(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】射出ノズル
(51)【国際特許分類】
B29C 45/20 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
B29C45/20
(21)【出願番号】P 2023009958
(22)【出願日】2023-01-26
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】加藤 利美
【審査官】鷲巣 直哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/129190(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0057138(US,A1)
【文献】実開平06-074315(JP,U)
【文献】特開2011-025262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒にねじ込まれる雄ねじ部及び金型に当てられる先端球面部を有し熱硬化性樹脂を射出する射出ノズルであって、
この射出ノズルには、前記雄ねじ部から前記先端球面部の近傍まで延びる長穴が少なくとも1本設けられ、前記射出ノズルの外面から前記長穴へ至り冷媒を供給する冷媒供給路が設けられ、前記長穴から前記射出ノズルの外面へ至り暖まった冷媒を排出する冷媒排出路が設けられ、
前記長穴には、前記先端球面部側にパイプ構造体が挿入され、前記雄ねじ部側にプラグ構造体が挿入され、
このプラグ構造体と前記パイプ構造体とは所定距離だけ離されて冷媒室とされ、この冷媒室に前記冷媒供給路が繋がるようにされ、
前記パイプ構造体は、前記長穴の穴径より小径のパイプと、このパイプの基部を支えると共に前記長穴の穴径に対応する外径を有し且つ中心穴を有するパイプ支持体とからなり、
前記冷媒は、前記冷媒供給路、前記冷媒室、前記中心穴、前記パイプ内をこの順に流れて前記先端球面部の背面に衝突し、反転して前記パイプ外、前記冷媒排出路をこの順で流れて排出されることを特徴とする射出ノズル。
【請求項2】
請求項1記載の射出ノズルであって、
前記射出ノズルは、多角形断面のスパナー掛部を備え、このスパナー掛部に前記冷媒排出路の出口を設けたことを特徴とする射出ノズル。
【請求項3】
請求項2記載の射出ノズルであって、
前記射出ノズルは、前記スパナー掛部に前記冷媒供給路の入口を設けたことを特徴とする射出ノズル。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の射出ノズルであって、
前記長穴は、前記多角形の角の数と同数設けられていることを特徴とする射出ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱硬化性樹脂の射出成形に用いる射出ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製品を製造する技術として射出成形法が広く知られている。射出成形法では、射出機から金型へ樹脂材料を射出する。
この樹脂材料には、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とがある。
【0003】
熱可塑性樹脂の場合、樹脂材料は射出機で可塑化され、溶融状態で金型へ射出され、金型で冷却されることで凝固する。
対して、熱硬化性樹脂の場合、樹脂材料は射出機で予熱され、溶融状態で金型へ射出され、金型で加熱されることで凝固する。
【0004】
熱硬化性樹脂の場合、射出機の先端に設けられる射出ノズルの温度は60~85℃であり、金型の温度は160~180℃である。
射出の際には、金型のスプルに射出ノズルを押し当てる。この動作はノズルタッチと呼ばれる。ノズルタッチの際に、金型で射出ノズルが加熱され、射出ノズルの温度が上昇する。
【0005】
射出ノズルの温度が一定値以上になると、射出ノズル内において熱硬化性の樹脂材料は流動性が悪くなる。金型のキャビティへ樹脂材料を充填する際に、流動性が悪くなると充填不良が起こる。充填不良が起こると樹脂製品が欠けるなどの不良品が発生する。
不良品の発生は、避けなければならない。そこで、不具合を解決する技術が、各種提案されてきた(例えば、特許文献1(
図1)参照)。
【0006】
特許文献1を次図に基づいて説明する。
図11は従来の射出ノズルの基本構成を説明する図であり、射出ノズル100は、ノズル本体101と、ノズルカバー111とからなる。
ノズル本体101は、基部に加熱筒102にねじ込まれる雄ねじ部103を備え、先端に第1ノズルランド104及び第2ノズルランド105を備える。第1ノズルランド104は金型に当てられる先端球面部に相当する。
