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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】車両および給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20250116BHJP
   B60L 53/14 20190101ALI20250116BHJP
   B60L 58/16 20190101ALI20250116BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20250116BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
H02J7/00 P
B60L53/14
B60L58/16
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021057134
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154217
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植木 貴大
(72)【発明者】
【氏名】大久保 優介
(72)【発明者】
【氏名】石橋 達也
(72)【発明者】
【氏名】前澤 良明
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-042569(JP,A)
【文献】特開2014-135877(JP,A)
【文献】特開2011-135727(JP,A)
【文献】特開2019-092260(JP,A)
【文献】特開2016-031879(JP,A)
【文献】特開2018-029430(JP,A)
【文献】特開2017-163822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H01M 10/48
H01M 10/44
B60L 58/16
B60L 53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車載バッテリと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
自車両とは異なる車両であって、受電を要する車両を受電車両とし、
前記自車両は、前記車載バッテリに蓄電された電力を前記受電車両に供給する給電が可能であり、
前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、
前記車載バッテリにおける所定のタイミングのSOHを基準とした前記SOHの減少量を定期的に導出することと、
前記SOHの減少量が所定閾値以上となった場合、前記受電車両への前記給電の実行を要求する給電要求を、前記自車両から前記受電車両に伝達することと、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記車載バッテリの充電における単位電力量当たりの価格を示す充電料金単価を、前記充電の実行ごとに導出することと、
前記給電における単位電力量当たりの価格を示す給電料金単価を、前記充電料金単価以下に設定することと、
前記給電料金単価を、前記自車両から前記受電車両に伝達することと、
を含む処理を実行する、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記自車両から前記受電車両に供給することが可能な電力量を給電可能電力量とし、
前記プロセッサは、
前記車載バッテリのSOCが、前記車載バッテリにおける劣化の進行を抑制することが可能なSOC以下となるように、前記給電可能電力量を導出することと、
前記給電可能電力量を、前記自車両から前記受電車両に伝達することと、
を含む処理を実行する、請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
受電を要する車両である受電車両と、
車載バッテリに蓄電された電力を前記受電車両に供給する給電が可能な車両である給電車両と、
を備え、
前記給電車両は、
制御装置を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、
前記車載バッテリにおける所定のタイミングのSOHを基準とした前記SOHの減少量を定期的に導出することと、
前記SOHの減少量が所定閾値以上となった場合、前記受電車両への前記給電の実行を要求する給電要求を、自車両から前記受電車両に伝達することと、
