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特許7620786分解菌叢複合系を使用する多環芳香族化水素の分解方法
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  • 特許-分解菌叢複合系を使用する多環芳香族化水素の分解方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】分解菌叢複合系を使用する多環芳香族化水素の分解方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/34 20230101AFI20250117BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20250117BHJP
   C02F 1/72 20230101ALI20250117BHJP
【FI】
C02F3/34 Z
C12N1/20 D
C02F1/72 Z
C12N1/20 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024143209
(22)【出願日】2024-08-23
【審査請求日】2024-08-24
(31)【優先権主張番号】202410011566.8
(32)【優先日】2024-01-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507255592
【氏名又は名称】南京▲農業▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】100216471
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬戸 麻希
(72)【発明者】
【氏名】高彦征
(72)【発明者】
【氏名】湯磊
(72)【発明者】
【氏名】凌婉▲てぃん▼
(72)【発明者】
【氏名】王建
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-247279(JP,A)
【文献】特開2005-288268(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103045507(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114713615(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115090668(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115068875(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106186554(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00- 3/34
9/00- 9/20
C12N 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
S1、まず有機汚染水に1~11wt%の添加量に従って分解菌叢を添加し、150rp
mの加振機で1~48h分解反応させ、前記有機汚染水は多環芳香族炭化水素によって汚
染された水域であり、前記分解菌叢は、プロテオバクテリアのアシネトバクター属(Ac
inetobacter)、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas
)、コマモナス属(Comamonas)の3種類細菌を1:1:1の重量比で混合するス
テップと、
S2、次に前複合体を添加し、1リットルの有機汚染水中の前複合体の添加量は1.39
~27.80gであり、前記分解菌叢と前記前複合体は分解菌叢複合系を形成し、加振機
で合計時間が72hになるまで連続的に反応させ、分解を完成するステップと、を含み、
ここで、前記前複合体は過酸化カルシウムおよび硫酸第一鉄七水和物からなり、過酸化カ
ルシウムと硫酸第一鉄七水和物の質量比は1~13.90:0.39~13.90であ

S1において、前記有機汚染水のpH値は5~7であり、前記多環芳香族炭化水素はフェ
ナントレン、ピレンである、
ことを特徴とする分解菌叢複合系を使用する多環芳香族炭化水素の分解方法。
【請求項2】
S1において、150rpmの加振機で24h分解反応させる、ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
S2において、1リットルの有機汚染水で、過酸化カルシウムの添加量は2.41gであ
り、硫酸第一鉄七水和物の添加量は7.51gである、ことを特徴とする請求項1に記載
の方法。
【請求項4】
前記前複合体の調製方法は以下の通りであり:
S2-1、25℃で、3:0.5の質量比で1~10μmの活性炭、酸化マグネシウムを
混合して担体を得て、
S2-2、15g:1~2mlの割合で、前記担体の表面にヘキサデシルアミンオクタン
酸炭酸塩を噴霧し、
S2-3、-15~-10℃の温度下で、前記担体と過酸化カルシウムを1~0.8:1
の重量比でヘキサデシルアミンオクタン酸炭酸塩を噴霧した担体と過酸化カルシウムを混
合し、25℃まで加熱し、25℃で1~2h乾燥させ、前複合体を得て、
S2-4、過酸化カルシウムと硫酸第一鉄七水和物を1~13.90:0.39~13.