【0007】
ノズルカバー111は、ノズル本体101に取付けられて冷媒通路112を形成する。冷媒通路112にエア、水、油等の冷媒を流すことで、第2ノズルランド105が直接的に冷却される。第1ノズルランド104は、第2ノズルランド105へ熱が移動することで冷却される。すなわち、第1ノズルランド104は冷媒により間接的に冷却される。
【0008】
特許文献1に開示される射出ノズル100には、次に述べる欠点がある。
冷媒で直接冷却される第2ノズルランド105に比較して、間接的に冷却される第1ノズルランド104は、冷却の度合いが小さい。
金型で、第2ノズルランド105よりも第1ノズルランド104が強く加熱される。
結果、第1ノズルランド104の温度が上がり、樹脂材料の流動性が悪くなる。この流動性悪化が射出成形の妨げとなる。
【0009】
流動性を良好に維持するためには、第2ノズルランド105よりも第1ノズルランド104が強く冷却されことが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、第1ノズルランドに相当する先端球面部が強く冷却される構造の射出ノズルを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、加熱筒にねじ込まれる雄ねじ部及び金型に当てられる先端球面部を有し熱硬化性樹脂を射出する射出ノズルであって、
この射出ノズルには、前記雄ねじ部から前記先端球面部の近傍まで延びる長穴が少なくとも1本設けられ、前記射出ノズルの外面から前記長穴へ至り冷媒を供給する冷媒供給路が設けられ、前記長穴から前記射出ノズルの外面へ至り暖まった冷媒を排出する冷媒排出路が設けられ、
前記長穴には、前記先端球面部側にパイプ構造体が挿入され、前記雄ねじ部側にプラグ構造体が挿入され、
このプラグ構造体と前記パイプ構造体とは所定距離だけ離されて冷媒室とされ、この冷媒室に前記冷媒供給路が繋がるようにされ、
前記パイプ構造体は、前記長穴の穴径より小径のパイプと、このパイプの基部を支えると共に前記長穴の穴径に対応する外径を有し且つ中心穴を有するパイプ支持体とからなり、
前記冷媒は、前記冷媒供給路、前記冷媒室、前記中心穴、前記パイプ内をこの順に流れて前記先端球面部の背面に衝突し、反転して前記パイプ外、前記冷媒排出路をこの順で流れて排出されることを特徴とする。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の射出ノズルであって、
前記射出ノズルは、多角形断面のスパナー掛部を備え、このスパナー掛部に前記冷媒排出路の出口を設けたことを特徴とする射出ノズル。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の射出ノズルであって、
前記射出ノズルは、前記スパナー掛部に前記冷媒供給路の入口を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項2又は請求項3記載の射出ノズルであって、
前記長穴は、前記多角形の角の数と同数設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、パイプ構造体のパイプから冷媒を先端球面部の背面に衝突させることで、先端球面部を強制冷却する。
仮に、冷却対象面に冷媒を穏やかに接触させると、熱伝達率は小さくなる。対して、本発明のように、冷却対象面に冷媒を衝突させると、熱伝達率が大きくなる。結果、先端球面部は効果的に冷却される。
よって、本発明により、第1ノズルランドに相当する先端球面部が強く冷却される構造の射出ノズルが提供される。
【0017】
請求項2に係る発明では、冷媒排出路の出口は、多角形断面のスパナー掛部を設けられる。
冷媒排出路をドリルで開けるとすると、多角形の平坦な一面に直角にドリルを当てて穿孔を開始することができ、ドリルが折損しにくくなり、加工コストの低減が図れる。
【0018】
請求項3に係る発明では、冷媒供給路の入口も、多角形断面のスパナー掛部を設けられる。
請求項2と同様に、ドリルが折損しにくくなり、加工コストの低減が図れる。
【0019】
請求項4に係る発明では、長穴は、多角形の角の数と同数設けられる。すなわち、複数本のパイプ構造体で、射出ノズルを均等に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図4】(a)は
図3の4a-4a線断面図、(b)、(c)はドリルの折損を説明する参考図である。
【
図6】(a)は射出ノズルの要部断面図、(b)は(a)のb部拡大図、(c)は比較例を示す図、(d)は変更例を示す図である。
