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特許7620630UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク及び印刷方法
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  • 特許-UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク及び印刷方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20250116BHJP
   C07D 335/16 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C09D11/101
C07D335/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022536615
(86)(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2020086189
(87)【国際公開番号】W WO2021122574
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】19217484.5
(32)【優先日】2019-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ホゲット, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】シャブリエ, ステファン
【審査官】河村 明希乃
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019979(JP,A)
【文献】特表2013-503929(JP,A)
【文献】特開2013-241008(JP,A)
【文献】特開2018-002958(JP,A)
【文献】特開2015-155499(JP,A)
【文献】特表2015-533876(JP,A)
【文献】特表2011-500932(JP,A)
【文献】特開2018-122431(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0200923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
C07D 335/00-335/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材にフィーチャをオフセット印刷するための、40℃及び1000s-1で2.5~25Pa sの範囲の粘度を有するUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクであって、前記UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、
i)10wt.%~80wt.%の、1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマー及び1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーからなる1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物であり、
前記ラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーが、エポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化オイル、(メタ)アクリル化エポキシ化オイル、ポリエステル(メタ)アクリレート、脂肪族又は芳香族ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリアクリル酸(メタ)アクリレート、ポリアクリレートエステル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、
前記ラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーが、モノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される、1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物
ii)4wt.%~20wt.%の式(I)の1種又は複数の光開始剤:
【化1】

[式中、Qは以下の式(IIa)、(IIb)又は(IIc)を有する:
【化2】

【化3】

(式中、nは1以上であり、R1は互いに同一であるか又は異なり、C ~C アルキレン基からなる群から選択され、R2は水素及びC~Cアルキル基からなる群から選択され、a+b+cの合計は3~12であり、d+e+f+gの合計は4~16である)]
iii)少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミノベンゾエート化合物、少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される、1wt.%~15wt.%の1種又は複数のアミノ含有化合物
iv)1wt.%~30wt.%の1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料
v)炭素繊維、タルク、マイカ、珪灰石、粘土、カオリン、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、アルミナ水和物、シリカ、モンモリロナイト、グラファイト、ベントナイト、バーミキュライト、木粉、石英粉、天然繊維、合成繊維、及びそれらの組合せからなる群から選択される0.5wt.%~10wt.%の1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤、並びに
vi)1種又は複数の発光材料
を含み、重量パーセントがUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク。
【請求項2】
1種又は複数の光開始剤が式(I)のものであり、Qが以下の式(IIb-1)、(IIb-2)又は(IIb-3):
【化4】

(式中、nは1、2又は3に等しく、a+b+cの合計は3~12である)
を有する、請求項1に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク。
【請求項3】
1種又は複数のアミノ含有化合物が、少なくとも700g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミノベンゾエート化合物、少なくとも700g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク。
【請求項4】
1種又は複数のアミノ含有化合物が、アミノベンゾエート化合物を含むアミノ含有化合物からなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク。
【請求項5】
1種又は複数のアミノ含有化合物が、式(III):
【化5】

(式中、mは1より大きく、h+i+j+kの合計は3~12である)
を有するアミノベンゾエート化合物からなる群から選択される、請求項4に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク。
【請求項6】
1種又は複数の無機顔料及び1種又は複数の有機顔料が、粒度分析ゲージを使用して測定した場合に5μm以下の粒径を独立的に有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク。
【請求項7】
パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルナウバワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数のワックスをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク。
【請求項8】
オフセット印刷方法によってフィーチャを基材に印刷するための方法であって、
a)請求項1~7のいずれか一項に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクをオフセット印刷によって塗布し、インク層を形成するステップ、及び
b)少なくとも150mJ/cmの線量でインク層をUV光に曝露し、前記インク層をUV-LED源によって硬化するステップ
を含む、方法。
【請求項9】
ステップb)が、インク層を355nm~415nmの1つ又は複数の波長に曝露することからなる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
40℃及び1000s-1で2.5~25Pa sの範囲の粘度を有するUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを生成するための、4wt.%~20wt.%の量の請求項1又は2に記載の1種又は複数の光開始剤、及び1wt.%~15wt.%の量の請求項1、3、4又は5に記載の1種又は複数のアミノ含有化合物の使用であって、
前記UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、セキュリティ文書に1つ又は複数のフィーチャを印刷するのに好適であり、前記UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、10wt.%~80wt.%のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物、1wt.%~30wt.%の1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料、0.5wt.%~10wt.%の1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤、並びに1種又は複数の発光材料を含み、重量パーセントがUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく、使用。
【請求項11】
請求項1~7のいずれか一項に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの硬化物であるインク層からなる印刷フィーチャ。
【請求項12】
基材及び請求項11に記載の1つ又は複数の印刷フィーチャを含むセキュリティ文書。
【請求項13】
1つ又は複数の印刷フィーチャが、50%以上の全表面を有し、%が前記1つ又は複数の印刷フィーチャが存在する基材の全表面に基づく、請求項12に記載のセキュリティ文書。
【請求項14】
基材が非蛍光基材である、請求項12又は13に記載のセキュリティ文書。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
[001]本発明は、偽造及び違法複製に対するセキュリティ文書の保護の分野に関する。特に、本発明は、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの分野、及びセキュリティ文書にフィーチャ又はパターンを生成するための方法に関する。
【0002】
[発明の背景]
[002]カラーコピー及び印刷の品質の継続的な向上に伴い、また複製可能な効果を有さない銀行券、有価文書又はカード、輸送機関チケット又はカード、タックスバンデロール(tax banderol)及び製品ラベルなどのセキュリティ文書を偽造、改ざん又は違法複製から保護する試みとして、これらの文書中及び上に種々のセキュリティ手段を組み込むことが従来の慣行であった。セキュリティ手段の典型的な例は、セキュリティスレッド、ウィンドウ、繊維、プランシェット、箔、デカール、ホログラム、透かし、光学的可変顔料、磁性又は磁化可能な薄膜干渉顔料、干渉コーティング粒子、熱変色性顔料、フォトクロミック顔料、発光化合物、赤外線吸収化合物、紫外線吸収又は磁性化合物を含むセキュリティインクを含む。
【0003】
[003]スクリーン印刷インク、フレキソ印刷インク、及びグラビア印刷インクなどの低粘性インク、並びにオフセット印刷インク、凹版印刷インク及び凸版印刷インクなどの高粘性又はペースト状インクを使用する異なる印刷方法を含む複数の印刷ステップで、セキュリティ文書にインクを塗布することが当技術分野で公知である。
【0004】
[004]オフセット印刷方法は、インクがまず印刷版からブランケット胴に、そして基材に転写される間接的な方法からなる。オフセット印刷方法は、湿式オフセット方法又は乾燥オフセット方法のいずれかである。湿式オフセット方法は、印刷版の画像領域と非画像領域の間の表面エネルギーの差を利用する。画像領域は親油性である一方、非画像領域は親水性である。したがって、方法で使用される油性インクは、印刷版の画像領域に接着し、非画像領域から弾かれる傾向がある。湿式オフセット印刷は、典型的に湿し水(当技術分野で給湿液とも称される)と親油性インクの両方を印刷版表面に供給し、画像領域がインクを優先的に受容し、非画像領域が湿し水を優先的に受容するようにさせ、次いで画像領域に堆積されたインクを印刷胴を介して基材に転写することによって実行される。乾燥オフセット方法は、ブランケット胴が、印刷されるべきモチーフを担持するレリーフを形成する金属裏打ちフォトポリマーで覆われる方法である。インクはレリーフに接着し、次いで印刷胴を介して基材に転写される。この場合、湿し水は必要ない。
【0005】
[005]オフセット印刷は、通常セキュリティ文書の背景デザインとしての印刷フィーチャを生成するための第1のステップであることが当技術分野で公知である。オフセットインクの乾燥は、酸化プロセス(すなわち、インクが酸化乾燥剤を含有し、酸化乾燥剤が空気の酸素と反応してインクマトリックスの重合プロセスを開始するフリーラジカルを生成する)又は放射線硬化プロセス、特にUV硬化プロセス(すなわち、インクが光開始剤を含有し、光開始剤が光と相互作用することによってインクマトリックスの重合を開始するフリーラジカルを生成する)のいずれかを含む。酸化乾燥は緩慢なプロセスであるのに対し、UV硬化はほぼ一瞬である。セキュリティ印刷は、複数の中間乾燥ステップを必要とする高価な多段階方法であるため、UVラジカル硬化性オフセット印刷インクが通常この分野で好まれる。UVラジカル硬化性オフセット印刷インクは、厚さ約0.5μm~約3μm(硬化状態で)の薄層として塗布され、セキュリティ文書にフィーチャを生成する。
【0006】
[006]オフセットインクは、セキュリティ文書の背景デザインとしてのフィーチャを印刷するために基材の両側に塗布されてもよく(シムルタン(Simultan)プロセス)、硬化ステップは同時に又は逐次的に実行されてもよい。典型的な工業印刷速度は、約8000枚/時間~約12’000枚/時間である。
【0007】
[007]インクが迅速且つ効率的に乾燥及び硬化しないと、裏移りが生じる。裏移りは、十分に乾燥又は硬化されない印刷インクが、印刷基材の積層中、印刷機から離れるときに、上面に配置された印刷基材の裏に少なくとも部分的に接着する際に発生する(例えば、米国特許第4,604,952号参照)。これは、セキュリティ文書、とりわけ銀行券にフィーチャを印刷する際の特有の問題であり、これは前記文書が、典型的に後続のステップで適用される複数の重複する又は部分的に重複するフィーチャを有するためである。先に適用されたフィーチャ、例えば背景画像又は図形パターンが十分に乾燥又は硬化していない場合、多段階印刷方法全体が遅延するだけでなく、そのようにして得られたフィーチャも、裏移り又は後続の印刷若しくはプロセス操作の間の機械における裏移りによるマーキングに依然として悩まされる可能性がある。
【0008】
[008]従来の銀行券印刷方法では、多段階印刷方法全体の第1のステップのうちの1つの間にオフセットインクが塗布され、ここでオフセット印刷には、凹版印刷及びスクリーン印刷を含む他の印刷ステップが続く。フィーチャ又はパターンがオフセット印刷方法によって銀行券などのセキュリティ文書に印刷され、前記フィーチャ又はパターンが低い表面硬化特性に悩まされる場合、後続の印刷ステップが遅延する可能性があるか、又は裏移りが発生する可能性がある。したがって、凹版印刷プレスは印刷基材に非常に高い圧力を印加するため、特に後続のステップが凹版印刷ステップである場合、裏移りの問題を回避するために、オフセットインクが他の印刷ステップの開始前に完全に乾燥又は硬化されることが重要である。
【0009】
[009]UVラジカル硬化性インクは、放射線、特にUV光の作用によってフリーラジカルを遊離させ、ひいては重合を開始させて硬化層を形成することができる1種又は複数の光開始剤の活性化からなるフリーラジカル機構によって硬化される。公知のフリーラジカル光開始剤は、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、アルファ-アミノケトン、アルファ-ヒドロキシケトン、ホスフィンオキシド及びホスフィンオキシド誘導体、並びにベンジルジメチルケタールを含む。
【0010】
[010]UVエネルギーは、通常水銀ランプ、特に中圧水銀ランプによってもたらされる。水銀ランプは、大量のエネルギーを必要とし、効率的且つ高価な放熱システムが必要であり、オゾンを形成し易く、限られた寿命を有する。
【0011】
[011]より安価であり、より少ない介入を必要とし、より環境に優しい解決策を提供する目的で、インク及びコーティングを硬化するためのUV-LEDに基づくランプ及びシステムが開発されている。電磁スペクトルのUV-A、UV-B及びUV-C領域に放出帯を有する中圧水銀ランプとは対照的に、UV-LEDランプは、UV-A領域の放射線を放出する。さらに、現行のUV-LEDランプは、準単色線を放出する、すなわち365nm、385nm、395nm又は405nmなどの1つの波長でのみ放出する。
【0012】
[012]コーティング又はインク層のUV硬化効率は、とりわけ前記硬化に使用される照射源の放出スペクトル及びコーティング又はインクに含まれる光開始剤の吸収スペクトルの重なりに依存する。したがって、従来使用されるフリーラジカル光開始剤を含むコーティング又はインク層のUV-LEDランプによるUV硬化は、ランプの放出スペクトルと従来使用されるフリーラジカル光開始剤の吸収の重なりが不良である結果として生じる硬化効率の低減に悩まされ、それにより硬化が緩慢になる若しくは不良になるか、又は硬化欠陥が生じる。
【0013】
[013]現在利用可能なUV-LED放射線源の放出波長にほぼ対応する吸収スペクトルを有する光開始剤は、アルファ-アミノケトン、チオキサントン、ケトクマリン、ビス[4(ジメチルアミノ)フェニル]メタノン誘導体(ミヒラーケトンとも呼ばれる)及びアシルホスフィンを含む。しかし、アルファ-アミノケトン及びミヒラーケトンは、近年健康及び/又は環境上の懸念を提示している。同様に高度に蛍光として公知のケトクマリンは、低い硬化効率を有し、主に実験及び/又は開発製品である。
【0014】
[014]アシルホスフィン光開始剤は、それらのレッドシフトした吸収スペクトル(最大吸収波長およそ370nm)のために、UV-LED放射線源による硬化に幅広く使用される。これらは、低い蛍光を示すことが公知である。しかし、アシルホスフィン光開始剤は、緩慢な硬化性能、特に緩慢な表面硬化性能に依然として悩まされる場合があり、酸素阻害に特に敏感であることが公知であるため、これらは薄層の硬化にはあまり効率的ではない。
【0015】
[015]現在使用されているチオキサントン誘導体は、約370nm~約410nmの最大吸収波長を有する。しかし、またアシルホスフィンオキシドとは対照的に、現在使用されているチオキサントンは、蛍光に悩まされる。
【0016】
[016]上記で言及されたように、UVラジカル硬化性オフセット印刷インクは、偽造及び違法複製に対するセキュリティ文書、有価文書及び物品の保護の分野において、印刷フィーチャ又はパターンの形態で薄層としてセキュリティ文書に適用されるように使用される。セキュリティ文書の分野において、特に銀行券に関して、前記セキュリティ文書にさらなるコバートセキュリティフィーチャを付与するために、発光セキュリティフィーチャが広く使用されていることは周知であり、ここで偽造及び違法複製に対する前記セキュリティ文書の保護は、そのようなフィーチャが、典型的にそれらを検出するための専用装置及び知識を必要とするという概念に依存する。発光セキュリティフィーチャは、例えば発光繊維、発光スレッド、発光パッチ、ストライプ又は箔(前記パッチ、ストライプ又は箔の少なくとも一部は発光である)、及び印刷発光フィーチャを含む。前記印刷フィーチャは、発光ナンバリング(凸版によって印刷される)、印刷パッチ[レターセット(letterset)によって印刷される]、及び通常セキュリティ文書の背景デザインとしてのセキュリティフィーチャを生成するために使用されるものと同時に、且つ同じ印刷プレスを用いてオフセットによって印刷される発光フィーチャを含む。
【0017】
[017]セキュリティ文書は、オフセット印刷フィーチャに加え、オフセット印刷フィーチャと同じ側又は反対側のいずれかに、発光セキュリティフィーチャ、特に印刷発光セキュリティフィーチャをさらに含むため、発光セキュリティフィーチャの機械検出及び/又はヒトによる認知に対する悪影響を回避するために、前記オフセット印刷フィーチャがそれ自体蛍光を示さないこと、それらが適用される基材を通して蛍光を示さないこと、及び汚染による2つの印刷セキュリティ文書間の接触によって蛍光を示さないことが要求される。
【0018】
[018]したがって、セキュリティ文書に高速で(すなわち、工業的速度で)フィーチャを印刷するためのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク及び方法であって、前記UV-LED硬化性オフセット印刷インクが良好な硬化特性を示し、且つ前記インクを硬化させた後に、低い蛍光又は非蛍光を示す印刷フィーチャを生成することを可能にするUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク及び方法に対する必要性が残されている。
【0019】
[発明の概要]
[019]したがって、本発明の目的は、上記で考察された先行技術の欠陥を克服することである。これは、基材にフィーチャをオフセット印刷するための、40℃及び1000s-1で約2.5~約25Pa sの範囲の粘度を有するUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクであって、前記UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、
i)約10wt.%~約80wt.%の1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物、
ii)約4wt.%~約20wt.%の式(I)の1種又は複数の光開始剤:
【0020】
【化1】

