(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】シアニンベースをベースとするテロデンドリマー及び癌治療のための使用
(51)【国際特許分類】
C08G 69/48 20060101AFI20250116BHJP
C08G 65/333 20060101ALI20250116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250116BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20250116BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20250116BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20250116BHJP
A61K 41/17 20200101ALI20250116BHJP
A61K 51/12 20060101ALI20250116BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20250116BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20250116BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20250116BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20250116BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20250116BHJP
A61K 31/403 20060101ALN20250116BHJP
【FI】
C08G69/48
C08G65/333
A61P35/00
A61P35/02
A61K31/4745
A61P35/04
A61K41/17
A61K51/12 100
A61K31/704
A61K39/395 N
A61K47/60
A61K9/14
A61K9/51
A61K31/403
(21)【出願番号】P 2021510652
(86)(22)【出願日】2019-08-30
(86)【国際出願番号】 US2019049080
(87)【国際公開番号】W WO2020047418
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2018-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100203828
【氏名又は名称】喜多村 久美
(72)【発明者】
【氏名】キット エス.ラム
(72)【発明者】
【氏名】チャン ルー
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-511222(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105816877(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G69
C08G65
A61P
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
(上式中、PEGは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、前記PEGポリマーは分子量が1~100kDaであり、
各Xは枝分かれモノマー単位であり、
各R
1は独立してコール酸又はコール酸誘導体であり、そして
各R
2は独立してシアニンである)
の化合物。
【請求項2】
Xはジアミノカルボン酸である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
各ジアミノカルボン酸は、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リジン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸及び5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸からなる群より独立して選ばれる、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
各ジアミノカルボン酸はリジンである、請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
各R
1は、独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)又は(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH
2)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項6】
各R
1はコール酸である、請求項1~5のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項7】
各R
2は、独立して、シアニン3、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、シアニン7.5、インドシアニングリーン、又は、構造(S1):
【化2】
を有するインドシアニングリーン誘導体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項8】
各R
2は構造(S1)を有するシアニンである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記PEGは分子量が5kDaであり、
各Xはリジンであり、
各R
1はコール酸であり、そして
各R
2は構造(S1)を有するシアニンである、請求項7又は8に記載の化合物。
【請求項10】
複数の第一のコンジュゲートを含むナノ粒子であって、各第一のコンジュゲートは、独立して、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物であり、
前記複数のコンジュゲートは、水性溶媒中で自己集合してナノ粒子を形成し、その結果、疎水性コアがナノ粒子の内部に形成され、ここで、各コンジュゲートのPEGはナノ粒子の外部上で自己集合する、ナノ粒子。
【請求項11】
複数の第二のコンジュゲートをさらに含み、各第二のコンジュゲートは、独立して、式(II):
【化3】
(上式中、PEGはポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、前記PEGポリマーは分子量が1~100kDaであり、
各Xは枝分かれモノマー単位であり、
各Yはチオール含有架橋性基であり、
各Lは連結基であり、そして
各R
1は独立してコール酸又はコール酸誘導体である)の化合物である、請求項10に記載のナノ粒子。
【請求項12】
各第一のコンジュゲートは請求項9に記載の化合物である、請求項10~11のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項13】
各第二のコンジュゲートは式(II)の化合物であり、式中、
前記PEGは分子量が5kDaであり、
各Xはリジンであり、
各Yはシステインであり、
各Lは、下記式:
【化4】
を有する連結基であり、そして、
各R
1はコール酸である、請求項11又は12に記載のナノ粒子。
【請求項14】
式(II)のコンジュゲートは、チオール含有架橋性基を介して架橋されている、請求項11~13のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項15】
式(I)及び式(II)のコンジュゲートは約1:1(w/w)の比である、請求項11~14のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項16】
前記ナノ粒子の平均直径は約20nmである、請求項15に記載のナノ粒子。
【請求項17】
前記疎水性コア中に治療薬をさらに含む、請求項10~16のいずれか1項に記載のナノ粒子。
【請求項18】
前記治療薬はガルジキモド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、SN-38、イミキモド、レシキモド、モトリモド、レナリドミド、ポマリドミド、及び、構造(S2):
【化5】
を有するLLS30からなる群より選ばれる、請求項17に記載のナノ粒子。
【請求項19】
疾患を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項10~18のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、医薬組成物。
【請求項20】
前記疾患は癌である、請求項19に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記疾患は、乳癌、口腔癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、膀胱癌、脳癌、黒色腫、骨髄腫、白血病、結腸癌、前立腺癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部癌、リンパ腫又は転移性癌である、請求項19又は20に記載の医薬組成物。
【請求項22】
前記疎水性コア中に治療薬をさらに含み、前記治療薬はドキソルビシン、ガルジキモド及びイミキモドからなる群より選ばれる、請求項19~21のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記治療薬はイミキモドであり、チェックポイント遮断抗体と組み合わせて使用するための、請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記チェックポイント遮断抗体は抗PD-1、抗PDL1又は抗CTLA-4である、請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記チェックポイント遮断抗体は抗PD-1である、請求項23又は24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
それを必要とする対象において光熱療法を介して疾患を治療するための医薬組成物であって、治療有効量の請求項10~18の
いずれか1項に記載のナノ粒子を含み、前記対象を放射線に曝露する前に使用され、それにより光熱療法を介して疾患を治療する医薬組成物。
【請求項27】
前記対象は近赤外線光照射に暴露される、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記疾患は癌である、請求項26又は27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
前記疾患は、乳癌、口腔癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、膀胱癌、脳癌、黒色腫、骨髄腫、白血病、結腸癌、前立腺癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部癌、リンパ腫又は転移性癌である、請求項26~28のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項30】
前記疎水性コア中に治療薬をさらに含み、前記治療薬はドキソルビシン、ガルジキモド及びイミキモドからなる群より選ばれる、請求項26~29のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項31】
前記治療薬はイミキモドであり、注射を介した抗PD-1の投与と組み合わせて使用するための、請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
病変組織を患っている対象を治療する方法に使用するための医薬組成物であって、前記医薬組成物は、有効量の請求項10~18のいずれか1項のナノ粒子を含み、前記方法は、
ナノ粒子が前記病変組織に集中するように、前記医薬組成物を対象に対して投与すること、
前記病変組織を特定するために、前記病変組織に第一の波長で照射すること、及び、
前記対象から前記病変組織を除去し、それによって前記対象を治療すること、
を含む、医薬組成物。
【請求項33】
前記方法が、前記投与工程の少なくとも3時間後に照射工程を遅らせることをさらに含む、請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
前記方法が、前記対象における任意の残存病変組織を第二の波長で照射することをさらに含む、請求項32又は33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
前記除去及び両方の照射工程は前記対象に対する単一の操作中に実施される、請求
項34に記載の医薬組成物。
【請求項36】
前記第一の波長及び第二の波長は近赤外スペクトルにある、請求項34に記載の医薬組成物。
【請求項37】
前記病変組織は癌である、請求項32~36のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項38】
前記病変組織は、乳癌、口腔癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、膀胱癌、脳癌、黒色腫、骨髄腫、白血病、結腸癌、前立腺癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部癌、リンパ腫又は転移性癌である、請求項32~37のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項39】
前記病変組織は卵巣癌である、請求項32~38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項40】
撮像方法に使用するための組成物であって、
有効量の請求項10~18のいずれか1項に記載のナノ粒子を含む、組成物。
【請求項41】
請求項10~18のいずれか1項に記載のナノ粒子を調製する方法であって、
複数の第一のコンジュゲート及び水溶液を含む反応混合物を形成することを含み、前記複数の第一のコンジュゲートのそれぞれは、請求項1~9のいずれか1項に記載の化合物であり、前記コンジュゲートは自己集合してナノ粒子を形成し、その結果、疎水性コアが前記ナノ粒子の内部に形成され、ここで、各コンジュゲートのPEGは前記ナノ粒子の外部上で自己集合する、方法。
【請求項42】
前記反応混合物は、式(II):
【化6】
(上式中、PEGはポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、前記PEGポリマーは分子量が1~100kDaであり、
各Xは枝分かれモノマー単位であり、
各Yはチオール含有架橋性基であり、
各Lは連結基であり、そして
各R
1は独立してコール酸又はコール酸誘導体である)の、複数の第二のコンジュゲートをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記水溶液はPBSを含み、前記方法は、前記反応混合物を約10分間超音波処理することをさらに含む、請求項41又は42に記載の方法。
【請求項44】
式(I)及び式(II)のコンジュゲートは約1:1(w/w)の比率で添加される、請求項42又は43に記載の方法。
【請求項45】
式(II)中、各Yはシステインであり、架橋結合がシステインの酸化を介して形成される、請求項42~44のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年8月31日に出願された米国仮出願第62/725,540号の優先権を主張し、その内容の全体を参照により本明細書に取り込む。
【0002】
連邦政府が後援する研究開発下で行われた発明に対する権利に関する声明
本発明は、国立衛生研究所(NIH)によって授与された助成金番号2R01CA115483-06、R01EB012569及びUJ01CA198880の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明において特定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景s
強力で制御可能な光学特性を有する近赤外光熱変換剤(PTCA)は、バイオセンシング、バイオイメージング及び治療用途のための有望な薬剤として出現した。PTCAを使用した光トリガー光熱療法(Light-triggered photothermal therapy)(PTT)は、局所癌治療に幾つかの治療上の利点を示している。これらとしては、高い空間分解能、改善された標的選択性、低から中程度の有害な副作用、手術を必要としない非侵襲性、迅速で効果的な治療、無視できる薬剤耐性及び比較的低コストが挙げられる。
【0004】
今日まで、PTTのための多くの近赤外PTCAは、ポルフィリン、フタロシアニン、クロリンe6(Ce6)、金ベースのナノ材料、カーボンナノチューブ及びグラフェン酸化物などの薬剤を使用して、様々な腫瘍モデルで調査されてきた。幾つかの従来のシアニン染料はまた、診療所での光媒介生物医学的応用のための中間体として使用されてきた。例えば、米国食品医薬品局(FDA)によって承認された唯一の近赤外線剤であるインドシアニングリーン(ICG)は、心拍出量、肝機能及び血流を測定するために、また、眼血管造影において、臨床翻訳及び実用化のために有機小分子色素を使用する可能性を強調する光学コントラストとして臨床的に広く使用されている。しかしながら、これらのPTCAの大部分は、PTT臨床翻訳において依然として重大な課題に直面している。これらとしては、低い生体適合性(無機ナノ剤など)、低い光熱変換効率、及び、固有の低い安定性(インビボでの腎臓又は肝臓からの急速なクリアランス、及び、小分子色素などの光退色に対する低い耐性)が挙げられる。光熱変換効率を改善するための最も重要な前提条件は、標的組織での光吸収を増加させ、非熱エネルギーの形でエネルギーを放出する励起光変換剤を制限することである。近赤外光ははるかに深い組織に侵入し、血液及び組織への干渉を制限し、正常組織への光損傷を減らし、光子組織の減衰を抑えることができるため、近赤外調査ウィンドウ(>800nm)に強い吸収性を有する効率的なPTCAが好ましい。光熱変換効率を高めるための追加の方策は、標的腫瘍部位でのPTCAのギャザー密度/構造及び光吸収断面積を増やすことである。
【0005】
生体適合性光熱ナノ材料を使用して、ポルフィリン、Ce6又はICGなどの有機小分子を物理的にカプセル化して、これらの小分子色素の薬物動態及び腫瘍標的化効率を改善することに関する多くの最近の報告がある。しかしながら、このクラスの光熱材料の光熱変換効率は、励起波長が短いため(例えば、ポルフィリン又はCe6の場合は650nm)、したがって、組織への侵入及び循環リークが少ないために低くなる。ポリマー及び高分子ベースのPTCAは、一般に、有機小分子PTCA又はそれらのナノ製剤よりも優れた光安定性を備えており、特にPTCAがナノ粒子(NP)に自己集合した後はより安定している。これらの結果として生じるナノ構造は、循環リーク及び腎臓又は肝臓からの急速なクリアランスをある程度回避する。過去10年間において、ビルディングブロックとして線形PEG及び樹枝状コール酸をベースとする両親媒性ポリマー(別名テロデンドリマー)を含む25~50nmのミセルナノプラットフォームは開発された。数年前、コール酸及びポルフィリンを含むハイブリッドテロデンドリマーの開発が報告され、これは、自己集合して、好ましい光熱特性を備えたミセルナノポルフィリンを形成することができる。
