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特許7620697ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体
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  • 特許-ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体 図1A
  • 特許-ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体 図1B
  • 特許-ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体 図2
  • 特許-ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体 図3
  • 特許-ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体
(51)【国際特許分類】
   C01F 7/785 20220101AFI20250116BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20250116BHJP
   C08L 27/04 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
C01F7/785
C08K3/26
C08L27/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023512864
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2022008905
(87)【国際公開番号】W WO2022215393
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2021064733
(32)【優先日】2021-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】722010585
【氏名又は名称】セトラスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100143650
【弁理士】
【氏名又は名称】山元 美佐
(72)【発明者】
【氏名】杉山 博行
(72)【発明者】
【氏名】細井 賢
【審査官】青木 千歌子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105573(JP,A)
【文献】国際公開第2011/111487(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01F
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状のハイドロタルサイト類化合物であって、
下記一般式(I)で表され、
前記粒子全体において、均一な組成を有し、
Cu-Kα線によるX線回折(XRD)パターンにおいて、(003)回折に帰属されるピークを回折角2θが10°以上14°以下の範囲に2本有し、
回折角2θが10°以上12°以下の範囲にピークトップを有する第1ピークP1の面積強度に対する、回折角2θが12°を超え14°以下の範囲にピークトップを有する第2ピークP2の面積強度の比RXRD(SP2/SP1)が、1.26以上20.15以下であり、
Cu-Kα線によるX線回折(XRD)パターンにおいて、回折角2θが36°以上38°以下の範囲にピークトップを有する第3ピークP3を有し、
前記第1ピークP1の面積強度に対する前記第3ピークP3の面積強度の比R XRD ’(S P3 /S P1 )が、0.29以上4.82以下であり、
KBr錠剤法によるFT-IRスペクトルにおいて、1270cm -1 ~1460cm -1 の範囲内の第1ピークA1および1460cm -1 ~1720cm -1 の範囲内の第2ピークA2を有し、
前記第1ピークA1の面積強度に対する前記第2ピークA2の面積強度の比R IR (S A2 /S A1 )が、0.83以上1.24以下であり、
KBr錠剤法によるFT-IRスペクトルにおいて、2930cm -1 ~3140cm -1 の範囲内にピークまたはショルダーを実質的に有しない、
ハイドロタルサイト類化合物:
(M2+1-X(M3+(OH)(An-X/n・mHO・・・(I)
式(I)中、M2+Mg 2+ であり、M3+Al 3+ であり、An-CO 2- であり、Xは0.1≦X<0.4を満足し、nは1~6の整数であり、mは0<m≦10を満足する。
【請求項2】
前記式(I)中、Xは0.2≦X<0.36を満足し、mは0<m≦1.8を満足する、請求項1に記載のハイドロタルサイト類化合物。
【請求項3】
塩素含有樹脂を含む樹脂と、
請求項1または2に記載のハイドロタルサイト類化合物と
