(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】情報処理システム及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G06F 40/56 20200101AFI20250116BHJP
G06F 40/44 20200101ALI20250116BHJP
【FI】
G06F40/56
G06F40/44
(21)【出願番号】P 2024199345
(22)【出願日】2024-11-15
(62)【分割の表示】P 2024568006の分割
【原出願日】2024-06-26
【審査請求日】2024-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520408744
【氏名又は名称】株式会社I’mbesideyou
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】神谷 渉三
(72)【発明者】
【氏名】安藤 高太朗
【審査官】成瀬 博之
(56)【参考文献】
【文献】特許第7313757(JP,B1)
【文献】特開2013-80476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 40/00-40/58
G06F 16/00-16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザとの間で送受信したメッセージである過去メッセージを前記ユーザに対応付けて記憶するメッセージ記憶部と、
対話相手の前記ユーザに対応する前記過去メッセ-ジと新規に前記ユーザに送信するメッセージである送信メッセージを生成する指示とを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて前記送信メッセージを生成するメッセージ生成部と、
削除される前記過去メッセージを要約した要約メッセージを作成する要約部と、
を備え、
前記メッセージ生成部は、前記対話相手のユーザに対応する前記過去メッセージの一部を前記プロンプトから削除
し、削除される前記過去メッセージに代えて前記要約メッセージを前記プロンプトに含め、
前記要約部は、古い前記過去メッセージほど短い前記要約メッセージを作成すること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
請求項
1に記載の情報処理システムであって、
前記要約部は、前記過去メッセージを要約する指示と前記過去メッセージとを含むプロンプトを前記大規模言語モデルに与えて前記要約メッセージを生成させること、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報処理システムであって、
前記
過去メッセージに基づいて前記ユーザの感情の度合を推定する感情推定部を備え、
前記メッセージ生成部は、前記感情の度合が所定値以上の前記過去メッセージについては削除しないこと、
を特徴とする情報処理システム。
【請求項4】
ユーザとの間で送受信したメッセージである過去メッセージを前記ユーザに対応付けて記憶するステップと、
対話相手の前記ユーザに対応する前記過去メッセ-ジと新規に前記ユーザに送信するメッセージである送信メッセージを生成する指示とを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて前記送信メッセージを生成するステップと、
削除される前記過去メッセージを要約した要約メッセージを作成するステップと、
をコンピュータが実行し、
前記コンピュータは、
前記送信メッセージを生成するステップにおいて、前記対話相手のユーザに対応する前記過去メッセージの一部を前記プロンプトから削除
し、削除される前記過去メッセージに代えて前記要約メッセージを前記プロンプトに含め、
前記要約メッセージを作成するステップにおいて、古い前記過去メッセージほど短い前記要約メッセージを作成すること、
を特徴とする情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工知能用いた会話プログラムが提供されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
会話の一貫性をもたせつつ効率的な処理を行うことが求められている。
【0005】