【0006】
一般に、PTTの用途は、光照射にアクセス可能な限局性腫瘍の治療に限定されている。また、PTTは、手術中に患者の腫瘍部位が露出されたときに腫瘍床を治療するために術中に使用される可能性もある。PTTと組み合わせた同時化学療法は潜在的に相乗性がある可能性がある。転移性腫瘍に関して、腫瘍部位での局所的な光熱効果が全身性の抗腫瘍免疫応答を活性化する可能性があるため、PTTは免疫療法と組み合わせて与えられると有用である可能性がある。チェックポイント遮断抗体で治療された一部の患者では、耐久性のある臨床反応が見られた。免疫チェックポイントとしてプログラムされた細胞死タンパク質1(PD-1)は、リンパ節の抗原特異的T細胞のアポトーシスを促進すると同時に、制御性T細胞のアポトーシスを減少させるという二重のメカニズムを通じて自己免疫からガードすることはよく知られている。PD-1チェックポイント方策を目的とした免疫療法は、遠位転移腫瘍に対する有望な治療アプローチと考えられる。有望ではあるが、PD-1チェックポイント遮断ベースの免疫療法は制限された応答速度(約20%)を有し、腫瘍にT細胞が事前に浸潤している患者にのみ効果がある。したがって、免疫療法を他の効率的な治療アプローチと組み合わせた相乗的治療戦略は癌治療の現在の傾向となってきた。最近の研究により、PTTは、アポトーシス及び壊死を誘発することにより、レーザー照射時に腫瘍細胞を直接殺すことができるだけでなく、切除された腫瘍細胞残留物から腫瘍関連剤を生成することにより、全身免疫療法効果を改善するための抗腫瘍免疫応答を生成できることが発見された。このような効果は、予備的な臨床試験研究でも観察されてきた。
【0007】
本明細書では、癌治療のための高性能PTCA及び制御デリバリーシステムとしての新規なテロデンドリマーをベースとする光熱ナノ粒子が報告されている。同所性OSC-3口腔癌異種移植片及び転移性4T1同系乳癌モデルを研究して、PTT/化学療法及びPTT/免疫療法の組み合わせによる相乗効果をそれぞれ評価した(
図1)。この光熱ナノ粒子は、線形PEGブロック(Mr≒5000)、4つの樹枝状疎水性光熱変換剤(インドシアニングリーン誘導体、ICGD)及び4つの樹枝状コール酸(CA)である顔用両親媒性物質を含む新しいタイプのハイブリッドテロデンドリマー(PEG
5K-CA
4-ICGD
4、PCI)に由来する。ナノ粒子の安定性及び熱変換効率をさらに高めるために、PEG、4つのシステイン、8つの親水性リンカー及び8つのコール酸を含む別のテロデンドリマー(PEG
5K-Cys
4-L
8-CA
8、PCLC)をPCIに1:1の比率で添加し、そしてミセルを形成するために中性環境の下で一緒に組織化させた。最終的なジスルフィド架橋ミセルナノシステム(CPCI-NP)(
図2a)は、理想的なより小さなサイズ、より長いインビボ循環時間、優先的な腫瘍ターゲティング及びより深い腫瘍侵入を備えた。腫瘍反応を増強するために、ドキソルビシンをナノシステムに組み込み、同所性OSC-3口腔癌異種移植モデルに対する光熱/化学療法の組み合わせを評価した。さらに、強力な免疫アゴニストであるイミキモドを装填したCPCIナノプラットフォームを、4T1同系乳癌モデルに対する強力な光免疫療法としてPD-1チェックポイント抗体と組み合わせて適用することを検討した。
【発明の概要】
【0008】
発明の簡単な要約
1つの実施形態において、本発明は、式(I):
【化1】
(上式中、PEGはポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、各PEGポリマーは分子量が1~100kDaであり、各Xは枝分かれモノマー単位であり、各R
1は独立してコール酸又はコール酸誘導体であり、各R
2は独立してシアニンである)の化合物を提供する。
【0009】
別の実施形態において、本発明は、複数の第一のコンジュゲートを含むナノ粒子を提供し、ここで、各第一のコンジュゲートは、独立して、本明細書に記載の式(I)の化合物であり、複数のコンジュゲートは、水性溶媒中で自己集合してナノ粒子を形成し、その結果、疎水性コアはナノ粒子の内部に形成され、各コンジュゲートのPEGはナノ粒子の外部上で自己集合する。
【0010】
別の実施形態において、本発明は、疾患を治療する方法を提供し、この方法は、それを必要とする対象に対して、治療有効量の本発明のナノ粒子を投与することを含む。
【0011】
別の実施形態において、本発明は、光熱療法を介して疾患を治療する方法を提供し、この方法は、それを必要とする対象に対して、治療有効量の本発明のナノ粒子を投与し、前記対象を放射線に暴露して、それによって光熱療法を介して疾患を治療することを含む。
【0012】
別の実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、この方法は、ナノ粒子が病変組織に集中するように、対象に対して有効量の本発明のナノ粒子を投与すること、病変組織を特定するために、病変組織を第一の波長で照射すること、及び、対象から病変組織を除去し、それによって対象を治療することを含む。
【0013】
別の実施形態において、本発明は、撮像方法を提供し、この方法は、それを必要とする対象に対して、有効量の本発明のナノ粒子を投与すること、及び、対象を撮像することを含む。
【0014】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のとおりの式(I)の複数の第一のコンジュゲートを含む反応混合物を形成することを含む、本発明のナノ粒子を調製する方法を提供し、コンジュゲートは、疎水性コアがナノ粒子の内部に形成されるようにナノ粒子を形成するように自己集合させ、各コンジュゲートのPEGはナノ粒子の外部上で自己集合する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、高性能光熱療法ナノメディシン(CPIC NP)を上皮内口腔癌に対して化学療法と組み合わせ、転移性乳癌に対して免疫療法と組み合わせることの概略図を示す。
【
図2】
図2は、PCINP及びCPIN NPの設計及び特性化を示す。(a)PCINP及びCPCINPの自己集合の概略図、(b)メタノール中のICGD分子及びPCIテロデンドリマーのUV-vis-NIR吸収スペクトル、(c)PCI NP及び(d)CPCI NPのPBS溶液(ホスホタングステン酸で染色、テロデンドリマー濃度:1 mg mL
-1)のDLS及びTEMイメージング、(e)SDSでのPCINP及びCPCINPの120分間の連続動的光散乱測定、その後GSH(10mM)を添加、(f)808nmで300秒間のレーザー照射下でのCPCINP、PCI NP及びGNRの光熱変換挙動の比較(ICGD濃度:30μg mL
-1、GNR濃度:18μg mL
-1)、(g)5回の加熱-冷却プロセス中のPBS溶液中のCPCI NP、PCI NP及びICGの光退色防止特性(ICGD及びICG濃度:30μg mL
-1)。
【
図3】
図3は、高い光熱変換効率を有するCPIN NPのメカニズム分析を示している。 735/20nmの励起バンドパスフィルタを使用した、SDS又はGSH+SDSの非存在下及び異なる濃度のSDS又はGSH+SDSの存在下での(a)PCI NP及び(b)CPCI NP溶液(10 μL)の近赤外蛍光イメージング。PCI NP(c)&(e)及びCPCI NP(d)&(f)の熱画像及び定量的温度変化曲線。結果を平均±s.d(n=3)として表した。NIRレーザー(808nm)を0.8Wcm
-2で20秒間照射した後、サーマルカメラで温度をモニターした。(g)類似の機器及び(h)侵入深さ及び熱効果を調査するための808nm(0.8Wcm
-2で30秒間)のレーザー照射下でのCPCINP及びPCLC/TBAI&ICGNPの温度変化。
【
図4】
図4は、インビトロでのCPCI/DOX NPの特性化、及び、OSC-3口腔癌細胞に対するCPCI/DOX NP+808nmレーザーの相乗的細胞毒性を示している。(a)CPCI/DOXNPの自己集合及びCPCI/DOXNPからのDOX放出の概略図、(b)10%FBSを含む/含まないpH7.4のPBS溶液中のCPCI/DOX NPの血清安定性を動的光散乱法で測定した(インキュベーション温度:37℃;データは平均±s.d.、n=3)、(c)DOX蛍光強度の変化及び(d)PBS、GSH(10mM)及び808 nmレーザー(0.8Wcm
-2、2分、3回)+GSH(10mM)でのCPCI/DOXNP水溶液のインビトロの定量的DOX放出(DOX濃度:0.05 mg mL
-1;データは3つの並行サンプルの平均±s.d.)、(e)OSC-3口腔癌細胞株におけるDOX(赤)を装填したCPCI NP(緑)の取り込み。細胞をヘキスト33342(青)で30分間前処理して核を染色した後に、PBS中のCPCI/DOXNPとともにインキュベートした。Deltavisionデコンボリューション顕微鏡(スケールバー=5μm)を使用して6時間後に画像を取得した。(f)NIRレーザー照射(0.8Wcm
-2、2分)を用い又は用いずにCPCI NPとともにインキュベートしたOSC-3口腔細胞の生存率(n=3)、(g)細胞生存率及び(h)異なる処理後のOSC-3口腔細胞のDiO/PIによる生/死染色:CPCI NP、808nmレーザー照射、遊離DOX、CPCI/DOX NP、808nmレーザー照射とともにCPCINP、50 μgmL
-1のCPCINP濃度で808nmレーザー照射とともにCPCI/DOXNP、スケールバー=25μm、(i)相乗的治療効果及び(j)OSC-3口腔細胞治療のためのDOX及びCPCINP+レーザーの間の組み合わせ指数。
【
図5】
図5は、インビボでのCPCI/DOX NP腫瘍画像を示す。(a)CPCI NP、PCLC/TBAI&ICG NP及び遊離ICGの5mg kg
-1体重の用量でのインビボ血液除去動態(各群でn=3)。結果は平均±s.d.として表された。(b)尾静脈注射後の異なる時点での腫瘍蓄積を示すICGD蛍光画像及び(c)CPCI/DOX NPの静脈内注射(DOX用量:2.5 mg kg
-1;総テロデンドリマー用量:50mgkg
-1; ICGD用量:7 mgkg
-1)の後のGFPによって標識された上皮内OSC-3口腔癌を有するヌードマウスの代表的なインビボ画像。赤い矢印は腫瘍部位を指している。(d)同じ動物から注射後48時間で切除された臓器及び腫瘍の代表的なエクスビボICGD蛍光画像、(e)レーザー走査型共焦点顕微鏡によって観察された注射後48時間でのOSC-3腫瘍組織におけるCPCI/DOXNPの分布の画像。赤:DOX;緑:ICGD、(f)CPCI/DOXNPの注射後48時間での臓器及び腫瘍内のICGDの蛍光シグナル強度、(g)誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS、Agilent Techologies, 7500ce)により測定された、CPCI/DOXNPの注射後24時間、48時間及び5日での上皮内OSC-3口腔癌の臓器及び腫瘍組織におけるDOX分布、各時点の実験で3匹のマウスを使用した。マウスは、DOX 2.5 mgkg
-1の用量でCPCI/DOXNPを受けた。結果は平均±s.d.として表された。
【
図6】
図6は、上皮内OSC-3口腔癌を有するマウスにおけるPTT/化学療法の相乗的抗腫瘍活性を示している。(a)IR熱画像及び(b)PBS、PCI NP、CPCI NP又はCPCI/DOX NP(n=3)の全身投与後24時間での808nmレーザー照射(0.8Wcm
-2)下でのOSC-3を有するマウスの平均腫瘍温度、(c)上皮内口腔腫瘍増殖を阻害するためのCPCI/DOXNPをベースとするPTT及び化学療法の概略図、(d)上皮内OSC-3口腔腫瘍を有するマウス(1群あたり5匹のマウス)の腫瘍増殖曲線、(e)CPCI/DOXNP+808nmレーザーで治療した群の腫瘍体積変化の代表的な写真、(f)異なる治療の後の28日目の腫瘍スライスの組織学的H&E染色を示す(スケールバー= 100 μm×100の図及びスケールバー=25μm×400の図)。DOXの用量:2.5mg kg
-1及びICGD:7 mgkg
-1。dにおける*P値は、他の群を最後の群(CPCI/DOX NP +808 nmレーザー)と比較することにより、Tukeyの事後検定(*P<0.05)によって計算された。データは平均±s.d.として表される。
【
図7-1】
図7は、上皮内4T1乳癌(両側)を有するマウスを有するマウスにおける光熱/免疫療法の相乗的な抗腫瘍活性を示している。(a)α-PD-1療法と組み合わせたCPCI/イミキモドNPによって誘発される抗腫瘍免疫応答の提案されたメカニズムの概略図。(b)CPCINPへのイミキモドのカプセル化効率及びCPCI/イミキモドNPのサイズ変化対薬物装填レベル。カプセル化効率は、ナノ粒子に装填された薬物の、初期の薬物含有量に対する比率として定義される。最終溶液の体積は1mLに維持され、テロデンドリマーの最終濃度は20mgmL
-1であった。(c)原発部位及び遠隔部位での腫瘍増殖を阻害するための光熱/免疫療法の相乗的治療効果の概略図。
【
図7-2】4T1腫瘍の皮下接種(イムキモドの用量:1.25 mgkg
-1、総テロデンドリマー:50 mgkg
-1及びICGD:7 mg kg
-1、2日目及び8日目にマウスあたり200μgの抗PD-1の腹腔内注射)を用いた異なる群のマウス(群あたり6匹のマウス)の(d)原発腫瘍及び(e)遠隔腫瘍増殖曲線。群5(CPCI/イミキモドNP +α-PD-1)を群7(CPCI/イミキモドNP+808 nmレーザー+α-PD-1)と比較することによりdにおいて*P<0.05、群5(CPCI/イミキモドNP +α-PD-1)を群7(CPCI/NP+808nmレーザー+α-PD-1)と比較しそして群4(CPCI/イミキモドNP)を群3(CPCI/イミキモドNP+808nmレーザー)と比較することによりeにおいて*P<0.05。(f)CPCI/イミキモドNP+808nmレーザー+α-PD-1で治療したマウスの腫瘍体積変化の代表的な写真。赤丸及び青丸は、それぞれ原発腫瘍及び遠隔腫瘍を示している。
【
図7-3】(g)示された様々な治療の後にマウスから回収されたH&E染色された腫瘍スライス(スケールバー=25μm)、(h)RT-qPCRによって評価された両側の腫瘍組織における異なる治療によるCD11b、IFN―γ、TNF―α、IL―4、IL―6及びIL―12の発現(平均±s.d.; n = 3)、(i)異なる治療で回収された両側の腫瘍組織におけるCD8
+、PD-1、CD3
+及びCD4
+T細胞のIHC染色、スケールバーは25μmである。
【
図8】
図8は、相乗的な光熱/免疫療法の免疫記憶効果を示している。(a)原発部位及び遠隔部位での癌の再発を阻害することによる免疫記憶の概略図、最初の腫瘍を除去してから50日後に接種した再チャレンジ腫瘍の(b)原発腫瘍及び(c)遠隔腫瘍増殖曲線(67日目及び73日目にマウスあたり200μgのα-PD-1の腹腔内注射)。
【
図9】
図9は、多段階化学反応によるICGDの合成アプローチを示している。
【
図10】
図10は、ICGD分子の特性化を示している。(a)化学構造、(b)CDCl3における
1H NMRスペクトル、(c)ESI質量分析測定によるICGD分子の質量スペクトル。
【
図11】
図11は、PCIテロデンドリマーの特性化を示している。(a)化学構造、(b)概略図、(c)MALDI-TOF質量分析測定によるPCIテロデンドリマーの質量スペクトル。
【
図12】
図12は、PCLCテロデンドリマーの特性化を示している。(a)化学構造、(b)概略図、(c)MALDI-TOF質量分析測定によるPCLCテロデンドリマーの質量スペクトル。
【
図13】
図13は、(a)メタノール中のICGD及びPCIテロデンドリマーの蛍光スペクトルを示す。(b)メタノール中のICGD及びPCIテロデンドリマー及びPBS中のPCI NPのUV-vis-NIR吸収スペクトル(ICGD濃度:30μgmL
-1)。 (c)PBS及びSDS中のPCI NPからのICGDの蛍光スペクトル(PCIテロデンドリマー濃度:0.1mgmL
-1)。(d)PBS、SDS、GSH及びGSH+SDS中のCPCINPからのICGDの蛍光スペクトル(PCIテロデンドリマー濃度:0.1mgmL
-1)。
【
図14】
図14は、(a)CPCI NPへのDOXのカプセル化効率、及び、CPCI/DOX NPのサイズ変化対薬物装填レベルを示している。カプセル化効率は、ナノ粒子に装填された薬物の、初期の薬物含有量に対する比率として定義される。最終溶液の体積は1mLに維持され、テロデンドリマーの最終濃度は20mg/mLであった。(b)PBS溶液中のCPCINP及びCPCI/DOX NPの概略図及び代表的な写真(総テロデンドリマー濃度:20mgmL
-1; DOX濃度:1mgmL
-1)。
【
図15】
図15は、3つの異なる濃度のCPCINPを静脈内注射した健康なBalb/cマウスの24時間及び72時間の白血球(WBC)、リンパ球、好酸球、赤血球分布幅(RDW)、血小板及び平均血小板量(MPV)に関する血液検査パラメータを示している。
【
図16】
図16は、24時間及び72時間の3つの異なる濃度のCPCINPを静脈内注射した健康なBalb/cマウスの肝機能アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルブミン、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、血中尿素窒素、クレアチニン、ビリルビン、総タンパク質、コレステロール、高密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質及びトリグリセリドに関する血液検査パラメータを示す。
【
図17】
図17は、様々な細胞培養条件でのアネキシンV-FITC及びPIフローサイトメトリーアッセイを使用したアポトーシスOSC-3口腔細胞の検出を示す。Q1:壊死細胞、Q2:後期アポトーシス細胞、Q3:正常な生細胞、Q4:初期アポトーシス細胞。DOX用量:0.005 mgmL
-1; 808 nmレーザー照射:0.8Wcm
-2、2分。
【
図18】
図18は、3日間隔で尾静脈を介して異なる治療製剤を受ける上皮内OSC-3口腔癌を有する実験マウスの体重曲線を示す(n=5; DOX用量:2.5mgkg
-1及びICGD用量:7mgkg
-1;データは3つの並列サンプルの平均±標準誤差であった)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
I.定義
特に明記しない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、本明細書に記載の方法又は材料と類似又は同等の任意の方法又は材料を、本発明の実施において使用することができる。本発明の目的のために、以下の用語が定義される。
【0017】
