(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】図面認識方法および図面認識装置
(51)【国際特許分類】
G06V 10/70 20220101AFI20250116BHJP
【FI】
G06V10/70
(21)【出願番号】P 2024065869
(22)【出願日】2024-04-16
【審査請求日】2024-04-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000180357
【氏名又は名称】株式会社四電工
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100167427
【氏名又は名称】岡本 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】水野 智文
(72)【発明者】
【氏名】白川 朗
【審査官】秦野 孝一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-063599(JP,A)
【文献】特開2023-137859(JP,A)
【文献】特開2024-021728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00-7/90
G06V 10/00-20/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面ファイルに含まれるシンボルおよび傍記を抽出する図面認識方法であって、
前記図面ファイルから、シンボル抽出に使用するシンボル抽出用図面ファイルと、線種によって分類された複数の線種図面ファイルと、を形成する図面ファイル形成工程と、
該図面ファイル形成工程で形成された前記シンボル抽出用図面ファイルからシンボルを抽出するシンボル抽出工程と、
前記図面ファイル形成工程で形成された複数の線種図面ファイルから傍記を抽出する線種図面ファイルである傍記抽出用ファイルを決定する傍記抽出用ファイル設定工程と、
前記傍記抽出用ファイル設定工程において決定された前記傍記抽出用ファイル
に前記シンボル抽出工程で抽出された各シンボルを中心とする傍記探索エリアと対応する検出領域を
設定し該傍記抽出用ファイルの前記検出領域で検出される図形から各シンボルに対応する傍記を抽出する傍記抽出工程と、を実施する
ことを特徴とする図面認識方法。
【請求項2】
前記傍記抽出用ファイル設定工程において、
前記複数の線種図面ファイルについてOCR処理を実施し、該複数の線種図面ファイルのうち検出される文字データが多く含まれる線種図面ファイルを前記傍記抽出用ファイルとする
ことを特徴とする請求項1記載の図面認識方法。
【請求項3】
前記OCR処理がAI-OCR処理である
ことを特徴とする請求項2記載の図面認識方法。
【請求項4】
前記シンボル抽出工程において抽出された複数のシンボルについて該シンボルを中心とする傍記探索エリアをそれぞれ設定する傍記探索エリア設定工程を備えており、
前記傍記抽出用ファイル設定工程では、
前記図面ファイル形成工程で形成された複数の線種図面ファイルについて、代表となるシンボルについて前記傍記探索エリア設定工程で設定された傍記探索エリアと対応する比較領域を設定し、該比較領域で検出される図形に基づいて前記傍記抽出用ファイルを決定する
ことを特徴とする請求項1記載の図面認識方法。
【請求項5】
前記傍記抽出用ファイル設定工程において、
前記図面ファイル形成工程で形成された複数の線種図面ファイルについて、傍記テンプレートリストに登録されている傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形との類似度に基づいて傍記抽出用ファイルを決定する
ことを特徴とする請求項4記載の図面認識方法。
【請求項6】
前記傍記抽出用ファイル設定工程では、
前記傍記テンプレートリストに登録されている前記傍記テンプレートの大きさを変更しながら該傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形とのマッチング処理を実施し、前記傍記抽出用ファイルにおいて類似度が最も高くなる傍記テンプレートの大きさである抽出用テンプレートサイズを決定し、
前記傍記抽出工程では、
前記傍記抽出用ファイル設定工程において決定された前記抽出用テンプレートサイズの傍記テンプレートを使用して、前記検出領域に含まれる傍記を抽出する
ことを特徴とする請求項5記載の図面認識方法。
【請求項7】
前記傍記抽出工程では、
前記検出領域に含まれる複数の図形を傍記候補として抽出し、
該複数の傍記候補のうち、前記シンボルとの距離が最も近い傍記候補をシンボルと紐づけする
ことを特徴とする請求項1記載の図面認識方法。
【請求項8】
前記傍記抽出工程では、
前記検出領域に含まれる複数の図形を傍記候補として抽出し、
該抽出された複数の傍記候補について、該傍記候補を抽出した検出領域と対応する前記傍記探索エリアを設定したシンボルと傍記との関連性が記憶されている管理リストに基づいて、シンボルと紐づけする傍記候補を決定する
ことを特徴とする請求項1記載の図面認識方法。
【請求項9】
図面ファイルに含まれるシンボルおよび傍記を抽出する図面認識装置であって、
該図面認識装置は、
前記図面ファイルから、シンボル抽出に使用するシンボル抽出用図面ファイルと、線種によって分類された複数の線種図面ファイルと、を形成する図面ファイル形成部と、
該図面ファイル形成部で形成された前記シンボル抽出用図面ファイルからシンボルを抽出するシンボル抽出部と、
前記図面ファイル形成部で形成された複数の線種図面ファイルから傍記を抽出する線種図面ファイルである傍記抽出用ファイルを決定する傍記抽出用ファイル設定部と、
前記傍記抽出用ファイル設定部において決定された前記傍記抽出用ファイル
に前記シンボル抽出部で抽出された各シンボルを中心とする傍記探索エリアと対応する検出領域
を設定し該傍記抽出用ファイルの前記検出領域に含まれる図形から各シンボルに対応する傍記を抽出する傍記抽出部と、を備えている
ことを特徴とする図面認識装置。
【請求項10】
前記傍記抽出用ファイル設定部は、
前記複数の線種図面ファイルについてOCR処理を実施し、該複数の線種図面ファイルのうち検出される文字データが多く含まれる線種図面ファイルを前記傍記抽出用ファイルとする機能を有している
ことを特徴とする請求項9記載の図面認識装置。
【請求項11】
前記OCR処理がAI-OCR処理である
