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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】微生物反応槽
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20250116BHJP
【FI】
C02F3/34 101B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021567090
(86)(22)【出願日】2020-11-27
(86)【国際出願番号】 JP2020044152
(87)【国際公開番号】W WO2021131485
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2019233385
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391059883
【氏名又は名称】日本アルシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100174090
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 光
(74)【代理人】
【識別番号】100100251
【弁理士】
【氏名又は名称】和気 操
(72)【発明者】
【氏名】藤野 清治
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/096583(WO,A1)
【文献】特開平09-164384(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132608(WO,A1)
【文献】特開平11-128987(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0011737(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/28 - 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽と、この外槽の内部に配置されて上下に開口部を有する円筒状内槽と、この円筒状内槽の上部に設けられて被処理水の槽内循環率を制御する循環率制御装置と、前記円筒状内槽の上部外周の傾斜面に対して、開口している下面が接近して配置されて汚泥を沈降させるための円筒状制御板と、前記円筒状内槽の外側および内側に設けられた被処理水質測定装置と、前記外槽および内槽内を循環する被処理水の循環経路に設けられた原水供給口および前記外槽の上部に設けられた処理水放出口とを具備してなる微生物反応槽であって、
前記円筒状内槽は、中心部に連通孔を有する隔壁で円筒上部と円筒下部とに分割され、
前記円筒上部は、上面および底面が開口した円錐台形状の頂部を有し、該頂部の外周が前記傾斜面であり、該円筒上部内の前記連通孔周囲および前記隔壁周縁部に複数の空気吹込口が設けられた好気微生物処理槽であり、
前記円筒下部は、底面に開口部を有する嫌気微生物処理槽であり、
前記好気微生物処理槽内および前記嫌気微生物処理槽内をそれぞれ撹拌する撹拌装置が設けられ、
前記沈降させられた汚泥の沈降固定化を防止する沈降固定化防止装置が前記外槽内に設けられ、前記沈降固定化防止装置は、前記円筒上部の前記傾斜面に沿って延伸する第1スクレーパーと、前記外槽下部の傾斜した内面に沿って延伸する第2スクレーパーとを有し、前記第1スクレーパーと前記第2スクレーパーとが連結され、これらが一体となって前記外槽内を周方向に回転する装置であり、
前記被処理水質測定装置により測定される被処理水の水素イオン濃度、酸化還元電位および溶存酸素量から選ばれた少なくとも1つの測定値を検出する手段と、前記検出された測定値に応じて前記被処理水の槽内循環率を3~20に制御する手段とが前記循環率制御装置内に設けられ、この循環率制御装置が液面調節バルブの開閉、液面調節制御板の上下動、および前記空気吹込口から吹込まれる空気量から選ばれる少なくとも1つの量を制御する装置であり、
前記原水供給口より供給される原水が活性汚泥と共に前記円筒状内槽の内部と、前記円筒状内槽の外周面と、前記外槽下部に沈降した活性汚泥内とを経て槽内を循環することで嫌気微生物処理および好気微生物処理が連続してなされ
前記第1スクレーパーおよび前記第2スクレーパーはそれぞれ、前記沈降させられた汚泥を掻き落とすための板部材を複数有し、
前記各スクレーパーにおいて、前記複数の板部材は互いに平行に配置され、かつ、回転方向に直交する面に対して傾いて固定されていることを特徴とする微生物反応槽。
【請求項2】
前記円筒状内槽の前記円筒上部において、前記傾斜面の前記円錐台形状の中心を通る高さ方向断面における傾斜角が40度から60度であることを特徴とする請求項1記載の微生物反応槽。
【請求項3】
前記第1スクレーパーおよび前記第2スクレーパーはそれぞれ、前記複数の板部材と、前記複数の板部材を固定する固定部材と、前記固定部材に設けられたローラとを有しており、
前記第1スクレーパーは、前記ローラの転がりによって前記円筒上部の前記傾斜面上を移動し、前記第2スクレーパーは、前記ローラの転がりによって前記外槽下部の前記傾斜した内面上を移動することを特徴とする請求項記載の微生物反応槽。
【請求項4】
前記外槽の内面には、周方向に回転可能な駆動手段が全周にわたり配設されており、
