(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】卵巣がんに対する新規の腫瘍特異的抗原およびそれらの使用
(51)【国際特許分類】
C07K 7/00 20060101AFI20250116BHJP
C12N 15/86 20060101ALI20250116BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20250116BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20250116BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20250116BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20250116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20250116BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20250116BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20250116BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20250116BHJP
A61K 38/10 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C07K7/00 ZNA
C12N15/86 Z
C12N15/63 Z
C12N5/10
C07K14/725
C12N5/0783
A61P35/00
A61K45/00
A61K35/76
A61K38/08
A61K38/10
(21)【出願番号】P 2021572500
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 CA2020050869
(87)【国際公開番号】W WO2020257922
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-09
(32)【優先日】2019-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】303055165
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ ド モントリオール
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】チンチュアン ザオ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール ティボー
(72)【発明者】
【氏名】クロード ペロー
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン ルミュー
【審査官】田ノ上 拓自
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/009400(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/138257(WO,A1)
【文献】PNAS,2017年,E9942-9951
【文献】OncoImmunology,2016年,Vol.5, No.5,e1065369
【文献】ノンコーディングDNAに由来する腫瘍特異的抗原が癌ワクチン療法への道を広げる,crisp_bio,2018年,pp.1-2,https://crisp-bio.blog.jp/archives/14176170.html [検索日:2024/11/18]
【文献】Frontiers in Pharmacology,2018年,Vol.9 ,Article 1295 (pp.1-6),doi: 10.3389/fphar.2018.01295
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
C12N 5/10
C12N 5/0783
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 35/76
A61K 38/08
A61K 38/10
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲノムの非タンパク質コード領域に位置する配列によってコードされる15個以下のアミノ酸の腫瘍抗原ペプチドであり、
配列番号1
、4、8、10、13、15~17、19~27及び36~99に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む、腫瘍抗原ペプチド。
【請求項2】
配列番号19~
27及び36~99に記載のアミノ酸配列のうちの1つ
からなる、請求項1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項3】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*01:01分子に結合し、配列番号21
、40、41、66または88に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項4】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*02:01分子に結合し、配列番号17、45、48、51、56、75、77、82または98に記載のアミノ酸配列を含むまたはからなる、請求項1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項5】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*
03:01分子に結合し、配列番号1、19、20、22
、36、50、52、60、62、73、84、85、86または91に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項6】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*11:01分子に結合し、配列番
号54、55、67、69、81、8
7または90に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項7】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*24:02分子に結合し、配列番
号43に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項8】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*25:01分子に結合し、配列番号24に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項9】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*29:02分子に結合し、配列番
号58に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項10】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*32:01分子に結合し、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項11】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*07:02分子に結合し、配列番号4
、8、26、49、78、92
または9
7に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項12】
前記腫瘍抗原ペプチドがHLA-B*08:01分子に結合し、配列番号23
、42、44、46、59、63、70、74、76
または8
3に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項13】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*14:01分子に結合し、配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項14】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*18:01分子に結合し、配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項15】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*39:01分子に結合し、配列番号47、64、96または99に記載のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項16】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*40:01分子に結合し、配列番
号13に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項17】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*44:02分子に結合し、配列番号65に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項18】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*44:03分子に結合し、配列番号37または94に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項19】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*03:03分子に結合し、配列番号10
、71または95に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項20】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*04:01分子に結合し、配列番
号15に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項21】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*05:01分子に結合し、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項22】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*06:02分子に結合し、配列番
号72に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項23】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*07:01分子に結合し、配列番号38、61または93に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項24】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*12:03分子に結合し、配列番号80に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項25】
前記腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*14:02分子に結合し、配列番号25、57または79に記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項26】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、非翻訳転写領域(UTR)であり、前記腫瘍抗原ペプチドが、配列番号1、8、10、13、15、および19~2
7のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項27】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、イントロンであり、前記腫瘍抗原ペプチドが、配列番号16、17、および36~6
4のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項28】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、遺伝子間領域であり、前記腫瘍抗原ペプチドが、配列番号65~84のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項29】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、非コードRNA転写物(ncRNA)のエクソンであり、前記腫瘍抗原ペプチドが、配列番号4および85~9
2のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む
またはからなる、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項30】
前記ゲノムの前記非タンパク質コード領域が、遺伝子のアンチセンス鎖であり、前記腫瘍抗原ペプチドが、配列番号93~99のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
【請求項31】
請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド
の1つ以上をコードする、核酸。
【請求項32】
mRNAまたはウイルスベクターである、請求項
31に記載の核酸。
【請求項33】
請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド、
または請求項
31もしくは
32に記載の核酸
、および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
【請求項34】
請求項
1に記載の腫瘍抗原ペプチド、請求項
31もしくは
32に記載の核酸
、または請求項
33に記載の組成物、およびアジュバントを含む、ワクチン。
【請求項35】
細胞
の表面で発現された
、そのペプチド結合溝内に請求項1に記載の腫瘍抗原ペプチドを含むMHCクラスI分子を特異的に認識する、T細胞受容体(TCR)。
【請求項36】
請求項
35に記載のTCRを、その細胞表面において発現する、単離されたCD8
+Tリンパ球。
【請求項37】
少なくとも0.5%の請求項
36に定義されたCD8
+Tリンパ球を含む、細胞集団。
【請求項38】
(i)請求項1~
30のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)請求項
31もしくは
32に記載の核酸、(iii
)請求項
33に記載の組成物、(
iv)請求項
34
に記載のワクチン、(
v)請求項
35に記載の
TCR、(
vi)請求項
36に記載のCD8
+Tリンパ球、または(
vii)請求項
37に記載の細胞集団の、対象において卵巣がんを治療するための医薬品の製造のための、使用。
【請求項39】
前記卵巣がんが、漿液性がんである、請求項
38に記載の使用。
【請求項40】
前記漿液性がんが、高悪性度漿液性がん(HGSC)である、請求項
38に記載の使用。
【請求項41】
前記医薬品は、少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法
と併用するためのものである、請求項
38に記載の使用。
【請求項42】
前記少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法または手術である、請求項
41に記載の使用。
【請求項43】
対象において卵巣がんを治療することにおける使用のための、(i)請求項1~
30のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)請求項
31もしくは
32に記載の核酸、(iii
)請求項
33に記載の組成物、(
iv)請求項
34に記載のワクチン、(
v)請求項
35に記載の
TCR、(
vi)請求項
36に記載のCD8
+Tリンパ球、または(
vii)請求項
37に記載の細胞集団。
【請求項44】
前記卵巣がんが、漿液性がんである、請求項
43に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸
、組成物、ワクチン、
TCR、CD8
+Tリンパ球、または細胞集団。
【請求項45】
前記漿液性がんが、高悪性度漿液性がん(HGSC)である、請求項
44に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸
、組成物、ワクチン、
TCR、CD8
+Tリンパ球、または細胞集団。
【請求項46】
前記腫瘍抗原ペプチド、核酸
、組成物、ワクチン、
TCR、CD8
+Tリンパ球、または細胞集団が、少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法と併用
するためのものである、請求項
43に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸
、組成物、ワクチン、
TCR、CD8
+Tリンパ球、または細胞集団。
【請求項47】
前記少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法または手術である、請求項
46に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸
、組成物、ワクチン、
TCR、CD8
+Tリンパ球、または細胞集団。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2019年6月25日に出願された米国仮特許出願第62/866,089号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、概して、がんに関するものであり、より具体的には、T細胞に基づくがん免疫療法に有用な卵巣がんに特異的な腫瘍抗原に関する。
【背景技術】
【0003】
