(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ロータリバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 27/04 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
F16K27/04
(21)【出願番号】P 2021055713
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2024-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591012200
【氏名又は名称】株式会社東海理機
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】榊原 晃来
(72)【発明者】
【氏名】黒川 昌久
(72)【発明者】
【氏名】松山 明広
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-074235(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0109031(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して形成されたハウジングと、前記ハウジングに軸により支持された弁体と、前記ハウジング及び前記弁体の間に配置されたパッキンとを備え、前記弁体は、前記収容部に収容され、かつ前記流入口及び前記流出口を連通させる可動流路が形成された弁本体部を備え、前記弁本体部が前記軸の軸線を中心として回転するロータリバルブであって、
前記ハウジングは、前記軸線の周りに形成され、かつ前記流入口及び前記流出口の少なくとも一方が特定開口として形成された環状壁部を備え、
前記環状壁部は
、パッキン装着部
を備え、
前記パッキン装着部は、前記弁本体部の回転方向における前記特定開口の両側となる箇所に、前記軸線に沿って延び、かつ前記特定開口を挟んで前記回転方向に対向する一対の内側面を有し、
前記パッキンは、貫通孔を有す
るパッキン本体部を備え、
前記パッキン本体部は、前記弁本体部に対向する面において、前記弁本体部の前記回転方向における両側となる箇所に、前記軸線に沿って延びる一対の外側面を有し、
前記パッキンは、前記貫通孔を前記特定開口に対向させ、かつ
前記一対の前記外側面を
、前記一対の前記内側面に対向させた状態で前記パッキン装着部に装着され、
互いに対向する前記外側面及び前記内側面の間には、前記パッキン本体部及び前記環状壁部の一方に固定され、かつ他方に摺動可能に接触する摺動部が
、対向する前記外側面及び前記内側面の組み合わせ毎に設けられ、前記摺動部は、前記パッキン本体部及び前記環状壁部のうち同摺動部が固定された部材よりも摩擦係数の小さな材料により形成されているロータリバルブ。
【請求項2】
前記パッキン本体部はゴムにより形成され、
前記摺動部は、フッ素樹脂により形成され、かつ前記パッキン本体部の前記外側面に固定されている請求項1に記載のロータリバルブ。
【請求項3】
前記摺動部は、フッ素樹脂製のシートにより構成され、
前記シートは、前記パッキン本体部の前記外側面に貼付けられている請求項2に記載のロータリバルブ。
【請求項4】
前記パッキン本体部のうち、前記弁本体部に対向する面には、フッ素樹脂製の低摩擦シートが貼付けられており、
前記低摩擦シートは、前記パッキン本体部の前記外側面まで拡張されて、同外側面に貼付けられており、前記低摩擦シートの拡張された部分により、前記フッ素樹脂製の前記シートからなる前記摺動部が構成されている請求項3に記載のロータリバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はロータリバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
