(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20250116BHJP
F16H 59/18 20060101ALI20250116BHJP
F16H 61/662 20060101ALI20250116BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20250116BHJP
B60W 10/04 20060101ALI20250116BHJP
B60W 10/101 20120101ALI20250116BHJP
B60W 10/02 20060101ALI20250116BHJP
B60W 10/06 20060101ALI20250116BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/18
F16H61/662
F16H63/50
B60W10/00 112
B60W10/02
B60W10/06
(21)【出願番号】P 2024503049
(86)(22)【出願日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 JP2023004957
(87)【国際公開番号】W WO2023162778
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-08-07
(31)【優先権主張番号】P 2022027787
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231350
【氏名又は名称】ジヤトコ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 洛鎬
(72)【発明者】
【氏名】禹 成勲
(72)【発明者】
【氏名】崔 承桓
(72)【発明者】
【氏名】李 宗桓
(72)【発明者】
【氏名】李 善滸
(72)【発明者】
【氏名】岩堂 圭介
(72)【発明者】
【氏名】床井 宏行
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-20126(JP,A)
【文献】国際公開第2018/016391(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02
F16H 59/18
F16H 61/662
F16H 63/50
B60W 10/04
B60W 10/02
B60W 10/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達し、アクセルが踏み増しされると、前記プーリに供給される油圧を高くする車両を制御する車両の制御装置であって、
走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第1の走行状態ではないときに前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、
車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の制御装置であって、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、変速比を大きくするダウンシフトを行ってから前記クラッチを締結させる、
車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両の制御装置であって、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記クラッチを締結させるための油の供給が開始されてから所定時間経過後である、
車両の制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両の制御装置であって、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記クラッチを締結させるための油を油圧室に充填するプリチャージの後である、
車両の制御装置。
【請求項5】
エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達する車両を制御する車両の制御装置であって、
走行中にアクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止して前記駆動輪から前記エンジンに伝達される駆動力で前記エンジンを回転させる第2の走行状態とし、
前記第2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンへの燃料供給を再開すると共に前記プーリに供給する油圧を高くし、
走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると共に所定条件が成立すると、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第
2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、
車両の制御装置。
【請求項6】
エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達し、アクセルが踏み増しされると、前記プーリに供給される油圧を高くする車両を制御する車両の制御方法であって、
走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第1の走行状態ではないときに前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、
車両の制御方法。
【請求項7】
エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達する車両を制御する車両の制御方法であって、
走行中にアクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止して前記駆動輪から前記エンジンに伝達される駆動力で前記エンジンを回転させる第2の走行状態とし、