90の質量比で、前記前複合体と硫酸第一鉄七水和物を混合して前複合体を形成する、こ
とを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記S2において、前複合体の添加方法は以下のとおりであり:過酸化カルシウム、硫酸
第一鉄七水和物をそれぞれ3等分し、まず25℃で、3分の1の過酸化カルシウムを添加
し、150rpmの加振機で5~15min反応させ、次に3分の1の硫酸第一鉄七水和
物を添加し、120rpmの加振機で3~4h反応させ、その後温度を25℃から5~1
0℃に下げ、同時に3分の1の過酸化カルシウムと3分の1の硫酸第一鉄七水和物を添加
し、180rpmの加振機で2~3h反応させ、その後残りの過酸化カルシウムを添加し
、150rpmの加振機で20~25min反応させ、残りの硫酸第一鉄七水和物を添加
し、130rpmの加振機で完了まで反応させる、ことを特徴とする請求項1に記載の方
法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染水域浄化の技術分野に関し、具体的に、分解菌叢複合系を使用する多環芳
香族化水素の分解改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多環芳香族化水素は、水相中に一般的に見出される有毒な有機汚染物質の一種であり、通
常、非極性、疎水性、親油性であり、少なくとも2つのベンゼン環を含み、環境中に残留
し得る。これらの多環芳香族化水素の特性により、汚染媒体中の多環芳香族化水素を浄化
することは困難である。ほとんどの場合、生分解戦略は分解スペクトルが狭く、高度な酸
化技術ほど効率的ではない。また、様々な環境要因も生物浄化効率を低下させる。従来の
化学的浄化技術はコストが高く、二次汚染を引き起こしやすい。
既存の多環芳香族化水素汚染水域の浄化技術では、微生物の分解効率は低く、分解スペク
トルは狭く、酸化技術は効率的で徹底的であるが、コストが高く、毒性の強いハロゲン系
やニトロ系の副生成物を生成する可能性がある。微生物による浄化技術と酸化による浄化
技術の欠点を改善するために、研究者らは生物浄化と酸化浄化を併用することに注目し始
めている。分解細菌叢と過酸化カルシウム複合体を用いて水中の水中の多環芳香族化水素
を浄化する技術では、過酸化カルシウム、硫酸第一鉄の分解系で発生するフリーラジカル
が分解菌の増殖を阻害するという解決すべき問題が存在する。
【発明の概要】
【0003】
上記問題を解決するために、本発明は、分解菌叢複合系を使用する多環芳香族化水素の分
解方法を提供し、以下のステップを含み:
S1、まず有機汚染水に1~11wt%の添加量に従って分解菌叢を添加し、150rp
mの加振機で1~48h分解反応させ、前記有機汚染水は多環芳香族化水素によって汚染
された水域であり、前記分解菌叢は、プロテオバクテリアのアシネトバクター属(Aci
netobacter)、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)
、コマモナス属(Comamonas)の3種類細菌を1:1:1の重量比で混合し、
S2、次に前複合体を添加し、1リットルの有機汚染水中の前複合体の添加量は1.39
~27.80gであり、前記分解菌叢と前記前複合体は分解菌叢複合系を形成し、加振機
で合計時間が72hになるまで連続的に反応させ、分解を完成し、
ここで、前記前複合体は過酸化カルシウムおよび硫酸第一鉄七水和物からなり、過酸化カ
ルシウムと硫酸第一鉄七水和物の質量比は1~13.90:0.39~13.90である

説明:上記方法は、過酸化カルシウム+硫酸第一鉄の分解系における分解菌叢に対する毒
性の問題を解決することができ、従来の微生物分解技術による水中有機汚染物、特に多環
芳香族化水素の除去効率が低く、分解スペクトルが狭いという問題を解決するのに良好な
解决効果を有し、過酸化カルシウムの酸素放出性と酸化性を利用し、分解技術による水中
の多環芳香族化水素の分解能力を著しく向上させ、過酸化カルシウム+硫酸第一鉄の分解
系は良好な分解効果を有するが、過酸化カルシウム+硫酸第一鉄の分解系で発生するフリ
ーラジカルは汚染物を除去するだけでなく、分解菌の増殖も阻害し、上記添加方法と反応
時間の制御により、上記影響を効果的に低減することができ、ここで、過酸化カルシウム
体系は補強だけでなく、補完でもあり、従来の微生物浄化または酸化浄化に比べて、該方
法はより効率的で環境に優しく、高い適用性を有する。
本発明の一態様として、S1において、150rpmの加振機で24h分解反応させる。
説明:上記反応時間は、汚染物を除去しながら分解菌を保持する平衡点であり、汚染物を
除去する同時に分解菌の生存率が高くなる。
本発明の一態様として、S1において、前記有機汚染水のpH値は5~7であり、前記多
環芳香族化水素はフェナントレン、ピレンである。
本発明の一態様として、S2において、1リットルの有機汚染水で、過酸化カルシウム添
加量は2.41gであり、硫酸第一鉄七水和物添加量は7.51gである。
本発明の一態様として、前記前複合体の調製方法は以下のとおりであり:
S2-1、25℃で、3:0.5の質量比で1~10μmの活性炭、酸化マグネシウムを
混合して担体を得、
S2-2、15g:1~2mlの割合で、前記担体の表面にヘキサデシルアミンオクタン
酸炭酸塩を噴霧し、
S2-3、-15~-10℃の温度下で、前記担体と過酸化カルシウムを1~0.8:1
の重量比でヘキサデシルアミンオクタン酸炭酸塩を噴霧した担体と過酸化カルシウムを混
合し、25℃まで加熱し、25℃で1~2h乾燥させ、前複合体を得、
S2-4、過酸化カルシウムと硫酸第一鉄七水和物を1~13.90:0.39~13.