図11に示すように、流体の流路の途中に設けられるロータリバルブ100として、収容部106を有するハウジング101と、軸(図示略)によりハウジング101に支持された弁体108とを備えるものが知られている。ハウジング101は、軸における軸線の周りに形成された環状壁部102を備えている。環状壁部102には、流体の流入口及び流出口の少なくとも一方が特定開口103として、収容部106に面して形成されている。
【0003】
弁体108は、収容部106に収容された弁本体部109を備えている。弁本体部109には、流入口及び流出口を連通させる可動流路109aが形成されている。そして、軸線を中心として弁本体部109が回転されることにより、可動流路109aを介して流入口に連通される流出口が切替えられ、流体の流路が切替えられる。また、流路を流れる流体の流量が調整される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記ロータリバルブ100は、さらに、ハウジング101と弁本体部109との間に配置されたパッキン110を備えている。環状壁部102は、特定開口103の周りにパッキン装着部104を備えている。パッキン装着部104は、上記軸線に沿って延びる一対の内側面105を有している。
【0005】
パッキン110の骨格部分は、パッキン本体部111によって構成されている。パッキン本体部111は、貫通孔112を有するとともに、貫通孔112の周りで上記軸線に沿って延びる一対の外側面113を有している。
【0006】
そして、パッキン本体部111は、貫通孔112を特定開口103に対向させ、かつ各外側面113を、対向する内側面105に接触させた状態でパッキン装着部104に装着されている。
【0007】
上記ロータリバルブ100では、環状壁部102と弁本体部109との間でパッキン110を圧縮させることで、弁本体部109を押し返す反力(以下「圧縮反力F1」という)をパッキン110に生じさせる。上記ロータリバルブ100では、上記圧縮反力F1によって、弁本体部109と環状壁部102との間をシールしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来のロータリバルブ100によると、パッキン110がパッキン装着部104に装着された状態では、パッキン本体部111の各外側面113が、パッキン装着部104の対向する内側面105に接触する。そのため、パッキン110が弁体108の回転方向へ動くのを規制できる。しかし、外側面113と内側面105との間に摩擦力が発生し、その摩擦力の分、圧縮反力F1が弱められる。これに伴い、弁本体部109と環状壁部102との間をシールするパッキン110のシール力が低下する。
【0010】
これに対しては、パッキン110をより多く圧縮させることで、圧縮反力F1、ひいてはシール力を確保することが可能である。しかし、弁体108を回転させるために大きなトルクが必要になってしまう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するロータリバルブは、収容部を有し、かつ流体の流入口及び流出口が前記収容部に面して形成されたハウジングと、前記ハウジングに軸により支持された弁体と、前記ハウジング及び前記弁体の間に配置されたパッキンとを備え、前記弁体は、前記収容部に収容され、かつ前記流入口及び前記流出口を連通させる可動流路が形成された弁本体部を備え、前記弁本体部が前記軸の軸線を中心として回転するロータリバルブであって、前記ハウジングは、前記軸線の周りに形成され、かつ前記流入口及び前記流出口の少なくとも一方が特定開口として形成された環状壁部を備え、前記環状壁部は、前記軸線に沿って延びる内側面を有するパッキン装着部を、前記特定開口の周りに備え、前記パッキンは、貫通孔を有するとともに、前記貫通孔の周りで前記軸線に沿って延びる外側面を有するパッキン本体部を備え、前記パッキンは、前記貫通孔を前記特定開口に対向させ、かつ前記外側面を前記内側面に対向させた状態で前記パッキン装着部に装着され、前記外側面及び前記内側面の間には、前記パッキン本体部及び前記環状壁部の一方に固定され、かつ他方に摺動可能に接触する摺動部が設けられ、前記摺動部は、前記パッキン本体部及び前記環状壁部のうち同摺動部が固定された部材よりも摩擦係数の小さな材料により形成されている。
【0012】