前記第2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンへの燃料供給を再開すると共に前記プーリに供給する油圧を高くし、
走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると共に所定条件が成立すると、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、
車両の制御方法。
【請求項8】
エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達し、アクセルが踏み増しされると、前記プーリに供給される油圧を高くする車両を制御するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第1の走行状態ではないときに前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、
手順を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項9】
エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達する車両を制御するコンピュータが実行可能なプログラムであって、
走行中にアクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止して前記駆動輪から前記エンジンに伝達される駆動力で前記エンジンを回転させる第2の走行状態とし、
前記第2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンへの燃料供給を再開すると共に前記プーリに供給する油圧を高くし、
走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると共に所定条件が成立して、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、
前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、
手順を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置、車両の制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンの運転中に走行抵抗に対して要求トルクが微小となった場合にはエンジンを自動停止させ、エンジンが自動停止した後に所定要件を満たした場合には発進クラッチを解放状態にするように制御し、エンジンが自動停止中であり発進クラッチが解放状態であるときに、走行抵抗に対して要求トルクが大きくなった場合にはエンジンを自動始動させ、エンジンの自動始動中にクラッチ締結条件を満たす場合には発進クラッチを接続状態にするように制御するエンジンの自動始動停止装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の自動始動停止装置では、運転者の加速要求に対して車両の加速が遅れ、運転者に違和感を与えるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、セーリングストップ状態(第1の走行状態)を解除する際に運転者の加速要求と車両の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達し、アクセルが踏み増しされると、前記プーリに供給される油圧を高くする車両を制御する車両の制御装置であって、走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第1の走行状態ではないときに前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、車両の制御装置が提供される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、エンジンから入力される駆動力を、一対のプーリと当該プーリに掛け回される無端状部材とで構成される無段変速機構を介して駆動輪に伝達する車両を制御する車両の制御装置であって、走行中にアクセルが踏まれていない状態になると、前記エンジンへの燃料供給を停止して前記駆動輪から前記エンジンに伝達される駆動力で前記エンジンを回転させる第2の走行状態とし、前記第2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンへの燃料供給を再開すると共に前記プーリに供給する油圧を高くし、走行中に前記アクセルが踏まれていない状態になると共に所定条件が成立して、前記エンジンへの燃料供給を停止すると共に前記エンジンと前記駆動輪との間のクラッチを解放して第1の走行状態とし、前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれた場合には、前記エンジンを始動させると共に前記クラッチを締結させて、前記プーリに供給される油圧を高くし、前記第1の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み込まれることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングは、前記第2の走行状態で走行中に前記アクセルが踏み増しされることにより前記プーリに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い、車両の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
上記態様によれば、第1の走行状態を解除する際に運転者の加速要求と車両の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の制御装置を備える車両の概略構成図である。
【
図2】
図2は、コントローラ及びコントローラに接続される主要構成を示す構成ブロック図である。
【
図3】
