(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】情報処理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20250116BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2023556144
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032075
(87)【国際公開番号】W WO2023074102
(87)【国際公開日】2023-05-04
【審査請求日】2024-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2021174407
(32)【優先日】2021-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392026693
【氏名又は名称】株式会社NTTドコモ
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121980
【氏名又は名称】沖山 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【氏名又は名称】深石 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 亮勢
(72)【発明者】
【氏名】山口 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】泉澤 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】中村 佑輔
【審査官】青柳 光代
(56)【参考文献】
【文献】特許第6935118(JP,B1)
【文献】国際公開第2021/106099(WO,A1)
【文献】特開2021-086280(JP,A)
【文献】特開2017-174198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
望ましい行動を自発的にとることをユーザに促すしかけであるナッジについて、複数回リコメンドされることによる摩耗の効果の検証、及び、摩耗後に期間が経過することによる回復の効果の検証に係る情報処理装置であって、
互いに対象ナッジが異なる複数のナッジ群を含む検証グループを複数グループ分規定した検証グループ管理テーブルを記憶する検証グループ記憶部と、
複数のユーザのそれぞれについて、所属先の前記検証グループ及び前記ナッジ群を特定する情報を規定したユーザ管理テーブルを記憶するユーザ情報記憶部と、
前記複数のユーザのそれぞれについてリコメンドされる情報であるリコメンド情報を規定したテーブルであって、該リコメンド情報のリコメンド開始時の値として前記対象ナッジを規定したユーザナッジ定義テーブルを記憶するユーザナッジ記憶部と、
リコメンド開始から複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過したタイミングで、前記ユーザナッジ定義テーブルにおける前記リコメンド情報を、前記対象ナッジとは
別のナッジに変更することと、変更後、複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過したタイミングで、前記ユーザナッジ定義テーブルにおける前記リコメンド情報を、
再度前記対象ナッジに変更することと、を実行するように構成されたナッジ変更部と、
各前記ユーザに対
して利用するアプリケーションを通じて端末に通知されることによりリコメンドされた前記対象ナッジのリコメンド結果を
前記端末から取得し、前記対象ナッジのリコメンド結果
に基づき前記ユーザ管理テーブルを更新する更新部と、を備え、
前記更新部は、前記リコメンド結果として、前記対象ナッジがリコメンドされている期間における行動変容回数を取得し、前記ユーザ管理テーブルにおいて規定される累計行動変容回数を更新する、情報処理装置。
【請求項2】
現在の振り分け先の前記検証グループを一意に特定する情報と、前記現在の振り分け先の検証グループに含まれる前記複数のナッジ群のユーザの数の目標値とが互いに紐づけられて規定されたユーザ登録管理テーブルを記憶しており、前記ユーザ登録管理テーブルに基づいて、複数の前記検証グループの中から新規ユーザの登録時に振り分ける
前記現在の振り分け先
の検証グループを特定すると共に、前記
現在の振り分け先の検証グループに含まれる前記複数のナッジ群に属する前記ユーザの数が
、前記ユーザ登録管理テーブルにおいて規定された前記目標値に到達しているか否かを判定し、到達している場合には、前記振り分け先の検証グループの変更処理を行う、振り分け先管理部を更に備え
、
前記振り分け先管理部は、前記変更処理として、手動での検証グループ変更を促す変更促進メールを出力する処理、または、前記ユーザ登録管理テーブルにおける前記現在の振り分け先の検証グループを変更する処理を行う、請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記ユーザ登録管理テーブルに基づいて、前記現在の振り分け先の検証グループを特定し、前記検証グループ管理テーブルに基づいて、特定した前記現在の振り分け先の検証グループに含まれる各前記ナッジ群を特定し、前記ユーザ管理テーブルに基づいて、特定した前記ナッジ群が紐づいており且つ前記対象ナッジが1回以上介入している前記ユーザの数を
各前記ナッジ群ごとに導出し、該ユーザの数に応じて、各前記ナッジ群への振り分け比率を決定する振り分け比率決定部と、
新規ユーザの登録時において、前記振り分け比率に基づき
、前記ユーザ管理テーブルにおいて規定される該新規ユーザの
前記所属先
のナッジ群を決定するナッジ決定部と、を更に備え、
前記更新部は、前記ナッジ決定部によって決定された情報に基づき、前記新規ユーザに関して前記ユーザ管理テーブルを更新する、請求項2記載の情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、個人や社会にとって望ましい行動を自発的にとることを促す認知バイアスに基づく仕掛けであるナッジによって、ユーザに行動変容を促すシステムが記載されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
行動経済学において、上述したナッジは摩耗するものと考えられている。ここでのナッジの摩耗とは、繰り返し介入(ユーザへのリコメンド)が実施されることによってナッジによる行動変容効果が減少することを言う。また、繰り返し介入が実施されることによって一度磨耗したナッジであっても、ある程度期間が経過すると、行動変容効果が回復すると考えられる。従来、このようなナッジの摩耗及び回復の効果について、適切に検証する手段が提案されていない。