本明細書で使用される「A」、「an」又は「the」は、1つの要素を有する態様を含むだけでなく、複数の要素を含む態様も含む。例えば、単数形の「a」、「an」及び「the」には、文脈で明確に別のことが指示されていない限り、複数の指示対象が含まれる。したがって、例えば、「細胞」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「薬剤」への言及は、当業者に知られている1つ以上の薬剤への言及などを含む。
【0018】
本明細書で使用されるときに、「デンドリマー」及び「樹枝状ポリマー」という用語は、焦点、複数の枝分かれモノマー単位及び複数の末端基を含む枝分かれポリマーを指す。モノマーは互いに結合して、焦点から延在して、末端基で終わるアーム(又は「デンドロン」)を形成する。デンドリマーの焦点は、本発明の化合物の他のセグメントに結合されることができ、末端基は、追加の化学部分でさらに官能化されうる。
【0019】
本明細書で使用されるときに、「テロデンドリマー(telodendrimer)」という用語は、親水性PEGセグメント及びデンドリマーの1つ以上の末端基に共有結合された1つ以上の化学部分を含むデンドリマーを指す。これらの部分としては、限定するわけではないが、疎水性基、親水性基、両親媒性化合物及び有機部分が挙げられる。直交保護基戦略を使用して、異なる部分を目的の末端基に選択的に設置することができる。
【0020】
本明細書で使用されるときに、「モノマー」、「モノマー単位」又は「枝分かれモノマー単位」という用語は、ジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸又はヒドロキシルアミノカルボン酸を指す。本発明のジアミノカルボン酸基の例としては、限定するわけではないが、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リシン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸及び5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸が挙げられる。本発明のジヒドロキシカルボン酸基の例としては、限定するわけではないが、グリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、グリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸及び2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸が挙げられる。ヒドロキシルアミノカルボン酸の例としては、限定するわけではないが、セリン及びホモセリンが挙げられる。当業者は、他のモノマー単位が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0021】
本明細書で使用されるときに、「アミノ酸」という用語は、アミン官能基を有するカルボン酸を指す。アミノ酸としては、上記のジアミノカルボン酸が挙げられる。アミノ酸としては、天然に存在するα-アミノ酸が挙げられ、アミンは、カルボン酸のカルボニル炭素に隣接する炭素に結合している。天然に存在するα-アミノ酸の例としては、限定するわけではないが、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸、L-ヒスチジン、L-リジン及びL-アルギニンが挙げられる。アミノ酸としてはまた、天然に存在するα-アミノ酸のD-エナンチオマー、ならびにβ-アミノ酸及び他の天然に存在しないアミノ酸を挙げることができる。
【0022】
本明細書で使用されるときに、「コール酸」という用語は、(R)-4-((3R,5S,7R,8R,9S,10S,12S,13R,14S,17R)-3,7,12-トリヒドロキシ-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロプ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)ペンタン酸を指す。コール酸は3α,7α,12α-トリヒドロキシ-5β-コラン酸、3-α,7-α,12-α-トリヒドロキシ-5-コラン-24-酸、17-β-(1-メチル-3-カルボキシプロピル)エチオコラン-3α,7α,12α-トリオール、コール酸(Cholalic acid)及びコラリンとしても知られている。アロコール酸、ピトコール酸、アビコール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸などのコール酸誘導体及び類似体もまた、本発明において有用である。コール酸誘導体は、ミセルの安定性及び膜の活性など、テロデンドリマー集合体から生じるナノキャリアの特性を調節するように設計できる。例えば、コール酸誘導体は、1つ以上のグリセロール基、アミノプロパンジオール基又は他の基で修飾された親水性面を有することができる。
【0023】
本明細書で使用されるときに、「シアニン」という用語は、ポリメチン基に属する合成色素ファミリーを指す。シアニンは、生物医学イメージング用の蛍光色素として使用できる。シアニンは、ストレプトシアニン(開鎖シアニンとしても知られている)、ヘミシアニン及び閉鎖シアニンであることができる。閉鎖シアニンは、それぞれ独立してヘテロ芳香族部分の一部である窒素を有する。
【0024】
本明細書で使用されるときに、「ナノ粒子」又は「ナノキャリア」という用語は、本発明のデンドリマーコンジュゲートの凝集から生じるミセルを指す。ナノキャリアは、疎水性コア及び親水性外部を有する。
【0025】
本明細書で使用されるときに、「両親媒性化合物」という用語は、疎水性部分及び親水性部分の両方を有する化合物を指す。例えば、本発明の両親媒性化合物は、化合物の1つの親水性面及び化合物の1つの疎水性面を有することができる。本発明において有用な両親媒性化合物としては、限定するわけではないが、コール酸ならびにコール酸類似体及び誘導体が挙げられる。
【0026】
本明細書で使用されるときに、「架橋可能基(crosslinkable group)」又は「架橋性基(crosslinking group)」という用語は、別の分子上の類似又は相補的基に結合することができる官能基、例えば、第二の樹枝状ポリマー上の第二の架橋可能基に連結する第一の樹枝状ポリマー上の第一の架橋可能基を指す。「チオール含有架橋性基」とは、硫黄原子を含む架橋性基を指す。デンドリマーの内部に組み込まれるときに、本発明において架橋可能基及び架橋性基として適切な基としては、システインなどのチオール、ボロン酸、及び、カテコールなどの1,2-ジヒドロキシベンゼンを含む1,2-ジオールが挙げられる。デンドリマーの1つ以上の末端基に組み込まれるときに、本発明において架橋可能基及び架橋性基として適切な基としては、システイン及びN-アセチルシステインなどのチオールが挙げられる。架橋可能基及び架橋性基が結合すると、それらはジスルフィド及びボロン酸エステルなどの架橋結合を形成する。他の架橋可能基及び架橋性基は本発明において適切である。
【0027】
本明細書で使用されるときに、「連結基(linking group)」という用語は、デンドリマーコンジュゲートの1つのセグメントを別のセグメントに連結する化学部分を指す。リンカーをデンドリマーのセグメントに連結するために使用される結合のタイプとしては、限定するわけではないが、アミド、アミン、エステル、カルバメート、尿素、チオエーテル、チオカルバメート、チオカーボネート及びチオ尿素が挙げられる。当業者は、他のタイプの結合が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0028】
本明細書で使用されるときに、「薬物」又は「治療薬」という用語は、状態又は疾患を治療及び/又は改善することができる薬剤を指す。薬物は、水をはじく任意の薬物である疎水性薬物であることができる。本発明において有用な疎水性薬物としては、限定するわけではないが、タキサン(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル、カバジタキセル、バッカチンIII、10-デアセチルバッカチン、ホンドウシャンA、ホンドウシャンB又はホンドウシャンC)、ドキソルビシン、エトポシド、イリノテカン、SN-38、シクロスポリンA、ポドフィロトキシン、カルムスチン、アンフォテリシン、イキサベピロン、パツピロン(エポテロンクラス)、ラパマイシン及びプラチナ薬が挙げられる。他の薬物としては、非ステロイド系抗炎症薬、及び、ビンブラスチン及びビンクリスチンなどのビンカアルカロイドが挙げられる。本発明の薬物はまた、プロドラッグ形態を含む。当業者は、他の薬物が本発明において有用であることを理解するであろう。
【0029】
本明細書で使用されるときに、「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」という用語は、あらゆる客観的又は主観的パラメータを含む傷害、病状、状態又は症状(例えば、痛み)の治療又は改善における成功の兆候を指し、例えば、軽減、寛解、症状の軽減、又は、症状、傷害、病状又は状態などを患者にとってより許容できるものにすること、症状又は状態の頻度又は期間を減らすこと、又は、幾つかの状況において、症状又は状態の発症を予防することである。症状の治療又は改善は、あらゆる客観的又は主観的パラメータに基づくことができ、該パラメータは、例えば、身体検査の結果を含む。
【0030】
本明細書で使用されるときに、「投与する」という用語は、経口投与、坐剤としての投与、局所接触、非経口、静脈内、腹腔内、筋肉内、病変内、鼻腔内又は皮下投与、髄腔内投与、又は、対象への徐放性デバイス、例えば、ミニ浸透圧ポンプのインプラント処置を指す。
【0031】
本明細書で使用されるときに、「治療有効量又は用量」又は「治療に十分な量又は用量」又は「有効又は十分な量又は用量」という用語は、投与される治療効果を生み出す用量を指す。正確な用量は、治療の目的に依存し、既知の技術を使用して当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms(vol. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999); Pickar, Dosage Calculations(1999);及びRemington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition、2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。感作された細胞において、治療有効用量は、しばしば、非感作細胞に対する従来の治療有効用量よりも低くなることができる。
【0032】
本明細書で使用されるときに、「対象」という用語は、限定するわけではないが、霊長類(例えば、ヒト)、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウスなどを含む哺乳動物などの動物を指す。幾つかの実施形態において、対象はヒトである。
【0033】
本明細書で使用されるときに、「疾患」という用語は、外部の損傷によるものではなく、生物の一部又は全部の構造又は機能に悪影響を与える異常な状態を指す。疾患は、しばしば、特定の症状及び徴候に関連する病状として解釈される。疾患としては、癌、免疫不全、過敏症、アレルギー及び自己免疫疾患を挙げることができる。
【0034】
本明細書で使用されるときに、「病変組織」という用語は、本明細書に記載の疾患の一部である細胞組織を指す。
【0035】
本明細書で使用されるときに、「チェックポイント遮断抗体」という用語は、刺激されると免疫応答を免疫刺激に対して弱めることができる免疫系の主要なレギュレータである免疫チェックポイントを阻害する抗体を指す。チェックポイント遮断抗体は、阻害性チェックポイントを遮断し、免疫系の機能を回復させることができる。チェックポイント遮断抗体の例としては、限定するわけではないが、抗PD-1、抗PDL-1、抗PDL-2及び抗CTLA-4が挙げられる。
【0036】
本明細書で使用されるときに、「光熱療法(photothermal therapy)」という用語は、光への曝露時に熱を発生する無毒で感光性の化合物の使用を指す。光線力学療法と同様に、光熱療法は、光増感剤及び光源、典型的には赤外線が関与する。しかし、光熱療法は酸素を必要としない。ポルフィリン、クロロフィル及び色素など、様々な光増感剤を使用することができる。
【0037】
本明細書で使用されるときに、「放射線」という用語は、空間又は材料媒体を介した波又は粒子の形態でのエネルギーの放出又は伝達を指し、「照射」は、物体が放射線に曝されるプロセスを指す。幾つかの例において、照射としては、赤外線の使用が挙げられる。
【0038】
II.シアニンテロデンドリマー
幾つかの実施形態において、本発明は、式(I):
【化2】
(上式中、PEGは、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、各PEGポリマーは分子量が1~100kDaであり、各Xは枝分かれモノマー単位であり、各R
1は独立してコール酸又はコール酸誘導体であり、各R
2は独立してシアニンである)の化合物を提供する。
【0039】
任意のサイズ及び構造のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーは、本発明のテロデンドリマーにおいて有用である。幾つかの実施形態において、PEGは1~100kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは1~50kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは1~10kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは、約10kDa、約9kDa、約8kDa、約7kDa、約6kDa、約5kDa、約4kDa、約3kDa、約2kDa又は約1kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは約5kDaである。当業者は、他のPEGポリマー及び他の親水性ポリマーが本発明において有用であることを理解するであろう。PEGは任意の適切な長さにすることができる。
【0040】
樹枝状ポリマーは、アミノ酸又は他の二官能性AB2型モノマーを含む枝分かれモノマー単位Xから作製することができ、ここで、A及びBは、得られるポリマー鎖が分岐点を有するように一緒に反応することができる2つの異なる官能基であり、ここで、AB結合は形成される。幾つかの実施形態において、各枝分かれモノマー単位Xは、ジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシルアミノカルボン酸であることができる。幾つかの実施形態において、Xはジアミノカルボン酸である。幾つかの実施形態において、各ジアミノカルボン酸は、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リジン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸又は5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸であることができる。幾つかの実施形態において、各ジヒドロキシカルボン酸は、グリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、セリン又はスレオニンであることができる。幾つかの実施形態において、各ヒドロキシルアミノカルボン酸は、セリン又はホモセリンであることができる。幾つかの実施形態において、ジアミノカルボン酸はアミノ酸である。幾つかの実施形態において、各枝分かれモノマー単位Xはジアミノカルボン酸であり、各ジアミノカルボン酸はリシンである。
【0041】
本発明において有用な両親媒性化合物としては、限定するわけではないが、コール酸ならびにコール酸類似体及び誘導体が挙げられる。「コール酸」は、(R)-4-((3R,5S,7R,8R,9S,10S,12S,13R,14S,17R)-3,7,12-トリヒドロキシ-10,13-ジメチルヘキサデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-17-イル)ペンタン酸を指し、下記構造を有する。
【化3】
【0042】
コール酸誘導体及び類似体としては、限定するわけではないが、アロコール酸、ピトコール酸、アビコール酸、デオキシコール酸及びケノデオキシコール酸が挙げられる。コール酸誘導体は、ミセルの安定性及び膜の活性など、テロデンドリマー集合体から生じるナノキャリアの特性を調節するように設計できる。例えば、コール酸誘導体は、1つ以上のグリセロール基、アミノプロパンジオール基又は他の基で修飾された親水性面を有することができる。
【0043】
幾つかの実施形態において、各R1は、独立して、コール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)又は(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH―NH2)である。幾つかの実施形態において、各R1はコール酸である。
【0044】
本発明のシアニンは、少なくとも1つの第四級アミンを含むポリメチン基に属する合成色素ファミリーを指す。シアニンは撮像に使用されうる。幾つかの実施形態において、シアニンは、ストレプトシアニン、ヘミシアニン又は閉鎖シアニンであることができる。ヘミシアニンは以下の構造を有することができる。
【化4】
(上式中、nは0~5までの整数であり、環Aはヘテロ芳香族部分である)。閉鎖シアニンは、それぞれ独立してヘテロ芳香族部分の一部である窒素を有し、以下の構造を有することができる:
【化5】
(上式中、nは0~5までの整数であり、環Aは独立してヘテロ芳香族部分である)。 ヘテロ芳香族部分は、ピロール、イミダゾール、チアゾール、ピリジン、キノロン、インドール、ベンゾインドール又はベンゾチアゾールであることができ、これらのそれぞれは、場合により、C
1-6アルキル及びスルホネートからなる群より選ばれる1~4個の官能基で置換されうる。R基は、それぞれ、C
1-10アルキル(CH
2)
mSO
3Na及び(CH
2)
mCOOHからなる基より独立して選ばれ、ここで、mは1~10の整数である。
【0045】
幾つかの実施形態において、各R
2は、独立して、シアニン3、シアニン3.5、シアニン5、シアニン5.5、シアニン7、シアニン7.5、インドシアニングリーン又は構造(S1)を有するインドシアニングリーン誘導体である。
【化6】
幾つかの実施形態において、各R
2は、構造(S1)を有するシアニンである。
【0046】
幾つかの実施形態において、化合物は、式(I)の化合物であることができ、ここで、各PEGは分子量が5kDaであり、各Xはリジンであり、各R
1はコール酸であり、各R
2は、独立して、構造(S1)を含むシアニンである。幾つかの実施形態において、化合物は以下の構造を有する:
【化7】
【0047】
III.ナノ粒子
