(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】水冷却装置
(51)【国際特許分類】
F25D 11/00 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
F25D11/00 102Z
F25D11/00 101Z
F25D11/00 101D
(21)【出願番号】P 2021111579
(22)【出願日】2021-07-05
【審査請求日】2024-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000222668
【氏名又は名称】東洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩史
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-071216(JP,A)
【文献】特開2021-009004(JP,A)
【文献】実開平06-073678(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 9/00
F25D 11/00
F25D 13/00
F25D 17/02
E04G 21/02
B28B 11/24
B28C 5/00 ~ 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却対象の水として、コンクリート用練り混ぜ水またはパイプクーリング工法に使用される水を冷却する水冷却装置であって、
長手方向他端内壁面に冷却装置を備え、該冷却装置により冷却された環境を維持できる内部空間を有する冷却庫と、
該冷却庫
の長手方向一端側壁部から内部空間内に延び、内部に
前記冷却対象の水が流入される配管と、を備え
、
前記配管は、前記冷却庫内の長手方向一端側壁部と、前記冷却装置との間を前記冷却装置に近接した位置を経由するように長手方向に沿って複数回往復するように配置されることを特徴とする水冷却装置。
【請求項2】
前記冷却庫及び前記配管は、ユニット化されていることを特徴とする請求項1に記載の水冷却装置。
【請求項3】
前記冷却装置により、前記内部空間内の温度を任意に設定可能であることを特徴とする1または2に記載の水冷却装置。
【請求項4】
前記冷却庫は、既存の、物品の輸送に用いられるリーファーコンテナであることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載の水冷却装置。
【請求項5】
前記配管を、複数系統備えていることを特徴とする請求項1~
4いずれかに記載の水冷却装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を冷却する水冷却装置に関するものであって、詳しくは、大量の水を一度に冷却可能な水冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、コンクリート用練り混ぜ水は、セメントと混合した際の化学反応の際の温度上昇を抑えるために、出来る限り冷却してセメントと混合したほうがよい。要するに、コンクリートは温度上昇に伴って膨張、収縮量が大きくなり、ひび割れが生じやすくなる。そのために、練り混ぜ水の温度を下げた状態でセメントと混合すれば、コンクリートの初期温度を小さくすることができ、その結果、コンクリートが発熱して到達する最高温度を低く抑えることができる。これにより、温度上昇に伴うコンクリートの膨張、収縮量を抑えることができ、ひび割れが生じ難くなる。なお、コンクリート構造物を構築する際には、大量のコンクリート用練り混ぜ水が必要となる。
【0003】
また、コンクリート構造物を築造する際にはパイプクーリング工法が採用される。当該パイプクーリング工法は、コンクリート構造物の内部に間隔を置いて設置した複数のパイプに水を循環させ、コンクリートからの発熱を抑えることで温度上昇に伴うひび割れを抑制する工法であり、この工法を施工する際にも大量の水が必要となる。また、当該パイプクーリング工法では、各パイプ内から流出した大量の高温の水を短時間で冷却して循環させる必要がある。
【0004】
そこで、一般的に、上述したようなパイプクーリング工法等では、水を冷却する装置としてチラーが採用されている(特許文献1参照)。チラーは、例えば、圧縮機、凝縮器(コンデンサ)、膨張弁及び蒸発器が互いに接続された冷媒回路を備えている。そして、圧縮機では、低温・低圧の冷媒ガスを凝縮器で容易に冷却・液化できるように高温・高圧の圧縮冷媒ガスに変化させる。凝縮器では、圧縮機で生成された圧縮冷媒ガスを空気にて冷却・凝縮して、常温・高圧の液状冷媒に変化させる。膨張弁では、常温・高圧の液状冷媒を絞って減圧して、蒸発器で容易に蒸発できるように低温・低圧の液状冷媒に変化させる。
