(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】自動体外式除細動器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20250116BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
A61N1/39
A61N1/04
(21)【出願番号】P 2024009919
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-01-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521424264
【氏名又は名称】株式会社オンラインマスター
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100148149
【氏名又は名称】渡邉 幸男
(72)【発明者】
【氏名】千葉 敏雄
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-516717(JP,A)
【文献】特表2022-546641(JP,A)
【文献】特開2015-77226(JP,A)
【文献】特表2017-538503(JP,A)
【文献】特表2015-500090(JP,A)
【文献】特開2005-144164(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0164216(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0316393(US,A1)
【文献】国際公開第2024/006829(WO,A1)
【文献】Sheldon Cheskes et al.,“Defibrillation strategies for refractory ventricular fibrillation”,The New England Journal of Medicine,(米),Massachusetts Medical Society,2022年11月24日,Vol. 387,No. 21,p. 1947-1956
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00―1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に装着される電極部と、該電極部を介して患者に高電圧パルスを印加する電圧印加部と、を備える自動体外式除細動器であって、
前記電極部は、患者に装着される生地と、前記生地に配置された第1から第4電極と、を備え、
前記第1電極は、前記生地のうち、前記生地が患者に装着されたときに患者の右前胸部上に位置する部分に配置され、
前記第2電極は、前記生地のうち、前記生地が患者に装着されたときに患者の左前胸部の心臓上に位置する部分に配置され、
前記第3電極は、前記生地のうち、前記生地が患者に装着された場合に患者の左脇腹上に位置する部分に配置され、
前記第4電極は、前記生地のうち、前記生地が患者に装着された場合に患者の左背部の心臓上に位置する部分に配置され、
前記電圧印加部は、前記生地が患者に装着されたままの状態で、前記第1電極と前記第3電極との間と、前記第2電極と前記第4電極との間と、の一方の間に高電圧パルスを印加し、続いて、前記第1電極と前記第3電極との間と、前記第2電極と前記第4電極との間と、の他方の間に高電圧パルスを印加する、
自動体外式除細動器。
【請求項2】
前記自動体外式除細動器は、患者の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、
前記生体情報取得部は、患者に装着された前記第1から第4電極を介して患者の生体情報を取得する、
請求項1に記載の自動体外式除細動器。
【請求項3】
前記自動体外式除細動器は、情報を表示する表示部を備え、
前記生体情報取得部が、患者の生体情報を取得し、前記表示部が、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報を表示し、
続いて、前記電圧印加部が、前記第1電極と前記第3電極との間と、前記第2電極と前記第4電極との間と、の一方の間に高電圧パルスを印加し、
続いて、前記電圧印加部は、前記第1電極と前記第3電極との間と、前記第2電極と前記第4電極との間と、の他方の間に高電圧パルスを印加し、
続いて、前記生体情報取得部が、患者の生体情報を取得し、前記表示部が、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報を表示する、
請求項2に記載の自動体外式除細動器。
【請求項4】
前記自動体外式除細動器は、情報を表示する表示部を備え、
前記生体情報取得部が、患者の生体情報を取得し、前記表示部が、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報を表示し、
続いて、前記電圧印加部が、前記第1電極と前記第3電極との間と、前記第2電極と前記第4電極との間と、の一方の間に高電圧パルスを印加し、
続いて、前記生体情報取得部が、患者の生体情報を取得し、前記表示部が、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報を表示し、
続いて、前記電圧印加部は、指示に応答して、前記第1電極と前記第3電極との間と、前記第2電極と前記第4電極との間と、の他方の間に高電圧パルスを印加し、
続いて、前記生体情報取得部が、患者の生体情報を取得し、前記表示部が、前記生体情報取得部が取得した前記生体情報を表示する、
請求項2に記載の自動体外式除細動器。
【請求項5】
前記自動体外式除細動器は、前記生地が患者に装着されたままの状態で、前記第1電極と前記第3電極との間への高電圧パルスの印加と、前記第2電極と前記第4電極との間との間への高電圧パルスの印加と、を繰り返す、
請求項1から4のいずれか1項に記載の自動体外式除細動器。