本発明のテロデンドリマーは、疎水性コア及び親水性外部を含むナノキャリアを形成するための凝集体を提供する。幾つかの実施形態において、本発明は、内部及び外部を有するナノキャリアを提供し、該ナノキャリアは、本発明の1つ以上のデンドリマーコンジュゲートを含み、各化合物は、水性溶媒中で自己集合してナノキャリアを形成し、その結果、疎水性ポケットは前記ナノキャリアの内部で形成され、各化合物のPEGはナノキャリアの外部上で自己集合する。
【0048】
幾つかの実施形態において、本発明は、複数の第一のコンジュゲートを含むナノ粒子を提供し、ここで、各第一のコンジュゲートは、独立して、本明細書に記載のとおりの式(I)の化合物であり、複数のコンジュゲートは水性溶媒中で自己集合してナノ粒子を形成し、その結果、疎水性コアはナノ粒子の内部に形成され、各コンジュゲートのPEGはナノ粒子の外部上で自己集合する。
【0049】
本発明において有用な複数の第一のコンジュゲートは、本明細書に記載されるとおりの式(I)のコンジュゲートを含む。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、複数の第二のコンジュゲートをさらに含み、各第二のコンジュゲートは、独立して、式(II)の化合物である。
【化8】
(上式中、PEGはポリエチレングリコール(PEG)ポリマーであり、各PEGポリマーは分子量が1~100kDaであり、各Xは枝分かれモノマー単位であり、各Yはチオール含有架橋性基であり、各Lは連結基であり、そして、各R
1は、独立して、コール酸又はコール酸誘導体である)。
【0050】
任意のサイズ及び構造のポリエチレングリコール(PEG)ポリマーは、式IIの化合物のための本発明のテロデンドリマーにおいて有用である。幾つかの実施形態において、PEGは1~100kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは1~50kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは1~10kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは、約10kDa、約9kDa、約8kDa、約7kDa、約6kDa、約5kDa、約4kDa、約3kDa、約2kDa又は約1kDaである。幾つかの実施形態において、PEGは約5kDaである。当業者は、他のPEGポリマー及び他の親水性ポリマーが本発明において有用であることを理解するであろう。PEGは任意の適切な長さにすることができる。
【0051】
本発明において有用な枝分かれモノマー単位は、任意の適切なアミノ酸又は他の二官能性AB2型モノマーを含み、ここで、A及びBは一緒に反応することができる2つの異なる官能基であり、その結果、得られるポリマー鎖は分岐点を有し、ここで、A-B結合は形成される。幾つかの実施形態において、各枝分かれモノマー単位Xは、ジアミノカルボン酸、ジヒドロキシカルボン酸及びヒドロキシルアミノカルボン酸であることができる。幾つかの実施形態において、Xはジアミノカルボン酸である。幾つかの実施形態において、各ジアミノカルボン酸は、2,3-ジアミノプロパン酸、2,4-ジアミノブタン酸、2,5-ジアミノペンタン酸(オルニチン)、2,6-ジアミノヘキサン酸(リジン)、(2-アミノエチル)-システイン、3-アミノ-2-アミノメチルプロパン酸、3-アミノ-2-アミノメチル-2-メチルプロパン酸、4-アミノ-2-(2-アミノエチル)酪酸又は5-アミノ-2-(3-アミノプロピル)ペンタン酸であることができる。幾つかの実施形態において、各ジヒドロキシカルボン酸は、グリセリン酸、2,4-ジヒドロキシ酪酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、セリン又はスレオニンであることができる。幾つかの実施形態において、各ヒドロキシルアミノカルボン酸は、セリン又はホモセリンであることができる。幾つかの実施形態において、ジアミノカルボン酸はアミノ酸である。幾つかの実施形態において、各枝分かれモノマー単位Xはジアミノカルボン酸であり、各ジアミノカルボン酸はリジンである。
【0052】
連結基Lは任意の適切なリンカーを含むことができる。一般に、連結基は二官能性リンカーであり、2つのテロデンドリマーセグメントのそれぞれと反応するための2つの官能基を有する。幾つかの例において、連結基は、ヘテロ二官能性リンカーであることができる。幾つかの例において、連結基はホモ二官能性リンカーであることができる。幾つかの例において、連結基Lは、ポリエチレングリコール、ポリセリン、ポリグリシン、ポリ(セリン-グリシン)、脂肪族アミノ酸、6-アミノヘキサン酸、5-アミノペンタン酸、4-アミノブタン酸又はβアラニンであることができる。幾つかの実施形態において、連結基Lは、以下の式を有するEbesリンカーである。
【化9】
【0053】
当業者は、連結基のサイズ及び化学的性質が、連結されるテロデンドリマーセグメントの構造に基づいて変化しうることを認識するであろう。
【0054】
幾つかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、各R1が独立してコール酸又はコール酸誘導体である第一のコンジュゲート及び/又は第二のコンジュゲートを含む。各R1は独立してコール酸、(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA―4OH)、(3α,5β,7α,12α)-7-ヒドロキシ-3,12-ジ(2,3-ジヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-5OH)又は(3α,5β,7α,12α)-7,12-ジヒドロキシ-3-(3-アミノ-2-ヒドロキシ-1-プロポキシ)-コール酸(CA-3OH-NH2)である。幾つかの実施形態において、各R1はコール酸である。
【0055】
幾つかの実施形態において、ナノ粒子は式(I)の第一のコンジュゲートを含み、各PEGは分子量が5kDaであり、各Xはリジンであり、各R
1はコール酸であり、各R
2は構造( S1)を有するシアニンである。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、式(II)の第二のコンジュゲートをさらに含み、各PEGは分子量が5kDaであり、各Xはリジンであり、各Yはシステインであり、各Lは式:
【化10】
を有する連結基であり、そして各R
1はコール酸である。
【0056】
幾つかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、式(II)のチオール含有架橋性基を介して架橋される。幾つかの例において、チオール含有架橋性基はシステイン又はN-アセチル-システインである。幾つかの例において、チオール含有架橋性基はシステインである。
【0057】
幾つかの例において、本発明のナノ粒子は、約100:1~1:100、約50:1~1:50、約25:1~1:25、約10:1~約1:10又は約1:1の比率(w/w)で式(I)及び式(II)のコンジュゲートを含む。幾つかの例において、式(I)のコンジュゲート対式(II)のコンジュゲートは、約100:1、50:1、25:1、10:1又は1:1の比(w/w)を有する。幾つかの実施形態において、式(I)及び式(II)のコンジュゲートは約1:1(w/w)の比率である。
【0058】
幾つかの例において、ナノ粒子の平均直径は、約250nm、約100nm、約50nm又は約20nmである。幾つかの実施形態において、ナノ粒子の平均直径は約20nmである。
【0059】
幾つかの実施形態において、本発明のナノ粒子は、疎水性コア内に治療薬をさらに含む。治療薬は水溶性が低いことができる。幾つかの例において、治療薬は、ボルテゾミブ、パクリタキセル、SN38、カンプトテシン、エトポシド及びドキソルビシン、ドセタキセル、VP16、プレドニゾン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、テムシロリムス、カルムシン、ガルジキモド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、SN-38、イミキモド、レシキモド、モトリモド、レナリドマイド、ポマリドマイド及び構造(S2)を有するLLS30からなる群より選ばれる。
【化11】
【0060】
幾つかの実施形態において、治療薬は、ガルジキモド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、パクリタキセル、SN-38、イミキモド、レシキモド、モトリモド、レナリドミド、ポマリドミド及び構造(S2)を有するLLS30からなる群より選ばれる。
【0061】
IV.治療法
本発明のナノ粒子は疾患を治療するために使用することができる。本発明のナノ粒子は、光熱療法を介して疾患を治療するために使用することができる。本発明のナノ粒子はまた、病変組織を患っている対象を治療するために使用することができる。本発明のナノ粒子はまた、造影剤をナノキャリの内部に隔離することによって、又は、造影剤をナノキャリのコンジュゲートに結合させることによって、撮像に使用することができる。
【0062】
幾つかの実施形態において、本発明は、疾患を治療する方法を提供し、この方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明のナノ粒子を投与することを含む。
【0063】
本発明のナノ粒子は、癌を含む疾患の治療のために対象に投与されることができ、上記癌としては、限定するわけではないが、カルシノーマ、神経膠腫、中皮腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、腺癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、神経膠芽細胞腫、白血病、リンパ腫、前立腺癌、バーキットリンパ腫、頭頸部癌、結腸癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝胆道癌、胆嚢癌、小腸癌、直腸癌、腎臓癌、膀胱癌、前立腺癌、陰茎癌、尿道癌、精巣癌、子宮頸癌、膣癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、膵臓内分泌癌、カルシノイド癌、骨癌、皮膚癌、網膜芽細胞腫、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫が挙げられる(追加の癌についてはCANCER:PRINCIPLES AND PRACTICE(DeVita, V. T. ら、2008年版)を参照されたい)。
【0064】
本発明のナノキャリアによって治療することができる他の疾患としては、(1)全身性アナフィラキシー又は過敏反応、薬物アレルギー、昆虫刺傷アレルギーなどの炎症性又はアレルギー性疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、回腸炎及び腸炎などの炎症性腸疾患、膣炎、乾癬及び皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、蕁麻疹などの炎症性皮膚炎、血管炎、脊椎関節症、強皮症、喘息、アレルギー性鼻炎、過敏性肺疾患などの呼吸器アレルギー性疾患など、(2)関節炎(リウマチ性及び乾癬性)、骨関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性ループス、真性糖尿病、糸球体腎炎などの自己免疫疾患など、(3)移植片拒絶(同種移植片拒絶及び移植片v-宿主疾患を含む)、及び(4)望ましくない炎症反応が阻害されるべき他の疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、筋炎、脳卒中及び閉鎖頭傷害などの神経学的状態、神経変性疾患、アルツハイマー病、脳炎、髄膜炎、骨粗鬆症、痛風、肝炎、腎炎、敗血症、サルコイドーシス、結膜炎、耳炎、慢性閉塞性肺疾患、副鼻腔炎及びベーセット症候群)が挙げられる。
【0065】
幾つかの実施形態において、本発明は、疾患を治療する方法を提供し、ここで、前記疾患は癌である。幾つかの実施形態において、疾患は、乳癌、口腔癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、膀胱癌、脳癌、黒色腫、骨髄腫、白血病、結腸癌、前立腺癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部癌、リンパ腫又は転移性癌である。
【0066】
幾つかの実施形態において、本発明は、疎水性コア内に治療薬をさらに含む、疾患を治療する方法を提供する。本発明の方法に適した治療薬は、本明細書で上記に記載されている。幾つかの実施形態において、疾患を治療する方法は、ドキソルビシン、ガルジキモド及びイミキモドからなる群より選ばれる治療薬を含む。幾つかの実施形態において、疾患を治療する方法は、治療薬を含み、該治療薬はイミキモドであり、チェックポイント遮断抗体を投与することをさらに含む。
【0067】
本発明において有用なチェックポイント遮断抗体としては、限定するわけではないが、抗PD-1、抗PDL1、抗CLTA-4、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、キートルーダ、スパルタリズマブ、アテゾリズマブ及びイピリムマブが挙げられる。幾つかの実施形態において、本発明において有用なチェックポイント遮断抗体は、抗PD-1、抗PDL1又は抗CTLA-4である。幾つかの実施形態において、チェックポイント遮断抗体は抗PD-1である。
【0068】
幾つかの実施形態において、本発明は、光熱療法を介して疾患を治療する方法を提供し、この方法は、それを必要とする対象に、治療有効量の本発明のナノ粒子を投与すること、及び、前記対象を放射線に曝露し、それによって光熱療法を介して病気を治療することを含む。
【0069】
本発明のナノキャリアを使用して治療する方法はまた、光熱療法により疾患を治療することを含む。この方法は、一般に、本発明のナノキャリアを対象に投与し、次に対象を特定の波長の放射線に曝露して、光の波長に応じて光線力学療法又は光熱療法を誘発することを含む。放射線又は光にさらされると、ナノ粒子は光熱療法に十分な熱を発生する。幾つかの実施形態において、本発明は光熱療法を介して疾患を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象に治療有効量の本発明のナノキャリアを投与すること、及び対象を放射線に曝露し、それにより、光熱療法を介して疾患を治療することを含む。幾つかの実施形態において、この方法は、光熱療法を介して疾患を治療する方法である。
【0070】
本発明の方法において有用な放射線としては、電磁放射、粒子放射、音響放射及び重力放射が挙げられる。電磁放射の例としては、限定するわけではないが、無線波、マイクロ波、赤外光、可視光、紫外光、X線及びガンマ線が挙げられる。
【0071】
幾つかの実施形態において、本発明は光熱療法を介して疾患を治療する方法を提供し、ここで、対象は電磁放射に曝露される。幾つかの実施形態において、本発明は、光熱療法を介して疾患を治療する方法を提供し、ここで、対象は、近赤外光照射に曝される。
【0072】
本発明のナノ粒子は、光熱療法を介して疾患を治療するために対象に投与することができ、疾患は本明細書で上記のとおりである。
【0073】
幾つかの実施形態において、本発明は、光熱療法を介して疾患を治療する方法を提供し、ここで、疾患は癌である。幾つかの実施形態において、疾患は、乳癌、口腔癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、膀胱癌、脳癌、黒色腫、骨髄腫、白血病、結腸癌、前立腺癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部癌、リンパ腫又は転移性癌である。
【0074】
幾つかの実施形態において、本発明は、疎水性コアに治療薬をさらに含む、光熱療法を介して疾患を治療する方法を提供する。本発明の方法に適した治療薬は、本明細書で上記に記載されている。幾つかの実施形態において、疾患を治療する方法は、ドキソルビシン、ガルジキモド及びイミキモドからなる群より選ばれる治療薬を含む。幾つかの実施形態において、疾患を治療する方法は治療薬を含み、治療薬はイミキモドであり、注射を介して抗PD-1を投与することをさらに含む。
【0075】
幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、この方法は、ナノ粒子が病変組織に集中するように、有効量の本発明のナノ粒子を対象に投与すること、病変組織を特定するために、病変組織を第一の波長で照射すること、及び、対象から病変組織を除去し、それによって対象を治療することを含む。
【0076】
幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、この方法は、投与工程の少なくとも1時間後、投与工程の少なくとも2時間後、投与工程の少なくとも3時間後、照射工程の少なくとも4時間後、照射工程の少なくとも5時間後又は照射工程の少なくとも6時間後に照射工程を遅延させることをさらに含む。幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、この方法は、投与工程の少なくとも3時間後に照射工程を遅らせることをさらに含む。
【0077】
幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、この方法は、対象に残存している任意の病変組織を第二の波長で照射することをさらに含む。幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、ここで、除去工程及び両方の照射工程は、対象に対する単一の操作中に行われる。
【0078】
幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、ここで、第一の波長及び第二の波長は、それぞれ独立して、紫外線スペクトル、可視光スペクトル又は赤外線スペクトルにある。幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、ここで、第一の波長及び第二の波長は、それぞれ独立して、極紫外線スペクトル、近紫外線スペクトル、近赤外線スペクトル、中赤外線スペクトル又は遠赤外線スペクトルにある。幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、ここで、第一の波長及び第二の波長は近赤外スペクトルにある。
【0079】
幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、ここで、病変組織は本明細書に記載の疾患からの任意の適切な病変組織である。幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、ここで、病変組織は癌である。幾つかの実施形態において、病変組織は、乳癌、口腔癌、子宮頸癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、膀胱癌、脳癌、黒色腫、骨髄腫、白血病、結腸癌、前立腺癌、食道癌、肝臓癌、頭頸部癌、リンパ腫又は転移性癌である。幾つかの実施形態において、本発明は、病変組織を患っている対象を治療する方法を提供し、ここで、病変組織は卵巣癌である。