を含む、樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂100重量部に対し、前記ハイドロタルサイト類化合物を0.1重量部~250重量部含有する、請求項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項またはに記載の樹脂組成物から形成される、樹脂成形体。
【請求項6】
未焼成のハイドロタルサイト類化合物を大気下にて焼成することを含む、請求項1または2に記載のハイドロタルサイト類化合物の製造方法。
【請求項7】
焼成温度が125℃以上300℃以下で、焼成時間が0.1時間以上24時間以下の条件で前記焼成を行う、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイドロタルサイト類化合物、樹脂組成物および樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩素含有樹脂は、加工性および機能性の高さから、容器、パイプ、絶縁材等、様々な製品に用いられている。一方で、塩素含有樹脂は熱安定性が低く、加工、経時等により製品の品質を低下させるという問題がある。具体的には、発泡や着色により、製品の外観が損なわれるという問題がある。この問題に対し、ハイドロタルサイト類化合物の添加が提案されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、さらなる熱安定性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-178966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、優れた熱安定性を達成し得るハイドロタルサイト類化合物の提供を目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、ハイドロタルサイト類化合物が提供される。このハイドロタルサイト類化合物は、下記一般式(I)で表され、Cu-Kα線によるX線回折(XRD)パターンにおいて、(003)回折に帰属されるピークを回折角2θが10°以上14°以下の範囲に2本有し、回折角2θが10°以上12°以下の範囲にピークトップを有する第1ピークP1の面積強度に対する、回折角2θが12°を超え14°以下の範囲にピークトップを有する第2ピークP2の面積強度の比RXRD(SP2/SP1)は、0.7以上50以下である:
(M2+1-X(M3+(OH)(An-X/n・mHO・・・(I)
式(I)中、M2+は2価の金属カチオンであり、M3+は3価の金属カチオンであり、An-はn価のアニオンであり、Xは0.1≦X<0.4を満足し、nは1~6の整数であり、mは0<m≦10を満足する。
1つの実施形態においては、上記ハイドロタルサイト類化合物は、Cu-Kα線によるX線回折(XRD)パターンにおいて、回折角2θが36°以上38°以下の範囲にピークトップを有する第3ピークP3を有し、上記第1ピークP1の面積強度に対する前記第3ピークP3の面積強度の比RXRD’(SP3/SP1)は、0.17以上10以下である。
1つの実施形態においては、上記ハイドロタルサイト類化合物は、KBr錠剤法によるFT-IRスペクトルにおいて、1270cm-1~1460cm-1の範囲内の第1ピークA1および1460cm-1~1720cm-1の範囲内の第2ピークA2を有し、前記第1ピークA1の面積強度に対する前記第2ピークA2の面積強度の比RIR(SA2/SA1)は、0.65以上1.35以下である。
1つの実施形態においては、上記ハイドロタルサイト類化合物は、KBr錠剤法によるFT-IRスペクトルにおいて、2930cm-1~3140cm-1の範囲内にピークまたはショルダーを実質的に有しない。
1つの実施形態においては、上記式(I)中、Xは0.2≦X<0.36を満足し、mは0<m≦1.8を満足する。
【0006】
本発明の別の実施形態によれば、樹脂組成物が提供される。この樹脂組成物は、塩素含有樹脂を含む樹脂と、上記ハイドロタルサイト類化合物とを含む。
1つの実施形態においては、上記樹脂100重量部に対し、上記ハイドロタルサイト類化合物を0.1重量部~250重量部含有する。
本発明のさらに別の実施形態によれば、樹脂成形体が提供される。この樹脂成形体は、上記樹脂組成物から形成される、樹脂成形体。
【0007】
本発明のさらに別の実施形態によれば、上記のハイドロタルサイト類化合物の製造方法が提供される。この製造方法は、未焼成のハイドロタルサイト類化合物を大気下にて焼成することを含む。
1つの実施形態においては、焼成温度が125℃以上300℃以下で、焼成時間が0.1時間以上24時間以下の条件で上記焼成を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ハイドロタルサイト類化合物がX線回折(XRD)パターンにおいて所定の面積強度比を有することにより、優れた熱安定性を達成し得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】各実施例および比較例で得た試料のX線回折パターン(回折角2θ:5°~70°)を示す図である。