ことを特徴とする請求項10記載の図面認識装置。
【請求項12】
前記シンボル抽出部において抽出されたシンボルから複数のシンボルについて該シンボルを中心とする傍記探索エリアをそれぞれ設定する傍記探索エリア設定部を備えており、
前記傍記抽出用ファイル設定部は、
前記図面ファイル形成部で形成された複数の線種図面ファイルについて、代表となるシンボルについて前記傍記探索エリア設定部で設定された傍記探索エリアと対応する比較領域を設定し、該比較領域で検出される図形に基づいて前記傍記抽出用ファイルを決定する機能を有している
ことを特徴とする請求項9記載の図面認識装置。
【請求項13】
前記傍記抽出用ファイル設定部は、
前記図面ファイル形成部で形成された複数の線種図面ファイルについて、傍記テンプレートリストに登録されている傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形との類似度に基づいて傍記抽出用ファイルを決定する機能を有している
ことを特徴とする請求項12記載の図面認識装置。
【請求項14】
前記傍記抽出用ファイル設定部は、
前記傍記テンプレートリストに登録されている前記傍記テンプレートの大きさを変更しながら該傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形とのマッチング処理を実施し、前記傍記抽出用ファイルにおいて類似度が最も高くなる傍記テンプレートの大きさである抽出用テンプレートサイズを決定する機能を有しており、
前記傍記抽出部は、
前記傍記抽出用ファイル設定部において決定された前記抽出用テンプレートサイズの傍記テンプレートを使用して、前記検出領域に含まれる傍記を抽出する機能を有している
ことを特徴とする請求項13記載の図面認識装置。
【請求項15】
前記傍記抽出部では、
前記検出領域に含まれる複数の図形を傍記候補として抽出する機能と、
該複数の傍記候補のうち、前記シンボルとの距離が最も近い傍記候補をシンボルと紐づけする機能と、を有している
ことを特徴とする請求項9記載の図面認識装置。
【請求項16】
前記傍記抽出部では、
前記検出領域に含まれる複数の図形を傍記候補として抽出する機能を有しており、
該抽出された複数の傍記候補について、該傍記候補を抽出した検出領域と対応する前記傍記探索エリアを設定したシンボルと傍記との関連性が記憶されている管理リストに基づいて、シンボルと紐づけする傍記候補を決定する機能を有している
ことを特徴とする請求項9記載の図面認識装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、図面認識方法に関する。さらに詳しくは、各種図面から各種記号や記号の近傍に記載され記号が表す設備や機器等の仕様を補足する文字等を関連付けて抽出する図面認識方法および図面認識装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、様々な図面の作成において、CADソフトを使用した図面の作成が一般的になっている。CADソフトを使用して作成された図面が提供される場合には、CADデータではなく、PDF形式に変換されたデータや紙ベースの図面(以下単に紙ベース図面等という場合がある)で提供されることがあり、これらの図面に記載されている種々の情報を取得する必要が生じる場合がある。例えば、建築用の設計図面であれば、設備の記号(以下シンボルという場合がある)や記号に関連した文字や図形(以下単に傍記という場合がある)、配線などの情報が多数含まれており、シンボルや傍記を抽出することが必要になる場合がある。しかし、建築用の設計図面では、シンボルや傍記と配線等が重なり合った状態やシンボル同士が非常に近接した状態で設計図面に記載されているため、シンボルや傍記を精度よく抽出することは難しく、紙ベース図面等からシンボルや傍記を精度よく抽出するための技術が開発されている(特許文献1~5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-259076号公報
【文献】特開2006-227824号公報
【文献】特許第7234719号公報
【文献】特開2001-92967号公報
【文献】特開平11-126216号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1~5の技術では、テンプレートマッチングによって図面中の図形や文字を抽出するものであるが、配線やシンボルなどが混在する図面では、適切なテンプレートマッチングを実施することが難しく、シンボルなどを精度よく抽出することが難しい。とくに、シンボルと傍記とが関連付けて記載されている場合に、両者を関連付けた状態で精度よくシンボルや傍記を抽出することは難しい。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、図面からシンボルと傍記を精度よく抽出し両者を関連付けてデータ化することができる図面認識方法および図面認識装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
<図面認識方法>
第1発明の図面認識方法は、図面ファイルに含まれるシンボルおよび傍記を抽出する図面認識方法であって、前記図面ファイルから、シンボル抽出に使用するシンボル抽出用図面ファイルと、線種によって分類された複数の線種図面ファイルと、を形成する図面ファイル形成工程と、該図面ファイル形成工程で形成された前記シンボル抽出用図面ファイルからシンボルを抽出するシンボル抽出工程と、前記図面ファイル形成工程で形成された複数の線種図面ファイルから傍記を抽出する線種図面ファイルである傍記抽出ファイルを決定する傍記抽出用ファイル設定工程と、前記傍記抽出用ファイル設定工程において決定された前記傍記抽出用ファイルから、前記シンボル抽出工程で抽出された各シンボルを中心とする傍記探索エリアと対応する検出領域で検出される図形から各シンボルに対応する傍記を抽出する傍記抽出工程と、を実施することを特徴とする。
第2発明の図面認識方法は、第1発明において、前記傍記抽出用ファイル設定工程において、前記複数の線種図面ファイルについてOCR処理を実施し、該複数の線種図面ファイルのうち検出される文字データが多く含まれる線種図面ファイルを前記傍記抽出用ファイルとすることを特徴とする。
第3発明の図面認識方法は、第2発明において、前記OCR処理がAI-OCR処理であることを特徴とする。