【請求項6】
前記自動体外式除細動器は、前記電極部を2つ備え、
一方の前記電極部は、患者が子供である場合に用いられる子供用電極部
であり、
他方の前記電極部は、患者が大人である場合に用いられる大人用電極部
である、
請求項
1から4のいずれか1項に記載の自動体外式除細動器。
【請求項7】
前記
生地は、
帯状、長手方向の両端部に相互に係脱自在な留め具を備える帯状、三角巾状、又は衣服状である、
請求項1
に記載の自動体外式除細動器。
【請求項8】
患者の右前胸部に貼付される第1電極と、患者の左前胸部に貼付される第2電極と、患者の左脇腹に貼付される第3電極と、患者の左背部に貼付される第4電極と、を備える電極部と、前記第1から第4の電極のうちから選択された少なくとも2つの電極間に高電圧パルスを印加する電圧印加部と、を備え、
前記電極部は、撚紐状に撚られた
、
自動体外式除細動器。
【請求項9】
前記
電極部は、
帯状、長手方向の両端部に相互に係脱自在な留め具を備える帯状、三角巾状、又は衣服状である、
請求項
8に記載の自動体外式除細動器。
【請求項10】
前記電極部は、患者に装着される生地と、前記生地に配置された第1から第4電極と、を備える、
請求項
8または9に記載の自動体外式除細動器。
【請求項11】
前記自動体外式除細動器は、前記電極部を2つ備え、
一方の前記電極部は、患者が子供である場合に用いられる子供用電極部
であり、
他方の前記電極部は、患者が大人である場合に用いられる大人用電極部
である、
請求項
8または9に記載の自動体外式除細動器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動体外式除細動器に関する。
【背景技術】
【0002】
心室細動又は無脈性心室頻拍に起因する心停止状態にある患者に対して電気ショックを印加することにより、その患者の救命率を向上できる。電気ショックを印加する手段として、自動体外式除細動器(AED:Automated External Defibrillator)が普及している(例えば、特許文献1)。
【0003】
自動体外式除細動器は、本体と該本体に接続された2つの電極とを備える。自動体外式除細動器は、救助者により患者の右前胸部と左脇腹とに貼付された電極を通して心臓に電気ショックを印加することにより、心臓の除細動を行う。
【0004】
この措置によってもなお心拍が正常な状態に回復しない場合に、更に、患者の左前胸部と左背部とに貼付された電極を通して心臓に電気ショックを印加することにより、救命率が向上することが知られている。このように、患者の右前胸部と左脇腹間に電気ショックを印加した後に、左前胸部と左背部との間に電気ショックを印加する方式を、以下、二重印加方式と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の2つの電極を有する自動体外式除細動器を用いて、二重印加方式で電気ショックを印加するためには、(1)患者の右前胸部と左脇腹とに電極を貼付して電気ショックを印加し、(2)患者から電極を剥離し、患者の左前胸部と左背部とに電極を貼付して電気ショックを印加し、(3)心拍が正常な状態に回復するまで(1)と(2)を繰り返す、という作業が必要である。このように、電気ショックを印加するために必要な作業が多いと、作業が繁雑になり、電気ショックを印加するまでに作業に時間がかかってしまう。心停止状態にある患者に対して一刻も早く電気ショックを印加することが重要であることから、作業が簡単で作業時間が短い方が望ましい。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、簡単な短時間の作業で、二重印加方式で電気ショックを印加することが可能な自動体外式除細動器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る自動体外式除細動器は、患者に装着される電極部と、高電圧パルスを印加する電圧印加部と、を備える自動体外式除細動器であって、電極部は、患者に装着される生地と、生地に配置された第1から第4電極と、を備え、第1電極は、生地のうち、生地が患者に装着された場合に患者の右前胸部上に位置する部分に配置され、第2電極は、生地のうち、生地が患者に装着された場合に患者の左前胸部の心臓上に位置する部分に配置され、第3電極は、生地のうち、生地が患者に装着された場合に患者の左脇腹上に位置する部分に配置され、第4電極は、生地のうち、生地が患者に装着された場合に患者の左背部の心臓上に位置する部分に配置され、電圧印加部は、生地が患者に装着された状態で、第1電極と第3電極との間と、第2電極と第4電極との間との間に高電圧パルスを印加することにより、患者の右前胸部と左脇腹との間、及び左前胸部と左背部との間に高電圧パルスを印加する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る自動体外式除細動器の電極部は4つの電極を備える。更に、該電極部を患者に装着した際、該4つの電極は、電気ショックを印加すべき部位にそれぞれ配置される。よって、本発明によれば、簡単な短時間の作業で、二重印加方式で電気ショックを印加することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1に係る自動体外式除細動器の外観を示す図。
【
図2】実施の形態1~6に係る、(A)自動体外式除細動器の物理的構成に係るブロック図、(B)自動体外式除細動器内部の選択スイッチの回路構成に係るブロック図。
【
図3】実施の形態1~6に係る自動体外式除細動器の高電圧生成部が出力する、(A)単極性の高電圧パルスの波形を示す図、(B)双極性の高電圧パルスの波形を示す図。
【
図4】実施の形態1に係る帯状電極部の、(A)正面図、(B)側面図。
【
図5】実施の形態1~6に係る電極部の、(A)展開状態を示す図、(B)撚紐状態を示す図。
【
図6】(A)(B)実施の形態1~6に係る電極部の非使用状態を示す図。
【
図7】実施の形態1に係る帯状電極部の患者への装着状態を示す、(A)正面図、(B)背面図、(C)側面図。