上記の構成によれば、パッキンがパッキン装着部に装着された状態では、貫通孔が特定開口に対向する。また、パッキン本体部の外側面が、パッキン装着部の内側面に対向する。外側面及び内側面の間に摺動部が介在する。従って、外側面は内側面に対し摺動部を介して間接的に接触した状態となる。この接触により、パッキンは、弁体の回転方向へ動くことを規制される。
【0013】
ロータリバルブでは、環状壁部と弁本体部との間でパッキンが圧縮させられる。パッキンには、弁本体部を押し返す反力(圧縮反力)が生ずる。この圧縮反力によって、弁本体部と環状壁部との間がシールされる。
【0014】
ここで、上記摺動部は、パッキン本体部及び環状壁部のうち同摺動部が固定された部材よりも摩擦係数の小さな材料により形成されている。そのため、摺動部が介在されず、上記外側面と上記内側面とが直接接触する場合に比べ、それらの外側面と内側面との間に生ずる摩擦力が小さくなる。従って、摩擦力によって圧縮反力が弱められる程度が軽減される。これに伴い、パッキンのシール力の低下が抑制される。
【0015】
シール力を確保するために、パッキンを多く圧縮させなくてもよく、弁体を回転させるためのトルクの増大を抑制することが可能である。
上記ロータリバルブにおいて、前記パッキン本体部はゴムにより形成され、前記摺動部は、フッ素樹脂により形成され、かつ前記パッキン本体部の前記外側面に固定されていることが好ましい。
【0016】
上記の構成によれば、摺動部を形成するフッ素樹脂の摩擦係数は、同摺動部が固定されたパッキン本体部を形成するゴムの摩擦係数よりも小さい。従って、パッキン本体部の外側面とパッキン装着部の内側面とが直接接触する場合に比べ、それらの外側面と内側面との間に生ずる摩擦力が小さくなる。
【0017】
上記ロータリバルブにおいて、前記摺動部は、フッ素樹脂製のシートにより構成され、前記シートは、前記パッキン本体部の前記外側面に貼付けられていることが好ましい。
上記の構成によるように、フッ素樹脂製のシートをパッキン本体部の外側面に貼付けて固定することで、パッキン装着部の内側面との間で生ずる摩擦力を小さくすることが可能である。
【0018】
上記ロータリバルブにおいて、前記パッキン本体部のうち、前記弁本体部に対向する面には、フッ素樹脂製の低摩擦シートが貼付けられており、前記低摩擦シートは、前記パッキン本体部の前記外側面まで拡張されて、同外側面に貼付けられており、前記低摩擦シートの拡張された部分により、前記フッ素樹脂製の前記シートからなる前記摺動部が構成されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、元々、パッキン本体部と弁本体部との間の摩擦力を小さくするために用いられるフッ素樹脂製の低摩擦シートが利用されて、パッキン本体部の外側面まで拡張される。この拡張された部分が外側面に貼付けられることで、同外側面に固定された状態の摺動部が形成される。
【発明の効果】
【0020】
上記ロータリバルブによれば、弁本体部と環状壁部との間のシール力を確保しつつ、パッキンを、弁体の回転方向へ動くのを規制した状態で環状壁部に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ロータリバルブの一部を、弁体における軸の軸線に沿う方向の一方から見た斜視図。
【
図2】ロータリバルブの一部を軸線に沿う方向の他方から見た斜視図。
【
図3】ロータリバルブの一部の構成部品を軸線に沿う方向の一方から見た分解斜視図。
【
図4】ロータリバルブの一部の構成部品を軸線に沿う方向の他方から見た分解斜視図。
【
図10】ロータリバルブのボディ、弁体及びパッキンを、軸線に沿う方向の他方から見た底面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、ロータリバルブの一実施形態について、
図1~
図10を参照して説明する。
図5に示すように、ロータリバルブ10は、図示しないポンプ等の流体供給源から供給される水等の流体FLの流路の途中に設けられている。より詳しくは、この流路は、上記流体供給源に接続された共通流路11と、共通流路11から分岐した第1分岐流路12及び第2分岐流路13とを備えている。ロータリバルブ10は、第1分岐流路12及び第2分岐流路13が共通流路11から分岐する部分に配置されており、第1分岐流路12及び第2分岐流路13に流れる流体FLの流量を調整する役割を担っている。この流量の調整により、流体FLを第1分岐流路12及び第2分岐流路13の両方に流したり、一方にのみ流したりすることが可能である。