第4発明の図面認識方法は、第1発明において、前記シンボル抽出工程において抽出された複数のシンボルについて該シンボルを中心とする傍記探索エリアをそれぞれ設定する傍記探索エリア設定工程を備えており、前記傍記抽出用ファイル設定工程では、前記図面ファイル形成工程で形成された複数の線種図面ファイルについて、代表となるシンボルについて前記傍記探索エリア設定工程で設定された傍記探索エリアと対応する比較領域を設定し、該比較領域で検出される図形に基づいて前記傍記抽出用ファイルを決定することを特徴とする。
第5発明の図面認識方法は、第4発明において、前記傍記抽出用ファイル設定工程において、前記図面ファイル形成工程で形成された複数の線種図面ファイルについて、傍記テンプレートリストに登録されている傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形との類似度に基づいて傍記抽出用ファイルを決定することを特徴とする。
第6発明の図面認識方法は、第5発明において、前記傍記抽出用ファイル設定工程では、前記傍記テンプレートリストに登録されている前記傍記テンプレートの大きさを変更しながら該傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形とのマッチング処理を実施し、前記傍記抽出用ファイルにおいて類似度が最も高くなる傍記テンプレートの大きさである抽出用テンプレートサイズを決定し、前記傍記抽出工程では、前記傍記抽出用ファイル設定工程において決定された前記抽出用テンプレートサイズの傍記テンプレートを使用して、前記検出領域に含まれる傍記を抽出することを特徴とする。
第7発明の図面認識方法は、第1発明において、前記傍記抽出工程では、前記傍記探索エリアに含まれる複数の図形を傍記候補として抽出し、該複数の傍記候補のうち、前記シンボルとの距離が最も近い傍記候補をシンボルと紐づけすることを特徴とする。
第8発明の図面認識方法は、第1発明において、前記傍記抽出工程では、前記傍記探索エリアに含まれる複数の図形を傍記候補として抽出し、該抽出された複数の傍記候補について、前記傍記探索エリアを設定したシンボルと傍記との関連性が記憶されている管理リストに基づいて、シンボルと紐づけする傍記候補を決定することを特徴とする。
<図面認識装置>
第9発明の図面認識装置は、図面ファイルに含まれるシンボルおよび傍記を抽出する図面認識装置であって、該図面認識装置は、前記図面ファイルから、シンボル抽出に使用するシンボル抽出用図面ファイルと、線種によって分類された複数の線種図面ファイルと、を形成する図面ファイル形成部と、該図面ファイル形成部で形成された前記シンボル抽出用図面ファイルからシンボルを抽出するシンボル抽出部と、前記図面ファイル形成部で形成された複数の線種図面ファイルから傍記を抽出する線種図面ファイルを決定する傍記抽出用ファイル設定部と、前記傍記抽出用ファイル設定部において決定された前記傍記抽出用ファイルから、前記シンボル抽出部で抽出された各シンボルを中心とする傍記探索エリアと対応する検出領域に含まれる図形から各シンボルに対応する傍記を抽出する傍記抽出部と、を備えていることを特徴とする。
第10発明の図面認識装置は、第9発明において、前記傍記抽出用ファイル設定部は、前記複数の線種図面ファイルについてOCR処理を実施し、該複数の線種図面ファイルのうち検出される文字データが多く含まれる線種図面ファイルを前記傍記抽出用ファイルとする機能を有していることを特徴とする。
第11発明の図面認識装置は、第10発明において、前記OCR処理がAI-OCR処理であることを特徴とする。
第12発明の図面認識装置は、第9発明において、前記シンボル抽出部において抽出されたシンボルから複数のシンボルについて該シンボルを中心とする傍記探索エリアをそれぞれ設定する傍記探索エリア設定部を備えており、前記傍記抽出用ファイル設定部は、前記図面ファイル形成部で形成された複数の線種図面ファイルについて、代表となるシンボルについて前記傍記探索エリア設定部で設定された傍記探索エリアと対応する比較領域を設定し、該比較領域で検出される図形に基づいて前記傍記抽出用ファイルを決定する機能を有していることを特徴とする。
第13発明の図面認識装置は、第12発明において、前記傍記抽出用ファイル設定部は、前記図面ファイル形成部で形成された複数の線種図面ファイルについて、傍記テンプレートリストに登録されている傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形との類似度に基づいて傍記抽出用ファイルを決定する機能を有していることを特徴とする。
第14発明の図面認識装置は、第13発明において、前記傍記抽出用ファイル設定部は、前記傍記テンプレートリストに登録されている前記傍記テンプレートの大きさを変更しながら該傍記テンプレートと前記比較領域で検出される図形とのマッチング処理を実施し、前記傍記抽出用ファイルにおいて類似度が最も高くなる傍記テンプレートの大きさである抽出用テンプレートサイズを決定する機能を有しており、前記傍記抽出部は、前記傍記抽出用ファイル設定部において決定された前記抽出用テンプレートサイズの傍記テンプレートを使用して、前記検出領域に含まれる傍記を抽出する機能を有していることを特徴とする。
第15発明の図面認識装置は、第9発明において、前記傍記抽出部では、前記傍記探索エリアに含まれる複数の図形を傍記候補として抽出する機能と、該複数の傍記候補のうち、前記シンボルとの距離が最も近い傍記候補をシンボルと紐づけする機能と、を有していることを特徴とする。
第16発明の図面認識装置は、第9発明において、前記傍記抽出部では、前記傍記探索エリアに含まれる複数の図形を傍記候補として抽出する機能を有しており、該抽出された複数の傍記候補について、前記傍記探索エリアを設定したシンボルと傍記との関連性が記憶されている管理リストに基づいて、シンボルと紐づけする傍記候補を決定する機能を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
<図面認識方法>
第1発明によれば、シンボルと傍記とを別々に抽出するので、シンボルおよび傍記の抽出精度を高くできるとともに、関連するシンボルと傍記とを適切に紐づけして記憶することができる。
第2~6発明によれば、傍記の抽出精度を高くすることができる。
第7発明によれば、シンボルとこのシンボルと関連性の高い傍記とを容易に紐づけすることができる。
第8発明によれば、シンボルとこのシンボルと関連性の高い傍記とを紐づけする精度を高くすることができる。
<図面認識装置>
