(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】洋上風力発電装置及びこの洋上風力発電装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
F03D 13/25 20160101AFI20250116BHJP
【FI】
F03D13/25
(21)【出願番号】P 2024175071
(22)【出願日】2024-10-04
【審査請求日】2024-10-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521031305
【氏名又は名称】株式会社町おこしエネルギー
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】沼田 昭二
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-521597(JP,A)
【文献】特表2021-510793(JP,A)
【文献】国際公開第2020/221405(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 13/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の閉じられた空間に空気を有し、海面に浮遊可能な中空浮体部と、
前記中空浮体部に立設され、上部から円筒部材を挿入することが出来る内部空間を有する筒状の支柱部と、
前記中空浮体部から所定の角度をなすように前記海面に沿ってそれぞれ延伸し、内部の閉じられた空間に空気を有し前記海面に浮遊可能な一対の接続管浮体部と、
を有するタワー接続浮体部と、
前記タワー接続浮体部の前記一対の接続管浮体部に接続可能であり、内部の閉じられた空間に空気を有し前記海面に浮遊可能な連結管浮体部と、
を用いて洋上風力発電装置を製造する方法であって、
少なくとも4つの前記タワー接続浮体部を準備し、港において前記各タワー接続浮体部の前記支柱部に風車のタワー部を挿入して洋上まで運搬する第1の工程と、
前記4つの前記タワー接続浮体部が所定の四角形の角部に位置した際に前記4つの前記タワー接続浮体部を連結するために必要な所定数である少なくとも4つ以上の前記連結管浮体部を準備して洋上まで運搬する第2の工程と、
前記4つの前記連結管浮体部を用いて前記4つの前記タワー接続浮体部同士を連結させて前記所定の四角形を形成する第3の工程と、
前記4つの前記タワー接続浮体部にアンカーを接続する第4の工程と、
を備えることを特徴とする洋上風力発電装置を製造する方法。
【請求項2】
請求項1に記載の洋上風力発電装置を製造する方法において、
前記4つの前記タワー接続浮体部同士を接続するように前記所定の四角形の辺に沿って延伸する辺ワイヤー部を接続するとともに前記所定の四角形の対角線に沿って延伸する対角線ワイヤー部を接続する第5の工程を備えることを特徴とする洋上風力発電装置を製造する方法。
【請求項3】
請求項2に記載の洋上風力発電装置を製造する方法において、
前記辺ワイヤー部は、海面の上方に設置される上方辺ワイヤー部と、海面の下方に設置される下方辺ワイヤー部とを有し、
前記対角線ワイヤー部は、海面の上方に設置される上方対角線ワイヤー部と、海面の下方に設置される下方対角線ワイヤー部とを有することを特徴とする洋上風力発電装置を製造する方法。
【請求項4】
請求項1に記載の洋上風力発電装置を製造する方法において、
前記タワー接続浮体部は、
前記支柱部と一対の接続管浮体部とをそれぞれ接続する一対のトラス接続部と、
前記一対の接続管浮体部同士を接続し、内部の閉じられた空間に空気を有し前記海面に浮遊可能なトラス連結浮体部と、
を有することを特徴とする洋上風力発電装置を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋上風力発電装置及びこの洋上風力発電装置を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然エネルギーを用いた様々な発電システムが開発されている。その中の1つとして風力発電が存在し、洋上での風力発電についても様々な検討がなされている。