(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】回転電機及び電動駆動システム
(51)【国際特許分類】
H02K 3/04 20060101AFI20250116BHJP
H02K 3/28 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
H02K3/04 E
H02K3/28 N
(21)【出願番号】P 2021091040
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高畑 良一
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 公則
(72)【発明者】
【氏名】山崎 慎司
(72)【発明者】
【氏名】中山 健一
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-126630(JP,A)
【文献】特許第6423931(JP,B1)
【文献】特開2007-228756(JP,A)
【文献】特開昭59-096842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/04
H02K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のスロットを有する固定子コアと、
前記スロットの内部に配置されるスロット挿入部と前記固定子コアに対して軸方向の一方の端面から突出する第1コイルエンド部とを有する複数のセグメント導体を含んで前記固定子コアに巻装されるコイルと、
を有する固定子と、
前記固定子とギャップを介して配置される回転子と、を備えた回転電機であって、
前記第1コイルエンド部は、前記スロット挿入部につながる直線部と、中央部を頂点とする山形形状に形成される斜辺部と、が形成され、
前記複数のセグメント導体は、第1のスロットピッチで配置される2つのスロットに挿入される第1セグメント導体と、前記第1のスロットピッチよりも少ない第2のスロットピッチで配置される2つのスロットに挿入される第2セグメント導体と、を含んで構成され、
前記第2セグメント導体は、一方のスロット側で前記直線部を成す第2直線部が他方のスロット側で前記直線部を成す第1直線部よりも長く形成され、
前記第1セグメント導体の前記中央部における前記固定子コアの前記端面からの突き出し高さと前記第2セグメント導体の前記中央部における前記固定子コアの前記端面からの突き出し高さとが略等しく形成される回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
毎極毎相のスロット数が2である回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記コイルは、口出し線を構成する口出しセグメント導体を備え、
前記口出しセグメント導体は、前記スロットに収納され軸方向に平行な直線状を成す第1口出し部と、曲がり部を介して前記第1口出し部につながり直線状を成して前記第1コイルエンド部に位置する第2口出し部と、を備え、
前記第1口出し部と前記第2口出し部とは、前記第2口出し部が前記第1口出し部に対して内周側に位置するように前記固定子コアに対する径方向の位置が異なり、
前記口出しセグメント導体は、前記第2セグメント導体の前記第1直線部よりも前記第2直線部に近づけて配置される回転電機。
【請求項4】
請求項3に記載の回転電機であって、
前記口出しセグメント導体は、前記固定子コアの内周側の位置で前記スロットに収納される内周側口出しセグメント導体と、前記固定子コアの外周側の位置で前記スロットに収納される外周側口出しセグメント導体と、を備える回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記スロットの内側において、前記固定子コアと前記セグメント導体の前記スロット挿入部との間、及び隣接する2つの前記スロット挿入部の間に絶縁体が配置されている回転電機。
【請求項6】
請求項1に記載の回転電機であって、
固定子コアは、鋼板を積層するとともに、積層した鋼板を溶接して固定した溶接箇所を有し、
固定子コアの前記溶接箇所は、前記第2セグメント導体の前記第1直線部よりも前記第2直線部に近づけて配置される回転電機。
【請求項7】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記
複数のセグメント導体は、前記固定子コアに対して前記固定子コアの前記端面とは反対側の端面から突出する第2コイルエンド部を有し、
前記セグメント導体の前記第2コイルエンド部は、前記固定子コアの前記反対側の端面の側で、他のセグメント導体の
前記第2コイルエンド部と溶接により接続され、
前記セグメント導体の前記第2コイルエンド部と
前記他のセグメント導体の
前記第2コイルエンド部との溶接による接合部に径方向に曲がる捻り部が設けられる回転電機。
【請求項8】
車両の駆動力を発生する回転電機及び電力変換装置を備えた電動駆動システムであって、
前記回転電機として請求項1に記載の回転電機を備える電動駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機と、回転電機を使用した電動駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特開2020-54052号公報(特許文献1)に記載された回転電機が知られている。特許文献1の回転電機の固定子は、固定子コアと、固定子コアに巻回されるコイルと、を備える。コイルは、一対の第一脚部、及び、固定子コアの第一端面の側に配された第一渡り部を有する基本コイルセグメントと、一対の第二脚部、及び、第一端面との間に第一渡り部が位置するように配された第二渡り部を有する渡りコイルセグメントと、を備える(以上、要約参照)。さらに特許文献1には、基本コイルセグメントがメインコイルセグメントとサブコイルセグメントとで構成され、メインコイルセグメントは一対の第一脚部が6ピッチだけ離れて位置する2つのスロットに挿入され、サブコイルセグメントは一対の第一脚部が5ピッチだけ離れて位置する二つのスロットに挿入される構成が記載されている(段落0023及び
