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特許7620644電磁波シールドフィルム及びシールドプリント配線板
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】電磁波シールドフィルム及びシールドプリント配線板
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20250116BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20250116BHJP
   B32B 15/092 20060101ALN20250116BHJP
【FI】
H05K9/00 R
H05K9/00 W
B32B15/08 D
B32B15/092
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022569964
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2021045730
(87)【国際公開番号】W WO2022131183
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020206824
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108742
【氏名又は名称】タツタ電線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】上農 憲治
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/183632(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/116409(WO,A1)
【文献】特開2016-167593(JP,A)
【文献】国際公開第2020/241835(WO,A1)
【文献】特開2018-190973(JP,A)
【文献】特開2018-061011(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
B32B 7/025
B32B 15/08
B32B 15/092
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
等方導電性接着剤層と、
絶縁層と、
金属層とが、この順に直接積層されており、
前記絶縁層と、前記金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満であることを特徴とする電磁波シールドフィルム。
【請求項2】
前記金属層の厚みが0.1~8μmである請求項1に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項3】
前記絶縁層の厚みが0.5~10μmである請求項1又は2に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項4】
前記金属層は、銅、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1~3のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項5】
前記金属層には貫通孔が形成されている請求項1~4のいずれかに記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項6】
前記貫通孔の一つあたりの開口面積は、10~80000μmである請求項5に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項7】
前記貫通孔の開口率は、0.05~30%である請求項5又は6に記載の電磁波シールドフィルム。
【請求項8】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの上に配置されたグランド回路を含むプリント回路と、前記プリント回路を覆うカバーレイとからなるプリント配線板と、
等方導電性接着剤層と、絶縁層と、金属層とが、この順に直接積層されており、前記絶縁層と、前記金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板であって、
前記等方導電性接着剤層が前記カバーレイに接触するように、前記電磁波シールドフィルムは、前記プリント配線板に配置されていることを特徴とするシールドプリント配線板。
【請求項9】
前記カバーレイには、前記グランド回路を露出する開口部が形成されており、
前記開口部には、前記等方導電性接着剤層と、前記グランド回路とが接触するように前記等方導電性接着剤層が充填されている請求項8に記載のシールドプリント配線板。
【請求項10】
外部グランドに前記金属層が電気的に接続している請求項8又は9に記載のシールドプリント配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールドフィルム及びシールドプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器であるスマートフォン、タブレット端末等には、内部から発生する電磁波や外部から侵入する電磁波を遮蔽するために、電磁波シールドフィルムを貼り付けた、シールド付きフレキシブルプリント配線板(以下、「シールドプリント配線板」とも記載する)が用いられている。電磁波シールドフィルムに用いるシールド層は、蒸着、スパッタ、めっき等で形成された薄膜の金属層や、導電性フィラーを高充填配合した導電性ペースト等が形成されている。今後5G等が本格的に広がるようになれば、大容量のデータを通信するために、高周波、高速伝送化が進み、電子機器のノイズ対策はさらに必要となる。
