(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】作成方法、作成装置、作成システム、プログラム、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G01N 25/20 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
G01N25/20 G
(21)【出願番号】P 2021138092
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2024-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】平塚 大祐
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇温速度又は冷却速度が互いに異なる複数の温度プロファイルを用いた熱分析により、温度変化に対する部材の特性の変化を示す熱分析結果を取得し、
前記熱分析結果を用いて、反応進行度と熱処理条件との関係を示すマスターカーブを作成し、
時間と温度との関係を示す第1熱処理条件
に、前記マスターカーブ
を適用することで、時間に対する反応進行度の変化を示す第1反応挙動を作成し、
前記第1反応挙動から、前記第1反応挙動の評価を示すスコア、前記第1反応挙動に現れた反応についての処理時間、前記反応の速度の最大値、及び時間に対する前記反応の速度の積分値から選択される1つ以上を含む第1データを作成し、
前記第1反応挙動と、熱処理に対する目的条件と、を用いて、その目的条件に沿う第2反応挙動を作成し、
前記第2反応挙動に前記マスターカーブを適用して、前記第2反応挙動に対応した、時間と温度との関係を示す第2熱処理条件を算出する、
熱処理条件の作成方法。
【請求項2】
前記熱処理に対する制約条件をさらに用いて、前記第2熱処理条件を算出する、請求項1記載の
熱処理条件の作成方法。
【請求項3】
前記マスターカーブは、熱処理時に発生しうる複数の現象の少なくともいずれかに対応したパラメータを含み、
1つの前記現象が選択された場合には、選択された前記1つの現象に対応した値を前記パラメータに設定して、前記第2熱処理条件を作成する、請求項1
又は2に記載の
熱処理条件の作成方法。
【請求項4】
熱処理時に複数の反応が発生する場合には、前記複数の反応のそれぞれについて前記マスターカーブを作成し、
複数の前記マスターカーブ及び前記目的条件を用いて、前記第2熱処理条件を作成する、請求項1~
3のいずれか1つに記載の
熱処理条件の作成方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1つに記載の
熱処理条件の作成方法を実行する、作成装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の作成装置と、
出力装置と、
を備え、
前記作成装置は、前記第1熱処理条件、
前記第1反応挙動、前記第2熱処理条件、
前記第2反応挙動、及び
前記第1データの少なくともいずれかを前記出力装置に表示させる、作成システム。
【請求項7】
請求項1~
4のいずれか1つに記載の
熱処理条件の作成方法をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項8】
請求項1~
4のいずれか1つに記載の
熱処理条件の作成方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶した、記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、作成方法、作成装置、作成システム、プログラム、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
生産では、熱活性化過程を利用した熱処理工程が実行されうる。熱処理工程における熱処理の条件は、より効率的であることが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、より効率的な熱処理条件を作成可能な、作成方法、作成装置、作成システム、プログラム、及び記憶媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る作成方法では、部材の熱分析結果を用いて、反応進行度と熱処理条件との関係を示すマスターカーブを作成する。前記作成方法では、さらに、時間と温度との関係を示す第1熱処理条件と、前記マスターカーブと、を用いて、前記第1熱処理条件に関する第1データを作成する。前記作成方法では、さらに、前記マスターカーブと、熱処理に対する目的条件と、を用いて、時間と温度との関係を示す第2熱処理条件を算出する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施形態に係る作成方法を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、熱分析結果を例示するグラフである。
