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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-15
(45)【発行日】2025-01-23
(54)【発明の名称】車両センサデータの分散処理
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250116BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2024537511
(86)(22)【出願日】2023-01-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-12-05
(86)【国際出願番号】 JP2023000377
(87)【国際公開番号】W WO2023162491
(87)【国際公開日】2023-08-31
【審査請求日】2024-06-20
(31)【優先権主張番号】17/680,503
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワッツ ラース ステファン
(72)【発明者】
【氏名】入江 耕太
(72)【発明者】
【氏名】有馬 秀俊
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-64341(JP,A)
【文献】特開2018-95067(JP,A)
【文献】特開2013-052817(JP,A)
【文献】特開2010-173366(JP,A)
【文献】特開2002-135758(JP,A)
【文献】特開2005-222307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
B60W 10/00 - 60/00
B60R 16/00 - 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内でセンサデータを処理するためのシステムであって、
第1の電子制御ユニット(ECU)を備え、このECUは複数のゾーンECUと通信することができ、前記第1のECUは、前記複数のゾーンECUのそれぞれのゾーンECUよりも高いデータ処理能力を有し、各それぞれのゾーンECUは、前記車両と関連付けられる複数のゾーンのそれぞれのゾーンと関連付けられ、前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記それぞれのゾーンECUにゾーンセンサデータを提供するために、ゾーンセンサのセットが各それぞれのゾーンと関連付けられ、前記第1のECUがプロセッサを含み、前記プロセッサは、実行可能命令によって、
前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記複数のゾーンの前記各ゾーンのゾーンセンサの各セットからゾーンセンサデータを受信する動作と、
前記車両の指示された運転モードに基づいて、前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記複数のゾーンのうちの第1のゾーンの前記ゾーンセンサデータを選択する動作と、
前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記第1のゾーンの前記ゾーンセンサデータに対して認識を実行して、第1の認識情報を決定する動作と、
前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記複数のゾーンの前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記それぞれのゾーンECUから第2の認識情報を受信する動作と、
前記第1のECUの前記プロセッサにより、少なくとも前記第1の認識情報及び前記第2の認識情報に基づいて、少なくとも1つの制御信号を少なくとも1つの車両アクチュエータに送信する動作と、
を含む動作を実行するように構成される、システム。
【請求項2】
前記動作は、
車両動作に関連する情報から指示された運転モードを決定する動作と、
前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記車両動作に関連する前記情報から前記指示された運転モードを決定することに基づいて、前記認識を実行するために前記第1のゾーンから前記ゾーンセンサデータを動的に選択する動作と、
を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記動作は、
前記指示された運転モードの変化の指示に基づいて、前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記認識を実行するために第2のゾーンからゾーンセンサデータを選択する動作と、前記第1のゾーンから受信される前記ゾーンセンサデータに対する前記認識の実行を停止する動作と、
を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記それぞれのゾーンECUは、
前記それぞれのゾーンECUと関連付けられる前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記ゾーンセンサのセットからゾーンセンサデータを受信する動作と、
前記それぞれのゾーンECUにより、低減されたセンサデータを取得するために前記ゾーンセンサデータの量を低減する動作と、
前記低減されたセンサデータに対して認識を実行して認識情報を取得する動作と、
前記認識情報を前記第2の認識情報の一部として前記第1のECUに送信する動作と、
を含む動作を実行するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記車両の前記指示された運転モードは、
前記車両が前進方向に走行している前進運転モード、又は
前記車両が後進方向に走行している後進運転モード、
のうちの一方である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記車両の前記指示された運転モードは、
前記車両が左旋回に近づいている左折運転モード、又は
前記車両が右旋回に近づいている右折運転モード
のうちの一方であり、
前記動作は、
前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記指示された運転モードが前記左折運転モード又は前記右折運転モードのうちの一方であることに基づいて、前記複数のゾーンのうちの第2のゾーンの前記ゾーンセンサデータを選択する動作と、
前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記第1のゾーンの前記ゾーンセンサデータに加えて前記第2のゾーンの前記ゾーンセンサデータに対して認識を実行し、前記第1の認識情報を決定する動作と、
を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記動作は、
少なくとも指示された車速が閾値速度を下回っていることに基づいて、低電力運転モードを選択する動作と、前記第1のECUの前記プロセッサにより、前記認識の実行を中止する動作とを更に含み、前記ゾーンECUは、前記それぞれのゾーンにおける前記第2の認識情報を前記第1のECUに提供する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
第1の電子制御ユニット(ECU)により、車両と関連付けられる複数のゾーンのゾーンセンサデータを受信するステップであって、それぞれの第2のECU及びゾーンセンサのそれぞれのセットが前記複数のゾーンの各それぞれのゾーンと関連付けられる、ステップと、
前記車両の指示された運転モードに基づいて、前記第1のECUにより、前記複数のゾーンのうちの第1のゾーンからの前記ゾーンセンサデータに対して認識を実行し、第1の認識情報を決定するステップと、
前記第1のECUにより、前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記それぞれの第2のECUのうちの1つ以上から第2の認識情報を受信するステップであって、前記それぞれの第2のECUが関連付けられる前記それぞれのゾーンの前記ゾーンセンサのセットからのそれぞれのゾーンセンサデータに対して認識処理を実行するように前記それぞれの第2のECUが構成される、ステップと、
前記第1のECUにより、少なくとも前記第1の認識情報及び前記第2の認識情報に基づき、少なくとも1つの制御信号を少なくとも1つの車両アクチュエータに送信するステップと、
を含む方法。
【請求項9】
前記第1のECUは、前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記それぞれの第2のECUよりも高いデータ処理能力を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のECUにより、前記複数のゾーンの前記ゾーンのそれぞれのゾーンセンサの各セットから前記ゾーンセンサデータを受信するステップと、
