(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】濃縮システム
(51)【国際特許分類】
B01D 61/12 20060101AFI20250116BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
B01D61/12
B01D61/58
(21)【出願番号】P 2019167255
(22)【出願日】2019-09-13
【審査請求日】2022-07-15
【審判番号】
【審判請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 佑己
(72)【発明者】
【氏名】合田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】中尾 崇人
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】深草 祐一
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10308524(US,B1)
【文献】特表2019-504763(JP,A)
【文献】特開2018-65114(JP,A)
【文献】特開昭48-13278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールを備える濃縮システムであって、
所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜を介して水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、逆浸透モジュールを、さらに備え、
前記濃縮原液が前記第1対象液として所定の圧力で前記第1室に流され、
さらに、前記濃縮システムの運転に関する少なくとも1つのパラメータをモニタリングする、モニタリング装置と、
前記モニタリング装置でモニタリングされた前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記濃縮システムの運転を制御する、制御機構と、を備え、
前記パラメータは、前記半透膜モジュールにおける前記第1対象液および前記第2対象液の少なくともいずれか
の温度
、pH、硬度、および、アルカリ度の少なくとも1つであり、
前記制御機構は、スケール成分の濃度が、スケールが析出しない範囲の最大濃度である許容濃度を超えないように、前記第1対象液および前記第2対象液の流量および圧力を制御する、濃縮システム。
【請求項2】
複数の前記半透膜モジュールを備える、請求項1に記載の濃縮システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濃縮システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、逆浸透(RO)法を用いた淡水化処理に必要なエネルギーを低下させること等を目的として、半透膜モジュールの第1室に高圧の対象液を流し、第2室に低圧の対象液を流して、第1室内の対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室内の対象液に移行させることで、第1室から濃縮された対象液を排出し、第2室から希釈された対象液を排出する膜分離方法(ブラインコンセントレーション)が検討されている(例えば、特許文献1:特開2018-1110号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブラインコンセントレーション(BC)に用いられる半透膜モジュールにおいて、半透膜は、対象液の膜分離処理量に応じて経時的に表面に濁質(例えば、微粒子、微生物、スケール成分)等の不純物が付着し、分離性能(濾過効率)の低下等の問題が生じる。このため、半透膜モジュールの半透膜に対して、不純物の付着の程度に応じた適切な頻度で、適切な時間の洗浄が実施されることが望ましい。
【0005】
また、半透膜の水透過量は、濃度(浸透圧)、温度、pH等のパラメータにより変化する。このような水透過量の変化により、スケールの析出等の不純物の半透膜への付着が増加する可能性もある。例えば、水透過量が想定よりも大きくなると、透過水の増加により、濃縮率が増加し、スケールの析出等が生じ易くなる可能性がある。このため、上記のパラメータを考慮した工程管理を行うことが望ましい。
【0006】
このように、BCを用いた濃縮システムの運転においては、様々な要因に応じた適切な管理を行うことが望まれる。
【0007】