【
図3】
図3は、マスターカーブを例示するグラフである。
【
図4】
図4(a)は、熱処理条件を例示するグラフである。
図4(b)は、
図4(a)の熱処理条件における反応挙動を例示するグラフである。
【
図5】
図5(a)は、目的条件及び制約条件を用いて作成された反応挙動を例示するグラフである。
図5(b)は、
図5(a)の反応挙動に対応する熱処理条件を例示するグラフである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る作成システムを示す模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る作成装置によるユーザインタフェースを示す模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態に係る作成装置によるユーザインタフェースを示す模式図である。
【
図9】
図9は、ハードウェア構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
図1は、実施形態に係る作成方法を示すフローチャートである。
実施形態に係る作成方法は、熱処理条件の作成に用いられる。
図1に示すように、実施形態に係る作成方法M1は、ステップS1~S7を含む。まず、熱処理の対象について、熱分析が実行される(ステップS1)。熱分析では、対象の温度変化に対する特性が記録される。例えば、特性として、熱重量変化率、熱収縮率、弾性率、又は熱流変化などが記録される。熱重量変化率は、熱重量測定装置により測定できる。熱収縮率は、熱収縮率測定装置又は熱機械分析装置により測定できる。弾性率は、動的熱機械分析装置により測定できる。熱流変化は、示差走査熱量計により測定できる。熱分析は、互いに異なる2つ以上の温度プロファイルで実行される。
【0009】
温度プロファイルは、時間に対する温度変化の条件を示す。例えば、熱分析では、昇温速度が互いに異なる複数の温度プロファイルが用いられる。冷却速度が互いに異なる複数の温度プロファイルが用いられても良い。
【0010】
図2は、熱分析結果を例示するグラフである。
図2において、横軸は、時間tを示す。縦軸は、重量変化率wを示す。横軸及び縦軸には、任意単位における値が付されている。グラフでは、昇温速度が互いに異なる3つの加熱条件でそれぞれ部材を加熱したときの、熱分析結果が示されている。
図2の例では、加熱条件ごとに時間に対する重量変化率が異なる。また、昇温速度が高いほど、時間に対する重量変化率が大きい。
【0011】
熱分析結果を用いて、マスターカーブが作成される(ステップS2)。マスターカーブは、反応進行度と熱処理条件との関係を示す関数である。一実施形態において、マスターカーブは、以下の数式1で表される。数式1において、xは反応進行度である。tは時間である。Tは温度である。Qは活性化エネルギーである。Rは気体定数である。Θ(t,T)は、時間t及び温度Tを変数とする関数である。Θ(t,T)は、熱処理を開始した時点から、任意の時間t及び温度Tまでの履歴を積算したものであり、熱処理条件を定量化したものである。
【数1】
【0012】
数式1において、mとnは、加熱時に生じる現象に応じて設定される変数である。例えば、加熱時に生じうる現象として、化学反応、原子拡散、焼結、又は乾燥が挙げられる。化学反応は、化合、分解などである。例えば、原子拡散は、浸炭、イオン注入、融点以下の温度で部材を接合する焼結などである。別の一例として、原子拡散は、合金又は化合物の形成などにおける固体の表面から内部への原子の拡散である。固体の表面から内部への拡散が生じる処理として、熱酸化、硫化などが挙げられる。乾燥は、揮発、昇華などである。化学反応又は乾燥に関するマスターカーブを作成する場合、m及びnは、“0”に設定される。原子拡散のうち、固体の表面での拡散に関するマスターカーブを作成する場合、mは“0”に設定され、nは“-1/2”に設定される。焼結に関するマスターカーブを作成する場合、mは“-1”に設定され、nは“0”に設定される。
【0013】