【0003】
このような電磁波シールドフィルムとして、特許文献1には、ポリマーフィルムの表面に、厚さが1~8μmであり、かつNi、Fe、Co、Ti、Zn、Cr、Sn、Cuおよびこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる群から選ばれる1種からなるシールド層が、スパッタリング法、蒸着法またはめっき法のいずれかの方法により1層または2層以上形成されており、ポリマーフィルムの表面とシールド層との間に、厚さが1μm以下であり、かつNi、Co、Zn、Fe、Cu、Ti、Cr、これらの金属の酸化物、窒化物およびこれらの金属を少なくとも1種含む合金からなる群から選ばれる1種からなる下地層が、スパッタリング法または蒸着法のいずれかの方法により1層または2層以上形成されている電磁波シールド材(電磁波シールドフィルム)が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ABS樹脂、PCおよびABS/PC系ポリマーアロイのうちのいずれかで成形された成形品に施す電磁波シールド膜であり、Cuの第1層、およびSn-Cr被膜の第2層からなることを特徴とする電磁波シールド膜(電磁波シールドフィルム)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-128158号公報
【文献】特許第3826756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の電磁波シールドフィルムの場合、複数の金属層同士が接触する状態で積層されているため、シールド層間の密着性が充分でなく、繰り返し折り曲げるとクラックを生じやすいという問題があった。
【0007】
本発明は上記問題を解決するためになされた発明であり、本発明の目的は、シールド層の密着強度が高く、耐折り曲げ性に優れた電磁波シールドフィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の電磁波シールドフィルムは、等方導電性接着剤層と、絶縁層と、金属層とが、順に積層されており、上記絶縁層と、上記金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満であることを特徴とする。
【0009】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、等方導電性接着剤層及び金属層の両方が電磁波をシールドする効果を有している。
本発明の電磁波シールドフィルムでは、等方導電性接着剤層及び金属層の間には、絶縁層が形成されている。そのため、金属層が剥離しにくい。また、本発明の電磁波シールドフィルムを繰り返し折り曲げたとしても、金属層にクラックが生じにくい。
【0010】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記絶縁層と、上記金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である。
絶縁層と、金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満であると、金属層が剥離しにくくなり、電磁波シールドフィルムを繰り返し折り曲げたとしても金属層にクラックが生じにくくなる。
【0011】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記金属層の厚みが0.1~8μmであることが好ましい。
上記金属層の厚みが、0.1μm未満であると、金属層の強度が弱くなり破損しやすくなる。
上記金属層の厚みが8μmを超えると、金属層の柔軟性が低下するので、繰り返し折り曲げた際に、金属層にクラックが生じやすくなる。
【0012】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記絶縁層の厚みが0.5~10μmであることが好ましい。
絶縁層の厚みが0.5μm未満であると、絶縁層の量が少なくなるので金属層が剥離しやすくなる。
絶縁層の厚みが10μmを超えると、絶縁層が厚いため、電磁波シールドフィルムを折り曲げた際に、金属層に応力がかかりやすくなる。そのため、繰り返し折り曲げた際に、金属層にクラックが生じやすくなる。
【0013】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記金属層は、銅、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
これらの金属は安価であり、金属層がこれらの金属からなると優れた電磁波シールド性を示す。
【0014】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記金属層には貫通孔が形成されていることが好ましい。
電磁波シールドフィルムは、プリント配線板に配置されることになる。この際、電磁波シールドフィルムは熱圧着される。この際、絶縁層と金属層との間に揮発成分が生じることがある。
金属層に貫通孔が形成されていない場合、この揮発成分が熱により膨張し、金属層と絶縁層とが剥離することがある。しかし、金属層に貫通孔が形成されていると、揮発成分が貫通孔を通過することができるので、金属層と絶縁層とが剥離することを防ぐことができる。
【0015】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記貫通孔の一つあたりの開口面積は、10~80000μmであることが好ましい。
