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特許7620506荷重変位関係推定方法および圧入施工システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】荷重変位関係推定方法および圧入施工システム
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20250116BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
E02D7/20
E02D1/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021100066
(22)【出願日】2021-06-16
(65)【公開番号】P2022191690
(43)【公開日】2022-12-28
【審査請求日】2024-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】石原 行博
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-013047(JP,A)
【文献】特開2019-157382(JP,A)
【文献】特開2020-157629(JP,A)
【文献】特開2005-254957(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0326708(US,A1)
【文献】特開2015-143462(JP,A)
【文献】特開昭62-268418(JP,A)
【文献】特開2006-083637(JP,A)
【文献】特開2002-332638(JP,A)
【文献】大矢 孝、佐藤 博、松島 学、藤嶋 泰輔,杭頭固定条件における単杭の水平載荷試験とその解析的検討,土木学会年次学術講演会講演概要集,第三部、55巻,日本,土木学会,2000年08月31日,第6-7頁,http://library.jsce.or.jp/jsce/open/00035/2000/55-03-b/55-03-b0003.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
E02D 1/00-1/08
E02D 5/22-5/80
G01N 3/00-3/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に貫入された杭に印加される水平荷重の大きさである水平荷重値と、前記杭に設けられた代表測定点に生じる水平変位の大きさである水平変位値と、の関係を荷重変位関係とするとき、前記荷重変位関係の推定値である推定荷重変位関係を得る荷重変位関係推定方法であって、
前記水平荷重値の設計値である水平荷重設計値と、前記水平変位値の設計値である水平変位設計値と、の関係を設計荷重変位関係とするとき、前記地盤に関する既知の情報を用いて前記設計荷重変位関係を算出する設計計算工程と、
前記地盤に対して前記杭を貫入するとともに前記杭に対して水平荷重を印加し、前記水平荷重値および前記水平変位値を測定して、前記水平荷重値の測定値である水平荷重測定値と、前記水平変位値の測定値である水平変位測定値と、の関係である簡易荷重変位関係を得る簡易水平載荷試験工程と、
前記設計荷重変位関係と前記簡易荷重変位関係とに基づいて、前記設計荷重変位関係と前記荷重変位関係との相違を補正する値である補正係数を算出し、前記設計荷重変位関係と前記補正係数とに基づいて、前記推定荷重変位関係を得る推定工程と、を含み、
前記設計荷重変位関係には、前記地盤が塑性変形しないような前記水平荷重値の範囲である非塑性変形範囲に対応する前記水平変位設計値と、前記地盤が塑性変形するような前記水平荷重値の範囲である塑性変形範囲に対応する前記水平変位設計値と、の双方が含まれ、
前記簡易水平載荷試験工程においては、前記非塑性変形範囲において前記杭に対して水平荷重を印加し、
前記推定工程は、前記非塑性変形範囲における前記水平変位設計値と前記水平変位測定値と、に基づいて、前記補正係数を算出し、当該補正係数と前記塑性変形範囲における前記水平変位設計値と、に基づいて、前記塑性変形範囲における、前記水平変位値の推定値である水平変位推定値を得ることを含み、
前記非塑性変形範囲における前記水平変位設計値をδ des1 、当該水平変位設計値と同一の前記水平荷重値に対応する前記水平変位測定値をδ meas 、前記補正係数をα、とするとき、α=δ meas /δ des1 であり、
前記塑性変形範囲における前記水平変位設計値をδ des2 、当該前記水平変位設計値と同一の前記水平荷重値に対応する前記水平変位推定値をδ est 、とするとき、δ est =δ des2 ×αである、荷重変位関係推定方法。
【請求項2】
前記簡易水平載荷試験工程では、複数の前記水平荷重測定値および複数の前記水平変位測定値が得られ、