【0005】
本発明の一態様は上記実情に鑑みてなされたものであり、ナッジの摩耗及び回復の効果を適切に検証することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、望ましい行動を自発的にとることをユーザに促すしかけであるナッジについて、複数回リコメンドされることによる摩耗の効果の検証、及び、摩耗後に期間が経過することによる回復の効果の検証に係る情報処理装置であって、互いに対象ナッジが異なる複数のナッジ群を含む検証グループを複数グループ分規定した検証グループ管理テーブルを記憶する検証グループ記憶部と、複数のユーザのそれぞれについて、所属先の検証グループ及びナッジ群を特定する情報を規定したユーザ管理テーブルを記憶するユーザ情報記憶部と、複数のユーザのそれぞれについてリコメンドされる情報であるリコメンド情報を規定したテーブルであって、該リコメンド情報のリコメンド開始時の値として対象ナッジを規定したユーザナッジ定義テーブルを記憶するユーザナッジ記憶部と、リコメンド開始から複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過したタイミングで、ユーザナッジ定義テーブルにおけるリコメンド情報を、対象ナッジとは異なる情報に変更することと、変更後、複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過したタイミングで、ユーザナッジ定義テーブルにおけるリコメンド情報を、対象ナッジに変更することと、を実行するように構成されたナッジ変更部と、各前記ユーザに対する対象ナッジのリコメンド結果を取得し、対象ナッジのリコメンド結果がユーザ管理テーブルにおいて新たに規定されるように、ユーザ管理テーブルを更新する更新部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る情報処理装置は、ナッジの摩耗及び回復の効果の検証に係る情報処理装置である。本情報処理装置では、複数のナッジ群を含む検証グループが複数グループ分規定されており、複数のユーザのそれぞれについて所属先の検証グループ及びナッジ群が規定されている。そして、複数のユーザのそれぞれについて、リコメンド情報のリコメンド開始時の値として対象ナッジ(所属先のナッジ群毎に異なる対象ナッジ)が規定されており、複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過するとリコメンド情報が対象ナッジとは異なる情報に変更され、さらに複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過するとリコメンド情報が再度対象ナッジに変更される。ここで、リコメンド開始時の値として対象ナッジが規定されている状態で複数回のリコメンドが実施されることにより、当該対象ナッジは徐々に摩耗していくことが想定される。このように徐々に摩耗していく対象ナッジのリコメンド結果が取得されてユーザ管理テーブルにおいて規定されることにより、対象ナッジの摩耗の検証に好適な情報を適切に取得することができる。また、対象ナッジが磨耗した後に、所定の期間だけ他の情報が複数回リコメンドされることにより、一度摩耗した対象ナッジの効果が回復することが想定される。そして、その後に再度対象ナッジがリコメンドされてリコメンド結果が取得されユーザ管理テーブルにおいて規定されることにより、対象ナッジの回復の検証に好適な情報を適切に取得することができる。このような構成によれば、ナッジの摩耗及び回復の効果の検証に好適な情報を適切に取得し、ナッジの摩耗及び回復の効果の適切な検証に寄与することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、ナッジの摩耗及び回復の効果を適切に検証することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ナッジによってユーザの行動変容を促す一連の流れについて説明する図である。
【
図2】
図2は、ナッジの摩耗について説明する図である。
【
図3】
図3は、ナッジの摩耗及び回復の効果の検証に係る実証実験について説明する図である。
【
図4】
図4は、
図3に示される実証実験における各検証グループについて説明する図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るナッジ管理装置の機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、ユーザナッジ定義テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、検証グループ管理テーブルの一例を示す図である。
【
図8】
図8は、ユーザ管理テーブルの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、ユーザ登録管理テーブルの一例を示す図である。
【
図10】
図10は、振り分け先の特定について説明する図である。
【
図11】
図11は、対象ナッジの変更(切り替え)について説明する図である。
【
図12】
図12は、新規ユーザの振り分け処理を示すシーケンス図である。
【
図13】
図13は、対象ナッジの変更(切り替え)処理を示すシーケンス図である。
【
図14】
図14は、実施形態に係るナッジ管理装置のハードウェア構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
【0011】
最初に、本実施形態で説明するナッジ、及び、ナッジを利用したユーザへの行動変容の促進について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、ナッジによってユーザの行動変容を促す一連の流れについて説明する図である。
図2は、ナッジの摩耗について説明する図である。
【0012】
ナッジとは、個人や社会にとって望ましい行動を自発的にとることをユーザに促す、認知バイアスに基づく仕組みやしかけである。本実施形態では、ナッジが、スマートフォン等の通信端末に表示されるメッセージ等の表示である例を説明する。
図1では、ユーザYがバス500に乗車するためにバス停800に向かっているシーンを想定している。
図1に示されるように、いま、ユーザYが乗車すると想定されているバス500(次バス)の混雑度が高いとする。この場合、例えば所定のアプリケーション(例えばバス乗車をアシストするバスアプリ)を通じてユーザYのスマートフォン等の通信端末100にプッシュ通知を実施する。当該プッシュ通知は、ユーザに行動変容を促すナッジに係る通知であり、具体的には、混雑している次バス500以外のバス(おすすめバス)の乗車を促すナッジに係る通知である。
【0013】
