特許 7620530 面材オープナー及び建具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2025-01-15

(45)【発行日】2025-01-23

(54)【発明の名称】面材オープナー及び建具

(51)【国際特許分類】

   E05F 13/02 20060101AFI20250116BHJP

   E05F 13/04 20060101ALI20250116BHJP

【ＦＩ】

E05F13/02

E05F13/04

【請求項の数】 6

(21)【出願番号】P 2021163572

(22)【出願日】2021-10-04

(65)【公開番号】P2023054612

(43)【公開日】2023-04-14

【審査請求日】2024-05-01

(73)【特許権者】

【識別番号】390005267

【氏名又は名称】ＹＫＫ ＡＰ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】110002147

【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所

(72)【発明者】

【氏名】溝口 麻美

(72)【発明者】

【氏名】河合 政志

【審査官】鈴木 智之

(56)【参考文献】

【文献】特開２０２０－０８４４０４（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０１９－１７８５５７（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２０２２－０６３７９０（ＪＰ，Ａ）

【文献】米国特許第０６０６７６９０（ＵＳ，Ａ）

【文献】実開昭６３－０２８７７６（ＪＰ，Ｕ）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０５Ｆ １／００－１３／０４，１７／００

Ｅ０５Ｂ １／００

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

横枠及び縦枠を有した枠体と、前記横枠の延在方向に沿って移動可能に配設された面材とを備える建具用の面材オープナーであって、
前記面材の少なくとも一方の表面から突出した状態で前記面材に設けられる受部材と、
前記受部材に対向する位置に配置される押圧部材と、
前記縦枠に沿って上下に延在し、上端部が前記押圧部材に接続され、かつ下端部が操作入力部に接続され、前記操作入力部が操作された場合に前記縦枠に対して下方に移動することにより前記押圧部材を介して前記受部材を押圧するリンク機構と
を備えることを特徴とする面材オープナー。

【請求項2】

前記操作入力部は、ベースに対して上下方向に移動可能に配設し、上面に操作面を有した操作部を備えたものであり、前記操作面に操作力が加えられた場合に前記ベースに対して下方に移動することにより前記リンク機構を下方に移動させることを特徴とする請求項１に記載の面材オープナー。

【請求項3】

前記操作入力部には、前記ベースと前記操作部との間に前記ベースに対して前記操作部を常時上方に向けて付勢する付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項２に記載の面材オープナー。

【請求項4】

前記操作入力部は、前記縦枠の見込み面に取り付けられる取付ブラケットを備え、
前記取付ブラケットに前記ベースが取り付けられていることを特徴とする請求項２に記載の面材オープナー。

【請求項5】

請求項１～請求項３のいずれか一つに記載の面材オープナーが設けられていることを特徴とする建具。

【請求項6】

前記縦枠の見込み面に前記押圧部材及び前記リンク機構が設けられていることを特徴とする請求項５に記載の建具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、面材オープナー及び建具に関する。

【背景技術】

【0002】

引き戸等のように、枠体の横枠に沿って移動可能に配設された面材を備える建具には、面材オープナーを備えるものがある。引き戸等の建具には、面材の戸先側となる表面にハンドルが設けられているのが一般的であり、ハンドルを操作することで面材を開くことが可能となる。面材オープナーは、ハンドルに触れることなく面材を開くことができるように構成されたものである。この種の面材オープナーとしては、例えば特許文献１に記載されたものがある。この面材オープナーでは、縦枠に押圧部材及びリンク機構が設けられており、操作入力部を介してリンク機構を動作させると、押圧部材が面材の戸先側となる端面を押圧することで面材を開くことが可能となる。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【文献】特開２０２０－８４４０４号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

ところで、上述の面材オープナーにおいて、面材と縦枠との間に隙間が生じないように面材を閉じるには、押圧部材及びこれを作動させるリンク機構の一部を縦枠の内部に収容させなければならない。このため、既存の建具に後付けで設置する場合には、煩雑な作業が必要とならざるを得ない。こうした問題を解決するには、面材オープナーが内蔵された新たな縦枠を既存の縦枠に追加することも考えられる。しかしながら、新たな縦枠が追加された建具にあっては、面材を開いた際の開口面積が減少するばかりでなく、新たな縦枠の寸法を上枠と下枠との間の寸法に合致させる作業が必要となる。