図3は、制御装置が行う第1の走行状態の解除処理をフローチャートで示す図である。
【
図4】
図4は、制御装置が行う第1の走行状態の解除処理の一例のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態(以下、本実施形態と称する。)に係る変速機の制御装置、変速機の制御方法、及びプログラムについて説明する。以下において、変速比が大きい場合をLow、変速比が小さい場合をHighと言う。また、変速比がLow側に変更されることをダウンシフトと言い、High側に変更されることをアップシフトと言う。
【0011】
まず、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る変速機としての自動変速機20が適用される車両100について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る車両100の制御装置としてのコントローラ30を備える車両100の概略構成図である。
図2は、コントローラ30及びコントローラ30に接続される主要構成を示す構成ブロック図である。
【0012】
図1に示すように、車両100は、駆動源としてのエンジン10と、自動変速機20と、エンジン10と自動変速機20との間に設けられたトルクコンバータ2と、コントローラ30と、を備える。
【0013】
トルクコンバータ2には、ロックアップクラッチ2aが設けられる。ロックアップクラッチ2aは、車両100が所定のロックアップ車速以上で走行している場合に締結される。ロックアップクラッチ2aが締結されると、トルクコンバータ2の入力要素としての入力軸2bと出力要素としての出力軸2cとが直結し、入力軸2bと出力軸2cとが同速回転する。よって、ロックアップクラッチ2aが締結された状態では、エンジン10の出力軸10aの回転がそのままトルクコンバータ2の出力軸2cから自動変速機20に伝達される。
【0014】
自動変速機20は、動力伝達機構としての前後進切替機構3と、無段変速機構としてのバリエータ4と、油圧制御回路5と、オイルポンプ6と、を備える。
【0015】
車両100においては、エンジン10で発生した回転が、トルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4、歯車組7、ディファレンシャルギヤ装置8を経て駆動輪50に伝達される。
【0016】
前後進切替機構3は、ダブルピニオン遊星歯車組を主たる構成要素とし、そのサンギヤをトルクコンバータ2を介してエンジン10に結合し、キャリアをバリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)に結合する。前後進切替機構3は更に、ダブルピニオン遊星歯車組のサンギヤ及びキャリア間を直結するクラッチとしての前進クラッチ(FWD/C)3a、及びリングギヤを固定する後進ブレーキ3b(REV/B)を備え、前進クラッチ3aの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転をそのままプライマリプーリ4aに伝達し、後進ブレーキ3bの締結時にエンジン10からトルクコンバータ2を経由した入力回転を逆転減速してプライマリプーリ4aへ伝達する。
【0017】
バリエータ4は、入力軸4dに伝達されたエンジン10の回転を変速して出力軸4eから駆動輪50に伝達する無段変速機構である。バリエータ4は、動力伝達経路においてエンジン10側に設けられたプライマリプーリ4aと、駆動輪50側に設けられたセカンダリプーリ4bと、プライマリプーリ4aとセカンダリプーリ4bとに掛け回された無端状部材としてのベルト4cと、を備える。車両100では、エンジン10から入力される駆動力を、一対のプーリ4a,4bと当該プーリ4a,4bに掛け回されるベルト4cとで構成されるバリエータ4を介して駆動輪50に伝達する。
【0018】
バリエータ4では、プライマリプーリ4aに供給される油圧とセカンダリプーリ4bに供給される油圧とが制御されることで、各プーリ4a、4bとベルト4cとの接触半径が変更され、変速比が変更される。バリエータ4では、後述するアクセルペダル41が踏み増しされると、プーリ4a,4bに供給される油圧が高くされる。
【0019】
オイルポンプ6は、エンジン10の回転が入力されエンジン10の動力の一部を利用して駆動される機械式のオイルポンプである。オイルポンプ6から吐出された油は、油圧制御回路5に供給される。
【0020】
油圧制御回路5は、オイルポンプ6から供給された作動油の圧力を調圧して必要な油圧を生成するレギュレータバルブ5a、プライマリプーリ4aに供給される油圧を調整するプライマリソレノイドバルブ5b、セカンダリプーリ4bに供給される油圧を調整するセカンダリソレノイドバルブ5c、ロックアップクラッチ2aに供給される油圧を調整するロックアップソレノイドバルブ5d、前進クラッチ3aに供給される油圧及び後進ブレーキ3bに供給される油圧を調整するセレクトソレノイドバルブ5e、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bへの油圧の供給経路を切り換えるマニュアルバルブ5f、等を有する。
【0021】
油圧制御回路5は、コントローラ30からの制御信号に基づき、調整された油圧をトルクコンバータ2、前後進切替機構3、バリエータ4の各部位に供給する。
【0022】
コントローラ30は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)31,32(
図2参照)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ30は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで各種の処理を行う。コントローラ30は、複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。具体的には、コントローラ30は、自動変速機20を制御するATCU(オートマチックトランスミッションコントロールユニット)、シフトレンジを制御するSCU(シフトコントロールユニット)、エンジン10を制御するECU(エンジンコントロールユニット)、等によって構成することもできる。コントローラ30は、各種センサ60等から出力される信号に基づき、油圧制御回路5、エンジン10、及びスタータモータ11(
