(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】組織特異的メチル化マーカー
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6883 20180101AFI20250117BHJP
C12Q 1/6816 20180101ALI20250117BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z ZNA
C12Q1/6816 Z
C12N15/11 Z
(21)【出願番号】P 2020548776
(86)(22)【出願日】2019-03-15
(86)【国際出願番号】 US2019022504
(87)【国際公開番号】W WO2019178496
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2022-03-11
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522105894
【氏名又は名称】グレイル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロ,ユク-ミン,デニス
(72)【発明者】
【氏名】チウ,ロッサ,ワイ クン
(72)【発明者】
【氏名】チャン,クワン,チー
(72)【発明者】
【氏名】ガイ,ワンシァ
(72)【発明者】
【氏名】ジ,ルー
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/129716(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/212428(WO,A1)
【文献】特表2017-514499(JP,A)
【文献】特表2017-516504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0017419(US,A1)
【文献】特表2015-536639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/00- 3/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中のセルフリーDNA分子をアッセイする方法であって、
(a)がんを有する生物の第1の生体サンプルからセルフリーDNA分子を得ることと、ここで前記がんは、初期の組織の原発性がんの細胞を含み、前記第1の生体サンプルは、前記がんからのセルフリーDNA及び前記原発性がんの初期の組織とは異なるさらなる組織
からのセルフリーDNAを含む;
(b)前記セルフリーDNA分子中の標的配列の第1のメチル化状態を判定するため、前記セルフリーDNA分子に対するアッセイを実施することと、ここで前記標的配列の前記第1のメチル化状態は、前記標的配列を含むセルフリーDNA分子が前記生物のさらなる組織に由来することを示す;
(c)前記第1のメチル化状態を有する前記標的配列を含む前記第1の生体サンプルからセルフリーDNA分子の絶対量を測定することと;
(d)前記測定された絶対量と参照量を比較することにより、転移部位に前記さらなる組織からのセルフリーDNA分子が
前記サンプルに存在するかを判定することと、ここで、(i)前記参照量は、前記さらなる組織に転移を伴わない1以上の対照対象についての前記第1のメチル化状態を有する標的配列を含むセルフリーDNAの絶対量であり、(ii)前記参照量を超えて測定された絶対量は、転移部位の前記さらなる組織由来の前記セルフリーDNA分子の存在を示す、
を含む、方法。
【請求項2】
前記アッセイが、
(a)前記標的配列を含む前記セルフリーDNA分子を前記第1の生体サンプルから単離すること;
(b)油エマルジョン中の前記標的配列を含む前記セルフリーDNA分子を単離すること;
(c)前記セルフリーDNA分子中の非メチル化シトシン残基のウラシルへの亜硫酸水素塩変換;又は
(d)前記第1の生体サンプルからのセルフリーDNA分子のメチル化認識配列決定を実施すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記アッセイが、前記標的配列を含む前記セルフリーDNA分子をプローブにハイブリダイズすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(a)前記プローブの前記標的配列へのハイブリダイゼーションの親和性が、前記第1の生体サンプル中の前記標的配列の前記第1のメチル化状態に依存する;
(b)前記標的配列のメチル化部位が前記第1の生体サンプル中でメチル化されるとき、前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする;
(c)前記標的配列のメチル化部位が前記第1の生体サンプル中で非メチル化されるとき、前記プローブが前記標的配列にハイブリダイズする;又は
(d)前記アッセイが、前記プローブの前記標的配列へのハイブリダイゼーションを検出することを含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アッセイが、前記セルフリーDNA分子を増幅することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
(a)前記増幅が、プライマー対の使用を含む;
(b)プライマー対の少なくとも1つのプライマーのハイブリダイゼーションの前記標的配列への親和性が、前記標的配列の前記第1のメチル化状態に依存する;
(c)前記標的配列のメチル化部位が前記第1の生体サンプル中でメチル化されるとき、プライマー対の少なくとも1つのプライマーが前記標的配列にハイブリダイズする;又は
(d)前記標的配列のメチル化部位が前記第1の生体サンプル中で非メチル化されるとき、プライマー対の少なくとも1つのプライマーが前記標的配列にハイブリダイズする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記標的配列が、少なくとも5のメチル化部位を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のメチル化状態が、前記標的配列内の個別部位におけるメチル化密度、メチル化/非メチル化部位の前記標的配列内の隣接領域にわたる分布、前記標的配列内の各個別メチル化部位におけるメチル化のパターン若しくはレベル、又は非CpGメチル化を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記標的配列が、前記さらなる組織内で前記がん内よりも高いメチル化密度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的配列が、
(a)50%を超える前記さらなる組織内のメチル化密度;
(b)最高50%の前記がん内のメチル化密度;又は
(c)20%未満の前記がん内のメチル化密度
を
含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記標的配列が、前記さらなる組織内で前記がん内よりも低いメチル化密度を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記標的配列が、
(a)50%未満の前記さらなる組織内のメチル化密度;
(b)少なくとも50%の前記がん内のメチル化密度;又は
(c)80%を超える前記がん内のメチル化密度
を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記さらなる組織が、肝組織を含み、且つ前記標的配列が、配列番号1に対して、少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
(a)前記さらなる組織が、肝組織を含み、且つ前記アッセイが、配列番号2を含むプライマー、配列番号3を含むプライマー、若しくは双方を用いる増幅、又は前記標的配列を検出するための配列番号4を含む検出可能標識プローブの使用を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(b)前記増幅が、配列番号5を含むプライマー、配列番号6を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は前記標的配列を検出するための配列番号7を含む検出可能標識プローブの使用をさらに含む、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記さらなる組織が、結腸組織を含み、且つ前記標的配列が、配列番号8に対して、少なくとも90%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記さらなる組織が、結腸組織を含み、且つ前記アッセイが、配列番号9を含むプライマー、配列番号10を含むプライマー、若しくは双方
を用いる増幅、又は前記標的配列を検出するため配列番号11を含む検出可能標識プローブ
の使用を含む、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記増幅が、配列番号12を含むプライマー、配列番号13を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は前記標的配列を検出するための配列番号14を含む検出可能標識プローブの使用をさらに含む、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記がんが、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、胃腸がん、造血器悪性腫瘍、頭頸部扁平上皮がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、骨髄腫、鼻腔がん、鼻咽頭がん、口腔がん、中咽頭がん、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、メラノーマ、甲状腺がん、肝細胞がん、及び結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記さらなる組織内の前記がんの分類を判定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記さらなる組織内のがんの前記分類の前記判定が、前記生物由来の第2の生体サンプルからのセルフリー核酸分子を評価することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記評価が、
(a)前記第2の生体サンプルからの前記セルフリー核酸分子のメチル化特性、コピー数の変動、一塩基多型(SNP)特性、又は断片化パターンを判定すること;又は
(b)病原体に由来する前記第2の生体サンプルからのセルフリー核酸分子の量を判定すること
を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されたシステム。
【請求項24】
請求項1~22のいずれか一項に記載の方法を実施するための、コンピュータシステムを制御するための一連の命令を含む非一過性コンピュータで読み取り可能な媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001] 本願は、2018年3月15日に出願された米国仮特許出願第62/643,649号、及び2018年11月20日に出願された米国仮特許出願第62/769,928号の利益を主張し、それらの各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
[0002] 異なる組織由来のDNAから循環DNAにかけての定量的測定は、潜在的には多種の病態の存在に関する重要な情報を提供し得る。しかし、ゲノムワイドな亜硫酸水素塩配列決定を含む既存の方法は、比較的高価であり、分析において困難を呈することがある。異なる組織由来のDNAを測定するためのより対費用効果の高い手法であれば、有用となろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
[0003] 液体生検として知られることが多いがん細胞由来の循環セルフリーDNAの検出は、がん患者の管理における使用が増加している。例えば、血漿中の上皮成長因子受容体(EGFR)変異の検出は、腫瘍組織内での変異状態と十分に相関し得、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤に対する応答性を予測し得る。点変異に加えて、コピー数変化及び断片化パターンの異常を含む、他のがんに関連する遺伝子及びゲノム異常であっても、がん患者のセルフリー血漿中で検出され得る。血漿DNAのスクリーニングによって同定された患者は、潜在的には、スクリーニングを受けていない患者と比べてより早期のステージ分布及び優位な進行のない生存を有意に有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