を含む処理を実行する、給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両および給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、電力の供給が可能な給電可能車から、車載バッテリの充電を要する充電対象車に給電を行う技術が開示されている。かかる技術では、充電対象車への給電が可能な給電可能車が、複数の車両の中から選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-108870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、車載バッテリのSOC(State Of Charge)が満充電のような高い状態で維持されると、車載バッテリの劣化が進行し易い。
【0005】
そこで、本発明は、車載バッテリの劣化の進行を抑制することが可能な車両および給電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る車両は、
車載バッテリと、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
自車両とは異なる車両であって、受電を要する車両を受電車両とし、
前記自車両は、前記車載バッテリに蓄電された電力を前記受電車両に供給する給電が可能であり、
前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、
前記車載バッテリにおける所定のタイミングのSOHを基準とした前記SOHの減少量を定期的に導出することと、
前記SOHの減少量が所定閾値以上となった場合、前記受電車両への前記給電の実行を要求する給電要求を、前記自車両から前記受電車両に伝達することと、
を含む処理を実行する。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る給電システムは、
受電を要する車両である受電車両と、
車載バッテリに蓄電された電力を前記受電車両に供給する給電が可能な車両である給電車両と、
を備え、
前記給電車両は、
制御装置を備え、
前記制御装置は、
1つまたは複数のプロセッサと、
前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリと、
を有し、
前記プロセッサは、前記メモリに含まれるプログラムと協働し、
前記車載バッテリにおける所定のタイミングのSOHを基準とした前記SOHの減少量を定期的に導出することと、
前記SOHの減少量が所定閾値以上となった場合、前記受電車両への前記給電の実行を要求する給電要求を、自車両から前記受電車両に伝達することと、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車載バッテリの劣化の進行を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態にかかる給電システムの構成を示す概略図である。
図2図2は、給電車両における制御装置の機能を示すブロック図である。
図3図3は、満充電容量マップの一例を示す図である。
図4図4は、充電料金単価導出部の動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、劣化検出部の動作の一例を説明するフローチャートである。
図6図6は、マッチングが成立するまでの流れを説明するフローチャートである。
図7図7は、マッチングが成立した後の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかる給電システム1の構成を示す概略図である。給電システム1は、1台または複数台の受電車両10と、1台または複数台の給電車両12と、サーバ14とを含む。図1では、1台の受電車両10および1台の給電車両12を例示する。しかし、受電車両10および給電車両12の台数は、それぞれ1台に限らず、任意の台数であってもよい。給電システム1では、後に詳述するが、任意の給電車両12から任意の受電車両10に電力を供給することができる。
【0012】
受電車両10は、例えば、電気自動車またはハイブリッド車である。受電車両10は、車載バッテリ20を備える。車載バッテリ20は、例えば、リチウムイオンバッテリなどの二次電池である。車載バッテリ20は、受電車両10の駆動源であるモータジェネレータに電力を供給する。モータジェネレータは、受電車両10の車輪を駆動させる。また、モータジェネレータは、受電車両10の減速時に発電する。車載バッテリ20は、モータジェネレータによって生成された電力によって充電される。
【0013】
受電車両10は、充電口22を備える。充電口22は、車載バッテリ20に電気的に接続される。充電口22は、充電コネクタ24と接続可能である。受電車両10は、充電口22および充電コネクタ24を通じて、受電車両10の外部から受電することができる。車載バッテリ20は、受電車両10の外部から受電された電力による充電が可能となっている。
【0014】