90の質量比で、前記前複合体と硫酸第一鉄七水和物を混合して前複合体を形成する。
説明:上記方法により調製された前複合体は、有機汚染物と過酸化カルシウムおよび硫酸
第一鉄七水和物との反応のための担体を提供し、ひいては汚染水の分解効果を向上させ、
活性炭、酸化マグネシウムは多孔質材料であり、酸化マグネシウムは化合物の分解を触媒
して促進する作用を有し、同時に担体の使用は、過酸化カルシウムおよび硫酸第一鉄七水
和物による分解菌叢に対する抑制作用を低減することができ、体系の分解能力をさらに向
上させることができる。
本発明の一態様として、前記S2において、前複合体の添加方法は以下のとおりであり:
過酸化カルシウム、硫酸第一鉄七水和物をそれぞれ3等分し、まず25℃で、3分の1の
過酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で5~15min反応させ、次に3分
の1の硫酸第一鉄七水和物を添加し、120rpmの加振機で3~4h反応させ、その後
温度を25℃から5~10℃に下げ、同時に3分の1の過酸化カルシウムと3分の1の硫
酸第一鉄七水和物を添加し、180rpmの加振機で2~3h反応させ、その後残りの過
酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で20~25min反応させ、残りの硫
酸第一鉄七水和物を添加し、130rpmの加振機で完了まで反応させる。
説明:上記添加方法により、分解反応の進行を助長し、前複合体の分解菌に対する影響を
より低減し、過酸化カルシウム+硫酸第一鉄の分解系の分解効果をより良く発揮すること
ができ、上記段階的添加方法は、硫酸第一鉄七水和物と過酸化カルシウムを併用して添加
した後反応させて両者の複合系を形成する時間を効果的に遅くすることができ、同時に時
間と温度の制御を通じて、フリーラジカルの分解反応に対する促進作用を向上させ、分解
菌叢の殺傷作用を低減することができる。
本発明の一態様として、前記分解菌叢中のプロテオバクテリアのアシネトバクター属(A
cinetobacter)、ステノトロフォモナス(Stenotrophomona
s)、コマモナス属(Comamonas)は、いずれも馴化菌であり、馴化のための唯
一の炭素源として分解すべき目標汚染物が利用される。
本発明の別の好ましい実施態様として、前記分解菌叢は長期汚染土壌からスクリーニング
および濃縮して得られ、前記長期汚染土壌は汚染時間が2年以上の多環芳香族化水素汚染
土壌である。
説明:多環芳香族化水素によって長期汚染された土壌をスクリーニングおよび濃縮して得
られた分解菌叢により、使用する菌叢が水域中の関連する汚染物の分解により適しており
、分解菌叢と過酸化カルシウム(CP)の前複合体を多環芳香族化水素汚染水に添加し、
一定時間の反応後、多環芳香族化水素を高効率で除去することができる。
前記スクリーニング・濃縮の方法は以下のとおりであり:
S1-1、予備馴化:
芳香族炭化水素汚染土壌、脱イオン水、硫化ナトリウムを質量比1:0.4:0.01~
0.02の割合で混合し、混合物を得、混合物を1:70~80の質量比で、フェナント
レンおよびピレンを含有する混合栄養液に添加し、10~15d予備馴化培養し、その後
含水量が30~40%になるまで乾燥させ、予備馴化汚泥を得、
S1-2、スクリーニング・濃縮:
ステップS1-1で得られた予備馴化汚泥を再度馴化し、再度馴化は以下のとおりであり
:1:60~65の質量比で、予備馴化汚泥を混合栄養液に添加し、馴化液体を得、18
0~200rpmの加振機で培養し、世代ごと3~5d培養し、5~6回亜式増殖し、馴
化液体内のフェナントレンの含有量が予備馴化汚泥中のフェナントレン含有量の2.2~
5倍になるまで培養し、
S1-3、分解菌叢を得:
ステップS1-2で得られた馴化液体を質量分率4~6%の接種量で、100~3000