【0005】
そして、蒸発器では、膨張弁により生成された液状冷媒が、蒸発器の周りに貯溜される高温の水から熱を奪って蒸発(水が冷却)することで、再び低温・低圧の冷媒ガスが生成される。そして、当該チラーにより、コンクリート構造物内に配置される複数のパイプから流出した高温の水がチラーの蒸発器周辺に貯溜、冷却されて、再び、コンクリート構造物内の複数のパイプに圧送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来においては、コンクリート用練り混ぜ水、及びパイプクーリング工法にて使用する大量の水をチラーにて冷却しているが、チラーでは、大量の水を一度に冷却することができず、冷却性能(冷却効率)の面で限界がある。しかも、チラーはリース等で調達しても、かなり高額であり、安価で大量の水を一度に冷却できる技術を構築する必要があった。
【0008】
そして、本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、大量の水を一度に効率よく冷却可能な水冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1の水冷却装置に係る発明は、冷却対象の水として、コンクリート用練り混ぜ水またはパイプクーリング工法に使用される水を冷却する水冷却装置であって、長手方向他端内壁面に冷却装置を備え、該冷却装置により冷却された環境を維持できる内部空間を有する冷却庫と、該冷却庫の長手方向一端側壁部から内部空間内に延び、内部に前記冷却対象の水が流入される配管と、を備え、前記配管は、前記冷却庫内の長手方向一端側壁部と、前記冷却装置との間を前記冷却装置に近接した位置を経由するように長手方向に沿って複数回往復するように配置されることを特徴とするものである。
請求項1の発明では、冷却庫内の冷却された比較的大きな内部空間を利用することで冷却対象の水を冷却するので、大量の水、例えば100L/min程度の水を一度に冷却することが可能になる。また、請求項1の発明では、冷却庫は、従来まで使用していたチラーよりも大幅に安価であり、経済的にも大いにメリットがある。さらに、配管内の冷却対象の水が、冷却庫内であって、長手方向一端側壁部と、冷却装置との間を冷却装置に近接した位置を経由するように長手方向に沿って複数回往復するので、冷却効率を向上させることができる。
【0010】
請求項2の水冷却装置に係る発明は、請求項1の発明において、前記冷却庫及び前記配管は、ユニット化されていることを特徴とするものである。
請求項2の発明では、冷却庫と配管とがユニット化されるので、現場への設置、撤去及び移動が容易となる。
【0011】
請求項3の水冷却装置に係る発明は、請求項1または2の発明において、前記冷却装置により、前記内部空間内の温度を任意に設定可能であることを特徴とするものである。
請求項3の発明では、冷却対象の水の用途に基づいて冷却温度を設定することができるので、冷却対象の水の初期温度(冷却前の温度)に対応して、内部空間内の温度を適宜温度に設定すれば良く、省エネルギに貢献することができる。
【0012】
請求項4の水冷却装置に係る発明は、請求項1~3いずれかの発明において、前記冷却庫は、既存の、物品の輸送に用いられるリーファーコンテナであることを特徴とするものである。
請求項4の発明では、冷却庫を既存のリーファーコンテナにて構成するので、安価で調達し易く、開発に係る初期投資も必要とせず、経済的に非常に有利である。しかも、既存のリーファーコンテナであれば、持ち運びも容易であり、現場への設置も迅速に対応することができる。
【0014】
請求項5の水冷却装置に係る発明は、請求項1~4いずれかの発明において、前記配管を、複数系統備えていることを特徴とするものである。
