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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】プログラム、鞍乗型車両、及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/04 20060101AFI20250116BHJP
   B62J 27/00 20200101ALI20250116BHJP
   B62J 45/41 20200101ALI20250116BHJP
   B62J 50/22 20200101ALI20250116BHJP
   B62J 3/14 20200101ALI20250116BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20250116BHJP
   G08B 21/00 20060101ALI20250116BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20250116BHJP
   H04M 11/04 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
G08B25/04 C
B62J27/00
B62J45/41
B62J50/22
B62J3/14
B62J45/00
G08B21/00 U
G08B25/08 A
H04M11/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021050342
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148597
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 祐史
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/225426(WO,A1)
【文献】特開2017-138806(JP,A)
【文献】国際公開第2018/225427(WO,A1)
【文献】特開2015-176566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 21/00-31/00
B62J 1/00-99/00
H04M 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鞍乗型車両と近距離無線通信を行う第1の通信手段と、外部装置と通信を行う第2の通信手段と、加速度センサとを備える携帯端末の制御方法における各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記制御方法は、
前記鞍乗型車両からの情報を前記第1の通信手段を介して受信する受信工程と、
前記鞍乗型車両の情報に含まれる前記鞍乗型車両の移動速度が所定値以上である場合に、前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかを判断する比較工程と、
前記比較工程で有意差が生じているとの判断に基づいて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程と
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記鞍乗型車両には、該鞍乗型車両の転倒を検知する転倒検知手段と、Bluetoothユニットとが設けられ、
前記転倒判定工程では、前記鞍乗型車両からの情報に前記転倒検知手段の出力が含まれる場合には、前記比較工程での判断結果に関係なく前記鞍乗型車両が転倒したと判定することを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記転倒判定工程では、前記比較工程で有意差が生じているとの判断に応じて、
前記第1の通信手段による前記鞍乗型車両との通信範囲が最大の通信範囲でない場合は、前記第1の通信手段のアンテナ出力を上げ、
前記第1の通信手段による前記鞍乗型車両との通信範囲が最大の通信範囲である場合は、前記鞍乗型車両が転倒したと判定することを特徴とする請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記携帯端末は、該携帯端末の位置情報を取得する位置情報取得手段をさらに備え、
前記比較工程では、前記加速度に関する有意差に代えて、又は、前記加速度に関する有意差に加えて、
前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の位置情報と、前記携帯端末の前記位置情報取得手段によって取得した位置情報とを比較して有意差が生じているかどうかを判断することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記鞍乗型車両が転倒したとの判定に従って、前記第2の通信手段によって所定の宛先へ通報する通報工程をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記通報工程による通報を停止する操作を受け付ける第1の操作オブジェクトを前記携帯端末の表示部に表示する工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記第1の通信手段を介して前記鞍乗型車両へ表示指示を通知し、前記通報工程による通報を停止する操作を受け付ける第2の操作オブジェクトを前記鞍乗型車両の表示部に表示させる工程をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載のプログラム。
【請求項8】
前記第1の操作オブジェクトが表示される期間は、前記鞍乗型車両の転倒直前の車速に応じて変更されることを特徴とする請求項7に記載のプログラム。
【請求項9】
前記第2の操作オブジェクトが表示される期間は、前記第1の操作オブジェクトが表示される期間よりも長く設定されることを特徴とする請求項8に記載のプログラム。
【請求項10】
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したことに加えて、前記携帯端末に設けられた位置情報取得手段による位置情報を通知することを特徴とする請求項6乃至9の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記携帯端末はライダの生体情報を検知するウェアラブル端末と通信を行う第3の通信手段をさらに備え、
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したことに加えて、前記ウェアラブル端末から取得した前記ライダの生体情報を通知することを特徴とする請求項6乃至10の何れか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
鞍乗型車両であって、
前記鞍乗型車両の起動時に携帯端末と近距離無線通信を確立する通信手段と、
車両の傾きの程度に応じて前記鞍乗型車両の転倒を検知して信号を出力する転倒検知手段と、
前記鞍乗型車両に関する車速を検知する車速検知手段と、
前記転倒検知手段からの信号の入力に応じて前記通信手段によって前記携帯端末へ該信号を通知し、前記車速検知手段からの出力を前記通信手段によって前記携帯端末へ周期的に通知する制御手段と
を備え
前記携帯端末において、前記鞍乗型車両から通知される情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかが判断され、有意差が生じている場合に前記鞍乗型車両が転倒したと判定されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項13】
鞍乗型車両、携帯端末、及び外部装置を含むシステムであって、
前記携帯端末は、
前記鞍乗型車両と近距離無線通信を行う第1の通信手段と、
前記外部装置と通信を行う第2の通信手段と、
加速度センサと、
前記鞍乗型車両からの情報を前記第1の通信手段を介して受信する受信手段と、
前記鞍乗型車両の情報に含まれる前記鞍乗型車両の移動速度が所定値以上である場合に、前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかを判断する比較手段と、
前記比較手段によって有意差が生じているとの判断に基づいて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定手段と
を備え、
前記鞍乗型車両は、
前記鞍乗型車両の起動時に携帯端末と近距離無線通信を確立する第3の通信手段と、
前記鞍乗型車両に関する車速を検知する車速検知手段と、
前記車速検知手段からの出力を前記第3の通信手段によって前記携帯端末へ周期的に通知する制御手段と
を備えることを特徴とするシステム。
【請求項14】