卵巣がんは、世界の婦人科悪性腫瘍による死亡の主な原因であり、米国では年間14,000人以上の死亡を引き起こしている(1)。高悪性度漿液性卵巣がん(HGSC)がこれらの死因の70~80%を占め、全生存期間は数十年間にわたって顕著に変化しなかった(2)。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の存在量と全生存期間の増加との間の正の相関関係は、T細胞がHGSCにおいて生物学的に関連する腫瘍抗原を認識することができることを示唆する(3、4)。さらに、有力な証拠は、腫瘍上皮細胞に隣接するHGSC TILが局所免疫編集に積極的に関与していることを示唆している。実際、38人の患者からの212個のHGSC試料のマルチモーダリティ研究において、CD8+TILは、悪性細胞多様性とネガティブに関連していた(5)。これに即して、またいくつかの腫瘍タイプにおける免疫チェックポイント阻害剤の治療有効性を考慮して、1つ以上のチェックポイント阻害剤を用いた臨床試験が、現在HGSCにおいて進行中である。しかしながら、抗PD1を用いた初期の試験では、HGSCにおける活性は限定的であることが示されている(6、7)。
【0004】
このことを考慮すると、HGSCなどの卵巣腫瘍において再び治療的免疫応答を誘発させることができる抗原を特定することが急務である(3、8)。かかる抗原は、ワクチン(±免疫チェックポイント阻害剤)として、またはT細胞受容体ベースのアプローチ(細胞療法、二重特異性生物学製剤)の標的として使用され得る(9)。
【0005】
本説明は、いくつかの文書を参照し、それらの内容は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、以下の項目1~61を提供する。
1.配列番号1~103に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む、腫瘍抗原ペプチド。
2.配列番号19~103に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む、項目1に記載の腫瘍抗原ペプチド。
3.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*01:01分子に結合し、配列番号21、28、40、41、66または88に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
4.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*02:01分子に結合し、配列番号1、19、20、22、30、31、36、50、52、60、62、73、84、85、86または91に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
5.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*11:01分子に結合し、配列番号32、54、55、67、69、81、87、90または102に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
6.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*24:02分子に結合し、配列番号33または43に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
7.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*25:01分子に結合し、配列番号24に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
8.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*29:02分子に結合し、配列番号34または58に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
9.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-A*32:01分子に結合し、配列番号16に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
10.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*07:02分子に結合し、配列番号4、6、8、9、26、49、78、92、97、または101に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
11.該腫瘍抗原ペプチドがHLA-B*08:01分子に結合し、配列番号23、35、42、44、46、59、63、70、74、76、83または103に記載のアミノ酸配列のうちの1つを含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
12.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*14:01分子に結合し、配列番号53に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
13.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*15:01分子に結合し、配列番号2、3または5に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
14.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*18:01分子に結合し、配列番号89に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
15.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*39:01分子に結合し、配列番号47、64、96または99に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
16.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*40:01分子に結合し、配列番号11、12または13に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
17.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*44:02分子に結合し、配列番号65に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
18.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-B*44:03分子に結合し、配列番号37または94に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
19.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*03:03分子に結合し、配列番号10、29、71または95に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
20.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*04:01分子に結合し、配列番号6または15に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
21.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*05:01分子に結合し、配列番号27に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
22.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*06:02分子に結合し、配列番号18または72に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
23.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*07:01分子に結合し、配列番号38、61または93に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
24.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*07:02分子に結合し、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
25.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*12:03分子に結合し、配列番号80に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
26.該腫瘍抗原ペプチドが、HLA-C*14:02分子に結合し、配列番号25、57または79に記載のアミノ酸配列を含む、項目1または2に記載の腫瘍抗原ペプチド。
27.ゲノムの非タンパク質コード領域に位置する配列によってコードされ、配列番号1、4、6~8、10、13、15~27および36~99、好ましくは配列番号19~27および36~99のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、項目1~26のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド。
28.ゲノムの該非タンパク質コード領域が、非翻訳転写領域(UTR)であり、該腫瘍抗原ペプチドが、配列番号1、8、10、13、15、および19~27、好ましくは配列番号19~27のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、項目27に記載の腫瘍抗原ペプチド。
29.ゲノムの該非タンパク質コード領域が、イントロンであり、該腫瘍抗原ペプチドが、配列番号16、17、および36~64、好ましくは配列番号36~64のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、項目27に記載の腫瘍抗原ペプチド。
30.ゲノムの該非タンパク質コード領域が、遺伝子間領域であり、該腫瘍抗原ペプチドが、配列番号65~84のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、項目27に記載の腫瘍抗原ペプチド。
31.ゲノムの該非タンパク質コード領域が、非コードRNA転写物(ncRNA)のエクソンであり、該腫瘍抗原ペプチドが、配列番号4および85~92、好ましくは配列番号85~92のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、項目27に記載の腫瘍抗原ペプチド。
32.ゲノムの該非タンパク質コード領域が、遺伝子のアンチセンス鎖であり、該腫瘍抗原ペプチドが、配列番号93~99のうちのいずれか1つに記載のアミノ酸配列を含む、項目27に記載の腫瘍抗原ペプチド。
33.項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドをコードする、核酸。
34.mRNAまたはウイルスベクターである、項目33に記載の核酸。
35.項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、または項目33もしくは34に記載の核酸を含む、リポソーム。
36.項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、項目31もしくは32に記載の核酸、または項目33に記載のリポソーム、および薬学的に許容される担体を含む、組成物。
37.項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、項目33もしくは34に記載の核酸、項目35に記載のリポソーム、または項目36に記載の組成物、およびアジュバントを含む、ワクチン。
38.そのペプチド結合溝内の項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドを含む、単離された主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子。
39.多量体の形態にある、項目38に記載の単離されたMHCクラスI分子。
40.該多量体が、四量体である、項目39に記載の単離されたMHCクラスI分子。
41.(i)項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、または(ii)項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むベクターを含む、単離された細胞。
42.それらのペプチド結合溝内の項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチドを含む主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスI分子を、その表面で発現する、単離された細胞。
43.抗原提示細胞(APC)である、項目42に記載の細胞。
44.該APCが、樹状細胞である、項目43に記載の細胞。
45.項目38~40のいずれか一項に記載の単離されたMHCクラスI分子および/または項目42~44のいずれか一項に記載の細胞の表面で発現されたMHCクラスI分子を特異的に認識する、T細胞受容体(TCR)。
46.項目45に記載のTCRを、その細胞表面において発現する、単離されたCD8+Tリンパ球。
47.少なくとも0.5%の項目46に定義されたCD8+Tリンパ球を含む、細胞集団。
48.対象において卵巣がんを治療する方法であって、有効量の、(i)項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)項目33もしくは34に記載の核酸、(iii)項目35に記載のリポソーム、(iv)項目36に記載の組成物、(v)項目37に記載のワクチン、(vi)項目41~45のいずれか一項に記載の細胞、(vii)項目46に記載のCD8+Tリンパ球、または(viii)項目47に記載の細胞集団を、対象に投与することを含む、方法。
49.該卵巣がんが、漿液性がんである、項目48に記載の方法。
50.該漿液性がんが、高悪性度漿液性がん(HGSC)である、項目49に記載の方法。
51.少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法を、対象に投与することをさらに含む、項目48~50のいずれか一項に記載の方法。
52.該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法または手術である、項目51に記載の方法。
53.(i)項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)項目33もしくは34に記載の核酸、(iii)項目35に記載のリポソーム、(iv)項目36に記載の組成物、(v)項目37に記載のワクチン、(vi)項目41~45のいずれか一項に記載の細胞、(vii)項目46に記載のCD8+Tリンパ球、または(viii)項目47に記載の細胞集団の、対象において卵巣がんを治療するための、使用。
54.(i)項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)項目33もしくは34に記載の核酸、(iii)項目35に記載のリポソーム、(iv)項目36に記載の組成物、(v)項目37に記載のワクチン、(vi)項目41~45のいずれか一項に記載の細胞、(vii)項目46に記載のCD8+Tリンパ球、または(viii)項目47に記載の細胞集団の、対象において卵巣がんを治療するための医薬品の製造のための、使用。
55.該卵巣がんが、漿液性がんである、項目53または54に記載の使用。
56.該漿液性がんが、高悪性度漿液性がん(HGSC)である、項目55に記載の使用。
57.少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法の使用をさらに含む、項目53~56のいずれか一項に記載の使用。
58.該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法または手術である、項目57に記載の使用。
59.対象において卵巣がんを治療することにおける使用のための、(i)項目1~32のいずれか一項に記載の腫瘍抗原ペプチド、(ii)項目33もしくは34に記載の核酸、(iii)項目35に記載のリポソーム、(iv)項目36に記載の組成物、(v)項目37に記載のワクチン、(vi)項目41~45のいずれか一項に記載の細胞、(vii)項目46に記載のCD8+Tリンパ球、または(viii)項目47に記載の細胞集団。
60.該卵巣がんが、漿液性がんである、項目59に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸、リポソーム、組成物、ワクチン、細胞、CD8+Tリンパ球、または細胞集団。
61.該漿液性がんが、高悪性度漿液性がん(HGSC)である、項目60に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸、リポソーム、組成物、ワクチン、細胞、CD8+Tリンパ球、または細胞集団。
62.腫瘍抗原ペプチド、核酸、リポソーム、組成物、ワクチン、細胞、CD8+Tリンパ球、または細胞集団が、少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法と併用される、項目59~61のいずれか一項に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸、リポソーム、組成物、ワクチン、細胞、CD8+Tリンパ球、または細胞集団。
63.該少なくとも1つの追加の抗腫瘍剤または療法が、化学療法剤、免疫療法、免疫チェックポイント阻害剤、放射線療法または手術である、項目62に記載の使用のための腫瘍抗原ペプチド、核酸、リポソーム、組成物、ワクチン、細胞、CD8+Tリンパ球、または細胞集団。
【0007】
本発明の他の目的、利点および特徴は、添付図面を参照して例示としてのみ与えられる、以下の特定の実施形態の非制限的な説明を読み取ることにより明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】この研究で使用したTSA特定パイプラインの概略ワークフローを示す。HGSC試料を、免疫沈降およびRNA配列決定のために処理した。RNA-Seqデータから構築されたカスタマイズされた個々のグローバルがんデータベース内の一致を検索することによって、MAPを特定したMS分析を使用して、ペプチド配列を特定した。CDS:コード配列。
【
図2】
図2A~
図2Bは、aeTSA候補をコードするRNAの正常な組織における発現を示す。27個の末梢組織におけるaeTSAコード配列の平均RNA発現を示すヒートマップであって、1億のリードごとに平均対数変換されたリード(rphm)における各組織の発現レベルに対応する色強度を有するヒートマップである。太字のボックスは、閾値RNA発現(平均rphm>10)を上回る組織/臓器を示す。各ペプチド配列の横の数字は、対応するRNAの閾値発現を上回る組織の数を示す。