図1に示されるように、ユーザYが通信端末100に通知されたプッシュ通知からナッジ画面に遷移すると、「空いている後続バスを待って快適な乗車を」「見送り協力の方にはポイント10pを進展」等のメッセージと共に、次バス500が混雑していることを示す情報、及び、おすすめバスの発車予定時刻や混雑状況を示す情報が表示される。このようにプッシュ通知に応じてナッジ画面に遷移した状態が、ユーザに「ナッジ介入」された状態である。ユーザYは、ナッジ画面を確認して、当初予定していた行動から変更して、「おすすめバスに乗車する」との行動をとるか否かを選択する。
【0014】
ユーザYに効果的に行動変容を促す(上記の例であれば「おすすめバスに乗車」させる)ためには、適切なタイミングにおいて、最も効果のあるナッジでユーザYに介入することが重要である。ナッジ介入を行う適切なタイミングについては、例えば、通信端末100のアプリケーション(上記の例であれば「バスアプリ」)を通じて取得される情報やユーザYの位置情報等に基づいて決定されてもよい。本実施形態では、ナッジ介入を行うタイミングについては詳細な説明を省略する。効果のあるナッジについては、例えば、通信端末100のアプリケーション(上記の例であれば「バスアプリ」)を通じて取得される情報に基づいて、現在のシーンにおいて最も行動変容効果が高いナッジを選択することが考えられる。例えば、上記の乗車予定のバス500が混雑している例において、交通手段の変更を促すナッジ、乗車見送りを促すナッジ、寄り道を促すナッジがある場合に、一般的に最もユーザが選択する確率が高いと思われる乗車見送りを促すナッジを選択すること等が考えられる。
【0015】
ここで、ナッジの行動変容効果については、行動経済学上、一定ではなく変化することが想定される。具体的には、
図2に示されるように、日常的(連続的且つ長期的)にユーザに介入したナッジについては、行動変容効果が徐々に減少していくことが考えられる。以下では、このような、ユーザへの介入によるナッジの行動変容効果の減少を「ナッジの摩耗」という場合がある。ナッジの摩耗が進んだ状態においては、ユーザはそのナッジ(情報)を見たくないと考え、ユーザの行動変容を促すことが難しくなる。一方で、ナッジの摩耗が進んでいない状態において、ユーザはそのナッジ(情報)に関心を示す可能性が高く、ユーザの行動変容を効果的に促すことができる。ナッジの摩耗を特定することによって、より行動変容効果が高いナッジを選択することが可能になるといえる。
【0016】
なお、例えば繰り返しユーザに介入されて一度摩耗したナッジであっても、所定期間介入が行われない等の場合においては、ナッジの行動変容効果が徐々に回復していくことが考えられる。以下では、このようなナッジの行動変容効果の回復を「ナッジの回復」という場合がある。ナッジの回復を特定することによって、より行動変容効果が高いナッジを選択することが可能になると言える。
【0017】
上述したように、ナッジの摩耗及び回復を考慮することは、リコメンド対象のナッジを適切に選択する上で重要である。そこで、実証実験を行い、各ナッジの摩耗及び回復の効果を予め検証しておくことが考えられる。複数のナッジの摩耗及び回復の効果を検証する実証実験について、
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は、ナッジの摩耗及び回復の効果の検証に係る実証実験について説明する図である。
図4は、
図3に示される実証実験における各検証グループについて説明する図である。
【0018】
実証実験は、摩耗及び回復の効果の検証を行うナッジである対象ナッジが互いに異なる複数のナッジ群単位で実施される。
図3においては、対象ナッジがナッジpであるナッジP群、対象ナッジがナッジaであるナッジA群、対象ナッジがナッジbであるナッジB群、及び、対象ナッジがナッジcであるナッジC群が例示されている。そして、各ナッジ群には、対象ナッジのリコメンド先である複数(
図3の例では約300人)のユーザが所属している。
【0019】
図3に示されるように、実証実験では、実証期間が第一区間、第一区間に続く第二区間、第二区間に続く第三区間の3つの区間(期間)に分けられている。第一区間では、各ナッジ群の各ユーザに対して対象ナッジが複数回リコメンドされる。例えば、ナッジA群の約300人のユーザそれぞれに対して、複数回に亘って、対象ナッジであるナッジaがリコメンドされる。このような、一定期間同じナッジが繰り返しリコメンドされる第一区間は、対象ナッジの摩耗の検証に係る区間である。
【0020】
第二区間では、各ナッジ群の各ユーザに対して対象ナッジとは異なる情報がリコメンドされる。
図3に示される例では、対象ナッジとは異なる情報として、共通のナッジpが示されている。ここでのナッジpは、説明の便宜上ナッジであるとして説明するが、ナッジ要素のない単なるメッセージであってもよい。また、第二区間は、対象ナッジがリコメンドされない区間であればよく、例えばいずれのナッジのリコメンドも実施されない区間であってもよい。なお、
図3に示される各ナッジ群の内、ナッジP群は、他のナッジ群とは異なり、区間によってナッジの切り替えが行われておらず、常にナッジpがリコメンドされている。このようなナッジP群のナッジpは、それ自身の摩耗及び回復の効果の検証を行うためのナッジではなく、例えば他の対象ナッジであるナッジa,b,cの評価(検証)を行う際の参考情報等に用いられるものである。
【0021】
第三区間では、各ナッジ群の各ユーザに対して、再度、対象ナッジが複数回リコメンドされる。例えば、ナッジA群の約300人のユーザそれぞれに対して、複数回に亘って、対象ナッジであるナッジaがリコメンドされる。上述した第二区間及び第三区間は、第一区間において摩耗した対象ナッジの回復(第二区間において対象ナッジとは異なる情報がリコメンドされたことによる対象ナッジの回復)の検証に係る区間である。このように、実証実験では、実証期間を分割して区間単位でナッジを定めるため、適切なタイミングでユーザにリコメンドするナッジを切り替える必要がある(詳細は後述)。
【0022】
そして、実証実験では、各対象ナッジの摩耗及び回復の効果の検証を適切に行う観点から、ナッジ群毎のユーザ数(学習データ)に偏りが出ないようにしたい。
図4に示される例では、複数のナッジ群を含む検証グループを一単位として、1つの検証グループ(例えば第一検証グループ)に含まれる各ナッジ群(ナッジA群、ナッジB群、ナッジC群、ナッジP群)に新規ユーザ(user1~user4…)を振り分けている。そして、第一検証グループに含まれる各ナッジ群に所属するユーザ数が目的値に到達すると、新規ユーザが登録される検証グループが次の検証グループ(例えば第二検証グループ)に変更され、該第二検証グループに含まれる各ナッジ群(ナッジD群、ナッジE群、ナッジF群、ナッジG群)に新規ユーザを振り分けている。このように、実証実験では、新規ユーザの登録時に、ナッジ群毎のユーザ数に偏りが出ないように、新規ユーザを各ナッジ群に適切に振り分ける必要がある(詳細は後述)。以下では、実証実験を適切に行うために実施される、新規ユーザのナッジ群振り分け処理、及び、区間切り替え処理について主に説明する。