本発明はこのような背景を鑑みてなされたものであり、効率的かつ効果的に会話のメッセージを生成することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の主たる発明は、情報処理システムであって、ユーザとの間で送受信したメッセージである過去メッセージを前記ユーザに対応付けて記憶するメッセージ記憶部と、対話相手の前記ユーザに対応する前記過去メッセ-ジと新規に前記ユーザに送信するメッセージである送信メッセージを生成する指示とを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて前記送信メッセージを生成するメッセージ生成部と、を備え、前記メッセージ生成部は、前記対話相手のユーザに対応する前記過去メッセージの一部を前記プロンプトから削除すること、を特徴とする。
【0007】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的かつ効果的に会話のメッセージを生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】情報処理システムの全体構成例を示す図である。
【
図2】管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。
【
図3】管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<システムの概要>
以下、本発明の一実施形態に係る情報処理システムについて説明する。本実施形態の情報処理システムでは、アバターがユーザと会話を行うことを想定しており、アバターの発話する内容を、例えば生成AIを用いて生成することができる。本実施形態では、アバターがユーザに語りかけるメッセージ(送信メッセージ)を生成するにあたり、過去のメッセージ(過去メッセージ)を参照しながら生成するところ、過去メッセージについては、一部を恣意的に忘れるようにする。例えば、昔のメッセージほど沢山忘れるようにする。ただし、ユーザにとって印象が深いであろうメッセージについては忘れないようにする。
【0011】
図1は、情報処理システムの全体構成例を示す図である。本実施形態の情報処理システムは、管理サーバ2を含んで構成される。管理サーバ2は、ユーザ端末1と通信ネットワークを介して通信可能に接続される。通信ネットワークは、たとえばインターネットであり、公衆電話回線網や携帯電話回線網、無線通信路、イーサネット(登録商標)などにより構築される。
【0012】
ユーザ端末1は、ユーザが操作するコンピュータである。ユーザ端末1は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータなどとすることができる。
【0013】
管理サーバ2は、アバターに関する処理を行うコンピュータである。管理サーバ2は、例えばワークステーションやパーソナルコンピュータのような汎用コンピュータとしてもよいし、あるいはクラウド・コンピューティングによって論理的に実現されてもよい。
【0014】
<管理サーバ>
図2は、管理サーバ2のハードウェア構成例を示す図である。なお、図示された構成は一例であり、これ以外の構成を有していてもよい。管理サーバ2は、CPU201、メモリ202、記憶装置203、通信インタフェース204、入力装置205、出力装置206を備える。記憶装置203は、各種のデータやプログラムを記憶する、例えばハードディスクドライブやソリッドステートドライブ、フラッシュメモリなどである。通信インタフェース204は、通信ネットワークに接続するためのインタフェースであり、例えばイーサネット(登録商標)に接続するためのアダプタ、公衆電話回線網に接続するためのモデム、無線通信を行うための無線通信機、シリアル通信のためのUSB(Universal Serial Bus)コネクタやRS232Cコネクタなどである。入力装置205は、データを入力する、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、ボタン、マイクロフォンなどである。出力装置206は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。なお、後述する管理サーバ2の各機能部はCPU201が記憶装置203に記憶されているプログラムをメモリ202に読み出して実行することにより実現され、管理サーバ2の各記憶部はメモリ202及び記憶装置203が提供する記憶領域の一部として実現される。
【0015】
図3は、管理サーバ2のソフトウェア構成例を示す図である。管理サーバ2は、メッセージ記憶部231と、メッセージ送受信部211と、メッセージ生成部212と、要約部213と、感情推定部214と、を備える。
【0016】
<記憶部>