【
図3】
図3A~
図3Dは、ほとんどのTSAが非変異非エクソン配列に由来することを示す。
図3A:各試料で特定されたMAP(左)およびTSA(右)の数。
図3B:散布図は、試料ごとに特定されたMAPの数とTSAの数との間のピアソン相関を示す。
図3C:本明細書で研究したコホートおよびSchusterらのデータセットにおいて特定されたTSAの起源を示す棒グラフ。青色のシェードは、フレーム内エクソン翻訳(コードイン)、フレーム外エクソン翻訳(コードアウト)、または非エクソン翻訳(非コード)から生じるTSAの数を示す。
図3D:aeTSAの翻訳フレーム(内円)、詳細なゲノム起源(中央円)、およびそれらのレポート状況(外円)を示す円グラフ。
【
図4】卵巣がん試料全体にわたるaeTSAコード領域の発現を示す。ヒートマップは、この研究で報告された9つの試料(左)およびTCGA-OVコホートからの378個の試料中の各aeTSAをコードする領域のRNA発現を示し、色強度は、100万のリード当たりの領域でマッピングされたリード中のRNAレベルを示す。
【
図5】
図5A~
図5Bは、コピー数の変化がいくつかのaeTSAの発現と相関することを示す。
図5A:ヒートマップは、遺伝子内(左)または遺伝子外(右)に位置するaeTSAについて、aeTSA RNA発現レベルとDNAコピー数、プロモーターメチル化または遺伝子発現との間のスピアマン(Spearman)相関を示す。利用できないデータは、ライトグレーとして表示されている。
図5B:腕レベル増幅スコア(下部)を有する各染色体腕(上部)から特定されたaeTSAの数。アスタリスクは、有意であると見なされる増幅を示す(Q値<0.25)。
【
図6】
図6A~
図6Eは、3つのaeTSAの提示が、自発的な抗腫瘍免疫応答を誘発し得ることを示す。
図6A~
図6C:カプラン・マイヤー曲線は、TCGA-OVコホートにおける4群の患者の生存を示す。3つの個々のaeTSAについて、1つの群はaeTSA(EP)を提示することができ、3つの群は提示することができなかった(ED、NDおよびNP)。ED:関連するHLAアロタイプの不在でのaeTSAコードRNAの発現;ND:関連するHLAアロタイプの不在でのaeTSAコードRNAの発現なし;EP:関連するHLAアロタイプの存在でのaeTSAコードRNAの発現;NP:関連するHLAアロタイプの存在でのaeTSAコードRNAの発現なし。カラーシェードは、95%信頼区間を表す。ログランクP値が示される。
図6D、
図6E:
図6Cに示される4つの群からの腫瘍中のTおよび細胞傷害性細胞の存在量。
【
図7】3つの異なる集団における個々のHGSCによって提示されるaeTSAの推定頻度を示す。各集団について100万人の模擬患者を生成した。aeTSAは、そのRNAが発現され、関連するHLAアロタイプが存在したときに、模擬患者に存在すると見なされた。aeTSA RNA発現の頻度は、TCGA-OV RNA-Seqデータに基づいていた(
図4に示す)。HLAアロタイプ頻度を、USA National Marrow Donor Programから得た。赤い破線は、各集団における腫瘍当たりのaeTSAの中央値の数を示す。
【
図8】
図8A~
図8Bは、dbSNPに基づくmTSA検証が、対合した正常試料の配列決定データによっても支持されることを示す。
図8A:dbSNPに報告されている共通の多型にマッチングする除外されたTSA候補の例。変異体ヌクレオチドは、対合した正常試料でも見られた。
図8B:dbSNPに変異体が存在しないmTSAの例。変異体ヌクレオチドは、配列決定の誤りである可能性が高い1つのリードを有する対合した正常でのみ検出される。
【
図9】生殖細胞系列多型を含有するTSA候補のコード配列の末梢発現を示す。dbSNPに記録された単一ヌクレオチド変異を有するTSA候補は、それらのコード配列および対応する参照配列の両方が末梢組織におけるRNA発現を制限している場合、aeTSAと見なされた。27個の末梢組織におけるaeTSAコード配列の平均RNA発現を示すヒートマップであって、色強度は、1億のリードごとに平均対数変換されたリード(rphm)における各組織の発現レベルに対応する、ヒートマップである。太字は平均rphm値が10より高い組織/臓器を示す。各ペプチド配列の横の数は、所与のペプチドに対するかなりのRNA発現を有する組織の数を示す。赤色のアスタリスクは、aeTSAとして保持されているペプチドを示す。
【
図10】MAPの数と腫瘍サイズとの間の相関を示すグラフである。散布図は、各試料のHLA対立遺伝子(y軸)ごとに特定された腫瘍サイズ(x軸)とMAP番号との間のピアソン相関を示す。このプロットでは、バッチ効果を回避するために、Schusterら(最大のサブグループ)からの試料のみを使用した。
【
図11】
図11A~
図11Bは、aeTSA発現とDNAコピー数多型(CNV)との間の関係を示すグラフである。
図11A:フィッシャー(Fisher)の正確検定で計算した、遺伝子内aeTSA RNA発現とCNVとの間の有意な相関のエンリッチメント分析。aeTSAは、TSAを発現する腫瘍の割合(上半分および下半分)に基づいてグループ化される。
図11B:aeTSA数と染色体腕増幅との間の相関。散布図は、各試料の腕(y軸)から特定された染色体腕増幅(x軸)とaeTSA数との間のピアソン相関を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書で使用される遺伝学、分子生物学、生化学、および核酸の用語ならびに記号は、当該分野における標準的な論文およびテキスト、例えば、Kornberg and Baker,DNA Replication,Second Edition(W.H.Freeman,New York,1992)、Lehninger,Biochemistry,Second Edition(Worth Publishers,New York,1975)、Strachan and Read,Human Molecular Genetics,Second Edition(Wiley-Liss,New York,1999)、Eckstein,editor,Oligonucleotides and Analogs:A Practical Approach(Oxford University Press,New York,1991)、Gait,editor,Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach(IRL Press,Oxford,1984)などに従う。すべての用語は、関連技術分野において確立されたそれらの典型的な意味を用いて理解されなければならない。
【0010】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的対象の1つまたは2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書で使用される。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。本明細書全体を通して、文脈上別段の必要がない限り、「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、および「含む(comprising)」という用語は、指定された工程もしくは要素、または工程もしくは要素の群の包含を意味するが、任意の他の工程もしくは要素、または工程もしくは要素の群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0011】
本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に収まる各々の別個の値を個別に指す完結にした表現法としての役割を果たすことを意図するに過ぎず、各々の別個の値は、本明細書に個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。また、範囲内の値のすべての部分集合は、本明細書で個別に列挙されるかのように本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または文脈によって明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行することができる。
【0013】
本明細書で提供される任意のおよびすべての例、または例示的な言語(例えば、「など」)の使用は、本発明をよりよく例示することのみを意図しており、別段の主張がない限り、本発明の範囲に限定を与えるものではない。
【0014】
本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠であると主張されていない要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0015】
本明細書では、「約」という用語はその普通の意味を有する。「約」という用語は、値が、値を決定するために使用されるデバイスまたは方法に対する誤差の固有の変動を含むことを示すために使用されるか、または列挙される値に近い、例えば、列挙される値(または値の範囲)の10%または5%以内の値を包含する。
【0016】
本明細書に記載の研究において、本発明者らは、プロテオゲノムベースのアプローチを使用して、23個のHGSC腫瘍から111個のTSA候補(103個の新規の候補および8個の以前に報告された候補)を特定した。これらのTSA(93)の大部分は、正常な組織では発現されない、異常発現された非変異ゲノム配列に由来する。これらの異常発現TSA(本明細書においてaeTSAと称される)は、主に非エクソン配列、特にイントロン(31%)および遺伝子間(22%)配列に由来することが示され、それらの発現は、遺伝子コピー数およびDNAメチル化の変動によって転写レベルで調節された。これらのaeTSAは、HGSCの大部分によって共有され、aeTSA発現の頻度およびHLA対立遺伝子頻度を考慮すると、白人において、腫瘍当たりのaeTSAの数の中央値は5であると推定された。本明細書で特定された新規のTSA候補は、卵巣がんのT細胞に基づく免疫療法に有用であり得る。
【0017】
したがって、態様では、本開示は、配列番号1~103、好ましくは配列番号19~103(表3A、表3B)のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)に関する。
【0018】
実施形態では、本開示は、配列番号1、8、10、13、15、および19~27、好ましくは配列番号19~27のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、非翻訳転写領域(UTR)、すなわち3’-UTRまたは5’-UTR領域に位置する配列によってコードされる腫瘍抗原ペプチドに関する。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、配列番号1、10、13、15、および19~23、好ましくは配列番号19~23のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、5’-UTR領域に位置する配列によってコードされる。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、配列番号8、および24~27、好ましくは配列番号24~27のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、3’-UTR領域に位置する配列によってコードされる。
【0019】
実施形態では、本開示は、配列番号16、17、および36~64、好ましくは配列番号36~64のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、イントロンに位置する配列によってコードされる腫瘍抗原ペプチドに関する。
【0020】
実施形態では、本開示は、配列番号65~84のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、遺伝子間領域に位置する配列によってコードされる腫瘍抗原ペプチドに関する。
【0021】
別の実施形態では、本開示は、配列番号6、7、18および28~35、好ましくは配列番号28~35のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、エクソンに位置し、かつフレームシフトから始まる配列によってコードされる腫瘍抗原ペプチドに関する。
【0022】
別の実施形態では、本開示は、配列番号4、および85~92、好ましくは配列番号85~92のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、非コードRNA配列(ncRNA)(非コード転写物のエクソンに位置する)によってコードされる腫瘍抗原ペプチドに関する。
【0023】
別の実施形態では、本開示は、配列番号93~99のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、遺伝子のアンチセンスである配列によってコードされる腫瘍抗原ペプチドに関する。
【0024】
別の実施形態では、本開示は、配列番号100~103のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる、ムチン遺伝子からの配列によってコードされる腫瘍抗原ペプチドに関する。
【0025】
一般に、HLAクラスIに関連して提示される腫瘍抗原ペプチドなどのペプチドは、長さが約7または8~約15個、または好ましくは8~14個のアミノ酸残基である。本開示の方法のいくつかの実施形態では、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチド配列を含むより長いペプチドが、抗原提示細胞(APC)などの細胞に人工的に装填され、細胞によって処理され、腫瘍抗原ペプチドは、APCの表面におけるMHCクラスI分子によって提示される。この方法では、15個のアミノ酸残基(すなわち、腫瘍抗原前駆体ペプチド)よりも長いペプチド/ポリペプチドをAPCに装填することができ、提示のために本明細書に定義される対応する腫瘍抗原ペプチドを提供するAPC細胞質中のプロテアーゼによって処理される。いくつかの実施形態では、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドを生成するために使用される前駆体ペプチド/ポリペプチドは、例えば、1000、500、400、300、200、150、100、75、50、45、40、35、30、25、20、または15個以下のアミノ酸である。したがって、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドを使用するすべての方法およびプロセスは、細胞(APC)による処理後の「最終的な」8~14個の腫瘍抗原ペプチドの提示を誘導するための、より長いペプチドまたはポリペプチド(天然タンパク質を含む)、すなわち、腫瘍抗原前駆体ペプチド/ポリペプチドの使用を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドは、約8~14、8~13、または8~12個のアミノ酸長(例えば、8、9、10、11、12、または13個のアミノ酸長)であり、HLAクラスI分子に直接適合するのに十分小さい。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、20個以下のアミノ酸、好ましくは15個以下のアミノ酸、より好ましくは14個以下のアミノ酸を含む。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、少なくとも7個のアミノ酸、好ましくは少なくとも8個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも9個のアミノ酸を含む。
【0026】
本明細書で使用される「アミノ酸」という用語には、天然に存在するアミノ酸のL-異性体およびD-異性体の両方、ならびに腫瘍抗原ペプチドの合成類似体を調製するためにペプチド化学で使用される他のアミノ酸(例えば、天然に存在するアミノ酸、天然に存在しないアミノ酸、核酸配列によってコードされていないアミノ酸など)が含まれる。天然に存在するアミノ酸の例は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニンなどである。他のアミノ酸としては、例えば、非遺伝子コード形態のアミノ酸、ならびにL-アミノ酸の保存的置換が挙げられる。天然に存在する非遺伝子コードアミノ酸としては、例えば、β-アラニン、3-アミノプロピオン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸、α-アミノイソ酪酸(Aib)、4-アミノ-酪酸、N-メチルグリシン(サルコシン)、ヒドロキシプロリン、オルニチン(例えば、L-オルニチン)、シトルリン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、ノルロイシン(Nle)、ノルバリン、2-ナフチルアラニン、ピリジルアラニン、3-ベンゾチエニルアラニン、4-クロロフェニルアラニン、2-フルオロフェニルアラニン、3-フルオロフェニルアラニン、4-フルオロフェニルアラニン、ペニシラミン、1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸、β-2-チエニルアラニン、メチオニンスルホキシド、L-ホモアルギニン(Hoarg)、N-アセチルリシン、2-アミノ酪酸、2-アミノ酪酸、2,4-ジアミノ酪酸(D-もしくはL-)、p-アミノフェニルアラニン、N-メチルバリン、ホモシステイン、ホモセリン(HoSer)、システイン酸、ε-アミノヘキサン酸、δ-アミノ吉草酸、または2,3-ジアミノ酪酸(D-もしくはL-)などが挙げられる。これらのアミノ酸は、生化学/ペプチド化学の分野において周知である。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、天然に存在するアミノ酸のみを含む。
【0027】
