(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】走査反射器を有する口腔内スキャナおよび走査反射器の較正方法
(51)【国際特許分類】
A61B 1/24 20060101AFI20250116BHJP
G01N 21/17 20060101ALI20250116BHJP
A61B 1/00 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
A61B1/24
G01N21/17 630
A61B1/00 526
(21)【出願番号】P 2021554724
(86)(22)【出願日】2020-03-11
(86)【国際出願番号】 US2020022201
(87)【国際公開番号】W WO2020185974
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-03-09
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513097067
【氏名又は名称】デンタル・イメージング・テクノロジーズ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】タオ シャオドン
(72)【発明者】
【氏名】ファン チャンマオ
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/013950(WO,A1)
【文献】特開2009-063637(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0221747(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0317764(US,A1)
【文献】特開2013-257166(JP,A)
【文献】特表2018-501507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0085002(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00-1/32
G01N 21/00-21/01
G01N 21/17-21/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用光干渉断層撮影システムで使用される口腔内スキャナであって、前記口腔内スキャナは、
走査ビームを表面に向かって方向付けるように通電可能な走査反射器を備え、前記走査反射器は、反射ビームを前記表面から検出器へ向かってさらに方向付け、
前記走査反射器は、チューニングされた固有周波数で前記走査反射器を動作させることによって、開ループ制御モードで、前記走査ビームおよび前記反射ビームを方向付けるように較正さ
れ、
前記走査反射器は、前記走査反射器の安定性を向上させるように構成された逆システムフィルタをさらに有する、口腔内スキャナ。
【請求項2】
請求項1に記載の口腔内スキャナであって、前記走査反射器は、微小電気機械システム(MEMS)装置である、口腔内スキャナ。
【請求項3】
請求項1に記載の口腔内スキャナであって、前記検出器は、サンプルターゲットからの前記反射ビームにおける変化に基づき、較正のための命令を実行するようにプログラムされたプロセッサと信号通信を行う、口腔内スキャナ。
【請求項4】
請求項
3に記載の口腔内スキャナであって、スキャナ非線形性は、走査された較正ターゲットの光干渉断層撮影画像に基づき求められる、測定された走査軌跡の線形フィッティング誤差に基づいて計算される、口腔内スキャナ。
【請求項5】
請求項
4に記載の口腔内スキャナであって、前記走査反射器が、計算された前記スキャナ非線形性に基づいてチューニングされた固有周波数において動作するように構成される、口腔内スキャナ。
【請求項6】
歯科用光干渉断層撮影システムであって、
口腔内プローブであって、
(a)走査ビームをサンプル表面に向かって方向付けるように通電可能で、さらに、走査された前記サンプル表面からの反射光を検出器に向かって再び方向づける、微小電気機械走査反射器と、
(b)前記検出器と信号通信を行い、前記検出器によって前もって検知された較正パターンの光干渉断層撮影画像から求められた前記走査反射器のチューニングされた固有周波数に基づき、前記サンプル表面に沿って離間した位置に向かって前記走査ビームを方向付ける前記走査反射器へ、駆動信号を提供するように構成され、前記較正パターンは、反射線形特徴部と吸収線形特徴部との交互の配列を有する、制御論理と、