【0023】
図5は、実施形態に係るナッジリコメンドシステム1(情報処理装置)に含まれるナッジ管理装置10の機能ブロック図である。ナッジリコメンドシステム1は、ユーザにナッジをリコメンドするシステムであり、ここでは特に、上述した実証実験を実施するシステムである。
図5に示されるように、ナッジリコメンドシステム1は、通信端末100のアプリケーション101と、ユーザナッジ記憶部200と、ナッジ管理装置10とを含んで構成されている。なお、ナッジリコメンドシステム1には、実際には、互いに異なるユーザの複数の通信端末100のアプリケーション101が含まれているが、説明の便宜上、ここでは1つの通信端末100のアプリケーション101のみを説明する。
【0024】
通信端末100は、無線通信可能な端末であればよく、例えばスマートフォン、タブレット型端末、PC端末等である。アプリケーション101は、通信端末100において起動可能なアプリケーションであればよく、例えば上述したバス乗車をアシストするバスアプリ等である。
【0025】
ユーザナッジ記憶部200は、複数のユーザのそれぞれについて、リコメンドされる情報であるリコメンド情報を規定したユーザナッジ定義テーブル200aを記憶するデータベースである。
図6は、ユーザナッジ定義テーブル200aの一例を示す図である。
図6に示されるように、ユーザナッジ定義テーブル200aでは、ユーザIDと、ナッジID1と、ナッジID2とが互いに紐づけられて規定されている。ユーザIDは、ユーザを一意に特定する情報である。ナッジID1は、リコメンドされるナッジに係る心理バイアスを一意に特定する情報である。心理バイアスとは、例えば損失回避バイアス、同調バイアス等である。ナッジID2は、リコメンドされるナッジの種類を一意に特定する情報である。ナッジの種類とは、ナッジID1で示される心理バイアスのナッジの内、どの種類のナッジであるかを示す情報である。例えば、ナッジID1=1が損失回避バイアスである場合において、損失回避バイアスのナッジ(ナッジID1=1のナッジ)が複数存在することが考えられるが、ナッジID2の情報によって、複数の損失回避バイアスのナッジの内、どの種類のナッジであるかが一意に特定される。このように、ナッジID1及びナッジID2によって、リコメンド情報が特定される。
【0026】
図6の例3(ユーザID=003)に示されるように、新規にアプリケーション101に登録されたユーザについては、ナッジID1=ナッジID2=0が初期値として規定される。後述するように、ナッジ決定部15によってユーザの所属先のナッジ群が決定され対象ナッジが決まると、当該対象ナッジを一意に特定するナッジID1及びナッジID2の値が、リコメンド開始時のリコメンド情報として規定される。なお、上述した区間切り替え処理が実施される際には、ユーザナッジ定義テーブル200aのナッジID1及びナッジID2の値が変更されることによりリコメンド情報が変更される(詳細は後述)。
【0027】
なお、ユーザナッジ記憶部200は、複数種類のナッジの情報を記憶していてもよい。ユーザナッジ記憶部200は、上述したナッジID1,ID2に紐づく情報として、例えば、介入条件と、促す行動の内容と、行動変容効果と、インセンティブと、を紐づけて記憶していてもよい。介入条件とは、どのような場合に介入されるナッジの候補となるかを示す情報であり、例えば「乗車予定のバスが混雑している場合」のように規定されている。促す行動の内容とは、ナッジがユーザに促す行動の具体的な内容であり、例えば「混雑していない後続のバスに乗車する」のように規定されている。行動変容効果とは、ナッジ介入が行われた場合にナッジが促す行動をユーザがとる度合い(確率)を示す情報であり、例えば「10%」のように規定されている。インセンティブとは、ナッジが促す行動をユーザが実施した場合にユーザが受けるインセンティブであり、例えば「ポイント10p」のように規定されている。このような情報が記憶されていることにより、ユーザナッジ定義テーブル200aに規定されたナッジID1,ID2に基づいて、各ユーザのアプリケーション101へのナッジのリコメンドが実施される。
【0028】
図5に戻り、ナッジ管理装置10は、望ましい行動を自発的にとることをユーザに促すしかけであるナッジについて、複数回リコメンドされることによる摩耗の効果の検証、及び、摩耗後に期間が経過することによる回復の効果の検証に係る装置である。ナッジ管理装置10は、上述した新規ユーザのナッジ群振り分け処理、及び、区間切り替え処理を実施する装置である。ナッジ管理装置10は、検証グループ記憶部11と、ユーザ情報記憶部12と、振り分け先管理部13と、振り分け比率決定部14と、ナッジ決定部15と、ナッジ変更部16と、更新部17と、を備えている。
【0029】
検証グループ記憶部11は、互いに対象ナッジが異なる複数のナッジ群を含む検証グループを複数グループ分規定した検証グループ管理テーブル11aを記憶するデータベースである。
図7は、検証グループ管理テーブル11aの一例を示す図である。
図7に示されるように、検証グループ管理テーブル11aでは、例えば、検証グループを一意に特定する検証グループIDと、ナッジ群を一意に特定するナッジ群IDと、第一区間ナッジID1,ID2と、第二区間ナッジID1,ID2と、第三区間ナッジID1,ID2と、…第N区間ナッジID1,ID2と、が互いに紐づけられて規定されている。ナッジID1は、リコメンドされるナッジに係る心理バイアスを一意に特定する情報である。ナッジID2は、リコメンドされるナッジの種類を一意に特定する情報である。このように、ナッジID1及びナッジID2によって、リコメンド情報が特定される。例えば
図7に示される例では、同じ検証グループIDに属するナッジ群ID:A及びナッジ群ID:Bの2つのナッジ群が示されている。そして、各ナッジ群について、第一区間~第三区間のそれぞれにおいてリコメンドされるナッジIDが規定されている。
【0030】
ユーザ情報記憶部12は、複数のユーザのそれぞれについて所属先の検証グループ及びナッジ群を特定する情報を規定したユーザ管理テーブル12aを記憶するデータベースである。
図8は、ユーザ管理テーブル12aの一例を示す図である。
図8に示されるように、ユーザ管理テーブル12aでは、例えば、ユーザIDと、ナッジ群IDと、第一区間ナッジID1,ID2と、第二区間ナッジID1,ID2と、第三区間ナッジID1,ID2と、…第N区間ナッジID1,ID2と、実証開始日と、第一区間累計プッシュ通知回数と、第一区間累計ナッジ介入回数と、第一区間累計行動変容回数と、…が互いに紐づけられて規定されている。実証開始日とは、初めてナッジによる介入が行われた日である。第一区間累計プッシュ通知回数とは、第一区間における当該ユーザへの第一区間ナッジの累計プッシュ通知回数である。第一区間累計ナッジ介入回数とは、第一区間における当該ユーザへの第一区間ナッジの累計介入回数である。第一区間累計行動変容回数とは、第一区間における当該ユーザの第一区間ナッジに応じた累計行動変容回数である。なお、