【0080】
幾つかの実施形態において、本発明は、撮像方法を提供し、この方法は、それを必要とする対象に有効量の本発明のナノ粒子を投与すること、及び、対象を撮像することを含む。幾つかの実施形態において、ナノ粒子は、疎水性コア内に造影剤をさらに含むことができる。
【0081】
例示的な造影剤としては、常磁性剤、光学プローブ及び放射性核種が挙げられる。常磁性剤は外部から印加された磁場の下で磁性を帯びる造影剤である。常磁性剤の例としては、限定するわけではないが、ナノ粒子を含む鉄粒子が挙げられる。光プローブは、ある波長の放射線での励起と、第二の異なる波長の放射線での検出によって検出できる蛍光化合物である。本発明で有用な光学プローブには、限定するわけではないが、Cy5.5、Alexa 680、Cy5、DiD(1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドジカルボシアニン過塩素酸塩)及びDiR(1,1'-ジオクタデシル-3,3,3',3'-テトラメチルインドトリカルボシアニンヨージド)が挙げられる。他の光学プローブとしては、量子ドットが挙げられる。放射性核種は、放射性崩壊を経験する元素である。本発明で有用な放射性核種としては、限定するわけではないが、3H、11C、13N、18F、19F、60Co、64Cu、67Cu、68Ga、82Rb、90Sr、90Y、99Tc、99mTc、111In、123I、124I、125I、129I、131I、137Cs、177Lu、186Re、188Re、211At、Rn、Ra、Th、U、Pu及び241Amが挙げられる。
【0082】
V.ナノ粒子の調製方法
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載のとおりの式(I)の複数の第一のコンジュゲートを含む反応混合物を形成することを含む、本発明のナノ粒子を調製する方法を提供し、ここで、前記コンジュゲートは、疎水性コアが前記ナノ粒子の内部に形成されるようにナノ粒子を形成し、各コンジュゲートのPEGはナノ粒子の外部上で自己集合する。
【0083】
幾つかの実施形態において、本発明は、本明細書に記載のとおりの式(II)の複数の第二のコンジュゲートをさらに含む、本発明のナノ粒子を調製する方法を提供する。
【0084】
幾つかの実施形態において、本発明は、水溶液が緩衝溶液である、本発明のナノ粒子を調製する方法を提供する。緩衝溶液は緩衝剤の組み合わせを含むことができ、該緩衝剤としては、限定するわけではないが、クエン酸、酢酸、KH2PO4、CHES、ホウ酸塩、TAPS、ビシン、トリス、トリシン、TAPS、HEPES、TES、MOPS、PIPES、カコジル酸塩及びMESが挙げられる。幾つかの実施形態において、水溶液はPBSを含む。
【0085】
幾つかの実施形態において、本発明は、本発明のナノ粒子を調製する方法を提供し、この方法は、反応混合物を超音波処理することをさらに含む。反応混合物は、約5分、約10分、約20分、約30分又は約1時間超音波処理されうる。幾つかの実施形態において、反応混合物は、約10分間超音波処理されうる。
【0086】
幾つかの実施形態において、本発明は、本発明のナノ粒子を調製する方法を提供し、ここで、水溶液はPBSであり、この方法は、反応混合物を約10分間超音波処理することをさらに含む。
【0087】
幾つかの例において、本発明は、本発明のナノ粒子を調製する方法を提供し、ここで、ナノ粒子は、式(I)及び式(II)のコンジュゲートを約100:1~1:100、約50:1~1:50、約25:1~1:25、約10:1~約1:10又は約1:1の比率(w/w)で含む。幾つかの例において、式(I)/式(II)のコンジュゲートは、約100:1、50:1、25:1、10:1又は1:1の比率(w/w)を有する。幾つかの実施形態において、式(I)及び式(II)のコンジュゲートは、約1:1(w/w)の比率である。
【0088】
幾つかの実施形態において、本発明は、ナノ粒子を調製する方法を提供し、ここで、ナノ粒子は、式(II)の複数の第二のコンジュゲートをさらに含み、チオール含有架橋性基はシステイン又はN-アセチルシステインである。幾つかの例において、チオール含有架橋性基はシステインである。幾つかの実施形態において、架橋結合は、システインの酸化を介して形成される。
【0089】
VI.製剤及び医薬組成物
本発明の組成物は、多種多様な経口、非経口及び局所剤形で調製することができる。経口製剤としては、患者による摂取に適した錠剤、丸薬、粉末、糖衣錠、カプセル、液体、トローチ、カシェ、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などが挙げられる。本発明の組成物はまた、注射によって、すなわち、静脈内、筋肉内、皮内、皮下、十二指腸内又は腹腔内に投与することができる。また、本明細書に記載の組成物は、例えば、吸入によって鼻腔内に投与することができる。さらに、本発明の組成物は、経皮的に投与することができる。本発明の組成物はまた、坐剤、吹送、粉末及びエアロゾル製剤を含む、眼内、膣内及び直腸内経路によって投与することができる(ステロイド吸入剤の例については、Rohatagi, J. Clin. Pharmacol. 35:1187-1193, 1995; Tjwa, Ann. Allergy Asthma Immunol. 75:107-111,1995を参照されたい)。したがって、本発明はまた、医薬上許容されるキャリア又は賦形剤及び本発明の組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0090】
本発明の化合物から医薬組成物を調製するために、医薬上許容されるキャリアは固体又は液体のいずれであってもよい。固形製剤としては、粉末、錠剤、丸薬、カプセル、カシェ、坐剤及び分散性顆粒が挙げられる。固体キャリアは、1つ以上の物質であることができ、これはまた、希釈剤、香味剤、結合剤、防腐剤、錠剤崩壊剤又はカプセル化材料として作用することができる。製剤及び投与の技術の詳細は、科学文献及び特許文献に十分に記載されており、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Maack Publishing Co, Easton PAの最新版 ("Remington's")を参照されたい。
【0091】
粉末において、キャリアは、微細分割された固体であり、これは、微細分割された活性成分との混合物中にある。錠剤において、活性成分は、適切な比率で必要な結合特性を有するキャリアと混合され、所望の形状及びサイズに圧縮される。粉末及び錠剤は、好ましくは、本発明の組成物を5%又は10%~70%で含む。
【0092】
適切な固体賦形剤としては、限定するわけではないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ペクチン、デキストリン、デンプン、トラガカント、低融点ワックス、ココアバター、炭水化物、糖類(限定するわけではないが、乳糖、ショ糖、マンニトール又はソルビトールを含む)、トウモロコシ、小麦、米、馬鈴薯又は他の植物からのデンプン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース又はナトリウムカルボキシメチルセルロースなどのセルロース、アラビアゴム及びトラガカントを含むゴム、ならびに、限定するわけではないが、ゼラチン及びコラーゲンを含むタンパク質が挙げられる。所望ならば、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はアルギン酸ナトリウムなどのその塩などの崩壊剤又は可溶化剤を添加することができる。
【0093】
糖衣錠コアは、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる濃縮糖溶液などの適切なコーティングを備えている。製品の識別のため、又は活性化合物の量(すなわち、投与量)を特性化するために、染料又は顔料を錠剤又は糖衣錠コーティングに添加することができる。本発明の医薬製剤はまた、例えば、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル、ならびにゼラチン及びグリセロール又はソルビトールなどのコーティングで作られた柔らかく密封されたカプセルを使用して経口的に使用することができる。プッシュフィットカプセルは、ラクトース又はデンプンなどの充填剤又は結合剤、タルク又はステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、及び、場合により、安定剤と混合された本発明の化合物を含むことができる。ソフトカプセルにおいて、本発明の組成物は、安定剤を含む又は含まない、脂肪油、流動パラフィン、又は液体ポリエチレングリコールなどの適切な液体に溶解又は懸濁することができる。
【0094】
坐剤を調製するために、脂肪酸グリセリド又はカカオバターの混合物などの低融点ワックスを最初に溶融し、本発明の組成物を、攪拌などすることにより、その中に均一に分散させる。次に、溶融した均質な混合物を便利なサイズの型に注ぎ、冷却し、それによって固化させる。
【0095】
液体形態の製剤としては、溶液、懸濁液及び乳濁液、例えば、水又は水/プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射については、液体製剤は、ポリエチレングリコール水溶液中の溶液で製剤化することができる。
【0096】
経口使用に適した水溶液は、本発明の組成物を水中に溶解し、所望に応じて適切な着色剤、香味剤、安定剤及び増粘剤を添加することによって調製することができる。経口使用に適した水性懸濁液は、天然又は合成のガム、樹脂、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム及びアカシアゴムなどの粘性材料、及び、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、脂肪酸とヘキシトールから誘導された部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート)、又は、脂肪酸とヘキシトール無水物から誘導された部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)などの分散剤又は湿潤剤とともに水中に微細分割された活性成分を分散させることによって作製することができる。水性懸濁液はまた、エチル又はn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエートなどの1つ以上の防腐剤、1つ以上の着色剤、1つ以上の香味剤、及び、スクロース、アスパルテーム又はサッカリンなどの1つ以上の甘味剤を含むことができる。製剤は浸透圧に合わせて調整できる。
【0097】
使用の直前に、経口投与用の液体形態の製剤に変換することが意図された固体形態の製剤も挙げられる。このような液体形態としては、溶液、懸濁液及び乳濁液が挙げられる。これらの製剤は、活性成分に加えて、着色剤、香味剤、安定剤、緩衝剤、人工及び天然甘味料、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含むことができる。
【0098】
油懸濁液は、本発明の化合物を、落花生油、オリーブ油、ゴマ油又はココナッツ油などの植物油、又は、液体パラフィンなどの鉱油、又は、これらの混合物に懸濁することによって製剤化することができる。油懸濁液は、蜜蝋、パラフィン又はセチルアルコールなどの増粘剤を含むことができる。グリセロール、ソルビトール又はスクロースなどの甘味料を添加して口当たりの良い経口製剤を提供することができる。これらの製剤は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することで保存できる。注射可能なオイルビヒクルの例として、Minto, J. Pharmacol. Exp. Ther. 281:93-102, 1997を参照されたい。本発明の医薬製剤はまた、水中油型エマルジョンの形態であることができる。油相は、上記の植物油又は鉱油、あるいは、これらの混合物であることができる。適切な乳化剤としては、アカシアゴム及びトラガカンスゴムなどの天然に存在するガム、大豆レシチンなどの天然に存在するホスファチド、モノオレイン酸ソルビタンなどの脂肪酸及び無水ヘキシトールから誘導されるエステル又は部分エステル、ならびに、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのこれらの部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物が挙げられる。乳濁液はまた、シロップ及びエリキシルの製剤のように、甘味剤及び香味剤を含むことができる。そのような製剤はまた、粘滑剤、防腐剤又は着色剤を含むことができる。
【0099】
本発明の組成物はまた、体内での徐放のためのミクロスフェアとして送達することができる。例えば、ミクロスフェアは、皮下にゆっくりと放出される薬物含有ミクロスフェアの皮内注射を介して (Rao, J. Biomater Sci. Polym. Ed. 7:623-645, 1995を参照されたい)、生分解性かつ注射可能なゲル製剤として(例えば、Gao Pharm. Res. 12:857-863, 1995を参照されたい)又は経口投与用ミクロスフェアとして(例えば、Eyles, J. Pharm. Pharmacol. 49:669-674, 1997を参照されたい)投与するように製剤化することができる。経皮及び皮内経路の両方は、数週間又は数ヶ月間一定の送達を提供する。
【0100】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物は、静脈内(IV)投与又は体腔又は器官の内腔への投与などの非経口投与のために製剤化することができる。投与用の製剤は、一般に、医薬上許容されるキャリアに溶解された本発明の組成物の溶液を含むであろう。使用できる許容可能なビヒクル及び溶媒には、水及びリンゲル液、等張塩化ナトリウムがある。さらに、滅菌固定油は、従来から、溶媒又は懸濁媒体として使用することができる。この目的のために、合成モノグリセリド又はジグリセリドを含む任意の刺激の少ない固定油を使用することができる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸も同様に注射剤の調製に使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの製剤は、従来のよく知られた滅菌技術によって滅菌することができる。製剤は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの生理学的条件に近づけるために必要とされる医薬上許容される補助物質を含むことができる。これらの製剤中の本発明の組成物の濃度は大きく変更することができ、選択された特定の投与様式及び患者のニーズに従って、主に流体体積、粘度、体重などに基づいて選択される。IV投与については、製剤は無菌の注射可能な水性又は油性の懸濁液などの無菌注射可能製剤であることができる。この懸濁液は、それらの適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を使用して、既知の技術に従って製剤化することができる。無菌注射可能製剤はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の無菌の注射可能な溶液又は懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液であることができる。
【0101】
幾つかの実施形態において、本発明の組成物の製剤は、細胞膜と融合するか又はエンドサイトーシスされるリポソームの使用によって、すなわち、細胞の表面膜タンパク質受容体に結合してエンドサイトーシスを引き起こすリポソームに付着した又はオリゴヌクレオチドに直接付着したリガンドを使用することによって送達することができる。リポソームを使用することにより、特にリポソーム表面が標的細胞に特異的なリガンドを有するか、又はさもなければ優先的に特定の器官に向けられる場合に、本発明の組成物を標的細胞にインビボで集中して送達させることができる(例えば、Al-Muhammed, J. Microencapsul. 13:293-306, 1996; Chonn, Curr. Opin. Biotechnol. 6:698-708, 1995; Ostro, Am. J. Hosp. Pharm. 46:1576-1587, 1989を参照されたい)。
【0102】
VII.投与
本発明の組成物は、経口、非経口及び局所的方法を含む任意の適切な手段によって送達することができる。局所経路による経皮投与方法は、アプリケータースティック、溶液、懸濁液、乳濁液、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、塗料、粉末及びエアロゾルとして製剤化されうる。
【0103】
医薬製剤は、好ましくは単位剤形である。そのような剤形において、製剤は、本発明の組成物の適切な量を含む単位用量に細分される。単位剤形は、パッケージ化された製剤であることができ、パッケージは、パケット化された錠剤、カプセル及びバイアル又はアンプル中の粉末などの個別の量の製剤を含む。また、単位剤形は、カプセル、錠剤、カシェ又はトローチ自体であることができるか、又は、これらのいずれかの適切な数のパッケージ化された形態であることができる。
【0104】
本発明の化合物は、任意の適切な量で存在することができ、そして様々な要因に依存することができ、該要因としては、限定するわけではないが、対象の体重及び年齢、疾患の状態などが挙げられる。本発明の化合物の適切な投与量範囲としては、約0.1mg~約10,000mg、又は約1mg~約1000mg、又は約10mg~約750mg、又は約25mg~約500mg、又は約50mg~約250mgが挙げられる。本発明の化合物の適切な投与量としては、約1mg、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、 900又は1000mgが挙げられる。
【0105】
本発明の化合物は、任意の適切な頻度、間隔及び期間で投与することができる。例えば、本発明の化合物は、1時間に1回、又は、1時間に2、3回以上、1日1回、又は、1日2、3回以上、又は、2、3、4、5、6又は7日に1回投与することができ、それにより、好ましい投与量レベルを提供することができる。本発明の化合物が1日1回を超えて投与されるときに、代表的な間隔としては、5、10、15、20、30、45及び60分、ならびに1、2、4、6、8、10、12、16、20及び24時間が挙げられる。本発明の化合物は、1時間、1~6時間、1~12時間、1~24時間、6~12時間、12~24時間、1日、1~7日、1週間、1~4週間、1カ月、1~12カ月、1年以上又はさらには無期限で1回、2回又は3回以上投与することができる。
【0106】
組成物はまた、他の適合性のある治療薬を含むことができる。本明細書に記載の化合物は、互いに、他の活性剤と、又は、単独では有効ではないが活性剤の有効性に寄与する可能性がある補助剤と組み合わせて使用することができる。
【0107】