を有する口腔内プローブを備える、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項7】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、交互の特徴部の前記パターンは、周期的分布を有する、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項8】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、前記制御論理は、走査安定性を向上させるために生成された逆システムフィルタによってさらに調整される、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項9】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、前記制御論理は、非線形性を減少させるために前記微小電気機械走査反射器の固有周波数をチューニングすることによってさらに調整される、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項10】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、前記ラスター駆動信号は、前記走査反射器の開ループ制御を提供する、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項11】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、前記プローブは、時間領域歯科用光干渉断層撮影システムをさらに備える、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項12】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、前記プローブは、スペクトル領域歯科用光干渉断層撮影システムをさらに備える、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項13】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、前記プローブは、波長掃引型歯科用光干渉断層撮影システムをさらに備える、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項14】
歯科用光干渉断層撮影システムにおける走査反射器の較正方法であって、前記方法は、
較正ターゲットに沿って光を走査するステップであって、前記較正ターゲットは、複数の線形特徴部を有し、前記ターゲットの特徴部は、対をなし、各対の前記特徴部は、光吸収特徴部および反射特徴部または散乱特徴部を交互に繰り返す、走査するステップと、
走査された前記較正ターゲットの光干渉断層撮影画像に基づき求められる、測定された走査軌跡の線形フィッティング誤差によって定義されたコスト関数を最適化するステップと、
を含み、
前記コスト関数を最適化するステップは、前記走査反射器の固有周波数に基づき、1つ以上の走査反射器パラメータをチューニングすることにより、スキャナの非線形性を最小化することをさらに含む、方法。
【請求項15】
請求項
14に記載の方法であって、前記方法は、前記コスト関数を最適化するにあたり求められた固有周波数に基づき、前記走査反射器を操作するステップをさらに含む、方法。
【請求項16】
請求項
14に記載の方法であって、前記光干渉断層撮影システムにおける走査は、時間領域歯科用光干渉断層撮影を提供する、方法。
【請求項17】
請求項
14に記載の方法であって、前記光干渉断層撮影システムにおける走査は、スペクトル領域歯科用光干渉断層撮影を提供する、方法。
【請求項18】
請求項
14に記載の方法であって、前記光干渉断層撮影システムにおける走査は、波長掃引型歯科用光干渉断層撮影を提供する、方法。
【請求項19】
請求項
14に記載の方法であって、前記較正ターゲットの交互の前記特徴部は、互いに平行に延在する、方法。
【請求項20】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、交互の反射線形特徴部と吸収線形特徴部は、走査方向と直交する方向に線形である、歯科用光干渉断層撮影システム。
【請求項21】
請求項
6に記載の歯科用光干渉断層撮影システムであって、交互の線形特徴部の間隔は、歯科用光干渉断層撮影システムの解像度の2倍である、歯科用光干渉断層撮影システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体として、口腔内光干渉断層撮影(OCT)の撮影に関し、より詳細には、小型軽量OCT撮影装置内で使用される電気機械式スキャナ装置の開ループ制御のための較正に関する。
【背景技術】
【0002】
光干渉断層撮影(OCT)は、干渉原理を用いた非侵襲撮影技術であり、サンプルの奥行き構造を特徴づける、高解像度の断面断層画像を得ることができる。OCTは、人体組織の生体の撮影に特に適しており、耳鼻咽喉科(ENT)および歯科用撮影に加え、眼科学、皮膚科学、腫瘍学、その他の分野の生化学研究および医療用撮影応用分野の範囲においてその有用性が示されている。