金属層に形成された貫通孔の開口面積が上記範囲であれば、耐折り曲げ性が充分であり、かつ、金属層と絶縁層との間に揮発成分が溜まることを防止することができる。
【0016】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記貫通孔の開口率は、0.05~30%であることが好ましい。
金属層に形成された貫通孔の開口率が上記範囲であれば、耐折り曲げ性が充分であり、かつ、金属層と絶縁層との間に揮発成分が溜まることを防止することができる。
【0017】
本発明のシールドプリント配線板は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの上に配置されたグランド回路を含むプリント回路と、上記プリント回路を覆うカバーレイとからなるプリント配線板と、等方導電性接着剤層と、絶縁層と、金属層とが、順に積層されており、上記絶縁層と、上記金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である電磁波シールドフィルムを備えるシールドプリント配線板であって、上記等方導電性接着剤層が上記カバーレイに接触するように、上記電磁波シールドフィルムは、上記プリント配線板に配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明のシールドプリント配線板は、等方導電性接着剤層と、絶縁層と、金属層とが、順に積層されており、絶縁層と、金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である電磁波シールドフィルムを備える。すなわち、本発明のシールドプリント配線板は、上記本発明の電磁波シールドフィルムを備える。
そのため、本発明のシールドプリント配線板では、金属層が剥離しにくく、シールドプリント配線板を繰り返し折り曲げたとしても、金属層にクラックが生じにくい。
【0019】
本発明のシールドプリント配線板では、上記カバーレイには、上記グランド回路を露出する開口部が形成されており、上記開口部には、上記等方導電性接着剤層と、上記グランド回路とが接触するように上記等方導電性接着剤層が充填されていることが好ましい。
このようなシールドプリント配線板では、等方導電性接着剤層とグランド回路とが充分に接触し電気的に接続される。本発明のシールドプリント配線板では、等方導電性接着剤層が電磁波をシールドする機能を有するので、電磁波シールド効果が高くなる。
【0020】
本発明のシールドプリント配線板では、外部グランドに上記金属層が電気的に接続している。
本発明のシールドプリント配線板では金属層が電磁波をシールドする機能を有するので、外部グランドに金属層が電気的に接続していると電磁波シールド効果が高くなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の電磁波シールドフィルムでは、等方導電性接着剤層及び金属層の間には、絶縁層が形成されている。そのため、金属層が剥離しにくい。また、本発明の電磁波シールドフィルムを繰り返し折り曲げたとしても、金属層にクラックが生じにくい。
また、本発明の電磁波シールドフィルムでは、上記絶縁層と、上記金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である。
絶縁層と、金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満であると、金属層が剥離しにくくなり、電磁波シールドフィルムを繰り返し折り曲げたとしても金属層にクラックが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図2A図2Aは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法における、金属層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図2B図2Bは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法における、絶縁層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図2C図2Cは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法における、等方導電性接着剤層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
図3図3は、本発明のシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図4A図4Aは、本発明のシールドプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。
図4B図4Bは、本発明のシールドプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。
図4C図4Cは、本発明のシールドプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。
図4D図4Dは、本発明のシールドプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の電磁波シールドフィルムについて具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0024】