本発明の化合物は、別の活性剤と共投与することができる。共投与は、本発明の化合物及び活性剤を、互いに0.5、1、2、4、6、8、10、12、16、20又は24時間以内に投与することを含む。共投与はまた、本発明の化合物及び活性剤を同時に、ほぼ同時に(例えば、互いに約1、5、10、15、20又は30分以内に)、又は任意の順序で順次に投与することを含む。さらに、本発明の化合物及び活性剤は、それぞれ、1日1回、又は、1日2、3又はそれ以上の回数投与され、1日あたりの好ましい投与量レベルを提供することができる。
【0108】
幾つかの実施形態において、共投与は、共製剤、すなわち、本発明の化合物及び活性剤の両方を含む単一の医薬組成物を調製することによって達成することができる。幾つかの実施形態において、本発明の化合物及び活性剤は、別々に製剤化することができる。
【0109】
本発明の化合物及び活性剤は、約1:100~約100:1(w/w)、又は約1:50~約50:1、又は約1:25~約25:1、又は約1:10~約10:1、又は約1:5~約5:1(w/w)などの任意の適切な重量比で存在することができる。本発明の化合物及び他の活性剤は、約1:100(w/w)、1:50、1:25、1:10、1:5、1;4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、10:1、25:1、50:1又は100:1(w/w)などの任意の適切な重量比で本発明の組成物中に存在することができる。本発明の化合物及び他の活性剤の他の投与量及び投与量比は本発明の組成物及び方法において適切である。
【実施例】
【0110】
VIII.例
結果
CPCI-NPの設計及び調製
光熱特性を付与するために、安定性の高い疎水性光熱変換剤であるインドシアニングリーン誘導体(ICGD)を最初に合成し、テロデンドリマーシステムに導入した(
図9)。
図10a、10b及び10cに示すように、
1H NMR及びESI質量分析測定により、ICGDの化学構造を検証した。UV-vis吸収スペクトルから、ICGDはメタノールで500~900nmの広い吸収帯を示し、2つの吸収ピークがあった。1つのショルダーピークは約720nmにあり、もう1つは約785nmの近赤外範囲のピークにあった(
図2b)。ピーク値が835nmの蛍光発光スペクトルは、808nmでの励起時にメタノール中で得られた。ICGD分子はカルボン酸基で官能化され、それにより、4つのICGD単位をPEG
5k-CA
4-テロデンドリマー上に簡単にグラフト化してPEG
5K-CA
4-ICGD
4(PCI)テロデンドリマーを得ることができ、分子量はMALDI-TOF質量分析で10,430Daと決定された(
図11a及び11b)。メタノール中のPCIテロデンドリマーの吸収及び蛍光発光は、メタノール中の単一ICGD分子のものとほぼ同じであり、PCIへのICGDの導入が成功したことを示した(
図2b、
図13a)。
【0111】
両親媒性PCIテロデンドリマーは、動的光散乱(DLS)及び透過型電子顕微鏡写真(TEM)画像によって同時に検証された均一なサイズ(約30nm)を有する熱力学的に安定なナノ粒子(PCI-NP)に自己集合することができた(
図2c)。π-π相互作用及び強い疎水性を仮定すれば、ICGD及びCAを簡単に自己集合して高度に秩序化された構造になり、PCI-NPの疎水性コアを形成することができる。
図13bに示すように、PBS中のPCI-NPのUV-vis吸収は、メタノール中のPCIテロデンドリマーの吸収と比較して広く、わずかに赤方シフトしており、ICGDの自己集合を示している。一方、PBS溶液中のPCI-NPにおけるICGDの蛍光強度は非常に弱いことがわかり(Ex:808nm)、おそらく凝集による消光効果が原因であり、ICGDが自己集合して高度に秩序化された構造になっていることがさらに明らかになった。 。この解釈は、ミセル解離時の蛍光の回復によってさらに検証された。強力なイオン性洗剤のドデシル硫酸ナトリウム(SDS; 2.5 mgmL
-1最終濃度)をPCI-NP PBS溶液に添加したときに、PCI-NPは崩壊し、835nmにピーク値を持つICGDの蛍光強度が有意に向上した(
図13c)。
【0112】
インビボ研究のためのPCI-NPの安定性を改善するために、ジスルフィド架橋を有するハイブリッドNPは、合理的な重量比(1:1)のシステイン含有テロデンドリマー(PEG
5k-Cys
4-L
8-CA
8、PCLC)及びPCIテロデンドリマーの共自己集合(co-self-assembly)により調製され、CPCI-NPを生成した。
図12a及び12bに示されるように、8つのCA及び4つのシステイン単位はPCLCテロデンドリマーの骨格に導入された(Mn≒12000)。システイン上のチオール基は、NPの密度及び安定性を向上させることができる、束ねられたロープのように、酸化環境下でNPの疎水性コア内にジスルフィド結合を形成することができた。DLS及びTEM画像(
図2d)に示されているように、この組成設計下において、CPCI-NPのサイズはPCI-NPのサイズよりも小さく、すなわち、20±6nm対30±8nmであった。これは、浸透及び保持(EPR)効果の向上により、腫瘍内に効率的に蓄積するための望ましい粒子サイズである。PCI-NP及びCPCI-NPの安定性は、最終濃度2.5mgmL
-1のNP破壊性SDSの存在下で試験した。
図2eに示されるように、PCI-NPの粒子サイズ信号の即時消失(<10s)は、非架橋PCI-NPの明確な動的結合-解離特性を反映した。非常に対照的に、CPCI-NPは、SDSの存在下でも約20nmの粒子サイズのままであり、このような架橋NPの高い安定性を示していた。さらに、SDS及び細胞内還元型グルタチオン(GSH)レベル(約10mM)の存在下において、CPCI-NPの粒子サイズ信号は急速に消失し、GSHによるジスルフィド結合の切断後のCPCI-NPの解離を示している。PCI-NPと同様に、CPCI-NPにおけるICGDの蛍光(Ex:808nm)も高度に消光された。GSH(約10mM)もSDS(2.5mgmL
-1)も単独では架橋NPを分解できなかったため、CPCI-NP溶液の蛍光強度はGSHを含まないSDS溶液又はGSHを含むPBS溶液でわずかにのみ増加した。しかしながら、
図15dに示されるように、SDS及びGSHの両方の存在下に、835nmにピーク値を持つCPCI-NP溶液の蛍光強度は、PBS中の無傷のミセル形態と比較して100倍増強された。
【0113】
CPCI-NPの光熱特性
光熱変換特性は、0.8Wcm
-2の出力強度で808nmのレーザー照射下でのPBS溶液中のCPCI-NP及びPCI-NPの温度変化の定量的測定によって評価し、ポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされた金ナノロッド(GNR)を対照として使用した。
図2fに示されるように、CPCI-NP溶液及びPCI-NP溶液は両方とも最初の60秒間に急激な温度上昇を示し、温度はCPCI-NPでは64.5℃、PCI-NPでは56.6℃に上昇した。300秒間の連続レーザー照射後に、CPCI-NP及びPCI-NPの両方の溶液温度は安定水準に達し、CPCI-NP溶液の温度(78.5℃)は同じ濃度のICGDのPCI-NP溶液の温度よりも約10.5℃高かった。GNRの最高温度(51.2℃)は、以前に報告された他の金ナノ構造の最高温度と同様であった。以前に報告された手順によれば、808nmでのCPCI-NPの光熱変換効率(η)は30.6%と計算され、PCI-NP(24.3%)及びGNR(18.1%)よりも高い。これらの結果は、CPCI-NPがGNRよりも効率的な光熱変換を有することを示している。続いて、CPCI-NP及びPCI-NPの光熱安定性も、FDA承認の光熱剤であるインドシアニングリーン(ICG)と比較して、NP溶液の加熱及び冷却を交互に行うことによって研究した。CPCI-NPは、808nmのレーザー照射を5サイクル行った後でも、堅牢な光熱効率を維持し(
図2g)、PCI-NP及びICGPBS溶液よりもそれぞれわずかに高い安定性及びはるかに高い安定性を維持することが判った。同様に、CPCI-NPは、PCI-NPと比較して、はるかに高い安定水準温度及びより速い温度上昇速度を示した。CPCI-NPのこれらの高い光熱変換効率及び高い安定性は、強力なπ-π相互作用と、架橋によって引き起こされるICGDの高密度組織化に起因することができる(
図2c、2d)。
【0114】
CPCI-NPの高い光熱変換効率をさらに研究するために、組織化及び崩壊の形でのPCI-NP及びCPCI-NPの異なる濃度での蛍光強度の変動を調査した。
図3a及び3bに示されるように、NPのコア内でのICGDの蛍光自己消光により、ミセルPCI-NP及びCPCI-NPの蛍光強度はPBS中では非常に弱かった。対照的に、SDSとともに解離したときに、PCI-NP及びCPCI-NP溶液の蛍光強度は有意に向上されることが判った。一方、PCI-NP及びCPCI-NPの光熱変換測定では、まったく逆の特性、すなわち、ミセル型での高い光熱変換効率及び解離型での低い光熱変換効率が示された。ミセルPCI-NP又はCPCI-NPでのICGDの緻密形態により、808nmでのレーザー照射下で効率的に熱が発生した(
図3c及び3d)。注目すべきは、CPCI-NPの蛍光強度がPCI-NPの蛍光強度よりも弱かった(例えば、10μMのPCI濃度で320対800)一方で、光熱変換効率(温度)がPBS中の同じ濃度でPCI-NPのそれよりも高かったことであり(例えば、10μMのPCI濃度で69.6℃対58.2℃、
図3e及び3f)、CPCI-NPのICGDの構成は励起状態エネルギーを蛍光ではなく、より効率的に熱エネルギーに変換できたことを示している。これらの結果は、安定で緻密なミセル構造が光熱変換剤の熱変換に重要な役割を果たすことを明らかにした。
【0115】
CPCI-NPがインビボで使用されることを考えると、808nmでのレーザー照射下でのCPCI-NPの組織深さ及び温度の関係は、光の代理組織バリアとして厚さ2mmのビーフスライスを使用してインビトロで決定された。TBAIと複合化した後の従来のICGは、対照としてPCLCテロデンドリマーに物理的にカプセル化されていた。
図3g及び3hに示されるように、CPCI-NP及びPCLC/TBAI&ICG-NPを0.8Wcm
-2で30秒間、2mmのビーフスライスを介して808nmでレーザー照射すると、それぞれ70℃及び50℃に達することができる。PCLC/TBAI&ICG NPの温度は、ビーフの厚さを4mmに増加させると、40℃未満に低下することが判った。対照的に、CPCI-NPの温度は、ビーフの厚さを6mmに増加させても、約45℃に達することができた。正常なヒトの皮膚及び顔の皮膚の厚さは一般にそれぞれ4mm及び2mm未満であるため、CPCI-NPによる光熱療法は、黒色腫を含む原発性皮膚癌の治療に使用できる可能性がある。この光熱ナノシステムの優れた性能は、その高いNIR吸光度、卓越した光熱変換効率、より速い加熱能力及び優れた光安定性に起因することができる。
【0116】
CPCI-NPのDOX装填容量
カプセル化されたドキソルビシンがポルフィリンをベースとするナノキャリアの光線療法効果に相乗作用できることが以前に実証された。テロデンドリマーをベースとするミセルナノキャリアの経験に基づくと、CPCI-NPはドキソルビシン(DOX)のための優れたキャリアであることが期待される(
図4a)。
図14aに示されるように、CPCI-NPによるDOXの薬物カプセル化効率は、0.5mgmL
-1のDOX濃度で100%であった。DOX濃度を3mgmL
-1に上げたときに、カプセル化効率は依然として70%を超え、粒子サイズは約20nmのままであり、CPCI-NPの優れた薬物装填容量が確認された。CPCI/DOX-NPは、37℃の水溶液で良好な血清安定性を示した。10%ウシ胎児血清(FBS)が溶液中に存在するときに、CPCI/DOX-NPの粒子サイズは96時間の実験期間にわたって中性環境で変化しなかった(
図4b)。それに対応して、DOXは刺激下でCPCI/DOX-NPから制御可能に放出されうる。カプセル化されたDOX分子の蛍光消光のために、CPCI/DOX-NPPBS溶液はDOXの非常に弱い蛍光シグナルを示した。しかしながら、ジスルフィド結合の切断により、DOXの放出が増加したため、DOXの蛍光強度はGSH(約10mM)中の方が高かった。CPCI/DOX-NPがGSH(約10mM)の存在下で808nm(0.8Wcm
-2、5分)のレーザー照射で摂動されたときに、DOXの蛍光強度はさらに増強されうる(
図4c)。同様の結果は定量的DOX放出実験で示された。
図4dに示されるように、CPCI/DOX-NPからのDOX放出は、典型的なGSH及び光応答性放出プロファイルを示した。GSH及び808nmのレーザー照射がないときに、PBS中ででのDOX放出速度は非常に遅かった(4時間後に5.1%、24時間後に11%未満)。GSH(約10mM)を溶液に加えたときに、24時間後にDOX放出量は30%に増加した。レーザー照射時に常にDOX放出は劇的に増加し、CPCI/DOX-NPがGSH(約10mM)に曝露され、808nmレーザーの順次照射(各回2分、3回)がなされたときに、24時間後にDOXの総放出量はさらに55%に増加することができることは注目に値する。DOXの放出の増強は、おそらくGSH及びレーザーによる光熱変換によって誘発される局所体温上昇による還元環境でのS-S結合の切断によるものであり、どちらも架橋NPからのDOXの拡散を加速することができる。オンデマンドのGSH(又はN-アセチルシステイン)及び光応答性の薬物放出を利用して、CPCI/DOX-NPの有意な部分が腫瘍部位に到達した後に、正常組織に対する化学療法剤の副作用を軽減し、腫瘍部位での細胞毒性効果を高めることができる。
【0117】
CPCI/DOX-NPの細胞取り込み及びインビトロ抗腫瘍活性
CPCI/DOX-NPの細胞取り込み及び細胞内分布は、OSC-3口腔癌細胞における共焦点レーザー走査顕微鏡(CLSM)によって評価された。共焦点蛍光顕微鏡写真は、DOX及びCPCI-NPの細胞内分布を明確に示した(
図4e)。6時間のインキュベーション後に、ICGDからの緑色蛍光シグナルの大部分は細胞質に残っていた。対照的に、DOX蛍光はこの時点で主に核で観察され、赤色のDOX及び青色の4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)蛍光が重なるため、核はピンク色になった。この結果は、CPCI/DOX-NPが癌細胞に急速に取り込まれ、次いで、カプセル化されたDOXが短時間でDNA挿入のために核に放出できることを明らかにした。
【0118】
CPCI/DOX-NPの相乗的な化学/光熱効果を、MTSアッセイによってOSC-3細胞で評価した。
図4fに示されるように、レーザーを使用しないCPCI-NPは、12時間のインキュベーション後に、高濃度(200μgmL
-1)でも細胞に対して無視できる毒性を示した。しかしながら、808nmNIR照射(0.8Wcm
-2、2分)を適用したときに、CPCI-NP濃度が増加するにつれて、OSC-3細胞の生存率は有意に低下した。細胞生存率は200μgmL
-1の濃度で5%未満であり、CPCI-NPの光熱効果が癌細胞を効果的に殺すことができることを示している。化学療法/光熱相乗療法の効果を、50μgmL
-1の濃度のCPCI-NPを使用してさらに研究した。この低濃度のCPCI/DOX-NPのみの場合に、レーザー照射なしでわずか45%の細胞は殺された。非常に対照的に、細胞を808nmレーザー照射と組み合わせたCPCI/DOX-NPで処理すると、85%を超える細胞は殺された。これは、遊離DOX(61%の細胞生存率)又は808nmレーザー照射下でのCPCI-NP(細胞生存率46%)よりも効果的であった(
図5g)。生/死細胞をDiO(緑色蛍光)及びヨウ化プロピジウム(PI、赤色蛍光)で共染色した。
図4hに示されるように、808nmのレーザー照射下でCPCI/DOX-NPで処理した後に、ほとんどの細胞はアポトーシス/死滅し、ヨウ化プロピジウム(PI)によって赤色蛍光で染色されたが、他の対照群では、緑色蛍光を発する有意な量の生細胞は依然として観察できた。組み合わせ指数を計算することによる併用治療効果を決定した。結果は、DOX及びCPCI-NP濃度の増加に伴い、DOXとCPCI-NP+光との間でインビトロで腫瘍細胞を殺す優れた相乗効果を示した(
図4i及び4j)。アネキシンFITC/PIアッセイは、OSC-3細胞に対する上記の相乗作用が細胞アポトーシスの増強をもたらすことができるかどうかを明らかにするために行われた。
図17に示されるように、808nmレーザー照射もCPCI-NPも有意なアポトーシス促進効果はなかった。比較すると、レーザー照射なしのCPCI/DOX-NP及びレーザー照射ありのCPCI-NPの両方がアポトーシスを増強することができ、それぞれ27.39%及び27.31%のアポトーシス細胞をもたらした。CPCI/DOX-NPをレーザー照射と組み合わせて使用したときに、アポトーシス細胞の割合はさらに51.1%に増加した。これは、MTSの結果と一貫していた。
【0119】
CPCI/DOX-NPの生体内分布及び薬物送達
CPCI/DOX-NP+808nmレーザー照射の相乗的機能をインビトロ実験で実証した後に、動物腫瘍モデルにおけるその有効性を評価した。CPCI-NPの潜在的な毒性を調査するために、3つの用量レベルのCPCI-NPを健康なBalb/cマウスに静脈内投与し(テロデンドリマーに基づいて50、100及び200mgkg
-1)、血清化学及び血球数について1日目及び3日目に採血した。白血球(WBC)、リンパ球、好酸球、赤血球分布幅(RDW)、血小板及び平均血小板量(MPV)は1日目及び3日目に正常であった(
図15)。同様に、肝機能検査(アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、ビリルビン)、腎パネル(血中尿素窒素、クレアチニン)及びその他の血液化学(アルブミン、総タンパク質、コレステロール、高密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質及びトリグリセリド) )はすべて正常であることがわかり(
図16)、明らかな肝及び腎毒性は見られなかった。CPCI-NPは、生体適合性の高い光熱変換ナノ剤であり、マウスに有意な副作用はないと結論付けることができる。CPCI-NPはジスルフィド結合で架橋されているので、循環中は比較的安定していると予想される。遊離ICG、テロデンドリマーを含むPCLCシステインで同時カプセル化されたICG及びTBAI(PCLC/TBAI&ICG NP)、及び、CPCI-NPを比較する薬物動態研究を、メスのSprague-Dawleyラットで実施した。
図5aに示されるように、親水性のないICGは組織内に急速に拡散し、静脈内投与後30分以内に循環から排除された(t
1/2=5.22分; AUC=12.091mg/L*h)。48時間の静脈内注射後に、血中のPCLC/TBAI&ICG NPからのICGの濃度は、組織1グラムあたり9.4%の注射用量(%ID g
-1)に減少することがわかった(t
1/2=28.421; AUC=677.571mg/L*h)。対照的に、CPCI-NPからのICGDの約20.4%IDg
-1はまだ血液循環中にあり(t
1/2=41.098; AUC=1196.274mg/L*h)、ICGD及びCPCI-NPの高い安定性を示す。
【0120】
