IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】アスファルト改質剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 95/00 20060101AFI20250116BHJP
   C08L 67/02 20060101ALI20250116BHJP
   C08G 63/127 20060101ALI20250116BHJP
   E01C 7/18 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C08L95/00
C08L67/02
C08G63/127
E01C7/18
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020206149
(22)【出願日】2020-12-11
(65)【公開番号】P2022093064
(43)【公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏木 啓孝
(72)【発明者】
【氏名】福利 憲廣
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-096799(JP,A)
【文献】国際公開第2020/066651(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109824938(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101921520(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G63
C08L
E01C7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸成分由来の構成単位及びアルコール成分由来の構成単位からなり、かつ、次の(I)及び(II)の条件を満たすポリエステル樹脂からなるアスファルト改質剤。
(I)前記カルボン酸成分が、芳香族ジカルボン酸及び3価以上6価以下の芳香族多価カルボン酸から選択される少なくとも1種の芳香族カルボン酸成分を、カルボン酸成分中80モル%以上含有する
(II)前記アルコール成分が分岐鎖脂肪族ジオール成分及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族ジオール成分から選択される少なくとも1種を、アルコール成分中60モル%以上含有する
【請求項2】
アスファルトを含むアスファルト組成物、または、アスファルト及び骨材を含むアスファルト混合物に配合し、耐水性を向上するために使用される、請求項1に記載のアスファルト改質剤。
【請求項3】
前記芳香族カルボン酸成分が芳香族ジカルボン酸を含む、請求項1又は2に記載のアスファルト改質剤。
【請求項4】
前記アルコール成分の平均炭素数が3.0以上8.5以下である、請求項1~3のいずれかに記載のアスファルト改質剤。
【請求項5】
前記アルコール成分が1,2-プロパンジオールを含む、請求項1~4のいずれかに記載のアスファルト改質剤。
【請求項6】
前記ポリエステル樹脂の180℃における溶融粘度が、0.1Pa・s以上50Pa・s以下である、請求項1~5のいずれかに記載のアスファルト改質剤。
【請求項7】
アスファルトと請求項1~6のいずれかに記載のアスファルト改質剤とを含むアスファルト組成物。
【請求項8】
アスファルトと、請求項1~6のいずれかに記載のアスファルト改質剤とを混合する工程を有する、アスファルト組成物の製造方法。
【請求項9】
骨材と請求項7に記載のアスファルト組成物とを含むアスファルト混合物。
【請求項10】
加熱した骨材、アスファルト、及び請求項1~6のいずれかに記載のアスファルト改質剤を混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する、道路舗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルト改質剤、アスファルト組成物、アスファルト混合物、それらの製造方法、及び道路舗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車道や駐車場、貨物ヤード、歩道等の舗装には、敷設が比較的容易であることから、アスファルト混合物を用いるアスファルト舗装が行われている。このアスファルト舗装は、骨材をアスファルトで結合したアスファルト混合物によって路面が形成されているので、舗装道路は良好な硬度や耐久性を有している。
【0003】
特許文献1は、瀝青に対する溶解性に優れるとともに、タフネス、テナシティーなどに優れ、かつ、低温特性や貯蔵安定性が改善された瀝青組成物として、ビニル芳香族炭化水素を主体とする重合体ブロック(A)と共役ジエンを主体とする重合体ブロック(B)とを特定量含有するブロック共重合体と、多価高級カルボン酸と多価アルコールとを縮重合して得られる油溶性ポリエステルとを有効成分とする瀝青改質材が開示されている。
特許文献2は、乾燥強度、水浸漬強度、及び石油浸漬強度に優れる道路舗装用アスファルト組成物として、アスファルト、特定量のポリエステル樹脂、及び骨材を含有し、前記ポリエステル樹脂が、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物を65モル%以上含むアルコール成分由来の構成単位と、テレフタル酸及びイソフタル酸から選ばれる1種以上を50モル%以上含むカルボン酸成分由来の構成単位とを有するポリエステルであって、特定の軟化点と水酸基価を有する、道路舗装用アスファルト組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平08-311299号公報
【文献】国際公開第2017/125421号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