[0004] 本開示の一態様は、第1の組織のがんを有する生物が第2の組織に位置するがんを有するかを判定する方法であって、(a)セルフリーDNA分子を第1の組織のがんを有する生物の第1の生体サンプルから得ることと;(b)セルフリーDNA分子における標的配列の第1のメチル化状態を判定するため、セルフリーDNA分子に対するアッセイを実施することと;ここで標的配列の第1のメチル化状態は、標的配列を含むセルフリーDNA分子が生物の第2の組織に由来することを示し、ここで第1の組織と第2の組織は異なる;(c)第1のメチル化状態を有する標的配列を含む第1の生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量を判定することと;(d)生物が第2の組織にがんを有するかを絶対量に基づいて判定することと、を含む、方法を提供する。
【0005】
[0005] 場合によっては、メチル化状態は、メチル化レベルを含む。場合によっては、アッセイは、標的配列を含むセルフリーDNA分子を第1の生体サンプルから単離することを含む。場合によっては、アッセイは、油エマルジョン中の標的配列を含むセルフリーDNA分子を単離することを含む。場合によっては、アッセイは、標的配列を含むセルフリーDNA分子をプローブにハイブリダイズすることを含む。場合によっては、プローブは、標的配列にハイブリダイズする。場合によっては、プローブの標的配列へのハイブリダイゼーションの親和性は、第1の生体サンプル中の標的配列の第1のメチル化状態に依存する。場合によっては、プローブは、標的配列のメチル化部位が第1の生体サンプル中でメチル化されるとき、標的配列にハイブリダイズする。場合によっては、プローブは、標的配列のメチル化部位が第1の生体サンプル中で非メチル化されるとき、標的配列にハイブリダイズする。場合によっては、アッセイは、プローブの標的配列へのハイブリダイゼーションを検出することを含む。
【0006】
[0006] 場合によっては、アッセイは、セルフリーDNA分子を増幅することを含む。場合によっては、増幅は、プライマー対の使用を含む。場合によっては、プライマー対の少なくとも1つのプライマーの標的配列へのハイブリダイゼーションの親和性は、標的配列の第1のメチル化状態に依存する。場合によっては、プライマー対の少なくとも1つのプライマーは、標的配列のメチル化部位が第1の生体サンプル中でメチル化されるとき、標的配列にハイブリダイズする。場合によっては、プライマー対の少なくとも1つのプライマーは、標的配列のメチル化部位が第1の生体サンプル中で非メチル化されるとき、標的配列にハイブリダイズする。場合によっては、アッセイは、セルフリーDNA分子中の非メチル化シトシン残基のウラシルへの亜硫酸水素塩変換を含む。場合によっては、アッセイは、第1の生体サンプルからのセルフリーDNA分子のメチル化認識配列決定を実施することを含む。
【0007】
[0007] 場合によっては、標的配列は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、又は少なくとも10のメチル化部位を含む。場合によっては、標的配列は、少なくとも5のメチル化部位を含む。場合によっては、第1のメチル化状態は、標的配列内の個別部位におけるメチル化密度、メチル化/非メチル化部位の標的配列内の隣接領域にわたる分布、標的配列内の各個別メチル化部位におけるメチル化のパターン若しくはレベル、又は非CpGメチル化を含む。場合によっては、標的配列は、第1の組織内に第2の組織内よりも高いメチル化密度を含む。場合によっては、第1のメチル化状態は、標的配列を有する個別部位におけるメチル化密度を含み、標的配列は、第1の組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のメチル化密度を有する。場合によっては、標的配列は、第1の組織内で50%を超えるメチル化密度を含む。場合によっては、標的配列は、第2の組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を含む。場合によっては、標的配列は、第2の組織内で20%未満のメチル化密度を含む。場合によっては、標的配列は、第1の組織内で第2の組織内よりも低いメチル化密度を含む。場合によっては、標的配列は、第1の組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を含む。場合によっては、標的配列は、第1の組織内で50%未満のメチル化密度を含む。場合によっては、標的配列は、第2の組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%のメチル化密度を含む。場合によっては、標的配列は、第2の組織内で80%を超えるメチル化密度を含む。
【0008】
[0008] 場合によっては、第1の組織は、肝組織を含み、標的配列は、配列番号1に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。場合によっては、第1の組織は、肝組織を含み、ここでアッセイは、配列番号2を含むプライマー、配列番号3を含むプライマー、若しくは双方を用いる増幅、又は標的配列を検出するための配列番号4を含む検出可能標識プローブの使用を含む。場合によっては、増幅は、配列番号5を含むプライマー、配列番号6を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は標的配列を検出するための配列番号7を含む検出可能標識プローブの使用をさらに含む。
【0009】
[0009] 場合によっては、第1の組織は、結腸組織を含み、標的配列は、配列番号8に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。場合によっては、第1の組織は、結腸組織を含み、ここで増幅は、配列番号9を含むプライマー、配列番号10を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は標的配列を検出するための配列番号11を含む検出可能標識プローブの使用を含む。場合によっては、メチル化特異的増幅は、配列番号12を含むプライマー、配列番号13を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は標的配列を検出するための配列番号14を含む検出可能標識プローブの使用をさらに含む。
【0010】
[0010] 場合によっては、がんは、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、胃腸がん、造血器悪性腫瘍、頭頸部扁平上皮がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、骨髄腫、鼻腔がん、鼻咽頭がん、口腔がん、中咽頭がん、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、メラノーマ、及び甲状腺がんからなる群から選択される。場合によっては、がんは、肝細胞がん又は結腸直腸がんを含む。
【0011】
[0011] 場合によっては、方法は、第2の組織におけるがんの分類を判定することをさらに含む。場合によっては、第2の組織におけるがんの分類の判定は、生物に由来する第2の生体サンプルからのセルフリー核酸分子を評価することを含む。場合によっては、評価することは、第2の生体サンプルからのセルフリー核酸分子のメチル化特性、コピー数の変動、一塩基多型(SNP)特性、又は断片化パターンを判定することを含む。場合によっては、評価は、病原体に由来する第2の生体サンプルからのセルフリー核酸分子の量を測定することを含む。場合によっては、第2の生体サンプルは、第1の生体サンプルと同じである。場合によっては、第2の生体サンプルは、第1の生体サンプルと異なる。
【0012】
[0012] 本開示の一態様は、本明細書に提供されるような方法を実施するように構成されたシステムを提供する。
【0013】
[0013] 本開示の一態様は、本明細書に開示されるような方法を実施するための、コンピュータシステムを制御するための命令一式を含む、非一過性のコンピュータで読み取り可能な媒体を提供する。
【0014】
[0014] 本開示の一態様は、生物の生体サンプルを分析する方法を提供する。方法は、生体サンプルからのセルフリーDNA分子中の第1の組織特異的マーカーを、第1の組織特異的マーカーのメチル化状態に基づいて増幅することと;ここで、第1の組織特異的マーカーは、生物の第1の組織内に第1のメチル化状態及び生物の他の組織内に第2のメチル化状態を有する1つ以上の分化メチル化部位を有する所定の配列を含み、且つ第1及び第2のメチル化状態は異なる;セルフリーDNA分子における起源組織を、第1の組織特異的マーカーの増幅を検出することにより同定することと;生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量を判定することと、を含み得る。
【0015】
[0015] 場合によっては、方法は、増幅前に、非メチル化シトシン残基のウラシルへの亜硫酸水素塩変換をさらに含む。場合によっては、方法は、増幅前に、セルフリーDNA分子を生体サンプルからの他のDNA分子から単離することをさらに含む。場合によっては、増幅は、第1の組織特異的マーカーに相補的なメチル化特異的プライマーの使用及び1つ又は複数の分化メチル化部位の少なくとも一部へのアニーリングを含む。場合によっては、起源組織の同定は、セルフリーDNA分子における第1の組織特異的マーカーが第1のメチル化状態でメチル化された第1の組織特異的マーカーを増幅するように構成されたプライマーにより増幅される場合、セルフリーDNA分子が第1の組織に由来することを判定することを含む。
【0016】
[0016] 場合によっては、1つ又は複数の分化メチル化部位は、第1の組織内で、第2の組織内よりも高いメチル化密度を有する。場合によっては、1つ又は複数の分化メチル化部位は、第1の組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のメチル化密度を有する。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第1の組織内で50%を超えるメチル化密度を有する。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第2の組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を有する。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第2の組織内で20%未満のメチル化密度を有する。
【0017】
[0017] 場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第1の組織内で、第2の組織内よりも低いメチル化密度を有する。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第1の組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を有する。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第1の組織内で50%未満のメチル化密度を有する。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第2の組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%のメチル化密度を有する。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、第2の組織内で80%を超えるメチル化密度を有する。
【0018】
[0018] 場合によっては、第1の組織は、肝組織を含み、第1の組織特異的マーカーは、配列番号1に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。場合によっては、第1の組織は、肝組織を含み、ここで増幅は、配列番号2を含むプライマー、配列番号3を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は第1の組織特異的マーカーの検出のための配列番号4を含む検出可能標識プローブの使用を含む。場合によっては、増幅は、配列番号5を含むプライマー、配列番号6を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は第1の組織特異的マーカーの検出のための配列番号7を含む検出可能標識プローブの使用をさらに含む。場合によっては、第1の組織は、結腸組織を含み、第1の組織特異的マーカーは、配列番号8に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。場合によっては、第1の組織は、結腸組織を含み、ここで増幅は、配列番号9を含むプライマー、配列番号10を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は第1の組織特異的マーカーの検出のための配列番号11を含む検出可能標識プローブの使用を含む。場合によっては、メチル化特異的増幅は、配列番号12を含むプライマー、配列番号13を含むプライマー、若しくは双方の使用、又は第1の組織特異的マーカーの検出のための配列番号14を含む検出可能標識プローブの使用をさらに含む。
【0019】