mg/Lフェナントレン/ピレンを含有する無機塩培地に接種し、180~200rpm
の加振機で24~64h培養し、分解菌叢を得る。
説明:上記方法で濃縮および馴化スクリーニングされた分解菌叢は、多環芳香族化水素に
対して良好な分解効果を有し、混合栄養液による2回の馴化により菌叢増殖を促進し、高
効率のビフェニル分解菌叢を濃縮することができ、無機塩培地により細菌増殖量、菌叢多
様性、および多環芳香族化水素分解率を向上させることができる。
S1-1およびS1-2に記載の混合栄養液の組成は、酵母エキス1g/L、ペプトン5
g/L、尿素1.6g/L、KHPO8g/L、脱イオン水1L、フェナントレン4
50mg/Lおよびピレン450mg/Lであり、pH7.0±0.5であり、前記無機
塩培地の組成は、NHCl1g/L、KHPO1g/L、MgSO0.2g/L
、FeSO・7HO0.02g/L、NaCl1g/L、(NH)SO3g/L
、0.01g/LCaCl、MoO4mg/L、ZnSO・5HO28mg/L
、CuSO・5HO0.02mg/L、HBO4mg/L、MnSO・5H
O4mg/L、CoCl・6HO4mg/L、pH7.0±0.5である。
本発明の方法は、過酸化カルシウム+硫酸第一鉄の分解系における分解菌叢に対する毒性
の問題を解決することができ、従来の微生物分解技術における水中有機汚染物、特に多環
芳香族化水素の除去効率が低く、分解スペクトルが狭いという上記問題に対して良好な解
决効果を有し、過酸化カルシウムの酸素放出性および酸化性を通じて、分解技術による水
中の多環芳香族化水素の分解能力の助けを借り、汚染水浄化分野に属し、従来の微生物浄
化や酸化浄化に比べて、該方法はより効率的で環境に優しく、高い適用性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】実施例20によりスクリーニング・濃縮された分解菌叢の組成である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下、本発明の利点をより良く反映するために、具体的な実施形態に関連して本発明をよ
り詳細に説明する。
実施例1
分解菌叢複合系を使用する多環芳香族化水素の分解方法は、以下のステップを含み:
S1、まず有機汚染水に5wt%の添加量で分解菌叢を添加し、150rpmの加振機で
24h分解反応させ、
ここで、前記有機汚染水のpH値は6であり、前記有機汚染水は多環芳香族化水素によっ
て汚染された水域であり、前記多環芳香族化水素はフェナントレン、ピレンであり、前記
分解菌叢は、プロテオバクテリアのアシネトバクター属(Acinetobacter)
、ステノトロフォモナス(Stenotrophomonas)、コマモナス属(Com
amonas)の3種類細菌を1:1:1の重量比で混合し、
S2、次に前複合体を添加し、1リットルの有機汚染水中の前複合体の添加量は9.92
gであり、前記分解菌叢と前記前複合体は分解菌叢複合系を形成し、加振機で合計時間が
72hになるまで連続的に反応させ、分解を完成し、
ここで、前記前複合体は過酸化カルシウムおよび硫酸第一鉄七水和物からなり、過酸化カ
ルシウムと硫酸第一鉄七水和物の質量比は2.41:7.51である。
【0006】
実施例2
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S1において、分解菌叢の添加量は有機汚染
水の1wt%である。
実施例3
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S1において、分解菌叢の添加量は有機汚染
水の11wt%である。
実施例4
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S1において、150rpmの加振機で1h
分解反応させる。
実施例5
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S1において、150rpmの加振機で48