本発明に関連する技術として、例えば、特許文献1には、発電機に加え、前記発電機に動力を供給する風車を有する風車部と、前記風車部を支持する浮体部と、を備え、前記浮体部は、筒状に形成された外筒部を有する外側部材と、前記外筒部の内部に少なくとも一部が収容された、筒状に形成された内筒部を有する内側部材と、を有し、前記浮体部は、前記外筒部の内部を前記内筒部がスライド移動することで前記外側部材に対して前記内側部材が移動可能とされ、輸送時における第一の姿勢と、前記第一の姿勢に比べて伸長された、設置完了時における第二の姿勢と、を取りうるように構成されている洋上風力発電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成を用いることで洋上風力発電装置を構築することができる。しかしながら、このような洋上風力発電装置を構築しようとすると、大規模な設備や人件費等が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、簡単に洋上風力発電装置を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る洋上風力発電装置を製造する方法は、内部の閉じられた空間に空気を有し、海面に浮遊可能な中空浮体部と、前記中空浮体部に立設され、上部から円筒部材を挿入することが出来る内部空間を有する筒状の支柱部と、前記中空浮体部から所定の角度をなすように前記海面に沿ってそれぞれ延伸し、内部の閉じられた空間に空気を有し前記海面に浮遊可能な一対の接続管浮体部と、を有するタワー接続浮体部と、前記タワー接続浮体部の前記一対の接続管浮体部に接続可能であり、内部の閉じられた空間に空気を有し前記海面に浮遊可能な連結管浮体部と、を用いて洋上風力発電装置を製造する方法であって、 少なくとも4つの前記タワー接続浮体部を準備し、港において前記各タワー接続浮体部の前記支柱部に風車のタワー部を挿入して洋上まで運搬する第1の工程と、前記4つの前記タワー接続浮体部が所定の四角形の角部に位置した際に前記4つの前記タワー接続浮体部を連結するために必要な所定数である少なくとも4つ以上の前記連結管浮体部を準備して洋上まで運搬する第2の工程と、前記4つの前記連結管浮体部を用いて前記4つの前記タワー接続浮体部の一対の前記接続管浮体部に連結させて前記所定の四角形を形成する第3の工程と、前記4つの前記タワー接続浮体部にアンカーを接続する第4の工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る洋上風力発電装置を製造する方法において、前記4つの前記タワー接続浮体部同士を接続するように前記所定の四角形の辺に沿って延伸する辺ワイヤー部を接続するとともに前記所定の四角形の対角線に沿って延伸する対角線ワイヤー部を接続する第5の工程を備えることが好ましい。
【0008】
また、本発明に係る洋上風力発電装置を製造する方法において、前記辺ワイヤー部は、海面の上方に設置される上方辺ワイヤー部と、海面の下方に設置される下方辺ワイヤー部とを有し、前記対角線ワイヤー部は、海面の上方に設置される上方対角線ワイヤー部と、海面の下方に設置される下方対角線ワイヤー部とを有することが好ましい。
【0009】
また、本発明に係る洋上風力発電装置を製造する方法において、前記タワー接続浮体部は、前記支柱部と一対の接続管浮体部とをそれぞれ接続する一対のトラス接続部と、前記一対の接続管浮体部同士を接続し、内部の閉じられた空間に空気を有し前記海面に浮遊可能なトラス連結浮体部と、を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単に洋上風力発電装置を製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実施形態の方法を用いて製造された洋上風力発電装置を示す図である。
【
図2】本発明に係る実施形態において、洋上風力発電装置のタワー接続浮体部を示す図である。
【
図3】本発明に係る実施形態において、タワー接続浮体部に風車のタワー部を装着している様子を示す図である。
【
図4】本発明に係る実施形態において、タワー接続浮体部の一対の接続管浮体部に連結管浮体部を接続する様子を示す図である。
【
図5】本発明に係る実施形態において、洋上風力発電装置のトラス構造を示す図である。
【
図6】本発明に係る実施形態において、洋上風力発電装置のトラス構造による作用効果を説明するための図である。
【
図7】本発明に係る実施形態において、暴風や高波などの悪天候の際における洋上風力発電装置の使用方法を示す図である。
【
図8】本発明に係る実施形態の方法を用いて製造された洋上風力発電装置を示す図である。
【
図9】本発明に係る実施形態において、タワー接続浮体部の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る実施の形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、本文中の説明においては、必要に応じそれ以前に述べた符号を用いるものとする。