図2参照)を制御する。
【0023】
コントローラ30は、車両100の各部位の状態を検出する各種センサ60からの信号に基づき、エンジン10の回転速度ENGREV(以下、エンジン回転速度ENGREVともいう。)、エンジントルク、ロックアップクラッチ2aの締結状態、バリエータ4の変速比、前進クラッチ3a及び後進ブレーキ3bの締結状態等を制御する。
【0024】
コントローラ30には、アクセルペダル41の操作量に対応したアクセルペダル開度APOを検出するアクセル開度センサ61からの信号、ブレーキペダル42の操作量に対応したブレーキ液圧BRPを検出するブレーキ液圧センサ62からの信号、シフター43の位置を検出するインヒビタスイッチ63からの信号、トルクコンバータ2の出力軸2cの回転速度TBNREVを検出するタービン回転速度センサ64からの信号、バリエータ4の入力軸4d(プライマリプーリ4a)の回転速度PRIREVを検出するプライマリ回転速度センサ65からの信号、バリエータ4の出力軸4e(セカンダリプーリ4b)の回転速度SECREVを検出するセカンダリ回転速度センサ66からの信号、プライマリプーリ4aに供給されるプライマリ油圧Ppを検出するプライマリ油圧センサ67からの信号、セカンダリプーリ4bに供給されるセカンダリ油圧Psを検出するセカンダリ油圧センサ68からの信号、エンジン回転速度ENGREVを検出するエンジン回転速度センサ69からの信号、等からの信号が入力される。
【0025】
本実施形態では、コントローラ30は、車両100の停止中に所定の条件が成立した場合にエンジン10を自動停止させるアイドリングストップ制御と、車両100がコースト走行中であって、そのまま停止するとアイドリングストップ制御に移行する可能性が高い場合に、エンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放するコーストストップ制御と、車両100の走行中にエンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放するセーリングストップ制御と、を実行可能である。
【0026】
コントローラ30は、コースト走行時に所定条件(所定条件:ロックアップクラッチ2aが解放状態、アクセルペダル41が踏まれていない状態、及びブレーキペダル42が踏まれた状態で、かつ車速が所定より低くなった場合)が成立するとエンジン10を停止させるコーストストップ制御を実行し(コーストストップ状態)、車両100の停止後に所定の条件が成立するとコーストストップ制御からアイドリングストップ制御に移行させる(アイドリングストップ状態)。また、コントローラ30は、走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると共に所定条件(所定条件:ロックアップクラッチ2aが締結状態及びブレーキペダル42が踏み込まれた状態で、かつ車速が所定より低くなった(コーストストップの車速よりも高い)場合)が成立すると、エンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放するセーリングストップ制御を実行する(セーリングストップ状態:第1の走行状態)。
【0027】
図2に示すように、コントローラ30は、互いに電気的に接続される入力インタフェース31、出力インタフェース32、記憶部33、判定部34、油圧制御回路制御部(以下、単に「回路制御部」と称する。)36、エンジン制御部37、及びスタータモータ制御部38を備える。記憶部33、判定部34、回路制御部36、エンジン制御部37、及びスタータモータ制御部38は、車両100の制御を行うためのコントローラ30の機能を仮想的なユニットとしたものであり、物理的な存在を意味するものではない。
【0028】
入力インタフェース31には、各種センサ60からの出力信号が入力される。
【0029】
記憶部33は、各種センサ60からの出力信号を一時的に記憶するためのメモリである。また、記憶部33は、回路制御部36、エンジン制御部37、及びスタータモータ制御部38において実行される処理プログラム及びアルゴリズムプログラムを記憶している。本実施形態では、記憶部33は、コントローラ30に内蔵されているが、これに限定されるものではなく、例えば、コントローラ30とは別体に設けられてもよい。
【0030】
判定部34は、各種センサ60から出力される出力信号に基づいて各種判定を行い、各種判定結果を回路制御部36、エンジン制御部37、又はスタータモータ制御部38へ出力する。
【0031】
回路制御部36は、各種センサ60から出力される出力信号に基づいて回路制御指令を生成し、生成した回路制御指令を出力インタフェース32を介して油圧制御回路5へ出力する。回路制御部36は、バリエータ制御モジュール361と、前進クラッチ制御モジュール362と、後進ブレーキ制御モジュール363と、を有する。
【0032】
バリエータ制御モジュール361は、各種センサ60から出力される出力信号に基づいてバリエータ制御指令を生成し、生成したバリエータ制御指令を出力インタフェース32を介して油圧制御回路5へ出力する。油圧制御回路5から油の供給を受けて、各プーリ4a、4bとベルト4cとの接触半径が変更され、変速比が変更される。
【0033】
前進クラッチ制御モジュール362は、各種センサ60から出力される出力信号に基づいてクラッチ制御指令を生成し、生成したクラッチ制御指令を出力インタフェース32を介して油圧制御回路5へ出力する。油圧制御回路5から油の供給を受けて、前進クラッチ3aの締結と解放とが切り換えられる。
【0034】
後進ブレーキ制御モジュール363は、各種センサ60から出力される出力信号に基づいてブレーキ制御指令を生成し、生成したブレーキ制御指令を出力インタフェース32を介して油圧制御回路5へ出力する。油圧制御回路5から油の供給を受けて、後進ブレーキ3bの締結と解放とが切り換えられる。
【0035】
