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特許7620618ケラチン繊維を半永久的にストレートにする及びカールするための組成物、方法、及びキット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ケラチン繊維を半永久的にストレートにする及びカールするための組成物、方法、及びキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/365 20060101AFI20250116BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 8/33 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20250116BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20250116BHJP
   A61Q 5/04 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
A61K8/365
A61K8/06
A61K8/33
A61K8/34
A61K8/41
A61K8/86
A61Q5/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022509127
(86)(22)【出願日】2020-08-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2020073188
(87)【国際公開番号】W WO2021037629
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-07-14
(31)【優先権主張番号】19194322.4
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バール,モーリッツ
(72)【発明者】
【氏名】丸山 亜久利
(72)【発明者】
【氏名】庭野 悠
【審査官】山田 陸翠
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-520194(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142484(WO,A1)
【文献】特開2019-006769(JP,A)
【文献】特開2016-108320(JP,A)
【文献】国際公開第2013/081018(WO,A1)
【文献】特開2005-194261(JP,A)
【文献】特開2014-089116(JP,A)
【文献】国際公開第2015/036051(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/036052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.5から2.5のpHを有する水性化粧品組成物であって、
a)グリオキシル酸及び/若しくはその塩(複数可)並びに/又はその水和物(複数可) 0.1重量%以上12重量%以下
b)イソステアリルグリセリルエーテル、セチルグリセリルエーテル、ヘキシルデシルポリグリセリルエーテル、又はそれらの混合物 0.1重量%以上12重量%以下
c)セテアリルアルコール 0.5重量%以上15重量%以下
d)塩化セチルトリメチルアンモニウム、及び/又はセテアレス 0.2重量%以上10質量%以下
を含有するエマルジョンである、組成物。
【請求項2】
ケラチン繊維を再成形するための方法であって、
i)請求項に記載の組成物をケラチン繊維の表面に付着させ、それを1~60分の間放置するステップ
ii)任意的に前記ケラチン繊維を濯ぎ流し、かつ任意的に前記ケラチン繊維を乾燥するステップ
iii)前記ケラチン繊維を、45℃から230℃の温度範囲にある高温器具で処理するステップ
iv)任意的に前記ケラチン繊維を濯ぎ流すステップ
v)記ケラチン繊維を45℃から230℃の温度範囲にあるカーリングツールでカールするステップ
vi)任意的に前記ケラチン繊維を濯ぎ流すステップ
を含む、方法。
【請求項3】
矯正ステップ(複数可)が、90℃から230℃の範囲の温度を有するストレートアイロンを使用することによって、又は45℃から90℃の温度範囲にあるブロードライヤー及び櫛を使用することによって、実施されることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
