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特許7620283ポンプチューブユニット及び内視鏡システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ポンプチューブユニット及び内視鏡システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/12 20060101AFI20250116BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
A61B1/12 522
G02B23/24 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020111712
(22)【出願日】2020-06-29
(65)【公開番号】P2022010922
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-03-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000147785
【氏名又は名称】フォルテ グロウ メディカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】521082134
【氏名又は名称】ORTメディカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 幸司
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-010666(JP,A)
【文献】特開平09-187417(JP,A)
【文献】特開2014-226471(JP,A)
【文献】特開平07-313445(JP,A)
【文献】特開2016-106653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G02B 23/24-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で配置される複数の押圧部とを有するポンプに設置され、前記回転体の回転とともに回動する前記複数の押圧部の少なくとも1つのいずれか1つの押圧部による押圧を順次受けることで、接続される内視鏡に向けた液体の送り出しと、新たな液体の引き込みを行うポンプチューブを備えたポンプチューブユニットにおいて、
前記内視鏡は、前記ポンプチューブから送り出された前記液体を吐出する開口を有し、
前記ポンプチューブの内径は、前記ポンプチューブを前記内視鏡に接続していない状態で、前記ポンプチューブユニットにおける設定送出量に応じて前記ポンプチューブから送出される液体の送出量が、前記ポンプチューブを前記内視鏡に接続した状態で前記開口から吐出される液体の吐出量と、同一となるように設定され
前記ポンプの駆動により送り出される液体の設定送水量が700ml/minであって、前記開口の内径が1mmであるとき、
前記ポンプチューブの内径は3.4mm以上3.8mm以下であり、
前記ポンプチューブの外径は6.7mm以上7.1mm以下である
ことを特徴とするポンプチューブユニット。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプチューブユニットにおいて、
前記開口は、前記内視鏡の内視鏡挿入部の先端に設けた副送水口であり、
前記ポンプチューブから送り出された液体は、前記内視鏡に設けられた副送水チャンネルを介して、前記副送水口から吐出されることを特徴とするポンプチューブユニット。
【請求項3】
先端副送水口を有する副送水チャンネルを有する内視鏡と、
液体を貯留した送水タンクと、
回転体と前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で軸支された複数の押圧部とを有するポンプと、
一端部が前記送水タンクに、他端部が前記内視鏡の副送水チャンネルに接続され、前記ポンプの駆動時に前記送水タンクに貯留された液体を引き込み、引き込んだ液体を内視鏡に向けて送り出す、請求項1または2のいずれか1項に記載のポンプチューブユニットと、
を有することを特徴とする内視鏡システム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプチューブユニット及び内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、内視鏡を用いた検査や手術が普及している。内視鏡は、体腔内の対象部位に照明光を照射するライトガイドや、体腔内の対象部位の観察や撮影を行う撮像装置の対物レンズの他、体腔内に空気や生理食塩水などの液体を送り込む送気/送水ノズルや、鉗子などの処置具を体腔内に突出させる鉗子口を挿入部の先端に備えている。鉗子口は、体腔内の対象部位の洗浄に用いた液体や対象部位から出血した血液を吸引する吸引口や、体腔内に液体を注入する注入口としても機能する。また、近年では、体腔内に液体を噴出する副送水口を挿入部の先端に備えた内視鏡も提供されている(特許文献1参照)。挿入部の先端に副送水口を備えた内視鏡では、鉗子チャンネルを用いた処置具の利用と並行して体腔内の対象部位の洗浄が行えるため、内視鏡を用いた検査や手術を効率良く行うことができる。