第9発明によれば、シンボルと傍記とを別々に抽出するので、シンボルおよび傍記の抽出精度を高くできるとともに、関連するシンボルと傍記とを適切に紐づけして記憶することができる。
第10~第14発明によれば、傍記の抽出精度を高くすることができる。
第15発明によれば、シンボルとこのシンボルと関連性の高い傍記とを容易に紐づけすることができる。
第16発明によれば、シンボルとこのシンボルと関連性の高い傍記とを紐づけする精度を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の図面認識方法のフロー図である。
【
図2】本実施形態の図面認識装置1の概略ブロック図である。
【
図3】(A)は元図面ファイルS1の一例を示した図であり、(B)はシンボル抽出用図面ファイル(元SVGファイル)の一例を示した図であり、(C)は複数の元線種画像ファイルのリストの一例を示した図であり、(D)はシンボル抽出用図面ファイルS2の一例を示した図であり、(E)は複数の線種図面ファイルS3の一例を示した図である。
【
図4】(A)はシンボル抽出用図面ファイルS2に含まれる各シンボルについて傍記探索エリアSAを設定した状態の一例を示す図であり、(B)は傍記抽出用ファイルS6の選択方法の一例を示した図である。
【
図5】(A)はシンボル抽出用図面ファイルS2に含まれる選択されたシンボルについて傍記探索エリアSAを設定した状態の一例を示した図であり、(B)は(A)の傍記探索エリアSAと対応する検出領域SSを設定した例を示す図である。
【
図6】傍記抽出用ファイルS6を選択方法の一例を示した図であり、(A)は代表となるシンボルに傍記探索エリアSAの一例を示した図であり、(B)は(A)の傍記探索エリアSAと対応する比較領域TSを設定した状態の一例を示した図である。
【
図7】第2実施形態の図面認識方法のフロー図である。
【
図8】第3実施形態の図面認識方法のフロー図である。
【
図9】(A)はシンボルデータSDの一例を示した図であり、(B)は傍記テンプレートリストTPの一例を示した図であり、(C)は管理リストCRの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の図面認識方法は、建設用図面などの図面ファイルからシンボルや傍記を抽出する方法であって、シンボルと傍記との関連性を維持しつつ精度よくシンボルおよび傍記を抽出できるようにしたことに特徴を有している。
【0010】
本実施形態の図面認識方法によってシンボルなどが抽出される元となる図面ファイルは、ベクター形式の図面ファイルであればよく、とくに限定されない。図面ファイルには、紙に印刷などされている図面をスキャンなどしてデータ化した図面ファイル(画像がピクセルデータで構成された図面ファイル)や、CADで描かれた図面を変換して作成された図面ファイル(データ中のシンボルなどが個々に情報を持っている図面ファイル)などがある。例えば、前者のファイルとしてはラスターPDFファイルやPNGファイルなどのラスター形式の図面ファイルがあり、後者のファイルとしてはベクターPDFファイルやSVGファイルなどのベクター形式の図面ファイルがある。本実施形態の図面認識方法によってシンボルなどが抽出される元となる図面ファイルは、前述したラスター形式の図面ファイルとベクター形式の図面ファイルのうち、ベクター形式の図面ファイルが対象となる。なお、以下ではシンボルなどが抽出される元となる図面ファイルを単に元図面ファイルという。
【0011】
以下の説明では、シンボルなどが抽出される元となる図面が建設用図面である場合を代表として説明するが、本実施形態の図面認識方法によってシンボルなどを抽出する図面はとくに限定されない。また、以下の説明では、シンボルなどが抽出される元となる図面が建設用図面であるので、「シンボル」とは、建造物の設備などに使用される電気・機械部品機器を図式的に表す記号を意味するものになる。また、「傍記」とは、前述したシンボルで表される電気・機械部品機器の仕様を補足する文字や記号であってシンボルに隣接して記載されるものを意味するものになる。
【0012】
<本実施形態の図面認識装置1>
まず、本実施形態の図面認識方法を実施するおよび図面認識装置1を説明する。
なお、
図2に示すように、図面認識装置1は後述する各部が形成する図面ファイルなどをディスプレイDSに表示する表示機能や、キーボードやマウスなどの入力機器ISを使用して必要な情報を入力したり必要な操作を指示したりする入力機能を有していてもよい。
【0013】
<データ入力部2>
図2に示すように、本実施形態の図面認識方法を実施する装置1(以下単に図面認識装置1という)は、元図面ファイルS1(
図3(A)参照)を作成するデータ入力部2を有している。このデータ入力部2は、既に作成されているベクターPDFファイルなどのベクター形式の図面ファイルのデータをUSBなどの記憶媒体から受け入れたりインターネットなどの回線を通じて受信したりする機能(データ受信機能)を有している。データ入力部2で受信した図面ファイルは元図面ファイルS1として記憶部10に送信され記憶される。
【0014】
<図面ファイル形成部3>
図2に示すように、図面認識装置1は、図面ファイル形成部3を有している。図面ファイル形成部3は、データ入力部2で受信した元図面ファイルS1から複数の図面を形成する機能を有するものである。具体的には、図面ファイル形成部3は、元図面ファイルS1から、シンボル抽出用図面ファイルS2(
図3(D)参照)と、複数の線種図面ファイルS3(
図3(E)参照)と、を形成する機能を有するものである。複数の線種図面ファイルとは、線の太さによって分類されたファイルである。そして、図面ファイル形成部3は、作成されたシンボル抽出用図面ファイルS2や複数の線種図面ファイルS3を記憶部10に送信する機能を有しており、記憶部10に送信されたシンボル抽出用図面ファイルS2や複数の線種図面ファイルS3は記憶部10に記憶される。
【0015】
図面ファイル形成部3が元図面ファイルS1からシンボル抽出用図面ファイルS2と複数の線種図面ファイルS3とを形成する方法は、とくに限定されない。例えば、以下のような方法で形成することができる。
【0016】
元図面ファイルS1はベクターPDFファイルなどのべクター形式の図面ファイルであるので、図面ファイル形成部3は、以下のようにシンボル抽出用図面ファイルS2と複数の線種図面ファイルS3とを形成する。
まず、図面ファイル形成部3は、元図面ファイルS1から元SVGファイル(