【0013】
図1は、本発明に係る実施形態の方法を用いて製造された洋上風力発電装置10を示す図である。
図2は、本発明に係る実施形態において、洋上風力発電装置10のタワー接続浮体部12を示す図である。
【0014】
図3は、本発明に係る実施形態において、タワー接続浮体部12に風車2のタワー部8を装着している様子を示す図である。
図4は、本発明に係る実施形態において、タワー接続浮体部12の一対の接続管浮体部12cに連結管浮体部14を接続する様子を示す図である。
【0015】
図5は、本発明に係る実施形態において、洋上風力発電装置10のトラス構造を示す図である。
図6は、本発明に係る実施形態において、洋上風力発電装置10のトラス構造による作用効果を説明するための図である。
【0016】
図7は、本発明に係る実施形態において、暴風や高波などの悪天候の際における洋上風力発電装置10の使用方法を示す図である。
図8は、本発明に係る実施形態の方法を用いて製造された洋上風力発電装置10aを示す図である。
図9は、本発明に係る実施形態において、タワー接続浮体部12の変形例を示す図である。
【0017】
洋上風力発電装置10は、海上に設置された風力発電システムである。洋上風力発電装置10は、4個の風車2と、4個のタワー接続浮体部12と、12個の連結管浮体部14と、4本の上方辺ワイヤー部16aと、2本の上方対角線ワイヤー部16bと、4本の下方辺ワイヤー部16cと、2本の下方対角線ワイヤー部16dと、4個のアンカー20とを備えている。なお、各上方辺ワイヤー部16a、各上方対角線ワイヤー部16b、下方辺ワイヤー部16c及び下方対角線ワイヤー部16dの各ワイヤーは、
図1では、それぞれ1~2本で形成されていてもよいが、基地のサイズに応じて2本以上の複数本に設定してもよい。
【0018】
風車2は、三つのブレード部4と、ハブ部6と、タワー部8とを有している。タワー部8は、鉛直上方に延びている円柱部材である。タワー部8の上端部には、発電機やインバータ、変圧器の他、発電機の発電機軸につながり、回転力を伝達可能な増速機等を格納した、図示しないナセルが設けられている。
【0019】
増速機につながり、回転力を増速機に伝達可能なローター軸は、ハブ部6に繋がっている。ハブ部6には、ハブ部6を中心として、放射状に延びるように三つのブレード部4が取り付けられ、ハブ部6と三つのブレード部4とが一体となって風車を形成している。
【0020】
このようにして、ハブ部6と三つのブレード部4で構成された風車が風で回転することにより、増速機を介して回転力が発電機に入力され、発電機で発電した電力をインバータや変圧器で系統に合わせた周波数および電圧として出力可能とされている。なお、ここでは、風車を三つのブレード部4を用いて構成したものの、これに限らず、複数枚の羽根を用いて構成したものであればよい。
【0021】
タワー接続浮体部12は、中空浮体部12aと、支柱部12bと、一対の接続管浮体部12cとを備えている。
【0022】
中空浮体部12aは、内部の閉じられた空間に空気を有し、海面に浮遊可能な部材である。中空浮体部12aは、
図2に示されるように、上面に人が乗って移動することが可能なように平坦面を有する略四角柱形状を有しており、縦方向の長さが約15m、横方向の長さが約15m、高さが約6mに設定することが出来るが、もちろん、適宜変更することが出来る。
【0023】
中空浮体部12aは、
図2(b)に示されるように、2つの密封空間領域13a,13bを有している。中空浮体部12aは、適度な強度を有する材質、例えば、ステンレス、スチールなどで構成することが出来る。
【0024】
中空浮体部12aの上面には、2つの密封空間領域13a,13b内の空気を開放するための開閉弁13cが形成されている。
図2では、密封空間領域13a,13bのうち密封空間領域13b上の開閉弁13cのみが見えているが、密封空間領域13a上の開閉弁13cは支柱部12bに隠れているが存在している。また、後述する一対の接続管浮体部12c及び連結管浮体部14にも開閉弁12f,12gが設けられている。このように設けられた各開閉弁12f,12gは、天候などの様々な状況に応じて圧力調整して空気を出し入れすることが出来る。例えば、基地の底部側が海に沈む量を大きくする場合には、接続管浮体部12c及び連結管浮体部14にバラストシステムを使用し、海水(バラスト水)の調整で基地が沈む量を大きくすることができる。また、逆に基地を浮かべる必要がある場合には、中空浮体部12aの開閉弁13c等を調整することで浮力を強くして基地を浮かべることが出来る。