前記鞍乗型車両は、車両の傾きの程度に応じて前記鞍乗型車両の転倒を検知して信号を出力する転倒検知手段をさらに備え、
前記制御手段は、前記転倒検知手段からの信号の入力に応じて前記第3の通信手段によって前記携帯端末へ該信号を通知し、
前記転倒判定手段は、前記鞍乗型車両からの情報に前記転倒検知手段の信号が含まれる場合には、前記比較手段による判断結果に関係なく前記鞍乗型車両が転倒したと判定することを特徴とする請求項13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両の転倒を検知して通報するプログラム、鞍乗型車両、及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗型車両において、車体の転倒を検知して自動通報する技術が知られている。特許文献1には、転倒発生時であっても通報が必要でない場合に、通報をキャンセルできるキャンセルスイッチに関する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/225427号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、車体の転倒はバイクのセンサによって判断して通信部より通報することになっているが、バイクに通信部を組みこむ場合には、バイク自体に通報可能な通信機能を備えさせる必要が有り、その通信に対して月額料金などのコストが掛かることの課題がある。一方で、バイクに通報機能を設けない場合には、通報を行う外部装置において、より正確にバイクの転倒を検知することが課題となる。
【0005】
本発明の目的は、携帯端末によって鞍乗型車両の転倒を好適に検知することにある。また、他の目的として、鞍乗型車両が転倒した際に、ライダが所有する携帯端末と鞍乗型車両との通信接続が切断される場合であっても、好適に転倒を検知することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、鞍乗型車両と近距離無線通信を行う第1の通信手段と、外部装置と通信を行う第2の通信手段と、加速度センサとを備える携帯端末の制御方法における各工程をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記制御方法は、前記鞍乗型車両からの情報を前記第1の通信手段を介して受信する受信工程と、前記鞍乗型車両の情報に含まれる前記鞍乗型車両の移動速度が所定値以上である場合に、前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかを判断する比較工程と、前記比較工程で有意差が生じているとの判断に基づいて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明によれば、鞍乗型車両であって、前記鞍乗型車両の起動時に携帯端末と近距離無線通信を確立する通信手段と、車両の傾きの程度に応じて前記鞍乗型車両の転倒を検知して信号を出力する転倒検知手段と、前記鞍乗型車両に関する車速を検知する車速検知手段と、前記転倒検知手段からの信号の入力に応じて前記通信手段によって前記携帯端末へ該信号を通知し、前記車速検知手段からの出力を前記通信手段によって前記携帯端末へ周期的に通知する制御手段とを備え、前記携帯端末において、前記鞍乗型車両から通知される情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかが判断され、有意差が生じている場合に前記鞍乗型車両が転倒したと判定されることを特徴とする。
【0008】
また、本発明によれば、鞍乗型車両、携帯端末、及び外部装置を含むシステムであって、前記携帯端末は、前記鞍乗型車両と近距離無線通信を行う第1の通信手段と、前記外部装置と通信を行う第2の通信手段と、加速度センサと、前記鞍乗型車両からの情報を前記第1の通信手段を介して受信する受信手段と、前記鞍乗型車両の情報に含まれる前記鞍乗型車両の移動速度が所定値以上である場合に、前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかを判断する比較手段と、前記比較手段によって有意差が生じているとの判断に基づいて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定手段とを備え、前記鞍乗型車両は、前記鞍乗型車両の起動時に携帯端末と近距離無線通信を確立する第3の通信手段と、前記鞍乗型車両に関する車速を検知する車速検知手段と、前記車速検知手段からの出力を前記第3の通信手段によって前記携帯端末へ周期的に通知する制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、携帯端末が転倒を判断して、予め設定している連絡先へ自動的に通報を行うことが可能となる。また、鞍乗型車両が転倒した際に、ライダが所有する携帯端末と鞍乗型車両との通信接続が切断される場合であっても、好適に通報を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るシステム構成図。
図2】本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両の側面図。
図3図2の鞍乗型車両の正面図。
図4】システムの制御構成を示すブロック図。
図5】システムの通信接続を示す図。
図6】携帯端末における転倒時の基本フローチャート。
図7】鞍乗型車両における転倒時のフローチャート。
図8A】携帯端末における転倒時処理の詳細なフローチャート。
図8B】携帯端末における転倒判定処理の詳細なフローチャート。
図9】鞍乗型車両における警報指示を受信した際のフローチャート。
図10】連絡先の設定画面の一例を示す図。
図11】通報停止画面の一例を示す図。
図12】通報画面の一例を示す図。
図13】携帯端末における転倒判定処理の変形例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴は任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
各図において、矢印X、Y、Zは互いに直交する方向を示し、X方向は鞍乗型車両の前後方向、Y方向は鞍乗型車両の車幅方向(左右方向)、Z方向は上下方向を示す。鞍乗型車両の左、右は前進方向で見た場合の左、右である。以下、鞍乗型車両の前後方向の前方または後方のことを単に前方または後方と呼ぶ場合がある。また、鞍乗型車両の車幅方向(左右方向)の内側または外側のことを単に内側または外側と呼ぶことがある。
【0013】
<第1の実施形態>
<通報システムの全体構成>
以下では本発明の第1の実施形態について説明する。図1は本実施形態に係る通報システムの全体構成を示す図である。本システムは、鞍乗型車両100、携帯端末200、外部機器300、400、及びウェアラブル端末500を含んで構成される。なお、本発明を限定する意図はなく、他の装置が含まれてもよい。
【0014】
本システムは、鞍乗型車両100の転倒を検知して、鞍乗型車両100のライダが所有する携帯端末200が各種情報を収集し、所定の連絡先、例えば緊急連絡先(119番)、知人の携帯端末、情報蓄積サーバなどの外部機器へ移動体通信(4G、5G)などの広帯域無線通信により通報を行う。これらの所定の連絡先は事前に設定可能である。外部機器300は所定の連絡先として設定された知人の携帯端末を示し、外部機器400は例えば119番によって接続される消防署の端末や、病院等の端末を示す。
【0015】
携帯端末200は、鞍乗型車両100に設けられた転倒検知センサ102の検知結果をBluetooth(登録商標)ユニット103を介して近距離無線通信(ここではBluetooth通信)により受信し、鞍乗型車両100の転倒を判断する。さらに、携帯端末200は、詳細については後述するが、鞍乗型車両100から周期的に又は不定期に車速に関する情報を受信する。この車体に関する情報は、携帯端末200に設けられたセンサにより判断した車速と比較して有意差が生じたかどうかを判断するために用いられる。例えば、転倒が発生した際にライダと鞍乗型車両100とが物理的に離れてしまうと、携帯端末200と鞍乗型車両100との間の近距離無線通信が切断される可能性があり、その場合には上記転倒検知センサ102の検知結果を携帯端末200において受信できない虞がある。そのようなシーンであっても、上記有意差の判断によって転倒検知の判断を行うものである。転倒したと判断した場合には、携帯端末200は、鞍乗型車両100、ウェアラブル端末500や自装置から各種情報を取得して、所定の連絡先に転倒した旨と、取得した情報とを通知する。ウェアラブル端末500は、鞍乗型車両100のライダが身に着けているスマートウォッチ等であり、例えばライダの心拍、血圧、心電、血中酸素等の生体情報を検知することができ、検知した生体情報を携帯端末200へ近距離無線通信(例えば、Bluetooth通信)により送信する。
【0016】