図3(B)参照)を形成し、元SVGファイルに含まれるシンボルや傍記、配線などのデータを抽出して形成された、PNGファイルであるシンボル抽出用図面ファイルS2を形成する。この場合、シンボル抽出用図面ファイルS2は、シンボルや傍記、配線などを全て含むPNGファイルとなる。
また、図面ファイル形成部3は、元SVGファイルに含まれる線の太さの情報に基づいて、SVGファイルである複数の元線種図面ファイルを形成し(
図3(C)参照)、この複数の元線種図面ファイルからPNGファイルである複数の線種図面ファイルS3を形成する。この複数の線種図面ファイルS3は、線の太さによって分類されたファイルとなる。つまり、各線種図面ファイルS3は、同じ線の太さを有するシンボルや傍記、配線などを含むPNGファイルとなっているものであり、線の太さが異なるシンボルや傍記、配線などが含まれないものとなる。
【0017】
なお、
図3(E)では、(ア)~(ウ)の3つの線種図面ファイルS3を示しているが、線種図面ファイルS3を形成する数はとくに限定されない。元図面ファイルS1に含まれる線やシンボル、傍記等に応じて適切な数の線種図面ファイルS3を形成すればよい。
【0018】
<シンボル抽出部4>
図2に示すように、図面認識装置1は、シンボル抽出部4を有している。シンボル抽出部4は、図面ファイル形成部3で作成されたシンボル抽出用図面ファイルS2からシンボルを抽出する機能を有するものである。シンボル抽出部4がシンボルを抽出する方法はとくに限定されないが、記憶部10に記憶されているシンボルデータSD(
図9(A)参照)に基づいてパターンマッチングなどの公知の方法によってシンボルを抽出することができる。パターンマッチングは、AI(人工知能)を使用したパターンマッチングなどを利用して実施することができるが、パターンマッチングを実施する手段はとくに限定されない。また、シンボル抽出部4では、抽出したシンボルが含まれるエリアの画像を切り出したシンボルデータと、エリアの位置情報(つまりシンボル抽出用図面ファイルS2上のエリアの座標などに関する情報)と、が関連付けられた抽出シンボルファイルS4を、抽出された各シンボルについて形成する機能を有している。また、形成された各抽出シンボルファイルS4は記憶部10に送信され記憶される。
【0019】
なお、AI(人工知能)を使用したパターンマッチングでシンボル抽出を実施した場合には、シンボル抽出の自信度(数値で表示:1 に近いほど自信度大)の情報も抽出シンボルファイルS4に含まれる。なお、抽出シンボルファイルS4を抽出されたシンボルを含むエリアの画像とし、抽出シンボルファイルS4のファイル名が位置情報および自信度を含むものとして、エリアの画像と位置情報および自信度を関連付けてもよい。この方法を採用すれば、抽出シンボルファイルS4群をディスプレイDS上で自信度の高い順(または低い順)に並べ替えることが可能となり、誤検知した抽出シンボルファイルS4を効率よく削除できる点で望ましい。例えば、矩形のエリアの画像の場合には、抽出シンボルファイルS4のファイル名は0.9224@17560×4782_17634×4854_0.pngのように設定するとことができる。なお、前述したファイル名では、” 0.9224”が自信度になり、”17560×4782_17634×4854”が矩形のエリアの画像の対角に位置する角のX軸、Y軸の座標(位置情報)になる。
【0020】
<傍記探索エリア設定部5>
図2に示すように、図面認識装置1は、傍記探索エリア設定部5を有している。傍記探索エリア設定部5は、シンボルに関連づける傍記を探索する領域(傍記探索エリアSA)を設定する機能を有している。具体的には、傍記探索エリア設定部5では、シンボル抽出部4において抽出された全てのシンボルについて、各シンボルを中心とする一定の領域を傍記探索エリアSAとして設定する機能を有している。具体的には、各抽出シンボルファイルS4に含まれる情報に基づいて、各シンボルを中心とする一定の領域を各シンボルの傍記探索エリアSAとして設定する機能を有している(
図4(A)参照)。傍記探索エリア設定部5は、各シンボルの傍記探索エリアSAを設定する際に、各シンボルとそのシンボルと関連する傍記の両方が含まれると想定される範囲を傍記探索エリアSAとして設定する。例えば、抽出された各シンボルの大きさに基づいて算出される領域を傍記探索エリアSAとしてもよい。また、各シンボルに対応する(つまり、各シンボルに使用される)傍記が予め登録されている管理リストCR(
図9(C)参照)が記憶部10に記憶されている場合(傍記探索エリア設定部5に記憶されていてもよい)には、管理リストCRに登録されている文字数(傍記文字列の文字数)などに基づいて傍記探索エリアSAを算出してもよい。この傍記探索エリアSAの情報には、傍記探索エリアSAの座標(例えば傍記探索エリアSAとして矩形の領域を設定する場合はコーナーの座標情報など)が含まれている。この傍記探索エリアSAの情報が算出されると、傍記探索エリアSAの情報は傍記探索エリア設定部5から記憶部10に送信されて、傍記探索エリアSAを設定した各シンボルの抽出シンボル情報と関連付けられて記憶部10に記憶される。なお、傍記探索エリアSAの情報には、対応する抽出シンボルの情報が含まれてもよい。
【0021】
なお、
図9(C)はある一つのシンボルに対応する複数の傍記のリストを示しており、管理リストCRには、このような傍記のリストが各シンボルと対応付けて記憶されている。
【0022】
<傍記抽出用ファイル設定部6>
図2に示すように、図面認識装置1は、傍記抽出用ファイル設定部6を有している。傍記抽出用ファイル設定部6は、図面ファイル形成部2で形成された複数の線種図面ファイルS3から傍記抽出に適した線種図面ファイルS3を選択し傍記抽出用ファイルS6とする機能を有している。そして、傍記抽出用ファイルS6が選択されると、傍記抽出用ファイルS6の情報は傍記抽出用ファイル設定部6から記憶部10に送信され記憶される。
傍記抽出用ファイル設定部6が傍記抽出用ファイルS6を決定(選択)する方法はとくに限定されないが、例えば、以下のような方法を採用することができる。
【0023】
<OCR処理を利用する方法>
傍記抽出用ファイル設定部6は、複数の線種図面ファイルS3についてOCR(Optical Character Recognition/Reader、光学的文字認識)処理を実施し、OCR処理により各線種図面ファイルS3について得られる文字データに基づいて、複数の線種図面ファイルS3から傍記抽出用ファイルS6を決定する方法を採用することができる。例えば、設計図面では、傍記を含む図面に記載される文字は同じ線種(線の太さ)で記載されていることが多いので、傍記を含む文字は同じ線種図面ファイルS3に含まれる可能性が高いと考えられる。言い換えれば、文字が多く含まれる線種図面ファイルS3に傍記が含まれている可能性が高いと考えられる。したがって、複数の線種図面ファイルS3のうち、OCR処理を実施した際に、検出される文字が多い線種図面ファイルS3を傍記抽出用ファイルS6とすることができる。
