、乗員の咳やくしゃみの飛沫には感冒の原因であるウィルス等が含まれているおそれがある。その場合、他の乗員への伝染を防止するためには、感冒に罹っている乗員から放出される飛沫が、他の乗員へ移動するのを阻止するのが好ましい。第2の空調制御では、車室内の空気を換気や、飛沫の他の乗員への移動を抑制するような空調制御を行う。
【0029】
第2の空調制御においては、飛沫が検出された飛沫センサ5に対応するシートから他のシートへの空調風の流れを抑制することを基本動作とする。感冒に罹った乗員が前側のシート20a,20bに着座している場合には、後席側への飛沫が移動しないように(a)内気循環モードとされ、一方、感冒に罹った乗員が後側のシート20c,20dに着座している場合には、車室内の空気が車室後部に設けられるグリルから車両外部に排出されるように、(b)外気導入モードとされる。内気循環モードおよび外気導入モードの具体的動作の一例を下記に記載するが、これに限定されない。
【0030】
(a)内気循環モード
内気循環モードでは、吸い込み口ダンパ8cを内気循環側に制御する。さらに、感冒に罹った乗員がシート20aに着座している場合には、吹き出し口18cからシート20aの足元に空調風を吹き出し、シート20bに対しては吹き出し口18bから空調風を吹き出し、後ろ側のシート20c,20dに対しては吹き出し口18e,18fまたは吹き出し口18e~18hから空調風を吹き出す。なお、吹き出し口18cの風量は他の吹き出し口の風量よりも小さくする。
【0031】
一方、感冒に罹った乗員がシート20bに着座している場合には、吹き出し口18dからシート20bの足元に空調風を吹き出し、シート20aに対しては吹き出し口18aから空調風を吹き出し、後ろ側のシート20c,20dに対しては吹き出し口18e,18fまたは吹き出し口18e~18hから空調風を吹き出す。なお、吹き出し口18dの風量は他の吹き出し口の風量よりも小さくする。
【0032】
(b)外気導入モード
外気導入モードでは、吸い込み口ダンパ8cを外気導入側に制御する。さらに、前側のシート20a,20bに対しては吹き出し口18a,18bから空調風を吹き出し、後ろ側のシート20c,20dに対しては吹き出し口18e,18fまたは吹き出し口18e~18hから空調風を吹き出す。なお、吹き出し口18e~18hの風量は、他の吹き出し口18a~18dの風量よりも小さくする。
【0033】
上述した、内気循環モードおよび外気導入モードについては、飛沫が検出された飛沫センサ5に対応するシートの着座センサ6が非着座を検出してオフとなるまで継続しても良いし、検出される飛沫の量に応じた時間だけ行うようにしても良い。
また、外気導入モードの際に、飛沫センサ5で検出される飛沫の量に応じて吹き出し口18a~18dの風量を変えるようにしても良い。飛沫量が多いほど風量を大きくする。
【0034】
[2.照明制御]
上述した各空調制御における照明制御について説明する。
(1)第1の空調制御(通常制御)における照明制御
通常制御である第1の空調制御では、吹き出し口から吹き出されている空調風の方向、流量を、照明部の発光形態により表現して視覚化する。吹き出し口18a,18b,18e,18fから空調風が吹き出されている場合には、照明部9a~9dの発光形態を
図4に示す第2の発光形態とする。発光領域が前方から後方へ流れる第2の発光形態により、吹き出し口18a,18b,18e,18fから吹き出される空調風の流れが視覚化される。吹き出し口18c,18d,18g,18hから空調風が吹き出されている場合には、照明部9e,9fの発光形態を
図6に示す第2の発光形態とする。発光領域が上から下へ流れる第2の発光形態により、吹き出し口18c,18d,18g,18hから吹き出される空調風の流れが視覚化される。
【0035】
また、左右のピラー19に設けられた照明部10a,10bを第2の発光形態で制御することで、吹き出し口18iから吹き出される空調風の流れる方向および流量を可視化することができる。さらに、風量が大きい場合には時間間隔Δtを小さく設定して照明領域の流れる速さを速くし、風量が小さい場合には時間間隔Δtを大きく設定して照明領域の流れる速さを遅くすることで、風量の大小を照明領域の流れの速さで視覚化することができる。なお、照明部9a~9f、10a,10bの照明色を変えることで、冷房、暖房を表現しても良い。例えば、冷房時には照明光を寒色系の色(例えば青色)とし、暖房時には照明光を暖色系の色(例えば赤色)とする。また、設定温度の高低(冷房・暖房の強弱)を照明色の濃さで表現するようにしても良い。
【0036】
(2)第2の空調制御における照明制御
