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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0587 20100101AFI20250116BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20250116BHJP
   H01M 10/0525 20100101ALI20250116BHJP
   H01M 50/44 20210101ALI20250116BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20250116BHJP
【FI】
H01M10/0587
H01M10/04 W
H01M10/0525
H01M50/44
H01M50/489
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022505070
(86)(22)【出願日】2021-02-08
(86)【国際出願番号】 JP2021004634
(87)【国際公開番号】W WO2021176961
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2023-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2020038287
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高林 洋志
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 龍平
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-100270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0251962(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0022126(KR,A)
【文献】特開2006-196276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/00 -10/39
H01M 50/40 -50/497
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極芯体上に第1電極活物質層が形成された第1電極板と、
第2電極芯体上に第2電極活物質層が形成された第2電極板と、
前記第1電極板と前記第2電極板がセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体と、を有する二次電池であって、
前記巻回電極体は、前記巻回電極体の巻回軸が延びる方向における一方の端部に巻回された第1電極芯体露出部を有し、前記巻回軸が延びる方向における他方の端部に巻回された第2電極芯体露出部を有し、
前記巻回された第1電極芯体露出部は束ねられて第1電極集電体に接続され、
前記巻回電極体の最外面にはセパレータが配置され、
前記巻回電極体の最外面に配置されたセパレータと、前記巻回された第1電極芯体露出部の最外面とに跨ってテープが貼り付けられており、
前記テープは、多孔質の基材と、前記基材上に設けられた接着層を有し、
前記テープは、前記テープと前記巻回電極体の最外面に配置されたセパレータとの接着部と、前記テープと前記巻回された第1電極芯体露出部の最外面との接着部の間に、前記基材上に前記接着層が設けられていない領域を有する二次電池。
【請求項2】
前記多孔質の基材が不織布である請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記不織布の目付量は、40~100g/mであり、
前記不織布を構成する繊維の平均繊維径は8~60μmである請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
前記第1電極板は正極板であり、前記第2電極板は負極板である請求項1~3のいずれかに記載の二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)の駆動用電源、太陽光発電、風力発電等の出力変動を抑制するための用途や夜間に電力をためて昼間に利用するための系統電力のピークシフト用途等の定置用蓄電池システム等において、アルカリ二次電池や非水電解質二次電池などの二次電池が使用されている。
【0003】