図1は、本発明の電磁波シールドフィルムの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示す電磁波シールドフィルム10では、等方導電性接着剤層20と、絶縁層30と、金属層40とが、順に積層されている。
また、電磁波シールドフィルム10では、絶縁層30と、金属層40との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である。
【0025】
電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に配置されることになる。
電磁波シールドフィルム10では、等方導電性接着剤層20及び金属層40の両方が電磁波をシールドする効果を有しているので、電磁波シールドフィルム10が配置されたシールドプリント配線板では、等方導電性接着剤層20及び金属層40により電磁波をシールドすることができる。
【0026】
電磁波シールドフィルム10では、等方導電性接着剤層20及び金属層40の間には、絶縁層30が形成されている。そのため、金属層40が剥離しにくい。また、電磁波シールドフィルム10を繰り返し折り曲げたとしても、金属層40にクラックが生じにくい。
【0027】
電磁波シールドフィルム10では、絶縁層30と、金属層40との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である。この厚みは、1~12μmであることが好ましい。
絶縁層30と、金属層40との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満であると、金属層40が剥離しにくくなり、電磁波シールドフィルム10を繰り返し折り曲げたとしても金属層40にクラックが生じにくくなる。
【0028】
以下、電磁波シールドフィルム10の各構成について説明する。
【0029】
(金属層)
金属層40を構成する材料は、電磁波をシールドすることができれば特に限定されないが、銅、銀及びアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
これらの金属は安価であり、金属層40がこれらの金属からなると優れた電磁波シールド性を示す。
【0030】
上記の通り電磁波シールドフィルム10では、金属層40の厚みは、0.1~8μmであることが好ましく、0.1~4μmであることがより好ましい。
上記金属層の厚みが、0.1μm未満であると、金属層の強度が弱くなり破損しやすくなる。
上記金属層の厚みが8μmを超えると、金属層の柔軟性が低下するので、繰り返し折り曲げた際に、金属層にクラックが生じやすくなる。
【0031】
金属層40は、蒸着金属層であってもよく、めっき金属層であってもよく、圧延又は電解金属箔からなっていてもよい。
【0032】
金属層40には貫通孔が形成されていることが好ましい。
電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に配置されることになる。この際、電磁波シールドフィルム10は熱圧着される。この際、絶縁層30と金属層40との間に揮発成分が生じることがある。
金属層40に貫通孔が形成されていない場合、この揮発成分が熱により膨張し、金属層40と絶縁層30とが剥離することがある。しかし、金属層40に貫通孔が形成されていると、揮発成分が貫通孔を通過することができるので、金属層40と絶縁層30とが剥離することを防ぐことができる。
【0033】
貫通孔の形状は、特に限定されないが、三角形や四角形等の多角形状であってもよく、円形状であってもよく、楕円形状であってもよい。
【0034】
金属層40では、上記貫通孔の一つあたりの開口面積は、10~80000μmであることが好ましく、10~8000μmであることがより好ましい。
金属層40に形成された貫通孔の開口面積が上記範囲であれば、耐折り曲げ性が充分であり、かつ、金属層40と絶縁層30との間に揮発成分が溜まることを防止することができる。
【0035】
金属層40では、貫通孔の開口率は、0.05~30%であることが好ましく、0.1~10%であることがより好ましい。
金属層40に形成された貫通孔の開口率が上記範囲であれば、耐折り曲げ性が充分であり、かつ、金属層40と絶縁層30との間に揮発成分が溜まることを防止することができる。
【0036】
金属層40において、貫通孔は等間隔で配置されていてもよい。貫通孔が等間隔で配置されている場合には、貫通孔は、一定のパターンで連続的に配置されていることが好ましい。
貫通孔の配列パターンとしては、金属層40を平面視した際に、正三角形を縦横に連続的に並べた平面において、貫通孔の中心が正三角形の頂点に位置するような配列パターンであってもよい。また、金属層40を平面視した際に、正方形を縦横に連続的に並べた平面において、貫通孔の中心が正方形の頂点に位置するような配列パターンであってもよい。また、金属層40を平面視した際に、貫通孔の中心が正六角形の頂点に位置するような配列パターンであってもよい。
【0037】
(絶縁層)
絶縁層30の材料は、金属層40を充分に接着できれば特に限定されないが、熱硬化性樹脂組成物であってもよく、熱可塑性樹脂組成物であってもよい。
なお、電磁波シールドフィルム10は、プリント配線板に配置する際に熱圧着されることになる。絶縁層30として熱硬化性樹脂組成物を用いるか、熱可塑性樹脂組成物を用いるかは、熱圧着をする際の条件により決定することが好ましい。
なお、耐熱性の観点から、絶縁層30は、熱硬化性樹脂組成物からなることが好ましい。
【0038】
熱可塑性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂としては、ウレタン樹脂、ポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂組成物等)、アクリル系樹脂等が挙げられる。
