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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】制御装置、制御方法及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/00 20060101AFI20250116BHJP
   B60S 1/62 20060101ALI20250116BHJP
   G01S 7/40 20060101ALI20250116BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20250116BHJP
   H01Q 1/02 20060101ALI20250116BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20250116BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
H05B3/00 365K
H05B3/00 365B
H05B3/00 310D
B60S1/62 120Z
G01S7/40 143
G01S7/03 246
H01Q1/02
H01Q1/32 Z
H01Q1/42
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022007797
(22)【出願日】2022-01-21
(65)【公開番号】P2023106832
(43)【公開日】2023-08-02
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今村 暁
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-7764(JP,A)
【文献】特開2002-215246(JP,A)
【文献】特開2021-12352(JP,A)
【文献】特開2020-38155(JP,A)
【文献】特開平11-211821(JP,A)
【文献】特開2010-127487(JP,A)
【文献】特開2009-58501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00
H05B 3/20
H05B 3/84
B60S 1/62
B60S 1/02
B60S 1/58
G01S 7/40
G01S 7/03
H01Q 1/02
H01Q 1/32
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外面の一部を形成する部材の、少なくとも、前記車両に搭載されたレーダの電波を透過させる部分に設けられており、通電により発熱することにより前記部材の融雪を行うヒータの制御装置であって、
前記ヒータが通電されているときに検出される該ヒータの電圧値及び電流値に基づいて、前記ヒータの抵抗値を演算するとともに、演算した前記抵抗値に基づいて、前記ヒータの温度を演算する温度演算部と、
前記ヒータを通電する加熱制御を実行するとともに、前記加熱制御の実行中に前記温度演算部により演算される前記温度が所定の閾値温度に達すると、前記ヒータの通電を所定期間停止する過加熱防止制御を実行するヒータ制御部と、
前記車両が所定速度以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が実行されると、前記閾値温度を高温側に補正する閾値補正を実行する閾値補正部と、を備える
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の制御装置であって、
前記閾値補正部は、前記車両が所定速度以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が所定時間内に所定の複数回以上実行された場合に、前記閾値補正を実行する
制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の制御装置であって、
前記閾値補正部は、補正後の閾値温度が前記ヒータの耐熱温度を超えないように前記閾値補正を実行する
制御装置。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載の制御装置であって、
前記ヒータ制御部は、
前記車両の周囲の外気温が、水分を含んだ湿雪が降る所定の温度範囲にあり、且つ、前記車両のフロントガラスを払拭するワイパ装置が作動する場合に、前記加熱制御を実行する
制御装置。
【請求項5】
車両の外面の一部を形成する部材の、少なくとも、前記車両に搭載されたレーダの電波を透過させる部分に設けられており、通電により発熱することにより前記部材の融雪を行うヒータの制御方法であって、
前記ヒータが通電されているときに検出される該ヒータの電圧値及び電流値に基づいて、前記ヒータの抵抗値を演算するとともに、演算した前記抵抗値に基づいて、前記ヒータの温度を演算し、
前記ヒータを通電する加熱制御を実行するとともに、前記加熱制御の実行中に演算される前記温度が所定の閾値温度に達すると、前記ヒータの通電を所定期間停止する過加熱防止制御を実行し、
前記車両が所定速度以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が実行されると、前記閾値温度を高温側に補正する閾値補正を実行する
ことを特徴とする制御方法。
【請求項6】
車両の外面の一部を形成する部材の、少なくとも、前記車両に搭載されたレーダの電波を透過させる部分に設けられており、通電により発熱することにより前記部材の融雪を行うヒータの制御装置のコンピュータに、
前記ヒータが通電されているときに検出される該ヒータの電圧値及び電流値に基づいて、前記ヒータの抵抗値を演算するとともに、演算した前記抵抗値に基づいて、前記ヒータの温度を演算し、