上記の二次電池は、その組み立て中等に異物が混入する場合があり、特に混入した異物が金属異物等の導電性の異物であると、内部短絡が引き起こされる場合がある。例えば、金属異物が正極板に付着すると、正極板の高い電位によって金属異物が電解液中に金属イオンとして溶解し、その金属イオンが負極板に到達すると金属として析出する。そして、金属が正極板に向かって成長するように析出し、金属がセパレータを突き破り正極板に接触すると内部短絡が引き起こされる。なお、混入した金属異物が直接セパレータを突き破り、内部短絡が引き起こされる可能性もある。
【0004】
特許文献1には、混入した異物により内部短絡が発生することを防止することを目的とし、絶縁部材により、正極露出部または負極露出部と共に正極露出部または負極露出部の外周に隣接するセパレータの端部を含んで覆う二次電池が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-49073号公報
【発明の概要】
【0006】
本開示の一形態の二次電池は、
第1電極芯体上に第1電極活物質層が形成された第1電極板と、
第2電極芯体上に第2電極活物質層が形成された第2電極板と、
前記第1電極板と前記第2電極板がセパレータを介して巻回された扁平状の巻回電極体と、を有する二次電池であって、
前記巻回電極体は、前記巻回電極体の巻回軸が延びる方向における一方の端部に巻回された第1電極芯体露出部を有し、前記巻回軸が延びる方向における他方の端部に巻回された第2電極芯体露出部を有し、
前記巻回された第1電極芯体露出部は束ねられて第1電極集電体に接続され、
前記巻回電極体の最外面にはセパレータが配置され、
前記巻回電極体の最外面に配置されたセパレータと、前記巻回された第1電極芯体露出部の最外面とに跨ってテープが貼り付けられており、
前記テープは、多孔質の基材と、前記基材上に設けられた接着層を有し、
前記テープは、前記テープと前記巻回電極体の最外面に配置されたセパレータとの接着部と、前記テープと前記巻回された第1電極芯体露出部の最外面との接着部の間に、前記基材上に前記接着層が設けられていない領域を有する。
【0007】
本開示の一形態の二次電池の構成によると、巻回電極体の最外面に配置されたセパレータと、巻回された第1電極芯体露出部の最外面とに跨ってテープが貼り付けられているため、巻回電極体の最外面に位置するセパレータと巻回された第1電極芯体露出部の間から巻回電極体内へ異物が侵入することを抑制できる。また、テープの基材が多孔質であり、テープと巻回電極体の最外面に配置されたセパレータとの接着部と、テープと巻回された第1電極芯体露出部の最外面との接着部の間に、基材上に接着層が設けられていない領域が形成されているため、巻回電極体内への電解液の浸入が阻害されることがない。よって、巻回電極体内に電解液が不足する部分が生じることを抑制できる。なお、巻回電極体内に電解液が不足する部分が生じた場合、電池特性が低下したり、あるいはリチウム析出が生じる等の問題が発生する可能性がある。
【0008】
前記多孔質の基材が不織布であることが好ましい。
【0009】
前記不織布の目付量は、40~100g/mであり、
前記不織布を構成する繊維の平均繊維径は8~60μmであることが好ましい。
【0010】
前記第1電極板は正極板であり、前記第2電極板は負極板であることが好ましい。
【0011】
本開示の一形態によると、巻回電極体内への電解液の浸入が阻害されることなく、巻回電極体内への金属異物の侵入が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る二次電池の電池ケース正面部分と絶縁シート正面部分とを取り除いた電池内部を示す正面図である。
図2図2は、実施形態に係る二次電池の上面図である。
図3A図3Aは、実施形態に係る正極板の平面図である。
図3B図3Bは、実施形態に係る負極板の平面図である。
図4図4は、実施形態に係る二次電池の製造工程において、超音波接合を行う際に巻回された正極芯体露出部及び正極集電体をホーンとアンビルによって挟み込む方法を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る巻回電極体の巻回された正極芯体露出部の最外周近傍の断面図であり、巻回電極体の巻回軸に沿った方向の断面図である。
図6図6は、実施形態に係るテープの平面図である。
図7A図7Aは実施形態に係る扁平状の巻回電極体の平面図である。
図7B図7Bは実施形態に係る扁平状の巻回電極体の側面図である。
図8図8は、他の実施形態に係る巻回電極体の巻回された正極芯体露出部の最外周近傍の断面図であり、巻回電極体の巻回軸に沿った方向の断面図である。