【
図8】実施の形態1~6に係る自動体外式除細動器の電気ショック印加処理のフローチャート。
【
図9】(A)(B)実施の形態2に係る帯状電極部の側面図。
【
図10】実施の形態3に係る三角巾状電極部の、(A)患者への装着状態を示す正面図、(B)患者への装着状態を示す背面図、(C)全体の正面図。
【
図11】実施の形態4に係る衣服状電極部の、(A)正面図、(B)背面図。
【
図12】実施の形態5に係る、(A)子供用及び大人用の帯状電極部の例を示す図、(B)子供用及び大人用の三角巾状電極部の例を示す図、(C)子供用及び大人用の衣服状電極部の例を示す図。
【
図13】実施の形態6に係る帯状電極部の患者への装着状態を示す、(A)正面図、(B)背面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係る自動体外式除細動器(以下、AEDという。)について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(実施の形態1)
実施の形態1に係るAED1は、
図1に示すように、本体100と、帯状電極部200と、ケーブル300と、を備える。AED1は、自動体外式除細動器の一例である。
【0013】
本体100は、情報を表示する表示部110と、救助者の操作を受け付ける操作部120と、情報を音として出力する音声出力部130と、を備える。
【0014】
表示部110は、例えば、患者Pの心電図、脈拍数等の生体情報、AED1の操作方法、帯状電極部200の患者Pへの装着方法等を表示する。表示部110は、例えば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイを備える。
【0015】
操作部120は、電源スイッチ、電気ショックの印加指示を受け付ける操作ボタン等を備える。
【0016】
音声出力部130は、例えばスピーカを備える。
【0017】
本体100は、更に、
図2(A)に示すように、情報を演算し、各装置を制御する制御部140と、高電圧パルスを生成する高電圧生成部150と、選択スイッチ151と、患者の生体情報を取得する生体情報取得部160と、各装置に電力を供給する電源部170と、情報を記憶する記憶部180と、を備える。
【0018】
制御部140は、例えば、中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)を備え、記憶部180に記憶されている制御プログラムを実行し、例えば、後述する電気ショック印加処理を実行する。
【0019】
制御部140は、また、生体情報取得部160が取得した患者の生体情報を解析し、表示部110に心電図、心拍数等を表示する。制御部140は、操作部120が救助者から受け付けた電気ショックの印加指示を受信し、高電圧生成部150を制御し、高電圧パルスを生成させる。制御部140は、選択スイッチ151を制御し、高電圧パルスを印加する電極を選択させる。
【0020】
高電圧生成部150は、制御部140の制御に従って、正出力端子+と負出力端子-との間に高電圧パルスを生成する。高電圧生成部150の回路構成としては、既知の任意の回路を使用できる。例えば、特開2022-182010号公報、国際出願PCT/JP2023/030715の願書に最初に添付した明細書又は図面等に記載された回路構成が有効である。
【0021】
高電圧生成部150の生成する高電圧パルスは、例えば、電圧値=1000~3000V、電流値=15~30A、パルス幅=2~20ms、エネルギー値=150~360Jである。本実施形態では、高電圧生成部150が生成する高電圧パルスは、
図3(A)に例示する単極性の2連発の高電圧パルスPL1とPL2とする。
【0022】
図2(A)に示す選択スイッチ151は、
図2(B)に示すように、スイッチSW1とSW2を備え、制御部140の制御に従って、高電圧生成部150の正出力端子+と負出力端子-とを、第1電極201~第4電極204の異なるいずれかに接続する。
【0023】
スイッチSW1とSW2は、連動し、スイッチSW1が正出力端子+と第1電極201とを接続しているとき、スイッチSW2は、負出力端子-と第3電極203とを接続する。また、スイッチSW1が正出力端子+と第3電極203とを接続しているとき、スイッチSW2は、負出力端子-と第1電極201とを接続する。また、スイッチSW1が正出力端子+と第2電極202とを接続しているとき、スイッチSW2は、負出力端子-と第4電極204とを接続し、スイッチSW1が正出力端子+と第4電極204とを接続しているとき、スイッチSW2は、負出力端子-と第2電極202とを接続する。
【0024】
このような切り換え動作により、選択スイッチ151は、高電圧生成部150が生成した
図3(A)に例示する単極性の2連発の高電圧パルスPL1、PL2を、
図3(B)に示す双極性の2連発の高電圧パルスPL1、PL2に変換し、電極間、すなわち第1電極201と第3電極203との間、又は、第2電極202と第4電極204との間に印加する。なお、制御部140、高電圧生成部150、及び選択スイッチ151は、電圧印加部の一例である。
【0025】
図2(A)に戻り、生体情報取得部160は、患者に貼付された第1電極201~第4電極204と、ケーブル300を介して相互に電気的に接続される。生体情報取得部160は、制御部140の制御に従って、第1電極201~第4電極204から患者Pの生体情報を取得する。生体情報は、生体電圧、生体電流等を含む。生体情報取得部160は、取得した生体情報を制御部140に送信する。
【0026】
電源部170は、表示部110、操作部120、音声出力部130、制御部140、高電圧生成部150、生体情報取得部160、及び記憶部180に、動作に必要な電力を供給する。電源部170は、例えば一次電池、二次電池、AC/DCコンバータ等を備える。
【0027】