【0005】

本発明は、上記実情に鑑みて、建具の開口面積が減少する事態を招来することなく容易に設置することのできる面材オープナー及び建具を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

上記目的を達成するため、本発明に係る面材オープナーは、横枠及び縦枠を有した枠体と、前記横枠の延在方向に沿って移動可能に配設された面材とを備える建具用の面材オープナーであって、前記面材の少なくとも一方の表面から突出した状態で前記面材に設けられる受部材と、前記受部材に対向する位置に配置される押圧部材と、前記縦枠に沿って上下に延在し、上端部が前記押圧部材に接続され、かつ下端部が操作入力部に接続され、前記操作入力部が操作された場合に前記縦枠に対して下方に移動することにより前記押圧部材を介して前記受部材を押圧するリンク機構とを備えることを特徴とする。

【発明の効果】

【0007】

本発明によれば、面材の表面に受部材を設け、押圧部材が受部材を押圧するように構成してあるため、押圧部材を縦枠の内部に収容させなくても、面材の見込み面と縦枠の見込み面との間の気密性を確保することが可能となる。しかも、押圧部材やリンク機構は、上枠と下枠との間に隙間なく設ける必要がない。これらの結果、既存の建具に後付けで設置する場合にも煩雑な作業が必要となることはなく、面材を開いた際の開口面積が大きく減少する事態を防止することができるようになる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】本発明の実施の形態である面材オープナーの外観斜視図である。

【図2】図１に示した面材オープナーの操作入力部、リンク機構、押圧部材を示す分解斜視図である。

【図3】図２に示した押圧部材を示すもので、（ａ）は非作動位置に配置された状態の斜視図、（ｂ）は作動位置に配置された状態の斜視図である。

【図4】図１に示した面材オープナーを適用した建具を示すもので、（ａ）は面材が閉じ位置に配置された状態の姿図、（ｂ）は面材が開き位置に配置された状態の姿図である。

【図5】図４に示した建具の要部を示すもので、（ａ）は面材が閉じた状態の要部姿図、（ｂ）は面材が開いた状態の要部姿図である。

【図6】図４に示した建具の要部を示すもので、（ａ）は面材が閉じ位置に配置された状態の横断面図、（ｂ）は面材が開き位置に配置された状態の横断面図である。

【図7】図４に示した建具の縦枠を示すもので、（ａ）は押圧部材が非作動位置に配置された状態の側面図、（ｂ）は押圧部材が作動位置に配置された状態の側面図である。

【発明を実施するための形態】

【0009】

以下、添付図面を参照しながら本発明に係る面材オープナー及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる場合がある。見込み方向とは、図中の矢印Ａで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、上枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。

【0010】

図１～図３は、本発明の実施の形態である面材オープナーを示したものである。ここで例示する面材オープナー１は、図４～図７に示すように、屋内において通路と部屋とを仕切る壁体Ｗの開口部に設けた片引き戸と称される建具に適用するものである。以下、面材オープナーの適用対象となる引き戸について説明する。片引き戸は、枠体１０及び扉体（面材）２０を備えて構成したものである。