[0019] 場合によっては、方法は、第2の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の量を、第2の組織特異的マーカーのメチル化パターンに基づいて判定することをさらに含み、ここで第1及び第2の組織は異なる。場合によっては、第2の組織は生物に属する。
【0020】
[0020] 場合によっては、方法は、第1の組織内のがんを、生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量に基づいて診断、監視、又は予後診断することをさらに含む。場合によっては、がんは、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、胃腸がん、造血器悪性腫瘍、頭頸部扁平上皮がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、骨髄腫、鼻腔がん、鼻咽頭がん、口腔がん、中咽頭がん、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、メラノーマ、及び甲状腺がんからなる群から選択される。場合によっては、がんは、肝細胞がん又は結腸直腸がんを含む。場合によっては、診断又は監視は、第1の組織内の腫瘍のサイズを、生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量に基づいて判定することを含む。場合によっては、診断又は監視は、がんが第1の組織に転移しているかを、生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量に基づいて判定することを含む。
【0021】
[0021] 場合によっては、第1の組織は、移植された臓器を含む。場合によっては、本明細書に提供される方法は、臓器移植を第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量に基づいて評価することをさらに含む。
【0022】
[0022] 本開示の別の態様は、生物の肝臓に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の量を判定するための組成物を提供する。組成物は、肝特異的マーカーのメチル化状態に基づいた肝特異的マーカーの増幅のためのプライマー対を含み得、ここで肝特異的マーカーは、配列番号1に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む。場合によっては、プライマー対は、配列番号2を含むプライマーと配列番号3を含むプライマーとを含む。場合によっては、組成物は、肝特異的マーカーの検出のための配列番号4を含む検出可能標識プローブをさらに含む。場合によっては、組成物は、配列番号5を含むプライマーと配列番号6を含むプライマーとをさらに含む。場合によっては、組成物は、肝特異的マーカーの検出のための配列番号7を含む検出可能標識プローブをさらに含む。
【0023】
[0023] 本開示の別の態様は、生物の結腸に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の量を判定するための組成物であって、結腸特異的マーカーのメチル化状態に基づいた結腸特異的マーカーの増幅のためのプライマー対を含み、ここで結腸特異的マーカーが、配列番号8に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含む、組成物を提供する。場合によっては、プライマー対は、配列番号9を含むプライマーと配列番号10を含むプライマーとを含む。場合によっては、組成物は、結腸特異的マーカーの検出のための配列番号11を含む検出可能標識プローブをさらに含む。場合によっては、組成物は、配列番号12を含むプライマーと配列番号13を含むプライマーとをさらに含む。場合によっては、組成物は、結腸特異的マーカーの検出のための配列番号14を含む検出可能標識プローブをさらに含む。
【0024】
参照による援用
[0024] 本明細書中で言及されるすべての出版物、特許、及び特許出願は、あたかも各個別の出版物、特許、又は特許出願が参照により援用されることが具体的且つ個別に示された場合と同程度まで、参照により本明細書中に援用される。
【0025】
図面の簡単な説明
[0025] 本開示の新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲において示される。本開示の原理が用いられる例示的な実施形態を示す、以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することにより、本開示の特徴及び利点のより十分な理解が得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】[0026]肝転移を伴う結腸直腸がんを有する患者におけるプラズマセルフリーDNA起源の模式図である。
【
図2】[0027]肝特異的メチル化マーカー分析(液滴デジタルPCR)及び配列決定によるドナー特異的対立遺伝子分析に基づく、肝移植レシピエントの血漿中の肝臓由来DNAの分画濃度間の相関を示す。
【
図3A】[0028]健常対象、慢性HBVキャリア、硬変患者及びHCC患者の血漿における液滴デジタルPCRを用いる、肝臓由来DNAの絶対濃度を示す。
【
図3B】[0028]健常対象、慢性HBVキャリア、硬変患者及びHCC患者の血漿における液滴デジタルPCRを用いる、肝臓由来DNAの分画濃度を示す。
【
図4A】[0029]HCC患者の血漿における液滴デジタルPCRを用いる、腫瘍の最大寸法と肝臓由来DNAの絶対濃度との間の相関を示す。
【
図4B】[0029]HCC患者の血漿における液滴デジタルPCRを用いる、腫瘍の最大寸法と肝臓由来DNAの分画濃度との間の相関を示す。
【
図5A】[0030]健常対象及び肝転移を有するCRC患者及び肝転移を有しないCRC患者における液滴デジタルPCRによる結腸及び肝臓由来DNAの血漿濃度を示す。結腸由来DNAの絶対濃度。
【
図5B】[0030]健常対象及び肝転移を有するCRC患者及び肝転移を有しないCRC患者における液滴デジタルPCRによる結腸及び肝臓由来DNAの血漿濃度を示す。結腸由来DNAの分画濃度。
【
図5C】[0030]健常対象及び肝転移を有するCRC患者及び肝転移を有しないCRC患者における液滴デジタルPCRによる結腸及び肝臓由来DNAの血漿濃度を示す。肝臓由来DNAの絶対濃度。
【
図5D】[0030]健常対象及び肝転移を有するCRC患者及び肝転移を有しないCRC患者における液滴デジタルPCRによる結腸及び肝臓由来DNAの血漿濃度を示す。肝臓由来DNAの分画濃度。
【
図6】[0031]肝転移を有するCRC患者と肝転移を有しないCRC患者とを区別するため、肝臓及び結腸由来DNAの絶対及び分画濃度を用いるためのROC曲線を示す。「AUC」は、曲線下面積を意味する。
【
図7】[0032]タンパク質チロシンキナーゼ2β(PTK2B)遺伝子領域内のCpG部位のメチル化密度を示す。
【
図8】[0033]セストリン3(SESN3)遺伝子領域内のCpG部位のメチル化密度を示す。
【
図9】[0034]HCC患者を非HCC対象から区別するため、肝臓由来DNAの絶対及び分画濃度を用いるためのROC曲線を示す。
【
図10】[0035]本明細書に提供される方法を実施するため、プログラムされるか又はそれ以外では構成され得る、コンピュータ制御システムを示す。
【
図11】[0036]本明細書で開示されるような方法及びシステムを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
[0037] 組織特異的マーカーを用いて、特定の組織に由来するセルフリー核酸分子、例えばセルフリーDNA分子、例えば血漿DNAを定量化するための方法、組成物、及びシステムが本明細書に提供される。これらのマーカーの臨床適用、例えば限定はされないが、がんの診断、監視、及び予後診断、転移性がんの検出、並びに場合によっては臓器移植の評価についても本明細書に提供される。
【0028】
[0038] がん特異的変化に加えて、がんに冒された臓器から循環へ放出されるDNAの一般的増加が生じ得る。例えば、肝臓由来DNAのレベルは、肝がん患者において増加し得る。特定の理論に拘束されることを望まないが、がんに冒された臓器により放出されるDNAのレベル増加は、腫瘍細胞からのDNAの直接的放出又はがんに浸潤された非腫瘍細胞の代謝回転の増加に起因し得る。組織特異的DNAの放出におけるかかる増加はまた、増加した細胞代謝回転の結果として急性拒絶を経験した臓器移植レシピエントにおいて認めることができる。場合によっては、移植臓器内の細胞の、メチル化のデコンボリューションによって判定される血漿DNAへの比例的寄与は、ドナー特異的対立遺伝子の分析に基づいて判定された場合と十分に相関する。
【0029】
[0039] 場合によっては、ゲノムワイドな亜硫酸水素塩配列決定を用いてのメチル化のデコンボリューションは、比較的高いコスト及び長い所用時間が理由で困難であり得る。さらに、場合によっては、メチル化のデコンボリューションにより、各臓器由来のDNAの絶対濃度ではなく、異なる臓器の相対的又は比例的寄与が判定され得る。2以上の臓器由来のDNAが循環中に放出されるようなシナリオでは、特定臓器由来のDNAの絶対濃度の測定は、情報価値がより高い可能性がある。例えば、肝臓に転移している結腸直腸がん(CRC)を有する患者であれば、DNAは、肝臓から循環中に増加量で放出されることになる。しかし、血漿中の肝DNAの画分であれば、結腸に起源を有している腫瘍細胞によって放出されるDNAの増加度がさらにより大きいことから、逆説的な低下を示すかもしれない。したがって、組織特異的メチル化パターンを用いてDNAの絶対量を正確に判定することができる方法の開発は有用であり得る。
【0030】
[0040]I.組織特異的マーカー
[0041] セルフリーDNA分子における起源組織を同定し得る組織特異的マーカーが本明細書に提供される。場合によっては、組織特異的マーカーは、生物のゲノムのポリヌクレオチド配列である。場合によっては、組織特異的マーカーは、マーカーポリヌクレオチド配列内に含まれる1又は複数の分化メチル化部位のメチル化状態に基づいて同定される分化メチル化領域(DMR)を含む。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、1又は複数のCpG部位を含む。場合によっては、1又は複数の分化メチル化部位は、1又は複数の非CpG部位を含む。場合によっては、本明細書で検討されるような組織特異的マーカーは、標的配列と称することができる。
【0031】
[0042] 場合によっては、組織特異的マーカーの分化メチル化部位は、生物の第1の組織内に第1のメチル化状態を有する一方で、生物の異なる第2の組織内に第2のメチル化状態を有する。第1及び第2のメチル化状態が異なり得ることで、第1及び第2の組織は、組織特異的マーカーのメチル化状態に基づいて区別可能である。
【0032】
[0043] 場合によっては、組織特異的マーカーの分化メチル化部位は、生物の第1の組織内に第1のメチル化状態を有する一方で、生物のすべての他の組織内に第2のメチル化状態を有する。第1及び第2のメチル化状態が異なり得ることで、第1の組織は、組織特異的マーカーのメチル化状態に基づいて生物のすべての他の組織と区別可能である。
【0033】
[0044] 場合によっては、組織特異的マーカーは、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50の分化メチル化部位を含む。場合によっては、組織特異的マーカーは、少なくとも5の分化メチル化部位を含む。メチル化ヌクレオチド又はメチル化ヌクレオチド塩基は、ヌクレオチド塩基上でのメチル部分の存在を指し得、ここでメチル部分は、認識された典型的なヌクレオチド塩基中に存在しない。例えば、シトシンは、メチル部分をそのピリミジン環上に有しないが、5-メチルシトシンは、メチル部分をそのピリミジン環の5位に有する。この場合、シトシンはメチル化ヌクレオチドでなく、且つ5-メチルシトシンはメチル化ヌクレオチドである。別の例では、チミンは、メチル部分をそのピリミジン環の5位に有するが、本明細書における目的としては、チミンは、DNAの典型的なヌクレオチド塩基である故、DNA中に存在するとき、メチル化ヌクレオチドと考えられない。DNAにおける典型的なヌクレオシド塩基は、チミン、アデニン、シトシン及びグアニンである。RNAにおける典型的な塩基は、ウラシル、アデニン、シトシン及びグアニンである。それに対し、「メチル化部位」は、メチル化が生じているか、又は生じる可能性を有する場合の標的遺伝子核酸領域内の位置に存在し得る。例えば、CpGを有する位置はメチル化部位であり、そこではシトシンはメチル化されるか否か定かでない。「部位」は、単一部位に対応し得、それは単一の塩基位置又はそれに相関した塩基位置の群、例えばCpG部位であり得る。メチル化部位は、CpG部位、又はメチル化される可能性を有するDNA分子の非CpG部位を指し得る。CpG部位は、シトシンヌクレオチドの後に、塩基の5’から3’方向に沿う直鎖状配列にてグアニンヌクレオチドが続く場合で、インビボで天然に生じる事象又はインビトロでヌクレオチドの化学的メチル化を開始させる事象のいずれかによるメチル化を受けやすい、DNA分子の領域であり得る。非CpG部位は、CpGジヌクレオチド配列を有しないが、やはりインビボで天然に生じる事象又はインビトロでヌクレオチドの化学的メチル化を開始させる事象のいずれかによるメチル化を受けやすい領域であり得る。遺伝子座又は領域は、複数の部位を含む領域に対応し得る。