CPCI/DOX-NPの粒子サイズは約20nmであり(
図2d)、これは腫瘍の標的化及び浸透に最適なサイズである。CPCI/DOX-NPは、サイズが比較的小さく、可逆的に架橋する性質及び独特のアーキテクチャ依存性の近赤外蛍光特性により、血液中のバックグラウンド抑制による癌検出の改善、ならびに優先的な腫瘍部位での蓄積及びシグナル増幅のための活性化可能な光学ナノプローブとしての使用に特に適している。
図4cは、CPCI/DOX-NP(DOX:1.25mgkg
-1、PCIテロデンドリマー:12.5mgkg
-1及びPCLCテロデンドリマー:12.5mgkg
-1)の静脈内(i.v.)注射後の上皮内(in situ)OSC-3口腔癌を有する無胸腺マウスの近赤外蛍光イメージングを示している。腫瘍部位でのICGDの蛍光シグナル(緑色蛍光タンパク質(GFP)で示される)は時間依存性であり、CPCI/DOX-NP注射の36時間後にピークに達することが判った(
図5c)。腫瘍部位での強い蛍光は、注射後48時間でも明らかな減衰を示さず、それはCPCI/DOX-NPの持続的な腫瘍蓄積を意味し、これはインビボでの光線療法を開始するための広い時間ウィンドーを意味した。注射後48時間で収集された主要臓器及び腫瘍の生体外イメージングに基づく半定量的生体内分布は、CPCI/DOX-NPの高い腫瘍取り込みを示した(
図5d及び5f)。一方、CPCI/DOX-NPの腫瘍蓄積をさらに検証するために、腫瘍組織スライスを蛍光顕微鏡で観察した。
図5eに示されるように、ICGD(緑色)及びDOX(赤色)の非常に一貫する蛍光シグナルが腫瘍領域に同時に現れた。
【0121】
CPCI/DOX-NPの尾静脈投与後の同所性OSC-3口腔癌を有するヌードマウスにおける経時にわたるDOXの組織分布を決定した。注射の24時間後、48時間後及び5日後に、腫瘍及び正常臓器におけるDOX濃度を、高圧液体クロマトグラフィー質量分析(HPLC-MS)によって測定した。
図5gに示されるように、CPCI/DOX-NP投与の24時間後に、腫瘍、肝臓、さらには腎臓でのDOXの有意な蓄積が認められた。しかしながら、肝臓及び腎臓におけるDOXの蓄積濃度は、時間の経過とともに、特に5日後に急速に消失された。さらに刺激的なことに、腫瘍部位でのDOX濃度は、CPCI/DOX-NPの注射5日後でも組織1gあたり最大約2μgであった。これは、以下に示す抗腫瘍効果を説明することができる。DOXは一般的に多くの異なる癌を治療するために使用され、心毒性及び骨髄抑制は、この非常に重要な薬の毒性副作用を制限する用量である。幸い、
図5e及び5gによると、心臓内のICGDの蛍光強度及びDOX濃度は非常に低く、心臓内のCPCI/DOX-NPの蓄積が少なく、DOX放出が少ないことを示す。この非常に重要な属性は、CPCI/DOX-NPの将来の臨床応用を成功させるために必要である。
【0122】
CPCI/DOX-NPに基づくインビボ光熱/化学療法の相乗効果
CPCI/DOX-NPシステムの卓越した生体内分布及びインビトロ抗腫瘍活性に後押しされて、同所性口腔癌を有する無胸腺マウスにおける治療効果研究を次に実施した。最初に、CPCI/DOX-NPのインビボ光熱効果を調べた。PBS、PCI-NP、CPCI-NP又はCPCI/DOX-NPの全身投与の24時間後に、生きているマウスの腫瘍領域に、0.8 Wcm
-2の出力強度の808nmレーザーで2分間照射した。
図6a及び6bに示されるように、レーザー照射時に、CPCI-NP群及びCPCI/DOX-NP群の両方の腫瘍領域の平均温度は約50℃上昇した。これは、PCI-NP(ΔT≒36.5℃)群の平均温度の約1.37倍高く、PBS(ΔT≒5.6℃)群の8.92倍高い。そのような高い温度上昇は、癌細胞に不可逆的な損傷を引き起こすのに十分すぎるほどであった。CPCI-NP又はCPCI/DOX-NP群の腫瘍部位が40℃を超えて急速に加熱されるのに45秒しかかからなかったことは注目に値する。これは、インビトロ試験での高速加熱速度と一貫していた。これらの結果は、CPCI/DOX-NPがNIR光エネルギーを効率的に吸収し、光熱療法のために生体内で局所熱に変換できることを明確に示した。
【0123】
これらの光熱剤の治療効果を、同所性OSC-3細胞口腔癌を有するヌードマウスにおいて調査した。マウスをランダムに5つの群に分けた:(1)PBS、(2)遊離DOX、(3)PCI-NP、(4)CPCI-NP及び(5)CPCI/DOX-NP。近赤外線レーザー照射(808nm、0.8Wcm
-2で2分間)をすべての群で使用した。動物実験の設計を
図6cに示した。腫瘍体積が約50mm
3に達したときに、CPCI/DOX-NPを尾静脈内注射し、次いで、腫瘍領域を、注射後24時間及び48時間(すなわち、2日目及び3日目)で808nmレーザー照射に2分間(0.8Wcm
-2)曝露した。その後、同じ治療レジメン(光熱剤及びそれに続く光照射)を7、8及び9日目に繰り返した。
図6dに示されるように、PCI-NP群、CPCI-NP群及びCPCI/DOX-NP群は治療の最初の10日間で満足できる抗腫瘍効果を示した。しかしながら、PCI-NP群及びCPCI-NP群の両方で、腫瘍は10日目の後に原発部位で再成長し始めた。対照的に、CPCI/DOX-NP+レーザー照射を受けた動物では完全な腫瘍寛解が達成され、光熱/化学療法の相乗的治療有効性が検証された。
図5eは、CPCI/DOX-NP+レーザー照射で治療されたマウスの写真を示している。28日目に腫瘍は発見されなかった。さらに、治療後の体重に有意な変化はなかった(
図18)。組織学的分析により、CPCI/DOX-NP+808nmレーザー照射の処置で、ほとんどの腫瘍細胞が破壊され、腫瘍切片において、他の群よりもはるかに低いレベルの核多型及びより低い癌細胞密度を有することをさらに確認した(
図6f)。
【0124】
CPCI/イミキモド-NPに基づくインビボ光熱/免疫療法の相乗効果
上述の実験結果は、CPCI/DOX-NPが、治療領域が光にアクセスできる場合の局所治療のための非常に効果的な光線療法システムであることを明確に示している。しかしながら、癌はしばしば再発及び転移を伴い、癌による死亡の大部分は転移によって引き起こされる。過去数年間で、チェックポイント遮断抗体を用いた免疫療法は臨床的に非常に有望であることが証明されているが、奏効率は腫瘍の種類によって大きく異なる。イミキモドは、トール様受容体7に結合する免疫応答修飾因子であり、米国食品医薬品局(FDA)により、性器いぼ、表在性基底細胞癌及び光線性角化症の局所治療薬として承認されている。それは毒性が強すぎて全身投与できない。CPCI-NPの優れたカプセル化能力により、イミキモドは、EPR効果による腫瘍蓄積のために、22±4nmの望ましいナノ粒子サイズを維持しながら、非常に高い薬物カプセル化能力(イミキモド濃度:0.5mgmL
-1)でCPCI-NPのコアに装填されうる(
図7b)。新しいCPCI/イミキモド-NPに基づく光熱/免疫療法をPD-1チェックポイント遮断療法と組み合わせて、転移性腫瘍に対する抗癌相乗治療効果を高めることができるかどうかを調査した(
図6a)。
【0125】
動物実験の設計を
図7cに示す。転移腫瘍の人工模倣物(両側乳房腫瘍モデル)は、同じ免疫担当マウスの左右の乳腺脂肪パッドの両方に4T1細胞を同所注射することによって開発された。左の腫瘍は光で治療される原発腫瘍として指定され、右の腫瘍は光治療なしで遠隔腫瘍又は「転移性」腫瘍として接種された。マウスをランダムに7つの群に分けた:(群あたりn=6):(1)PBS(未処理)、(2)2サイクル治療のためのCPCI/イミキモド-NP、(3)2サイクル治療のためのレーザー照射を組み合わせたCPCI-NP、(4)2サイクル治療のためのレーザー照射を組み合わせたCPCI/イミキモド-NP、(5)2サイクル治療のためのCPCI/イミキモド-NP+抗PD-1、(6)1サイクル治療のためのレーザー照射を組み合わせたCPCI/イミキモド-NP+抗PD-1、(7)2サイクルの治療のためのレーザー照射を組み合わせたCPCI/イミキモド-NP+抗PD-1。群7では、腫瘍体積が約50mm
3に達したときに、CPCI/イミキモド-NP溶液を尾静脈内を介して注射した。注射の24時間後に、原発腫瘍を808nmレーザー照射に2分間局所曝露した(0.8Wcm
-2)。その後、2日目にマウスに抗PD-1(α-PD-1)をマウス1匹あたり200μgの用量で腹腔内(ip)注射した。その後、2回目のサイクル投与(CPCI/イミキモド-NPの静脈内注射、腫瘍局所レーザー照射及びα-PD-1の腹腔内注射)を6、7及び8日目に1回繰り返した。異なる群の原発腫瘍及び遠隔腫瘍の成長を1日おきにキャリパーで測定した。
図7dに示されるように、808nmレーザーで局所的に照射されたすべての群の原発腫瘍は、CPCI-NPをベースとする初期段階の光熱療法によってほぼ排除された。2回目のレーザー照射などのさらなる治療の欠如、又は、イミキモドもしくはα-PD-1免疫効果の欠如により、レーザー照射後に、対照群3、4及び6でわずかな腫瘍再発が起こった。群5(CPCI/イミキモド-NP+α-PD-1)は、原発腫瘍の成長の抑制をある程度遅らせたが、レーザー照射なしでは腫瘍を排除できなかったことは注目に値する。著しく対照的に、CPCI/イミキモド-NP及びα-PD-1の組み合わせの2サイクルの併用療法(群7)は、最初の16日以内に再発することなく原発腫瘍を有意に排除でき、このような非特異的併用免疫療法は癌治療に効果的であることができることを示す。
【0126】
一方、
図7eに示されるように、それらの原発腫瘍がCPCI/イミキモド-NPをベースとするPTTによって切除されたマウスでは、それらの遠隔腫瘍の成長も部分的に遅れた。特に群7では、それらの遠隔腫瘍はほぼ完全な消失を示し、群5(CPCI/イミキモド-NP及びα-PD-1治療、ただし原発腫瘍のPTTなし)で得られたものよりもはるかに優れた効果を達成した。原発腫瘍のためのPTTがまた、遠隔腫瘍に対する明らかな抑制効果を誘発したことを検証した。群7で治療したマウスの原発性腫瘍及び遠隔腫瘍の体積変化の代表的な写真を示した(
図7f)。別の対照物として、群4(CPCI/イミキモド-NPをベースとする原発腫瘍のPTTとともにα-PD-1遮断療法)によって誘発された免疫応答は、群3(イミキモドなし)よりもはるかに優れており、それらのNPが強力な免疫応答を引き起こすためにイミキモドの使用が重要な役割を担うことを示している。最後になるが、原発腫瘍群4(α-PD-1なし)又は群6(α-PD-1治療のみ1サイクル)のCPCI/イミキモド-NPをベースとするPTTによって誘発される免疫応答は、初期の日々における時に二次腫瘍の成長を阻害することしかできなかった。これは、腫瘍細胞を認識するためにT細胞を活性化することにより、腫瘍細胞を継続的に殺す上で、α-PD-1遮断治療戦略が中心的な役割を果たしたことを明らかにした。α-PD-1療法と組み合わせたCPCI/イミキモド-NPをベースとするPTTによって引き起こされる相乗的抗腫瘍効果のメカニズムをさらに調査した。実験において、マウスを1サイクルの治療のために4つの群に分けた(群1:PBS、群2:CPCI/イミキモド-NP、群3:CPCI/イミキモド-NP+レーザー照射、群4:CPCI/イミキモド-NP+レーザー照射+抗PD-1、群あたりn=6)。そして、マウスを犠牲にし、H&E染色、RT-PCR及びIHCによる評価のために、腫瘍残留組織の両側を収集した。H&E染色は、群3及び4で原発腫瘍の細胞破壊及びアポトーシスの広い領域を直接示し、免疫療法効果の応答のために遠隔腫瘍も縮小した。これは、対照物群1及び2とは明らかに対照的であった(
図7g)。イミキモドは強力なTLR7アゴニストであり、TLR-7分泌サイトカイン(IFN-α、IL-6及びTNF-α)を介してナチュラルキラー細胞、マクロファージ及びBリンパ球を活性化し、免疫応答の活性化をさらに促進することができる。RT-PCRによるIFN-α、TNF-α、IL4、IL6(細胞性免疫関連マーカ)及びIL-12(自然免疫マーカ)遺伝子発現を評価した。
図7hに示されるように、レーザー照射を行った原発腫瘍側でのこれらの免疫マーカの相対的発現は、レーザー照射を行わなかった場合よりも高く、PTTが切除腫瘍細胞残留物から腫瘍関連抗原を産生することによって強力な腫瘍特異的免疫応答を誘導することができることを検証した。さらに、遠隔腫瘍におけるこれらの免疫マーカの相対的発現は、原発腫瘍の光照射(群3及び4)の重要性を示している。細胞傷害性Tリンパ球(CD8
+)は、標的となる癌細胞を直接殺すことができ、一方、CD3
+及びCD4
+ヘルパーT細胞も適応免疫の調節において重要な役割を果たすことができる。両側の腫瘍のこれらのタンパク質発現(CD8
+、CD3
+、CD4
+及びPD-1)が検証された。
図7iに示されるように、PTT治療の効果により、治療された原発腫瘍(群3及び4)の腫瘍細胞数は有意に少なく見えた。さらに、遠隔腫瘍側のCD8
+、CD3
+、CD4
+及びPD-1T細胞は、PBS及びイミキモドのみの群よりも群3及び4(イミキモド及び光線療法の組み合わせ群)ではるかに多く見られた。これらの結果は、CPCI/イミキモイド-NP及び抗PD-1チェックポイント遮断抗体の全身投与を局所PTTと併用して、局所及び遠隔転移腫瘍に対して非常に有効であることを明確に示している。この治療概念は非常に翻訳可能であり、臨床試験で試験することができる。
【0127】
免疫記憶効果
相乗的光熱免疫療法(α-PD-1を組み合わせたCPCI/イミキモドをベースとするPTT)によって誘発された免疫記憶を評価するために、二次4T1腫瘍を、最初に移植された腫瘍の除去から50日後に原発側及び遠隔側の両方に接種した。同じ年齢で、PBSで注射したマウスを対照とした。同様に、α-PD-1は、2つの群のマウスに67日目及び73日目に2回腹腔内注射した(毎回マウスあたり200μg)(
図8a)。
図8b及び8cに示されるように、腫瘍体積は、α-PD-1の注射を用いた場合でもPBS群において急速に増加した。著しく対照的に、α-PD-1と組み合わせて与えられたCPCI/イミキモド-NPをベースとするPTTによる相乗的治療戦略は、両側で再接種された腫瘍の成長を有意に遅らせることができ、この戦略は先天性及び適応性免疫システムの活性化を介して免疫記憶効果を有することを示している。残念ながら、この戦略は腫瘍の成長を遅らせるだけで、腫瘍の再発を完全に抑制することはできなかった。これはおそらく、最初の治療で生成された十分な腫瘍関連抗原が不足しているためである。
【0128】
議論
光熱療法に使用される近赤外光熱変換剤(PTCA)は、長年にわたって調査され、様々な腫瘍モデルに適用されてきたが、腎臓からの急速な排泄又は肝臓によるインビボでの代謝及び長時間のレーザー照射下での分解/退色を含むその光熱変換効率及び安定性を改善することに依然として大きな課題が残っている。したがって、光熱癌治療のための新世代の高安定性及び高性能PTCAを開発する緊急の必要性が存在する。ドキソルビシンなどの細胞毒性化学療法剤がPTTの抗腫瘍効果に相乗作用できることは、以前及び現在の研究から明らかである。癌関連の死亡の大部分は転移によるものであるので、転移性疾患に対する効果的な全身療法を開発する必要性が非常に高い。免疫療法、特にモノクローナル抗体によるチェックポイント遮断療法は、臨床癌を治療するための非常に有望なアプローチとして近年浮上している。そのような治療法は、癌と戦うために患者自身の免疫系を動員することができる。近年、PTTは、切除された腫瘍細胞残留物から腫瘍関連抗原を生成して抗腫瘍免疫を改善することにより、抗腫瘍免疫学的効果を生み出すこともできると報告されている。
【0129】
ここで、優れたPTCAとして機能するだけでなく、癌治療のための便利で効率的な制御薬物送達システムとしても機能することができる、新しいテロデンドリマーをベースとする高性能光熱ナノ粒子(CPCI-NP)の開発は報告されている。ジスルフィド結合によるポリマー間架橋と組み合わせたテロデンドリマーへのICGDの共有結合により、CPCI-NPは高密度のICGDを集め、π電子相互作用は自己集合後の高い光熱変換効率及び光安定性を保証する。CPCI-NPの光熱変換効率は、5サイクルのレーザー照射後も高いままであった(70℃を超える)。CPCI-NP溶液の温度が60秒の照射(808nm、0.8Wcm
-2)の直後にほぼ最大に達したことは注目に値する。これは、ICGDの独自の構成がこの望ましい光熱特性に寄与していることを示唆している。疎水性ICGD及び顔面両親媒性コール酸単位を含むハイブリッドテロデンドリマーは、化学療法剤又は免疫調節剤のカプセル化及び送達のための理想的なプラットフォームを提供した。例えば、CPCI/DOX-NPは理想的な小さな粒子サイズ(約20nm)を有し、標的腫瘍部位に蓄積し、より長い血液循環(36時間後の腫瘍部位のCPCI/DOX-NPの最大濃度)の後に深い治療のために深い組織に浸透する傾向がある。ジスルフィド架橋の存在は、NPの安定性を保証し、血液循環におけるDOXの早期放出を制限し、一方、DOXは、細胞の還元環境下、808nmレーザー照射下(
図4f)、又はN-アセチルシステインの投与によるオンデマンド放出の下で、NPから制御可能に放出されうる。
【0130】
同所性口腔癌異種移植モデルを使用することは、CPCI/DOX-NPとの光熱/化学療法の組み合わせが、ナノ粒子の投与の24時間及び48時間後のレーザー照射を用いて非常に効果的であることを示した。CPCI/DOX-NPの有意な部分は少なくとも5日まで腫瘍部位に残るので、5日間にわたって光線療法を複数回繰り返すことができるものと考えられる。そのような治療アプローチは、腫瘍が退縮しながら継続的な光線療法を可能にし、その結果、表面の5mmを超えるさらに深い腫瘍に到達することができる。ICGDが選択された理由は以下の通りである。(1)吸収波長が長く(808nm)、したがって光線療法の光透過が深い、及び(2)蛍光発光波長808nmのICGはすでに数十年にわたって光イメージングプローブとして診療所ですでに使用されている。したがって、CPCI/DOX-NPは、優れたPTCAとして機能することができるだけでなく、画像誘導手術のための腫瘍標的プローブとしても使用することができる。さらに、腫瘍の縁及び腫瘍床が手術室で光線療法に容易にアクセスできるときには、術中の光熱療法に使用される大きな臨床的可能性がある。
【0131】
局所療法に加えて、CPCI-NPはまた、特にFDA承認されたイミキモドなどの免疫調節剤が装填されたときに、全身性免疫療法に使用することができる。CPCI-NPでカプセル化すると、静脈内イミキモドの毒性ははるかに低く、EPR効果を介してすべての腫瘍部位にイミキモドを全身投与することができる。表在性腫瘍又は内視鏡検査にアクセス可能な腫瘍の局所光照射は、腫瘍関連抗原及び免疫細胞の感作を局所的に生成し、その後に、他の転移性腫瘍部位に播種し、アブスコパル抗腫瘍効果を引き起こすと予想される。このような光免疫療法は、チェックポイント遮断抗体と併用すると非常に効果的であることが期待される。この概念を、4T1同系同所性乳癌モデルで試験した。CPCI/イミキモド-NPの全身注入後の原発腫瘍のNIR誘発光熱切除時に、放出された腫瘍関連抗原は、特に抗PD-1チェックポイント遮断療法の助けを借りて、強力な免疫応答を示し、多くの抗原特異的T細胞を活性化し、一方、免疫抑制性調節性T細胞(Treg)の活性を阻害する。これは、マウスの体内に残っている遠隔腫瘍細胞を攻撃することができる。別の実験は、この組み合わせの光免疫療法戦略が、治療されたマウスが新しい4T1腫瘍細胞の移植によって再チャレンジされたときに、腫瘍形成を有意に遅らせ、腫瘍増殖を遅らせることができることを示している。