【0024】
また、傍記抽出用ファイル設定部6におけるOCR処理は、AI-OCR処理で実施することが望ましい。AI-OCRは、機械学習アルゴリズムを使用して、大量のデータから文字や文章を学習させるため、文字や文書の特徴を把握し、柔軟かつ効果的な認識を行うことができるという特徴がある。したがって、機械学習(ディープラーニングなど)により多くの機械設計図面(例えば元図面ファイルS1など)から得られる傍記を機械学習させたAI-OCR処理を実施すれば、傍記を検出する精度を高くできる。
【0025】
<代表となるシンボルを利用する場合>
また、
図6に示すように、傍記抽出用ファイル設定部6では、シンボル抽出部4で抽出されたシンボルから代表となる複数のシンボルを選択し、選択されたシンボルについて傍記探索エリア設定部5で設定された傍記探索エリアSAと対応する比較領域TSを設定し、この比較領域TSにおいて検出される図形を利用して傍記抽出用ファイルS6を決定してもよい。つまり、比較領域TSで検出された図形と、傍記テンプレートリストTPに登録されている傍記テンプレートとをパターンマッチング等の公知の方法によって比較して、マッチングの結果の高い線種図面ファイルS3を傍記抽出用ファイルS6とするようにしてもよい。マッチングの結果としては、図形と傍記テンプレートとの類似度を採用することができる。例えば、複数の比較領域TSでマッチングされた図形について傍記テンプレートとの類似度(AIマッチングであれば自信度)を求め、その類似度の高い図形が多く含まれている線種図面ファイルS3を傍記抽出用ファイルS6とすることができる。
【0026】
ここで、比較領域TSとは、各線種図面ファイルS3において、シンボル抽出用図面ファイルS2における傍記探索エリアSAの座標と対応する座標を有する領域を意味している。例えば、
図6(A)、(B)であれば、
図6(A)の傍記探索エリアSA(1)に対しては、
図6(B)の比較領域TS(1)が対応する比較領域となり、
図6(A)の傍記探索エリアSA(2)に対しては
図6(B)の比較領域TS(2)が対応する比較領域となる。
【0027】
また、図形と傍記テンプレートとのマッチングは、傍記テンプレートの大きさを変更しながらマッチングしてもよい。この場合には、最も類似度が高くなる傍記テンプレートの大きさ(最適テンプレートサイズ)が、傍記抽出用ファイルS6と関連付けて、または、傍記テンプレートの大きさ単独で記憶部10に記憶される。
【0028】
なお、代表となるシンボルを選択する方法はとくに限定されない。例えば、シンボル抽出部4においてシンボルを抽出した際における自信度の高い順にシンボルを選定するなどの方法で傍記抽出用ファイル設定部6が自動で選択してもよい。また、作業者が抽出されたシンボルの画像(つまり抽出シンボルファイルS4に含まれる画像や抽出用図面ファイルS2の画像)や自信度などを確認して、代表となるシンボルを選択してもよい。
【0029】
<傍記抽出部7>
図2に示すように、図面認識装置1は、傍記抽出部7を有している。傍記抽出部7は、シンボル抽出部4によって形成された抽出シンボルファイルS4を元に、傍記探索エリア設定部5により形成された傍記探索エリアSAと対応する検出領域SSを傍記抽出用ファイルS6に設定しこの検出領域SSから傍記を抽出する機能と、抽出した傍記とシンボルとを紐づけする紐づけ機能と、を有している。具体的には、傍記抽出部7では、全てのシンボルファイルS4について傍記探索エリア設定部5で設定された傍記探索エリアSAと対応する検出領域SSを傍記抽出用ファイルS6に設定する。そして、傍記抽出用ファイルS6の検出領域SS内に含まれる図形について、傍記テンプレートリストTPを利用してパターンマッチングを行い、傍記テンプレートと類似性が高い図形(
図5ではZ)を傍記候補として抽出する。そして、抽出された傍記候補が一つの場合には、その傍記候補を傍記探索エリアSAが設定されたシンボルと関連する傍記として、この傍記候補とシンボルとを紐づけしてシンボルデータとして記憶部10に送信し記憶させる。
【0030】
また、傍記抽出部7は、傍記候補が複数存在する場合に、複数の傍記候補から最もシンボルと関連性が高いと考えられる傍記候補をシンボルと紐づけしてシンボルデータを作成する機能を有している。関連性が高いと考えられる傍記候補を傍記抽出部7が選択する方法はとくに限定されないが、例えば、シンボルと傍記候補の距離(例えば、シンボルの中心から傍記候補の中心までの距離など)が最も近い傍記候補をシンボルと紐づけするようにしてもよい。
【0031】
なお、傍記抽出用ファイル設定部6においてマッチング処理を利用して傍記抽出用ファイルS6を選択した場合であって、マッチングに適した最適テンプレートサイズが求められている場合には、最適テンプレートサイズを利用してパターンマッチングを実施することが望ましい。つまり、傍記探索エリアSA内に含まれる図形と傍記テンプレートとのパターンマッチングを行う際に、最適テンプレートサイズの傍記テンプレートでパターンマッチングを実施することが望ましい。最適テンプレートサイズの傍記テンプレートを用いてパターンマッチングを行えば、傍記探索エリアSAに存在する図形から傍記を適切に抽出することができ、傍記以外の図形を誤って傍記として抽出することを防止しやすくなる。
【0032】
<シンボルおよび傍記の抽出・紐づけ作業>
前述した図面認識装置1によるシンボルおよび傍記の抽出作業(つまり第1実施形態の図面認識方法)を説明する(
図1および
図2参照)。
【0033】
<図面ファイル形成工程>
図1および
図2に示すように、データ入力部2によって形成または受信されて記憶部10に記憶されている元図面ファイルS1を図面ファイル形成部3が受信する。図面ファイル形成部3は、元図面ファイルS1からシンボル抽出用図面ファイルS2および複数の線種図面ファイルS3を形成する(
図3(D)、(E)参照)。形成された複数の線種図面ファイルS3は記憶部10に送信されて記憶されるが、シンボル抽出用図面ファイルS2は図面ファイル形成部3からシンボル抽出部4や傍記抽出部7に直接送信されてもよい。同様に、形成された複数の線種図面ファイルS3も記憶部10に送信されて記憶されるが、複数の線種図面ファイルS3は図面ファイル形成部3から傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7に直接送信されてもよい。