図4参照)。特許文献1の回転電機の固定子では、複数のメインコイルセグメントと1つのサブコイルセグメントとが直列に接続されて1つのコイル構成体が構成され、複数(4つ)のコイル構成体が固定子コアの径方向に配列されている(段落0022及び
図4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のメインコイルセグメント及びサブコイルセグメントは、以下、セグメント導体と呼んで説明する。また必要に応じてメインコイルセグメントは第1セグメント導体、サブコイルセグメントは第2セグメント導体と呼んで区別する。
【0005】
スロットピッチが異なる第1セグメント導体及び第2セグメント導体を製造する場合、第1脚部と第2脚部とを接続する斜辺部と第1脚部との曲げ角、及び斜辺部と第2脚部との曲げ角を第1セグメント導体と第2セグメント導体との間で変えることは、曲げ加工に伴う検査件数が増加することなどから好ましくない。斜辺部と第1脚部との曲げ角及び斜辺部と第2脚部との曲げ角を第1セグメント導体と第2セグメント導体との間で変えない場合、第1セグメント導体の高さと第2セグメント導体の高さとが異なることになり、第1セグメント導体及び第2セグメント導体を用いて固定子コアにコイルを巻装する作業で使用する治具が複雑化したり、巻装作業が複雑化することでセグメント導体の曲げ加工の精度を向上することが難しくなったりするなどの課題が生じる。
【0006】
本発明の目的は、第1セグメント導体の高さと第2セグメント導体の高さとの差を小さくすることができる回転電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の回転電機は、
複数のスロットを有する固定子コアと、
前記スロットの内部に配置されるスロット挿入部と前記固定子コアに対して軸方向の一方の端面から突出する第1コイルエンド部とを有する複数のセグメント導体を含んで前記固定子コアに巻装されるコイルと、
を有する固定子と、
前記固定子とギャップを介して配置される回転子と、を備えた回転電機であって、
前記第1コイルエンド部は、前記スロット挿入部につながる直線部と、中央部を頂点とする山形形状に形成される斜辺部と、が形成され、
前記複数のセグメント導体は、第1のスロットピッチで配置される2つのスロットに挿入される第1セグメント導体と、前記第1のスロットピッチよりも少ない第2のスロットピッチで配置される2つのスロットに挿入される第2セグメント導体と、を含んで構成され、
前記第2セグメント導体は、一方のスロット側で前記直線部を成す第2直線部が他方のスロット側で前記直線部を成す第1直線部よりも長く形成され、
前記第1セグメント導体の前記中央部における前記固定子コアの前記端面からの突き出し高さと前記第2セグメント導体の前記中央部における前記固定子コアの前記端面からの突き出し高さとが略等しく形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1セグメント導体の高さと第2セグメント導体の高さとの差を小さくすることができる回転電機を提供することができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る回転電機1の、中心軸線Axに平行で且つ中心軸線Axを含む断面を示す断面図(縦方向断面図)である。
【
図2】本発明に係る回転電機1の固定子10を構成する固定子コア11を示す図であり、固定子コア11を軸方向から見た平面図である。
【
図3】本発明に係る回転電機1の回転子30を構成する回転子コア31を示す図であり、回転子コア31を軸方向から見た平面図である。
【
図4A】本発明に係るコイル12の一実施例について、コイル12を構成する第1コイルセグメント121及び第2コイルセグメント122の固定子コア11への組み付け状態を示す図である。
【
図4B】固定子コア11に組み付け前の第1セグメント導体121の形状的特徴の概略を示す平面図である。
【
図4C】固定子コア11に組み付け前の第2セグメント導体122の形状的特徴の概略を示す平面図である。
【
図6】口出しセグメント導体123の形状を示す平面図である。
【
図7】回転電機1の固定子10を第1コイルエンド部側(端面11S1側)から見た平面図である。
【
図8】第1セグメント導体121及び第1セグメント導体122を挿入した固定子コア11のスロット部112の部分断面図である。
【
図9】固定子コア11が薄板状の鋼板を積層して製造され、且つ積層される鋼板を溶接で接合する実施例を説明する図である。
【
図10】
図4A及び
図4Cの捻り部121CD,122CDを溶接部Wに形成する実施例を説明する図である。
【
図11】本発明の一実施例に係る回転電機1を搭載したハイブリッド型電気自動車500の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の一実施例について説明する。各図において共通する構成には同じ符号を付して説明の重複を避ける。また同じ符号を用いている場合でも、他の図と異なる内容を含む場合は、その異なる部分について説明する。
【0012】
以下の説明において、回転電機1の回転子30の径方向はrで表示し、回転子30の回転軸32に沿う方向(軸方向)はzで表示し、回転子30の回転方向はθで表示する。また回転軸32の中心を通る軸線(中心軸線)はAxで表示する。すなわち軸方向は回転軸22の中心軸線Axに沿う方向と一致する。また回転方向θは、中心軸線Axを中心とする周方向に一致する。
【0013】
以下の説明において、上下方向、鉛直方向及び水平方向を指定して説明する場合がある。これらの方向は各図に基づいて設定される方向であり、回転電機1の実装状態における上下方向、鉛直方向及び水平方向を指定するものではない。なお、回転電機1を軸方向に垂直な方向に切断して示す断面は横方向断面と呼び、回転電機1を軸方向に切断して示す断面は縦方向断面(r-z断面)と呼ぶ。