エンジン制御部37は、各種センサ60から出力される出力信号に基づいてエンジン制御指令を生成し、生成したエンジン制御指令を出力インタフェース32を介してエンジン10へ出力する。
【0036】
スタータモータ制御部38は、各種センサ60から出力される出力信号に基づいてスタータモータ制御指令を生成し、生成したスタータモータ制御指令を出力インタフェース32を介してスタータモータ11へ出力する。
【0037】
次に、
図3を参照して、コントローラ30が行うセーリングストップ状態の解除処理について説明する。
図3は、コントローラ30が行うセーリングストップ状態の解除処理をフローチャートで示す図である。このセーリングストップ状態の解除処理は、コントローラ30にて一定時間ごとに繰り返し実行される。
【0038】
上述したように、バリエータ4では、アクセルペダル41が踏み増しされると、プーリ4a,4bに供給される油圧が高くされる。油圧が高くなると、各構成部品の隙間からの油のリーク量が多くなる。そのため、回路内の油量が低下して、バリエータ4のLow側への変速や前進クラッチ3aの締結のタイミングが遅くなり、運転者の加速要求と車両100の加速との乖離に起因して運転者に違和感を与えるおそれがある。そこで、車両100では、
図3に示すセーリングストップ状態の解除処理を実行している。
【0039】
ステップS11では、コントローラ30は、車両100がセーリングストップ状態で走行しているか否かを判定する。ステップS11にて、車両100がセーリングストップ状態で走行していると判定された場合には、ステップS12へ移行する。一方、ステップS11にて、車両100がセーリングストップ状態で走行していないと判定された場合には、ステップS11の処理を繰り返す。
【0040】
ステップS12では、コントローラ30は、運転者によってアクセルペダル41が操作されてアクセルがオンになったか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、アクセル開度センサ61から入力される信号に基づきアクセルペダル開度APOを検出し、アクセルペダル41が操作されたか否かを判定する。ステップS12にて、アクセルがオンにされたと判定された場合には、ステップS13へ移行する。一方、ステップS12にて、アクセルがオンにされていない、即ちアクセルペダル41が操作されておらずアクセルがオフのままであると判定された場合には、ステップS12の処理を繰り返す。
【0041】
即ち、このフローは、車両100がセーリングストップ状態で走行しているときに(ステップS11にて「Yes」の判定)、運転者によってアクセルペダル41が操作されアクセルがオンになった場合(ステップS12にて「Yes」の判定)に開始されるものである。
【0042】
ステップS13では、コントローラ30は、スタータモータ11を回転駆動させ、エンジン10をオンにする。
【0043】
ステップS14では、コントローラ30は、前進クラッチ3aの締結を開始させる。具体的には、コントローラ30は、油圧制御回路5に電気信号を送信し、前進クラッチ3aの圧力室に油を供給させる。
【0044】
なお、ステップS13とステップS14との処理は、同時に実行されてもよく、順番が逆であってもよい。
【0045】
ステップS15では、所定時間が経過したか否かを判定する。ステップS15にて、所定時間が経過したと判定された場合には、ステップS16へ移行する。一方、ステップS15にて、所定時間が経過されていないと判定された場合には、ステップS15の処理を繰り返す。この所定時間は、前進クラッチ3aを締結させるための油を油圧室に充填するプリチャージの後でステップS16へ移行するように、プリチャージに要する時間よりも長く設定される。プリチャージとは、クラッチの締結制御開始時に所定時間だけプリチャージ圧まで指示圧をステップ状に上昇させて、その後、所定圧まで低下させる制御である。
【0046】
このように、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、前進クラッチ3aを締結させるための油の供給が開始されてから所定時間経過後である。具体的には、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、前進クラッチ3aを締結させるための油を油圧室に充填するプリチャージの後である。
【0047】
ステップS16では、コントローラ30は、油圧制御回路5に電気信号を送信し、セカンダリプーリ4bに供給される油の指示圧を上昇させる。コントローラ30は、油圧制御回路5に電気信号を送信し、プライマリプーリ4aに供給される油の指示圧も同時に上昇させる。
【0048】
ここで、アクセルペダル41が操作されていない状態では、伝達するトルクが小さいので、プーリ4a,4bに供給される油の圧力は低下している。これに対して、ステップS16では、アクセルペダル41が操作されて伝達するトルクが大きくなる前に、プーリ4a,4bに供給される油の圧力を予め上昇させておく。
【0049】
ステップS17では、コントローラ30は、バリエータ4の変速比をLow側の変速比にダウンシフトする。前進クラッチ3aの締結が完了する前にバリエータ4の変速比をLow側の変速比にダウンシフトしておくことで、前進クラッチ3aが締結状態になった後で素早く車両100を加速させることができる。
【0050】
ステップS18では、コントローラ30は、前進クラッチ3aの締結を完了する。これにより、前進クラッチ3aは、伝達トルク容量を持つようになる。
【0051】
次に、
図4を参照して、コントローラ30が行うセーリングストップ状態の解除処理について具体的に説明する。
図4は、コントローラ30が行うセーリングストップ状態の解除処理の一例のタイミングチャートである。
【0052】
図4では、横軸は、時間T[sec]であり、縦軸は、アクセルペダル開度APO、プライマリプーリ回転速度(PRIREV:実線)[rpm]、タービン回転速度(TBNREV:破線)[rpm]、エンジン回転速度(ENGREV:一点鎖線)[rpm]、エンジントルク(ENGトルク:実線)[N・m]、プライマリプーリトルク(PRIトルク:破線)[N・m]、前進クラッチ3aの指示圧(FWD/C指示圧)、セカンダリプーリ4bの指示圧(SEC指示圧)、及びバリエータ4の変速比を各々示す。