図1B】各実施例および比較例で得た試料のX線回折パターン(回折角2θ:30°~50°)を示す図である。
図2】各実施例および比較例で得た試料のFT-IRスペクトルを示す図である。
図3】各実施例および比較例で得た試料の熱安定性(発泡)の評価結果である。
図4】各実施例および比較例で得た試料の熱安定性(着色)の評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0011】
A.ハイドロタルサイト類化合物
本発明の1つの実施形態におけるハイドロタルサイト類化合物は、下記一般式(I)で表される。
(M2+1-X(M3+(OH)(An-X/n・mHO・・・(I)
式(I)中、M2+は2価の金属カチオンであり、M3+は3価の金属カチオンであり、An-はn価のアニオンであり、Xは0.1≦X<0.4を満足し、nは1~6の整数であり、mは0<m≦10を満足する。好ましくは、式(I)中、Xは0.2≦X<0.36を満足する。好ましくは、式(I)中、mは0<m≦1.8を満足する。
【0012】
上記一般式(I)において、M2+は、例えば、Mg2+、Zn2+、Ca2+、Sr2+、Cu2+、Fe2+、Mn2+、Co2+、Ni2+、Sn2+、Pb2+、Cd2+およびBa2+からなる群から選択される少なくとも1種の2価の金属イオンである。M2+は、好ましくはMg2+およびZn2+からなる群から選択される少なくとも1種の2価の金属イオンであり、さらに好ましくはMg2+である。
【0013】
上記一般式(I)において、M3+は、例えば、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+およびIn3+からなる群から選択される少なくとも1種の3価の金属イオンである。M3+は、好ましくはAl3+である。これは、例えば生体への安全性が高く、得られるハイドロタルサイト類化合物は白色で種々の用途に適応し得るからである。
【0014】
上記一般式(I)において、An-は、例えば、CO 2-、SO 2-、Cl、SiO 2-、PO 3-、NO 、OH、I、(COO) 2-、(CHOHCOO) 2-、(CHOH)CHOHCOO、C(COO) 2-、(CHCOO) 2-、CHCHOHCOO、CHPO 2-、C 2-、HCOO、CHCOO、CHSO 、SiO 2-、Si 2-、Si 2-、Si 2-、(HSiO、(HSi、HPO 2-、PO 3-およびP 4-からなる群から選択される少なくとも1種のアニオンである。An-は、好ましくはCO 2-である。
【0015】
A-1.物性
上記ハイドロタルサイト類化合物は、そのCu-Kα線によるX線回折(XRD)パターンにおいて、(003)回折に帰属されるピークを回折角2θが10°以上14°以下の範囲に2本有する。具体的には、回折角2θが10°以上12°以下の範囲にピークトップを有する第1ピークP1および回折角2θが12°を超え14°以下の範囲にピークトップを有する第2ピークP2を有する。このように第1ピークP1および第2ピークP2を有するハイドロタルサイト類化合物は、第1ピークP1のみを有するハイドロタルサイト類化合物に比べて層間距離が短く、層間に位置する水(層間水)の一部は脱水され、層間水の一部は残っていると考えられる。
【0016】
上記第1ピークP1の面積強度に対する第2ピークP2の面積強度の比RXRD(SP2/SP1)は、0.7以上であり、好ましくは0.8以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは1.2以上である。一方、RXRDは、50以下であり、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは21以下、特に好ましくは10以下である。このような範囲によれば、発泡を極めて効果的に抑制することができる。具体的には、層間水の一部が脱水されていることにより、ハイドロタルサイト類化合物の層間水に起因する発泡を抑制することができる。同時に、層間水の一部が残っていることにより、ハイドロタルサイト類化合物の塩化物イオンの捕捉能は保持され得、例えば、樹脂の脱塩酸反応由来の塩酸に起因する発泡を抑制することができる。塩化物イオンがハイドロタルサイト類化合物に捕捉されない場合、上記樹脂の脱塩酸反応由来の塩酸は、ハイドロタルサイト類化合物の表面と中和反応し、水が発生し得る。この水が蒸発することにより発泡し得る。また、上記範囲によれば、上記中和反応によりハイドロタルサイト類化合物から溶出した金属イオンに起因する着色も抑制することができる。このような中和反応に着目したことが、本発明の特徴の一つである。
【0017】
ハイドロタルサイト類化合物は、そのCu-Kα線によるXRDパターンにおいて、回折角2θが36°以上38°以下の範囲にピークトップを有する第3ピークP3を有し得る。第3ピークP3は、アルミナに起因し得る。上記第1ピークP1の面積強度に対する第3ピークP3の面積強度の比RXRD’(SP3/SP1)は、好ましくは0.17以上、より好ましくは0.19以上、さらに好ましくは0.22以上である。一方、RXRD’は、好ましくは10以下であり、より好ましくは8以下、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは3以下である。