このように、本システムでは、携帯端末200が各種情報を収集し、鞍乗型車両100の転倒を判断し、広帯域無線通信により通報を行う。これにより、鞍乗型車両100に広帯域無線通信を行うためのユニットを別途設ける必要がなく、好適に通報を行うことができる。さらに、本実施形態によれば、転倒時において鞍乗型車両100からライダが飛ばされ、離れてしまった場合に携帯端末200と鞍乗型車両100との間の近距離無線通信が切断した場合であっても、携帯端末200において好適に転倒を判断することができる。
【0017】
<鞍乗型車両の概要>
図2は、本発明の一実施形態に係る鞍乗型車両100の右側の側面図、図3は鞍乗型車両100の正面図である。
【0018】
鞍乗型車両100は、長距離の移動に適したツアラー系の自動二輪車であるが、本発明は他の形式の自動二輪車を含む各種の鞍乗型車両に適用可能であり、また、内燃機関を駆動源とする車両のほか、モータを駆動源とする電動車両にも適用可能である。以下、鞍乗型車両100のことを車両100と呼ぶ場合がある。また、本実施形態では、車両の一例として二輪の鞍乗型車両を例に説明するが、本発明を限定する意図はなく例えば四輪駆動車両など種々の車両に適用可能である。
【0019】
車両100は、前輪FWと後輪RWとの間にパワーユニット2を備える。パワーユニット2は本実施形態の場合、水平対向六気筒のエンジン21と変速機22とを含む。変速機22の駆動力は不図示のドライブシャフトを介して後輪RWに伝達され、後輪RWを回転する。
【0020】
パワーユニット2は車体フレーム3に支持されている。車体フレーム3は、X方向に延設された左右一対のメインフレーム31を含む。メインフレーム31の上方には、燃料タンク5やエアクリーナボックス(不図示)が配置されている。燃料タンク5の前方には、ライダに対して各種の情報を表示する電子画像表示装置等を備えたメータパネルMPが設けられている。
【0021】
メインフレーム31の前側端部には、ハンドル8によって回動される操向軸(不図示)を回動自在に支持するヘッドパイプ32が設けられている。メインフレーム31の後端部には、左右一対のピボットプレート33が設けられている。ピボットプレート33の下端部とメインフレーム31の前端部とは左右一対のロワアーム(不図示)により接続され、パワーユニット2はメインフレーム31とロワアームとに支持される。メインフレーム31の後端部には、また、後方へ延びる左右一対のシートレール(不図示)が設けられており、シートレールはライダが着座するシート4aや同乗者が着座するシート4b及びリアトランク7b等を支持する。
【0022】
ピボットプレート33には、前後方向に延びるリアスイングアーム(不図示)の前端部が揺動自在に支持されている。リアスイングアームは、上下方向に揺動可能とされ、その後端部に後輪RWが支持されている。後輪RWの下部側方には、エンジン21の排気を消音する排気マフラ6がX方向に延設されている。後輪RWの上部側方には左右のサドルバック7aが設けられている。
【0023】
メインフレーム31の前端部には、前輪FWを支持するフロントサスペンション機構9が構成されている。フロントサスペンション機構9は、アッパリンク91、ロワリンク92、フォーク支持体93、クッションユニット94、左右一対のフロントフォーク95を含む。
【0024】
アッパリンク91及びロワリンク92は、それぞれメインフレーム31の前端部に上下に間隔を開けて配置されている。アッパリンク91及びロワリンク92の各後端部は、メインフレーム31の前端部に設けられた支持部31a、31bに揺動自在に連結されている。アッパリンク91及びロワリンク92の各前端部は、フォーク支持体93に揺動自在に連結されている。アッパリンク91及びロワリンク92は、それぞれ前後方向に延びるとともに実質的に平行に配置されている。
【0025】
クッションユニット94は、コイルスプリングにショックアブソーバを挿通した構造を有し、その上端部は、メインフレーム31に揺動自在に支持されている。クッションユニット94の下端部は、ロワリンク92に揺動自在に支持されている。
【0026】
フォーク支持体93は、筒状をなすとともに後傾している。フォーク支持体93の上部前部には、アッパリンク91の前端部が回動可能に連結されている。フォーク支持体93の下部後部には、ロワリンク92の前端部が回動可能に連結されている。
【0027】
フォーク支持体93には操舵軸96がその軸回りに回転自在に支持されている。操舵軸96はフォーク支持体93を挿通する軸部(不図示)を有する。操舵軸96の下端部にはブリッジ(不図示)が設けられており、このブリッジには左右一対のフロントフォーク95が支持されている。前輪FWはフロントフォーク95に回転自在に支持されている。操舵軸96の上端部は、リンク97を介して、ハンドル8によって回動される操向軸(不図示)に連結されている。ハンドル8の操舵によって操舵軸96が回転し、前輪FWが操舵される。
【0028】
車両100は、前輪FWを制動するブレーキ装置19Fと後輪RWを制動するブレーキ装置19Fとを備える。ブレーキ装置19F、19Rはブレーキレバー8a又はブレーキペダル8bに対するライダの操作により作動可能に構成されている。ブレーキ装置19F、19Rは、例えば、ディスクブレーキである。ブレーキ装置19F、19Rを区別しない場合は、これらを総称してブレーキ装置19と呼ぶ。
【0029】
車両100の前部には、車両100の前方に光を照射するヘッドライト11が配置されている。本実施形態のヘッドライト11は右側の光照射部11Rと、左側の光照射部11Lとを左右対称に備える二眼タイプのヘッドライトユニットである。しかし、一眼タイプや三眼タイプのヘッドライユニット、或いは、左右非対称の二眼タイプのヘッドライトユニットも採用可能である。
【0030】
車両100の前部はフロントカウル12で覆われ、車両100の前側の側部は左右一対のサイドカウル14で覆われている。フロントカウル12の上方にはスクリーン13が配置されている。スクリーン13は走行中にライダが受ける風圧を軽減する風防であり、例えば、透明な樹脂部材で形成されている。
【0031】
フロントカウル12の側方には左右一対のサイドミラーユニット15が配置されている。サイドミラーユニット15にはライダが後方を視認するためのサイドミラー(不図示)が支持されている。
【0032】
本実施形態の場合、フロントカウル12は、カウル部材121~123により構成されている。カウル部材121はY方向に延在してフロントカウル12の本体を構成し、カウル部材122はカウル部材121の上側の部分を構成している。カウル部材123はカウル部材121から下方向に離間して配設されている。
【0033】
カウル部材121とカウル部材123との間、及び、左右一対のサイドカウル14の間に、ヘッドライト11を露出させる開口が形成され、この開口の上縁はカウル部材121により画定され、下縁はカウル部材123により画定され、左右の側縁はサイドカウル14で画定される。
【0034】
フロントカウル12の背後には車両100の前方の状況を検知する検知デバイスとしてとして撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bが配置されている。レーダーユニット16Bは例えばミリ波レーダである。撮像ユニット16AはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等の撮像素子と、レンズ等の光学系とを含み、車両100の前方の画像を撮像する。撮像ユニット16Aはフロントカウル12の上部を構成するカウル部材122の背後に配置されている。カウル部材122には、これを貫通する開口122aが形成されており、撮像ユニット16Aは開口122aを通して車両100の前方の画像を撮像する。
【0035】
レーダーユニット16Bはカウル部材121の背後に配置されている。カウル部材121の存在により、車両100の正面視で検知ユニット(外界監視機器)16の存在を目立たなくすることができ、車両100の外観が悪化することを回避することができる。カウル部材121は樹脂等、電磁波の透過が可能な材料で構成される。
【0036】
撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bは、車両正面視でフロントカウル12のY方向の中央部に配置されている。撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bを車両100のY方向の中央部に配置することで、車両100の前方の左右に、より広い撮像範囲、検知範囲を得ることができ、車両100の前方の状況をより見落としなく検知できる。また、一つの撮像ユニット16A及び一つのレーダーユニット16Bにより車両100の前方を、左右均等に監視することができることから、撮像ユニット16A及びレーダーユニット16Bをそれぞれ複数設けずに、一つずつ設けた構成において、特に有利である。
【0037】
<通報システムの制御構成>