図9図9は、テープを貼り付けていない状態の巻回電極体の巻回された正極芯体露出部の最外周近傍の断面図であり、巻回電極体の巻回軸に沿った方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の一実施形態に係る二次電池について、図面を参照しながら説明する。尚、本発明の範囲は、以下の実施形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0014】
まず、一実施形態に係る二次電池としての角形二次電池の構成を説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、角形二次電池100は、上方に開口を有する角形外装体1と、当該開口を封口する封口板2を備える。角形外装体1及び封口板2により電池ケース200が構成される。角形外装体1及び封口板2はそれぞれ金属製であり、例えば、アルミニウム製又はアルミニウム合金製とすることができる。角形外装体1内には、帯状の正極板と帯状の負極板とが帯状のセパレータを挟んで巻回された扁平状の巻回電極体3が非水電解質と共に収容される。正極板は、金属製の正極芯体上に正極活物質を含む正極活物質層が形成されたものである。正極板は、長手方向に沿って正極芯体が露出する正極芯体露出部を有する。負極板は、金属製の負極芯体上に負極活物質を含む負極活物質層が形成されたものである。負極板は、長手方向に沿って負極芯体が露出する負極芯体露出部を有する。正極芯体は例えばアルミニウム製又はアルミニウム合金製とすることができる。負極芯体は例えば銅製又は銅合金製とすることができる。
【0016】
巻回電極体3において、巻回電極体3の巻回軸が延びる方向における一方端側には、正極活物質層が形成されていない正極芯体である正極芯体露出部4cが巻回された状態で配置されている。正極芯体露出部4cは、セパレータも負極板も介在させずに巻回されることにより、積層された状態となる。巻回された正極芯体露出部4cには正極集電体6が接続されている。正極集電体6は、例えばアルミニウム製又はアルミニウム合金製とすることができる。
【0017】
巻回電極体3において、巻回電極体3の巻回軸が延びる方向における他方端側には、負極活物質層が形成されていない負極芯体である負極芯体露出部5cが巻回された状態で配置されている。負極芯体露出部5cは、セパレータも正極板も介在させずに巻回されることにより、積層された状態となる。巻回された負極芯体露出部5cには負極集電体8が接続されている。負極集電体8は、例えば銅製又は銅合金製とすることができる。
【0018】
巻回電極体3の最外面に位置するセパレータ20と、巻回された正極芯体露出部4cの最外面とに跨ってテープ30が貼り付けられている。
【0019】
正極端子7は、封口板2の電池外部側に配置される鍔部7aと、封口板2に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有する。正極端子7は金属製であり、例えばアルミニウム製又はアルミニウム合金製とすることができる。また、負極端子9は、封口板2の電池外部側に配置される鍔部9aと、封口板2に設けられた貫通穴に挿入される挿入部とを有する。負極端子9は金属製であり、例えば銅製又は銅合金製とすることができる。なお、負極端子9は、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の部分と、銅製又は銅合金製の部分とを有していてもよい。この場合、アルミニウム製又はアルミニウム合金製の部分が封口板2よりも外側に突出し、銅製又は銅合金製の部分が負極集電体8に接続させることが好ましい。
【0020】
正極集電体6は樹脂製の内部側絶縁部材10を挟んで封口板2に固定されると共に、正極端子7は樹脂製の外部側絶縁部材11を挟んで封口板2に固定される。また、負極集電体8は樹脂製の内部側絶縁部材12を挟んで封口板2に固定されると共に、負極端子9は樹脂製の外部側絶縁部材13を挟んで封口板2に固定される。
【0021】
巻回電極体3は、絶縁シート14に覆われた状態で角形外装体1内に収容される。封口板2は、角形外装体1の開口縁部にレーザー溶接等により溶接接続される。封口板2は電解液注液孔16を有し、電解液を角形外装体1内に注液した後、電解液注液孔16は封止栓17により封止される。封口板2には、電池ケース200内の圧力が所定値以上となった場合にガスを排出するためのガス排出弁15が形成されている。
【0022】
以下に各構成の詳細について説明する。
【0023】
[正極板]
まず、正極板の製造方法を説明する。
【0024】
[正極活物質層スラリーの作製]
