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特許7620766光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチおよび方法
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  • 特許-光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H10F 55/00 20250101AFI20250116BHJP
【FI】
H01L31/12 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2024508038
(86)(22)【出願日】2022-12-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-09-19
(86)【国際出願番号】 CN2022135813
(87)【国際公開番号】W WO2024001043
(87)【国際公開日】2024-01-04
【審査請求日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】202210754299.4
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524050028
【氏名又は名称】中国工程物理研究院流体物理研究所
【氏名又は名称原語表記】Institute of Fluid Physics, China Academy of Engineering Physics
【住所又は居所原語表記】No. 64 Mianshan Road, Youxian District, Mianyang City, Sichuan Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100205936
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 海龍
(74)【代理人】
【識別番号】100132805
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 貴之
(72)【発明者】
【氏名】王 凌云
(72)【発明者】
【氏名】袁 建強
(72)【発明者】
【氏名】劉 宏偉
(72)【発明者】
【氏名】謝 衛平
(72)【発明者】
【氏名】▲らん▼ 崇彪
(72)【発明者】
【氏名】姜 苹
(72)【発明者】
【氏名】李 洪涛
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-268459(JP,A)
【文献】特開平02-295220(JP,A)
【文献】特開平07-079147(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0148847(US,A1)
【文献】中国実用新案第205812014(CN,U)
【文献】中国実用新案第206272591(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光パルスユニット、光増幅デバイス、光結合デバイスおよび光電半導体構造から構成され、
前記光電半導体構造は、光電効果材料をベースとし、光電効果材料に形成された多層ドープ構造を有し、複数のPNP構造およびNPN構造を形成し、PNP構造およびNPN構造はいずれも電気的に接触したベースを有しなく、
前記光パルスユニットは前記光増幅デバイスに光パルス信号を出力するために使用され、
前記光増幅デバイスは前記光パルス信号を増幅するために使用され、
前記光結合デバイスは、増幅後の光パルス信号を整形し、アレイ光パルス信号に拡散し、前記アレイ光パルス信号を光電半導体構造出力するために使用され、
前記光電効果材料は、光パルス信号の照射下で光子誘起キャリアを生成し、光子誘起キャリアは、多層ドープ構造において、光子誘起線形モード増幅および/または電界誘起非線形モード増幅を実施し、高出力増幅導通を実現し、
光子誘起キャリアは、多層ドープ構造において、光子誘起線形モード増幅および/または電界誘起非線形モード増幅を実施することは、具体的に、
スイッチ導通初期に、光子誘起線形モード増幅導通を実施し、
スイッチ導通中期に、光子誘起線形モードと電界誘起非線形モードの複合増幅導通を実施し、
スイッチ導通後期に、電界誘起非線形モード増幅導通を実施し、
前記光子誘起線形モード増幅導通は、アレイ光パルス信号をPNP構造のN領域およびNPN構造のP領域に直接照射し、対応する領域に対して高速増幅導通を実施し、
前記電界誘起非線形モード増幅導通は、確立された正帰還メカニズムが電界作用下で急速に拡散導通することである、ことを特徴とする光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項2】
前記光パルスユニットはパルス電源および電気-光変換デバイスを含み、
前記パルス電源は供給電力を高出力電力に変換するために使用され、
前記電気-光変換デバイスは、高出力電源を光パルス信号に変換する、ことを特徴とする請求項1に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項3】