請求項に記載の組成物と高温器具とを含む、キッ
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維を半永久的にストレートにする及びカールするための組成物、方法、及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
人の髪型を変えることは、常に流行であった。古代エジプト時代の長きにわたり既に、ストレートヘアは人気であった。この種類のナチュラルヘアに恵まれていない女性は、既に火で加熱した鉄板を使用してその髪を所望の形状にしていた。この手順はしばしば、顔及び手に酷い火傷をもたらした。Marcel Grateauにより作製されたヘアトングの発明により、ストレートアイロンがより専門的なものになったのは19世紀初頭以降であった。今日では、ストレートアイロンなどの高温器具並びにブロードライヤーが、以前よりも更になお一般的となっている。それらは美容院及び大量市場の両方で、消費者の間で流行した。これらの器具は、高温で作用するので(ストレートアイロンの場合、最高230℃)、満足のいく矯正結果をもたらす。乾いた髪が高温のアイロンに接触し、同時に適正な圧力が加えられると、髪型を、水分が髪を元の状態に戻すまで、一定時間の間固定することができる。残念ながら、そのような高温の適用は髪の損傷をもたらし、したがってその使用後に髪の手触りが悪くなる。
【0003】
現在まで、縮毛矯正を決断した消費者は、現在の技術ではその髪をカーリー状態に戻すことができないことから、自らの決断によって制約を受けることとなっていた。
【0004】
グリオキシル酸は毛髪美容に公知の成分であり、特に高温のストレートアイロンと組み合わせたときにカールの緩和状態及びボリュームの低減を長く継続させる(特許文献1、特許文献2)。しかしながら、消費者がそのような処理を決定した場合、当初のカーリーヘア状態に戻すことはほとんど不可能である。
【0005】
特許文献3及び特許文献4は、ブロー乾燥による熱及びアイロンによる熱と組み合わせた矯正プロセス、並びに矯正後の組成物でのグリオキシル酸の使用を示す。
【0006】
特許文献5は、乳酸と組み合わせたアルキルグリセリルエーテルをヘアトリートメント剤として開示する。しかしながら本発明は、グリオキシル酸を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2011/104282号
【文献】国際公開第2012/010351号
【文献】国際公開第2015/036051号
【文献】国際公開第2010/036052号
【文献】国際公開第2013/081018号
【発明の概要】
【0008】
したがって、本発明の第1の対象は、4未満のpHを有する水性化粧品組成物であって、
a)グリオキシル酸及び/若しくはその塩(複数可)並びに/又はその水和物(複数可)
b)1種又は複数のアルキルグリセリルエーテル及び/若しくはアルキルポリグリセリルエーテル、並びに/又はそれらの混合物
c)1種又は複数の親油性化合物
d)群b)とは異なる1種又は複数の界面活性剤
を含有するエマルジョンである、組成物である。
【0009】
本発明の第2の対象は、ケラチン繊維、好ましくはヒトのケラチン繊維、より好ましくはヒトの毛髪を、再成形するための方法であって、
i)請求項1~10に記載された組成物をケラチン繊維に適用し、それを1~60分の間放置するステップ
ii)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流し、かつ任意的にケラチン繊維を乾燥するステップ
iii)ケラチン繊維を、45℃から230℃の温度範囲にある高温器具で処理するステップ
iv)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流すステップ
v)任意的にケラチン繊維を45℃から230℃の温度範囲にあるカーリングツールでカールするステップ
vi)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流すステップ
を含む、方法である。
【0010】
本発明の第3の対象は、ケラチン繊維、好ましくはヒトのケラチン繊維、より好ましくはヒトの毛髪を、再成形するための方法であって、
vii)4未満のpHを有しかつ請求項1~3で定義されたa)の1種又は複数の化合物を含む水性組成物を付着させるステップ