【0018】
ハイドロタルサイト類化合物は、そのKBr錠剤法によるFT-IRスペクトルにおいて、1270cm-1~1460cm-1の範囲内の第1ピークA1および1460cm-1~1720cm-1の範囲内の第2ピークA2を有し得る。第1ピークA1の面積強度に対する第2ピークA2の面積強度の比RIR(SA2/SA1)は、好ましくは0.65以上、より好ましくは0.7以上である。炭酸イオンとの水素結合を担っている層間水の一部が脱水されることにより、炭酸イオンのC=O二重結合性が高い状態となり、炭酸イオン由来の高波数側ピーク(A2)の強度が増大し得る。上記RIR(SA2/SA1)によれば、発泡を極めて効果的に抑制することができる。また、C=O二重結合性が高い状態をとることで、例えば、炭酸イオンと層表面のアルミニウムイオンとの相互作用が増大し、層間水が脱水された後に吸湿により層間に入る水分子は水素結合を形成しないと考えられ、発泡抑制の向上に寄与し得る。一方、RIRは、好ましくは1.35以下、より好ましくは1.25以下、さらに好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.1以下である。このようなRIRによれば、層間の炭酸イオン交換能が保持され得る。
【0019】
ハイドロタルサイト類化合物は、そのKBr錠剤法によるFT-IRスペクトルにおいて、2930cm-1~3140cm-1の範囲内にピークまたはショルダーを実質的に有しないことが好ましい。具体的には、上記水素結合を担う層間水の一部が脱水されていることが好ましい。ここで、ピークまたはショルダーを実質的に有しないとは、ベースラインからの変位がノイズレベル以下であることをいう。
【0020】
ハイドロタルサイト類化合物は、代表的には、粒子状である。このハイドロタルサイト類粒子の平均2次粒子径は、例えば0.1μm~3μmであり、好ましくは0.2μm~1.5μmである。なお、平均2次粒子径は、粒度分布測定におけるメジアン径の平均値である。ハイドロタルサイト類粒子のBET比表面積は、例えば5m/g~50m/gであり、好ましくは5m/g~30m/gである。
【0021】
1つの実施形態においては、上記ハイドロタルサイト類粒子は、粒子全体において(後述の表面処理が施されている場合は、表面処理剤を除く)、均一な組成を有する。このような形態によれば、製造効率に優れ得る。具体的には、コアシェル構造を採用する場合などに比べて、製造工程を少なくすることができる。
【0022】
A-2.表面処理
上記ハイドロタルサイト類粒子は、表面処理が施されていることが好ましい。具体的には、ハイドロタルサイト類粒子は、任意の適切な表面処理剤を用いて表面処理されていることが好ましい。例えば、樹脂に配合された際の分散性に優れ得るからである。
【0023】
上記表面処理剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸のアルカリ金属塩、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シリコーン系処理剤、水ガラス、ケイ酸、リン酸エステル類、多価アルコールと脂肪酸のエステル、高級アルコ―ルの硫酸エステルが挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いられ得る。これらの中でも、高級脂肪酸が好ましく用いられる。高級脂肪酸としては、好ましくは、ラウリン酸、オレイン酸およびステアリン酸からなる群から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0024】
表面処理剤の使用量は、ハイドロタルサイト類粒子の0.01重量%~20重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05重量%~15重量%、さらに好ましくは0.1重量%~10重量%、特に好ましくは0.5重量%~5重量%である。
【0025】
A-3.製造方法
上記ハイドロタルサイト類化合物は、任意の適切な方法により製造され得る。例えば、未焼成のハイドロタルサイト類化合物を大気下にて所定の条件で焼成(半焼成)することにより製造することができる。
【0026】
上記未焼成のハイドロタルサイト類化合物は、任意の適切な方法により合成され得る。周知慣用の方法により得られる反応物を、水系媒体中で加熱処理することにより合成することができる。上記反応物は、例えば、pH8.5~11.5の条件下、炭酸イオンを含む水溶液中でマグネシウム、アルミニウム等の金属塩を反応させることにより得ることができる。未焼成のハイドロタルサイト類化合物(ハイドロタルサイト粒子)の製造方法の詳細は、例えば、国際公開第2015/068312号に記載されている。この公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。上記表面処理は、未焼成のハイドロタルサイト類化合物に施すことが好ましい。
【0027】