前記第1のECUにより、車両動作に関連する情報から前記指示された運転モードを決定することに基づいて認識を実行するために前記第1のゾーンから前記ゾーンセンサデータを動的に選択するステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記指示された運転モードの変化の指示に基づいて、前記第1のECUにより、前記認識を実行するために第2のゾーンからゾーンセンサデータを選択するステップと、前記第1のゾーンから受信される前記ゾーンセンサデータに対する前記認識の実行を停止するステップとを更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記それぞれの第2のECUは、
前記それぞれの第2のECUと関連付けられる前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記ゾーンセンサのセットからゾーンセンサデータを受信し、
低減されたセンサデータを取得するために前記ゾーンセンサデータの量を低減させ、低減されたセンサデータに対して認識を実行して認識情報を取得し、
前記認識情報を前記第2の認識情報の一部として前記第1のECUに送信する、
ように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記車両の前記指示された運転モードは、
前記車両が左旋回に近づいている左折運転モード、又は
前記車両が右旋回に近づいている右折運転モード
のうちの一方であり、
前記方法は、
前記第1のECUにより、前記指示された運転モードが前記左折運転モード又は前記右折運転モードのうちの一方であることに基づいて、前記複数のゾーンのうちの第2のゾーンの前記ゾーンセンサデータを選択するステップと、
前記第1のECUにより、前記第1のゾーンの前記ゾーンセンサデータに加えて前記第2のゾーンの前記ゾーンセンサデータに対して認識を実行し、前記第1の認識情報を決定するステップと、
を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のECUの故障に続いて、前記第2のECUのうちの1つが、少なくとも続いて決定された第2の認識情報に基づいて、少なくとも1つの後続の制御信号を少なくとも1つの車両アクチュエータに送信するように構成される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
車両に配置されるとともに、前記車両に配置される複数の第2のECUと通信することができる第1の電子制御ユニット(ECU)を備え、各それぞれの第2のECUは、前記車両と関連付けられる複数のゾーンのうちのそれぞれのゾーンと関連付けられ、少なくとも1つのそれぞれのセンサは、前記それぞれのゾーンにおけるゾーンセンサデータを前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記それぞれの第2のECUに提供するために各それぞれのゾーンと関連付けられ、前記第1のECUは、実行可能命令により、
前記第1のECUにより、前記複数のゾーンの前記それぞれのゾーンの前記ゾーンセンサデータを受信する動作と、
前記車両の指示された運転モードに基づいて、前記第1のECUにより、前記複数のゾーンのうちの第1のゾーンからの前記ゾーンセンサデータに対して認識を実行し、第1の認識情報を決定する動作と、
前記第1のECUにより、前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記それぞれの第2のECUのうちの1つ以上から第2の認識情報を受信する動作であって、前記それぞれの第2のECUが関連付けられる前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記少なくとも1つのそれぞれのセンサからのそれぞれのゾーンセンサデータに対して認識処理を実行するように前記それぞれの第2のECUが構成される、動作と、
前記第1のECUにより、少なくとも前記第1の認識情報及び前記第2の認識情報に基づいて、少なくとも1つの制御信号を少なくとも1つの車両アクチュエータに送信する動作と、
を含む動作を実行するように構成される、システム。
【請求項16】
前記第1のECUは、前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記それぞれの第2のECUよりも高いデータ処理能力を有する、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記動作は、
前記指示された運転モードの変化の指示に基づいて、前記第1のECUにより、前記認識を実行するために第2のゾーンからゾーンセンサデータを選択する動作と、前記第1のゾーンから受信される前記ゾーンセンサデータに対する前記認識の実行を停止する動作と、
を更に含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項18】
前記それぞれの第2のECUは、
前記それぞれの第2のECUと関連付けられる前記それぞれのゾーンと関連付けられる前記ゾーンセンサのセットからゾーンセンサデータを受信し、
低減されたセンサデータを取得するために前記ゾーンセンサデータの量を低減させ、低減されたセンサデータに対して認識を実行して認識情報を取得し、
前記認識情報を前記第2の認識情報の一部として前記第1のECUに送信する、
ように構成される、請求項15に記載のシステム。
【請求項19】
前記車両の前記指示された運転モードは、
前記車両が左旋回に近づいている左折運転モード、又は
前記車両が右旋回に近づいている右折運転モード
のうちの一方であり、
前記方法は、
前記第1のECUにより、前記指示された運転モードが前記左折運転モード又は前記右折運転モードのうちの一方であることに基づいて、前記複数のゾーンのうちの第2のゾーンの前記ゾーンセンサデータを選択するステップと、
前記第1のECUにより、前記第1のゾーンの前記ゾーンセンサデータに加えて前記第2のゾーンの前記ゾーンセンサデータに対して認識を実行し、前記第1の認識情報を決定するステップと、
を更に含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項20】
前記第1のECUの故障に続いて、前記第2のECUのうちの1つが、少なくとも続いて決定された第2の認識情報に基づいて、少なくとも1つの後続の制御信号を少なくとも1つの車両アクチュエータに送信するように構成される、請求項15に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の幾つかの実装形態は、車両におけるADAS及び/又はADシステム動作を可能にするべく認識及び他のタスクを実行するために複数の車両センサのセンサデータを処理するためのプライマリプロセッサに課される処理要件を低減するための、複数の分散プロセッサ及びインテリジェント処理分散方式を採用するための技術及び構成に関する。
【背景技術】
【0002】
先進運転者支援システム(ADAS)、並びに半自律型車両システム、完全自律型車両システム、又は他の自律運転(AD)システムは、安全性の向上、自動化ナビゲーションなどのために車両制御を自動化又は他の方法で強化するシステムである。これらのシステムは、一般に、道路を認識し、他の車両、障害物、歩行者などを認識して回避するために複数のタイプのセンサを使用する。しかしながら、センサ、プロセッサ、及びセンサデータを処理するために使用される他のコンピューティング構成要素は、車両のコストを実質的に増加させる可能性がある。更に、車両が電動車両である場合、センサ及びコンピューティング構成要素によって必要とされる電力は、車両のバッテリを著しく消耗させる場合がある。更に、中央プロセッサがセンサデータ処理のほとんど又は全てに依存している場合、これは、中央プロセッサが故障すれば又はウイルス、マルウェアなどによって攻撃されれば、車両を単一の故障ポイントに対して脆弱なままにする可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
幾つかの実装形態において、第1の電子制御ユニット(ECU)は、車両と関連付けられる複数のゾーンのゾーンセンサデータを受信する。例えば、それぞれの第2のECU及びゾーンセンサのそれぞれのセットは、複数のゾーンの各それぞれのゾーンと関連付けられる。車両の指示された運転モードに基づいて、第1のECUは、複数のゾーンのうちの第1のゾーンからのゾーンセンサデータに対して認識を実行して、第1の認識情報を決定することができる。第1のECUは、それぞれのゾーンのそれぞれの第2のECUから第2の認識情報を受信する。例えば、それぞれの第2のECUは、それらのそれぞれのゾーンのゾーンセンサのセットからのそれぞれのゾーンセンサデータに対して認識処理を実行するように構成される。第1の認識情報及び第2の認識情報に基づいて、第1のECUは、少なくとも1つの車両アクチュエータに少なくとも1つの制御信号を送信する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
詳細な説明は、添付図面に関連して説明される。図において、参照番号の左端の数字は、参照番号が最初に現れる図を特定する。異なる図における同じ参照番号の使用は、類似又は同一の項目又は特徴を示す。