viii)組成物をケラチン繊維上に1~60分の間放置するステップ
ix)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流し、かつ任意的に乾燥するステップ
x)ケラチン繊維を、45℃から230℃の温度範囲にある高温器具で処理するステップ
xi)上記で定義された化合物b)~d)を含有する組成物を、ケラチン繊維に適用するステップ
xii)組成物を、1~60分の間放置するステップ
xiii)任意的にケラチン繊維を、45℃から230℃の温度範囲にある高温器具で処理するステップ
を含む、方法である。
【0011】
本発明の第4の対象は、上記で定義された組成物及び高温器具を含む、キットオブパーツである。
【0012】
本発明の第5の対象は、上記ステップvii)で定義される第1の組成物と、上記ステップxi)で定義される第2の組成物とを含む、キットオブパーツである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の組成物で処理された毛束の写真である。写真は、カールするステップ後に撮影した。明らかに観察可能なように、比較組成物1で処理された毛束は、比較組成物1で処理された毛の再スタイリング能力に限りがあることから生じる、最も弱いカールを示した。
図2】実施例1の組成物で処理された毛束の写真である。写真は、ブロー乾燥及びブラッシングステップ後に撮影した。フラットアイロンステップを用いずにカーリングした後の矯正度を示す。明らかに観察可能なように、比較組成物2で処理された毛は、比較組成物2で処理された毛の矯正度に限りがあることから生じる、より大きい波打ち状態を示した。
図3】実施例2の組成物で処理された毛束の写真である。写真は、ブラッシング及びブロー乾燥ステップ後に撮影した。明らかに観察可能なように、比較組成物3及び4で処理された毛束は、特に毛束の先端でよりカールした状態を示し、それに対して本発明の組成物2は、最もストレートになった毛束をもたらした。
図4】実施例2の組成物で処理された毛束の写真である。写真は、カールアイロンステップ後に撮影した。明らかに観察可能なように、本発明の組成物2及び比較組成物4で処理された毛束は、より強力なカーリングを示し、それに対して比較組成物3は、最も弱いカールをもたらした。
図5】実施例3の組成物で処理された毛束の写真である。写真は、ブラッシング及びブロー乾燥ステップ後に撮影した。明らかに観察可能なように、比較組成物5で処理された毛束はあまり明確ではなく、ぼやけた末端を有し、それに対して本発明の組成物は、最も明確な毛束をもたらした。
図6】実施例3の組成物で処理された毛束の写真である。写真は、カールアイロンステップ後に撮影した。明らかに観察可能なように、本発明の組成物で処理された毛束は、比較組成物5と比較して非常に強いカールを有していた。後者は、最も弱いカールのセットを有していた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、従来技術の上述の問題に対処し、カーリーから直毛への変換を可能にし、望む場合には当初のカーリーケラチン繊維に戻すことが可能である。さらに、ケラチン繊維の真っ直ぐな度合いは、事前のカーリングステップがあってもなくても、カーリーから直毛への変換において改善される。
【0015】
本発明は、4未満のpHを有する水性化粧品組成物であって、
a)グリオキシル酸及び/若しくはその塩(複数可)並びに/又はその水和物(複数可)
b)1種又は複数のアルキルグリセリルエーテル及び/若しくはアルキルポリグリセリルエーテル、並びに/又はそれらの混合物
c)1種又は複数の親油性化合物
d)群b)とは異なる1種又は複数の界面活性剤
を含有するエマルジョンである、組成物を対象とする。
【0016】
いかなる理論にも拘泥するものではないが、本出願人は、b)の化合物が、髪を熱可塑性変化させることを見出した。これらの化合物は、髪に対する可塑剤として作用すると考えられる。したがって本発明の組成物によれば、消費者はその髪型をカール状から直毛にし、次いで直毛からカーリーヘアに戻すことが可能になる。
【0017】
化粧品としての許容性及び安全性の観点から、組成物のpHは0.5から3.5の範囲に、好ましくは1から3の範囲に、より好ましくは1.5から2.5の範囲にあることが好ましい。
【0018】
化粧品としての許容性及び消費者の使用可能性の観点から、本発明の組成物は水中油エマルジョンであることが、更に好ましい。
【0019】
a)の化合物