車載バッテリ20のSOCは、受電車両10の走行によって低下する。SOCが低下していくと、車載バッテリ20の充電が必要となってくる。受電車両10は、車載バッテリ20の充電のために、受電車両10の外部からの受電を要する車両である。なお、受電車両10は、後述の給電車両12とは異なる車両であるとする。
【0015】
受電車両10は、通信装置30を備える。通信装置30は、受電車両10の外部と通信することができる。具体的には、通信装置30は、インターネットまたは電話網などのネットワーク32を通じてサーバ14と通信することができる。通信装置30は、ネットワーク32を通じて給電車両12と通信してもよい。
【0016】
受電車両10は、制御装置34を備える。制御装置34は、1つまたは複数のプロセッサ36と、プロセッサ36に接続される1つまたは複数のメモリ38とを備える。メモリ38は、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAMを含む。制御装置34のプロセッサ36は、メモリ38に含まれるプログラムと協働して、受電車両10全体を制御する。例えば、プロセッサ36は、受電車両10の外部からの受電に関する処理を実行する。プロセッサ36が実行する処理については、後に詳述する。
【0017】
給電車両12は、例えば、電気自動車またはハイブリッド車である。給電車両12は、車載バッテリ40を備える。車載バッテリ40は、例えば、リチウムイオンバッテリなどの二次電池である。車載バッテリ40は、給電車両12の駆動源であるモータジェネレータに電力を供給する。モータジェネレータは、給電車両12の車輪を駆動させる。また、モータジェネレータは、給電車両12の減速時に発電する。車載バッテリ40は、モータジェネレータによって生成された電力によって充電される。
【0018】
給電車両12は、充電口42を備える。充電口42は、車載バッテリ40に電気的に接続されている。充電口42は、給電車両12の外部の充電コネクタ44と接続可能である。給電車両12は、車載バッテリ40に蓄電された電力を、充電口42および充電コネクタ44を通じて、給電車両12の外部に供給することができる。
【0019】
受電車両10の充電口22と接続可能な充電コネクタ24は、充電ケーブル46の2つの末端のうち第1の末端に設けられる。給電車両12の充電口42と接続可能な充電コネクタ44は、充電ケーブル46の2つの末端のうち第2の末端に設けられる。充電コネクタ24が受電車両10と接続され、充電コネクタ44が給電車両12と接続されると、給電車両12は、充電ケーブル46を通じて受電車両10に電力を供給することができる。給電車両12は、給電車両12の車載バッテリ40に蓄電された電力を受電車両10に供給する給電が可能な車両である。
【0020】
なお、給電車両12は、充電口42を通じて給電車両12の外部の電源から受電して、車載バッテリ40の充電を行うこともできる。
【0021】
給電車両12は、通信装置50を備える。通信装置50は、給電車両12の外部と通信することができる。具体的には、通信装置50は、ネットワーク32を通じてサーバ14と通信することができる。通信装置50は、ネットワーク32を通じて受電車両10と通信してもよい。
【0022】
給電車両12は、制御装置54を備える。制御装置54は、1つまたは複数のプロセッサ56と、プロセッサ56に接続される1つまたは複数のメモリ58とを備える。メモリ58は、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAMを含む。制御装置54のプロセッサ56は、メモリ58に含まれるプログラムと協働して、給電車両12全体を制御する。例えば、プロセッサ56は、給電に関する処理を実行する。プロセッサ56が実行する処理については、後に詳述する。
【0023】
給電車両12は、温度センサ60および電圧センサ62を備える。温度センサ60は、車載バッテリ40の温度を検出する。電圧センサ62は、車載バッテリ40の入出力端子の電圧を検出する。
【0024】
サーバ14は、通信装置70を備える。通信装置70は、ネットワーク32を通じて受電車両10および給電車両12と通信することができる。
【0025】
サーバ14は、制御装置74を備える。制御装置74は、1つまたは複数のプロセッサ76と、プロセッサ76に接続される1つまたは複数のメモリ78とを備える。メモリ78は、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAMを含む。制御装置74のプロセッサ76は、メモリ78に含まれるプログラムと協働して、サーバ14全体を制御する。例えば、プロセッサ76は、任意の給電車両12と任意の受電車両10とのマッチングに関する処理を実行する。マッチングが成立すると、給電車両12は、当該給電車両12とマッチングされた受電車両10に給電を行うことができる。マッチングについては、後に詳述する。
【0026】