前記ヒータを通電する加熱制御を実行するとともに、前記加熱制御の実行中に演算される前記温度が所定の閾値温度に達すると、前記ヒータの通電を所定期間停止する過加熱防止制御を実行し、
前記車両が所定速度以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が実行されると、前記閾値温度を高温側に補正する閾値補正を実行する処理を実施させる
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置、制御方法及び、プログラムに関し、特に、融雪を行うヒータの制御に好適な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、車両の周囲の物標にミリ波帯の電波を照射し、その反射波を受信することにより、車両に対する物標の相対位置や相対速度を検出するミリ波レーダが搭載される場合がある。このようなミリ波レーダは、例えば、フロントバンパ、フロントグリル、エンブレム等といった車両の前面を形成する電波透過性を有する部材(以下、前面部材という)の後方に配置される。
【0003】
ミリ波レーダの電波を透過させる前面部材に水分を含んだ湿雪が付着すると、電波の透過性に影響が生じ、ミリ波レーダの性能を低下させる要因となる。このため、例えば、特許文献1には、前面部材にヒータを設け、ヒータによって前面部材を加熱することにより、前面部材の融雪を行うようにした装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-166888号公報
【発明の概要】
【0005】
ヒータを通電して融雪を行う際に、ヒータの熱劣化を防止するには、ヒータ温度が所定の閾値温度に達した場合に、ヒータを通電状態(ON状態)から非通電状態(OFF状態)に切り替えることが望まれる。このような切り替え制御を行うには、ヒータ温度を取得する必要がある。ヒータ温度は、例えば、サーミスタ等の温度センサで直接的に取得することもできるが、ヒータの抵抗値の温度依存性に基づいて演算することもできる。
【0006】
具体的には、ヒータがON状態のときに電圧・電流検出回路によって検出したヒータの電流値・電圧値に基づき、ヒータの抵抗値を演算するとともに、演算した抵抗値と温度との関係に基づいてヒータ温度を演算することがきる。ヒータ温度を抵抗値から演算すれば、温度センサが不要となり、コストの削減や装置の簡素化を図ることが可能になる。
【0007】
しかしながら、ヒータの電熱線の抵抗値や抵抗温度係数には製造上のばらつきが存在し、電圧・電流検出回路の回路素子の抵抗値や抵抗温度係数にも製造上のばらつきが存在する。このため、これら抵抗値や抵抗温度係数のばらつきの組み合わせによっては、ヒータ温度を実際の温度よりも高温側に誤って演算してしまう場合がある。ヒータ温度が高温側に誤って演算されると、車両の高速走行時など、走行風によってヒータの実際の温度が閾値温度よりも低く抑えられる状況であっても、演算されるヒータ温度が閾値温度に達するようになる。その結果、ヒータがON状態からOFF状態に頻繁に切り替えられるようになり、ヒータが融雪性能を十分に発揮できなくなるといった課題がある。
【0008】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものである。即ち、本開示の目的の一つは、ヒータの融雪性能を効果的に発揮させることにある。
【0009】
本開示の装置は、
車両(10)の外面の一部を形成する部材(FP)の、少なくとも、前記車両(10)に搭載されたレーダ(20)の電波を透過させる部分に設けられており、通電により発熱することにより前記部材(FP)の融雪を行うヒータ(30)の制御装置(40)であって、
前記ヒータ(30)が通電されているときに検出される該ヒータ(30)の電圧値及び電流値に基づいて、前記ヒータ(30)の抵抗値を演算するとともに、演算した前記抵抗値に基づいて、前記ヒータ(30)の温度(Th)を演算する温度演算部(42)と、
前記ヒータ(30)を通電する加熱制御を実行するとともに、前記加熱制御の実行中に前記温度演算部(42)により演算される前記温度(Th)が所定の閾値温度(Tv)に達すると、前記ヒータ(30)の通電を所定期間停止する過加熱防止制御を実行するヒータ制御部(43)と、
前記車両(10)が所定速度(Vh)以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が実行されると、前記閾値温度(Tv)を高温側に補正する閾値補正を実行する閾値補正部(44)と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本開示の方法は、
車両(10)の外面の一部を形成する部材(FP)の、少なくとも、前記車両(10)に搭載されたレーダ(20)の電波を透過させる部分に設けられており、通電により発熱することにより前記部材(FP)の融雪を行うヒータ(30)の制御方法であって、
前記ヒータ(30)が通電されているときに検出される該ヒータ(30)の電圧値及び電流値に基づいて、前記ヒータ(30)の抵抗値を演算するとともに、演算した前記抵抗値に基づいて、前記ヒータ(30)の温度(Th)を演算し、
前記ヒータ(30)を通電する加熱制御を実行するとともに、前記加熱制御の実行中に演算される前記温度(Th)が所定の閾値温度(Tv)に達すると、前記ヒータ(30)の通電を所定期間停止する過加熱防止制御を実行し、
前記車両(10)が所定速度(Vh)以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が実行されると、前記閾値温度(Tv)を高温側に補正する閾値補正を実行することを特徴とする。
【0011】
本開示のプログラムは、