実施形態では、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドは、本明細書に記載の配列と比較して、機能的に等価なアミノ酸残基の置換を含有する改変された配列を有するペプチドを含む。例えば、配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、機能的等価物として作用し、サイレント変異(alteration)をもたらす、類似の極性(類似の物理化学的特性を有する)の別のアミノ酸によって置換され得る。配列内のアミノ酸の置換は、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択され得る。例えば、正に荷電した(塩基性)アミノ酸としては、アルギニン、リジン、およびヒスチジン(ならびにホモアルギニンおよびオルニチン)が挙げられる。非極性(疎水性)アミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、アラニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、トリプトファンおよびメチオニンが挙げられる。荷電していない極性アミノ酸としては、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギンおよびグルタミンが挙げられる。負に荷電した(酸性)アミノ酸としては、グルタミン酸およびアスパラギン酸が挙げられる。アミノ酸のグリシンは、非極性アミノ酸ファミリーまたは非荷電(中性)極性アミノ酸ファミリーのいずれかに含まれ得る。アミノ酸のファミリー内で行われる置換は、一般に、保存的置換であると理解される。本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドは、すべてのL-アミノ酸、すべてのD-アミノ酸、またはL-アミノ酸とD-アミノ酸との混合物を含んでもよい。実施形態では、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドは、すべてのL-アミノ酸を含む。
【0028】
実施形態では、表3A~表3Bに開示される配列のうちの1つを含むかまたはそれからなる腫瘍抗原ペプチドの配列において、T細胞受容体との相互作用に実質的に寄与しないアミノ酸残基は、組み込まれることが実質的にT細胞反応性に影響せず、関連するMHCへの結合を排除しない他のアミノ酸との置き換えによって修飾され得る。
【0029】
腫瘍抗原ペプチドはまた、分解を防止し、安定性、親和性および/または取り込みを増加させるために、N末端および/またはC末端にキャップされてもよいし、または修飾されてもよい。したがって、別の態様では、本開示は、式Z1-X-Z2の修飾された腫瘍抗原ペプチドを提供し、式中、Xは、配列番号1~103、好ましくは配列番号19~103のアミノ酸配列のうちの1つを含むか、またはそれからなる腫瘍抗原ペプチドである(表3A、表3B)。
【0030】
実施形態では、腫瘍抗原ペプチドのアミノ末端残基(すなわち、N末端の遊離アミノ基)は、例えば、部分/化学基(Z1)の共有結合によって、(例えば、分解からの保護のために)修飾される。Z1は、1~8個の炭素の直鎖または分枝鎖アルキル基、またはアシル基(R-CO-)であってもよく、式中、Rは、疎水性部分(例えば、アセチル、プロピオニル、ブタニル、イソプロピオニル、もしくはイソ-ブタニル)、またはアロイル基(Ar-CO-)であり、式中、Arは、アリール基である。実施形態では、アシル基は、C1~C16またはC3~C16アシル基(直鎖または分枝、飽和または不飽和)であり、さらなる実施形態では、飽和C1~C6アシル基(直鎖または分枝)もしくは不飽和C3~C6アシル基(直鎖または分枝)、例えばアセチル基(CH3-CO-Ac)である。実施形態では、Z1は存在しない。腫瘍抗原ペプチドのカルボキシ末端残基(すなわち、腫瘍抗原ペプチドのC末端の遊離カルボキシ基)は、例えばアミド化(NH2基によるOH基の置換)によって修飾され得る(例えば、分解からの保護のために)ので、このような場合、Z2はNH2基である。実施形態では、Z2は、ヒドロキサメート基、ニトリル基、アミド(一級、二級または三級)基、メチルアミン、イソ-ブチルアミン、イソ-バレリルアミンまたはシクロヘキシルアミンなどの1~10個の炭素の脂肪族アミン、アニリン、ナフチルアミン、ベンジルアミン、シンナミルアミン、またはフェニルエチルアミンなどの芳香族もしくはアリールアルキルアミン、アルコール、またはCH2OHであってもよい。実施形態では、Z2は存在しない。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、配列番号1~103、好ましくは配列番号19~103のアミノ酸配列(表3A、表3B)のうちの1つを含む。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、配列番号1~103、好ましくは配列番号19~103のアミノ酸配列(表3A、表3B)のうちの1つからなり、すなわち、Z1およびZ2は存在しない。
【0031】
別の態様では、本開示は、配列番号21、28、40、41、66または88の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*01:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0032】
別の態様では、本開示は、配列番号14、17、45、48、51、56、75、77、82、98または100、好ましくは45、48、51、56、75、77、82、98または100の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*02:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0033】
別の態様では、本開示は、配列番号1、19、20、22、30、31、36、50、52、60、62、73、84、85、86または91、好ましくは19、20、22、30、31、36、50、52、60、62、73、84、85、86または91の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*03:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0034】
別の態様では、本開示は、配列番号32、54、55、67、69、81、87、90または102の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*11:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0035】
別の態様では、本開示は、配列番号33または43の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*24:02分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0036】
別の態様では、本開示は、配列番号24の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*25:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0037】
別の態様では、本開示は、配列番号34または58の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*29:02分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0038】
別の態様では、本開示は、配列番号16の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-A*32:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0039】
別の態様では、本開示は、配列番号4、6、8、9、26、49、78、92、97または101、好ましくは26、49、78、92、97または101の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*07:02分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0040】
別の態様では、本開示は、配列番号23、35、42、44、46、59、63、70、74、76、83または103の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*08:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0041】
別の態様では、本開示は、配列番号53の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*14:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0042】
別の態様では、本開示は、配列番号2、3または5の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*15:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0043】
別の態様では、本開示は、配列番号89の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*18:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0044】
別の態様では、本開示は、配列番号47、64、96または99の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*39:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0045】
別の態様では、本開示は、配列番号11、12または13の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*40:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0046】
別の態様では、本開示は、配列番号65の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*44:02分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0047】
別の態様では、本開示は、配列番号37または94の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-B*44:03分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0048】
別の態様では、本開示は、配列番号10、29、71または95、好ましくは配列番号29、71または95の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*03:03分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0049】
別の態様では、本開示は、配列番号6または15の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*04:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0050】
別の態様では、本開示は、配列番号27の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*05:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0051】
別の態様では、本開示は、配列番号18または72、好ましくは配列番号または72の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*06:02分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0052】
別の態様では、本開示は、配列番号38、61または93の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*07:01分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0053】
別の態様では、本開示は、配列番号7の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*07:02分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0054】
別の態様では、本開示は、配列番号80の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*12:03分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0055】
別の態様では、本開示は、配列番号25、57または79の配列を含むか、またはそれからなる、HLA-C*14:02分子に結合する、腫瘍抗原ペプチド(または腫瘍特異的ペプチド)、好ましくは卵巣腫瘍抗原ペプチドを提供する。
【0056】
実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、非翻訳転写領域(UTR)、すなわち、3’-UTRまたは5’-UTR領域に位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、イントロンに位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、遺伝子間領域に位置する配列によってコードされる。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、エクソン内に位置し、かつフレームシフトに由来する配列によってコードされる。
【0057】
本開示の腫瘍抗原ペプチドは、腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸を含む宿主細胞での発現(組換え発現)によって、または化学合成(例えば、固相ペプチド合成)によって産生され得る。ペプチドは、当該技術分野において周知の手動および/または自動固相手順によって容易に合成することができる。好適な合成は、例えば、「T-boc」または「Fmoc」手順を利用することによって行うことができる。固相合成のための技術および手順は、例えば、Solid Phase Peptide Synthesis:A Practical Approach(E.Atherton and R.C.Sheppard著、IRL,Oxford University Pressにより1989年に公開)に記載されている。あるいは、腫瘍抗原ペプチドは、例えば、Liu et al.,Tetrahedron Lett.37:933-936,1996、Baca et al.,J.Am.Chem.Soc.117:1881-1887,1995、Tam et al.,Int.J.Peptide Protein Res.45:209-216,1995、Schnolzer and Kent,Science 256:221-225,1992、Liu and Tam,J.Am.Chem.Soc.116:4149-4153,1994、Liu and Tam,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:6584-6588,1994、およびYamashiro and Li,Int.J.Peptide Protein Res.31:322-334,1988)に記載されるように、セグメント凝縮によって調製されてもよい。腫瘍抗原ペプチドの合成に有用な他の方法は、Nakagawa et al.,J.Am.Chem.Soc.107:7087-7092,1985に記載されている。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは化学的に合成される(合成ペプチド)。本開示の別の実施形態は、非天然に存在するペプチドであって、該ペプチドが、本明細書に定義されるアミノ酸配列からなるか、または本質的になり、薬学的に許容される塩として合成的に産生された(例えば、合成された)ペプチドに関する。本開示による腫瘍抗原ペプチドの塩は、インビボで生成されるペプチドは塩ではないため、インビボでの状態のペプチドとは大きく異なる。ペプチドの非天然塩形態は、特にペプチドを含む医薬組成物、例えば、本明細書に開示されるペプチドワクチンに関連して、ペプチドの溶解性を調節し得る。好ましくは、塩は、ペプチドの薬学的に許容される塩である。
【0058】
実施形態では、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドは、実質的に純粋である。化合物は、それに自然に付随する成分から分離されるとき、「実質的に純粋である」。典型的には、化合物は、試料中の全材料の少なくとも60重量%、より一般的に75重量%、80重量%または85重量%、好ましくは90重量%超、より好ましくは95重量%超である場合、実質的に純粋である。このため、例えば、組換え技術によって化学的に合成されるかまたは産生されるポリペプチドは、一般に、その天然に関連する成分、例えば、その供給源である高分子の成分を実質的に含まないであろう。核酸分子は、核酸が由来する生物の天然に存在するゲノムにおいて通常連続しているコード配列とすぐに連続していない(すなわち、共有結合していない)場合、実質的に純粋である。実質的に純粋な化合物は、例えば、天然源からの抽出によって、ペプチド化合物をコードする組換え核酸分子の発現によって、または化学合成によって得ることができる。純度は、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、HPLCなどの任意の適切な方法を用いて測定することができる。実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、溶液中にある。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、固体形態であり、例えば、凍結乾燥されている。