マスターカーブは、公知のマスターシンタリングカーブ理論を利用して作成できる。概略的には、まず、それぞれの加熱条件での熱分析結果を取得し、特性の変化をΘ(t,T)に対してプロットする。
図2に示す例では、特性は、重量変化率である。温度プロファイルが互いに異なるプロットについて、各プロット間の距離が最小となるQの値を算出する。これにより、Θ(t,T)と特性との関係を示す単一の曲線が得られる。この曲線が、マスターカーブである。
【0014】
図3は、マスターカーブを例示するグラフである。
図3において、横軸はlogΘ(t,T)を示す。縦軸は重量変化率wを示す。横軸及び縦軸には、任意単位における値が付されている。グラフでは、昇温速度が互いに異なる3つの加熱条件による分析結果の一部と、分析結果全体の平均と、が示されている。
図3から、互いに異なる加熱条件における特性の変化は、単一の曲線に収束していることが分かる。
【0015】
既存の熱処理条件(第1熱処理条件)にマスターカーブを適用し、第1熱処理条件における反応進行度を算出する(ステップS3)。上述した通り、マスターカーブは、反応進行度と熱処理条件との関係を示す。熱処理条件では、時間tに対する温度Tの変化が定義されている。マスターカーブを用いることで、熱処理条件を、反応進行度に変換できる。反応進行度は、時間と温度に対する反応の進行度合いを示す。また、変換された反応進行度から、時間に対する反応進行度の変化を示す反応挙動が得られる。
【0016】
図4(a)は、熱処理条件を例示するグラフである。
図4(b)は、
図4(a)の熱処理条件における反応挙動を例示するグラフである。
図4(a)において、横軸は時間tを示し、縦軸は温度Tを示す。
図4(b)において、横軸は時間tを示し、縦軸は反応速度vを示す。反応速度vは、反応進行度から算出でき、時間に対する反応進行度の変化を示す。横軸及び縦軸には、任意単位における値が付されている。
【0017】
図4(a)に示す熱処理条件にマスターカーブを適用することで、
図4(b)に示す反応挙動(第1反応挙動)が得られる。なお、
図4(b)に示す例では、反応速度vのピークが2つ現れており、2つの反応が生じている。複数の反応が生じる場合には、それぞれの反応についてマスターカーブが作成され、複数のマスターカーブを用いて熱処理条件が反応挙動に変換される。
【0018】
反応挙動から、第1データを取得する(ステップS4)。例えば、第1データは、第1反応挙動の評価を示すスコアである。スコアSは、以下の数式2及び3を用いて算出できる。数式2及び3において、nは、熱処理条件において発生する反応の回数である。S
iは、i番目の反応に関するスコアである。t
iは、i番目の反応についての処理時間である。t
idealは、i番目の反応についての理想条件での処理時間である。A
iは、グラフにおけるi番目の反応の面積である。すなわち、A
iは、i番目の反応について、時間tに対する反応速度vの積分値である。V
iは、i番目の反応について反応速度vの最大値である。
【数2】
【数3】
【0019】
例えば、スコアは、反応が効率的に発生しているほど、高くなる。ユーザは、第1熱処理条件においてどの程度効率的に反応が発生しているか、スコアから把握できる。又は、第1データとして、ti、Vi、Aiなどの値が第1反応挙動から算出されても良い。これらの値は、ユーザが後述する制約条件又は目的条件を設定する際に、利用できる。又は、第1データは、既存の熱処理条件から得られた反応挙動自体であっても良い。反応挙動からは、時間ごとの反応進行度を確認でき、それぞれの時間においてどの程度反応が効率的に進んでいるかを把握できる。第1データとして、スコアと、ti、Vi、Aiなどから選択される1つ以上と、反応挙動と、が取得されても良い。
【0020】
熱処理に対する目的条件が設定される(ステップS5)。目的条件は反応挙動を生成する際の目的を示し、最小化、最大化、又は所望の値に近づけるパラメータが目的条件によって特定される。目的条件として、反応の進行に関する条件、時間に関する条件などが設定される。例えば、反応の進行に関する目的条件として、反応速度の平準化、2つ以上の反応の分離などが設定される。平準化については、基準となる反応速度が設定される。基準の反応速度に対する差が最も小さくなるように、反応速度が平準化される。時間に関する条件として、処理時間の最小化などが設定される。2つ以上の目的条件が設定されても良い。
【0021】