記憶部180は、不揮発性の補助記憶装置と、揮発性の主記憶装置とを備え、制御部140に接続されている。記憶部180の補助記憶装置は、プログラム及びデータを記憶している。プログラムは制御部140の動作プログラムであり、例えば、後述する電気ショック印加処理を実行するための動作プログラムである。制御部140は、該プログラムを実行することにより、表示部110、操作部120、音声出力部130、高電圧生成部150、選択スイッチ151、生体情報取得部160、電源部170、を制御する。データは、例えば、表示部110に表示させるAED1の使用方法のガイダンス、及び、音声出力部から放音する音声案内等のデータである。記憶部180の主記憶装置は、制御部140の命令によりプログラム及びデータを一時的に記憶する。記憶部180は、例えば、SRAM(Static Randam Access Memory)、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disc Drive)等を備える。
【0028】
帯状電極部200は、
図1、
図4(A)(B)、及び
図7(A)(B)(C)に示すように、全体が帯状であり、帯状生地205と、その上に配置された、第1電極201と、第2電極202と、第3電極203と、第4電極204と、留め具601~604を備える。
【0029】
帯状生地205は、例えば、合成繊維から形成される。帯状生地205は、長手方向の両端部に留め具601及び留め具602をそれぞれ備える。留め具601及び留め具602は相互に係脱自在であり、例えばボタン、面ファスナーを備える。留め具601及び留め具602を互いに係合させることで、帯状電極部200を環状にすることができる。帯状生地205の短辺及び長辺の長さは、帯状電極部200を環状にした際に人間の身体に装着可能な長さであり、患者の体格の差を考慮し、例えば、短辺=10~20cm、長辺=140~180cmである。
【0030】
第1電極201~第4電極204は、帯状生地205の一面にほぼ一列に配置され、例えば、接着等により帯状生地205に固定されている。第1電極201~第4電極204とケーブル300とは、帯状生地205の内部を延在する導線を介して相互に電気的に接続されている。第1電極201~第4電極204は、銅箔、アルミニウム箔等の可撓性を有する導電層から構成される。これにより、第1電極201~第4電極204を患者Pの体表面に柔軟に貼付することができる。更に、第1電極201~第4電極204を収納時に折り曲げ、又は後述するように撚紐状にすることができる。
【0031】
第1電極201~第4電極204は、
図7(A)(B)(C)に示すように、留め具601及び留め具602を右肩に配置して装着した場合に、第1電極201がおおよそ右前胸部上に位置し、第2電極202がおおよそ左前胸部の心臓上に位置し、第3電極203はおおよそ左脇腹上に位置し、第4電極204は、おおよそ左背部の心臓上に位置するように配置される。ただし、患者Pの体格の差を考慮して、間隔に余裕を持たせて配置されている。
【0032】
この明細書において、第1電極201が装着される「右前胸部」、第2電極202配置される「左前胸部」及び「心臓上」、第3電極203が配置される「左脇腹」、第4電極204が配置される「左背部」及び「心臓上」は、厳格な位置を意味しない。それぞれ、救護者が装着の目的とするおおよその位置を示す。例えば、「右前胸部」は、右肩、右胸、等を含んで、心臓(左胸に位置している通常の場合)の右側に位置する部分を広く含む。また、「左前胸部」は厳格な意味で「心臓上」を意味せず、心臓近辺上を含む。「左脇腹」は、左半身で、心臓の下に位置する部分を広く含み、左腹部、左脇腹部、左背部の下部を含む。「左背部」は厳格な意味で「心臓上」を意味せず、心臓近辺上を含む。第1電極201は第1電極の一例であり、第2電極202は第2電極の一例であり、第3電極203は第3電極の一例であり、第4電極204は第4電極の一例であり、帯状電極部200は電極部の一例である。
【0033】
第1電極201~第4電極204の患者Pへの装着面には、
図4(B)に示すように、導電性粘着層206と、導電性粘着層206を覆うフィルム207とが配置されている。AED1の使用時にフィルム207を剥離し、導電性粘着層206を患者Pに貼付することにより、装着後に第1電極201~第4電極204の位置がずれたり剥離したりすることを防ぐことができる。
【0034】
帯状電極部200は、AED1の非使用時において撚紐状にしておき、使用時に展開して広げることが可能である。帯状電極部200は、
図5(A)に示すように、長手方向の両端部に留め具603と留め具604とを備える。帯状電極部200を撚紐状にするには、留め具603と留め具604とが結ぶ軸線Sを軸として、留め具603と留め具604とをそれぞれ反対方向へ回転させる。これにより、
図5(B)に示すように帯状電極部200が撚紐状になる。
【0035】
帯状電極部200を撚紐状にした上で、
図6(A)に示すように、帯状電極部200の留め具603及び留め具604と、本体100の両側面に設けた留め具605及び留め具606とをそれぞれ係合させることにより、帯状電極部200を本体100のストラップとして使用することができる。AED1の使用時には、帯状電極部200の留め具603及び留め具604を本体100の留め具605及び留め具606から外し、帯状電極部200を展開して、第1電極201~第4電極204を患者Pに装着する。
【0036】
ケーブル300は、本体100の選択スイッチ151及び生体情報取得部160と、帯状電極部200の第1電極201~第4電極204とを相互に電気的に接続する。ケーブル300は、本体100及び帯状電極部200に固定されていてもよく、本体100及び/又は帯状電極部200に着脱可能でもよい。着脱可能な場合、ケーブル300の端部は本体100に設けられた端子及び帯状電極部200に設けられた端子と係合する端子を備える。
【0037】
次に、上記構成を有するAED1の動作を説明する。ここでは、本体100は携帯可能なサイズに形成され、
図6(A)に示すように、帯状電極部200をストラップとして、携帯されているとする。
【0038】