【0003】
OCTは、生体組織内から反射されたエネルギーを画像化して断面データを得る「光超音波」の一種であると言われる。OCT撮影システムでは、スーパールミネッセントダイオード(SLD)やその他の光源などの広帯域源からの光が、既知の長さのリファレンスアームと、調査対象となる組織やその他の対象物などを照射するサンプルアームという2つの異なる光路に沿って方向付けられる。リファレンスアームとサンプルアームからの反射光と後方散乱光がOCT装置内で再結合され、干渉効果を利用してサンプルの表面および表面近くの下に位置する構造の特性を測定する。干渉データは、照射をサンプル全体に高速で走査することで取得できる。OCT装置は、サンプル表面に沿った数千の点のそれぞれにおいて、干渉プロファイルを取得し、これを用いて、光源コヒーレンスの因子である材料の軸方向の深さを有するA走査を再構成することができる。多くの組織撮影分野において、OCTは、広帯域照明源を用いて、数mm程度までの深さの画像内容を得ることができる。
【0004】
歯科用光干渉断層撮影(OCT)システムで使用される小型軽量の口腔内スキャナには、口腔内走査プローブに組み込まれた小型で高速の二次元(2D)スキャナが必要である。従来から、ガルバノメータは、走査機能を提供するために光走査システムに使用されてきた。最近では、MEMS技術による装置が、大きさ、重量、複雑性に関して利点を有し、低コストかつコンパクトな大きさであることから、小型軽量の光走査システムに使用されている。
【0005】
MEMSスキャナの較正は困難な場合があり、較正のための従来の技術は、較正作業に複雑性とコストが加わる可能性がある。例えば、ローパスフィルタリングを採用した解決方法では、MEMSの帯域幅や性能を制約することがある。また、MEMS装置のQ値は比較的高いため、MEMSスキャナの較正と制御の作業は一層複雑になる。また、MEMS技術による装置のより高度な閉ループ動作には、フィードバック信号を生成するための追加のセンサが必要になることが多い。閉ループ動作は、さらなる複雑性と高コストを要するため、これまでのところ、このようなMEMS技術によるスキャナを小型軽量デバイスに使用することは制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、業界では、これらの問題点やその他の問題点、困難、欠点を解決する、コンパクトで高速な二次元(2D)のMEMS技術による口腔内スキャナが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
装置と方法を含む本発明を大まかに説明する。
【0008】
本発明の1つの例示的な実施形態によると、走査ビームをラスターパターンの表面に向かって方向付け、表面からの反射ビームを検出器へ向かって方向付けるように通電可能な走査反射器を含む、歯科用光干渉断層撮影システムで使用される口腔内スキャナを提供する。走査反射器は、開ループ制御モードで、走査ビームおよび反射ビームを方向付けるように較正される。
【0009】
本発明のさまざまな効果や利点は、以下の例示的な実施形態のより具体的な説明を読むことにより明らかになり、また、添付された図面に描かれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一例の実施形態による波長掃引型OCT(SS-OCT)を示す概略図である。
【
図2】本発明の一例の実施形態による、OCT撮影用に構成され、波長掃引光源を有するプローブを示す概略図である。
【
図3A】B走査取得のための走査処理の方法を示す概略説明図である。
【
図3B】C走査取得のためのOCT走査パターンを示す図である。
【
図4】本発明の一例の実施形態による、スキャナ較正のためのOCT装置の設置を示す図である。
【
図5】本発明の一例の実施形態による、較正プロセスを示す論理フロー図である。
【
図6】
図5のプロセスで発生する逆システムフィルタを用いる制御システムモデルを示すフロー図である。
【
図7】
図4のターゲットを用いて取得した、一連の関連画像を示す図である。
【
図8】較正ターゲット測定で得られた例示的なデータを示す図である。
【
図9】ターゲットから得られる画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照しながら、本発明の例示的な実施形態の詳細な説明を示し、図面における同一の参照符号は、構造の同一構成要素、または、複数の図面のそれぞれにおける方法のステップを特定する。
【0012】
これらが本開示の文脈で用いられる場合、そうでないことが明記されない限り、「第1」、「第2」などの用語は、必ずしも順序、連続、または優先関係を示すものではなく、単に、1つのステップ、構成要素、または一式の構成要素を別のものとより明確に識別するために用いられる。
【0013】