飛沫センサ5により飛沫が検出された場合の第2の空調制御では、感冒に罹った乗員がいることを報知するサインとして、ピラー19に設けられた照明部10a,10bを第1の発光形態で照明制御する。照明色は特に限定されないが、例えば、危険性を表す赤色とする。これにより、感冒に罹った乗員がいることを全ての乗員が認識することができる。また、飛沫センサ5により検出された飛沫の量を照明部10a,10bの色調で表現するようにしても良い。例えば、照明部10a,10bの照明色を、飛沫量の増加に従って、黄色、橙色、薄い赤色、濃い赤色のように変化させる。
【0037】
各吹き出し口18a~18hから吹き出される空調風の流れおよび風向は、吹き出し口18a,18bに対応する照明部9a,9b、吹き出し口18c,18dに対応する一対の照明部9e、吹き出し口18e,18fに対応する照明部9c,9dおよび吹き出し口18g,18hに対応する一対の照明部9fの、発光形態および発光領域の移動速度でそれぞれ表現することができる。感冒に罹った乗員がいずれのシートに着座しているかの情報については、照明部9a~9bの照明色で報知する。例えば、感冒に罹った乗員がシート20cに着座している場合には、シート20cに対応する照明部9cの色を濃い赤色とし、他の照明部9a,9b,9dの色を薄い赤色とする。
【0038】
上述した空調制御において、所定時間だけ内気循環モードまたは外気導入モードを行う場合には、内気循環モードまたは外気導入モードが行われる残り時間を照明部を用いて表示するようにしても良い。例えば、
図7に示すような照明制御を、照明部10a,10bに行わせる。
図7では、所定時間はΔt1であり、経過時間tがt=0(換気開始)、t=Δt1/3、t=2Δt1/3、t=Δt1(換気完了)のタイミングにおける照明状態を示した。このような制御により、発光部の減少により経過時間を視覚化することができる。そのため、乗員は、上述のような内気循環モードまたは外気導入モードがどれくらいの時間行われるのか、および、終了時間を容易に認識することができる。
【0039】
上述した第1の実施の形態では、空調装置1は、車室100内に設けられた複数の空調風吹き出し口18a~18iと、複数の空調風吹き出し口18a~18iに対応して設けられた複数の照明部9a~9f,10a,10bと、空調風吹き出し口18a~18iから吹き出される空調風の状態を制御する空調制御部2Aと、空調風吹き出し口18a~18iから吹き出される空調風の状態に応じて照明部9a~9f,10a,10bの照明形態を制御する照明制御部2Bと、を備える。照明部9a~9f,10a,10bの照明形態により吹き出し口から吹き出される空調風の状態が可視化され、乗員は照明部の照明形態により空調風の状態を認識することができる。
【0040】
また、乗員の生体情報を検出する検出部としての飛沫センサ5をさらに備え、空調制御部2Aは飛沫センサ5の検出結果に基づいて空調風の状態を制御し、照明制御部2Bは、飛沫センサ5の検出結果および空調制御部2Aの制御に基づいて照明形態を制御するようにしても良い。その結果、生体情報から得られる乗員の体調状態に応じた空調状態とすることができるとともに、空調状態を照明形態により視覚的に確認することができ、乗員は安心感を得ることができる。
【0041】
(変形例1)
変形例1の制御は、タクシーなどの適用に適している。変形例1の制御では、感冒に罹っている乗員が車両を降車したならば、所定時間だけ換気制御を行うようにした。空調制御部2Aは、感冒に罹っている乗員が降車して、その乗員が着座していたシートの着座センサ6の状態がオンからオフに変化すると、換気制御を所定時間だけ自動的に行う。ここでは、外気導入した空調風を吹き出し口18a~18hから吹き出す換気を所定時間Δt2だけ行う。その場合に、
図7に示すような照明制御を採用すれば、換気の実効状態、および、換気の終了を視覚的に認識することができる。
【0042】
また、シェアカー等において、感冒に罹っているユーザが使用した直後に他のユーザが使用するような場面においては、上記変形例1のような制御を行うとともに、室内換気実行中は車両のドアの開閉を禁止する指令を、空調ECU2から車両のドア開閉制御部へ出力するのが好ましい。その結果、換気が不十分な状態で次のユーザが乗車するのを防止することができる。
【0043】
-第2の実施の形態-
図8は第2の実施の形態を説明するブロック図である。第2の実施の形態では、空調装置1から独立した照明装置200を設け、飛沫センサ5(5a~5b)および着座センサ6の情報に基づいて、上述した第2の空調制御に関する空調指令および照明制御指令を照明装置200の照明制御部210で生成するようにした。空調指令は飛沫センサ5により飛沫を検出した時にのみ生成され、通信部220から空調ECU2へ送信される。照明装置200の照明制御部210には、飛沫の検出および非検出に関係なく、通信部220を介して空調ECU2から空調情報が入力される。
【0044】
(制御例)
(1)飛沫が検出されない場合