【0023】
図3及び
図4に示すように、ロータリバルブ10は、ハウジング21、弁体50及び一対のパッキン60を備えている。次に、各部材について説明する。
<ハウジング21>
図1及び
図2に示すように、ハウジング21はボディ22を備えている。ボディ22は、弁体50における軸58,59の軸線L1の周りに形成された環状壁部23を備えている。軸線L1に沿う方向における環状壁部23の一方の端部は、閉塞部24によって塞がれている。環状壁部23の他方の端部は、開放された開放端25となっている。開放端25は、図示しないカバーによって塞がれる。ボディ22及びカバーによって囲まれた箇所は、収容部26を構成している。
【0024】
図5に示すように、環状壁部23において、弁体50の回転方向に互いに離間した3箇所には、収容部26への流体FLの流入口27と、収容部26内の流体FLの第1流出口31及び第2流出口35とが、それぞれ収容部26に面して形成されている。本実施形態では、第1流出口31及び第2流出口35は、パッキン60によるシールの対象となる特定開口を構成している。
【0025】
環状壁部23の外壁面における流入口27の周縁部には、収容部26から遠ざかる側へ突出する接続管部28が設けられている。接続管部28と流体供給源とは、流体FLの上記共通流路11を有する配管29によって連結されている。
【0026】
環状壁部23の外壁面における第1流出口31の周縁部には、収容部26から遠ざかる側へ突出する接続管部32が設けられている。接続管部32には、流体FLの上記第1分岐流路12を有する配管33が接続されている。第1流出口31から流出された流体FLは、配管33を通って、流体FLの使用先に送られる。
【0027】
環状壁部23の外壁面における第2流出口35の周縁部には、収容部26から遠ざかる側へ突出する接続管部36が設けられている。接続管部36には、流体FLの上記第2分岐流路13を有する配管37が接続されている。第2流出口35から流出された流体FLは、配管37を通って、流体FLの使用先に送られる。
【0028】
環状壁部23の内壁部であって、第1流出口31及び第2流出口35のそれぞれの周囲には、凹状のパッキン装着部41が形成されている。各パッキン装着部41は、それぞれ軸線L1に沿って延びる一対の内側面42を有している。第1流出口31の周囲のパッキン装着部41における両内側面42は、弁体50の回転方向における第1流出口31の両側に位置し、同第1流出口31を挟んで上記回転方向に対向している。同様に、第2流出口35の周囲のパッキン装着部41における両内側面42は、弁体50の回転方向における第2流出口35の両側に位置し、同第2流出口35を挟んで上記回転方向に対向している。各パッキン装着部41は、両内側面42の間に、凹状に湾曲する内壁面43を有している。
【0029】
図1及び
図3に示すように、閉塞部24には、軸線L1に沿う方向へ延びる軸受孔44が形成されている。上記カバーの中心部分にも、同様に、軸線L1に沿う方向へ延びる軸受孔(図示略)が形成されている。
【0030】
<弁体50>
図3及び
図4に示すように、弁体50は、その骨格部分を構成する弁本体部51と、軸58,59とを備えている。両軸58,59は、弁本体部51から軸線L1に沿う方向における両側へ突出している。弁体50は、軸58により、閉塞部24の軸受孔44に対し回転可能に支持されている。また、弁体50は、軸59によりカバーの軸受孔に対し回転可能に支持されている。
【0031】
弁本体部51は、全体として軸線L1に沿う方向へ延びる円柱状をなしており、上記収容部26内に配置されている。
図3及び
図5に示すように、弁本体部51は、それぞれ円板状をなす一対の端壁部52,53と、連結部55とを備えている。両端壁部52,53は、軸線L1に沿う方向に互いに離間した状態で配置されている。連結部55は、端壁部52の外周部の一部と、端壁部53の外周部の一部との間に配置されており、両端壁部52,53を連結している。両端壁部52,53の外周面と、連結部55の外周面とにより、弁本体部51の外周面56が構成されている。