前記推定工程では、前記補正係数が複数の前記水平荷重測定値のそれぞれに対して算出される、請求項1に記載の荷重変位関係推定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の荷重変位関係推定方法を実行する圧入施工システムであって、
前記杭を前記地盤に対して圧入する圧入施工が実施可能な圧入装置と、
前記圧入装置に対して通信可能に接続されたコンピュータと、
前記杭に対して水平荷重を印加する水平載荷手段と、
前記水平荷重値を計測する水平荷重計測手段と、
前記水平変位値を計測する水平変位計測手段と、を備え、
前記コンピュータは、少なくとも前記設計計算工程および前記推定工程を実行する、圧入施工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷重変位関係推定方法および圧入施工システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、地盤に関する既知の情報(例えば、地盤調査で得られる各種地盤条件)に基づいて杭に印加される水平荷重の大きさと杭に生じる水平変位の大きさとの関係である荷重変位関係を推定する方法の一例として、梁ばねモデルを利用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-83637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、梁ばねモデル等の数理モデルを用いた従来の推定方法では、水平変位の推定値が過大となることが知られている。これは、従来の推定方法では荷重変位関係の推定精度が低く、施工の安全性を確保するためには数理モデルを構築するうえで過剰な安全マージンを取らざるを得ないためであると考えられる。本願発明者らは、従来の推定方法において推定精度が低下する原因は杭を地盤に対して貫入する過程の影響が適切に考慮されていないことにあると考察した。
【0005】
また、一般に地盤は水平方向に不均一であることが多い。しかしながら、現実的な観点から、地盤調査が行える地点や回数には制限がある。そのため、実際に杭が貫入される地点において地盤調査が行えるとは限らず、上記のような数理モデルにおいて入力条件として用いられる地盤条件が、杭の貫入位置における地盤条件と一致していない場合が多かった。また、地盤調査が十分に行えず、入力条件として用いられる地盤条件が不足する可能性もあった。本願発明者らは、上記のような入力条件の不正確さも推定精度の低下要因となっていると考察した。
【0006】
本発明はこのような事情を考慮してなされ、荷重変位関係の推定精度を向上できる荷重変位関係推定方法および圧入施工システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る荷重変位関係推定方法は、地盤に貫入された杭に印加される水平荷重の大きさである水平荷重値と、前記杭に設けられた代表測定点に生じる水平変位の大きさである水平変位値と、の関係を荷重変位関係とするとき、前記荷重変位関係の推定値である推定荷重変位関係を得る荷重変位関係推定方法であって、前記水平荷重値の設計値である水平荷重設計値と、前記水平変位値の設計値である水平変位設計値と、の関係を設計荷重変位関係とするとき、前記地盤に関する既知の情報を用いて前記設計荷重変位関係を算出する設計計算工程と、前記地盤に対して前記杭を貫入するとともに前記杭に対して水平荷重を印加し、前記水平荷重値および前記水平変位値を測定して、前記水平荷重値の測定値である水平荷重測定値と、前記水平変位値の測定値である水平変位測定値と、の関係である簡易荷重変位関係を得る簡易水平載荷試験工程と、前記設計荷重変位関係と前記簡易荷重変位関係とに基づいて、前記設計荷重変位関係と前記荷重変位関係との相違を補正する値である補正係数を算出し、前記設計荷重変位関係と前記補正係数とに基づいて、前記推定荷重変位関係を得る推定工程と、を含む。
【0008】
本発明の上記態様によれば、杭の貫入位置における地盤条件と、杭の貫入過程による影響と、の両方を反映した荷重変位関係の推定を行うことができる。このため、杭の貫入方法(打撃、振動、削孔、圧入等)の如何に依らず、荷重変位関係を精度よく推定できる。また、調査不足等によって地盤に関する既知の情報が少なく、設計荷重変位関係の信頼性が低い場合においても、推定精度の低下を抑制できる。
【0009】
また、前記簡易水平載荷試験工程では、複数の前記水平荷重測定値および複数の前記水平変位測定値が得られ、前記推定工程では、前記補正係数が複数の前記水平荷重測定値のそれぞれに対して算出されてもよい。
【0010】
この場合、複数の補正係数のなかから適切だと思われる補正係数を選択する余地が生まれる。また、杭が構造物として使用される場合には、杭に印加され得る水平荷重を想定して補正係数を選択することで、より実際の使用条件に即した推定結果を得ることができる。
【0011】
また、前記水平変位設計値をδdes、当該前記水平変位設計値に対応する前記水平変位測定値をδmeas、前記補正係数をα、とするとき、α=δmeas/δdesであってもよい。