絶縁層30は、これらの樹脂のうち1種のみからなっていてもよく、2種以上からなっていてもよい。
【0039】
熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂等、ポリイミド系樹脂が挙げられる。
絶縁層30は、これらの樹脂のうち1種のみからなっていてもよく、2種以上からなっていてもよい。
【0040】
絶縁層30の厚みは0.5~10μmであることが好ましく、1~5μmであることがより好ましい。
絶縁層の厚みが0.5μm未満であると、絶縁層の量が少なくなるので金属層が剥離しやすくなる。
絶縁層の厚みが10μmを超えると、絶縁層が厚いため、電磁波シールドフィルムを折り曲げた際に、金属層に応力がかかりやすくなる。そのため、繰り返し折り曲げた際に、金属層にクラックが生じやすくなる。
【0041】
(等方導電性接着剤層)
等方導電性接着剤層20は、導電性粒子と樹脂組成物とからなる。
【0042】
導電性粒子としては、例えば、銀粒子、銅粒子、ニッケル粒子、アルミニウム粒子、銅に銀めっきを施した銀コート銅粒子等が挙げられる。
これらの導電性粒子は導電性に優れるので、等方導電性接着剤層20に好適に導電性を付与することができる。
これらの導電性粒子は、等方導電性接着剤層20に一種単独で含まれていてもよく、複数種類が含まれていてもよい。
【0043】
導電性粒子の大きさは特に限定されないが、平均粒子径(d50)が0.5~20μmであることが好ましい。
平均粒子径(d50)が0.5μm以上であると、導電性粒子の分散性が良好で凝集が抑制でき、また酸化されにくい。
平均粒子径(d50)が20μm以下であると、グランド回路との接続性が良好となる。
【0044】
等方導電性接着剤層20に含まれる導電性粒子の重量割合は、40~80wt%であることが好ましく、50~70wt%であることがより好ましい。
導電性粒子の重量割合が40wt%未満であると、等方導電性を得られにくくなる。
導電性粒子の重量割合が80wt%を超えると、等方導電性接着剤層が脆くなり、電磁波シールドフィルムが破損しやすくなる。
【0045】
樹脂組成物の材料としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、イミド系樹脂組成物、アミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等の熱可塑性樹脂組成物や、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物等の熱硬化性樹脂組成物等を用いることができる。
これらの中では、エポキシ系樹脂組成物であることが好ましい。
接着性樹脂組成物の材料はこれらの1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0046】
なお、等方導電性接着剤層20は、さらに、難燃剤、難燃助剤、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填材、粘度調節剤等を含んでいてもよい。
【0047】
等方導電性接着剤層20の厚みは、3~20μmであることが好ましく、5~10μmであることがより好ましい。
等方導電性接着剤層20の厚みが3μm以上であると、プリント配線板のカバーレイに設けられた開口部への充填性がより良好となる。
等方導電性接着剤層20の厚みが20μm以下であると、電磁波シールドフィルムの薄膜化の要求に応えることができる。
【0048】
電磁波シールドフィルム10では、金属層40の上にさらに保護層が形成されていてもよい。
保護層があることで、金属層40が外部からの衝撃等により損傷することを防止することができる。
なお、本発明の電磁波シールドフィルムでは、保護層が形成されていなくてもよい。
【0049】
保護層の材料は、絶縁性を有し、金属層40を保護できれば特に限定されないが、熱可塑性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物、活性エネルギー線硬化性組成物等から構成されていることが好ましい。
【0050】
保護層の熱可塑性樹脂組成物としては、特に限定されないが、スチレン系樹脂組成物、酢酸ビニル系樹脂組成物、ポリエステル系樹脂組成物、ポリエチレン系樹脂組成物、ポリプロピレン系樹脂組成物、ポリアミド系樹脂組成物、アクリル系樹脂組成物等が挙げられる。
【0051】
保護層の熱硬化性樹脂組成物としては、特に限定されないが、フェノール系樹脂組成物、エポキシ系樹脂組成物、ウレタン系樹脂組成物、メラミン系樹脂組成物、アルキッド系樹脂組成物、ポリイミド系樹脂組成物等が挙げられる。
【0052】
保護層の活性エネルギー線硬化性組成物としては、特に限定されないが、例えば、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物等が挙げられる。
【0053】
保護層は、1種単独の材料から構成されていてもよく、2種以上の材料から構成されていてもよい。
【0054】
保護層には、必要に応じて、硬化促進剤、粘着性付与剤、酸化防止剤、顔料、染料、可塑剤、紫外線吸収剤、消泡剤、レベリング剤、充填材、難燃剤、粘度調節剤、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよい。
【0055】
保護層の厚さは、特に限定されず、必要に応じて適宜設定することができるが、1~15μmであることが好ましく、3~10μmであることがより好ましい。
【0056】
次に、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法について説明する。