ところで、一般的に、車載バッテリ40のSOCが満充電のような高い状態で維持されると、車載バッテリ40の劣化が進行し易い。SOCは、車載バッテリ40における電荷状態あるいは充電状態を示す指標である。具体的には、SOCは、満充電容量を100%としたときの現在の充電容量を百分率で示す指標である。
【0027】
そこで、給電車両12のプロセッサ56は、車載バッテリ40における所定のタイミングのSOH(State Of Health)を基準としたSOHの減少量を定期的に導出すること、を含む処理を実行する。SOHは、車載バッテリ40の劣化状態を示す指標である。具体的には、SOHは、初期の満充電容量を100%としたときの現在の満充電容量を百分率で示す指標である。また、ここでの所定のタイミングは、車載バッテリ40の劣化の進行を検出するための基準タイミングに相当する。所定のタイミングは、例えば、給電車両12がIG-ON状態からIG-OFF状態に遷移したタイミングであるとする。なお、所定のタイミングは、この例に限らず、任意のタイミングに設定されてもよい。また、SOHの減少量は、基準タイミングからの車載バッテリ40の劣化の進行量に相当する。
【0028】
そして、給電車両12のプロセッサ56は、SOHの減少量が所定閾値以上となった場合、受電車両10への給電の実行を要求する給電要求を、自車両から受電車両10に伝達すること、を含む処理を実行する。具体的には、給電車両12は、サーバ14を介して給電要求を受電車両10に伝達する。また、ここでの所定閾値は、例えば、1%とするが、この例に限らず、任意な値に設定することができる。
【0029】
サーバ14は、このような給電要求を受けて、給電要求の送信元の給電車両12と、任意の受電車両10とのマッチングを行う。受電車両10がマッチングされると、マッチングされた受電車両10は、マッチングの相手となる給電車両12の位置に移動する。そうすると、給電車両12は、給電車両12の車載バッテリ40の電力を受電車両10に供給することが可能となる。給電車両12から受電車両10に給電が行われると、給電車両12における車載バッテリ40のSOCが低下する。これにより、車載バッテリ40のSOCが高い状態から解消され、給電車両12は、車載バッテリ40のさらなる劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0030】
また、SOHの減少量が所定閾値以上となった場合に、給電車両12が給電要求の伝達を行うことから、給電の早期の実行が望まれる。
【0031】
そこで、給電車両12のプロセッサ56は、車載バッテリ40の充電における単位電力量当たりの価格を示す充電料金単価を、充電の実行ごとに導出すること、を含む処理を実行する。給電車両12のプロセッサ56は、給電における単位電力量当たりの価格を示す給電料金単価を、充電料金単価以下に設定すること、を含む処理を実行する。給電車両12のプロセッサ56は、給電料金単価を、自車両から受電車両10に伝達すること、を含む処理を実行する。なお、単位電力量当たりの価格は、単価に相当する。
【0032】
すなわち、給電車両12は、自車両において負担した充電料金単価以下の給電料金単価を受電車両10に提示する。受電車両10は、給電料金単価が低い給電車両12からの受電を望む。このため、給電車両12は、充電料金単価以下の給電料金単価とすることで、自車両からの受電を望む受電車両10を増加させることができる。そうすると、給電要求を伝達した給電車両12と、当該給電車両12からの受電を望む受電車両10とのマッチングが成立し易くなる。その結果、給電車両12は、受電車両10とのマッチングを早期に成立させることができ、給電の早期の実行が可能となる。
【0033】
なお、給電車両12としては、充電料金単価から給電料金単価を減算した単価分の金銭的な損失が生じる。しかし、このような金銭的な損失よりも、車載バッテリ40の劣化の進行を抑制できるというメリットの方が大きい。例えば、車載バッテリ40の劣化の進行が抑制されると、結果的に、車載バッテリ40の寿命が延び、車載バッテリ40の交換の労力および費用を抑えることができる。
【0034】
また、給電車両12は、給電料金単価を充電料金単価以下に設定する態様に限らない。給電車両12は、給電料金単価を充電料金単価より高くしてもよい。この態様では、給電料金単価が充電料金単価以下の態様と比べ、マッチングが成立し難くなる。しかし、マッチングできれば給電が可能となるため、給電要求を伝達しない態様と比べ、給電車両12は、車載バッテリ40のさらなる劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0035】
図2は、給電車両12における制御装置54の機能を示すブロック図である。制御装置54のプロセッサ56は、メモリ58に含まれるプログラムと協働して、充電料金単価導出部80、劣化検出部82、給電要求部84および給電実行部86として機能する。
【0036】
充電料金単価導出部80は、給電車両12における充電料金単価を、給電車両12の外部からの充電の実行ごとに導出する。充電料金単価導出部80は、今回の充電における充電料金単価を導出する。