したがって、本発明は、ブラインコンセントレーション(BC)を用いた濃縮システムの運転中において適切な管理を実施することのできる濃縮システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から濃縮液を排出し、前記第2室から希釈液を排出する、半透膜モジュールを備える濃縮システムであって、
さらに、前記濃縮システムの運転に関する少なくとも1つのパラメータをモニタリングする、モニタリング装置を備える、濃縮システム。
【0009】
(2) 複数の前記半透膜モジュールを備える、(1)に記載の濃縮システム。
【0010】
(3) 前記パラメータは、前記半透膜モジュールにおける前記第1対象液および前記第2対象液の少なくともいずれかの流量および圧力を含む、(1)または(2)に記載の濃縮システム。
【0011】
(4) 前記モニタリング装置でモニタリングされた前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、前記濃縮システムの運転を制御する、制御機構をさらに備える、(1)~(3)のいずれかに記載の濃縮システム。
【0012】
(5) 所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜を介して水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、逆浸透モジュールを、さらに備え、
前記濃縮原液が前記第1対象液として所定の圧力で前記第1室に流される、(1)~(4)のいずれかに記載の濃縮システム。
【発明の効果】
【0013】
本発明においては、濃縮システムにおける各種パラメータをモニタリングすることにより、ブラインコンセントレーション(BC)を用いた濃縮システムの運転中において適切な管理を実施することのできる濃縮システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態1の濃縮システムを示す模式図である。
【
図2】実施形態2の濃縮システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。
【0016】
<実施形態1>
図1を参照して、本実施形態の濃縮システムは、半透膜モジュール1と、モニタリング装置3と、を備える。
半透膜モジュール1は、半透膜10と、半透膜で仕切られた第1室11および第2室12と、を有し、濃縮原液を第1対象液として所定の圧力で第1室11に流し、第2対象液を所定の圧力(第1液の圧力)よりも低い圧力で第2室12に流すことで、第1室11内の第1対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室12内の第2対象液に移行させ、第1室11から濃縮液を排出し、第2室12から希釈液を排出する。
モニタリング装置3は、濃縮システムの運転に関する少なくとも1つのパラメータをモニタリングする。
【0017】
〔半透膜モジュール〕
複数の半透膜モジュール1は、半透膜10と、半透膜10で仕切られた第1室11および第2室12と、を有する。
【0018】
半透膜モジュール1の数は、特に限定されないが、
図1に示されるように濃縮システムが複数の半透膜モジュール1を備える場合、モジュール間を流れる流体が高圧のまま流れる等の理由により、開放可能な流路が少なくサンプリング等が難しいため、各流路に予めセンサーを設置しておき、センサーから得られる各種のパラーメータをモニタリングして工程管理を行うことが特に有効である。
【0019】
第1対象液は、所定の圧力で第1室11に流入し、第2対象液は、所定の圧力よりも低い圧力で第2室12に流入する。これにより、第1室11内の第1対象液に含まれる水は半透膜10を介して第2室12内の第2対象液に移行し、第1室11から濃縮液(濃縮された第1対象液)が排出され、第2室12から希釈液(希釈された第2対象液)が排出される。
【0020】
なお、第1対象液と第2対象液とは同じ液であってもよい。例えば、
図1に示されるように、所定の圧力を有する第1対象液の一部が、圧力低下装置4を通過することによって、上記所定の圧力よりも低い圧力で第2室に流されてもよい。
【0021】
圧力低下装置4としては、例えば、所定の圧力を有する第1対象液を、半透膜モジュールの第2室12への流路と他の流路に分けて流すことのできる分流弁、減圧器またはエネルギー回収装置などが挙げられる。ここで、圧力低下装置4(分流弁)は、第2室12に流される対象液を所定の圧力より低い圧力に減圧する機能を有している。なお、このような圧力低下装置を用いることで、例えば、半透膜モジュールの上流側の対象液の流路が1本で済むという利点がある。
【0022】