図4は本実施形態に係る通報システムの制御構成を示すブロック図であり、後述する説明との関係で必要な構成のみが図示されている。本システムは、鞍乗型車両100と、携帯端末200と、外部機器300、400、600と、ウェアラブル端末500を含んで構成される。なお、これらの構成は一例であり、本発明を限定する意図はない。例えば、鞍乗型車両100、携帯端末200、及び1つの外部機器のみで構成されてもよいし、さらに多くの外部機器が含まれてもよい。
【0038】
鞍乗型車両100は制御部(ECU)101、転倒検知センサ102、Bluetoothユニット103、記憶部104、クラクション105、車速センサ106、GPS107及び、メータパネルMPを備える。制御部101は、CPUに代表されるプロセッサを含む。記憶部104にはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。なお、記憶部104は制御部101の内部に組み込まれてもよい。制御部101は、他のコンポーネント102~106とバス等の信号線で接続され、信号を送受することができ、鞍乗型車両100の全体を制御する。
【0039】
メータパネルMPは、ライダに対する鞍乗型車両100の各種のパラメータや警告表示を行う。本実施形態では、少なくとも通報の停止操作を行うための操作オブジェクト(第2の操作オブジェクト)をメータパネルMPに表示する。また、ヘルメットにマイクとスピーカが内蔵されているものであれば、通報の停止操作を音声によってガイドし、音声入力により受け付けるように制御するものであってもよい。
【0040】
転倒検知センサ102は、鞍乗型車両100の傾きを検知する振り子部材を内蔵し、振り子部材が60~70度の角度ほど傾くとスイッチが入り信号を出力する。これらの信号が制御部101に入力されると、制御部101は鞍乗型車両100が転倒したと判断し、エンジンを停止する。また、制御部101は、Bluetoothユニット103を介して鞍乗型車両100が転倒したことを携帯端末200へ通知する。なお、転倒検知センサ102が転倒を検知するまでには一定時間を要し、その間にBluetoothユニット103を介した携帯端末200との近距離無線通信が切断される可能性がある。これは、携帯端末200を保持するライダが転倒した際に鞍乗型車両100から投げ出されて、携帯端末200と鞍乗型車両100とが近距離無線通信の範囲を超えて離れる可能性があるためである。近距離無線通信が切断される前に転倒検知センサ102の検知結果が携帯端末200で受信できれば問題ないが、受信できない場合には携帯端末200は鞍乗型車両100の転倒を検知することができない。そこで、本実施形態に係る通報では、前もって鞍乗型車両100の車速に関する情報を携帯端末200へ周期的又は不定期に送信しておき、それらの情報を用いて転倒を検知する仕組みも備える。詳細については後述する。
【0041】
Bluetoothユニット103は、近距離無線通信を行うユニットの一例であり、近距離無線通信(Bluetooth通信)を介して携帯端末200と信号を送受信する。Bluetoothユニット103は鞍乗型車両100の起動時に起動され、携帯端末200と通信接続を行う。近距離無線通信は、例えば、無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth、NFCや赤外線通信など、所定範囲内で通信可能な通信方法であればよい。通信範囲としては、例えば、鞍乗型車両100から例えば半径5m~20mを含む領域として設定され、鞍乗型車両100が転倒してライダが鞍乗型車両100と離れた場合であっても所定範囲内において携帯端末200との通信を確保することが望ましい。
【0042】
クラクション105は、本実施形態において、携帯端末200からの指示により鳴動させて警報を行う。なお、警報においては音のみの例について説明するが、本発明を限定する意図はなく、クラクション105による警報に代えて又は追加して、例えばヘッドライト11やウィンカーなどを点灯又は点滅させるようにしてもよい。
【0043】
車速センサ106は、車両100の車速を検知する。車速センサ106は例えばフロントフォーク95に支持され、前輪FWの回転量を検知するセンサである。車速センサ106で検知された車速は、記憶部104へ記憶される。記憶部104はリングバッファを有しており、新たな車速情報が古い車速情報に上書きされる構成である。記憶部104に記憶された車速情報は、近距離無線通信を介して周期的又は不定期に携帯端末200へ送信される。また、車速センサ106は、その他の鞍乗型車両100に関する速度、例えば車両100の前後方向、左右方向、上下方向の加速度を検知する加速度センサや、車両100のロール方向、ピッチ方向、ヨー方向の角速度を検知する角速度センサを有し、各種速度情報を記憶部104へ記憶してもよい。これらの鞍乗型車両100の速度、加速度、角速度をまとめて車速に関する情報と称する。これらの車速に関する情報は、上記速度について上述したように、近距離無線通信を介して周期的又は不定期に携帯端末200へ送信される。
【0044】
GPS107は、鞍乗型車両100の現在位置を取得する。なお、GPS107は本発明においてオプションであり、鞍乗型車両100に既に設けられている場合にはその位置情報を利用して、上記車速に関する情報に加えて又は代えて、携帯端末200で取得した情報との間で有意差が生じたかを判断するものである。判断結果については、上述したように鞍乗型車両100の転倒を検知するために用いられる。或いは、携帯端末200にGPS機能が設けられていない場合には、鞍乗型車両100のGPS107を用いて、転倒した際の位置情報を取得するようにしてもよい。
【0045】
次に、携帯端末200の構成について説明する。携帯端末200は、鞍乗型車両100のライダが所有するスマートフォン等の携帯機器を示す。ここでは本発明を実施する上で必要な構成を主に説明する。従って、以下で説明する構成に加えてさらに他の構成が含まれてもよい。携帯端末200は、制御部201、記憶部202、外部通信機器203、表示操作部204、スピーカ208、及び速度センサを備える。外部通信機器203は、GPS205、近距離無線機器206、及び通報部207を含む。
【0046】
制御部201は、CPUに代表されるプロセッサを含む。記憶部202にはプロセッサが実行するプログラムやプロセッサが処理に使用するデータ等が格納される。なお、記憶部202は制御部201の内部に組み込まれてもよい。制御部201は、他のコンポーネント203、204、208とバス等の信号線で接続され、信号を送受することができ、携帯端末200の全体を制御する。
【0047】
制御部201は、外部通信機器203の通報部207を用いて広域ネットワークを介して外部機器300、400、600の少なくとも1つへ通報を行う。また、制御部201は、GPS205、及び近距離無線機器206を介して、各種情報を取得する。GPS205は、携帯端末200の現在位置を取得する。これにより、例えば、通報を行う際に位置情報を付与することができる。近距離無線機器206は、近距離無線通信を介して、鞍乗型車両100やウェアラブル端末500と信号を送受することができる。近距離無線通信は、例えば、無線LAN(Wi-Fi)やBluetooth、NFCや赤外線通信など、所定範囲内で通信可能な通信方法であればよい。通信範囲としては、例えば、鞍乗型車両100から例えば半径5m~20mを含む領域として設定されうる。また、鞍乗型車両100との通信接続は、鞍乗型車両100の起動時に行われる。
【0048】
表示操作部204は、例えばタッチパネル式の液晶ディスプレイであり、各種表示を行うとともに、ユーザ操作を受け付けることができる。表示操作部204には、転倒を検知した際に通報を行うことを停止するための操作オブジェクト(第1の操作オブジェクト)が選択可能に表示される。当該操作オブジェクトは、上述したように鞍乗型車両100のメータパネルMPにも表示されてもよく、転倒が発生したもののライダが問題なく動ける場合に通報を停止するものである。なお、通報の停止については、操作オブジェクトを操作する代わりに、鞍乗型車両100が転倒状態から起こされたことを転倒検知センサ102が検知した場合に停止するようにしてもよい。また、通報の停止操作を行うことを許容する期間は、転倒時の車速(移動速度)に応じて動的に変化させてもよい。例えば、車速が0~5km以内であればライダが負傷している可能性は低く、鞍乗型車両100がライダ自身によって起こされる可能性が高いため、走行中に転倒した場合と比較してより長い期間が停止操作を行う期間として設けられてもよい。
【0049】
スピーカ208は、転倒検知時において警報音を出力する。スピーカ208による警報は、ライダによる上記停止操作によって停止されてもよいし、別途の停止ボタン等の操作入力により停止されてもよい。なお、警報音は、転倒時において表示操作部204に後述する通報の停止画面が表示されると、ライダにその旨を知らせるために表示と同時に出力されることが望ましく、さらには最大音量で出力されることが望ましい。音量については事前に設定可能な構成としてもよい。また、警報音だけでなく、音声合成によるメッセージをスピーカにより再生してもよい(例えば、アラーム音の後に「バイクで転倒事故発生!助けてください。」など)。音声合成であれば、より明確に周囲に対して何が起きているかを伝えることができる。