図8においては、第一区間の累計プッシュ通知回数、累計ナッジ介入回数、及び累計行動変容回数のみが規定されているが、実際には、例えば第一区間~第三区間がある場合には、第一区間~第三区間についてそれぞれ累計プッシュ通知回数、累計ナッジ介入回数、及び累計行動変容回数が規定されている。
図8におけるユーザID、ナッジ群ID、第一区間ナッジID1,ID2と、第二区間ナッジID1,ID2、第三区間ナッジID1,ID2、…及び第N区間ナッジID1,ID2については、ユーザの初期登録時においてナッジ決定部15によって決定されて登録される情報であり、基本的に変更されない情報である。
図8におけるそれ以外の情報(実証開始日、累計プッシュ通知回数と、累計ナッジ介入回数と、及び累計行動変容回数)は、ユーザへのリコメンド結果に応じて更新部17に更新される情報である。
【0031】
振り分け先管理部13は、複数の検証グループの中から新規ユーザの登録時に振り分ける振り分け先の検証グループ(以下、現在の検証グループという場合がある)を特定する。
図9は、ユーザ登録管理テーブル13aの一例を示す図である。振り分け先管理部13は、
図9に示されるユーザ登録管理テーブル13aを記憶しており、当該ユーザ登録管理テーブル13aに基づいて現在の検証グループを特定する。
図9に示されるように、ユーザ登録管理テーブル13aでは、現在の検証グループIDと、各ナッジ群の目標サンプル数と、グループID自動切換モードのON/OFFとが互いに紐づけられて規定されている。現在の検証グループIDとは、振り分け先の検証グループを一意に特定する情報である。各ナッジ群の目標サンプル数とは、現在の検証グループIDで示される検証グループに含まれる各ナッジ群の目標サンプル数(目標値)である。グループID自動切換えモードとは、条件を満たしたときに現在の検証グループIDを自動で切り替える(ON)か否(OFF)かを規定した情報である。
【0032】
振り分け先管理部13は、現在の検証グループに含まれる複数のナッジ群に属するユーザ数が目標値に到達しているか否かを判定する。すなわち、振り分け先管理部13は、検証グループ管理テーブル11aから、現在の検証グループのナッジ群ID、及び、各ナッジ群IDに紐づくナッジIDを特定する。例えば
図10に示される例では、検証グループ管理テーブル11aにおいて、現在の検証グループID:1に紐づいているナッジ群ID:A,B,Pを特定している。そして、振り分け先管理部13は、ユーザ管理テーブル12aにおいて、上記で特定した各ナッジ群IDが紐づいているユーザのユーザIDを抽出し、ユーザ数が目標値に到達しているか否かを判定する。ここでの目標値とは、ユーザ登録管理テーブル13aに規定された目標サンプル数である。なお、目標サンプル数は、システム運用者が手動で変更可能とされていてもよい。
【0033】
そして、振り分け先管理部13は、ユーザ数が目標値に到達している場合には、現在の検証グループの変更処理を行う。ここでの変更処理とは、グループID自動切換えモードがOFFにされている場合には、システム運用者による手動での検証グループ変更を促す変更促進メール等の処理である。また、ここでの変更処理とは、グループID自動切換えモードがONにされている場合には、検証グループ管理テーブル11aに規定された現在の検証グループIDを自動で変更する処理である。
【0034】
振り分け比率決定部14は、現在の検証グループの各ナッジ群について、対象ナッジが1回以上介入しているユーザの数(アクティブユーザの数)を導出し、該アクティブユーザの数に応じて、各ナッジ群への振り分け比率を決定する。振り分け比率決定部14は、例えば新規ユーザ登録があった際に、まず、振り分け先管理部13のユーザ登録管理テーブル13a(
図9参照)から現在の検証グループを特定する。そして、振り分け比率決定部14は、検証グループ管理テーブル11aから、現在の検証グループのナッジ群ID、及び、各ナッジ群IDに紐づくナッジIDを特定する。そして、振り分け比率決定部14は、ユーザ管理テーブル12a(
図8参照)において、上記で特定した各ナッジ群IDが紐づいているユーザであって、且つ、第一区間累計ナッジ介入回数が1回以上であるアクティブユーザのユーザIDを抽出する。振り分け比率決定部14は、各ナッジ群のアクティブユーザの数に応じて、各ナッジ群への振り分け比率を決定する。例えば、
図10に示されるナッジ群ID:A,B,Pのアクティブユーザの数(サンプル数)がそれぞれ11,12,5であったとする。この場合、ナッジ群ID:A,B,Pへの振り分け比率は、1/11,1/12,1/5とされる。
【0035】
ナッジ決定部15は、新規ユーザの登録時において、上述した振り分け比率に基づき新規ユーザの所属先のナッジ群を決定する。例えば、ナッジ決定部15は、振り分け比率決定部14によって決定されたナッジ群ID:A,B,Pへの振り分け比率が1/11,1/12,1/5であったとすると、当該振り分け比率に基づき、新規ユーザの所属先のナッジ群を決定する(このような確率で所属先のナッジ群を決定する)。
【0036】
更新部17は、ナッジ決定部15によって決定された情報に基づき、新規ユーザに関してユーザ管理テーブル12a(
図8参照)を更新する。具体的には、更新部17は、ユーザ管理テーブル12aにおいて、新規ユーザのユーザIDを登録すると共に、ナッジ決定部15によって決定されたナッジ群ID及び各区間のナッジIDを登録する。また、更新部17は、新規ユーザのユーザID及び第一区間のナッジID1,ID2の情報を、ユーザナッジ定義テーブル200a(
図6参照)に登録する。
【0037】
ナッジ変更部16は、リコメンド開始から複数回のリコメンドが可能となる所定の期間(例えば14日)が経過したタイミングで、ユーザナッジ定義テーブルにおけるリコメンド情報を、対象ナッジから対象ナッジとは異なる情報に変更する。すなわち、ナッジ変更部16は、対象ナッジ(第一区間ナッジ)で複数回のリコメンドが完了していると想定されるタイミングで、
図11(a)及び
図11(b)に示されるように、ユーザナッジ定義テーブル200aにおいて、リコメンド情報を、ユーザ管理テーブル12aの第二区間ナッジID1,ID2の情報に書き換える。
【0038】