図1の場合、半透膜モジュール(半透膜モジュール1の各々)の第1室11と第2室12とに流入する対象液は、同じ液であるため、基本的に等しい浸透圧を有する。このため、RO法のように、対象液(高浸透圧液)と淡水との間の高い浸透圧差に逆らって逆浸透を起こさせるための高い圧力が必要なく、比較的低圧の加圧によって、対象液の膜分離を実施することができる(一部の対象液を希釈し、他の一部の対象液を濃縮することができる)。
【0023】
ただし、本実施形態において、半透膜モジュールの第2室12に供給される第2対象液は、第1室11に供給される第1対象液とは独立の液であってもよい。
【0024】
第1室11に流される第1対象液と第2室12に流される第2対象液とが異なる液であり、両者の間で濃度が異なる場合でも、その浸透圧差(絶対値)が第1室11に供給される第1対象液の圧力よりも小さければ、理論上、BCによる膜分離は実施可能である。この場合、第1室11(高圧側)に流入する第1対象液の浸透圧と第2室12(低圧側)に供給される第2対象液の浸透圧との差は、第1室11に供給される第1対象液の所定の圧力の30%以下であることが好ましい。
【0025】
また、半透膜モジュール1を用いたBCの工程は、
図1に示されるように(直列的に接続された)複数の半透膜モジュールを用いた多段の工程であることが好ましいが、1つの半透膜モジュールを用いた1段の工程であってもよい。
【0026】
半透膜モジュールでの膜分離処理であるブラインコンセントレーション(BC)において、半透膜モジュールの半透膜10を介して第1室11から第2室12に水を移行させるためには、第1室11に供給される第1対象液の圧力を、半透膜10の両側を流れる第1対象液と第2対象液との浸透圧差より大きくする必要がある。このため、1段の工程(1つの半透膜モジュール)で第1対象液を高度に濃縮するためには、それに応じた高い圧力での供給が必要になり、ポンプの稼動のためのエネルギーコストが増加する等のデメリットがある。このため、濃縮工程を段階的にし、BCに必要な圧力を低下させること等を目的として、BCを複数の半透膜モジュールを用いた多段の工程により実施してもよい。このような多段の工程によるBCについては、例えば、特開2018-069198号公報に開示されている。
【0027】
半透膜としては、例えば、逆浸透(RO)膜、正浸透(FO)膜、ナノろ過(NF)膜と呼ばれる半透膜が挙げられる。なお、半透膜として逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜を用いる場合、第1室11に供給される第1対象液の圧力は好ましくは6~10MPaである。
【0028】
通常、RO膜およびFO膜の孔径は約2nm以下であり、UF膜の孔径は約2~100nmである。NF膜は、RO膜のうちイオンや塩類の阻止率が比較的低いものであり、通常、NF膜の孔径は約1~2nmである。半透膜としてRO膜またはFO膜、NF膜を用いる場合、RO膜またはFO膜、NF膜の塩除去率は好ましくは90%以上である。
【0029】
半透膜を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。半透膜は、セルロース系樹脂およびポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料から構成されることが好ましい。
【0030】
セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロース系樹脂である。酢酸セルロース系樹脂は、殺菌剤である塩素に対する耐性があり、微生物の増殖を抑制できる特徴を有している。酢酸セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロースであり、耐久性の点から、より好ましくは三酢酸セルロースである。
【0031】
ポリスルホン系樹脂は、好ましくはポリエーテルスルホン系樹脂である。ポリエーテルスルホン系樹脂は、好ましくはスルホン化ポリエーテルスルホンである。
【0032】
半透膜10(および上述の逆浸透膜20)の形状としては、特に限定されないが、例えば、平膜または中空糸膜が挙げられる。なお、
図1では、半透膜10として平膜を簡略化して描いているが、特にこのような形状に限定されるものではない。なお、中空糸膜(中空糸型半透膜)は、スパイラル型半透膜などに比べて、モジュール当たりの膜面積を大きくすることができ、浸透効率を高めることができる点で有利である。
【0033】
また、半透膜モジュール(および上述の逆浸透モジュール2)の形態としては、特に限定されないが、中空糸膜を用いる場合は、中空糸膜をストレート配置したモジュールや、中空糸膜を芯管に巻きつけたクロスワインド型モジュールなどが挙げられる。平膜を用いる場合は、平膜を積み重ねた積層型モジュールや、平膜を封筒状として芯管に巻きつけたスパイラル型モジュールなどが挙げられる。