前記沈降固定化防止装置は、前記駆動手段に接続され、前記駆動手段の回転に伴って前記外槽内を周方向に回転することを特徴とする請求項1記載の微生物反応槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物反応槽、特に微生物反応槽内に堆積する汚泥の堆積防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生物化学的酸素要求量(以下、BODという)や浮遊物質濃度(以下、SSという)を高める高濃度の窒素成分やリン成分、有機物質などの汚濁物質が含まれる排水は、河川の汚染や赤潮発生など、環境汚染の原因となっている。従来、このような高濃度の汚濁物質を含む排水の処理方法として、好気嫌気循環法の一つである、いわゆる修正バーナード法が知られている。この方法は、脱窒反応の際に遊離するアルカリを硝化反応で再利用するために、活性汚泥処理工程において、脱窒工程を第一硝化槽の前後に位置する第一脱窒槽と第二脱窒槽と2段に分け、さらに第二脱窒槽の後に第二硝化槽を設け、第一および第二の硝化槽から流出する混合液を第一脱窒槽に循環する方法である。
【0003】
しかし、この方法による排水処理には次のような問題がある。
(1)高濃度のアンモニア性窒素は、それ自身殺菌性を有するので、活性汚泥処理工程で活性汚泥の活性を阻害する場合が多い。このため、活性汚泥処理が不十分になる。
(2)いわゆる修正バーナード法などでは、硝化槽において硝化反応が進行すると水素イオン濃度(以下、pHという)が低下するが、硝化反応はpHに依存するのでpHが低下すると硝化反応が遅くなる。その結果、やはり活性汚泥処理が不十分になり、リンの除去なども不十分になる。
(3)活性汚泥処理が不十分で脱窒反応が遅くなると、残存アンモニアや硝酸イオン、亜硝酸イオン濃度などが高くなる結果、これら窒素化合物に依存するBODが高くなり、排水処理が不十分になる。
(4)高濃度汚濁物質含有排水では、高濃度の活性汚泥が必要となり、必然的に活性汚泥浮遊物質(以下、MLSSという)濃度などが高くなる傾向にある。そのため、酸素の供給が困難になると共に、活性汚泥の攪拌、および、沈澱槽での固液分離が困難になる。
(5)低い有機汚濁物質濃度にもかかわらず、高い窒素成分を有する排水を活性汚泥処理で脱窒ならびに脱硝を行なう場合、pH低下や脱窒による汚泥の浮上などの問題が生じる。
【0004】
上記方法に対処するために、本願発明者は、高濃度の窒素成分やリン成分、有機物質などの汚濁物質が含まれている排水の活性汚泥処理を効率的に行なうことのできる微生物反応槽およびそれを用いた排水処理方法を提案している(特許文献1)。この微生物反応槽は、タービン羽根により連結された硝化反応部と脱窒反応部とを上下に有する内槽を備えている。
【0005】
しかしながら、上記従来の微生物反応槽は、内槽下部に形成される脱窒反応を行なう嫌気槽と内槽上部に形成される硝化反応を行なう好気槽とがタービン羽根のみにより連結されていたので、反応槽の容量が大きくなると、それぞれの槽での撹拌が不十分となり嫌気または好気反応が十分に進まないという問題があった。また、反応槽の建設費用が高くなったり、内槽を外槽内に固定するための費用が高くなったりするという問題があった。
【0006】
上記問題に対処するために、本願発明者は、上記従来の微生物反応槽の改良を行ない、反応槽の容量が大きくなっても嫌気・好気微生物処理を高い槽内循環率を維持して連続して行なうことができ、また、建設費用を抑えることができる微生物反応槽およびそれを用いた排水処理方法を提案している(特許文献2)。更に、この微生物反応槽では、沈降した汚泥の沈降固定化を防止するための沈降固定化防止装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-128987号
【文献】国際公開第2013/132610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献2では、汚泥が沈降しやすい外槽下部での沈降固定化を防止するため、外槽下部に振動装置や振動板、スクレーパー、撹拌流発生装置といった沈降固定化防止装置を設けている。しかしながら、微生物反応槽の内部形状によっては外槽の下部以外の箇所にも汚泥が沈降しやすくなる場合がある。そのため、汚泥の沈降固定化を防止する装置として、更なる改善の余地がある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、反応槽の容量が大きくなっても嫌気・好気微生物処理を高い槽内循環率を維持して連続して行なうことができるとともに、活性汚泥が槽内に堆積することを効率的に防ぐことができる微生物反応槽の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の微生物反応槽は、外槽と、この外槽の内部に配置されて上下に開口部を有する円筒状内槽と、この円筒状内槽上部に設けられて被処理水の槽内循環率を制御する循環率制御装置と、上記円筒状内槽の上部外周の傾斜面に対して、開口している下面が接近して配置されて汚泥を沈降させるための円筒状制御板と、上記円筒状内槽の外側および内側に設けられた被処理水質測定装置と、上記外槽および内槽内を循環する被処理水の循環経路に設けられた原水供給口および上記外槽の上部に設けられた処理水放出口とを具備してなる微生物反応槽である。
この微生物反応槽は以下の特徴を有している。
(1)上記円筒状内槽は、中心部に連通孔を有する隔壁で円筒上部と円筒下部とに分割されている。
(2)上記円筒上部は、上面および底面が開口した円錐台形状の頂部を有し、該頂部の外周が上記傾斜面であり、該円筒上部内の上記連通孔周囲および上記隔壁周縁部に複数の空気吹込口が設けられた好気微生物処理槽であり、
(3)上記円筒下部は底面に開口部を有する嫌気微生物処理槽である。
(4)上記好気微生物処理槽内および上記嫌気微生物処理槽内をそれぞれ撹拌する撹拌装置が設けられている。
(5)上記沈降させられた汚泥の沈降固定化を防止する沈降固定化防止装置が、上記外槽内に設けられ、上記沈降固定化防止装置は、上記円筒上部の上記傾斜面に沿って延伸する第1スクレーパーと、上記外槽下部の傾斜した内壁に沿って延伸する第2スクレーパーとを有し、上記第1スクレーパーと上記第2スクレーパーとが連結され、これらが一体となって上記外槽内を周方向に回転する装置である。