雨水などに暴露されたアスファルト舗装は、耐水性が不十分であると、水分がアスファルトと骨材との間に侵入しそこに滞留し、水分が骨材表面のアスファルト被膜を剥がし、舗装の砂利化の原因となる問題がある。
例えば特許文献1~2に開示された従来技術では、十分な耐水性を発揮させるためには、十分な養生時間が必要である。しかし、長い養生時間は、作業効率の悪化の懸念がある。
本発明は、耐水性の発現が早いアスファルト組成物及びアスファルト混合物を得ることができるアスファルト改質剤、アスファルト組成物、アスファルト混合物、それらの製造方法、並びに道路舗装方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[6]に関する。
[1]カルボン酸成分由来の構成単位及びアルコール成分由来の構成単位からなり、かつ、次の(I)及び(II)の条件を満たすポリエステル樹脂からなるアスファルト改質剤。
(I)前記カルボン酸成分が芳香族カルボン酸成分を含有する
(II)前記アルコール成分が分岐鎖脂肪族アルコール成分及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコール成分から選択される少なくとも1種を含有する
[2]アスファルトと上記[1]に記載のアスファルト改質剤とを含むアスファルト組成物。
[3]アスファルトと上記[1]に記載のアスファルト改質剤とを混合する工程を有する、アスファルト組成物の製造方法。
[4]骨材と上記[2]に記載のアスファルト組成物とを含むアスファルト混合物。
[5]加熱した骨材、アスファルト、及び上記[1]に記載のアスファルト改質剤を混合する工程を含む、アスファルト混合物の製造方法。
[6]上記[4]に記載のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する、道路舗装方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐水性の発現が早いアスファルト組成物及びアスファルト混合物を得ることができるアスファルト改質剤、アスファルト組成物、アスファルト混合物、それらの製造方法、並びに道路舗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[アスファルト改質剤]
本発明のアスファルト改質剤は、カルボン酸成分由来の構成単位及びアルコール成分由来の構成単位からなり、かつ、次の(I)及び(II)の条件を満たすポリエステル樹脂からなる。
(I)前記カルボン酸成分が芳香族カルボン酸成分を含有する
(II)前記アルコール成分が分岐鎖脂肪族アルコール成分及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコール成分から選択される少なくとも1種を含有する
【0009】
本発明者らは、カルボン酸成分及びアルコール成分が特定の条件を満たすポリエステル樹脂からなるアスファルト改質剤をアスファルト組成物及びアスファルト混合物に含有させることにより、耐水性の発現速度に優れるアスファルト組成物及びアスファルト混合物が得られることを見出した。
【0010】
本発明の効果が得られる理由は定かではないが、以下のように考えられる。
アスファルトの骨材への被膜速度を上げ、耐水性の発現を早めるためには、アスファルト中の骨材吸着成分であるアスファルテンの骨材界面への移動速度を速くすることが重要であると考えられる。一般に、ポリエステル樹脂はアスファルトと比較して骨材との親和力が高く、骨材界面への移動速度が速い。本発明のアスファルト改質剤を構成するポリエステル樹脂は、電子吸引性の芳香環を有する芳香族カルボン酸由来の構造を含んでおり、この部分がアスファルテン分子の電子供与性の芳香環と効果的に相互作用し構造体を形成すると考えられる。
更に、分岐鎖脂肪族アルコール成分及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコール成分から選択される少なくとも一種のアルコール成分を含むことで、ポリエステル樹脂の分子鎖とアスファルテン分子の絡み合いが強固なものになり、一旦形成された構造体の解離を抑制すると推定される。
以上の結果、骨材界面にアスファルトの被膜が早く形成され、耐水性の発現を早めることができると考えられる。そして、被膜の強度が高温での浸水条件でも保たれるため、耐水性が長期にわたり発揮されると考えられる。
【0011】
本明細書における各種用語の定義等を以下に示す。
ポリエステル樹脂中、「カルボン酸成分由来の構成単位」とは、カルボン酸成分のカルボキシル基からヒドロキシ基を除いた構造を意味し、「アルコール成分由来の構成単位」とは、アルコール成分のヒドロキシ基から水素原子を除いた構造を意味する。
「カルボン酸成分」とは、そのカルボン酸のみならず、反応中に分解して酸を生成する無水物、及びカルボン酸のアルキルエステル(例えば、アルキル基の炭素数1以上3以下)も含む概念である。カルボン酸成分がカルボン酸のアルキルエステルである場合、カルボン酸成分の炭素数には、エステルのアルコール残基であるアルキル基の炭素数を算入しない。
「2級ヒドロキシ基」とは、ヒドロキシ基が結合する炭素原子が、2個の炭素原子が結合した第2級炭素原子であるヒドロキシ基をいう。
【0012】
<ポリエステル樹脂>
ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分とアルコール成分とを重縮合反応させることにより得られる。以下、カルボン酸成分、アルコール成分、及びポリエステル樹脂の物性等について説明する。
【0013】
(カルボン酸成分)
カルボン酸成分は、耐水性の発現を早める観点から、少なくとも1種の芳香族カルボン酸成分を含有する。
【0014】
芳香族カルボン酸としては、芳香族モノカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、3価以上6価以下の芳香族多価カルボン酸が挙げられる。これらの芳香族カルボン酸は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。芳香族カルボン酸は、好ましくは芳香族ジカルボン酸を含む。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸が挙げられ、中でも、好ましくはテレフタル酸及びイソフタル酸から選択される1種以上、より好ましくはテレフタル酸である。