図1】幾つかの実装形態に係る、車両センサデータの分散処理のためのシステムの一例を示す。
図2】幾つかの実装形態に係る、図1のシステムの物理的及び論理的アーキテクチャの一例を示す。
図3】幾つかの実装形態に係る、高性能電子制御ユニット(HPECU)及びゾーン電子制御ユニット(ゾーンECU)によって実行されるプロセスの一例を示す。
図4】幾つかの実装形態に係る、HPECUが故障した場合に1つ以上のゾーンECUによって実行されるプロセスの一例を示す。
図5】幾つかの実装形態に係る、車両動作モードを決定するためのプロセスの一例を示すフロー図である。
図6】幾つかの実装形態に係る、HPECUとゾーンECUとの特徴及び能力の比較を示すデータ構造を示す。
図7】幾つかの実装形態に係る、前進運転モードにおけるセンサ対象領域の一例を示す。
図8】幾つかの実装形態に係る、後進運転モードにおけるセンサ対象領域の一例を示す。
図9】幾つかの実装形態に係る、左折運転モードにおけるセンサ対象領域の一例を示す。
図10】幾つかの実装形態に係る、右折運転モードにおけるセンサ対象領域の一例を示す。
図11】幾つかの実装形態に係る、低電力運転モードにおけるデータ処理の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書の幾つかの実装形態は、車両におけるADAS及び/又はADシステム動作を可能にするべく認識及び他のタスクを実行するために複数の車両センサのセンサデータを処理するためのプライマリプロセッサに課される処理要件を低減するための、複数の分散プロセッサ及びインテリジェント処理分散方式を採用するための技術及び構成に関する。本明細書の例は、構成要素の故障、マルウェア、ウイルス、ハッキングなどに対する耐性を改善しながら、車両の動作をサポートするのに匹敵する性能を提供することができる。
【0006】
幾つかの例では、システムは、本明細書でそれぞれの電子制御ユニット(ECU)と呼ばれる複数の別個の車載プロセッサを含むことができ、これらのプロセッサは、車両が部分的又は完全に自動化された車両として動作できるようにする検知機能を果たす複数のそれぞれのセンサからセンサデータを受信することができる。一例として、システムは、少なくとも1つの高性能ECU(HPECU)及び複数のゾーンECUを含む。HPECUは、一次ECUとして機能することができ、それぞれのゾーンECUよりも大容量のデータ処理が可能な比較的高性能のプロセッサを含むことができる第1のタイプのECUであってもよい。システムは、第2のタイプのECUであってもよい複数のゾーンECUを更に含むことができ、各ゾーンECUは、HPECUと比較して比較的低電力のプロセッサを有し、したがって、HPECUと比較してデータ処理の容量が低い。
【0007】
ゾーンECUは、それぞれのゾーンECUがデータを受信するそれぞれのセンサに近接するように、車両内の戦略的位置に配置することができる。例えば、各ゾーンは、1つ以上のセンサのセットに対応することができ、それぞれのゾーンECUは、そのそれぞれのゾーンに対応するセンサのセンサデータを処理するためにそれぞれのゾーンに割り当てることができる。一例として、4つのゾーン、例えば、前方、後方、左側、及び右側が存在してもよく、それぞれのゾーンがそれぞれのゾーンECU及び対応するセンサのセットを有するが、本明細書の他の実装形態は、より多くの又はより少ないゾーンを含んでもよい。
【0008】
ゾーンECUは、有線又は無線ネットワークを介してHPECUに接続され、処理済みデータ又は生データの少なくとも一方をHPECUに送信することができる。ゾーンECUは、それぞれのセンサから生データを受信し、生センサデータを集約又は他の様態で低減し、次いで低減されたデータを処理して、車両に対する検出された物体の位置を決定するための物体検出などの認識処理を実行するように構成される。選択された車両動作モードについて、HPECUは、選択された車両動作モードに関して対象であると決定される1つ以上の選択されたゾーンから生センサデータを受信することができ、選択された1つ以上のゾーンに関して認識処理を実行するために生データを処理することができる。HPECUはより高いコンピュータ処理能力を有するため、HPECUは、生データを処理し、選択された車両動作モードに対応する特定の対象領域に関して対応するゾーンECUが可能であるよりも高い性能の認識結果(例えば、より正確、より詳細など)を提供するように構成することができる。HPECUによる処理のために選択されたゾーンセンサデータは、走行方向、車両の速度、気象条件、車両が右折しようとしているか、左折しようとしているかなどに基づくなど、車両の指示された動作モードに少なくとも部分的に基づいて選択される。1つ以上の選択されたゾーン自体からの生センサデータを処理することに加えて、HPECUは、各ゾーンECUから認識結果を受信することもできる。したがって、どのECUがどのセンサデータを処理したかにかかわらず、認識結果の全ては、車両の1つ以上のアクチュエータ又は他の装置に送信する1つ以上の信号を決定するためのHPECUによる入力として使用することができる。
【0009】
説明の目的のために、幾つかの例示的な実装形態は、車両の指示された運転モードに基づいてセンサデータを処理するために複数のECUのECUを選択する環境で説明されている。しかしながら、本明細書の実装形態は、提供される特定の例に限定されず、本明細書の開示に照らして当業者には明らかなように、他のタイプのプロセッサ、処理タスクを分散させるための他の技術、他のタイプのデータ処理、他のタイプの車両、他のタイプのセンサなどに拡張されてもよい。例えば、本明細書の実装形態は、個人車両、フリート車両及び他の商業的に所有される車両、トラック、貨物輸送機、又はある程度の自律性を有する任意の他の車両に使用することができる。更に、バッテリ駆動車両の場合、本明細書の実施形態によって提供される電力消費の減少は、バッテリ駆動車両の範囲を増加させる可能性がある。更に、内燃車両の場合、本明細書の実装形態は、車両の燃料消費量を低減することができる。
【0010】
図1は、幾つかの実装形態に係る、車両センサデータの分散処理のためのシステム100の一例を示す。この例において、車両102は、複数のゾーン108と1つ以上のネットワークを介して通信することができる高性能ECU(HPECU)104を含み、図示の例では、複数のゾーン108は、車両102の前方に対応する第1のゾーン108(1)と、車両102の後部に対応する第2のゾーン108(2)と、車両102の右側に対応する第3のゾーン108(3)と、車両102の左側に対応する第4のゾーン108(4)とを含む。
【0011】
各ゾーン108は、それぞれのゾーンECU110と、ゾーンセンサ112のセットとを含む。この例において、第1のゾーン108(1)は、第1のゾーンECU110(1)と、1つ以上の第1のゾーンセンサ112(1)とを含み、第2のゾーン108(2)は、第2のゾーンECU110(2)と、1つ以上の第2のゾーンセンサ112(2)とを含み、第3のゾーン108(3)は、第3のゾーンECU110(3)と、1つ以上の第3のゾーンセンサ112(3)とを含み、第4のゾーン108(4)は、第4のゾーンECU110(4)と、1つ以上の第4のゾーンセンサ112(4)とを含む。以下で更に説明するように、各それぞれのゾーン108のそれぞれのゾーンECU110は、そのそれぞれのゾーン108に含まれるそれぞれのセンサ112から生センサデータを受信することができる。
【0012】
更に、HPECU104は、HPECU104及びゾーンECU110によって実行されたセンサデータ処理の結果に基づいてアクチュエータ114のうちの1つ以上に1つ以上の制御信号を送信するためなどに、1つ以上のネットワークを介して1つ以上のアクチュエータ114と通信することができる。例えば、システム100は、ステアリング、ブレーキ、アクセル、信号、照明などの車両動作の一部又は全ての態様を制御することができるアクチュエータを有する車両102に含まれてもよい。
【0013】
ゾーンセンサ112は、一般に、カメラ(モノラル及び/又はステレオ、可視光及び/又は近赤外)、ライダセンサ、レーダセンサ、超音波センサ、熱画像センサなどのうちの1つ以上を含むことができる。更に、他のセンサ116をシステム100に含めることができ、幾つかの例では、他のセンサ116は、それらのセンサデータをHPECU104に直接供給することができる。他のセンサ116の例としては、全地球航法衛星システム(GNSS)センサ又は他の位置センサ、ステアリングホイール位置センサ(又は車両にステアリングホイールがない場合には前輪位置センサ)、車速センサ、及び当該技術分野で知られているような様々な他の車両状態センサを挙げることができる。更に、図1は、HPECU104に直接センサ情報を提供するものとして他のセンサ116を示しているが、他の例では、他のセンサ116は、それらのセンサ情報を1つ以上のゾーンECU110に提供することができる。
【0014】