【0014】
[実施例1]
図1乃至
図3を参照して、本発明の一実施例に係る回転電機1について説明する。
図1は、本発明に係る回転電機1の、中心軸線Axに平行で且つ中心軸線Axを含む断面図(縦方向断面図)である。
図2は、本発明に係る回転電機1の固定子10を構成する固定子コア11を示す図であり、固定子コア11を軸方向から見た平面図である。
図3は、本発明に係る回転電機1の回転子30を構成する回転子コア31を示す図であり、回転子コア31を軸方向から見た平面図である。なお
図3では、回転軸32の図示は省略されている。
【0015】
本実施例に係る回転電機1は、例えば、回転電機のみの動力によって走行する電気自動車や、エンジン及び回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車の走行用モータとして用いることができる。
【0016】
回転電機1は、
図1に示すように、固定子10と回転子30とハウジング50とを備える。固定子10は、ハウジング50の内部に保持され、固定子コア11と固定子巻線(コイル)12とを備える。
【0017】
固定子コア11は固定子10の構成部品であり、電磁鋼板(薄板)を積層して構成される。固定子コア11は、
図2に示すように、円環状を成すヨーク113と、ヨーク113から回転子30側に櫛歯状に突出する複数のティース111と、複数のティース111の間に形成される複数のスロット112と、を有する。スロット112は、コイル12の収納空間を構成する。本実施例では、スロット数が48の固定子コア11を例示している。
【0018】
スロット112に挿入されて固定子コア11に巻装されるコイル12は、3相のU,V,W巻線からなる。
【0019】
固定子コア11の内周側には、
図1に示すように、回転子30が空隙Gpを介して回転可能に配置されている。回転子30は、回転軸32に固定された回転子コア31と、回転子コア31に固定され、磁極を構成する複数の永久磁石33と、軸方向において回転子コア31の両端面に取り付けられる非磁性体の端盤34A,34Bと、を備える。回転子30は、エンドブラケット51A,51Bに設けられた軸受61A,61Bによって回転軸32が軸支されていることにより、回転可能に配置されている。回転軸31は駆動軸又はシャフトと呼ばれる場合もある。
【0020】
回転子コア31は、主に磁路と強度部材とを構成する役割を持ち、薄板状の鋼板を積層して作られる。鋼板(積層鋼板)の積層方向は軸方向に一致する。端盤34A,34Bは、回転子コア32を形成する鋼板を軸方向において固定するために、回転子コア32の軸方向両端部に配置される構造部材である。或いは、積層鋼板は溶接により固定される場合もあり、この場合、端盤34A,34Bを用いないこともある。積層鋼板は通常、電磁鋼板が用いられる。
【0021】
ハウジング50は、軸受61A,61Bが設けられた一対のエンドブラケット51A,51Bと、側面部52と、を有し、固定子10及び回転子30を内包する。回転軸32と一体に構成される回転子30は、軸受61A,61Bを介して、ハウジング50により回転自在に保持される。
【0022】
本実施例では、回転電機1は3相交流電流により駆動されるものとする。このために回転軸32は、回転子30の極の位置や回転速度を検出するレゾルバ(回転角センサ)35を備える。レゾルバ35からの出力に基づいて、図示しない制御回路及び駆動回路において、図示しないパワーモジュールがスイッチング動作を行うための制御信号及び駆動信号が生成される。
【0023】
本実施例では、回転電機1として埋込磁石モータを例示するが、埋込磁石モータに限定される訳ではない。回転子コア31には、
図3に示すように、周方向に沿って、複数の磁石収納部36が設けられ、磁石37が孔36に挿入されて固定されている。磁石収納部36は孔(磁石挿入孔)により構成される。
【0024】
本実施例では、1極が3個の磁石37で構成される構成を例示しているが、1極を構成する磁石37の個数は3個に限定されない。例えば、1極を1個の平板磁石で構成したり、2個の平板磁石をV字に配置して1極を構成したりしてもよい。
【0025】
また本実施例の回転子30は8つの磁極を有する(極数=8)。上述した様に、固定子10は48のスロットを有しており(スロット数=48)、3相のコイル12が巻装される(相数=3)。本実施例の回転電機1は、3相、8極、48スロットの回転電機である。この場合、(スロット数)/((極数)×(相数))で求められる毎極毎相のスロット数(NSPP)は2である。
【0026】
次に、
図4A乃至
図4Cを参照して、本実施例のコイル12を構成するコイルセグメント121,122の構成について説明する。
【0027】
図4Aは、本発明に係るコイル12の一実施例について、コイル12を構成する第1コイルセグメント121及び第2コイルセグメント122の固定子コア11への組み付け状態を示す図である。
コイル12は、複数のセグメント導体121,122を含んで固定子コア11に巻装される。コイル12は、波巻き巻線として、複数のスロットを跨ぎながら配置され、機械的に固定子コア11を1周する。セグメント導体は、断面が矩形のコイル部材であり、外周にはエナメルなどにより絶縁層が設けられている。
【0028】
複数のセグメント導体121,122は、第1のスロットピッチで配置される2つのスロット112に挿入される第1セグメント導体121と、第1のスロットピッチよりも少ない第2のスロットピッチで配置される2つのスロットに挿入される第2セグメント導体122と、を含む。第1セグメント導体121は第1のスロットピッチで複数個が連続して設けられる。第2セグメント導体122は、複数の第1セグメント導体121に続く最後のセグメント導体として、スロット数が不足するのを調整するために、第2のスロットピッチで設けられる。
【0029】
本実施例では、8極、48スロットの回転電機1として、第1のスロットピッチは6に、第2のスロットピッチは5に設定される構成が例示される。
【0030】
ここで、
図4B及び