3価以上6価以下の芳香族多価カルボン酸としては、トリメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等が挙げられ、中でも、好ましくはトリメリット酸である。
芳香族カルボン酸成分の含有量は、耐水性の発現を早める観点から、カルボン酸成分100モル%中、好ましくは10モル%以上、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは25モル%以上、更に好ましくは30モル%以上であり、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0015】
本発明の好適態様の1つは、カルボン酸成分が芳香族カルボン酸成分のみからなる。
また、本発明の別の好適態様では、カルボン酸成分は、芳香族カルボン酸成分とは異なる他のカルボン酸成分を含有していてもよい。他のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸;ステアリン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の脂肪族モノカルボン酸が挙げられる。これらの他のカルボン酸は、1種又は2種以上を用いてもよい。
本発明の好適態様の1つにおいて、カルボン酸成分中の芳香族カルボン酸成分の含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。
本発明の好適態様の1つにおいて、カルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸成分の含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。
【0016】
(アルコール成分)
アルコール成分は、耐水性の発現を早める観点から、分岐鎖脂肪族アルコール成分及び2級ヒドロキシル基含有直鎖脂肪族アルコール成分から選択される少なくとも1種を含有する。
【0017】
分岐鎖脂肪族アルコール及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコールは、耐水性の発現を早める観点から、炭素数が、好ましくは3以上であり、そして、好ましくは8.5以下、より好ましくは8.0以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは6以下である。
分岐鎖脂肪族アルコール及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコールの具体例としては、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール等の分岐鎖脂肪族ジオール又は2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族ジオールが挙げられる。中でも、好ましくは2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族ジオールであり、より好ましくは1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール等の1,2-アルカンジオールであり、更に好ましくは1,2-プロパンジオールである。これらのアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
分岐鎖脂肪族アルコール及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコール成分の合計含有量は、耐水性の発現を早める観点から、アルコール成分100モル%中、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは20モル%以上、更に好ましくは40モル%以上、更に好ましくは50モル%以上、更に好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であり、そして、100モル%以下である。
【0018】
本発明の好適態様の1つは、アルコール成分が分岐鎖脂肪族アルコール及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコール成分のみからなる。
本発明の別の好適態様では、アルコール成分は、分岐鎖脂肪族アルコール及び2級ヒドロキシ基含有直鎖脂肪族アルコール成分とは異なる他のアルコール成分を含有していてもよい。他のアルコール成分としては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等のα,ω-脂肪族ジオール成分;ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の3価以上のアルコール成分等が挙げられる。これらの他のアルコール成分は、1種又は2種以上を用いてもよい。
【0019】
アルコール成分の平均炭素数は、耐水性の発現を早める観点から、好ましくは3.0以上であり、そして、好ましくは8.5以下であり、好ましくは8.0以下、より好ましくは7以下、更に好ましくは6以下である。
【0020】
(アルコール成分に対するカルボン酸成分のモル比)
アルコール成分のヒドロキシ基に対するカルボン酸成分のカルボキシ基の当量比(COOH基/OH基)は、耐水性の発現を早める観点から、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.6以上、更に好ましくは0.7以上であり、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、更に好ましくは1.1以下である。
【0021】
(ポリエステル樹脂の物性)