更に、ナッジ変更部16は、上記変更後、複数回のリコメンドが可能となる所定の期間(例えば14日)が経過したタイミングで、ユーザナッジ定義テーブルにおけるリコメンド情報を、再度対象ナッジに変更する。すなわち、ナッジ変更部16は、第二区間ナッジで複数回のリコメンドが完了していると想定されるタイミングで、ユーザナッジ定義テーブル200aにおいて、リコメンド情報を、再度対象ナッジ(第一区間ナッジ)の情報に書き換える。ナッジ変更部16は、このように所定の期間が経過したタイミングで、次の区間のナッジに変更し、次の区間のナッジが登録されていない場合には変更(切り替え)を実施しなくてもよい。
【0039】
更新部17は、ユーザに対する対象ナッジのリコメンド結果を取得し、対象ナッジのリコメンド結果がユーザ管理テーブル12a(
図8参照)において新たに規定されるように、ユーザ管理テーブル12aを更新する。具体的には、更新部17は、少なくとも対象ナッジがリコメンドされている区間に関して、ユーザ管理テーブル12a(
図8参照)の累計プッシュ通知回数、累計ナッジ介入回数、及び累計行動変容回数を更新する。
【0040】
次に、
図12を参照して、新規ユーザの振り分け処理について説明する。
図12は、新規ユーザの振り分け処理を示すシーケンス図である。
【0041】
図12に示されるように、まず、振り分け先管理部13によって、検証グループ管理テーブル11aから現在の検証グループのナッジ群ID、及び、各ナッジ群IDに紐づくナッジIDが抽出される(ステップS1)。そして、振り分け先管理部13によって、ユーザ管理テーブル12aにおいて、上記で特定した各ナッジ群IDに紐づいているユーザのユーザIDが抽出される(ステップS2)。
【0042】
そして、現在の検証グループの各ナッジ群のユーザ数がカウントされ(ステップS3)、ユーザ数が目標値に到達しているか否かが判定される。目標値に到達している場合には、振り分け先管理部13からシステム運用者に、システム運用者による手動での検証グループ変更を促す変更促進メールが送信される(ステップS4)。この場合、システム運用者は、例えば検証グループを手動で更新してもよい(ステップS5)。また、システム運用者は、検証グループ管理テーブル11aを必要に応じて手動で更新してもよい(ステップS6)。
【0043】
このようにして現在の検証グループが確定している状態において、アプリケーション101から新規ユーザの登録がなされると(ステップS7)、まずはユーザナッジ定義テーブル200aに当該新規ユーザの情報が登録される。そして、振り分け比率決定部14に新規ユーザ確認依頼がなされ(ステップS8)、振り分け比率決定部14において現在の検証グループが特定される(ステップS9)と共に、検証グループ管理テーブル11aから現在の検証グループのナッジ群ID、及び、各ナッジ群IDに紐づくナッジIDが抽出される(ステップS10)。
【0044】
そして、振り分け比率決定部14によって、現在の検証グループの各ナッジ群について、対象ナッジが1回以上介入しているユーザの数(アクティブユーザの数)が抽出される(ステップS11)。そして、振り分け比率決定部14によって各ナッジ群のアクティブユーザの数に応じて、各ナッジ群への振り分け比率が計算される(ステップS12)。振り分け比率決定部14は、算出して振り分け比率をナッジ決定部15に出力する(ステップS13)。
【0045】
つづいて、ナッジ決定部15において、上述した振り分け比率に基づき新規ユーザの所属先のナッジ群が決定される(ステップS14)。この場合、更新部17によって、ユーザ管理テーブル12aにおいて、新規ユーザのユーザIDが登録されると共に、ナッジ決定部15によって決定されたナッジ群ID及び各区間のナッジIDが登録される(ステップS15)。また、更新部17は、新規ユーザのユーザID及び第一区間のナッジID1,ID2の情報を、ユーザナッジ定義テーブル200a(
図6参照)に登録する(ステップS15)。
【0046】
ユーザナッジ定義テーブル200aにおいて第一区間のナッジID1,ID2の情報がリコメンド情報として登録されると、アプリケーション101への対象ナッジのリコメンドが開始される(ステップS17)。そして、リコメンド結果が取得され(ステップS18)、取得された情報に基づきユーザ管理テーブル12aが更新される(ステップS19)。
【0047】
次に、
図13を参照して、対象ナッジの変更(切り替え)処理について説明する。
図13は、対象ナッジの変更(切り替え)処理を示すシーケンス図である。
図13に示されるように、第一区間の対象ナッジの情報がリコメンド情報として登録されると、アプリケーション101への対象ナッジのリコメンドが開始され(ステップS101)、リコメンド結果が取得され(ステップS102)、取得された情報に基づきユーザ管理テーブル12aが更新される(ステップS103)。そして、ナッジ変更部16において、複数回のリコメンドが可能となる所定の期間(例えば14日)が経過したか否かが判定される(ステップS104)。ここで所定の期間が経過していない場合には、ナッジ変更が実施されない。一方で、所定の期間が経過している場合には、ナッジ変更部16は、ユーザナッジ定義テーブル200aにおいて、リコメンド情報を、対象ナッジ以外の情報である第二区間ナッジID1,ID2の情報に変更する(ステップS105)。そしてリコメンド情報が変更された後に、新たなリコメンド情報について再度リコメンドが実施される。
【0048】
次に、本実施形態に係るナッジリコメンドシステム1の作用効果について説明する。
【0049】
ナッジリコメンドシステム1は、望ましい行動を自発的にとることをユーザに促すしかけであるナッジについて、複数回リコメンドされることによる摩耗の効果の検証、及び、摩耗後に期間が経過することによる回復の効果の検証に係る情報処理装置であって、互いに対象ナッジが異なる複数のナッジ群を含む検証グループを複数グループ分規定した検証グループ管理テーブル11aを記憶する検証グループ記憶部11と、複数のユーザのそれぞれについて、所属先の検証グループ及びナッジ群を特定する情報を規定したユーザ管理テーブル12aを記憶するユーザ情報記憶部12と、複数のユーザのそれぞれについてリコメンドされる情報であるリコメンド情報を規定したテーブルであって、該リコメンド情報のリコメンド開始時の値として対象ナッジを規定したユーザナッジ定義テーブル200aを記憶するユーザナッジ記憶部200と、リコメンド開始から複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過したタイミングで、ユーザナッジ定義テーブル200aにおけるリコメンド情報を、対象ナッジとは異なる情報に変更することと、変更後、複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過したタイミングで、ユーザナッジ定義テーブル200aにおけるリコメンド情報を、対象ナッジに変更することと、を実行するように構成されたナッジ変更部16と、各ユーザに対する対象ナッジのリコメンド結果を取得し、対象ナッジのリコメンド結果がユーザ管理テーブル12aにおいて新たに規定されるように、ユーザ管理テーブル12aを更新する更新部17と、を備える。