【0011】

枠体１０は、上枠（横枠）１１、下枠（横枠）１２及び左右の縦枠１３，１４によって長方形の枠状に構成し、さらに上枠１１及び下枠１２の相互間において部屋側となる部分に上下に沿って方立１５を設けることにより構成したものである。通路側から見て左方に位置する縦枠（以下、区別する場合に戸先枠１３という）は、通路側から見て右方に位置する縦枠（以下、区別する場合に戸尻枠１４という）及び方立１５よりも、見込み方向に沿った寸法が大きく構成してある。戸先枠１３の見込み面１３ａは、戸尻枠１４の見込み面１４ａ及び方立１５の見込み面１５ａに対向し、かつ戸尻枠１４の見込み面１４ａ及び方立１５の見込み面１５ａに対してほぼ平行である。戸先枠１３の通路側に位置する見付け面１３ｂは、戸尻枠１４の見付け面１４ｂ及び下枠１２の見付け面１２ｂとほぼ同一の平面上に位置している。戸先枠１３の部屋側に位置する見付け面１３ｃは、方立１５の見付け面１５ｃ及び下枠１２の見付け面１２ｃとほぼ同一の平面上に位置している。戸先枠１３と方立１５との間には、扉体２０によって開閉される開口部が構成してある。戸尻枠１４と方立１５との間は、袖壁Ｗ１によって閉塞してある。方立１５と戸尻枠１４との間の通路側に位置する部分は、開口部を開いた際に扉体２０を収容する戸袋となる。戸先枠１３の見込み面１３ａ及び戸尻枠１４の見込み面１４ａには、互いに対向する部分に凹部１３ｄ，１４ｄが設けてある。凹部１３ｄ，１４ｄは、見込み方向に沿った幅が扉体２０の板厚よりも大きな寸法となるように構成したもので、戸先枠１３及び戸尻枠１４の長手に沿ってそれぞれの全長に設けてある。なお、図中の符号は、方立１５において扉体２０に対向する見付け面に設けたモヘア１５ｅである。

【0012】

扉体２０は、戸先枠１３と方立１５との間の開口部を閉塞することのできる大きさに形成した平板状を成す部材である。図には明示していないが、この扉体２０は、例えば上端部に設けた吊り下げ機構を介して上枠１１に走行可能に支持してあり、戸先枠１３の凹部１３ｄと戸尻枠１４の凹部１４ｄとの対向する領域において上枠１１の延在方向に沿って移動することが可能である。扉体２０の板厚は、戸尻枠１４の見込み方向に沿った寸法よりもさらに小さく設定してある。図示の例では、扉体２０の板厚が戸尻枠１４の見込み方向に沿った寸法に対して１／２以下となるように設定してある。さらに、図からも明らかなように、扉体２０は、枠体１０の見込み方向において方立１５に近接する位置に配置してある。この結果、枠体１０において扉体２０よりも通路側に位置する部分には、見込み方向に沿った寸法が戸尻枠１４の見込み方向に沿った寸法のほぼ１／２となる空間が確保されている。扉体２０には、戸先側であって高さ方向のほぼ中央となる部分の両面にそれぞれハンドル２１が取り付けてある。

【0013】

上述した面材オープナー１は、通路側から部屋へ入る際にハンドル２１に触れることなく扉体２０を開くためのもので、図１～図３に示すように、受部材３１、リンクバー（リンク機構）３２、押下ペダル（操作入力部）３３及び押圧アーム（押圧部材）３４を備えている。

【0014】

受部材３１は、扉体２０の通路側表面（一方の表面）２０ａにおいてハンドル２１よりも下方となる部分に取り付けたもので、受本体部３１ａ及びカバー部３１ｂを有している。受本体部３１ａは、縦長の直方体状を成すもので、戸先枠１３に対向する受面３１ｃが、見込み方向に沿ってほぼ鉛直となる状態で扉体２０の戸先側となる部分に固定してある。図からも明らかなように、受本体部３１ａの受面３１ｃは、扉体２０の戸先側に位置する見込み面２０ｃ（以下単に戸先面という）よりも戸尻側に位置している。受本体部３１ａの通路側への突出端面３１ｄは、戸先枠１３の通路側に位置する見付け面１３ｂから突出しないように設定してある。カバー部３１ｂは、受本体部３１ａの突出端部から戸先枠１３の見込み面１３ａに向けて突出した薄板状を成すもので、扉体２０の通路側表面２０ａとの間に隙間を確保し、かつ扉体２０の通路側表面２０ａに対してほぼ平行となるように延在している。カバー部３１ｂの延在長さは、扉体２０を閉じた場合にも、延在縁部が戸先枠１３の見込み面１３ａに当接することがないように設定してある。