前記パルス電源は、レーザ装置に使用可能であるレーザ電源である、ことを特徴とする請求項2に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項4】
前記電気-光変換デバイスは、ガス媒体デバイスまたは固体媒体デバイスである、ことを特徴とする請求項2に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項5】
前記電気-光変換デバイスは、キセノンランプまたはレーザダイオードである、ことを特徴とする請求項2に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項6】
前記光増幅デバイスは、光増幅結晶または光増幅光ファイバである、ことを特徴とする請求項1に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項7】
前記光結合デバイスは、光回折分光素子、光レンズまたはアレイ光ファイバビームである、ことを特徴とする請求項1に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項8】
前記光電効果材料は、ケイ素、ガリウムヒ素、炭化ケイ素または窒化ガリウムである、ことを特徴とする請求項1に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチに基づく作業方法であって、
供給電力を光パルス信号に変換して出力するステップと、
光パルス信号を増幅するステップと、
増幅後の光パルス信号を整形し、アレイ光パルス信号に拡散するステップと、
アレイ光パルス信号を光電効果材料に照射し、光子誘起キャリアを生成するステップと、
光子誘起キャリアが多層ドープ構造において、光子誘起線形モード増幅および/または電界誘起非線形モード増幅を実施し、高出力増幅導通を実現するステップと、を含む、ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高出力の半導体スイッチの技術分野に属し、具体的に、光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の高出力スイッチ技術において、高電圧、大電流、高導通速度、高電荷移動量、正確な遅延時間能力を同時に有するスイッチは、水素サイラトロン、擬似スパークスイッチ、ガススイッチなどのガス系スイッチのみであるが、これらのスイッチはすべて寿命の制限があるため、メンテナンスフリーで使用することができず、ガス系スイッチの作業メカニズム要因のため、スイッチには自己破壊の確率があり、すなわち、偶発性自己導通が発生する可能性がある。
【0003】
既存のパワー半導体スイッチ技術では、スイッチデバイスは、高電圧、大電流、高導通速度、高電荷移動量、正確な遅延時間能力を同時に有することができない。現在、IGBT、MOSFET、MCT、SGTOなど、より一般的なパワー半導体スイッチデバイスは、数十メガワット(MW)のピーク電力の場合、電流変化率(di/dt)数百キロアンペア/マイクロ秒(kA/μs)を達成することは困難である。
【0004】
ガリウムヒ素と炭化ケイ素光導電スイッチは高電荷移動量などを達成できず、電流も制限され、一般的に10kAを突破することは困難であり、パルス幅が百nsのオーダーに制限される。ケイ素光導電スイッチは、広いパルス幅に対応できるが、長期間の直流電圧に耐えることが難しい。
【発明の概要】
【0005】
既存のスイッチ技術における限界を克服するために、本発明は、光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチを提供する。本発明では、光増幅と電気増幅の複合制御により、スイッチデバイスの電力増幅倍数を数回交互させ、最後に高出力増幅倍数を実現し、スイッチデバイスが、高電圧、大電流、高導通速度、高電荷移動量および正確な遅延時間という利点を有する。
【0006】
本発明は以下の技術的解決策によって実現される。
光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは、光パルスユニット、光増幅デバイス、光結合デバイスおよび光電半導体構造から構成され、
ここで、前記光電半導体構造は、光電効果材料をベースとして、光電効果材料上に形成された多層ドープ構造であり、複数のPNP構造およびNPN構造を形成し、PNP構造およびNPN構造はいずれも電気的に接触したベースを有しなく、
前記光パルスユニットは前記光増幅デバイスに光パルス信号を出力するために使用され、
前記光増幅デバイスは前記光パルス信号を増幅するために使用され、
前記光結合デバイスは増幅後の光パルス信号を整形し、アレイ光パルス信号に拡散し、前記光電半導体構造を出力するために使用され、
前記光電効果材料は光パルス信号の照射下で光子誘起キャリアを生成し、光子誘起キャリアは多層ドープ構造において、光子誘起線形モード増幅および/または電界誘起非線形モード増幅を実施し、高出力増幅導通を実現する。
【0007】
既存のスイッチデバイスと比較して、本発明が提出する新規なスイッチデバイスは、光増幅と電気増幅の複合制御により、既存のスイッチデバイスに存在する制限を克服し、高電圧、大電流、高導通速度、高電荷移動量、正確な遅延時間などの特性を有し、適用範囲が広い。