【0025】
支柱部12bは、中空浮体部12aに立設され、上部から円筒部材を挿入することが出来る内部空間を有する筒状部材である。上部から挿入される円筒部材は、風車2のタワー部8であり、内部空間の直径はタワー部8の直径に合わせて形成されている。なお、支柱部12bの中央部には、タワー部8の底面を支持するための支持壁が形成されているため、風車2が安定した状態で、支持壁上で起立する。
【0026】
支柱部12bは、
図2に示されるように、中空浮体部12aの貫通孔に挿入されており、中空浮体部12aの上面からの突出している部分の長さは約20mであり、中空浮体部12aの下面からの突出している部分の長さは約5mであるものとして説明するが、もちろん、適宜変更することが出来る。支柱部12bは、適度な強度を有する材質、例えば、ステンレス、スチールなどで構成することが出来る。
【0027】
4個の支柱部12bには、上方辺ワイヤー部16a、上方対角線ワイヤー部16b、下方辺ワイヤー部16c及び下方対角線ワイヤー部16dを接続するためのワイヤー接続部17が形成さている。
【0028】
支柱部12bの底面には、アンカー20を接続するためのアンカー接続部19が形成されている。アンカー20は、タワー接続浮体部12を留めておくための錘とワイヤーとを有する設備である。
図2に示されるように、アンカー接続部19に接続されたアンカー20の錘が海底に沈むことでタワー接続浮体部12の動きを規制することが出来る。
【0029】
一対の接続管浮体部12cは、中空浮体部12aから所定の角度(90度)をなすように海面に沿ってそれぞれ延伸し、内部の閉じられた空間に空気を有し海面に浮遊可能な鋼管である。各接続管浮体部12cの内部には空気を有する密閉空間が形成されている。
【0030】
各接続管浮体部12cは、直径が約6mに設定されており、長さが約30mに設定されているものとして説明するが、適宜変更可能である。各接続管浮体部12cは、適度な強度を有する材質、例えば、ステンレス、スチールなどで構成することが出来る。
【0031】
一対のトラス接続部13は、
図2に示されるように、支柱部12bの中空浮体部12aの上面から上方に突出する部分と一対の接続管浮体部12cとをそれぞれ接続する上側の一対のトラス接続部13と、支柱部12bの中空浮体部12aの下面から下方に突出する部分と一対の接続管浮体部12cとをそれぞれ接続する下側の一対のトラス接続部13とを備えている。一対のトラス接続部13は、適度な強度を有する材質、例えば、ステンレス、スチールなどで構成することが出来る。
【0032】
トラス連結浮体部12dは、一対の接続管浮体部12c同士を接続し、内部の閉じられた空間に空気を有し海面に浮遊可能な鋼管である。トラス連結浮体部12dの内部には空気を有する密閉空間が形成されている。
図2に示されるように、一対の接続管浮体部12cとトラス連結浮体部12dとで「A」の文字を形成している。トラス連結浮体部12dは、適度な強度を有する材質、例えば、ステンレス、スチールなどで構成することが出来る。
【0033】
連結管浮体部14は、タワー接続浮体部12の一対の接続管浮体部12cに接続可能であり、内部の閉じられた空間に空気を有し海面に浮遊可能な鋼管である。連結管浮体部14の内部には空気を有する密閉空間が形成されている。連結管浮体部14は、直径が約6mに設定されており、長さが約30mに設定されているものとして説明するが、適宜変更可能である。連結管浮体部14は、適度な強度を有する材質、例えば、ステンレス、スチールなどで構成することが出来る。
【0034】
4本の上方辺ワイヤー部16aは、4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の上面の上方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続されて、略四角形の辺に沿って伸びて平面視で四角形を形成している金属線である。
【0035】
2本の上方対角線ワイヤー部16bは、4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の上面の上方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続されて、略四角形の対角線に沿って延伸している金属線である。
【0036】
4本の下方辺ワイヤー部16cは、4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の下面の下方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続されて、略四角形の辺に沿って伸びて平面視で四角形を形成している金属線である。