【0012】
前記水平変位設計値をδdes、当該前記水平変位設計値に対応する前記水平変位値の推定値である水平変位推定値をδest、前記補正係数をα、とするとき、δest=δdes×αであってもよい。
【0013】
また、本発明の一態様に係る圧入施工システムは、上記いずれかの荷重変位関係推定方法を実行する圧入施工システムであって、前記杭を前記地盤に対して圧入する圧入施工が実施可能な圧入装置と、前記圧入装置に対して通信可能に接続されたコンピュータと、を備え、前記コンピュータは、少なくとも前記設計計算工程および前記推定工程を実行する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、荷重変位関係の推定精度を向上可能な荷重変位関係推定方法および圧入施工システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態に係る圧入施工システムを用いた圧入施工の一例を示した図である。
図2】本実施形態に係る圧入施工システムの構成を示したブロック図である。
図3A】荷重変位関係が有するデータを具体的に示した図である。
図3B】推定荷重変位関係が有するデータを具体的に示した図である。
図3C】設計荷重変位関係が有するデータを具体的に示した図である。
図3D】簡易荷重変位関係が有するデータを具体的に示した図である。
図4】本実施形態に係る荷重変位関係推定方法を示したフローチャートである。
図5A】実施例に係る圧入施工システムにおける、設計荷重変位関係および簡易荷重変位関係を二次元プロットした図である。
図5B】実施例に係る圧入施工システムにおける、設計荷重変位関係、推定荷重変位関係、および荷重変位関係を二次元プロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(圧入施工システム)
以下、本実施形態の圧入施工システムについて図面に基づいて説明する。
図1に示すように、圧入施工システムSは、圧入装置1と、圧入装置1によって地盤4に圧入される杭2と、圧入装置1に対して有線通信または無線通信可能に接続されたコンピュータ3と、を備える。
【0017】
本実施形態の杭2は断面C型の鋼矢板であるが、その他の種類の杭2を採用してもよい。例えば杭2は、断面O型の鋼管杭であってもよい。また、杭2の材質は鋼でなくてもよく、例えばコンクリート等であってもよい。また、本明細書では地盤4に対する圧入が完了した杭2を特に「完成杭2A」と呼び、圧入開始前か圧入中の杭2を特に「圧入杭2B」と呼ぶことがある。なお、本実施形態において杭2を地盤4に貫入させる方法の一例として圧入が採用されているが、打撃、振動、削孔といった圧入以外の貫入方法が採用されてもよい。
【0018】
圧入装置1は、圧入機本体10と、不図示のパワーユニット、反力架台、ラジコン、レーザー照準器等を備える。圧入機本体10は、チャック10aと、チャックフレーム10bと、リーダーマスト10cと、スライドフレーム10dと、クランプ部10eと、を備える。
【0019】
ここで本実施形態では、杭2が貫入される方向を上下方向という。上下方向に垂直な方向を水平方向という。上下方向における位置を、単に高さという。水平方向のうち、チャック10aとリーダーマスト10cとが並ぶ方向を前後方向(進行方向)という。上下方向および前後方向の双方に直交する方向を左右方向という。
【0020】
チャック10aは、杭2を把持する部位である。チャックフレーム10bは、チャック10aを上下動させることによって圧入杭2Bを上下動させる部位である。リーダーマスト10cは、圧入杭2Bの上下動をガイドするとともに、圧入杭2Bの左右方向における位置決めを行う部位である。スライドフレーム10dは、圧入杭2Bの前後方向における位置決めを行う部位である。クランプ部10eは、圧入機本体10を地盤4に対して固定する部位である。上述した圧入機本体10の各部位の働きにより、地盤4における所望の位置において、上下方向に沿った完成杭2Aを設置することができる。
【0021】
図2に示すように、本実施形態の圧入施工システムSは、圧入装置1が有する水平荷重計測手段11、水平変位計測手段12、および水平載荷手段(不図示)と、コンピュータ3が有する設計計算部31および推定部32と、を含む。圧入施工システムSは、圧入装置1の水平荷重計測手段11および水平変位計測手段12からの情報を取得したコンピュータ3により、杭2周辺における地盤4の荷重変位関係D0を推定するシステムである。
【0022】