【0132】
要約すると、共組織化された二元テロデンドリマーをベースとする新世代のPTCAは、優れた光熱変換効率、加熱能力及び光熱療法の安定性を示した。さらに、上皮内口腔癌の相乗的治療のための化学療法及び転移性乳癌の相乗的治療のための免疫療法をそれぞれ組み合わせた多機能ナノプラットフォームとして利用することができる。この非常に有望なナノプラットフォームは、多くの異なる腫瘍タイプに対する臨床翻訳の大きな可能性を示している。腫瘍標的リガンドをナノキャリアに導入することにより、それらの有効性をさらに改善できることが期待される。
【0133】
方法
材料
モノメチル末端ポリ(エチレングリコール)モノアミン(MeO-PEG-NH2、Mw:5000Da)をRapp Polymere(ドイツ)から購入した。4-カルボキシフェニルボロン酸、4-カルボキシフェニルボロン酸ピナコールエステル、3-カルボキシ-5-ニトロフェニルボロン酸及び3-カルボキシ-5-ニトロフェニルボロン酸ピナコールエステルをCombi-Blocks(San Diego, CA)から入手した。(Fmoc)lys(Boc)-OH、(Fmoc)Lys(Fmoc)-OH、(Fmoc)Cys(Trt)eOH及び(Fmoc)Ebes-COOHをAnaSpec Inc.(San Jose, CA)から購入した。他のすべての化学物質はSigma-Aldrich(St. Louis)から購入した。
【0134】
インドシアニングリーン誘導体(ICGD)の合成
端的には、1,1,2-トリメチルベンズ[e]インドール(I)及びヨードエタン(1.5当量)をアセトニトリル溶液中で90℃の加熱還流下で3日間反応させた。その後、エーテルを加えて、3-エチル-1,1,2-トリメチル-1H-ベンゾ[e]インドール-3-イウム(生成物II)を生成した。次に、粗生成物(II)を無水酢酸中のN-[5-(フェニルアミノ)-2,4-ペンタジエニリデン]アニリン一塩酸塩(1当量)に加えた。混合物を100℃に1.5時間加熱し、RTに冷却し、脱イオン水に加えた。ろ過後に、生成物(III)3-エチル-1,1-ジメチル-2((1E, 3E, 5E)-6-(N-フェニルアセトアミド)ヘキサ-1,3,5-トリエン-1-イル)-1H-ベンゾ[e]インドール-3-イウムを得た。さらに、1,1,2-トリメチルベンズ[e]インドール(I)及びヨウ化カリウムの5-ブロモ吉草酸(1.2当量)をアセトニトリル溶液中で100℃の加熱還流下で5日間反応させた。その後、エーテルを加えて、3-(4-カルボキシブチル)-1,1,2-トリメチル-1H-ベンゾ[e]オンドル-3-イウム(IV)を生成した。最後に、粗IVをピリジンのIIIに加えた。混合物を40℃で30分間加熱し、真空中で濃縮して最終生成物を得た。最終的な粗生成物をシリカゲルカラムで2回精製して、ICGDを得た。
【0135】
テロデンドリマーの合成
最初の代表的なICGD/CAテロデンドリマー(PEG5k-ICGD4-CA4、PICと略記)を、公開されている方法(Liら、Biomaterials 2011, 32(27), 6633-6645)に従って段階的なペプチド化学を利用して、MeO-PEG-NH2から液相縮合反応を介して合成した。端的には、カップリング反応の完了を示す負のカイザー試験結果が得られるまで、カップリング試薬としてDIC及びHOBtを使用してPEGのNH2末端に(Fmoc)Lys(Fmoc)-OH(3当量)をカップリング反応させた。冷エーテルを加えることによりPEG化分子を沈殿させ、次に冷エーテルで2回洗浄した。ジメチルホルムアミド(DMF)中の20%(v/v)の4-メチルピペリジンで処理することによりFmoc基を除去し、PEG化分子を沈殿させ、冷エーテルで3回洗浄した。白色粉末沈殿物を真空下で乾燥させ、(Fmoc)Lys(Fmoc)-OHの1つのカップリング及び(Fmoc)lys(Boc)-OHの1つのカップリングをそれぞれ行って、PEGの1つの端部で4つのBoc及びFmoc基を末端とする第3世代の樹枝状ポリリジンを生成した。CA NHSエステル及びICGDは、それぞれ20%(v/v)の4-メチルピペリジンでFmocを除去し、ジクロロメタン中の50%(v/v)トリフルオロ酢酸でBoc基を除去した後に、樹枝状ポリリジンの末端に結合した。テロデンドリマー溶液をろ過し、次に3.5KDaのMWCOで水に対して透析により分離した。最後に、テロデンドリマーを凍結乾燥した。
【0136】
第二のチオール化テロデンドリマー(PEG5k-Cys4-L8-CA8として命名され、PCLCと略される)は、USPN 10,106,650 B2に従って合成された。端的には、PEGの一端に4つのBoc及びFmoc基を末端とする第3世代の樹枝状ポリリジンを最初に上記の方法に従って合成した。ジクロロメタン(DCM)中の50%(v/v)トリフルオロ酢酸(TFA)でBoc基を除去した後に、(Fmoc)Cys(Trt)eOH、(Fmoc)Ebes-OH及びコール酸NHSエステルを樹枝状ポリリジンの末端に段階的に結合した。システイン上のTrt基は、TFA/H2O/エタンジチオール(EDT)/トリエチルシラン(TIS)(94:2.5:2.5:1、v/v)によって除去され、PCLCチオール化テロデンドリマーが生成された。チオール化テロデンドリマーを、DMF及びエーテルをそれぞれ用いた3サイクルの溶解/再沈殿によって混合物から回収した。最後に、チオール化テロデンドリマーをアセトニトリル/水に溶解し、そして凍結乾燥した。
【0137】
PIC及びPCLCテロデンドリマーの分子量は、R-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸をマトリックスとして使用して、ABI 4700 MALDI-TOF/TOF質量分析計(線形モード)で収集した。テロデンドリマーの単分散質量トレースが検出され、MALDI-TOF MSからのテロデンドリマーの分子量は理論値とほぼ同じであった。テロデンドリマーの1HNMRスペクトルを、溶媒としてCDCl3を使用して、Avance 600核磁気共鳴分光計(Bruker)で記録した。
【0138】
CPCI-NPの調製
10mgのPICテロデンドリマーを1mLのPBSに溶解した後に、10分間超音波処理してPIC NPを形成した。CPIC NPを作成するために、10mgのPCLCテロデンドリマー及び10mgのPCIテロデンドリマーを1mLのPBS中に溶解してミセルを形成し、次いで10分間超音波処理した。テロデンドリマー上のチオール基は、空気によって酸化されてジスルフィド結合を形成した。
【0139】
CPCI/DOX-NPの調製
DOX又はイミキモドなどの疎水性薬物を、溶媒蒸発法によってCPIC NPに装填した。DOXをNPにカプセル化する前に、DOX・HClを、クロロホルム(CHCl3)/メタノール(MeOH; 1:1、v/v)中のトリエチルアミン3モル当量とともに撹拌して、DOX・HClからHClを除去した。全部で、10mgのPCIテロデンドリマー及び10mgのPCLCテロデンドリマーを異なる量の中和されたDOXとともに最初にCHCl3/MeOHに溶解し、混合し、ロータベーパ上で蒸発させて、均質な乾燥ポリマーフィルムを得た。フィルムを1mLのPBS中で再構成し、次いで、30分間超音波処理し、サンプルフィルムをナノ粒子溶液中に分散させた。最後に、ナノ粒子溶液を0.22mmフィルタでろ過してサンプルを滅菌した。薬物の量を決定するために、薬物装填ナノ粒子をDMSO(NP溶液/DMSO、1:9、v/v)で希釈して、ナノ粒子を解離させた。薬物装填をHPLCシステム(Waters)で分析した。ここで、検量線は、様々な濃度の一連の薬物/DMSO標準溶液を使用して取得した。イミキモドを装填したCPIC NPは、3モル当量のトリエチルアミンを使用しないことを除いて、同様の方法で調製した。
【0140】
ナノ粒子の特性化
ナノ粒子のサイズ及びサイズ分布を、DLS機器(Microtrac)によって測定した。DLS測定のために濃度を1.0mgmL-1に維持した。すべての測定を25℃で行った。ナノ粒子のモルホロジーをフィリップスCM-120TEMで観察した。端的には、ナノ粒子水溶液(1mgmL-1トレデンドロマー)を銅グリッド上に堆積させ、ホスホタングステン酸で2秒間染色し、室温で測定した。粒子のサイズをTEMソフトウェア(Digital Micrograph, Gatan Inc)を使用して分析した。 NPのUV-vis-NIR吸収スペクトルは、Genesys 10S UV-Vis分光光度計(Thermo Scientific, Waltham, MA)で測定した。NPの蛍光シグナルを、蛍光分光法(SpectraMax M2, Molecular Devices, Suunyvale, CA, USA)で測定した。
【0141】
SDS及びヒト血漿中のナノ粒子の安定性
ポリマーミセルを効率的に分解できることが報告されているSDSの存在下でのPCI-NP及びCPCI-NPの蛍光及び粒子サイズの変化をモニターするために安定性研究を実施した。ナノ粒子の水溶液(1.5mgmL-1)にSDS溶液(7.5mgmL-1)を加えた。最終的なSDS濃度は2.5mgmL-1であり、ミセル濃度は1.0mgmL-1に保たれた。溶液の蛍光シグナルを蛍光分光計で測定した。ナノ粒子溶液のサイズ及びサイズ分布をDLSによって所定の時間間隔でモニターした。ミセルの安定性は、SDSと一緒にGSH(10mM)の存在下でも評価した。DOXを装填するCPCI/DOX-NPの安定性を、健康なヒトボランティアからの10%(v/v)血漿でさらに研究した。混合物を生理的体温(37℃)でインキュベートし、次いで、96時間までの所定の時間間隔でサイズ測定した。
【0142】
ナノ粒子の光熱効果
1mLのPCI-NP(ICGD用量30μgmL-1)、CPCI-NP(ICGD用量30μgmL-1)及びポリエチレングリコール(PEG)でコーティングされた金ナノロッド(GNR濃度:18μgmL-1)をそれぞれ4mLの透明な石英バイアル中に添加した。この溶液に、ファイバー結合連続半導体ダイオードレーザー(808nm、Beijing Viasho Technology Co., Ltd., China)で照射した。電力密度は0.8Wcm-2であり、温度は熱赤外線イメージングカメラ(Flir C2, USA)でモニターした。CPCI-NPの光安定性を調べるために、1mLのCPCI-NP(30μgmL-1でのICGD濃度)、PCI-NP(30μgmL-1でのICGD濃度)又はICG(30μgmL-1)水溶液を808nmレーザーを5分間照射し、次いで、室温まで冷却した。
【0143】
ナノ粒子のインビトロ侵入深さ及び熱効果
808nmでのレーザー照射下でのCPCI-NPの加熱効果及び組織侵入深さの関係を調査するために、インビトロでのシミュレーション実験を最初に設計した。この実験を、(1)CPCI-NP及び(2)PCLC/TBAI&ICGNPの2つの群に分けた。群(2)を以下の方法で調製した。静電相互作用を介した遊離ICG及びヨウ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAI)の複合体は、PCLC/TBAI&ICGNPと呼ばれるPCLCトレデンドリマー中に物理的にカプセル化できた。シミュレーション組織としてホットポットビーフを選び、四角片に切断した(各ピースの厚さ:2mm)。100μLのCPCI-NP(30μgmL-1でのICGD濃度)又はPCLC/TBAI&ICG NP(遊離ICG濃度:30μgmL-1)溶液を、ビーフの表面にたらし、808nmレーザー(0.8Wcm-2、2分)をデバイスの下から印加した。温度及びビーフ片の厚さを熱赤外線カメラによって記録した。
【0144】
CPCI/DOX-NPからのDOX放出
CPCI/DOX-NPからのインビトロDOX放出プロファイルを透析法によってさらに測定した。薬物放出実験を3つの群(n=3)に分けた:(1)PBS、(2)GSH(10mM)、(3)NIR照射(808nmレーザー、0.8Wcm-2)とともにGSH(10mM)。まず、500μLのCPCI/DOX-NP溶液(DOX濃度1mgmL-1)を透析バッグに移し、DI水に対して透析した。すべての群を、最初に、振とうしながら37℃で4時間評価した。その後、群(2)はGSHが添加された。群(3)はGSHが添加され、適切な時点で808nmレーザー下に3回照射された。すべての群で、10μLの溶液を所望の時点で取り出し、90μLのDMSOを含む1本のボトルに添加した。放出されたDOX含有量をHPLCシステム(Waters)で分析し、ここで、異なる濃度の一連の薬物/DMSO標準溶液を使用して検量線を取得した。データを、各3つのサンプルのDOX累積放出の平均百分率として報告した。
【0145】
インビトロ細胞実験
サンプルのインビトロ細胞毒性、細胞取り込み研究及び併用療法を、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)から購入したヒトOSC-3口腔癌細胞株で評価した。細胞を、10%FBS及び1%ペニシリンを添加したDMEMを使用して、37℃、5%CO2を含む加湿雰囲気で24時間培養した。次に、サンプルを各ウェルに加え、細胞を37℃でさらに24時間インキュベートした。インキュベーション後に、相対的な細胞生存率をMTSアッセイで測定した。細胞の取り込みを評価するために、OSC-3細胞を96ウェルプレートに播種し、CPCI/DOX-NP(DOX濃度:25μgmL-1)とともにさらに6時間インキュベートした。30分間のDAPI染色後に、細胞の取り込みを共焦点画像で決定した。インビトロ化学療法/光熱併用療法では、OSC-3細胞を96ウェルプレート(n=3)に播種し、様々なサンプルと4時間インキュベートし、次いで、808nm NIRレーザー(0.8Wcm-2、2分)に曝露した。その後、細胞を37℃でさらに24時間インキュベートし、MTS試薬を各ウェルに添加した。次に、相対的な細胞生存率をMTSアッセイで測定した。細胞生存率の百分率は薬剤効果を表し、100%はすべての細胞が生存したことを意味する。細胞生存率は、以下の式を使用して計算した:細胞生存率(%)=(処理OD490nm/ブランク対照OD490nm)×100%。インビトロ細胞アポトーシス実験では、OSC-3細胞を様々なサンプル(DOX濃度:25μgmL-1及び808nmNIRレーザー(印加する場合は0.8Wcm-2、2分))とともに8時間共培養した。細胞を2回洗浄し、新たな培地と交換した。次に、細胞を12ウェルプレートでPI/DioFITCとともに30分間共培養した。細胞アポトーシスを、蛍光顕微鏡を利用してモニターした。PI/アネキシンVの代表的なFCM分析スキャッタグラムは4つの群でアポトーシスを示した。
【0146】
インビボ血液除去動態
メスのSprague-Dawleyラットの頸静脈に、採血用のカテーテルを移植した(Harland, Indianapolis, IN, USA)。同一のICG濃度の遊離ICG、PCLC/TBAI&ICG NP及びCPCI-NPを、5mgkg-1体重の用量でカテーテルを通して注射した(各群でn=3)。すべての血液サンプルは、異なる時点でカテーテルから収集した。マイクロプレートリーダー(SpectraMax M2)を使用して、808nmでの吸光度でのICG濃度を測定した。
【0147】
動物モデル:
すべての動物実験は、カリフォルニア大学デービス校の動物使用及びケア管理諮問委員会によって承認されたプロトコルNo.19724に従った。上皮内OSC-3口腔癌モデル:Harlan(Livermore, CA, USA)から購入した6~8週齢のメスのヌードマウス。同所性の口腔癌モデルを唇に移植し、それは初めて確立された。各メスのヌードマウスは、10μLのPBS中に1×106個のOSC-3口腔癌細胞を注入することによって移植された。OSC-3口腔腫瘍を有するマウスを、腫瘍の体積が約50mm3に達したときに治療した。4T1乳癌モデル:メスBalb/cマウス(8~10週間)をHarlan(Livermore, CA, USA)から購入した。次に、PBS及びマトリゲル(1:1 v/v)の80μL混合物中に懸濁した4T1細胞(1×106)を4番目の乳房脂肪パッド中に注射した。4T1腫瘍を有するマウスを、腫瘍の体積が約50mm3に達したときに治療した。
【0148】
インビボ/エクスビボ蛍光イメージング
上皮内OSC-3口腔癌を有するヌードマウスを、体重1kgあたり7mgのICGDの用量でCPCI/DOX-NPの尾静脈注射に供した。イソフルラン麻酔下のマウスは、事前に設計された時点で、インビボ蛍光イメージングシステム(Carestream In-Vivo Imaging System FX PRO, USA)を使用して撮像された。NP注射の48時間後、すべての動物を犠牲にし、それらの注目の器官を生体外イメージングのために切除した。
【0149】
インビボ癌治療
上皮内OSC-3口腔癌を有するマウスに、PBS、遊離DOX(2.5mgmL-1)、PCI-NP(PCIテロデンドリモ25mgkg-1; ICGD 7mgkg-1)、CPCI-NP(総テロデンドリモ50mgkg-1; ICGD 7mgkg-1)、CPCI/DOX-NP(総テロデンドリモ50mgkg-1; DOX 2.5mgkg-1、ICGD7mgkg-1)を注射した。24時間後及び48時間後に、全身麻酔下で腫瘍をレーザーで2回局所照射し(0.8Wcm-2で2分間)、ビームスポットで腫瘍全体を覆った。マウスを週に1回2サイクル処理した。サーマルカメラ(FLIR)を使用して腫瘍表面温度を記録した。腫瘍体積をキャリパーによって週に2回測定し、ここで、「w」及び「l」は腫瘍の幅と長さである。治療を30日間続けた。体重が20パーセント減少するか、又は、腫瘍の成長が飲水及び接触に影響を与えたら、マウスを殺生した。4T1腫瘍を有するマウスを、それぞれPBS、CPCI/Imi、CPCI+L、CPCI/Imi+L、CPCI/Imi+α-PD-1、CPCI/Imi+L+α-PD-1及びCPCI/Imi+L+α-PD-1(1サイクル)(ICGD7mgkg-1、イミキモド1.25mgkg-1、マウスあたり200μgの抗PD-1の腹腔内注射)による治療につてランダムに7つの群(n=6)に分けた。腫瘍体積が約50mm3に達したときに、治療を行った。腫瘍のサイズを週に2回測定し、以下の式を使用して計算した:体積=0.5×L×W2。
【0150】
組織学研究
OSC-3口腔癌を有するマウスを、注射後2サイクルの治療の後に犠牲にした。腫瘍組織を固定し、パラフィンに包埋した。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)染色スライドを、BBC Biochemical(Mount Vernon, WA)によって調製し、顕微鏡を使用して観察した。
【0151】
上述の発明は、理解を明確にする目的で例示及び実施例として幾らか詳細に説明されてきたが、当業者は、特定の変更及び変形が添付の特許請求の範囲内でなされうることを理解するであろう。さらに、本明細書で提供される各参考文献は、各参考文献が参照により個別に組み込まれた場合と同程度に、その全体が参照により取り込まれる。本出願と本明細書で提供される参考文献との間に矛盾が存在する場合には、本出願が優位になるものとする。