【0059】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドまたは腫瘍抗原前駆体ペプチドをコードする核酸(単離された)をさらに提供する。実施形態では、核酸は、約21ヌクレオチド~約45ヌクレオチド、約24~約45ヌクレオチド、例えば、24、27、30、33、36、39、42または45ヌクレオチドを含む。「単離された」は、本明細書で使用する場合、分子の天然環境に存在する他の成分または天然に存在する供給源の高分子(例えば、他の核酸、タンパク質、脂質、糖などを含む)から分離されたペプチドまたは核酸分子を指す。「合成的」は、本明細書で使用する場合、例えば、組換え技術を通してまたは化学合成を使用して産生される、その天然源から単離されていないペプチドまたは核酸分子を指す。本開示の核酸は、本開示の腫瘍抗原ペプチドの組換え発現のために使用され得、宿主細胞にトランスフェクトされ得るクローニングベクターまたは発現ベクターなどの、ベクターまたはプラスミドに含まれ得る。実施形態では、本開示は、本開示の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸配列を含むクローニング、発現、またはウイルスベクターもしくはプラスミドを提供する。あるいは、本開示の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸は、宿主細胞のゲノムに組み込まれ得る。いずれの場合においても、宿主細胞は、腫瘍抗原ペプチドまたは核酸によってコードされるタンパク質を発現する。本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、特定の対象細胞を指すだけでなく、そのような細胞の子孫または潜在的な子孫を指す。宿主細胞は、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドを発現することができる任意の原核細胞(例えば、E.coli)または真核細胞(例えば、昆虫細胞、酵母細胞または哺乳動物細胞)であることができる。ベクターまたはプラスミドは、挿入されたコード配列の転写および翻訳に必要な要素を含有し、耐性遺伝子、クローニング部位などの他の構成要素を含有し得る。当業者に周知の方法を使用して、ペプチドまたはポリペプチドをコードする配列、およびそれに作動可能に連結された適切な転写および翻訳制御/調節要素を含む発現ベクターを構築してもよい。これらの方法には、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えが挙げられる。そのような技術は、Sambrook.et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press,Plainview,N.Y.、およびAusubel,F.M.et al.(1989)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,N.Y.に記載されている。「作動可能に連結されている」とは、成分、特にヌクレオチド配列の正常な機能を行うことができるようにする成分の並列配置を指す。したがって、調節配列に作動可能に連結されているコード配列は、調節配列の調節制御、すなわち、転写および/または翻訳制御下でコード配列を発現させることができるヌクレオチド配列の構成を指す。「調節/制御領域」または「調節/制御配列」は、本明細書で使用する場合、コード核酸の発現の調節に関与する非コードヌクレオチド配列を指す。したがって、調節領域という用語は、プロモーター配列、調節タンパク質結合部位、上流活性化因子配列などを含む。実施形態では、本開示の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸(DNA、RNA)は、リポソームまたは任意の他の好適なビヒクル内に含まれるか、またはそれに結合している。
【0060】
別の態様では、本開示は、腫瘍抗原ペプチドを含む(すなわち、提示する、または結合する)MHCクラスI分子を提供する。実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A1分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*01:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A2分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*02:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A3分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*03:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A11分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*11:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A24分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*24:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A25分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*25:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A29分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*29:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-A32分子であり、さらなる実施形態では、HLA-A*32:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B07分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*07:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B08分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*08:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B14分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*14:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B15分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*15:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B18分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*18:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B39分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*39:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B40分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*40:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-B44分子であり、さらなる実施形態では、HLA-B*44:02分子またはHLA-B*44:03である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C03分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*03:03分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C04分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*04:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C05分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*05:01分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C06分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*06:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C07分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*07:01またはHLA-C*07:02分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C12分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*12:03分子である。別の実施形態では、MHCクラスI分子は、HLA-C14分子であり、さらなる実施形態では、HLA-C*14:02分子である。
【0061】
実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、MHCクラスI分子に非共有結合される(すなわち、腫瘍抗原ペプチドは、MHCクラスI分子のペプチド結合溝/ポケットに装填されるか、または非共有結合される)。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、MHCクラスI分子(α鎖)に共有結合(attached)/結合(bound)される。そのような構築物において、腫瘍抗原ペプチドおよびMHCクラスI分子(α鎖)は、典型的には、短い(例えば、5~20個の残基、好ましくは、約8~12個、例えば、10個)柔軟リンカーまたはスペーサー(例えば、ポリグリシンリンカー)を有する合成融合タンパク質として産生される。別の態様では、本開示は、MHCクラスI分子(α鎖)に融合した本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する。実施形態では、MHCクラスI分子(α鎖)-ペプチド複合体は、多量体化される。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチドを(共有結合的にまたは非共有結合的に)装填したMHCクラスI分子の多量体を提供する。そのような多量体は、多量体の検出を可能にするタグ、例えば、蛍光タグに結合してもよい。MHC二量体、四量体、五量体、八量体などを含む、MHC多量体の産生のための多数の戦略が開発されている(Bakker and Schumacher,Current Opinion in Immunology 2005,17:428-433に概説されている)。MHC多量体は、例えば、抗原特異的T細胞の検出および精製に有用である。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドに特異的なCD8+Tリンパ球を検出または精製する(単離、濃縮する)ための方法であって、細胞集団を、腫瘍抗原ペプチドと共に(共有結合的にまたは非共有結合的に)装填されたMHCクラスI分子の多量体と接触させることと、MHCクラスI多量体によって結合されるCD8+Tリンパ球を検出または単離することとを含む、方法を提供する。MHCクラスI多量体によって結合されたCD8+Tリンパ球は、既知の方法、例えば、蛍光活性化細胞選別法(FACS)または磁気活性化細胞選別法(MACS)を使用して単離されてもよい。
【0062】
さらに別の態様では、本開示は、本明細書に記載の本開示の核酸、ベクターまたはプラスミド、すなわち、1つ以上の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸またはベクターを含む細胞(例えば、宿主細胞)、実施形態では単離された細胞を提供する。別の態様では、本開示は、本開示による腫瘍抗原ペプチドに結合したまたはそれを提示するMHCクラスI分子(例えば、上記開示の対立遺伝子のうちの1つのMHCクラスI分子)を発現する細胞を提供する。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、哺乳動物細胞、好ましくはヒト細胞、細胞株または不死化細胞である。別の実施形態では、細胞は抗原提示細胞(APC)である。一実施形態では、宿主細胞は、初代細胞、細胞株または不死化細胞である。別の実施形態では、細胞は抗原提示細胞(APC)である。核酸およびベクターは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術を介して細胞に導入することができる。「形質転換」および「トランスフェクション」という用語は、リン酸カルシウムもしくは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、リポフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクションおよびウイルス媒介性トランスフェクションを含む、外来の核酸を宿主細胞に導入するための技術を指す。宿主細胞を形質転換またはトランスフェクションするための好適な方法は、例えば、Sambrook et al.(上記)、および他の実験室マニュアルに見出すことができる。インビボで哺乳動物細胞に核酸を導入する方法も既知であり、遺伝子治療のために本開示のベクターまたはプラスミドを対象に送達するために使用され得る。
【0063】
当該技術分野において既知の様々な方法を使用して、APCなどの細胞に、1つ以上の腫瘍抗原ペプチドを装填することができる。本明細書で使用される場合、腫瘍抗原ペプチドを「細胞に装填する」とは、腫瘍抗原ペプチドまたは腫瘍抗原ペプチドをコードするRNAまたはDNAが細胞にトランスフェクトされるか、別の方法としては、APCが腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸で形質転換されることを意味する。細胞はまた、細胞表面に存在するMHCクラスI分子(例えば、ペプチドパルス細胞)に直接結合することができる外因性腫瘍抗原ペプチドと細胞を接触させることによって装填することができる。腫瘍抗原ペプチドはまた、MHCクラスI分子によるその提示を容易にするドメインまたはモチーフ、例えば、小胞体(ER)回収シグナル、C末端Lys-Asp-Glu-Leu配列に融合することができる(Wang et al.Eur J Immunol.2004 Dec:34(12):3582-94を参照されたい)。
【0064】
別の態様では、本開示は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチド(または該ペプチドをコードする核酸)のうちのいずれか1つ、もしくは任意の組み合わせを含む、組成物またはペプチド組み合わせ/プールを提供する。実施形態では、組成物は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせ(2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせ)、または該腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸の組み合わせを含む)。本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせ/部分的組み合わせを含む組成物は、本開示に包含される。別の実施形態では、組み合わせまたはプールは、1つ以上の既知の腫瘍抗原を含んでもよい。
【0065】
したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドのうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせと、MHCクラスI分子(例えば、上記に開示した対立遺伝子のうちの1つのMHCクラスI分子)を発現する細胞と、を含む、組成物を提供する。本開示において使用するためのAPCは、特定の種類の細胞に限定されず、CD8+Tリンパ球によって認識されるように、その細胞表面にタンパク質性抗原を提示することが知られている、樹状細胞(DC)、ランゲルハンス細胞、マクロファージ、およびB細胞などのプロフェッショナルAPCを含む。例えば、APCは、インビトロ、エクスビボまたはインビボのいずれかで、末梢血単核球からDCを誘導し、次いで腫瘍抗原ペプチドを接触させる(刺激する)ことによって得ることができる。APCはまた、本開示の腫瘍抗原ペプチドのうちの1つ以上が対象に投与され、腫瘍抗原ペプチドを提示するAPCが対象の体内で誘導される、腫瘍抗原ペプチドをインビボで提示するように活性化され得る。「APCを誘導する」または「APCを刺激する」という語句は、腫瘍抗原ペプチドがMHCクラスI分子によってその表面で提示されるように、細胞を1つ以上の腫瘍抗原ペプチド、または腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸と接触させること、またはそれらを装填することを含む。本明細書に記載されるように、本開示によれば、腫瘍抗原ペプチドは、例えば、腫瘍抗原ペプチド(天然タンパク質を含む)の配列を含むより長いペプチド/ポリペプチドを使用して間接的に装填されてよく、その後、腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI複合体を細胞表面で生成するために、APC内部で処理される(例えば、プロテアーゼによって)。APCに腫瘍抗原ペプチドを装填し、APCが腫瘍抗原ペプチドを提示することを可能にした後、APCをワクチンとして対象に投与することができる。例えば、エクスビボ投与は、以下の工程:(a)第1の対象からAPCを採取することと、(b)工程(a)のAPCを腫瘍抗原ペプチドと接触させ/装填して、APCの表面でMHCクラスI/腫瘍抗原ペプチド複合体を形成することと、(c)治療を必要とする第2の対象に、ペプチド装填APCを投与することと、を含むことができる。
【0066】
第1の対象および第2の対象は、同じ対象(例えば、自己ワクチン)であってもよく、または異なる対象(例えば、同種ワクチン)であってもよい。あるいは、本開示によれば、抗原提示細胞を誘導するための組成物(例えば、薬学的組成物)を製造するための本明細書に記載の腫瘍抗原ペプチド(またはそれらの組み合わせ)の使用が提供される。加えて、本開示は、抗原提示細胞を誘導するための薬学的組成物を製造する方法またはプロセスを提供し、方法またはプロセスは、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせを薬学的に許容される担体と混合または製剤化する工程を含む。本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドのうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせで装填されたMHCクラスI分子(例えば、HLA-A1、HLA-A2、HLA-A3、HLA-A11、HLA-A24、HLA-A25、HLA-A29、HLA-A32、HLA-B07、HLA-B08、HLA-B14、HLA-B15、HLA-B18、HLA-B39、HLA-B40、HLA-B44、HLA-C03、HLA-C04、HLA-C05、HLA-C06、HLA-C07、HLA-C12、またはHLA-C14分子)を発現するAPCなどの細胞は、CD8+Tリンパ球、例えば、自己CD8+Tリンパ球を刺激/増幅するために使用することができる。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチド(またはそれをコードする核酸もしくはベクター)のうちのいずれか1つ、または任意の組み合わせ、MHCクラスI分子およびTリンパ球、より具体的にはCD8+Tリンパ球を発現する細胞(例えば、CD8+Tリンパ球を含む細胞の集団)を含む、組成物を提供する。
【0067】