【0034】
[0045] 組織特異的マーカーのメチル化状態は、マーカー領域内の個別部位におけるメチル化密度、メチル化/非メチル化部位のマーカー内部の隣接領域にわたる分布、2以上の部位を有するマーカー内部の各個別のメチル化部位におけるメチル化のパターン又はレベル、及び非CpGメチル化を含み得る。場合によっては、組織特異的マーカーのメチル化状態は、個別の分化メチル化部位におけるメチル化レベル(又はメチル化密度)を含む。メチル化密度は、所与のメチル化部位における、所与のメチル化部位でメチル化された核酸分子の、かかるメチル化部位を有する目的の核酸分子の総数に対する割合を指し得る。例えば、肝組織内の第1のメチル化部位のメチル化密度は、全肝DNA分子に対する第1の部位でメチル化された肝DNA分子の割合を指し得る。場合によっては、メチル化状態は、個別の分化メチル化部位の中のメチル化/非メチル化状態の干渉性を含む。
【0035】
[0046] 場合によっては、組織特異的マーカーは、第1の組織内で過剰メチル化されるが、第2の組織内で低メチル化されるメチル化部位を含む。例えば、組織特異的マーカーは、肝組織内で過剰メチル化される1又は複数のメチル化部位を含み得、それにより1又は複数のメチル化部位が、肝組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のメチル化密度を有し;対照的に、1又は複数のメチル化部位が、限定はされないが、血液細胞、肺、食道、胃、小腸、結腸、膵臓、膀胱、心臓、及び脳などの他の組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を有し得ることをそれは意味し得る。組織特異的マーカーは、第1の組織内で過剰メチル化されるが、第2の組織内で低メチル化される、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50のメチル化部位を含み得る。場合によっては、組織特異的マーカーは、第1の組織内で過剰メチル化されるが、第2の組織内で低メチル化される、少なくとも5のメチル化部位を含む。
【0036】
[0047] 組織特異的マーカーは、最高300塩基対(bp)、最高250bp、最高225bp、最高200bp、最高190bp、最高185bp、最高180bp、最高175bp、最高170bp、最高169bp、最高168bp、最高167bp、最高166bp、最高165bp、最高164bp、最高163bp、最高162bp、最高161bp、最高160bp、最高150bp、最高140bp、最高120bp、又は最高100bpを含み得る。場合によっては、組織特異的マーカーは、最高166bpを含む。
【0037】
[0048] 場合によっては、本明細書に提供されるような肝特異的マーカーは、肝組織内で過剰メチル化されるが、他の組織内で低メチル化される、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50のメチル化部位を含む。場合によっては、本明細書に提供されるような肝特異的マーカーは、肝組織内で過剰メチル化されるが、他の組織内で低メチル化される、少なくとも5のメチル化部位を含む。肝組織内で過剰メチル化されるメチル化部位の各々は、肝組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のメチル化密度、また限定はされないが、血液、脳、胸腺、膵臓、腎臓などの他の組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を有し得る。場合によっては、肝組織内で過剰メチル化されるメチル化部位の各々は、肝組織内で50%を超えるメチル化密度、また限定はされないが、血液細胞、肺、食道、胃、小腸、結腸、膵臓、膀胱、心臓、及び脳などの他の組織内で20%未満のメチル化密度を有し得る。
【0038】
[0049] 場合によっては、組織特異的マーカーは、第1の組織内で低メチル化されるが、第2の組織内で過剰メチル化されるメチル化部位を含む。場合によっては、組織特異的マーカーは、第1の組織内で低メチル化されるが、他の組織内で過剰メチル化されるメチル化部位を含む。例えば、組織特異的マーカーは、肝組織内で低メチル化される1又は複数のメチル化部位を含み得、それにより1又は複数のメチル化部位が、肝組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を有し;対照的に、1又は複数のメチル化部位が、限定はされないが、血液細胞、肺、食道、胃、小腸、結腸、膵臓、膀胱、心臓、及び脳などの他の組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のメチル化密度を有し得ることをそれは意味し得る。組織特異的マーカーは、第1の組織内で低メチル化されるが、第2の組織内で過剰メチル化される、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50のメチル化部位を含み得る。場合によっては、組織特異的マーカーは、第1の組織内で低メチル化されるが、第2の組織内で過剰メチル化される、少なくとも5のメチル化部位を含む。
【0039】
[0050] 場合によっては、本明細書に提供されるような肝特異的マーカーは、肝組織内で低メチル化されるが、他の組織内で過剰メチル化される、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50のメチル化部位を含む。場合によっては、本明細書に提供されるような肝特異的マーカーは、肝組織内で低メチル化されるが、他の組織内で過剰メチル化される、少なくとも5のメチル化部位を含む。肝組織内で低メチル化されるメチル化部位の各々は、肝組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、又は最高5%のメチル化密度、また限定はされないが、血液、脳、胸腺、膵臓、腎臓などの他の組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%のメチル化密度を有し得る。場合によっては、肝組織内で低メチル化されるメチル化部位の各々は、肝組織内で50%未満のメチル化密度、また限定はされないが、血液細胞、肺、食道、胃、小腸、結腸、膵臓、膀胱、心臓、及び脳などの他の組織内で、80%を超えるメチル化密度を有し得る。
【0040】
[0051] 場合によっては、本明細書に提供されるような結腸特異的マーカーは、結腸組織内で過剰メチル化されるが、他の組織内で低メチル化される、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50のメチル化部位を含む。場合によっては、本明細書に提供されるような結腸特異的マーカーは、結腸組織内で過剰メチル化されるが、他の組織内で低メチル化される、少なくとも5のメチル化部位を含む。結腸組織内で過剰メチル化されるメチル化部位の各々は、結腸組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%のメチル化密度、また限定はされないが、血液、脳、胸腺、膵臓、腎臓などの他の組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、最高5%、又は0%のメチル化密度を有し得る。場合によっては、結腸組織内で過剰メチル化されるメチル化部位の各々は、結腸組織内で50%を超えるメチル化密度、また限定はされないが、血液細胞、肺、食道、胃、小腸、肝臓、膵臓、膀胱、心臓、及び脳などの他の組織内で、20%未満のメチル化密度を有し得る。
【0041】
[0052] 場合によっては、本明細書に提供されるような結腸特異的マーカーは、結腸組織内で低メチル化されるが、他の組織内で過剰メチル化される、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも50のメチル化部位を含む。場合によっては、本明細書に提供されるような結腸特異的マーカーは、結腸組織内で低メチル化されるが、他の組織内で過剰メチル化される、少なくとも5のメチル化部位を含む。結腸組織内で低メチル化されるメチル化部位の各々は、結腸組織内で、最高50%、最高40%、最高30%、最高20%、最高10%、又は最高5%のメチル化密度、また限定はされないが、血液、脳、胸腺、膵臓、腎臓などの他の組織内で、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%のメチル化密度を有し得る。場合によっては、結腸組織内で低メチル化されるメチル化部位の各々は、結腸組織内で50%未満のメチル化密度、また限定はされないが、血液細胞、肺、食道、胃、小腸、肝臓、膵臓、膀胱、心臓、及び脳などの他の組織内で、80%を超えるメチル化密度を有し得る。
【0042】
[0053] さらに、肝臓由来DNA分子を同定するための肝特異的マーカーが本明細書に提供される。肝特異的マーカーは、染色体8上のタンパク質チロシンキナーゼ2β(PTK2B)遺伝子のエクソン領域内に位置し得る。肝特異的DMR中の8つのCpG部位は、肝臓内で過剰メチル化されるが、他の組織及び血液細胞内で低メチル化され得る。本明細書に提供されるような肝特異的マーカーは、配列番号1に対して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。本明細書に提供されるような肝特異的マーカーは、配列番号1を含み得る。
【0043】
[0054] さらに、結腸由来DNA分子を同定するための結腸特異的マーカーが本明細書に提供される。結腸特異的マーカーは、染色体11上のセストリン3(SESN3)遺伝子のエクソン領域内に位置し得る。結腸特異的DMR中に位置する6つすべてのCpG部位は、結腸内で過剰メチル化されるが、他の組織及び血液細胞内で低メチル化され得る。結腸特異的マーカーは、配列番号8に対して、少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。
【0044】
[0055] 本明細書で用いられるとき、2以上のヌクレオチド又はアミノ酸配列間の用語「同一性」又は「パーセント同一性」は、最適な比較を目的に配列を整列させることにより(例えば、ギャップが第1の配列の配列内に導入され得る)判定され得る。次に、対応する位置のヌクレオチドが比較可能であり、2つの配列間のパーセント同一性は、配列によって共有される同一位置の数の関数(即ち、%同一性=同一位置の数/位置の総数×100)であり得る。例えば、第1の配列内の位置は、第2の配列内の対応する位置と同じヌクレオチドで占有されてもよく、そこで分子はその位置で同一である。その2つの配列間のパーセント同一性は、2つの配列の最適な整列化のために導入される必要がある、ギャップの数、及び各ギャップの長さを考慮した、配列によって共有される同一位置の数の関数であってもよい。場合によっては、比較を目的として整列された配列の長さは、参照配列の長さの、少なくとも約30%、約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、又は95%である。BLAST(登録商標)検索により、2つの配列間の相同性を判定することができる。相同性は、2つの配列の全長間又は2つの配列の全長の部分間であり得る。2つの配列は、遺伝子、ヌクレオチド配列、タンパク質配列、ペプチド配列、アミノ酸配列、又はそれらの断片であり得る。2つの配列の実際の比較は、周知の方法により、例えば数学的アルゴリズムを用いて達成され得る。かかる数学的アルゴリズムの非限定例として、Karlin, S. and Altschul, S., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90- 5873-5877 (1993)に記載のものを挙げることができる。かかるアルゴリズムは、Altschul, S. et al., Nucleic Acids Res., 25:3389-3402 (1997)に記載のようなNBLAST及びXBLASTプログラム(version 2.0)に組み込むことができる。BLAST及びGapped BLASTプログラムを利用するとき、各プログラム(例えばNBLAST)の任意の関連パラメータを用いることができる。例えば、配列比較用のパラメータは、スコア=100、ワード長=12で設定可能である、又は変更可能である(例えば、W=5又はW=20)。他の例として、Myers and Miller, CABIOS (1989), ADVANCE, ADAM, BLAT, and FASTAのアルゴリズムが挙げられる。
【0045】
[0056] さらに、組織特異的マーカーを同定する方法が本明細書に提供される。方法は、異なる組織サンプルの中のゲノムにわたるメチル化状態を比較することを含み得る。公的に利用可能なデータベース、例えば、RoadMap Epigenomics Project (Roadmap Epigenomics Consortium et al. Nature 2015;518:317-30)及びBLUEPRINTプロジェクト(Martens et al. Haematologica 2013;98:1487-9)からのデータベースは、有望な組織特異的マーカーをスクリーニングするためのバイオインフォマティクス分析のために利用可能である。場合によっては、実験的検証が望ましい。例えば、異なる組織の中のメチル化状態を検証するため、メチル化認識配列決定、例えば亜硫酸水素塩配列決定が実施可能である。場合によっては、比較的より標的指向的な検証のため、メチル化特異的増幅を用いることもできる。