【0032】
弁本体部51において、両端壁部52,53間であって、連結部55を除く部分は、流入口27と、第1流出口31及び第2流出口35とを連通させる可動流路57を構成している。可動流路57は、弁本体部51の外周面56において開口されている。
【0033】
上記の構成を有する弁体50は、図示しないモータ、手動操作等によって回転される。この回転により、
図5に示すように、弁本体部51が第1流出口31の一部と、第2流出口35の一部とを塞いで、共通流路11と、第1分岐流路12及び第2分岐流路13とを連通させることが可能である。また、図示はしないが、弁本体部51により、第1流出口31を閉塞し、かつ第2流出口35の全部を開放することで、共通流路11と第2分岐流路13とを連通させることが可能である。上記とは逆に、弁本体部51によって第2流出口35を閉塞し、かつ第1流出口31の全部を開放することで、共通流路11と第1分岐流路12とを連通させることが可能である。また、弁体50の回転により、第1流出口31及び第2流出口35のそれぞれの開度を調整することが可能である。
【0034】
<パッキン60>
各パッキン60は、環状壁部23と弁本体部51との間に配置されている。各パッキン60は、互いに同一の構成を有している。
【0035】
図6~
図8に示すように、各パッキン60は、パッキン本体部61、第1シール部66及び第2シール部67を備えている。これらのパッキン本体部61、第1シール部66及び第2シール部67は、弾性材料、本実施形態ではゴムによって一体に形成されている。
【0036】
各パッキン本体部61は、パッキン60の骨格部分を構成する部分であり、矩形の外形形状を有している。各パッキン本体部61は、軸線L1の放射方向を自身の厚み方向とする矩形の板状をなしている。
【0037】
各パッキン本体部61は、第1流出口31又は第2流出口35に対向する箇所に貫通孔65を有している。各貫通孔65は、第1流出口31及び第2流出口35のそれぞれと同程度の径を有する円形の孔によって構成されており、流体FLの通路として機能する。各貫通孔65は、同貫通孔65を上記連結部55によって塞ぐことのできる大きさに形成されている。
【0038】
各パッキン本体部61は、弁体50の回転方向における貫通孔65の両側に、それぞれ軸線L1に沿って延びる一対の外側面62を有している。各パッキン本体部61の環状壁部23(第1流出口31又は第2流出口35)側の面は、パッキン装着部41の上記内壁面43に沿って凸状に湾曲する湾曲面63によって構成されている。各パッキン本体部61の弁本体部51側の面は、同弁本体部51の上記外周面56に沿って凹状に湾曲する湾曲面64によって構成されている。
【0039】
各第1シール部66は、各パッキン本体部61の上記湾曲面63であって、貫通孔65の周囲から環状壁部23(第1流出口31、第2流出口35)に向けて突出している。ここで、上述したように、上記湾曲面63が、パッキン装着部41の内壁面43に沿って凸状に湾曲していることから、各第1シール部66も上記内壁面43に沿って凸状に湾曲している(
図3、
図4参照)。
【0040】
また、各第2シール部67は、各パッキン本体部61の上記湾曲面64であって、貫通孔65の周囲から弁本体部51に向けて突出しており、環状をなしている。ここで、上述したように、上記湾曲面64が、弁本体部51の外周面56に沿って凹状に湾曲していることから、各第2シール部67も上記外周面56に沿って凹状に湾曲している。
【0041】
各パッキン本体部61の湾曲面64と、第2シール部67と、貫通孔65の内壁面とには、フッ素樹脂製の低摩擦シート68が貼付けられている。上記低摩擦シート68は、パッキン本体部61の両外側面62まで拡張されて、同外側面62に貼付けられている。低摩擦シート68の拡張された部分は、フッ素樹脂製のシートからなる摺動部69を構成している。
【0042】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
図5及び