この状態で、AED1を使用するには、救助者は、帯状電極部200の留め具603及び留め具604と、本体100の留め具605及び留め具606との係合を解いて、帯状電極部200を取り外す。救助者は、取り外した帯状電極部200を展開する。次に、帯状電極部200を患者Pに装着する。具体的には、まず、
図7(A)(B)(C)に示すように、患者Pの右前胸部に第1電極201が、左前胸部に第2電極202が、左脇腹に第3電極203が、左背部に第4電極204が位置するように、帯状電極部200を患者Pに巻き付け、おおよその位置を合わせる。次に、第1電極201~第4電極204上のフィルム207を剥離し、導電性粘着層206を患者Pに貼付する。この際、帯状電極部200の留め具601及び留め具602を相互に係合させることにより、装着性を向上し得る。
【0039】
一方で、使用者は、本体100の電源を投入する。電源投入に応答して、制御部140は、表示部110に操作ガイダンスを表示し、音声出力部130からも操作ガイダンスを出力する。
【0040】
電源の投入により、制御部140は、
図8に示す電気ショック印加処理を開始する。
【0041】
まず、制御部140は、生体情報取得部160を制御して、患者Pに装着された第1電極201~第4電極204から、患者Pの生体電圧、生体電流等を取得する。制御部140は生体情報取得部160が取得した生体電圧、生体電流等を解析し、心電図情報、心拍数等を求め、心電図、心拍数等を表示部110に表示する(ステップS1)。また、制御部140は、心電図の標準波形、心拍数等を表示してもよい。
【0042】
救助者は、表示された心電図、心拍数等の情報から、除細動が必要、即ち、電気ショックの印加が必要か否かを判断する。救助者は、必要であると判断すると、操作部120を操作して、電気ショックの印加を制御部140に指示する。
【0043】
制御部140は、電気ショックの印加指示に応答し(ステップS2:印加)、高電圧生成部150が高電圧パルスを生成するように制御する。また、制御部140は、選択スイッチ151のスイッチSW1が第1電極201を選択し、スイッチSW2が第3電極203を選択するように、選択スイッチ151を制御する。これにより、
図3(B)に示すように、高電圧生成部150が、1発目の高電圧パルスPL1を出力すると、第1電極201と第3電極203との間に正極性の高電圧パルス(第1電極201の電圧>第3電極203の電圧)が患者Pに印加される(ステップS3)。1発目の高電圧パルスPL1の印加が終了すると、制御部140は、スイッチSW1が第3電極203を選択し、スイッチSW2が第1電極201を選択するように、選択スイッチ151を制御する。これにより、高電圧生成部150が、2発目の高電圧パルスPL2を出力すると、第1電極201と第3電極203との間に負極性の高電圧パルス(第3電極203の電圧>第1電極201の電圧)が患者Pに印加される(ステップS3)。
【0044】
これにより、右前胸部から左脇腹に向けてパルス状電流が流れ、続いて、左脇腹から右前胸部に向けてパルス状電流が流れ、心臓に双極性の電気ショックが印加される。
【0045】
図8に戻り、ステップS3で電気ショックを印加した後、制御部140は、生体情報取得部160を制御して、帯状電極部200から患者Pの生体電圧、生体電流等を取得する。制御部140は、生体電圧、生体電流等を解析し、心電図情報、心拍数等を求め、表示部110に表示する(ステップS4)。
【0046】
救助者は、表示された心電図、心拍数等の情報から、除細動が更に必要、即ち、電気ショックの追加の印加が必要(有効)か否かを判断する。救助者は、必要であると判断すると、操作部120を操作して、電気ショックの印加を指示する。
【0047】
制御部140は、電気ショックの印加指示に応答し(ステップS5:印加)、高電圧生成部150が高電圧パルスを生成するように制御する。また、制御部140は、選択スイッチ151のスイッチSW1が第2電極202を選択し、スイッチSW2が第4電極204を選択するように、選択スイッチ151を制御する。これにより、
図3(B)に示すように、高電圧生成部150が、1発目の高電圧パルスPL1を出力すると、第2電極202と第4電極204との間に正極性の高電圧パルス(第2電極202の電圧>第4電極204の電圧)が患者Pに印加される(ステップS6)。1発目の高電圧パルスPL1の印加が終了すると、制御部140は、スイッチSW1が第4電極204を選択し、スイッチSW2が第2電極202を選択するように、選択スイッチ151を制御する。これにより、高電圧生成部150が、2発目の高電圧パルスPL2を出力すると、第2電極202と第4電極204との間に負極性の高電圧パルス(第4電極204の電圧>第2電極202の電圧)が患者Pに印加される(ステップS6)。
【0048】
これにより、左前胸部から左背部に向けてパルス状電流が流れ、続いて、左背部から左前胸部に向けてパルス状電流が流れ、心臓に双極性の電気ショックが印加される。
【0049】
図8に戻り、ステップS6で電気ショックを印加した後、制御部140は、生体情報取得部160を制御して、帯状電極部200から患者Pの生体電圧、生体電流等を取得する。制御部140は、生体電圧、生体電流等を解析し、心電図情報、心拍数等を求め、表示部110に表示する(ステップS7)。
【0050】
救助者は、表示された心電図、心拍数等の情報から、さらなる除細動が必要、即ち、電気ショックの追加印加が必要か否かを判断する。救助者は、必要であると判断すると、操作部120を操作して、電気ショックの印加を制御部140に指示する。
【0051】
制御部140は、電気ショックの印加指示に応答し(ステップS8:印加)、処理をステップS3に戻し、第1電極201と第3電極203の間に高電圧パルスを印加するように制御する。以後、前述と同様の動作が繰り返される。
【0052】
一方、救助者が電気ショックの印加が不要と判断した場合、救助者は終了ボタンを操作する。この操作は、ステップS2、S5、S8で、検出され、制御部140は、電気ショック印加処理を終了する。
【0053】
その後、救助者は、第1電極201~第4電極204を患者Pから取り外し、次の処置に移る。
【0054】