[式中、Qは以下の式(IIa)、(IIb)又は(IIc)を有する:
【0021】
【化2】

(式中、nは1以上であり、R1は互いに同一であるか又は異なり、C ~C アルキレン基からなる群から選択され、R2は水素及びC~Cアルキル基からなる群から選択され、a+b+cの合計は3~12であり、d+e+f+gの合計は4~16である)]、
iii)少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミノベンゾエート化合物、少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される、約1wt.%~約15wt.%の1種又は複数のアミノ含有化合物、並びに
iv)約1wt.%~約30wt.%の1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料、並びに
v)約0.5wt.%~約10wt.%の1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤
を含み、重量パーセントがUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを提供することによって達成される。
【0022】
[020]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、UV-LED光源によるUV光、好ましくは約355nm~約415nmの1つ又は複数の波長への曝露によって硬化されるのに特に好適である。オフセット印刷方法によって、1つ又は複数のフィーチャを基材に印刷するための方法であって、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクをオフセット印刷によって塗布し、インク層を形成するステップ、及び少なくとも150mJ/cm、好ましくは少なくとも200mJ/cmの線量でインク層をUV光に曝露し、前記インク層をUV-LED源によって硬化するステップを含む、方法が本明細書に記載される。
【0023】
[021]また、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクから作製される硬化インク層からなるフィーチャが本明細書に記載される。偽造又は詐欺に対するセキュリティ文書、有価文書又は物品の保護のための本明細書に記載されるフィーチャの使用、及び本明細書に記載される1つ又は複数の印刷フィーチャを含むセキュリティ文書、有価文書又は物品が本明細書に記載される。
【0024】
[022]また、本明細書に記載される基材及び本明細書に記載される1つ又は複数の印刷フィーチャを含むセキュリティ文書が本明細書に記載される。
【0025】
[023]また、40℃及び1000s-1で約2.5~約25Pa sの範囲の粘度を有するUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを生成するための、約1wt.%~約20wt.%の量、好ましくは約5wt.%~約15wt.%の量、より好ましくは約8wt.%~約12wt.%の量の本明細書に記載される1種又は複数の光開始剤、及び約1wt.%~約15wt.%の量の本明細書に記載される1種又は複数のアミノ含有化合物の使用であって、前記UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、セキュリティ文書に1つ又は複数のフィーチャを印刷するのに好適であり、前記UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、約10wt.%~約80wt.%のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物、約1wt.%~約30wt.%の1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料、並びに約0.5wt.%~約10wt.%の1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤を含み、重量パーセントがUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく、使用が本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】基材(1)、オフセットによって印刷されたフィーチャを含む異なるセキュリティフィーチャ(2~9)を含む銀行券であって、前記フィーチャがセキュリティ文書の全表面の70%より多くを覆う、銀行券を表す。
【詳細な説明】
【0027】
定義
[024]以下の定義により、本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語の意味を明確にする。
【0028】
[025]本明細書で使用される場合、不定冠詞「a」は、1つ及び1つより多くを示し、必ずしもその指示対象の名詞を単数に限定するものではない。
【0029】
[026]本明細書で使用される場合、「約」という用語は、対象の量、値、又は限界が、指定された特定の値又はその近傍の何らかの他の値であってもよいことを意味する。一般に、ある値を示す「約」という用語は、その値の±5%内の範囲を示すことを意図する。例えば、「約100」という語句は、100±5の範囲、すなわち95~105の範囲を示す。一般に、「約」という用語が使用される場合、本発明による同様の結果又は効果が指定値の±5%の範囲内で得られる場合があることが予想され得る。ただし、「約」という用語で補足された特定の量、値、又は限界は、本明細書で、まさにその量、値、又は限界それ自体、すなわち「約」という補足を伴わないものも開示することを意図する。
【0030】
[027]本明細書で使用される場合、「及び/又は」という用語は、前記群の要素のすべて又は1つのみが存在してもよいことを意味する。例えば、「A及び/又はB」は、「Aのみ、又はBのみ、又はA及びBの両方」を意味するものとする。「Aのみ」の場合、この用語は、Bが存在しない、すなわち「AのみであってBではない」という可能性も包含する。
【0031】
[028]本明細書で使用される場合、「1つ又は複数」という用語は、1つ、2つ、3つ、4つなどを意味する。
【0032】
[029]本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、非排他的且つオープンエンドであることを意図する。したがって、例えば化合物Aを含むインクは、A以外の他の化合物を含んでもよい。しかし、「含む」という用語は、その特定の実施形態として、「から本質的になる」及び「からなる」というより限定的な意味も包含するため、例えば「化合物Aを含むインク」はまた、化合物Aから(本質的に)なってもよい。
【0033】
[030]本明細書が「好ましい」実施形態/特色に言及する場合、この「好ましい」実施形態/特色の組合せが技術的に意義のある限り、これらの「好ましい」実施形態/特色の組合せも開示されると考慮されるものとする。
【0034】
[031]本明細書で使用される場合、UV(紫外線)という用語は、電磁スペクトルのUV部分、典型的に200nm~400nmに波長成分を有する照射を意味することを意図する。
【0035】
[032]「セキュリティ文書」という用語は、通常少なくとも1つのセキュリティフィーチャによって偽造又は詐欺に対して保護される文書を指す。セキュリティ文書の例は、限定することなく、有価文書及び有価商品を含む。
【0036】
[033]本発明の特定の実施態様の記載が、例示及び説明のために提示される。これらは、網羅的であること、又は開示される正確な形態に本発明を限定することを意図せず、当然ながら、上記教示を考慮して多くの修正及び変更が可能である。例示的な実施態様は、本発明の原理及びその実際の用途を最良に説明し、それにより他の当業者が本発明及び企図される特定の使用に適するような種々の修正を伴う種々の実施形態を最良に使用することを可能にするよう選択され、記載された。
【0037】
[034]本発明は、オフセット印刷方法によってセキュリティ文書に1つ又は複数のフィーチャを生成(印刷)するためのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを提供する。本発明は、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクから作製された硬化インク層からなる印刷フィーチャ、及び本明細書に記載される1つ又は複数の印刷フィーチャを含むセキュリティ文書をさらに提供する。本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、オフセット印刷ステップによって塗布され、前記オフセット印刷は湿式印刷方法又は乾燥オフセット印刷方法であってもよい。
【0038】
[035]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物は、本明細書に記載される1種又は複数の光開始剤及び本明細書に記載される1種又は複数のアミノ含有化合物の存在下で、UV-LED光源から放出されるUV光、好ましくは約355nm~約415nmの1つ又は複数の波長への曝露、より好ましくは365nm及び/又は385nm及び/又は395nmのUV光への曝露による硬化を経る。当業者によって公知のように、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、中圧水銀ランプを使用する硬化にも好適であり得る。
【0039】
[036]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、40℃及び1000s-1で約2.5~約25Pa sの範囲の粘度を有し、本明細書で示される粘度値は、Haake Roto-Visco RV1においてコーン2cm 0.5°、線速度増加30秒間で0~1000秒-1で測定される。
【0040】
[037]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、ラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物を含む。本明細書に記載されるラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物は、約10wt.%~約80wt.%、好ましくは約20wt.%~約80wt.%の量、より好ましくは約30wt.%~約80wt.%、さらにより好ましくは約50wt.%~約80wt.%の量で存在し、重量パーセントは本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0041】
[038]ラジカル硬化性化合物は、フリーラジカルを遊離し、ひいては重合を開始させて層又はコーティングを形成する、1種又は複数の光開始剤のエネルギーによる活性化からなるフリーラジカル機構によって硬化される。
【0042】
[039]記載されるラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物は、好ましくは1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマー及び1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーからなる。本発明の文脈における「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート並びに対応するメタクリレートを指す。
【0043】
[040]本明細書に記載されるラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーは、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル化オイル、(メタ)アクリル化エポキシ化オイル、ポリエステル(メタ)アクリレート、脂肪族又は芳香族ポリウレタン(メタ)アクリレート、ポリアクリル酸(メタ)アクリレート、ポリアクリレートエステル(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、脂肪族又は芳香族ポリウレタン(メタ)アクリレート、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0044】
[041]本明細書に記載されるラジカル硬化性オリゴマーは、好ましくは分岐又は本質的に直鎖であってもよい(メタ)アクリレートオリゴマーであり、1つ又は複数の(メタ)アクリレート官能基は、それぞれ末端基及び/又はオリゴマー骨格に結合したペンダント側基であってもよい。好ましくは、ラジカル硬化性オリゴマーは、(メタ)アクリルオリゴマー、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー及びそれらの混合物から選択される。
【0045】
[042]エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの好適な例は、限定することなく、脂肪族エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、特にモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート及びトリ(メタ)アクリレート、並びに芳香族エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーを含む。芳香族エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーの好適な例は、ビスフェノール-A(メタ)アクリレートオリゴマー、例えばビスフェノール-Aモノ(メタ)アクリレート、ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート、及びビスフェノール-Aトリ(メタ)アクリレート、並びにアルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)ビスフェノール-A(メタ)アクリレートオリゴマー、例えば、例えばアルコキシル化ビスフェノール-Aモノ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ビスフェノール-Aジ(メタ)アクリレート、及びアルコキシル化ビスフェノール-Aトリ(メタ)アクリレートを含み、エトキシル化ビスフェノール-Aジアクリレートが特に好適である。
【0046】
[043]本明細書に記載されるラジカル硬化性(メタ)アクリレートモノマーは、好ましくはモノ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0047】
[044]モノ(メタ)アクリレートの好ましい例は、2(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、C12/C14アルキル(メタ)アクリレート、C16/C18アルキル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、メトキシポリ(エチレングリコール)(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ジ(メタ)アクリレート、エステルジオールジ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物を含む。
【0048】
[045]ジ(メタ)アクリレートの好ましい例は、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びそれらの混合物を含む。
【0049】
[046]トリ(メタ)アクリレートの好ましい例は、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物を含む。
【0050】
[047]テトラ(メタ)アクリレートの好ましい例は、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物を含み、好ましくはジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0051】
[048]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが乾燥オフセット印刷方法によって塗布される実施形態では、本明細書に記載される(メタ)アクリレート化合物を含む本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、1種若しくは複数のビニルエーテル及び/又はそれらのエトキシル化均等物をさらに含んでもよい。好ましいビニルエーテルの例は、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチルベンゾエート、フェニルビニルエーテル、メチルフェニルビニルエーテル、メトキシフェニルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールモノビニルエーテル、3-アミノ-1-プロパノールビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジビニルエーテル、4-(ビニルオキシ)ブチルベンゾエート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]アジペート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート、ビス[4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート、4-(ビニルオキシ)ブチルステアレート、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、プロピレンカーボネートのプロペニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ポリ(テトラヒドロフラン)ジビニルエーテル、ポリエチレングリコール-520メチルビニルエーテル、pluriol-E200ジビニルエーテル、トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]1,6-ヘキサンジイルビスカルバメート、1,4-ビス(2-ビニルオキシエトキシ)ベンゼン、2,2-ビス(4-ビニルオキシエトキシフェニル)プロパン、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]テレフタレート、ビス[4-(ビニルオキシ)メチル]シクロヘキシル]メチル]イソフタレート、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル](4-メチル-1,3-フェニレン)ビスカルバメート、及びビス[4-ビニルオキシ)ブチル](メチレンジ-4,1-フェニレン)ビスカルバメートを含む。好適なビニルエーテルは、EVE、IBVE、DDVE、ODVE、BDDVE、DVE-2、DVE-3、CHVE、CHDM-di、HBVEの名称でBASFによって市販される。存在する場合、1種若しくは複数のビニルエーテル及び/又はそれらのエトキシル化均等物は、約1wt.%~約5wtの量で存在し、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0052】
[049]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、本明細書に記載される1種又は複数の光開始剤を含み、前記1種又は複数の光開始剤は、2位におけるエステル結合を介して残基に連結したチオキサントン誘導体からなり、すなわち、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、式(I)の1種又は複数の光開始剤:
【0053】
【化3】

[式中、Qは以下の式(IIa)、(IIb)又は(IIc)を有する:
【0054】
【化4】

(式中、nは1より大きく、R1は互いに同一であるか又は異なり、C ~C アルキレン基(すなわち、メチレン、エチレン、1-プロピレン、2-プロピレン)からなる群から選択され、R2は、水素及びC~Cアルキル基(すなわち、メチル(Me、-CH)、エチル(Et、-CHCH)、1-プロピル(n-Pr、n-プロピル、-CHCHCH)、2-プロピル(i-Pr、イソプロピル、-CH(CH))からなる群から選択され、a+b+cの合計は3~12であり、d+e+f+gの合計は4~16である)]
を含む。
【0055】
[050]式(I)の1種又は複数の光開始剤は、好ましくは約900g/mol eq PS以上の重量平均分子量(MW)を有し、前記重量平均分子量は、OECD試験法118に従ってGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって決定され、Malvern Viskotek GPCmaxが使用され、検量線(log(分子質量)=f(保持容量))は6種のポリスチレン標準(472~512000g/molの範囲の分子質量を有する)を使用して作成される。デバイスは、アイソクラティックポンプ、脱ガス器、オートサンプラー及び示差屈折計、粘度計及び二重角度光散乱検出器(7°及び90°)を含む三重検出器TDA302を備える。この特定の測定には、示差屈折計のみを使用する。2つのカラムViskotek TM4008L(カラム長30.0cm、内径8.0mm)を直列に連結した。固定相は、粒径6μm及び最大孔径3000Åのスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーから作製された。測定中、温度は35℃に固定され、試料は、分析対象の、THF(Acros、99.9%、無水)に溶解された10mg/mLの生成物を含有する。以下の実施例に記載されるように、試料は1ml/分の速度で独立的に注入される。化合物の分子質量は、以下の式を使用して、95%の信頼レベル及び同じ溶液の3回の測定の平均を用い、ポリスチレン換算重量平均分子量(PSeqM)としてクロマトグラムから計算される:
【0056】
【数1】

(式中、Hは保持容量Vのベースラインからの検出器信号のレベルであり、Mは保持容量Vにおけるポリマー画分の分子量であり、nはデータ点の数である)。ソフトウェアとして、デバイスに付属のOmnisec5.12が使用される。
【0057】
[051]好ましい実施形態によると、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、式(I)の1種又は複数の光開始剤を含み、式中、nは1、2又は3に等しく、Qは式(IIb)を有し、a+b+cの合計は3~12である。より好ましい実施形態によると、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、式(I)の1種又は複数の光開始剤を含み、式中、nは1、2又は3に等しく、Qは式(IIb)を有し、a+b+cの合計は3~12であり、R1は同一であり、エチレン基である。
【0058】
[052]さらに好ましい実施形態によると、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、式(I)の1種又は複数の光開始剤を含み、式中、nは1(式IIb-1を参照されたい)、2(式(IIb-2)を参照されたい)、又は3(式(IIb-3)を参照されたい)に等しく、Qは式(IIb)を有し、a+b+cの合計は3~12であり、R1は同一であり、エチレン基であり、R2はエチル基:
【0059】
【化5】