【0046】
[0057]II.組織由来のセルフリーDNA分子を分析する方法
[0058] 生物の生体サンプルを分析する方法が本明細書に提供される。本明細書に提供されるような方法により、生物の組織からのセルフリー核酸分子、例えばセルフリーDNA分子の絶対量を判定することができる。方法は、セルフリーDNA分子が第1のメチル化状態を有する第1の組織特異的マーカーを含むとき、生体サンプルからのセルフリーDNA分子を生物の第1の組織からのセルフリーDNA分子として同定することを含み得る。場合によっては、第1の組織特異的マーカーは、1又は複数の分化メチル化部位を有する所定の配列を含む。場合によっては、第1の組織特異的マーカーは、第1の組織内に第1のメチル化状態、及び生物の他の組織内に第2のメチル化状態を有し得、且つ第1のメチル化状態と第2のメチル化状態とは異なり得る。
【0047】
[0059] 本明細書に提供される通り、方法は、セルフリーDNA分子のメチル化状態を評価することを含み得る。場合によっては、方法は、増幅前に、非メチル化シトシン残基のウラシルへの亜硫酸水素塩変換をさらに含み得る。場合によっては、方法は、任意の他の方法によるメチル化又は非メチル化シトシン残基のいずれかの変換を含み得ることから、変換された残基は、後の検出方法、例えばプライマーに基づく増幅により区別可能である。場合によっては、セルフリーDNA分子は、メチル化部位がメチル化又は非メチル化されるとき、1又は複数の特定のメチル化部位でDNA分子を消化するメチル化感受性酵素で消化され得る。それ故、メチル化感受性酵素を用いて、メチル化及び非メチル化DNA分子を区別することができる。本明細書に提供される方法にて使用可能なメチル化感受性酵素の非限定例として、Aat II、Acc II、Aor13H I、Aor51H I、BspT104 I、BssH II、Cfr10 I、Cla I、Cpo I、Eco52 I、Hae II、Hap II、Hha I、Mlu I、Nae I、Not I、Nru I、Nsb I、PmaC I、Psp1406 I、Pvu I、Sac II、Sal I、Sma I、SnaB I、及びそれらの任意の組み合わせを挙げることができる。
【0048】
[0060] 本明細書に提供されるような方法は、生体サンプルからのセルフリーDNA分子中の第1の組織特異的マーカーを第1の組織特異的マーカーのメチル化状態に基づいて増幅することを含み得る。方法は、セルフリーDNA分子における起源組織を、第1の組織特異的マーカーの増幅を検出することにより同定することをさらに含み得る。方法は、生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量を判定することをさらに含み得る。増幅反応は、核酸を1回又は複数回複製するためのプロセスを指し得る。場合によっては、増幅方法として、限定はされないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、自家持続配列決定反応、リガーゼ連鎖反応、cDNA末端の迅速増幅、ポリメラーゼ連鎖反応及びリガーゼ連鎖反応、Qβファージ増幅、鎖置換増幅、又はスプライス重複伸長(splice overlap extension)ポリメラーゼ連鎖反応が挙げられる。場合によっては、核酸の単一分子が、例えばデジタルPCRにより増幅される。
【0049】
[0061] 場合によっては、増幅は、第1の組織特異的マーカーに相補的なメチル化特異的プライマーの使用及び1又は複数のメチル化部位の少なくとも一部へのアニーリングを含む。メチル化特異的プライマーは、メチル化及び非メチル化標的配列を区別し得るプライマーを指し得る。メチル化部位を有する所与の標的配列においては、メチル化特異的プライマーは、メチル化部位の少なくとも一部をカバーするように設計され得る。場合によっては、増幅前に亜硫酸水素塩変換が実施されるとき、メチル化標的配列を検出する場合、所与のメチル化部位に対応するメチル化特異的プライマー上のヌクレオチド残基は、部位の非変換シトシン残基に対して相補的であるように設計され得る一方で、非メチル化標的配列を検出する場合、メチル化特異的プライマー上のヌクレオチド残基は、部位の変換残基(例えばウラシル残基)に対して相補的であるように設計され得る。
【0050】
[0062] 場合によっては、方法は、増幅前に、生体サンプルからのセルフリーDNA分子を他のDNA分子から単離することをさらに含み得る。セルフリーDNA分子を物理的に単離することにより、生体サンプルからのセルフリーDNA分子の「デジタル」アッセイ、例えば限定はされないが、デジタルPCR、例えば液滴デジタルPCRが実施可能である。単離方法は、当業者に公知の任意の方法、例えば限定はされないが、マイクロウェルプレート、キャピラリー、油エマルジョン、及び小型チャンバーのアレイによる単離であり得る。デジタルPCR反応は、当技術分野で公知の任意の技術、例えば、マイクロフルイディクスに基づく(microfluidics-based)、又はエマルジョンに基づく(emulsion-based)、例えばBEAMing (Dressman et al. Proc Natl Acad Sci USA 2003; 100: 8817-8822)を用いて実施可能である。
【0051】
[0063] 場合によっては、第1の組織は肝組織を含み、方法は、上で検討したような肝特異的マーカーの使用を含む。場合によっては、肝特異的マーカー、例えば配列番号1は、肝臓内で過剰メチル化されるが他の組織内で低メチル化される部位を含む。これらの場合、方法は、メチル化肝組織特異的マーカーを検出するためのプライマー(「メチル化アッセイ用プライマー」)を含み得る。例えば、メチル化アッセイ用プライマーは、配列番号2を含むプライマー、配列番号3を含むプライマー、又は双方を含み得る。場合によっては、本明細書に提供されるプライマーは、亜硫酸水素塩変換後の増幅反応に用いられる。代替的に、又は累積的に、方法は、メチル化肝組織特異的マーカーの検出のための、配列番号4を含む検出可能標識プローブの使用を含み得る。任意選択的に、方法は、非メチル化肝組織特異的マーカーを検出するためのプライマー(「非メチル化アッセイ用プライマー」)の使用をさらに含み得る。非メチル化アッセイ用のプライマーは、配列番号5を含むプライマー、配列番号6を含むプライマー、又は双方を含み得る。代替的に、又は累積的に、方法は、非メチル化肝組織特異的マーカーの検出のための配列番号7を含む検出可能標識プローブの使用を含み得る。
【0052】
[0064] プライマー、プローブ、又はオリゴヌクレオチドは、本明細書で互換可能に用いることができ、2以上のポリマー、例えば、ホスホジエステル結合を介して一緒に連結された、2、4、6、8、10、14、18、20、若しくは40のヌクレオチド又は化学修飾ヌクレオチドを指し得る。プライマーは、約20~約30のヌクレオチドを含み得る。プライマーは、少なくとも6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、又は40のヌクレオチドを含み得る。プライマーの構成ヌクレオチドに化学修飾を導入することで、プライマーの特定の特性を修飾する、例えば、その安定性を増強し、ハイブリダイゼーション特異性を増強し、且つ検出可能なシグナルで標識することができる。本明細書に提供される組成物において使用可能な化学修飾は、共有結合的修飾、付着化学、及びヌクレオチド塩基の修飾を含み得る。化学修飾は、リン酸化、ビオチン、コレステリル-TEG、アミノ修飾因子(例えば、C6、C12、又はdT)、アジド、アルキン、チオール修飾因子、フルオロフォア、ダーククエンチャー、及びスペーサーの付加を含み得る。プライマーは、1若しくは複数のホスホロチオエート結合、又は1若しくは複数の修飾塩基、例えば、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン(2-アミノ-dA)、5-ブロモdU、デオキシウリジン、インバーテッドdT、インバーテッドジデオキシ-T、ジデオキシ-C、5-メチルdC、デオキシイノシド(deoxyinoside)、super T(登録商標)、super G(登録商標)、ロックド核酸、5-ニトロインドール、2’-O-メチルRNA塩基、ヒドロキシメチルdC、イソ-dC、イソ-dG、フルオロ塩基(例えば、フルオロC、U、A、G、T)、及び2’-O-メトキシ-エチル塩基(例えば、2-メトキシエトキシA、G、U、C、T)を含み得る。検出可能標識プローブは、当業者に公知の任意の検出可能標識、例えば任意の好適なフルオロフォアを含み得る。PCR反応(例えば、デジタルPCR又はリアルタイムPCR)は、任意の好適な光学的方法、磁気的方法、電子的方法、又は当業者にとって利用可能な任意の他の技術を通じて監視され得る。
【0053】
[0065] 場合によっては、第1の組織は結腸組織を含み、方法は、上で検討したような結腸特異的マーカーの使用を含む。場合によっては、結腸特異的マーカー、例えば配列番号8は、結腸内で過剰メチル化されるが、他の組織内で低メチル化される部位を含む。これらの場合、メチル化アッセイ用のプライマーは、配列番号9を含むプライマー、配列番号10を含むプライマー、又は双方を含み得る。場合によっては、本明細書に提供されるプライマーは、亜硫酸水素塩変換後の増幅反応に用いられる。代替的に、又は累積的に、方法は、メチル化結腸特異的マーカーの検出のための、配列番号11を含む検出可能標識プローブの使用を含み得る。任意選択的に、方法は、非メチル化結腸特異的マーカーを検出するためのプライマー(「非メチル化アッセイ用プライマー」)の使用をさらに含み得る。非メチル化アッセイ用プライマーは、配列番号12を含むプライマー、配列番号13を含むプライマー、又は双方を含み得る。代替的に、又は累積的に、方法は、非メチル化結腸特異的マーカーの検出のための、配列番号14を含む検出可能標識プローブの使用を含み得る。
【0054】
[0066] 本明細書に提供される方法、例えばデジタルPCR技術の使用は、標準物質を必要とせずに標的DNA分子の実際の数の直接判定を可能にし得る。他の技術、例えば特定の配列決定に基づく方法、例えば限定はされないが、亜硫酸水素塩配列決定及びPacBio配列決定プラットフォームを用いる亜硫酸水素塩に基づかないメチル化認識配列決定により、標的組織由来のDNAの他の組織に対する相対又は分画濃度を判定することが可能である。絶対量は、DNA分子の絶対数を指し得る、又は場合によっては、DNA分子の濃度、例えば、数、モル、又は重量/体積、例えば、コピー/mL、モル/L、又はmg/Lも指し得る。本明細書に提供されるような絶対量の分析は、2以上の組織タイプからDNAが増加量で放出されるときのシナリオにおいて有用であり得る。他方で、例えば米国特許出願第14/803,692号に開示された、セルフリー核酸分子の配列決定に基づくメチル化のデコンボリューション分析は、セルフリー核酸の起源組織の分画寄与の形態での読み出し情報を提供し得、例えば、第1の組織は、生体サンプルからのセルフリー核酸のA%に寄与し、また第2の組織は、同じ生体サンプルからのセルフリー核酸のB%に寄与する。
【0055】
[0067] 場合によっては、本明細書に提供される方法、組成物、及びシステムでは、セルフリー核酸のメチル化分析用に、リアルタイムPCR、配列決定及びマイクロアレイのような技術も用いることができる。場合によっては、例えばデジタルPCRアッセイにおいて陽性反応を計数するときの、組織特異的マーカーを内在するセルフリー核酸の絶対数は、いくつかの技術によるメチル化分析から直接的に導出されないことがある。しかし、かかる絶対数は、組織特異的マーカーを内在するセルフリー核酸の濃度(相対又は分画)に基づいて、例えば生体サンプルの所与の体積中のセルフリー核酸の総数又は濃度を考慮することにより、間接的に算出することができる。場合によっては、本明細書に提供される方法において使用可能な配列決定は、鎖終結配列決定、ハイブリダイゼーション配列決定、イルミナ配列決定(例えば、可逆的ターミネーター色素の使用)、イオントレント半導体配列決定、質量分光光度法による配列決定、大規模並列シグネチャー配列決定(MPSS)、マクサム・ギルバート配列決定、ナノポア配列決定、ポロニー配列決定、パイロシークエンシング、ショットガン配列決定、単一分子リアルタイム(SMRT)配列決定、SOLiD配列決定(4つの蛍光標識二塩基プローブを用いるハイブリダイゼーション)、ユニバーサル配列決定、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。本明細書に提供される方法においてセルフリーDNA分子のメチル化状態を分析するため、メチル化部位を標的にするプローブを有するマイクロアレイも使用可能である。
【0056】
[0068] 場合によっては、本明細書に提供される方法は、第2の組織特異的マーカーのメチル化パターンに基づいて第2の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の量を判定することをさらに含み、ここで第1の組織と第2の組織とは異なる。第2の組織は、同じ生物に属し得る。第2の組織はまた、異なる生物、例えば妊婦の中の胎児から得ることができる。
