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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】蓄熱ユニット
(51)【国際特許分類】
   F28D 20/02 20060101AFI20250116BHJP
   F28D 20/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
F28D20/02 D
F28D20/00 A
F28D20/00 B
F28D20/00 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021516088
(86)(22)【出願日】2020-04-17
(86)【国際出願番号】 JP2020016959
(87)【国際公開番号】W WO2020218216
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019081464
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 勝弥
(72)【発明者】
【氏名】幡野 修平
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 律
(72)【発明者】
【氏名】森内 英輝
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特公昭54-011012(JP,B2)
【文献】特開平07-318274(JP,A)
【文献】特開2010-249412(JP,A)
【文献】実開平06-014866(JP,U)
【文献】特開2006-038266(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第02474544(GB,A)
【文献】特表2001-527635(JP,A)
【文献】国際公開第2015/174523(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0116457(US,A1)
【文献】国際公開第2016/114297(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 20/00 - 20/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象体が設置される対象体設置部の温度を調節する温度調整部を有し、前記対象体の温度を調節するための熱交換装置で使用される高温用の蓄熱ユニットと前記高温よりも低い低温用の蓄熱ユニットとを備える蓄熱ユニットであって、
前記熱交換装置は、
所定の高温温度の熱媒を前記温度調整部に供給する高温用の熱媒体供給部と、
前記高温用の熱媒体供給部から前記温度調整部に熱媒を供給する高温用の第1の供給流路と、
前記高温用の蓄熱ユニットが隣接して設けられた復帰流路であって、前記温度調整部から前記高温用の熱媒体供給部に熱媒を戻すとともに熱媒と前記高温用の蓄熱ユニットとが熱交換可能な高温用の復帰流路と、
前記高温用の熱媒体供給部から前記高温用の蓄熱ユニットに熱媒を供給する高温用の第2の供給流路と、
前記高温用の第1の供給流路又は高温用の前記第2の供給流路とのいずれかを形成する高温用の流路形成部と、
所定の低温温度の熱媒を前記温度調整部に供給する低温用の熱媒体供給部と、
前記低温用の熱媒体供給部から前記温度調整部に熱媒を供給する低温用の第1の供給流路と、
前記低温用の蓄熱ユニットが隣接して設けられた復帰流路であって、前記温度調整部から前記低温用の熱媒体供給部に熱媒を戻すとともに熱媒と前記低温用の蓄熱ユニットとが熱交換可能な低温用の復帰流路と、
前記低温用の熱媒体供給部から前記低温用の蓄熱ユニットに熱媒を供給する低温用の第2の供給流路と、
前記低温用の第1の供給流路又は低温用の前記第2の供給流路とのいずれかを形成する低温用の流路形成部と、
をさらに有し、
前記高温用の蓄熱ユニット及び前記低温用の蓄熱ユニットの各々は、
金属繊維が結着して構成された少なくとも1つの無機繊維体と、
前記金属繊維と接触して形成された蓄熱材と、を備え、
前記高温用の流路形成部によって前記高温用の第1の供給流路が形成されているときに、前記高温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、熱媒の温度を前記所定の高温温度に近づけ、
前記高温用の流路形成部によって前記高温用の第2の供給流路が形成されているときに、前記高温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、前記高温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材が再生され、
前記低温用の流路形成部によって前記低温用の第1の供給流路が形成されているときに、前記低温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、熱媒の温度を前記所定の低温温度に近づけ、
前記低温用の流路形成部によって前記低温用の第2の供給流路が形成されているときに、前記低温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、前記低温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材が再生される蓄熱ユニット。
【請求項2】
前記熱媒が温媒である場合に、
前記高温用の流路形成部によって前記高温用の第1の供給流路が形成されているときには、前記蓄熱材から温媒に熱が伝えられることにより、温媒の温度が高められて前記所定の高温温度に近づけられ、
前記高温用の流路形成部によって前記高温用の第2の供給流路が形成されているときには、温媒から前記蓄熱材に熱が伝えられることにより、前記蓄熱材の温度が高められて前記蓄熱材が再生される請求項に記載の蓄熱ユニット。
【請求項3】
前記熱媒が冷媒である場合に、
前記低温用の流路形成部によって前記低温用の第1の供給流路が形成されているときには、冷媒から前記蓄熱材に熱が伝えられることにより、冷媒の温度が低められて前記所定の低温温度に近づけられ、
前記低温用の流路形成部によって前記低温用の第2の供給流路が形成されているときには、前記蓄熱材から冷媒に熱が伝えられることにより、前記蓄熱材の温度が低められて前記蓄熱材が再生される請求項に記載の蓄熱ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄熱材を有する蓄熱ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板などの各種の対象物を所望する温度に調整するための蓄熱ユニットが知られている。蓄熱ユニットは、蓄熱材と熱伝導性部材とシート部材などからなるものである(例えば、特許文献1参照)。具体的には、蓄熱材は、相変化型の蓄熱材である。また、熱伝導性の部材は、波状の形状を有し、グラファイト層が形成された積層体を用いた樹脂強化グラファイトシートなどからなる。シート部材は、熱伝導材料層を含み互いに剛性が異なる2種類のフィルムからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-75773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した蓄熱ユニットは、全体の強度を高めるとともに形状の自由度を高めるためになされたものではあるが、さまざまな特性や形状を有する複数の部材を配置したり接合したりするもので、構造が複雑になるとともに組み立ても煩雑にならざるを得ないものとなっている。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡素な構成で各種の対象物に取り付けることができ効率よく熱交換可能な蓄熱ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による蓄熱ユニットの特徴は、
対象体が設置される対象体設置部の温度を調節する温度調整部を有し、前記対象体の温度を調節するための熱交換装置で使用される高温用の蓄熱ユニットと前記高温よりも低い低温用の蓄熱ユニットとを備える蓄熱ユニットであって、
前記熱交換装置は、
所定の高温温度の熱媒を前記温度調整部に供給する高温用の熱媒体供給部と、
前記高温用の熱媒体供給部から前記温度調整部に熱媒を供給する高温用の第1の供給流路と、
前記高温用の蓄熱ユニットが隣接して設けられた復帰流路であって、前記温度調整部から前記高温用の熱媒体供給部に熱媒を戻すとともに熱媒と前記高温用の蓄熱ユニットとが熱交換可能な高温用の復帰流路と、
前記高温用の熱媒体供給部から前記高温用の蓄熱ユニットに熱媒を供給する高温用の第2の供給流路と、
前記高温用の第1の供給流路又は高温用の前記第2の供給流路とのいずれかを形成する高温用の流路形成部と、
所定の低温温度の熱媒を前記温度調整部に供給する低温用の熱媒体供給部と、
前記低温用の熱媒体供給部から前記温度調整部に熱媒を供給する低温用の第1の供給流路と、
前記低温用の蓄熱ユニットが隣接して設けられた復帰流路であって、前記温度調整部から前記低温用の熱媒体供給部に熱媒を戻すとともに熱媒と前記低温用の蓄熱ユニットとが熱交換可能な低温用の復帰流路と、
前記低温用の熱媒体供給部から前記低温用の蓄熱ユニットに熱媒を供給する低温用の第2の供給流路と、
前記低温用の第1の供給流路又は低温用の前記第2の供給流路とのいずれかを形成する低温用の流路形成部と、
をさらに有し、
前記高温用の蓄熱ユニット及び前記低温用の蓄熱ユニットの各々は、
金属繊維が結着して構成された少なくとも1つの無機繊維体と、
前記金属繊維と接触して形成された蓄熱材と、を備え、
前記高温用の流路形成部によって前記高温用の第1の供給流路が形成されているときに、前記高温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、熱媒の温度を前記所定の高温温度に近づけ、
前記高温用の流路形成部によって前記高温用の第2の供給流路が形成されているときに、前記高温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、前記高温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材が再生され、
前記低温用の流路形成部によって前記低温用の第1の供給流路が形成されているときに、前記低温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、熱媒の温度を前記所定の低温温度に近づけ、
前記低温用の流路形成部によって前記低温用の第2の供給流路が形成されているときに、前記低温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、前記低温用の蓄熱ユニットの前記蓄熱材が再生されることである。
【発明の効果】
【0007】
簡素な構成で各種の対象物に取り付けることができ効率よく熱交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】無機繊維シート100の外観を示す概略図である。
図2】無機繊維シート100を拡大して無機繊維シート100を構成する無機繊維102の微視的な状態を示す概略図である。
図3】蓄熱ユニット10を構成する無機繊維シート100及び蓄熱材200を拡大して、無機繊維シート100が蓄熱材200と接触する微視的な状態を示す概念図である。
図4】包埋タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。
図5】含浸タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。
図6】担持タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。
図7】担持タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。