h分解反応させる。
実施例6
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S1において、有機汚染水のpH値は5であ
る。
実施例7
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S1において、有機汚染水のpH値は7であ
る。
実施例8
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S2において、1リットルの有機汚染水中の
前複合体の添加量は1.39gであり、ここで、過酸化カルシウムは1gであり、硫酸第
一鉄七水和物は0.39gである。
実施例9
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:S2において、1リットルの有機汚染水中の
前複合体の添加量は27.80gであり、ここで、過酸化カルシウムは13.9gであり
、硫酸第一鉄七水和物は13.9gである。
実施例10
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり:前記前複合体の成分を改良し、改良後の前複
合体は過酸化カルシウムと硫酸第一鉄七水和物の2成分以上を含み、改良後の前複合体の
調製方法は以下のとおりであり:
S2-1、25℃で、3:0.5の質量比で1~10μmの活性炭、酸化マグネシウムを
混合して担体を得、
S2-2、15g:1mlの割合で、前記担体の表面にヘキサデシルアミンオクタン酸炭
酸塩を噴霧し、
S2-3、温度-15℃で、前記担体と過酸化カルシウムを1~:1の重量比でヘキサデ
シルアミンオクタン酸炭酸塩を噴霧した担体と過酸化カルシウムを混合し、25℃まで加
熱し、25℃で1h乾燥させ、前複合体を得、
S2-4、過酸化カルシウムと硫酸第一鉄七水和物を質量比1:0.39で、前記前複合
体と硫酸第一鉄七水和物を混合して前複合体を形成する。
実施例11
本実施例は実施例10とは以下の点で異なり、S2-2において、担体とヘキサデシルア
ミンオクタン酸炭酸塩の割合は15g:2mlである。
実施例12
本実施例は実施例10とは以下の点で異なり、S2-2において、担体とヘキサデシルア
ミンオクタン酸炭酸塩の割合は15g:1.8mlである。
実施例13
本実施例は実施例10とは以下の点で異なり、S2-3において、温度-12℃で、前記
担体と過酸化カルシウムを0.9:1の重量比でヘキサデシルアミンオクタン酸炭酸塩を
噴霧した担体と過酸化カルシウムを混合し、25℃まで加熱し、25℃で1.5h乾燥さ
せ、前複合体を得る。
実施例14
本実施例は実施例10とは以下の点で異なり、S2-3において、温度-10℃で、前記
担体と過酸化カルシウムを0.8:1の重量比でヘキサデシルアミンオクタン酸炭酸塩を
噴霧した担体と過酸化カルシウムを混合し、25℃まで加熱し、25℃で2h乾燥させ、
前複合体を得る。
実施例15
本実施例は実施例10とは以下の点で異なり、S2-4において、過酸化カルシウムと硫
酸第一鉄七水和物を質量比3:1で、前記前複合体と硫酸第一鉄七水和物を混合して前複
合体を形成する。
実施例16
本実施例は実施例10とは以下の点で異なり、S2-4において、過酸化カルシウムと硫
酸第一鉄七水和物の質量比1:1で、前記前複合体と硫酸第一鉄七水和物を混合して前複
合体を形成する。
実施例17
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり、前記S2において、前複合体の添加方法は以
下のとおりであり:過酸化カルシウム、硫酸第一鉄七水和物をそれぞれ3等分し、まず2
5℃で、3分の1の過酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で10min反応