(6)上記被処理水質測定装置により測定される被処理水のpH、酸化還元電位(以下、ORPという)および溶存酸素量(以下、DOという)から選ばれた少なくとも1つの測定値を検出する手段と、この手段により検出された測定値に応じて上記被処理水の槽内循環率を3~20に制御する手段とが上記循環率制御装置内に設けられ、この循環率制御装置が液面調節バルブの開閉、液面調節制御板の回転または上下動、および上記空気吹込口から吹込まれる空気量から選ばれる少なくとも1つの量を制御する装置である。ここで、被処理水の槽内循環率とは、次式で定義される量をいう。

被処理水の槽内循環率=内槽上部から排出される被処理水量(m3/日)/原水供給量(m3/日)

(7)上記原水供給口より供給される原水が活性汚泥と共に上記円筒状内槽の内部と、上記円筒状内槽の外周面と、上記外槽下部に沈降した活性汚泥内とを経て槽内を循環することで嫌気微生物処理および好気微生物処理が連続してなされる。
【0011】
上記微生物反応槽はさらに以下の特徴を有している。
(8)上記円筒状内槽の上記円筒上部において、上記傾斜面の上記円錐台形状の中心を通る高さ方向断面における傾斜角が40度から60度である。
(9)上記第1スクレーパーおよび上記第2スクレーパーはそれぞれ、上記沈降させられた汚泥を掻き落とすための板部材を複数有し、上記各スクレーパーにおいて、上記複数の板部材は互いに平行に配置され、かつ、回転方向に直交する面に対して傾いて固定されている。
(10)上記第1スクレーパーおよび上記第2スクレーパーはそれぞれ、上記複数の板部材と、上記複数の板部材を固定する固定部材と、上記固定部材に設けられたローラとを有しており、上記第1スクレーパーは、上記ローラの転がりによって上記円筒上部の上記傾斜面上を移動し、上記第2スクレーパーは、上記ローラの転がりによって上記外槽下部の上記傾斜した内面上を移動する。
(11)上記外槽の内面には、周方向に回転可能な駆動手段が全周にわたり配設されており、上記沈降固定化防止装置は、上記駆動手段に接続され、上記駆動手段の回転に伴って上記外槽内を周方向に回転する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の微生物反応槽は、内部に配置される円筒状内槽が中心部に連通孔を有する隔壁で円筒上部と円筒下部とに分割されているので、高濃度の汚濁物質が含まれている原水の嫌気・好気微生物処理を、高い槽内循環率を維持して連続して行なうことができる。さらに、沈降固定化防止装置が第1スクレーパーと第2スクレーパーを有し、これらのスクレーパーが一体となって周方向に回転可能に設けられているので、微生物反応槽内において、汚泥が円筒状内槽の傾斜面および外槽の下部で沈降固定化するのを防ぐことができる。その結果、高濃度の汚濁物質が含まれている原水の嫌気・好気微生物処理を高い槽内循環率を維持して連続して行なうことができ、円筒状内槽を簡易な形状とすることができ、また反応槽の容量が大きくなった場合でも微生物反応槽の設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の微生物反応装置の一実施形態の断面図である。
図2図1の沈降固定化防止装置の拡大図である。
図3】沈降固定化防止装置の配置位置について示す平面図である。
図4】本発明の微生物反応装置の他の実施形態の断面図である。
図5】第1スクレーパーおよび第2スクレーパーの平面図である。
図6】微生物反応槽における被処理水および活性汚泥の循環経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の微生物反応槽の一実施形態を図1により説明する。図1は微生物反応槽の断面図である。
微生物反応槽1は、外槽2と、この外槽2の内部に配置されている円筒状内槽3と、この円筒状内槽3の上部に設けられた循環率制御装置4と、円筒状内槽3の外周側に設けられた円筒状制御板5と、被処理水質測定装置6とから構成されている。なお、汚泥抜き出し口27を設けることができる。
本発明で、微生物処理設備の水槽容積を限定するものではなく、小規模のものから、大規模のものまで適応できるが、その効果が著しく発揮されるのは、微生物反応槽1が20m3以上、好ましくは30~6000m3の内容積を有する微生物反応槽に適用した場合である。処理槽の容積が6000m3を超えるようになると循環流を作るのが困難になる。また、20m3に満たない小規模の場合は、微生物反応槽1内で汚泥を上下に循環させる優位性が少なくなる。
【0015】
外槽2は、底面となる基盤2aに円筒形側面2bおよび上面部2cからなる真円筒状の外観を有している。円筒の中心には撹拌翼を取り付けるための回転軸7が設けられている。この回転軸7は、基盤2aの円中心に設けられた架台2dおよび上面部2cの円中心に設けられた軸受2eにより回転自在に固定されている。また、回転軸7は駆動装置2fにより回転される。上面部2cは回転軸7を回転自在に固定すると共に、円筒状内槽3を支持具で保持している。また、図1において、上面部2cには、ギアードモータ21が設置されている。後述するように、ギアードモータ21はシャフト22を通じて、水面下の駆動ホイール23を回転させることで、駆動チェーンを駆動する。
外槽2の底部であって、円筒状内槽3の下部には原水供給口10が設けられている。原水供給口10は、円筒状内槽3の下部開口部3fの下方に配置された、円環状原水供給部10aに設けられた複数の吐出口10bまたはスリットで構成される。原水供給口10をこのように配置することにより、嫌気汚泥の撹拌が十分になされる。なお、この原水供給口10は被処理水の循環経路であれば、円筒状内槽3の下部以外にも設けることができる。
また、外槽2の上部には浄化された処理水放出口11が設けられている。外槽2の下部内面2gは底部に向かって縮径する傾斜面となっている。微生物反応槽1の高さ方向断面における下部内面2gの傾斜角は、例えば40度から60度、好ましくは45度である。
【0016】