図8】積層タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。
図9】連続した単一の無機繊維シート100を折り曲げることによって無機繊維シート100を重なり合う状態に形成した例(A)と、互いに別個の複数の無機繊維シート100を重なり合わせて形成した状態を示す(B)とである。
図10図9Bに示す無機繊維シート100を用いた蓄熱ユニット10の具体的な構造を示す断面図である。
図11】メッシュ状の形状を有する無機繊維メッシュ体150を示す平面図である。
図12】略円筒状に形成された単一の配管PI1に蓄熱ユニット10Aを配置する例を示す斜視図である。
図13】円筒状に形成された3本の配管PI1に蓄熱ユニット10Bを配置する例を示す斜視図である。
図14】略角筒状に形成された配管PI2の外側に蓄熱ユニット10Cを配管PI2に沿って配置する例を示す斜視図である。
図15】角筒状に形成された配管PI3の内部に蓄熱ユニット10Dを配管PI3に沿って配置する例を示す斜視図である。
図16】角筒状に形成された配管PI2の外側に蓄熱ユニット10Cを配管PI2に沿って配置する例を示す斜視図である。
図17】ワーク(対象物)を所定の温度に調整するための温度調整装置600の構成を示す概略図である。
図18】高温用蓄熱ユニット640を再生する流路を示す図である。
図19】低温用蓄熱ユニット650を再生する流路を示す図である。
図20】無機繊維シート100を平坦状の形状にした状態を示す斜視図である。
図21】凹凸が繰り返すように無機繊維シート100を変形させた状態を示す斜視図である。
図22】断面がV字状及び逆V字状を繰り返すように屈曲した形状を有する無機繊維シート100を示す斜視図である。
図23】断面がU字状と逆U字状を繰り返すように屈曲した形状を有する無機繊維シート100を示す斜視図である。
図24】長尺な無機繊維シート100を螺旋状に変形させた状態を示す斜視図である。
図25】無機繊維シート100を渦巻き状(ぜんまいバネ状)に変形させた状態を示す斜視図である。
図26】複数の無機繊維シート100を互いに離隔させて略平行に配置して積層状にした状態を示す斜視図である。
図27】配管PI0の周囲に蓄熱材200を配置した状態を示す断面図である。
図28】配管PI0の周囲に無機繊維シート100及び蓄熱材200を配置した状態を示す断面図である。
図29】ハウジング300の一部を示す断面図である。
図30】ハウジング300の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<<<本実施の形態の概要>>>>
<<第1の実施の態様>>
第1の実施の態様によれば、
無機繊維(例えば、後述する無機繊維102など)が結着又は交絡して構成され所望の形状を有する少なくとも1つの無機繊維部材(例えば、後述する無機繊維シート100など)と、
前記無機繊維と接触する蓄熱材(例えば、後述する蓄熱材200など)と、を備える蓄熱ユニットが提供される。
【0010】
第1の実施の態様による蓄熱ユニットは、少なくとも1つの無機繊維部材と蓄熱材とを備える。無機繊維部材は、無機繊維を含み、無機繊維は、結着又は交絡して構成される。無機繊維部材は、所望の形状を有する。なお、無機繊維は、可撓性を有していても有していなくてもよい。無機繊維の可撓性の大小や有無は問わない。
【0011】
このような構成としたことにより、第1の実施の態様による蓄熱ユニットは、少なくとも1つの無機繊維部材と蓄熱材とを備えるので、簡素な構成にすることができる。また、第1の実施の態様による蓄熱ユニットは、無機繊維部材を介して、蓄熱材と外部との間で効率よく熱交換できる。
【0012】
<<第2の実施の態様>>
第2の実施の態様は、第1の実施の態様において、
熱媒が流れる流路と接して配置されるとともに、
無機繊維が結着又は交絡して構成される無機繊維部材が前記流路内に配置されるように構成される。
【0013】
<<第3の実施の態様>>
第3の実施の態様は、第1の実施の態様において、
前記無機繊維部材と前記蓄熱材とを収納する収納体(例えば、後述するハウジング300など)をさらに備えるように構成される。
【0014】
<<第4の実施の態様>>
第4の実施の態様によれば、
対象体の温度を調節するための熱交換装置(例えば、後述する温度調整装置600など)で使用される蓄熱ユニット(例えば、後述する蓄熱ユニット10や高温用蓄熱ユニット640や低温用蓄熱ユニット650など)であって、
前記熱交換装置は、
対象体が設置される対象体設置部の温度を調節する温度調整部(例えば、後述するワーク用調温部630など)と、
所定の温度(例えば、後述する所定の高温度や所定の低温度など)の熱媒を前記温度調整部に供給する熱媒体供給部(例えば、後述する高温チラー610又は低温チラー620など)と、
前記熱媒体供給部から前記温度調整部に熱媒を供給する第1の供給流路(例えば、後述する配管702、703、706、704、705など)と、
前記蓄熱ユニットが隣接して設けられた復帰流路であって、前記温度調整部から前記熱媒体供給部に熱媒を戻すとともに熱媒と前記蓄熱ユニットとが熱交換可能な復帰流路(例えば、後述する配管708、710、712、714、716など)と、
前記熱媒体供給部から前記蓄熱ユニットに熱媒を供給する第2の供給流路(例えば、後述する702、720、704、722など)と、
前記第1の供給流路又は前記第2の供給流路とのいずれかを形成する流路形成部(例えば、後述する分岐部752、754など)と、をさらに有し、
前記蓄熱ユニットは、
無機繊維(例えば、後述する無機繊維102など)が結着又は交絡して構成された少なくとも1つの無機繊維体(例えば、後述する無機繊維シート100など)と、
前記無機繊維と接触して形成された蓄熱材(例えば、後述する蓄熱材200など)と、を備え、
前記流路形成部によって前記第1の供給流路が形成されているときに、前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、熱媒の温度を前記所定の温度に近づけ(例えば、後述する図17の状態など)、
前記流路形成部によって前記第2の供給流路が形成されているときに、前記蓄熱材と熱媒との熱交換により、前記蓄熱材が再生される(例えば、後述する図18又は図19の状態など)蓄熱ユニットが提供される。
【0015】
熱交換装置では、蓄熱材を熱交換の補助エンジンとして用いることで、熱媒の温度を所望する所定の温度に近づけることが容易となる。すなわち、温度コントローラなどの制御装置に完全に頼り切るのではなく、本発明の蓄熱ユニットを用いることにより、温度コントローラなどの制御装置の負荷を低減できる。
【0016】
<<第5の実施の態様>>
第5の実施の態様は、第4の実施の態様において、
前記熱媒が温媒である場合に、
前記流路形成部によって前記第1の供給流路が形成されているときには、前記蓄熱材から温媒に熱が伝えられることにより、温媒の温度が高められて前記所定の温度に近づけられ(例えば、後述する図17の状態など)、
前記流路形成部によって前記第2の供給流路が形成されているときには、温媒から前記蓄熱材に熱が伝えられることにより、前記蓄熱材の温度が高められて前記蓄熱材が再生される(例えば、後述する図18又は図19の状態など)ように構成される。
【0017】
<<第6の実施の態様>>
第6の実施の態様は、第4の実施の態様において、
前記熱媒が冷媒である場合に、
前記流路形成部によって前記第1の供給流路が形成されているときには、冷媒から前記蓄熱材に熱が伝えられることにより、冷媒の温度が低められて前記所定の温度に近づけられ(例えば、後述する図17の状態など)、
前記流路形成部によって前記第2の供給流路が形成されているときには、前記蓄熱材から冷媒に熱が伝えられることにより、前記蓄熱材の温度が低められて前記蓄熱材が再生される(例えば、後述する図18又は図19の状態など)ように構成される。
【0018】
<<<<本実施の形態の詳細>>>>
以下に、実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0019】
<<<<蓄熱ユニット10の構成>>>>
蓄熱ユニット10は、主に、無機繊維シート100及び蓄熱材200からなる。さらに、蓄熱ユニット10は、ハウジング300を有してもよい。ハウジング300の有無については、後で詳述する。
【0020】
<<<無機繊維シート100及び蓄熱材200>>>
<<無機繊維シート100>>
前記無機繊維シート100は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されないが、例えば、無機繊維102を湿式抄造したシート、公知の乾式不織布の製法で作製した無機繊維シート、無機長繊維を織り込んだシート(例えば、メッシュ)などを挙げることができる。このうち、湿式抄造した繊維シートが、シートの厚みを薄くすることが可能であり、さらに無機繊維102等が均一に分散し緻密な網状構造を形成しており、厚さ、重量のばらつきが少ない均一なシートであるため好適である。無機繊維シート100を薄く、かつ、均一にすることで、本発明にかかる蓄熱ユニットに、複数の無機繊維シート100を含めることが可能であり、蓄熱ユニット全体としての蓄熱及び放熱を、均一で速やかな熱交換が可能なものとすることができる。
本発明にかかる無機繊維シート100に用いられる繊維は、無機繊維である限りにおいて、特に限定されないが、例えば、銅、銀、金、白金、アルミニウム、ニッケル、クロム、タングステン等の単一金属繊維;ステンレス鋼、銅合金、タングステン合金、クロム合金等の合金繊維;ガラス繊維;アルミナ繊維;グラファイト繊維;カーボン繊維;シリカ繊維;ホウ素繊維等を挙げることができる。これらの繊維は、単独又は複数を組み合せて用いることができる。これらのうち、本発明にかかる蓄熱ユニットの、蓄熱及び放熱の速度を早くできるため、熱伝導率の高い材質が好ましく、金属繊維及び合金繊維が好ましく、銅、銀、アルミニウム、ステンレス鋼、銅合金がより好ましい。
【0021】
また、本発明にかかる無機繊維シート100は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、有機繊維を含有していてもよい。有機繊維の含有量の上限は、例えば、20%以下とすることができる。
【0022】
なお、本発明にかかる蓄熱ユニットは、前記無機繊維シート100に代わり、有機繊維シートを用いることも可能である。特に後述する蓄熱材200よりも熱伝導率が高い材質の有機繊維シートを用いる場合には、本発明の蓄熱ユニットの効果を発現させることが可能である。ここで、熱伝導率が高い材質の有機繊維シートとしては、例えば、アラミド繊維、ポリエチレン繊維、ポリアミド繊維、ポリテトラフルオロエチレン繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維等の結晶性高分子繊維を挙げることができる。しかしながら、本発明に用いられる繊維シートは、熱伝導率が高い材質が好ましく、無機繊維脂シートに代えて、熱伝導率の低い有機繊維シートを用いた場合には、蓄熱ユニットとしては性能が劣る。
【0023】
前記無機繊維シート100には、その他添加物を必要に応じて添加することができる。前記添加物としては、例えば、バインダーや増粘剤を挙げることができる。バインダーとしては、アクリル樹脂やポリビニルアルコール等を挙げることができる。
【0024】
前記無機繊維シート100は、製造時、無機繊維102をバインダー樹脂で結着したものを用いることができるが、このシートを真空または非酸化の雰囲気ガス中で無機繊維102が完全に溶融しない温度で焼結した無機繊維100%のシートとすることにより、有機物を含まず、無機繊維102同士が融着した強度のあるシートを作製することができる。無機繊維102同士の結合が多い場合には、無機繊維102内の熱伝達が速やかにおこなれ、本発明にかかる蓄熱ユニットの蓄熱及び放熱を効率的に行うことが可能となる。
【0025】
前記無機繊維シート100に用いられる繊維の繊維径は、特に限定されないが、例えば、1μm~50μm、好ましくは2μm~30μm、より好ましくは3μm~20μmとすることができる。