熱処理に対して、制約条件がさらに設定されても良い。制約条件は反応挙動を生成する際の制約を示し、制約条件によってパラメータが満たすべき条件が特定される。制約条件として、反応の進行に関する条件、温度に関する条件、時間に関する条件などが設定される。例えば、反応の進行に関する制約条件として、反応速度の上限が設定される。温度に関する制約条件として、最高温度、昇温速度などが設定される。時間に関する制約条件として、処理時間の上限などが設定される。2つ以上の制約条件が設定されても良い。
【0022】
目的条件又は制約条件を設定する際に、ユーザは、第1反応挙動から得られた第1データを参照しても良い。一例として、第1データは、反応速度の最大値を含む。ユーザは、反応速度の最大値を参考に、反応速度を平準化する際の基準値を設定する。
【0023】
設定された目的条件を用いて、その目的条件に沿う反応挙動(第2反応挙動)が作成される(ステップS6)。制約条件が設定される場合には、その制約条件を満たす第2反応挙動が作成される。なお、制約条件を満たす反応挙動を作成できない場合には、別の目的条件又は別の制約条件を再度入力する。第2反応挙動にマスターカーブを適用することで、第2反応挙動が、対応する熱処理条件(第2熱処理条件)に変換される(ステップS7)。
【0024】
図5(a)は、目的条件及び制約条件を用いて作成された反応挙動を例示するグラフである。
図5(b)は、
図5(a)の反応挙動に対応する熱処理条件を例示するグラフである。
図5(a)は、作成された反応挙動の一例である。
図5(b)は、
図5(a)に示す反応挙動にマスターカーブを適用して得られた熱処理条件の一例である。
図5(a)において、横軸は時間tを示し、縦軸は反応速度vを示す。
図5(b)において、横軸は時間tを示し、縦軸は温度Tを示す。横軸及び縦軸には、任意単位における値が付されている。また、
図5(a)では、
図4(b)に示す反応挙動が破線で示されている。
図5(b)では、
図4(a)に示す熱処理条件が破線で示されている。
【0025】
図5(b)から、新たに作成された第2熱処理条件では、既存の第1熱処理条件に比べて、全体の処理時間が、時間t1短縮されていることが分かる。また、
図5(a)から、第2熱処理条件では、第1熱処理条件に比べて、反応速度の最大値が、値v1低減されていることが分かる。処理時間の短縮は、反応の効率化を示し、生産性の向上につながる。反応速度の最大値の低下は、製品への負荷低減、又は熱処理に伴い発生する排気ガスを処理する付帯設備への負荷低減につながる。
【0026】
実施形態の利点を説明する。
生産では、熱活性化過程を利用した熱処理工程が実行されうる。熱活性化過程は、化学反応、原子拡散、焼結、乾燥などである。従来、熱処理工程における時間と温度との関係は、経験、繰り返しの実験結果などに基づいて設定されていた。従来の方法では、熱処理条件に無駄があったとしても、その発見が容易では無い。また、熱処理条件を変更した際に、反応挙動への影響が予測し難く、熱処理条件の最適化が困難であった。
【0027】
この課題について、実施形態では、熱処理条件の作成にマスターカーブを用いる。マスターカーブは、反応進行度と熱処理条件との関係を示す。マスターカーブを作成することで、対象となる部材において、どのように反応が進行しているのかを把握できる。作成されたマスターカーブと、熱処理に対する目的条件と、を用いて、より効率的な熱処理条件を作成できる。また、既存の熱処理条件にマスターカーブを適用することで、既存の熱処理条件に関する無駄を具体化でき、又は、新たな熱処理条件を作成する際に有用なデータを得ることができる。実施形態によれば、既存の熱処理条件に関するデータを得るとともに、より効率的な熱処理条件を作成可能である。
【0028】
マスターカーブには、数式1が用いられる。この数式1によれば、現象に応じてパラメータを設定することで、化学反応、原子拡散、焼結、及び乾燥の4つの現象に対応できる。このため、実施形態に係る方法は、より幅広い熱活性化過程に対応可能である。
【0029】
また、実施形態に係る方法では、熱処理において対象の部材に複数の反応が発生する場合でも、それぞれの反応について活性化エネルギーを算出してマスターカーブを作成することで、適切な熱処理条件を作成可能である。
【0030】
なお、上述した作成方法では、既存の第1熱処理条件に対する評価、目的条件又は制約条件の設定に利用できるデータなどを得るために、第1熱処理条件にマスターカーブを適用している。評価や利用可能なデータ等が不要な場合には、第1熱処理条件のマスターカーブへの適用は省略可能である。
【0031】
実施形態に係る方法は人によって実行されても良いし、方法の少なくとも一部が装置によって実行されても良い。
【0032】
図6は、実施形態に係る作成システムを示す模式図である。