正極活物質としてのリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物、結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)、導電材としての炭素材料、及び分散媒としてのN-メチル-2-ピロリドン(NMP)をリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物:PVdF:炭素材料の質量比が97.5:1:1.5となるように混練し、正極活物質層スラリーを作製する。
【0025】
[正極活物質層の形成]
正極芯体としての厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に、上述の方法で作製した正極活物質層スラリーをダイコータにより塗布する。正極活物質層スラリーが塗布された正極芯体を乾燥させ、スラリー中のNMPを除去する。これにより正極活物質層が形成される。その後、一対のプレスローラにより、正極活物質層を圧縮して正極原板とする。この正極原板を所定のサイズにカットする。
【0026】
図3Aは、正極板4の平面図である。正極芯体4aの両面には正極活物質層4bが形成されている。正極板4の幅方向の一方の端部には、正極板4の長手方向に沿って正極芯体4aが露出する正極芯体露出部4cが設けられている。
【0027】
[負極板]
次に、負極板の製造方法を説明する。
【0028】
[負極活物質層スラリーの作製]
負極活物質としての黒鉛、結着材としてのスチレンブタジエンゴム(SBR)及びカルボキシメチルセルロース(CMC)、及び分散媒としての水を、黒鉛:SBR:CMCの質量比が98:1:1となるように混練し、負極活物質層スラリーを作製する。
【0029】
[負極活物質層の形成]
負極芯体としての厚さ8μmの銅箔の両面に、上述の方法で作製した負極活物質層スラリーをダイコータにより塗布する。負極活物質層スラリーが塗布された負極芯体を乾燥させ、スラリー中の水を除去する。これにより負極活物質層が形成される。その後、一対のプレスローラにより負極活物質層を圧縮して負極原板とする。この負極原板を所定のサイズにカットする。
【0030】
図3Bは、負極板5の平面図である。負極芯体5aの両面には負極活物質層5bが形成されている。負極板5の幅方向の一方の端部には、負極板5の長手方向に沿って負極芯体5aが露出する負極芯体露出部5cが設けられている。
【0031】
[巻回電極体の作製]
上述の方法により得られた正極板4及び負極板5を、例えばポリエチレン製のセパレータ20を介在させて巻回し、扁平状に成形する。これにより、一方の端部に巻回された正極芯体露出部4cを有し、他方の端部に巻回された負極芯体露出部5cを有する扁平状の巻回電極体3が得られる。
【0032】
[封口板への部品取り付け]
以下、正極集電体6、正極端子7、負極集電体8及び負極端子9の封口板2への取り付け方法を説明する。
【0033】
まず、封口板2の電池外部側に外部側絶縁部材11を配置し、封口板2の電池内部側に内部側絶縁部材10及び正極集電体6を配置する。次に、正極端子7の挿入部を電池外部側から、外部側絶縁部材11、封口板2、内部側絶縁部材10及び正極集電体6のそれぞれに設けられた貫通穴に挿入し、正極端子7の挿入部の先端側を正極集電体6上にカシメる。これにより、正極端子7、外部側絶縁部材11、封口板2、内部側絶縁部材10及び正極集電体6が一体的に固定される。なお、正極端子7の挿入部の先端のカシメられた部分を正極集電体6に溶接することが好ましい。
【0034】
同様に、封口板2の電池外部側に外部側絶縁部材13を配置し、封口板2の電池内部側に内部側絶縁部材12及び負極集電体8を配置する。次に、負極端子9の挿入部を電池外部側から、外部側絶縁部材13、封口板2、内部側絶縁部材12及び負極集電体8のそれぞれに設けられた貫通穴に挿入し、負極端子9の挿入部の先端側を負極集電体8上にカシメる。これにより、負極端子9、外部側絶縁部材13、封口板2、内部側絶縁部材12及び負極集電体8が一体的に固定される。なお、負極端子9の挿入部の先端のカシメられた部分を負極集電体8に溶接することが好ましい。
【0035】
[巻回電極体への集電体の取り付け]
巻回されることにより積層された正極芯体露出部4cの外面に正極集電体6を配置する。図4に示すように積層された正極芯体露出部4cと正極集電体6を超音波接合装置のホーン90とアンビル91とによって挟み込み超音波接合を行う。これにより、巻回された正極芯体露出部4cと正極集電体6が接続される。なお、巻回されることにより積層された負極芯体露出部5cと負極集電体8も同様の方法で接続できる。なお接続方法は、超音波接合に限定されず、抵抗溶接やレーザー溶接を用いてもよい。
【0036】