本発明の組成物は、グリオキシル酸及び/若しくはその塩(複数可)並びに/又はその水和物(複数可)を、a)の化合物として含む。
【0020】
グリオキシル酸は、本発明の目的で、その遊離酸形態で及びその水和物で使用されてもよい。水和物は、グリオキシル酸の水性溶液を提供することによって、かついかなるその他のpH調整剤もなしに形成され、グリオキシル酸はその水和物としてほぼ定量的に存在する。さらに、水和物はダイマーに縮合されてもよい。
【0021】
グリオキシル酸の塩を使用してもよい。塩は、任意の公知の塩基で組成物のpHを調整することにより、必然的に形成される。適切な塩は、ナトリウム若しくはカリウムなどのアルカリ金属塩、マグネシウム若しくはカルシウムなどのアルカリ土類金属塩、又はアンモニウム塩である。
【0022】
矯正効率の観点から、a)の化合物(複数可)の濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上、更により好ましくは1重量%以上である。
【0023】
矯正効率及び化粧品の安全性の観点から、a)の化合物(複数可)の濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下、更により好ましくは12重量%以下である。
【0024】
上述の効果を達成するには、a)の化合物の濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%から25重量%の範囲、より好ましくは0.2重量%から20重量%の範囲、更に好ましくは0.5重量%から15重量%の範囲、更により好ましくは1重量%から12重量%である。
【0025】
b)の化合物
本発明の組成物は、1種又は複数のアルキルグリセリルエーテル及び/若しくはルキルポリグリセリルエーテル、並びに/又はそれらの混合物を、b)の化合物として含む。
【0026】
油の溶解度及び乳化の観点から、b)の化合物は、2~7の範囲のHLB値を有することが好ましい。このことは、c)及びd)の化合物との共エマルジョンの調製を可能にする。
【0027】
しかしながら、b)の化合物がその他のHLB値を有する場合、それらは本発明の組成物の水性相中に分散可能である。
【0028】
乳化の観点から、b)の化合物のアルキル鎖は、合計炭素数が8個以上である直鎖又は分岐状、飽和又は不飽和のアルキル鎖であることが好ましい。
【0029】
ケラチン繊維に熱可塑性特性を与える観点から、b)の化合物のアルキル鎖は、合計炭素数が9個以上である直鎖又は分岐状、飽和又は不飽和のアルキル鎖であることが更に好ましい。
【0030】
乳化の観点から、b)の化合物のアルキル鎖は、合計炭素数が18個以下である直鎖又は分岐状、飽和又は不飽和のアルキル鎖であることが好ましい。
【0031】
上述の効果を達成するには、b)の化合物のアルキル鎖は、合計炭素数が8~18個の範囲にあり、より好ましくは9~18個の範囲にある、直鎖又は分岐状、飽和又は不飽和のアルキル鎖であることが好ましい。
【0032】
b)の化合物に適切な例は、例えば、イソステアリルグリセリルエーテル、ステアリルグリセリルエーテル、イソデシルグリセリルエーテル、2-エチルヘキシルグリセリルエーテル、及びセチルグリセリルエーテル、並びにEP2003110に開示されるようなアルキルポリグリセリルエーテルである。
【0033】
商業的入手可能性と熱可塑性をケラチン繊維に与えるという観点から、b)の1種又は複数の化合物は、イソステアリルグリセリルエーテルであることが好ましい。
【0034】
髪質の変換の観点から、b)の1種又は複数の化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.25重量%以上、更に好ましくは0.5重量%以上である。
【0035】
髪質の変換の観点から、b)の1種又は複数の化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下、更に好ましくは5重量%以下である。
【0036】
上述の効果を達成するには、b)の1種又は複数の化合物の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、0.1重量%から10重量%、好ましくは0.25重量%から8重量%、より好ましくは0.5重量%から5重量%の範囲にある。
【0037】
c)の化合物
本発明の組成物は、1種又は複数の親油性化合物を含む。
【0038】