ポリエステル樹脂の酸価は、骨材への吸着を促進し、耐水性の発現を早める観点から、好ましくは0.5mgKOH/g以上、より好ましくは1mgKOH/g以上、更に好ましくは1.5mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは40mgKOH/g以下、より好ましくは30mgKOH/g以下、更に好ましくは20mgKOH/g以下である。
ポリエステル樹脂のガラス転移点(T)は、上記と同様の観点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは25℃以上、更に好ましくは30℃以上であり、そして、好ましくは100℃以下、より好ましくは95℃以下、更に好ましくは90℃以下である。
ポリエステル樹脂の180℃における溶融粘度は、上記と同様の観点から、好ましくは0.1Pa・s以上、より好ましくは0.5Pa・s以上、更に好ましくは1Pa・s以上であり、そして、好ましくは50Pa・s以下、より好ましくは40Pa・s以下、更に好ましくは30Pa・s以下である。
ポリエステル樹脂の酸価、ガラス転移点及び溶融粘度は、実施例に記載の方法により測定することができる。なお、酸価、ガラス転移点及び溶融粘度は、原料モノマー組成、分子量、触媒量又は反応条件により調整することができる。
【0022】
(ポリエステル樹脂の製造方法)
ポリエステル樹脂の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上述したアルコール成分及びカルボン酸成分を重縮合することにより製造することができる。
重縮合反応の温度は、特に限定されるものではないが、反応性を高め、耐水性の発現を早める観点から、好ましくは160℃以上260℃以下である。
【0023】
重縮合反応には、反応速度の観点から、ジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)等のSn-C結合を有していない錫(II)化合物をエステル化触媒として使用することができる。エステル化触媒の使用量は、反応速度の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.01質量部以上、より好ましくは0.1質量部以上、更に好ましくは0.2質量部以上であり、そして、好ましくは1.5質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下、更に好ましくは0.6質量部以下である。
重縮合反応には、エステル化触媒に加えて、反応速度の観点から、没食子酸等のピロガロール化合物を助触媒として使用することができる。助触媒の使用量は、反応速度の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分との総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.15質量部以下、より好ましくは0.10質量部以下、更に好ましくは0.05質量部以下である。
重縮合反応には、触媒に加えて、反応速度の観点から、ターシャルブチルカテコール等の重合禁止剤を使用することができる。重合禁止剤の使用量は、反応速度の観点から、アルコール成分とカルボン酸成分の総量100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上であり、そして、好ましくは0.5質量部以下、より好ましくは0.2質量部以下である。
【0024】
本発明のアスファルト改質剤は、例えばアスファルトと混合し、アスファルト組成物を得るために使用することができる。得られたアスファルト組成物に、骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用することができる。本発明のアスファルト改質剤は、骨材を含むアスファルト混合物に配合するための改質剤として好適に使用することができる。
【0025】
[アスファルト組成物]
本発明のアスファルト組成物は、アスファルトと上記アスファルト改質剤とを、含有する。アスファルト改質剤の含有量は、耐水性の発現を早める観点から、前記アスファルト100質量部に対し、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上、更に好ましくは1質量部以上、更に好ましくは2質量部以上であり、そして、作業性の観点から、好ましくは30質量部以下であり、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。
【0026】
<アスファルト>
アスファルトとしては、種々のアスファルトが使用できる。例えば舗装用石油アスファルトであるストレートアスファルトの他、改質アスファルトが挙げられる。改質アスファルトとしては、ブローンアスファルト;熱可塑性エラストマー、熱可塑性樹脂等の高分子材料で改質したポリマー改質アスファルト等が挙げられる。ストレートアスファルトとは、原油を常圧蒸留装置、減圧蒸留装置等にかけて得られる残留瀝青物質のことである。また、ブローンアスファルトとは、ストレートアスファルトと重質油との混合物を加熱し、その後空気を吹き込んで酸化させることによって得られるアスファルトを意味する。アスファルトは、ストレートアスファルト及びポリマー改質アスファルトから選択されることが好ましく、アスファルト舗装の耐久性の観点からは改質アスファルトがより好ましく、汎用性の観点からはストレートアスファルトがより好ましい。
【0027】
(熱可塑性エラストマー)