【0053】
図4に示す例では、時刻T0にて、運転者によるアクセルペダル41の操作がされなくなり、アクセルがオフになる。これにより、プライマリプーリ回転速度PRIREVとタービン回転速度TBNREVとエンジン回転速度ENGREVとは、低下し始める。更に、セカンダリプーリ指示圧もまた、伝達するトルクが小さくなるので、低下し始める。また、時刻T0では、エンジン10への燃料の供給が停止される(フュエルカット状態)。
【0054】
時刻T1では、前進クラッチ3aの指示圧が0になる。これにより、前進クラッチ3aは、締結状態から徐々に解放される。即ち、前進クラッチ3aの伝達トルク容量が徐々に減少する。
【0055】
時刻T2では、前進クラッチ3aが解放状態になり、前進クラッチ3aの伝達トルク容量が0になる。このとき、車両100はコースト走行を継続しているので、プライマリプーリ回転速度PRIREVは維持されている。一方、前進クラッチ3aが解放状態になったので、タービン回転速度TBNREV及びエンジン回転速度ENGREVは共に低下し始める。
【0056】
時刻T3では、エンジン10は、燃料の供給が停止されると共に、前進クラッチ3aが解放状態になり駆動輪50の回転も伝達されなくなるので停止する。即ち、タービン回転速度TBNREV及びエンジン回転速度ENGREVが共に0になる。これにより、車両100は、セーリングストップ状態になる。
【0057】
時刻T4では、運転者によりアクセルペダル41が操作されアクセルがオンになる。これにより、セーリングストップ状態の解除処理が開始される。即ち、セーリングストップ状態でアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10への燃料供給を再開してエンジン10を始動させると共に前進クラッチ3aを締結させて、プーリ4a,4bに供給される油圧を高くする。
【0058】
時刻T4から時刻T5の間には、プリチャージが行われ、前進クラッチ3aの油圧室への油の供給が開始される。即ち、前進クラッチ3aに供給される締結油圧の大きさが、解放油圧から前進クラッチ3aが締結を開始する前の状態まで上昇するプリチャージが行われる。
【0059】
時刻T5では、プリチャージが終了し、指示圧が低下する。時刻T5から時刻T8の間には、プリチャージのときよりも低い指示圧で前進クラッチ3aの油圧室に油が供給される。時刻T8では、油圧室に供給された油によって、前進クラッチ3aが当接する。即ち、時刻T8に到達する前の時点では、前進クラッチ3aは、入力側の摩擦伝達部材と出力側の摩擦伝達部材とが接触しておらず、未だ伝達トルク容量がない状態であり、時刻T8に到達した時点で、前進クラッチ3aの入力側の摩擦伝達部材と出力側の摩擦伝達部材とが接触する。このように、前進クラッチ3aが完全開放状態から当接状態に移行するまでの制御をガタ詰め制御ともいい、プリチャージはガタ詰め制御の一部である。この摩擦伝達部材が非接触状態から接触状態に移行した直後(ガタ詰め制御が完了した時点)、即ち摩擦伝達部材が当接した瞬間は、伝達トルク容量がない状態である。この状態から更に油圧室に油圧が供給されることにより、伝達トルク容量が大きくなってゆく。
【0060】
時刻T8から時刻T10の間には、前進クラッチ3aの油圧室に供給された油の圧力が、締結油圧まで上昇する。即ち、前進クラッチ3aの伝達トルク容量が0の状態から徐々に増加する。
【0061】
一方、時刻T4の所定時間経過後である時刻T6では、セカンダリプーリ指示圧が上昇する。これにより、セカンダリプーリ4bに供給される油圧が高くなる。セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、セーリングストップ状態ではないときにアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い。
【0062】
このように、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングが、セーリングストップ状態ではないときにアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅いので、セーリングストップ状態からの再加速時に、油圧の上昇による油のリーク量を減らすことができ、回路内の油量が多くなる。これにより、Low側への変速や前進クラッチ3aの締結のタイミングを早めることができる。したがって、加速要求に対して素早く車両100を加速させることができるので、運転者の加速要求と車両100の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0063】
また、車両100は、走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると、エンジン10への燃料供給を停止して駆動輪50からエンジン10に伝達される駆動力でエンジン10を回転させるコースト状態(第2の走行状態)とされる。このコースト状態でアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10への燃料供給を再開すると共に(アクセルペダル41が踏み込まれてすぐに)プーリ4a,4bに供給する油圧を高くする。このとき、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、コースト状態でアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い。例えば、コースト状態でアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、運転者の加速要求に応えるため、アクセルペダル41が踏み込まれた直後に、プーリ4a,4bに供給する油圧を高くする。一方、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、アクセルペダル41が踏み込まれたことを検知した後、前進クラッチ3aに供給されるプリチャージ圧が下がってから、プーリ4a,4bに供給する油圧を高くするので、コースト状態で油圧が高くなるタイミングよりも遅くなる。