【0034】
<シンボル抽出工程>
図1および
図2に示すように、シンボル抽出部4が記憶部10からシンボル抽出用図面ファイルS2を受信すると(または図面ファイル形成部3からシンボル抽出部4にシンボル抽出用図面ファイルS2が送信されると)、シンボル抽出用図面ファイルS2に基づいて、シンボル抽出部4は、AIを利用したパターンマッチングや公知のパターンマッチング手法によってシンボル抽出用図面ファイルS2からシンボルを抽出する。具体的には、抽出したシンボルが含まれるエリアの画像を切り出したシンボルデータ、エリアの位置情報、自信度などを含む抽出シンボルファイルS4が形成される。この抽出シンボルファイルS4は記憶部10に送信されて記憶される。
【0035】
なお、抽出シンボルファイルS4は傍記探索エリア設定部5に直接送信されてもよい。
また、抽出シンボルファイルS4は、全てのシンボルの抽出が終了した段階で全ての抽出シンボルファイルS4を記憶部10や傍記探索エリア設定部5に送信してもよいし、シンボルを抽出し抽出シンボルファイルS4が形成されるたびに抽出シンボルファイルS4を記憶部10や傍記探索エリア設定部5に送信してもよい。また、一定数の抽出シンボルファイルS4が形成されると一定数の抽出シンボルファイルS4をまとめて記憶部10や傍記探索エリア設定部5に送信するようにしてもよい。
【0036】
<傍記探索エリア設定工程>
図1および
図2に示すように、傍記探索エリア設定部5が記憶部10から抽出シンボルファイルS4を受信すると(またはシンボル抽出部4から傍記探索エリア設定部5に抽出シンボルファイルS4が送信されると)、傍記探索エリア設定部5は、各シンボルについて傍記探索エリアSAを設定する。つまり、傍記探索エリア設定部5は、抽出シンボルファイルS4に含まれる情報に基づいてシンボルを中心とする一定の領域を傍記探索エリアSAとして設定する。そして、設定した傍記探索エリアSAの情報は、傍記探索エリア設定部5から記憶部10に送信されて記憶される。
【0037】
なお、傍記探索エリアSAの情報は傍記探索エリア設定部5から傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7に直接送信されてもよい。
また、傍記探索エリアSAの情報は、全てのシンボルについて傍記探索エリアSAの情報の形成が終了した段階で全ての傍記探索エリアSAの情報を記憶部10や傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7に送信してもよいし、各シンボルについて傍記探索エリアSAの情報が形成されるたびに傍記探索エリアSAの情報を記憶部10や傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7に送信してもよい。また、一定数のシンボルについて傍記探索エリアSAの情報が形成されると一定数の傍記探索エリアSAの情報をまとめて記憶部10や傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7に送信するようにしてもよい。
【0038】
<傍記抽出用ファイル設定工程>
図1および
図2に示すように、傍記抽出用ファイル設定部6は記憶部10から複数の線種図面ファイルS3を受信すると(または図面ファイル形成部3から傍記抽出用ファイル設定部6に複数の線種図面ファイルS3が送信されると)、傍記抽出用ファイル設定部6は、AI-OCR処理などを実施し、文字データに基づいて複数の線種図面ファイルS3から傍記抽出用ファイルS6を選択する。例えば、検出される文字が多い線種図面ファイルS3を傍記抽出用ファイルS6として選択する。そして、選択された傍記抽出用ファイルS6の情報が記憶部10に記憶される。なお、傍記抽出用ファイルS6の情報は傍記抽出用ファイル設定部6から傍記抽出部7に直接送信されてもよい。
【0039】
なお、パターンマッチング等の方法によって傍記抽出用ファイルS6を決定する場合(第2実施形態の図面認識方法の場合)には、
図7に示すように、傍記抽出用ファイル設定部6は、記憶部10から複数の線種図面ファイルS3および傍記探索エリアSAの情報を取得すると(図面ファイル形成部3および傍記探索エリア設定部5から複数の線種図面ファイルS3および傍記探索エリアSAの情報が送信されると)、記憶部10に記憶されている傍記テンプレートリストTPを取得する。なお、傍記抽出用ファイル設定部6は、予め憶部10に記憶されている傍記テンプレートリストTPを取得していてもよい。そして、代表となる複数のシンボルを選択し、複数の線種図面ファイルS3のそれぞれについて、選択された代表となる複数のシンボルの傍記探索エリアSAと対応する比較領域TSを複数の線種図面ファイルS3に設定し、この比較領域TSに含まれる傍記などの図形と、傍記テンプレートリストTPに登録されている傍記テンプレートとをマッチングしてマッチングの結果を算出する。マッチングの結果は各線種図面ファイルS3についてそれぞれ作成され、マッチングの結果に基づいて、結果が最も高くなる線種図面ファイルS3を傍記抽出用ファイルS6として選択し、傍記抽出用ファイルS6の情報が記憶部10に記憶される。なお、マッチングの際に、傍記テンプレートの大きさを変更しながらマッチングした場合には、最適テンプレートサイズの情報も傍記抽出用ファイルS6の情報とともに記憶部10に記憶される。また、傍記抽出用ファイルS6の情報および最適テンプレートサイズの情報は、傍記抽出用ファイル設定部6から傍記抽出部7に直接送信されてもよい。
【0040】
<傍記抽出工程>
図1および
図2に示すように、記憶部10から傍記探索エリアSAの情報および傍記抽出用ファイルS6の情報を取得すると(傍記探索エリア設定部5および傍記抽出用ファイル設定部6から傍記探索エリアSAの情報および傍記抽出用ファイルS6の情報が送信されると)、傍記抽出部7は、記憶部10に記憶されている傍記テンプレートリストTPを取得する。なお、傍記抽出部7は、記憶部10に記憶されている傍記テンプレートリストTPを予め取得していてもよい。
【0041】