ポリマー改質アスファルトにおける熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン/ブタジエンブロック共重合体(以下、「SB」ともいう)、スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」ともいう)、スチレン/ブタジエンランダム共重合体(以下、「SBR」ともいう)、スチレン/イソプレンブロック共重合体(以下、「SI」ともいう)、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体(以下、「SIS」ともいう)、スチレン/イソプレンランダム共重合体(以下、「SIR」ともいう)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸エステル共重合体、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン共重合体、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン共重合体、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、イソブチレン/イソプレン共重合体、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、上記以外の合成ゴム、及び天然ゴムから選択される少なくとも1種が挙げられる。
【0028】
これらの中でも、熱可塑性エラストマーとしては、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくはSB、SBS、SBR、SI、SIS、SIR、及びエチレン/アクリル酸エステル共重合体から選択される少なくとも1種、より好ましくはSB、SBS、SBR、SI、SIS、及びSIRから選択される少なくとも1種、更に好ましくはSBR及びSBSから選択される少なくとも1種である。
ポリマー改質アスファルト中の熱可塑性エラストマーの含有量は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、そして、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましく5質量%以下である。
【0029】
アスファルト組成物中におけるアスファルト含有量は、アスファルト性能を発揮する観点から、好ましくは60質量%以上、より好ましくは65質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、保存安定性の観点から、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下、更に好ましくは97質量%以下である。
【0030】
[アスファルト組成物の製造方法]
本発明のアスファルト組成物の製造方法は、アスファルトと、上記アスファルト改質剤とを混合する工程を有する。すなわち、本発明のアスファルト組成物は、アスファルト及び上記アスファルト改質剤を配合してなるアスファルト組成物である。
アスファルト組成物は、アスファルトを加熱溶融し、アスファルト改質剤を添加し、通常用いられている混合機にて、各成分が均一に分散するまで撹拌混合することにより得られる。通常用いられている混合機としては、ホモミキサー、ディゾルバー、パドルミキサー、リボンミキサー、スクリューミキサー、プラネタリーミキサー、真空逆流ミキサー、ロールミル、二軸押出機等が挙げられる。
【0031】
アスファルトとアスファルト改質剤との混合温度は、アスファルト中にアスファルト改質剤を構成するポリエステル樹脂を均一に分散させる観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、そして、好ましくは230℃以下、更に好ましくは210℃以下、より好ましくは200℃以下である。
また、アスファルトとアスファルト改質剤との混合時間は、効率的にアスファルト中にアスファルト改質剤を構成するポリエステル樹脂を均一に分散させる観点から、好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上、更に好ましくは2分間以上であり、そして、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分間以下である。
本発明のアスファルト組成物は、バインダー組成物であり、例えば、該アスファルト組成物に、骨材を添加して、アスファルト混合物とした後に、舗装に使用できる。すなわち、本発明のアスファルト組成物は、舗装用として好適であり、特に道路舗装用として好適である。
【0032】
[アスファルト混合物]
本発明のアスファルト混合物は、骨材と上記アスファルト組成物を含む。つまり、アスファルト混合物は、少なくとも骨材、アスファルト、及び上記アスファルト改質剤を含む。
【0033】
アスファルト混合物中のアスファルト改質剤の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.10質量%以上、更に好ましくは0.15質量%以上であり、そして、好ましくは4質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
アスファルト混合物中のアスファルトの含有量は、好ましくは2.5質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは3.5質量%以上、更に好ましくは4質量%以上、そして、好ましくは10質量%以下、より好ましくは9質量%以下、更に好ましくは8質量%以下、更に好ましくは7質量%以下である。
【0034】
<骨材>
骨材としては、例えば、砕石、玉石、砂利、砂、再生骨材、セラミックス等を任意に選択して用いることができる。また、骨材としては、粒径2.36mm以上の粗骨材、粒径2.36mm未満の細骨材のいずれも使用することができる。
粗骨材としては、例えば、粒径範囲2.36mm以上4.75mm未満の砕石、粒径範囲4.75mm以上12.5mm未満の砕石、粒径範囲12.5mm以上19mm未満の砕石、粒径範囲19mm以上31.5mm未満の砕石が挙げられる。
細骨材は、好ましくは粒径0.075mm以上2.36mm未満の細骨材である。細骨材としては、例えば、川砂、丘砂、山砂、海砂、砕砂、細砂、スクリーニングス、砕石ダスト、シリカサンド、人工砂、ガラスカレット、鋳物砂、再生骨材破砕砂が挙げられる。
上記の粒径はJIS A5001:2008に規定される値である。
これらの中でも、粗骨材と細骨材との組合せが好ましい。
【0035】
なお、細骨材には、粒径0.075mm未満のフィラーが含まれていてもよい。フィラーとしては、砂、フライアッシュ、石灰石粉末等の炭酸カルシウム、消石灰等が挙げられる。これらの中でも、アスファルト舗装の強度向上の観点から、炭酸カルシウムが好ましい。
