(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】ブロックマット
(51)【国際特許分類】
E02B 3/12 20060101AFI20250116BHJP
E02D 17/20 20060101ALI20250116BHJP
B32B 13/14 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
E02B3/12
E02D17/20 103B
B32B13/14
(21)【出願番号】P 2024087529
(22)【出願日】2024-05-29
【審査請求日】2024-08-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513026399
【氏名又は名称】三菱ケミカルインフラテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】明永 卓也
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-117974(JP,A)
【文献】特開2010-133152(JP,A)
【文献】特開2014-190036(JP,A)
【文献】特開2003-013355(JP,A)
【文献】特開2007-169836(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/12 - 3/14
E02D 17/20
B32B 13/00 - 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する基材シートに複数のコンクリートブロックが固定されたブロックマットであって、
前記基材シートを構成する不織布が、該不織布全体を100wt%として、2.2dtex以上4.4dtex未満の繊維20wt%以上75wt%以下と、7.0dtex以上20.0dtex以下の繊維を25wt%以上80wt%以下とを混合した不織布であ
り、
前記基材シートの開孔径が0.2mm以下である、
ブロックマット。
【請求項2】
前記基材シートが、補強糸を備える、請求項
1に記載のブロックマット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロックマットに関する。
【背景技術】
【0002】
河川、ダム、遊水池などの法面の保護を目的として、従来、ブロックマットという浸食防止材が用いられている。ブロックマットとは、多数のコンクリートブロックを合成繊維不織布などからなる基材シートに一体化させたものである。ブロックマットは施工が容易であり、耐久性に優れるという特長を有する。
このようなブロックマットに関する従来技術が下記特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
不織布を法面に固定する場合、ブロックマットの基材シートにアンカーピンを突き刺して法面に固定しているが、アンカーピンの数を減らして、施工性を向上させ、施工コストの削減を図りたいたいという要望があった。
【0005】
そこで、ブロックマットの施工の際に必要な、アンカーピンの本数を減らすことが可能であり、施工コストの削減が可能な、ブロックマット提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討を行った結果、以下の事項を見出した。
・ブロックマットを構成する基材シート自体の、法面に対する摩擦力が高くなれば、アンカーピンの数を減らしても、ブロックマットが法面から滑ることが防止できる。
・基材シートを、所定の繊度の繊維と、所定の繊度の繊維との混合とすることで、吸出し防止材としての機能を維持しつつ、滑り抑制機能をも付与することが可能となる。
以上を元に、本発明者は、以下の発明を完成させた。
【0007】
[1] 可撓性を有する基材シートに複数のコンクリートブロックが固定されたブロックマットであって、
前記基材シートを構成する不織布が、該不織布全体を100wt%として、2.2dtex以上4.4dtex未満の繊維20wt%以上75wt%以下と、7.0dtex以上20.0dtex以下の繊維を25wt%以上80wt%以下とを混合した不織布である、ブロックマット。
【0008】
[2] 前記基材シートの開孔径が0.2mm以下である、[1]に記載のブロックマット。
[3] 前記基材シートが、補強糸を備える、[1]または[2]に記載のブロックマット。
【発明の効果】
【0009】
本発明のブロックマットによれば、ブロックマットを構成する基材シート自体の法面への滑りが抑制されているので、ブロックマットの施工の際に必要な、アンカーピンの本数を減らすことが可能であり、施工コストの削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ブロックマット100を概略的に示す平面図である。