【0057】
[0069]III.がんを診断、監視、予後診断する方法
[0070] がんを診断、監視、予後診断する方法が本明細書に提供される。方法は、上で検討したような第1の組織からのセルフリーDNA分子の絶対量を判定することと、生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量に基づいて、第1の組織内でがんを診断、監視、予後診断することと、を含み得る。
【0058】
[0071] 第1の組織に由来するセルフリーDNA分子の絶対量は、第1の組織の状態と相関し得る。例えば、肝臓由来の血漿DNA分子の量は、腫瘍増殖の結果としての肝組織からのDNA分子の放出増加に起因して増加し得る。それ以外の場合、例えば臓器移植の結果としての細胞代謝回転の増加によっても、移植片を有する組織から放出される血漿DNAの増加がもたらされ得る。
【0059】
[0072] 本明細書に提供される方法は、第1の組織内の腫瘍のサイズを、生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量に基づいて判定することを含み得る。標的セルフリーDNA分子の量と腫瘍サイズとが相関するような所定の比較図は、腫瘍サイズの判定用に用いることができる。腫瘍サイズの検出は、がんの診断、監視、及び予後診断を補助し得る。
【0060】
[0073] 本明細書に提供される方法は、がんが第1の組織に転移しているかを、生物の第1の組織に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の絶対量に基づいて判定することを含み得る。本明細書に提供される方法によって判定された標的DNA分子の絶対量は、標的DNA分子の分画量と比べると、転移を有するがん患者と転移を有しないがん患者との間での望ましい区別を提供し得る。
【0061】
[0074] 本明細書に提供される方法、組成物、及びシステムが適用可能であるがんタイプは、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、子宮頸部がん、結腸直腸がん、食道がん、胃腸がん、造血器悪性腫瘍、頭頸部扁平上皮がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、骨髄腫、鼻腔がん、鼻咽頭がん、口腔がん、中咽頭がん、卵巣がん、前立腺がん、肉腫、胃がん、又は甲状腺がんを含み得る。本明細書に提供される方法による評価対象の転移性組織は、膀胱、骨、脳、乳房、子宮頸部、結腸、食道、胃腸管、血液、頭、首、肝臓、肺、リンパ節、鼻、鼻咽頭、口、中咽頭、卵巣、前立腺、皮膚、胃、又は甲状腺を含み得る。
【0062】
[0075] 当業者であれば容易に理解するであろうが、がん細胞は、正常組織近傍に移動することにより局所的に拡散し得、リンパ節、組織、又は臓器近傍に局所的に拡散し得、また身体の遠隔部分に拡散し得る。初期の第1の組織から第2の組織へのがんの拡散は、転移と称することができ、それ故、かかるがんは転移性がんと称することができる。本明細書に提供される方法、組成物、及びシステムが適用可能であるがん転移の代表的タイプは、表1に列挙される部位にて生じる転移を含み得る。
【0063】
【0064】
[0076] 場合によっては、本明細書に提供されるような方法、組成物、及びシステムは、当業者にとって利用可能な他の技術と組み合わせられるときに、がんの診断、監視、及び予後診断に適用され得る。場合によっては、例えば核酸、例えば、DNA、RNAにおける他の分子マーカー、例えば、コピー数異常(CNA)、一塩基多型(SNP)、遺伝子(突然)変異、生殖系列(突然)変異、体細胞(突然)変異、病原体、例えばウイルス、例えばエプスタイン・バーウイルス(Epstein-Barr virus)に由来する核酸、セルフリー核酸のサイズ、及びセルフリー核酸の断片化パターンの検出もまた、本明細書に提供されるような方法、組成物、及びシステムと組み合わせて適用され得る。技術の組み合わせは、限定はされないが、がんが存在するか、がんのステージ、腫瘍のサイズ、染色体領域のどのくらい多くの欠失若しくは増幅が関与するか(例えば、二重又は三重)、及び/又はがんの重症度の他の尺度を含む、がんのレベルの検出容易化に役立ち得る。がんのレベルは、いくつかの他の特性であり得る。レベルは0であり得る。がんのレベルはまた、欠失又は増幅に関連した前悪性又は前がん状態を含み得る。
【0065】
[0077] 場合によっては、コピー数異常(CNA)の検出、例えば米国特許第8,741,811号に開示された方法は、本明細書に提供される方法と併用され得る。上で検討したように、場合によっては、第1の組織からのセルフリー核酸の絶対量に基づき、本明細書に提供される方法により、がんが第1の組織に転移しているかを判定することができる。他方で、CNAの検出は、第1の組織内での転移性がん細胞の起源を同定することを補助し得る。場合によっては、セルフリー核酸の断片化パターンの分析、例えば米国特許出願第15/218,497号に開示された方法は、本明細書に提供される方法、組成物、及びシステムと併用され得る。場合によっては、対象となる方法、組成物、及びシステムは、対象におけるがんを検出、監視、又は予後診断するため、任意の利用可能な手法と併用され得る。上記の検出方法に加えて、腫瘍バイオマーカー検査(例えば、肝がんに対するαフェトプロテイン(AFP)、非小細胞肺がんに対するALK遺伝子、前立腺がんに対する前立腺特異抗原(PSA)、及び甲状腺がんに対するサイログロブリン)、身体検査、X線撮影イメージング(例えば、コンピュータ断層撮影スキャン、磁気共鳴画像法、陽電子放射断層撮影(PET))、超音波検査、内視鏡検査、生検、又は細胞診検査のような任意の適切な試験も実施することができる。
【0066】
[0078] 場合によっては、対象となる方法、組成物、又はシステムは、対象におけるがんを定期的、半定期的、又は非定期的スケジュールで監視するため、用いることができる。例えば、対象は、対象となる方法、組成物、又はシステムを毎週、毎月、年四回、又は毎年ベースで利用するがんモニタリング検査を受けることができる。場合によっては、対象は、かかる検査を、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又は12か月超ごとに受けることができる。場合によっては、2つの連続検査間の間隔は、直近の検査の結果に基づき、例えば場合によっては医師の指示又は医学的助言に従い、決定することができる。
【0067】
[0079]IV.臓器移植を評価する方法
[0080] 臓器移植を、移植組織に由来するセルフリーDNA分子の絶対量の判定に基づいて評価する方法が本明細書に提供される。本明細書に記載のような移植組織は、目的の対象の組織と見なされる。
【0068】
[0081] 本明細書に提供されるような方法では、移植組織に由来するセルフリーDNA分子の量と移植組織における細胞代謝回転速度との間の相関を利用することができる。それにより、細胞代謝回転速度は、臓器移植を評価するための判断基準として用いることができる。
【0069】
[0082]V.組織由来のセルフリーDNA分子を分析するための組成物
[0083] さらに、特定組織、例えば、骨、肝臓、肺、脳、腹膜、副腎、皮膚、筋肉、腟、結腸、膀胱、乳房、腎臓、メラノーマ、卵巣、膵臓、前立腺、直腸、胃、甲状腺、又は子宮からのセルフリーDNA分子を分析するための組成物が本明細書に提供される。
【0070】
[0084] 生物の肝臓に由来する生体サンプルからのセルフリーDNA分子の量を判定するための組成物は、肝特異的マーカーのメチル化状態に基づいた肝特異的マーカーの増幅のためのプライマー対を含み得る。肝特異的マーカーは、配列番号1に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。場合によっては、プライマー対は、配列番号2を含むプライマー、及び配列番号3を含むプライマーを含む。場合によっては、組成物は、肝特異的マーカーの検出のための配列番号4を含む検出可能標識プローブをさらに含む。場合によっては、組成物は、配列番号5を含むプライマー及び配列番号6を含むプライマーをさらに含む。場合によっては、組成物は、肝特異的マーカーの検出のための配列番号7を含む検出可能標識プローブをさらに含む。
【0071】
[0085] 本明細書に提供される組成物は、結腸特異的マーカーのメチル化状態に基づいた肝特異的マーカーの増幅のためのプライマー対を含み得る。結腸特異的マーカーは、配列番号8に対して、少なくとも60%、70%、80%、90%、95%、98%、又は99%の同一性を有するポリヌクレオチド配列を含み得る。場合によっては、プライマー対は、配列番号9を含むプライマー、及び配列番号10を含むプライマーを含む。場合によっては、組成物は、結腸特異的マーカーの検出のための配列番号11を含む検出可能標識プローブをさらに含む。場合によっては、組成物は、配列番号12を含むプライマー及び配列番号13を含むプライマーをさらに含む。場合によっては、組成物は、結腸特異的マーカーの検出のための配列番号14を含む検出可能標識プローブをさらに含む。
【0072】
[0086]VI.生体サンプル
[0087] 本明細書に提供される方法において用いられる生体サンプルは、生体又は死亡対象に由来する任意の組織又は材料を含み得る。生体サンプルは、セルフリーサンプルであり得る。生体サンプルは、核酸(例えば、DNA、例えばゲノムDNA若しくはミトコンドリアDNA、又はRNA)又はその断片を含み得る。サンプル中の核酸は、セルフリー核酸であり得る。サンプルは、液体サンプル又は固体サンプル(例えば、細胞又は組織サンプル)であり得る。生体サンプルは、体液、例えば、血液、血漿、血清、尿、膣液、(例えば精巣の)水瘤液、膣洗浄液、胸水、腹水、脳脊髄液、唾液、汗、涙、痰、気管支肺胞洗浄液、乳頭からの排出液、身体の異なる部分(例えば、甲状腺、乳房)からの吸引液などであり得る。便サンプルも使用可能である。様々な実施形態では、セルフリーDNAに対して濃縮されている生体サンプル(例えば、遠心分離プロトコルを通じて得られた血漿サンプル)中のDNAの大部分は、セルフリーであり得る(例えば、DNAの50%超、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%がセルフリーであり得る)。生体サンプルは、組織又は細胞構造を物理的に破壊するように処理され(例えば、遠心分離及び/又は細胞溶解)、それにより細胞内成分が分析のためのサンプルの調製に用いられる酵素、緩衝液、塩、洗剤などをさらに含有し得る溶液に放出され得る。
【0073】
[0088] 本明細書に提供される方法、組成物、及びシステムを用いて、生体サンプル中の核酸分子を分析することができる。核酸分子は、細胞核酸分子、セルフリー核酸分子、又は双方であり得る。本明細書に提供されるような方法によって用いられるセルフリー核酸は、生体サンプル中の細胞外部の核酸分子であり得る。セルフリー核酸分子は、様々な体液、例えば、血液、唾液、精液、及び尿の中に存在し得る。セルフリーDNA分子は、健康状態及び/又は疾患、例えば腫瘍浸潤又は増殖、臓器移植後の免疫拒絶によって引き起こされ得る様々な組織内での細胞死が原因で生成され得る。
【0074】
[0089] 本明細書に提供されるような方法において用いられるセルフリー核酸分子、例えばセルフリーDNAは、血漿、尿、唾液、又は血清の中に存在し得る。セルフリーDNAは、短い断片の形態で天然に生じ得る。セルフリーDNAの断片化は、セルフリーDNA分子が生成又は放出されるとき、高分子量DNA(細胞の核内のDNAなど)が短い断片に切断、破壊、又は消化されるプロセスを指し得る。本明細書に提供される方法、組成物、及びシステムを用いて、細胞核酸分子、場合によっては例えば、患者が白血病、リンパ腫、又は骨髄腫を有するときの、腫瘍組織からの細胞DNA、又は白血球からの細胞DNAを分析することができる。腫瘍組織から取得されるサンプルは、本開示のいくつかの例に従い、アッセイ及び分析の対象となり得る。
【0075】
[0090]VII.対象
[0091] 本明細書に提供される方法、組成物、及びシステムを用いて、対象、例えば生物、例えば宿主生物からのサンプルを分析することができる。対象は、任意のヒト患者、例えばがん患者、がんのリスクがある患者、又はがんの家族歴若しくは個人歴を有する患者であり得る。場合によっては、対象は、がん治療の特定ステージである。場合によっては、対象は、がんを有し得るか、又はがんを有することが疑われ得る。場合によっては、対象ががんを有するかは未知である。
【0076】