未焼成のハイドロタルサイト類化合物の焼成条件は、上記物性を満足し得る限り、任意の適切な条件に設定され得る。未焼成のハイドロタルサイト類化合物の焼成温度は、例えば125℃以上であり、好ましくは180℃以上である。このような温度によれば、上記層間水を効率的に脱水し得る。一方、焼成温度は、例えば300℃以下であり、好ましくは250℃以下である。このような温度によれば、立体構造が安定したハイドロタルサイト類化合物を得ることができる。
【0028】
未焼成のハイドロタルサイト類化合物の焼成時間は、例えば、上記焼成温度に応じて、設定され得る。具体的には、焼成温度が高い場合には焼成時間は短く設定され、焼成温度が低い場合には焼成時間は長く設定され得る。焼成時間は、例えば0.1時間以上であり、好ましくは0.5時間以上である。一方、焼成時間は、例えば24時間以下であり、好ましくは12時間以下である。1つの実施形態においては、温度200℃以上220℃以下で、1時間~8時間の条件で焼成する。
【0029】
未焼成のハイドロタルサイト類化合物の焼成は、連続的に行ってもよいし、異なる温度で多段的に行ってもよい。例えば、200℃~210℃で第一焼成を行った後、180℃~190℃で第二焼成を行ってもよい。なお、多段的に焼成を行う場合、上記焼成時間は、各段階の焼成時間の合計である。
【0030】
A-4.使用方法
上記ハイドロタルサイト類化合物は、代表的には、樹脂(ゴムを含む)に含有させる。以下、樹脂およびハイドロタルサイト類化合物を含む樹脂組成物について説明する。
【0031】
B.樹脂組成物
本発明の1つの実施形態における樹脂組成物は、塩素含有樹脂を含む樹脂および上記ハイドロタルサイト類化合物を含む。塩素含有樹脂としては、塩素原子を含む樹脂(重合体)である限り、任意の適切な樹脂が用いられる。好ましくは、塩化ビニル系樹脂が用いられる。
【0032】
上記塩化ビニル系樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ゴム等の単独重合体が挙げられる。また、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-ウレタン共重合体、塩化ビニル-アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-マレイミド共重合体、内部可塑化ポリ塩化ビニル等の共重合体が挙げられる。
【0033】
上記樹脂は、塩素非含有樹脂を含み得る。塩素非含有樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エーテル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、ポリプロピレン、プロピレンと他のα-オレフィンとの共重合体、ポリブテン-1、ポリ4-メチルペンテン-1、ポリスチレン、スチレン-アクリロニトリル共重合体、エチレン-プロピレンジエンゴム共重合体、エチレン-ブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド(PA)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアセタール(POM)等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、例えば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。また、塩素非含有樹脂(ゴム)としては、例えば、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、水素化ニトリルゴム(HNBR)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタンゴム(U)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、イソプレンゴム(IR)、シリコーンゴム(Q)が挙げられる。
【0034】
上記樹脂組成物において、樹脂100重量部に対し、ハイドロタルサイト類化合物を0.1重量部~250重量部含有させることが好ましく、より好ましくは1重量部~200重量部、さらに好ましくは1重量部~100重量部である。
【0035】
上記樹脂組成物は、任意成分を含み得る。任意成分としては、例えば、熱安定剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、着色防止剤、衝撃性改良剤が挙げられる。これらは、単独で、または、2種以上を組み合わせて用いられ得る。
【0036】
上記熱安定剤は、樹脂100重量部に対し、0.01重量部~10重量部含有させることが好ましい。上記可塑剤は、樹脂100重量部に対し、1重量部~70重量部含有させることが好ましい。上記酸化防止剤は、樹脂100重量部に対し、0.01重量部~2重量部含有させることが好ましい。上記紫外線吸収剤は、樹脂100重量部に対し、0.01重量部~3重量部含有させることが好ましい。上記帯電防止剤は、樹脂100重量部に対し、0.01重量部~2重量部含有させることが好ましい。上記滑剤は、樹脂100重量部に対し、0.1重量部~5重量部含有させることが好ましい。上記着色剤は、樹脂100重量部に対し、0.1重量部~2重量部含有させることが好ましい。上記着色防止剤は、樹脂100重量部に対し、0.01重量部~5重量部含有させることが好ましい。上記衝撃性改良剤は、樹脂100重量部に対し、1重量部~20重量部含有させることが好ましい。