図10に示すように、ロータリバルブ10では、各パッキン60が、パッキン装着部41に装着された状態で、環状壁部23及び弁本体部51の間に配置されている。一方のパッキン60の貫通孔65が第1流出口31に対向している。また、他方のパッキン60の貫通孔65が第2流出口35に対向している。
【0043】
また、
図8及び
図9に示すように、パッキン60毎の一対の外側面62が、パッキン装着部41の対応する内側面42に対向している。この状態では、外側面62及び内側面42の間に摺動部69が介在する。従って、各外側面62は、各内側面42に対し摺動部69を介して間接的に接触した状態となる。この接触により、各パッキン60は、弁体50の回転方向へ動くことを規制される。
【0044】
パッキン60毎の第1シール部66が、第1流出口31又は第2流出口35の周囲において、パッキン装着部41の内壁面43に接触している。
また、低摩擦シート68のうち、パッキン本体部61の湾曲面64と、第2シール部67とに貼付けられた部分は、弁本体部51の外周面56に対し摺動可能に接触している。
【0045】
そして、上記のように内壁面43及び外周面56に接触した状態で、パッキン60が環状壁部23と弁本体部51との間で圧縮させられている。この圧縮に伴い、パッキン60には、弁本体部51を押し返す反力(圧縮反力F1)が生じている。上記圧縮反力F1によって、弁本体部51と環状壁部23との間がシールされる。
【0046】
ここで、パッキン本体部61及び第2シール部67がゴムによって形成されているのに対し、低摩擦シート68は、フッ素樹脂によって形成されている。フッ素樹脂の摩擦係数は、ゴムの摩擦係数よりも小さい。パッキン本体部61及び第2シール部67は、弁本体部51に対し、低摩擦シート68を介して間接的に接触している。そのため、低摩擦シート68が介在されず、パッキン本体部61及び第2シール部67が弁本体部51の外周面56に直接接触する場合に比べ、パッキン60と弁本体部51との間に生ずる摩擦力を小さくすることができる。その結果、弁体50を回転させるために必要なトルクを小さくすることができる。
【0047】
また、各摺動部69もフッ素樹脂によって形成されている。パッキン60毎の一対の摺動部69は、パッキン装着部41の対応する内側面42に対し、摺動可能に接触している。パッキン60毎の一対の外側面62は、摺動部69を介して内側面42に対し、間接的に摺動可能に接触している。
【0048】
そのため、摺動部69が介在されず、パッキン本体部61の外側面62とパッキン装着部41の内側面42とが直接接触する場合に比べ、それらの外側面62と内側面42との間に生ずる摩擦力が小さくなる。従って、摩擦力によって圧縮反力F1が弱められる程度が軽減される。これに伴い、パッキン60のシール力の低下が抑制される。
【0049】
シール力を確保するために、パッキン60を多く圧縮させなくてもよく、弁体50を回転させるためのトルクの増大を抑制することができる。小さなトルクで弁体50を回転させることができるため、回転のための機構部分に加わる負荷を小さくでき、ロータリバルブ10の製品寿命を長くできる。
【0050】
なお、第1流出口31又は第2流出口35が弁本体部51によって閉塞された状態では、パッキン60は、第2シール部67において、弁本体部51の外周面56に対し、押圧された状態で接触する。そのため、弁本体部51とパッキン本体部61との間に流体FLが入り込んでも、その流体FLは、弁本体部51の外周面56において第1シール部66及び第2シール部67によって囲まれた領域へ漏れ出しにくい。流体FLが、閉塞された第1流出口31から第1分岐流路12へ漏れ出る現象、又は閉塞された第2流出口35から第2分岐流路13へ漏れ出る現象を抑制することができる。
【0051】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・本実施形態では、元々、パッキン60と弁本体部51との間の摩擦力を小さくするために用いられるフッ素樹脂製の低摩擦シート68を利用して、パッキン本体部61の外側面62まで拡張している。この拡張した部分を外側面62に貼付けることで、同外側面62に固定された状態の摺動部69を形成することができる。
【0052】