【0026】
前記無機繊維シート100に用いられる繊維の繊維長は、製造に支障をきたさない限りにおいて、特に限定されず、例えば、0.1mm~5mm、好ましくは0.5mm~3mm、より好ましくは1mm~2mmとすることができる。
【0027】
前記無機繊維シート100の空隙率は、特に限定されないが、例えば、30%~99%とすることができ、40%~98%がより好ましく、50%~97%がさらに好ましい。かかる範囲にある場合に、剛性を有する無機繊維シート100を形成できる。また、蓄熱材200が、前記無機繊維シート100の内部に渡って行き渡ることが可能となり、蓄熱材200が無機繊維シート100を構成する繊維表面と広い面積で密着することができる。このため、蓄熱ユニットは、無機繊維シート100を介して、熱を蓄熱材200に効率よく蓄熱及び放熱することができる。
【0028】
前記空隙率は、繊維シートの体積に対して繊維が存在しない空間の割合で、繊維シートの体積と質量及び繊維素材の密度から算出される。
空隙率(%)=(1-繊維シートの質量/(繊維シートの体積×繊維の密度))×100
なお、空隙率は、使用する繊維の太さ、量や、繊維が交絡した材料の密度や、圧縮成形における圧力によって調整することができる。
【0029】
なお、前述した例では、無機繊維シート100が、金属繊維102のみで構成されているものを示したが、無機繊維102以外の繊維などで構成されていてもよい。
【0030】
<<蓄熱材200>>
本発明にかかる蓄熱材200は、熱媒から、無機繊維シート100を介して、熱を伝達し、蓄熱及び放熱する。蓄熱材200は、顕熱蓄熱方式、潜熱蓄熱方式又は化学蓄熱方式のものを用いることができ、特に限定されない。
【0031】
顕熱蓄熱方式の蓄熱材200は、蓄熱密度が比較的低いため、蓄熱効率が低いが、安定性、安全性、価格、取り扱いの容易さ、耐久性が高い点で非常に優れている。潜熱蓄熱方式の蓄熱材200は、蓄熱密度が高く、蓄熱効率に優れるとともに、安定性、安全性、価格、取り扱いの容易さ、耐久性が高い点で非常に優れている。化学蓄熱方式の蓄熱材200は、蓄熱密度が非常に高く、蓄熱効率が非常に優れているが、安定性、安全性、価格、取り扱いの容易さ及び耐久性が低い。従って、本発明にかかる蓄熱ユニットにおいて、潜熱蓄熱方式の蓄熱材200を好ましく用いることができる。また、蓄熱材の成分や、混合比率の調整により、蓄熱温度や蓄熱エネルギーをコントロールすることができる。
【0032】
好適例である潜熱蓄熱方式の蓄熱材200は、蓄熱材200に加えられた熱を固液相転移が起こる際の潜熱として蓄える方式のものや、固固相転移が起こる際の潜熱として蓄える方式のものを用いることができる。
【0033】
固液相転移の潜熱を利用した蓄熱材200としては、水(氷)、パラフィン系、アルカリ金属水酸化物、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、アルカリ土類金属水酸化物、硝酸塩等の無機塩、酢酸ナトリウム3水和物等の無機水和塩等の単一成分の蓄熱材;硝酸マグネシウム6水和物と塩化マグネシウム6水和物との混合物等の無機塩又は無機水和物の混合物、ラウリン酸とカプリン酸との混合物等の有機化合物の混合物、硝酸アンモニウムと尿素との混合物等の無機塩と有機化合物との混合物等の複数成分の混合物;が挙げられる。また、パラフィン系は、例えばn-パラフィン系蓄熱材のn-ペンタデカンや、エラストマーとパラフィンからなるものを用いることができる。
【0034】
固液相転移の潜熱を利用した蓄熱材200は、例えば、固液相転移の潜熱を利用した蓄熱材200に熱を掛け液相としたのち、本発明にかかる無機繊維シート100に含浸させるか、前記無機繊維シート100を液相とした蓄熱材200に浸漬し、その後温度を下げて、固相とし、前記無機繊維シート100を蓄熱材200に包埋させる等して、本発明の蓄熱ユニットに用いることができる。
【0035】
固固相転移の潜熱を利用した蓄熱材200としては、ポリエチレングリコール共重合架橋結合体等の有機化合物;LiMnO、LiVS、LiVO、NaNiO、LiRh、V、V、V11、Ti、SmBaFe、EuBaFe、GdBaFe、TbBaFe、DyBaFe、HoBaFe、YBaFe、PrBaCo5.5、DyBaCo5.5 、HoBaCo5.48、YBaCo5.49等の遷移金属セラミックス;ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)等の金属でバナジウムの一部を置換した二酸化バナジウム(VO)、を挙げることができる。前記金属でバナジウムの一部を置換した二酸化バナジウムとしては、前記置換した金属をMとし、置換したMの量をxとすると、V1-xと表わすことができる化合物である。ここでxは0を超え、1未満の小数である。
【0036】
固固相転移の潜熱を利用した蓄熱材200は、例えば、固固相転移の潜熱を利用した蓄熱材200を粉体にして、本発明にかかる無機繊維シート100に充填、担持等するか、前記無機繊維シート100を粉体とした蓄熱材200に埋設させる等して、本発明の蓄熱ユニットに用いることができる。
【0037】
また、固固相転移の潜熱を利用した蓄熱材200は、シート状やブロック状等の塊状物として、無機繊維シート100と積層したり、接触させたりして用いることができる。
【0038】
<<無機繊維シート100の構成>>
図1は、無機繊維シート100の外観を示す概略図である。図1に示すように、無機繊維シート100は、可撓性を有するシート状(薄板状)の形態を有する。無機繊維シート100は、撓ませたり屈曲させたりでき、所望する形状に変形させることができる。また、無機繊維シート100に対して切断等の加工をすることができ、無機繊維シート100を所望の大きさに加工することができる。後述するように、無機繊維シート100は、配管などの部材の形状や大きさなどに応じた形状や大きさにして配置することができる。なお、無機繊維シート100は、可撓性を有するものだけでなく、剛性が高く可撓性を有しないものでもよい。蓄熱ユニット10に収納される無機繊維シート100の状態や形状や大きさや蓄熱材200の種類などに応じて、可撓性の大小や有無に関して適切な無機繊維シート100を適宜に選択すればよい。
【0039】
無機繊維シート100は、シート状の形状を有するとともに、所定の厚みを有し、第1の面110と第1の面の反対側の第2の面120との互いに反対方向に向いた2つの一定の表面を有する。なお、無機繊維シート100の厚みは、必ずしも一定である必要はなく、第1の面110と第2の面120とを画定することができればよい。
【0040】
図2は、無機繊維シート100を拡大して無機繊維シート100を構成する無機繊維102の微視的な状態を示す概略図である。無機繊維シート100は、隣り合った無機繊維102の一部同士を結着又は交絡することで形成される。なお、無機繊維102の各々については、一箇所のみで結着又は交絡されていても、複数箇所で結着又は交絡されていてもよい。隣り合う無機繊維102を結着又は交絡することで、結着又は交絡されている複数の無機繊維102に亘って次々に熱を伝えることができる。
【0041】
このように、無機繊維シート100は、無機繊維102を結着又は交絡した状態を維持して、熱伝導可能に構成されていればよく、形状や大きさなどの形態に限定されず、無機繊維102によって構成される無機繊維体であればよい。例えば、後述するように、無機繊維シート100は、蓄熱ユニット10の外部との熱交換(熱の授受)をするために用いられる。なお、蓄熱ユニット10の外部とは、蓄熱ユニット10が取り付けられる配管などの部材を流れる熱媒や冷媒などの熱媒体(熱媒)などがある。
【0042】
<<<無機繊維シート100及び蓄熱材200の接触の種類>>>
図3は、蓄熱ユニット10を構成する無機繊維シート100及び蓄熱材200を拡大して、無機繊維シート100が蓄熱材200と接触する微視的な状態を示す概念図である。図3では、黒い曲線が、無機繊維シート100を構成する無機繊維102を示し、複数の横線が、蓄熱材200が存在する領域を示す。なお、蓄熱材200は、複数の横線で示した領域で連続的に形成されているものとする。
【0043】
図3に示すように、蓄熱ユニット10は、無機繊維シート100と蓄熱材200とを有する。前述したように、無機繊維シート100を構成する無機繊維102は、互いに結着又は交絡している。隣り合う無機繊維102の間には、間隙(空隙)が形成されている。図3に示す例では、隣り合う無機繊維102の間隙に蓄熱材200が充填されて連続的に形成されている。このように、蓄熱材200は、無機繊維シート100の表面(第1の面110又は第2の面120)部分の無機繊維102と接触するだけでなく、無機繊維シート100の内側の領域に存在する無機繊維102にも接触している。なお、図3では、無機繊維シート100の表面である第1の面110又は第2の面120を明確に示すために一点鎖線で示した。このように、図3に示す例では、無機繊維シート100を構成する無機繊維102は、全体的に蓄熱材200と接触している。すなわち、図3に示す例では、無機繊維シート100の全領域(表面及び内部の領域)に亘って蓄熱材200が充填されている。
【0044】
なお、無機繊維102の間の間隙の全体に蓄熱材200が十分に充填されておらず、ある程度の隙間(空気の層や領域)が生じていてもよく(図示せず)、少なくとも無機繊維102の一部の表面に蓄熱材200が接触していれば、蓄熱材200に熱を蓄えることができ、蓄熱ユニット10の外部と蓄熱材200との間で熱交換することができる。
【0045】
無機繊維102を蓄熱材200に接触させることで、空気を介することなく、無機繊維102と蓄熱材200との間で直接的に熱交換することができる。具体的には、蓄熱ユニット10の外部から導入される熱は、まず、無機繊維シート100の無機繊維102に伝えられ、次に、無機繊維シート100を介して蓄熱材200に伝えられて、蓄熱材200に蓄えられる。一方、蓄熱材200に蓄えられた熱は、まず、無機繊維シート100の無機繊維102に伝えられ、次に、無機繊維シート100を介して蓄熱ユニット10の外部に導出される。
【0046】
無機繊維シート100と蓄熱材200との接触の種類には、以下に示すように、包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプなどがある。以下に示す図4図8においても、黒い曲線が、無機繊維シート100を構成する無機繊維102を示し、複数の横線が、蓄熱材200が存在する領域を示す。複数の横線で示した領域において、蓄熱材200は連続的に形成されている。担持タイプは、例えば粒子状の蓄熱材が、無機繊維シート100を構成する無機繊維表面に固定されている態様である。
【0047】
<<含浸タイプ>>
図4は、含浸タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。図3と同様に、蓄熱ユニット10は、無機繊維シート100と蓄熱材200とを有する。なお、図4でも、第1の面110又は第2の面120を明確に示すために一点鎖線で仮想的に示した。
【0048】
含浸タイプは、無機繊維シート100に蓄熱材200の全体が埋め込まれることで、無機繊維シート100が蓄熱材200と接触する。図3と同様に、隣り合う無機繊維102の間隙には、蓄熱材200が充填されて連続的に形成されている。蓄熱材200の外側に位置する無機繊維シート100に熱を伝えることで、無機繊維シート100の内側の領域に存在する蓄熱材200に熱を導入して蓄えることができる。含浸される蓄熱材の量によっては、図3に示す態様も包埋の一形態とも言える。
【0049】
<<包埋タイプ>>
図5は、包埋タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。図3及び図4と同様に、蓄熱ユニット10は、無機繊維シート100と蓄熱材200とを有する。なお、図5でも、第1の面110又は第2の面120を明確に示すために一点鎖線で仮想的に示した。
【0050】