【0015】

リンクバー３２は、長尺の平板状を成すもので、上端部にアーム接続部３２ａを有するとともに、下端部に操作連係部３２ｂを有している。アーム接続部３２ａは、見込み方向に沿って延在する連係軸３２ｃを介して後述する押圧アーム３４の上端部に回転可能に接続するものである。操作連係部３２ｂは、連結ネジ（図示せず）を介して後述する押下ペダル３３の操作部３３ａに連結するものである。リンクバー３２には、中間部にスライドガイド孔３２ｄが設けてある。スライドガイド孔３２ｄは、リンクバー３２の幅方向のほぼ中央となる部分にリンクバー３２の長手に沿って延在するスリット状の孔である。このリンクバー３２は、ガイド形材３５のネジ挿通孔３５ａ及びスライドガイド孔３２ｄを介して取付ネジＳを戸先枠１３に螺合することにより、上下方向に沿った状態で戸先枠１３の見込み面１３ａに取り付けてある。リンクバー３２を取り付ける位置は、戸先枠１３の見込み面１３ａにおいて凹部１３ｄよりも通路側であり、受部材３１のカバー部３１ｂよりも部屋側である。すなわち、この建具では、戸先枠１３の見込み面１３ａにおいて受部材３１の受面３１ｃに対向する見込み範囲内にリンクバー３２が上下に沿って移動可能に配設してある。ガイド形材３５は、リンクバー３２の表面及び両側面を覆うことのできる断面形状を有し、戸先枠１３の見込み面１３ａとの間にリンクバー３２を上下方向にのみ移動することのできるガイド溝を構成するものであり、リンクバー３２よりも短い長手寸法に設定してある。このガイド形材３５には、下方部分にアーム支持部３５ｂが設けてある。アーム支持部３５ｂは、見込み方向に沿って延在する支持軸３５ｃを介して後述する押圧アーム３４の下端部を回転可能に支持するものである。

【0016】

押下ペダル３３は、ベース３３ｂに対して操作部３３ａが上下方向に沿って移動可能に支持されたものである。操作部３３ａは、上端に平面状の操作面３３ｃを有した略直方体状を成すものである。操作部３３ａの操作面３３ｃは、もっとも上方に配置された状態においても足を掛けて容易に押し下げることができるように、その高さ及び面積が設定してある。ベース３３ｂと操作部３３ａとの間には、操作部３３ａを常時上方に付勢するスプリング（付勢部材）３３ｄが内蔵してある。スプリング３３ｄの付勢力は、操作部３３ａにリンクバー３２が連結され、かつリンクバー３２に押圧アーム３４が接続された状態においてもベース３３ｂに対して操作部３３ａを上方に維持できるように設定してある。この押下ペダル３３は、戸先枠１３の見込み面１３ａに取り付けた取付ブラケット３３ｅにベース３３ｂを固定することにより、取付ブラケット３３ｅを介して戸先枠１３の下端部に取り付けてある。図からも明らかなように、取付ブラケット３３ｅ、ベース３３ｂ、操作部３３ａは、見込み方向に沿った寸法がいずれも、枠体１０において扉体２０よりも通路側に確保された空間に配置することのできるように設定してある。

【0017】

押圧アーム３４は、互いの端部を連結軸３４ａによって回転可能に連結した２つのアーム部材３４ｂを備えて構成したものである。２つのアーム部材３４ｂの連結部分には、押圧ローラ３４ｃが配設してある。押圧ローラ３４ｃは、連結軸３４ａを中心とした円柱状を成すもので、連結軸３４ａの軸心回りに相対回転することが可能である。この押圧ローラ３４ｃは、２つのアーム部材３４ｂを直線状に配置した非作動位置から、２つのアーム部材３４ｂを屈曲状に配置した作動位置までの間において、常に外周面が外部に突出した状態となるようにその外径が設定してある。但し、押圧ローラ３４ｃの外径寸法は、扉体２０を閉じた場合にも、受部材３１の受面３１ｃと戸先枠１３の見込み面１３ａとの間に確保される隙間よりも小さく設定してある。この押圧アーム３４は、上方となる端部が連係軸３２ｃを介してリンクバー３２のアーム接続部３２ａに接続してあり、かつ下方となる端部が支持軸３５ｃを介してガイド形材３５のアーム支持部３５ｂに接続してある。押圧アーム３４、ガイド形材３５のアーム支持部３５ｂ、リンクバー３２は、押下ペダル３３の操作部３３ａがスプリング３３ｄの付勢力によってもっとも上方に配置された場合に押圧アーム３４が非作動位置に配置され、かつ押圧ローラが受部材３１の受面３１ｃに対向するようにそれぞれの寸法が設定してある。