である。
【0060】
[053]式(I)の特に好適な光開始剤は、名称Genopol(登録商標)TX-2でRahnによって販売される。
【0061】
[054]本明細書に記載される1種又は複数の光開始剤は、約4wt.%~約20wt.%の量、好ましくは約5wt.%~約15wt.%の量、より好ましくは約8wt.%~約12wt.%の量で存在し、重量パーセントは、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0062】
[055]本発明は、原子の1つ又は複数が同位体変異体によって置き換えられた化合物にも及ぶことがさらに理解されるべきであり、例えば、例えば1つ若しくは複数の水素原子がH若しくはHによって置き換えられてもよく、及び/又は1つ若しくは複数の炭素原子が14C又は13Cによって置き換えられてもよい。
【0063】
[056]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミノベンゾエート化合物、少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される、約1wt.%~約15wt.%、好ましくは約2wt.%~約12wt.%の1種又は複数のアミノ含有化合物を含み、重量平均分子量は本明細書に記載の通り測定され、重量パーセントは、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。前記アミノ含有化合物は、水素供与体として作用する。しかし、それらの幾分高い親水性のために、前記化合物は、湿式オフセット方法が使用される場合にUV硬化性インクの性能に悪影響を及ぼすことが当技術分野で公知である(すなわち、アミンは通常親油性のインクを親水性にする傾向があり、前記親水性インクは、ひいては印刷版の非画像領域を汚染する)。
【0064】
[057]本明細書に記載される1種又は複数のアミノベンゾエート化合物は、少なくとも400g/mol eq PS、好ましくは少なくとも700g/mol eq PS、より好ましくは少なくとも900/mol eq PSの重量平均分子量を有する。
【0065】
[058]一実施形態によると、本明細書に記載される1種又は複数のアミノベンゾエート化合物は、1種又は複数の第三級アミン、好ましくは1種又は複数の4-ジアルキルアミノベンゾエート基、最も好ましくは1種又は複数の4-ジメチルアミノベンゾエート基を含む。本明細書に記載される1種又は複数のアミノベンゾエート化合物は、好ましくはアルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)グリセロール又はアルコキシル化(例えば、エトキシル化及びプロポキシル化など)ペンタエリスリトールからの誘導体であるポリエーテル系化合物である。1種又は複数のアミノベンゾエート化合物の好適な例は、以下の式(III):
【0066】
【化6】