【0003】
内視鏡を用いた検査や手術で使用される液体は例えば送水タンクに貯留され、送水装置を駆動させることで、内視鏡に設けた鉗子チャンネルや副送水チャンネルに送水される。送水装置は、例えばフットスイッチの踏み込みにより内蔵されたポンプが駆動して、送水タンクに貯留された液体を送水チューブに吸い上げ、内視鏡に向けて送り出す装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-167049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、鉗子口の内径は2~3.2mmであるのに対して、副送水口の内径は1mm前後と小径であることから、送水装置の駆動時には、送水チューブの内圧は大気圧よりも高くなる。例えば送水装置の停止後は、送水チューブの内圧が大気圧まで戻るまでに時間がかかる。その結果、送水装置を停止したとしても、副送水チューブの内圧が大気圧まで戻るまでの間、副送水口から液体が出続ける、いわゆる水切れが悪いという問題が生じる。この水切れが悪いという問題は、内視鏡を用いた検査や手術の施術効率が悪くなるという問題を引き起こす。
【0006】
また、送水装置は、複数のローラを外周縁部に軸支した回転体を回転させながら、内部に設置された送水チューブを複数のローラの各々でしごくことで、送水タンクに貯留された液体を吸引し、吸引した液体を内視鏡に向けて送り出す動作を繰り返している。したがって、送水チューブの内圧が高くなると、複数のローラの各々によってしごかれる送水チューブが送水チューブの延出方向に割れる事象や、チューブが破損して漏水する事象が発生する。このような事象が発生することは、内視鏡を用いた検査や手術を効率良く行うことができなくなるだけでなく、患者を危険にさらすことにつながる。したがって、内視鏡を用いた検査や手術において、内視鏡への送水を確実に行うことができる手段の要望が高まっている。
【0007】
本発明は、内視鏡を用いた検査や手術において、内視鏡への送水を確実に行い、また、送水装置の停止時における水切れを良くすることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一つの観点によれば、本発明のポンプチューブユニットは、回転体と、前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で配置される複数の押圧部とを有するポンプに設置され、前記回転体の回転とともに回動する前記複数の押圧部の少なくとも1つのいずれか1つの押圧部による押圧を順次受けることで、接続される内視鏡に向けた液体の送り出しと、新たな液体の引き込みを行うポンプチューブを備えたポンプチューブユニットにおいて、前記内視鏡は、前記ポンプチューブから送り出された前記液体を吐出する開口を有し、前記ポンプチューブの内径は、前記ポンプチューブにより送り出される液体の送出量が前記内視鏡に設けた開口から吐出される液体の吐出量と略同一となるように設定されることを特徴とする。
【0009】
また、前記ポンプの駆動により送り出される液体の設定送水量は700mm/minであり、前記開口の内径は1mmであって、前記ポンプチューブの内径は3.4mm以上3.8mm以下であり、前記ポンプチューブの外径は6.7mm以上7.1mm以下であることを特徴とする。
【0010】
また、前記開口は、内視鏡の内視鏡挿入部の先端に設けた副送水口であり、前記ポンプチューブから送り出された液体は、前記内視鏡に設けられた副送水チャンネルを介して、前記副送水口から吐出されることが好ましい。
【0011】
一つの観点によれば、本発明の内視鏡システムは、先端に副送水口を有する副送水チャンネルを有する内視鏡と、液体を貯留した送水タンクと、回転体と前記回転体の外周縁部に所定角度間隔で軸支された複数の押圧部とを有するポンプと、一端部が前記送水タンクに、他端部が前記内視鏡の副送水チャンネルに接続され、前記ポンプの駆動時に前記送水タンクに貯留された液体を引き込み、引き込んだ液体を内視鏡に向けて送り出す、上記に記載のポンプチューブユニットと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本件開示によれば、内視鏡を用いた検査や手術において、内視鏡への送水を確実に行い、また、送水装置の停止時における水切れを良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の内視鏡システムの一構成を示す図である。
図2】内視鏡挿入部に設けたノズル先端の構成を示す図である。
図3】送水装置が有するローラポンプの一構成を示す図である。
図4】ポンプチューブユニットの一構成を示す図である。
図5】送水装置における送水量をH(H=700ml/min)とした場合において、(a)ポンプチューブユニットの送水量、(b)副送水口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