メッセージ記憶部231は、ユーザとの間で送受信したメッセージ(以下、過去メッセージ)をユーザに対応付けて記憶する。メッセージは、テキストデータを想定するが、動画や静止画、音声、などを含んでもよい。例えば、ユーザとアバターとの間で会話された動画(音声を含む)と、当該動画から音声認識により抽出されたテキストとを過去メッセージとしてメッセージ記憶部231に記憶することができる。
【0017】
<機能部>
メッセージ送受信部211は、ユーザとの間でメッセージを送受信する。
【0018】
本実施形態では、情報処理システムがユーザとメッセージの送受信を行う際のインタフェースとして、アバターを用いる。アバターは、CGにより描画された人型のキャラクターであり、ユーザに対して視覚的・聴覚的に働きかけを行うことができる。アバターの外観は、予め設計されたポリゴンモデルとテクスチャをもとに3DCGレンダリング技術を用いて生成されうる。例えば、性別や年齢層、役割などが異なる複数のアバターモデルを用意してき、ユーザの属性や好みに応じて最適なモデルを選択するようにすることができる。アバターの表情や身振り、口の動きなどは、メッセージ生成部213から出力される対話の内容に同期して、リアルタイムにアニメーション制御されうる。アバターは対話の文脈に応じて、スマートフォンやタブレット、大型ディスプレイなど、様々なデバイス上に描画されうる。メッセージ送受信部211は、アバターにメッセージを喋らせる(メッセージをアバターの発話として出力する)処理を行う。メッセージ送受信部211は、後述するメッセージ生成部212により生成されたメッセージをアバターの発話として出力する制御を行う。
【0019】
また、メッセージ送受信部211は、ユーザが発生した音声やユーザの様子を撮影した動画像などをメッセージとして取得することができる。メッセージ送受信部211は、例えば、ユーザ端末1が備えるカメラやマイクにより集音及び撮影した音声及び動画像をユーザ端末1から受信することができる。メッセージ送受信部211は、取得した音声を解析してテキストデータを生成することもできる。メッセ-ジ送受信部211は、取得したメッセージ(動画、音声、テキストデータなど)をメッセージ記憶部231にユーザ及び時間情報(例えば日時など)に対応付けて登録することができる。
【0020】
メッセージ生成部212は、ユーザに対して送信するメッセージ(以下、送信メッセージ)を生成する。
メッセージ生成部212は、過去メッセージを参照しながら送信メッセージを生成する。メッセージ生成部212は、例えば、対話相手のユーザに対応する過去メッセ-ジと、新規の送信メッセージを生成する指示とを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて送信メッセージを生成することができる。
【0021】
送信メッセージを生成するにあたり、メッセージ生成部212は、過去メッセージの一部を参照しないようにする。例えば、メッセージ生成部212は、過去メッセージの一部はプロンプトから削除する(プロンプトに含めない)ようにすることができる。
【0022】
過去メッセージの削除において、メッセージ生成部212は、過去メッセージの時間情報に基づいて、所定の期間より前の過去メッセージを削除対象として選択することができる。例えば、1週間より前の過去メッセージを削除対象とすることができる。また、メッセージ生成部212は、削除対象の過去メッセージに対して、ランダムに所定の割合でメッセージを選択して削除することができる。例えば、削除対象の過去メッセージの50%をランダムに選択して削除することができる。この際、メッセージ生成部212は、過去メッセージの時間情報に基づいて、古いメッセージほど高い確率で削除されるように、削除割合を設定することができる。例えば、1週間前の過去メッセージは50%の確率で削除し、2週間前の過去メッセージは70%の確率で削除し、3週間前の過去メッセージは90%の確率で削除する、というように設定することができる。このように、過去メッセージの削除基準と削除割合を適切に設定することで、古いメッセージほど高い確率で削除され、人間の記憶メカニズムに近づけることができる。
【0023】
送信メッセージを生成するにあたり、メッセージ生成部212は、一又は複数の過去メッセージについて、要約したもの(以下、要約メッセージ)をプロンプトに含めるようにすることができる。メッセージの要約は、後述する要約部213により行われる。
【0024】