MEMS反射器は、通常、半導体製造技術を用いて製造され、例えば、小型軽量の走査装置のためのビーム幅に基づくビーム走査に用いられ、通常、数百マイクロメータから数ミリメートルの範囲である反射表面の寸法を有する。さまざまな構造的配置が、配列された特徴部の利用を含む、反射器の実施および動作に用いられる。
【0014】
本明細書における記載は、口腔内OCTの使用を対象とする実施例を提供するものの、本明細書に記載される構成、方法、特徴、実践は、顎顔面撮影を含む、あらゆるその他の種類のOCT撮影に、より全般的に適用され、歯科用途または医療用途において用いられる小型軽量OCT走査装置に特に有利になり得ることを理解、認識されるべきである。
【0015】
一般的な用語としての「スキャナ」は、表面のOCT撮影に用いられるリファレンスアームからの光を用いて干渉を測定するために、サンプルアームを介して歯表面に方向付けられ、サンプルアームにおいて戻る反射光および散乱光として取得された広帯域光の走査光ビームを投影するように通電可能な光学システムに関する。本発明の一例の実施形態によると、走査された光ビームは広帯域近紫外線(BNIR)光を用いる。しかし、代わりに他の種類の広帯域光を用いることができる。「ラスター走査」という用語は、以下により詳細に記載されるように、サンプルに沿って離間した複数位置に向けて光を順次走査するハードウェア構成要素の組み合わせに関する。
【0016】
例として、
図1の簡略化された概略図は、ある種のOCT装置、ここでは、チューニングされたレーザー50の一部である、プログラム可能なフィルタ10を有するマイケルソン干渉計システム20を用いた従来型の波長掃引型OCT(SS-OCT)装置100の構成要素を示す。例えば、口腔内または顎顔面OCTに対し、レーザー50は、例えば、約300から2000nmの間の波長に対応するものなどの周波数(波数k)の範囲に対してチューニング可能である。本発明の例示的な実施形態によると、口腔内OCTには、約1300nmを中心とする帯域幅約60nmのチューニング可能な範囲が用いられる。
【0017】
図1の装置において、可変性のチューニングされたレーザー50からの出力は、カプラ38を通過しサンプルアーム40およびリファレンスアーム42まで到達する。サンプルアーム40の信号は、サンプル「S」の測定のために、ハンドピース、または、プローブ46へ進む。リファレンスアーム42の信号は、ミラーまたは光ガイドであり得るリファレンスにより、カプラ38を介し、検出器60へ方向付けられる。検出器60は、コモンモードノイズを打ち消すように構成される一対のバランス型光検出器を用いてもよい。
【0018】
制御論理プロセッサ70(「制御処理装置CPU70」、「プロセッサ70」、または「CPU70」とも称されることがある)は、チューニングされたレーザー50およびそのプログラム可能なフィルタ10ならびに検出器60と信号通信される。プロセッサ70は、プローブ46の走査機能を制御し、信号を走査するための線形応答を取得するために必要とされる較正データがあれば、それを記録する。プロセッサ70は、検出器60からの出力を入手し、処理する。また、CPU70は、コマンド入力のために、表示部72と信号通信し、OCTの結果が表示される。
【0019】
図1を参照して記載されるシステムの実施形態は、単に例示のみを目的とし、口腔内OCTアーキテクチャの1つの例示的種類を示すことが強調される。本開示の例示的な実施形態は、いくつかの構成部品の配置のいずれかを用いて、様々な干渉法による構成および操作順序で、あらゆる種類の口腔内OCT撮影装置または他の小型軽量OCTシステムに適用され得る。例えば、用いられる歯科用OCTシステムは、時間領域、スペクトル領域、または波長掃引型システムである。
【0020】
図2の概略図は、本発明の一例の実施形態による、較正のためのスキャナ90を有するプローブ46を有するOCT装置100の配置を示す。
図2の例示的な実施形態において、ファイバケーブル76は、干渉計20のサンプルアーム40とプローブ46構成要素との間に可撓性光路を提供する。微小電気機械システム(MEMS)スキャナ52は、歯や較正対象物などのサンプルSの表面に波長掃引光を方向付け、さらに、サンプルSからの反射光または散乱光を干渉計20内の検出器60に戻すために再び方向付ける走査動作を提供する。1つ以上の反射面56、58は、光路を折り畳むために設けられ、プローブ46内の光を外側へサンプルSに向かって方向付けることができる。プローブ46内には、対物レンズ140と、サンプルへの光およびサンプルからの光を調整する集光、コリメーション、他の機能のためのその他の光学部品(図示せず)とがある。
【0021】
本発明の一例の実施形態によると、プローブ46によるラスター走査は、任意の走査パターンを使用して、個々の走査表面位置の、均一な、または、不均一な間隔を提供することができる。干渉計20の構成要素は、プローブ46内に組み込むことができる、または、ケーブルまたはワイヤレス接続などの他の接続方法によって、別々にまとめられ、接続されてもよい。