【0037】
2本の下方対角線ワイヤー部16dは、4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の下面の下方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続されて、略四角形の対角線に沿って延伸している金属線である。
【0038】
続いて、洋上風力発電装置10の製造方法について説明する。最初に、
図3に示されるように、港(ドック)において、4個のタワー接続浮体部12を準備し、各タワー接続浮体部12の一対の接続管浮体部12cに連結管浮体部14を接続した後、港において各タワー接続浮体部12の支柱部12bに風車2のタワー部8を挿入して洋上まで運搬する(S2)。具体的には、港において、クレーンを使用して、風車2のタワー部8を支柱部12bに嵌合させて組み立てた後に牽引船によって洋上へと運搬する。
【0039】
次に、
図1に示されるように、連結管浮体部14が接続された4個のタワー接続浮体部12が所定の四角形の角部に位置した際に連結管浮体部14が接続された4個のタワー接続浮体部12同士を連結するために必要な所定数である4個の連結管浮体部14を準備して洋上まで運搬する(S4)。ここでも、
図2に示されるように、港から牽引船を用いて4個の連結管浮体部14を洋上へと運搬する。なお、ここでは、4個の連結管浮体部14を用いるものとして説明するが、基地のサイズに応じて適宜増減させてもよい。また、これらの複数の連結管浮体部14は、大型クレーン船に載せて運んでもよい。
【0040】
次いで、4個の連結管浮体部14を用いて4個のタワー接続浮体部12の一対の接続管浮体部12cに接続された連結管浮体部14に連結させて所定の四角形を形成する(S6)。具体的には、
図4に示されるように、タワー接続浮体部12の一対の接続管浮体部12cに連結された連結管浮体部14と次の連結管浮体部14とをワイヤーで繋ぎ、ウィンチで引き寄せる。その後、連結管浮体部14同士の接続面部をボルトで固定する。
【0041】
この要領で連結管浮体部14が接続された4個のタワー接続浮体部12が四角形の角部に位置し、それぞれの間を1個の連結管浮体部14が位置するようにした状態で接続されて、それぞれの接続面をボルトで固定することで、
図1に示されるように四角形を構成することが出来る。
【0042】
次に、4個のタワー接続浮体部12にアンカー20を接続する(S8)。具体的には、四角形の角部に位置する4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bの底面に設けられたアンカー接続部19にアンカー20を接続して、アンカー20の錘を海に沈める。錘が海底に到達することで、洋上風力発電装置10の動きを規制し位置を固定することが出来る。
【0043】
次いで、4個のタワー接続浮体部12同士を接続するように所定の四角形の辺に沿って延伸する辺ワイヤー部を接続するとともに所定の四角形の対角線に沿って延伸する対角線ワイヤー部を接続する(S10)。
【0044】
具体的には、4本の上方辺ワイヤー部16aを4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の上面の上方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続する。そして、2本の上方対角線ワイヤー部16bを4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の上面の上方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続する。
【0045】
また、4本の下方辺ワイヤー部16cを4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の下面の下方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続する。さらに4個のタワー接続浮体部12の支柱部12bのうち中空浮体部12の下面の下方に突出している部分のワイヤー接続部17に接続する。
【0046】
以上のように、洋上風力発電装置10の製造方法によれば、港の海に面した工場等において必要な時に必要なだけのタワー接続浮体部12及び連結管浮体部14等を製造し、港の海に面した工場で、タワー接続浮体部12を港の海に浮かべた状態で、クレーンなどを用いて風車2のタワー部8を嵌合させて、牽引船で洋上へ運搬させる。
【0047】