[巻回電極体の構成]
図9は、巻回電極体3の巻回された正極芯体露出部4cの最外面近傍の断面図である。また、図9は、巻回電極体3の巻回軸に沿った方向の断面図である。なお、図9は巻回電極体3にテープ30を貼り付けていない状態を示す図である。巻回電極体3の最外周にはセパレータ20が配置されている。巻回電極体3において、負極板5において最も最外周側に位置する層が、正極板4において最も最外周側に位置する層よりも最外周側に位置する。
【0037】
図9においては一部省略されているが、巻回されることにより積層された正極芯体露出部4cは束ねられて正極集電体6に接続されている。巻回電極体3を備えた二次電池において、電池ケース200内に電解液を注液した場合、図9に示すように正極板4とセパレータ20の間、あるいは負極板5とセパレータ20の間に、電解液と共に異物80が入り込み、内部短絡が生じる可能性がある。
【0038】
また、このような内部短絡を抑制するために、巻回電極体3の最外周に位置するセパレータ20から正極芯体露出部4cの最外面にかけてテープを貼り付けた場合、巻回電極体3内への異物の侵入を抑制できる。しかしながら、電解液が巻回電極体3内に入り難くなる。そして、巻回電極体3内に電解液が不足する部分が生じ、充放電反応が不均一となったり、リチウム金属が析出したりする可能性がある。
【0039】
[テープの貼り付け]
図5に示すように扁平状の巻回電極体3の最外面に位置するセパレータ20から巻回された正極芯体露出部4cの最外面にかけてテープ30を貼り付ける。テープ30は、多孔質の基材30aと、基材30aの一方の面に設けられた接着層30bを有する。
【0040】
図6に示すように、基材30aの一方の面に、テープ30の長手方向に沿って二つの接着層30bが設けられている。この二つの接着層30bは、テープ30の幅方向において離間して設けられている。
【0041】
図5に示すように、巻回電極体3の最外面にはセパレータ20が配置されている。巻回電極体3において、負極板5において最も巻回電極体3の最外周側に位置する層が、正極板4において最も巻回電極体3の最外周側に位置する層よりも、巻回電極体3の最外周側に位置する。
【0042】
テープ30の基材30aは、接着層30bにより巻回電極体3の最外周に位置するセパレータ20に接続されている。また、テープ30の基材30aは、接着層30bにより巻回された正極芯体露出部4cの最外面に接続されている。テープ30においてセパレータ20と接続された部分と、テープ30において正極芯体露出部4cと接続された部分の間には、基材30aに接着層30bが形成されていない領域が設けられている。そして、基材30aは電解液が透過可能な多孔質の部材である。このような構成を有することにより、巻回電極体3に電解液が浸入することが阻害されることなく、異物が巻回電極体3内に侵入することが抑制される。
【0043】
多孔質の基材30aとしては、不織布が特に好ましい。基材30aが不織布の場合、効果的に異物を捕捉できる。不織布はポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン又はポリスチレン等の樹脂からなる繊維、ガラス繊維、セラミックファイバー又はセルロースファイバーなどの繊維により構成されることが好ましい。
【0044】
不織布の目付量は、40~100g/mであることが好ましい。不織布の目付量を40g/m以上とすることにより、異物が巻回電極体3内に侵入することをより効果的に抑制できる。また、不織布の目付量を100g/m以下とすることにより、巻回電極体3内に電解液が入りやすい構成とすることができる。
【0045】
不織布を構成する繊維の平均繊維径は、8~60μmであることが好ましい。繊維の平均繊維径を8μm以上とすることにより、異物が巻回電極体3内に侵入することをより効果的に抑制できる。また、繊維の平均繊維径を60μm以下とすることにより、巻回電極体3内に電解液が入りやすい構成とすることができる。繊維の平均繊維径は、SEM測定により画像上で任意の10箇所を選択し、それら10箇所の直径の平均値である。
【0046】
なお、直径が20μm以上の異物が巻回電極体3内に侵入した場合、内部短絡が生じやすい。不織布の目付量を40g/m以上とすることにより、直径が20μm以上の異物が巻回電極体3内に侵入することをより効果的に抑制できる。また、不織布を構成する繊維の平均繊維径を8μm以上とすることにより、直径が20μm以上の異物が巻回電極体3内に侵入することをより効果的に抑制できる。
【0047】
なお、多孔質の基材30aとしては、不織布以外に、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂などからなる多孔質の高分子フィルム等を用いることができる。