図4Cを参照して、第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122について説明する。
図4Bは、固定子コア11に組み付け前の第1セグメント導体121の形状的特徴の概略を示す平面図である。
図4Cは、固定子コア11に組み付け前の第2セグメント導体122の形状的特徴の概略を示す平面図である。
【0031】
図4Bに示すように、第1セグメント導体121は、1対の第1脚部121A及び第2脚部121Bと、中央部を頂点121CCとする略山形形状に形成され、第1脚部121Aと第2脚部121Bとを接続する斜辺部121Cと、を有する。すなわち斜辺部121Cは、頂点121CCを境として、第1脚部121Aの側に頂点121CCから下降する第1斜辺部121CAと、第2脚部121Bの側に頂点121CCから下降する第2斜辺部121CBと、を有する。第1斜辺部121CAは、第1脚部121Aに対して曲げ部121A1で角度θ121A(=θ1)に折り曲げられている。第2斜辺部121CBは、第2脚部121Bに対して曲げ部121B1で角度θ121B(=θ1)に折り曲げられている。
【0032】
第1脚部121Aの長さk121Aと第2脚部121Bの長さk121Bとは、いずれもk1で等しい。第1斜辺部121CAが第1脚部121Aとなす角度θ121Aと第2斜辺部121CBが第2脚部121Bとなす角度θ121Bとは、いずれもθ1で等しい。第1セグメント導体121は、第1のスロットピッチで配置される2つのスロットに跨って挿入されるために、1対の第1脚部121Aと第2脚部121Bとの間に、6つのティース111(
図2参照)が収まる間隔d1を有する。
【0033】
121xは斜辺部121Cの頂点121CCを通る第1セグメント導体121の中心線を示す。第1脚部121Aと中心線121xとの距離と第2脚部122Aと中心線121xとの距離とは、いずれもd2であり等しい。
【0034】
図4Cに示すように、第2セグメント導体122は、1対の第1脚部122A及び第2脚部122Bと、第1脚部122Aと第2脚部122Bとを接続する斜辺部122Cと、を有する。斜辺部122Cは、頂点122CCを有する略山形形状に形成され、頂点121CCを境として、第1脚部122Aの側に頂点122CCから下降する第1斜辺部122CAと、第2脚部122Bの側に頂点122CCから下降する第2斜辺部122CBと、を有する。第1斜辺部122CAは、第1脚部122Aに対して曲げ部122A1で角度θ122A(=θ1)に折り曲げられている。第2斜辺部122CBは、第2脚部122Bに対して曲げ部122B1で角度θ122B(=θ1)に折り曲げられている。
【0035】
第2セグメント導体122は、第2のスロットピッチで配置される2つのスロットに跨って挿入されるために、1対の第1脚部122Aと第2脚部122Bとの間に、5つのティース111(
図2参照)が収まる間隔d3を有する。すなわち、d3はd1よりも小さい(d3<d1)。
【0036】
一方、第1斜辺部122CAが第1脚部122Aとなす角度θ122Aと第2斜辺部122Cが第2脚部122Bとなす角度θ122Bとはいずれもθ1で等しく、第2セグメント導体122における角度θ122A及び角度θ122Bは、第1セグメント導体121における角度θ121A及び角度θ121Bと等しい。
【0037】
このため、第2脚部122Bの長さk122Bはk2となり、第1脚部122Aの長さk122A(=k1)よりもk2とk1の差分Δkだけ長くなる(k2>k1)。この場合、第2セグメント導体122の第1脚部122Aの長さk122Aはk1であり、第1セグメント導体121の第1脚部121Aの長さk121A及び第2脚部121Bの長さk121Bと等しい。
【0038】
122xは斜辺部122Cの頂点122CCを通る線分を表しているが、第2脚部122Aと線分122xとの距離d4は第1脚部122Aと線分122xとの距離d2よりも小さくなる。なお、第1脚部122Aと線分122xとの距離d2は、第1セグメント導体121における第1脚部121Aと中心線121xとの距離d2と等しい。
【0039】
また、第1セグメント導体121の斜辺部121Cと第2セグメント導体122の斜辺部122Cとには、
図4B及び
図4Cに示すように、捻り部121CD,122CDが設けられる。第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122は、複数のセグメント導体が径方向に重なるように配置される。このとき、複数のセグメント導体の干渉を避けるように、セグメント導体には
図7の破線Tで示すような捻り部(径方向の曲げ部)121CD,122CDが形成される。
【0040】
再び
図4Aに戻って説明する。
図4B及び
図4Cに示す状態の第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122は固定コア11のスロット112に挿入される。本実施例では、固定コア11の端面11S1の側からスロット112に挿入される。
【0041】
スロット112に挿入された第1セグメント導体121の第1脚部121Aは、スロット112の内部に配置されるスロット挿入部121A0に対して第1脚部121Aの先端(下端)121A6側の部分121A4が曲げ部121A3で第2脚部121Bの側とは反対側に折り曲げられる。また第1セグメント導体121の第2脚部121Bは、スロット112の内部に配置されるスロット挿入部121B0に対して第2脚部121Bの先端(下端)121B6側の部分121B4が曲げ部121B3で第1脚部121Aの側とは反対側に折り曲げられる。曲げ部121A3で折り曲げられた部分121A4は第1セグメント導体121の第3斜辺部を構成し、曲げ部121B3で折り曲げられた部分121B4は第1セグメント導体121の第4斜辺部を構成する。
【0042】
さらに第1脚部121Aは、第3斜辺部121A4に対して第1脚部121Aの先端(下端)121A6側が曲げ部121A5でスロット挿入部121A0に沿う方向に折り曲げられる。第2脚部121Bは、第4斜辺部121B4に対して第2脚部121Bの先端(下端)121B6側が曲げ部121B5でスロット挿入部121B0に沿う方向に折り曲げられる。