外槽2内に円筒状内槽3が配置される。図1に示すように、横断面が略真円状(図3参照)の円筒状内槽3は、隔壁3aで円筒上部3cと円筒下部3dとに分割されている。隔壁3aの中心部には円筒上部3cと円筒下部3dとを連通する連通孔3bが設けられている。
この隔壁3aの存在により、微生物反応槽の容積が大きくなった場合でも、円筒上部3cと円筒下部3dとが十分に分離されており、それぞれの槽内で活性汚泥処理を行なうことができる。円筒上部3c内にて好気微生物処理反応を、円筒下部3d内にて嫌気微生物処理反応を、それぞれ十分に行なわせることができる。隔壁3aの面積が大きくなった場合、支持部材3gなどで補強する。
連通孔3bは、嫌気微生物処理された活性汚泥が円筒下部3dから好気微生物処理部である円筒上部3cに移動できる大きさの直径を有する。この連通孔3bの径は微生物反応槽の容積、処理される原水の性質、量などによって調整される。
【0017】
円筒上部3cは、上面および底面が開口した円錐台形状の頂部を有する。すなわち、円筒部の先端が高さ方向に所定の角度で縮径する形状である。頂部の外面は傾斜面3hである。傾斜面3hの円錐台形の中心を通る高さ方向断面における傾斜角は、例えば40度から60度、好ましくは45度である。傾斜面3hの傾斜角を40度から60度の範囲にすることにより、好気槽上部から排出する被処理水に含まれる汚泥が円錐台形外面を流れ落ちることで、いわゆるボイコット効果により汚泥が凝集しやすくなり、汚泥の急速強制沈降が可能となる。また、汚泥が凝集することにより、汚泥と浄化された処理水との分離が容易になる。傾斜面3hの傾斜角は、外槽2の下部内面2gの傾斜角と等しいことが好ましい。
【0018】
円筒上部3cは、内部に空気吹込口8および8aが設けられた好気微生物処理槽である。空気吹込口8は、中心軸7の周囲であって、連通孔3b周囲に設けられ、隔壁3a上に図示を省略した支持柱などにより固定することができる。この空気吹込口8の空気噴出口は、好気槽内の被処理水および汚泥の撹拌に寄与できるため、下向きに配置されていることが好ましい。
空気吹込口8aは、円筒上部3c内の隔壁周縁部に平面視円環状に空気吹込部8bを配置して、この空気吹込部8bに複数個設けられた空気孔8cか、あるいは空気吹込部8bの上面または側面に形成されたスリットとすることができる。
空気吹込口8および8aより吹込まれる空気量と、後述する循環率制御装置の制御量とにより、循環ポンプを用いることなく、被処理水の循環量を3~20の範囲内に変動させることができる。それにより適切な硝化条件による好気微生物処理および適切な脱窒条件による嫌気微生物処理が容易に設定できる。さらに、上記傾斜角を有する好気微生物処理槽外周面での強制沈降原理により汚泥の固液分離が極めて効率よくなされるので、好気・嫌気微生物処理反応を縦型の同一槽内で効率よく行なうことができる。
なお、好気槽内には、図示を省略したアルカリ供給口または酸の供給口を設けることができる。
【0019】
円筒下部3dは、円筒上部の容積より1/10~1倍の容積を有する嫌気微生物処理槽である。この容積範囲内であると、例えば高濃度窒素含有汚濁物質を含有する原水の好気微生物処理反応および嫌気微生物処理反応を効率よく行なうことができる。なお、嫌気微生物処理槽内には、図示を省略した脱窒菌栄養物供給口を設けることができる。
また、原水中に水素供与体が少なく、硝酸塩の窒素をメタノールや酢酸などの水素供与体を供給して脱窒する場合には、嫌気微生物処理槽の容積を好気性微生物処理槽よりも大きくすることが好ましい。
円筒下部3dの形状は、円筒上部3cの開口部3eよりも面積が大きい開口部3fを有する逆円錐台形である。すなわち、円筒部の先端が下部方向に所定の角度で縮径する形状である。開口部3fの面積を大きくすることにより嫌気微生物処理槽内での汚泥の撹拌を容易にできる。
円筒下部3dの形状を上記逆円錐台形とする場合には、外槽2の下部内面2gは上記所定の角度と同じ角度とすることが汚泥の沈降固定化を防止できるため好ましい。
【0020】
上述のように、微生物反応槽1は、汚泥の急速強制沈降が可能となっている。そのため、汚泥は、外槽2の下部に加え、円筒上部3cの傾斜面3hの下部周縁にも堆積しやすくなっている。そこで、本発明では、これらの箇所に汚泥の沈降固定化を防止する沈降固定化防止装置(汚泥掻き取り装置)を設けている。具体的には、図1に示すように、沈降固定化防止装置12は、円筒上部3cの傾斜面3hに沿って延伸する第1スクレーパー13と、外槽2の下部内面2gに沿って延伸する第2スクレーパー14とを有する。これらは、連結部材15によって連結されており、一体となったスクレーパー(沈降固定化防止装置12)が周方向に回転可能に設けられている。一体となったスクレーパーが回転することで、傾斜面3hの下部周縁に堆積した汚泥が第1スクレーパー13によって掻き取られ、外槽2の下部内面2gに堆積した汚泥が第2スクレーパー14によって掻き取られる。これにより、活性汚泥が槽内に堆積することを効率的に防止できる。
【0021】
沈降固定化防止装置12について、図2を用いて詳細に説明する。図2に示すように、第1スクレーパー13は、円筒上部の傾斜面3hと略平行に配置されており、スクレーパー本体13aと、スクレーパー本体13aを固定する固定部材13bと、固定部材13bに設けられ、傾斜面3h上を転動可能なローラ13cとを備える。ローラ13cは、傾斜面3hの傾斜面方向で離間して複数個(2個)設けられている。第1スクレーパー13において、スクレーパー本体13aと傾斜面3hとの間には隙間が形成されている。
また、第2スクレーパー14は、外槽2の下部内面2gと略平行に配置されており、スクレーパー本体14aと、スクレーパー本体14aを固定する固定部材14bと、固定部材14bに設けられ、下部内面2g上を転動可能なローラ14cとを備える。ローラ14cは、下部内面2gの傾斜面方向で離間して複数個(3個)設けられている。第2スクレーパー14において、スクレーパー本体14aと下部内面2gとの間には隙間が形成されている。
【0022】