図6】送水装置における送水量をM(M=500ml/min)とした場合において、(a)ポンプチューブユニットの送水量、(b)副送水口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
図7】送水装置における送水量をL(L=250ml/min)とした場合において、(a)ポンプチューブユニットの送水量、(b)副送水口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
図8】ポンプチューブの内径D3をD3=3.4mm、外径D4をD4=6.7mmとした場合において、(a)ポンプチューブユニットの送水量、(b)副送水口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
図9】ポンプチューブの内径D3をD3=3.6mm、外径D4をD4=6.9mmとした場合において、(a)ポンプチューブユニットの送水量、(b)副送水口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
図10】ポンプチューブの内径D3をD3=3.8mm、外径D4をD4=7.1mmとした場合において、(a)ポンプチューブユニットの送水量、(b)副送水口から吐出される吐出量の検証結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態について図面を用いて説明する。図1に示すように、内視鏡システム10は、内視鏡15、送水装置16、送水タンク17、及びポンプチューブユニット18などを含む。内視鏡15は、操作ハンドル21、内視鏡挿入部22、ユニバーサルチューブ23及びコネクタ24を含む。
【0015】
操作ハンドル21は、複数の操作部25、鉗子挿入部26などを備える。複数の操作部25は、例えばアンクルノブ28の他、送気/送水ボタン29、吸引ボタン30、シャッターボタン31などの各種ボタンを含む。アンクルノブ28は、内視鏡挿入部22の先端側に設けた湾曲部22aの湾曲動作を行う際に回動動作される。送気/送水ボタン29は、内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた観察口40や照明口41,42を洗浄する際に操作される。吸引ボタン30は、内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた鉗子口44を用いて体腔内の汚物(体腔内の対象部位を洗浄した液体を含む)の吸引する際に操作される。シャッターボタン31は、内視鏡挿入部22の先端内部に設けた撮像装置(不図示)を用いて体腔内の対象部位などを撮像する際に操作される。
【0016】
鉗子挿入部26は、鉗子などの処置具が挿入される。鉗子挿入部26は、内視鏡15の未使用時には、鉗子栓32が取り付けられる。なお、鉗子栓32には、後述するポンプチューブユニット18のロックアダプタ74がコネクタ(不図示)を介して接続することが可能である。
【0017】
内視鏡挿入部22は、図示を省略した送気チャンネル及び送水チャンネルの他、ライトガイド35、鉗子チャンネル36、副送水チャンネル37を内部に有する。ライトガイド35は、コネクタ24が接続された光源装置(不図示)から出射された光を内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた照明口41,42に案内する。
【0018】
鉗子チャンネル36は、操作ハンドル21に設けた鉗子挿入部26から挿入された鉗子などの処置具を、内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた鉗子口44に案内する。また、鉗子チャンネル36は、鉗子挿入部26にポンプチューブユニット18が接続された場合、送水装置16により送り込まれる液体を鉗子口44へと送水する。
【0019】
副送水チャンネル37は、チューブ接続部24bに接続されたポンプチューブユニット18からの液体を内視鏡挿入部22のノズル22bの先端に設けた副送水口45に送水する。
【0020】
ユニバーサルチューブ23は、操作ハンドル21とコネクタ24とを接続する。ユニバーサルチューブ23は、ライトガイド35や副送水チャンネル37などを内部に有する。
【0021】
コネクタ24は、光源装置への接続を可能とする光源接続部24a、ポンプチューブユニットの接続を可能とするチューブ接続部24bなど、複数のコネクタ部を有する。
【0022】
図2に示すように、内視鏡挿入部22のノズル22bは、観察口40、照明口41,42、送気/送水ノズル43、鉗子口44、副送水口45を備える。なお、ノズル22bの構成は一例を示したに過ぎず、ノズル22bに設ける開口の種類や位置は適宜設定することができる。
【0023】
観察口40は、内視鏡挿入部22の先端内部に設けた撮像装置の対物レンズ46を露呈する。対物レンズ46は、体腔内の対象部位の観察像を撮像装置に取り込む。照明口41,42は、ライトガイド35により導光された光を照明光として、体腔内の対象部位及び対象部位の近傍に向けて出射する。