請求項5の発明では、冷却対象の水の量を大幅に増加させることができ、さらに冷却効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る水冷却装置では、従来採用していたチラーよりも、大量の水を一度に効率よく冷却することができ、その結果、従来よりもはるかに経済的にパイプクーリング工法に使用する水や、コンクリート用練り混ぜ水の冷却に使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る水冷却装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る水冷却装置の断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る水冷却装置において、配管を2系統備えた実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を
図1~
図3に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る水冷却装置1は、
図1及び
図2に示すように、冷却装置8を備え、該冷却装置8により冷却された環境を維持できる内部空間6を有するリーファーコンテナ2と、該リーファーコンテナ2の内部空間6内に延び、内部に冷却対象の水が流入される配管3と、を備えている。リーファーコンテナ2が冷却庫に相当する。リーファーコンテナ2は、既存のものであって、一般的には、その内部空間6を冷却装置8により一定の温度にて冷却した状態に維持して、その内部空間6内に配置されたもの、例えば生鮮食料品や化学品、医療品等の物品の輸送などに使用される。
【0018】
図1及び
図2に示すように、リーファーコンテナ2は、内部空間6を有する直方体状に構成される。リーファーコンテナ2は、その大きさとして、20フィートコンテナまたは40フィートコンテナが採用される。当該リーファーコンテナ2において、例えば、20フィートコンテナが採用されると、その内部空間6は、その長手方向長さが約5、5m程度、幅方向の長さが約2.5m程度、高さが約2.5m程度の大きさであり、人間が立って入ることが可能な大きさとなっている。なお、既存のリーファーコンテナ2においては、その長手方向一端側に観音開きする開閉扉が設けられているものがあるが、当該リーファーコンテナ2を本発明の実施形態に係る水冷却装置1として利用する場合には、この開閉扉を取り外し、その開口を塞ぐようにして、断熱材を含む、正面視略矩形状の一端側壁部10を、気密性を高めるように新たに設置する。当該一端側壁部10には、配管3が挿通される貫通孔11、11が一対設けられている。
【0019】
リーファーコンテナ2の長手方向他端内壁面に冷却装置8が備え付けられている。この冷却装置8により、内部空間6内の温度を任意に設定可能であり、内部空間6内の温度を調整して維持することができる。リーファーコンテナ2の内部空間6を形成する各壁部には、断熱材(図示略)が設けられている。この断熱材により内部空間6から外部に冷気が逃げにくく、内部空間6内を一定温度に維持することが可能になっている。
【0020】
リーファーコンテナ2は、冷却装置8により、一般的に内部空間6内の温度を-20℃~+20℃までの範囲で温度調整することが可能であり、特殊なものになると、内部空間6内の温度を-60℃(冷凍専用)まで設定可能なものもある。配管3は、冷却対象の水が流動するものである。配管3には、金属管または樹脂管が採用される。すなわち、配管3には、例えば、熱伝導率が高く、軽量で、耐食性に優れ、加工性に優れた非鉄金属からなるアルミ管を採用してもよく、軽量で、接続及び切断が容易な取り扱い性に優れた樹脂管を採用してもよい。配管3の内径は、冷却対象の水の処理量等に鑑みて適宜決定される。
【0021】
図1及び
図2に示すように、配管3は、リーファーコンテナ2の一端側壁部10に設けた一方の貫通孔11を経由して内部に挿入される。配管3は、リーファーコンテナ2の長手方向に沿って複数回往復するように屈曲して配置される。本実施形態では、配管3は、リーファーコンテナ2の長手方向に沿って3回往復するようにして配置される。配管3は、リーファーコンテナ2の一端側壁部10の他方の貫通孔11を経由して外部に延出される。配管3の外周面と、リーファーコンテナ2の一端側壁部10に設けた対応する貫通孔11の内周面との間は、気密性を高めるシーリング材等(図示略)によりその隙間を埋めるようにする。
【0022】
リーファーコンテナ2(開閉扉を取り外し、一端側壁部10を新たに設置したもの)と、配管3とはユニット化されている。本実施形態では、配管3は1系統(1本)備えられているが、リーファーコンテナ2の内部空間6の大きさ及び冷却装置8の冷却性能等にもよるが、配管3を2系統(2本)以上備えてもよく、その系統数が限定されることはない。なお、
図3に、例えば、配管3を2系統(2本)備えた実施形態を示している。そして、冷却対象の水が配管3の流入口から流入され(