ゾーンECU110は、1つ以上のネットワーク106を介して互いに及びHPECU104と通信することができる。例えば、車両ECUは、一般に、車両バスプロトコルに従って車両バスを介して互いに通信することができる。一例として、1つ以上のネットワークは、CANバスプロトコルによる通信を可能にするコントローラエリアネットワークバス(CANバス)を含むことができる。CANバスプロトコルは、ECU並びに他の車両装置及びシステムがホストコンピュータを伴うことなく互いに通信できるようにする車両バスプロトコルである。CANバスは、少なくとも2つの異なるタイプを含むことができる。例えば、高速CANは、バスが環境の一端から他端まで動作するアプリケーションで使用されてもよく、フォールトトレラントCANは、ノードのグループが互いに接続される場合に使用されてもよい。更に、1つ以上のネットワーク106は、CANバスプロトコルに限定されず、イーサネット、光ファイバ、Wi-Fi又は他の短距離無線技術などの他のタイプの有線及び無線ネットワーク技術を含むことができる。したがって、本明細書の実装形態は、いかなる特定のネットワーキング技術又はプロトコルにも限定されない。
【0015】
自動車技術会(SAE)によって定義されているように、レベル0からレベル5まで6レベルの運転自動化がある。特に、「レベル0」(運転の自動化なし)では、運転者は、操向、制動、加速などの全ての操作タスクを実行する。「レベル1」(運転者支援)では、車両は幾つかの機能(例えば、巡航制御)で支援することができるが、運転者は依然として周囲環境の全ての加速、制動、及び監視を処理する。「レベル2」(部分運転自動化)において、車両は、操向又は加速機能を支援し、運転者が自分のタスクの一部から離れることを可能にすることができる。アダプティブクルーズコントロールは、レベル2の自律性の一例である。
【0016】
自動運転の概念は、主に「レベル3」(条件付き運転自動化)から始まり、車両自体が周囲を監視し、車両に対して何らかの制御を及ぼすことができる(例えば、自動緊急ブレーキ)。「レベル4」(高度な運転自動化)では、車両はほとんどの場合独立して運転することができるが、全ての条件が満たされ、操作者が依然として引き継ぐことができることが要求されない限り、動作しない。「レベル5」(完全運転自動化)では、車両は操作者を伴うことなくあらゆる条件のどこでも運転することができる。したがって、本明細書の幾つかの例は、レベル3~5の運転自動化システムに有用であり得る。
【0017】
前述したように、ゾーンECU110は、一般に、ゾーンECU110が割り当てられるそれぞれのゾーンのそれぞれのセンサから受信したセンサデータを処理することができる。車両の現在及び今後の動作モードに応じて、HPECU104は、追加的又は代替的に、ゾーン108(1)-108(4)のうちの1つ以上からのセンサデータを処理することができる。一例として、HPECU104は、それぞれのゾーン内のそれぞれのセンサから生センサデータを直接受信することができ、或いは、HPECU104は、それぞれのゾーンのそれぞれのゾーンECU110を介して生センサデータを受信することができる。更なる詳細は、図2図11に関して以下に説明される。
【0018】
図2は、幾つかの実装形態に係る、図1のシステム100の物理的及び論理的アーキテクチャ200の一例を示す。この例において、HPECU104は、1つ以上のプロセッサ202と、1つ以上のコンピュータ可読媒体204と、1つ以上の通信インタフェース206とを含む。1つ以上のプロセッサ202は、中央処理ユニット(CPU)、グラフィック処理ユニット(GPU)、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、ステートマシン、論理回路、及び/又は動作命令に基づいて信号を操作する他の装置の1つ以上を含んでもよい。一例として、プロセッサ202は、本明細書に記載のアルゴリズム及び他のプロセスを実行するように特にプログラム又は構成された任意の適切なタイプの1つ以上のハードウェアプロセッサ及び/又は論理回路を含むことができる。プロセッサ202は、コンピュータ可読媒体204に記憶されたコンピュータ可読命令をフェッチ及び実行するように構成することができ、コンピュータ可読命令は、本明細書に記載の機能を実行するようにプロセッサ202をプログラムすることができる。
【0019】
コンピュータ可読媒体204は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラム、プログラムモジュール、及び他のコード又はデータなどの情報を記憶するための任意の種類の技術で実装された揮発性及び不揮発性メモリ並びに/又はリムーバブル及び非リムーバブル媒体を含むことができる。例えば、コンピュータ可読媒体204は、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリもしくは他のメモリ技術、光学記憶装置、固体記憶装置、磁気ディスク、クラウドストレージ、又は所望の情報を記憶するために使用することができ、コンピューティングデバイスによってアクセスすることができる任意の他の媒体を含むことができるが、これらに限定されない。HPECU104の構成に応じて、コンピュータ可読媒体204は、言及される場合、非一時的コンピュータ可読媒体がエネルギー、搬送波信号、電磁波、及び/又は信号自体などの媒体を除外する限り、有形の非一時的媒体であってもよい。場合によっては、コンピュータ可読媒体204は、HPECU104と同じ場所にあってもよいが、他の例では、コンピュータ可読媒体204は、無線ネットワークなどを介してアクセス可能など、HPECU104から部分的に離れていてもよい。
【0020】
コンピュータ可読媒体204は、プロセッサ202によって実行可能な任意の数の機能コンポーネントを格納するために使用することができる。多くの実施形態では、これらの機能構成要素は、プロセッサ202によって実行可能であり、実行されると、具体的には、HPECU104に起因する動作を実行するようにプロセッサ202をプログラムする命令又はプログラムを含む。コンピュータ可読媒体204に記憶された機能構成要素は、処理管理プログラム208、認識プログラム210、車両制御プログラム212、及び経路計画プログラム214を含むことができ、それらのそれぞれは、1つ以上のコンピュータプログラム、アプリケーション、実行可能コード、又はそれらの一部を含むことができる。なお、この例では、これらのプログラム208~214は別個のプログラムとして示されているが、これらのプログラムの一部又は全部は、1つ以上のプログラムに結合されてもよいし、より多数のプログラムに分割されてもよい。
【0021】
更に、コンピュータ可読媒体204は、データ、データ構造、及び本明細書に記載の機能及びサービスを実行するために使用される他の情報を格納することができる。例えば、コンピュータ可読媒体204は、認識情報216、車両データ218、センサデータ220、及び幾つかの例では、例えば認識プログラム210及び/又は車両制御プログラム212によって使用され得る1つ以上の機械学習モデル(MLM(s))222を格納することができる。HPECU104はまた、プログラム、ドライバなどを含むことができる他の機能構成要素及びデータ、並びに機能構成要素によって使用又は生成されるデータを含むか又は維持することができる。更に、HPECU104は、多くの他の論理的、プログラム的、及び物理的構成要素を含むことができ、それらの前述の構成要素は、本明細書の説明に関連する単なる例である。
【0022】
1つ以上の通信インタフェース206は、1つ以上のネットワーク106を介して、及び/又は車両102の外部の外部コンピューティングデバイス(図2には示されていない)と通信するためのセルラネットワークもしくは他の無線通信ネットワークを介してなど、様々な他のデバイスとの通信を可能にするための1つ以上のソフトウェア及びハードウェア構成要素を含むことができる。例えば、通信インタフェース206は、LAN、インターネット、ケーブルネットワーク、セルラネットワーク、無線ネットワーク(例えば、Wi-Fi)及び有線ネットワーク(例えば、CAN、光ファイバ、イーサネット)、直接接続、並びにBLUETOOTH(R)などの近距離通信のうちの1つ以上を介した通信を可能にすることができる。
【0023】
ゾーンECU110は、それぞれ、1つ以上のプロセッサ202、1つ以上のコンピュータ可読媒体204、及び1つ以上の通信インタフェース206を含む、HPECU104と同様のハードウェア構成を有することができる。しかしながら、ゾーンECU110は、より低いクロック速度を有するより低い性能のプロセッサ202、より低い性能のメモリ、より少ない量のメモリ及び他のコンピュータ可読媒体などのより低い性能の構成要素を含む、HPECU104と比較して実質的に低い全体的な性能を有することができる。したがって、それぞれのゾーンECUのデータ処理能力は、毎秒数百万回の動作(MOPS)、毎秒数百万回の命令(MIPS)、データ処理ベンチマーク、又は認識プログラム210を使用して同じ量のセンサデータを処理するのに必要な時間で測定されるように、HPECU104のデータ処理能力よりも実質的に低くてもよい。一例として、HPECU104の測定された性能は、それぞれのゾーンECU110の性能よりも10倍など大きくてもよいが、本明細書の実施形態は、ゾーンECU110の性能に対するHPECU104の測定された性能の利点のいかなる特定の違いにも限定されない。