【
図2】
図1に示したII-II線に沿ったブロックマット100の断面を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
なお、本明細書において、「主成分」とは、対象物の合計を100質量%としたとき、もっとも多い質量%を占める成分であることを示し、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0012】
また、「X~Y」(X、Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意とともに、「好ましくはXより大きい」および「好ましくはYより小さい」の意を包含するものである。
【0013】
<ブロックマット>
図1は、ブロックマット100を概略的に示す平面図である。
図2は
図1に示したII-II線に沿ったブロックマット100の断面を概略的に示す図である。
【0014】
図1および
図2に示したように、ブロックマット100は基材シート10と該基材シート10に固定された複数のコンクリートブロック20、20、…とを備えている。
【0015】
基材シート10は可撓性を有するシートであって、後述する所定の不織布から構成されている。
【0016】
基材シート10の大きさは特に限定されないが、通常、幅(
図1の左右方向の長さ)は40cm以上2m以下程度であり、長さ(
図1の上下方向の長さ)は1m以上10m以下程度である。
後に説明するようにしてブロックマット100を敷設する際に、ブロックマット100を吊り上げる器具を取り付ける(挟む)ために基材シート10の長手方向両端部にはコンクリートブロック20、20、…が備えられていない部分(挟み代)10a、10bが設けられていることが好ましい。挟み代10a、10bの幅w1、w2は、上記器具を取り付けられる大きさであれば特に限定されないが、例えば400mm以上600mm以下程度とすることができる。
また、後に説明するようにして複数のブロックマット100を幅方向(
図1の左右方向)に並べて敷設する場合、基材シート10の一部を重ねて敷設することが好ましい。したがって、基材シート10の幅方向片側端部にはコンクリートブロック20、20、…が備えられていない部分(重ね代)10cが設けられていることが好ましい。重ね代10cの幅w3は特に限定されないが、例えば200mm以上400mm以下とすることができる。
【0017】
本発明のブロックマットは、可撓性を有する基材シートに複数のコンクリートブロックが固定されたブロックマットであって、前記基材シートを構成する不織布が、該不織布全体を100wt%として、2.2dtex以上4.4dtex未満の繊維20wt%以上75wt%以下と、7.0dtex以上20.0dtex以下の繊維を25wt%以上80wt%以下とを混合した不織布からなる、ブロックマットであり、このような構成とすることで、基材シートと法面との滑りを抑制しつつ、吸出し防止機能をも維持している。
【0018】
(基材シート)
本発明における基材シートは、比較的細い繊維と比較的太い繊維とを所定の比率で混合してなる不織布から構成されている。このような構成の基材シートとすることで、吸出し防止材としての性質(水は透過するけれども、法面の土砂等は透過しない性質)を保持しつつ、法面との滑りを抑制することが可能となる。
【0019】
比較的細い繊維としては、繊度が、2.2dtex以上4.4dtex未満の繊維を用いることができる。繊度の下限は、好ましくは2.5dtex以上、より好ましくは2.8dtex以上、さらに好ましくは3.0dtex以上であり、繊度の上限は、好ましくは4.3dtex以下、より好ましくは4.0dtex以下、さらに好ましくは3.8dtex以下である。
【0020】
上記比較的細い繊維の配合量は、基材シートを構成する不織布全体を100wt%として、好ましくは20wt%以上75wt%以下であり、より好ましくは25wt%以上70wt%以下であり、さらに好ましくは30wt%以上65wt%以下であり、特に好ましくは40wt%以上60wt%以下である。
【0021】
比較的太い繊維としては、繊度が、7.0dtex以上20.0dtex以下の繊維を用いることができる。繊度の下限は、好ましくは10.0dtex以上、より好ましくは12.0dtex以上、さらに好ましくは15.0dtex以上であり、繊度の上限は、好ましくは19.0dtex以下、より好ましくは18.0dtex以下である。
【0022】
上記比較的太い繊維の配合量は、基材シートを構成する不織布全体を100wt%として、好ましくは25wt%以上80wt%以下、より好ましくは28wt%以上70wt%以下、さらに好ましくは35wt%以上65wt%以下、特に好ましくは40wt%以上60wt%以下である。
【0023】