このような要領で風車2が設置されて連結管浮体部14が接続された4個のタワー接続浮体部12と、4個の連結管浮体部14と洋上に運搬し、それぞれを接続することで、洋上での大がかりな設備などを用いることなく洋上風力発電装置10を製造することが出来るという顕著な効果を奏する。
【0048】
また、
図5(a)に示されるように、洋上風力発電装置10は、4本の上方辺ワイヤー部16aと、2本の上方対角線ワイヤー部16bと、4本の下方辺ワイヤー部16cと、2本の下方対角線ワイヤー部16dと、4個のアンカー20とを備えている。これに加えて、各タワー接続浮体部12は、
図5(b)及び
図5(c)に示されるように、支柱部12bとトラス接続部13とが形成するトラス構造と、連結管浮体部14とトラス連結浮体部12dとが形成するトラス構造とを備えている。
【0049】
このように洋上風力発電装置10は立体的なトラス構造が形成されているため、強度を保つことが出来る。そして、4個のタワー接続浮体部12が四角形の角部で立体的なトラス構造を有しているため、
図6に示されるように、風が風車2に当たる力が力点となり、各タワー接続浮体部12から下方に向かう力が4つの支点となり、一対の接続管浮体部12c及び連結管浮体部14に加わる浮力が作用点となり、強度を保ち安定した状態を保持することができるため、外洋の荒波や強風に強い発電基地にすることが出来る。
【0050】
なお、天候が穏やかな通常運転時は、
図7(a)に示されるように、タワー接続浮体部12及び連結管浮体部14が浮かんだ状態で運転するが、暴風や高波など天気が荒れている場合は、例えば、接続管浮体部12c及び連結管浮体部14にバラストシステムを使用し、海水(バラスト水)の調整で基地が沈む量を大きくすることで
図7(b)に示されるようにタワー接続浮体部12及び連結管浮体部14を沈めて発電基地の損害を防ぐことが出来る。また、逆に基地を浮かべる必要がある場合には、中空浮体部12aの開閉弁13c等を調整することで浮力を強くして基地を浮かべることが出来る。
【0051】
図8は、洋上風力発電装置10の変形例である洋上風力発電装置10aを示す図である。洋上風力発電装置10では風車2が4個であったが、洋上風力発電装置10aでは風車2が6個に設定している。このため、
図8に示されるように、6個のタワー接続浮体部12と6個の連結管浮体部14とを用いて2つの四角形を形成することで安定した発電基地にすることが出来る。
【0052】
図9は、タワー接続浮体部12の変形例であるタワー接続浮体部12eである。基本的な構造は、タワー接続浮体部12と同様であるが、これに加えて、
図9に示されるように、接続管浮体部12cにトラス構造12hを形成することにより、より強固な構造にすることが出来る。
【0053】
なお、上記洋上風力発電装置10,10aの製造方法によれば、港で組み立てるものとして説明している。タワー接続浮体部12は海に沈む部分が10m以下のため、日本で既存の船舶ドッグで組み立てることが可能な長さとなる。例えば水深部が10mを超えたとしても港側で組み立てることもできる。また、その海に沈んだ部分が港の水深を超える高さを有する場合には、少し沖合に出て組み立てた後に、現地に牽引船で引っ張っていくことが出来る。
【符号の説明】
【0054】
2 風車、4 ブレード部、6 ハブ部、8 タワー部、10,10a 洋上風力発電装置、12 タワー接続浮体部、12a 中空浮体部、12b 支柱部、12c 接続管浮体部、12d トラス連結浮体部、12e タワー接続浮体部、12f,12g 開閉弁、12h トラス構造、13 トラス接続部、13a,13b 密封空間領域、13c,13d 開閉弁、14 連結管浮体部、16a 上方辺ワイヤー部、16b 上方対角線ワイヤー部、16c 下方辺ワイヤー部、16d 下方対角線ワイヤー部、17 ワイヤー接続部、19 アンカー接続部、20 アンカー。
【要約】
【課題】簡単に洋上風力発電装置を製造する方法を提供することである。
【解決手段】洋上風力発電装置を製造する方法は、少なくとも4つの前記タワー接続浮体部を準備し、港において各タワー接続浮体部12の支柱部12bに風車2のタワー部8を挿入して洋上まで運搬する第1の工程と、4つのタワー接続浮体部12が所定の四角形の角部に位置した際に4つのタワー接続浮体部12を連結するために必要な所定数である少なくとも4つ以上の連結管浮体部14を準備して洋上まで運搬する第2の工程と、4つの連結管浮体部14を用いて4つのタワー接続浮体部12の一対の接続管浮体部12cに連結させて所定の四角形を形成する第3の工程と、4つのタワー接続浮体部12にアンカー20を接続する第4の工程と、を備える。
【選択図】
図1