包埋タイプは、蓄熱材200に無機繊維シート100(無機繊維シート100の少なくとも一部)が埋め込まれることで、無機繊維シート100が蓄熱材200と接触した状態を維持する。なお、包埋タイプの場合には、無機繊維シート100の一部を蓄熱材200の外部まで延在させるように構成したり、蓄熱材200の内部に位置する無機繊維シート100と、蓄熱材200の外部に位置する金属体や他の無機繊維シートとを接続させたりするのが好ましい。このように構成することによって、蓄熱材200の内側と外側との間で熱交換をすることができる。
【0051】
<<積層タイプ>>
図6図7及び図8は、積層タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示す概念図である。図3図5と同様に、蓄熱ユニット10は、無機繊維シート100と蓄熱材200とを有する。なお、図6図7及び図8でも、第1の面110又は第2の面120を明確に示すために一点鎖線で仮想的に示した。
【0052】
積層タイプは、無機繊維シート100の一部のみが蓄熱材200と接触するか、蓄熱材200が部分的に無機繊維シート100の内部まで入り込んでいる態様である。図6は、無機繊維シート100の内部まで蓄熱材200と接触し、図7は、無機繊維シート100の表面のみで蓄熱材200と接触する。図8は、図6を積層した態様である。
【0053】
<<蓄熱材200との接触>>
図3図8に示した例は、一例として、無機繊維シート100を平坦状にした場合について説明したが、前述したように、無機繊維シート100は、可撓性を有し、所望する形状に変形できる。無機繊維シート100を変形させた場合でも、前述した包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプなどを適宜に選択して、無機繊維シート100に蓄熱材200を接触させることで、様々な蓄熱ユニット10を構成することができる。
【0054】
なお、図4図8に示した例などでも、無機繊維シート100の無機繊維102の間の間隙の全体に蓄熱材200が十分には充填されておらず、ある程度の隙間(空気の層や領域)が生じていてもよく(図示せず)、少なくとも無機繊維102の一部の表面に蓄熱材200が接触していれば、蓄熱材200に熱を蓄えることができ、蓄熱ユニット10の外部と蓄熱材200との間で熱交換することができる。
【0055】
<<その他の接触の種類>>
前述した包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプは、無機繊維シートが蓄熱材200と接触する態様の一例であり、熱交換ができるように無機繊維シート100が蓄熱材200と接触すればよく、無機繊維シートが蓄熱材200と接触する態様は、蓄熱ユニット10を装着する配管などの部材の形状や大きさや、熱媒の種類や流速などに応じて適宜に定めることができる。
【0056】
<<<積層タイプの具体的な積層構造>>>
前述したように、図8は、積層タイプの無機繊維シート100及び蓄熱材200の微視的な接触状態を示した。図8では、無機繊維シート100及び蓄熱材200の配置の関係を明確に示すために重なり合う(隣り合う)無機繊維シート100を離隔するように示した。実際に蓄熱ユニット10を構成する場合には、図9A及び図9Bに示すように、重なり合う(隣り合う)無機繊維シート100を、互いに接触するようにして配置するのが好ましい。重なり合う無機繊維シート100の全体で熱を伝え易くでき、蓄熱ユニット10の外部と蓄熱材200との間で迅速に熱交換をすることが可能となる。
【0057】
なお、前述したように、図9A及び図9Bに示す例では、重なり合う無機繊維シート100は、互いに接触、あるいは結着しているが、明確に示すために、重なり合う無機繊維シート100の各々を離隔して示した。
【0058】
図9Aは、連続した単一の無機繊維シート100を折り曲げることによって無機繊維シート100を重ね合わせて、略直方体状の形状に形成した例である。図9Bは、互いに別個の複数の平坦な無機繊維シート100を重なり合わせて、略直方体状の形状に形成した状態を示す例である。図9Aに示す例でも、図9Bに示す例でも、重なり合う無機繊維シート100が互いに接触、あるいは結着し、重なり合った無機繊維シート100の全体によって熱を伝え易くできる。
【0059】
<<<蓄熱ユニット10の具体的な構造>>>
図10は、図9Bに示す無機繊維シート100を用いた蓄熱ユニット10の具体的な構造を示す断面図である。なお、図9Aに示す無機繊維シート100を用いても蓄熱ユニット10を構成することができる。
【0060】
図10に示す蓄熱ユニット10は、ハウジング300を有する。ハウジング300は、収容部306と蓋体部308とを有する。収容部306は、凹状の形状を有し、重なり合わせ、無機繊維シート100と蓄熱材200(図示せず)とを収容部306に収容することができる。蓋体部308は、板状の形状を有し、収容部306の上端部に係合させることができる。収容部306及び蓋体部308の材料は、銅やステンレス等にすることができる。
【0061】
まず、無機繊維シート100を収容部306に収納する。具体的には、収容部306の全体が埋まる程度に、無機繊維シート100を重ね合わせて収容部306に収納する。このようにして、収容部306を無機繊維シート100でおおよそ充填することができる。次に、蓋体部308を収容部306の上端部に係合させて、蓋体部308で収容部306の開口部309を覆う。収容部306に熱を加えて焼結により、重ね合わせた無機繊維シート100同士や、無機繊維シート100と収容部306等とを連結させる。連結することで重ね合わせた無機繊維シート100の全体で熱を伝えやすくできる。さらに、蓋体部308を収容部306にNiなどでロウ付けして封止する。なお、焼結によって蓋体部308を収容部306に連結して封止できる場合には、ロウ付けは不要である。蓋体部308及び収容部306の材質に応じて、焼結の温度やロウ付けの有無やロウ付けの材料などを適宜に定めればよい。
【0062】
蓋体部308を収容部306に封止した後に、蓄熱材200の注入孔(図示せず)から蓄熱材200(図示せず)を収容部306に注入する。なお、蓄熱材200を注入した後、銅やステンレスなどの金属などによって注入孔を塞ぐ。このようにして、蓄熱ユニット10の内部は、無機繊維シート100及び蓄熱材200によって充填され、無機繊維シート100は、収容部306と蓋体部308との双方に連結して接触した状態となる。このように構成することで、収容部306からも蓋体部308からも、封入された無機繊維シート100に熱を伝えることができる。これにより、蓄熱ユニット10の外部の冷媒の熱を無機繊維シート100を介して蓄熱材200に伝えやすくしたり、蓄熱材200に蓄えられた熱を無機繊維シート100を介して蓄熱ユニット10の外部の熱媒に伝えやすくしたりすることができる。
【0063】
なお、前述した例では、複数枚の無機繊維シート100を重ね合わせて、収容部306を充填する例を示したが、単一の無機繊維シート100の厚さが収容部306の深さ程度を有する場合には、複数枚の無機繊維シート100を重ね合わせることなく、単一の無機繊維シート100を使用することができる。また、無機繊維シート100の厚さが複数ある場合には、適宜に組み合わせて重ねることで、収容部306を充填することができる。
【0064】
<<<蓄熱ユニット10のその他の構造>>>
図9A及び図9Bの例では、無機繊維シート100を重ね合わせて、全体として、略直方体状の形状にする場合を示した。重ね合わせた無機繊維シート100の全体の形状は、略直方体状の形状だけでなく、蓄熱ユニット10の形状(収容部の形状)に応じて適宜に定めればよい。例えば、全体として、略立方体状の形状や、略円柱状の形状や、略多角柱状の形状などにすることができる。また、球体状や楕円体状などの曲面によって構成される形状にすることもできる。さらに、所定の中心軸(配管など)を周回するように無機繊維シート100を巻回させて形成したものでもよい。いずれの形状であっても、重なり合う無機繊維シート100が互いに接触し、重なり合った無機繊維シート100の全体で熱を伝え易くできればよい。
【0065】
<<<無機繊維メッシュ体150>>>
前述した例では、無機繊維シート100は、繊維シートの形態を有したが、熱を伝えることできるものであれば他の形態でもよい。図11は、メッシュ状の形状を有する無機繊維メッシュ体150を示す平面図である。図11に示す黒い線が、無機繊維からなる長尺なケーブル(糸、線)である。無機繊維メッシュ体150は、複数本の縦ケーブルと、複数本の横ケーブルとを、互いに離隔させつつ、重なる部分で連結することで形成される。
【0066】
複数枚の無機繊維メッシュ体150を重ね合わせ、焼結によって、接触する部分を連結することで、無機繊維シート100と同様に、複数枚の無機繊維メッシュ体150の全体で、熱を伝えることができる。メッシュ状にすることで、間隙領域152を大きく確保でき、蓄熱材200を間隙領域152で移動し易くして、蓄熱材200を無機繊維の間隙に挿入しやすくして無機繊維メッシュ体150と接触させやすくできる。なお、無機繊維シート100であっても無機繊維メッシュ体150であっても、占積率はおおよそ4%~6%である。
【0067】
<<<部材に対する蓄熱ユニット10の配置>>>
前述したように、蓄熱ユニット10は、無機繊維シート100及び蓄熱材200を有する。なお、ここでは、蓄熱ユニット10は、ハウジング300(ハウジング300A~300D)を有するものとする。
【0068】
<<単一の円筒状の配管PI1に蓄熱ユニット10Aを配置する場合>
図12は、略円筒状に形成された単一の配管PI1に蓄熱ユニット10Aを配置する例を示す斜視図である。蓄熱ユニット10Aは、ハウジング300Aを有する。
【0069】
<配管PI1>
配管PI1は、長尺な円筒状に形成されており、長手方向に沿って貫通孔430Aが形成されている。配管PI1は、外周面410Aと内周面420Aとを有する。外周面410Aによって、配管PI1の外形が画定される。内周面420Aによって貫通孔430Aが画定される。貫通孔430Aには、冷媒や温媒などの熱媒が流動することができる。配管PI1は、金属や樹脂などによって形成される。
【0070】
<蓄熱ユニット10A>
蓄熱ユニット10Aは、長尺な円筒状に形成されたハウジング300Aを有し、長手方向に沿って貫通孔330Aが形成されている。蓄熱ユニット10Aのハウジング300Aは、外周面310Aと内周面320Aとを有する。外周面310Aによって、蓄熱ユニット10Aのハウジング300Aの外形が画定される。内周面320Aによって貫通孔330Aが画定される。蓄熱ユニット10Aは、配管PI1の外径よりもやや大きい内径を有する。蓄熱ユニット10Aの貫通孔330Aには、配管PI1が位置づけられる。蓄熱ユニット10Aのハウジング300Aの内周面320Aは、配管PI1の外周面410Aと密着することができる。
【0071】
<接触の種類及び無機繊維シート100の形態>
図12に示す蓄熱ユニット10Aでは、無機繊維シート100の形態として、後述する螺旋状や渦巻き状(ぜんまいバネ状)(図25参照)などを用いることができる。また、無機繊維シート100と蓄熱材200との接触の種類は、包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプのいずれでもよい。蓄熱材200を、配管PI1の外周面410Aと、螺旋状に巻回された無機繊維シート100との間に設けることができる。また、螺旋状に巻回された無機繊維シート100の外周側に蓄熱材200を設けることもできる。さらに、渦巻き状(ぜんまいバネ状)巻回されて隣り合う無機繊維シート100の間の領域に蓄熱材200を配置することもできる。このように構成することで、蓄熱材200の全体の量を多くすることができる。なお、無機繊維シート100の形態は、螺旋状や渦巻き状(ぜんまいバネ状)だけでなく、ハウジング300Aの大きさに応じて、平坦状、凸凹状、積層状などを適宜に用いることができる。
【0072】