【0022】
さらなる背景として、
図3Aおよび
図3Bは、OCT装置100のプローブ46および支持構成要素により実行されるOCT走査パターンの概要を示す。
図3Aは、各A走査の間に得られた情報を概略的に示す。それぞれのB走査画像を得るための走査信号は、図示の実施例において、走査部分92とレトロスキャン93との2つの直線部分を有し、走査部分92の間に、走査ミラーがサンプルビームを初めから終端位置まで方向付け、レトロスキャン93の間に、走査ミラーがその始端位置に戻る。DC信号成分を排除して示される干渉信号88は、各点82に対する時間間隔に対して取得され、信号は、掃引に要する時間間隔の関数であり、取得される信号は、干渉計のリファレンスアームおよびフィードバックアームからの光を組み合わせることによって生成されるスペクトル干渉縞を示す(
図1)。高速フーリエ変換(FFT)は、各A走査に対する変換「T」を生成する。A走査に対応する1つの変換信号が、
図3Aの実施例として示される。
【0023】
以上の記載から、多量のデータが単一のB走査シーケンスに対して取得されることが理解される。このデータを効率的に処理するために、高速フーリエ変換(FFT)が用いられ、時間に基づく信号データを、対応する周波数に基づくデータに変換し、そこから画像内容がより速やかに生成される。
【0024】
フーリエドメインOCTにおいて、A走査は、反射ビームまたは散乱ビームに基づく、深さ(z軸)分解OCT信号のラインを生成するスペクトル取得の1つのラインに対応する。B走査データは、対応する走査ラインに沿って2次元(2D)OCT画像を生成する。
【0025】
ラスター走査は、ラスタースキャナ90の取得をC走査(y軸)方向に増加させることによって複数のB走査データを得るために使用される。これは、
図3Bに模式的に示され、A走査データ、B走査データ、C走査データを用いてどのように3次元(3D)ボリューム情報が生成されるかを示す。
【0026】
各A走査点82において用いられる波長または周波数掃引シーケンスは、通常用いられる上昇する波長シーケンスまたは下降する波長シーケンスから修正されることができる。任意の波長シーケンスを代替的に用いることができる。OCTのいくつかの特定の実施において有用であり得る、任意の波長を選択する場合は、利用可能な波長の一部のみが各掃引の結果として提供される。任意の波長シーケンスにおいて、各波長は、1回の掃引中にOCTシステムにおいて用いられるように任意のシーケンス順にランダムに選択され得る。A走査点82は、x軸に対して互いに均一に離間し、任意のB走査画像に沿って隣接する点82の間に実質的に等しいx軸距離を提供し得る。もしくは、間隔は非均一であってもよい。同様に、各B走査に対する走査点82のラインの間の距離は、y軸に対して均一であってもなくてもよい。X軸の間隔は、y軸の間隔とは異なっていてもよい。もしくは、走査される表面の直交する軸に沿った、x軸およびy軸方向の間隔は等しくてもよい。
【0027】
例示的な実施形態によると、MEMS技術による口腔内スキャナの非線形性は、安定性を検証し走査間隔を制御するように構成された較正ターゲットを走査して得られたOCT信号から直接測定される。走査の構成要素の挙動が、一度、適切に特徴付けられると、走査位置の測定に追加のセンサは必要とされない。この構成によって、較正過程が簡易化され、そのようなセンサにより引き起こされうる固有の位置誤差がなくなる。
【0028】
走査で発生し得る許容差に関する誤差と性能差を説明するために、また、走査と感知のために用いられる構成要素を支えるために、MEMS技術による口腔内スキャナが、ハンドピースまたはプローブ46内で適切な位置に較正されてもよい。較正がひとたびうまくいけば、MEMSミラーは、開ループモードで作動することができ、つまり、ビーム走査動作を制御するための感知または他のフィードバックを必要としない。スキャナの制御システムは、オーバーシュートおよび振動を最小限にし、その共振周波数に対する帯域幅を拡張することができる。
【0029】
図4の簡略化された模式図は、本開示の例示的な実施形態によるスキャナ較正のために設定されたOCT装置100を示す。OCT装置100は、
図1のパターンに基づいて製造されたシステムであってもよいし、または他の種類のOCTシステムであってもよい。例示的な実施形態によれば、ハンドピースまたはプローブ46内のMEMS技術による口腔内スキャナ90は、走査安定性を向上させるための逆システムフィルタを利用し、説明した較正方法を適用する、開ループ制御方法を用いる。本発明の較正方法により、開ループ動作が可能になる。本明細書に記載されたスキャナの較正方法は、スキャナのパラメータをチューニングして最良の性能を与える。スキャナ駆動回路は、作動中に追加のフィードバック信号を必要としないため、スキャナおよび歯科用OCTシステムを大幅に簡易化し、全体的なシステムコストおよび複雑さを低減する。