【0024】
更に、ゾーンECU110は、HPECU104に含まれるか又はHPECU104によってアクセスされる前述のプログラム208,210,212,214、データ216,218,220、及びMLM222の一部又は全てを含むか又はそれにアクセスすることもできる。例えば、HPECU104が故障した場合、ゾーンECU110は、車両102が安全に動作し続けることができるようにするために必要な物体認識及び車両制御プログラムを実行することができる。この動作モードの更なる詳細は、例えば図4に関して以下に説明される。
【0025】
前述したように、各ゾーン108内のそれぞれのセンサ112は、そのゾーン108におけるそれぞれのゾーンECU110にセンサデータ220を提供することができる。更に、ゾーンセンサ112の各セットからのセンサデータ220はまた、HPECU104によって受信されてもよく、コンピュータ可読媒体204によって提供されるバッファなどに、センサデータ220として少なくとも一時的に格納されてもよい。場合によっては、センサ112から直接受信したセンサデータ220は、データがまだデータ処理、フィルタリング、正規化などを受けていないため、生センサデータと呼ばれることがある。したがって、図2の例に示すように、HPECU104は、第1のゾーンセンサ112(1)から第1のセンサデータ220(1)を受信することができ、第2のゾーンセンサ112(2)から第2のセンサデータ220(2)を受信することができ、第3のゾーンセンサ112(3)から第3のセンサデータ220(3)を受信することができ、第4のゾーンセンサ112(4)から第4のセンサデータ220(4)を受信することができる。しかしながら、HPECU104は、全てのゾーン108からセンサデータ220を受信することができるが、HPECU104は、このセンサデータの大部分を無視することができ、一般に、車両102の指示された動作モードに基づくなど、受信されたセンサデータ220のサブセットのみに対して認識処理を実行することができる。
【0026】
ゾーンECU110はまた、それぞれのゾーン108に関して、受信したセンサデータ220に対して認識処理を実行することができる。例えば、第1のゾーンECU110(1)は、第1のゾーンセンサ112(1)から生センサデータ220(1)を受信することができ、受信したセンサデータ220(1)に対してデータ低減プロセスを実行することができ、低減されたセンサデータ220(1)に対して認識処理を実行するために認識プログラム210のインスタンスを実行することができる。第1のゾーンECU110(1)は、認識処理の結果を第1の認識情報216(1)としてHPECU104に送ってもよい。同様に、第2のゾーンECU110(2)は、第2のゾーンセンサ112(2)から受信した第2のセンサデータ220(2)の認識処理の結果に基づいて、第2の認識情報216(2)をHPECU104に送信することができる。同様に、第3のゾーンECU110(3)は、第3の認識情報216(3)をHPECU104に送信してもよく、第4のゾーンECU110(4)は、第4の認識情報216(4)をHPECU104に送信してもよい。HPECU104は、受信した認識情報216(1)、216(2)、216(3)及び/又は216(4)、並びに認識プログラム210の自身の実行によって決定された認識情報を、アクチュエータ114に送信する1つ以上の制御信号223を決定するための車両制御プログラム212への入力として使用することができる。図2の例では、アクチュエータ114は、サスペンションコントローラ224、ステアリングコントローラ226、車速コントローラ228、制動コントローラ230、及び1つ以上の警告装置232を含む。制御信号123を受信することができる車両内の多数の他の装置、システム、又は他のアクチュエータは、本明細書の開示の利益を有する当業者には明らかとなり得る。
【0027】
一例として、車両制御プログラム212は、ルールベース及び/又は機械学習ベースの制御アルゴリズムを使用して、車両102を制御するためのパラメータを決定することができる。例えば、車両制御プログラム212は、HPECU104によって決定された認識情報216、及びゾーンECU110から受信した認識情報216に基づいて、制動、操向、減速、加速などの適切な動作を決定するために、機械学習モデル222のうちの1つ以上を適用することができる。更に、車両制御プログラム212は、認識情報212に応答して、1つ以上の制御信号223を1つ以上の車両システムに送信することができる。例えば、車両制御プログラム212は、サスペンションコントローラ224、ステアリングコントローラ226、車速コントローラ228、及び/又は制動コントローラ230に制御信号223を送信することができる。例えば、制御信号223は、サスペンションコントローラ224に送信される特定のばね係数及び/又は減衰制御情報、1つ以上の車輪を操向するためにステアリングコントローラ226に送信される特定の操向角、車速コントローラ228に送られる特定の加減速制御情報、及び/又は車両ブレーキを制御するための指定されたブレーキ制御情報を含むことができる。更に、幾つかの例では、車両乗員に警告を鳴らすか表示するためなど、制御信号223を1つ以上の警告装置232に送信することもできる。
【0028】
加えて、前述したように、HPECU104は、車両102内の他のセンサ102から他のセンサデータ234を受信することができる。例えば、車両は、車両制御プログラム212によって使用されるセンサ情報を提供することができるゾーンセンサ112に加えて、複数の他のセンサ116を含むことができる。他のセンサデータ234はまた、サスペンションコントローラ224、ステアリングコントローラ226、車速コントローラ228などから受信された位置情報などの、様々な車両システムから受信された、又はそれらに関連付けられた情報を含むことができる。
【0029】
一例として、レベル3~5の自律性の場合など、HPECU104及びそれぞれのゾーンECU110は、車両が動いている間、生センサデータ220を継続的に受信することができる。更に、HPECU104及び各ゾーンECU110によって実行される認識プログラム210は、受信したセンサデータ220を処理して、道路の特徴、障害物などを認識することができる。HPECU104は、検出された障害物、道路特徴などに関する認識情報216を車両制御プログラム212に提供することができ、車両制御プログラム212は、レベル3~5の自律性の場合、認識情報に応答して1つ以上の措置をとることができる。幾つかの例において、車両制御プログラム212及び/又は認識プログラム210は、車両を制御するために車両制御プログラム212に追加の利用可能な情報を提供するために、画像データから決定された認識情報を他のタイプのセンサデータ(例えば、レーダ、ライダー、超音波など)と融合又は結合及び統合することができる。センサ融合は、全てのセンサ検出結果(例えば、ライダー、レーダ、他のカメラ)を考慮に入れることができ、様々なセンサの結果を他のセンサの結果と比較することができ、車両制御を実行するために組み合わせた結果を使用することができる。センサが1つ以上の潜在的な障害物の存在又は位置について合意しない場合、センサ融合機能は、各センサの信頼値を決定することができ、いくつのセンサが合意するかを決定することができ、現在の環境条件がセンサ性能に悪影響を及ぼし得るかどうかなどを決定することができ、特定の物体が実際に存在する可能性に関する結論を決定することができる。
【0030】
それに加えて又は代えて、車両が人間の運転者の制御下にある場合などにおいて、車両制御プログラム212は、制御信号223を、可聴又は視覚警報装置などの1つ以上の警告装置232に送信することができる。警告装置232の例としては、可聴警報を生成することができるスピーカ、振動又は他の種類の触覚警報(例えば、シート又はステアリングホイール内)を生成することができる触覚装置、及び/又は視覚警報を生成することができる視覚信号装置が挙げられる。
【0031】
図3図5は、幾つかの実装形態に係るアルゴリズム又は他のプロセスの例を示すフロー図を含む。プロセスは、一連の動作を表す論理フロー図のブロックの集合として示されており、その一部又は全部は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせで実施することができる。ソフトウェアとの関連で、ブロックは、1つ以上のプロセッサによって実行されるときに列挙された動作を実行するようにプロセッサをプログラムする、1つ以上のコンピュータ可読媒体に記憶されたコンピュータ実行可能命令に相当し得る。一般に、コンピュータ実行可能命令は、特定の機能を実行するか、又は特定のデータタイプを実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含む。ブロックが説明される順序は、限定として解釈されるべきではない。任意の数の記載されたブロックを任意の順序で及び/又は並列に組み合わせてプロセス又は代替プロセスを実施することができ、全てのブロックを実行する必要はない。説明のために、プロセスは、本明細書の例に記載されている環境、フレームワーク、及びシステムを参照して説明されているが、プロセスは、多種多様な他の環境、フレームワーク、及びシステムで実施されてもよい。