【0024】
送気/送水ノズル43は、観察口40や照明口41,42に向けて、空気又は液体を噴出して、観察口40や照明口41,42及びその近傍を洗浄する。
【0025】
鉗子口44は、鉗子挿入部26から挿入された処置具の先端を出し入れする。なお、鉗子口44は、内視鏡15に吸引装置が接続される場合、体腔内で出血した血液などの汚物を吸引する吸引口としても機能する。ここで、鉗子口44の内径は2~3.2mmである。副送水口45は、送水装置16を介して内視鏡15の副送水チャンネル37に送水される液体を噴出する。ここで、副送水口45の内径は1mmである。
【0026】
送水装置16は、装置が有するポンプの駆動により、送水タンク17に貯留される液体を内視鏡15に向けて送水する装置である。なお、送水装置16は、不図示のフットスイッチの押圧操作などにより駆動する。本実施形態では、図3に示すように、ローラポンプ51を有する送水装置16の場合について説明する。
【0027】
図3に示すように、ローラポンプ51は、前面に設けた円弧状のガイド壁53の内側に沿って、ポンプチューブ62を設置する。ローラポンプ51に設置されたポンプチューブ62は、後述する回転体の外周に沿って保持される。
【0028】
ローラポンプ51は、回転体55、ローラ56、モータ57を含む。回転体55は、一例として略三角形状の板部材である。なお、回転体55の形状は、軸支するローラの数に応じた多角形状の板部材としてもよいし、円板状の部材であってもよい。回転体55は、モータ57の駆動軸57aに固着され、モータ57の駆動時に、図3中反時計方向(A方向)に回転する。
【0029】
ローラ56は、回転体55がモータ57に固着される固着面とは反対となる面側で、且つ回転体55の回転中心からの距離が同一距離となる位置に各々軸支される。図3においては、ローラ56は、正三角形状の板部材となる回転体55の各頂点近傍に各々軸支される場合を例示している。つまり、ローラ56は、120°間隔で配置される。ここで、複数のローラ56の回転軌跡と、円弧状のガイド壁53との隙間(クリアランス)は、例えば3.1mmである。
【0030】
ローラ56は、回転体55の回転時に、円弧状のガイド壁53の内側に沿って引き回されたポンプチューブ62を円弧状のガイド壁53に向けて押圧しながら(しごきながら)回転する。ローラ56がポンプチューブ62をしごくことにより、ポンプチューブ62の内部の液体が内視鏡15に向けて押し出される。また、ポンプチューブ62は、ローラ56によりしごかれた後に元の状態に復帰する際に、送水タンク17に貯留される液体を引き込む。上述したように、ローラ56は120°間隔で配置されている。したがって、回転体55が一回転すると、3つのローラ56のすべてのローラにより、上記動作が行われる。なお、押圧部の一例としてローラ56を取り上げているが、ローラの代わりに、回転体55の外方に突出する押圧片であってもよい。
【0031】
ここで、送水装置16における送水量は、例えば内径6.6mm、外径9.7mmのポンプチューブ62を使用したときに送水される送水量に設定される。ここで、内径6.6mm、外径9.7mmのポンプチューブ62を使用したときに送水される送水量は、例えば700ml/minに設定される。
【0032】
図1に戻って、内視鏡システム10では、送水タンク17に貯留される液体は、送水装置16が駆動する間、送水装置16に設置されたポンプチューブユニット18を介して内視鏡15に送水される。
【0033】
図4に示すように、ポンプチューブユニット18は、フィルタ付き送水チューブ61、ポンプチューブ62、送水チューブ63を含む。ポンプチューブユニット18は、フィルタ付き送水チューブ61とポンプチューブ62とをジョイント64で接続し、また、ポンプチューブ62と送水チューブ63とをジョイント65にて接続することで一体としたものである。
【0034】
フィルタ付き送水チューブ61は、フィルタ装置68、送水チューブ69,70を含む。フィルタ装置68は、ケース68aと、ケース68aに収納されるフィルタ本体70bとを含む。ケース68aは、両端が開口された筒状の部材である。ケース68aの材質は、透明または半透明の合成樹脂材又はガラスなどである。なお、ケース68aは、内径17.0mm、外径20.0mmである。フィルタ本体70bは、底面が開口され、円錐面にフィルタ網を形成した略円錐形状の部材である。フィルタ本体68bは、底面が下流側に配置されるようにケース68aの内部に固定される。
【0035】
送水チューブ69,70は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)を材質としたチューブである。送水チューブ69,70は、内径D1=3.4mm、外径D2=6.0mmである。
【0036】
これら送水チューブ69,70のうち、送水チューブ69は、フィルタ装置68の上流側で、ジョイント71を用いてフィルタ装置68に接続される。また、送水チューブ69は、フィルタ装置68に接続される一端とは反対側となる端部にコネクタ73を有する。コネクタ73は、送水タンク17の吸引チューブに接続される。