(式中、mは1より大きく、好ましくは1~4であり、h+i+j+kの合計は3~12である)
を有する。
【0067】
[059]特に好適なアミノベンゾエート化合物は、SpeedCure7040の名称でLambsonによって販売される。
【0068】
[060]本明細書に記載される1種又は複数のアミン変性ポリエーテル系アクリレートは、少なくとも400g/mol eq PS、好ましくは少なくとも700g/mol eq PS、より好ましくは少なくとも900g/mol eq PSの重量平均分子量を有する。好ましくは、本明細書に記載される1種又は複数のアミン変性ポリエーテル系アクリレートは、高い粘度(20~25℃で500mPasより高い、好ましくは1000mPasより高い粘度値など)及び高いアクリレート官能性(例えば、分子あたりのアクリレート基の数、特に2より高い、好ましくは3より高いアクリレート官能性)を有する。一実施形態によると、本明細書に記載される1種又は複数のアミン変性ポリエーテル系アクリレートは、ポリエーテルアクリレートのアクリレート二重結合のごく一部(およそ2~15wt.%)とアミンの反応によって調製される(Radiation curing、P.Glockner、Vincentz、2008、p.66~67)。前記アミンは、好ましくは第一級若しくは第二級アルキル若しくはシクロアルキルアミン、又は脂肪族環状第二級アミン、例えばピロリジン、ピペリジン、又はピペラジンである。特に好適なポリエーテルアクリレートは、少なくとも3のアクリレート官能性を有する。対応する例は、エトキシル化又はプロポキシル化グリセロールトリアクリレート、エトキシル化又はプロポキシル化トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシル化又はプロポキシル化ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどを含む。好適なアミン変性ポリエーテル系アクリレートは、名称エベクリル(Ebecryl)(登録商標)80)でAllnexによって、名称Genomer3457及び3480でRahnによって、名称フォトマー(Photomer)(登録商標)5662でIGM Resinsによって、及び名称ネオラッド(Neorad)(商標)P-82及びアジシン(Agisyn)(商標)701でDSM Resinsによって販売される。
【0069】
[061]本明細書に記載される1種又は複数のアミノ含有化合物(特に、本明細書に記載される1種又は複数のアミノベンゾエート化合物及び本明細書に記載される1種又は複数のアミン変性ポリエーテル系アクリレート)並びに本明細書に記載される式(I)の1種又は複数の光開始剤の量は、好ましくは本明細書に記載される1種又は複数のアミノ含有化合物(特に、本明細書に記載される1種又は複数のアミノベンゾエート化合物及び本明細書に記載される1種又は複数のアミン変性ポリエーテル系アクリレート)の窒素と本明細書に記載される式(I)の1種又は複数の光開始剤のチオキサントン部分の間のモル比が、好ましくは約0.1~約1の間、より好ましくは約0.2~約0.8の間、さらにより好ましくは約0.4~約0.6の間に含まれるように選択される。本明細書に記載される好ましい範囲は、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが湿式オフセット印刷方法によって塗布される実施形態に特に好適である。
【0070】
[062]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、本明細書に記載される1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料をさらに含み、本明細書に記載される前記1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料は、約1wt.%~約30wt.%の量で存在し、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0071】
[063]有機及び無機顔料の典型的な例は、限定することなく、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー42、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー173、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ48、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド67、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントブラウン6、C.I.ピグメントブラウン7、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントブラック7、C.I.ピグメントブラック11、C.I.ピグメントホワイト4、C.Iピグメントホワイト6、C.I.ピグメントホワイト7、C.I.ピグメントホワイト21、C.I.ピグメントホワイト22、アンチモンイエロー、クロム酸鉛、硫酸クロム酸鉛、モリブデン酸鉛、ウルトラマリンブルー、コバルトブルー、マンガンブルー、酸化クロムグリーン、水和酸化クロムグリーン、コバルトグリーン、硫化セリウム、硫化カドミウム、硫セレン化カドミウム、亜鉛フェライト、バナジン酸ビスマス、プルシアンブルー、混合金属酸化物、アゾ、アゾメチン、メチン、アントラキノン、フタロシアニン、ペリノン、ペリレン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、チアジンインジゴ、ジオキサジン、イミノイソインドリン、イミノイソインドリノン、キナクリドン、フラバントロン、インダントロン、アントラピリミジン、及びキノフタロン顔料を含む。存在する場合、本明細書に記載される無機顔料、有機顔料、又はそれらの混合物は、好ましくは約0.1wt.%~約45wt.%の量で存在し、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0072】
[064]好ましい実施形態によると、本明細書に記載される1種若しくは複数の無機顔料及び/又は本明細書に記載される1種若しくは複数の有機顔料は、ISO1524:2013に従い、粒度分析ゲージ(Erichsen モデル232粒度計、目盛0~15μmなど)を使用して測定した場合に5μm以下、好ましくは3μm以下の粒径を独立的に有する。粒度分析試験は、使用する準備ができたインク、すなわちすべての材料を含有しており、以下に記載される実施例E1~E2及び比較例C1~C4に記載のように調製され、摩砕されたインクを直接用いて実施される。
【0073】
[065]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤を約0.5wt.%~約10wt.%、好ましくは約0.5~約5wt.%の量でさらに含み、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤は、好ましくは炭素繊維、タルク、マイカ(白雲母)、珪灰石、粘土(焼成粘土及び白陶土)、カオリン、炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムアルミニウム)、ケイ酸塩(例えば、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム)、硫酸塩(例えば、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム)、チタン酸塩(例えば、チタン酸カリウム)、アルミナ水和物、シリカ(ヒュームドシリカも含む)、モンモリロナイト、グラファイト、鋭錐石、ルチル、ベントナイト、バーミキュライト、亜鉛華、硫化亜鉛、木粉、石英粉、天然繊維、合成繊維、並びにそれらの組合せからなる群から選択される。1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤は、より好ましくは炭素繊維、タルク、マイカ、珪灰石、粘土、カオリン、炭酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、チタン酸塩、アルミナ水和物、シリカ、モンモリロナイト、グラファイト、ベントナイト、バーミキュライト、木粉、石英粉、天然繊維、合成繊維、及びそれらの組合せからなる群から選択される。1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤は、さらにより好ましくは炭酸塩(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムアルミニウム)、シリカ、タルク、粘土、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0074】
[066]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、好ましくは合成ワックス、石油ワックス、及び天然ワックスからなる群から選択される1種又は複数のワックスをさらに含むことができる。1種又は複数のワックスは、好ましくはアミドワックス、エルカ酸アミドワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、フィッシャー-トロプシュワックス、シリコーン流体、蜜蝋、カンデリラワックス、モンタンワックス、カルナウバワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくはパラフィンワックス、ポリエチレンワックス、フルオロカーボンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、カルナウバワックス、及びそれらの混合物からなる群から選択される。存在する場合、1種又は複数のワックスは、好ましくは約0.1~約5wt.%の量で存在し、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0075】
[067]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、共開始剤として1種又は複数のホスフィンオキシドをさらに含んでもよい。ホスフィンオキシドの好適な例は、限定することなく、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート;フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド;ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;Speedcure XKmとしてLambsonから販売される置換アシル-ホスフィンオキシド;ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネートと2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノンの混合物を含む。本明細書に記載される1種又は複数のホスフィンオキシドを含む場合、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷は、好ましくは本明細書に記載される1種又は複数の式(I)の光開始剤と本明細書に記載される1種又は複数のホスフィンオキシドの組合せを約6wt.%~約25wt.%、好ましくは約10wt.%~約20wt.%含み、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0076】
[068]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、磁性材料、IR吸収材料、及びそれらの混合物からなる群から選択される1種又は複数の機械可読材料をさらに含んでもよい。本明細書で使用される場合、「機械可読材料」という用語は、デバイス又は機械、例えば、例えばCCD若しくはCMOSセンサー、磁気検出器(機械可読材料が磁気特性を有する場合)又はIRカメラ(機械可読材料がIR吸収特性を有する場合)によって検出可能な少なくとも1つの独特な特性を示し、前記セキュリティフィーチャの検出及び/又は認証用の特定の装置を使用して前記セキュリティフィーチャを認証する手段を付与するために、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクから作製されるセキュリティフィーチャに含まれてもよい材料を指す。本明細書に記載される1種又は複数の機械可読材料は、約1wt.%~約60wt.%、好ましくは約5wt.%~約40wt.%の量で存在し、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0077】
[069]磁性材料は、強磁性又はフェリ磁性タイプの特定の検出可能な磁気特性を示し、永久磁性材料(抗磁力Hc>1000A/mを有する硬質磁性材料)及び磁化可能材料(IEC60404-1(2000)に従って抗磁力Hc≦1000A/mを有する軟質磁性材料)を含む。磁性材料の典型的な例は、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、及びそれらの磁性合金、カルボニル鉄、二酸化クロムCrO、磁性酸化鉄(例えば、Fe;Fe)、磁性フェライトM(II)Fe(III)及びヘキサフェライトM(II)Fe(III)1219、磁性ガーネットM(III)Fe(III)12(イットリウム鉄ガーネットYFe12など)、並びに永久磁化したこれらの磁性等構造置換物及び粒子(例えば、CoFe)を含む。他の材料の少なくとも1層に囲まれた(コーティングされた)磁性コア材料を含む磁性顔料粒子、例えば国際公開第2010/115986A2号に記載のものも本発明に使用することができる。存在する場合、1種又は複数の磁性材料は、好ましくは約5~約60wt.%の量で存在し、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0078】