【0043】
スロット112に挿入された第2セグメント導体122第1脚部122Aは、スロット112の内部に配置されるスロット挿入部122A0に対して第1脚部122Aの先端(下端)122A6側の部分122A4が曲げ部122A3で第2脚部122Bの側とは反対側に折り曲げられる。また第2セグメント導体122の第2脚部122Bは、スロット112の内部に配置されるスロット挿入部122B0に対して第2脚部122Bの先端(下端)122B6側の部分122B4が曲げ部122B3で第1脚部122Aの側とは反対側に折り曲げられる。曲げ部122A3で折り曲げられた部分122A4は第2セグメント導体122の第3斜辺部を構成し、曲げ部122B3で折り曲げられた部分122B4は第2セグメント導体122の第4斜辺部を構成する。
【0044】
さらに第1脚部122Aは、第3斜辺部122A4に対して第1脚部122Aの先端(下端)122A6側が曲げ部122A5でスロット挿入部122A0に沿う方向に折り曲げられる。第2脚部122Bは、第4斜辺部122B4に対して第2脚部122Bの先端(下端)122B6側が曲げ部122B5でスロット挿入部122B0に沿う方向に折り曲げられる。
【0045】
第1セグメント導体121の第1脚部121Aにおける曲げ部121A5から先端121A6側の部分は隣接する他の第1セグメント導体121の第2脚部121Bにおける先端121B6側の部分と溶接される。一方、第2脚部121Bにおける曲げ部121B5から先端121B6側の部分は隣接する第2セグメント導体122の第1脚部122Aにおける曲げ部122A5から先端122A6側の部分と溶接される。
【0046】
コイル12は、スロット112の内部に配置されるスロット挿入部121A0と、固定子コア11の端面11S1から突出する第1コイルエンド部と、を有する。第1コイルエンド部は、主としてセグメント導体121,122の斜辺部121C,122Cで構成され、スロット挿入部121A0,121B0,122A0,122B0につながる直線部121A2,121B2,122A2,122B2を含む。
【0047】
直線部121A2はスロット挿入部121A0と共に第1セグメント導体121の第1脚部121Aを構成する部分(第1セグメント導体121の第1直線部)である。直線部121B2はスロット挿入部121B0と共に第1セグメント導体121の第2脚部121Bを構成する部分(第1セグメント導体121の第1直線部)である。直線部122A2はスロット挿入部122A0と共に第2セグメント導体122の第1脚部122Aを構成する部分(第2セグメント導体122の第1直線部)である。直線部122B2はスロット挿入部122B0と共に第2セグメント導体122の第2脚部122Bを構成する部分(第2セグメント導体122の第2直線部)である。
【0048】
第1コイルエンド部においては、第1セグメント導体121または第2セグメント導体122のうちいずれかのセグメント導体が単体でコイルエンド部を構成する。
【0049】
コイル12は、固定子コア11の第1コイルエンド部が構成される側とは反対側に、固定子コア11の端面11S2から突出する第2コイルエンド部を有する。第2コイルエンド部においては、2つの第1セグメント導体121の第1脚部121Aと第2脚部121Bとが接続されて、或いは第1セグメント導体121の第2脚部121Bと第2セグメント導体122の第1脚部122Aとが接続されて、コイルエンド部が構成される。
第1セグメント導体121の第3斜辺部121A4及び第4斜辺部121B4と第2セグメント導体122の第3斜辺部122A4及び第4斜辺部122B4とは、第2コイルエンド部に構成される。また、2つのセグメント導体の溶接部Wは第2コイルエンド部に構成される。
【0050】
第2セグメント導体122は、一方のスロット112側で直線部を成す第2直線部122B2が他方のスロット112側で直線部を成す第1直線部122A2よりも長く形成される。第2セグメント導体122の第2直線部122B2は、第2脚部122B(
図4C参照)における固定子コア11の端面11S1から固定子コア11の外側に露出した部分、すなわち端面11S1から曲げ部122B1までの高さがh22であり、第2セグメント導体122の第1直線部122A2における端面11S1から曲げ部122A1までの高さh21よりも大きくなる(h22>h21)。なお、第2セグメント導体122の第1直線部122A2における端面11S1から曲げ部122A1までの高さh21は、第1セグメント導体121の第1直線部121A2における端面11S1から曲げ部121A1までの高さh21、及び第1セグメント導体121の第2直線部121B2における端面11S1から曲げ部121B1までの高さh21に等しい。
【0051】
また、第1セグメント導体121の第1コイルエンド部における固定子コア11の端面11S1からの突き出し高さh121と第2セグメント導体122の第1コイルエンド部における固定子コア11の端面11S1からの突き出し高さh122とは等しく形成される(h121=h122=h1)。
【0052】
本実施例の回転電機1の固定子10は、下記の特徴を有する。
複数のスロット112を有する固定子コア11と、
スロット112の内部に配置されるスロット挿入部121A0,121B0,122A0,122B0と固定子コア11の端面11S1から突出するコイルエンド部(第1コイルエンド部)とを有する複数のセグメント導体121,122を含んで固定子コア11に巻装されるコイル12と、
を有する固定子10と、
固定子10とギャップを介して配置される回転子30と、を備えた回転電機1であって、
コイルエンド部は、スロット挿入部121A0,121B0,122A0,122B0につながる直線部121A2,121B2,122A2,122B2と、中央部を頂点121CC,122CCとする山形形状に形成される斜辺部121C,122Cと、が形成され、