c)の親油性化合物は、25℃の大気圧下で水と混和しない。しかしながら、これらの化合物は、エマルジョンを形成するためにd)の化合物の助けを借りて乳化可能である。
【0039】
適切なc)の化合物は、任意にOHが置換していてもよい合計炭素数がC8~C22の範囲にある直鎖若しくは分岐状、飽和若しくは不飽和のアルキル鎖を有する脂肪アルコール、C3~C22のアルキル鎖長を有する直鎖若しくは分岐状アルコールがC12~C22のアルキル鎖長を有する直鎖若しくは分岐状脂肪酸でエステル化されている脂肪酸エステル、石油系化合物(複数可)、オルガノポリシロキサン(複数可)、植物油、及び/又はそれらの混合物である。
【0040】
任意にOHが置換し得る、合計炭素数がC8~C22の範囲にある直鎖又は分岐状、飽和又は不飽和アルキル鎖を有する適切な脂肪アルコールは、例えば、オクチルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、ミリスチルアルコール、ペンタデシルアルコール、セチルアルコール、パルミトレイルアルコール、ヘプタデシルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ノナデシルアルコール、アラキジルアルコール、ベヘニルアルコール、及び/又はこれらの混合物である。
【0041】
C3~C22のアルキル鎖長を有する直鎖又は分岐状アルコールがC12~C22のアルキル鎖長を有する直鎖又は分岐状脂肪酸でエステル化されている適切な脂肪酸エステルは、例えば、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソセチル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸オクチル、オレイン酸オレイル、及びミリスチン酸ミリスチル、並びにこれらの混合物である。
【0042】
適切な石油系化合物(複数可)は、例えば、鉱油、ポリデセン、ワセリン、パラフィナム・ペルリクイダム(paraffinum perliquidum)、及びパラフィナム・サブリクイダム(paraffinum subliquidum)、及び/又はこれらの混合物である。
【0043】
適切なオルガノポリシロキサンは、特に、水に可溶性ではないもの、例えば様々な粘度及び分子量を持つジメチコン、及びジメチコノール、第一級、第二級、第三級、又は第四級アンモニウム基を持つアミン化シリコーン、例えばアモジメチコン、ポリシリコーン9、及びクオタニウム80、シクロメチコンなどの環状シリコーン、フェニルトリメチコンなどのアリール化シリコーンなどである。
【0044】
適切な植物油は、オリーブ油、アーモンド油、アボカド油、小麦胚芽油、及びヒマシ油である。
【0045】
エマルジョンの安定性の観点から、c)に記載化合物(複数可)の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上、更に好ましくは2重量%以上である。
【0046】
エマルジョンの安定性及びエマルジョンのタイプの観点から、c)の化合物(複数可)の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは25重量%以下、より好ましくは20重量%以下、更に好ましくは15重量%以下である。
【0047】
先行する請求項のいずれかの組成物は、c)の化合物(複数可)の全濃度が、組成物の全重量に対し計算して、0.5重量%から25重量%、好ましくは1重量%から20重量%、より好ましくは2重量%から15重量%の範囲にあることを特徴とする。
【0048】
d)の化合物
本発明の組成物は、群b)とは異なる、d)の化合物(複数可)として1種又は複数の界面活性剤を含む。
【0049】
d)の化合物は、エマルジョンの安定性を確実にする。
【0050】
エマルジョンの安定性の観点から、d)の1種又は複数の化合物は、非イオン性界面活性剤(複数可)、カチオン性界面活性剤(複数可)、アニオン性界面活性剤(複数可)、両性/双性イオン性界面活性剤(複数可)、及び/又はこれらの混合物から選択されることが好ましく、非イオン性及び/又はカチオン性界面活性剤(複数可)から選択されることが好ましい。
【0051】
適切な非イオン性界面活性剤は、エマルジョンの安定化の観点から、好ましくは7~14の範囲のHLB値を有する。
【0052】
適切な非イオン性界面活性剤は、例えば、脂肪アルコールエトキシレート、脂肪アルコールのプロピレングリコールエーテル、脂肪酸のポリエチレングリコール若しくはポリプロピレングリコールエステル、エトキシル化若しくはプロポキシル化トリグリセリド、アルキルポリグリコシド、及び/又はこれらの混合物である。