作成システム10は、熱処理条件の作成に用いられ、
図6に示すように、作成装置1、分析装置2、記憶装置3、入力装置4、及び出力装置5を含む。
【0033】
作成装置1は、熱処理条件の作成に関する各種処理を実行する。分析装置2は、対象の部材に関する熱分析を実行する。記憶装置3は、熱処理条件の作成に用いられるデータ、作成装置1の処理によって得られたデータを適宜記憶する。入力装置4は、ユーザが作成装置1にデータを入力するために用いられる。出力装置5は、作成装置1から送信されたデータを外部に出力する。
【0034】
まず、分析装置2が、熱分析を実行する。分析装置2は、作成装置1から送信される指令に従って、自動的に熱分析を実行しても良い。熱分析を実行する際の条件は、ユーザにより予め設定される。作成装置1は、分析装置2による熱分析結果を取得する。例えば、作成装置1は、分析装置2から、熱分析結果を受信する。熱分析結果が記憶媒体に保存され、作成装置1はその記憶媒体から熱分析結果を取得しても良い。分析装置2から作成装置1へ、ユーザによって、熱分析結果が移されても良い。
【0035】
作成装置1は、熱分析結果を用いてマスターカーブを作成する。また、作成装置1は、既存の第1熱処理条件の入力を受け付ける。第1熱処理条件は、入力装置4を用いて入力されても良いし、記憶装置3に保存されても良い。作成装置1は、第1熱処理条件及びマスターカーブを用いて第1データを作成し、第1データを出力装置5に出力させる。
【0036】
ユーザは、入力装置4を用いて、目的条件又は制約条件を入力する。又は、作成装置1は、予め設定されたルールに従い、第1データに基づいて目的条件又は制約条件を自動的に設定しても良い。作成装置1は、マスターカーブ、目的条件、及び制約条件を用いて、反応挙動を作成する。作成装置1は、マスターカーブを用いて反応挙動を熱処理条件に変換する。作成装置1は、変換された熱処理条件を出力装置5に出力させるとともに、記憶装置3に保存する。
【0037】
図7及び
図8は、実施形態に係る作成装置によるユーザインタフェースを示す模式図である。
例えば、出力装置5は、モニタである。
図7に示すように、作成装置1は、ユーザインタフェース(UI)100を表示させる。ユーザの利便性の向上のために、作成装置1は、既存条件、第1熱処理条件のスコア、及び新規条件をUI100に表示させることが好ましい。既存条件は、既存の第1熱処理条件、及びその第1熱処理条件に対応する第1反応挙動から選択される1つ又は2つである。新規条件は、新たに作成された第2反応挙動、及びその第2反応挙動に対応する第2熱処理条件から選択される1つ又は2つである。例えば、作成装置1は、熱分析結果、第1熱処理条件、及び目的条件の入力に応じて、既存条件、スコア、及び新規条件をUI100に表示させる。
【0038】
図7の例では、UI100には、第1熱処理条件101、第1反応挙動102、第2熱処理条件103、第2反応挙動104、第1熱処理条件のスコア105、及び第2熱処理条件のスコア106が表示されている。これらの表示により、ユーザは、第1熱処理条件がどの程度効率的か、第2熱処理条件が第1熱処理条件に対してどの程度効率化されているか、などを容易に把握できる。
【0039】
目的条件及び制約条件は、UIへの反応挙動の描画によって入力されても良い。例えば
図8に示すように、作成装置1は、UI100に、描画領域110を表示させる。ユーザは、入力装置4を用いて、ポインタ111を操作し、描画領域110に反応挙動を描画する。作成装置1は、描画された反応挙動を受け付ける。作成装置1は、入力された反応挙動から、目的条件及び制約条件を算出する。例えば、作成装置1は、入力された反応挙動から、処理時間及び最大の反応速度を算出し、これらの値に基づいて目的条件及び制約条件を設定する。
【0040】
反応挙動の描画の際、
図7に示すように、既存条件が表示されることが好ましい。これにより、経験又は知識の少ないユーザでも、既存条件を参照することで、反応挙動を容易に描画できる。
【0041】
熱処理において発生する現象が分かっている場合は、マスターカーブを作成する際に、数式1におけるパラメータm及びnを設定できる。発生する現象が不明である場合に、作成装置1が、熱分析結果に最も適合するパラメータm及びnを自動的に設定しても良い。例えば、作成装置1は、パラメータm及びnに、上述した3つの組み合わせの値をそれぞれ代入する。作成装置1は、熱分析結果を最も良く表すことができる値の組み合わせを決定し、その値の組み合わせを用いてマスターカーブを作成する。
【0042】
図9は、ハードウェア構成を示す模式図である。