【0050】
速度センサ209は、携帯端末200の前後方向、左右方向、上下方向の加速度を検知する加速度センサである。速度センサ209から出力された加速度を示す出力値は記憶部202のリングバッファに格納され、最も古い記録から上書きされていく。なお、必要なデータとしては、鞍乗型車両100が起動中のデータであるため、鞍乗型車両100が起動されて、後述する近距離無線通信が確立された後に当該データの記録を開始することが望ましい。記録されたデータは、鞍乗型車両100から受信した上記車速に関する情報と比較され、有意差が生じたかどうかを判断するために用いられる。
【0051】
外部機器300は、予め設定された連絡先である通報先の端末を示す。外部機器300は、例えばスマートフォン等の携帯端末であり、ライダが事前に登録した知人が所有する端末である。制御構成については、携帯端末200と同様であるため詳細な構成については省略する。外部機器300の表示操作部301には、携帯端末200によって通報された内容が表示される。表示内容の詳細については後述する。
【0052】
外部機器400は、通報部207による通報が着信する、例えば緊急連絡先(119番など)の端末である。ここで、通報部207は外部機器400が音声着信に応答した場合において、自動音声を出力するようにしてもよい。これは転倒時のライダが何らかの原因で通話不可能な場合が想定されるためである。例えば、通報部207はデフォルト設定として自動音声による通話を行い、表示操作部204等に自動音声からライダ自身が通話を行うための切替ボタンを表示させるようにしてもよい。当該切替ボタンが操作されると、自動音声が終了し、通常の音声通話に切り替わる。自動音声の内容には、例えば転倒事故の発生、発生場所、発生時刻やライダの生体情報などが含まれる。
【0053】
外部機器600は、本システムにおけるデータサーバの一例であり、携帯端末200から送信される各種情報を蓄積する機器である。これらの情報は、事故の調査等に利用されるものである。通信方式としては例えば電子メールの形式であってもよく、その他の情報を送信することが可能な通信方式であってもよい。受信した情報は、データ記憶部601に記憶される。
【0054】
ウェアラブル端末500はライダが装着しているスマートウォッチなどのウェアラブル端末であり、ライダの生体情報を検知して携帯端末200へ送信する。ウェアラブル端末500は、生体情報検知センサ501と、データ送信部502を備える。生体情報検知センサ501は、ウェアラブル端末500を装着しているライダの心拍、血圧、心電、血中酸素等の生体情報を検知する。これらの生体情報は、データ送信部502によって定期的に携帯端末200へ送信されてもよいし、鞍乗型車両100の転倒時における携帯端末200からの要求に従ってその際の最新データを送信するようにしてもよい。なお、携帯端末200から要求があった場合には、その際の最新データに加えて、その後の一定期間について生体情報を検知して送信することが望ましい。これにより、転倒時におけるライダの体調変化等を検知することができる。
【0055】
<本システムの通信接続>
図5は本実施形態に係る通報システムにおける各装置の通信接続関係を示す図である。図5に示すように、携帯端末200が本通報システムの中心的な役割を担う。
【0056】
携帯端末200は、Bluetooth通信等の近距離無線通信(第1の通信)を鞍乗型車両100のBluetoothユニット103と確立する。当該通信は、鞍乗型車両100の起動時に接続が確立され、走行中の車速に関する情報や、転倒検知センサ102によって転倒が検知された際にその旨や各種情報を送受するために用いられる。また、携帯端末200は、Bluetooth通信等の近距離無線通信(第3の通信)をウェアラブル端末500と確立する。当該通信は、ウェアラブル端末500の起動時に接続が確立され、ライダの生体情報等が送受される。
【0057】
さらに、携帯端末200は、広帯域無線通信(第2の通信)を介して、各外部機器300、400、600との通信を行うことができる。携帯端末200は、例えば外部機器400へ緊急通報を行うとともに、電子メール等により外部機器300や外部機器600へ位置情報、生体情報、及び車速などの各種情報を通知する。
【0058】
<携帯端末の処理手順>
図6は本実施形態に係る携帯端末200における転倒時の基本フローの処理手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部201のCPUがROMや記憶部202に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0059】
まずS601で携帯端末200の制御部201は、鞍乗型車両100の起動時において、近距離無線機器206を介して鞍乗型車両100のBluetoothユニット103と通信接続を確立する。続いて、S602で制御部201は、S601で接続した近距離無線通信接続を介して、鞍乗型車両100から情報を受信したかどうかを判断する。情報を受信していなければS602の判断を繰り返し行う。情報を受信するとS603に進み、制御部201は、受信した情報が鞍乗型車両100の転倒に関する情報であるかどうかを判断する。ここで、転倒に関する情報とは、鞍乗型車両100の転倒検知センサ102によって転倒が検知された場合に受信する情報を示す。転倒に関する情報であればS604に進み、制御部201は、転倒時処理を実行し、処理を終了する。転倒時処理の詳細については図8Aを用いて後述する。一方、転倒に関する情報でなければS605に進み、制御部201は、転倒判定処理を実行する。転倒判定処理の詳細については図8Bを用いて後述する。続いて、S606で制御部201は、S605の転倒判定処理の結果、転倒が検知されたかどうかを判断する。転倒が検知された場合はS604に進み、そうない場合はS607に進み、制御部201は、受信した情報に従ったその他の処理を実行し、処理を終了する。
【0060】
<鞍乗型車両の転倒時の処理手順>
図7は本実施形態に係る鞍乗型車両100における転倒時の処理手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部101のCPUがROMや記憶部104に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0061】
まずS701で鞍乗型車両100の制御部101は、鞍乗型車両100の起動時において、Bluetoothユニット103を介して携帯端末200と近距離無線通の通信接続を確立する。続いて、S702で制御部101は、車速センサ106によって取得された車速に関する情報、例えば移動速度、加速度、及び角速度の少なくとも1つを記憶部104へ格納するとともに、近距離無線通信を介して携帯端末200へ送信する。当該送信は周期的であっても不定期であってもよい。
【0062】
次に、S703で制御部101は、転倒検知センサ102からの信号入力があるかどうかを判断する。信号入力がなければS702に処理を戻す。一方、転倒検知センサ102からの信号入力があればS704に進み、制御部101は、鞍乗型車両100の転倒が検知されたとして、S701で確立された近距離無線通信接続を介して携帯端末200へ、転倒が発生した旨と各種情報とを送信し、処理を終了する。ここで送信する各種情報とは、鞍乗型車両100の転倒時の動作情報であり、例えば記憶部104に記憶されている転倒前の車速情報や位置情報である。もちろんその他の動作情報が送信されてもよい。例えば鞍乗型車両100に設けられたセンサ群等により検知可能な情報である、故障部位やその他の種々の情報が送信されてもよい。
【0063】
<携帯端末の転倒時処理の詳細>
図8Aは本実施形態に係る携帯端末200における上記S604の転倒時処理の詳細手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部201のCPUがROMや記憶部202に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0064】
S603で転倒が検知されたと判断すると、S801で制御部201は、スピーカ208によって警報音を出力し、クラクション105を鳴動させるように近距離無線機器206を介して鞍乗型車両100へ指示する。また、S802で制御部201は、予め設定された転倒時の連絡先の情報を記憶部202から取得する。さらに、S803で制御部201は、後述する第1の操作オブジェクトを含む通報停止画面1100を表示操作部204に表示し、鞍乗型車両100へ通報を停止するための第2の操作オブジェクトをメータパネルMPへ表示するように近距離無線機器206を介して指示する。通報停止画面1100の詳細については図11を用いて後述する。なお、S801乃至S803の処理の順序は特に限定する意図はなく任意の順序でよい。また、鞍乗型車両100へ指示を行うS801及びS803の警報指示と表示指示は一括で指示してもよい。