前記複数のセグメント導体121,122は、第1のスロットピッチで配置される2つのスロット112に挿入される第1セグメント導体121と、第1のスロットピッチよりも少ない第2のスロットピッチで配置される2つのスロット112に挿入される第2セグメント導体122と、を含んで構成され、
第2セグメント導体122は、一方のスロット側で前記直線部を成す第2直線部122B2が他方のスロット側で前記直線部を成す第1直線部122A2よりも長く形成され、
第1セグメント導体121の中央部における固定子コア11の端面11S1からの突き出し高さh121と第2セグメント導体122の中央部における固定子コア11の端面11S1からの突き出し高さh122とが等しく形成される。
【0053】
本実施例によれば、第1コイルエンド部の高さが揃うことで、治具70(
図4A参照)によるコイル12、すなわち第1セグメント121及び第2セグメント導体122の位置決め精度が向上し、第1セグメント121及び第2セグメント導体122に対して高精度な曲げ加工を行うことができる。また、治具70により第1セグメント121及び第2セグメント導体122の位置決めを行って曲げ加工を行う際に、第1セグメント121及び第2セグメント導体122が軸方向に移動し難くなり、第1セグメント121及び第2セグメント導体122の絶縁被膜の損傷(絶縁紙の移動)を抑制することができる。また、第1セグメント121及び第2セグメント導体122の曲げ加工を行う際の加工精度が向上することで、溶接部Wの溶接を行う際に不良の発生を低減することができる。
【0054】
本実施例では、第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122における曲げ角度(θ121A,θ121B,θ122A,θ122B)が同じため、検査件数の増加を抑制することができる。また巻線抵抗などのバラツキを抑制することができ、歩留まり率を向上すると共に、信頼性を向上することできる。
【0055】
本実施例の回転電機1は、上述した回転電機1の固定子10と、この固定子10とギャップを介して配置される回転子30と、を備え、毎極毎相のスロット数(NSPP)が2である。この場合、コイル12の中に第1セグメント導体121と、第1セグメント導体121に対して異形コイル部材となる第2セグメント導体122と、を含むことになる。
【0056】
次に、
図5及び
図6を参照して、口出しセグメント導体123について説明する。
図5は、コイルエンド部の外観を示す斜視図である。
図6は、口出しセグメント導体123の形状を示す平面図である。
コイル12は、口出し線を構成する口出しセグメント導体123を備える。口出しセグメント導体123は、スロット112に収納される第1口出し部123Aと、第1コイルエンド部に位置する第2口出し部123Bと、第1口出し部123Aと第2口出し部123Bとの間に設けられる曲がり部123Cと、を備える。第1口出し部123Aは軸方向に平行な直線状を成す。第2口出し部123Bは曲がり部123Cを介して第1口出し部123Aにつながり、軸方向に平行な直線状を成す。
【0057】
第1口出し部123Aと第2口出し部123Bとは、第2口出し部123Bが第1口出し部123Aに対して内周側に位置するように固定子コア11に対する径方向の位置が異なる。また口出しセグメント導体123は、第2セグメント導体122の第1直線部122Aよりも第2直線部122Bに近づけて配置される。
【0058】
すなわち本実施例の回転電機1では、下記の特徴を有する。
コイル12は、口出し線を構成する口出しセグメント導体123を備え、
口出しセグメント導体123は、スロット112に収納され軸方向に平行な直線状を成す第1口出し部123Aと、曲がり部123Cを介して第1口出し部123Aにつながり直線状を成して第1コイルエンド部に位置する第2口出し部123Bと、を備え、
第1口出し部123Aと第2口出し部123Bとは、第2口出し部123Bが第1口出し部123Aに対して内周側に位置するように固定子コア11に対する径方向の位置が異なり、
口出しセグメント導体123は、第2セグメント導体122の第1直線部122Aよりも第2直線部122Bに近づけて配置される。
【0059】
これにより、第2セグメント導体122の第2斜辺部122CBの下方で、かつ固定子コア11の端面11S1と第2斜辺部122CBとの間に、口出しセグメント導体123の曲がり部123Cを配置することができる。第2セグメント導体122の第2斜辺部122CBの下方には、第1斜辺部122CAの下方より大きな隙間(
図4CのΔkに基づく隙間)が形成されており、第2セグメント導体122と口出しセグメント導体123との干渉を抑制することができる。
【0060】
図7は、回転電機1の固定子10を第1コイルエンド部側(端面11S1側)から見た平面図である。
本実施例の回転電機1では、口出しセグメント導体123は、固定子コア11の内周側の位置でスロット112に収納される内周側口出しセグメント導体123-1~123-6と、固定子コア11の外周側の位置でスロット112に収納される外周側口出しセグメント導体123-7~123-12と、を備える。
【0061】
口出しセグメント導体123-1~123-12のうち少なくともいずれか一つの口出しセグメント導体において、第2セグメント導体122に対して上述した配置をとることにより、その口出しセグメント導体123の部分で、第2セグメント導体122と口出しセグメント導体123との干渉を抑制することができる。そして、全ての口出しセグメント導体123-1~123-12において第2セグメント導体122に対して上述した配置をとることにより、コイルエンド部(第1コイルエンド部)の高さを低くして、回転電機1の小型化を図ることができる。
【0062】
図8は、第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122を挿入した固定子コア11の部分断面図である。
【0063】
スロットの内側において、固定子コア11と第1セグメント導体121のスロット挿入部121A0,121B0との間、及び隣接する2つのスロット挿入部121A0の間には、絶縁体80が配置されている。絶縁体80は例えばワニスなどで構成される。また固定子コア11と第2セグメント導体122のスロット挿入部122A0,122B0との間、及び隣接する2つのスロット挿入部122A0,122B0の間には、第1セグメント導体121と同様に、絶縁体80が配置されている。