【0034】
具体的な中空糸膜の一例としては、全体がセルロース系樹脂から構成されている単層構造の膜が挙げられる。ただし、ここでいう単層構造とは、層全体が均一な膜である必要はなく、例えば、特開2012-115835号公報に開示されるように、外周表面近傍に緻密層を有し、この緻密層が実質的に中空糸膜の孔径を規定する分離活性層となっていることが好ましい。
【0035】
具体的な中空糸膜の別の例としては、支持層(例えば、ポリフェニレンオキサイドからなる層)の外周表面にポリフェニレン系樹脂(例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン)からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。また、他の例として、支持層(例えば、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンからなる層)の外周表面にポリアミド系樹脂からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。
【0036】
なお、中空糸膜を用いた半透膜モジュールにおいて、通常は、中空糸膜の外側が第1室となる。中空糸膜の内側(中空部)を流れる流体を加圧しても、圧力損失が大きくなり加圧が十分に働き難いためである。
【0037】
〔モニタリング装置〕
モニタリング装置3は、濃縮システムの運転に関する少なくとも1つのパラメータをモニタリングする。
【0038】
モニタリング装置3は、例えば、少なくとも1つのセンサ5によって取得された各種パラメータ(測定値)の情報を取得することができるように構成されている。例えば、モニタリング装置3は、有線通信または無線通信によりセンサ5と通信可能である。
【0039】
センサ5は、例えば、濃縮システムを構成する流路内に設けられる。センサ5は、少なくともBCに用いられる半透膜モジュール1の第1室11および/または第2室12の流入側および/または排出側の流路に設置されていることが好ましい。
【0040】
モニタリングされるパラメータとしては、例えば、流量、圧力、差圧、温度、TDS(総溶解固形物)、電気伝導率、TOC(全有機炭素)、COD(化学的酸素要求量)、BOD(生物化学的酸素要求量)、SS(浮遊物質)、DO(溶存酸素)、残留塩素濃度、ORP(酸化還元電位)、pH、硬度、アルカリ度等が挙げられる。センサ5としては、例えば、これらのパラメータの測定機器が挙げられる。
【0041】
パラメータは、半透膜モジュール1における第1対象液および第2対象液の少なくともいずれかの流量および圧力を含むことが好ましい。第1対象液の流量および圧力は、第1室11の流入側(入口)および排出側(出口)の流量および圧力であることが好ましい。第2対象液の流量は、第2室12の流入側(入口)および排出側(出口)の流量および圧力であることが好ましい。
【0042】
モニタリング装置3は、例えば、これらのセンサ5(測定機器)によって得られるパラメータ(測定値)を定期的または連続的に取得する。
【0043】
モニタリング装置3によって、濃縮システムにおける各種パラメータをモニタリングすることにより、ブラインコンセントレーション(BC)を用いた濃縮システムの運転中において適切な管理を実施することができる。
【0044】
濃縮システムにおける各種パラメータをモニタリングすることにより、例えば、洗浄、殺菌等の処理を効率的に実施し、トラブルを判定または予測し、トラブルに早急に対応することが可能となり、濃縮システムを安定的に運転することが可能となる。
【0045】
<実施形態2>
図2を参照して、本実施形態の濃縮システムは、さらに、制御機構6を備える。
【0046】
〔制御機構〕
制御機構6は、モニタリング装置3でモニタリングされた前記少なくとも1つのパラメータに基づいて、濃縮システムの運転を制御する。制御機構6は、例えば、半透膜モジュール1における第1対象液および第2対象液の少なくともいずれかの流量および圧力を制御することが好ましい。
【0047】
制御機構6による制御としては、例えば、フィードバック制御、トラブルの検出などが挙げられる。
【0048】
フィードバック制御としては、例えば、制御部で、透過水の流量が予め設定された目標流量値となるように、濃縮システムの系内の物理量(パラメータ)を用いて、ポンプ(ポンプ1a、高圧ポンプ2a等)の最適な駆動周波数を演算し、値信号をポンプのインバータに出力して、ポンプの駆動周波数を制御することが挙げられる。
【0049】