【0032】
図3は、幾つかの実施形態に係る、HPECU及びゾーンECUによって実行されるプロセスの例300を示す。前述したように、ゾーンECU110は、それぞれのゾーンセンサ112から受信したセンサデータ220に対して物体検出及び基本的なセンサフュージョンなどの認識処理を実行するように構成することができる。ゾーンECUは、前述した機械学習モデル222のうちの1つ以上を使用して深層機械学習を実行し、そのゾーンが対応する車両の側方に見えるか、そうでなければ検出可能な各認識された物体の位置、相対速度、及び識別を検出する。各ゾーンECU110は、前述したように、比較的下位から中位範囲のプロセッサを含むことができる。ゾーンECU110は低性能プロセッサを含むので、ゾーンECU110は、車両の安全性を確保するために必要な時間内にそのそれぞれのセンサからの生データを処理することができない場合がある。したがって、ゾーンECU110は、受信した生画像をクロップし、生画像の解像度を低減することができ、同様に、それぞれのセンサ112からの全てのデータのサンプリング周波数を低減することなどによって、他のセンサデータのサイズを縮小することができる。次いで、ゾーンECUは、それぞれのゾーンに対応する車両の周囲のマップ(例えば、視差マップ)を生成することを含むことができる、認識情報216を生成するために低減されたデータを処理することができる。各ゾーンECU110は、更なる分析のために、及び車両制御プログラム212への入力として、認識情報をHPECU104に送信することができる。
【0033】
更に、HPECU104は、指示された車両の動作モードに応じて、ゾーンのうちの1つ以上から選択されたセンサデータ220に対して認識処理を実行することもできる。例えば、車両が閾値速度を超えて前進方向に走行している場合、車両は前進運転モードで動作しており、HPECU104は、車両の前方に対応する第1のゾーンセンサ112(1)によって収集されたセンサデータ220(1)に対して認識処理を実行することができる。HPECU104によって実行され得る例示的なプロセス302が図3に示されている。
【0034】
304において、HPECU104は、ゾーンセンサからセンサデータを受信し、車両の指示された動作モードに基づいて対象の1つ以上のゾーンを決定する。図示の例では、指示された動作モードが前進運転モードであるとする。したがって、HPECU104は、第1のゾーンセンサ112(1)から受信したセンサデータ220(1)に対して処理を実行することができ、第2、第3、及び第4のゾーンセンサ112(2)-112(4)から受信したセンサデータを無視するか、そうでなければ処理しないことができる。
【0035】
306において、HPECU104は、対象領域からのセンサデータに対して認識を実行することができる。この例では、HPECU104は、第1のゾーンセンサ112-1から受信した生センサデータ220-1に対して高分解能認識を実行することができる。前述したように、HPECU104は、認識プログラム210を実行することができ、認識プログラムは、認識を実行するときに1つ以上の機械学習モデル222を採用することもできる。例えば、認識プログラム210の出力は、ディスパリティマップ又は他の認識情報216であってもよい。
【0036】
308において、HPECU104は、それぞれのゾーンECU110(1)-110(4)から認識情報216(1)-216(4)を受信することができる。この例では、第1のゾーンECU110(1)は、第1のゾーンセンサ情報220(1)に対して認識処理を実行してもよい。例えば、HPECU104は、出力認識情報216(1)を、2つの認識結果間の任意の不一致を検出するなどのために、第1のゾーンセンサデータ220(1)の処理から決定された自身の認識情報と比較することができる。他の例では、消費電力の更なる低減を提供するために、第1のゾーンECU110(1)は、センサデータ220(1)に関してHPIECU104によって認識処理が実行されているときに認識処理を実行しないように構成されてもよい。
【0037】
310において、HPECU104は、HPECU104によって決定された認識情報、及びゾーンECU110から受信した認識情報にも基づいて、経路計画、リスクマップ生成、及び/又は車両制御処理を実行することができる。
【0038】
312において、HPECU104は、経路計画、リスクマップ生成、及び/又は車両制御処理の結果に基づいて、アクチュエータ114のうちの1つ以上に1つ以上の制御信号を送信することができる。
【0039】
また、各ゾーンECU110は、後述するように処理320を実行してもよい。
【0040】
322において、ゾーンECU110は、そのゾーンのそれぞれのゾーンセンサからセンサデータ220を受信することができる。
【0041】
324において、ゾーンECU110は、それぞれのゾーンセンサから受信したセンサデータのサイズを縮小することができる。前述したように、ゾーンECU110は、センサデータのサンプリングレートを低減することができ、受信した画像の解像度を低減することができ、受信した画像をトリミングすることができ、又は受信したデータに対して認識処理を実行する前に、受信したデータのサイズを縮小するための他の動作を行うことができる。
【0042】
326において、ゾーンECU110は、各ゾーンの低減されたセンサデータに対して認識処理を実行することができる。
【0043】
328において、ゾーンECU110は、認識情報216をHPECU104に送信することができる。
【0044】
図4は、幾つかの実施形態に係る、HPECUの故障の場合にゾーンECUのうちの1つ以上によって実行されるプロセス400の一例を示す。例えば、HPECU104が故障した場合、402に示すように、ゾーンECU110(1)-110(4)は、HPECUが動作しているときよりも精度は低いが、HPEECU104なしで車両を動作させることもできる。例えば、幾つかの例では、ゾーンECU110は、車線維持、適応走行制御、自動緊急ブレーキなどの典型的なADAS機能を実行することができる。更に、ゾーンECUの仕様に応じて、場合によっては、ゾーンECU110は、少なくとも幾つかの運転条件で、又はより低い速度などで完全自動運転を実行することもできる。したがって、本明細書のシステムは、いずれか1つの構成要素が故障した場合でも車両を動作させることができる。
【0045】
404において、ゾーンECU110は、そのそれぞれのゾーンセンサ112からセンサデータを受信する。
【0046】
406において、ゾーンECU110は、それぞれのゾーンセンサから受信したセンサデータのサイズを縮小する。前述したように、サイズ縮小は、受信したセンサデータのサンプリング周波数を低減すること、受信したセンサデータの解像度を低減すること、受信したセンサデータの画像を切り取ることなどを含むことができる。
【0047】
408において、ゾーンECU110は、認識情報を決定するために、低減されたセンサデータに対して認識を実行する。一例として、認識情報は、各センサの範囲内で検出された物体に関連する1つ以上の視差マップ又は他の様々な種類の情報のいずれかを含むことができる。
【0048】
410において、ゾーンECUは、経路計画及び/又は車両制御処理を実行することができる。例えば、ゾーンECUのうちの1つ以上は、経路計画プログラム214のインスタンス及び/又は車両制御プログラム212のインスタンスを実行することができる。場合によっては、これらのプログラム214及び212は、HPECU104よりも低電力プロセッサ上で実行するように最適化されてもよい。場合によっては、ゾーンECU110は、経路計画及び/又は車両制御処理を実行するために、様々な選択技術のいずれかを使用してゾーンECUのうちの1つを選択することができる。一例として、車両が現在前進運転モードで動作している場合、第2のゾーンセンサ112(2)(すなわち、後方ゾーン)に関連するゾーンECU110(2)を選択して、第2のゾーンセンサから受信したセンサデータをより多く低減しながら、経路計画処理及び/又は車両制御処理を実行することができる。別の例として、一方のゾーンECU110を選択して経路計画処理を実行し、他方のゾーンECU110を選択して車両制御処理を実行してもよい。本明細書の開示の利益を有する当業者には、多数の他の変形形態が明らかとなり得る。
【0049】
412において、経路計画及び/又は車両制御処理を実行するゾーンECU110は、結果に基づいて、アクチュエータ114のうちの1つ以上に1つ以上の制御信号414を送信することができる。
【0050】
図5は、幾つかの実装形態に係る、車両動作モードを決定するためのプロセス500の一例を示すフロー図である。幾つかの例では、プロセス500は、HPECU104の少なくとも一方及び/又はゾーンECU110のうちの1つ以上で処理管理プログラム208を実行することなどによって、前述のシステムによって実行されてもよい。
【0051】
502において、システムは、車両動作に関する情報を受信することができる。例えば、システムは、衛星測位情報、車両が横断している計画経路に関する情報、車両の現在の速度情報、現在の気象状況情報、現在の昼間及び時間情報などを受信することができる。