[070]赤外線(IR)吸収材料、すなわち電磁スペクトルの近赤外線(NIR)範囲、最も一般的には700nm~2500nmの波長範囲を吸収する材料は、印刷文書に、それらの認証を支援する追加のコバートセキュリティ要素を付与するためのセキュリティ用途におけるマーキング材料として広く公知であり、使用されている。例えば、IR吸収特性を有するセキュリティフィーチャは、所定の通貨紙幣の認識及びその認証の確認のために、特にカラーコピー機で作製された複製品と区別するために、銀行及び販売用途における自動通貨処理装置(自動預金預払機、自動販売機など)によって使用される銀行券に実装されている。IR吸収材料は、IR吸収無機材料、協同効果としてIR吸収を示すIR吸収原子若しくはイオン又は存在物を実質的な量で含むガラス、IR吸収有機材料、並びにIR吸収有機金属材料(別個のカチオン及び/若しくは別個の配位子のいずれか又は両方が一緒になってIR吸収特性を有する、カチオン(複数可)と有機配位子(複数可)の錯体)を含む。IR吸収材料の典型的な例は、とりわけカーボンブラック、キノン-ジインモニウム又はアミニウム塩、ポリメチン(例えば、シアニン、スクアライン、クロコナイン)、フタロシアニン又はナフタロシアニン型(IR吸収π系)、ジチオレン、クアテリレンジイミド、金属(例えば、遷移金属又はランタニド)リン酸塩、六ホウ化ランタン、インジウムスズ酸化物、ナノ粒子状形態のアンチモンスズ酸化物、及びドープされたスズ(IV)酸化物(SnO結晶の協同特性)を含む。遷移元素化合物を含み、その赤外線吸収が遷移元素原子又はイオンのd殻内での電子遷移の結果であるIR吸収材料、例えば、国際公開第2007/060133A2号に記載されるものも本発明に使用することができる。存在する場合、1種又は複数のIR吸収材料は、好ましくは約1~約40wt.%の量で存在し、重量パーセントはUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0079】
[071]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、1種若しくは複数のマーカー及び/又はタガントをさらに含んでもよい。
【0080】
[072]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、特にその貯蔵中に前記インクを安定させるために、1種又は複数のUV安定剤をさらに含んでもよい。好適なUV安定剤の典型的な例は、限定することなく、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、4-t-ブチルカテコール、4-t-ブチル-フェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチル-フェノール(BHT)、ピロガロール、フェノチアジン(PTZ)、2,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、銅(II)塩(例えば、銅(II)フェノキシド、アセチルアセトン酸銅(II)、グルコン酸銅(II)、酒石酸銅(II)、酢酸銅(II)、カルバミン酸銅(II)、チオカルバミン酸銅(II)、ジチオカルバミン酸銅(II)、又はジメチルジチオカルバミン酸銅(II)など)、銅(I)塩(例えば、塩化銅(I)又は酢酸銅(I)など)、トリス[N-(ヒドロキシル-κO)-N-(ニトロソ-κO)ベンゼンアミナト]-アルミニウム、及びそれらの混合物を含む。存在する場合、本明細書に記載される1種又は複数のUV安定剤は、約0.1wt.%~約5wt.%の量、好ましくは約0.5wt.%~約2wt.%の量でUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク中に存在し、重量パーセントは、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0081】
[073]当業者に公知のように、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、1種若しくは複数の溶媒及び/又は希釈剤をさらに含んでもよい。
【0082】
[074]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、1種又は複数の不活性樹脂(すなわち、重合反応に関与しない樹脂)をさらに含むことができる。不活性樹脂を本明細書に記載されるラジカル硬化性オフセット印刷インクの粘度の調整に使用すると、本明細書に記載されるラジカル硬化性オフセット印刷インクによって調製されるインク層のガラス転移温度を低下させることができるか、又は本明細書に記載されるラジカル硬化性オフセット印刷インクによって調製されるインク層の接着を増大させることができる。1種又は複数の不活性樹脂は、好ましくは炭化水素(例えば、スチレン系炭化水素樹脂など)、アクリル(例えば、アクリルコポリマーなど)、スチレンアリルアルコール、フェノール樹脂、ロジン変性樹脂、ケトン樹脂、アルキド樹脂、及びそれらの混合物からなる群から選択される。存在する場合、本明細書に記載される1種又は複数の不活性樹脂は、約0.1wt.%~約10wt.%の量、好ましくは約0.5wt.%~約2wt.%の量で本明細書に記載されるUV-LED硬化性湿式オフセット印刷インク中に存在し、重量パーセントは本明細書に記載されるUV-LED硬化性湿式オフセット印刷インクの全重量に基づく。
【0083】
[075]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、これらに限定されないが、以下の成分:共開始剤、沈降防止剤、消泡剤、界面活性剤、及びオフセットインク分野で公知の他の加工助剤のうちの1種又は複数、並びにこれらの組合せを含む添加剤をさらに含んでもよい。本明細書に記載される添加剤は、粒子の寸法の少なくとも1つが1~1000nmの範囲にあるいわゆるナノ材料の形態を含む、当技術分野で公知の量及び形態で本明細書に記載されるUV-LED硬化性湿式オフセット印刷インク中に存在することができる。
【0084】
[076]UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、セキュリティ文書に高速でフィーチャを印刷するための本明細書に記載されるオフセット印刷方法によって塗布されてもよく、前記UV-LED硬化性オフセット印刷インクは、良好な硬化特性を示し、且つ硬化された後に印刷フィーチャを生成することを可能にし、前記印刷フィーチャは、低蛍光又は非蛍光を示す。有利には、これは、インク製造業者がこの背景低蛍光又は非蛍光を利用し、低蛍光又は非蛍光インク、及び低蛍光又は非蛍光印刷特徴を生成することを可能にする。また、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク及び1種又は複数の発光材料を含む組成物が本明細書に記載される。UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの低蛍光又は非蛍光を利用することにより、本明細書に記載される1種又は複数の発光材料を含む組成物を配合することが可能になり、ここでUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク成分と組み込まれた発光材料との間にマスキング又は干渉が生じないため、前記組成物の発光特徴は、故意に自由に選択されている。言い換えると、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを使用し、標的の蛍光特性(すなわち、予測可能であり、UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクそれ自体の成分/材料によって変更されない蛍光特性)を有する組成物及びセキュリティフィーチャを生成することができる。言い換えると、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクにおける、本明細書に記載される1種又は複数のラジカル硬化性(メタ)アクリレート化合物、本明細書に記載される式(I)の1種又は複数の光開始剤、本明細書に記載されるアミノベンゾエート化合物、アミン変性ポリエーテル系アクリレート及びそれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のアミノ含有化合物、本明細書に記載される1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料、本明細書に記載される1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤並びに任意選択の添加剤の組合せは、低蛍光又は非蛍光インク及び低蛍光又は非蛍光印刷フィーチャそれ自体の生成を可能にするか、又は1種若しくは複数の発光化合物を含む組成物、及び本明細書に記載される発光材料を組み込むことにより、制御された所望の発光特性を有する低蛍光又は非蛍光印刷セキュリティフィーチャの生成を可能にし、前記発光化合物の発光特性は、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクによって実質的に変更又はマスキングされない。さらに、またUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの低蛍光又は非蛍光のために、本明細書に記載される1種又は複数の発光材料の量を低減させることができ、したがって製造及び生成コストが減少する。
【0085】
[077]発光材料の典型的な例は、限定することなく、無機顔料(発光イオンをドープした無機ホスト結晶又はガラスなど)、有機及び有機金属(発光イオン(複数可)と有機配位子(複数可)の錯体物質)化合物を含む。存在する場合、無機顔料である1種又は複数の発光材料は、好ましくは本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを含む組成物中に約1~約40wt.%の量で存在し、重量パーセントは本明細書に記載される組成物の全重量に基づく。存在する場合、有機化合物である1種又は複数の発光材料は、好ましくは本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを含む組成物中に約1~約20wt.%の量で存在し、重量パーセントは本明細書に記載される組成物の全重量に基づく。発光化合物は、発光化合物に作用する特定の種類のエネルギーを吸収し、続いてこの吸収されたエネルギーを電磁線として少なくとも部分的に放出することができる。特定の波長の光で露光し、放出された光を分析することによって発光化合物を検出する。ダウンコンバート性発光化合物は、より高い周波数(より短い波長)で電磁線を吸収し、より低い周波数(より長い波長)で少なくとも部分的にそれを再放出する。アップコンバート性発光化合物は、より低い周波数で電磁線を吸収し、より高い周波数で少なくとも部分的にその一部を再放出する。発光材料の光放出は、原子又は分子の励起状態から生じる。このような励起状態の放射減衰は特徴的な減衰時間を有し、これは材料に依存し、10-9秒~最大数時間に及ぶことがある。蛍光及びリン光化合物の両方が本発明に好適である。リン光化合物の場合、減衰特徴の測定も行なわれ、機械可読フィーチャとして使用することもできる。顔料形態の発光化合物は、インクに幅広く使用されている(米国特許第6565770号、国際公開第2008/033059A2号、及び国際公開第2008/092522A1号を参照されたい)。発光化合物の例は、とりわけ、遷移金属イオン及び希土類イオンからなる群から選択される少なくとも1種の発光カチオンでドープされた非発光カチオンの硫化物、酸硫化物、リン酸塩、バナジン酸塩など;希土類酸硫化物及び希土類金属錯体、例えば国際公開第2009/005733A2号又は米国特許第7108742号に記載のものを含む。無機化合物材料の例は、限定することなく、LaS:Eu、ZnSiO:Mn、及びYVO:Ndを含む。
【0086】
[078]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、典型的に本明細書に記載されるすべての材料、すなわち本明細書に記載される式(I)の1種又は複数の光開始剤、本明細書に記載される1種又は複数のアミノ含有化合物、本明細書に記載される1種若しくは複数の無機顔料及び/又は1種若しくは複数の有機顔料、本明細書に記載される1種若しくは複数の充填剤及び/又は増量剤、存在する場合は本明細書に記載される1種又は複数のワックス、並びに存在する場合は1種又は複数の添加剤を、本明細書に記載される(メタ)アクリレート化合物の存在下で分散、混合、及び/又は摩砕し、それによりペースト状組成物を形成するステップを含む方法によって調製される。本明細書に記載される1種又は複数の光開始剤は、他のすべての材料の分散/混合/摩砕ステップ中にインクに添加されてもよいか、又は後の段階で添加されてもよい。
【0087】
[079]また、本明細書に記載される材料を含む、特にi)本明細書に記載される1種又は複数の式(I)の光開始剤、及びii)少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミノベンゾエート化合物、少なくとも400g/mol eq PSの重量平均分子量を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種又は複数のアミノ含有化合物を含む凹版印刷インク(当技術分野で「彫刻鋼製ダイ」又は「銅版」印刷インクとも呼ばれる)及び凸版印刷インクが本明細書に開示される。
【0088】
[080]本明細書に記載されるように、本明細書に記載される印刷フィーチャを生成するためのプロセスは、a)オフセット印刷によって本明細書に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを塗布し、インク層を形成するステップ、及びb)インク層をUV-LED源を用いて少なくとも150mJ/cm、好ましくは少なくとも200mJ/cmの線量でUV光に曝露し、前記インク層を硬化させるステップを含む。以下に記載されるように、線量は、EIT,Inc.、米国からのUVパワーパック(Power Puck)(登録商標)II放射計を使用して測定することができる。
【0089】
[081]本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、オフセット印刷ステップによって塗布され、前記オフセット印刷は、湿式印刷方法又は乾燥オフセット印刷方法であってもよい。
【0090】
[082]また、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、本明細書に記載されるオフセット印刷によって本明細書に記載される基材の両側に塗布され、両側にインク層を形成する、すなわち両側に同じUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが使用される方法が本明細書に記載される。また、本明細書に記載される2種のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、本明細書に記載されるオフセット印刷によって本明細書に記載される基材の両側に塗布され、両側にインク層を形成する、すなわち両側に2種の異なるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが使用される方法が本明細書に記載される。