このようにして、本実施の形態によれば、比較的簡単な処理で、患者Pの適切な位置に第1電極201~第4電極204を装着できる。更に、右前胸部と左脇腹との間への双極性の2連発の高電圧パルスの印加と、左前胸部と左背部との間への双極性の2連発の高電圧パルスの印加とを繰り返すことによる電気ショックの印加、すなわち二重印加方式による電気ショックの印加ができる。従って、患者Pの救命率を従来よりも向上できる。
【0055】
特に、帯状生地205の上に第1電極201~第4電極204が適切な順番で予め配置されているので、患者Pへの電極の取り付けが簡単で時間を要せず、更に、適切な位置に装着できる。
【0056】
また、第1電極201~第4電極204に導電性粘着層206が配置されているので、第1電極201~第4電極204と患者Pの体表面とが密着することでインピーダンスを低減できる。更に、帯状電極部200を患者Pへの装着した後に、第1電極201~第4電極204がずれたり剥離したりするおそれが少ない。
【0057】
なお、AED1の使用後は、第1電極201~第4電極204の導電性粘着層206を交換又は消毒し、フィルム207を貼付することで、帯状電極部200を再生できる。その後、軸線Sを中心に帯状電極部200を捻り、撚紐状とし、両端の留め具603、604を本体100の留め具605、606と係合させることで、ストラップとしてAED1の持ち運びに利用できる。
【0058】
帯状電極部200を撚紐状とすることで、帯状電極部200の全体サイズをコンパクト化できる。同時に、帯状電極部200をストラップにすることで、AED1の携帯性が向上し、また、AED1の紛失も防ぎやすくなる。特に、超小型軽量化されたAED1と係合する場合に、撚紐状の帯状電極部200はストラップに好適である。
【0059】
また、第1電極201~第4電極204は、導電性粘着層206を備える。よって、降雨、出血等により患者Pの皮膚が断続的に濡れている状態であっても、帯状電極部200を、装着位置がずれたり剥離したりすることを防ぎつつ、患者Pに装着できる。また、患者Pと第1電極201~第4電極204との接触範囲に裂傷、銃創等がある場合には、第1電極201~第4電極204は、止血具としても作用し得る。
【0060】
(実施の形態2)
上記実施の形態1では、第1電極201~第4電極204の表面は
図4(B)に示すように平坦であるが、
図9(A)に示すように、第1電極201~第4電極204の全部又は何れかの表面に、導電性針状体208を配置してもよい。導電性針状体208の素材及び形状は、導電性を有し、患者Pの皮膚に穿刺可能な程度の硬度及び形状であればよく、限定されない。導電性針状体208は、患者Pへの装着時にその全部または一部が患者Pの皮膚に穿刺し、帯状電極部200を患者Pに固定させる。これにより、特に、降雨、出血等により患者Pの皮膚が断続的に濡れている状態であっても、帯状電極部200を、装着位置がずれたり剥離したりすることを防ぎつつ、患者Pに装着できる。また、患者Pと第1電極201~第4電極204との接触範囲に裂傷、銃創等がある場合には、第1電極201~第4電極204は、止血具としても作用し得る。
【0061】
また、生体インピーダンスは皮膚よりも皮下の方が低い。ゆえに、導電性針状体208の全部または一部が患者Pの皮下に穿刺し、導電性針状体208を介して患者Pの皮下に電気ショックを印加することにより、患者Pの皮膚にパルス電圧を印加する場合に比べて、生体インピーダンスを低減することができる。
【0062】
更に、患者Pが着衣状態の場合に、着衣の上から第1電極201~第4電極204を患者Pに装着した場合は、インピーダンスが大きくなり過ぎる。しかし、導電性針状体208を備える帯状電極部200であれば、患者Pが着衣状態であっても、導電性針状体208の先端部分を患者Pの皮下に穿刺することにより、患者Pに十分な電気ショックを印加することができる。
【0063】
第1電極201~第4電極204は導電性針状体208を1本のみ備えてもよく、複数本備えてもよい。また、一部の電極のみに針状体を備えても良い。また、
図9(B)に示すように、第1電極201~第4電極204の一面に導電性針状体208と、導電性粘着層206とを備えてもよい。導電性針状体208は、針状体の一例である。
【0064】
(実施の形態3)
上記実施の形態1及び2における帯状電極部200は、全体が帯状をなしていたが、この形状に限定されない。患者Pに、電極を装着する際に、第1電極201~第4電極204が患者Pの右前胸部、左前胸部、左脇腹、及び左背部にそれぞれ配置され得るなら、その形状は任意である。例えば、帯状電極部200は、
図10(A)(B)(C)に示すように、全体が三角巾状でもよい。
【0065】
図10(A)(B)(C)に示す三角巾状電極部400は、第1電極201~第4電極204と、これらが配置された三角巾状生地401を備える。
図10(C)に展開して示すように、三角巾状電極部400の全体形状は、例えば、三角形の頂点部分周辺のうちひとつと、該三角形と合同な他の三角形の頂点部分周辺のうちひとつとが重なり合う形状である。三角巾状電極部400のうち一方の三角形の各頂点部分周辺に留め具607を、他方の三角形の各頂点部分周辺に留め具608を備え、相互に係脱可能としてもよい。三角巾状生地401は、例えば、合成繊維から形成される。ただし、三角巾状電極部400は、患者Pへの装着時に三角巾状をなせばよく、形状は限定されるものではない。
【0066】
図10(A)(B)に示すように、第1電極201、第2電極202、及び第3電極203は、三角巾状生地401のうち一方の三角形の裏地に、第4電極204は、他方の三角形の裏地にそれぞれ配置されている。また、
図10(A)に示すように、第1電極201、第2電極202、及び第3電極203は、三角巾状電極部400を患者Pに装着した際に、患者Pの右前胸部、左前胸部、左腹部に上に位置する位置に固定されている。また、
図10(B)に示すように、第4電極204は、三角巾状電極部400を患者Pに装着した際に、患者Pの左背部に上に位置する位置に固定されている。ただし、取り付け位置は、体格差を考慮して、余裕を持って設定される。