【0037】
上記ハイドロタルサイト類化合物によれば、例えば、過塩素酸含有ハイドロタルサイト類化合物、過塩素酸塩等の過塩素酸類、有機錫化合物、水酸化マグネシウム(例えば、BET比表面積が15m/g以上で平均2次粒子径が2μm以下の水酸化マグネシウム)、酸化マグネシウム(例えば、BET比表面積が50m/g以上で微粒子状の高活性酸化マグネシウム)等の安定剤の使用を抑制することができる。具体的には、安定剤の含有割合は、樹脂100重量部に対し、例えば5重量部以下であり、好ましくは1重量部以下、より好ましくは0.1重量部以下であり、さらに好ましくは0.01重量部以下であり、特に好ましくは0.001重量部以下である。
【0038】
C.樹脂成形体
本発明の1つの実施形態における樹脂成形体は、上記樹脂組成物から形成される。具体的には、樹脂成形体は、上記樹脂および上記ハイドロタルサイト類化合物を含む。
【実施例
【0039】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。なお、各特性の測定方法は、断りがない限り、下記の通りである。
1.平均2次粒子径
MICROTRAC粒度分布計(NIKKISO社製、MT3000IIシリーズ)を用いて測定した。具体的には、試料(粉末)700mgにメタノール5mlをなじませた後、これに、2.0g/Lのヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液70mLを加え、3分間超音波処理(NISSEI社製の「MODEL US-300」にて電流400μAの条件で)を行った。その後、得られた分散液2~4mLを、220mLの脱気ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液(2.0g/L)を収容・循環させた上記粒度分布計の試料室に加え、1分間その分散液を循環させた後、粒度分布を測定した。合計2回の測定を行い、それぞれの測定において得られた50%累積2次粒子径(メジアン径)の平均値を算出することにより平均2次粒子径を求めた。
2.比表面積
高精度ガス吸着量測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社の「BELsorp-max」)で測定した。具体的には、窒素ガスを用いた定容量式ガス吸着法で測定し、BET多点法による解析で比表面積を求めた。
3.Mg/Alモル比
試料(粉末)を酸に溶解して得られた溶液中のMg、Al含量をキレート滴定にて定量することで、Mg/Alモル比を算出した。
【0040】
[実施例1]
1L容積の反応槽において所定のイオン交換水を攪拌しつつ、ここに、1.5mol/Lの塩化マグネシウム水溶液160mL、1mol/Lの塩化アルミニウム水溶液120mL、および、8mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液90mLと1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液60mLとの混合溶液を同時に注加し、反応物を得た。反応時のpHは9.5であった。
得られた反応物700mLをヌッチェにより固液分離し、得られた固形物をイオン交換水で水洗した後、再度イオン交換水を加えて再乳化スラリー700mLを得た。得られた再乳化スラリー700mLを、170℃で13時間水熱処理を行い冷却した。その後、得られたスラリーを80℃に加熱し、撹拌下、このスラリーにステアリン酸ナトリウム0.55gの水溶液(80℃)を徐々に加え、この状態を30分間維持した。その後、ヌッチェにより固液分離して得られた固形物を、イオン交換水800mLで水洗し、105℃で18時間乾燥した。得られた乾燥物をハンマーミルで粉砕した後、150ミクロンのフィルターで篩過し、粉末を得た。
得られた粉末は、平均2次粒子径は0.58μm、BET比表面積は8.1m/g、Mg/Alモル比は4.00であった。また、別途行った熱重量(TG)測定の結果(重量減少量)から、得られた粉末の化学式は、Mg0.66Al0.33(OH)(CO0.16・0.50HOで表され、上記一般式(I)を満たす。
【0041】
得られた粉末40gを、ステンレス製トレー(20.6cm×16.6cm×2.7cm)に入れ、ステンレス製の薬さじでまんべんなくほぐし、粉体密度0.17g/cm(粉体厚み1cm)とした。その後、予め210℃に加熱保持した送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、DKN602型)に上記トレーを投入し、投入後、210℃に到達した後、大気下にて同温度で2時間焼成を行った。焼成後、恒温器よりトレーを取り出し、冷却せずに、直ちに粉末をマヨネーズ瓶に封入し、これをデシケーター内に保管した。こうして、実施例1の試料(BET比表面積は12.41m/g、Mg/Alモル比は4.00、上記一般式(I)を満たす)を得た。