【0064】
すなわち本実施例の回転電機1では、スロット112の内側において、固定子コア11とセグメント導体121,122のスロット挿入部121A0,121B0,122A0,122B0との間、及び隣接する2つのスロット挿入部121A0,121B0,122A0,122B0の間に絶縁体80が配置されている。
【0065】
絶縁体80は例えばワニスや絶縁紙などの非導電性の物質で構成される。セグメント導体121,122はエナンメルなどで絶縁されているが、絶縁体80が配置されることで、固定子コア11の絶縁性を更に向上することができ、回転電機1の信頼性を向上することができる。
【0066】
図9は、固定子コア11が薄板状の鋼板を積層して製造され、且つ積層される鋼板を溶接で接合する実施例を説明する図である。
【0067】
本実施例の固定子コア11は、鋼板(例えば電磁鋼板)11Pを積層して構成される。積層した鋼板は溶接して固定される溶接箇所11Wを有する。固定子コア11の溶接個所11Wは、第2セグメント導体122の第1直線部121Aよりも前記第2直線部に近づけて配置される。
【0068】
すなわち本実施例の回転電機1では、
固定子コア11は、鋼板11Pを積層するとともに、積層した鋼板11Pを溶接して固定した溶接箇所11Wを有し、
固定子コア11の溶接箇所11Wは、第2セグメント導体122の第1直線部122A2よりも第2直線部122B2に近づけて配置される。
【0069】
溶接個所11Wは溶接時の入熱により膨張する場合がある。本実施例では、第2直線部122B2の側で第2斜辺部122CBと固定子コア11の端面11S1との間に形成される隙間h5が、第2セグメント導体122の第1直線部122A2側で第1斜辺部122CAと固定子コア11の端面11S1との間に形成される隙間h6よりも大きいため、膨張する溶接個所11Wとの干渉を容易に避けることができる。或いは、溶接個所11Wが膨張しても、膨張した端面11S1と第2斜辺部122CBとの間に口出しセグメント導体123-1~123-12等を配設することが容易になる。
【0070】
図10は、
図4A及び
図4Cの捻り部121CD,122CDを溶接部Wに形成する実施例を説明する図である。
【0071】
セグメント導体121,122は、固定子コア11に対して固定子コア11の端面11S1とは反対側の端面11S2から突出する第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6を有する。セグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6は、固定子コア11の反対側の端面11S2の側で、他のセグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6と溶接により接続される。
【0072】
本実施例では、治具70により第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122を高精度に位置決めして、第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122の曲げ加工を高精度に行うことができることを説明した。本実施例では、溶接部Wの位置を高精度に決定できることで、第1セグメント導体121の斜辺部121C及び第2セグメント導体122の斜辺部122Cに設けていた捻り部121CD,122CDを溶接部Wに設けることができる。すなわちセグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6と他のセグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6との溶接による接合部Wに、径方向に曲がる捻り部121CD,122CDを設けることができる。
【0073】
すなわち本実施例では溶接部W側のセグメント導体121,122の足が揃うので、溶接部W側にコイル12の捻りを設けることができ、コイル12の溶接性を向上することができる。
【0074】
従って本実施例の回転電機1は、下記の特徴を有する。
セグメント導体121,122は、固定子コア11に対して固定子コア11の端面11S1とは反対側の端面11S2から突出する第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6を有し、
セグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6は、固定子コア11の反対側の端面11S2の側で、他のセグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6と溶接により接続され、
セグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6と他のセグメント導体121,122の第2コイルエンド部121A6,121B6,122A6,122B6との溶接による接合部に径方向に曲がる捻り部121CD,122CDが設けられる。
【0075】
本実施例では、捻り部121CD,122CDの配置の自由度が高まることで、回転電機1の設計自由度が向上する。
【0076】
[実施例2]
本実施例に係る回転電機1は、回転電機のみの動力によって走行する純粋な電気自動車や、エンジン及び回転電機の双方によって駆動されるハイブリッド型の電気自動車に適用できるが、以下ではハイブリッド型の電気自動車を例に説明する。
【0077】