【0030】
図4に示すように、格子状ターゲット200が、較正方法の基準を提供するために使用される。格子状ターゲット200は、平坦な表面に形成された線形特徴部の配列として形成され、対になった反射/散乱および光吸収特徴部が表面全体で繰り返される。
図4に示す例示的な実施形態において、格子パターンを提供するために平行に延在する反射性および吸収性の線形特徴部が交互に繰り返される。線形特徴部の平行方向は、走査方向と直交することがある。最高の解像度での測定値は、走査方向に直交する較正ターゲット特徴部を用いて得られる。実際には、線形特徴部は、走査方向に直交する数度の範囲内であることが好ましい。反射性線形特徴部は、プローブ46からの入射光を拡散反射させる。交互に配置された特徴部は、
図7の(b)の部分に示すように、均等な寸法の周期的分布を有することができ、または非周期的であってもよい。
【0031】
全体として、プローブ46に関連する感知構成要素が、較正ターゲット表面から得られた戻り光のビームにおいて、較正ターゲットの反射特徴部と吸収特徴部とを互いに明確かつ明白に区別できるように、反射/散乱特徴部からの光と、吸収特徴部から測定された光との間の出力比は、十分であるべきである。必要とされるのは、OCTシステムによって感知される、交互の特徴部同士の明確なコントラストである。よって、高感度の検出器であれば、反射特徴部と光吸収特徴部から測定される光の相対的差異はわずかであり得る。実際には、より安価な検出器と特質的なターゲット200特徴部を用いることが好ましい。
【0032】
例えば、本発明の例示的な実施形態によれば、回折格子パターンにおける反射性線形特徴部は、例示的な設計において入射スキャナビームの60%以上を反射または散乱するなど、入射走査光の半分以上を反射または散乱することができる。同様に、回折格子パターンにおける吸収性特徴部は、例示的な一実施形態において入射走査光の60%以上を吸収するなど、入射走査光の半分以上を吸収することができる。較正パターンからの反射光は、プローブ46からサンプル経路に沿って戻り、画像再構成のためにOCT回路に方向付けられ、スキャナの不正確さを補償するための論理を生成する。
【0033】
特徴部の寸法および間隔は、OCTシステムの応答および解像度を測定するようにサイズ設定される。例示的な実施形態によれば、特徴部の間隔は、システム解像度の2倍の解像度であり、したがって、10μmの解像度を有するOCTシステムに対して、反射特徴部の間隔は20μmである。
【0034】
図5は、本開示の例示的な実施形態による較正プロセスS500を表す論理フロー図を示す。初期モデリングステップS510において、スキャナの制御システムは、以下の式1を用いてモデル化される。
【数1】
式1中、Kはゲイン、ω_n^2はスキャナの固有周波数または共振周波数、sは複素ラプラス変数、ζはMEMS装置の1/2Qに相当する減衰比である。
【0035】
MEMS技術による口腔内スキャナのQ値は高いため、特にシステム周波数がMEMS回路の固有周波数ωnに近い場合には、システムが不安定になることがある。補償を行い、向上した安定性を提供するために、
図5の順序に示すように、チューニングステップS520で逆システムフィルタを適用する。逆フィルタコマンドステップS522は、スキャナの安定性を向上し、以下の式2に従って設計されるように構成された逆フィルタを生成して適用する。
【数2】
式2中、ω1は、現実的なシステムを作るための追加のフィルタポールである。その後、ターゲット200を撮影するための逆フィルタを適用するために、取得ステップS524と計算ステップS526が続く。その結果、コマンド生成ステップS530でコマンド命令を生成する。その後、後続の各操作ステップS540において、サンプル取得のための較正が適用される。
【0036】
ω1に対して、固有周波数よりも大きな値を選択してもよい。逆フィルタを適用することにより、スキャナへの入力駆動信号は、逆フィルタからの出力となる。概念的には、システムが正しくモデル化されていれば、ミラー角度の出力は、電圧入力に非常によく追従する。
【0037】
しかし、実際には、MEMSミラーの共振周波数または固有周波数ω_n^2は、MEMS技術によるスキャナごとに異なることが多い。特定のスキャナ用にあらかじめ較正されたω_n^2であっても、環境的な温湿度変化、ドライバ設定、接続ケーブルやコネクタの電気的特性など、いくつかの要因によって満足のいく性能が得られないことがある。このような要因の影響を最小限に抑えるために、オンライン動作に先立ち、オフライン較正方法が実施される。この較正方法の目的は、以下のように定義される値ω_n^2をチューニングすることにより、スキャナの非線形性を最小化することである。
【数3】
式3中、N(ω
n)は、走査軌跡の線形フィッティング誤差の二乗平均平方根(RMS)によって定義されるスキャナの非線形性である。要するに、値N(ω