【0018】

上記のように構成した面材オープナー１を備える建具では、操作部３３ａに外力を加えていない場合、図４（ａ）、図５（ａ）、図６（ａ）、図７（ａ）に示すように、リンクバー３２が上方に配置されるため、押圧アーム３４が非作動位置となる。従って、扉体２０を閉じる方向に移動させた場合にも、押圧アーム３４と受部材３１とが互いに当接した状態となることがなく、扉体２０を閉じ位置に配置することが可能となる。扉体２０の閉じ位置とは、扉体２０の戸先面２０ｃが戸先枠１３の見込み面１３ａを超えて凹部１３ｄに収容され、扉体２０と戸先枠１３との間に見込み方向に沿った直線状の隙間が生じない状態である。扉体２０が閉じ位置に配置された状態においては、方立１５のモヘア１５ｅとの協働により、通路と部屋との間において通気が抑制されることになり、所望の気密性を確保した状態でこれら通路及び部屋を仕切ることができるようになる。なお、この閉じ位置では、必ずしも扉体２０の戸先面２０ｃが凹部１３ｄにおいて戸先枠１３に当接している必要はない。

【0019】

扉体２０が閉じ位置にある状態から操作部３３ａの操作面３３ｃを足で押し下げると、図４（ｂ）、図５（ｂ）、図６（ｂ）、図７（ｂ）に示すように、リンクバー３２を介して押圧アーム３４の上端部が下方に移動する。この結果、押圧アーム３４が屈曲することによって作動位置に配置され、受部材３１に対向する押圧ローラ３４ｃが戸先枠１３から離隔する方向に向けて移動するため、受部材３１の受面３１ｃを介して扉体２０が開き方向に向けて押圧される。すなわち、この建具では、扉体２０に設けたハンドル２１に触れることなく、閉じ位置に配置された扉体２０を開き位置に向けて移動させることが可能となる。従って、例えばリンクバー３２がもっとも下方となる位置に配置された際に押圧ローラ３４ｃが戸先枠１３の見込み面１３ａから１００ｍｍ程度突出するように設定すれば、戸先枠１３と扉体２０との間に生じた隙間に身体を入れることで扉体２０を全開位置まで開くことも可能となる。これにより、多数の者が出入りする部屋に建具が設けられていたとしても衛生上の問題を生じるおそれがない。また、荷物などによって両手が塞がっている状況下であっても扉体２０を開くことができる等々、使い勝手の点できわめて有利となる。操作部３３ａから足を外せば、扉体２０の開閉状態に関わらず、操作部３３ａがスプリング３３ｄの付勢力によって上方に移動し、これに伴ってリンクバー３２が上方に移動するため、押圧アーム３４が非作動状態に復帰する。従って、扉体２０を開く際に突出した押圧アーム３４が出入りの際に邪魔となることもなく、扉体２０を開いた際の開口面積が大きく減少する事態が招来されることもない。

【0020】

また、上述した面材オープナー１は、構成要素のすべてが枠体１０の外部に露出した状態のままとなる。従って、既存の建具に対して後付けする場合にも、煩雑な作業が必要となることもなく、メンテナンス作業も容易に実施可能である。反面、押下ペダル３３を含めた構成要素のすべてが枠体１０の見込み面内に収容してあるため、扉体２０の通路側表面２０ａに沿って通路を通過する歩行者等の邪魔になることがない。さらに、面材オープナー１の取り付け前後において枠体１０に対する扉体２０の閉じ位置が変化することはなく、面材オープナー１を取り付けた後であっても、元々通路と部屋との間に確保されていた気密性をそのまま維持することが可能である。