【0042】
[実施例2]
焼成温度を215℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であり、上記一般式(I)を満たす。
【0043】
[比較例1]
焼成を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして、試料を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であり、上記一般式(I)を満たす。
【0044】
[比較例2]
焼成温度を195℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であり、上記一般式(I)を満たす。
【0045】
[比較例3]
焼成温度を200℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であり、上記一般式(I)を満たす。
【0046】
[比較例4]
焼成温度を203℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であり、上記一般式(I)を満たす。
【0047】
[比較例5]
焼成温度を207℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であり、上記一般式(I)を満たす。
【0048】
[比較例6]
焼成温度を220℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であり、上記一般式(I)を満たす。
【0049】
[比較例7]
焼成温度を250℃としたこと以外は実施例1と同様にして、試料(BET比表面積は11.66m/g)を得た。得られた粉末は、Mg/Alモル比は4.00であるが、水が完全に除去され、上記一般式(I)を満たさない。
【0050】
各実施例および比較例で得られた試料について、下記に示す項目の測定を行った。測定結果を図1-A、図1-Bおよび表1に示す。
1.X線回折測定
得られた試料粉末をX線測定用ガラスセルにのせた後、ガラス板で試料表面を平坦にし、測定用サンプルを得た。その後、EMPYREAN(PANalytical B.V.製)にて測定を行い、X線回折パターンを得た。測定条件は以下のとおりである。
・X線源:Cu-Kα線(λ=1.542Å)
・電圧:45kV
・電流:40mA
・ゴニオメーター:試料水平型ゴニオメーター(反射モード)
・ステップ角:0.013°
・スキャン速度:9.8°/min
・回折角2θ:5°~70°
2.X線回折ピークの面積強度比
X線回折ソフトHigh Score Plus(PANalytical B.V.製)を用い、得られたX線回折パターンの回折角2θ=5°~70°のベースライン補正を行った。そして、回折角2θが10°以上14°以下の範囲において、ハイドロタルサイト類化合物の(003)回折に帰属されるピークを指定し、非対称関数を「スプリット幅とシェイプ」としてプロファイルフィッティングを行った。解析後、回折角2θが10°以上12°以下の範囲にピークトップを有するピークを第1ピークP1、回折角2θが12°を超え14°以下の範囲にピークトップを有するピークを第2ピークP2とし、各ピークの面積強度(SP1、SP2[counts*°2θ])から、第1ピークP1の面積強度に対する、第2ピークP2の面積強度の比RXRD(SP2/SP1)を算出した。同様に、回折角2θが36°以上38°以下の範囲にピークトップを有するピークを第3ピークP3とし、そのピークの面積強度SP3から、第1ピークP1の面積強度に対する、第3ピークP3の面積強度の比RXRD’(SP3/SP1)を算出した。
【0051】
【表1】
【0052】
各実施例および比較例で得られた試料について、下記に示す項目の測定を行った。測定結果を図2および表2に示す。
3.FT-IR測定
測定にはKBr錠剤法を用いた。試料粉末2mgと、予め120℃で乾燥後にデシケーターにて放冷したKBr20mgとを、乳鉢にて乳棒ですり潰した。続いて、得られた粉末はClearDisk成型器(ジャスコエンジニアリング株式会社製)を用い、ミニハンドプレスMP-1MiniPress(ジャスコエンジニアリング株式会社製)でφ5mmのClearDiskを成型した。同様にして、バックグラウンド測定用にKBr20mgのみのClearDiskを成型した。
得られたClearDiskを、赤外分光光度計(日本分光株式会社製、FT/IR-4100型)のClearDiskホルダにセットし、常温常圧下にて測定した。測定条件は以下のとおりである。
・検出器:TGS
・分解能:4cm-1
・測定範囲:400cm-1~4000cm-1
・積算回数:64回
4.FT-IRピークの面積強度比