実施形態では、組成物は、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤、および/または培地(例えば、培養培地)をさらに含む。さらなる実施形態では、緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤および/または培地は、薬学的に許容される緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤および/または培地(培地)である。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤および/または培地」は、生理学的に適合性であり、活性成分の生物活性の有効性を妨げない、対象に対して毒性のない、任意かつすべての溶媒、緩衝液、結合剤、潤滑剤、充填剤、増粘剤、崩壊剤、可塑剤、コーティング剤、バリア層配合物、潤滑剤、安定化剤、放出遅延剤、分散媒、コーティング剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤などを含む。そのような培地および薬剤を薬学的に活性な物質に使用することは、当該技術分野において周知である(Rowe et al.,Handbook of pharmaceutical excipients,2003,4th edition,Pharmaceutical Press,London UK)。任意の従来の培地または薬剤が活性化合物(ペプチド、細胞)と適合性がない場合を除き、本開示の組成物におけるそれらの使用が企図される。実施形態では、緩衝液、賦形剤、担体、および/または培地は、天然には存在しない緩衝液、賦形剤、担体、および/または培地である。実施形態では、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチド、または該1つ以上の腫瘍抗原ペプチドをコードする核酸(例えば、mRNA)のうちの1つ以上は、リポソーム、例えば、カチオン性リポソーム内に含まれるか、またはリポソームに複合体化される(例えば、Vitor MT et al.,Recent Pat Drug Deliv Formul.2013 Aug;7(2):99-110を参照されたい)。
【0068】
別の態様では、本開示は、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチド(または該ペプチドをコードする核酸)のうちのいずれか1つ、もしくは任意の組み合わせ、ならびに緩衝液、賦形剤、担体、希釈剤および/または培地のうちの1つ以上を含む、組成物を提供する。細胞(例えば、APC、Tリンパ球)を含む組成物について、組成物は、生存細胞の維持を可能にする好適な培地を含む。そのような培地の代表的な例としては、生理食塩水、Earl’s平衡塩類溶液(Life Technologies(登録商標))、またはPlasmaLyte(登録商標)(Baxter International(登録商標))が挙げられる。実施形態では、組成物(例えば、薬学的組成物)は、「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」または「ワクチン」である。「免疫原性組成物」、「ワクチン組成物」または「ワクチン」という用語は、本明細書で使用される場合、1つ以上の腫瘍抗原ペプチドまたはワクチンベクターを含み、対象に投与したときにその中に存在する1つ以上の腫瘍抗原ペプチドに対する免疫応答を誘導することができる組成物または製剤を指す。哺乳動物における免疫応答を誘導するためのワクチン接種法は、ワクチン分野において既知の任意の従来の経路によって、例えば、粘膜(例えば、眼、鼻腔内、肺、経口、胃、腸、直腸、膣、または尿路)表面を介して、非経口(例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、または腹腔内)経路を介して、または局所投与(例えば、パッチなどの経皮送達システムを介して)によって投与されるワクチンまたはワクチンベクターの使用を含む。実施形態では、腫瘍抗原ペプチド(またはそれらの組み合わせ)を担体タンパク質にコンジュゲートして(コンジュゲートワクチン)、腫瘍抗原ペプチドの免疫原性を増加させる。したがって、本開示は、腫瘍抗原ペプチド(もしくはその組み合わせ)、または腫瘍抗原ペプチドもしくはその組み合わせをコードする核酸、および担体タンパク質を含む組成物(コンジュゲート)を提供する。例えば、腫瘍抗原ペプチドまたは核酸は、Toll様受容体(TLR)リガンド(例えば、Zom et al.,Adv Immunol.2012,114:177-201)またはポリマー/デンドリマー(例えば、Liu et al.,Biomacromolecules.2013 Aug 12;14(8):2798-806を参照されたい)にコンジュゲートまたは複合体化されてもよい。実施形態では、免疫原性組成物またはワクチンは、アジュバントをさらに含む。「アジュバント」とは、抗原(本開示による腫瘍抗原ペプチド、核酸および/または細胞)などの免疫原性剤に添加した場合、混合物への曝露時に宿主内の薬剤への免疫応答を非特異的に向上または増強する物質を指す。現在ワクチンの分野で使用されているアジュバントの例としては、(1)鉱物塩(リン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムなどのアルミニウム塩、リン酸カルシウムゲル)、スクアレン、(2)油ベースのアジュバント(油エマルションおよび界面活性剤ベースの配合物など)、例えば、MF59(マイクロ流動化洗剤安定化水中油型エマルジョン)、QS21(精製サポニン)、AS02[SBAS2](水中油型エマルション+MPL+QS-21)、(3)粒子状アジュバント、例えば、ビロソーム(インフルエンザヘマグルチニンを組み込んだ単層リポソームビヒクル)、AS04(MPLを含む[SBAS4]アルミニウム塩)、ISCOMS(サポニンおよび脂質の構造複合体)、ポリラクチドコグリコリド(PLG)、(4)微生物誘導体(天然および合成)、例えば、モノホスホリルリピドA(MPL)、Detox(MPL+M.Phlei細胞壁骨格)、AGP[RC-529](合成アシル化単糖類)、DC_Chol(リポソームへと自己構築することができるリポイド免疫促進物質)、OM-174(リピドA誘導体)、CpGモチーフ(免疫促進性CpGモチーフを含有する合成オリゴヌクレオチド)、改変LTおよびCT(非毒性アジュバント効果を提供するために遺伝子改変した細菌毒素免疫組織化体)、(5)内因性ヒト免疫調節剤、例えば、hGM-CSFまたはhIL-12(タンパク質またはコードされるプラスミドのいずれかとして投与され得るサイトカイン)、Immudaptin(C3dタンデムアレイ)、および/または(6)金粒子などの不活性ビヒクルなどが挙げられる。
【0069】
実施形態では、腫瘍抗原ペプチドまたはそれを含む組成物は、凍結乾燥された形態である。別の実施形態では、腫瘍抗原ペプチドまたはそれを含む組成物は、液体組成物である。さらなる実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、組成物中、約0.01μg/mL~約100μg/mLの濃度である。さらなる実施形態では、腫瘍抗原ペプチドは、組成物中、約0.2μg/mL~約50μg/mL、約0.5μg/mL~約10、20、30、40、または50μg/mL、約1μg/mL~約10μg/mL、または約2μg/mLの濃度である。
【0070】
本明細書に記載されるように、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドのうちのいずれか1つ、もしくは任意の組み合わせを装填するか、またはそれに結合するMHCクラスI分子を発現するAPCなどの細胞は、インビボまたはエクスビボでCD8+Tリンパ球を刺激/増幅するために使用され得る。したがって、別の態様では、本開示は、本明細書に記載のMHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体と相互作用または結合することができるT細胞受容体(TCR)、およびそのようなTCR分子をコードする核酸分子、ならびにそのような核酸分子を含むベクターを提供する。本開示によるTCRは、好ましくはインビトロまたはインビボで、生細胞の表面で、MHCクラスI分子上に装填されるか、またはMHCクラスI分子によって提示される腫瘍抗原ペプチドと特異的に相互作用または結合することができる。TCR、特に本開示のTCRをコードする核酸は、例えば、MHCクラスI/腫瘍抗原ペプチド複合体を特異的に認識する新しいTリンパ球クローンを生成する、Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)または他のタイプのリンパ球を遺伝的に形質転換/改変するために適用され得る。特定の実施形態では、患者から得られたTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)は、腫瘍抗原ペプチドを認識する1つ以上のTCRを発現するように形質転換され、形質転換された細胞は、患者に投与される(自己細胞輸血)。特定の実施形態では、ドナーから得られたTリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)は、腫瘍抗原ペプチドを認識する1つ以上のTCRを発現するように形質転換され、形質転換された細胞は、レシピエントに投与される(同種細胞輸血)。別の実施形態では、本開示は、Tリンパ球、例えば、腫瘍抗原ペプチド特異的TCRをコードするベクターまたはプラスミドによって形質転換/トランスフェクトされたCD8+Tリンパ球を提供する。さらなる実施形態では、本開示は、腫瘍抗原ペプチド特異的TCRで形質転換された自己または同種細胞を用いて患者を治療する方法を提供する。さらに別の実施形態では、がんの治療のための自己または同種細胞の製造における腫瘍抗原特異的TCRの使用が提供される。
【0071】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物(例えば、薬学的組成物)で治療される患者は、同種幹細胞移植(ASCL)、同種リンパ球注入または自己リンパ球注入による治療の前または後に治療される。本開示の組成物は、腫瘍抗原ペプチドに対してエクスビボで活性化された同種Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)、腫瘍抗原ペプチドを装填した同種もしくは自己APCワクチン、腫瘍抗原ペプチドワクチンおよび腫瘍抗原特異的TCRで形質転換した同種もしくは自己Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)またはリンパ球を含む。本開示による腫瘍抗原ペプチドを認識することができるTリンパ球クローンを提供するための方法は、対象(例えば、移植片レシピエント)、例えば、ASCTおよび/またはドナーリンパ球注入(DLI)レシピエントにおいて、腫瘍抗原ペプチドを発現する腫瘍細胞のために生成されてもよく、それを特異的に標的とすることができる。したがって、本開示は、腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI分子複合体を特異的に認識または結合することができるT細胞受容体をコードおよび発現するCD8+Tリンパ球を提供する。該Tリンパ球(例えば、CD8+Tリンパ球)は、組換え(操作された)または自然選択されたTリンパ球であり得る。したがって、本明細書は、インビトロまたはインビボで行われ得る(すなわち、APCが腫瘍抗原ペプチドが装填されているAPCワクチンを投与された患者において、または腫瘍抗原ペプチドが投与された患者において行われ得る)T細胞活性化および増殖を引き起こすのに有利な条件下で、未分化リンパ球を腫瘍抗原ペプチド/MHCクラスI分子複合体(典型的には、APCなどの細胞の表面で発現される)と接触させる工程を含む、本開示のCD8+Tリンパ球を産生するための少なくとも2つの方法を提供する。MHCクラスI分子に結合した腫瘍抗原ペプチドの組み合わせまたはプールを使用して、複数の腫瘍抗原ペプチドを認識することができる集団CD8+Tリンパ球を生成することが可能である。あるいは、腫瘍抗原特異的または標的化Tリンパ球は、MHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体(すなわち、操作されたまたは組換えCD8+Tリンパ球)に特異的に結合するTCR(より具体的には、α鎖およびβ鎖)をコードする1つ以上の核酸(遺伝子)をクローニングすることによって、インビトロまたはエクスビボで産生され/生成され得る。本開示の腫瘍抗原ペプチド特異的TCRをコードする核酸は、当該秘術分野において既知の方法を使用して、腫瘍抗原ペプチドに対してエクスビボで活性化されたTリンパ球(例えば、腫瘍抗原ペプチドを装填したAPC)、またはペプチド/MHC分子複合体に対する免疫応答を示す個体から得ることができる。本開示の腫瘍抗原ペプチド特異的TCRは、宿主細胞および/または移植片レシピエントもしくは移植片ドナーから得られた宿主リンパ球において組換え的に発現され、任意にインビトロで分化して、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を提供し得る。TCRαおよびβ鎖をコードする核酸(導入遺伝子)は、トランスフェクション(例えば、電気穿孔法)または形質導入(例えば、ウイルスベクターを使用)などの任意の好適な方法を使用して、(例えば、治療される対象または別の個体から)T細胞に導入されてもよい。腫瘍抗原ペプチドに特異的なTCRを発現する操作されたCD8+Tリンパ球は、周知の培養方法を使用してインビトロで増殖され得る。
【0072】
本開示は、腫瘍抗原ペプチド(すなわち、細胞表面で発現されるMHCクラスI分子に結合した腫瘍抗原ペプチド)、または腫瘍抗原ペプチドの組み合わせによって特異的に誘導され、活性化され、かつ/または増幅される(増殖される)単離されたCD8+Tリンパ球を提供する。本開示はまた、本開示による、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせを認識することができるCD8+Tリンパ球(すなわし、MHCクラスI分子に結合した1つ以上の腫瘍抗原ペプチド)および該腫瘍抗原ペプチドを含む組成物を提供する。別の態様では、本開示は、本明細書に記載の1つ以上のMHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体を特異的に認識するCD8+Tリンパ球を濃縮した細胞集団または細胞培養物(例えば、CD8+Tリンパ球集団)を提供する。かかる濃縮された集団は、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチドのうちの1つ以上を装填した(例えば、提示する)MHCクラスI分子を発現するAPCなどの細胞を使用して、特異的Tリンパ球のエクスビボ増殖を実施することによって得ることができる。本明細書で使用される「濃縮された」は、集団における腫瘍抗原特異的CD8+Tリンパ球の割合が、細胞の天然集団と比較して、すなわち、特異的Tリンパ球のエクスビボ増殖の工程に供されていないものよりも顕著に高いことを意味する。さらなる実施形態では、細胞集団における腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の割合は、少なくとも約0.5%、例えば、少なくとも約0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1%、1.5%、2%または3%である。いくつかの実施形態では、細胞集団中の腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の割合は、約0.5~約10%、約0.5~約8%、約0.5~約5%、約0.5~約4%、約0.5~約3%、約1%~約5%、約1%~約4%、約1%~約3%、約2%~約5%、約2%~約4%、約2%~約3%、約3%~約5%または約3%~約4%である。目的の1つ以上のMHCクラスI分子/ペプチド(腫瘍抗原ペプチド)複合体を特異的に認識する、CD8+Tリンパ球を濃縮したかかる細胞集団または培養物(例えば、CD8+Tリンパ球集団)は、以下に詳述するように、腫瘍抗原ベースのがん免疫療法において使用され得る。いくつかの実施形態では、腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の集団は、例えば、本明細書に定義される腫瘍抗原ペプチドを(共有結合的にまたは非共有結合的に)装填したMHCクラスI分子の多量体を使用して、さらに濃縮される。したがって、本開示は、例えば、腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の割合が、少なくとも約30%、40%、50%、60%、70%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%である腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の精製または単離された集団を提供する。
【0073】
本開示はさらに、医薬品として、または医薬品の製造における、本開示による、いずれかの腫瘍抗原ペプチド、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、および/または組成物、またはそれらの任意の組み合わせの使用に関する。実施形態では、医薬品は、がんの治療のためのものであり、例えば、がんワクチンである。本開示は、例えばがんワクチンとしてがんの治療に使用するための、本開示による任意の腫瘍抗原ペプチド、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、および/または組成物(例えば、ワクチン組成物)、またはそれらの任意の組み合わせに関する。本明細書で特定される腫瘍抗原ペプチド配列は、i)腫瘍患者に注射される腫瘍抗原特異的T細胞のインビトロプライミングおよび増殖のために使用される、および/またはii)がん患者における抗腫瘍T細胞応答を誘導または増強するためのワクチンとして使用される、合成ペプチドの産生のために使用され得る。
【0074】
別の態様では、本開示は、対象においてがんを治療するためのワクチンとして、本明細書に記載される腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせ(例えば、ペプチドプール)の使用を提供する。本開示はまた、対象においてがんを治療するためのワクチンとして、本明細書に記載される腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせ(例えば、ペプチドプール)の使用を提供する。実施形態では、対象は、腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球のレシピエントである。したがって、別の態様では、本開示は、がんを治療する方法(例えば、腫瘍細胞の数を減少させること、腫瘍細胞を死滅させること)を提供し、該方法は、有効量の、1つ以上のMHCクラスI分子/腫瘍抗原ペプチド複合体(APCなどの細胞の表面で発現された)を認識する(すなわち、それに結合するTCRを発現する)CD8+Tリンパ球を、それを必要とする対象に投与する(注入する)ことを含む。実施形態では、方法は、該CD8+Tリンパ球の投与/注入後に、有効量の、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせ、ならびに/または腫瘍抗原ペプチドを装填したMHCクラスI分子を発現する細胞(例えば、樹状細胞などのAPC)を該対象に投与することをさらに含む。さらに別の実施形態では、方法は、治療有効量の、1つ以上の腫瘍抗原ペプチドを装填した樹状細胞を、それを必要とする対象に投与することを含む。なおさらなる実施形態では、方法は、有効量の、MHCクラスI分子によって提示される腫瘍抗原ペプチドに結合する組換えTCRを発現する同種または自己細胞を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0075】