配管PI1を流動する熱媒と蓄熱材200との熱交換は、配管PI1とハウジング300Aと無機繊維シート100とを介して行われる。熱媒の熱が、配管PI1、ハウジング300A及び無機繊維シート100を介して蓄熱材200に蓄えられたり、蓄熱材200に蓄えられた熱が、配管PI1、ハウジング300A及び無機繊維シート100を介して熱媒に伝えられたりする。なお、無機繊維シート100を介さずに、配管PI1とハウジング300Aとを介して蓄熱材200と熱交換をすることもできる。
【0073】
さらに、ハウジング300Aの周囲を断熱材で覆うのが好ましい。具体的には、ハウジング300Aの全体を周回して密着する断熱材で覆う。断熱材を用いることで、外部に熱が伝わらないようにして、配管PI1を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、効率よく熱を交換することができる。
【0074】
また、無機繊維シート100を、配管PI1内で配管PI1と接触するように配置するのが好ましい。配管PI1を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、さらに効率よく熱を交換することができる。
【0075】
<<複数の円筒状の配管PI1に蓄熱ユニット10Bを配置する場合>>
図13は、円筒状に形成された3本の配管PI1に蓄熱ユニット10Bを配置する例を示す斜視図である。蓄熱ユニット10Bは、ハウジング300Bを有する。なお、配管の数は、3本に限られず、複数本であればよい。
【0076】
<配管PI1>
配管PI1の各々は、図12で示した配管と同様のものである。配管PI1の各々に形成されている貫通孔430Aには、冷媒や温媒などの熱媒が流動することができる。3本の配管PI1は、同じ太さを有し、互いに離隔して略平行にかつ等間隔に配置されている。
【0077】
<蓄熱ユニット10B>
蓄熱ユニット10Bは、3本の配管PI1の長手方向に沿った略四角筒状に形成されたハウジング300Bを有し、配管PI1の長手方向に沿って貫通孔330Bが形成されている。蓄熱ユニット10Bは、3本の配管PI1を一括して被覆することができる。蓄熱ユニット10Bは、外周面310Bと内周面320Bとを有する。外周面310Bによって、蓄熱ユニット10Bのハウジング300Bの外形が画定される。内周面320Bによって貫通孔330Bが画定される。蓄熱ユニット10Bの貫通孔330Bの断面は、3本の配管PI1の断面より大きい。蓄熱ユニット10Bの貫通孔330Bには、3本の配管PI1が並列に配置される。蓄熱ユニット10Bの貫通孔330Bにおいて、3本の配管PI1は、互いに離隔して配置され、蓄熱ユニット10Bの内周面320Bからも離隔して配置される。
【0078】
<接触の種類及び無機繊維シート100の形態>
図13に示す蓄熱ユニット10Bでは、無機繊維シート100の形態として、後述する螺旋状や渦巻き状(ぜんまいバネ状)(図25参照)などを用いることができる。3本の配管PI1の各々に無機繊維シート100を螺旋状に巻回したり、渦巻き状(ぜんまいバネ状)に巻回したりすることができる。また、無機繊維シート100と蓄熱材200との接触の種類は、包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプのいずれでもよい。
【0079】
蓄熱材200を、図12と同様に、配管PI1の各々の外周面410Aと、螺旋状に巻回された無機繊維シート100との間に設けることができる。また、螺旋状に巻回された無機繊維シート100の外周側に蓄熱材200を設けることもできる。さらに、渦巻き状(ぜんまいバネ状)巻回されて隣り合う無機繊維シート100の間の領域に蓄熱材200を配置することもできる。このように構成することで、蓄熱材200の全体の量を多くすることができる。なお、無機繊維シート100の形態は、螺旋状や渦巻き状(ぜんまいバネ状)だけでなく、ハウジング300Bの大きさに応じて、平坦状、凸凹状、積層状などを適宜に用いることができる。
【0080】
また、互いに離隔して配置される3本の配管PI1の間の領域にも無機繊維シート100を配置することができる。この無機繊維シート100は、貫通孔330Bの全体に亘って連続的に配置されるのが好ましい。無機繊維シート100を連続的に配置することで効率よく熱を伝導させることができる。
【0081】
なお、図13に示した蓄熱ユニット10Bは、3本の配管PI1が一つの段に沿って並列に配置されているものを示したが、複数の段の各々に沿って、複数の配管PI1が並列に配置されていてもよい。
【0082】
3本の配管PI1を流動する熱媒と蓄熱材200との熱交換は、配管PI1の各々とハウジング300Bと無機繊維シート100とを介して行われる。熱媒の熱が、配管PI1、ハウジング300B及び無機繊維シート100を介して蓄熱材200に蓄えられたり、蓄熱材200に蓄えられた熱が、配管PI1、ハウジング300B及び無機繊維シート100を介して熱媒に伝えられたりする。なお、無機繊維シート100を介さずに、配管PI1とハウジング300Bとを介して蓄熱材200と熱交換をすることもできる。
【0083】
さらに、ハウジング300Bの周囲を断熱材で覆うのが好ましい。具体的には、ハウジング300Bの全体を周回して密着する断熱材で覆う。断熱材を用いることで、外部に熱が伝わらないようにして、配管PI1を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、効率よく熱を交換することができる。
【0084】
また、無機繊維シート100を配管PI1内で配管PI1と接触するように配置するのが好ましい。配管PI1を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、さらに効率よく熱を交換することができる。
【0085】
<<角筒状の配管PI2の外側に沿って蓄熱ユニット10Cを配置する場合>>
図14は、略角筒状に形成された配管PI2の外側に蓄熱ユニット10Cを配管PI2に沿って配置する例を示す斜視図である。蓄熱ユニット10Cは、ハウジング300Cを有する。
【0086】
<配管PI2>
配管PI2は、長尺な角筒状に形成されており、長手方向に沿って貫通孔430Cが形成されている。配管PI2は、第1の面410Cと第2の面420Cとを有する。第1の面410Cによって、配管PI1の外形が画定される。第2の面420Cによって貫通孔430Cが画定される。貫通孔430Cには、冷媒や温媒などの熱媒が流動することができる。配管PI2は、金属や樹脂などによって形成される。
【0087】
<蓄熱ユニット10C>
蓄熱ユニット10Cは、長尺な角筒状に形成されたハウジング300Cを有し、長手方向に沿って貫通孔330Cが形成されている。蓄熱ユニット10Cのハウジング300Cは、第1の面310Cと第2の面320Cとを有する。第1の面310Cによって、蓄熱ユニット10Cのハウジング300Cの外形が画定される。第2の面320Cによって貫通孔330Cが画定される。蓄熱ユニット10Cのハウジング300Cの幅(配管PI2の短手方向の長さ)は、配管PI1の幅(短手方向の長さ)と同じである。図14に示す例では、配管PI2の下面に蓄熱ユニット10Cのハウジング300Cの上面が密接するように配置される。このように、図14に示す例では、配管PI2の第1の面と蓄熱ユニット10Cのハウジング300Cの第1の面とが接触して、熱交換が行われる。
【0088】
<接触の種類及び無機繊維シート100の形態>
図14に示す蓄熱ユニット10Cでは、無機繊維シート100の形態として、後述する平坦状(図20参照)、や積層状(図26参照)などを用いることができる。また、無機繊維シート100と蓄熱材200との接触の種類は、包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプのいずれでもよい。蓄熱材200を、ハウジング300Cの第1の面310Cや第2の面320Cと、平坦状の無機繊維シート100との間に設けることができる。また、積層状に形成された無機繊維シート100の間の領域に蓄熱材200を設けることもできる。このように構成することで、蓄熱材200の全体の量を多くすることができる。なお、無機繊維シート100の形態は、平坦状や積層状だけでなく、ハウジング300Cの大きさに応じて、螺旋状や渦巻き状(ぜんまいバネ状)や凸凹状などを適宜に用いることができる。
【0089】
配管PI2を流動する熱媒と蓄熱材200との熱交換は、配管PI2とハウジング300Cと無機繊維シート100とを介して行われる。熱媒の熱が、配管PI2、ハウジング300C及び無機繊維シート100を介して蓄熱材200に蓄えられたり、蓄熱材200に蓄えられた熱が、配管PI2、ハウジング300C及び無機繊維シート100を介して熱媒に伝えられたりする。なお、無機繊維シート100を介さずに、配管PI2及びハウジング300Cを介して蓄熱材200と熱交換をすることもできる。
【0090】
さらに、ハウジング300C及び配管PI2の周囲を断熱材で覆うのが好ましい。具体的には、ハウジング300C及び配管PI2の全体を周回して密着する断熱材で覆う。断熱材を用いることで、外部に熱が伝わらないようにして、配管PI1を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、効率よく熱を交換することができる。
【0091】
また、無機繊維シート100を配管PI2内で配管PI2と接触するように配置するのが好ましい。配管PI2を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、さらに効率よく熱を交換することができる。
【0092】
<<角筒状の配管の内部に蓄熱ユニット10を配置する場合>>
図15は、角筒状に形成された配管PI3の内部に蓄熱ユニット10Dを配管PI3に沿って配置する例を示す斜視図である。蓄熱ユニット10Dは、ハウジング300Dを有する。
【0093】
<配管PI3>
配管PI3は、長尺な角筒状に形成されており、長手方向に沿って貫通孔430Dが形成されている。配管PI3は、外周面410Dと内周面420Dとを有する。外周面410Dによって、配管PI3の外形が画定される。内周面420Dによって貫通孔430Dが画定される。貫通孔430Dには、冷媒や温媒などの熱媒が流動することができる。なお、後述するように、貫通孔430Dには、蓄熱ユニット10Dも配置される。配管PI3は、金属や樹脂などによって形成される。
【0094】
<蓄熱ユニット10D>
蓄熱ユニット10Dは、長尺な角筒状に形成されたハウジング300Dを有し、長手方向に沿って貫通孔330Dが形成されている。蓄熱ユニット10Dのハウジング300Dは、外周面310Dと内周面320Dとを有する。外周面310Dによって、蓄熱ユニット10Dのハウジング300Dの外形が画定される。内周面320Dによって貫通孔330Dが画定される。蓄熱ユニット10Dのハウジング300Dの外周面410Dの幅(配管PI3の短手方向の長さ)及び高さは、配管PI3の幅(短手方向の長さ)及び高さよりも小さい。図15に示す例では、蓄熱ユニット10Dの全体が、配管PI3の内側に収容される。このようにしたことで、蓄熱ユニット10Dのハウジング300Dの外周面310Dの全体が、配管PI3を流動する熱媒と接触することができ、熱交換の効率を高めることができる。
【0095】
<接触の種類及び無機繊維シート100の形態>
図15に示す蓄熱ユニット10Dでは、無機繊維シート100の形態として、後述する平坦状(図20参照)、や積層状(図26参照)などを用いることができる。また、無機繊維シート100と蓄熱材200との接触の種類は、包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプのいずれでもよい。蓄熱材200を、ハウジング300Dの内周面320Dと平坦状の無機繊維シート100との間に設けることができる。また、積層状に形成された無機繊維シート100の間の領域に蓄熱材200を設けることもできる。なお、無機繊維シート100の形態は、平坦状や積層状だけでなく、ハウジング300Dの大きさに応じて、螺旋状や渦巻き状(ぜんまいバネ状)や凸凹状などを適宜に用いることができる。
【0096】