荷重変位関係D0とは、完成杭2Aに対して印加される水平荷重の大きさ(水平荷重値D01a)と、当該水平荷重によって生じる完成杭2Aの水平変位の大きさ(水平変位値D01b)の関係である。なお、本実施形態において水平変位とは、完成杭2Aに設けられた代表測定点2aの、基準位置からのずれの水平成分のことを指す。完成杭2Aにおける代表測定点2aの位置(高さ)は、使用者が任意に設定できる(図1参照)。図3Aは、荷重変位関係D0の詳細を表したブロック図である。荷重変位関係D0は、複数の水平荷重値D01aおよび複数の水平変位値D01bを有する。先述のように、水平変位値D01bは水平荷重値D01aに応じて得られる値である。言い換えれば、水平変位値D01bは水平荷重値D01aを入力値とする関数の出力値である。つまり、各水平荷重値D01aには対応する水平変位値D01bが存在し、逆に各水平変位値D01bには対応する水平荷重値D01aが存在する。互いに対応する水平荷重値D01aおよび水平変位値D01bがなす組を、荷重変位値組D01という。荷重変位関係D0は、複数の荷重変位値組D01を含む配列とみなすことができる。
【0023】
地盤4における荷重変位関係D0を知ることは、完成杭2Aが地盤4において建築物の土台や防波堤等の構造物として利用される場合に特に重要である。荷重変位関係D0は、当該構造物の水平強度を正確に知るうえでの重要な指標となるからである。また、地盤4において完成杭2Aとは別に構造物を建築する場合においても、当該構造物の挙動を評価するために荷重変位関係D0が利用されることが多い。したがって、荷重変位関係D0を正確に推定することは重要である。
【0024】
圧入施工システムSは、杭2周辺における地盤4の荷重変位関係D0を推定するシステムであるが、より詳しくは荷重変位関係D0の推定値である推定荷重変位関係D5(図3B参照)を得るシステムである。つまり、圧入施工システムSの目的は、荷重変位関係D0に近い推定荷重変位関係D5を得ることである。図3Bに示すように、推定荷重変位関係D5は、複数の推定荷重変位値組D51を含む配列であるとみなすことができる。各推定荷重変位値組D51は、互いに対応する水平荷重推定値D51aと水平変位推定値D51bとを有している。
【0025】
水平載荷手段は、完成杭2Aに対して水平荷重を印加できる何らかの手段である。水平載荷手段は圧入機本体10に内蔵または付属されていてもよいし、圧入機本体10とは別に設けられてもよい。特に、水平載荷手段が圧入機本体10に内蔵または付属されている構成は、水平荷重の付与に必要となる反力杭などを別途準備する必要がないという効果を奏するため好適である。水平載荷手段としては例えば、リーダーマスト10cを旋回運動させることにより、完成杭2Aを把持しているチャック10aに対して左右方向に沿った力を加える構成が採用可能である。チャック10aによる完成杭2Aの把持を解除し、チャック10aと完成杭2Aとを頑丈な紐等で結び、チャック10aを旋回させる構成を採用してもよい。スライドフレーム10dによって、杭2を把持しているチャック10aを前後方向に移動させる構成も採用可能である。つまり、完成杭2Aに対して水平荷重を印加できる構成であればその詳細は任意である。
【0026】
水平荷重計測手段11は、水平載荷手段によって印加された水平荷重の大きさを計測できる何らかの手段である。水平荷重計測手段11は、圧入機本体10に内蔵または付属されていてもよいし、圧入機本体10とは別に設けられてもよい。水平荷重計測手段11としては、例えば、油圧センサー等を水平載荷手段に併設する構成が採用できる。水平変位計測手段12は、完成杭2Aの水平変位を計測できる何らかの手段である。水平変位計測手段12は、圧入機本体10に内蔵または付属されていてもよいし、圧入機本体10とは別に設けられてもよい。水平変位計測手段12としては、例えば、ロードセルやトータルステーション等の計測器を採用できる。水平荷重計測手段11および水平変位計測手段12についても、水平変位または水平荷重を計測できる構成であれば詳細は任意である。
【0027】
設計計算部31は、事前に行われた地盤調査等で得られた地盤4に関する既知の情報(地盤条件)に基づいて、荷重変位関係D0の設計値である設計荷重変位関係D1を算出する部位である。図3Cに示すように、設計荷重変位関係D1は、複数の設計荷重変位値組D11を含む配列であるとみなすことができる。各設計荷重変位値組D11は、互いに対応する水平荷重設計値D11aと水平変位設計値D11bとを有している。
【0028】
推定部32は、設計荷重変位関係D1および簡易荷重変位関係D3に基づいて推定荷重変位関係D5(図3B参照)を算出する部位である。また、推定部32は、設計荷重変位関係D1と荷重変位関係D0との相違を補正する値である補正係数Cを算出する部位でもある。
【0029】
(荷重変位関係推定方法)
次に、以上のように構成された圧入施工システムSを用いた荷重変位関係推定方法の一例について説明する。図4に示すように、本実施形態の荷重変位関係推定方法は、設計計算工程S1と、簡易水平載荷試験工程S3と、推定工程S5と、を含む。
【0030】
なお、設計計算工程S1に入る前に、地盤4に関する地盤条件を得るための地盤調査等が行われる。調査は本実施形態の荷重変位関係推定方法を実行する者が行ってもよいし、事前に他者によって行われてもよい。得られる地盤条件の例としては、いわゆるN値等が挙げられる。
【0031】