【
図7】(a)~(d)は長穴の本数を説明する図である。
【
図11】従来の射出ノズルの基本構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
【実施例】
【0022】
[金型、加熱筒、射出ノズル]
図1に示すように、射出ノズル10は、加熱筒11にねじ込まれる雄ねじ部12を基部外周に備え、この雄ねじ部12の前方にスパナー掛部13を備え、このスパナー掛部13の前方に金型14に当てられる先端球面部15を備え、熱硬化性樹脂を金型14へ射出するノズルである。
【0023】
加熱筒11に回転自在に且つ軸方向移動可能に収納されるスクリュー16は、先端に円錐形状のコーン部17を有する。このコーン部17が射出ノズル10に出入りするため、射出ノズル10は、雄ねじ部12を含む基部よりもスパナー掛部13が小径で、このスパナー掛部13より先端球面部15が小径となる多段構造になっている。
【0024】
熱硬化性樹脂の特性を考慮して、射出ノズル10の温度は60~85℃とされ、金型14の温度は160~180℃とされる。
金型14の熱で射出ノズル10、特に先端球面部15が所定温度(60~85℃)より上がらないように、冷却処置を講じる。そのための冷却構造を、以下に説明する。
【0025】
[射出ノズル]
図2に示すように、スパナー掛部13は、六角形を呈する。以下に述べる六角形の面は、六角形を六面体と読み替えたときの六面体の六面のうちの一つの面である。
六角形のある面13aに冷媒供給ロの入口45aが設けられ、六角形の別の面13aに冷媒排出路の出口50bが設けられている。
【0026】
図1において、冷媒供給ロの入口45a及び冷媒供給ロの出口50bは、射出ノズル10の外面に相当するスパナー掛け部13の外面(六角形の面)に設けられる。すなわち、冷媒供給ロの入口45a及び冷媒供給ロの出口50bは、加熱筒11及び金型14に干渉しない位置にて、射出ノズル10の外面に開口する。
射出ノズル10の外面は、六角形の面が好適ではあるが、加熱筒11と金型14との間にある面であればよく、六角形の面に限定されない。
【0027】
図3に示すように、射出ノズル10は、スクリュー(
図1、符号16)の外径に対応する穴径の大径穴部18と、コーン部(
図1、符号17)に対応する円錐穴部19と、先端球面部15を貫通するノズル穴21とを有し、図中斜線(ハッチング)を施した部分(いわゆる肉の部分)に、長穴23と、冷媒供給路45と、冷媒排出路50とが設けられている。
【0028】
詳しくは、射出ノズル10には、雄ねじ部12から先端球面部15の近傍まで延びる長穴23が少なくとも1本設けられている。長穴23は、円錐穴部19に沿って設けられている。
【0029】
[長穴の加工]
長穴23の加工法の一例を、次に説明する。
先ず、エンドミルで、雄ねじ部12の一部を切欠くようにして座ぐる。この座ぐりにより、長穴23の長手軸に直交する座面24を造り出す。
【0030】
次に、座面24に直交するようにドリルを立てて大径穴25を穿孔する。ドリルを換えて、大径穴25より小径の中径穴26、中径穴26より小径の小径穴27、小径穴27より小径の細径穴28を順次穿孔する。なお、ドリルを立てるとは、ドリルを回転させながら前進させることを意味する(以下同じ)。
次に、大径穴25の入口にタップで雌ねじ29を切る。
【0031】
細径穴28は必須ではないが、細径穴28を設けることで、先端球面部15の近傍まで、長穴23を延ばすことができる。
このような長穴23に、パイプ構造体30とプラグ構造体40とをこの順に挿入する。
【0032】
[プラグ構造体]
プラグ構造体40は、径違い円柱41の大径側に雄ねじ42が切られ、小径側に第1のОリング43が嵌められている。回転させながら大径穴25に挿入されると、雌ねじ29に雄ねじ42がねじ結合する。同時に、第1のОリング43がシール作用を発揮して、中径穴26から大径穴25への冷媒漏れが防止される。
パイプ構造体30の構造は、後述の
図5で詳述する。
【0033】
[冷媒供給路]
冷媒供給路45は、例えば、射出ノズル10の長手軸10aに平行に且つ先端が中径穴26に達するようにして穿孔された横穴46と、この横穴46に達するように六角形の面13aから穿孔された縦穴47とからなる。
横穴46の開口は鋼栓48で塞ぐ。鋼栓48は、ねじ込みプラグや鋼球が適当である。
結果、冷媒供給路45の入口45aが六角形の面13aに設けられ、冷媒供給路45の出口45bが中径穴26に開口する。
【0034】
[冷媒排出路]
図4(a)は
図3の4a-4a線断面図である。
図4(a)に示すように、六角形の面13aに直角にドリルを立てることで、小径穴27から六角形の面13aに至る冷媒排出路50が設けられる。