配管PI3を流動する熱媒と蓄熱材200との熱交換は、ハウジング300Dと無機繊維シート100とを介して行われる。冷媒の熱が、ハウジング300D及び無機繊維シート100を介して蓄熱材200に伝えられたり、蓄熱材200に蓄えられた熱が、ハウジング300D及び無機繊維シート100を介して熱媒に伝えられたりする。このように、配管PI3の内側に蓄熱ユニット10Dを収容するように構成することで、配管PI3を介することなく、熱交換を行うことができ熱交換の効率を高めることができる。なお、この場合も、無機繊維シート100を介さずに、ハウジング300Dを介して蓄熱材200と熱交換をすることもできる。
【0097】
さらに、配管PI3の周囲を断熱材で覆うのが好ましい。具体的には、配管PI3の全体を周回して密着する断熱材で覆う。断熱材を用いることで、外部に熱が伝わらないようにして、配管PI3を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、効率よく熱を交換することができる。
【0098】
また、無機繊維シート100を配管PI3内で配管PI3と接触するように配置するのが好ましい。配管PI3を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、さらに効率よく熱を交換することができる。
【0099】
<<角筒状の配管の外側に沿って挟んで蓄熱ユニット10を配置する場合>>
図16は、図14と同様に、角筒状に形成された配管PI2の外側に蓄熱ユニット10Cを配管PI2に沿って配置する例を示す斜視図である。図14では、蓄熱ユニット10Cの外周を構成する1つの面のみに配管PI2を配置する例を示したが、図16では、蓄熱ユニット10Cの外周の2つの面に配管PI2を配置する。外周の2つの面を使って熱の授受を行うため効率を高めたり、迅速に熱の授受を行うことができる。
【0100】
配管PI2を流動する熱媒と蓄熱材200との熱の授受は、配管PI2とハウジング300Cと無機繊維シート100とを介して行われる。冷媒の熱が、配管PI1、ハウジング300C及び無機繊維シート100を介して蓄熱材200に伝えられたり、蓄熱材200に蓄えられた熱が、配管PI1、ハウジング300C及び無機繊維シート100を介して熱媒に伝えられたりする。なお、無機繊維シート100を介さずに、配管PI1及びハウジング300Cを介して蓄熱材200と熱の授受をすることもできる。
【0101】
さらに、ハウジング300C及び2本の配管PI2の周囲を断熱材で覆うのが好ましい。具体的には、ハウジング300C及び2本の配管PI2の全体を周回して密着する断熱材で覆う。断熱材を用いることで、外部に熱が伝わらないようにして、2本の配管PI2を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、効率よく熱を交換することができる。
【0102】
また、無機繊維シート100を2本の配管PI2の各々の内部で配管PI2と接触するように配置するのが好ましい。配管PI2を流れる冷媒や温媒などの熱媒と蓄熱材200との間で、さらに効率よく熱を交換することができる。
【0103】
<<<<蓄熱ユニット10の応用>>>>
前述したように、蓄熱ユニット10は、配管などの部材に取り付けられて、蓄熱材200と熱媒との間で熱交換を行うことができる。
【0104】
<<温度調整装置600の構成>>
図17は、ワーク(対象物)を所定の温度に調整するための温度調整装置600の構成を示す概略図である。なお、図17は、簡便のため、バルブや逆止弁やポンプなどを省略して示した。弁の開閉や熱媒の流量は適宜に調整できるものとする。温度調整装置600は、高温チラー610と低温チラー620とワーク用調温部630とを有し、高温チラー610から送り出される温媒と低温チラー620から送り出される冷媒とを混合させた混合熱媒をワーク用調温部630に供給し、ワーク用調温部630においてワークを所望する温度に調整する。
【0105】
高温チラー610は、配管702に接続されており、所定の高温度の温媒を配管702から送り出すことができる。配管702は、分岐部752に接続されている。分岐部752は、配管703及び配管720にも接続されている。分岐部752は、バルブ(図示せず)を有する。分岐部752のバルブを開状態又は閉状態することで、配管702を配管703又は配管720のいずれか一方のみと連通させたり、分岐部752のバルブの開度を適宜に調節することで配管702を配管703及び配管720の双方と連通させて、配管703への流量及び配管720への流量との流量制御を実施したりしてもよい。高温チラー610から送り出された温媒は、分岐部752のバルブの動作によって、配管703又は配管720のいずれか一方に送り出される。
【0106】
低温チラー620は、配管704に接続されており、所定の高温度よりも低い所定の低温度温媒を配管704から送り出すことができる。配管704は、分岐部754に接続されている。分岐部754は、配管705及び配管722にも接続されている。分岐部754は、バルブ(図示せず)を有する。分岐部754のバルブを開状態又は閉状態することで、配管704を配管705又は配管722のいずれか一方のみと連通させたり、分岐部754のバルブの開度を適宜に調節することで配管704を配管705及び配管722の双方と連通させて、配管705への流量及び配管722への流量との流量制御を実施したりしてもよい。低温チラー620から送り出された冷媒は、分岐部754のバルブの動作によって、配管705又は配管722のいずれか一方に送り出される。
【0107】
配管703及び配管705は、混合部760に接続される。混合部760は、配管706に接続されている。配管706は、ワーク用調温部630に接続されている。高温チラー610から送り出された温媒と低温チラー620から送り出された冷媒とは、混合部760で混合されて混合媒体となり、配管706を介してワーク用調温部630に供給される。
【0108】
ワーク用調温部630は、ワークを設置できる設置台(図示せず)を有する。設置台は、配管706を介して供給された混合媒体とワークとが熱交換可能に構成されており、混合媒体に応じてワークの温度を調整することができる。
【0109】
ワーク用調温部630は、配管708に接続されている。ワーク用調温部630において、ワークと熱の交換を終えた混合媒体は、配管708に送り出される。配管708は、分岐部762に接続されている。分岐部762は、配管710及び配管714に接続されている。配管708を介して分岐部762に到達した混合媒体は、分岐部762で、配管710と配管714とに分岐される。
【0110】
前述したように、分岐部752は、配管703と配管720とに分岐する。配管710及び配管720は、合流部772に接続される。さらに、合流部772には、配管724が接続される。合流部772は、バルブ(図示せず)を有する。合流部772のバルブを開状態又は閉状態することで、配管710又は配管720のいずれか一方のみを選択して配管724と連通させたり、合流部772のバルブの開度を適宜に調節することで配管710及び配管720の双方を配管724と連通させて、配管710からの流量及び配管720からの流量の流量制御を実施したりしてもよい。合流部772のバルブの動作によって、配管710が配管724と連通したときには、配管710は、合流部772及び配管724を介して高温用蓄熱ユニット640に接続され、高温用蓄熱ユニット640は、配管712を介して高温チラー610に接続される。また、合流部772のバルブの動作によって、配管720が配管724と連通したときには、高温用蓄熱ユニット640を再生することができる。
【0111】
前述したように、分岐部754は、配管705と配管722とに分岐する。配管714及び配管722は、合流部774に接続される。さらに、合流部774には、配管726が接続される。合流部774は、バルブ(図示せず)を有する。合流部774のバルブを開状態又は閉状態することで、配管714又は配管722のいずれか一方のみを選択して配管726と連通させたり、合流部774のバルブの開度を適宜に調節することで配管714及び配管722の双方を配管726と連通させて、配管714からの流量及び配管722からの流量の流量制御を実施したりしてもよい。合流部774のバルブの動作によって、配管714が配管726と連通したときには、配管714は、合流部774及び配管726を介して低温用蓄熱ユニット650に接続され、低温用蓄熱ユニット650は、配管716を介して低温チラー620に接続される。また、合流部774のバルブの動作によって、配管722が配管726と連通したときには、低温用蓄熱ユニット650を再生することができる。
【0112】
<高温用蓄熱ユニット640>
前述したように、合流部772のバルブの動作によって、配管710が配管724と連通したときには、配管710は、高温用蓄熱ユニット640に接続される。分岐部762から配管710に送り出された混合媒体は、還流媒体として高温用蓄熱ユニット640に供給される。高温用蓄熱ユニット640は、前述した蓄熱ユニット10を有し、無機繊維シート100及び蓄熱材200を有する。高温用蓄熱ユニット640の蓄熱材200と配管710を流動してきた還流媒体との間で熱交換を行うことができる。
【0113】
前述したように、高温チラー610から送り出された温媒は、低温チラー620から送り出される冷媒と混合部760で混合されて混合媒体となる。この混合媒体の温度は、冷媒との混合により、高温チラー610から送り出された温媒の温度よりも低くなる。このため、配管710を流れる還流媒体の温度も低くなる。高温用蓄熱ユニット640がない場合には、温度が低い還流媒体が高温チラー610に戻ることになり、高温チラー610によって所定の高温度まで高めるための高温チラー610の負担が大きくならざるを得ない。
【0114】
このようなことから、還流媒体が高温チラー610に戻るよりも前の流路に高温用蓄熱ユニット640を設けることで、高温用蓄熱ユニット640の蓄熱材200に蓄えられている熱を還流媒体に伝えて、還流媒体の温度を事前に高くすることができる。還流媒体が高温チラー610に戻る前に還流媒体の温度を高めることで、高温チラー610の負担を小さくすることができる。高温用蓄熱ユニット640を設けることで、高温チラー610の能力を最大限まで用いる必要がなくなり、高温チラー610の動作に余裕を持たせることができたり、高温チラー610として能力の低いものを持たせたりすることができ、温度調整装置600を省電力化することができる。
【0115】
<低温用蓄熱ユニット650>
前述したように、合流部774のバルブの動作によって、配管714が配管726と連通したときには、配管714は、低温用蓄熱ユニット650に接続される。分岐部762から配管714に送り出された混合媒体は、還流媒体として低温用蓄熱ユニット650に供給される。低温用蓄熱ユニット650は、前述した蓄熱ユニット10を有し、無機繊維シート100及び蓄熱材200を有する。低温用蓄熱ユニット650の蓄熱材200と配管714を流動してきた還流媒体との間で熱交換を行うことができる。
【0116】
前述したように、低温チラー620から送り出された冷媒は、高温チラー610から送り出される温媒と混合部760で混合されて混合媒体となる。この混合媒体の温度は、温媒との混合により、低温チラー620から送り出された冷媒の温度よりも高くなる。このため、配管714を流れる還流媒体の温度も高くなる。低温用蓄熱ユニット650がない場合には、温度が高い還流媒体が低温チラー620に戻ることになり、低温チラー620によって所定の低温度まで下げるための低温チラー620の負担が大きくならざるを得ない。
【0117】
このようなことから、還流媒体が低温チラー620に戻るよりも前の流路に低温用蓄熱ユニット650を設けることで、還流媒体の熱を低温用蓄熱ユニット650の蓄熱材200に伝えて、還流媒体の温度を事前に低くすることができる。還流媒体が低温チラー620に戻る前に還流媒体の温度を下げることで、低温チラー620の負担を小さくすることができる。低温用蓄熱ユニット650を設けることで、低温チラー620の能力を最大限まで用いる必要がなくなり、低温チラー620の動作に余裕を持たせることができたり、低温チラー620として能力の低いものを用いたりすることができ、温度調整装置600を省電力化することができる。