【0065】
次に、S804で制御部201は、上記第1の操作オブジェクト又は第2の操作オブジェクトが操作されることにより、通報の停止操作を受け付けたかどうかを判断する。停止操作を受け付けた場合はS805に進み、そうでない場合はS808に進む。当該判断は、例えば通報停止画面1100の表示を開始してから、所定時間(例えば、30秒など)が経過するまでの間に停止操作を受け付けなければ停止操作を受け付けなかったと判断し通報処理へ移行する。また、上記所定時間については、上述したように、転倒直前の車速に応じて変更してもよい。なお、ここでは通報の停止指示を行うための操作オブジェクトの操作について説明しているが、これに限らず例えばライダが転倒した鞍乗型車両100を立て直した場合にも停止操作を受け付けたものとしてS808の処理を実行してもよい。鞍乗型車両100が立て直されたことについては、例えば、転倒検知センサ102の信号入力が停止したことをトリガとして判断してもよい。また、停止操作は鞍乗型車両100に設けられたボタンの長押しなどで行うようにしてもよい。S808で制御部201は、出力していた警報音の出力を停止し、クラクション105の鳴動を停止するように近距離無線機器206を介して鞍乗型車両100へ指示し、処理を終了する。
【0066】
一方、S805で制御部201は、ウェアラブル端末500からライダの生体情報を取得する。なお、本通報システムにおいてウェアラブル端末500はオプションであり必須の構成ではない。つまり、ライダがウェアラブル端末500を装着していなければ、S805の処理はスキップされる。続いて、S806で制御部201は、GPS205を介して現在の位置情報を取得する。その後、S807で制御部201は、転倒が発生した旨と、必要に応じて生体情報や位置情報、車速情報などを事前に設定された連絡先に通報し、処理を終了する。なお、複数の連絡先が設定されている場合には、順次通報を行う。これらの通報は、例えば、緊急連絡先である外部機器400、外部機器300、外部機器600の順で優先的に行われる。
【0067】
<携帯端末の転倒判定処理の詳細>
図8Bは本実施形態に係る携帯端末200における上記S605の転倒判定処理の詳細手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部201のCPUがROMや記憶部202に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0068】
S603で転倒が検知されていないと判断されると、S811で制御部201は、近距離無線機器206を介して鞍乗型車両100から車速に関する情報を受信する。ここでは、例えば鞍乗型車両100で測定された移動速度及び加速度に関する情報である。続いて、S812で制御部201は、車速(例えば、移動速度)が所定値以上であるか否かを判断する。ここでの所定値とは、任意の速度値を設定できるものであるが、例えば走行中に発生した転倒を検知するように時速10kmとしてもよい。所定値以上であればS813に進み、所定値以上でなければ処理をS815に進める。S815で制御部201は非転倒と判断して処理を終了する。
【0069】
S813で制御部201は、携帯端末200の速度センサ209で測定された最新の携帯端末200の加速度を記憶部202から取得し、記憶部202から取得した加速度と、S811で鞍乗型車両100から受信した加速度とに有意差が生じているかどうかを判断する。より詳細には、制御部201は、2つの加速度を比較し、その差分が所定の閾値以上であれば有意差が生じていると判断する。ここで所定の閾値とは、例えば時速5km~10kMで設定される。閾値以上の差分が生じた場合には鞍乗型車両100が転倒し、ライダが落車して互いの加速度に閾値以上の差が生じたと判断するものである。つまり、本実施形態によれば、転倒検知センサ102の検知結果を受信していない状態であっても、一定以上の車速(移動速度)があるにも関わらず、鞍乗型車両100とライダが保持する携帯端末200とのそれぞれが検知した加速度の間に有意差が生じた場合には転倒があったものと判断する。
【0070】
加速度に有意差が生じたと判断した場合はS814に進み、制御部201は転倒と判断して処理を終了する。一方、加速度に有意差が生じていないと判断した場合はS815に進み、制御部201は非転倒と判断して処理を終了する。また、加速度の急激な変化が生じた場合(鞍乗型車両が他の車両や障害物に衝突した時を想定)に転倒と判断してもよい。この場合には、転倒直前の加速度から傷害度をさらに予測してもよい。また、この加速度の急激な変化で転倒が生じたと一次判断したとしても、その後、一定時間以上車速が継続して検出される場合には、車両の走行が継続していると判断して、転倒の一次判断を取り下げることとしてもよい。
【0071】
<鞍乗型車両の警報指示受信時の処理手順>
図9は本実施形態に係る鞍乗型車両100における警報指示を受信した際の処理手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部101のCPUがROMや記憶部104に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。
【0072】
まずS901で制御部101は、Bluetoothユニット103を介して携帯端末200から警報の指示を受信し、S902で制御部101は、クラクション105を鳴動させる。ここで、制御部101は、クラクション105を鳴動させる際に、携帯端末200で第1の操作オブジェクトが表示されてか所定時間が経過した後に鳴らすようにしてもよい。これにより、例えば当該第1の操作オブジェクトを介して停止操作を受け付ける場合には、クラクション105の鳴動が無駄な警報であり、そのような警報を回避することができる。また、S903で制御部101は、通報を停止するための停止画面の表示指示を、Bluetoothユニット103を介して携帯端末200から受信し、S904で第2の操作オブジェクトを含む通報停止画面をメータパネルMPに表示する。上述したように、S901及びS903の警報指示及び表示指示は一括で受信してもよい。
【0073】
次にS905で制御部101は、メータパネルMPを介して停止操作を受け付けたか、又は、携帯端末200から停止指示を受信したかどうかを判断する。受け付けた場合はS906へ進み、そうでない場合はS905の判断を繰り返し行う。S906で制御部101は、クラクション105の鳴動を停止し、処理を終了する。
【0074】
<設定画面>
図10は、本実施形態に係る携帯端末200で表示される連絡先の設定画面1000の一例を示す。設定画面1000は表示操作部204に表示される。なお、以下で説明する設定画面1000は、携帯端末200からの指示に基づいてメータパネルMPに操作可能に表示されてもよい。
【0075】
設定画面1000は、図10に示すように、緊急連絡先1001、ユーザ設定の電話通信の連絡先設定1002、及びユーザ設定の電子メールの宛先設定1004の設定欄を含んで構成される。各設定欄には、それぞれの連絡先を入力して設定することができる。また、緊急連絡先1001には、デフォルト設定として「119」が予め設定されている。設定画面1000は、さらに、連絡先設定1002と宛先設定1004のそれぞれに対応して、追加ボタン1003、1005を含んで構成される。各追加ボタン1003、1005が選択されると、連絡先や宛先の設定欄を増やすことができる。
【0076】
また、設定画面1000は、OKボタン1006と、キャンセルボタン1007とを含んで構成される。OKボタン1006が選択されると、設定画面1000上で設定した連絡先等が決定し、記憶部202に保存される。一方、キャンセルボタン1007が選択されると、設定画面1000上で設定した連絡先等がキャンセルされ、設定情報は変更されない。
【0077】
<通報停止画面>
図11は、本実施形態に係る携帯端末200で表示される通報停止画面1100の一例を示す。通報停止画面1100は表示操作部204に表示される。なお、以下で説明する通報停止画面1100と同等の画面が、携帯端末200からの指示に基づいてメータパネルMPに操作可能に表示されるものであるが、詳細な説明については省略する。
【0078】