送信メッセージを生成するにあたり、メッセージ生成部212は、ユーザにとって印象深い過去メッセージについては、削除したり、要約したりしないようにすることができる。例えば、メッセージ生成部212は、後述する感情推定部214により推定されたユーザの感情の度合が所定値以上である過去メッセージについては削除したり、要約したりしないようにすることができる。
【0025】
要約部213は、過去メッセージを要約した要約メッセージを作成する。
【0026】
要約部213は、既知の手法を用いて要約を行うことができる。例えば、要約部213は、抽出型要約手法の一つであるTF-IDFを用いることができる。TF-IDFは、過去メッセージ中の各単語の出現頻度(Term Frequency)と、過去メッセージ全体における各単語の出現頻度の逆数(Inverse Document Frequency)を考慮して、各単語の重要度を算出する。そして、重要度が高い文を抽出することで要約を生成する。また、要約部213は、意味的に重要な文を抽出する手法であるLexRankを用いることもできる。LexRankは、過去メッセージ中の文同士の類似度をグラフで表現し、グラフ上で中心性の高い文を抽出する手法である。文同士の類似度は、例えば、文中の単語の共起頻度や、単語の分散表現の類似度により算出することができる。このように、要約部213は、過去メッセージの内容を適切に要約できる手法を選択して用いることができる。
【0027】
要約部213は、要約メッセージを生成する際に、abstract型要約手法を用いることもできる。abstract型要約は、抽出型要約とは異なり、過去メッセージ中の文をそのまま用いるのではなく、過去メッセージの内容を理解した上で、新しい文を生成する手法である。要約部213は、例えば、seq2seq modelやtransformerなどの深層学習モデルを用いて、abstract型要約を実現することができる。これらのモデルは、大規模なテキストデータを用いて事前学習することで、文脈を考慮した自然な文を生成することができる。要約部213は、事前学習済みのモデルを用いて、過去メッセージを入力とし、要約メッセージを出力とするように学習することができる。これにより、過去メッセージの内容をより柔軟に要約することが可能となる。要約部213は、例えば、過去メッセージを要約する指示と過去メッセージとを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて要約メッセージを生成させるようにすることもできる。
【0028】
要約部213は、古い過去メッセージほど短い要約メッセージを作成することができる。要約部213は、過去メッセージの時間情報に基づいて、古いメッセージほど短い要約メッセージを生成することができる。例えば、要約部213は、1週間前の過去メッセージを100文字程度で要約し、2週間前の過去メッセージを50文字程度で要約し、3週間前の過去メッセージを20文字程度で要約することができる。このように、古いメッセージほど短い要約メッセージを生成することで、人間の記憶メカニズムに近づけることができる。要約部213は、例えば、大規模言語モデルに与えるプロンプトに、文字数の制約を含めるようにし、古い過去メッセージほど文字数が少なくなるように文字数を設定することができる。
【0029】
また、要約部213は、過去メッセージの内容に応じて、要約メッセージの長さを調整することもできる。例えば、要約部213は、重要度が高いと判断した過去メッセージについては、より長い要約メッセージを生成することができる。過去メッセージの重要度は、例えば、メッセージ中の特定のキーワードの有無や、メッセージの文長、メッセージの送信者などに基づいて判断することができる。一方、重要度が低いと判断した過去メッセージについては、より短い要約メッセージを生成することができる。
【0030】
感情推定部214は、過去メッセージに基づいてユーザの感情を推定する。感情推定部214は、過去メッセージに基づいて感情の種類及び感情の度合を推定することができる。感情推定部214は、例えば、メッセージ(テキスト、動画、音声など)から感情分析等の手法によりユーザの反応を推定することができる。
【0031】
感情推定部214は、例えば、動画像と第1の学習モデルに基づいて感情の種類及び/又は感情の度合を推論することができる。感情の種類として、例えば、喜び、怒り、悲しみ、恐れ、驚き、嫌悪の6種類の基本感情を定義することができる。また、感情の度合は、各感情カテゴリについて、例えば、0から1の範囲の実数値で表現されるようにすることができる。例えば、「喜び」の度合が0.8である場合、ユーザが比較的強い喜びの感情を抱いていると解釈されうる。
【0032】