図2に示すように、第1スクレーパー13と第2スクレーパー14は、複数の連結部材15によって連結され、一体化されている。連結部材15の1つである支持部材15aは、水平方向に配設され、支持ローラ17cによって直接支持される。連結部材15は、例えば、連結部材同士、支持部材15aと第1スクレーパー13、支持部材15aと第2スクレーパー14とを連結している。また、図2では、第1スクレーパー13の固定部材13bが、第2スクレーパー14まで延伸して、第2スクレーパー14の固定部材14bと連結している。
【0023】
一体化されたスクレーパーは、円筒形側面2bの内壁から突出した支持台17aに支持される。支持台17aには、ガイド部17bと支持ローラ17cが設けられており、支持ローラ17cが一体化されたスクレーパーの鉛直方向下向きの荷重を受ける構成となっている。ガイド部17bには、例えばH型鋼やI型鋼を使用できる。支持部材15aの外径側端部には、水平方向に回転可能なガイドローラ16が設けられている。沈降固定化防止装置12が周方向に回転する際には、ガイドローラ16がガイド部17bに当接しながら回転することで、スクレーパーの位置ずれが軽減されるとともに、スムーズな動きを達成できる。
【0024】
本発明において、沈降固定化防止装置12は、外槽2内において周方向に回転可能である。微生物反応装置は、この沈降固定化防止装置12を回転させるための駆動手段を備えている。図2では、駆動手段として駆動チェーン20が設けられている。駆動チェーン20は、外槽2の円筒形側面2bの内壁の全周に配設された無端状のチェーンである。駆動チェーン20は、駆動ホイール(図1参照)および従動ホイール19の回転によって周方向に沿って回転する。従動ホイール19は、円筒形側面2bの内壁から突出した支持台18の下部に設置されている。図2に示すように、駆動チェーン20の周方向の一箇所に支持部材15aの一端が接続されることで、駆動チェーン20の回転と同期して、第1スクレーパー13および第2スクレーパー14が回転する。図2では、沈降固定化防止装置12は、その自重をローラ13cと、ローラ14cと、支持ローラ17cで受けている。駆動チェーン20は、沈降固定化防止装置12の自重による鉛直方向荷重は負荷されないため、故障しにくく、安定的な回転を確保することができる。
【0025】
図3は、図1の微生物反応槽1を上側から見た平面図である。図3に示すように、外槽2、円筒状内槽3、および円筒状制御板5は、同心円状に配置されている。支持台18は、外槽2の円筒形側面2bの全周にわたり配設されており、その支持台18の下方には、複数(9個)の従動ホイール19が、周方向に所定間隔をあけて設けられている。また、支持台18の下方であり、従動ホイール19間の周方向の一箇所に駆動ホイール23が設けられている。駆動ホイール23は、ギアードモータの駆動により回転するシャフト22に接続され、回転駆動が可能である。駆動チェーン20は、駆動ホイール23および複数の従動ホイール19に掛け渡され、外槽2の内壁の全周にわたって配設されている。沈降固定化防止装置12は、円筒状内槽3の周方向の一箇所に位置しており、駆動ホイール23が矢印の向きに回転することで、駆動チェーン20および沈降固定化防止装置12が、外槽2内を一方向(X方向)に回転する。沈降固定化防止装置12の回転軸と回転軸7の回転中心は一致している。
なお、図3では、駆動ホイール23は槽内の周方向の1箇所に設けたが、複数箇所に設けてもよい。また、沈降固定化防止装置を複数個、駆動チェーンに取り付けることもできる。この場合、複数の沈降固定化防止装置は、互いに異なる形状でもよく、互いに同一の形状でもよい。
【0026】
図3の形態では、沈降固定化防止装置12における第1スクレーパー13および第2スクレーパー14の周方向位置は同じ(同位相)となっているが、第1スクレーパー13と第2スクレーパー14の各周方向位置を異なるように(位相を異に)構成してもよい。例えば、第1スクレーパー13が第2スクレーパー14よりも回転方向下流側に位置するように構成することで、第1スクレーパー13によって掻き落とした汚泥を、続く第2スクレーパー14によって更に掻き落とすことができる。
【0027】
また、駆動チェーン20は、液面下に設置されるため、耐水性の高い材質で形成されることが好ましい。例えば、ステンレスなどの金属材や、ポリアセタール樹脂、高密度ポリエチレン樹脂などの樹脂材が用いられる。樹脂材を用いた場合、定期的なメンテナンスによってチェーンの伸びの調整や交換などが必要となるが、安定した駆動が可能である。なお、図2では、駆動手段として駆動チェーンを用いたがこれに限定されない。例えば、駆動チェーンの代わりに駆動ベルトを用いてもよい。
駆動チェーンや駆動ベルトのような駆動手段を設けることで、槽内の周方向の1箇所または数箇所のみに駆動ローラなどの動力部を設ければ、上記駆動手段を介して槽内壁に沿った沈降固定化防止装置の回転駆動が可能となる。このため、装置上部や下部に周方向全周にわたって設けるような駆動部は不要となり、製造コストや管理維持コストを低減できる。
【0028】
図1図3の形態では、沈降固定化防止装置を回転させる手段として駆動チェーンを用いたが、沈降固定化防止装置が外槽内を周方向に回転できる形態であれば、これに限定されない。
【0029】
図4には、本発明の微生物反応槽の他の実施形態を示す。図4の微生物反応槽1は、図1の微生物反応槽1と比べて、沈降固定化防止装置を回転させる構成以外は同様である。
図4に示すように、外槽2の円筒形側面2bの上部には、液面上となる位置に、全周にわたって円形のレール24が設けられている。このレール24の上には、自走式の駆動台車25が設置される。駆動台車25の電源としては、例えば、レール24下部内にトロリーを設置して、そこから給電する方式を採用できる。駆動台車25のアームと、沈降固定化防止装置12が接続部材26によって接続される。具体的には、第1スクレーパー13と第2スクレーパー14を連結する連結部材15の支持部材15aに、接続部材26が接続される。この構成において、駆動台車25がレール24上を走ることで、沈降固定化防止装置12が外槽内を周方向に回転できる。なお、接続部材26には、金属棒などの剛体や、フレキシブルワイヤーなどを用いることができる。