【0050】
本実施形態に係るナッジリコメンドシステム1は、ナッジの摩耗及び回復の効果の検証に係る情報処理装置である。本ナッジリコメンドシステム1では、複数のナッジ群を含む検証グループが複数グループ分規定されており、複数のユーザのそれぞれについて所属先の検証グループ及びナッジ群が規定されている。そして、複数のユーザのそれぞれについて、リコメンド情報のリコメンド開始時の値として対象ナッジ(所属先のナッジ群毎に異なる対象ナッジ)が規定されており、複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過するとリコメンド情報が対象ナッジとは異なる情報に変更され、さらに複数回のリコメンドが可能となる所定の期間が経過するとリコメンド情報が再度対象ナッジに変更される。ここで、リコメンド開始時の値として対象ナッジが規定されている状態で複数回のリコメンドが実施されることにより、当該対象ナッジは徐々に摩耗していくことが想定される。このように徐々に摩耗していく対象ナッジのリコメンド結果が取得されてユーザ管理テーブル12aにおいて規定されることにより、対象ナッジの摩耗の検証に好適な情報を適切に取得することができる。また、対象ナッジが磨耗した後に、所定の期間だけ他の情報が複数回リコメンドされることにより、一度摩耗した対象ナッジの効果が回復することが想定される。そして、その後に再度対象ナッジがリコメンドされてリコメンド結果が取得されユーザ管理テーブル12aにおいて規定されることにより、対象ナッジの回復の検証に好適な情報を適切に取得することができる。このような構成によれば、ナッジの摩耗及び回復の効果の検証に好適な情報を適切に取得し、ナッジの摩耗及び回復の効果の適切な検証に寄与することができる。
【0051】
ナッジリコメンドシステム1は、複数の検証グループの中から新規ユーザの登録時に振り分ける振り分け先の検証グループを特定すると共に、振り分け先の検証グループに含まれる複数のナッジ群に属するユーザ数が目標値に到達しているか否かを判定し、到達している場合には、振り分け先の検証グループの変更処理を行う、振り分け先管理部13を更に備える。このような構成によれば、検証に係るユーザ数が目標値に到達すると、新規ユーザが登録される検証グループが切り替えられることとなる。このことで、各検証グループに含まれるユーザ数に偏りが出ることを抑制することができる。これにより、種々の対象ナッジについて、万遍なく、摩耗及び回復の効果の検証に好適な情報を取得することができる。
【0052】
ナッジリコメンドシステム1は、振り分け先の検証グループの各ナッジ群について、対象ナッジが1回以上介入している全ユーザの数を導出し、該ユーザの数に応じて、各ナッジ群への振り分け比率を決定する振り分け比率決定部14と、新規ユーザの登録時において、振り分け比率に基づき該新規ユーザの所属先のナッジ群を決定するナッジ決定部15と、を更に備え、更新部17は、ナッジ決定部15によって決定された情報に基づき、新規ユーザに関してユーザ管理テーブル12aを更新する。このように、各ナッジ群に振り分ける比率が、対象ナッジが1回以上介入しているユーザ(アクティブユーザ)の数によって決定され、当該比率に基づき新規ユーザの所属先のナッジ群が決定され、新規ユーザに関してユーザ管理テーブル12aが更新されることにより、同一の検証グループ内において、各ナッジ群のアクティブユーザの数に偏りが出ることを抑制することができる。これにより、種々の対象ナッジについて、万遍なく、摩耗及び回復の効果の検証に好適な情報を取得することができる。
【0053】
次に、上述したナッジ管理装置10のハードウェア構成について、
図14を参照して説明する。ナッジ管理装置10は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、バス1007などを含むコンピュータ装置として構成されてもよい。
【0054】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。ナッジ管理装置10のハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0055】
ナッジ管理装置10における各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信や、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0056】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。例えば、ナッジ変更部16等の制御機能はプロセッサ1001で実現されてもよい。
【0057】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。
【0058】
例えば、ナッジ変更部16等の制御機能は、メモリ1002に格納され、プロセッサ1001で動作する制御プログラムによって実現されてもよく、他の機能ブロックについても同様に実現されてもよい。上述の各種処理は、1つのプロセッサ1001で実行される旨を説明してきたが、2以上のプロセッサ1001により同時又は逐次に実行されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。なお、プログラムは、電気通信回線を介してネットワークから送信されても良い。
【0059】
メモリ1002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本発明の一実施の形態に係る無線通信方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0060】
ストレージ1003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CDROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。上述の記憶媒体は、例えば、メモリ1002及び/又はストレージ1003を含むデータベース、サーバその他の適切な媒体であってもよい。
【0061】
通信装置1004は、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0062】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサなど)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカー、LEDランプなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0063】