次に、地盤4に関する既知の情報(地盤条件)に基づいて荷重変位関係D0の設計値である設計荷重変位関係D1を算出する設計計算工程S1が行われる。設計計算工程S1は、主として設計計算部31で行われる。以下、設計計算工程S1の一例を示す。
【0032】
まず、複数の水平荷重設計値D11aが使用者によって任意に用意される。次に、地盤4に関する既知の情報(地盤条件)に基づいて、梁ばねモデルや有限要素法等の数理モデルが構築される。本実施形態においては梁ばねモデルが用いられ、複数のばねのそれぞれについてばね定数や降伏点等が設定される。次に、複数の水平荷重設計値D11aのそれぞれについて、構築された梁ばねモデルに基づき水平変位設計値D11bが算出される。次に、対応する水平荷重設計値D11aと水平変位設計値D11bとが紐づけられ、設計荷重変位値組D11が得られる。最後に、複数の設計荷重変位値組D11を含む配列の形で設計荷重変位関係D1が得られる。なお、最初に水平変位設計値D11bが任意に用意され、水平荷重設計値D11aが梁ばねモデルに基づいて算出されてもよい。また、設計荷重変位関係D1、設計荷重変位値組D11、水平荷重設計値D11a、および水平変位設計値D11bは、設計計算部31に保存されてもよいし、推定部32に保存されてもよい。あるいは、コンピュータ3内部のメモリ(不図示)に保存されてもよい。
【0033】
次に、簡易水平載荷試験工程S3が行われる。簡易水平載荷試験工程S3は、簡易荷重変位関係D3を得る工程である。簡易水平載荷試験工程S3は、貫入工程S3Aと、水平載荷工程S3Cと、データ整形工程S3Eと、を含む。貫入工程S3Aでは、圧入装置1によって、杭2(圧入杭2B)が地盤4に対して貫入される。水平載荷工程S3Cでは、杭2(完成杭2A)に対し、水平載荷手段によって水平荷重が印加されるとともに、水平荷重計測手段11によって水平荷重値D01aが測定され、水平変位計測手段12によって水平変位値D01bが測定される。水平荷重計測手段11によって得られた水平荷重値D01aの実測値を、水平荷重測定値D31aという(以下、図3D参照)。水平変位計測手段12によって得られた水平変位値D01bの実測値を、水平変位測定値D31bという。水平荷重測定値D31aおよび水平変位測定値D31bはそれぞれ、連続的あるいは断続的に計測される時系列データである。また、同時に計測された水平荷重測定値D31aと水平変位測定値D31bとは相互に対応がとられている。
【0034】
データ整形工程S3Eでは、図3Dに示すように、各水平荷重測定値D31aおよび各水平変位測定値D31bが、上記の対応関係に基づいて簡易荷重変位値組D31として紐づけられる。また、複数の簡易荷重変位値組D31を含む配列として、簡易荷重変位関係D3が得られる。以上説明したように、簡易水平載荷試験工程S3は、水平荷重測定値D31aと水平変位測定値D31bとの関係である簡易荷重変位関係D3を得る工程である。なお、データ整形工程S3Eは、水平荷重計測手段11、水平変位計測手段12、推定部32、または圧入装置1もしくはコンピュータ3内部に設けられた不図示のデータ整形部によって行われてもよい。また、簡易荷重変位関係D3、簡易荷重変位値組D31、水平荷重測定値D31a、および水平変位測定値D31bは、水平荷重計測手段11、水平変位計測手段12、または推定部32に保存されてもよいし、先述のデータ整形部またはメモリに保存されてもよい。
【0035】
ところで、例えば完成杭2Aを構造物として用いる場合において、完成杭2Aには地盤4が大きく塑性変形を起こすほど強力な水平荷重は印加されるべきでない。地盤4が構造物を保持する力の低下に繋がるからである。したがって、水平載荷工程S3Cは、地盤4に大きな塑性変形が起こらないような範囲で行われることが多い。よって、簡易水平載荷試験工程S3で得られる簡易荷重変位関係D3には、地盤4が大きく塑性変形を起こすような状態に対応する簡易荷重変位値組D31(水平荷重測定値D31a)が含まれないことが多い。つまり、簡易荷重変位値組D31のみでは、完成杭2A(構造物)に対して強力な(水平荷重値D01aが大きい)水平荷重が不意に印加された場合に生じる水平変位値D01bについて知ることが困難である。
【0036】
一方で、設計計算工程S1ではあくまで数理モデルに基づいた設計計算が行われるため、設計荷重変位関係D1は、地盤4が大きく塑性変形を起こすような状態に対応する設計荷重変位値組D11(水平荷重設計値D11a)を含んでもよい。ただし、設計荷重変位関係D1の算出は、地盤調査等で得られた情報が用いられるため、圧入杭2Bを地盤4に対して貫入する過程の影響を考慮することが困難である。また、先述の通り調査は必ずしも完成杭2Aの貫入位置で行われるとは限らないため、設計計算工程S1で用いられた数理モデルの入力条件が、実際に用いられるべき入力条件(当該貫入位置における地盤条件)とは異なる可能性がある。以上のような理由から、設計計算工程S1で算出される設計荷重変位関係D1は、必ずしも正確であるとは限らない。
【0037】