図4の微生物反応槽1は、液面上から沈降固定化防止装置を回転させる形態であるため、駆動台車25などのメンテナンスが容易である。また、駆動台車25を自走式とすることで、動力部が大掛かりになりすぎず、製造コストや管理維持コストを低減できる。
【0030】
次に、図5を参照して、第1スクレーパー13および第2スクレーパー14について、さらに説明する。図5(a)は第1スクレーパーの平面図であり、図5(b)は第2スクレーパーの平面図である。図5において、各スクレーパーに設けられているローラは、固定部材の裏側に位置している。
【0031】
図5(a)に示すように、第1スクレーパー13は、スクレーパー本体13aとして複数の板部材13d、13eを有する。板部材13dおよび板部材13eは互いに平行に配置されており、回転方向(X方向)に直交する面fに対して傾いて固定されている。具体的には、板部材13d、13fの外側端部を回転方向上流側に向けて、角度α傾けている。傾斜面3h(図2参照)に沿って配置した際に、板部材13d、13eの外側端部は、傾斜面3hの傾斜下側に位置する。そのため、汚泥は、黒矢印に示すように誘導され、傾斜面3hの傾斜下側に落とされやすくなる。また、板部材13d、13eは、板部材13dの内側端部と板部材13eの外側端部が回転方向で重なるように配置されている。固定部材13bは格子状に構成されており、板部材13d、13eをそれぞれ複数箇所で固定している。
【0032】
図5(b)に示すように、第2スクレーパー14は、スクレーパー本体14aとして複数の板部材14d、14eを有する。板部材14dおよび板部材14eは互いに平行に配置されており、回転方向(X方向)に直交する面fに対して傾いて固定されている。具体的には、板部材14d、14eの内側端部を回転方向上流側に向けて、角度β傾けている。下部内面2g(図2参照)に沿って配置した際に板部材14d、14eの内側端部は、下部内面2gの傾斜下側に位置する。そのため、汚泥は、黒矢印に示すように誘導され、下部内面2gの傾斜下側に落とされやすくなる。また、板部材14d、14eは、板部材14dの内側端部と板部材14eの外側端部が回転方向で重なるように配置されている。固定部材14bは格子状に構成されており、板部材14d、14eをそれぞれ複数箇所で固定している。
【0033】
図5において、角度αおよび角度βはそれぞれ、0度以上90度未満の範囲であり、20度~70度であることが好ましく、30度~60度であることがより好ましい。また、角度αおよび角度βの大小関係は、特に限定されないが、互いに等しい角度であることが好ましい。
図5では、スクレーパー本体が複数の板部材を有し、かつ、これら板部材が回転方向と直交する面に対して傾いた構成としたが、これに限らず、例えば、スクレーパー本体が1つの板部材からなり、かつ、この板部材が回転方向と直交する面と平行に構成してもよい。また、スクレーパー本体が1つの板部材からなり、かつ、この板部材が、板部材が回転方向と直交する面に対して傾いた構成としてもよい。
【0034】
第1スクレーパーおよび第2スクレーパーを構成する連結部材と板部材(スクレーパー本体)の材質は、回転時における十分な機械的強度と、耐腐食性を有するものであれば特に限定されない。例えば、ステンレスなどの金属材や、エンジニアプラスチックなどの強化樹脂材で形成される。樹脂製とした場合、軽量化が図れ、回転時の駆動手段への負荷を軽減できる。また、樹脂製とすることで、摺動性に優れ、スクレーパー本体となる板部材と内槽などの傾斜面との間に隙間を設けず、接触させる形態としてもよい。また、連結部材と板部材とで材質が異なってもよく、連結部材を金属材とし、樹脂材の板部材をこれに固定する形態とできる。
【0035】
図1に戻り、円筒状内槽3は、円筒上部3cである好気微生物処理槽内および円筒下部3dである嫌気微生物処理槽内において、被処理水と活性汚泥との処理反応を十分に行なうための撹拌装置が設けられている。
撹拌装置としては、円筒状内槽3の中心に取り付けられた回転軸7に固定された撹拌翼7aまたは7bであることが好ましい。撹拌翼7aは円筒上部3c内に設けられ、好気微生物処理反応を十分に行なわせることができるタービン翼が好ましい。タービン翼以外にも、空気の吹き込み量により、曝気性能が著しく低下しない回転数が比較的少なくて、空気と水を混合できる形状であれば、使用できる。
撹拌翼7bは円筒下部3d内に設けられ、嫌気微生物処理反応を十分に行なわせることができる撹拌翼ならば、いずれも使用できるが、タービン翼やプロペラ翼が好ましい。
【0036】
円筒状内槽3内に設けられた隔壁3aは、外槽2の底面となる基盤2aに固定されて立設する複数の支持柱9により支えられる。この複数の支持柱9によるバッファ効果により、嫌気微生物処理槽内における撹拌流が乱され、槽内の撹拌が効率的になされる。
円筒状内槽3はこの支持柱9による支えと、外槽2の上部に橋渡しされた支持具とにより、外槽内に保持されている。
【0037】
円筒状内槽3の上部に被処理水の槽内循環率を制御する循環率制御装置4が設けられている。循環率制御装置4は同心円筒上に設けられた液面調節バルブ、および/または液面調節制御板4aおよび4bにより構成される(図3参照)。液面調節制御板4aおよび4bには、その両方または一方に縦方向のスリットが形成されている。被処理水の槽内循環率の制御は、具体的には、両方に縦方向のスリットが形成されている液面調節制御板4aおよび4bの相互回転による開閉、あるいは液面調節制御板4aおよび4bの一方に縦方向のスリットが形成され、他方にスリットが形成されていない液面調節制御板の相互上下動等によりなされる。液面調節バルブの全開時、または液面調節制御板のスリット全開時またはスリットが形成されていない液面調節制御板の上下動の最下位時に、被処理水の水位レベルが最も低くなる。水位レベルをAで示す。