【0037】
また、送水チューブ70は、フィルタ装置68の下流側で、ジョイント72を用いてフィルタ装置68に接続される。同時に、送水チューブは、フィルタ装置68に接続される一端とは反対側となる端部を、ジョイント64を用いてポンプチューブ62に接続される。
【0038】
ポンプチューブ62は、ローラポンプ51に設けた円弧状のガイド壁53の内周面に沿って引き回される部材である。ポンプチューブ62は、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)から製造される。ポンプチューブ62に用いられるポリ塩化ビニル樹脂は、例えば重合度2500以上で、可塑剤含有量が40%以上のものが用いられる。ここで、ポンプチューブ62は、フィルタ付き送水チューブ61の送水チューブ69,70や送水チューブ63よりも軟質な材質であればよい。
【0039】
また、ポンプチューブ62の内径D3は、ポンプチューブ62の内径D3や外径D4は、ポンプチューブユニット18による送水量が副送水口45から吐出される液体の吐出量と略同一となるように設定される。
【0040】
また、ポンプチューブ62の外径D4は、ローラ5の回転軌跡とガイド壁53とのクリアランスや、ローラ56による押圧を受けてポンプチューブ62が弾性変形し、ローラ56による押圧部分において、ポンプチューブ62の内部空間が遮断されるように設定される。具体的には、ポンプチューブ62は、内径D3=3.6mm、外径D4は、=6.9mmに設定される。なお、ポンプチューブ62の内径D3は、例えば3.4mm以上3.8mm以下の範囲で設定されることが好ましい。また、ポンプチューブ62の外径は、6.7mm以上7.1mm以下の範囲で設定されることが好ましい。
【0041】
送水チューブ63は、上流側の一端がジョイント65を介してポンプチューブ62に固定され、下流側の他端がロックアダプタ(ルアーコネクタ)74を介して、内視鏡15の操作ハンドル21に設けた鉗子挿入部26、又は内視鏡15のコネクタ24に設けたチューブ接続部24bに接続される。送水チューブ63は、送水チューブ69,70と同様に、例えばポリ塩化ビニル樹脂(PVC)から製造される。送水チューブ63は、内径D5=3.4mm、外径D6=6.0mmである。
【0042】
上記構成のポンプチューブユニット18を使用した内視鏡システム10によれば、内視鏡15の副送水口から吐出される液体の吐出量と、ポンプチューブユニット18により送水される送水量とが略同一量となるようにポンプチューブ62の内径を設定した。これによれば、ポンプチューブ62から液体を送り出すときに、ポンプチューブユニット18の送水チューブ63や内視鏡15の副送水チャンネル37の内部の液体に過剰な負荷がかからなくなり、ポンプチューブユニット18の内圧が大気圧よりも高くなることを防止できる。その結果、送水装置16の停止時に、内視鏡15の内視鏡挿入部22のノズル22bに設けた副送水口45からの水垂れの発生を防止できる。
【0043】
また、ポンプチューブ62の外径を、ローラ56による押圧部分において、ポンプチューブ62の内部空間が遮断できるように設定している。したがって、液体の送水時に内圧が抑えられたポンプチューブ62を確実にローラ56により押圧することができる。その結果、チューブにかかる負荷が低減され、ポンプチューブ62にひび割れが発生すること、また、ポンプチューブ62の破損による漏水が発生する事象を防止できる。
【0044】
以下、本実施形態のポンプチューブユニット18を採用するにあたり、検証試験を行った。
【0045】
まず、ポンプチューブ62において、内径D3=6.6mm、外径D4=9.7mmとしたときに、送水装置16の送水量を変化させた場合のポンプチューブユニット18における液体の送水量と、ポンプチューブユニット18を内視鏡15に接続したときに副送水口45から吐出される液体の吐出量を測定した。このとき、送水装置16における液体の送水量をH(H=700ml/min),M(M=500ml/min),L(L=250ml/min)の3段階で変化させた。また、液体の送水量及び液体の吐出量は30秒間隔で測定した。
【0046】
また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15に接続した状態の検証試験では、30秒、60秒,90秒,120秒及び150秒経過したときに送水装置16を停止させ、副送水口45からの水垂れの有無について確認した。さらに、ポンプチューブ62にひびや割れが発生しているか否かの確認も行った。以下では、30秒経過したときの変化量から、ポンプチューブユニット18における平均送水量や、副送水口45から吐出される平均吐出量を求めている。
【0047】