本発明の電磁波シールドフィルムを製造する場合、金属層形成工程、絶縁層形成工程及び等方導電性接着剤層形成工程を行う。
【0057】
図2Aは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法における、金属層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
まず、図2Aに示すように、剥離フィルム50を準備し、その上に金属層40を形成する。
剥離フィルム50の種類は特に限定されず、従来用いられている非シリコン系剥離フィルム、微粘着フィルム等を用いることができる。
金属層40を形成する方法は、特に限定されず、圧延又は電解金属箔を配置してもよく、蒸着により形成してもよく、めっきにより形成してもよい。
【0058】
図2Bは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法における、絶縁層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
次に、図2Bに示すように、金属層40の上に、絶縁層30を形成する。
絶縁層30を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、バーコーターにより塗布してもよい。
【0059】
図2Cは、本発明の電磁波シールドフィルムの製造方法における、等方導電性接着剤層形成工程の一例を模式的に示す工程図である。
次に、図2Cに示すように、絶縁層30の上に、等方導電性接着剤層20を形成する。
等方導電性接着剤層20を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、バーコーターにより塗布してもよい。
【0060】
以上の工程を経て製造された積層体を180℃反転すると、図1に示す電磁波シールドフィルム10となる。
なお、剥離フィルム50は使用時に剥がすことができる。
【0061】
次に電磁波シールドフィルム10を備えるシールドプリント配線板1について説明する。
シールドプリント配線板1は本発明のシールドプリント配線板の一例でもある。
【0062】
図3は、本発明のシールドプリント配線板の一例を模式的に示す断面図である。
図3に示すシールドプリント配線板1は、ベースフィルム61と、ベースフィルム61の上に配置されたグランド回路62aを含むプリント回路62と、プリント回路62を覆うカバーレイ63とからなるプリント配線板60と、電磁波シールドフィルム10とを備える。
シールドプリント配線板1では、等方導電性接着剤層20がカバーレイ63に接触するように、電磁波シールドフィルム10が、プリント配線板60に配置されている。
【0063】
シールドプリント配線板1は、電磁波シールドフィルム10を備えている。そのため、シールドプリント配線板1では、金属層40が剥離しにくく、シールドプリント配線板1を繰り返し折り曲げたとしても、金属層40にクラックが生じにくい。
【0064】
また、図3に示すシールドプリント配線板1では、カバーレイ63には、グランド回路62aを露出する開口部63aが形成されている。
開口部63aには、等方導電性接着剤層20と、グランド回路62aとが接触するように等方導電性接着剤層20が充填されている。
このようなシールドプリント配線板1、等方導電性接着剤層20とグランド回路62aとが充分に接触し電気的に接続される。シールドプリント配線板1では、等方導電性接着剤層20が電磁波をシールドする機能を有するので、電磁波シールド効果が高くなる。
【0065】
なお、本発明のシールドプリント配線板では、カバーレイに、グランド回路を露出する開口部が形成されていなくてもよい。
この場合、導電性バンプや、導電性ピンでグランド回路と等方導電性接着剤層とを電気的に接続してもよい。
【0066】
シールドプリント配線板1では、外部グランドGNDに金属層40が電気的に接続している。
シールドプリント配線板1では金属層40が電磁波をシールドする機能を有するので、外部グランドGNDに金属層40が電気的に接続していると電磁波シールド効果が高くなる。
【0067】
外部グランドGNDと金属層40を電気的に接続する方法は特に限定されないが、例えば導電性接着剤、導電性発泡体、導電性ガスケット等を用いて外部グランドGNDと金属層40とを電気的に接続することができる。
【0068】
また、本発明のシールドプリント配線板において、電磁波シールドフィルムの金属層の上にさらに保護層が形成されている場合について、図面を用いて説明する。
図4A図4Dは、本発明のシールドプリント配線板の別の一例を模式的に示す断面図である。
【0069】
図4Aに示すシールドプリント配線板1Aは、ベースフィルム61と、ベースフィルム61の上に配置されたグランド回路62aを含むプリント回路62と、プリント回路62を覆うカバーレイ63とからなるプリント配線板60と、電磁波シールドフィルム11とを備える。
電磁波シールドフィルム11では、等方導電性接着剤層20と、絶縁層30と、金属層40と、保護層70とが、順に積層されている。
シールドプリント配線板1Aでは、等方導電性接着剤層20がカバーレイ63に接触するように、電磁波シールドフィルム11が、プリント配線板60に配置されている。
【0070】
シールドプリント配線板1Aは、電磁波シールドフィルム11の保護層70の上にさらに平板状の導電性外部接続部材81と、導電性外部接続部材81の片面から突出する導電性突起82とを有するグランド部材80Aを備えている。
導電性突起82は保護層70を貫いて金属層40と接触しており、導電性外部接続部材81は外部グランドGNDと電気的に接続されている。
つまり、シールドプリント配線板1Aでは、グランド部材80Aを介して金属層40が外部グランドGNDと接続している。