感情分析の具体的な手法として、例えば、音声データから抽出される音響的特徴量と、テキストデータから抽出される言語的特徴量の両方を用いることができる。音響的特徴量としては、ピッチ、ピッチの変動、音量、音量の変動、音声の高周波成分の割合などが挙げられる。言語的特徴量としては、感情を表す単語の出現頻度、肯定的・否定的な表現の割合、文の構文構造などが挙げられる。感情推定部214は、これらの特徴量を抽出し、予め用意された感情ラベル付きの学習データを用いて機械学習を行うことで、感情分類器を構築することができる。例えば、サポートベクターマシンやニューラルネットワークなどの教師あり学習アルゴリズムを用いて、特徴量から感情カテゴリを予測するモデルを学習させることができる。また、各カテゴリに対する予測確率を感情の度合として用いるようにしてもよい。
【0033】
感情推定部214は、文脈を考慮した感情分析を行うために、過去メッセージの履歴を参照して感情の時系列変化を解析するようにしてもよい。例えば、一定時間ごとに区切られた過去メッセージのセグメントごとに感情を分析し、セグメント間の感情の遷移をマルコフモデルなどを用いてモデル化することができる。これにより、ユーザの感情状態の動的な変化をより詳細に把握することができる。
【0034】
感情推定部214は、文脈を考慮した感情分析を行うために、過去メッセージの履歴を参照して感情の時系列変化を解析するようにしてもよい。例えば、一定時間ごとに区切られた過去メッセージのセグメントごとに感情を分析し、セグメント間の感情の遷移をマルコフモデルなどを用いてモデル化することができる。これにより、ユーザの感情状態の動的な変化をより詳細に把握することができる。
【0035】
<動作>
図4は、管理サーバ2の動作を説明する図である。
【0036】
管理サーバ2は、ユーザとの間での送受信された過去メッセージを取得し(S301)、過去メッセージをメッセージ記憶部231に登録する(S302)。管理サーバ2は、ユーザに対応する過去メッセージを読み出し(S303)、古い過去メッセージを削除し、あるいは、要約して、送信メッセージを生成するプロンプトに含め(S304)、プロンプトを大規模言語モデルに与えて送信メッセージを生成し(S305)、生成した送信メッセージを送信する(アバターに喋らせる)(S306)。
【0037】
以上のようにして、本実施形態の情報処理システムによれば、ユーザとの間の過去のメッセージも参照しつつ、古いメッセージは忘れながら会話を行うようにすることができる。
【0038】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0039】
例えば、上述した管理サーバ2の各機能部による処理は、いずれの機能部により実行されるようにしてもよい。また、上述した各機能部の処理の一部を実行する異なる機能部を追加するようにしてもよい。また、管理サーバ2の機能部は、複数台のコンピュータが分散して備えるようにしてもよい。
【0040】
また、管理サーバ2の各記憶部が記憶する情報は、いずれの記憶部が記憶するようにしてもよい。すなわち、上述した複数の記憶部が記憶する情報を1つの記憶部により記憶するようにしてもよいし、上述したある記憶部が記憶する情報の一部を他の記憶部が記憶するようにしてもよい。
【0041】
<変形例1>
上記実施形態では、過去メッセージの削除割合や要約の長さを、全てのユーザに対して一律に設定する例を示したが、これに限定されない。ユーザごとに適応的に削除割合や要約の長さを変化させるようにしてもよい。
【0042】
例えば、メッセージ生成部212は、ユーザとの対話履歴の蓄積量に応じて、徐々に削除割合を増加させるようにしてもよい。具体的には、メッセージ生成部212は、ユーザとの過去メッセージの数が所定の閾値を超えた場合に、削除割合を増加させることができる。例えば、ユーザとの過去メッセージの数が1000件を超えた場合、削除割合を10%増加させ、2000件を超えた場合、削除割合をさらに10%増加させる、というように設定することができる。このように、ユーザとの対話が長期化するほど、古い過去メッセージを積極的に削除することで、ユーザに合わせて適応的に記憶量を制御することができる。
【0043】
また、メッセージ生成部212は、ユーザの応答の特徴に基づいて、削除割合や要約の長さを適応的に変化させるようにしてもよい。例えば、メッセージ生成部212は、ユーザの応答が短文が多い場合には、削除割合を増加させたり、要約の長さを短くしたりすることができる。これは、ユーザが簡潔な応答を好むと判断できるためである。一方、ユーザの応答が長文が多い場合には、削除割合を減少させたり、要約の長さを長くしたりすることができる。これは、ユーザが詳細な応答を望んでいると判断できるためである。このように、ユーザの応答の特徴に適応することで、ユーザの好みに合わせた対話を実現することができる。