【0035】
ドリルの折損について、
図4(b)、(c)を用いて補足説明を行う。
図4(b)に示すように、斜面52にドリル53を立てると、ドリル53に水平分力が加わり、この水平分力によりドリル53は折れる。
対して、
図4(c)に示すように、エンドミル54で座55形成し、次にこの座55に直交するようにしてドリル53を立てると、ドリル53は折れない。
【0036】
すなわち、
図4(a)に示すように、冷媒供給路の縦穴47は六角形の面13aに直交しており、ドリルが折れることなく穿孔される。冷媒排出路50も六角形の面13aに直交しており、ドリルが折れることなく穿孔される。また、
図3に示す長穴23も座面24に直交しており、ドリルが折れることなく穿孔される。
【0037】
[パイプ構造体]
図5に示すように、パイプ構造体30は、外径が小径穴(
図3、符号27)の穴径より小径のパイプ31と、このパイプ31の基部を支えるパイプ支持体32とからなる。パイプ支持体32は中心穴33を有する円柱であり、一端にパイプ31が挿入され、他端にねじ部34を有し、外周に第2のOリング35を有する。
【0038】
パイプ31は、銅管が好ましく、パイプ支持体32にロウ付けにより、固定される。
ねじ部34は、長穴(
図3、符号23)からパイプ構造体30から引き抜くときに使用する。すなわち、細長いロッドの先端に雄ねじを切り、この雄ねじをねじ部34にねじ込み、細長いロッドを引くことで、パイプ構造体30を長穴から引き抜く。
【0039】
図3において、長穴23へ、パイプ構造体30を挿入し、次にプラグ構造体40をねじ込むと、
図6(a)の形態になる。
【0040】
[冷媒室]
図6(a)に示すように、パイプ構造体30とプラグ構造体40とは所定距離Dだけ離れており、この離れた領域が冷媒室56となる。この冷媒室56に冷媒供給路45の出口45bが繋がるようにする。所定距離Dは、冷媒供給路45の出口45bの穴径の3~5倍の範囲が適当である。この範囲であれば、加工誤差があっても、出口45bがパイプ支持体32又はプラグ構造体40で塞がれることはない。
【0041】
[冷媒の流れ]
冷媒の流れは、行きが矢印付き実線で示され、戻りが矢印付き破線で示される。
空気又は水などの冷媒を、矢印(1)の通りに冷媒供給路45へ供給する。冷媒は縦穴47、横穴46の順で流れ、矢印(2)のように冷媒室56へ流入し、反転する。
【0042】
図6(b)に示すように、冷媒はパイプ31の内を通って、パイプ31の先端から噴き出し、細径穴28に衝突する(矢印(3))。衝突後反転してパイプ31の外を流れ(矢印(4))、
図6(a)に示す冷媒排出路50へ流入する。すると、冷媒は、
図4(a)に示すように冷媒排出路50を通って外へ排出される(矢印(5))。
【0043】
図6(c)は比較例を示す図であり、多くの冷却ジャケット57は、一端から矢印(11)のように冷媒を流入させ、他端から排出路58を用いて冷媒を排出させる(矢印(12))。
図6(a)からも明らかなように排出路58を設けることは容易でなく、設けることができたとしても冷却ジャケット57の先端からWだけ後退した部位に設けざるを得ない。
【0044】
結果、
図6(c)に示すWの領域は「液だまり」となり、冷媒の入れ換えがなく、あったとしても僅かである。冷媒の入れ換えが乏しいと冷却性能が低下し、
図6(a)に示す先端球面部15が十分に冷やされない。対策として冷媒の供給量を増す必要がある。
【0045】
対して、本発明による
図6(b)では、矢印(3)で示す衝突により、常に新しい冷媒が細径穴28に供給される。加えて、衝突により熱伝達係数が高まる。結果、少ない量の冷媒で
図6(a)に示す先端球面部15が十分に冷やされる。
よって、本発明により、先端球面部15が強く冷却される構造の射出ノズル10が提供される。
【0046】
なお、
図6(a)において、パイプ支持体32には、冷媒室56側から図面左向きの圧力が加わり、小径穴27側から図面右向きの圧力が加わる。矢印(3)の流れによりパイプ31の内で圧力損失が発生する。結果、図面左向きの圧力は図面右向きの圧力より高くなるため、パイプ支持体32が冷媒室56側へ抜けることはない。よって、第2のOリング35による嵌合構造を採用した。
【0047】
しかし、この嵌合構造をねじ結合構造に変更することは差し支えない。ねじ結合構造は、機械的にパイプ支持体32の移動を防止することができるという利点がある、奥まった中径穴26に雌ねじを形成する必要があり、加工コストが嵩むという欠点がある。
対して、嵌合構造は、中径穴26に雌ねじを形成する必要がなく、加工コストが嵩まないという利点がある。