飛沫センサ5により飛沫が検出されない場合には、空調ECU2には照明制御部210から空調指令は入力されない。空調ECU2は、照明制御部210から空調指令が入力されない場合には、第1の実施の形態で説明した通常制御(第1の空調制御)を実行する。照明制御部210は、空調ECU2から入力される第1の空調制御に関する空調情報に基づいて、照明部9a~9f,10a,10bの照明制御を行う。この照明制御は、第1の実施の形態の第1の空調制御時における照明制御と同様のものであり、説明は省略する。
【0045】
(2)飛沫が検出された場合
照明制御部210は、飛沫センサ5により飛沫が検出された場合には、飛沫検出結果に基づいて、空調装置1に第1の実施の形態に記載した第2の空調制御(飛沫検出時制御)を行わせる空調指令を生成し、その空調指令を空調ECU2へ送信する。空調ECU2は、照明装置200から第2の空調制御に関する空調指令を受信すると、通常制御(第1の空調制御)に代えて空調指令に基づく第2の空調制御を実行する。そのときの空調情報は、空調ECU2から照明装置200へ送信される。照明制御部210は、空調ECU2から空調情報を受信すると、その空調情報に基づいて照明部9a~9f,10a,10bの照明制御を行う。この照明制御は、第1の実施の形態の第2の空調制御時における照明制御と同様のものであり、説明は省略する。
【0046】
なお、上述した説明では、照明装置200における照明制御は、空調装置1から入力される空調情報に基づいて行われた。しかし、照明制御部210で、空調指令(第2の空調制御)と、その空調指令に応じた照明制御指令とを生成し、その照明制御指令に基づいて照明部9a~9f,10a,10bの照明制御を行うようにしても良い。また、飛沫センサ5および着座センサ6の検出情報に基づいて、上述の変形例1の場合と同様の空調制御指令および照明制御指令を生成して、変形例1と同様の空調制御および照明制御を行うようにしても良い。
【0047】
(変形例2)
また、上述した第1および第2の実施の形態では、空調装置1がオートエアコンである場合を例に説明したが、マニュアルエアコンの場合には、
図9に示すような照明装置200を車両に搭載することで、感冒に罹った乗員がいることの報知、および、空調状態として上記第2の空調制御における空調状態とすることを促す報知を、照明部9a~9f,10a,10bにより行うことができる。
【0048】
図9に示す照明装置200は、上述した第2の実施の形態の場合と同様の照明制御指令を生成し、照明部9a~9f,10a,10bの照明を制御する。例えば、ピラー19に設けられた照明部10a,10bを
図6に示すような第1の発光形態(照明オン)に照明制御することで、感冒に罹った乗員がいることを報知することができる。また、乗員は、照明部9a~9fの照明形態により、マニュアルエアコンの空調状態をどのように変更すれば良いかを認識することができる。
【0049】
以上説明したように、照明装置200は空調装置1を備える車両の車室内照明装置であって、車室内の空調風吹き出し口18a~18iに対応して設けられた照明部9a~9f,10a,10bと、空調装置1から空調状態に関する空調情報が入力される入力部である通信部220と、通信部220に入力された空調情報に基づいて、照明部9a~9f,10a,10bの照明形態を制御する照明制御部210と、を備える。空調装置1からの空調情報に基づいて、照明部9a~9f,10a,10bの照明形態を制御しているので、照明により空調状態が可視化され、空調状態の認識を容易に行うことができる。
【0050】
上述した第1および第2の実施の形態では、乗員の生体情報を検出する検出部として飛沫センサ5を設けたが、飛沫センサ5の代わりに乗員の体温を検出する体温センサ(例えば、赤外線体温計)を用いても良い。乗員の体温が所定温度以上であることを検出したら、その乗員は感冒に罹っていると判断し、飛沫センサで飛沫を検出した場合と同様の制御(空調制御および照明制御)を行う。飛沫量に代えて、乗員の体温の所定温度からの偏差量に基づいて、風量や照明色を制御するようにしても良い。なお、飛沫センサ5と温度センサの両方を用いて乗員の生体情報(体調状態)を検出するようにしても良い。
【0051】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、可能であればそれらを組み合わせて適用しても良いし、また、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0052】
1…空調装置、2A…空調制御部、2B…照明制御部、5,5a~5d…飛沫センサ、6…着座センサ、210…照明制御部、9a~5f,10a,10b…照明部、18a~18i…吹き出し口、20a~20d…シート、200…照明装置、220…通信部