そのため、本実施形態の荷重変位関係推定方法では、以下に示す推定工程S5において設計荷重変位関係D1および簡易荷重変位関係D3に基づいて推定荷重変位関係D5が算出される。正確だがデータの範囲が限られている簡易荷重変位関係D3と、データの範囲は十分だが正確さに欠ける設計荷重変位関係D1とを組み合わせることにより、正確かつデータの範囲も十分な推定荷重変位関係D5が得られることが期待されるのである。
【0038】
推定工程S5は、主として推定部32で行われる。推定工程S5は、補正係数算出工程S5Aおよび推定荷重変位関係算出工程S5Cを含む。補正係数算出工程S5Aは、設計計算工程S1で得られた設計荷重変位関係D1および簡易水平載荷試験工程S3で得られた簡易荷重変位関係D3に基づいて、補正係数Cが算出される工程である。推定荷重変位関係算出工程S5Cは、設計計算工程S1で得られた設計荷重変位関係D1および補正係数算出工程S5Aで得られた補正係数Cに基づいて、推定荷重変位関係D5が算出される工程である。
【0039】
以下、補正係数算出工程S5Aの一例を示す。まず、簡易荷重変位関係D3の中から簡易荷重変位値組D31が使用者によって任意に選択される。次に、選択された簡易荷重変位値組D31に含まれる水平荷重測定値D31aを参照し、当該水平荷重測定値D31aと同じ値を持つ水平荷重設計値D11aを有する設計荷重変位値組D11が選択される。つまり、簡易荷重変位値組D31およびそれに対応する設計荷重変位値組D11が1つずつ選択される。なお、水平荷重測定値D31aと同じ値を持つ水平荷重設計値D11aが存在しない場合には、新たな水平荷重設計値D11aに基づいて設計計算工程S1がやりなおされ、設計荷重変位関係D1が算出しなおされてもよい。もしくは、統計的手法等に基づいて簡易荷重変位関係D3が補完(簡易荷重変位値組D31が追加)されてもよい。あるいは、あらかじめ水平荷重設計値D11aと水平荷重測定値D31aが整合するように設計計算工程S1および簡易水平載荷試験工程S3が行われてもよい。なお、設計荷重変位値組D11が最初に選択され、当該設計荷重変位値組D11に対応する簡易荷重変位値組D31が次いで選択されてもよい。次に、選択された設計荷重変位値組D11に含まれる水平変位設計値D11bと、選択された簡易荷重変位値組D31に含まれる水平変位測定値D31bと、の比が計算され、当該比の値が補正係数Cとされる。すなわち、選択された水平変位設計値D11bをδdes、当該水平変位設計値D11bに対応する水平変位測定値D31bをδmeas、補正係数Cをαとするとき、以下の数式(1)が成立する。
【0040】
【数1】
【0041】
以下、推定荷重変位関係算出工程S5Cの一例を示す。まず、設計荷重変位関係D1に含まれる複数の水平荷重設計値D11aのそれぞれがコピーされ、水平荷重推定値D51aとされる。次に、設計荷重変位関係D1に含まれる複数の水平変位設計値D11bのそれぞれに対して補正係数Cが乗じられ、得られた値が水平変位推定値D51bとされる。すなわち、複数の水平荷重設計値D11aのそれぞれをF des、複数の水平変位設計値D11bのそれぞれをδ clac、複数の水平荷重推定値D51aのそれぞれをF est、複数の水平変位推定値D51bのそれぞれをδ estとするとき、以下の数式(2)、(3)が成立する。なお、Nは設計荷重変位関係D1が含む設計荷重変位値組D11の個数である。
【0042】
【数2】
【0043】
【数3】
【0044】
なお、上記の例では補正係数Cを算出する際に単一の簡易荷重変位値組D31(水平荷重測定値D31a)が選択されていたが、複数の簡易荷重変位値組D31が選択されてもよい。この場合、補正係数Cは複数算出されてもよい。より具体的には、選択された複数の水平荷重測定値D31aのそれぞれに対して補正係数Cが算出され、それに伴って推定荷重変位関係D5も複数算出されてもよい。つまり、複数の水平変位設計値D11bのうち補正係数Cを算出するために選択された複数の水平変位測定値D31bのそれぞれをδ meas、これに対応する水平変位設計値D11bをδ des、複数の補正係数Cのそれぞれをα、各補正係数Cに基づいて算出される水平変位推定値D51bをδ j、estとするとき、以下の数式(4)、(5)が成立する。なお、Mは算出された補正係数Cの個数(推定荷重変位関係D5の個数)であり、1以上N以下の値を取り得る。
【0045】
【数4】
【0046】
【数5】
【0047】
上記のように補正係数Cおよび推定荷重変位関係D5が複数算出される場合、複数の補正係数Cのなかから、地盤4の状況に応じて適切な補正係数Cおよび推定荷重変位関係D5を選択する余地が生まれる。また、杭2(完成杭2A)が構造物として使用される場合には、完成杭2Aに印加されうる水平荷重値D01aを考慮して補正係数Cを選択することで、より実際の使用条件に即した推定荷重変位関係D5を得ることができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の荷重変位関係推定方法は、設計計算工程S1と、簡易水平載荷試験工程S3と、推定工程S5と、を経て単一または複数の推定荷重変位関係D5(および補正係数C)を算出することができる。なお、上記した算出方法は一例であり、適宜変更が加えられてもよい。