【0037】
劣化検出部82は、車載バッテリ40における所定のタイミングのSOHを基準としたSOHの減少量を定期的に導出する。SOHの減少量を導出する周期は、例えば、1時間または1日ごとなど、任意に設定することができる。劣化検出部82は、例えば、後述する満充電容量マップを用いてSOHの減少量を導出する。
【0038】
図3は、満充電容量マップの一例を示す図である。満充電容量マップは、給電車両12のメモリ58に予め記憶されている。満充電容量マップは、車載バッテリ40の満充電容量、放置時間、平均温度および平均SOCがそれぞれ関連付けられたマップである。
【0039】
放置時間は、給電車両12がIG-ON状態からIG-OFF状態に遷移したタイミングを起点としたIG-OFF状態の継続時間を示す。平均温度は、放置時間中において取得された車載バッテリ40の温度の平均値を示す。平均SOCは、放置時間中において取得された車載バッテリ40のSOCの平均値を示す。また、図3の例の満充電容量マップでは、放置時間を日数で示している。このため、図3の説明では、放置時間を放置日数と呼ぶ場合がある。また、満充電容量マップには、車載バッテリ40における初期の満充電容量が記載されている。
【0040】
ここで、平均SOCが100%、平均温度が25℃、放置日数が0日のとき、車載バッテリ40の満充電容量は、25.0である。この例は、SOCが100%の状態で、給電車両12が放置開始されたことに相当する。また、車載バッテリ40における初期の満充電容量が25.0であるため、放置が開始されたタイミングにおける車載バッテリ40のSOH(State Of Health)は、100%となる。
【0041】
仮に、現在、放置日数が100日経過したとする。このタイミングにおいて、平均SOCが100%、平均温度が25℃であったとすると、車載バッテリ40の満充電容量は、24.5となる。このとき、車載バッテリ40のSOHは、98%(24.5/25.0×100=98%)となる。
【0042】
劣化検出部82は、放置が開始されたタイミングにおけるSOHから、放置が継続された現在のタイミングにおけるSOHを減算して、SOHの減少量を導出する。つまり、SOHの減少量は、基準タイミングである放置が開始されたタイミングのSOHから現在のSOHを減算した差分を示すSOH差に相当する。例えば、上記の放置日数が100日経過した例において、SOHの減少量は、2%(100%-98%=2%)となる。
【0043】
劣化検出部82は、SOHの減少量が所定閾値以上の場合、車載バッテリ40における劣化の進行を検出したと判断することができる。なお、SOHの減少量の導出方法は、満充電容量マップを用いた方法に限らない。例えば、劣化検出部82は、自車両の過去の走行履歴および充電履歴などに基づいてSOHの減少量を予測してもよい。
【0044】
図2に戻って、給電要求部84は、劣化検出部82によって車載バッテリ40における劣化の進行が検出された場合に、給電要求を受電車両10に伝達する。具体的には、給電要求部84は、給電要求をサーバ14に送信する。サーバ14は、給電要求を受信すると、マッチングの候補となる受電車両10を抽出し、抽出された受電車両10に給電要求を送信する。
【0045】
また、給電要求部84は、給電要求を伝達するに際し、給電可能電力量および給電料金単価を導出する。給電可能電力量は、給電車両12から受電車両10に供給することが可能な電力量を示す。
【0046】
給電によって車載バッテリ40のSOCが抑制可能SOC以下となるように、給電要求部84は、給電可能電力量を決定する。抑制可能SOCは、車載バッテリ40における劣化の進行を抑制することが可能なSOCを示す。抑制可能SOCは、車載バッテリ40の特性に基づいて、予め固定的に設定される。抑制可能SOCは、例えば、50%であるとするが、この例に限らず、任意な値に設定することができる。つまり、給電要求部84は、現在のSOCから抑制可能SOCを減算したSOCに相当する電力量を、給電可能電力量とする。
【0047】
なお、給電が実行されると仮定し、給電要求部84は、自車両の過去の走行履歴および充電履歴などに基づいて、給電の完了から次の充電の実行までに低下するSOCを予測してもよい。給電要求部84は、予測された予測SOCと、抑制可能SOCとに基づいて、給電可能電力量を決定してもよい。例えば、給電要求部84は、抑制可能SOCが予測SOC以上であれば、現在のSOCから抑制可能SOCを減算したSOCに基づいて給電可能電力量を決定するようにしてもよい。給電要求部84は、抑制可能SOCが予測SOC未満であれば、現在のSOCから予測SOCを減算したSOCに基づいて給電可能電力量を決定するようにしてもよい。
【0048】