[0092] 対象は、がん又は腫瘍の任意のタイプを有し得る。一例では、対象は結腸がん、又は大腸のがんを有し得る。別の例では、対象は結腸直腸がん、又は結腸及び直腸のがんを有し得る。別の例では、対象は肝がん、例えば肝細胞がんを有し得る。がんの非限定例として、限定はされないが、副腎がん、肛門がん、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、血液のがん、骨がん、脳腫瘍、乳がん、気管支がん、心血管系のがん、子宮頸がん、結腸がん、結腸直腸がん、消化器系のがん、内分泌系のがん、子宮内膜がん、食道がん、眼がん、胆嚢がん、胃腸腫瘍、肝細胞がん、腎がん、造血器悪性腫瘍、喉頭がん、白血病、肝がん、肺がん、リンパ腫、メラノーマ、中皮腫、筋肉系のがん、骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄腫、鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経系のがん、リンパ系のがん、口腔がん、中咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵がん、陰茎がん、下垂体腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎盂がん、生殖器系のがん、呼吸器系のがん、肉腫、唾液腺がん、骨格系がん、皮膚がん、小腸がん、胃がん、睾丸がん、咽頭がん、胸腺がん、甲状腺がん、腫瘍、泌尿器系のがん、子宮がん、膣がん、又は外陰部がんを挙げることができる。リンパ腫は、B細胞リンパ腫(例えば、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、小リンパ球性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ヘアリー細胞白血病、又は原発性中枢神経系リンパ腫)又はT細胞リンパ腫(例えば、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、又は末梢性T細胞リンパ腫)を含む、リンパ腫の任意のタイプであり得る。白血病は、急性白血病又は慢性白血病を含む、白血病の任意のタイプであり得る。白血病のタイプは、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性未分化白血病、又は慢性リンパ性白血病を含む。場合によっては、がん患者は、がんの特定タイプを有しない。例えば、場合によっては、患者は、乳がんでないがんを有し得る。
【0077】
[0093] がんの例として、固形腫瘍を引き起こすがん、及び固形腫瘍を引き起こさないがんが挙げられる。さらに、本明細書で言及されるがんのいずれかは、原発性がん(例えば、初めて増殖し始めたその身体部分に因んで名付けられるがん)又は二次性若しくは転移性がん(例えば、身体の別の部分に起源を有しているがん)であり得る。
【0078】
[0094] 本明細書に記載の方法のいずれかによって診断される対象は、任意の年齢であり得、成人、幼児又は小児であり得る。場合によっては、対象は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、若しくは99歳、又はそれらの範囲内(例えば、2~20歳の間、20~40歳の間、又は40~90歳の間)である。有利であり得る患者の特定クラスは、40歳を上回る患者であり得る。有利であり得る患者の別の特定クラスは、小児患者であり得る。さらに、本明細書に記載の方法又は組成物のいずれかによって診断される対象は、男性又は女性であり得る。
【0079】
[0095] 本明細書に開示される方法のいずれかは、非ヒト対象、例えば実験若しくは家畜動物、又は本明細書に開示される生物由来の細胞サンプルに対しても実施可能である。非ヒト対象の非限定例として、イヌ、ヤギ、モルモット、ハムスター、マウス、ブタ、非ヒト霊長類(例えば、ゴリラ、類人猿、オランウータン、キツネザル、又はヒヒ)、ラット、ヒツジ、雌ウシ、又はゼブラフィッシュが挙げられる。
【0080】
[0096] 上で検討したように、対象となる方法、組成物、及びキットは、がん治療の様々なステージの対象に対して用いることができる。対象となる方法、組成物、及びキットを用いての対象の生体サンプル中のセルフリー核酸の分析からの結果は、対象に対する治療計画を導入するため、用いることができる。場合によっては、対象におけるがんを治療するか又は治癒させる薬物療法又は治療法が必要とされ得る。代表的な治療オプションとして、化学療法、放射線療法、腫瘍組織の外科的除去、免疫療法、標的療法、ホルモン療法、及び幹細胞療法を挙げることができる。場合によっては、異なるタイプの治療オプションの選択に関する指針が提供され得る。いくつかの非限定例では、患者は、初期がんの治療、例えば冒された肝葉における腫瘍組織の外科的除去を終了している可能性があり、患者は、肝がん又は転移の再発があるか否かを調べるため、対象となる方法、組成物、又はキットを用いて、日常のモニタリング検査を受けることができる。これらの場合、検査結果を用いて、患者ががんのさらなる治療を要するか否か、他の組織への肝がん又は転移の再発が生じているか、どの治療オプションが適用可能かについての指針を提供することができる。場合によっては、治療の具体的な用量又は投与計画についての指針を提供することができる。例えば、特定の組織由来のセルフリー核酸の量は、患者に投与されるべき薬用量、又は薬剤投与の頻度/間隔(例えば、毎日、毎週、隔週、又は毎月)と相関し得る。場合によっては、最終分析からの結果は、治療オプション及び後続するモニタリング分析を評価及び設計するための基盤として用いることができる。
【0081】
[0097]VIII.コンピュータシステム
[0098] 本明細書で開示される方法のいずれかは、1又は複数のコンピュータシステムにより実施及び/又は制御可能である。いくつかの例では、本明細書で開示される方法の任意のステップは、全体的に、個別に、又は経時的に、1又は複数のコンピュータシステムにより実施及び/又は制御可能である。本明細書で言及されるコンピュータシステムのいずれかは、任意の好適な数のサブシステムを利用することができる。いくつかの実施形態では、コンピュータシステムは、単一のコンピュータ装置を含み、ここでサブシステムは、コンピュータ装置の構成要素であり得る。他の実施形態では、コンピュータシステムは、内部構成要素とともに複数のコンピュータ装置(各々はサブシステムである)を含み得る。コンピュータシステムは、デスクトップ及びラップトップコンピュータ、タブレット、携帯電話及び他のモバイル機器を含み得る。
【0082】
[0099] サブシステムは、システムバスを介して相互接続され得る。追加的なサブシステムは、ディスプレイアダプターに接続されたプリンター、キーボード、記憶装置、及びモニターを含む。周辺機器及び入力/出力(I/O)装置は、I/Oコントローラーに接続されており、入力/出力(I/O)ポート(例えば、USB、FireWire(登録商標))などの当技術分野で公知の任意の数の接続機器によりコンピュータシステムに接続され得る。例えば、I/Oポート又は外部インタフェース(例えば、Ethernet、Wi-Fiなど)は、コンピュータシステムをインターネットなどのワイドエリアネットワーク、マウス入力装置、又はスキャナーに接続するために使用され得る。システムバスを介した相互接続は、中央プロセッサが各サブシステムと通信し、システムメモリー又は記憶装置(例えば、固定ディスク、例えばハードドライブ、又は光ディスク)からの複数の命令の実行及びサブシステム間の情報の交換を制御することを可能にする。システムメモリー及び/又は記憶装置では、コンピュータで読み取り可能な媒体を利用可能である。別のサブシステムは、データ収集装置、例えば、カメラ、マイクロホン、加速度計などである。本明細書で言及されるデータのいずれかは、あるコンポーネントから別のコンポーネントに出力可能であり、またユーザに出力可能である。
【0083】
[00100] コンピュータシステムは、例えば外部インタフェース又は内部インタフェースにより一緒に接続された、複数の同じ構成要素又はサブシステムを含み得る。いくつかの実施形態では、コンピュータシステム、サブシステム、又は装置は、ネットワーク全体にわたり通信することができる。かかる例では、1つのコンピュータをクライアント、及び別のコンピュータをサーバと考えることができ、そこで各々は同じコンピュータシステムの一部であり得る。クライアント及びサーバは各々、複数のシステム、サブシステム、又は構成要素を含み得る。
【0084】
[00101] 本開示は、開示の方法を実行するようにプログラムされたコンピュータ制御システムを提供する。
図10は、本明細書に記載の通り、生物の組織からのセルフリー核酸分子の絶対量を判定するようにプログラムされるか、又はそれ以外では構成されたコンピュータシステム101を示す。コンピュータシステム101は、例えば、生体サンプルからの核酸分子の配列決定を制御すること、本明細書に記載のような配列決定データのバイオインフォマティクス分析の様々なステップを実施すること、データ収集、分析及び結果報告、並びにデータ管理を組み込むことを含む、本開示で提供される方法の様々な態様を実行及び/又は調節することができる。コンピュータシステム101は、ユーザの電子機器又はその電子機器に対して遠隔に位置するコンピュータシステムであり得る。電子機器は、携帯電子機器であり得る。
【0085】
[00102] コンピュータシステム101は、シングルコア若しくはマルチコアプロセッサ、又は並列処理のための複数のプロセッサであり得る中央処理装置(CPU、本明細書では「プロセッサ」及び「コンピュータプロセッサ」とも称される)105を含む。コンピュータシステム101はまた、メモリー又はメモリー位置110(例えば、ランダムアクセスメモリー、リードオンリーメモリー、フラッシュメモリー)、電子記憶ユニット115(例えば、ハードディスク)、1又は複数の他のシステムと通信するための通信インタフェース120(例えば、ネットワークアダプター)、及び周辺装置125、例えば、キャッシュ、他のメモリー、データストレージ及び/又は電子ディスプレイアダプターを含む。メモリー110、記憶ユニット115、インタフェース120及び周辺装置125は、通信バス(実線)、例えばマザーボードを介して、CPU105と通信する。記憶ユニット115は、データを格納するためのデータ記憶ユニット(又はデータレポジトリ)であり得る。コンピュータシステム101は、通信インタフェース120の補助により、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)130に動作可能に接続され得る。ネットワーク130は、インターネット、インターネット及び/若しくはエクストラネット、又はインターネットと通信するイントラネット及び/若しくはエクストラネットであり得る。ネットワーク130は、場合によっては、情報通信及び/又はデータネットワークである。ネットワーク130は、分散コンピューティング、例えばクラウドコンピューティングを可能にし得る、1又は複数のコンピュータサーバを含み得る。ネットワーク130は、場合によってはコンピュータシステム101の補助により、コンピュータシステム101に接続されるデバイスがクライアント又はサーバとして振る舞うことを可能にし得る、ピアトゥピアネットワークを実行することができる。
【0086】
[00103] CPU105は、プログラム又はソフトウェアに具現化可能である、一連の機械で読み取り可能な命令を実行可能である。命令は、メモリー位置、例えばメモリー110にて記憶可能である。命令は、CPU105に導くことができ、その後、CPU105が本開示の方法を実行するようにプログラムするか又はそれ以外では構成することができる。CPU105によって実施される演算の例として、フェッチ、デコード、実行、及びライトバックを挙げることができる。
【0087】
[00104] CPU105は、回路、例えば集積回路の一部であり得る。システム101の1又は複数の他の構成要素は、回路内に含めることができる。場合によっては、回路は特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0088】
[00105] 記憶ユニット115は、ファイル、例えば、ドライバー、ライブラリー及び保存されたプログラムを記憶することができる。記憶ユニット115は、ユーザデータ、例えばユーザの嗜好及びユーザプログラムを記憶することができる。コンピュータシステム101は、場合によっては、コンピュータシステム101に対して外部である、例えば、イントラネット又はインターネットを介してコンピュータシステム101と通信する遠隔サーバ上に位置する、1又は複数の追加的データの記憶ユニットを含み得る。
【0089】
[00106] コンピュータシステム101は、ネットワーク130を介して1又は複数の遠隔コンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム101は、ユーザの遠隔コンピュータシステム(例えば、コンピュータシステム101から送られたサンプル分析の結果を受信し、表示するアプリケーションがインストールされたスマートフォン)と通信することができる。遠隔コンピュータシステムの例として、パーソナルコンピュータ(例えば、ポータブルPC)、スレート又はタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android搭載機器、Blackberry(登録商標))、又はパーソナルデジタルアシスタントが挙げられる。ユーザは、ネットワーク130を介してコンピュータシステム101にアクセスすることができる。
【0090】