【0118】
<<通常動作状態>>
図17は、高温チラー610と低温チラー620が定常動作するとともに、高温用蓄熱ユニット640及び低温用蓄熱ユニット650が通常動作をしているときの熱媒の流路を示す。図17では、熱媒の流れを黒い矢印によって示した。通常動作状態では、分岐部752のバルブは、配管702と配管703とが連通するように動作し、分岐部754のバルブは、配管704と配管705とが連通するように動作する。合流部772のバルブは、配管710と配管724とが連通するように動作し、合流部774のバルブは、配管714と配管726とが連通するように動作する。
【0119】
高温チラー610は、所定の高温度、例えば80℃の温媒を配管702から送り出すことができる。一方、低温チラー620は、所定の高温度よりも低い所定の低温度、例えば-20℃の冷媒を配管704から送り出すことができる。
【0120】
分岐部752のバルブは、配管702と配管703とが連通するように動作し、高温チラー610から送り出された温媒は、配管702及び配管703を流れる。また、分岐部754のバルブは、配管704と配管705とが連通するように動作し、低温チラー620から送り出された冷媒は、配管704及び配管705を流れる。
【0121】
高温チラー610から送り出されて配管702及び配管703を流れた温媒と、低温チラー620から送り出されて配管704及び配管705を流れた冷媒とは、混合部760で混合されて所望する温度の混合媒体となる。なお、高温チラー610から送り出される温媒の流量や、低温チラー620から送り出される冷媒の流量は、図示しないバルブなどによって適宜に調節されて、所望する温度で所望する流量の混合媒体にすることができる。混合媒体は、配管706を流れてワーク用調温部630に供給される。ワーク用調温部630では、混合媒体とワークとの間で熱交換ができ、混合媒体によってワークを所望する温度に調整することができる。
【0122】
ワーク用調温部630に供給された混合媒体は、配管708を通過して分岐部762で分岐されて配管710及び配管714を流れる還流媒体となる。配管710を流れる還流媒体は、高温用蓄熱ユニット640に供給され、高温用蓄熱ユニット640の蓄熱材200と還流媒体との熱交換によって還流媒体の温度が高められる。温度が高められた還流媒体は、配管712を介して高温チラー610に戻される。配管714を流れる還流媒体は、低温用蓄熱ユニット650に供給され、低温用蓄熱ユニット650の蓄熱材200と還流媒体との熱交換によって還流媒体の温度が低くめられる。温度が低くめられた還流媒体は、配管716を介して低温チラー620に戻される。
【0123】
<<高温用蓄熱ユニット640の再生動作状態>>
前述したように、通常動作状態では、高温用蓄熱ユニット640を構成する蓄熱ユニット10の蓄熱材200は、温度が低下した還流媒体と熱交換を行って、還流媒体の温度を高めるために用いられる。この還流媒体との熱交換によって、蓄熱材200は、徐々に熱が奪われて温度が低下する。蓄熱材200の温度が低下したときには、還流媒体との熱交換を十分に行うことができず、還流媒体の温度を高めることが困難になる。このため、蓄熱材200の温度が低下したときには、蓄熱材200に熱を蓄えるための再生動作をする必要がある。ここでは、高温チラー610から送り出される温媒を、温媒の流路を切り替えて高温用蓄熱ユニット640に供給して、高温用蓄熱ユニット640の蓄熱材200に熱を蓄えることで、高温用蓄熱ユニット640を再生する。
【0124】
図18は、高温用蓄熱ユニット640を再生する流路を示す図である。図18も、簡便のため、バルブや逆止弁やポンプなどを省略して示した。弁の開閉や熱媒の流量は適宜に調整できるものとする。熱媒の流れを黒い矢印によって示した。高温用蓄熱ユニット640の再生動作状態では、分岐部752のバルブは、配管702と配管720とが連通するように動作している。合流部772のバルブは、配管720と配管724とが連通するように動作する。また、図18に示す例では、低温チラー620からの冷媒の送出は停止している。
【0125】
高温チラー610は、動作しており、高温チラー610から送り出される温媒は、分岐部752で配管720を介して高温用蓄熱ユニット640に供給される。高温用蓄熱ユニット640に供給された熱媒の熱は、高温用蓄熱ユニット640を構成する蓄熱ユニット10に伝えられて、蓄熱ユニット10の蓄熱材200に熱が蓄えられることによって、高温用蓄熱ユニット640が再生される。
【0126】
なお、前述したように、分岐部752のバルブ及び合流部772のバルブの開度を調節することで流量を制御することができる。具体的には、分岐部752のバルブによって配管702を配管703及び配管720の双方と連通させて配管703への流量及び配管720への流量を調節し、合流部772のバルブによって配管710及び配管720の双方を配管724と連通させて配管710からの流量及び配管720からの流量を調節することができる。このように、配管の流量を適宜に制御することによって、混合媒体とワークとの熱交換をしつつ、高温用蓄熱ユニット640を再生してもよい。
【0127】
<<低温用蓄熱ユニット650の再生動作状態>>
前述したように、通常動作状態では、低温用蓄熱ユニット650を構成する蓄熱ユニット10の蓄熱材200は、温度が上昇した還流媒体と熱交換を行って、還流媒体の温度を低めるために用いられる。この還流媒体との熱交換によって、蓄熱材200は、徐々に熱が蓄えられて温度が上昇する。蓄熱材200の温度が上昇したときには、還流媒体との熱交換を十分に行うことができず、還流媒体の温度を低めることが困難になる。このため、蓄熱材200の温度が上昇したときには、蓄熱材200から熱を奪うための再生動作をする必要がある。ここでは、低温チラー620から送り出される冷媒を、冷媒の流路を切り替えて低温用蓄熱ユニット650に供給して、低温用蓄熱ユニット650の蓄熱材200から熱を奪うことで、低温用蓄熱ユニット650を再生する。
【0128】
図19は、低温用蓄熱ユニット650を再生する流路を示す図である。図19も、簡便のため、バルブや逆止弁やポンプなどを省略して示した。弁の開閉や熱媒の流量は適宜に調整できるものとする。熱媒の流れを黒い矢印によって示した。低温用蓄熱ユニット650の再生動作状態では、分岐部754のバルブは、配管704と配管722とが連通するように動作している。合流部774のバルブは、配管722と配管726とが連通するように動作する。また、図19に示す例では、高温チラー610からの温媒の流出は停止している。
【0129】
低温チラー620は、動作しており、低温チラー620から送り出される冷媒は、分岐部754で配管722を介して低温用蓄熱ユニット650に供給される。低温用蓄熱ユニット650を構成する蓄熱ユニット10の蓄熱材200に蓄えられた熱は、低温用蓄熱ユニット650に供給された冷媒に伝えられて、蓄熱材200から熱が奪われることによって、低温用蓄熱ユニット650が再生される。
【0130】
なお、前述したように、分岐部754のバルブ及び合流部774のバルブの開度を調節することで流量を制御することができる。具体的には、分岐部754のバルブによって配管704を配管705及び配管722の双方と連通させて配管705への流量及び配管722への流量を調節し、合流部774のバルブによって配管714及び配管722の双方を配管726と連通させて配管714からの流量及び配管722からの流量を調節することができる。このように、配管の流量を適宜に制御することによって、混合媒体とワークとの熱交換をしつつ、低温用蓄熱ユニット650を再生してもよい。
【0131】
<<温度調整装置600における蓄熱材200の機能>>
温度調整装置600では、蓄熱材200を補助エンジンとして用いることで、温度の調整を能動的な制御によることなく、還流媒体の温度を調整することができ、受動的な簡易な構成で熱媒の温度を所望する温度に近づけることができる。
【0132】
<<<無機繊維シート100の形態>>>
前述したように、無機繊維シート100と蓄熱材200とを有する。蓄熱ユニット10は、配管などの熱媒や冷媒が流れる部材と接触するように配置され、無機繊維シート100を介して熱媒や冷媒などの温媒と蓄熱材200との間で熱交換が行われる。前述したように、無機繊維シート100の全体は、可撓性を有するシート状(薄板状)の形態を有する(図1参照)。この無機繊維シート100の可撓性を利用して、配管などの部材の形状や大きさなどに応じて、無機繊維シート100を適宜に変形させて蓄熱ユニット10を構成することができる。
【0133】
以下では、無機繊維シート100のみの形態について説明する。なお、蓄熱ユニット10を構成する場合には、前述した包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプなどと組み合わせて、無機繊維シート100と蓄熱材200とを接触するように構成すればよい。
【0134】
<<平坦状>>
図20は、無機繊維シート100を平坦状の形状にした状態を示す斜視図である。例えば、配管などの部材の天板や底板などの外側の面が平坦な面を有する場合などに用いることができる。無機繊維シート100を平坦な面に沿って広げる(伸展させる)ことで平坦状に変形させて天板や底板などの部材に配置することができる。なお、配管などの部材の形状は、完全に平坦な形状だけでなく、緩やかに湾曲する形状でもよい。
【0135】
無機繊維シート100を平坦状にして用いる場合においても、蓄熱材200を、無機繊維シート100の内部の領域に配置して接触させても、無機繊維シート100の第1の面110や第2の面120に配置して接触させてもよい。例えば、配管などの部材と無機繊維シート100との間に蓄熱材200を配置することもできる。また、配管などの部材から離隔した位置に蓄熱材200を配置することもできる。
【0136】
<<凸凹状>>
図21は、凹凸が繰り返すように無機繊維シート100を変形させた状態を示す斜視図である。例えば、湾曲した凹状部と凸状部とが繰り返すコルゲート状の形状に加工された部材などに蓄熱ユニット10を取り付ける場合に用いることができる。無機繊維シート100を湾曲した凹凸面に沿って徐々に変形させながら広げて(伸展させて)取り付けることで、無機繊維シート100を凹凸状に変形させて部材に配置することができる。
【0137】
なお、凹凸状の形状は、図21に示したコルゲート状の形状のように緩やかな曲面によって構成されている形状だけでなく、図22に示すように、断面がV字状及び逆V字状を繰り返すように屈曲した形状でもよい。さらに、凹凸状の形状は、図23に示すように、湾曲する面だけでなく平面を含む形状でもよい。なお、図23では、無機繊維シート100の厚みについては省略して示した。図23に示す形状は、断面がU字状と逆U字状を繰り返すように湾曲された形状であり、隣り合う平面部分が互いに平行になるように形成されている。隣り合う平面部分は、積層状の構造となっている。このようにして、図23に示すような積層状の構造にする場合には、単一の無機繊維シート100を加工することで構成することができ、構成を簡素にするとともに製造工程を簡略にすることができる。
【0138】
無機繊維シート100を凸凹状に変形させる場合においても、蓄熱材200を、無機繊維シート100の内部の領域に配置して接触させても、無機繊維シート100の第1の面110や第2の面120に配置して接触させてもよい。この場合も、例えば、配管などの部材と無機繊維シート100との間に蓄熱材200を配置することもできる。また、配管などの部材から離隔した位置に蓄熱材200を配置することもできる。
【0139】
<<螺旋状>>
図24は、長尺な無機繊維シート100を螺旋状に変形させた状態を示す斜視図である。なお、図24では、無機繊維シート100の厚みについては省略して示した。例えば、配管などの長尺な部材に無機繊維シート100を巻回する場合に用いることができる。無機繊維シート100を配管の周囲に沿って巻回させつつ配管の長手方向に沿って徐々に変位するようにすることで、無機繊維シート100を螺旋状に変形させて配管に配置することができる。なお、長尺な部材は、長手方向に沿って、直線状に延在する形状でも、曲がった形状でも、折れ曲がった形状でもよい。