【0091】
[083]好ましくは、本明細書に記載されるステップb)は、インク層を355~415nmの1つ又は複数の波長に曝露することからなる。典型的に、市販のUV-LED源は、例えば365nm、385nm、395nm及び405nmなどの1つ又は複数の波長を使用する。一実施形態によると、本明細書に記載されるステップb)は、インク層を355~415nmの単一の波長に曝露することからなる。
【0092】
[084]本明細書に記載されるプロセスは、セキュリティ文書の基材として好適な基材に1つ又は複数の印刷フィーチャを生成するのに特に好適である。本明細書に記載される1つ又は複数の印刷フィーチャは、連続的又は非連続的であってもよい。
【0093】
[085]実施形態によると、本明細書に記載される1つ又は複数のフィーチャは、後に他のインク又はセキュリティフィーチャが印刷又は加工される基材又はセキュリティ文書に(片側又は両側のいずれかに)背景フィーチャ又はパターンとして使用される。これは、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを用いて、本明細書に記載されるオフセット印刷方法によって印刷された1つ又は複数のフィーチャの上に、さらなるフィーチャが1つ若しくは複数のさらなる印刷又は適用の実行で印刷又は適用され、本明細書に記載されるオフセット方法によって印刷される1つ又は複数のフィーチャとさらなるフィーチャが少なくとも部分的に重なることを意味する。図1は、非蛍光信用発行紙基材(fiduciary substrate)(1)、例えばセルロース系基材又はポリマー基材、本明細書に記載されるオフセット印刷ステップにより、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを塗布及び硬化することによって調製された印刷フィーチャからなる背景デザイン(10)、及びさらなるセキュリティ要素(2~9)を含むセキュリティ文書、特に銀行券の表側を示す。前記セキュリティ要素(2~9)は、限定することなく、凸版で印刷されたシリアル番号(2)、セキュリティスレッド(3)、蛍光又はリン光パッチ(4)、凹版セキュリティフィーチャ(5)、透明窓(6)、数字(7)、蛍光セキュリティ繊維(8)、及び印刷発光セキュリティ要素(9)を含む。蛍光繊維(8)は、その調製の間に基材に包含され、蛍光又はリン光パッチ(4)は、別個のプロセスで適用されてもよいか、又は後続のステップで印刷されてもよい。印刷発光セキュリティ要素(9)は、本明細書に記載され、且つ本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク、及び本明細書に記載される1種又は複数の発光材料を含む組成物に基づいてもよく、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクから作製される背景デザインと同じ印刷ステップの間にオフセット印刷されてもよい。
【0094】
[086]一実施形態によると、本明細書に記載され、且つ本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクから作製される硬化インク層からなる1つ又は複数の印刷フィーチャは、約50%以上、好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約70%以上の全表面(すなわち、本明細書に記載される1つ又は複数の印刷フィーチャのすべての表面の積算)を有し、%は前記1つ又は複数の印刷フィーチャが存在する基材の全表面に基づく。1つ又は複数の印刷フィーチャは、本明細書に記載される基材の片側又は両側に適用されてもよい。基材の両側が本明細書に記載される1つ又は複数の印刷フィーチャを含む場合、本明細書に記載されるパーセント、すなわち約50%以上、好ましくは約60%以上、さらにより好ましくは約70%以上は、両側で同じであってもよいか、又は両側で異なってもよい。
【0095】
[087]基材の典型的な例は、限定することなく、繊維系基材、好ましくはセルロース繊維をベースとする基材、例えば紙、紙含有材料、ポリマー系基材、複合材料(例えば、紙層とポリマーフィルムの積層によって得られた基材)、金属又は金属化材料、ガラス、セラミック、並びにそれらの組合せを含む。ポリマー系基材の典型的な例は、エチレン又はプロピレン系のホモ及びコポリマー、例えばポリプロピレン(PP)及びポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)及びポリエチレンテレフタレート(PET)から作製された基材である。当業者に公知のように、ポリマー系基材は蛍光を示さない。複合材料の典型的な例は、限定することなく、前述のものなどのポリマーを含む、少なくとも1つの紙層と少なくとも1つのポリマーフィルムとの多層構造(例えば積層体)、並びにセルロース繊維と合成ポリマー繊維との混合物をベースとする紙様基材を含む。1つの好ましい実施形態では、フィーチャは、オフセット用紙及び信用発行紙(fiduciary paper)から選択される基材に印刷される。オフセット用紙は、寸法安定性、耐湾曲性、高表面強度、異物のない表面、及び高レベルの耐透湿性を含む、用紙をオフセット印刷に好適にする特性を有する木材パルプセルロースから製造される。典型的に、オフセット用紙の坪量は、30g/m~250g/m、好ましくは50g/m~150g/mのものである。
【0096】
[088]信用発行紙(当技術分野でセキュリティ紙とも称される)は、リグニンを含まない綿パルプセルロースから製造される。オフセット用紙と比較して、信用発行紙のさらなる特性は、機械耐性の増強(特に引き裂き及び磨耗に対する耐性)、汚れに対する耐性、並びに微生物(細菌、ウイルス、及び菌類)による分解に対する処理を含む。信用発行紙の機械耐性は、合成繊維を紙(綿ベース)パルプに導入することによって増強することができ、防汚性能は、銀行券のフィーチャを印刷する又は適用する前に防汚ポリマー層をコーティングする又は印刷することによって向上させることができる。通常、殺生物剤による処理は防汚処理と組み合わされる。典型的に、信用発行紙は、50~150g/m、好ましくは80~120g/mの坪量を有する。
【0097】
[089]さらに、オフセット用紙の代わりに信用発行紙を使用すると、偽造防止保護の追加要素が加えられ、これは信用発行紙が、セキュリティ紙の製造業者しか入手できない特殊な製紙機械で製造され、信用発行紙が偽造者に流用されるのを防止するなど、サプライチェーンが保護されているからである。普通筆記用紙とは対照的に、信用発行紙は光学増白剤を含有しない。前記光学増白剤は、普通筆記用紙にさらに白くさらに明るい外観を付与するために使用されるが、それと同時にUV光への曝露時に強い青色蛍光を示す一方、信用発行紙は、同様の照射下で比較的暗いままである。光学増白剤を含まない用紙は、セキュリティの領域外で入手可能ではなく、これは、UV光下での明るい青色蛍光が既に偽造の兆候であることを意味する(Optical Document Security、第3版、2005、Artech House、3.2.5 p.71)。
【0098】
[090]一実施形態によると、本明細書に記載される基材は、非蛍光基材、好ましくは非蛍光ポリマー系基材、又は光学増白剤を欠く信用発行紙である。
【0099】
[091]用語「セキュリティ文書」は、偽造又は違法複製が企てられる可能性が潜在的に高くなるような価値を有し、1つ又は複数のフィーチャによって偽造又は詐欺から通常保護されている文書を指す。セキュリティ文書の例は、限定することなく有価文書及び有価商品を含む。有価文書の典型的な例は、限定することなく銀行券、権利書、チケット、小切手、バウチャー、収入印紙及び納税ラベル、協定書など、身分証明書、例えばパスポート、IDカード、ビザ、銀行カード、クレジットカード、トランザクションカード、入構証、セキュリティバッジ、入場チケット、輸送機関チケット又は権利書などを含む。
【0100】
[092]用語「有価商品」は、特に医薬品、化粧品、電子機器又は食品産業のための包装材料であって、包装の内容物が真正である、例えば真正の薬物であることを保証するための1つ又は複数のフィーチャを含み得る包装材料を指す。これらの包装材料の例は、限定することなく、ブランド認証ラベル、タックスバンデロール、タンパーエビデンスラベル及びシールなどのラベルを含む。本明細書に記載のセキュリティ文書は、本明細書に記載の印刷フィーチャの下又は上のいずれかに1種若しくは複数の追加の層又はコーティングをさらに含むことができる。例えば、基材材料、表面凹凸、又は表面不均質性のために、基材と本明細書に記載の、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクから作製される硬化インク層からなる印刷フィーチャとの間の接着が不十分である場合、当業者に公知のように、基材と印刷フィーチャとの間に追加の層、コーティング又は下塗りを適用することができる。
【0101】
[093]セキュリティ文書の偽造及び違法複製に対するセキュリティレベル及び耐性をさらに増大させる目的で、基材は、透かし、セキュリティスレッド、繊維、プランシェット、発光化合物、ウィンドウ、箔、デカール、コーティング及びそれらの組合せを含有することができる。
【0102】
[094]本明細書に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが塗布される本明細書に記載の基材は、セキュリティ文書の固有の部分からなってもよいか、或いは本明細書に記載のUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクは、例えばセキュリティスレッド、セキュリティストライプ、箔、デカール又はラベルなどの補助基材に塗布され、結果として別個のステップでセキュリティ文書に移される。
【0103】
[095]また、本明細書に記載されるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを生成するための本明細書に記載される1種又は複数の光開始剤の使用であって、前記UV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクが、セキュリティ文書に1つ又は複数のフィーチャを印刷するのに好適である、使用が本明細書に記載される。
【実施例
【0104】
[096]ここで、非限定的な例を参照して本発明をより詳細に記載する。以下の実施例は、UV-LEDラジカル硬化性印刷インクの調製、並びに本発明及び比較データによる光開始剤及びアミノ含有化合物の使用に関するさらなる詳細を提供する。
【0105】
光開始剤及びアミノ含有化合物
【0106】
【表1】
【0107】
【表2】
【0108】
光開始剤P1~P3中のチオキサントン部分の濃度:ED-XRFによる決定
[097]チオキサントン部分のモル濃度を、硫黄原子の信号を使用してED-XRF(Spectro XEPOS)によって決定した。表1Aの光開始剤P1~P3のそれぞれについて、対応する光開始剤のアセトニトリル(Sigma-Aldrich、99.9%)中2mg/mLの3種の50mL溶液を調製した。各溶液について、5mLの試料を収集し、増加する量のGenocureITX(Rahn、分析証明書によると99.3%)のアセトニトリル中5mg/mL溶液を添加した。各試料をアセトニトリルで10mLにした。以下の溶液が得られ、表1Bに示される。
【0109】
【表3】
【0110】
[098]各試料を独立的にED-XRF測定(Spectro XEPOS)に供し、スペクトルを記録した。ブランク測定(純粋なアセトニトリル)をすべてのスペクトルから推定した。各一連の試料について(三重測定)、2.31keVで測定された蛍光強度(S Kα1 ピーク)が添加されたITXの濃度の関数として表示され、線形回帰が実施された。回帰直線のx切片(原点における横座標)は、各試料中にレベル0で存在するチオキサントン部分の濃度を示した。平均値(3回の測定の平均)を表1Aに示す。対応する平均値を使用し、mmol/g単位の光開始剤P1~P3のそれぞれにおけるチオキサントン濃度を決定し、実施例及び比較例の調製のために添加される光開始剤P1~P3の量を計算した。
【0111】
【表4】
【0112】
アミノ含有化合物S1~S3の窒素濃度:電位差滴定による決定
[099]表1Cのアミノ含有化合物S1~S3の窒素モル濃度を、過塩素酸を用いて電位差滴定によって得た。各化合物S1~S3について、ジクロロメタン(Acros、99.99%)中3mg/mLで3種の50mL試料を調製した。各試料5mLをメスフラスコに移し、ジクロロメタンで50mLにした。氷酢酸(Sigma-Aldrich、99%)9部と過塩素酸溶液(Sigma-Aldrich、氷酢酸中0.1mol/L)1部を混合することによって調製された、氷酢酸中0.01Mの過塩素酸溶液を用いてこれらの溶液を滴定した。滴定は、導電率計826及び非水性溶液(エタノール中飽和LiCl)用Solvotrode電極を備えたMetrohm Titrando 905を使用して実施した。変曲点を図式的に決定した。3回の測定の平均値(mmol/g単位)を表1Cに示す。
【0113】
重量平均分子量測定
[0100]光開始剤P1及びP3並びにアミノ含有化合物S2及びS3の重量平均分子量は、以下に記載される方法(OECD試験法118に基づく)に従ってGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によって独立的に決定した:Malvern Viskotek GPCmaxを使用した。デバイスは、アイソクラティックポンプ、脱ガス器、オートサンプラー及び示差屈折計、粘度計及び二重角度光散乱検出器(7°及び90°)を含む三重検出器TDA302を備えた。この特定の測定には、示差屈折計のみを使用した。検量線(log(分子質量)=f(保持容量))を、6種のポリスチレン標準(472~512000g/molの範囲の分子質量を有する)を使用して作成した。2つのカラムViskotek TM4008L(カラム長30.0cm、内径8.0mm)をUV-LEDに直列に連結した。固定相は、粒径6μm及び最大孔径3000Åのスチレン-ジビニルベンゼンコポリマーから作製された。測定中、温度を35℃に固定した。分析試料は、THF(Acros、99.9%、無水)に溶解された10mg/mLの調査化合物を含有し、1mL/分の速度で注入された。化合物の分子質量は、以下の式を使用して、95%の信頼レベル及び同じ溶液の3回の測定の平均を用いて、ポリスチレン換算重量平均分子量(PSeqMW)としてクロマトグラムから計算された:
【0114】
【数2】