図1及び
図2の矢印参照)、冷却対象の水が、リーファーコンテナ2の、適宜温度、例えば-20℃に維持された内部空間6内を配管3を介して長手方向に沿って複数回往復することで適宜温度に冷却されて、配管3の流出口から外部に流出される(
図1及び
図2の矢印参照)。具体的には、冷却対象の水がリーファーコンテナ2の、例えば、-20℃に維持された内部空間6内を配管3を介して流動すると、リーファーコンテナ2内に流入する際の初期温度にもよるが、流入時の初期温度から10~15℃程度低い温度に冷却されて、リーファーコンテナ2から外部に流出される。
【0023】
冷却対象の水は、高温にて例えばタンク等に貯溜されており、圧送ポンプ(図示略)等により配管3内に流入される。そして、本実施形態に係る水冷却装置1では、冷却対象の水は、配管3の内径や圧送ポンプの能力にもよるが、リーファーコンテナ2の比較的大きな内部空間6を利用することで、100L/min程度を冷却処理することが可能になる。なお、冷却対象の水は、コンクリート用練り混ぜ水や、パイプクーリング工法に使用する水などである。
【0024】
以上説明したように、本実施形態に係る水冷却装置1では、冷却装置8を備え、該冷却装置8により冷却された環境を維持できる内部空間6を有するリーファーコンテナ2と、該リーファーコンテナ2の内部空間6内に延び、内部に冷却対象の水が流入される配管3と、を備えている。その結果、リーファーコンテナ2内の、冷却された比較的大きな内部空間6を利用することで大量の水、例えば100L/min程度の大量の水を一度に冷却することができる。これにより、本実施形態に係る水冷却装置1では、大量の水を短時間で冷却することが必要なとき、例えば、コンクリート用練り混ぜ水や、パイプクーリング工法に使用する大量の水などを冷却する際に特に有効である。
【0025】
また、本実施形態に係る水冷却装置1では、冷凍庫として、既存のリーファーコンテナ2が採用されているので、例えば、リーファーコンテナ2をリースにて調達すると、10万円程度/月(購入した場合は約100万程度必要)必要であるが、従来採用していたチラー(一般的な施工では3機必要)をリースにて調達する場合には、30万円程度×3機/月必要であり、明らかに必要となる経費を抑制することができる。しかも、水冷却装置1の開発に係る初期投資も必要としないので、従来に比べ経済的に大いにメリットがある。しかも、既存のリーファーコンテナ2を採用することで、持ち運びも容易であり、現場への設置も迅速に対応することができる。
【0026】
さらに、本実施形態に係る水冷却装置1では、リーファーコンテナ2と配管3とがユニット化されているので、現場への設置、撤去及びその移動(持ち運び)が容易となる。しかも、本実施形態に係る水冷却装置1では、例えば、タンク等に貯溜されている水を圧送するための圧送管と、本水冷却装置1の配管3とを接続するだけで設置完了となるので、設置及び撤去に費やす時間を短縮することができ、トータル的な施工コストを削減することができる。
【0027】
さらにまた、本実施形態に係る水冷却装置1では、冷却装置8により、リーファーコンテナ2の内部空間6内の温度を任意に設定可能であり、冷却対象の水の用途に基づいて冷却温度を設定できる。これにより、冷却対象の水の初期温度(冷却前の温度)に対応して、内部空間6内の温度を任意に設定すれば良く、省エネルギに貢献することができる。
【0028】
さらにまた、本実施形態に係る水冷却装置1では、配管3は、リーファーコンテナ2の内部空間6においてその長手方向に沿って複数回往復するように配置され、また、配管3を複数系統備えることで、大量の水を適宜温度まで冷却するための冷却効率をさらに向上させることができる。
【0029】
なお、本実施形態では、冷却庫として既存のリーファーコンテナ2を採用しているが、既存のリーファーコンテナ2を採用せずに、円筒状または直方体状であって所望大きさの内部空間6を有し、所望の冷却性能を有する冷却装置8を備えた冷却庫を新たに製造して、また、その内部空間6内に延びる配管3をユニット化したものを新たに製造してもよい。さらに、円筒状の内部空間6を有する冷却庫を採用する場合には、配管3を円筒状の内部空間6内に螺旋状に配置するようにしてもよい。この実施形態の場合には、配管3を円筒状の内部空間6の軸方向一端面から挿入して、軸方向他端面から延出させることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 水冷却装置,2 リーファーコンテナ(冷却庫),3 配管,6 内部空間,8 冷却装置