車両(10)の外面の一部を形成する部材(FP)の、少なくとも、前記車両(10)に搭載されたレーダ(20)の電波を透過させる部分に設けられており、通電により発熱することにより前記部材(FP)の融雪を行うヒータ(30)の制御装置(40)のコンピュータに、
前記ヒータ(30)が通電されているときに検出される該ヒータ(30)の電圧値及び電流値に基づいて、前記ヒータ(30)の抵抗値を演算するとともに、演算した前記抵抗値に基づいて、前記ヒータ(30)の温度(Th)を演算し、
前記ヒータ(30)を通電する加熱制御を実行するとともに、前記加熱制御の実行中に演算される前記温度(Th)が所定の閾値温度(Tv)に達すると、前記ヒータ(30)の通電を所定期間停止する過加熱防止制御を実行し、
前記車両(10)が所定速度(Vh)以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が実行されると、前記閾値温度(Tv)を高温側に補正する閾値補正を実行する処理を実施させることを特徴とする。
【0012】
以上の構成によれば、車両(10)の高速走行により、ヒータ(30)の温度上昇が抑えられるような状況で、過加熱防止制御が実行された場合には、過加熱防止制御の実行判定に用いる閾値温度(Tv)を高温側に補正する閾値補正を実行する。これにより、必要のない過加熱防止制御の実行が抑止されるようになり、ヒータ(30)の融雪性能を効果的に発揮させることが可能になる。
【0013】
本開示の他の態様において、
前記閾値補正部(44)は、前記車両(10)が所定速度(Vh)以上で走行する高速走行中に、前記過加熱防止制御が所定時間内に所定の複数回以上実行された場合に、前記閾値補正を実行する。
【0014】
本態様によれば、過加熱防止制御が所定の複数回以上実行された場合に閾値補正を実行することで、例えば、ヒータ推定温度(Th)が何らかの要因で偶発的に閾値温度(Tv)に達してしまった場合に、不必要な閾値補正の実行を効果的に防止することができる。
【0015】
本開示の他の態様において、
前記閾値補正部(44)は、補正後の閾値温度(Tvc)が前記ヒータ(30)の耐熱温度(Tm)を超えないように前記閾値補正を実行する。
【0016】
本態様によれば、閾値補正を実行した後、加熱制御によってヒータ(30)が耐熱温度(Tm)を超えて加熱されることを防止でき、ヒータ(30)の熱劣化を効果的に抑止することが可能になる。
【0017】
本開示の他の態様において、
前記ヒータ制御部(43)は、
前記車両(10)の周囲の外気温(T)が、水分を含んだ湿雪が降る所定の温度範囲にあり、且つ、前記車両(10)のフロントガラス(11)を払拭するワイパ装置(12)が作動する場合に、前記加熱制御を実行する。
【0018】
本態様によれば、車両(10)に雪が付着しやすい環境条件で加熱制御を実行することで、レーダ(20)の性能低下を確実に防止することができる。
【0019】
上記説明においては、発明の理解を助けるために、実施形態に対応する発明の構成要件に対して、実施形態で用いた符号を括弧書きで添えているが、発明の各構成要件は、前記符号によって規定される実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る車両を前方から視た模式図である。
図2】本実施形態に係る制御装置の模式的な機能ブロック図である。
図3】抵抗値とヒータ温度との関係を説明するグラフである。
図4】本実施形態の加熱制御、過加熱防止制御及び、閾値補正の具体的な流れを説明するタイミングチャートである。
図5】本実施形態に係る加熱制御及び、過加熱防止制御のルーチンを説明するフローチャートである。
図6】本実施形態に係る閾値補正のルーチンを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本実施形態に係る制御装置、制御方法及び、プログラムを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0022】
[概略構成]
図1は、本実施形態に係る車両10を前方から視た模式図である。車両10は、フロントガラス11を備えている。フロントガラス11には、フロントガラス11の外面を払拭するためのワイパ装置12が設けられている。
【0023】
車両10の前部には、車幅方向に延びるフロントバンパ13が取り付けられている。また、車両10の前部のフロントバンパ13よりも上方には、左右のヘッドライト16L,16Rが設けられている。車両10の前部のうち、左右のヘッドライト13L,13Rの間には、走行風を取り込むためのフロントグリル14が設けられている。フロントグリル14の車幅方向の略中央には、装飾部品としてのエンブレム15が設けられている。
【0024】
車両10には、車両10の前方領域に存在する物標を検出するミリ波レーダ20が搭載されている。ミリ波レーダ20は、ミリ波帯の電波を照射し、照射範囲内に存在する物標によって反射された反射波を受信する。ミリ波レーダ20は、照射したミリ波と受信した反射波との位相差、反射波の減衰レベル及び、ミリ波を送信してから反射波を受信するまでの時間等に基づいて、車両10と物標との相対位置(方向、距離)及び、相対速度を取得する。ミリ波レーダ20によって取得される物標の相対位置や相対速度は、例えば、車両10の運転支援制御に用いられる。運転支援制御としては、追従制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、車線維持制御(LTA:Lane Tracing Asist)、車線変更制御(LCA:Lane Change Assist)等が挙げられる。
【0025】
ミリ波レーダ20は、図示例ではエンブレム15の後方に配置されている。ミリ波レーダ20は、フロントバンパ13、フロントグリル14、エンブレム15等といった車両10の前面を構成する樹脂部材(以下、これらを単に前面部材FPと称する)の後方に配置することができる。本実施形態において、これら前面部材FPは、ミリ波レーダ20から照射されるミリ波を透過させる電波透過性の部材で形成されている。