させ、次に3分の1の硫酸第一鉄七水和物を添加し、120rpmの加振機で3.5h反
応させ、その後温度を25℃から8℃に下げ、同時に3分の1の過酸化カルシウムと3分
の1の硫酸第一鉄七水和物を添加し、180rpmの加振機で2.5h反応させ、その後
残りの過酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で23min反応させ、残りの
硫酸第一鉄七水和物を添加し、130rpmの加振機で完了まで反応させる。
実施例18
本実施例は実施例17とは以下の点で異なり、前記S2において、前複合体の添加方法は
以下のとおりであり:過酸化カルシウム、硫酸第一鉄七水和物をそれぞれ3等分し、まず
25℃で、3分の1の過酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で5min反応
させ、次に3分の1の硫酸第一鉄七水和物を添加し、120rpmの加振機で3h反応さ
せ、その後温度を25℃から5℃に下げ、同時に3分の1の過酸化カルシウムと3分の1
の硫酸第一鉄七水和物を添加し、180rpmの加振機で2h反応させ、その後残りの過
酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で20min反応させ、残りの硫酸第一
鉄七水和物を添加し、130rpmの加振機で完了まで反応させる。
実施例19
本実施例は実施例17とは以下の点で異なり、前記S2において、前複合体の添加方法は
以下のとおりであり:過酸化カルシウム、硫酸第一鉄七水和物をそれぞれ3等分し、まず
25℃で、3分の1の過酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で15min反
応させ、次に3分の1の硫酸第一鉄七水和物を添加し、120rpmの加振機で4h反応
させ、その後温度を25℃から10℃に下げ、同時に3分の1の過酸化カルシウムと3分
の1の硫酸第一鉄七水和物を添加し、180rpmの加振機で3h反応させ、その後残り
の過酸化カルシウムを添加し、150rpmの加振機で25min反応させ、残りの硫酸
第一鉄七水和物を添加し、130rpmの加振機で完了まで反応させる。
実施例20
本実施例は実施例1とは以下の点で異なり、前記分解菌叢のスクリーニング・濃縮は以下
のとおりであり:
S1-1、予備馴化:
汚染時間2年の多環芳香族化水素汚染土壌、脱イオン水、硫化ナトリウムを質量比1:0
.4:0.015の割合で混合し、混合物を得、混合物を1:75の質量比で、フェナン
トレンおよびピレンを含有する混合栄養液に添加し、12d予備馴化培養し、その後含水
量が35%になるまで乾燥させ、予備馴化汚泥を得、
S1-2、スクリーニング・濃縮:
ステップS1-1で得られた予備馴化汚泥を再度馴化し、再度馴化は以下のとおりであり
:1:62の質量比で、予備馴化汚泥を混合栄養液に添加し、馴化液体を得、190rp
mの加振機で培養し、世代ごとに4d培養し、5回亜式増殖し、馴化液体内のフェナント
レン含有量が予備馴化汚泥中のフェナントレン含有量の3倍になるまで培養し、ステップ
S1-1とステップS1-2に記載の混合栄養液の組成は、酵母エキス1g/L、ペプト
ン5g/L、尿素1.6g/L、KHPO8g/L、脱イオン水1L、フェナントレ
ン450mg/Lとピレン450mg/Lであり、pH7.0±0.5であり、
S1-3、分解菌叢を得:
ステップS1-2で得られた馴化液体を質量分率5%の接種量で、2000mg/Lフェ
ナントレン/ピレンを含有する無機塩培地に接種し、190rpmの加振機で50h培養
し、分解菌叢を得、測定の結果、得られた分解菌叢はAcinetobacter、St
enotrophomonas、Comamonasの3つの主要細菌を含有し、分解菌
叢の組成は図1に示される。
前記無機塩培地の組成は、NHCl1g/L、KHPO1g/L、MgSO0.