n)は、較正を実現するために最小化されるべきコスト関数と考えることができる。
【0038】
図6は、
図5で与えられたプロセスで生成された逆システムフィルタを使用する制御システムモデルを示すフロー図である。スキャナへの入力は、ミラー角度の開ループ制御を可能にする駆動信号であり、支持するスキャナ位置センサとの制御ループの必要性がなくなる。
【0039】
走査軌跡を測定するために、
図4のターゲット200が使用される。レーザーエネルギーの吸収に応じて、OCT信号の再構成により、強度画像が得られる。
【0040】
図7の各部分は、
図4のターゲット200を用いて取得した一連の関連画像を示す。
図7の(a)の部分は、格子状特徴部の一連のA走査画像として形成されたB走査画像の一部を示す。ボリューム画像が得られた後、
図7の(b)の部分に示すように、Z軸方向に沿った強度値を平均化することで、X-Y平面における格子状特徴部の強度画像を得ることができる。その後、データをさらにY軸方向に沿って平均化することで、
図7の(c)の部分に示すように、走査方向に沿った一次元(1D)図を得ることができる。この平均化処理により、画像に含まれるノイズを大幅に低減することができる。そして、走査方向に沿って山と谷の位置を検出し、
図7の(c)の部分で強調されている点を特定する。
図7の(d)の部分に示すように、走査方向に沿って線形フィッティングが適用される。スキャナの最終的な非線形性は、フィッティング誤差のRMSに換算して計算される。
図7の(d)の部分から理解されるように、軌跡にはかなりの量のリンギング効果が生じることがある。
【0041】
図8は、ターゲットを測定した結果のデータ例を示す。異なる周波数でのフィッティング誤差のRMSを
図8の(a)の部分に示す。また、最適な固有周波数における、x軸に沿ったビームの軌跡を
図8の(b)に示す。この場合の走査型ミラーの最適固有周波数ω
nは1.3KHzである。
【0042】
図8の一連の図を参照すると、(a)の部分の1.2KHzと1.3KHzの固有周波数の間の軌跡の比較は、周波数が高いほど、より優れた線形性を与えることを示している。スキャナの非線形性は、3分の1に減少する。固有周波数1.2KHzと1.3KHzの線形フィッティング誤差は、縦(垂直)軸の値を異なる目盛りで示され、それぞれ
図8の(c)と(d)の部分に示される。1.3KHzの固有周波数をそのモデルで用いる場合、フィッティング誤差のピーク値も約3分の1に減少する。較正用格子ターゲット200から取得した画像では、1.2KHzの場合は
図9の(a)の部分に、1.3KHzの場合は
図9の部分(b)にそれぞれ示すように、1.3KHzの最適な固有周波数ではラインがより均等に分布している。
【0043】
システムモデルを最適化した後、オンライン動作用にチューニングされた値を有するソフトウェア命令を生成することができる。その後、開ループ制御モードは、オンライン動作中に適用することができる。そのため、走査に関する制御やフィードバックのための追加のセンサは必要とされない。このように、開ループ方式で動作することで、システムの設計と運用が容易になる。本明細書で説明した較正方法は、格子状ターゲットを必要とするだけなので、定期的に、また環境条件やハードウェアのセットアップが変更されたときでも、容易に実行することができる。
【0044】
代替の例示的な実施形態によれば、ターゲット200は、オンサイト較正のためにOCTユーザに提供される。支援ファームウェアが、例えば表示部72(
図1)を使用したコマンド表示やコマンド入力を用いるなど、エンドユーザによって実行される自己較正または較正の確認・調整機能のために提供されてもよい。ターゲット200をこのように使用することで、例えば月に1回など、エンドユーザによる定期的な再較正が可能になる。
【0045】
本発明を、現在理解されている例示的な実施形態を特に参照して詳細に説明してきたが、本発明の趣旨と範囲の中で変形と変更を加え得ることが理解されるであろう。例えば、制御論理プロセッサ70は、コンピュータまたはコンピュータワークステーション、専用ホストプロセッサ、マイクロプロセッサ、論理アレイ、または記憶されたプログラム論理命令を実行する他のデバイスを含む、いくつかの種類の論理処理デバイスのいずれかであり得る。したがって、現在開示されている例示的な実施形態は、すべての点において例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示されており、その意味と同等の範囲内に該当するすべての変更は、そこに包含されることが意図されている。
【0046】