フィラーの平均粒径は、アスファルト舗装の強度向上の観点から、好ましくは0.001mm以上であり、そして、好ましくは0.05mm以下、より好ましくは0.03mm以下、更に好ましくは0.02mm以下である。
ここで、平均粒径とは、体積累積50%の平均粒径を意味する。
【0036】
粗骨材と細骨材との質量比率は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは10/90以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは20/80以上であり、そして、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、更に好ましくは70/30以下である。
【0037】
アスファルト混合物中の骨材の含有量は、好ましくは90質量%以上であり、好ましくは92質量%以上であり、好ましくは93質量%以上であり、また、好ましくは98質量%以下であり、好ましくは97質量%以下であり、好ましくは96質量%以下である。
【0038】
アスファルト混合物における好適な配合例として、以下の(1)~(3)が挙げられる。
(1)30容量%以上45容量%未満の粗骨材と、30容量%以上50容量%以下の細骨材と、5容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む細粒度アスファルト。
(2)一例のアスファルト混合物は、例えば、45容量%以上70容量%未満の粗骨材と、20容量%以45容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含む密粒度アスファルト。
(3)70容量%以上80容量%以下の粗骨材と、10容量%以上20容量%以下の細骨材と、3容量%以上10容量%以下のアスファルト組成物とを含むポーラスアスファルト。
なお、従来の骨材とアスファルトを含むアスファルト混合物におけるアスファルトの配合割合については、通常、公益社団法人日本道路協会発行の「舗装設計施工指針」に記載されている「アスファルト組成物の配合設計」から求められる最適アスファルト量に従って用いられている。
本発明においては、上記の最適アスファルト量が、アスファルト及びアスファルト改質剤の合計量に相当する。ただし、「舗装設計施工指針」に記載の方法に限定する必要はなく、他の方法によって決定してもよい。
【0039】
<添加剤>
本発明のアスファルト混合物には、上記の骨材、アスファルト及びアスファルト改質剤に加え、必要に応じて、従来、アスファルト混合物に慣用されている各種添加剤、例えば、造膜剤、増粘安定剤、乳化剤等を添加してもよい。
具体的には、鉱物質粉末、ガラス繊維等の充填剤や補強剤、鉱物質の骨材、ベンガラ、二酸化チタン等の顔料、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、低分子量ポリエチレンワックス等のワックス類、アゾジカルボンアミド等の発泡剤、アタクチックポリプロピレン、エチレン-エチルアクリレート共重合体等のポリオレフィン系又は低分子量のビニル芳香族系熱可塑性樹脂、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレン-イソブチレンゴム、ポリペンテナマーゴム、スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、スチレン-イソプレン系ブロック共重合体、水素化スチレン-ブタジエン系ブロック共重合体、水素化スチレン-イソプレン系ブロック共重合体等の合成ゴムが挙げられる。
これらの合計添加量は、アスファルト混合物全体に対して、好ましくは50質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0040】
[アスファルト混合物の製造方法]
本発明のアスファルト混合物の製造方法は、アスファルト、加熱した骨材、及びアスファルト改質剤を同時に又は順不同で混合する工程を含む。すなわち、本発明のアスファル混合物は、アスファルト、骨材及び前述のアスファルト改質剤を配合してなるアスファルト混合物である。
アスファルト混合物の具体的な製造方法としては、従来のプラントミックス方式、プレミックス方式等といわれるアスファルト混合物の製造方法が挙げられる。いずれも加熱した骨材にアスファルト及びアスファルト改質剤を添加する方法である。
上記混合する工程は、好ましくは以下の(i)~(iii)のいずれかである。
(i)加熱した骨材とアスファルトとを混合して混合物を得た後、該混合物とアスファルト改質剤とを混合する方法。
(ii)加熱した骨材に、アスファルト及びアスファルト改質剤を同時に添加及び混合する方法。
(iii)加熱した骨材に、事前に混合したアスファルトとアスファルト改質剤との混合物を添加及び混合する方法。
これらの中でも、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは(i)の方法である。
【0041】
(i)~(iii)の方法において、加熱した骨材の温度は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
【0042】
骨材とアスファルト及び/又はアスファルト改質剤との混合温度は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、更に好ましくは170℃以上であり、アスファルトの熱劣化を防止する観点から、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、更に好ましくは200℃以下である。
骨材とアスファルト及び/又はアスファルト改質剤との混合時間は、特に限定されず、好ましくは30秒間以上、より好ましくは1分間以上、更に好ましくは2分間以上であり、そして、好ましくは2時間以下、より好ましくは1時間以下、更に好ましくは30分間以下である。
【0043】