給電要求部84は、給電料金単価を充電料金単価以下に設定する。例えば、給電要求部84は、自車両が今までに実行した充電における各々の充電料金単価をメモリ58から読み出す。給電要求部84は、今までに実行した充電における各々の充電料金単価のうち、最も高い充電料金単価を基準として、給電料金単価を設定する。基準とする充電料金単価からどの程度低い給電料金単価とするかについては、給電車両12の運転者が任意に設定することができる。
【0049】
なお、給電要求部84は、今までに実行した充電における各々の充電料金単価を平均した充電料金単価を基準として、給電料金単価を設定してもよい。給電要求部84は、今までに実行した充電のうち最新の充電における充電料金単価を基準として、給電料金単価を設定してもよい。
【0050】
給電要求部84は、導出した給電可能電力量および給電料金単価が包含された給電要求を、自車両から受電車両に伝達する。なお、給電要求部84は、給電可能電力量および給電料金単価を、給電要求とは別に伝達してもよい。
【0051】
給電実行部86は、マッチングされた受電車両10への給電を実行する。また、給電実行部86は、給電の完了後、給電料金を導出する。例えば、給電実行部86は、実際に供給した給電電力量に、予め提示していた給電料金単価を乗算して、給電料金を導出する。給電実行部86は、導出した給電料金を受電車両10に送信して、給電料金を請求する。
【0052】
図4は、充電料金単価導出部80の動作を説明するフローチャートである。充電料金単価導出部80は、所定の制御周期で訪れる所定の割込みタイミングごとに、図4の一連の処理を繰り返し実行する。
【0053】
まず、充電料金単価導出部80は、給電車両12の外部からの充電が実行されたか否かを判断する(S10)。給電車両12の外部からの充電が実行されなかった場合(S10におけるNO)、充電料金単価導出部80は、一連の処理を終了する。
【0054】
給電車両12の外部からの充電が実行された場合(S10におけるYES)、充電料金単価導出部80は、今回の充電における充電料金単価を導出する(S11)。そして、充電料金単価導出部80は、導出された今回の充電料金単価をメモリ58に記憶させて(S12)、一連の処理を終了する。
【0055】
図5は、劣化検出部82の動作の一例を説明するフローチャートである。劣化検出部82は、所定の制御周期で訪れる所定の割込みタイミングごとに、図5の一連の処理を繰り返し実行する。ここでの所定の制御周期は、例えば、1時間または1日など、任意の期間とすることができる。
【0056】
まず、劣化検出部82は、給電車両12がIG-OFF状態であるか否かを判断する(S20)。給電車両12がIG-ON状態である場合(S20におけるNO)、劣化検出部82は、一連の処理を終了する。
【0057】
給電車両12がIG-OFF状態である場合(S20におけるYES)、劣化検出部82は、IG-ON状態からIG-OFF状態に遷移されたタイミングからの経過時間を示す放置時間を導出する(S21)。
【0058】
次に、劣化検出部82は、温度センサ60によって検出された車載バッテリ40の温度を取得する(S22)。なお、取得された温度は、メモリ58に記憶される。次に、劣化検出部82は、放置時間中に取得された車載バッテリ40の温度に基づいて、放置時間における車載バッテリ40の平均温度を導出する(S23)。
【0059】
次に、劣化検出部82は、電圧センサ62によって検出された車載バッテリ40の電圧に基づいて、車載バッテリ40のSOCを取得する(S24)。取得されたSOCは、メモリ58に記憶される。次に、劣化検出部82は、放置時間中に取得された車載バッテリ40のSOCに基づいて、放置時間における車載バッテリ40の平均SOCを導出する(S25)。
【0060】
次に、劣化検出部82は、導出された放置時間、平均温度および平均SOCを、満充電容量マップに当てはめて、現在のSOHを導出する(S26)。なお、放置が開始されたタイミングのSOHは、メモリ58に記憶される。
【0061】
次に、劣化検出部82は、放置が開始されたタイミングのSOHから現在のSOHを減算して、SOHの減少量を導出し(S27)、一連の処理を終了する。
【0062】
図6は、マッチングが成立するまでの流れを説明するフローチャートである。給電車両12の劣化検出部82は、所定の制御周期で訪れる所定の割込みタイミングごとに、SOHの減少量が所定閾値以上であるか否かを判断する(S30)。劣化検出部82は、SOHの減少量が所定閾値以上である場合、車載バッテリ40における劣化の進行が検出されたと判断する。
【0063】
車載バッテリ40における劣化の進行が検出されなかった場合、すなわち、SOHの減少量が所定閾値未満であった場合(S30におけるNO)、劣化検出部82は、今回の割込みタイミングの処理を終了する。
【0064】
車載バッテリ40における劣化の進行が検出された場合、すなわち、SOHの減少量が所定閾値以上であった場合(S30におけるYES)、劣化検出部82は、給電要求部84に処理を移す。そして、給電要求部84は、ステップS31以降の処理を実行する。