別の態様では、本開示は、対象のがんを治療する(例えば、腫瘍細胞の数を減少させ、腫瘍細胞を死滅させる)ための、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせを装填した(提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するCD8+Tリンパ球の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象のがんを治療する(例えば、腫瘍細胞の数を減少させ、腫瘍細胞を死滅させる)ための医薬品の調製/製造のための、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせを装填した(提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するCD8+Tリンパ球の使用を提供する。別の態様では、本開示は、対象のがんを治療において使用するための(例えば、腫瘍細胞の数を減少させ、腫瘍細胞を死滅させるための)、腫瘍抗原ペプチド、またはそれらの組み合わせを装填した(提示する)1つ以上のMHCクラスI分子を認識するCD8+Tリンパ球(細胞傷害性Tリンパ球)を提供する。さらなる実施形態では、使用は、該腫瘍抗原ペプチド特異的CD8+Tリンパ球の使用後の、有効量の、腫瘍抗原ペプチド(もしくはそれらの組み合わせ)、および/または腫瘍抗原ペプチドを装填(提示)した1つ以上のMHCクラスI分子を発現する細胞(例えば、APC)の使用をさらに含む。
【0076】
本開示はまた、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチドのいずれかまたはそれらの組み合わせを装填したヒトクラスI MHC分子を発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を対象において生じさせる方法を提供し、方法は、腫瘍抗原ペプチドまたは腫瘍抗原ペプチドの組み合わせを装填したクラスI MHC分子を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球を投与することを含む。本開示はまた、腫瘍抗原ペプチドまたはそれらの組み合わせを装填したヒトクラスI MHC分子を発現する腫瘍細胞に対する免疫応答を生じさせるための、本明細書に開示される腫瘍抗原ペプチドまたは腫瘍抗原ペプチドの組み合わせのいずれかを装填したクラスI MHC分子を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球の使用も提供する。
【0077】
実施形態では、本明細書に記載の方法または使用は、治療/使用の前に患者によって発現されるHLAクラスI対立遺伝子を決定することと、患者によって発現されるHLAクラスI対立遺伝子のうちの1つ以上に結合する腫瘍抗原ペプチドを投与または使用することと、をさらに含む。例えば、患者がHLA-A2*01、HLA-B14*01およびHLA-C05*01を発現すると判定される場合、(i)配列番号14、17、45、48、51、56、75、77、82、98および/または100(HLA-A2*01に結合する)、(ii)配列番号53(HLA-B14*01に結合する)、および/または(iii)配列番号27(HLA-C05*01に結合する)の腫瘍抗原ペプチドの任意の組み合わせが、患者に投与または使用され得る。
【0078】
実施形態では、がんは固形がん、好ましくは卵巣がんである。実施形態では、卵巣がんは、卵巣がん腫である。実施形態では、卵巣がんは、上皮がん、漿液性がん、小細胞がん、原発性腹膜がん、明細胞がんもしくは腺がん、子宮内膜腺がん、悪性混合ミュラー腫瘍、粘液腺がんもしくは嚢胞腺がん、悪性ブレナー腫瘍、移行上皮がん、性索間質腫瘍、顆粒細胞腫瘍、セルトリ・ライディッグ腫瘍、生殖細胞腫瘍、未分化胚細胞腫、絨毛腫瘍、未熟(充実性)奇形腫もしくは成熟奇形腫瘍、卵黄嚢腫瘍、扁平上皮がん、または二次性卵巣がんである。実施形態では、卵巣がんは、I型卵巣がん腫である。別の実施形態では、卵巣がんは、II型卵巣がんである。実施形態では、卵巣がんは、漿液性がんである。さらなる実施形態では、漿液性がんは、高悪性度漿液性がん(HGSC)である。実施形態において、卵巣がんは、I、II、IIIまたはIV期卵巣がんである。
【0079】
実施形態では、本開示による腫瘍抗原ペプチド、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、および/または組成物、またはそれらの任意の組み合わせは、化学療法(例えば、ビンカアルカロイド、微小管形成を妨げる薬剤(例えば、コルヒチンおよびその誘導体)、抗血管新生剤、治療用抗体、EGFR標的化剤、チロシンキナーゼ標的化剤(例えば、チロシンキナーゼ阻害剤)、遷移金属錯体、プロテアソーム阻害剤、代謝拮抗剤(例えば、ヌクレオシド類似体)、アルキル化剤、白金系薬剤、アントラサイクリン抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、マクロライド、レチノイド(例えば、すべてのトランスレチノイン酸またはその誘導体)、ガルダミンまたはその誘導体(17-AAG)、免疫チェックポイント阻害剤(例えば、PD-1/-PD-L1阻害剤およびCTLA-4阻害剤、B7-1/B7-2阻害剤)抗体、細胞に基づく療法(例えば、CAR T細胞)などの、がんを治療するために、1つ以上の追加の活性薬剤または療法と組み合わせて使用してもよい。実施形態では、本開示による腫瘍抗原ペプチド、核酸、発現ベクター、T細胞受容体、細胞(例えば、Tリンパ球、APC)、および/または組成物は、免疫チェックポイント阻害剤と組み合わせて投与/使用される。
【実施例】
【0080】
本開示は、以下の非限定的な実施例によってさらに詳細に例示される。
【0081】
実施例1:材料および方法
ヒトHGSC試料。HGSC1~6の腫瘍断片およびHGSC1~3の整合した正常隣接組織は、Tissue Solutions(Glasgow、GB)から入手した。腫瘍組織(OV606)または腹水(OV633およびOV642)は、Princess Margaret Cancer Registry(Toronto,ON,Canada)から入手した。急速凍結(snap frozen)試料を、RNA抽出およびMHCI関連ペプチド単離に使用した。OvCa48~114のRNAシーケンシングデータを、PRJNA398141というプロジェクトの下で、National Center for Biotechnology Information Sequence Read Archiveからダウンロードし、fastqファイルに変換し、他の試料と同様に処理した。このコホート内の試料のMS生データを、識別子PXD007635のPRIDEパートナーを介してProteomeXchangeコンソーシアムからダウンロードした。各試料のHLAタイピングは、デフォルトパラメータ(24)を用いたOptiType(商標)v1.0を用いたRNAシーケンシング(RNA-Seq)データから得た。試料情報を表1に提示する。
【表1】
【0082】
RNA抽出および配列決定。HGSC1~6については、AllPrep(登録商標)DNA/RNA/miRNAユニバーサルキット(Qiagen)を使用して、製造業者の推奨に従って総RNAを単離した。OV606、OV633、およびOV642については、TRIzol(登録商標)(Invitrogen)を使用して総RNAを単離した。各試料のRNAを2100 Bioanalyzer(登録商標)(Agilent Genomics)で評価して、RIN>6であること確認し、それを使用して、試料当たりRNA-Seqの複製を1回実行した。KAPA標準mRNA-Seq Kitを使用して、polyAリッチmRNAからcDNAライブラリを調製した。ライブラリをさらに増幅し、HiSeq(登録商標)2000またはIllumina NextSeq(登録商標)500でのペアエンドRNA-Seqに使用し、1試料当たり1億5000~3億リードを得た。
【0083】
MS分析のためのカスタマイズされた参照データベースの生成。各試料について、カスタマイズされた「グローバルがんデータベース」を、前述のように(15および米国仮出願第62/724,760号)、「カノニカルがんプロテオーム」および「がん特異的プロテオーム」の2つのモジュールを連結することによって生成した。簡単に述べると、Trimmomatic v0.35(25)を使用して、RNA-Seqのリードをアダプターおよび低品質3’塩基をトリミングした。カノニカルがんプロテオームを生成するために、トリミングされたリードを、STAR v2.5.1bを使用して参照ヒトゲノムバージョンGRCh38.88にアラインした。転写物の発現は、デフォルトパラメータを使用して、kallisto v0.43.0を用いて、百万個当たりの転写物数(tpm)で定量化した。ヌクレオチド変異体を、FreeBayes(26)を使用して特定し、pyGeno(27)に対する入力としてアグノスティック(agnostic)一塩基多型ファイルフォーマットに変換した。次いで、各試料の試料特異的プロテオームを、参照ゲノムに単一塩基変異体(FreeBayesクオリティ>20)を挿入することによって、pyGenoで構築した。発現タンパク質の試料特異的配列(tpm>0)を、fastaフォーマットでカノニカルがんプロテオームに添加した。
【0084】
がん特異的プロテオームを生成するために、トリミングされたR1リードをFASTX-Toolkitバージョン0.0.14を使用して逆相補的にし、トリミングされたR2リードと共に33ヌクレオチド長および24ヌクレオチド長のk-merデータベースを生成するために使用した。配列決定エラーを除外し、データベースサイズを制限するために、下記のように最小k-merの発生の試料特異的閾値を、33ヌクレオチドに対して適用した:HGSC1~3については7、OV642については8、OV633については10、HGSC4およびOV606については4、HGSC5については6、HGSC6については5、OvCa48~114については3。ヒト胸腺上皮細胞(TEC)で発現されたk-merを減算してがん特異的k-merを得た後、NEKTAR(社内で開発されたソフトウェア、https://github.com/iric-soft/nektar)のkmer_assemblyツールによってより長い配列(コンティグ)に組み立てた。コンティグ>34ヌクレオチド長を3フレーム翻訳してアミノ酸配列とし、内部終止コドンで分割した。得られた少なくとも8つのアミノ酸長の連鎖は、関連するがん特異的プロテオームに含まれた。
【0085】
MAPの単離。腫瘍および組織試料を小片(立方体、サイズ約3mm)に切断し、タンパク質阻害剤カクテル(Sigma、カタログ番号P8340-5ml)を含有する氷冷PBS 5mlを添加した。最初に、速度20000rpmに設定したUltra Turrax(商標)T25ホモジナイザー(IKA-Labortechnik)を使用して20秒間、次いで、速度25,000rpmに設定したUltra Turrax(商標)T8ホモジナイザー(IKA-Labortechnik)を使用して20秒間、2回均質化した。次いで、550μlの氷冷10倍溶解緩衝液(5%w/vのCHAPS)を各試料に添加した。4℃でタンブリングしながら60分間インキュベーションした後、試料を10000gで、4℃にて30分間遠心分離した。上清を、1mgのW6/32抗体共有結合タンパク質A磁気ビーズを含有する新しいチューブに移し、MAPを前述のように(28)免疫沈降させた。次いで、MAP抽出物を、Speed-Vacを使用して乾燥させ、MS分析の前に凍結したままにした。
【0086】
MS分析。乾燥したペプチド抽出物を0.2%のギ酸に再懸濁した。ペプチド抽出物を、自家製のC18分析カラム(C18 Jupiter Phenomenex(商標)を充填した15cm×150μmの内径)に、0~30%のアセトニトリル(0.2%のギ酸)からの56分間の勾配と、Easy-nLC IIシステム上で600nl.分-1の流速で充填した。試料を、Q-Exactive(商標)HF質量分析計(Thermo Fisher Scientific)で分析した。60,000分解能で取得された各完全MSスペクトルの後に、20個のMS/MSスペクトルが続き、30,000の分解能、5×104の自動ゲイン制御ターゲット、100msの注入時間、および25%の衝突エネルギーを有するMS/MS配列決定のために最も豊富な多価イオンを選択した。HGSC4~6については、60,000分解能で取得された各完全MSスペクトルの後に、20個のMS/MSスペクトルが続き、30,000の分解能、2×104の自動ゲイン制御ターゲット、800msの注入時間、および25%の衝突エネルギーを有するMS/MS配列決定のために最も豊富な多価イオンを選択した。
【0087】
MAPの特定。PEAKS 8.5またはPeaks X(Bioinformatics Solution Inc.)を使用してペプチドを特定し、グローバルがんデータベースに対してペプチド配列を検索した。ペプチドの特定については、前駆イオンおよびフラグメントイオンの許容度をそれぞれ10ppmおよび0.01Daに設定した。Schusterらからの試料(13)については、前駆イオンおよびフラグメントイオンの許容度をそれぞれ5ppmおよび0.5Daに設定した。酸化(M)および脱アミド(NQ)の発生を、翻訳後修飾として見なされた。MAPのリストがデコイ特定の5%のみを含むことを保証するために、試料に固有の閾値をPEAKSスコアに適用した。この閾値を超えたペプチドを、以下の基準に従ってさらにフィルタ処理した:ペプチド長8~11個のアミノ酸、およびNetMHC4.0の予測に基づいたMHC対立遺伝子親和性ランク≦2%(29)。
【0088】
TSA候補の特定および検証。TSA候補を特定するために、各MAPおよびそのコード配列を、それぞれ、関連するがんおよび正常なカノニカルプロテオーム、またはがんおよび正常な24ヌクレオチド長のk-merデータベースに問い合わせた(queried)。通常のカノニカルプロテオームおよび通常の24ヌクレオチド長のk-merデータベースを、6つのヒト胸腺(thyme)から採取した精製TECからのRNA-Seqのリードを用いて構築した(15および米国仮出願第62/724,760号)。MAPは、2つの場合:i)試料の正常なカノニカルプロテオームにおいても、正常な(すなわち、TEC)k-merにおいてもペプチド配列が検出されなかった場合か、またはii)ペプチドが、がんおよび正常なカノニカルプロテオームの両方に存在せず、それらのRNAコード配列が、TECと比較して、がん細胞において少なくとも10倍過剰発現された場合に、TSA候補としてラベル付けされた。MAPがいくつかのRNA配列に対応する場合、それは、すべての配列がTSA候補ステータスと一致している場合にのみ、TSA候補として見なされた。すべてのTSA候補のMS/MSスペクトルを手動で検証し、いかなる偽の特定も除去した。MSによって区別可能であったRNAデータによって支持されるI/L変異体を有するTSA候補について、最も発現された変異体がTSA候補である場合、両方の変異体をさらに検査した。
【0089】
最後に、参照ゲノム(GRCh38)上のMAPコード配列を含むマッピングリードをBLAT(UCSCゲノムブラウザ)を使用してマッピングすることによって、ゲノム位置をすべてのMS検証済みTSA候補に割り当てた。超可変領域(HLA、IgまたはTCR遺伝子)にマッチしたリードのTSA候補を除外した。TSA候補は、MAPコード配列に、既知の生殖細胞系列多型(dbSNP v149で報告)と一致しない変異体を含有する場合、mTSAとして分類した。非変異候補をaeTSA候補として分類し、正常な組織および臓器におけるそれらの発現のさらなる評価に供した。
【0090】
aeTSA候補をコードする配列の組織発現。27種の異なる組織のRNA-Seqデータを、Genotype-Tissue expression(GTEx)ポータルからダウンロードし(2018年4月16日にアクセスされたphs000424.v7.p2)、前述(15)のように、aeTSA候補のコード配列の発現を評価するために使用した。RNA-Seqデータは、子宮頸部(n=6)、卵管(n=7)、脂肪組織(n=49)、膀胱(n=12)、および腎臓(n=38)を除けば、50人のドナーから得た。この研究で使用したGTExデータセットの登録番号を表2に列挙した。簡単に述べると、MAPコード配列を完全にカバーするリードの数は、各組織のRNA-Seqリードから形質転換された24-merのデータベース中のMAPコード配列の24-merセットの最小出現によって推定した。リードカウントを、配列決定された1億回当たりのリード(rphm)に正規化し、さらに対数変換し(log
10(rphm+1))、各組織に対して利用可能なすべてのRNA-Seq実験にわたって平均化した。MHC
低組織(脳皮質、神経、および精巣)以外の組織においてrphm>10で末梢発現を示さないaeTSA候補を、真正なaeTSAと見なした。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0091】
TSAコード領域の発現.TSAコード領域のRNA発現は、TSAコード鎖上のTSAコード領域と重複するすべてのリードのカウントとして、パラメータ配向=「同じ」のRパッケージ『QuasR』(30)の『qCount』関数を使用して、マッピングされたBAMファイルから定量化した。カウントを、マッピングされた1億リード当たりのリード数に正規化した。aeTSA発現分析では、周囲の配列の前後関係(context)がaeTSA発現に影響を及ぼし得るため、個々のaeTSAがマッピングされたユニーク領域を具体的に分析した。
【0092】
TCGAからの臨床およびゲノムデータ。HM27メチル化のためのhg38、DNAコピー数変異、RNA-Seq遺伝子発現、ならびに臨床データを用いて処理および正規化したレベル3データを、Rパッケージ『TCGAbiolinks』(31)を使用してTCGAオープンアクセスデータベースからダウンロードした。腕レベルDNAコピー数変化を、Broad Institute TCGAゲノムデータ分析センター(doi:10.7908/C1P84B9Q)からダウンロードした。
【0093】
免疫細胞スコア。免疫細胞集団を表す免疫細胞スコアを、RNA-Seqデータに基づいて推定した。各腫瘍について、スコアを、Danaherら(32)によって説明されるように、それらのマーカー遺伝子の対数変換されたFPKM値の平均として推定した。