また、プロセッサ1001やメモリ1002などの各装置は、情報を通信するためのバス1007で接続される。バス1007は、単一のバスで構成されてもよいし、装置間で異なるバスで構成されてもよい。
【0064】
また、ナッジ管理装置10は、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0065】
以上、本実施形態について詳細に説明したが、当業者にとっては、本実施形態が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本実施形態は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本実施形態に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【0066】
本明細書で説明した各態様/実施形態は、LTE(Long Term Evolution)、LTE-A(LTE-Advanced)、SUPER 3G、IMT-Advanced、4G、5G、FRA(Future Radio Access)、W-CDMA(登録商標)、GSM(登録商標)、CDMA2000、UMB(Ultra Mobile Broad-band)、IEEE 802.11(Wi-Fi)、IEEE 802.16(WiMAX)、IEEE 802.20、UWB(Ultra-Wide Band)、Bluetooth(登録商標)、その他の適切なシステムを利用するシステム及び/又はこれらに基づいて拡張された次世代システムに適用されてもよい。
【0067】
本明細書で説明した各態様/実施形態の処理手順、シーケンス、フローチャートなどは、矛盾の無い限り、順序を入れ替えてもよい。例えば、本明細書で説明した方法については、例示的な順序で様々なステップの要素を提示しており、提示した特定の順序に限定されない。
【0068】
入出力された情報等は特定の場所(例えば、メモリ)に保存されてもよいし、管理テーブルで管理してもよい。入出力される情報等は、上書き、更新、又は追記され得る。出力された情報等は削除されてもよい。入力された情報等は他の装置へ送信されてもよい。
【0069】
判定は、1ビットで表される値(0か1か)によって行われてもよいし、真偽値(Boolean:true又はfalse)によって行われてもよいし、数値の比較(例えば、所定の値との比較)によって行われてもよい。
【0070】
本明細書で説明した各態様/実施形態は単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよいし、実行に伴って切り替えて用いてもよい。また、所定の情報の通知(例えば、「Xであること」の通知)は、明示的に行うものに限られず、暗黙的(例えば、当該所定の情報の通知を行わない)ことによって行われてもよい。
【0071】
ソフトウェアは、ソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、マイクロコード、ハードウェア記述言語と呼ばれるか、他の名称で呼ばれるかを問わず、命令、命令セット、コード、コードセグメント、プログラムコード、プログラム、サブプログラム、ソフトウェアモジュール、アプリケーション、ソフトウェアアプリケーション、ソフトウェアパッケージ、ルーチン、サブルーチン、オブジェクト、実行可能ファイル、実行スレッド、手順、機能などを意味するよう広く解釈されるべきである。
【0072】
また、ソフトウェア、命令などは、伝送媒体を介して送受信されてもよい。例えば、ソフトウェアが、同軸ケーブル、光ファイバケーブル、ツイストペア及びデジタル加入者回線(DSL)などの有線技術及び/又は赤外線、無線及びマイクロ波などの無線技術を使用してウェブサイト、サーバ、又は他のリモートソースから送信される場合、これらの有線技術及び/又は無線技術は、伝送媒体の定義内に含まれる。
【0073】
本明細書で説明した情報、信号などは、様々な異なる技術のいずれか1項を使用して表されてもよい。例えば、上記の説明全体に渡って言及され得るデータ、命令、コマンド、情報、信号、ビット、シンボル、チップなどは、電圧、電流、電磁波、磁界若しくは磁性粒子、光場若しくは光子、又はこれらの任意の組み合わせによって表されてもよい。
【0074】
なお、本明細書で説明した用語及び/又は本明細書の理解に必要な用語については、同一の又は類似する意味を有する用語と置き換えてもよい。
【0075】
また、本明細書で説明した情報、パラメータなどは、絶対値で表されてもよいし、所定の値からの相対値で表されてもよいし、対応する別の情報で表されてもよい。
【0076】
通信端末は、当業者によって、移動通信端末、加入者局、モバイルユニット、加入者ユニット、ワイヤレスユニット、リモートユニット、モバイルデバイス、ワイヤレスデバイス、ワイヤレス通信デバイス、リモートデバイス、モバイル加入者局、アクセス端末、モバイル端末、ワイヤレス端末、リモート端末、ハンドセット、ユーザエージェント、モバイルクライアント、クライアント、又はいくつかの他の適切な用語で呼ばれる場合もある。
【0077】
本明細書で使用する「に基づいて」という記載は、別段に明記されていない限り、「のみに基づいて」を意味しない。言い換えれば、「に基づいて」という記載は、「のみに基づいて」と「に少なくとも基づいて」の両方を意味する。
【0078】
本明細書で「第1の」、「第2の」などの呼称を使用した場合においては、その要素へのいかなる参照も、それらの要素の量又は順序を全般的に限定するものではない。これらの呼称は、2つ以上の要素間を区別する便利な方法として本明細書で使用され得る。したがって、第1及び第2の要素への参照は、2つの要素のみがそこで採用され得ること、又は何らかの形で第1の要素が第2の要素に先行しなければならないことを意味しない。
【0079】
「含む(include)」、「含んでいる(including)」、及びそれらの変形が、本明細書あるいは特許請求の範囲で使用されている限り、これら用語は、用語「備える(comprising)」と同様に、包括的であることが意図される。さらに、本明細書あるいは特許請求の範囲において使用されている用語「又は(or)」は、排他的論理和ではないことが意図される。
【0080】
本明細書において、文脈又は技術的に明らかに1つのみしか存在しない装置である場合以外は、複数の装置をも含むものとする。
【0081】
本開示の全体において、文脈から明らかに単数を示したものではなければ、複数のものを含むものとする。
【符号の説明】
【0082】
1…ナッジリコメンドシステム(情報処理装置)、11…検証グループ記憶部、11a…検証グループ管理テーブル、12…ユーザ情報記憶部、12a…ユーザ管理テーブル、13…振り分け先管理部、14…振り分け比率決定部、15…ナッジ決定部、16…ナッジ変更部、17…更新部、200…ユーザナッジ記憶部、200a…ユーザナッジ定義テーブル。