【0026】
ミリ波レーダ20から照射されるミリ波は、前面部材FPを透過して物標に到達し、物標によって反射される反射波は、前面部材FPを透過してミリ波レーダ20に受信される。このため、前面部材FPに水分を含んだ湿雪が付着又は堆積すると、電波の透過性に影響が生じ、ミリ波レーダ20の性能を低下させる要因となる。本実施形態において、前面部材FPには、前面部材FPを加熱することにより、前面部品FPの融雪を行うヒータ30が設けられている。
【0027】
ヒータ30は、例えば電熱線であり、電力が供給されると、電熱線が発熱することにより前面部材FPを加熱する。ヒータ30は、前面部材FPに埋設されてもよく、或いは、前面部材FPの背面(後面)に取り付けられてもよい。ヒータ30の発熱による熱が前面部材FPを加熱することにより、前面部材FPに雪が堆積している場合には、その雪を融雪除去することができ、前面部材FPに雪が堆積していない場合には、その前面部材FPに雪が付着することを防止することができる。
【0028】
図2に示すように、ミリ波レーダ20は、ヒータ駆動回路21及び、電圧・電流検出回路22を備えている。また、車両10には、ECU40、駆動装置51、操舵装置52、制動装置53、電源装置54等が搭載されている。
【0029】
ECU40は、マイクロコンピュータを主要部として備える。ECUは、Electronic Control Unitの略である。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM及びインターフェース等を含み、CPUはROMに格納されたインストラクション(プログラム、ルーチン)を実行することにより各種機能を実現するようになっている。ECU40は、車両10の各種制御を行う中枢となる制御装置である。このため、ECU40には、駆動装置51、操舵装置52、制動装置53、車速センサ60、外気温センサ61、ワイパ装置12、ワイパスイッチ62、ミリ波レーダ20、ヒータ駆動回路21、電圧・電流検出回路22等が通信可能に接続されている。
【0030】
駆動装置51は、車両10の駆動輪に伝達する駆動力を発生させる。駆動装置51としては、例えば、エンジン、電動機が挙げられる。本実施形態において、車両10は、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)、電気自動車(BEV)、エンジン車の何れであってもよい。操舵装置52は、例えば、電動パワーステアリング装置であって、車両10の車輪に転舵力を付与する。制動装置53は、例えば、ディスク式ブレーキ装置であって、車両10の車輪に制動力を付与する。電源装置54は、例えば、バッテリやオルタネータであって、車両10に搭載された電装品、補器類等に電力を供給する。
【0031】
車速センサ60は、車両10の走行速度(車速V)を検出し、検出した車速VをECU40に送信する。車速センサ60は、車輪速センサであってもよい。外気温センサ61は、車両10の周囲の外気温Tを検出し、検出した外気温TをECU40に送信する。
【0032】
ワイパスイッチ62は、ワイパ装置12を作動するためのスイッチであって、例えば、車両10の不図示のステアリングコラムに配されている。ワイパスイッチ62は、例えば、ワイパ装置12を非作動とする「OFF位置」、不図示のレインセンサが雨滴や湿雪等を検知した場合にワイパ装置12を作動させる「AUTO位置」、ワイパ装置12を低速で作動させる「LOW位置」、ワイパ装置12を高速で作動させる「HIGHT位置」といった複数の操作位置に選択的に操作可能に構成されている。
【0033】
ワイパスイッチ62は、操作位置に応じた信号をECU40に送信する。ECU40は、受信した信号に応じてワイパ装置12の作動を制御する。なお、以下では、ワイパスイッチ62が「OFF位置」に操作されているときにECU40に送信する信号を「ワイパOFF信号」と称する。また、ワイパスイッチ62が「AUTO位置」、「LOW位置」、「HIGHT位置」の何れかの位置に操作されているときにECU40に送信する信号を、これらを纏めて単に「ワイパON信号」と称する。
【0034】
ヒータ駆動回路21は、不図示のリレーを有する。ヒータ駆動回路21のリレーは、ECU40からの指示信号に応じて、通電状態と遮断状態とに選択的に切り替わる。以下では、リレーが通電状態の場合をヒータ駆動回路21の「ON状態」、リレーが遮断状態の場合をヒータ駆動回路21の「OFF状態」という。ヒータ駆動回路21がON状態のときは、電源装置54からヒータ30に電力が供給され、ヒータ30が発熱する。一方、ヒータ駆動回路21がOFF状態のときは、電源装置54とヒータ30との接続が遮断され、ヒータ30には電力が供給されない。
【0035】
電圧・電流検出回路22は、ヒータ駆動回路21がON状態とされているとき、すなわち、ヒータ30が通電されているときのヒータ30の電圧値V・電流値Iを検出する。電圧・電流検出回路22によって検出されるヒータ30の電圧値V・電流値Iは、ECU40に送信される。
【0036】
[加熱制御及び、過加熱防止制御]
次に、加熱制御及び、過加熱防止制御について説明する。ECU40は、その機能に着目すると、融雪要求判定部41、ヒータ温度演算部42、ヒータ駆動制御部43、閾値補正部44を一部の機能要素として有する。これら機能要素は、一体のハードウェアであるECU40に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部をECU40とは別体のECUに設けることもできる。また、ECU40の機能要素の一部は、車両10と通信可能な外部の情報処理装置等に設けることもできる。
【0037】