【0038】
槽内循環率の制御は、空気吹込口8および/または8aより吹込まれる空気量によっても制御することができる。吹込まれる空気量を多くすると循環率が増加する。液面調節バルブの開閉および空気量調節を組み合わせることもできる。
【0039】
嫌気微生物処理槽ならびに好気性微生物処理槽の大型化に伴って、汚泥の循環流量を維持することが曝気空気だけでは足らなくなったり、また、過剰な空気の吹込みによる弊害が発生したりすることがある。このような場合に備えて、図1の8aに示してある空気吹込口が必要になる。この曝気効率のよくない空気吹込口8aにより、空気吹き込み量とORPの調整が、格段に調整しやすくなる長所がある。空気吹込口8aは、例えば、隔壁3aの上面である好気部分に攪拌翼7aを中心として、外部の送風機等と連通している平面視円環状の空気吹込部8bを設置し、この空気吹込部8bに穴またはスリットが設けられている。これは、単純に空気量を増やすだけでなく、攪拌翼7aのバッフル効果も発揮され、効率的な攪拌がなされる相乗効果を発揮する。
【0040】
液面調節バルブの開閉等および/または空気吹込量を調節することにより、被処理水の槽内循環率をポンプを用いることなく変動させることができる。被処理水は、後述するように、好気微生物処理槽3cからこの槽の外側に配置された円筒状制御板5を経て嫌気微生物処理槽3dへ、さらに嫌気微生物処理槽3dから好気微生物処理槽3cへと循環することにより、脱窒、脱リン等が行なわれる。したがって、被処理水の槽内循環率を検出値に応じて所定の制御プログラムに基づき制御することにより、最適な脱窒、脱リン等を行なうことができる。
【0041】
円筒状内槽3の上部外周に円筒状制御板5が配置されている。円筒状制御板5は上面および下面が開口している筒であり、円筒状制御板5の下面5aは円筒状内槽3の傾斜面3hに対して接近して配置されている。この接近して配置されている傾斜面部分において汚泥沈殿部が形成され、汚泥濃縮がなされると共に処理水が分離される。また、下面5aを接近して配置することにより汚泥の急速強制沈降が可能になる。円筒状内槽3の傾斜面3hに対して下面5aの距離の大小は汚泥の種類および量により調節できることが好ましい。また、円筒状制御板5の形状は、上面および下面の開口面が同一面積の直円筒状、または上面の開口面積が下面の開口面積よりも大きい逆円錐台形状とすることができる。
微生物反応槽内には、被処理水質測定装置6が、円筒状内槽3の内外に設けられている。この被処理水質測定装置6は、被処理水のpH、ORP、DOを測定する装置である。
【0042】
本発明の微生物反応槽内での被処理水の槽内循環率は3~20、好ましくは5~20である。被処理水の槽内循環率が3未満であると、好気微生物処理反応がより起こりやすくなり、また、20をこえると好気微生物処理反応と嫌気微生物処理反応とのバランスが崩れ、原水の脱窒、脱リンを行なうことができなくなる。すなわち、被処理水の槽内循環率をこの範囲とすることにより、被処理水質測定装置により測定される被処理水のORPを、嫌気微生物処理反応槽において-10mV以下、好ましくは-50mV以下、好気微生物処理反応槽において+10mV以上、好ましくは+100mV以上に維持することができる。その結果、好気微生物処理反応および嫌気微生物処理反応が十分に行なわれ、脱窒、脱リンが連続的になされる。なお、このような条件下において好気微生物処理反応槽でのpHは4.5~8.5、好ましくは5.5~7.5の範囲となる。
【0043】
微生物反応槽1を用いる排水処理方法は、活性汚泥処理工程を含む処理工程により原水を処理する排水処理方法であって、この活性汚泥処理工程は、活性汚泥の循環流を形成させる汚泥循環工程と、この活性汚泥の循環流の中に原水を添加する原水添加工程とを含む。
上記活性汚泥の循環流は、嫌気微生物処理槽から好気微生物処理槽を経由して循環し、汚泥沈殿部で処理水が分離すると共に汚泥濃縮がなされて、この濃縮された汚泥を嫌気微生物処理槽に送る循環流である。また、上記活性汚泥処理工程は、上述の微生物反応槽を用いて処理される汚泥循環工程および原水添加工程である。
【0044】
微生物反応槽1を用いる排水処理方法は、従来の排水処理方法に比較して、以下の優れた特徴を有する。
従来の排水処理方法は、原水と返送汚泥とが一定の割合で混合されて曝気槽内に流入し、その時接触した返送汚泥と次の工程である沈殿槽内で汚泥と被処理水とが分離されるまで、最初に接触混合した活性汚泥と原水が放流されるまで、同じ活性汚泥菌とだけ接触して、原水が押し出され流れる方法である。
微生物反応槽1を用いる排水処理方法は、上下に循環する活性汚泥の循環流を形成させ、その循環流の中に原水を添加する方法である。活性汚泥の循環流を作るのに、循環ポンプを使用することなく、微生物処理に使用する曝気空気による上昇流を利用して、汚泥の循環流を形成させるので省エネルギーな排水処理方法である。さらに、好気微生物処理槽の曝気を効率よく実施できる処理方法である。
原水の添加位置は、循環流の経路内であればどこでもよいが、好ましくは好気微生物処理槽である。更に好ましくは、嫌気微生物処理槽が適している。本発明の排水処理方法における循環流を用いた処理の場合は、少なくともBODが800mg/L以上、全窒素量が(以下、T-Nという)40mg/L以上の原水であっても、処理水のBODは通常極めて低く20mg/L以下、一般的には放流水の水質として、BODが10mg/L以下での運転ができる。
なお、好気微生物処理槽である円筒状内槽の外周面に形成された、循環流経路内の汚泥沈殿部に原水を添加すると、汚泥と原水との接触が不十分になり、汚濁物質の吸着が不十分になる場合がある。その場合、処理水に一部未処理の原水中の汚濁物質が混入して、処理水の悪化をもたらす場合がある。しかしながら、水質規制値がゆるい場合において、例えばBODが300mg/L以下とか、600mg/L以下とかの下水道放流などの一次処理設備としての用途では、循環流経路内の汚泥沈殿部に原水を添加できる場合がある。