【0008】
好ましい実施形態として、本発明の光パルスユニットはパルス電源および電気-光変換デバイスから構成され、
前記パルス電源は供給電源を高出力電源に変換するために使用され、
前記電気-光変換デバイスは高出力電源を光パルス信号に変換する。
【0009】
好ましい実施形態として、本発明のパルス電源はレーザ電源である。
【0010】
好ましい実施形態として、本発明の電気-光変換デバイスはガス媒体デバイスまたは固体媒体デバイスである。
【0011】
好ましい実施形態として、本発明の電気-光変換デバイスはキセノンランプまたはレーザダイオードである。
【0012】
好ましい実施形態として、本発明の光増幅デバイスは光増幅結晶または光増幅光ファイバである。
【0013】
好ましい実施形態として、本発明の光カプラは光回折分光素子、光レンズまたはアレイ光ファイバビームである。
【0014】
好ましい実施形態として、本発明の光電効果材料はケイ素、ガリウムヒ素、炭化ケイ素または窒化ガリウムである。
【0015】
第2側面によれば、本発明は、上記高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチに基づく作業方法を提供し、該方法は、
供給電力を光パルス信号に変換して出力するステップと、
光パルス信号を増幅するステップと、
増幅後の光パルス信号を整形し、アレイ光パルス信号に拡散するステップと、
アレイ光パルス信号を光電効果材料に照射し、光子誘起キャリアを生成するステップと、
光子誘起キャリアが多層ドープ構造において、光子誘起線形モード増幅および/または電界誘起非線形モード増幅を実施し、高出力増幅導通を実現するステップと、を含む。
【0016】
好ましい実施形態として、本発明の光子誘起キャリアは多層ドープ構造において、光子誘起線形モード増幅および/または電界誘起非線形モード増幅を実施することは、具体的に、
スイッチ導通初期に、光子誘起線形モード増幅導通を実施し、
スイッチ導通中期に、光子誘起線形モードと電界誘起非線形モードの複合増幅導通を実施し、
スイッチ導通後期に、電界誘起非線形モード増幅導通を実施し、
前記光子誘起線形モード増幅導通は、アレイ光パルス信号をPNP構造のN領域およびNPN構造のP領域に直接照射し、対応する領域に対して高速増幅導通を実施することであり、
前記電界誘起非線形モード増幅導通は、確立された正帰還メカニズムが電界作用下で急速に拡散導通することである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は以下の利点および有益な効果を有する。
本発明が提供する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは、高出力パルス発生用の新規なスイッチデバイスであり、高電圧、大電流、高速前縁、高繰り返し周波数のパルス出力を得ることができる。
【0018】
本発明が提供する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチデバイスの作業電圧は、0~30kVに達し、作業電流は0~200kAに達し、電流変化率(di/dt)は400kA/μsを超え、繰り返し周波数は0~10kHzに達することができる。
【0019】
本発明が提供する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチデバイスは、特に、大電流高速前縁のパルス電力発生に適用することができ、ガススイッチ、ガストリガ管、水素ゲート電流管、擬似スパークスイッチ、直列MOSFET、FID、SOS、PCSS光導電スイッチなどの代替として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
ここで説明される添付図面は、本発明の実施例のさらなる理解を提供するために使用され、本出願の一部を構成し、本発明の実施例を限定するものではない。
図1】本発明の実施例のスイッチの原理を示すブロック図である。
図2】本発明の実施例のスイッチの作業フローを示す概略図である。
図3】本発明の実施例のスイッチの作業フローの例1を示す図である。
図4】本発明の実施例のスイッチの作業フローの例2を示す図である。
図5】本発明の実施例のスイッチの例1の試験効果図である。
図6】本発明の実施例のスイッチの例2の試験効果図である。
図7】本発明の実施例のスイッチの例3の試験効果図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の各実施例で使用される「含む」または「含み得る」という用語は、発明された機能、操作または要素の存在を示し、1つまたは複数の機能、操作または要素の追加を制限するものではない。さらに、本発明の各実施例で使用される「含む」、「有する」およびそれらの同義語は、特定の特徴、数、ステップ、操作、要素、コンポーネントまたは前述の組み合わせのみを示すことを意図しており、1つまたは複数の他の特徴、数、ステップ、操作、要素、コンポーネントまたは前述の組み合わせを排除するか、または1つまたは複数の特徴、数、ステップ、操作、要素、コンポーネントまたは前述の組み合わせを追加する可能性があることを理解されたい。