スペクトル測定・解析ソフトSpectraManager(日本分光株式会社製)を用い、得られたスペクトルを横軸:波数(cm-1)、縦軸:透過率(%T)で表示し、大気補正(CO減算、水蒸気減算)を行った後、スペクトルのスムージング(方式:Savitzky-Golay、コンボリューション幅:15)を行った。その後、3350cm-1と3550cm-1との間に位置するピーク谷(極小値)と4000cm-1の透過率との差を70とし、1200cm-1、2500cm-1、4000cm-1の3点の透過率を80とすることで、規格化を行った。規格化後、ノイズレベル>0.5で検出され、1270cm-1~1460cm-1の範囲内のピークを第1ピークA1、1460cm-1~1720cm-1の範囲内のピークを第2ピークA2とし、ノイズレベル=1.0で検出される1270cm-1~1720cm-1の最大極大点と、スペクトル上の1270cm-1あるいは1720cm-1を結ぶ直線をA1、A2のベースラインとした。各ベースラインとスペクトルで囲まれる面積をそれぞれA1、A2の面積強度SA1、SA2とし、第1ピークA1の面積強度に対する第2ピークA2の面積強度の比RIR(SA2/SA1)を算出した。
【0053】
【表2】
【0054】
図2から、実施例1、2および比較例6、7は、2930cm-1~3140cm-1の範囲内にピークまたはショルダーを実質的に有しないことが確認される。
【0055】
<評価>
各実施例および比較例で得られた試料について、熱安定性を下記の方法により評価した。
1.発泡
PVC(信越化学工業株式会社製、TK-700;塩化ビニル系樹脂、重合度700)100重量部、Zn-st(日油株式会社製、ジンクステアレート;滑剤および熱安定剤)0.6重量部、Ca-st(日油株式会社製、カルシウムステアレート;滑剤および熱安定剤)0.6重量部、SBM(JIAXIAN社製、ステアロイルベンゾイルメタン;着色防止剤)0.2重量部、WAX OP(Clariant社製、モルタン酸ナトリウムとモルタン酸カルシウムの混合物;滑剤)0.4重量部、Castor wax(Koster Keunem社製、硬化ひまし油;滑剤)0.8重量部および得られた試料1.0重量部を、190℃において、オープンロールを用いて3分間混練し樹脂サンプルを得た。
得られた樹脂サンプルを圧縮成型機にて230℃で5分間加熱圧縮して、縦75mm、横25mm、厚み2mmのテストピースを作製し、テストピースの発泡度合いを評価した。具体的には、得られたテストピースを図3に示すように画像化し、得られた所定サイズの画像において発泡に該当する箇所が占める割合(発泡割合RRESIN)を算出することにより評価した。評価結果を焼成温度とともに表3に示す。なお、発泡の評価基準は以下のとおりである。
(評価基準)
良好:0≦RRESIN≦0.14
やや不良:0.14<RRESIN≦0.23
不良:0.23<RRESIN≦1
2.着色
PVC(信越化学工業株式会社製、TK-1300;塩化ビニル系樹脂、重合度1300)100重量部、DINP(大八化学工業株式会社製、ジイソノニルフタレート;可塑剤)50重量部、Zn-st(日油株式会社製、ジンクステアレート;滑剤および熱安定剤)0.6重量部および得られた試料3.0重量部を、200℃において、プラストミルを用いて回転数30rpmで混練し樹脂サンプルを得た。
混練完了後、5分ごとに混練槽(200℃)から樹脂サンプルを取り出し、着色度合いを観察した。観察結果を焼成温度とともに図4に示す。また、着色度合いをColor meter(日本電色工業株式会社製、ZE6000)でYellow Indexを測定することにより評価した。混練20分後のYellow Index(初期着色)およびYellow Indexの値が130を超える時間(経時着色)を表3に示す。なお、着色の評価基準は以下のとおりである。
(初期着色の評価基準)
良好:Yellow Index≦60
やや不良:60<Yellow Index≦80
不良:80<Yellow Index
(経時着色の評価基準)
良好:65<時間(分)
やや不良:40<時間(分)≦65
不良:時間(分)≦40
【0056】
【表3】
【0057】
実施例1、2において、極めて顕著に発泡の発生が抑制されている。焼成を行わなかった比較例1の発泡は、主に、層間水およびCOガスに起因すると考えられる。焼成温度が高い比較例6、7における発泡は、主に、樹脂の脱塩酸反応由来の塩酸とハイドロタルサイト類化合物の表面との中和反応により発生する水、そして層間CO 2-由来のCOガスに起因すると考えられる。なお、当該反応は、pH-stat法を用いることにより確認することができる。
【0058】
実施例1、2においては、着色(初期着色および経時着色)も良好に抑制されている。焼成温度が高い程、着色のスピードが速くなる傾向にある。これは、樹脂由来の塩化物イオンの捕捉能の低下によるものと考えられる。
【0059】
上記発泡および着色(初期着色および経時着色)の評価結果から、実施例においては、熱安定性に優れ得る。
【0060】
なお、試料(粉末)を添加しない樹脂サンプルについても上記評価を試みたが、熱劣化により成形途中で黒化して評価できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の1つの実施形態におけるハイドロタルサイト類化合物は、塩素含有樹脂と好適に組み合わせられ得る。
図1A
図1B
図2
図3
図4