【0045】
以下、微生物反応槽1を用いて高濃度窒素含有汚濁物質を含む原水の排水処理方法について図6により具体的に説明する。図6図1の微生物反応槽1における被処理水および活性汚泥の循環経路を示す図である。図6において、斜線部分は活性汚泥の濃度が高い部分であり、矢印は被処理水および活性汚泥の循環方向を表す。
ウェジワイヤースクリーンなどで固形分が分離された汚濁物質を含む被処理水としての原水は、微生物反応槽1の最下部に設けられている原水供給口10より連続的に供給される。なお、供給される原水のBODおよびSSは、あらかじめ測定しておくことが好ましい。たとえば、原水として、BODが800mg/L以上、化学的酸素要求量(以下、CODという)が300mg/L以上、T-Nが40mg/L以上含有する原水が挙げられる。また、ノルマルヘキサン抽出油分濃度(以下、n-Hexという)が50mg/L以上の範囲を含む原水の処理にも好適である。
【0046】
微生物反応槽1には活性汚泥が固形分換算で5,000~12,000mg/L入れられており、原水は、まず円筒下部3d内にて嫌気状態で活性汚泥に接触し、脱窒反応が行なわれる。原水供給口10より供給される被処理水となる原水および循環している活性汚泥は、撹拌翼の回転または散気管よりの空気噴出により、円筒下部3d内を循環して嫌気微生物処理反応がなされる。
次いで空気が吹込まれている円筒上部3cに連通孔3bを通過して原水および活性汚泥が移動し、好気状態で円筒上部3c内の活性汚泥に接触しながら、撹拌翼の回転または空気吹込口よりの空気噴出により、円筒上部3c内を循環して好気微生物処理反応である硝化反応が進行する。硝化反応が進行するにつれ被処理水のpH等が低下する。被処理液のpH、ORP、DOが処理水質測定装置6で測定され、これらの値に基づき原水または被処理水の循環量が定められる。具体的には、ORPを、硝化反応がなされる好気反応処理部において+10mV以上、脱窒反応がなされる嫌気反応処理部において-10mV以下に維持できるように空気吹き込み量などを調整して被処理水を循環する。循環量は、循環ポンプなどを使用することなく、空気量および/または循環率制御装置を制御することにより容易に行なうことができる。このため本発明の排水処理方法は省エネルギー型の排水処理方法である。また、本発明の微生物反応槽を含む設備は、微生物反応の各ユニットをそれぞれ調整できるので、これらの制御を予めプログラム化し、無人で自動運転することが容易であり、省力化プラントとしての特徴を有している。
【0047】
循環率制御装置4により循環率が制御されて、円筒上部3cの上部から排出する被処理水および活性汚泥の一部は、約45度の傾斜角度を有する円錐台形外周面を流れ落ちる。この流出した被処理水および活性汚泥は、円錐台形外周面の傾斜面3hに対して接近して配置されている円筒状制御板5と傾斜面3hで形成される汚泥濃縮部5bを通過することにより、活性汚泥の急速強制沈降が可能となる。また浄化された処理水と活性汚泥との分離が容易となり、分離された処理水が処理水放出口11より放流される。
急速強制沈降した活性汚泥は、外槽2の下部や円筒上部3cの傾斜面3hの下部周縁に堆積する。この堆積した活性汚泥は、上述した沈降固定化防止装置12によって掻き落とされ、被処理水と混合しながら嫌気微生物処理反応部へ移動して微生物反応槽内を循環する。
本発明の排水処理方法は、活性汚泥が濃縮されつつ嫌気・好気槽内を3~20の循環率で循環することにより、原水の負荷変動を容易に吸収できる。また、循環率をこの範囲に維持するので、活性汚泥が馴養されて排水処理に最適な活性汚泥となる。
【0048】
微生物反応槽において、原水のBOD負荷が小さいにもかかわらず、窒素分濃度が高い場合は、プロトン供与体などの有機物質からなる脱窒菌栄養物、たとえばメタノールを嫌気反応処理部に添加して処理することが好ましく、この場合、処理水のpHが上昇しやすいので、塩酸などの鉱酸を添加することが好ましい。
【0049】
本発明微生物反応槽を用いる排水処理方法は、微生物反応槽を1槽用いてもよいが、また複数槽用いることもできる。この場合、第1槽からの放流水を第2槽の原水供給口に導入する。また、たとえば2つの微生物反応槽を直列で連結する場合は、第2槽における硝化反応部の容積と脱窒反応部の容積との比率を第1槽における比率と変えることにより、より効果的に排水処理を行なうことができる。具体的には、容積比を第1槽のそれより小さくすることにより、脱窒・脱リンを行なうことができる。
【0050】
また、本発明微生物反応槽を用いる排水処理方法を、従来の排水処理方法と組み合わせて行うことができる。たとえば、既設の好気硝化槽と嫌気脱窒槽の連結からなる排水処理設備において、それぞれの槽からの流出液を本発明の微生物反応槽に供給することにより、より効果的に汚濁物質の消化ならびに脱窒・脱リンを行なうことができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の微生物反応槽は、反応槽の容量が大きくなっても嫌気・好気微生物処理を高い槽内循環率を維持して連続して行なうことができるとともに、活性汚泥が槽内に堆積することを効率的に防ぐことができるので、高濃度の汚濁物質が含まれている排水処理設備として利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 微生物反応槽
2 外槽
3 円筒状内槽
4 循環率制御装置
5 円筒状制御板
6 被処理水質測定装置
7 回転軸
8 空気吹込口
9 支持柱
10 原水供給口
11 処理水放出口
12 沈降固定化防止装置
13 第1スクレーパー
14 第2スクレーパー
15 連結部材
16 ガイドローラ
17a 支持台
17b ガイド部
17c 支持ローラ
18 支持台
19 従動ホイール
20 駆動チェーン
21 ギアードモータ
22 シャフト
23 駆動ホイール
24 レール
25 駆動台車
26 接続部材
27 汚泥抜き出し口
図1
図2
図3
図4
図5
図6