【0021】

さらに、リンクバー３２が上方に移動した際に押圧アーム３４が受部材３１を押圧する場合には、座屈しないようにリンクバー３２の剛性を考慮する必要があり、その板厚も大きなものとなる。これに対して上述の面材オープナー１では、リンクバー３２の下端部に押下ペダル３３を設け、かつリンクバー３２が下方に移動する際に押圧アーム３４を介して受部材３１を押圧するようにしている。つまり、受部材３１を押圧する際にリンクバー３２に引張り力が作用することになる。従って、リンクバー３２としては座屈を考慮する必要がなく、薄型化を図ることが可能となるばかりでなく、ワイヤー等のように可撓性を有した索状体を適用することができ、面材を開いた際の開口面積をより大きく確保することが可能となる。なお、リンク機構としてワイヤーを適用する場合には、押下ペダル３３のスプリング３３ｄを省略し、リンク機構に付勢手段を内蔵させれば良い。

【0022】

なお、上述した実施の形態では、屋内において通路と部屋とを仕切る壁体に設けたものを例示しているが、本発明はこれに限定されない。例えば、屋内において部屋と部屋とを仕切る壁体に設けられる建具であっても良いし、屋内と屋外とを仕切る壁体に設けられる建具にも適用することが可能である。この場合、面材としては必ずしも扉体である必要はなく、ガラス板の四周に框を備えたものでも構わない。また、枠体に面材を唯一備えたものに限らず、引き違い窓等、複数の面材を備えたものであっても構わない。さらに、面材は、必ずしも吊り下げ機構を介して上枠に支持させたものである必要はなく、下端部に設けた戸車を介して開閉可能に支持されたものであっても構わない。

【0023】

また、上述した実施の形態では、戸先枠の見込み面に凹部を形成し、扉体を閉じ位置に配置した場合に扉体の戸先部分を凹部に収容させるようにしているが、必ずしも戸先枠に凹部を設ける必要はなく、扉体を閉じ位置に配置した場合にその戸先面を戸先枠の見込み面に当接させるように構成しても良い。

【0024】

さらに、上述した実施の形態では、面材の一方の表面にのみ受部材を配設しているが、他方の表面にも受部材を配設するとともに、他方の表面の受部材を押圧するように押圧部材及びリンク機構を設けるようにしても良い。なお、受部材はハンドルとは別の部材として構成する必要はなく、ハンドルを受部材として共用することも可能である。また、受部材の突出端面を、縦枠の通路側に位置する見付け面とほぼ同一の平面上に位置させるようにしているが、本発明はこれに限定されない。さらに、押圧部材として２つのアーム部材が屈曲状となった場合に受部材を押圧するように構成したものを例示しているが、本発明はこれに限定されない。また、押圧部材としては必ずしも押圧ローラを備えたものに限らない。

【0025】

またさらに、上述した実施の形態では、取付ブラケットを介して押下ペダルを縦枠の見込み面に取り付けるようにしているため、床材の材質に制限されることなく建具への適用が可能となるが、必ずしも押下ペダルを縦枠に取り付ける必要はない。