【0065】
ステップS31において、給電要求部84は、現在のSOCに基づいて、給電可能電力量を導出する(S31)。例えば、給電要求部84は、現在のSOCから抑制可能SOCを減算したSOCに相当する電力量を給電可能電力量とする。
【0066】
次に、給電要求部84は、充電料金単価に基づいて、給電料金単価を導出する(S32)。例えば、給電要求部84は、今までに実行した充電における各々の充電料金単価のうち、最も高い充電料金単価を基準とする。給電要求部84は、予め設定された値引き単価を、基準の充電料金単価から減算して、給電料金単価を決定する。なお、給電要求部84は、予め設定された上乗せ単価を、基準の充電料金に加算して、給電料金単価を決定してもよい。
【0067】
次に、給電要求部84は、通信装置50を通じて給電要求をサーバ14に送信する(S33)。給電要求には、給電車両12を特定する情報が含まれる。給電車両12を特定する情報は、給電車両12を一意に識別する識別情報、給電車両12の位置を示す位置情報、給電可能電力量および給電料金単価を含む。なお、給電車両12を特定する情報は、この例に限らず、任意に設定されてもよい。
【0068】
また、受電車両10の運転者は、受電車両10の車載バッテリ20におけるSOCが低下すると、受電の指示を受電車両10に入力する。受電車両10の制御装置34は、当該入力に応じて、受電を要求する受電要求を、通信装置30を通じてサーバ14に送信する(S40)。受電要求には、受電車両10を特定する情報が含まれる。受電車両10を特定する情報は、受電車両10を一意に識別する識別情報、受電車両10の位置を示す位置情報、受電可能電力量および受電料金単価を含む。受電可能電力量は、受電車両が給電車両から受電可能な電力量を示す。受電料金単価は、受電による支払いが可能な単価を示す。なお、受電車両10を特定する情報は、この例に限らず、任意に設定されてもよい。
【0069】
サーバ14の制御装置74は、受電要求を受信すると(S41)、受電要求に含まれる受電車両10を特定する情報をメモリ78に記憶させる(S42)。記憶された受電車両10を特定する情報は、マッチングの候補として利用される。
【0070】
サーバ14の制御装置74は、給電要求を受信すると(S50)、メモリ78に記憶されている複数の受電車両10のうちから所定の条件を満たす受電車両10を抽出する(S51)。抽出の条件は、例えば、給電要求を送信した給電車両12の位置からの距離が所定距離以内の受電車両10とする。抽出の条件は、例示した条件に限らず、任意に設定されてもよい。なお、サーバ14は、給電要求を受信するよりも先に受電要求を受信していた。しかし、サーバ14は、給電要求を受信した後に受電要求を受信してもよい。
【0071】
サーバ14の制御装置74は、抽出された受電車両10に、給電要求を送信する(S52)。受電車両10の制御装置34は、給電要求を受信すると(S53)、給電車両12の位置情報、給電可能電力量および給電料金単価を運転者に提示し、受電を承諾するか否かの選択を促す(S54)。なお、運転者に提示する情報は、例示した情報に限らない。例えば、受電車両10の制御装置34は、給電車両12に関する評価または評判を示す情報などを提示してもよい。受電車両10の制御装置34は、受電車両10の運転者によって選択された結果をサーバ14に送信する(S55)。
【0072】
サーバ14の制御装置74は、いずれかの受電車両10から、受電を承諾する旨の結果を受信した場合(S56)、給電要求の送信元の給電車両12と、受電を承諾した受電車両10とをマッチングさせる(S57)。
【0073】
複数の受電車両10から受電を承諾する旨の結果を受信した場合、サーバ14の制御装置74は、所定の条件に従って、給電車両12と受電車両10とをマッチングさせる。例えば、サーバ14の制御装置74は、給電見積および受電見積を導出する。給電見積は、給電車両12における給電可能電力量に給電料金単価を乗算した値を示す。受電見積は、受電車両10における受電可能電力量に受電料金単価を乗算した値を示す。サーバ14の制御装置74は、受電を承諾する受電車両10のうち、受電見積が給電見積に最も近い受電車両10とマッチングさせる。このようなマッチングにより、給電車両12は、適切な電力量の給電を適切な料金で行うことが可能となる。
【0074】
なお、サーバ14の制御装置74は、例示した条件でマッチングさせる態様に限らない。例えば、サーバ14の制御装置74は、最も早く返信があった受電車両10とマッチングさせてもよい。また、サーバ14の制御装置74は、給電車両12と受電車両10との距離が最も近い受電車両10とマッチングさせてもよい。また、サーバ14の制御装置74は、給電車両12における給電にかかる時間と、受電車両10における受電にかかる時間との差が、最も小さい受電車両10とマッチングさせてもよい。
【0075】
マッチングが成立すると、サーバ14の制御装置74は、マッチングが成立した旨を示す成立通知を、給電車両12および受電車両10に送信する(S58)。