通報停止画面1100は、図11に示すように、鞍乗型車両100であるバイクの転倒を検知したため、所定時間(ここでは、30秒)経過後において、連絡先1101及び宛先1102に通報を行う旨の表示と、問題がない場合は停止ボタンを選択して通報の停止を促す表示とを含んで構成される。さらに、通報停止画面1100は、停止ボタン1103と、通報ボタン1104とを含む。停止ボタン1103が選択されると、携帯端末200は通報の停止操作を受け付けたと判断し、警報処理及び通報処理を停止して鞍乗型車両100へ停止操作を受け付けた旨を通知する。また、通報ボタン1104が選択されると、携帯端末200は、上記所定時間の経過を待つことなく、通報処理を開始する。なお、停止ボタン1103は第1の操作オブジェクトの一例である。また、鞍乗型車両100のメータパネルMPに表示される第2の操作オブジェクトは、停止ボタン1103と同等のものが表示される。さらに、メータパネルMPには通報ボタン1104に対応するボタンが表示されてもよい。また、停止ボタン1103は、上記所定時間が経過した後も表示が継続されることが望ましい。これは、救助者が到着した際に操作することによって警報を停止するためである。
【0079】
<通報画面>
図12は、本実施形態に係る外部機器300で表示される通報画面1200の一例を示す。通報画面1200は表示操作部301に表示される。なお、以下で説明する通報画面1200は、他の外部機器で表示されてもよい。
【0080】
通報画面1200は、例えば設定画面1000のユーザ設定で事前に設定された宛先設定1004で設定されたアドレスへ通知され、当該外部機器300において表示された画面である。なお、外部機器300への通知方法として種々の通知方法を適用することができる。例えば、外部機器300へは通報画面1200の画面情報が送信されてもよいし、転倒した旨とともに、位置情報、生体情報等の各種情報のみが送信されてもよい。また、外部機器300においては、本通報システムに関連するアプリケーションがインストールされていれば、それらの情報を利用して当該アプリケーション上で通報画面1200を表示してもよいし、任意のブラウザ画面上で表示するようにしてもよい。また、メッセージや情報のみを電子メールで受信して、メーラーのアプリケーション上で表示するようにしてもよい。或いはSNSアプリケーション上で表示するようにしてもよい。
【0081】
通報画面1200は、鞍乗型車両100のライダが転倒した旨のメッセージ1201、転倒位置を示すマップ1202、ライダの生体情報1203、及びライダへの音声発信ボタン1204を含んで構成される。これらの構成要素は表示する上記アプリケーションに応じてそれぞれを取捨選択され得る。
【0082】
マップ1202には、転倒位置を示すマップ上のマーク1205、転倒直前の車速1206、及び転倒位置の詳細情報1207が表示される。生体情報1203には、例えば、心電図や心拍数、血圧、血中酸素が表示される。音声発信ボタン1204を選択すると、外部機器300は携帯端末200へ音声発信を行う。
【0083】
<第2の実施形態>
以下では本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態では図8Bを用いて説明したように、転倒検知センサ102の検知結果を受信していない状態であっても、一定の速度以上で鞍乗型車両100と携帯端末200とでそれぞれ取得した加速度に有意差が生じた場合に転倒したと判断した。しかし、本実施形態では、加速度に有意差が生じた場合には、鞍乗型車両100と携帯端末200との間の近距離無線通信の範囲を広げて、鞍乗型車両100から再度情報を受信し、転倒検知センサ102の検知結果を受信していなければさらに2つの加速度に有意差が生じていないかを判断する。その後、携帯端末200は予め指定した最大の通信範囲においても転倒検知センサ102の検知結果を受信せず、かつ、2つの加速度に有意差が生じている場合には転倒と判断する。つまり、本実施形態によれば、2つの加速度に有意差が生じた場合であっても、即座に転倒と判断するのではなく、最大の通信範囲まで近距離無線通信の通信範囲を広げていき、転倒検知センサ102の検知結果を受信する猶予を設けるものである。これは転倒検知センサ102の検知結果によって転倒を判断する方が、加速度の有意差から判断するよりも精度が高いためである。なお、上記第1の実施形態と同様の構成及び制御については同一の参照符号、ステップ坂東を付与し、説明を省略する。
【0084】
<携帯端末の転倒判定処理の詳細>
図13は本実施形態に係る携帯端末200における上記S605の転倒判定処理の詳細手順を示すフローチャートである。以下で説明する処理は、例えば制御部201のCPUがROMや記憶部202に保持されているプログラムをRAMに読み出して実行することにより実現される。なお、Sに続く番号は、各処理のステップ番号を示すものである。また、図8Bと同様の処理については同一のステップ番号を付し説明を省略する。
【0085】
S813で加速度に有意差が生じたと判断されると、S1301で制御部201は、近距離無線機器206による鞍乗型車両100との間の近距離無線通信の通信範囲が最大であるかどうかを判断する。最大でなければ、S1302に進み制御部201は、近距離無線機器206のアンテナ出力を増大させて、図6のS602へ処理を戻し、鞍乗型車両100からの車速に関する情報を再度受信する。或いは、ここではアンテナ出力の増大については一気に最大出力まで上げてもよいし、段階的に上げてもよい。
【0086】
一方、S1301で通信範囲が最大であると判断するとS814に進み、制御部201は転倒と判断し、処理を終了する。また、一度S813で有意差が生じたと判断してS602に処理を戻した場合においては、その後鞍乗型車両100からの情報が途絶することも想定され得る。そのような場合には、加速度に有意差が生じたことを最初に判断してから所定時間が経過した後には転倒と判断するようにしてもよい。
【0087】
<変形例>
上記第1及び第2の実施形態では、鞍乗型車両100と携帯端末200とでそれぞれ取得した加速度に有意差が生じたかどうかを転倒の判断材料として利用した。本発明はそれに限らず他の判断手法を用いてもよい。例えば、鞍乗型車両100のGPS107で取得された位置情報と、携帯端末200のGPS205で取得された位置情報とに有意差が生じたかどうかによって、鞍乗型車両100の転倒を検知してもよい。或いは、加速度及び位置情報の両方に有意差が生じた場合に鞍乗型車両100の転倒を検知してもよい。位置情報の有意差としては、例えば5m~10mが想定され得る。
【0088】
<実施形態のまとめ>
上記実施形態は、少なくとも以下のプログラム、鞍乗型車両及びシステムを開示する。
【0089】
1.鞍乗型車両(100)と近距離無線通信を行う第1の通信手段(206)と、外部装置と通信を行う第2の通信手段(207)と、加速度センサ(209)とを備える携帯端末(200)の制御方法における各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム(202)であって、前記制御方法は、
前記鞍乗型車両からの情報を前記第1の通信手段を介して受信する受信工程(S602)と、
前記鞍乗型車両の情報に含まれる前記鞍乗型車両の移動速度が所定値以上である場合に、前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかを判断する比較工程(S813)と、
前記比較工程で有意差が生じているとの判断に基づいて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定工程(S814)と
を含む。
この実施形態によれば、鞍乗型車両100から受信した車速に関する情報と、携帯端末200が取得した加速度に関する情報とを比較して携帯端末200において鞍乗型車両100の転倒を検知することができる。また、携帯端末200で転倒を判断することができるため、スマートフォン等の携帯端末200の通信機能を利用して通報を行うこともできる。
【0090】
2.上記実施形態では、
前記鞍乗型車両(100)には、該鞍乗型車両の転倒を検知する転倒検知手段(102)と、Bluetoothユニット(103)とが設けられ、
前記転倒判定工程では、前記鞍乗型車両からの情報に前記転倒検知手段の出力が含まれる場合には、前記比較工程での判断結果に関係なく前記鞍乗型車両が転倒したと判定する(S603)。
【0091】
この実施形態によれば、鞍乗型車両100に設けられた転倒検知センサ102の出力に応じて転倒を判断できるため、より精度の高い転倒判定を行うことができる。また、鞍乗型車両100にはBluetoothユニット103が設けられるだけであって4G/5G通信自体は、ライダのスマートフォン等の携帯端末200を利用することができる。よって、通報を行う場合であっても、通信費という観点では、スマートフォンに一本化することが可能である。
【0092】
3.上記実施形態では、
前記転倒判定工程では、前記比較工程で有意差が生じているとの判断に応じて、
前記第1の通信手段による前記鞍乗型車両との通信範囲が最大の通信範囲でない場合は、前記第1の通信手段のアンテナ出力を上げ(S1301,S1302)、
前記第1の通信手段による前記鞍乗型車両との通信範囲が最大の通信範囲である場合は、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する(S1301,S814)。
【0093】