【0067】
救助者は、三角巾状電極部400を患者Pに装着することで、第1電極201~第4電極204を患者Pのおおよそ適切な位置に配置することができる。第1電極201~第4電極204の位置を微調整して、患者Pに貼り付けることで、容易に電極を配置することができる。三角巾状電極部400は電極部の一例である。
【0068】
(実施の形態4)
更に、帯状電極部200は、
図11(A)(B)に示すように、全体が衣服状でもよい。
【0069】
図11(A)(B)に示す衣服状電極部500は、第1電極201~第4電極204と、これらが配置された衣服状生地501とを備える。衣服状生地501は、例えば、全体がベスト状又はポンチョ状である。患者Pに装着しやすいように、衣服状生地501の前見頃又は脇部が開いていることが望ましい。前見頃又は脇部が開いている場合、前見頃又は脇部の周辺に相互に係脱可能な留め具609及び留め具610を備えてもよい。衣服状生地501は、例えば、合成繊維から形成される。ただし、形状は限定されるものではない。
【0070】
図11(A)(B)に示すように、第1電極201、第2電極202、及び第3電極203は、衣服状生地501の前見頃の裏地に、第4電極204は、衣服状生地501の後見頃の裏地にそれぞれ配置されている。また、
図11(A)に示すように、第1電極201、第2電極202、及び第3電極203は、衣服状電極部500を患者Pに装着した際に、患者Pの右前胸部、左前胸部、左腹部に上に位置する位置に固定されている。また、
図11(B)に示すように、第4電極204は、衣服状電極部500を患者Pに装着した際に、患者Pの左背部に上に位置する位置に固定されている。ただし、取り付け位置は、体格差を考慮して、余裕を持って設定される。
【0071】
救助者は、衣服状電極部500を患者Pに装着することで、第1電極201~第4電極204を患者Pのおおよそ適切な位置に配置することができる。第1電極201~第4電極204の位置を微調整して、患者Pに貼り付けることで、容易に電極を配置することができる。衣服状電極部500は電極部の一例である。
【0072】
(実施の形態5)
患者Pの体格差によって、第1電極201~第4電極204の貼り付け位置は異なる。特に、患者Pが子供である場合と大人である場合とでは、体格差が顕著である。
【0073】
そこで、
図12(A)に示すように、AED1は子供用帯状電極部220及び大人用帯状電極部221を備え、救助者はこれらを切り換えて使用してもよい。子供用帯状電極部220及び大人用帯状電極部221は、第1電極201~第4電極204をそれぞれ備える。
【0074】
救助者は、患者Pの体格に合わせて子供用帯状電極部220又は大人用帯状電極部221のうちいずれかを選択し、患者Pに装着し得る。また、
図12(B)に示すように、AED1は子供用三角巾状電極部420及び大人用三角巾状電極部421を備えてもよい。また、
図12(C)に示すように、AED1は子供用衣服状電極部520及び大人用衣服状電極部521を備えてもよい。子供用帯状電極部220、子供用三角巾状電極部420、及び子供用衣服状電極部520は子供用電極部の一例であり、大人用帯状電極部221、大人用三角巾状電極部421、及び大人用衣服状電極部521は大人用電極部の一例である。
【0075】
(実施の形態6)
高電圧生成部150が生成する高電圧パルスのパルス数、極性、波形(パルス幅、パルス高)、エネルギー値等は適宜変更可能である。例えば、ステップS3で、第1電極201と第3電極203との間に双極性の高電圧パルスをn(n≧2)回印加し、ステップS6で、例えば、第2電極202と第4電極204との間に双極性の高電圧パルスをm(m≧2)回印加する等してもよい。また、双極性の高電圧パルスを印加する場合、正極性の高電圧パルス及び負極性の高電圧パルスの印加順序は問わない。また、ステップS3で印加する高電圧パルスとステップS6で印加する高電圧パルスは異なっても良い。例えば、ステップS3で、第1電極201と第3電極203の間に、双極性パルスを印加し、ステップS6で、単極性パルスを印加する等してもよい。
【0076】
高電圧生成部150が単極性の2連発パルスを生成する例を説明したが、これも限定されない。例えば、高電圧生成部150は、既知のBTE波形、RLB波形、ActiBiphasic波形等の双極性の高電圧パルスを出力するものでもよい。この場合、ステップS3内で、スイッチSW1とSW2を切り替えず、ステップS6内でスイッチSW1とSW2を切り替えなくても、双極性の高電圧パルスを心臓に印加することができる。
【0077】
また、上記説明では、ステップS5で、ステップS6で高電圧パルスを印加することを指示したが、ステップS3とステップS6をセットにして、ステップS2で、印加と指示されたときに、ステップS3とS6を自動的に順番に実施するようにしてもよい。なお、ステップS6をステップS3の前に実行するようにしてもよい。
【0078】
更に、第1電極201と第3電極203との間、第2電極202と第4電極204との間に高電圧パルスを印加したが、これに限定されない。4つの電極の中から、心臓に電流が流れるように、少なくとも2つの電極を適宜選択して高電圧パルスを印加し、電極の組み合わせを適宜変更することにより、異なる態様で心臓に高電圧パルスを印加するようにしてもよい。
【0079】
上記実施の形態において、帯状電極部200、三角巾状電極部400、及び衣服状電極部500に、4つの電極を配置したが、4つ以上の電極を配置してもよい。例えば、
図13(A)(B)に例示するように、患者Pの右前胸部、左前胸部、左脇腹、左背部、右背部に配置される5つの電極を配置してもよい。この場合、第1電極201~第4電極204に加え、第5電極209が、帯状電極部200、三角巾状電極部400、及び/又は衣服状電極部500に配置される。これら5つの電極の中から、心臓に電流が流れるように、少なくとも2つの電極を適宜選択して高電圧パルスを印加し、電極の組み合わせを適宜変更することにより、異なる態様で心臓に高電圧パルスを印加するようにしてもよい。
【0080】