【0071】
グランド部材80Aの導電性外部接続部材81及び導電性突起82は、導電性を有していれば、どのような材料から構成されていてもよく、例えば、銅、銀、アルミニウム等からなっていてもよい。
【0072】
グランド部材80Aにおいて、導電性外部接続部材81及び導電性突起82とは、半田や溶接により接続されていてもよい。また、導電性突起82はエッチングにより形成されており、導電性外部接続部材81及び導電性突起82は一体化されていてもよい。
【0073】
図4Bに示すシールドプリント配線板1Bは、ベースフィルム61と、ベースフィルム61の上に配置されたグランド回路62aを含むプリント回路62と、プリント回路62を覆うカバーレイ63とからなるプリント配線板60と、電磁波シールドフィルム11とを備える。
電磁波シールドフィルム11では、等方導電性接着剤層20と、絶縁層30と、金属層40と、保護層70とが、順に積層されている。
シールドプリント配線板1Bでは、等方導電性接着剤層20がカバーレイ63に接触するように、電磁波シールドフィルム11が、プリント配線板60に配置されている。
【0074】
シールドプリント配線板1Bは、電磁波シールドフィルム11の保護層70の上にさらに平板状の導電性外部接続部材81と、導電性外部接続部材81の片面に配置された導電性粒子83とを有するグランド部材80Bを備えている。
導電性粒子83は保護層70を貫いて金属層40と接触しており、導電性外部接続部材81は外部グランドGNDと電気的に接続されている。
つまり、シールドプリント配線板1Bでは、グランド部材80Bを介して金属層40が外部グランドGNDと接続している。
【0075】
グランド部材80Bの導電性外部接続部材81は、導電性を有していれば、どのような材料から構成されていてもよく、例えば、銅、銀、アルミニウム等からなっていてもよい。
また、グランド部材80Bの導電性粒子83は、導電性を有していれば、どのような材料から構成されていてもよく、例えば、銅、銀、アルミニウム等からなっていてもよい。
【0076】
グランド部材80Bにおいて、導電性粒子83は、導電性外部接続部材81に導電性接着剤により接着されていてもよい。
【0077】
図4Cに示すシールドプリント配線板1Cは、ベースフィルム61と、ベースフィルム61の上に配置されたグランド回路62aを含むプリント回路62と、プリント回路62を覆うカバーレイ63とからなるプリント配線板60と、電磁波シールドフィルム11とを備える。
電磁波シールドフィルム11では、等方導電性接着剤層20と、絶縁層30と、金属層40と、保護層70とが、順に積層されている。
シールドプリント配線板1Cでは、等方導電性接着剤層20がカバーレイ63に接触するように、電磁波シールドフィルム11が、プリント配線板60に配置されている。
【0078】
シールドプリント配線板1Cは、電磁波シールドフィルム11の保護層70の上にさらに導電性外部接続部材84からなるグランド部材80Cを備えている。
導電性外部接続部材84は、平板が複数回屈曲して形成された形状であり、突出した凸部84aを有する。
凸部84aは保護層70を貫いて金属層40と接触しており、導電性外部接続部材84は外部グランドGNDと電気的に接続されている。
つまり、シールドプリント配線板1Cでは、グランド部材80Cを介して金属層40が外部グランドGNDと接続している。
【0079】
グランド部材80Cの導電性外部接続部材84は、導電性を有していれば、どのような材料から構成されていてもよく、例えば、銅、ニッケル、銀、アルミニウム等からなっていてもよい。
【0080】
図4Dに示すシールドプリント配線板1Dは、ベースフィルム61と、ベースフィルム61の上に配置されたグランド回路62aを含むプリント回路62と、プリント回路62を覆うカバーレイ63とからなるプリント配線板60と、電磁波シールドフィルム12とを備える。
電磁波シールドフィルム12では、等方導電性接着剤層20と、絶縁層30と、金属層40と、保護層70とが、順に積層されている。
シールドプリント配線板1Dでは、等方導電性接着剤層20がカバーレイ63に接触するように、電磁波シールドフィルム12が、プリント配線板60に配置されている。
【0081】
シールドプリント配線板1Dにおいて、電磁波シールドフィルム12の保護層71には、金属層40を露出する開口部71aが形成されている。
そして、金属層40は、開口部71aを通じて外部グランドGNDと電気的に接続している。
【0082】
なお、シールドプリント配線板1Dでは、保護層71の開口部71aを導電性接着剤で埋め、当該導電性接着剤を介し、金属層40が外部グランドGNDに接続されていてもよい。
【0083】
ベースフィルム61及びカバーレイ63の材料は、特に限定されないが、エンジニアリングプラスチックからなることが好ましい。
このようなエンジニアリングプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、架橋ポリエチレン、ポリエステル、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドなどの樹脂が挙げられる。
また、これらのエンジニアリングプラスチックの内、難燃性が要求される場合には、ポリフェニレンサルファイドフィルムが望ましく、耐熱性が要求される場合にはポリイミドフィルムが望ましい。なお、ベースフィルム61の厚みは、10~40μmであることが好ましい。また、カバーレイ63の厚みは、20~50μmであることが好ましい。
【0084】
プリント回路62及びグランド回路62aは、特に限定されないが、導電材料をエッチング処理すること等により形成することができる。