アスファルト混合物の製造方法は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、アスファルト、骨材、及びアスファルト改質剤を混合した後、得られたアスファルト混合物を上記の混合温度又は該混合温度以上の温度で保持する工程を有することが好ましい。
アスファルト混合物を保持する工程においては、混合物を更に混合してもよい。
保持時間は、好ましくは0.25時間以上、より好ましくは0.5時間以上、更に好ましくは1時間以上であり、そして、時間の上限は、特に限定されないが、例えば5時間程度である。また、本発明の効果を発現するための保持時間は、3時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは0.5時間以下であってもよい。
【0044】
[道路舗装方法]
本発明のアスファルト混合物は、道路舗装用として好適であり、上述したように、アスファルト組成物に骨材を添加したアスファルト混合物が、道路舗装に使用される。
道路舗装方法は、前述のアスファルト混合物を道路に施工し、アスファルト舗装材層を形成する工程を有する。具体的には、道路舗装方法は、アスファルトと、前述のアスファルト改質剤と、骨材とを混合する、アスファルト混合物を得る工程(工程1)、及び前記工程1で得られたアスファルト混合物を道路に施工してアスファルト舗装材層を形成する工程(工程2)を含む。アスファルト舗装材層は、好ましくは基層又は表層である。
【0045】
アスファルト混合物は、公知の施工機械編成で、同様の方法によって締固め施工すればよい。加熱アスファルト混合物として使用する場合の締固め温度は、アスファルト舗装の耐久性の観点から、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上であり、そして、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。
【実施例
【0046】
各種物性については、以下の方法により、測定及び評価を行った。
なお、以下の実施例及び比較例において、特記しない限り、部及び%は質量基準である。
【0047】
[ポリエステル樹脂の酸価]
ポリエステル樹脂の酸価は、JIS K0070:1992の方法に基づき測定した。ただし、測定溶媒のみJIS K0070:1992に規定のエタノールとエーテルとの混合溶媒から、アセトンとトルエンとの混合溶媒(アセトン:トルエン=1:1(容量比))に変更した。
【0048】
[樹脂のガラス転移点(T)]
示差走査熱量計「Q-100」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を用いて、試料0.01~0.02gをアルミパンに計量し、200℃まで昇温し、その温度から降温速度10℃/分で0℃まで冷却した。次いで昇温速度10℃/分で150℃まで昇温しながら測定した。吸熱の最大ピーク温度以下のベースラインの延長線とピークの立ち上がり部分からピークの頂点までの最大傾斜を示す接線との交点の温度をガラス転移点とした。
【0049】
[ポリエステル樹脂の溶融粘度]
回転粘度計DV1 Viscometer(ブルックフィールド社製)を用いてポリエステル樹脂の粘度を測定した。粘度計用サーモセル(ブルックフィールド社製)にサンプルをセットし180℃まで加熱した後、測定を開始した。測定開始から25~35分が経過し、測定値が安定したときの粘度値を溶融粘度とした。
【0050】
製造例1~3、5~10(ポリエステル樹脂A1~A3,A5~A10)
表1及び表2に示す原料モノマーを温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管、熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にて140℃で6時間保持、さらに200℃まで6時間かけて昇温後、窒素雰囲気にて表に示す量のジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、200℃にて1時間反応させた後、8.3kPaの減圧条件にて1時間反応を行って、ポリエステル樹脂A1~A3,A5~A10を得た。結果を表1及び表2に示す。
【0051】
製造例4、11(ポリエステル樹脂A4、A11)
表1及び表2に示すアジピン酸以外の原料モノマーを温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管、熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にて表に示す量のジ(2-エチルヘキサン酸)錫(II)及び没食子酸を添加し、180℃まで昇温した。180℃にて1時間保温した後、180℃から210℃まで10℃/時間で昇温し、その後210℃にて7時間縮重合反応させ、さらに210℃、8.3kPaの減圧条件にて1時間反応を行った。次にアジピン酸を添加し、210℃、10kPaにて表1及び表2に記載の酸価となるまで反応を行って、ポリエステル樹脂A4、A11を得た。結果を表1及び表2に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
製造例12 (ポリエステル樹脂B1)
表3に示す原料モノマーを温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管、熱電対を装備した5L容の四つ口フラスコに入れ、表に示す量の窒素雰囲気下にてモノブチル錫オキシドを添加し、100℃まで昇温した。続いて、反応中に生成する水及び未反応のジオールを除去しながら、100℃から260℃まで6時間を要して昇温した。その後260℃で脱水を行いながら、10時間反応を続け、ポリエステル樹脂B2を得た。結果を表3に示す。
【0055】
製造例13(ポリエステル樹脂B2)
表3に示す原料モノマーを温度計、ステンレス製撹拌棒、脱水管、窒素導入管、熱電対を装備した10L容の四つ口フラスコに入れ、窒素雰囲気下にて140℃で6時間保持し、さらに230℃まで6時間かけて昇温後、表に示す量の2-エチルヘキサン酸錫(II)及び没食子酸を添加し、230℃にて1時間反応させた後、8.3kPaにて1時間反応させて、ポリエステル樹脂B2を得た。結果を表3に示す。