融雪要求判定部41は、車両10の周囲の環境条件が、前面部材FPに湿雪が付着又は堆積しやすい条件になっているか否か、すなわち融雪要求が高いか否かを判定する。一般に、外気温が例えば-5℃~+5℃の温度下で降る湿雪は、前面部材FP等の車両10の外面に付着しやすい特性がある。一方、外気温が例えば-5℃よりも低いときに降る湿度(含水率)が低い乾雪は、車両10の外面に付着しにくい特性がある。また、ドライバは、水分を含んだ湿雪が降っているときにワイパ装置12を作動させ、乾雪が降っているときは、フロントガラス11に雪が付着しにくいため、ワイパ装置12を作動させないと考えられる。
【0038】
融雪要求判定部41は、外気温センサ61により検出される外気温Tが、水分を含んだ湿雪が降りやすい所定の温度範囲(例えば、-5℃~+5℃)にある第1条件が成立し、且つ、ECU40がワイパスイッチ62からワイパON信号を受信する第2条件が成立する場合に、融雪要求を高いと判定する。一方、融雪要求判定部41は、第1条件及び、第2条件の少なくとも一方が成立しない場合、融雪要求を低い(高くない)と判定する。なお、融雪要求判定部41は、第1条件が成立する場合に、第2条件が成立しなくても、ミリ波レーダ20の反射波の受信強度が所定の下限値以下となった場合には、融雪要求を高いと判定してもよい。
【0039】
ヒータ温度演算部42は、ヒータ30の抵抗値の温度依存性に基づき、ヒータ30の温度(以下、ヒータ推定温度Thという)を演算する。具体的には、ヒータ温度演算部42は、ヒータ駆動回路21がON状態とされているときに、電圧・電流検出回路22が検出するヒータ30の電圧値V・電流値Iに基づき、ヒータ30の抵抗値Rを演算する。抵抗値Rは、例えば、電圧値Vを電流値Iで除することにより演算すればよい。また、ヒータ温度演算部42は、演算したヒータ30の抵抗値Rに基づいて、ヒータ推定温度Thを演算する。ヒータ推定温度Thは、抵抗値Rが大きくなるほど高い温度として演算される。ヒータ推定温度Thの演算手法は特に限定されず、予め実験的に求めた抵抗値Rとヒータ推定温度Thとの関係を規定するマップ(データテーブル)を参照することにより演算してもよく、或いは、抵抗値Rとヒータ推定温度Thとの関係式に基づいて演算することもできる。
【0040】
ヒータ駆動制御部43は、融雪要求判定部41により融雪要求が高いと判定されると、ヒータ駆動回路21をON状態にしてヒータ30を通電することにより、ヒータ30を発熱させる加熱制御を実行する。また、ヒータ駆動制御部43は、ヒータ駆動回路21をON状態とした後、ヒータ温度演算部42によって演算されるヒータ推定温度Thが所定の閾値温度Tvに達すると、ヒータ駆動回路21を所定期間(例えば、数秒間)に亘ってOFF状態とする過加熱防止制御を実行する。閾値温度Tvは、ヒータ30の過加熱を防止するための閾値温度であって、ヒータ30の電熱線の耐熱温度よりも所定温度だけ低い温度で設定される。このように、ヒータ温度Thが閾値温度Tmに達した場合には、ヒータ駆動回路21を所定期間に亘ってOFF状態とし、ヒータ30の通電を中断する過加熱防止制御を実行することで、ヒータ30の熱劣化が効果的に防止されるようになる。
【0041】
ところで、ヒータ30の電熱線の抵抗値や抵抗温度係数には製造上のばらつきが存在し、電圧・電流検出回路22の回路素子の抵抗値や抵抗温度係数にも製造上のばらつきが存在する。このため、これら抵抗値や抵抗温度係数のばらつき(ばらつき平均に対するずれ)の組み合わせによっては、ヒータ温度演算部42がヒータ推定温度Thを実際のヒータ温度よりも高温側に誤って演算してしまう場合がある。
【0042】
より詳細を図3に基づいて説明する。図3に示すグラフにおいて、横軸はヒータ温度Taであり、縦軸はヒータ30の抵抗値と電圧・電流検出回路22の抵抗値との総和の抵抗値Rである。また、Tvは閾値温度、Tmはヒータ30の耐熱温度、Rsは閾値温度Tvに相当する抵抗値を示している。
【0043】
図3中に実線で示すラインLMdは、ヒータ30及び、電圧・電流検出回路22に抵抗値ばらつきが殆ど存在しない場合(抵抗値がばらつき平均の略中央にある場合)の抵抗値Rとヒータ温度Taとの相関関係を示すラインである。なお、ラインLMdには、ヒータ30の抵抗値ばらつきがヒータ推定温度Thを高く演算させる側(以下、プラス側という)にあり、電圧・電流検出回路22の抵抗値ばらつきがヒータ推定温度Thを低く演算させる側(以下、マイナス側という)にあり、これらのばらつきが互いに略相殺される関係にある場合も含まれる。さらに、ラインLMdには、ヒータ30の抵抗値ばらつきがマイナス側にあり、電圧・電流検出回路22の抵抗値ばらつきがプラス側にあり、これらのばらつきが互いに略相殺される関係にある場合も含まれる。
【0044】
車両10が所定の高速度(例えば、50~60km/h以上)で走行する高速走行中は、前面部材FPに走行風が当たり、ヒータ30が走行風によって常時冷却されるため、ヒータ温度Taは閾値温度Tvよりも低い温度域でサチュレートすると考えられる。また、ラインLMdの場合、ヒータ温度演算部42によって演算されるヒータ推定温度Thは実際のヒータ温度Taと略等しくなる。よって、ラインLMd、車両10の高速走行中にヒータ推定温度Thが閾値温度Tvに到達する可能性は極めて低くなる。すなわち、ラインLMdの場合、車両10の高速走行中はヒータ駆動回路21が継続的にON状態に維持され、加熱制御が継続して実行されることで、ヒータ30は融雪性能を十分に発揮できるようになる。
【0045】
図3中に一点鎖線で示すラインLL1は、ヒータ30の抵抗値ばらつきがマイナス側にあり、電圧・電流検出回路22の抵抗値ばらつきもマイナス側にある場合の抵抗値Rとヒータ温度Taとの相関関係を示すラインである。また、図3中に一点鎖線で示すラインLL2は、ヒータ30又は電圧・電流検出回路22の何れか一方の抵抗値ばらつきがマイナス側にあり、他方に抵抗値ばらつきが殆ど存在しない場合の抵抗値Rとヒータ温度Taとの相関関係を示すラインである。