【0140】
無機繊維シート100を螺旋状に変形させる場合においても、蓄熱材200を、無機繊維シート100の内部の領域に配置して接触させても、無機繊維シート100の第1の面110や第2の面120に配置して接触させてもよい。この場合も、例えば、配管などの部材と無機繊維シート100との間に蓄熱材200を配置することもできる。また、配管などの部材から離隔した位置に蓄熱材200を配置することもできる。
【0141】
<<渦巻き状(ぜんまいバネ状)>>
図25は、無機繊維シート100を渦巻き状(ぜんまいバネ状)に変形させた状態を示す斜視図である。なお、図25では、無機繊維シート100の厚みについては省略して示した。例えば、配管などの長尺な部材に無機繊維シート100を、配管を中心にして巻回して変形させて半径が徐々に大きくなるようにして配管の周囲に配置することができる。前述した螺旋状は、無機繊維シート100を配管の周囲に沿って巻回させつつ配管の長手方向に沿って徐々に変位させて形成したが、渦巻き状は、無機繊維シート100を長手方向には変位させずに巻回することで形成することができる。
【0142】
無機繊維シート100を渦巻き状に変形させる場合においても、蓄熱材200を、無機繊維シート100の内部の領域に配置して接触させても、無機繊維シート100の第1の面110や第2の面120に配置して接触させてもよい。この場合も、例えば、配管などの部材と無機繊維シート100との間に蓄熱材200を配置することもできる。また、配管などの部材から離隔した位置に蓄熱材200を配置することもできる。特に、配管に巻回されて隣り合う無機繊維シート100の間の領域に蓄熱材200を配置することもできる。このように構成することで、蓄熱材200の全体の量を多くすることができる。
【0143】
<<積層状>>
図26は、複数の無機繊維シート100を互いに離隔させて略平行に配置して積層状にした状態を示す斜視図である。例えば、天板や底板などの平坦な面を有する部材に蓄熱ユニット10を取り付ける場合などに用いることができる。天板や底板などの平坦な面の上に複数の無機繊維シート100を積層して積層状に形成することができる。積層状に構成する場合には、隣り合う無機繊維シート100の間にも蓄熱材200を配置することができ、蓄熱材200の量を全体的に増やすことができる。また、複数の無機繊維シート100を略平行に配置するので、隣り合う無機繊維シート100の間に配置される蓄熱材200の温度分布(無機繊維シート100の面内の温度分布)を揃えやすくでき、蓄熱材200の隅々まで有効に活用することができる。
【0144】
無機繊維シート100を積層状に形成する場合においても、蓄熱材200を、無機繊維シート100の内部の領域に配置して接触させても、無機繊維シート100の第1の面110や第2の面120に配置して接触させてもよい。この場合も、例えば、配管などの部材と無機繊維シート100との間に蓄熱材200を配置することもできる。また、配管などの部材から離隔した位置に蓄熱材200を配置することもできる。
【0145】
なお、複数の無機繊維シート100を互いに離隔させて略平行に配置できればよく、複数の無機繊維シート100を平坦状にする場合だけでなく、平行を保ちつつ複数の無機繊維シート100を湾曲させて積層することもできる。
【0146】
<<<無機繊維シート100の形態及び蓄熱材200の接触の種類並びに熱の伝達>>>
無機繊維シート100の形態として、平坦状、凸凹状、螺旋状、渦巻き状(ぜんまいバネ状)、積層状を説明したが、これらは一例であり、配管などの熱媒や冷媒が流れる部材の形状や大きさなどによって、無機繊維シート100の形状や配置などの形態を適宜に定めることができる。また、前述したように、無機繊維シート100のみの形態について説明したが、蓄熱材200は、無機繊維シート100の形態に応じて、前述した包埋タイプ、含浸タイプ、担持タイプ、積層タイプなどの接触の種類を適宜に選択して、無機繊維シート100と接触するように蓄熱ユニット10を構成すればよい。
【0147】
前述したように、蓄熱ユニット10においては、蓄熱ユニット10の外部から導入される熱は、無機繊維シート100を介して蓄熱材200に伝えられる。また、蓄熱材200に蓄えられた熱は、無機繊維シート100を介して蓄熱ユニット10の外部に導出される。このように、熱は、無機繊維シート100を介して導入されたり導出されたりする。前述したように、無機繊維シート100の大きさや形状を適宜に決定するとともに、無機繊維シート100を配置する位置を適宜に決定することによって、無機繊維シートと蓄熱材200との接触状態を好適な状態にすることができる。
【0148】
蓄熱ユニット10において、無機繊維シート100を適宜に分布させることによって、外部から蓄熱ユニット10に伝えられる熱を、無機繊維シート100で分散させて、蓄熱材200に均等に伝わるようにできる。また、蓄熱材200に蓄えられた熱を、蓄熱材200の至る箇所から無機繊維シートに均等に集めて蓄熱ユニット10の外部に伝えることができる。例えば、無機繊維シート100を等方的に分布するように配置することができる。このようにすることで、効率よく蓄熱材200に熱を吸収させて蓄熱するとともに、蓄熱材200から熱を取り出して外部に供給することができる。
【0149】
また、熱交換できる熱量を増やすために蓄熱材200の量を多くする必要がある場合もある。図27に示すように、蓄熱材200の量を多くした場合には、配管PI0から遠い位置LDに至るまで蓄熱材200を配置する必要が生ずる。このように構成したときには、配管PI0から遠い位置LDにある蓄熱材200に熱を伝えるのに時間を要したり、配管PI0から遠い位置LDにある蓄熱材200から熱を取り出すのに時間を要したりすることが想定される。この場合には、蓄熱材200の全体に熱を伝達させたり、蓄熱材200の全体から熱を取り出したりすることが困難になったり、熱交換の応答性が悪くなったりするため、蓄熱材200の量を多くしても、蓄熱材200の全体を十分に活用できない可能性が生ずる。
【0150】
このため、図28に示すように、無機繊維シート100を蓄熱材200の隅々に至るまで配置することによって、配管PI0から遠い位置LDに位置する蓄熱材200まで迅速に熱を伝えたり、配管PI0から遠い位置LDに位置する蓄熱材200から熱を迅速に取り出したりすることができる。図28に示した例では、前述した図23に示した積層構造を有する凹凸状の無機繊維シート100を用いた。積層構造を有する凹凸状の無機繊維シート100を用いることで、蓄熱材200の全体に亘って均等に熱交換をすることができる。なお、この図23に示した凹凸状の無機繊維シート100だけでなく、他の形態の無機繊維シート100を用いることができる。蓄熱ユニット10を取り付ける配管などの部材の形状や大きさなどや、熱媒及び冷媒の種類や流速などや、蓄熱材200の量などに応じて、無機繊維シート100の形態を適宜に定めればよい。
【0151】
また、図28に示すように、無機繊維シート100は、案内端部130を有する。無機繊維シート100は、案内端部130を含めて一体に形成されて、熱を伝達することができる。無機繊維シート100の案内端部130は、配管PI0の内部に配置される。このようにすることで、配管PI0を流れる冷媒の熱を蓄熱材200に伝えやすくしたり、蓄熱材200に蓄えられた熱を、配管PI0を流れる熱媒に伝えやすくしたりすることができる。
【0152】
<<<ハウジング300>>>
前述したように、蓄熱ユニット10は、ハウジング300を有してもよい。蓄熱ユニット10がハウジング300を有する場合には、無機繊維シート100及び蓄熱材200は、ハウジング300に収納される。なお、無機繊維シート100の一部分は、ハウジング300から延出したり露出したりするのが好ましい。この無機繊維シート100の延出部や露出部は、蓄熱ユニット10と外部との熱の伝導に用いられる。例えば、この外部は、配管を流れる熱媒や冷媒などの熱媒体(熱媒)がある。
【0153】
蓄熱材200が固固相転移する物質の場合には、常に一定の形状を有するので、ハウジング300を要しない。一方、蓄熱材200が固液相転移する物質の場合には、液体状態のときには、一定の形状を維持できないため、ハウジング300を必要とする。なお、蓄熱材200が固固相転移する物質であっても、ハウジング300に無機繊維シート100及び蓄熱材200を収納するように構成してもよい。ハウジング300に収納することによって、破損や汚損を防止することで、無機繊維と蓄熱材200との接触状態を維持して、熱伝導性を安定にすることができる。
【0154】
<<ハウジング300の構成>>
図29は、ハウジング300の一部を示す断面図である。図29に示すように、ハウジング300は、銅箔302と銅板304とを有する。銅箔302及び銅板304は、ハウジング300の筐体として機能する。銅箔302及び銅板304は、銅からなり略平坦な形状(略平板状)を有する。銅箔302及び銅板304は、互いに離隔してかつ平行に配置され、無機繊維シート100及び蓄熱材200は、銅箔302と銅板304との間に配置される。無機繊維シート100及び蓄熱材200は、銅箔302と銅板304とによって挟まれた状態となる。なお、図29に示す例では、銅箔302は上面をなし、銅板304は下面をなす。
【0155】
蓄熱ユニット10の外部から銅箔302や銅板304に熱を伝えられたときには、無機繊維シート100を介して蓄熱材200に熱を伝えて蓄えることができる。また、蓄熱材200に熱が蓄えられているときには、無機繊維シート100を介して銅箔302や銅板304に熱を伝えて蓄熱ユニット10の外部に出力することができる。
【0156】
図30は、ハウジング300の構成を示す断面図である。図30に示すように、銅箔302と銅板304との互いに向かいあう端部を接合することができる。接合によって、銅箔302と銅板304とを封止することができ、蓄熱材200が液体化しても漏れ出すことを防止することができる。接合は、かしめたり溶接したりするなどの手法を用いることができる。銅箔302と銅板304とを接合することによって、無機繊維シート100及び蓄熱材200を封入することができる。
【0157】
上述した例では、上面として銅箔302を用い、下面として銅板304を用いたが、銅製のものに限られず、ステンレスなどの他の金属やカーボン、グラファイトなどを用いてもよい。また、銅製の銅箔302及び銅板304は、銅製であり厚さが異なる。銅箔302のみを使ってハウジング300を構成しても、銅板304のみを使ってハウジング300を構成してもよい。
【0158】
<<<<変形例1>>>>
前述したように、蓄熱ユニット10(高温用蓄熱ユニット640や低温用蓄熱ユニット650など)は、熱媒との熱交換をするものである。熱交換の効率を高めるために、断熱材を用いることができる。たとえば、蓄熱ユニット10の全体を覆う形状及び大きさを有する断熱材を含む断熱体を蓄熱ユニット10を被覆することで、蓄熱材200及び温媒以外に熱が伝達されることを防止でき、蓄熱材200と温媒との間の熱交換の効率を高めることができる。断熱材を用いることで、迅速に熱媒を所望する温度に近づけることができるとともに、蓄熱材200の再生も迅速に行うことができる。
【0159】
<<<<本実施の形態の詳細>>>>
上述したように、本発明は、本実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきでない。このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0160】
10 蓄熱ユニット
100 無機繊維シート
102 無機繊維
200 蓄熱材
300 ハウジング
600 温度調整装置
610 高温チラー
620 低温チラー
630 ワーク用調温部
640 高温用ユニット
650 低温用ユニット
図1
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図3
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