(式中、Hは保持容量Vのベースラインからの検出器信号のレベルであり、Mは保持容量Vにおける化合物画分の分子量であり、nはデータ点の数である)。ソフトウェアとして、デバイスに備え付けられたOmnisec5.12が使用された。
【0115】
着色顔料を含むUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク及びその得られた印刷フィーチャ(C1~C4及びE1~E2)
【0116】
【表5】

【表6】
【0117】
着色顔料及び発光顔料を含むUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク並びにその得られた印刷フィーチャ(C5~C8及びE3~E4)
【0118】
【表7】

【表8】
【0119】
[0101]表2AのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを調製し、前記インクが印刷された層を硬化する光開始剤P1~P4(表1A)及びアミン相乗剤S1~S3(表1C)の効率を評定し、それらの印刷及び硬化された層の残留蛍光に対する影響を評価した。
【0120】
[0102]表2BのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを調製し、前記インクが印刷された層を硬化する光開始剤P1、P3及びP4(表1A)及びアミン相乗剤S2(表1C)の効率を評定し、さらに蛍光顔料(RADGLO VSFX02 UV GREEN)又はリン光顔料(LUMILUX GREEN CD 140 FS 52155(Honeywell))のいずれかを含有する、印刷及び硬化された層の測定された発光に対するそれらの影響を評価した。目的は、光開始剤(P1、P3及びP4、表1A)の存在による印刷及び硬化された層の残留蛍光が、発光顔料の発光信号に悪影響を及ぼすかどうかを確認することであった。
【0121】
[0103]表2A~BのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを、光開始剤P1~P4を除き、表2A~Bに列挙した材料を室温でスピードミキサー(SpeedMixer)(商標)(Hauschild EngineeringのDAC 150 SP CM31)で混合することによって独立的に調製した。得られたペーストをSDY300三本ロールミルにおいて3パス(第1パスは圧力5bar、第2及び第3パスは圧力11bar)で独立的に粉砕した。
【0122】
[0104]そのようにして得られたペーストに光開始剤P1~P4を独立的に添加し、そのようにして得られたインクをスピードミキサー(商標)(Hauschild EngineeringのDAC 150 SP CM31)において2500rpmの速度で室温で3分間混合し、ローアー(Loher)ミル(荷重7.5kgで3×50回転)で粉砕し、スピードミキサー(商標)で3分間再度混合した。
【0123】
[0105]表2A~BのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクの粘度値を、40℃及び1000s-1で、Haake Roto-Visco RV1においてコーン2cm0.5°、線速度増加30秒間で0~1000sec-1で独立的に測定し、表2A~Bに示す。
【0124】
硬化効率
[0106]表2A~BのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを、プルフバウ(Prufbau)を使用して1000Nの圧力で、フィーチャ(4.5cm×23cm)として信用発行紙ポリマー基材(ガーディアン(Guardian)(商標)、CCL Secure)に独立的に印刷した(T=22℃、相対湿度=54%)。
【0125】
[0107]得られた印刷層を、UV-LED-UVランプ(LUV3 385nm、IST)を用いて線量約200mJ/cmで独立的に硬化した。照射線量を以下の詳細によって決定した:
照射源(LUV3 385nm、IST)をオンにした。パワーパック(登録商標)II放射計(EIT,Inc.、米国)を、照射されるべき試料を受容するよう設計された照射機器のコンベヤベルトに配置した。4つのフィルター(UVA、UVB、UVC及びUVA2)を備えたパワーパック(登録商標)を、異なるベルト速度で照射線源によって照射した。UVA2領域で得られた線量のみが保持された。約200mJ/cmの照射を得るためのコンベヤベルト速度は、約36m/分と決定された(2回の測定値の平均)。
【0126】
[0108]UV-LED-UVランプ(LUV3 385nm、IST)を使用し、印刷フィーチャを36m/分(約200mJ/cmの線量に対応する)で硬化した。印刷及び硬化前後の基材を秤量することにより、印刷及び硬化された層の正確な量を試料毎に計算した。すべての印刷フィーチャの印刷及び硬化された層の重量は、1g/m±3%であった。
【0127】
[0109]各試料に関して、硬化試験は、印刷及び硬化された層を担持する基材の表側に1枚のブランク基材(すなわち、未印刷基材)を配置することによって、且つそのように形成したアセンブリを、ORMAG Intaglio Proof Pressを用いて65℃で3.4barの対圧に供することによって行った。印刷及び硬化された層を担持する基材とブランク基材とを分離し、インク転写(裏移り)についてブランク基材の光学濃度を確認した。硬化挙動の2つの可能な極値を規定するために、2つのブランクを調製した。最大効率(硬化効率100%)を規定する第1のブランクは、未印刷基材の試料の光学濃度を測定することによって得られ、一方で最低効率(硬化効率0%)は、印刷直後の全く硬化されていないインク層(UV-LED-UVランプ下の通過なし)の対圧によって得られる試料の光学濃度を測定することによって規定された。最大光学濃度(硬化効率0%に対応する)をODmaxと定義し、一方で最低光学濃度(硬化効率100%に対応する)をODminと定義した。実際の硬化効率(%単位の各試料についての硬化効率)をODと定義し、
【0128】
【数3】