【0046】
ラインLL1及びラインLL2の場合は、ヒータ温度演算部42によって演算されるヒータ推定温度Thは実際のヒータ温度Taよりも低くなる。このため、ラインLL1及びラインLL2の場合も、ラインLMdの場合と同様、車両10の高速走行中にヒータ推定温度Thが閾値温度Tvに到達する可能性は極めて低くなり、ヒータ駆動回路21が継続的にON状態に維持されることから、ヒータ30は融雪性能を十分に発揮できるようになる。
【0047】
図3中に破線で示すラインLH1は、ヒータ30の抵抗値ばらつきがプラス側にあり、電圧・電流検出回路22の抵抗値ばらつきもプラス側にある場合の抵抗値Rとヒータ温度Taとの相関関係を示すラインである。また、図3中に破線で示すラインLH2は、ヒータ30又は電圧・電流検出回路22の何れか一方の抵抗値ばらつきがプラス側にあり、他方に抵抗値ばらつきが殆ど存在しない場合の抵抗値Rとヒータ温度Taとの相関関係を示すラインである。
【0048】
ラインLL1及びラインLL2の場合は、ヒータ温度演算部42によって演算されるヒータ推定温度Thは実際のヒータ温度Taよりも高くなる。このため、特に、抵抗値ばらつきが何れもプラス側のラインLL1の場合は、車両10の高速走行中に走行風の冷却効果によって、実際のヒータ温度Taが閾値温度Tvよりも低く抑えられていたとしても、ヒータ温度演算部42によって演算されるヒータ推定温度Thが閾値温度Tvに容易に到達することになる。その結果、ヒータ駆動回路21がON状態とOFF状態とを頻繁に繰り返すことになり、ヒータ30が融雪性能を十分に発揮できなくなるといった課題がある。
【0049】
本実施形態のECU40は、このような課題を解決すべく、車両10の高速走行中に、ヒータ駆動回路21がON状態とOFF状態とを繰り返した場合には、閾値温度Tvを高温側に補正する閾値補正を実施する閾値補正部44を備えている。以下、閾値補正の詳細について説明する。
【0050】
[閾値補正]
閾値補正部44は、融雪要求判定部41により融雪要求が高いと判定され、且つ、ヒータ駆動制御部43によりヒータ駆動回路21がON状態にされると、車速センサ60の検出結果に基づき、車両10が所定の高速度Vh以上で高速走行をしているか否かを判定する。ここで、所定の高速度Vhは、特に限定されないが、通電により発熱するヒータ30の温度上昇が、走行風の冷却効果によって閾値温度Tv以下に抑えられる速度を予め実験的に求めることにより設定すればよい。所定の高速度Vhは、例えば、50~60km/hである。なお、車両10が高速走行中か否か、例えば、GPS信号から得られる車両10の現在位置とナビゲーションシステムの地図データとに基づき、車両10が高速度Vh以上の速度で走行可能な道路を走行していることを取得した場合に、高速走行中と判定してもよい。
【0051】
閾値補正部44は、ヒータ駆動制御部43によりヒータ駆動回路21がON状態とされ、且つ、車両10が所定の高速度Vh以上で走行中と判定すると、ヒータ温度演算部42により演算されるヒータ推定温度Thが所定の閾値温度Tvに達したか否か、すなわち、ヒータ駆動回路21がON状態からOFF状態に切り替えられたか否かを判定する。ヒータ駆動回路21がOFF状態に切り替えられた場合、閾値補正部44は、所定時間(例えば、約4分間)が経過するまでに、ヒータ駆動回路21がON状態からOFF状態に切り替えられる切り替え回数Nを逐次カウントする。そして、閾値補正部44は、所定時間が経過するまでにカウントした切り替え回数Nが所定の閾値回数Nm(例えば、20回)に達すると、閾値温度Tvを高温側に補正する閾値補正を実行する。
【0052】
ここで、閾値補正は、一回の補正につき一定の補正量を閾値温度Tvに加算することにより行ってもよく、或いは、切り替え回数Nが閾値回数Nmに達するまでの時間が短いほど、大きな補正量を閾値温度Tvに加算することにより行ってもよい。何れの場合も、閾値温度Tvに加算する補正量は、ヒータ30の耐熱温度Tmを上限値とし、補正後の閾値温度(以下、補正後閾値温度Tvc)が耐熱温度Tmを超えない補正量を基準に設定すればよい。
【0053】
このように、車両10の高速走行によりヒータ30の温度上昇が抑えられるような状況で、ヒータ駆動回路21がON状態とOFF状態とを繰り返す場合には、閾値温度Tvを高温側に補正する閾値補正を実行する。これにより、ヒータ30及び電圧・電流検出回路22の抵抗値のばらつきに起因して、ヒータ推定温度Thが高温側に演算されて閾値温度Tvを超えることが防止され、その結果、ヒータ温度演算部42によって演算されるヒータ推定温度Thは、閾値温度Tvに到達しないようになる。すなわち、ヒータ駆動回路21がON状態に維持されるようになる。これにより、ヒータ30の融雪性能を効果的に発揮させることが可能になる。
【0054】
次に、図4に示すタイミングチャートに基づいて、本実施形態の加熱制御、過加熱防止制御及び、閾値補正の具体的な流れを説明する。なお、図4に示すタイミングチャートは、ヒータ30及び電圧・電流検出回路22の抵抗値ずれ量が何れもプラス側にある場合、或いは、ヒータ30又は電圧・電流検出回路22の何れか一方の抵抗値ずれ量がプラス側にあり、他方に抵抗値ずれ量が殆ど存在しない場合の一例である。
【0055】
時刻t0にて、車両10のイグニッションスイッチ又はパワースイッチがONされると、融雪要求判定部41は、外気温センサ61により検出される外気温Tが所定の温度範囲(例えば、-5℃~+5℃)にある第1条件が成立するか否かを判定する。第1条件が成立する場合、融雪要求判定部41は、ECU40がワイパスイッチ62からワイパON信号を受信する第2条件が成立するか否かを判定する。
【0056】