導電材料としては、銅、ニッケル、銀、金等が挙げられる。
【0085】
シールドプリント配線板1を製造する方法としては、プリント配線板60及び電磁波シールドフィルム10を準備し、プリント配線板60に電磁波シールドフィルム10を配置する方法が挙げられる。より具体的には、等方導電性接着剤層20がカバーレイ63に接するように、電磁波シールドフィルム10をプリント配線板60に熱圧着する方法が挙げられる。
熱圧着の条件としては、特に限定されないが、例えば、150~200℃、2~5MPa、1~60minの条件が挙げられる。
【0086】
上記熱圧着を行うことにより、等方導電性接着剤層20が、開口部63aを充填することになる。
その結果、グランド回路62aと、等方導電性接着剤層20とが電気的に接続される。これにより、電磁波シールド効果が向上する。
【実施例
【0087】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
(金属層形成工程)
非シリコン系の離型剤を形成した剥離フィルムの表面に銀(Ag)を蒸着し、厚み0.1μmの金属層を形成した。
【0089】
(絶縁層形成工程)
金属層の上に、エポキシ系樹脂を塗布し、厚み1.0μmの絶縁層を形成した。
【0090】
(等方導電性接着剤層形成工程)
銀コート銅粉からなる導電性粒子を60wt%、エポキシ系樹脂を40wt%含む等方導電性接着剤を準備した。
当該等方導電性接着剤層を絶縁層の上に塗布し、厚み15μmの等方導電性接着剤層を形成した。
【0091】
以上の工程を経て実施例1に係る電磁波シールドフィルムを作製した。
【0092】
(実施例2~13)及び(比較例1~6)
金属層の材料と厚み、及び、絶縁層の厚みを表1のように変えた以外は、実施例1と同様に実施例2~13及び比較例1~3の係る電磁波シールドフィルムを作製した。
また、金属層の材料と厚みを表1のように変え、絶縁層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様に比較例4~6に係る電磁波シールドフィルムを作製した。
【0093】
【表1】
【0094】
(MIT試験)
剥離フィルムを剥がした各実施例及び各比較例の電磁波シールドフィルムの耐折り曲げ性を以下の方法で測定した。
等方導電性接着剤層が50μm厚みのポリイミドフィルムに接するように、各電磁波シールドフィルムをポリイミドフィルムに配置し、熱圧着(170℃、3MPa、30分)により貼り付けた。その後、縦×横=130mm×15mmの大きさにカットし、剥離フィルムを剥がして試験片とした。各試験片の耐折り曲げ性を、MIT耐折疲労試験機(株式会社安田精機製作所製、No.307 MIT形耐折度試験機)を用い、JIS P8115:2001に規定される方法に基づき耐折り曲げ性を測定した。
試験条件は、以下の通りである。
折曲げクランプ先端R:0.38mm
折曲げ角度 :±135°
折曲げ速度 :175cpm
荷重 :500gf
検出方法 :内蔵電通装置にて、シールドフィルムの断線を感知
【0095】
MIT試験の評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:折り曲げ回数が1000回以上で金属層の断線が確認された。
△:折り曲げ回数が300回以上、999回未満で金属層の断線が確認された。
×:折り曲げ回数が300回未満で金属層の断線が確認された。
【0096】
(密着強度試験)
剥離フィルムを剥がした各実施例及び各比較例の電磁波シールドフィルムの密着強度を以下の方法で測定した。
等方導電性接着剤層が25μm厚みのポリイミドフィルムに接するように、各電磁波シールドフィルムをポリイミドフィルムに配置し、温度:170℃、時間:30分、圧力:3MPaの条件で熱圧着した。
電磁波シールドフィルムの金属層側を両面テープにより固定し、常温で引張速度50mm/分、剥離角度180°にてポリイミドフィルムを剥離し、剥離時のピール強度測定し、その最大値と最小値の平均値を密着強度とした。
【0097】
密着強度試験の評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
〇:4.0N/cm以上の引っ張り力で金属層が剥離した。
△:3.0N/cm以上、4.0N/cm未満の引っ張り力で金属層が剥離した。
×:3.0N/cm未満の引っ張り力で金属層が剥離した。
【0098】
表1に示すように、等方導電性接着剤層と金属層との間に絶縁層を含み、絶縁層と金属層との合計厚みが0.5μm以上、20μm未満である実施例1~13に係る電磁波シールドフィルムは、MIT試験及び密着強度試験の両方が良好であった。
【0099】
一方、絶縁層と金属層との合計厚みが20μmを超える比較例1~3に係る電磁波シールドフィルムでは、MIT試験が良好でなく、繰り返し屈曲させた際に金属層にクラックが入りやすいことが判明した。
また、等方導電性接着剤層と金属層との間に絶縁層を含まない比較例4~6に係る電磁波シールドフィルムでは、密着強度試験が良好でなく、金属層が剥離しやすいことが判明した。
【符号の説明】
【0100】
1、1A、1B、1C、1D シールドプリント配線板
10、11、12 電磁波シールドフィルム
20 等方導電性接着剤層
30 絶縁層
40 金属層
50 剥離フィルム
60 プリント配線板
61 ベースフィルム
62 プリント回路
62a グランド回路
63 カバーレイ
63a 開口部
70、71 保護層
71a 開口部
80A、80B、80C グランド部材
81、84 導電性外部接続部材
82 導電性突起
83 導電性粒子
84a 凸部
GND 外部グランド

図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図4D