【0064】
このように、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングが、コースト状態でアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅いので、セーリングストップ状態からの再加速時に、油圧の上昇による油のリーク量を減らすことができ、回路内の油量が多くなる。これにより、Low側への変速や前進クラッチ3aの締結のタイミングを早めることができる。したがって、加速要求に対して素早く車両100を加速させることができるので、運転者の加速要求と車両100の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0065】
なお、プリチャージの後でプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるので、油圧の上昇による油のリーク量が少ないうちに油が多く必要なプリチャージを行うことができる。これにより、前進クラッチ3aの締結のタイミングを早めることができる。したがって、加速要求に対して素早く車両100を加速させることができるので、運転者の加速要求と車両100の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0066】
時刻T7から時刻T9の間には、バリエータ4の変速比を大きくするダウンシフトが行われる。即ち、セーリングストップ状態でアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、変速比を大きくするダウンシフトを行ってから前進クラッチ3aを締結させる。
【0067】
このように、ダウンシフトを行ってから前進クラッチ3aを締結するので、変速に使用できる油量が増え、素早く減速比を大きくすることができる。また、変速時に前進クラッチ3aが締結されていない分も、変速が速まり、前進クラッチ3aの締結後における車両100の加速を向上させることができ、再加速時に運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0068】
時刻10では、前進クラッチ3aが締結状態(完全締結状態)になる。そのため、エンジントルクとプライマリプーリトルクとが連動して上昇するようになる。これにより、コントローラ30が行うセーリングストップ状態の解除処理が完了する。
【0069】
以上の本実施形態の構成及び作用効果について、まとめて説明する。
【0070】
(1)(6)(8)エンジン10から入力される駆動力を、一対のプーリ4a,4bと当該プーリ4a,4bに掛け回されるベルト4cとで構成されるバリエータ4を介して駆動輪50に伝達し、アクセルペダル41が踏み増しされると、プーリ4a,4bに供給される油圧を高くする車両100を制御する車両の制御装置(コントローラ30)は、走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると、エンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放してセーリングストップ状態(第1の走行状態)とし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10を始動させると共に前進クラッチ3aを締結させて、プーリ4a,4bに供給される油圧を高くし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、セーリングストップ状態ではないときにアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い。
【0071】
この構成によれば、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングが、セーリングストップ状態ではないときにアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅いので、セーリングストップ状態からの再加速時に、油圧の上昇による油のリーク量を減らすことができ、回路内の油量が多くなる。これにより、Low側への変速や前進クラッチ3aの締結のタイミングを早めることができる。したがって、加速要求に対して素早く車両100を加速させることができるので、運転者の加速要求と車両100の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0072】
(2)車両の制御装置(コントローラ30)は、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、変速比(減速比)を大きくするダウンシフトを行ってから前進クラッチ3aを締結させる。
【0073】
この構成によれば、ダウンシフトを行ってから前進クラッチ3aを締結するので、変速に使用できる油量が増え、素早く減速比を大きくすることができる。また、変速時に前進クラッチ3aが締結されていない分も、変速が速まり、前進クラッチ3aの締結後における車両100の加速を向上させることができ、再加速時に運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0074】
(3)(4)車両の制御装置(コントローラ30)では、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、前進クラッチ3aを締結させるための油の供給が開始されてから所定時間経過後である。具体的には、車両の制御装置(コントローラ30)では、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、前進クラッチ3aを締結させるための油を油圧室に充填するプリチャージの後である。
【0075】