として計算した。
【0129】
[0110]表3は、表2A~BのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクによって得られた印刷層の硬化効率の結果を示す。
【0130】
【表9】
【0131】
[0111]表3に示されるように、光開始剤としてホスフィンオキシドを含む比較オフセット印刷インク4、7及び8(C4、C7及びC8)は、極めて不良の硬化性能に悩まされた。
【0132】
[0112]表3に示されるように、式(I)のものであり、900g/mol eq PSより高い重量平均分子量(MW)を有するチオキサントン光開始剤を含むが、アミノ含有化合物として400g/mol eq PSより低い分子量(特に、供給業者によって提供されるように277.4の分子量)を有するベンゾエート化合物を含む比較オフセット印刷インク3(C3)は、中程度の硬化性能に悩まされた。
【0133】
[0113]表3に示されるように、比較オフセット印刷インク1、2、5及び6(C1、C2、C5及びC6)、すなわち式(I)とは異なり、900g/mol eq PSより低い重量平均分子量(MW)を有する式(I)のチオキサントン光開始剤を含み、アミノ含有化合物として400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約4000g/mol eq PS)を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート化合物を含むインクは、中程度又は良好な硬化性能を示した一方、本発明によるオフセット印刷インク(E1~E4)、すなわち式(I)のものであり、900g/mol eq PSより高い重量平均分子量(MW)を有するチオキサントン光開始剤を含み、アミノ含有化合物として400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約4000g/mol eq PS)を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート化合物、又はアミノ含有化合物として400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約1000g/mol eq PS)を有するベンゾエート化合物のいずれかを含むインクは、良好な硬化性能を示した。
【0134】
蛍光測定
[0114]表2A~BのUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インクを、プルフバウにおいて800Nで、印刷フィーチャ(4.5cm×23cm)として信用発行紙綿基材(LouisenthalからのBNP紙、100g/m)に独立的に印刷した。得られた印刷層を、200mJ/cm(36m/分)の線量でUV-LED-UVランプ(LUV3 385nm、IST)によって独立的に硬化した。印刷及び硬化前後の基材を秤量することにより、印刷及び硬化された層の正確な量を試料毎に計算した。すべての印刷フィーチャの印刷及び硬化された層の重量は、2g/m±3%であった。
【0135】
[0115]表2A~Bのインクから作製された印刷及び硬化された層の蛍光を、以下に記載される方法を使用して評定した。蛍光試験の結果を表4A~Bに提示する。
【0136】
表側の蛍光(C1~C8及びE1~E4)
[0116]印刷及び硬化された層の残留蛍光を、Fluorolog II(Spex)デバイスを使用し、254nm及び365nmで以下のパラメータを使用して評定した:
- 検出器:R928/0115/0381
- 角度:30°
- 位置:表面
- 励起スリット:2nm(254nm)及び1.2nm(365nm)
- カバーされる波長:400~700nm(増分1nm)
- 検出スリット:1nm(254nm)及び0.6nm(365nm)。
【0137】
[0117]1枚のブランク基材(すなわち、未印刷基材)の蛍光スペクトルをまず測定した。印刷及び硬化された層の蛍光スペクトルを次に記録した。得られたスペクトルから蛍光の最大強度を決定し、同じ波長でのブランク基材の蛍光を推定し、得られた値を対応する波長とともに報告した。これは、表側(印刷側)の最大蛍光に対応する。
【0138】
[0118]表2Bのインクから作製された印刷及び硬化された層の表側の発光を評定し、印刷及び硬化された層の残留蛍光の、添加された発光化合物の固有の発光強度に対する影響を決定した。CAMAG UV Cabinet4(それぞれ8Wの254nm及び366nmの2つのUV管を備える)を使用し、印刷及び硬化されたセキュリティフィーチャの認識される色を肉眼とともに観察した。測定された発光強度及び観察された色を表4Bに報告する。
裏側の蛍光(C1~C4及びE1~E2)
[0119]印刷及び硬化された層のそれぞれを、印刷面(表4における「表側」面)がブランク基材と接触するように、1枚の等しいサイズのブランク基材(すなわち、未印刷基材)に配置した。両方を2つのガラスプレート(20cm×15cm×3mm)の間に維持し、このアセンブリを60℃及び相対湿度50%のオーブンに72時間水平に入れた。次に、2回の蛍光測定を本明細書に記載のように実施した:
印刷層の裏側の蛍光:結果(裏側の異なる3箇所での3回の測定の平均)を表4において「印刷試料の裏」と示す;
未印刷試料の裏側の蛍光:結果(裏側の異なる3箇所での3回の測定の平均)を表4において「未印刷試料の裏」と示し、これは、1枚のシートの印刷層からその上に配置されたシートの裏側への蛍光化合物の移動を表す。
【0139】
[0120]すべての場合において、ブランク基材(すなわち、未印刷基材)の蛍光スペクトルをまず測定し、印刷及び硬化された層の蛍光から結果を推定した。
【0140】
【表10】
【0141】
【表11】
【0142】
[0121]表4Aに示されるように、光開始剤としてホスフィンオキシドを含む比較オフセット印刷インク4(C4)から作製された印刷フィーチャは、表側及び裏側で非常に低い蛍光を示した。
【0143】
[0122]表4Aに示されるように、式(I)のチオキサントン光開始剤を含むが、アミノ含有化合物として400g/mol eq PSより低い分子量(特に、供給業者によって提供されるように277.4の分子量)を有するベンゾエート化合物を含む比較オフセット印刷インク3(C3)から作製された印刷フィーチャは、低い蛍光を示した。
【0144】
[0123]表4Aに示されるように、比較オフセット印刷インク1及び2(C1及びC2)、すなわち式(I)とは異なり、900g/mol eq PSより低い重量平均分子量(MW)を有する式(I)のチオキサントン光開始剤を含み、アミノ含有化合物として400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約4000g/mol eq PS)を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート化合物を含むインクから作製された印刷フィーチャは、表側で強い蛍光を示すため好適ではない。表4Aに示されるように、比較オフセット印刷インク2(C2)、すなわち式(I)とは異なり、900g/mol eq PSより低い重量平均分子量(MW)を有する式(I)のチオキサントン光開始剤を含み、アミノ含有化合物として400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約4000g/mol eq PS)を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート化合物を含むインクから作製された印刷フィーチャは、印刷フィーチャの表側及び裏側だけでなく、ブランク基材(未印刷基材)の裏側でも強い蛍光を示した。
【0145】
[0124]表4Aに示されるように、本発明によるオフセット印刷インク(E1及びE2)、すなわち式(I)のものであり、900g/mol eq PSより高い重量平均分子量(MW)を有するチオキサントン光開始剤を含み、アミノ含有化合物として400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約4000g/mol eq PS)を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート化合物、又はアミノ含有化合物として400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約1000g/mol eq PS)を有するベンゾエート化合物のいずれかを含むインクから作製された印刷フィーチャは、表側及び裏側で低蛍光を示した。
【0146】
[0125]表3及び4Aに示されるように、本発明によるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク(E1及びE2)は、表側と裏側で良好な硬化性能を併せ持ち、低蛍光を示すフィーチャの生成を可能にした一方で、比較インクは極めて不良若しくは不良の硬化性能に悩まされたか、又は蛍光に悩まされるフィーチャをもたらすかのいずれかであった。
【0147】
[0126]表4Bに示されるように、比較オフセット印刷インクC7及びC8(ホスフィンオキシド光開始剤を含有する)から作製された発光印刷フィーチャは、添加された発光化合物(C7:蛍光顔料;C8:リン光顔料)の強い緑色発光信号を示した。言い換えると、ホスフィンオキシド光開始剤を含有するインクから得られる印刷及び硬化された層の青色の残留蛍光は、添加された発光顔料の信号に悪影響を及ぼさなかった。
【0148】
[0127]表4Bに示されるように、比較オフセット印刷インクC5及びC6(式(I)とは異なる構造を有し、900g/mol eq PSより低い重量平均分子量(MW)を有するチオキサントンを含み、400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約4000g/mol eq PS)を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート化合物を含む)から作製された発光印刷フィーチャは、印刷及び硬化された層の強い残留蛍光に本質的に由来する青色発光信号を示した。言い換えると、添加された発光化合物(C5:蛍光顔料;C6:リン光顔料)に由来する緑色発光信号は、印刷及び硬化された層の強い残留蛍光によって隠され、添加された発光化合物の発光信号は検出が非常に困難であった。
【0149】
[0128]表4Bに示されるように、本発明によるオフセット印刷インク(E3及びE4)、すなわち式(I)のものであり、900g/mol eq PSより低い重量平均分子量(MW)を有するチオキサントン光開始剤を含み、400g/mol eq PSより高い分子量(特に、約4000g/mol eq PS)を有するアミン変性ポリエーテル系アクリレート化合物を含むインクから作製された発光印刷フィーチャは、添加された発光化合物(E3:蛍光顔料;E4:リン光顔料)の強い緑色発光信号を示した。言い換えると、式(I)による構造を有し、900g/mol eq PSより低い重量平均分子量(MW)を有するチオキサントン光開始剤を含むインクから得られる印刷及び硬化された層の青色の残留蛍光は、添加された発光顔料の信号に悪影響を及ぼさなかった。
【0150】
[0129]表3及び4Bに示されるように、本発明によるUV-LEDラジカル硬化性オフセット印刷インク(E3及びE4)は、良好な硬化性能を併せ持ち、添加された発光(蛍光又はリン光)顔料からの強い発光信号を示す発光セキュリティフィーチャの生成を可能にした一方で、比較インク(C5~C8)は不良な硬化性能に悩まされたか、又は印刷及び硬化された層の強い残留蛍光に悩まされ、添加された発光顔料の固有の発光信号の正確な検出が非常に困難な発光セキュリティフィーチャをもたらしたかのいずれかであった。
図1