【0044】
さらに、メッセージ生成部212は、ユーザの属性情報に基づいて、削除割合や要約の長さを適応的に変化させるようにしてもよい。例えば、メッセージ生成部212は、ユーザの年齢が高い場合には、削除割合を減少させたり、要約の長さを長くしたりすることができる。これは、高齢のユーザは記憶力が低下している傾向があるためである。一方、ユーザの年齢が低い場合には、削除割合を増加させたり、要約の長さを短くしたりすることができる。これは、若年のユーザは記憶力が高い傾向があるためである。このように、ユーザの属性情報を考慮することで、ユーザの特性に合わせた対話を実現することができる。
【0045】
<変形例2>
上記実施形態では、過去メッセージの削除や要約を、メッセージの内容によらず一律に行う例を示したが、これに限定されない。削除したメッセージの内容に応じて、要約の仕方を変えるようにしてもよい。
【0046】
例えば、要約部213は、削除対象の過去メッセージがユーザからの質問に対する回答であった場合、当該過去メッセージを削除せずに、詳細に要約することができる。具体的には、要約部213は、過去メッセージ中の疑問詞(例えば、「何」、「どこ」、「誰」、「いつ」、「なぜ」など)の有無や、文末の記号(例えば、「?」など)の有無に基づいて、ユーザからの質問を判定することができる。そして、ユーザからの質問に対する回答であると判定した過去メッセージについては、削除を行わずに、元の過去メッセージの8割以上の長さで要約メッセージを生成することができる。このように、ユーザからの質問に対する回答は、対話において重要度が高いと考えられるため、詳細に要約することで、情報の欠落を防ぐことができる。
【0047】
要約部213は、削除対象の過去メッセージが世間話的な内容である場合、当該過去メッセージを積極的に削除したり、大まかな要約にとどめたりすることができる。具体的には、要約部213は、過去メッセージ中の特定のキーワード(例えば、「天気」、「気分」、「雑談」など)の有無に基づいて、世間話的な内容を判定することができる。そして、世間話的な内容であると判定した過去メッセージについては、削除割合を高めに設定したり、要約メッセージの長さを元の過去メッセージの2割程度に抑えたりすることができる。このように、世間話的な内容は、対話において重要度が低いと考えられるため、積極的に削除したり、大まかに要約したりすることで、メッセージ生成部212での不要な参照を減らすことができる。
【0048】
また、要約部213は、削除対象の過去メッセージ中の重要なキーワードを抽出し、当該キーワードを含むように要約メッセージを生成することができる。具体的には、要約部213は、過去メッセージを形態素解析器で解析し、名詞や固有名詞、未知語などを重要なキーワードとして抽出することができる。そして、要約部213は、抽出したキーワードを可能な限り含むように要約メッセージを生成することができる。これにより、削除対象の過去メッセージに含まれる重要な情報を、要約メッセージに反映させることができる。
【0049】
<変形例3>
【0050】
感情推定の結果に基づいて、要約の仕方を変えるようにしてもよい。
【0051】
例えば、要約部213は、感情推定部214により推定された感情の種類に基づいて、要約メッセージの長さを変えることができる。具体的には、要約部213は、喜びや驚きなどのポジティブな感情が検出された過去メッセージについては、より詳細に要約することができる。例えば、要約部213は、喜びや驚きの感情が検出された過去メッセージについては、元の過去メッセージの6割以上の長さで要約メッセージを生成することができる。このように、ユーザがポジティブな感情を示した過去メッセージは、対話において重要度が高いと考えられるため、詳細に要約することで、ユーザの感情を適切に反映させることができる。
【0052】
要約部213は、悲しみや怒りなどのネガティブな感情が検出された過去メッセージについては、大まかな要約で済ませることができる。例えば、要約部213は、悲しみや怒りの感情が検出された過去メッセージについては、元の過去メッセージの3割程度の長さで要約メッセージを生成することができる。このように、ユーザがネガティブな感情を示した過去メッセージは、対話において詳細に覚えていない方が望ましいと考えられるため、大まかに要約することで、ネガティブな内容の影響を最小限に抑えることができる。
【0053】