【0076】
給電車両12の給電要求部84は、成立通知を受信すると(S59)、マッチングが成立したことを給電車両12の運転者に提示し、給電の実行を促す。なお、給電車両12の給電要求部84は、運転者が携帯する通信端末装置に、給電の実行を促す通知を送信してもよい。
【0077】
受電車両10の制御装置34は、成立通知を受信すると(S60)、マッチングが成立したことを受電車両10の運転者に提示し、受電の実行を促す。なお、受電車両10の制御装置34は、運転者が携帯する通信端末装置に、受電の実行を促す通知を送信してもよい。
【0078】
また、サーバ14の制御装置74は、給電要求が送信された受電車両10のすべてから、受電を承諾しない旨の結果を受信した場合(S56)、ステップS51における抽出の条件を変更して、再度、ステップS51以降の処理を繰り返してもよい。
【0079】
図7は、マッチングが成立した後の流れを説明するフローチャートである。マッチングが成立すると、受電車両10の運転者は、マッチングされた給電車両12の位置まで受電車両10を移動させる。受電車両10の運転者は、充電料金単価以下の給電料金単価が提示されることで金銭的なインセンティブを得ることができるため、受電車両10を給電車両12の位置まで移動させることを許容することができる。
【0080】
なお、受電車両10が給電車両12の位置まで移動する例に限らず、給電車両12が受電車両10の位置まで移動してもよい。あるいは、給電車両12および受電車両10の両方が、所定の待ち合わせ場所まで移動してもよい。
【0081】
受電車両10の移動が完了した後、充電ケーブル46の充電コネクタ44が給電車両12に接続され、充電コネクタ24が受電車両10に接続される。このような給電準備が完了すると(S71におけるYES)、給電車両12の給電実行部86は、受電車両10への給電の実行を開始する(S72)。そうすると、受電車両10は、給電車両12からの受電が開始される(S73)。図7では、一点鎖線の矢印で電力の移動を示している。
【0082】
給電車両12の給電実行部86は、給電の終了条件が満たされるまで、給電を継続する(S74におけるNO)。給電の終了条件は、例えば、実際の給電電力量が、給電可能電力量と受電可能電力量とのうち少ない方に到達した場合とする。
【0083】
給電の終了条件が満たされた場合(S74におけるYES)、給電車両12の給電実行部86は、実際の給電電力量に給電料金単価を乗算して、給電料金を導出する(S75)。そして、給電車両12の給電実行部86は、導出された給電料金の情報を受電車両10に送信して、給電料金を請求する(S76)。
【0084】
受電車両10の制御装置34は、給電料金の情報を受信すると(S77)、受電車両10の運転者に給電料金を提示して支払いを促す(S78)。給電車両12の運転者が受電車両10の運転者から支払いを受け取ると(S79)、一連の動作が終了する。
【0085】
以上のように、本実施形態の給電車両12のプロセッサ56は、SOHの減少量が所定閾値以上となった場合、受電車両10への給電の実行を要求する給電要求を、自車両から受電車両10に伝達すること、を含む処理を実行する。これにより、給電要求を伝達した給電車両12は、受電車両10とマッチングされて、受電車両10に給電を行うことができる。給電が行われると、車載バッテリ40のSOCが高い状態から解消される。
【0086】
したがって、本実施形態の給電車両12によれば、車載バッテリ40の劣化の進行を抑制することが可能となる。
【0087】
なお、本実施形態の給電システム1では、サーバ14が給電車両12と受電車両10とのマッチングを行っていた。しかし、給電車両12の制御装置54は、自車両の周囲の受電車両10と車車間通信を行って、自車両と受電車両10とのマッチングを行ってもよい。
【0088】
また、給電車両12が給電要求を伝達してから給電の実行が開始されるまでの任意のタイミングにおいて、給電車両12の制御装置54は、受電車両10に対して、給電料金単価に関する交渉の機会を与えてもよい。また、給電車両12の制御装置54は、マッチングの候補となる受電車両10の各々から、オークション形式のようにして受電料金単価を取得し、その受電料金単価に基づいて、給電料金単価を決定してもよい。
【0089】
また、給電車両12の制御装置54は、SOHの減少量が所定閾値以上となった場合において、車載バッテリ40のSOCが所定閾値未満であれば、給電要求の伝達を行わないようにしてもよい。
【0090】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0091】
1 給電システム
10 受電車両
12 給電車両
40 車載バッテリ
54 制御装置
56 プロセッサ
58 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7