少なくとも1つの例示的な実施形態に一致して、例示的な方法/装置は、電子メモリからアクセスされる画像データに対して実行する、記憶された命令を含むコンピュータプログラムを使用することができる。画像処理技術の当業者に理解されるように、本明細書の例示的な実施形態のコンピュータプログラムは、パーソナルコンピュータやワークステーションなどの適切な汎用コンピュータシステムによって利用することができる。しかし、例えば、1つまたは複数のネットワーク化されたプロセッサの配置を含む、記載された例示的な実施形態のコンピュータプログラムを実行するために、他の多くの種類のコンピュータシステムを使用することができる。
【0047】
本明細書に記載された特定の例示的な実施形態の方法を実行するためのコンピュータプログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。この媒体は、例えば、ハードドライブやリムーバブルデバイスなどの磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、光ディスクや光テープ、機械で読み取り可能な光エンコーディングなどの光記憶媒体、ランダムアクセスメモリ(RAM)やリードオンリーメモリ(ROM)などのソリッドステート電子記憶装置、またはコンピュータプログラムを記憶するために採用されるその他の物理的なデバイスや媒体などを含んでもよい。また、説明した実施形態の例示的な方法を実行するためのコンピュータプログラムは、インターネットまたは他のネットワークまたは通信媒体を介して画像処理装置に接続されたコンピュータ可読記憶媒体に記憶されてもよい。当業者であれば、このようなコンピュータプログラム製品に相当するものをハードウェアに構築されてもよいことをさらに容易に認識できるであろう。
【0048】
本願の文脈で「コンピュータにアクセス可能なメモリ」と同等の「メモリ」という用語は、画像データの保存および操作に使用され、例えばデータベースを含むコンピュータシステムにアクセス可能な任意の種類の一時的またはより永続的なデータ記憶作業空間を指すことができることに留意すべきである。メモリは、例えば、磁気記憶装置や光学記憶装置などの長期記憶媒体を使用した不揮発性であり得る。また、メモリは、マイクロプロセッサや他の制御論理プロセッサ装置の一時的なバッファやワークスペースとして使用されるランダムアクセスメモリ(RAM)などの電子回路を使用して、より一層揮発性の性質であり得る。例えば、表示データは、通常、表示装置に直接関連づけられる一時記憶バッファに記憶され、表示データを提供するために必要に応じて定期的に更新される。メモリという用語は本願明細書で使用されているため、この一時記憶バッファは、メモリと考えることもできる。また、メモリは、計算などの処理を実行し、その中間結果や最終結果を保存するためのデータ作業空間としても使用される。コンピュータにアクセス可能なメモリは、揮発性、不揮発性、または揮発性と不揮発性のハイブリッドの種類であり得る。
【0049】
本明細書の例示的な実施形態のコンピュータプログラム製品は、公知の様々な画像操作アルゴリズムおよび/またはプロセスを利用してもよいことが理解される。さらに、本明細書の例示的なコンピュータプログラム製品の実施形態は、本明細書に具体的に示されていない、または記載されていない、実施に有用なアルゴリズムおよび/またはプロセスを具現化してもよいことが理解されるであろう。そのようなアルゴリズムおよびプロセスは、画像処理技術の通常の技術の範囲内にある従来のユーティリティを含むことができる。そのようなアルゴリズムおよびシステムの追加の態様、ならびに画像を生成およびその他の方法で処理するための、または本願のコンピュータプログラム製品と共働するためのハードウェアおよび/またはソフトウェアは、本明細書に具体的に示されず、また記載されず、当技術分野で公知であるそのようなアルゴリズム、システム、ハードウェア、構成要素および要素から選択されてもよい。
【0050】
本願による例示的な実施形態は、本明細書に記載されるさまざまな特徴を(個々に、または組み合わせて)含むことができる。
【0051】
本発明を1つ以上の実施に関して例示してきたが、添付の請求項の趣旨および範囲から逸脱することなく、例示した実施例に変更および/または修正を加えることができる。 加えて、本発明の特定の特徴は、いくつかの実施/例示の実施形態のうちの1つのみに関して本明細書に開示されているかもしれないが、そのような特徴は、任意の所定または特定の機能に対して所望かつ有利になり得るように、他の実施/例示の実施形態の1つまたは複数の他の特徴と組み合わせることができる。「a」または「少なくとも1つの」という用語は、列挙された項目のうち1つまたは複数を選択できることを意味するために使用される。「約」という用語は、列挙された値は、その変更が例示された実施形態例に対するプロセスまたは構造の非適合をもたらさない限り、多少変更することができることを示す。本発明の他の実施形態は、本明細書および本明細書に開示された本発明の実施を考慮することにより、当業者に明らかになるであろう。本明細書および実施例は例示的なものとしてのみ考慮されることが意図されており、本発明の真の範囲および趣旨は以下の特許請求の範囲によって示される。