【0053】
適切なカチオン性界面活性剤は、例えば、C12~C22の範囲のアルキル鎖長を有する第四級アンモニウム塩である。適切な例は、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリモニウム、塩化ジパルミトイルジモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアラミドプロピルトリモニウム、メト硫酸ジオレオイルエチルジメチルアンモニウム、メト硫酸ジオレオイルエチルヒドロキシエチルモニウム、及び/又はこれらの混合物である。
【0054】
適切なアニオン性界面活性剤は、例えば、アルキル鎖長がC10~C22であるアルキルサルフェート又はエトキシル化アルキルエーテルサルフェート界面活性剤、及び/又はこれらの混合物である。
【0055】
適切な界面活性剤は、硫酸ラウレス、硫酸コセス、硫酸パレス、硫酸カプリレス、硫酸ミレス、硫酸オレス、硫酸デセス、硫酸トリデセス、ココサルフェート、C10~C16アルキルサルフェート、C11~C15アルキルサルフェート、C12~C18アルキルサルフェート、C12~C15アルキルサルフェート、C12~C16アルキルサルフェート、C12~C13アルキルサルフェート、硫酸ラウリル、硫酸ミリスチル、パーム核サルフェート、硫酸セテアリル、硫酸セチル、硫酸デシル、硫酸オレイル、硫酸ベヘニル、及び/又はこれらの塩、及び/又はこれらの混合物である。前述のアニオン性界面活性剤の全ては、様々な程度でエトキシル化されていてもされていなくてもよい。
【0056】
アニオン性界面活性剤用の陽イオンは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、及び/又はアンモニウムから選択されてもよい。
【0057】
適切な両性/双性イオン性界面活性剤(複数可)は、例えば、様々な公知のベタイン、例えばアルキルベタイン、脂肪酸アミドアルキルベタイン、及びスルホベタイン、例えばラウリルヒドロキシスルホベタイン;長鎖アルキルアミノ酸、例えばココアミノアセテート、ココアミノプロピオネート、ココ両性プロピオン酸-及び酢酸-ナトリウムが適切であり、及び/又はこれらの混合物である。
【0058】
最も好ましい界面活性剤は、エマルジョンの安定性の観点から、カチオン性界面活性剤、特に塩化セチルトリメチルアンモニウムである。
【0059】
エマルジョンの安定性の観点から、d)の化合物(複数可)の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更により好ましくは1重量%以上である。
【0060】
エマルジョンの安定性の観点から、d)の化合物(複数可)の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、更に好ましくは3重量%以下である。
【0061】
上述の効果を達成するには、d)の化合物(複数可)の全濃度は、組成物の全重量に対して計算して、好ましくは0.2重量%から10重量%の範囲、より好ましくは0.5重量%から5重量%、更に好ましくは1重量%から3重量%である。
【0062】
1ステップ処理法
本発明は、ケラチン繊維、好ましくはヒトのケラチン繊維、より好ましくはヒトの毛髪を、再成形するための方法であって、
i)請求項1~10に記載された組成物をケラチン繊維に適用し、それを1~60分の間放置するステップ
ii)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流し、任意的にケラチン繊維を乾燥させるステップ
iii)ケラチン繊維を、45℃から230℃の温度範囲で高温器具により処理するステップ
iv)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流すステップ
v)任意的にケラチン繊維を45℃から230℃の温度範囲でカーリングツールによりカールするステップ
vi)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流すステップ
を含む、方法も対象とする。
【0063】
好ましくは、矯正の観点から、ステップi)の時間は5~45分の範囲にあり、より好ましくは10~30分の範囲にある。
【0064】