また、例えば、半透膜モジュール1の第1室11内で濃縮される第1対象液において、スケール成分(炭酸水素カルシム等)が許容濃度を超えないように、濃縮倍率すなわち透過水の流量(〔第1室11の入口の流量〕-〔第1室11の出口の流量〕)を調整するために、第1対象液および第2対象液の流量や圧力等を制御することが挙げられる。第1対象液におけるスケール成分の許容濃度(炭酸カルシウム等のスケールが析出しない範囲の最大濃度)は、例えば、第1対象液のpH、硬度、アルカリ度、温度等のパラメータ情報と、スケール(炭酸カルシウム等)の溶解度や各種スケール析出判定式に基づいて、演算することができる。
【0050】
トラブルの検出としては、例えば、半透膜10およびRO膜20の破れ等の半透膜モジュール1およびROモジュール2の破損によるパラメータの急激な変化が検出された場合に、警告を発するようにする制御が挙げられる。また、半透膜モジュールの半透膜の汚染度合の指標となるパラメータに基づいて、洗浄の頻度、時間、程度などを制御することも挙げられる。
【0051】
〔RO+BC〕
BCを用いる濃縮システムとしては、
図2に示されるように、逆浸透(RO)モジュール2から排出される濃縮原液をさらに高圧で運転可能な半透膜モジュールの第1室に流して、上記のブラインコンセントレーション(BC)により濃縮原液をRO法よりも超高圧条件でさらに濃縮する濃縮システムも検討されている。
【0052】
逆浸透モジュール2は、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜20を介して水を分離および回収し、濃縮された原液である濃縮原液を排出する。
【0053】
図2を参照して、逆浸透(RO)モジュール2の上流側に、高圧ポンプ2aを備える。高圧ポンプ2aは、原液を所定の圧力に昇圧してROモジュール2の第1室21に供給する。ROモジュール2は、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透(RO)膜20を介して水(透過水)を第2室22側へ分離することで、濃縮された原液である濃縮原液を第1室21から排出し、水を第2室22から排出する。
【0054】
本明細書において、「原液」は、ROモジュール2に供給される水を含む液体であれば特に限定されず、溶液および懸濁液のいずれであってもよい。原液としては、例えば、海水、河川水、汽水、排水などが挙げられる。排水としては、例えば、工業排水、生活排水、油田またはガス田の排水などが挙げられる。
【0055】
なお、高圧ポンプ2aの上流側には、原液中に含まれる濁質(微粒子、微生物、スケール成分等)を除去するために、図示しない前処理装置を備えていてもよい。前処理装置としては、例えば、砂濾過装置やUF(Ultrafiltration:限外ろ過)膜、MF(Microfiltration:精密ろ過)膜等を用いた濾過装置や、塩素、次亜塩素酸ナトリウム、凝集剤、スケール防止剤等の添加装置や、pHの調整装置などが挙げられる。なお、スケール防止剤とは、液中のスケール成分がスケールとして析出することを防止または抑制する作用を有する添加剤である。スケール防止剤としては、例えば、ポリリン酸系、ホスホン酸系、ホスフィン酸系、ポリカルボン酸系などの化合物が挙げられる。
【0056】
本実施形態において、ROモジュール2(第1室21)の下流側に、半透膜モジュール1が接続される。半透膜モジュール(半透膜モジュール1の各々)の第1室11に供給される第1対象液は、ROモジュール2の第1室21から排出される濃縮原液である。ROモジュール2から排出される濃縮原液は、高い圧力を有しているため、その圧力によって半透膜モジュール側へ送られる。
【0057】
図2に示されるようなRO法とBC法を組み合わせた濃縮システムにおいては、高い濃縮率での濃縮が実施されるため、半透膜の表面にスケールの析出等の不純物の付着が生じやすいため、各種のパラメータをモニタリングして工程管理を行うことが特に有効である。
【0058】
なお、本実施形態において、濃縮システムはエネルギー回収装置7をさらに備えていてもよい。
図2に示されるようにエネルギー回収装置7を設置した場合、半透膜モジュール1の第1室11から排出される液(濃縮された第1対象液)の圧力エネルギーを回収して、ROモジュール2に供給される原液に付与することにより、高圧ポンプ2aに必要なエネルギーを削減することができる。
【0059】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0060】
1 半透膜モジュール、1a ポンプ、10 半透膜、11 第1室、12 第2室、2 逆浸透(RO)モジュール、2a 高圧ポンプ、20 逆浸透(RO)膜、21 第1室、22 第2室、3 モニタリング装置、4 圧力低下装置、5 センサー、6 制御機構、7 エネルギー回収装置。