要約部213は、感情推定部214により推定された感情の度合いに基づいて、要約メッセージの長さを連続的に変化させることができる。具体的には、要約部213は、過去メッセージから推定された感情の度合いが高いほど、要約メッセージを長くすることができる。例えば、要約部213は、喜びの度合いが0.8以上の過去メッセージについては、元の過去メッセージの8割以上の長さで要約メッセージを生成し、喜びの度合いが0.6以上0.8未満の過去メッセージについては、元の過去メッセージの6割以上の長さで要約メッセージを生成する、というように設定することができる。このように、感情の度合いに応じて要約メッセージの長さを連続的に変化させることで、ユーザの感情をより細やかに反映させることができる。
【0054】
要約部213は、感情推定部214により推定された感情の種類に基づいて、要約メッセージの文体を変えることができる。具体的には、要約部213は、喜びや驚きなどのポジティブな感情が検出された過去メッセージについては、よりくだけた文体で要約メッセージを生成することができる。例えば、「すごい!」、「やったね!」などの感嘆表現を含めることができる。一方、要約部213は、悲しみや怒りなどのネガティブな感情が検出された過去メッセージについては、より硬い文体で要約メッセージを生成することができる。例えば、「残念でした」、「申し訳ございません」などのフォーマルな表現を用いることができる。このように、感情の種類に応じて要約メッセージの文体を変えることで、ユーザの感情に寄り添った対話を実現することができる。
【0055】
<開示事項>
なお、本開示には、以下のような構成も含まれる。
[項目1]
ユーザとの間で送受信したメッセージである過去メッセージを前記ユーザに対応付けて記憶するメッセージ記憶部と、
対話相手の前記ユーザに対応する前記過去メッセ-ジと新規に前記ユーザに送信するメッセージである送信メッセージを生成する指示とを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて前記送信メッセージを生成するメッセージ生成部と、
を備え、
前記メッセージ生成部は、前記対話相手のユーザに対応する前記過去メッセージの一部を前記プロンプトから削除すること、
を特徴とする情報処理システム。
[項目2]
項目1に記載の情報処理システムであって、
削除される前記過去メッセージを要約した要約メッセージを作成する要約部を備え、
前記メッセージ生成部は、削除される前記過去メッセージに代えて前記要約メッセージを前記プロンプトに含めること、
を特徴とする情報処理システム。
[項目3]
項目2に記載の情報処理システムであって、
前記要約部は、古い前記過去メッセージほど短い前記要約メッセージを作成すること、
を特徴とする情報処理システム。
[項目4]
項目2に記載の情報処理システムであって、
前記要約部は、前記過去メッセージを要約する指示と前記過去メッセージとを含むプロンプトを前記大規模言語モデルに与えて前記要約メッセージを生成させること、
を特徴とする情報処理システム。
[項目5]
項目1に記載の情報処理システムであって、
前記第1のメッセージに基づいて前記ユーザの感情の度合を推定する感情推定部を備え、
前記メッセージ生成部は、前記感情の度合が所定値以上の前記過去メッセージについては削除しないこと、
を特徴とする情報処理システム。
[項目6]
ユーザとの間で送受信したメッセージである過去メッセージを前記ユーザに対応付けて記憶するステップと、
対話相手の前記ユーザに対応する前記過去メッセ-ジと新規に前記ユーザに送信するメッセージである送信メッセージを生成する指示とを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて前記送信メッセージを生成するステップと、
をコンピュータが実行し、
前記送信メッセージを生成するステップにおいて、前記コンピュータは、前記対話相手のユーザに対応する前記過去メッセージの一部を前記プロンプトから削除すること、
を特徴とする情報処理方法。
【符号の説明】
【0056】
1 ユーザ端末
2 管理サーバ
【要約】
【課題】効率的かつ効果的に会話のメッセージを生成することができるようにする。
【解決手段】情報処理システムであって、ユーザとの間で送受信したメッセージである過去メッセージをユーザに対応付けて記憶するメッセージ記憶部と、対話相手のユーザに対応する過去メッセ-ジと新規にユーザに送信するメッセージである送信メッセージを生成する指示とを含むプロンプトを大規模言語モデルに与えて送信メッセージを生成するメッセージ生成部と、を備え、メッセージ生成部は、対話相手のユーザに対応する過去メッセージの一部をプロンプトから削除すること、を特徴とする。
【選択図】
図1