【0022】
本発明の各実施例では、「または」または「Aまたは/およびB中の少なくとも1つ」は、同時に列挙された単語の任意の組み合わせまたはすべての組み合わせを含む。例えば、「AまたはB」または「Aまたは/およびB中の少なくとも1つ」は、Aを含んでもよく、Bを含んでもよく、またはAおよびBの両方を含んでもよい。
【0023】
本発明の各実施例で使用される「第1」、「第2」などの用語は各実施例中の各構成要素を修飾するが、対応の構成要素を限定するものではない。例えば、以上の表現は前記要素の順序および/または重要性を制限するものではない。以上の表現は1つ構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使用される。例えば、第1ユーザ装置および第2ユーザ装置は、両方ともユーザ装置であるが、異なるユーザ装置を示す。例えば、本発明の各実施例の範囲から逸脱することなく、第1要素は第2要素とも呼ばれてもよく、同様に、第2要素は第1要素とも呼ばれてもよい。
【0024】
なお、ある構成要素を別の構成要素に「接続」することが説明される場合、第1構成要素を第2構成要素に直接接続し、第1構成要素と第2構成要素間に第3構成要素を「接続」してもよいことに留意されたい。逆に、ある構成要素を別の構成要素に「直接接続」する場合、第1構成要素と第2構成要素間に第3構成要素が存在しないと理解される。
【0025】
本発明の各実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明する目的でのみ使用され、本発明の各実施例を限定するものではない。本明細書で使用される場合、単数形は、文脈がそうでないことを明記しない限り、複数形も含む。特に限定しない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語および科学用語)は、本発明の各実施例が属する技術分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。前記用語(例えば、一般的に使用される辞書に定義される用語など)は、関連する技術分野における文脈上の意味と同じ意味を有するものと解釈され、本発明の様々な実施例において明確に定義されない限り、理想化さた意味または過度に形式的な意味を有するものと解釈されることはない。
【0026】
本発明の目的、技術的解決策および利点をより明確かつ理解しやすいために、以下、実施例および添付図面と併せて、本発明をより詳細に説明するが、本発明の例示的な実施形態およびその説明は本発明を解釈する目的でのみ使用され、本発明を限定するものではない。
【0027】
<実施例1>
既存のスイッチデバイスに存在する制限、例えば、ガススイッチデバイスでは繰り返し周波数が不十分、信頼性が低く、寿命が短いという欠点があり、パワー半導体スイッチデバイスは導通速度が遅いなどの欠点があり、光導電スイッチデバイスは電流が小さく、電荷移動量が小さいという欠点がある。本実施例は光増幅と電気増幅の複合制御による高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチを提供し、光増幅と電気増幅の複合制御により、デバイスの電力増幅倍数を数回交互増幅させ、最後に高出力増幅倍数を実現し、スイッチデバイスは高電圧、大電流、高導通速度、高電荷移動量、正確な遅延時間という利点を得ることができる。
【0028】
図1に示すように、本実施例の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは主にパルス電源、電気-光変換デバイス、光増幅デバイス、光結合デバイスおよび光電半導体構造から構成される。
【0029】
ここで、パルス電源は高出力電源を提供するために使用される。高電圧プリイグニッション型電源、定電流低電圧電源、レーザ電源等であってもよく、電源を高電力に変換して初期電力増幅を実現する。本発明の実施例では、レーザ電源を例に挙げて説明するが、これに限定されるものではない。
【0030】
電気-光変換デバイスはパルス電源から出力された初期電力を光パルス信号に変換するために使用される。ガス媒体系デバイス、固体媒体系デバイスなど、例えば、キセノンランプ、レーザダイオードなどであってもよく、初期の電力を光、一般的に高エネルギーレベルの光パルスに変換する。
【0031】
光増幅デバイスは電気-光変換デバイスから出力された光パルス信号を増幅するために使用される。光増幅結晶、光増幅光ファイバなどであってもよく、光パルス信号は圧縮・増幅され、後にアクティブまたはパッシブQ変調方式で出力される。本発明の実施例では、光増幅結晶を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0032】
光カプラは光増幅デバイスから出力された光パルス信号を整形、または特定のスポット形状に直接自然拡散し、一般的に複数のスポットに拡散し、大面積のスポットアレイを形成し、空間結合または光ファイバ結合で出力する。光カプラは、アレイ光ファイバビーム、光回折分光素子、レンズなどであってもよい。
【0033】