また、表現を変えると、1枚のフッ素樹脂製の低摩擦シート68を用いることで、パッキン60と弁本体部51との間の摩擦力を小さくすることと、パッキン本体部61とパッキン装着部41との間の摩擦力を小さくすることの両者を実現できる。
【0053】
さらに、表現を変えると、パッキン本体部61の湾曲面64、第2シール部67及び貫通孔65の内壁面と、両外側面62とに一度にフッ素樹脂製の低摩擦シート68を固定することができる。
【0054】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0055】
<ハウジング21に関する事項>
・環状壁部23における流出口の数が1又は3以上に変更されてもよい。この流出口の数の変更に伴い、用いられるパッキン60の数も変更される。
【0056】
・流入口27は、ハウジング21において環状壁部23とは異なる箇所、例えば、閉塞部24に形成されてもよい。
・収容部26に面して開口する複数の流入口がハウジング21に設けられてもよい。
【0057】
・パッキン装着部41における内壁面43は、平面によって構成されてもよい。
<弁体50に関する事項>
・弁本体部51の外周面56における可動流路57の開口形状が、上記実施形態とは異なる形状に変更されてもよい。
【0058】
・弁本体部51は、円柱状に代えて球状に形成されてもよい。
<パッキン60に関する事項>
・パッキン本体部61、第1シール部66及び第2シール部67が、ゴムとは異なる弾性材料によって形成されてもよい。この場合、摺動部69は、上記弾性材料よりも摩擦係数の小さな材料によって形成される。
【0059】
・パッキン60における貫通孔65が円形とは異なる形状に形成されてもよい。
・第1シール部66及び第2シール部67の少なくとも一方は、貫通孔65の外形形状と異なる環状、例えば、楕円環状、多角環状等に形成されてもよい。
【0060】
<摺動部69に関する事項>
・各摺動部69が、パッキン本体部61の外側面62に代えて、又は加えてパッキン装着部41の内側面42に固定されてもよい。
【0061】
・各摺動部69がシートに代えて皮膜によって構成されてもよい。皮膜は、フッ素樹脂等の摩擦係数の低い材料をコーティングすることによって形成可能である。この場合にも、上記実施形態と同様の作用及び効果が得られる。
【0062】
・各摺動部69は、パッキン本体部61及び環状壁部23のうち、同摺動部69が固定される部材よりも摩擦係数が小さな材料であることを条件として、フッ素樹脂とは異なる材料によって形成されてもよい。
【0063】
・各摺動部69は、貼付けとは異なる手段によってパッキン本体部61又は環状壁部23に固定されてもよい。
・各パッキン本体部61の湾曲面64と、第2シール部67と、貫通孔65の内壁面とにおける低摩擦シート68とは別に、各摺動部69が設けられてもよい。
【0064】
<その他>
・各パッキン本体部61の湾曲面64と、第2シール部67と、貫通孔65の内壁面とにおけるフッ素樹脂製の低摩擦シート68が省略されてもよい。
【0065】
・第1流出口31及び第2流出口35に代えて、又は加えて流入口27が特定開口とされてもよい。この場合、環状壁部23は、軸線L1に沿って延びる内側面42を有するパッキン装着部41を、流入口27の周りに備える。そして、パッキン60は、パッキン本体部61の貫通孔65を流入口27に対向させ、かつ外側面62を内側面42に対向させた状態でパッキン装着部41に装着される。外側面62及び内側面42の間には、パッキン本体部61及び環状壁部23の一方に固定され、かつ他方に摺動可能に接触する摺動部69が設けられる。
【0066】
・上記ロータリバルブ10は、流体として、水とは異なる種類の液体が流される流路に設けられるロータリバルブや、流体として液体に代えて気体が流される流路に設けられるロータリバルブにも適用可能である。
【符号の説明】
【0067】
10…ロータリバルブ
21…ハウジング
23…環状壁部
26…収容部
27…流入口
31…第1流出口(流出口、特定開口)
35…第2流出口(流出口、特定開口)
41…パッキン装着部
42…内側面
50…弁体
51…弁本体部
57…可動流路
58,59…軸
60…パッキン
61…パッキン本体部
62…外側面
65…貫通孔
68…低摩擦シート
69…摺動部
FL…流体
L1…軸線