ステップiii)では、矯正の観点から、高温器具が90℃から230℃の範囲の表面温度を有する矯正用のフラットアイロンであることが好ましく、より好ましくは130℃から210℃の範囲である。あるいは、消費者の適用可能性の観点から、45℃から90℃の範囲の空気温度を有するブロードライヤー及び櫛が使用されてもよい。
【0065】
カールするステップv)では、カーリングの効率及び髪の損傷の観点から、カールアイロン又はホットコームを、更に好ましい90℃から210℃の温度範囲で使用することが好ましい。
【0066】
2ステップ処理法
本発明は、ケラチン繊維、好ましくはヒトのケラチン繊維、より好ましくはヒトの毛髪を、再成形するための方法であって、
vii)4未満のpHを有しかつ上記にて定義されたa)の1種又は複数の化合物を含む水性組成物を付着させるステップ
viii)組成物を、ケラチン繊維の表面に1~60分の間放置するステップ
ix)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流し、任意的に乾燥するステップ
x)ケラチン繊維を、45℃から230℃の温度範囲の高温器具で処理するステップ
xi)上記で定義された化合物b)からd)を含む組成物をケラチン繊維に適用するステップと
xii)組成物を、1~60分の間放置するステップと
xiii)任意的にケラチン繊維を45℃から230℃の温度範囲で高温器具により処理するステップ
を含む、方法も対象とする。
【0067】
さらなる任意的なステップとして、上記方法は、
xv)任意的にケラチン繊維を、45℃から230℃の温度範囲でカーリングツールによりカールするステップ
xvi)任意的にケラチン繊維を濯ぎ流すステップ
を含んでいてもよい。
【0068】
2ステッププロセスは、1ステッププロセスの代替例であり、等しく好ましい結果をもたらす。
【0069】
好ましくは、矯正の観点から、ステップvii)及び/又はxii)の時間範囲は5~45分の範囲にあり、より好ましくは10~30分の範囲にある。
【0070】
ステップx)及び/又はxiii)では、矯正の観点から、表面温度が好ましくは90℃から230℃の範囲、より好ましくは130℃から210℃の範囲のフラットアイロンが矯正に使用されることが好ましく、である。あるいは、消費者の適用可能性の観点から、空気温度が45℃から90℃の範囲にあるブロードライヤー及び櫛を使用してもよい。
【0071】
カールするステップxv)では、カーリングの効率及び髪の損傷の観点から、更に好ましい温度範囲の90℃から210℃のカールアイロン又はホットコームを使用することが好ましい。
【0072】
キットオブパーツ
本発明は、上記にて定義された本発明の組成物及び高温器具を含むキットオブパーツを、更に対象とする。適切な高温器具は、ブロードライヤー、ホットコーム、カールアイロン、及び/又はストレートアイロンである。
【0073】
本発明は、ステップvii)に関して上記にて定義された第1の組成物と、ステップxi)で上記にて定義された第2の組成物とを含むキットオブパーツを、更に対象とする。必要に応じて、キットはさらに、高温器具を含んでいてもよい。適切な高温器具は、ブロードライヤー、ホットコーム、カールアイロン、及び/又はストレートアイロンである。
【0074】
下記の実施例は、本発明を例示するためのものであり、しかしそれを限定するものではない。
【実施例
【0075】
実施例1
下記の組成物は、化合物b)、c)、及びd)を水に添加し、混合物を、70℃よりも上で撹拌しながら加熱することによって調製した。冷却後、化合物a)又は乳酸並びにNaOHを添加した。
【0076】
【表1】
【0077】
ヒトの毛束(白人の毛髪、束当たり2g、長さ21cm)を、Fischbach+Miller Haar、Laupheim、ドイツから購入した。毛束を、Goldwell Dualsenses Deep Cleansing Shampooという商標名の市販のシャンプーで、シャンプーした。次いで上記からの組成物のそれぞれ1gを毛束に付着させ、組成物を毛束上で3分間、そのままにした。次いで毛束を微温湯で1分間濯ぎ、ブロー乾燥した。次のステップとして、毛束を、160℃のアイロン表面温度にあるフラットアイロンで、3ストロークで処理した。この時点で、毛束の矯正を評価した。
【0078】
次いで毛束に、180℃のアイロン表面温度にあるカールアイロンを1回、毛束当たり10秒間通すことにより処理した。この時点で、毛束のカーリングを評価した(図1参照)。
【0079】
最後のステップで、毛束を、上記市販のシャンプーでシャンプーし、梳かし、ブロー乾燥した。この時点で、毛束の矯正を再び評価した(図2参照)。