この実施形態によれば、鞍乗型車両100が転倒した際に、鞍乗型車両100とライダが所有する携帯端末200とが物理的に離れた場合であっても、ある程度通信を確保して上記転倒検知センサ102の出力を受信することができる。
【0094】
4.上記実施形態では、
前記携帯端末は、該携帯端末の位置情報を取得する位置情報取得手段(205)をさらに備え、
前記比較工程では、前記加速度に関する有意差に代えて、又は、前記加速度に関する有意差に加えて、
前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の位置情報(107)と、前記携帯端末の前記位置情報取得手段によって取得した位置情報とを比較して有意差が生じているかどうかを判断する(S813)。
【0095】
この実施形態によれば、加速度による有意差に代えて又は加えて鞍乗型車両100のGPS107と、携帯端末200のGPS205との位置情報に有意差が生じているかどうかを判断して転倒判定を行うことも可能である。
【0096】
5.上記実施形態では、
前記鞍乗型車両が転倒したとの判定に従って、前記第2の通信手段(207)によって所定の宛先へ通報する通報工程をさらに含む(S604,S807)。
【0097】
この実施形態によれば、携帯端末200で鞍乗型車両100の転倒を検知した際に、携帯端末200の通信機能を利用して通報を行うことができる。よって、通信費という観点では、スマートフォンに一本化することが可能である。
【0098】
6.上記実施形態では、
前記通報工程による通報を停止する操作を受け付ける第1の操作オブジェクトを前記携帯端末の表示部に表示する工程(S803)をさらに含む。
【0099】
この実施形態によれば、通報を停止するための操作オブジェクトが携帯端末200の操作表示部に表示されるため、通報の必要のない転倒においては通報をキャンセルすることができる。
【0100】
7.上記実施形態では、
前記第1の通信手段を介して前記鞍乗型車両へ表示指示を通知し、前記通報工程による通報を停止する操作を受け付ける第2の操作オブジェクトを前記鞍乗型車両の表示部に表示させる工程をさらに含む(S803,S904)。
【0101】
この実施形態によれば、通報を停止するための操作オブジェクトが鞍乗型車両100のメータパネルMPに表示されるため、通報の必要のない転倒においては通報をキャンセルすることができる。例えば携帯端末200が転倒により飛ばされた場合や故障した場合にも、ライダ自身に問題がなければ通報を停止することができる。
【0102】
8.上記実施形態では、
前記第1の操作オブジェクトが表示される期間は、前記鞍乗型車両の転倒直前の車速に応じて変更される。
【0103】
この実施形態によれば、例えば車速が遅ければ、通報の必要性も低くなりやすいため、時間を長めにとることができる。一方、車速が速ければ、通報の必要性も上がるため時間を短くすることができる。
【0104】
9.上記実施形態では、
前記第2の操作オブジェクトが表示される期間は、前記第1の操作オブジェクトが表示される期間よりも長く設定される。
【0105】
この実施形態によれば、例えば転倒によって、バイクとライダが離れた場合であっても、ライダとスマートフォンは一緒にある場合が多く、バイクまでの移動を考慮するとバイクの方が長めの時間を設定し、ライダに対して停止操作の猶予を与えることができる。
【0106】
10.上記実施形態では、
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したことに加えて、前記携帯端末に設けられた位置情報取得手段(205)による位置情報を通知する(S807,S808)。
【0107】
この実施形態によれば、携帯端末200の位置情報を送信するため、転倒位置の特定が円滑に行われることが可能となる。
【0108】
11.上記実施形態では、
前記携帯端末はライダの生体情報を検知するウェアラブル端末(500)と通信を行う第3の通信手段(206)をさらに備え、
前記通報工程では、前記鞍乗型車両が転倒したことに加えて、前記ウェアラブル端末から取得した前記ライダの生体情報を通知する(S805,S807)。
【0109】
この実施形態によれば、転倒時のライダの生体情報を通報先に知らせることができ、通知先において緊急性を判断することができる。
【0110】
12.上記実施形態の鞍乗型車両(100)は、
前記鞍乗型車両の起動時に携帯端末と近距離無線通信を確立する通信手段(103)と、
車両の傾きの程度に応じて前記鞍乗型車両の転倒を検知して信号を出力する転倒検知手段(102)と、
前記鞍乗型車両に関する車速を検知する車速検知手段(106)と、
前記転倒検知手段からの信号の入力に応じて前記通信手段によって前記携帯端末へ該信号を通知し、前記車速検知手段からの出力を前記通信手段によって前記携帯端末へ周期的に通知する制御手段(101,S702-S704)と
を備える。
【0111】
この実施形態によれば、鞍乗型車両100から車速に関する情報及び転倒に関する情報を近距離無線通信によって携帯端末200へ送信し、携帯端末200で転倒を判断させて通報に際してライダのスマートフォン等の携帯端末200を利用することができる。よって、通信費という観点では、スマートフォンに一本化することが可能である。
【0112】
13.上記実施形態の鞍乗型車両(100)、携帯端末(200)、及び外部装置(300,400,500,600)を含むシステムは、
前記携帯端末(200)は、
前記鞍乗型車両と近距離無線通信を行う第1の通信手段(206)と、
前記外部装置と通信を行う第2の通信手段(207)と、
加速度センサ(209)と、
前記鞍乗型車両からの情報を前記第1の通信手段を介して受信する受信手段(S602)と、
前記鞍乗型車両の情報に含まれる前記鞍乗型車両の移動速度が所定値以上である場合に、前記鞍乗型車両からの情報に含まれる該鞍乗型車両の加速度と、前記携帯端末の加速度センサによって取得した加速度とを比較して有意差が生じているかどうかを判断する比較手段(S813)と、
前記比較手段によって有意差が生じているとの判断に基づいて、前記鞍乗型車両が転倒したと判定する転倒判定手段(S814)と
を備え、
前記鞍乗型車両(100)は、
前記鞍乗型車両の起動時に携帯端末と近距離無線通信を確立する第3の通信手段(103)と、
前記鞍乗型車両に関する車速を検知する車速検知手段(106)と、
前記車速検知手段からの出力を前記第3の通信手段によって前記携帯端末へ周期的に通知する制御手段(101,S702)と
を備える。
【0113】
この実施形態によれば、鞍乗型車両100から車速に関する情報及び転倒に関する情報を近距離無線通信によって携帯端末200へ送信し、携帯端末200で転倒を判断させて通報に際してライダのスマートフォン等の携帯端末200を利用することができる。よって、通信費という観点では、スマートフォンに一本化することが可能である。
【0114】
14.上記実施形態では、
前記鞍乗型車両は、車両の傾きの程度に応じて前記鞍乗型車両の転倒を検知して信号を出力する転倒検知手段(102)をさらに備え、
前記制御手段は、前記転倒検知手段からの信号の入力に応じて前記第3の通信手段によって前記携帯端末へ該信号を通知し(S703,S704)、
前記転倒判定手段は、前記鞍乗型車両からの情報に前記転倒検知手段の信号が含まれる場合には、前記比較手段による判断結果に関係なく前記鞍乗型車両が転倒したと判定する(S603)。
【0115】
この実施形態によれば、鞍乗型車両100に設けられた転倒検知センサ102の出力に応じて転倒を判断できるため、より精度の高い転倒判定を行うことができる。また、鞍乗型車両100にはBluetoothユニット103が設けられるだけであって4G/5G通信自体は、ライダのスマートフォン等の携帯端末200を利用することができる。よって、通報を行う場合であっても、通信費という観点では、スマートフォンに一本化することが可能である。
また、転倒直前の車速や加速度を自動的に記録し、ライダの携帯端末に送信してもよい。送信された記録は、転倒時のライダ自身の運転行動を証明することができ、保険請求時等に利用が可能である。
【0116】
以上、発明の実施形態について説明したが、発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0117】
100:鞍乗型車両、101:制御部、102:転倒検知センサ、103:Bluetoothユニット、104:記憶部、MP:メータパネル、105:クラクション、106;車速センサ、107:GPS、200:携帯端末、201:制御部、202:記憶部、203:外部通信機器、204:表示操作部、205:GPS、206:近距離無線機器、207:通報部、208:スピーカ、209:速度センサ、300:外部機器、301:表示操作部、400:外部機器、500:ウェアラブル端末、501:生体情報検知センサ、502:データ送信部、600:外部機器、601:データ記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13