【0052】
504において、システムは、車両が後退走行しているかどうかを決定することができる。そうである場合、プロセスは506に進む。そうでない場合、プロセスは508に進む。
【0053】
506において、指示された車両動作モードが、車両が後退走行していることである場合、システムは、車両の後部ゾーンに対応するセンサ112、すなわち、図1図4に関して前述した例示的なゾーン構成における第2のゾーンセンサ112(2)から受信したセンサ情報をHPECU104が処理する後進運転モードで動作することができる。
【0054】
508において、システムは、旋回が近づいているかどうかを決定することができる。そうである場合、プロセスは510に進む。そうでない場合、プロセスは516に進む。
【0055】
510において、車両が旋回に近づいているとシステムが決定すると、システムは、車両が右折するか左折するかを決定することができる。車両が右折している場合、プロセスは512に進む。車両が左折している場合、プロセスは514に進む。
【0056】
512で、システムは右折運転モードで動作する。例えば、車両動作の右折運転モード中に、HPECU104は、例えば、図1図4に関して前述した例示的なゾーン構成における第1のゾーンセンサ112(1)及び第4のゾーンセンサ112(4)に対応する、車両の前方ゾーン及び左ゾーンのためのセンサから受信したセンサデータ112を処理することができる。
【0057】
514で、システムは左折運転モードで動作する。例えば、車両動作の左折運転モード中に、HPECU104は、例えば、図1図4に関して前述した例示的なゾーン構成における第1のゾーンセンサ112(1)及び第3のゾーンセンサ112(3)に対応する、車両の前方ゾーン及び右ゾーンのためのセンサから受信したセンサデータ112を処理することができる。
【0058】
516において、車両が後退走行しておらず、旋回に近づいていないとき、システムは、車両の現在速度が閾値速度を超えているかどうかを決定することができる。例えば、車速が時速10マイル、時速20マイル、時速30マイルなどの閾値速度を超えると、安全性を確保するために、前方センサが車両の前方の視野のより高い解像度の検知を実行することがより重要になる。したがって、車速が閾値を超える場合、プロセスは518に進む。そうでない場合、プロセスは520に進む。
【0059】
518において、閾値を超える車速に基づいて、システムは、車両の前方ゾーンに対応するセンサ112、すなわち、図1図4に関して前述した例示的なゾーン構成における第1のゾーンセンサ112(1)から受信したセンサ情報をHPECU104が処理する前進運転モードで動作することができる。
【0060】
520において、システムは、車両が夜間に動作しているかどうかを決定することができる。そうである場合、プロセスは522に進む。そうでない場合、プロセスは524に進む。
【0061】
522において、車両が前進方向で夜間に動作されていることに基づいて、システムは、車両のフロントゾーンに対応するセンサ112、すなわち、図1図4に関して前述した例示的なゾーン構成における第1のゾーンセンサ112(1)から受信したセンサ情報をHPECU104が処理する前進運転モードで動作することができる。
【0062】
524において、システムは、車両が悪天候で運転されているかどうかを決定することができる。そうである場合、プロセスは526に進む。そうでない場合、プロセスは528に進む。
【0063】
526において、車両が前進方向に動作していることに基づいて、悪天候の間、システムは、車両の前方ゾーンに対応するセンサ112、すなわち、図1図4に関して前述した例示的なゾーン構成における第1のゾーンセンサ112(1)から受信したセンサ情報をHPECU104が処理する前進運転モードで動作することができる。
【0064】
528において、システムは、HPECU104がいずれのゾーンから受信したセンサデータ112に対しても認識処理を実行しない低電力モードで動作することができる。例えば、夜間や悪天候時ではなく、車両が旋回なしに前進方向に、閾値速度未満の速度で動作していることに基づいて、センサデータの高分解能処理を実行する必要はない。したがって、ゾーンECUによって認識を実行して、HPECU104の消費電力を低減することができる。一例として、ゾーンECU110は、経路計画プログラム及び/又は車両制御プログラムへの入力として、決定された認識情報をHPECU104に送信することができる。別の例として、低電力モードでは、ゾーンECU110のうちの一以上が経路計画プログラム及び/又は車両制御プログラムを実行して、HPECU104によって消費される電力を更に低減してもよい。
【0065】
図6は、幾つかの実装形態に係る、HPECU104及びゾーンECU110の特徴及び能力の比較を示すデータ構造600を例示する。前述したように、HPECU104は、1つ以上の高性能プロセッサを含み、一方、ゾーンECU110は、HPECUプロセッサよりも消費電力が少ない低性能プロセッサを含む。HPECU104は、生センサデータ120(1)-120(4)を、それぞれ、ゾーンセンサ112(1)-112(4)から直接受信することができる。ゾーンECU110は、一般に、それらの割り当てられたゾーンセンサ112からのみセンサデータを受信する。HPECU104は、指示された車両の車両動作モードに応じて、受信したセンサデータ120(1)-120(4)の一部又はいずれにも認識処理を実行することができ、ゾーンECU110によって決定された認識情報を受信することができる。
【0066】
データ構造600は、602に列挙されたHPECU104の能力、及び604に列挙されたゾーンECU110の能力を含む。例えば、606に示すように、HPECU104は、生のセンサデータに基づいて物体認識を実行することができ、ゾーンECU110は、それぞれのゾーンセンサのサイズが縮小されたセンサデータに基づいて物体認識を実行することができる。更に、608に示すように、HPECU104及びゾーンECU110の両方は、それらが決定した物体認識情報に基づいて物体追跡を実行することができる。更に、610に示すように、HPECU104は、生センサデータに基づいてセンサ融合を実行することができるが、ゾーンECU110は、サイズが縮小されたセンサデータ又はオブジェクトとして認識されたデータに基づいてのみセンサ融合を実行することができる。
【0067】
更に、612,614及び616に示すように、HPECU104は、認識情報を使用して、リスクマップ生成、経路計画、及び車両制御などの追加の処理を実行することができる。例えば、HPECU104は、各位置における運転に関連するリスクのレベルを示す車両の周囲の領域のマップを作成することを含むことができる、リスクマップを生成することができる。例えば、リスクマップは、少なくとも認識された物体の識別情報、位置、及び相対速度、並びに車両の周囲の地形、並びに車両の速度、気象条件、時刻などの他の情報に基づいて決定することができる。リスクマップは、HPECU104が選択する経路が車両乗員又は車両周囲を危険にさらさないことを確実にするのに役立ち得る。しかしながら、リスクマップを決定することは計算コストがかかる場合があり、本明細書の幾つかの例では、ゾーンECU110は、認識処理及び他の処理タスクと並行してこの動作を実行することができない場合がある。
【0068】
更に、614に示すように、HPECU104は、HPECU104及びゾーンECU110によって決定された認識情報に基づいて経路計画を実行することができる。幾つかの例では、ゾーンECU110は、HPECU104が故障した場合などのバックアップとして経路計画を実行することができる。同様に、HPECU104は、認識情報及び他車両情報に基づいて車両制御処理を行ってもよい。ゾーンECU110は、ゾーンECUプロセッサの特定の能力に応じて、及びHPECU104が故障した場合などに、バックアップ又は低機能車両制御として車両制御処理を実行することができる。
【0069】
図7は、幾つかの実装形態に係る、前進運転モードにおけるセンサ対象領域の例700を示す。例えば、車両が前進方向に走行していることが示され、図5のブロック518,522又は526のうちの1つの条件が満たされると、HPECU104は、HPECU104が第1のゾーンセンサ112(1)に対応する前向きセンサから受信したセンサデータを処理する前進運転モードで動作することができる。
【0070】
702に示すように、前進運転モードでは、前向きセンサの視野704は、HPECU104による処理のための対象のセンサデータに対応する。この例では、前向きセンサの視野704は、前述の第1のゾーンセンサ112(1)に対応し、後向きセンサの視野706は、前述の第2のゾーンセンサ112(2)に対応し、右側センサの視野708は、前述の第3のゾーンセンサ112(3)に対応し、左側センサの視野710は、前述の第4のゾーンセンサ112(4)に対応する。
【0071】