図5(a)及び図5(b)に示すように、送水装置16における液体の送水量をH(H=700ml/min)とした場合、ポンプチューブユニット18を介して送水される液体の送水量の平均は350.4mlであった。また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続し液体を内視鏡15に送水した場合、副送水口45から吐出される液体の吐出量の平均は140mlであった。言い換えると、内径D3=6.6mm、外径D4=9.7mmのポンプチューブ62を用いたポンプチューブユニット18における平均送水量は700.8ml/minであるのに対して、副送水口45から吐出される平均吐出量は280ml/minである。つまり、ポンプチューブ62から送り出される液体の送水量は、副送水口45から吐出される吐出量よりもかなり多いことがわかった。また、送水装置16を停止すると、水垂れは長時間継続して発生した。また、ポンプチューブ62には、ひび割れが発生した。
【0048】
図6(a)及び図6(b)に示すように、送水装置16における液体の送水量をM(M=500ml/min)とした場合、ポンプチューブユニット18を介して送水される液体の送水量の平均は248mlであった。また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続し液体を内視鏡15に送水した場合、副送水口45から吐出される液体の吐出量の平均は132.4mlであった。言い換えると、内径D3=6.6mm、外径D4=9.7mmのポンプチューブ62を用いたポンプチューブユニット18における平均送水量は496ml/minであるのに対して、副送水口45から吐出される液体の平均吐出量は264.8ml/minである。つまり、送水装置16において送水量を下げたが、ポンプチューブ62から送り出される液体の送水量は、副送水口45から吐出される吐出量よりも多くなることがわかった。また、送水装置16を停止すると、水垂れは長時間継続して発生した。また、ポンプチューブ62には、ひび割れが発生した。
【0049】
図7(a)及び図7(b)に示すように、送水装置16における液体の送水量をL(L=250ml/min)とした場合、ポンプチューブユニット18を介して送水される液体の送水量の平均は126.8mlであった。また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続し液体を内視鏡15に送水した場合、副送水口45から吐出される液体の吐出量の平均は109.2mlであった。言い換えれば、内径D3=6.6mm、外径D4=9.7mmのポンプチューブ62を用いたポンプチューブユニット18における平均送水量は253.6ml/minであるのに対して、副送水口45から吐出される液体の平均吐出量は218.4ml/minである。つまり、この場合、送水装置16において送水量はさらに低く設定されているが、ポンプチューブ62から送り出される液体の送水量は、副送水口45から吐出される吐出量よりも多くなることがわかった。また、送水装置16を停止すると、水垂れは長時間継続して発生した。また、ポンプチューブ62には、ひび割れが発生した。
【0050】
このように、ポンプチューブ62の内径D3及び外径D4を、内径D3=6.6mm、外径D4=9.7mmとした場合、ポンプチューブユニット18は、送水装置16にて設定された送水量に基づいた送水性能を得られる。その一方で、内視鏡15の副送水口45から吐出される平均吐出量は218.4ml~280mlであり、送水装置16における平均送水量を変更しても、内視鏡15の副送水口45から吐出される液体の平均吐出量はあまり変化しない。つまり、送水装置16における送水性能が内視鏡15の副送水チャンネル37における送水性能、すなわち副送水口45からの吐出性能よりも高い場合には、送水装置16における送水性能を下げても効果が得られない。また、送水装置16における送水性能が、副送水口45の吐出性能よりも高い場合、ポンプチューブ62から押し出される液体によって、ポンプチューブユニット18の内圧が上昇して大気圧よりも高くなる。したがって、ポンプチューブユニット18の内圧が大気圧まで下がるまでは、副送水口45からの水垂れが発生するものと想定される。また、ポンプチューブユニット18の内圧が高いことで、ローラポンプ51によってしごかれるポンプチューブ62がひび割れし、さらには、ポンプチューブ62の破損による漏水が生じると想定できる。
【0051】
次に、ポンプチューブ62の内径D3及び外径D4を変更して、ポンプチューブユニット18単体における液体の送水量、及びポンプチューブユニット18を内視鏡15に接続したときに副送水口45から吐出される液体の吐出量を計測した。なお、液体の送水量及び液体の吐出量は30秒間隔で測定した。このとき、送水装置16における送水量を700ml/min(一定)とした。また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15に接続した状態の検証試験では、30秒、60秒,90秒,120秒及び150秒経過したときに送水装置16を停止させ、副送水口45からの水垂れの有無について確認した。さらに、ポンプチューブ62にひびや割れが発生しているか否かの確認も行った。この場合も、30秒経過したときの変化量から、ポンプチューブユニット18における平均送水量や、副送水口45から吐出される平均吐出量を求めている。