時刻t1にて、第2条件が成立すると、融雪要求判定部41は、融雪要求を高いと判定する。融雪要求判定部41が融雪要求を高いと判定すると、ヒータ駆動制御部43はヒータ駆動回路21をOFF状態からON状態に切り替える。すなわち、ヒータ30を通電する加熱制御を開始する。なお、ワイパ装置12を作動させるタイミングは、ドライバによって様々であり、降雪状態によっても異なる。このため、第2条件が成立するタイミングは、車両10の走行開始前又は走行開始後の何れでもよいが、図示例では車両10の走行開始前に成立したものとする。
【0057】
時刻t2にて、車両10が走行を開始し、時刻t3にて車両10の車速Vが所定の高速度Vh以上となり、時刻t4にて、ヒータ温度演算部42により演算されるヒータ推定温度Thが所定の閾値温度Tvに達した場合、ヒータ駆動制御部43は、ヒータ駆動回路21をON状態からOFF状態に切り替える過加熱防止制御を開始する。ヒータ駆動回路21がON状態からOFF状態に切り替わると、閾値補正部44は、切り替え回数Nのカウント値を1とする。
【0058】
時刻t4から開始した過加熱防止制御は、ヒータ駆動回路21を所定期間(例えば、数秒間)OFF状態にすると終了する。過加熱防止制御の実行中、ヒータ推定温度Thは次第に低下する。過加熱防止制御を終了した時刻t5にて、融雪要求判定部41が依然として融雪要求を高いと判定している場合、すなわち、第1条件及び第2条件が何れも成立する場合、ヒータ駆動制御部43は、ヒータ駆動回路21をOFF状態からON状態に切り替えることにより、時刻t5から加熱制御を再開する。以降、ヒータ推定温度Thが閾値温度Tvに到達した場合は過加熱防止制御を開始し、過加熱防止制御の終了時に融雪要求が高いと判定された場合は加熱制御を再開する処理を繰り返し実行する。
【0059】
時刻t3にて車速Vが所定の高速度Vh以上となったとき、又は、時刻t4にて切り替え回数Nを1とカウントしたときから、所定時間が経過するよりも前に、時刻t6にて切り替え回数Nが所定の閾値回数Nm(例えば、20回)に達すると、閾値補正部44は、閾値温度Tvを高温側に補正する閾値補正を実行する。閾値補正を実行した後は、ヒータ駆動制御部43は、高温側に補正された補正後閾値温度Tvcに基づき、加熱制御及び、過加熱防止制御を実行することになる。すなわち、時刻t7以降は、ヒータ駆動回路21をON状態に維持、又は、OFF状態への切り替え頻度を抑えられるようになり、ヒータ30の融雪性能を効果的に発揮させることが可能になる。
【0060】
次に、図5に示すフローチャートに基づいて、ECU40のCPUが実行する加熱制御及び、過加熱防止制御のルーチンを説明する。本ルーチンは、車両10のイグニッションスイッチ又はパワースイッチのONにより開始される。
【0061】
ステップS100では、ECU40は、外気温センサ61により検出される外気温Tが、水分を含んだ湿雪が降りやすい所定の温度範囲にある第1条件が成立するか否かを判定する。第1条件が成立する場合(Yes)、ECU40はその処理をステップS110に進める。一方、第1条件が成立しない場合(No)、ECU40は本ルーチンを一旦終了(リターン)する。
【0062】
ステップS110では、ECU40は、ワイパスイッチ62からワイパON信号を受信する第2条件が成立するか否かを判定する。第2条件が成立する場合(Yes)、ECU40はその処理をステップS120に進める。一方、第2条件が成立しない場合(No)、ECU40は本ルーチンを一旦終了(リターン)する。
【0063】
ステップS120では、ECU40は融雪要求を高いと判定する。次いで、ステップS125では、ECU40は、ヒータ駆動回路21をOFF状態からON状態に切り替えることにより、ヒータ30を通電する加熱制御を開始する。
【0064】
ステップS130では、ECU40は、電圧・電流検出回路22の検出結果に基づき、ヒータ30の電圧値V及び、電流値Iを取得する。次いで、ステップS140では、ECU40は、ステップS130で取得して電圧値V及び、電流値Iに基づき、ヒータ30の抵抗値Rを演算する。
【0065】
ステップS150では、ECU40は、ステップS130で演算した抵抗値Rに基づき、ヒータ推定温度Thを演算する。次いで、ステップS160では、ECU40は、ヒータ推定温度Thが所定の閾値温度Tvに達したか否かを判定する。ヒータ推定温度Thが閾値温度Tvに達した場合(Yes)、ECU40は、その処理をステップS180に進める。一方、ヒータ推定温度Thが閾値温度Tvに達していない場合(No)、ECU40は、その処理をステップS170に進める。
【0066】
ステップS170では、ECU40は、第1条件及び、第2条件が何れも成立するか否か、すなわち、融雪要求が依然として高いか否かを判定する。融雪要求を高いと判定した場合(Yes)、ECU40は、その処理をステップS125に戻し、ヒータ駆動回路21をON状態に維持、すなわち加熱制御を継続する。一方、融雪要求を低いと判定した場合(No)、ECU40は、その処理をステップS174に進め、ヒータ駆動回路21をON状態からOFF状態に切り替えることにより加熱制御を終了し、その後、本ルーチンを一旦終了(リターン)する。
【0067】
ステップS180では、ECU40は、ヒータ駆動回路21をON状態からOFF状態に切り替えることにより、過加熱防止制御を実行する。ステップS182では、ECU40は、所定期間が経過したか否かを判定する。所定期間が経過していない場合(No)、ECU40は、その処理をステップS180に戻し、ヒータ駆動回路21をOFF状態に維持、すなわち、過加熱防止制御を継続する。一方、所定期間が経過した場合(Yes)、ECU40は、その処理をステップS184に進める。
【0068】
ステップS184では、ECU40は、第1条件及び、第2条件が何れも成立するか否か、すなわち、融雪要求が依然として高いか否かを判定する。融雪要求を高いと判定した場合(Yes)、ECU40は、その処理をステップS125に戻し、加熱制御を再開する。一方、融雪要求を低いと判定した場合(No)、ECU40は、本ルーチンを一旦終了(リターン)する。