車両500には、エンジン520と第1回転電機1-1と第2回転電機1-2とバッテリ580とが搭載されている。バッテリ580は、第1回転電機1-1や第2回転電機1-2による駆動力が車両500に必要な場合には、電力変換装置600を介して第1回転電機1-1や第2回転電機1-2に直流電力を供給する。さらに、バッテリ580は、回生走行時には第1回転電機1-1や第2回転電機1-2から直流電力を受ける。バッテリ580と第1回転電機1-1や第2回転電機1-2との間の直流電力の授受は、電力変換装置600を介して行われる。また、図示していないが、車両500には低電圧電力(例えば、14ボルト系電力)を供給するバッテリが搭載されており、以下に説明する制御回路に直流電力を供給する。
【0078】
なお、第1回転電機1-1と第2回転電機1-2とはほぼ同じ構造を有しており、上述した回転電機1で構成することができる。但し、第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122に係る構造は、第1回転電機1-1と第2回転電機1-2の双方が備えている必要はなく、一方だけが備えていてもよい。
【0079】
エンジン520及び第1回転電機1-1や第2回転電機1-2による回転トルクは、変速機530とデファレンシャルギア560を介して前輪510に伝達される。変速機530は、変速機制御装置534により制御される。エンジン520は、エンジン制御装置524により制御される。バッテリ580は、バッテリ制御装置584により制御される。変速機制御装置534、エンジン制御装置524、バッテリ制御装置584、電力変換装置600及び統合制御装置570は、通信回線574によって互いに接続されている。
【0080】
統合制御装置570は、変速機制御装置534、エンジン制御装置524、電力変換装置600及びバッテリ制御装置584よりも上位の制御装置であり、変速機制御装置534、エンジン制御装置524、電力変換装置600及びバッテリ制御装置584の各状態を表す情報を、通信回線574を介してそれらからそれぞれ受け取る。統合制御装置570は、取得したそれらの情報に基づき各装置への制御指令を演算する。演算された制御指令は、通信回線574を介してそれぞれの装置へ送信される。
【0081】
バッテリ580は、リチウムイオン電池又はニッケル水素電池などの2次電池で構成され、250ボルトから600ボルト、又はそれ以上の高電圧の直流電力を出力する。バッテリ制御装置584は、バッテリ580の充放電状況やバッテリ580を構成する各単位セル電池の状態を、通信回線574を介して統合制御装置570に出力する。
【0082】
統合制御装置570は、バッテリ制御装置584からの情報に基づいてバッテリ580の充電が必要と判断すると、電力変換装置600に発電運転の指示を出す。また、統合制御装置570は、主に、エンジン520、第1回転電機1-1及び第2回転電機1-2の出力トルクの管理と、エンジン520の出力トルクと第1回転電機1-1及び第2回転電機1-2の出力トルクとの総合トルクやトルク分配比の演算処理を行い、この演算処理結果に基づく制御指令を、変速機制御装置534、エンジン制御装置524及び電力変換装置600へ送信する。電力変換装置600は、統合制御装置570からのトルク指令に基づき、指令通りのトルク出力又は発電電力が発生するように第1回転電機1-1及び第2回転電機1-2を制御する。
【0083】
電力変換装置600には、第1回転電機1-1及び第2回転電機1-2を運転するためのインバータ回路を構成するパワー半導体が設けられている。電力変換装置600は、統合制御装置570からの指令に基づきパワー半導体のスイッチング動作を制御する。このパワー半導体のスイッチング動作により、第1回転電機1-1と第2回転電機1-2は、電動機として又は発電機として運転される。
【0084】
第1回転電機1-1と第2回転電機1-2を電動機として運転する場合は、高電圧のバッテリ580からの直流電力が電力変換装置600のインバータの直流端子に供給される。電力変換装置600は、パワー半導体のスイッチング動作を制御して、供給された直流電力を3相交流電力に変換し、変換した電力を第1回転電機1-1と第2回転電機1-2に供給する。一方、第1回転電機1-1と第2回転電機1-2を発電機として運転する場合には、第1回転電機1-1及び第2回転電機1-1の回転子が外部から加えられる回転トルクで回転駆動され、第1回転電機1-1及び第2回転電機1-2の固定子巻線に3相交流電力が発生する。発生した3相交流電力は、電力変換装置600で直流電力に変換され、この直流電力がバッテリ580に供給されることにより、高電圧のバッテリ580が充電される。
【0085】
本実施例では、車両の駆動力を発生する回転電機1-1,1-2及び電力変換装置600を備えた電動駆動システムとして、コイル12が第1セグメント導体121及び第2セグメント導体122を含んで構成される固定子30と、固定子コア11の内周側に空隙を介して回転可能に配置された回転子30と、を有する回転電機1を備えるとよい。
【0086】
すなわち本実施例の電動駆動システムは、
車両の駆動力を発生する回転電機及び電力変換装置を備えた電動駆動システムであって、
回転電機として本実施例の回転電機1を備える。
【0087】
本実施例の回転電機1では、小型化及び低コスト化が可能であり、自動車主機用モータに適用するのに好適である。
【0088】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1…回転電機、10…固定子、11…固定子コア、11P…鋼板、11S1…固定子コア11の端面、11W…溶接箇所、12…コイル、80…絶縁体、112…スロット、121…セグメント導体(第1セグメント導体)、122…セグメント導体(第2セグメント導体)、121A0,121B0,122A0,122B0…セグメント導体のスロット挿入部、121A2,121B2,122A2,122B2…コイルエンド部の直線部、121A6,121B6,122A6,122B6…第2コイルエンド部、121C,122C…斜辺部、121CC,122CC…コイルエンド部の頂点、121CD,122CD…捻り部、122A2…第1直線部、122B2…第2直線部、123…口出しセグメント導体、123-1~123-6…内周側口出しセグメント導体、123-7~123-12…外周側口出しセグメント導体、123A…第1口出し部、123B…第2口出し部、123C…曲がり部。