なお、ポリエステル樹脂B2において、融点が測定された。
【0056】
【表3】
【0057】
用いたカルボン酸成分の略称及び詳細は以下の通りである。
ダイマー酸:ハリダイマー270S(ハリマ化成株式会社製)
また、表1~3中、「モル比」は、アルコール成分の合計100モル%に対するモル比である。
【0058】
以下実施例では、アスファルトとして、Associated Asphalt社製のPGグレードが64-22であるアスファルト(ストレートアスファルト)を用いた。
また、骨材として、Blythe Construction社製の骨材を用いた。骨材3000g中、砂利(粗骨材)750g、スクリーニングス(細骨材)1950g、及び山砂(細骨材)300gを含む。各成分の通過質量%は以下の通りである。
<骨材の組成>
[砂利]
ふるい目 9.50mm: 90.4質量%
ふるい目 8.00mm: 73.3質量%
ふるい目 4.75mm: 24.8質量%
ふるい目 2.80mm: 3.9質量%
ふるい目 1.00mm: 1.2質量%
ふるい目 0.50mm: 0.8質量%
[スクリーニングス]
ふるい目 9.50mm:100.0質量%
ふるい目 8.00mm: 99.9質量%
ふるい目 4.75mm: 98.2質量%
ふるい目 2.80mm: 77.4質量%
ふるい目 1.00mm: 36.8質量%
ふるい目 0.50mm: 22.1質量%
[山砂]
ふるい目 9.50mm:100.0質量%
ふるい目 8.00mm:100.0質量%
ふるい目 4.75mm: 98.0質量%
ふるい目 2.80mm: 94.2質量%
ふるい目 1.00mm: 70.6質量%
ふるい目 0.50mm: 33.6質量%
【0059】
実施例1-1(アスファルト組成物AS-1の調製)
株式会社アーテック製のガラスビー玉(直径17mm)を骨材に見立てた。
500mLステンレスビーカーに計量したビー玉200gを180℃に加熱し、これに180℃に加熱したアスファルト10.0g(Associated Asphalt社製、ストレートアスファルトPG64-22)を加え、1分間金属ヘラを用いて混合した。さらに0.5gのポリエステル樹脂A1を加え、1分間混合した。得られたアスファルト組成物AS-1を約15gずつの12個のサンプルに分割し、それら全てのサンプルを180℃の恒温槽に投入した。
投入後15分、30分、40分、50分、60分、70分、80分、90分、120分、150分、180分、240分にそれぞれ1つずつ分割サンプルを恒温槽から取り出し、室温まで冷却した。その後、各サンプルを1mm目開きのメッシュ上に広げ、85℃の水に3分浸漬した。浸漬後、アスファルト被膜がビー玉表面から剥離していない部分の面積の割合を測定し、被覆率とした。
測定方法:ノギスを用い、アスファルト被膜が剥離しビー玉表面が露出している部分の面積En(n=1、2、・・・;nはアスファルト被膜が剥離しビー玉表面が露出している部分の合計数を表す整数である。)をそれぞれ算出した。また、ビー玉の直径からビー玉の全表面積値Sを算出した。下式により被覆率を算出した。
【0060】
【数1】
【0061】
測定した被覆率に基づき、被膜形成速度を評価する指標として、被覆率>99%となる最低養生時間(分)を求めた。
結果を表4に示す。
【0062】
実施例1-2~1-11、比較例1-1~1-3
表4に示す配合に変更したこと以外、実施例1-1と同様にして、アスファルト組成物AS-2~AS-11、AS-C1~AS-C3を調製した。被覆率>99%となる最低養生時間(分)を求め、その結果を表4に示す。
【0063】
【表4】
【0064】
実施例2-1(アスファルト供試体M-1の調製)
[耐水性評価試験用供試体の調製]
180℃に予め加熱した骨材1300gをモルタルミキサーへ計量し、180℃にて30秒間混合した。次いでアスファルト(Associated Asphalt社製、ストレートアスファルトPG64-22)71gを加え、1分間混合した。その後、ポリエステル樹脂A1 3.55gを添加しさらに1分間混合した。得られたアスファルト混合物を180℃で15分保管後、型枠に混合物約1200gを充填し、株式会社ナカジマ技販製アスファルト自動突き固め装置(NA-507)を用いて片面50回両面突き固めにて成型した後、室温まで15時間かけて放冷し、アスファルト供試体M-1を得た。
【0065】
実施例2-2~2-11、比較例2-1~2-3
表2に示す配合に変更したこと以外、実施例2-1と同様にして、アスファルト供試体M-2~M-11、M-C1~M-C3を調製した。
【0066】
[耐水性評価:マーシャル安定度試験]
上記の方法により作成したアスファルト供試体を用い、マーシャル安定度試験により標準マーシャル安定度(kN)及び水浸マーシャル安定度(kN)を算出した。
マーシャル安定度試験は舗装調査・試験法便覧B001「マーシャル安定度試験方法」に記載された手順に従って実施し、評価機器はナカジマ技販製「マーシャル・圧裂試験用載荷装置(Model No.NA-506)」を用いた。なお、標準マーシャル安定度は供試体を60℃の水に30分浸漬した場合の安定度、水浸マーシャル安定度は供試体を60℃の水に48時間浸漬した場合の安定度である。
測定した標準マーシャル安定度及び水浸マーシャル安定度より、下式(A)を用いて残留安定度(%)を算出し、耐水性の評価を行った。
残留安定度(%)=[水浸マーシャル安定度/標準マーシャル安定度]×100 (A)
残留安定度の値が100%に近いほど、そのアスファルト混合物は耐水性に優れているといえる。結果を表5に示す。
【0067】
【表5】
【0068】
表4より、本発明のアスファルト改質剤により、ガラスビー玉を骨材に見立てた評価試験において、短い養生時間により被覆率>99%とすることができるアスファルト組成物を得ることができることが分かる。
また、表5より、短い養生時間によりアスファルト供試体を作製しても優れた耐水性を発揮する、耐水性の発現が早いアスファルト混合物を得ることができることが分かる。