光電半導体構造は多重セルマルチゲートレベル構造であり、光電効果材料をベースとし、光電効果材料はケイ素材料、ガリウムヒ素、炭化ケイ素、窒化ガリウムなどの材料であってもよく、光結合デバイスから出力されたアレイ光パルスを光電効果材料に照射し、複数の光電効果領域において、大面積、多種接合深さの光子誘起キャリアを生成し、一定の濃度を有し、直接光子誘起線形増幅導通モードを達成する。
【0034】
光電効果材料上に多層ドープ構造を作り、複数のNPN構造およびPNP構造を形成し、P-N-P-N構造とも呼ばれ、従来のパワー半導体デバイスと異なり、該多層ドープ構造中のNPN構造とPNP構造はいずれも電気的に接触したベースを有しない。光結合デバイス結合から出力されたアレイ光パルス信号はNPN構造とPNP構造のP領域およびN領域に直接照射され、対応する領域で直接急速増幅を実施し、この過程は光子誘起線形増幅導通モードとして記述することができ、光パルスが徐々に消える過程中、外部の電界作用下で、光子誘起キャリアが確立された正帰還メカニズムと共同作用し、デバイスの導通を維持し、光子誘起キャリアがさらに拡散し、光パルスが完全に消えた後、光が直接生成したキャリアが消えた後、確立された正帰還メカニズムが電界の作用下で、キャリアが周辺領域に輸送され、大面積の完全な導通を形成し、増幅倍数が維持され、導通抵抗がさらに低減され、この過程は電界誘起非線形増幅導通モードとして記述することができる。過程全体は、初期の光子誘起線形増幅導通モード、後期の電界誘起非線形増幅導通モードおよび中期の複合増幅導通モードを経る。
【0035】
図2に示すように、本実施例の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチの作業過程は具体的に、
供給電力を高電圧、大電流パルスに変換し、
電気-光変換デバイスによって電力を光パルス信号に変換し、
光パルス信号を光増幅デバイスで増幅し、増幅された光パワーを生成し、
増幅後の光が光カプラデバイスによって結合されて出力され、光電効果材料を照射し、初期濃度の高い光子誘起キャリアを発生させ、光パワーを電力に変換し、
光子誘起キャリアはP-N-P-N構造において光子誘起線形増幅導通モードおよび/または電界誘起線形増幅導通モードとなり、より高い電力を得る。
【0036】
本実施例の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは全く新しい作業メカニズムを実現することができる。
【0037】
スイッチ導通の初期に、高電流変化率(di/dt)段階、光子誘起線形増幅導通モード:前段階の光増幅の基礎に基づき、光パルスが光電効果材料を直接照射し、急速な光電効果を発生させ、均一に分布した多数の光子誘起キャリアを生成し、光子誘起線形増幅導通モードに入る。
【0038】
スイッチ導通の後期に、大電流連続導通段階、電界誘起非線形モード:既存の光子誘起キャリア分布に基づき、高電界の作用下で、急速に拡散増幅し、大面積で均一に導通し、電界誘起非線形増幅導通モードに入る。
【0039】
スイッチ導通の中期に、光子誘起線形増幅導通モードと電界誘起非線形増幅導通モードの共同作用で、スイッチがより高い電力増幅倍数を得る。
【0040】
本発明の実施例が提出する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは既存のスイッチデバイスと比較すると、以下の表1に示す特性を有する。
【表1】
注:表1には、「+」は該特性を有することを示し、「-」は該特性を有しなく、または制限されることを示す。
【0041】
表1から分かるように、本発明の実施例が提出する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは光導電スイッチの光電分離、高速などの利点を有するだけでなく、SGTO型スイッチの高電荷移動量、大電流などの利点を有するので、アクセラレータにおいて従来のガスサイラトロンの一部を代替し、パルス電力装置においてガススイッチの一部を代替し、特殊電源分野で光導電スイッチなどの一部を代替し、レーザ装置のプーケルボックスにおいて従来のMOSFET直列スイッチを代替し、電磁放射や電磁溶接などの高電流変化率(di/dt)の高出力スイッチなどの様々な用途に使用することができる。
【0042】
<実施例2>
図3に示すように、本実施例では、レーザダイオード、マイクロチップ増幅デバイス、DOE+レンズを例にして、上記実施例1が提出する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチの作業過程を説明し:
増幅後の電力をレーザダイオードに入力し、レーザダイオードからレーザパルス信号が出力され、
レーザパルス信号はマイクロチップ増幅デバイスによって増幅された後、DOEデバイス(光回折分光デバイス)で分光され、レンズで増幅されて均一な多点光(またはアレイ光)が出力され、
多点光が大面積で光電半導体構造を直接照射し、直接に急速な光電効果を得、光電効果材料に初期高い光子誘起キャリアを生成し、スイッチデバイスが初期導通状態、すなわち光子誘起線形増幅導通モードに入り、光パルスが徐々に消えると、光子誘起キャリアと確立された正帰還メカニズムが電界の負荷の下で共同作用し、デバイスの導通が維持され、光子誘起キャリアがさらに拡散し、スイッチデバイスが中期導通状態に入り、このとき光子誘起線形増幅導通と電界誘起非線形増幅導通の共同作用、すなわち複合増幅導通モードであり、光パルスが完全に消えた後に、光が直接発生したキャリアが消え、確立された正帰還メカニズムは電界の作用下で、キャリアが周辺領域に輸送され、大面積の完全な導通が形成され、スイッチが後期導通状態、すなわち電界誘起非線形増幅導通状態に入る。