繊維としては、例えば、ポリプロピレンやポリエステル、ナイロン、ビニロン、アクリル、ポリウレタン等の合成繊維による短繊維などを用いることができる。中でも、コンクリートブロック20のアルカリ成分や、地盤改良材等にアルカリ性の物質が含まれいてることがあるので、耐アルカリ性に優れる観点から、ポリプロピレン、ポリエチレンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0024】
なお、基材シートは、先に説明したように、ブロックマット100の状態で吊り上げたりして取り扱うことが可能となるように適正な引張強度を備えていることが好ましい。かかる観点から、基材シート10は、補強用の芯材となる補強糸を挿入して構成されることが好ましい。補強糸は、ポリエステル、ナイロン等の長繊維、または、この長繊維を織り込んで形成される織布等を用いることができる。
このような構造の基材シート10は、例えば、抄造機で不織布を抄造する際に織布あるいは長繊維を包み込むことにより不織布と織布あるいは長繊維とを一体化し、ニードルパンチ加工を施して補強することによって製造できる。
【0025】
基材シート10の厚みは、基材シートとしての機能を有していれば、特に限定されないが、好ましくは1mm以上50mm以下、より好ましくは2mm以上30mm以下、さらに好ましくは3mm以上10mm以下である。
【0026】
(コンクリートブロック)
コンクリートブロック20、20としては、従来のブロックマットに用いられていたものを特に限定することなく用いることができる。コンクリートブロック20の大きさは特に限定されず、通常、平面視(
図1に現れる面)における一辺が15cm以上50cm以下程度であり、高さが4cm以上30cm以下程度である。
また、コンクリートブロック20、20の配列パターンは特に限定されない。ただし、ブロックマット100に可撓性を備えさせるため、隣接するコンクリートブロック20同士の間は5mm以上の隙間を設けることが好ましい。
【0027】
<ブロックマットの製造方法>
次に、ブロックマット100の製造方法について説明する。ブロックマット100は、例えば、基材シート10を製造した後に該基材シート10とコンクリートブロック20、20とを一体化させることによって製造できる。
【0028】
基材シート10とコンクリートブロック20、20とを一体化する方法は特に限定されない。例えば、以下のようにして基材シート10とコンクリートブロック20、20とを一体化することができる。まず、コンクリートブロック20、20を成型するための型枠にコンクリートを流し込み、該コンクリートが固化する前に、基材シート10とコンクリートが接するように、基材シート10を型枠の上(開口側)に被せる。このとき、コンクリートの一部が基材シート10に含浸するので、コンクリートをそのまま硬化(養生)させることによって、コンクリートブロック20、20と基材シート10とを一体化させることができる。なお、コンクリートブロック20、20と基材シート10とをより強固に固定するためには、上記のようにして基材シート10を型枠の上(開口側)に被せた後、基材シート10側からコンクリートブロック20、20が成型される部位にステープルを打ち込むことが好ましい。
【0029】
<ブロックマットの施工方法>
ブロックマット100を敷設するには、基材シート10の例えば長さ方向の両端部に設けられた挟み代10a、10bを重機に付設されたクランプ装置で挟み、ブロックマット100を持ち上げて施工すべき所定場所まで吊り下げて移動させる。上記のクランプ装置としては、例えば、基材シート10の長さほどの鉄骨材などから成り且つクレーンに水平に吊持される竿部材と、当該竿部材の両端に取り付けられ且つジャッキ機構によって基材シート10を把持する加圧板とから構成された装置が使用される。
【0030】
ブロックマット100は、法面に対し、当該ブロックマット100の長さ方向(
図1の上下方向)を勾配線に沿わせて敷設する。そして、基材シート10の重ね代10cを隣接する他のブロックマット100の重ね代と重ね合わせることにより、法面の広さに応じてブロックマット100を複数並べて敷設することができる。各ブロックマット100は、基材シート10の摩擦抵抗によって滑り落ちにくくなっているので、法面に敷設することが容易である。また、ブロックマット10をより確実に法面に固定するため、コンクリートブロック20、20の隙間などに公知のアンカーピンを打ち込むことが可能であるが、本発明のブロックマット100を使用すると、基材シート10と法面との摩擦抵抗が大きくなってるので、該アンカーピンの本数を減らすことが可能となる。
【0031】
本発明のブロックマットの法面に対する静止摩擦力(N)は、法面を形成する土壌の種類によって異なるが、砂質土の場合は、ブロック1個(58.8N)あたり好ましくは47.5N以上、より好ましくは48.0N以上、さらに好ましくは49.0N以上である。
また、粘性土の場合は、ブロック1個(58.8N)あたり好ましくは54.5N以上、より好ましくは55.0N以上、さらに好ましくは55.2N以上である。