よって、パイプ支持体32を嵌合で固定するか、ねじ結合で固定するかは、任意である。
【0048】
また、
図6(d)に示すように、細径穴28の穴径を若干大きくする、及び/又はパイプ31の外径を若干小さくすることで、パイプ31の先端を細径穴28へ挿入するようにしてもよい。
【0049】
図6(b)に示す実施例では、細径穴28の穴径は、パイプ31の外径より小さくすることができる。
図6(a)から明らかなように、細径穴28の穴径が小さいほど、薄い肉に穿孔が可能となり、細径穴28の先端を先端球面部15に近づけることができる。
よって、
図6(b)に示す実施例では、細径穴28の穴径は、パイプ31の外径より大径にすることが可能ではあるが、好ましくはパイプ31の外径より小さくする。
【0050】
対して、
図6(d)に示す実施例では、細径穴28の穴径は、パイプ31の外径より大きいが、パイプ31の先端を細径穴28へ挿入することができるため、
図6(b)よりも、細径穴28へ冷媒をより確実に送ることができる。
よって、
図6(b)を採用するか、
図6(d)を採用するかは、任意である。
【0051】
[長穴の数]
図7に基づいて、射出ノズルに設ける長穴23の好ましい本数を説明する。
図7(a)に示すように、長穴23は上下に各1本、合計2本設ける。
または、
図7(b)に示すように、長穴23は120°ピッチで合計3本設ける。
【0052】
または、
図7(c)に示すように、長穴23は60°ピッチで合計6本設ける。
または、
図7(d)に示すように、長穴23は、1本のみでも差し支えない。
よって、長穴23は、少なくとも1本設ければよい。ただし、加工コストが嵩み複雑にはなるが、
図7(c)が理想である。
【0053】
本実施例では、スパナー掛部13は六角形断面としたが、四角形断面や八角形断面であなどの多角形断面であればよく、角の数は規定されない。
四角形断面のときは、長穴23は90°ピッチで合計4本設け、八角形断面のときは、長穴23は45°ピッチで合計8本設けることが推奨される。
すなわち、長穴23は多角形の角の数と同数設けることが望ましい。
【0054】
[変更例]
次に、
図8~
図10に基づいて、本発明に係る変更例を説明する。ただし、この変更例において、
図1~
図6と共通する要素には、符号を流用して詳細な説明は省略する。
図8に示すように、変更例に係る射出ノズル10は、雄ねじ部12とスパナー掛部13との間に延長部59を介在させ、この延長部59に冷媒供給路の入口45aを設けた。
【0055】
図9に示すように、射出ノズル10は、雄ねじ部12から先端球面部15の近傍まで延びる長穴23を少なくとも1本有し、この長穴23にパイプ構造体30とプラグ構造体40をこの順に挿入する構造であることに変更がない。
【0056】
延長部59に設けた冷媒供給路45は、ごく短い縦穴47のみからなる。
また、スパナー掛部13に設ける冷媒排出路50も、ごく短い縦穴のみからなる。
すなわち、
図3に示す横穴46が不要であり、
図4(a)に示す長い冷媒排出路50がごく短くなる。
【0057】
よって、変更例は延長部59を設けることで射出ノズル10が若干大型になるものの、冷媒供給路45と冷媒排出路50の加工コストが低減できる。加えて、冷媒供給路45と冷媒排出路50がごく短いため、異物による詰まりが起こりにくく、起こったとしても異物の除去が容易になるという利点がある。
【0058】
図10に示すように、長穴23へパイプ構造体30を挿入し、次にプラグ構造体40をねじ込むことで、射出ノズル10を得ることができる。
冷媒は、冷媒供給路45を通り、冷媒室56で向きを変えてパイプ31の内を通り、細径穴28に衝突する。この衝突により先端球面部15が強く冷却される。暖まった冷媒はパイプ31の外を流れ、冷媒排出路50を通って、外部へ排出される。
【0059】
尚、本発明では、長穴23を、大径穴25と中径穴26と小径穴27と細径穴28とからなる多段穴としたが、パイプ構造体30が挿入でき、プラグ構造体40がねじ込めることを条件に、多段穴の段数を変更することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の射出ノズルは、熱硬化性樹脂の射出に好適である。
【符号の説明】
【0061】
10…射出ノズル、10a…射出ノズルの長手軸、11…加熱筒、12…雄ねじ部、13…スパナー掛部、13a…射出ノズルの外面(六角形の面)、14…金型、15…先端球面部、23…長穴、30…パイプ構造体、31…パイプ、32…パイプ支持体、40…プラグ構造体、45…冷媒供給路、45a…冷媒供給路の入口、50…冷媒排出路、50b…冷媒排出路の出口、56…冷媒室、D…所定距離(プラグ構造体とパイプ構造体との距離)。