【0048】
接着層30bとしては、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエチレン系接着剤等から選択される部材あるいはそれらの混合物であることが好ましい。但し、これらに限定されない。
【0049】
図7A及び図7Bに示すように、扁平状の巻回電極体3は、その厚みが略均一な平坦部3aと、平坦部3aの両端に形成される湾曲部3bを有する。湾曲部3bはその外面が湾曲している。
【0050】
巻回電極体3の巻回軸に対して垂直な方向における平坦部3aの長さ(図7A及び図7Bにおいては、縦方向の長さ)を長さL1とする。このとき、巻回電極体3においてテープ30が貼り付けられる領域の長さL2は、0.5×L1以上とすることが好ましく、0.8×L1以上とすることがより好ましい。
【0051】
なお、テープ30は、巻回電極体3の平坦部3aの両外面に貼り付けられることが好ましい。この場合、一つのテープ30を平坦部3aの一方の外面に貼り付け、別のテープ30を平坦部3aの他方の外面に貼り付けることができる。あるいは、一枚のテープ30を、平坦部3aの一方の外面、湾曲部3b、平坦部3aの他方の外面に跨って貼り付けることができる。
【0052】
上記では、正極芯体露出部4cに正極集電体6を接続した後に、巻回電極体3にテープ30を貼り付ける例について説明したが、テープ30を巻回電極体3に貼り付けた後に、正極芯体露出部4cに正極集電体6を接続してもよい。
【0053】
図5に示すように、巻回電極体3の巻回軸が延びる方向において、テープ30の中央側端部が、負極板5の外側端部よりも外側に配置されることが好ましい。即ち、平坦部3aにおける正極板4、セパレータ20及び負極板5の積層方向に沿って巻回電極体3を見たとき、負極板5とテープ30が重ならないように配置されることが好ましい。これにより、セパレータ20が積層方向中央側(図5では下側)に折れ曲がることにより、巻回電極体3の平坦部3aに部分的に厚みの大きい部分が生じることを抑制できる。なお、テープ30が負極板5と重なるように配置されてもよい。
【0054】
また、テープ30の幅方向における一方の端部側が、接着層30bにより、正極芯体露出部4cにおいて傾斜した領域に接続されることが好ましい。
【0055】
なお、基材30aの幅は、例えば、5mm~30mm程度とすることができる。但し、これに限定されない。また、接着層30bの幅は、例えば、2~10mm程度とすることができる。但し、これに限定されない。基材30aにおいて二つの接着層30bの間に設けられる接着層30bが形成されない領域の幅は、例えば、1~25mm程度とすることができる。但し、これに限定されない。
【0056】
巻回された正極芯体露出部4cにおいて、正極集電体6が配置されていない側の外面にテープ30を配置してもよい。例えば、巻回された正極芯体露出部4cの外面において超音波接合用のアンビルないしホーンが接触する部分に、超音波接合前にテープ30を貼り付けることができる。また、巻回された正極芯体露出部4cの外面において超音波接合用のアンビルないしホーンが接触した部分に、超音波接合後にテープ30を貼り付けることができる。
【0057】
<他の実施形態>
図8に示すように、テープ30の一部が正極集電体6上に貼り付けられるようにしてもよい。このような構成であると、正極集電体6上に付着した異物、あるいは正極集電体6に形成されたバリ等を、テープ30により正極集電体6上に留めることができる。
【0058】
なお、テープ30をセパレータ20及び正極芯体露出部4cに貼り付けた後に、正極芯体露出部4cに正極集電体6を接続してもよい。
【0059】
<その他>
正極板、負極板、セパレータ、及び電解質等に関しては、公知の材料を用いることができる。
【符号の説明】
【0060】
100 角形二次電池
200 電池ケース
1 角形外装体
2 封口板
3 巻回電極体
3a 平坦部
3b 湾曲部
4 正極板
4a 正極芯体
4b 正極活物質層
4c 正極芯体露出部
5 負極板
5a 負極芯体
5b 負極活物質層
5c 負極芯体露出部
6 正極集電体
7 正極端子
7a 鍔部
8 負極集電体
9 負極端子
9a 鍔部
10 内部側絶縁部材
11 外部側絶縁部材
12 内部側絶縁部材
13 外部側絶縁部材
14 絶縁シート
15 ガス排出弁
16 電解液注液孔
17 封止栓
20 セパレータ
30 テープ
30a 基材
30b 接着層
80 異物
90 ホーン
91 アンビル
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9