作成装置1は、例えば
図9に示すコンピュータ90の構成を含む。コンピュータ90は、CPU91、ROM92、RAM93、記憶装置94、入力インタフェース95、出力インタフェース96、及び通信インタフェース97を含む。
【0043】
ROM92は、コンピュータ90の動作を制御するプログラムを格納している。ROM92には、上述した各処理をコンピュータ90に実現させるために必要なプログラムが格納されている。RAM93は、ROM92に格納されたプログラムが展開される記憶領域として機能する。
【0044】
CPU91は、処理回路を含む。CPU91は、RAM93をワークメモリとして、ROM92又は記憶装置94の少なくともいずれかに記憶されたプログラムを実行する。プログラムの実行中、CPU91は、システムバス98を介して各構成を制御し、種々の処理を実行する。
【0045】
記憶装置94は、プログラムの実行に必要なデータや、プログラムの実行によって得られたデータを記憶する。
【0046】
入力インタフェース(I/F)95は、コンピュータ90と入力装置95aとを接続する。入力I/F95は、例えば、USB等のシリアルバスインタフェースである。CPU91は、入力I/F95を介して、入力装置95aから各種データを読み込むことができる。
【0047】
出力インタフェース(I/F)96は、コンピュータ90と出力装置96aとを接続する。出力I/F96は、例えば、Digital Visual Interface(DVI)やHigh-Definition Multimedia Interface(HDMI(登録商標))等の映像出力インタフェースである。CPU91は、出力I/F96を介して、出力装置96aにデータを送信し、出力装置96aに画像を表示させることができる。
【0048】
通信インタフェース(I/F)97は、コンピュータ90外部のサーバ97aと、コンピュータ90と、を接続する。通信I/F97は、例えば、LANカード等のネットワークカードである。CPU91は、通信I/F97を介して、サーバ97aから各種データを読み込むことができる。
【0049】
記憶装置94は、Hard Disk Drive(HDD)及びSolid State Drive(SSD)から選択される1つ以上を含む。入力装置95aは、マウス、キーボード、マイク(音声入力)、及びタッチパッドから選択される1つ以上を含む。出力装置96aは、モニタ及びプロジェクタから選択される1つ以上を含む。タッチパネルのように、入力装置95aと出力装置96aの両方の機能を備えた機器が用いられても良い。記憶装置94、入力装置95a、及び出力装置96aは、それぞれ、記憶装置3、入力装置4、及び出力装置5として用いることができる。
【0050】
作成装置1の機能は、複数のコンピュータの協働により実現されても良い。上記の種々のデータの処理は、コンピュータに実行させることのできるプログラムとして、磁気ディスク(フレキシブルディスク及びハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、CD-R、CD-RW、DVD-ROM、DVD±R、DVD±RWなど)、半導体メモリ、又は、他の非一時的なコンピュータで読取可能な記録媒体(non-transitory computer-readable storage medium)に記録されても良い。
【0051】
例えば、記録媒体に記録された情報は、コンピュータ(または組み込みシステム)により読み出されることが可能である。記録媒体において、記録形式(記憶形式)は任意である。例えば、コンピュータは、記録媒体からプログラムを読み出し、このプログラムに基づいてプログラムに記述されている指示をCPUで実行させる。コンピュータにおいて、プログラムの取得(または読み出し)は、ネットワークを通じて行われても良い。
【0052】
以上で説明した、作成方法、作成装置、作成システムによれば、より効率的な熱処理条件を作成可能である。コンピュータに、作成方法を実行させるプログラムを用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0053】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1:作成装置、 2:分析装置、 3:記憶装置、 4:入力装置、 5:出力装置、 10:作成システム、 90:コンピュータ、 101:第1熱処理条件、 102:第1反応挙動、 103:第2熱処理条件、 104:第2反応挙動、 105,106:スコア、 110:描画領域、 111:ポインタ、 M1:作成方法