【0094】
aeTSA提示の頻度。個々の患者によって提示されるaeTSAの数を推定するために、バイオインフォマティクスシミュレーションを実施した。この推定は2つのパラメータに基づいていた。第一に、aeTSA発現の可能性は、TCGA-OVコホートにおける対応するRNAを発現する腫瘍の割合に基づいていた。生殖細胞系SNPを含有するaeTSAについて、以下のように発現尤度を計算した。(aeTSAを発現するTCGA腫瘍の割合)×(所与の集団におけるSNP頻度)SNP頻度は、Genome Aggregation Databaseから入手した。第二に、ヨーロッパ系アメリカ人集団(n=1242890)、アフリカ系アメリカ人(n=416581)および中国人(n=99672)について、米国骨髄バンク(NMDP)からHLA対立遺伝子頻度を取得した。次に、患者のHLA遺伝子型を、所与の集団における報告された頻度に基づいて、6つのHLAクラスI対立遺伝子でシミュレートした。6つのHLA対立遺伝子が独立した事象であると仮定されたため、いくつかのHLA遺伝子座は、模擬患者においてホモ接合であった。aeTSAと関連するHLA対立遺伝子の両方が発現されたときに、aeTSAが模擬患者に提示されると見なされた。各aeTSAの発現は、同じ重複群について発現状態が1回のみシミュレートされた重複aeTSAを除いて、独立した事象であると考えられた。100万人の模擬患者とそのaeTSA提示ステータスを3つの集団ごとに生成し、分布をプロットするために使用した。
【0095】
統計分析およびデータ可視化。分析および数値は、R v3.5.1またはPython v2.7.6を使用して行った。R中の『gplots』パッケージを使用して、腫瘍におけるTSAコード領域発現のヒートマップを生成した。相関試験は、別段の指示がない限り、スピアマンの方法を用いて、R関数『cor.test』を用いて行った。分布の比較を伴う検定をANOVA検定で行い、群間のペアワイズ比較を、ウルコクソンの順位和検定により実施した。生存期間分析のログランクP値を『survival』パッケージで計算した。
【0096】
実施例2:プロテオゲノム分析は、23のHGSCにおける111のTSAを特定する。
TSAランドスケープのシステムレベルの特性評価を得るために、高スループットタンデムMS(MS/MS)分析(34~36)を用いた直接MAP特定を実施した。現在の検索エンジンは、各獲得されたMS/MSスペクトルをペプチド配列と一致させるために、ユーザー定義のタンパク質データベースに依存する(37)。したがって、被験試料中のペプチドは、その配列が参照データベースに含まれる場合にのみ検索エンジンによって特定することができる。UniProtなどの一般参照タンパク質データベースは、試料特異的変異、フレーム外翻訳事象、および非エクソン配列を含有しないため、すべてのゲノム領域によってコード化されたTSAを捕捉するための探索は、各腫瘍について腫瘍特異的翻訳生成物を含有するカスタマイズされたデータベースの構築を必要とする。したがって、最近記載されたプロテオゲノムアプローチ(15)を使用して、分析された各試料のRNA-Seq読み取りからカスタマイズされた検索データベースを構築した。そのようなカスタマイズされたデータベースは、2つのモジュール:カノニカルプロテオーム(エクソンのフレーム内翻訳)およびがん特異的プロテオームを含有し、これは、(TECからの)正常なRNA配列の減算後のがん特異的RNA配列の3フレーム翻訳である(
図1)。TECは、i)未成熟T細胞の発生中に免疫寛容を確立する上でのそれらの重要な役割(すなわち、中水性寛容)、およびii)他のタイプの体細胞よりも多くの転写産物を乱交的に発現する顕著な能力(38)の2つの理由により、正常対照として使用した。9つの原発性HGSC試料からのMAPを、MHC I分子の免疫沈降によって得た後、液体クロマトグラフィー-MS/MS(15、28)によって分析した。Schusterら(13)によって報告された14個のHGSCの追加コホートの免疫ペプチド血症データも、一致するRNA-SeqおよびMSデータが利用可能な試料に本明細書に記載されるプロテオゲノミックアプローチを適用することによって再分析した。TSA候補の各々を、スペクトルおよびゲノム位置の手動検証によって確認した。
【0097】
dbSNPに存在しない重複ゲノム変異体の候補は、生殖細胞系列多型を表す可能性が低く、したがってmTSAとしてラベル付けした。このような分類は、分析した23個の試料から18個のmTSAを得た(表3A)。これらのmTSAは、いずれも以前に報告されていない。18個のmTSAのうち、7個はフレーム内エクソン翻訳から生じ、4個はフレーム外エクソン翻訳から生じ、8個は非コード配列から生じた。3つの腫瘍について、整合した正常組織が利用可能であり、RNA-Seq分析は、mTSA変異体が生殖細胞系列多型ではないことを確認した(
図8A~
図8B)。正常組織が整合しない腫瘍の場合、いくつかのmTSAがdbSNPに存在しない希少な多型に対応する可能性があることは、正式に除外することはできない。mTSAの数がわずかに過大評価され得る可能性は、腫瘍当たり1つ未満のmTSA(18個のmTSA/23個の腫瘍)では、mTSAはHGSCにおいて稀であり、したがって、あまり魅力がない標的を表すという結論を強固にするだけである。さらに、古典的なTSA発見方法は、フレーム内エクソン翻訳から生じるmTSAに厳密に焦点を当てているため、それらは、本明細書に報告されている111個のTSAのうちの7個のみを明らかにするであろう。
【表3】
【0098】
非変異TSA候補について、厳密な基準を適用して、純粋なaeTSA、すなわち、その発現ががん特異的であるものを特定した。これを受けて、ヒトの全身にわたる27個の末梢組織におけるそれらのRNA発現を分析した。MHC
低組織(脳、神経、精巣)以外の任意の末梢組織においてコードRNAが発現されたすべての候補(rphm>10)を、aeTSAリストから除外した。aeTSA候補のコード配列が生殖細胞系列一塩基多型を含有する場合(dbSNPにおいて報告されている)、この候補は、SNP含有配列および参照配列が上記基準を満たす場合にのみ、有効なaeTSAとしてラベル付けした(
図9)。全体として、93個のaeTSA候補は、これらの厳格な基準を満たし(
図2、表3Bおよび表3C)、そのうち、85個は、我々の知る限り報告されたことがない(表2B)。興味深いことに、93個のaeTSAのうち5個が精巣において発現され、いくつかのがん細菌抗原(CGA)がaeTSAであるが、ほとんどのaeTSAがCGAではないことが示された。CGAは生殖細胞のみによって通常発現されるカノニカルエクソンによってコードされ、がん細胞におけるそれらの異常発現は主にエピジェネティックな変化によって促進される。しかし、いくつかのCGAは、成人のmTECによって発現され(16)、mTEC(または他の体組織)で発現されたCGAは、TAAとして、および任意の正常な組織(mTECを含む)によって発現されないものは、真正なaeTSAとして見なされる。
【0099】
各aeTSAにゲノム位置を割り当てた。複数の位置が可能な場合、マッチングRNAリードの発生率が最も高いものを選択した。すべてのTSAの特徴を表3Bおよび表3Cに報告する。ストリンジェントなアプローチは、非定型翻訳(5’UTR、3’UTR、遺伝子間、フレームシフト)から生じるaeTSAの総数を過小評価することが形式的に可能である。実際、腫瘍においてMAPを生成するために使用される読み取りフレームは既知であるが、それらのコードRNAがいくつかの正常組織において発現されるとき、どのリーディングフレームが翻訳され得るかを推測することはできない。したがって、TSAリストに偽陽性が含まれることを避けるために、そのようなaeTSA候補は除外した。
【表4-1】
【表4-2】
1「翻訳事象」列は、TSAコード配列とORFとの関係を要約し、ORFの外側を「非コード」、ORF重複しているがフレームシフトしたものを「コードアウト」、ORFマッチングしたものを「コードイン」とした。
2「ゲノム起源」列は、Ensemblからの生物型に従って、aeTSAにさらに注釈を付ける。例えば、「アンチセンス」は、配列が注釈が付けられた遺伝子として反対側のスタンドにあることを意味し、「カノニカル」は、カノニカル/注釈が付けられたORFを指し、「ncRNA」は、Ensemblに従うORFを含まない注釈が付けられたRNAである。
3「ncRNA」とは、TSAコード配列が非コード転写産物のエクソンと整合する場合を指す。
4「非コード化アンチセンス」とは、TSAコード配列が、Ensembl注釈における遺伝子のアンチセンスであることを意味し、したがって、それは非コード領域である。
【表5】
【0100】
実施例3:ほとんどのHGSCのTSAは、非カノニカル翻訳から得られる非変異MAPである。
試料ごとに特定された平均2200個のユニークなMAPにより、合計111個の独自のTSAが見出された(
図3A)。試料当たりに特定されたTSAの数は、MAPの数と有意に相関した(
図3B)。さらに、HLA対立遺伝子当たりのMAPの数と腫瘍試料サイズとの間には適度な相関があった(
図10)。これは、腫瘍試料サイズがMS分析における制限要因であるという考え方と一致する(28)。原則として、変異した非コード配列に由来するTSAは、mTSAまたはaeTSAの両方として指定することができる。適宜に、それらをmTSAとしてラベル付けすると決定した。その根拠は、ゲノム起源(エクソン性かそうではないか)にかかわらず、mTSAは、「プライベートTSA」、すなわち、多数の腫瘍によって共有されないことが予想されることであった。対照的に、非変異aeTSAは、理論的には、かなりの割合のHGSCによって共有され得る。
【0101】
注目すべきことに、本研究において初めに処理された、またはSchusterらによって処理された試料中で特定されたTSAの特徴は、著しく類似していた(
図3C)。これは、本明細書に記載されるプロテオゲノムアプローチが一般的にRNA-SeqおよびMSデータに適用され得ることを示唆し、表面的には実験室間変動に影響されないことを示唆する。両方のコホートにおいて、約83%のTSAは変異しておらず、TSAの大部分は、非典型的な翻訳から生じた:主に非コード領域からであり、少ない範囲では、フレーム外エクソン翻訳からであった(
図3C)。aeTSAの2つの特徴が注目に値する:i)80%は非コード配列、特にイントロン(31%)および遺伝子間(22%)に由来し、ii)90%は新規のMAPである(
図3D)。これまでに報告されたMAPは、対応するタンパク質アイソフォームがUniProtデータベース(13、39~43および米国特許公開第2012/0077696A1号)に含まれている処理済み転写物(Ensemblデータベースによって注釈が付けされた生物型)に一致するものを除いて、フレーム内のエクソン翻訳から誘導された。
【0102】
実施例4:卵巣がん試料中のaeTSAコード転写産物の発現。
aeTSAコード転写産物のがん特異的発現が、ランダムな転写ノイズから生じるのか、それとも反復的な転写異常から生じるのかを決定するために、本研究およびTCGA卵巣がんコホートからの試料中で同定された93個のaeTSAをコードするゲノム領域のRNA発現を分析した。aeTSAをコードする領域は、かなりの割合の卵巣がんにおいて発現した。試料の少なくとも10%で72個(77%)が発現され、試料の少なくとも80%で16個(17%)が発現された(
図4)。これらの共通に発現される領域は、患者間で共有TSAを生成する可能性が高い。したがって、HGSCにおける93個のaeTSAコード転写産物のこのセットの発現は、希少またはランダムな事象ではなく、むしろHGSCの共通の特徴であると結論され得る。
【0103】
実施例5:aeTSA発現のゲノム相関。
aeTSA発現のメカニズムを理解するために、TCGA-OVデータセットからのマルチオミックデータを使用して、aeTSA RNA発現と局所的な遺伝子またはエピジェネティックな異常との間の関係を探索した。該当する場合、局所DNAコピー数変化、遺伝子プロモーター領域上のDNAメチル化レベル、および各aeTSAに対するRNA発現の間の相関を試験した(
図5A)。遺伝子の一部であるゲノム領域(エクソン、イントロンまたはUTR)に由来するaeTSAを用いた場合には、関連する遺伝子の発現とaeTSAの発現との間の相関も分析した。後者の状況では、遺伝子とaeTSA発現との間に顕著な相関が観察された(
図5A)。これは、コード領域が遺伝子内にあるaeTSAにとって、aeTSA発現の調節は、一般に遺伝子全体に影響を及ぼすことを示唆する。さらに、DNAコピー数の変化は、aeTSAのRNA発現レベルと正の相関を示した。これは、遺伝子内aeTSAおよび遺伝子外aeTSA(アンチセンスおよび遺伝子間)の両方で同様であった。これは、DNAコピー数の変化がaeTSA発現に実質的な影響を及ぼすことを示唆する。特に、この相関は、より大きな割合の腫瘍において発現される遺伝子内aeTSAに関して特に強かった(
図11A)。aeTSAコード領域の染色体分布を調べたところ、HGSCで頻繁に増幅されるいくつかの染色体腕が多くのaeTSAを産生したことが分かった(
図5B)。例えば、卵巣がんにおいて一般的に増幅される第3染色体の長腕(44)は、8つのaeTSAの供給源であった。上位増幅領域の1つとして、3q26.2(44)に位置するMECOMは、3つの重複したエクソン性フレーム外aeTSAを生成した(表3B)。しかしながら、染色体腕の増幅は、必ずしも必要ではなく(例えば、15q)、aeTSAを生成するのに十分ではなかった(例えば、8q)(
図5B、
図11B)。
【0104】
TCGAがDNAメチル化(HM27アレイ)の分析に使用する技術のために、遺伝子外aeTSAおよびいくつかのaeTSA供給源遺伝子のプロモーターについては、メチル化データは利用できなかった。したがって、プロモーターメチル化の分析は、17個のaeTSAのサブセットに限定された。それでも、6個のaeTSAについて、DNAメチル化とaeTSA発現との間に有意な相関が見出された(
図5A)。相関関係は5例が負であり、1例が正であった。これは、プロモーターの脱メチル化が頻繁に転写の増強をもたらすという考え方と一致している。特に、最も高い負の相関を示す2つの遺伝子は、MAGEC1(ρ=-0.53、P
adj=1.6x10
-26)およびMAGEA4(ρ=-0.51、P
adj=6.7x10
-25)であり、これらは、
図5Aの矢印を伴う暗い棒で表される。MAGEファミリーの遺伝子は、HGSCを含むいくつかのがんタイプで過剰発現されるCGAである(3)。全体として、aeTSAの発現は、少なくとも部分的には、遺伝子コピー数およびDNAメチル化の変動によって、転写レベルで調節されると結論付けることができる。
【0105】
実施例6:3つのaeTSAの発現は、生存率の向上と相関している。
次に、いくつかのaeTSAが自発的な防御免疫応答を誘発し得るかを評価した。ペプチドレベルでのaeTSAの発現は、aeTSA RNAの発現に加えて、関連するHLAアロタイプの存在を必要とするという事実により、この問題に対処することは複雑である。したがって、TCGAコホートからの患者を、個々のaeTSA RNAの発現に基づく(または基づかない)、および関連するHLAアロタイプの存在に基づく(または基づかない)4つのサブグループに細分化した。3つのaeTSAの提示は、より好ましい臨床転帰と相関した(
図6A~
図6C)。HLA対立遺伝子の多型は、各群のサイズをかなり減少させ、したがって、この分析の検出力を低下させた。したがって、3つのaeTSAについてのログランクp値は、0.013~0.076の範囲であった(
図6A~
図6C)。それにもかかわらず、2つの観察結果は、これらの相関が生物学的に有意義であることを裏付ける証拠を提供する。第一に、これらのaeTSAの「防御効果」は、HLAに制限されているように見えた:aeTSA RNAを発現する患者では、関連するHLA対立遺伝子も発現した場合、生存率が優れていた。第二に、RTHQMNTFQR aeTSAおよびその関連するHLAアロタイプの発現は、T細胞および細胞傷害性T細胞による腫瘍浸潤と正の相関を示した(
図6D、
図6E);ANOVA、p<0.05)。
【0106】
実施例7:個々の腫瘍によって提示されるaeTSAの数の中央値
93 aeTSAのリストを用いて、最終的に、この研究がTSA標的免疫療法にどの程度の利益をもたらす可能性があるかを推定した。したがって、100万人の患者の93個のaeTSAの提示状態をランダムにシミュレートした。HLA対立遺伝子の頻度を推定するために、米国骨髄バンクからの3つの最大のデータセット:ヨーロッパ系アメリカ人、アフリカ系アメリカ人、中国人(45)を使用した。所与の集団における対立遺伝子頻度、TCGA-OV腫瘍における発現割合、および該当する場合、SNP頻度を使用して、6個のHLA対立遺伝子およびaeTSA発現状態を独立して生成した。個々の腫瘍当たりのaeTSAの数を、発現されたHLA-aeTSA対の合計として計算した。これらのシミュレーションに基づいて、ヨーロッパ白人の98%、アフリカ系アメリカ人の74%、および中国人の78%に少なくとも1つのaeTSAが見出され得ることを決定し、腫瘍当たりのaeTSAの数の中央値は、ヨーロッパ白人の5、アフリカ系アメリカ人の2、および中国人の4であった(
図7)。これらの集団間の差異は、HLA対立遺伝子頻度の変化、および腫瘍試料が主にヨーロッパ系白人からのものであるという事実から生じた。これらの計算は、主に3つの理由から、腫瘍ごとのaeTSAの数を過小評価している疑いがある。第一には、2つ以上のHLAアロタイプに結合するMAPの50%超が、多くの場合、スーパータイプまたは遺伝子座にわたって結合するという事実(46)が、考慮されていないためである。第二には、所与のMAPをコードするゲノム領域は、異なるHLAアロタイプによって提示される重複MAPを頻繁に生成する(23)ためである。第三には、dbSNPに列挙されている非同義SNPを含む5つのaeTSAについて、試料中のMAPを生成するSNP変異体のみが有効であり、他のSNP変異体はMAPを生成しなかったと仮定した。単一アミノ酸の変化は、MAP提示を無効にするのに十分である可能性があるため、この慎重な戦略が採用された(47)。現在の93個のaeTSAのセットを含むワクチンは、HGSCを有するほぼすべての白人、およびアフリカ系アメリカ人およびアジア人(例えば、中国人)のかなりの割合をカバーすると結論付けることができる。
【0107】
本発明技術は、その特定の実施形態によって上記に記載されているが、添付の特許請求の範囲に定義される主題発明の趣旨および性質から逸脱することなく、変更することができる。特許請求の範囲では、「含む(comprising)」という単語は、「含むが、これらに限定されない(including,but not limited to)」という表現と実質的に等価である、開放型(open-ended)の用語として使用される。単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、対応する複数の参照物を含む。
【0108】
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