【0049】
次に、以上のように構成された圧入施工システムSおよび圧入施工システムSを用いた荷重変位関係推定方法の作用について説明する。
【0050】
梁ばねモデル等の数理モデルを用いた従来の推定方法では、水平変位値D01bの推定値が過大となっていた。これは、従来の推定方法では荷重変位関係D0の推定精度が低く、施工の安全性を確保するためには数理モデルを構築するうえで過剰な安全マージンを取らざるを得ないためであると考えられる。本願発明者らは、従来の推定方法において推定精度が低下する原因は杭2(圧入杭2B)を地盤4に対して貫入する過程の影響が適切に考慮されていないことにあると考察した。例えば、圧入杭2Bが地盤4に貫入されることで、圧入杭2Bに押しのけられた土壌は圧入杭2B周辺で圧縮される。このため、完成杭2A周辺の地盤が硬化し、水平変位値D01bは小さくなることが予想される。
【0051】
また、一般に地盤4は水平方向に不均一であることが多い。しかしながら、現実的な観点から、地盤調査が行える地点や回数には制限がある。そのため、実際に圧入杭2Bが貫入される地点において地盤調査が行えるとは限らず、上記のような数理モデルにおいて入力条件として用いられる地盤条件が、圧入杭2Bの貫入位置における地盤条件と一致していない可能性があった。また、地盤調査が十分に行えず、入力条件として用いられる地盤条件が不足する可能性もあった。本願発明者らは、上記のような入力条件の不正確さも推定精度低下要因となっていると考察した。
【0052】
これに対して本実施形態の荷重変位関係推定方法では、数理モデルを用いて設計荷重変位関係D1を得ることに加えて、完成杭2Aを用いて水平荷重測定値D31aおよび水平変位測定値D31b(簡易荷重変位関係D3)を計測している。そして設計荷重変位関係D1および簡易荷重変位関係D3に基づいて補正係数Cを算出し、補正係数Cを推定荷重変位関係D5の算出に繰り込んでいる。これにより、圧入杭2Bを地盤4に対して貫入する過程の影響を考慮した推定荷重変位関係D5を得ることができる。また、数理モデルによる算出結果(設計荷重変位関係D1)を補正係数Cで補正するため、数理モデルの入力条件の信頼性が低い場合においても、実際の荷重変位関係D0と推定荷重変位関係D5とがかけはなれることを抑制できる。上記したように、本実施形態の荷重変位関係推定方法を用いることで、従来の推定方法よりも高い精度で荷重変位関係D0の推定値(推定荷重変位関係D5)を得ることができる。
【0053】
特に、完成杭2Aが建築物の土台や防波堤等の構造物として利用される場合には、得られた推定荷重変位関係D5に基づき、完成杭2Aが地盤4において所望の強度を発揮できているか否か確認することができる。例えば、水平変位推定値D51bが所望の値よりも過大となっている場合には、完成杭2Aの強度が不十分であり、完成杭2Aの設計(形状、圧入深さ等)を見直す必要があると考えられる。一方、水平変位推定値D51bが所望の値よりも過少となっている場合には、完成杭2Aの強度が過剰になっていると考えられる。ここで、完成杭2Aの再設計・再施工が可能な場合には、上記した確認結果を反映させることで、適切な再設計を行うことができる。これにより、完成杭2Aの強度を確保しつつ、完成杭2Aの強度が過剰であることによる建設コストの増大を抑制することができる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の荷重変位関係推定方法は、地盤4に貫入された杭2に印加される水平荷重の大きさである水平荷重値D01aと、杭2に設けられた代表測定点2aに生じる水平変位の大きさである水平変位値D01bと、の関係を荷重変位関係D0とするとき、荷重変位関係D0の推定値である推定荷重変位関係D5を得る荷重変位関係推定方法であって、水平荷重値D01aの設計値である水平荷重設計値D11aと、水平変位値D01bの設計値である水平変位設計値D11bと、の関係を設計荷重変位関係D1とするとき、地盤4に関する既知の情報を用いて設計荷重変位関係D1を算出する設計計算工程S1と、地盤4に対して杭2を貫入するとともに杭2に対して水平荷重を印加し、水平荷重値D01aおよび水平変位値D01bを測定して、水平荷重値D01aの測定値である水平荷重測定値D31aと、水平変位値D01bの測定値である水平変位測定値D31bと、の関係である簡易荷重変位関係D3を得る簡易水平載荷試験工程S3と、設計荷重変位関係D1と簡易荷重変位関係D3とに基づいて、設計荷重変位関係D1と荷重変位関係D0との相違を補正する値である補正係数Cを算出し、設計荷重変位関係D1と補正係数Cとに基づいて、推定荷重変位関係D5を得る推定工程S5と、を含む。
【0055】