【0043】
<実施例3>
図4に示すように、本実施例では、キセノンランプ、YAG結晶増幅デバイス、光ファイバアレイを例にして、上記実施例1が提出する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチの作業過程を説明し:
増幅後の電力をキセノンランプに入力し、キセノンランプからレーザパルス信号が出力され、
レーザパルス信号がYAG結晶増幅デバイスによって増幅された後、光ファイバアレイが分光されて多点結合増幅されて出力され、
多点光が直接に大面積で光電半導体構造を照射し、直接に急速な光電効果を得、光電効果材料に初期高い光子誘起キャリアが生成され、スイッチデバイスが初期導通状態、すなわち光子誘起線形増幅導通モードに入り、光パルスが徐々に消えると、光子誘起キャリアと確立された正帰還メカニズムが電界の負荷の下で共同作用し、デバイスの導通が維持され、光子誘起キャリアがさらに拡散し、スイッチデバイスが中期導通状態に入り、このとき光子誘起線形増幅導通と電界誘起非線形増幅導通の共同作用、すなわち複合増幅導通モードであり、光パルスが完全に消えた後に、光が直接生成したキャリアが消え、確立された正帰還メカニズムが電界の作用下で、キャリアが周辺領域に輸送され、大面積で完全な導通が形成され、スイッチが後期導通状態、すなわち電界誘起非線形増幅導通状態に入る。
【0044】
<実施例4>
本実施例では、上記実施例1が提出する高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチを試験し、その典型的なパラメータ試験結果は図5図7に示される。
【0045】
図5は、光電半導体構造の直径が約12mmの場合の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチの試験結果を示し、ここで、点線は電気増幅後の電流波形(カソード試験)であり、単位がAであり、実線はスイッチによって負荷された電圧波形(アノード試験)であり、単位がVであり、横座標は時間であり、単位がnsである。添付図面から分かるように:
本実施例の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは、約12mm直径構造上で、典型的なパラメータで試験され、約8kA電流、18nsの電流前縁(回路インダクタンスなどを含む)、出力電流変化率(di/dt)が400kA/μs以上に達し、単一デバイスピークの電力が40MWよりも大きい(図5に示すように、ピーク電流が約8.11kA、ピーク電圧が約5.15kV、ピーク電力が約41.77MW)。
【0046】
図6は、光電半導体構造の直径が約12mmの場合の別の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチの試験結果を示し、ここで、点線は、電気増幅後の電流波形(カソード試験)であり、単位がAであり、実線は、スイッチによって負荷された電圧波形(カソード試験)であり、単位がVであり、横座標は時間であり、単位がμsである。添付図面から分かるように:
本実施例の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは、約12mm直径構造上で典型的なパラメータで試験され、約4.43kA電流、36.7nsの電流前縁、出力電流変化率(di/dt)が120kA/μs以上に達し(試験回路の制限を受ける)、ピーク電力が20MW以上に達し(図6に示すように、ピーク電流が約4.43kA、ピーク電圧が4.65kV、ピーク電力が約20.60MW)、パルス幅が5μsである。
【0047】
図7は、光電半導体構造の直径が約38mmの場合の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチの試験結果を示し、ここで、点線は、電気増幅後の電流波形(カソード試験)であり、単位がAであり、実線は、スイッチによって負荷された電圧波形(アノード試験)であり、単位がVであり、横座標が時間であり、単位がμsである。添付図面から分かるように:
本実施例の高出力の繰返し周波数ソリッドステートスイッチは、約38mm直径構造上で典型的なパラメータで試験され、約43kA電流、1.12μsの電流前縁、出力電流変化率(di/dt)が38kA/μs以上に達し(試験回路の制限を受ける)、ピーク電力が200MW以上に達し(図7に示すように、ピーク電流が約43.4kA、ピーク電圧が約5.11kV、ピーク電力が約221.77MW)、パルス幅が16μsである。
【0048】
上述した具体的な実施形態は、本発明の目的、技術的解決策および有益な効果をより詳細に説明するものであり、上述した内容は本発明の具体的な実施形態に過ぎず、本発明の保護範囲を限定するものではなく、本発明の精神および原則から逸脱することなくなされた任意の修正、等価置換、改良などは、すべて本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7