傍記テンプレートリストTPを取得すると、傍記抽出部7では、全てのシンボルについて傍記探索エリアSAと対応する検出領域SSを傍記抽出用ファイルS6に設定し、この検出領域SSに含まれる図形と傍記テンプレートリストTPとをマッチングして、傍記候補を抽出する。そして、傍記候補が一つでありかつ類似度(AIマッチングでは自信度)が一定以上の場合、または、傍記候補が複数抽出されたが類似度が一定以上のものが一つの場合には、その傍記候補を検出領域SSが設定されたシンボル(言い換えれば傍記探索エリアSAが設定されたシンボル)の傍記であると判断する。そして、シンボルの傍記であると判断した傍記候補と検出領域SS(傍記探索エリアSA)が設定されたシンボルとを紐づけして、シンボルデータとして記憶部10に送信し記憶させる。
【0042】
また、類似度が一定以上の傍記候補が複数抽出された場合には、傍記抽出部7は、最もシンボルと関連性が高いと考えられる傍記候補をシンボルの傍記であると判断し、この傍記候補を傍記探索エリアSAが設定されたシンボルとを紐づけして、シンボルデータとして記憶部10に送信し記憶させる。例えば、シンボルとの距離が最も近い(短い)傍記候補をシンボルと関連性が高いと考えられる傍記と判断し、この傍記候補を傍記探索エリアSAが設定されたシンボルと紐づけして、シンボルデータとして記憶部10に送信し記憶させる。
【0043】
以上のような方法でシンボルおよび傍記を抽出するので、シンボルおよび傍記の抽出精度を高くできるし、関連するシンボルと傍記とを適切に紐づけして記憶することができる。
【0044】
<傍記テンプレートリストTPについて>
傍記のマッチングに使用する傍記テンプレートリストTP(
図9(B)参照)に記憶される傍記のフォントや色、大きさなどはとくに限定されない。傍記を構成する文字などが全体で登録されていてもよいし、傍記を構成する文字ごと(例えば、1文字の英数字など)で登録されていてもよい。複数のフォントで表現された、構成する文字や数字が同じである複数の傍記が傍記テンプレートリストTPに含まれていてもよい。
【0045】
また、傍記テンプレートリストTPと別に、シンボルに使用される傍記の文字数などを記憶した管理リストCRを設けて(
図2、
図9(C)参照)、この管理リストCRを記憶部10に記憶していてもよい。そして、管理リストCRを使用してマッチングによって選択された傍記が適切であるが判断する機能(検証機能)を傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7に設けてもよい。かかる管理リストCRと検証機能とを設けておけば、傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7においてシンボルに適さない図形などが傍記として選択されることを防止できる。
【0046】
例えば、複数のシンボルが隣接して記載されている場合、隣接するシンボルの傍記(以下偽傍記という)が比較領域TSや検出領域SSに含まれる場合がある。この場合、傍記が図面に記載されている状態によっては、本来、シンボルと関連する傍記よりも偽傍記の方がマッチングの信頼度が高くなったり、偽傍記とシンボルの距離が本来の傍記とシンボルとの距離よりも近くなったりする場合がある。とくに、英数字1文字だけを傍記テンプレートとした場合には、そのような状況が生じやすくなる。そこで、比較領域TSや検出領域SSに含まれる図形と傍記テンプレートとのマッチングによって傍記が選択されたのち、その傍記がそのシンボルに適したものであるかを検証機能によって検証するようにすれば、傍記抽出用ファイル設定部6や傍記抽出部7が抽出した傍記がシンボルに適さないものを選択することを防止できる。
【0047】
<傍記抽出用ファイルS6の設定について>
上記例では、傍記抽出用ファイル設定部6が複数の線種図面ファイルS3から傍記抽出用ファイルS6を自動で決定する場合を説明した。複数の線種図面ファイルS3を作業者が目視により確認して傍記抽出用ファイルS6を決定してもよい。例えば、傍記抽出用ファイル設定部6に、ディスプレイDSなどに複数の線種図面ファイルS3を表示する機能と、表示された複数の線種図面ファイルS3から一つの線種図面ファイルS3を選択するとその線種図面ファイルS3を傍記抽出用ファイルS6として保存する機能と、を設けてもよい。
なお、複数の線種図面ファイルS3を作業者が目視により確認して傍記抽出用ファイルS6を決定する場合でも、傍記抽出用ファイルS6を決定する処理以外の処理は、第1実施形態の図面認識方法および第2実施形態の図面認識方法と同様に、図面認識装置1の各機能が実施する。
また、作業者が傍記抽出用ファイルS6を決定する場合、上述した傍記探索エリア設定部5は必ずしも設けなくてもよく、シンボル抽出部3や傍記抽出部7に傍記探索エリア設定部5と同様の機能を設けてもよい。つまり、図面認識装置1を、データ入力部2と、図面ファイル形成部3と、シンボル抽出部4と、傍記抽出用ファイル設定部6と、傍記抽出部7と、記憶部10と、で構成してもよい。
この作業者が傍記抽出用ファイルS6を決定する方法を採用して傍記を抽出する方法が、第3実施形態の図面認識方法になる(
図8参照)。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の図面認識方法は、建設用図面など多数の記号や文字、線が記載されている図面から記号や文字を抽出する方法として適している。
【符号の説明】
【0049】
1 図面認識装置
2 データ入力部
3 図面ファイル形成部
4 シンボル抽出部
5 傍記探索エリア設定部
6 傍記抽出用ファイル設定部
7 傍記抽出部
10 記憶部
S1 元図面ファイル
S2 シンボル抽出用図面ファイル
S3 線種図面ファイル
S4 抽出シンボルファイル
S6 傍記抽出用ファイル
SA 傍記探索エリア
SS 検出領域
TS 比較領域
TP 傍記テンプレートリスト
CR 管理リスト
【要約】
【課題】図面からシンボルと傍記を精度よく抽出し両者を関連付けてデータ化することができる図面認識方法および図面認識装置を提供する。
【解決手段】図面ファイルに含まれるシンボルおよび傍記を抽出する図面認識方法であって、元図面ファイルS1から、シンボル抽出用図面ファイルS2と、複数の線種図面ファイルS3と、を形成する図面ファイル形成工程と、シンボル抽出用図面ファイルS2からシンボルを抽出するシンボル抽出工程と、傍記抽出用ファイルS6を設定する傍記抽出用ファイル設定工程と、傍記抽出用ファイル設定工程において決定された傍記抽出用ファイルS6において、シンボル抽出工程で抽出された各シンボルを中心とする傍記探索エリアSAと対応する検出領域SSで検出される図形から各シンボルに対応する傍記を抽出する傍記抽出工程と、を実施する。
【選択図】
図1