また、本実施形態の圧入施工システムSは、上記の荷重変位関係推定方法を実行する圧入施工システムであって、杭2を地盤4に対して圧入する圧入施工が実施可能な圧入装置1と、圧入装置1に対して通信可能に接続されたコンピュータ3と、を備え、コンピュータ3は、少なくとも設計計算工程S1および推定工程S5を実行する。
【0056】
これらの構成により、杭2の貫入位置における地盤条件と、杭2の貫入過程による影響と、の両方を反映した推定荷重変位関係D5を得ることができる。このため、杭2の貫入方法(打撃、振動、削孔、圧入等)の如何に依らず、精度の高い推定荷重変位関係D5を得ることができる。また、調査不足等によって地盤4に関する既知の情報が少なく、設計荷重変位関係D1の信頼性が低い場合においても、推定精度の低下を抑制できる。
【0057】
また、簡易水平載荷試験工程S3では、複数の水平荷重測定値D31aおよび複数の水平変位測定値D31bが得られ、推定工程S5では、補正係数Cが複数の水平荷重測定値のそれぞれに対して算出されてもよい。この場合、適切だと思われる補正係数を選択する余地が生まれる。
【0058】
また、水平変位設計値D11bをδdes、当該水平変位設計値D11bに対応する水平変位測定値D31bをδmeas、補正係数Cをα、とするとき、α=δmeas/δdesである。
【0059】
また、水平変位設計値D11bをδdes、当該水平変位設計値D11bに対応する水平変位値D01bの推定値である水平変位推定値D51bをδest、補正係数Cをα、とするとき、δest=δdes×αである。
【実施例
【0060】
以下、具体的な実施例を用いて、上記実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0061】
上記実施形態に係る圧入施工システムSおよび荷重変位関係推定方法を用いて、ある地盤における推定荷重変位関係D5を算出した。なお、補正係数Cは複数算出され、それに伴って推定荷重変位関係D5も複数算出された。
【0062】
図5Aは、設計荷重変位関係D1および簡易荷重変位関係D3を二次元プロットした図である。なお、補正係数1~6は、複数算出された補正係数Cを表している。図5Bは、設計荷重変位関係D1、複数の推定荷重変位関係D5、荷重変位関係D0を二次元プロットした図である。推定荷重変位関係1~6は、それぞれ補正係数1~6に対応する推定荷重変位関係D5である。なお、図5A図5Bとで設計荷重変位関係D1の縮尺が異なっているが、これは図5A図5Bとで先述した代表測定点2aの高さが異なっているためである。また、荷重変位関係D0は測定値である。荷重変位関係D0を測定するため、地盤が大きく塑性変形するほど強力な水平荷重を特例的に許容して実験を行った。
【0063】
図5Bから見て取れるように、設計荷重変位関係D1よりも、各推定荷重変位関係D5(推定荷重変位関係1~6)のほうが荷重変位関係D0の推定精度が高い。このように、設計荷重変位関係D1および簡易荷重変位関係D3に基づいて補正係数Cを算出し、設計荷重変位関係D1および補正係数Cに基づいて推定荷重変位関係D5を算出することで、荷重変位関係D0の推定精度を向上させることができる。
【0064】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0065】
例えば、前記実施形態では、補正係数Cを用いて設計荷重変位関係D1を補正することにより推定荷重変位関係D5を得ていたが、簡易荷重変位関係D3を用いて梁ばねモデル等の数理モデルを補正してもよい。また、補正された数理モデルに基づいて設計荷重変位関係D1を再び算出してもよい。
【0066】
また、前記実施形態では、完成杭2Aに対して推定荷重変位関係D5を得ていたが、圧入中の圧入杭2Bに対して推定荷重変位関係D5を得てもよい。より具体的には、圧入杭2Bの圧入深度ごとに推定荷重変位関係D5を得てもよい。この構成は、災害直後の緊急工事等、十分な地盤調査が行えない(設計荷重変位関係D1の信頼性が低い)条件下で完成杭2Aが構造物として利用される場合において有効である。この構成を採用することで、地盤4が完成杭2Aを支持する力を十分に確保するために必要な圧入杭2Bの圧入深度を、圧入施工を進めながら決定することができる。
【0067】
また、水平荷重計測手段11、水平変位計測手段12、および水平載荷手段は、圧入装置1とは別に設けられていてもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0069】
S…圧入施工システム 1…圧入装置 2…杭 3…コンピュータ 4…地盤 D0…荷重変位関係 D01a…水平荷重値 D01b…水平変位値 D1…設計荷重変位関係 D11a…水平荷重設計値 D11b…水平変位設計値 D3…簡易荷重変位関係 D31a…水平荷重測定値 D31b…水平変位測定値 D5…推定荷重変位関係 D51a…水平荷重推定値 D51b…水平変位推定値 C…補正係数 S1…設計計算工程 S3…簡易水平載荷試験工程 S5…推定工程
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B