【0069】
次に、図6に示すフローチャートに基づいて、ECU40のCPUが実行する閾値補正のルーチンを説明する。本ルーチンは、図5に示す加熱制御及び、過加熱防止制御のルーチンと並行して実行される。具体的には、図5に示すステップS125にて、ヒータ駆動回路21がON状態に切り替わると、ECU40は、図6に示す閾値補正のルーチンを開始する。
【0070】
ステップS200では、ECU40は、車速センサ60の検出結果に基づき、車両10が所定の高速度Vh以上で高速走行しているか否かを判定する。車両10が高速度Vh以上で高速走行している場合(Yes)、ECU40は、その処理をステップS205に進める。一方、車両10が高速走行していない場合(No)、すなわち、車両10が所定の高速度Vhよりも低速で走行又は停止している場合、ECU40は、本ルーチンを一旦終了(リターン)する。
【0071】
ステップS205では、ECU40は、ECU内蔵のタイマにより経過時間を計時する。ステップS210では、ECU40は、ヒータ駆動回路21がOFF状態からON状態に切り替えられる切り替え回数Nをカウントする。切り替え回数Nは、過加熱防止制御の繰り返し回数に相当し、図5のステップS180の処理を実行した回数をカウントすることにより得ることができる。なお、ステップS205の計時を開始する処理は、ステップS210にて、切り替え回数Nを1とカウントしたときから開始してもよい。
【0072】
ステップS220では、ECU40は、タイマにより計時した経過時間が所定時間に達するよりも前に、切り替え回数Nが所定の閾値回数Nmに達したか否かを判定する。切り替え回数Nが閾値回数Nmに達したと判定した場合(No)、ECU40は、その処理をステップS230に進める。一方、切り替え回数Nが閾値回数Nmに達していないと判定した場合(No)、ECU40は、その処理をステップS240に進める。
【0073】
ステップS220にて、切り替え回数Nが閾値回数Nmに達していると判定した場合(Yes)、ヒータ30や電圧・電流検出回路22の抵抗値ばらつきがプラス側にあると推測される。この場合、ECU40は、ステップS230に進み、閾値温度Tvを高温側に補正する閾値補正を実行する。次いで、ステップS260では、経過時間及び、切り替え回数Nをリセット(ゼロに設定)し、その後、本ルーチンを一旦終了(リターン)する。
【0074】
ステップS240では、経過時間が所定時間に達したか否かを判定する。経過時間が所定時間に達していない場合(No)、ECU40は、その処理をステップS200に戻す。すなわち、車両10の高速走行中は、所定時間が経過するまで、経過時間の計時及び、切り替え回数Nのカウントを継続する。一方、経過時間が所定時間に達した場合(Yes)、ヒータ30や電圧・電流検出回路22に抵抗値ばらつきが存在しないか、或いは、抵抗値ばらつきがマイナス側にあると推測される。この場合、ECU40は、閾値補正を実行することなく、その処理をステップS260に進め、経過時間及び、切り替え回数Nをリセットし、その後、本ルーチンを一旦終了(リターン)する。以降、図5に示す加熱制御及び、過加熱防止制御のルーチンが実行される間、ECU40は、上述のステップS200~260の処理を繰り返し実行する。
【0075】
以上詳述した本実施形態によれば、ヒータ30を通電する加熱制御の実行中に、ヒータ30の電圧値V及び、電流値Iに基づいてヒータ30の抵抗値Rを演算するとともに、演算した抵抗値Rに基づいてヒータ推定温度Thを演算する。加熱制御の実行中にヒータ推定温度Thが所定の閾値温度Tvに達すると、ヒータ30の通電を所定期間停止させる過加熱防止制御を実行する。そして、車両10が所定の高速度Vh以上で走行する高速走行中に、過加熱防止制御が所定時間内に所定回数以上実行された場合には、閾値温度Tvを高温側に補正する閾値補正を実行する。閾値補正を実行した後は、過加熱防止制御が高温側に補正された補正後閾値温度Tvcに基づいて行われるようになる。
【0076】
すなわち、車両10の高速走行によってヒータ30の温度上昇が抑えられ、ヒータ30の実際の温度が閾値温度Tvよりも低下しているような状況で、必要のない過加熱防止制御の実行を効果的に防止できるようになる。これにより、加熱制御を継続的に実行できるようになり、ヒータ30の融雪性能を効果的に発揮させることが可能になる。
【0077】
以上、本実施形態に係る制御装置、制御方法及び、プログラムについて説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0078】
例えば、上記実施形態において、閾値補正は、過加熱防止制御が所定時間内に所定回数以上実行された場合に実行されるものとして説明したが、過加熱防止制御が1回実行された場合に実行するように構成されてもよい。また、レーダセンサは、ミリ波レーダ20を一例に説明したが、ライダ等の他のレーダセンサにも広く適用することが可能である。また、ヒータ30は、前面部材FPに設けられるものとしたが、ミリ波レーダ20が搭載される位置に応じて、前面部材FP以外の他の部材に設けることも可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…車両,11…フロントガラス,12…ワイパ装置,13…フロントバンパ,14…フロントグリル,15…エンブレム,20…ミリ波レーダ,21…ヒータ駆動回路,22…電圧・電流検出回路,30…ヒータ,31…カメラ,32…レーダセンサ,40…ECU,41…融雪要求判定部,42…ヒータ温度演算部,43…ヒータ駆動制御部,44…閾値補正部,60…車速センサ,61…外気温センサ,62…ワイパスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6