2g/L、FeSO・7HO0.02g/L、NaCl1g/L、(NH)SO
3g/L、0.01g/LCaCl、MoO4mg/L、ZnSO・5HO28
mg/L、CuSO・5HO0.02mg/L、HBO4mg/L、MnSO
・5HO4mg/L、CoCl・6HO4mg/Lであり、pH7.0である。
実施例21
本実施例は実施例20とは以下の点で異なり、ステップS1-1において、芳香族炭化水
素汚染土壌、脱イオン水、硫化ナトリウムを質量比1:0.4:0.01の割合で混合し
、混合物を得、混合物を1:70の質量比で、フェナントレンおよびピレンを含有する混
合栄養液に添加し、10d予備馴化培養し、その後含水量が30%になるまで乾燥させ、
予備馴化汚泥を得る。
実施例22
本実施例は実施例20とは以下の点で異なり、ステップS1-1において、芳香族炭化水
素汚染土壌、脱イオン水、硫化ナトリウムを質量比1:0.4:0.02の割合で混合し
、混合物を得、混合物を1:80の質量比で、フェナントレンおよびピレンを含有する混
合栄養液に添加し、15d予備馴化培養し、その後含水量が40%になるまで乾燥させ、
予備馴化汚泥を得る。
実施例23
本実施例は実施例20とは以下の点で異なり、ステップS1-2の培養パラメータが異な
り、1:65の質量比で、予備馴化汚泥を混合栄養液に添加し、馴化液体を得、200r
pmの加振機で培養し、世代ごとに3d培養し、5回亜式増殖し、馴化液体内のフェナン
トレンの含有量が予備馴化汚泥中のフェナントレン含有量の4.5倍になるまで培養する

実施例24
本実施例は実施例20とは以下の点で異なり、ステップS1-2中の培養パラメータが異
なり、1:60の質量比で、予備馴化汚泥を混合栄養液に添加し、馴化液体を得、180
rpmの加振機で培養し、世代ごとに5d培養し、6回亜式増殖し、馴化液体内のフェナ
ントレンの含有量が予備馴化汚泥中のフェナントレン含有量の2.0倍になるまで培養す
る。
実施例25
本実施例は実施例20とは以下の点で異なり、ステップS1-3中の培養パラメータは異
なり、ステップS1-2で得られた馴化液体を質量分率4%の接種量で、3000mg/
Lフェナントレン/ピレンを含有する無機塩培地に接種し、200rpmの加振機で24
h培養して分解菌叢を得る。
実施例26
本実施例は実施例20とは以下の点で異なり、ステップS1-3中の培養パラメータは異
なり、ステップS1-2で得られた馴化液体を質量分率6%の接種量で、100mg/L
フェナントレン/ピレンを含有する無機塩培地に接種し、180rpmの加振機で64h
培養して分解菌叢を得る。
実験例
一、有機汚染水中の多環芳香族化水素に対する本発明の分解効率の調べ、
ここで、水中の多環芳香族化水素の分解率は次式により算出され:
1、分解菌叢、前複合体の添加量の有機汚染水中の多環芳香族化水素の解効率への影響の
調べ、
比較例1:比較例1は実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水中に過酸化カルシウム
、硫酸第一鉄七水和物を添加せず、5wt%の分解菌叢のみを添加して分解し、
比較例2:比較例2は実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水中に分解菌叢を添加せ
ず、2g過酸化カルシウム、8.34g硫酸第一鉄七水和物のみを添加して分解し、
表1 分解菌叢の添加量の多環芳香族化水素の分解効率への影響


表1から分かるように、実施例1、比較例1、比較例2を比較した結果、比較例1、比較
例2におけるそれぞれ単独で使用した微生物分解、CP体系の単一浄化技術に比べて、実
施例1の複合技術では、汚染水中の多環芳香族化水素の分解効率が29.97~59.5
1%向上し、これは、実施例1の方法は体系に適合するという利点を生じさせることを示
し、したがって実施例1の方法はより好ましく、
実施例1、実施例2、実施例3を比較した結果、分解菌叢の添加量が5wt%である場合
、多環芳香族化水素の分解効果が最も優れ、これは、分解菌叢の添加量が低いと、分解菌
の量が不足し、分解効果が低く、分解菌叢の添加量がさらに上げると、分解効果がそれに
追従して向上することがなく、したがって、経済的な観点から、実施例1のパラメータは
より好ましい。
2、処理中、前複合体と分解菌叢の添加方法による有機汚染水中の多環芳香族化水素の分
解効率に対する影響の調べ、