【0052】
まず、ポンプチューブ62の内径D3及び外径D4を、内径D3=3.4mm、外径D4=6.7mmとして検証した。図8(a)及び図8(b)に示すように、ポンプチューブユニット18単体では、液体の送水量の平均は102.8mlであった。また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続し液体を内視鏡15に送水した場合、副送水口45から吐出される液体の吐出量の平均は104,4mlであった。この場合、内径D3=3.4mm、外径D4=6.7mmのポンプチューブを用いたポンプチューブユニット18における平均送水量は205.8ml/minであるのに対して、副送水口45から吐出される液体の平均吐出量は208.8ml/minである。したがって、ポンプチューブユニット18から送り出される液体の送水量が、副送水口45から吐出される液体の吐出量と略同一である。この場合、送水装置16を停止すると、水垂れは発生しなかった。また、ポンプチューブ62は、ひび割れしなかった。
【0053】
次に、ポンプチューブ62の内径D3及び外径D4を、内径D3=3.6mm、外径D4=6.9mmとして検証した。図9(a)及び図9(b)に示すように、ポンプチューブユニット18単体では、液体の送水量の平均は118.8mlであった。また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続し液体を内視鏡15に送水した場合、副送水口45から吐出される液体の吐出量の平均は106.8mlであった。この場合、内径D3=3.6mm、外径D4=6.9mmのポンプチューブ62を用いたポンプチューブユニット18における平均送水量は237.6ml/minであるのに対して、副送水口45から吐出される液体の平均吐出量は213.6ml/minである。したがって、ポンプチューブユニット18から送り出される液体の送水量は、副送水口45から吐出される液体の吐出量よりも若干高くなる。この場合、送水装置16を停止すると、水垂れは発生しなかった。また、ポンプチューブ62は、ひび割れしなかった。
【0054】
最後に、ポンプチューブ62の内径D3及び外径D4を、内径D3=3.8mm、外径D4=7.1mmとして検証した。図10(a)及び図10(b)に示すように、ポンプチューブユニット18単体では、液体の送水量の平均は128.4mlであった。また、ポンプチューブユニット18を内視鏡15のコネクタ24のチューブ接続部24bに接続し液体を内視鏡15に送水した場合、副送水口45から吐出される液体の吐出量の平均は128.8mlであった。この場合、内径D3=3.8mm、外径D4=7.1mmのポンプチューブ62を用いたポンプチューブユニット18における平均送水量は256.8ml/minであるのに対して、副送水口45から吐出される液体の平均吐出量は257.6ml/minである。したがって、ポンプチューブユニット18から送り出される液体の送水量は、副送水口45から吐出される液体の吐出量と略同一量である。この場合、送水装置16を停止すると、水垂れは発生しなかった。また、ポンプチューブ62は、ひび割れしなかった。
【0055】
このように、送水装置16における送水量は700ml/minであり、副送水口45の内径は1mmであって、ポンプチューブ62の内径D3は3.4mm以上3.8mm以下に、外径D4は6.7mm以上7.1mm以下にしたので、、ポンプチューブ62により送り出される液体の送出量が内視鏡15に設けた副送水口45から吐出される液体の吐出量と略同一となる。その結果、上述したように、送水装置16の停止時における副送水口45からの水垂れの発生を防止し、同時に、ポンプチューブ62におけるひび割れの発生を防止できることがわかった。
【0056】
本実施形態では、副送水口45の内径を1mmとしているが、副送水口45の内径は、1mmに限定されるものではなく、例えば内径を0.8mmから1mmの間で設定することもできる。また、本実施形態では、内径6.6mm、外径9.7mmのポンプチューブ62を使用したときに送水される送水量(700ml/min)を基準にしているが、送水量は700ml/minに限定されるものではない。つまり、本発明では、ポンプチューブ62から送り出される液体の送出量と、内視鏡15の副送水口45から吐出される液体の吐出量とが略同一になるようにポンプチューブ62の内径、送水装置16における設定送水量、及び内視鏡15の副送水口45の内径を設定できれば、上記に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
10…内視鏡システム
15…内視鏡
16…送水装置
17…送水タンク
18…ポンプチューブユニット
37…副送水チャンネル
45…副送水口
51…ローラポンプ
55…回転体
56…ローラ
62…ポンプチューブ

図1
図2
図3
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図7
図8
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図10