また、第1電極201~第4電極204と帯状生地205とは接着されているが、この態様に限定されない。例えば、第1電極201~第4電極204と帯状生地205とを縫製により固定してもよい。
【0081】
また、帯状電極部200を撚紐状にしたが、三角巾状電極部400及び衣服状電極部500も同様に撚紐状にしてもよい。三角巾状電極部400及び衣服状電極部500を撚紐状にする場合、三角巾状電極部400及び衣服状電極部500の頂点部分周辺のうちいずれかひとつに留め具を設け、該留め具と対向する三角巾状電極部400及び衣服状電極部500の頂点部分周辺に更に留め具を設ける。該留め具同士が結ぶ軸線を軸として、該留め具同士をそれぞれ反対方向へ回転させる。これにより、三角巾状電極部400及び衣服状電極部500が撚紐状になる。
【0082】
また、帯状電極部200、三角巾状電極部400及び衣服状電極部500を撚紐状にしたが、この態様に限定されない。例えば、
図6(B)に示すように、本体100に帯状電極部200を収納するスペースを設け、非使用時には折り畳んだ状態の帯状電極部200を該スペースに収納してもよい。また、AED1及び折り畳んだ状態の帯状電極部200を収納ケース2に収納してもよい。
【0083】
上記実施の形態1において、帯状生地205は、全体が帯状であり長手方向の両端面に留め具601及び留め具602をそれぞれ備えているが、この態様に限定されない。例えば、帯状生地205は留め具601及び留め具602を備えず、全体がつなぎ目のない連続的な環状をなしていてもよい。
【0084】
上記実施の形態1~5において、帯状生地205、三角巾状生地401、及び衣服状生地501の素材は合成繊維であったが、可撓性を有し、患者への装着時に引き裂けない程度の強度を有し、印加電圧を絶縁することができれば、素材は限定されない。また、帯状生地205、三角巾状生地401、及び衣服状生地501は、患者Pとの接触面に粘着層を備えてもよい。粘着層を備えることにより、降雨、出血等により患者Pの皮膚が断続的に濡れている状態であっても、帯状電極部200、三角巾状電極部400、又は衣服状電極部500を、装着位置がずれたり剥離したりすることを防ぎつつ、患者Pに装着できる。また、患者Pと帯状生地205、三角巾状生地401、又は衣服状生地501との接触範囲に裂傷、銃創等がある場合には、帯状生地205、三角巾状生地401、及び衣服状生地501は、止血具としても作用し得る。
【0085】
AED1は救助者による電気ショックの印加指示を待って患者Pに電気ショックを印加したが、この態様に限定されない。例えば、AED1の制御部140は、生体情報取得部160が取得した生体情報が、予め設定されている高電圧パルス印加基準を満たすか否かを判別し、満たすと判別した場合に、救助者による電気ショックの印加指示を経ずに患者Pに電気ショックを自動的に印加してもよい。高電圧パルス印加基準は、例えば、記憶部180に予め設定される。また、高電圧パルス印加基準は、既知の任意の基準を採用可能である。例えば、制御部140は、患者Pの心拍と除細動が必要な心拍とが近似していると判定した場合、救助者による電気ショックの印加指示を経ずに患者Pに電気ショックを印加してもよい。
【0086】
より詳細には、記憶部180は、除細動が必要な心拍を示す心電図情報と、患者Pの心電図情報と該除細動が必要な心拍を示す心電図情報との一致率を示す閾値情報とを予め記憶している。制御部140は、生体情報取得部160が取得した患者Pの生体電圧、生体電流等を解析し、心電図情報、心拍数等を求める。制御部140は、患者Pの心電図情報と記憶部180に記憶された心電図情報との一致率を求める。制御部140は、求めた一致率と閾値情報が示す一致率とを比較する。求めた一致率が、閾値情報が示す一致率を上回った場合は、制御部140は、患者Pの心拍と除細動が必要な心拍とが近似していると判定する。
【0087】
上記実施の形態3における三角巾状電極部400、上記実施の形態4における衣服状電極部500、上記実施の形態5における子供用帯状電極部220、大人用帯状電極部221、子供用三角巾状電極部420、大人用三角巾状電極部421、子供用衣服状電極部520、及び大人用衣服状電極部521が備える第1電極201~第4電極204は、導電性粘着層206をそれぞれ備えてもよく、導電性針状体208をそれぞれ備えてもよく、導電性粘着層206及び導電性針状体208をそれぞれ備えてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1:AED(自動体外式除細動器)、2:収納ケース、100:本体、110:表示部、120:操作部、130:音声出力部、140:制御部、150:高電圧生成部、151:選択スイッチ、160:生体情報取得部、170:電源部、180:記憶部、200:帯状電極部、201:第1電極、202:第2電極、203:第3電極、204:第4電極、205:帯状生地、206:導電性粘着層、207:フィルム、208:導電性針状体、209:第5電極、220:子供用帯状電極部、221:大人用帯状電極部、300:ケーブル、400:三角巾状電極部、401:三角巾状生地、420:子供用三角巾状電極部、421:大人用三角巾状電極部、500:衣服状電極部、501:衣服状生地、520:子供用衣服状電極部、521:大人用衣服状電極部、601:留め具、602:留め具、603:留め具、604:留め具、605:留め具、606:留め具、607:留め具、608:留め具、609:留め具、610:留め具、P:患者、S:軸線、SW1:スイッチ、SW2:スイッチ、PL1:高電圧パルス、PL2:高電圧パルス。
【要約】
【課題】簡単な短時間の作業で、二重印加方式で電気ショックを印加することが可能な自動体外式除細動器を提供する。
【解決手段】自動体外式除細動器は、患者の右前胸部に貼付される第1電極と、患者の左前胸部に貼付される第2電極と、患者の左脇腹に貼付される第3電極と、患者の左背部に貼付される第4電極と、を備える電極部と、前記第1から第4の電極のうちから選択された少なくとも2つの電極間に高電圧パルスを印加する電圧印加部と、を備える。
【選択図】
図1