比較例3:実施例1とは以下の点で異なり、まず前複合体を添加し、24h反応させた後
分解菌叢を添加し、合計時間が72hになるまで反応させ、分解を完成し、
表2 分解菌叢と前複合体の方法による多環芳香族化水素の分解効率に対する影響

表2から分かるように、実施例1と比較例3を比較した結果、実施例1の添加順序がより
好ましく、分解順序が芳香族炭化水素の分解に大きな影響を与え、実施例1はより好まし
く、
実施例1、17、18、19を比較した結果、実施例17~19の方法によって調製した
複合系は、ピレン、フェナントレンの分解効果が良好であり、これは、実施例17~19
の担体を使用することにより、汚染水の分解効果を向上させ、活性炭、酸化マグネシウム
の多孔質材料は分解を催化して促進する作用を有するため、複合系の分解能力が強く、こ
こで、実施例19はより好ましい。
3、有機汚染水のpH値の多環芳香族化水素の分解効率への影響の調べ、
比較例4:実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水pH値は3であり、
比較例5:実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水pH値は11であり、
表3 有機汚染水のpH値の多環芳香族化水素の分解効率への影響

表3から分かるように、実施例1、実施例6と実施例7、比較例4と比較例5を比較した
結果、実施例1、実施例6および実施例7中のpH、すなわちpH値が5~7である場合
、前複合体の分解効率が最も優れ、実施例4、比較例4と比較例5を比較した結果、pH
値が低すぎても高すぎても体系の分解効率が劣るが、それでも一定の多環芳香族化水素分
解能力を維持している。
4、分解菌叢の成分の有機汚染水中の多環芳香族化水素の分解効率への影響の調べ、
比較例6:分解菌叢は既存のPAHs分解菌株を採用し、《多環芳香族化水素分解菌およ
びその応用研究進展》より引用され、
表4 分解菌叢の成分の多環芳香族化水素の分解効率への影響

表4から分かるように、実施例1と比較例6を比較した結果、実施例1で採用した分解菌
叢の分解効果がより好ましく、実施例1、実施例20を比較した結果、実施例20におい
て、馴化濃縮の分解菌叢を用いた水域中の多環芳香族化水素の分解効果も良好である。
二、実施例1の分解処理の妨害防止性能の調べ、
それぞれフルボ酸とフミン酸の2種類の溶解性有機物を用い、前複合体の分解能力を調べ

比較例7:実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水に100mg/Lフルボ酸を添加
して分解し、
比較例8:実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水に250mg/Lフルボ酸を添加
して分解し、
比較例9:実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水に100mg/Lフミン酸を添加
して分解し、
比較例10:実施例1とは以下の点で異なり、有機汚染水に250mg/Lフミン酸を添
加して分解し、
表5 分解処理の妨害防止性能


表5から分かるように、実施例1、比較例7と比較例8を比較した結果、フルボ酸は体系
による多環芳香族化水素の分解効率を低下させ、実施例1、比較例9と比較例10を比較
した結果、フミン酸も体系による多環芳香族化水素の分解効率を低下させるが、両者の低
下の程度が限られ、前複合体は依然として一定の分解能力を維持する。
【要約】      (修正有)
【課題】分解菌叢複合系を使用する多環芳香族化水素の分解方法を提供する。
【解決手段】分解菌叢複合系を使用する多環芳香族化水素の分解方法を開示し、この方法は以下のステップを含み:まず有機汚染水中に分解菌叢を添加し、1~48h反応させ、次に前複合体を添加し、合計時間が72hになるまで連続的に反応させ、分解菌叢と前複合体が複合系を形成し、この過程は、前複合体による分解菌叢に対する悪影響を回避し、分解を正常に達成することができ、本発明は、分解菌叢、過酸化カルシウムと硫酸第一鉄七水和物の前複合体を複合系として多環芳香族化水素汚染水に添加し、分解反応により、多環芳香族化水素を効果的に除去することができ、従来の微生物浄化や酸化浄化に比べて、本方法は効率的で環境に優しく、高い適用性を有する。
【選択図】図1
図1