この構成によれば、プリチャージの後でプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるので、油圧の上昇による油のリーク量が少ないうちに油が多く必要なプリチャージを行うことができる。これにより、前進クラッチ3aの締結のタイミングを早めることができる。したがって、加速要求に対して素早く車両100を加速させることができるので、運転者の加速要求と車両100の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0076】
(5)(7)(9)エンジン10から入力される駆動力を、一対のプーリ4a,4bと当該プーリ4a,4bに掛け回されるベルト4cとで構成されるバリエータ4を介して駆動輪50に伝達する車両100を制御する車両の制御装置(コントローラ30)は、走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると、エンジン10への燃料供給を停止して駆動輪50からエンジン10に伝達される駆動力でエンジン10を回転させるコースト状態(第2の走行状態)とし、コースト状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10への燃料供給を再開すると共にプーリ4a,4bに供給する油圧を高くし、走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると共に所定条件が成立すると、エンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放してセーリングストップ状態(第1の走行状態)とし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10を始動させると共に前進クラッチ3aを締結させて、プーリ4a,4bに供給される油圧を高くし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、コースト状態でアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い。
【0077】
この構成によれば、セーリングストップ状態のときにアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングが、コースト状態でアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅いので、セーリングストップ状態からの再加速時に、油圧の上昇による油のリーク量を減らすことができ、回路内の油量が多くなる。これにより、Low側への変速や前進クラッチ3aの締結のタイミングを早めることができる。したがって、加速要求に対して素早く車両100を加速させることができるので、運転者の加速要求と車両100の加速との乖離に起因して運転者に与える違和感を低減させることができる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0079】
上述した自動変速機20における一連の処理は、コンピュータにこれを実行さるためのプログラムとして提供されてもよい。
【0080】
即ち、本実施形態に係るプログラムは、コンピュータに、走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると、エンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放してセーリングストップ状態(第1の走行状態)とし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10を始動させると共に前進クラッチ3aを締結させて、プーリ4a,4bに供給される油圧を高くし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、セーリングストップ状態ではないときにアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い手順、又は走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると、エンジン10への燃料供給を停止して駆動輪50からエンジン10に伝達される駆動力でエンジン10を回転させるコースト状態(第2の走行状態)とし、コースト状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10への燃料供給を再開すると共にプーリ4a,4bに供給する油圧を高くし、走行中にアクセルペダル41が踏まれていない状態になると共に所定条件が成立すると、エンジン10への燃料供給を停止すると共にエンジン10と駆動輪50との間の前進クラッチ3aを解放してセーリングストップ状態(第1の走行状態)とし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれた場合には、エンジン10を始動させると共に前進クラッチ3aを締結させて、プーリ4a,4bに供給される油圧を高くし、セーリングストップ状態で走行中にアクセルペダル41が踏み込まれることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングは、コースト状態で走行中にアクセルペダル41が踏み増しされることによりプーリ4a,4bに供給される油圧が高くなるタイミングよりも遅い手順を実行させるものである。
【0081】
上述した一連の処理を実行するためのプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体によって提供される。コントローラ30においては、記憶部33に記憶されていてもよい。
【0082】
また、コンピュータが実行する各種プログラムは、例えばCD-ROM等の非一過性の記録媒体に記憶されたものを用いてもよい。
【符号の説明】
【0083】
100 車両
3a 前進クラッチ(クラッチ)
4 バリエータ(無段変速機構)
4a プライマリプーリ(プーリ)
4b セカンダリプーリ(プーリ)
4c ベルト(無端状部材)
10 エンジン
20 自動変速機(変速機)
30 コントローラ(車両の制御装置,コンピュータ)
41 アクセルペダル(アクセル)
50 駆動輪