【0080】
以下の表に示されるように、かつ図1及び2に例示されるように、下記の結果が得られた。
【0081】
【表2】
【0082】
上記比較試験からの結果として、本発明の組成物は、ストレートからカールへ、及び元のストレートヘアへの、最良の再スタイリング能力をもたらした。2種の比較組成物は、いずれも同じ性能を示さなかった。
【0083】
実施例2
下記の組成物は、化合物b)、c)、及びd)、又は比較目的のそれらの同等物を水中に添加し、その混合物を70℃よりも上で撹拌しながら加熱することによって、調製した。冷却後、化合物a)又は乳酸並びにNaOHを添加した。
【0084】
【表3】
【0085】
ヒトの毛束(白人の毛髪、束当たり2g、長さ21cm)を、Fischbach+Miller Haar、Laupheim、ドイツから購入した。毛束を、Goldwell Dualsenses Deep Cleansing Shampooという商標名の市販のシャンプーで、シャンプーした。次いで上記からの組成物のそれぞれ1gを毛束に付着させ、組成物を毛束上で3分間、そのままにした。次いで毛束を微温湯で1分間濯ぎ、ブロー乾燥した。前述の付着、濯ぎ、及びブロー乾燥ステップを更に2回繰り返し、但し最後のブロー乾燥ステップは空気乾燥に代えた。次のステップとして、毛束をブラッシングし、60℃の温度を有する熱風でブロー乾燥した。この時点で、毛束の矯正を評価した(図3参照)。
【0086】
次いで毛束に、130℃のアイロン表面温度にあるカールアイロンを、それぞれ10秒間、1回通すことにより、処理した。この時点で、毛束のカーリングを評価した(図4参照)。
【0087】
以下の表に示されるように、かつ図3及び4に例示されるように、下記の結果が得られた。
【0088】
【表4】
【0089】
上記比較試験からの結果として本発明の組成物は、ストレートからカーリーヘアへの最良の再スタイリング能力をもたらした。2種の比較組成物は、いずれも同じ性能を示さなかった。
【0090】
実施例3
下記の組成物は、化合物b)、c)、及びd)、又は比較目的のそれらの同等物を水中に添加し、その混合物を70℃よりも上で撹拌しながら加熱することによって調製した。冷却後、化合物a)又は乳酸並びにNaOHを添加した。
【0091】
【表5】
【0092】
上記組成物に関し、実施例2に関して説明したものと同じ実験プロトコールを使用した。
【0093】
毛束の矯正を評価した(図5参照)。
【0094】
次いで毛束に、130℃のアイロン表面温度にあるカールアイロンを1回、それぞれ10秒間通して処理した。この時点で、毛束のカーリングを評価した(図6参照)。
【0095】
以下の表に示されるように、かつ図5及び6に例示されるように、下記の結果が得られた。
【0096】
【表6】
【0097】
上記比較試験からの結果として、本発明の組成物は、ストレートからカーリーヘアへの最良の再スタイリング能力をもたらした。比較組成物は、低度の束の形成と共に毛羽立った矯正と、より低いカーリング性能に特に悩まされた。
【0098】
以下の実施例は、本発明の範囲内にある。
【0099】
実施例4
重量%
グリオキシル酸 6.0
イソステアリルグリセリルエーテル 2.0
ステアリルアルコール 5.0
塩化ベヘントリモニウム 0.5
ベヘナミドプロピルジメチルアミン 0.5
セテアレス-33 0.1
グリセリン 0.25
アモジメチコン 0.5
キサンタンガム 1.0
NaOH pH3.5になるまで適量
水 100.0まで
【0100】
実施例5
重量%
グリオキシル酸 2.0
イソデシルグリセリルエーテル 3.0
セテアリルアルコール 5.0
ミリスチン酸イソプロピル 2.0
PEG-40水素添加ヒマシ油 3.0
ベンジルアルコール 0.5
ジメチコン 0.25
ポリクオタニウム10 0.5
ヒドロキシエチルセルロース 1.5
NaOH pH2.5になるまで適量
水 100.0まで
【0101】
実施例6
重量%
グリコール酸 10.0
イソステアリルグリセリルエーテル 1.0
セテアリルアルコール 5.0
ベヘナミドプロピルジメチルアミン 0.75
パルミチン酸イソプロピル 2.0
ジプロピレングリコール 2.0
パンテノール 0.5
ジビニルジメチコン/ジメチコンコポリマー 0.75
デヒドロキサンタンガム 1.0
フェノキシエタノール 0.5
NaOH pH2.0になるまで適量
水 100.0まで
図1
図2
図3
図4
図5
図6