712に示すように、前進運転モードでは、HPECU104は、第1のゾーンセンサデータ220(1)に対して認識処理を実行し、第2~第4のゾーンセンサ112(2)-220(4)から受信したセンサデータ220(2)-112(4)に対して認識処理を実行しない。例えば、HPECU104が前方視野704からのセンサデータに対して認識処理を実行することによって、より正確な高解像度の物体検出、したがってより安全な車両動作が提供される。幾つかの例では、第1のゾーンECU110(1)はまた、第1のゾーンセンサデータ220(1)に対して認識処理を実行する。その状況では、第1のゾーンECU110(1)は、冗長性、セキュリティの向上、エラーチェックなどを提供するために、認識情報216(1)をHPECU104に提供することができる。他のゾーンECU110(2)-110(4)はまた、経路計画、リスクマップ生成、及び/又は車両制御処理などのために、それぞれの認識データ216(2)-216(4)をHPECU104に提供する。
【0072】
図8は、幾つかの実装形態に係る、後進運転モードにおけるセンサ対象領域の例800を示す。例えば、802に示すように、車両が後退走行しているとき、視野706に対応するセンサデータは、HPECU104による処理のための対象のセンサデータである。したがって、車両が後進方向に走行していることが示され、図5のブロック506の条件が満たされるとき、HPECU104は、第2のゾーンセンサ112(2)に対応する後向きセンサから受信したセンサデータをHPECU104が処理する後進運転モードで動作することができる。
【0073】
804に示すように、後進運転モードでは、HPECU104は、第2のゾーンセンサデータ220(2)に対して認識処理を行い、ゾーンセンサ112(1)、112(3)、112(4)から受信したセンサデータ220(1)、220(3)、220(4)に対しては認識処理を行わない。したがって、後進運転モードが選択されると、システムは、進行方向のより高い精度の認識を行うためにHPECU104による処理のために後向きセンサに焦点を合わせる。幾つかの例では、第2のゾーンECU110(2)はまた、第2のゾーンセンサデータ220(2)に対して認識処理を実行する。その状況では、第2のゾーンECU110(2)は、冗長性、セキュリティの向上、エラーチェックなどを提供するために、認識情報216(2)をHPECU104に提供することができる。他のゾーンECU110(1)、110(3)、及び110(4)はまた、経路計画、リスクマップ生成、及び/又は車両制御処理などのために、それぞれの認識データ216(1)、216(3)、及び216(4)をHPECU104に提供する。
【0074】
図9は、幾つかの実装形態に係る、左折運転モードにおけるセンサ対象領域の例900を示す。例えば、902に示すように、車両が左折しているとき、(対向交通を検出するための)視野704及び708に対応するセンサデータは、HPECU104による処理のための対象のセンサデータとなり得る。したがって、車両が左折していることが示され、図5のブロック514の条件が満たされると、HPECU104は、第1のゾーンセンサ112(1)に対応する前向きセンサ及び第3のゾーンセンサ112(3)に対応する右側センサから受信したセンサデータをHPECU104が処理する左折運転モードで動作することができる。
【0075】
904に示すように、左折運転モードでは、HPECU104は、第1のゾーンセンサデータ220(1)及び第3のゾーンセンサデータ220(3)に対して認識処理を実行し、ゾーンセンサ112(2)及び112(4)からそれぞれ受信したセンサデータ220(2)又は220(4)に対して認識処理を実行しない。したがって、左折運転モードが選択されると、システムは、これらの方向のより高い精度の認識を行うためにHPECU104による処理のために前向き及び右向きセンサに焦点を合わせる。幾つかの例では、第1のゾーンECU110(1)及び第3のゾーンECU110(3)も、それぞれセンサデータ220(1)及び220(3)に対して認識処理を実行する。その状況では、ゾーンECU110(1)及び110(3)は、冗長性、セキュリティの向上、エラーチェックなどを提供するために、認識情報216(1)及び216(3)をそれぞれHPECU104に提供することができる。他のゾーンECU110(2)及び110(4)はまた、経路計画、リスクマップ生成、及び/又は車両制御処理などのために、それぞれの認識データ216(2)及び216(4)をHPECU104に提供する。
【0076】
図10は、幾つかの実装形態に係る、右折運転モードにおけるセンサ対象領域の例1000を示す。例えば、1002に示すように、車両が右折しているとき、(対向交通を検出するための)視野704及び710に対応するセンサデータは、HPECU104による処理のための対象のセンサデータとなり得る。したがって、車両が右折していることが示され、図5のブロック512の条件が満たされると、HPECU104は、第1のゾーンセンサ112(1)に対応する前向きセンサ及び第4のゾーンセンサ112(4)に対応する左側センサから受信したセンサデータをHPECU104が処理する右折運転モードで動作することができる。
【0077】
1004に示すように、右折運転モードでは、HPECU104は、第1のゾーンセンサデータ220(1)及び第4のゾーンセンサデータ220(4)に対して認識処理を実行し、ゾーンセンサ112(2)及び112(3)からそれぞれ受信したセンサデータ220(2)又は220(3)に対して認識処理を実行しない。したがって、右折運転モードが選択された場合、システムは、これらの方向のより高い精度の認識を行うためにHPECU104による処理のために前向き及び左向きセンサに焦点を合わせる。幾つかの例では、第1のゾーンECU110(1)及び第4のゾーンECU110(4)も、それぞれセンサデータ220(1)及び220(4)に対して認識処理を実行する。その状況では、ゾーンECU110(1)及び110(4)は、冗長性、セキュリティの向上、エラーチェックなどを提供するために、認識情報216(1)及び216(4)をそれぞれHPECU104に提供することができる。他のゾーンECU110(2)及び110(3)はまた、経路計画、リスクマップ生成、及び/又は車両制御処理などのために、それぞれの認識データ216(2)及び216(3)をHPECU104に提供する。
【0078】
図11は、幾つかの実装形態に係る、低電力運転モードのためのデータ処理の例1100を示す。例えば、図5のブロック528の条件が満たされるとき、システムは、センサゾーンのいずれかに焦点を合わせる必要はない。1102に示されるように、低電力運転モードは、車両102が閾値速度を下回って前進している状況、昼間、及び晴天で実施され得る。このような状況では、1104に示すように、ゾーンECU110(1)-110(4)は、全ての認識処理を実行することができ、認識データ216(1)-216(4)をそれぞれHPECU104に提供することができ、HPECU104は依然としてリスクマップ生成、経路計画、及び車両制御処理を実行することができる。システムを低電力モードで動作させることにより、HPECU104の処理負荷が低減され、HPECU104の消費電力が低減される。
【0079】
本明細書に記載の例示的なプロセスは、説明の目的で提供されるプロセスの例にすぎない。本明細書の開示に照らして、多数の他の変形形態が当業者には明らかとなり得る。更に、本明細書の開示は、プロセスを実行するための適切なフレームワーク、アーキテクチャ、及び環境の幾つかの例を記載しているが、本明細書の実装形態は、図示及び説明された特定の例に限定されない。更に、本開示は、説明され、図面に示されるように、様々な例示的な実装形態を提供する。しかしながら、本開示は、本明細書に記載及び図示された実装形態に限定されず、当業者に知られているように、又は当業者に知られるようになるように、他の実装形態に拡張することができる。
【0080】
本明細書で説明される様々な命令、プロセス、及び技術は、コンピュータ可読媒体に格納され、本明細書のプロセッサによって実行されるコンピュータプログラム及びアプリケーションなどのコンピュータ実行可能命令の一般的な文脈で考慮され得る。一般に、プログラム及びアプリケーションという用語は、交換可能に使用されてもよく、特定のタスクを実行するため、又は特定のデータタイプを実装するための命令、ルーチン、モジュール、オブジェクト、コンポーネント、データ構造、実行可能コードなどを含んでもよい。これらのプログラム、アプリケーションなどは、ネイティブコードとして実行されてもよく、仮想マシン又は他のジャストインタイムコンパイル実行環境などでダウンロード及び実行されてもよい。一般に、プログラム及びアプリケーションの機能は、様々な実装形態において所望に応じて組み合わされ又は分散されてもよい。これらのプログラム、アプリケーション、及び技術の実装は、コンピュータ記憶媒体に記憶されてもよく、又は何らかの形態の通信媒体を介して送信されてもよい。
【0081】
主題は、構造的特徴及び/又は方法論的行為に特有の言語で記載されているが、添付の特許請求の範囲で定義される主題は、記載された特定の特徴又は行為に必ずしも限定されないことを理解すべきである。むしろ、特定の特徴及び動作は、特許請求の範囲を実施する例示的な形態として開示されている。
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