また、砂質土または粘性土の少なくとも一方において、上記静止摩擦力を示すことが好ましいが、さらには、砂質土または粘性土の両方において、上記静止摩擦力を示すことがより好ましい。
【0032】
このようなブロックマット100は、河川、用排水路、ダム、調整池、溜池などの水が流れる又は滞留する場所の法面又は底面や、盛土上に造られた道路又は鉄道の法面などを保護するように敷設することができる。
【実施例】
【0033】
以下に本発明は実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0034】
以下に説明するようにして基材シートを作製し、以下の評価を行った。
【0035】
<評価>
(静止摩擦力(N))
山砂(江戸崎産、含水率15.2%)を用意し、50N/170cm2の重りで突き固めて、表面を平滑に均して、摩擦力評価用の平面(砂質土)を作製した。
また、関東ローム(含水率76.6%)を用意し、50N/170cm2の重りで突き固めて、表面を平滑に均して、摩擦力評価用の平面(粘性土)を作製した。
【0036】
上記のようにして準備した二種の平面の上に、以下の各実施例、および、比較例にて作製した基材シートを乗せ、板と該板に乗せられたコンクリートブロック(板とコンクリートブロックの合計重量は6kg=58.8N)を更に基材シート上に載せた後、基材シートを水平方向に引っ張って静止摩擦力(N)の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0037】
(開口径(O90 mm))
以下の各実施例、および、比較例にて作製した基材シートの開口径は、ISO12956湿式法に従って計測した。
なお、開口径は、好ましくは0.2mm以下、より好ましくは0.18mm以下、さらに好ましくは0.16mm以下、さらに好ましくは0.14mm以下、特に好ましくは0.13mm以下である。
開口径が0.2mm超の場合は、吸出し防止材としての機能を奏するのが難しくなる。
【0038】
<実施例1>
ポリエステル製の補強糸を並列に並べて、その上に、目付量250g/m2となるように、3.3dtexのポリプロピレン製の短繊維を70wt%、17dtexのポリプロピレン製の短繊維を30wt%を設置し、ニードルパンチ製法により、不織布を形成した。
上記評価に沿って評価した結果を表1に示す。
【0039】
<実施例2>
3.3dtexのポリプロピレン製の短繊維を50wt%、17dtexのポリプロピレン製の短繊維を50wt%使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布を形成した。
上記評価に沿って評価した結果を表1に示す。
【0040】
<比較例1>
4.4dtexのポリプロピレン製の短繊維のみを使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布を形成した。
上記評価に沿って評価した結果を表1に示す。
【0041】
<比較例2>
17dtexのポリプロピレン製の短繊維のみを使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布を形成した。
上記評価に沿って評価した結果を表1に示す。
【0042】
<比較例3>
4.4dtexのポリプロピレン製短繊維のみを使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布を形成した。
上記評価に沿って評価した結果を表1に示す。
【0043】
<比較例4>
7.8dtexのポリプロピレン製短繊維を使用のみを使用した以外は、実施例1と同様にして、不織布を形成した。
上記評価に沿って評価した結果を表1に示す。
【0044】
【0045】
なお、表1中の摩擦力の値は、5回測定した結果の算術平均値である。
【0046】
表1に示すように、本発明のブロックマット(基材シート)は、砂質土および粘性土のいずれにおいても、好ましい摩擦力を示した。
比較例2のブロックマットは、高い摩擦力を示したが、開口径が、0.2mm超であり、吸出し防止材としての機能が果たせない。
また、比較例4では、粘性土の摩擦力が高くなったが、砂質土の摩擦力が低く、両方の土壌においてバランスよく滑り止めの効果を奏するものではなかった。
【要約】 (修正有)
【課題】ブロックマットの施工の際に必要な、アンカーピンの本数を減らすことが可能であり、施工コストの削減が可能な、ブロックマット提供する。
【解決手段】可撓性を有する基材シート10に複数のコンクリートブロック20が固定されたブロックマット100であって、基材シート10を構成する不織布が、不織布全体を100wt%として、2.2dtex以上4.4dtex未満の繊維20wt%以上75wt%以下と、7.0dtex以上20.0dtex以下の繊維を25wt%以上80wt%以下とを混合した不織布である、ブロックマット100。
【選択図】
図1