【0026】

以上のように、本発明に係る面材オープナーは、横枠及び縦枠を有した枠体と、前記横枠の延在方向に沿って移動可能に配設された面材とを備える建具用の面材オープナーであって、前記面材の少なくとも一方の表面から突出した状態で前記面材に設けられる受部材と、前記受部材に対向する位置に配置される押圧部材と、前記縦枠に沿って上下に延在し、上端部が前記押圧部材に接続され、かつ下端部が操作入力部に接続され、前記操作入力部が操作された場合に前記縦枠に対して下方に移動することにより前記押圧部材を介して前記受部材を押圧するリンク機構とを備えることを特徴としている。
この発明によれば、面材の表面に受部材を設け、押圧部材が受部材を押圧するように構成してあるため、押圧部材を縦枠の内部に収容させなくても、面材の見込み面と縦枠の見込み面との間の気密性を確保することが可能となる。しかも、押圧部材やリンク機構は、上枠と下枠との間に隙間なく設ける必要がない。これらの結果、既存の建具に後付けで設置する場合にも煩雑な作業が必要となることはなく、面材を開いた際の開口面積が大きく減少する事態を防止することができるようになる。しかも、リンク機構の下端部に操作入力部を設け、かつリンク機構が下方に移動する際に押圧部材を介して受部材を押圧するようにしている。換言すれば、受部材を押圧する際にリンク機構に引張り力が作用することになる。この結果、リンク機構としては座屈を考慮する必要がなく、薄型化を図ることが可能となるばかりでなく、ワイヤー等のように可撓性を有した索状体を適用することができ、面材を開いた際の開口面積をより大きく確保することが可能となる。

【0027】

また本発明は、上述した面材オープナーにおいて、前記操作入力部は、ベースに対して上下方向に移動可能に配設し、上面に操作面を有した操作部を備えたものであり、前記操作面に操作力が加えられた場合に前記ベースに対して下方に移動することにより前記リンク機構を下方に移動させることを特徴としている。
この発明によれば、操作部としては足踏みすることができる程度の操作面を有したものを適用することができ、枠体の見込み面内に収容させることが可能となる等、省スペース化を図ることが可能となる。

【0028】

また本発明は、上述した面材オープナーにおいて、前記操作入力部には、前記ベースと前記操作部との間に前記ベースに対して前記操作部を常時上方に向けて付勢する付勢部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、リンク機構に付勢部材を設ける必要がなく、リンク機構をより一層薄型化を図ることが可能となる。

【0029】

また本発明は、上述した面材オープナーにおいて、前記操作入力部は、前記縦枠の見込み面に取り付けられる取付ブラケットを備え、前記取付ブラケットに前記ベースが取り付けられていることを特徴としている。
この発明によれば、操作入力部を床面に取り付ける必要がなくなるため、床材の材質に制限されることなく建具への適用が可能となる。

【0030】

また本発明に係る建具は、上述した面材オープナーが設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、面材の表面に受部材を設け、押圧部材が受部材を押圧するように構成してあるため、押圧部材を縦枠の内部に収容させなくても、面材の見込み面と縦枠の見込み面との間の気密性を確保することが可能となる。しかも、押圧部材やリンク機構は、上枠と下枠との間に隙間なく設ける必要がない。これらの結果、既存の建具に後付けで設置する場合にも煩雑な作業が必要となることはなく、面材を開いた際の開口面積が大きく減少する事態を防止することができるようになる。しかも、リンク機構の下端部に操作入力部を設け、かつリンク機構が下方に移動する際に押圧部材を介して受部材を押圧するようにしている。換言すれば、受部材を押圧する際にリンク機構に引張り力が作用することになる。この結果、リンク機構としては座屈を考慮する必要がなく、薄型化を図ることが可能となるばかりでなく、ワイヤー等のように可撓性を有した索状体を適用することができ、面材を開いた際の開口面積をより大きく確保することが可能となる。

【0031】

また本発明は、上述した建具において、前記縦枠の見込み面に前記押圧部材及び前記リンク機構が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、面材オープナーを適用した建具の見込み方向に沿った寸法を抑えることが可能となる。

【符号の説明】

【0032】

１ 面材オープナー、１０ 枠体、１１ 上枠、１２ 下枠、１３ 戸先枠、１３ａ 戸先枠の見込み面、２０ 扉体、２０ａ 通路側表面、３１ 受部材、３２ リンクバー、３３ 押下ペダル、３３ａ 操作部、３３ｂ ベース、３３ｃ 操作面、３３ｄ スプリング、３３ｅ 取付ブラケット、３４ 押圧アーム

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】