[00107] 本明細書に記載のような方法は、コンピュータシステム101の電子記憶位置、例えばメモリー110又は電子記憶ユニット115に記憶された機械(例えば、コンピュータプロセッサ)で実行可能なコードを通じて実行可能である。機械で実行可能又は機械で読み取り可能なコードは、ソフトウェアの形態で提供することができる。使用中、コードはプロセッサ105により実行可能である。場合によっては、プロセッサ105による即時アクセスのため、コードは記憶ユニット115から検索し、メモリー110に記憶することができる。状況によっては、電子記憶ユニット115は除外することができ、機械で実行可能な命令はメモリー110に記憶される。
【0091】
[00108] コードは、コードを実行するのに適したプロセッサを有する機械での使用を意図して、プリコンパイル及び構成することができるか、又はランタイム中にコンパイルすることができる。コードは、コードをプリコンパイル又はアズコンパイルの方法で実行することができるように選択可能なプログラミング言語で供することができる。
【0092】
[00109] 本明細書に提供されるシステム及び方法の態様、例えばコンピュータシステム101は、プログラミングに具現化することができる。技術の様々な態様は、典型的には、あるタイプの機械で読み取り可能な媒体で運用又は具現化される、機械(又はプロセッサ)で実行可能なコード及び/又は関連データの形態での「生産物」又は「製品」と考えることができる。機械で実行可能なコードは、電子記憶ユニット、例えばメモリー(例えば、リードオンリーメモリー、ランダムアクセスメモリー、フラッシュメモリー)又はハードディスクで記憶することができる。「記憶」型媒体は、ソフトウェアプログラミングにおいて随時の非一過性記憶装置を提供することができる、コンピュータ、プロセッサなど、又はそれらの関連モジュールの有形メモリー、例えば、様々な半導体メモリー、テープドライブ、ディスクドライブなどの一部又は全部を含み得る。ソフトウェアの全部又は一部は、時としてインターネット又は様々な他の情報通信ネットワークを通じて通信可能である。かかる通信は、例えば、あるコンピュータ又はプロセッサから別のコンピュータ又はプロセッサへの、例えば管理サーバ又はホストコンピュータからアプリケーションサーバのコンピュータプラットフォームへのソフトウェアのローディングを可能にし得る。したがって、ソフトウェアエレメントを有し得る媒体の別のタイプは、例えば、有線及び光の陸上ネットワークを通じて、また様々なエアリンクにわたり、ローカルデバイス間の物理インタフェースにわたって用いられる、光波、電波及び電磁波を含む。かかる波を運ぶ物理的エレメント、例えば、有線又は無線リンク、光リンクなどは、ソフトウェアを有する媒体と考えることもできる。本明細書で用いられるとき、コンピュータ又は機械で「読み取り可能な媒体」などの用語は、非一過性の有形「記憶」媒体に限定しない限り、実行用プロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0093】
[00110] それ故、機械で読み取り可能な媒体、例えばコンピュータで実行可能なコードは、限定はされないが、有形記憶媒体、搬送波媒体又は物理的伝送媒体を含む、多数の形態をとることができる。不揮発性記憶媒体は、例えば図示されるデータベースなどを実行するのに使用可能である、例えば光又は磁気ディスク、例えば任意のコンピュータ内の記憶装置のいずれかなどを含む。揮発性記憶媒体は、ダイナミックメモリー、例えばかかるコンピュータプラットフォームのメインメモリーを含む。有形伝送媒体は、コンピュータシステム内部のバスを含むワイヤーを含む、同軸ケーブル;銅線及び光ファイバーを含む。搬送波伝送媒体は、電気若しくは電磁気シグナル、又は音波若しくは光波、例えば高周波(RF)及び赤外(IR)データ通信中に発生するものの形態をとることができる。したがって、コンピュータで読み取り可能な媒体の一般的形態は、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVD若しくはDVD-ROM、任意の他の光媒体、パンチカード紙テープ、穴のパターンを有する任意の他の物理的記憶媒体、RAM、ROM、PROM及びEPROM、FLASH(登録商標)-EPROM、任意の他のメモリーチップ若しくはカートリッジ、搬送波輸送データ若しくは命令、かかる搬送波を輸送するケーブル若しくはリンク、又はコンピュータがプログラミングコード及び/又はデータを読み取ることができる任意の他の媒体を含む。コンピュータで読み取り可能な媒体のこれら形態の多くは、実行用プロセッサに1又は複数の命令の1又は複数の配列を輸送することに関与し得る。
【0094】
[00111] コンピュータシステム101は、例えば、限定はされないが、異なる組織由来のセルフリー核酸の相対量及び/又は絶対量、特定組織由来のセルフリー核酸の対照量又は参照量、検出量と参照量との間の比較、及びがん転移の存在又は不在の読み取りのグラフィック表示を含む、サンプル分析の結果を提供するための、ユーザインターフェース(UI)140を含む電子ディスプレイ135を含むことができる、又はそれと通信することができる。UIの例として、限定はされないが、グラフィカルユーザインターフェース(GUI)及びウェブに基づくユーザインターフェースが挙げられる。
【0095】
[00112] 本開示の方法及びシステムは、1又は複数のアルゴリズムを通じて実行することができる。アルゴリズムは、中央処理装置105による実行時、ソフトウェアを通じて実行することができる。アルゴリズムは、例えば、サンプル由来の核酸分子の配列決定、配列決定データの直接的収集、配列決定データの分析、又は配列決定データの分析に基づく病理学の分類の判定を制御することができる。
【0096】
[00113] 場合によっては、
図11に示す通り、サンプル202は、対象201、例えばヒト対象から得ることができる。サンプル202には、アッセイを実施することなど、本明細書に記載のような1又は複数の方法を施すことができる。場合によっては、アッセイは、ハイブリダイゼーション、増幅、配列決定、標識、塩基のエピジェネティック修飾、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。方法からの1又は複数の結果は、プロセッサ204に入力され得る。サンプル同定、対象同定、サンプルタイプ、参照、又は他の情報などの1又は複数の入力パラメータは、プロセッサ204に入力され得る。アッセイからの1又は複数の測定基準がプロセッサ204に入力できることから、プロセッサは、結果、例えば、病理学(例えば診断)の分類又は推奨される治療を生成し得る。プロセッサは、結果、入力パラメータ、測定基準、参照、又はそれらの任意の組み合わせを、ディスプレイ205、例えばビジュアルディスプレイ又はグラフィカルユーザインターフェースに送ることができる。プロセッサ204は、(i)結果、入力パラメータ、測定基準、又はそれらの任意の組み合わせをサーバ207に送ることが可能である、(ii)サーバ207から結果、入力パラメータ、測定基準、又はそれらの任意の組み合わせを受けることが可能である、(iii)又はそれらの組み合わせが可能である。
【0097】
[00114] 本開示の態様は、ハードウェア(例えば、アプリケーションに特異的な集積回路又はフィールドプログラマブルゲートアレイ)を用いて、及び/又はモジュラーな又は統合された様式で一般にプログラマブルなプロセッサでのコンピュータソフトウェアを用いて、制御ロジックの形態で実行され得る。本明細書で用いられるとき、プロセッサは、シングルコアプロセッサ、同じ統合チップ上のマルチコアプロセッサ、又はシングル回路ボード若しくはネットワークボード上の複数のプロセッシングユニットを含む。本明細書に提供される開示及び教示に基づき、当業者は、ハードウェア及びハードウェアとソフトウェアとの組み合わせを用いて本明細書に記載の実施形態を実施するための他の様式及び/又は方法を認識し、理解するであろう。
【0098】
[00115] 本願中に記載のソフトウェア構成要素又は機能のいずれかは、任意の好適なコンピュータ言語、例えば、Java、C、C++、C#、Objective-C、Swift、又はスクリプト言語、例えばPerl若しくはPythonなどを用い、例えば従来技術又はオブジェクト指向技術を用いる、プロセッサによって実行されるべきソフトウェアコードとして実行することができる。ソフトウェアコードは、記憶及び/又は伝送のためのコンピュータで読み取り可能な媒体上で命令又はコマンド一式として記憶され得る。好適な非一過性のコンピュータで読み取り可能な媒体は、ランダムアクセスメモリー(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、ハードドライブ若しくはフロッピーディスクなどの磁気媒体、又はコンパクトディスク(CD)若しくはDVD(デジタル多用途ディスク)などの光媒体、フラッシュメモリーなどを含み得る。コンピュータで読み取り可能な媒体は、かかる記憶又は伝送デバイスの任意の組み合わせであり得る。
【0099】
[00116] かかるプログラムはまた、インターネットを含む種々のプロトコルに適合する、有線、光、及び/又は無線ネットワークを介した伝送に適したキャリアシグナルを用いて、コード化され、伝送され得る。そのようなものとして、コンピュータで読み取り可能な媒体は、かかるプログラムでコード化されたデータシグナルを用いて作成可能である。プログラムコードでコード化されたコンピュータで読み取り可能な媒体は、互換性のある装置とともにパッケージされ得る、又は(例えばインターネットダウンロードを介して)他のデバイスとは別々に提供され得る。任意のかかるコンピュータで読み取り可能な媒体は、単一のコンピュータ製品に外付け又は内蔵され得(例えば、ハードドライブ、CD、又はコンピュータシステム全体)、システム又はネットワーク内の異なるコンピュータ製品に外付け又は内蔵され得る。コンピュータシステムは、本明細書中に言及される結果のいずれかをユーザに提供するためのモニター、プリンター、又は他の好適なディスプレイを含み得る。
【0100】
[00117] 本明細書に記載の方法のいずれかは、ステップを実施するように構成可能である、1又は複数のプロセッサを含むコンピュータシステムで全体的又は部分的に実施することができる。したがって、実施形態は、各ステップ又は各ステップ群を実施する異なる構成要素を有する、本明細書に記載の方法のいずれかのステップを実施するように構成されたコンピュータシステムを対象とし得る。本明細書の方法のステップは、採番ステップとして提示されるが、同時に又は異なる順序で実施され得る。加えて、これらステップの部分は、他の方法からの他のステップの部分と併用することができる。さらに、ステップのすべて又は部分は、任意選択的であり得る。加えて、方法のいずれかのステップのいずれかは、これらのステップを実施するためのモジュール、ユニット、回路、又は他の手法を用いて実施され得る。
【実施例】
【0101】
実施例
[00118] 以下の実施例は、記述された実施形態を本開示の範囲を限定せずにさらに例示する。
【0102】
[00119]実施例1.材料及び方法
[00120] 本実施例は、実施例2~5において利用されるいくつかの方法について記述する。
【0103】
[00121]対象
[00122] 以前に肝移植を受けた患者を、Hong Kongのthe Department of Surgery of the Prince of Wales Hospitalから肝移植クリニックへの彼らの訪問中にリクルートした。慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染及び硬変を有する患者は、Hong Kongのthe Department of Medicine and Therapeutics of the Prince of Wales Hospitalからリクルートした。肝細胞がん(HCC)及びCRCを有する患者は、Hong Kongのthe Department of Surgery and the Department of Clinical Oncology of the Prince of Wales Hospitalからリクルートした。リクルート対象の人口統計を表2に示す。すべてのリクルート対象が署名されたコンセントを提出した。試験は、Joint Hospital Authority New Territories East Cluster - The Chinese University of Hong Kong Clinical Research Ethics Committeeによって認可された。
【0104】
【0105】
[00123]サンプルの調製
[00124] 各対象について、末梢血10mLをEDTA含有チューブに収集した。血漿及びバフィーコートの分離のため、血液サンプルを採血後6時間以内に処理した。QIAamp DSP DNA Mini Kit (Qiagen)を用いて、製造業者のプロトコルに従い、DNAを血漿から抽出した。血漿2~4mLから抽出されたDNAに対し、Epitect Plus Bisulfite Kit (Qiagen)を用いて、亜硫酸水素塩処理を2回実施した。亜硫酸水素塩変換DNAを水50μLに溶出させ、下流分析に備えた。
【0106】
[00125]肝特異的及び結腸特異的メチル化マーカーの同定
[00126] 組織特異的メチル化マーカーを探索するため、目的の組織(即ち、肝臓又は結腸)のメチル化特性を、他の血液細胞及び組織の場合と比較した。異なる細胞型のメチル化特性を、肺、食道、小腸、結腸、膵臓、膀胱、心臓、及び肝臓についてのRoadMap Epigenomics Projectのデータベース、並びに赤芽球、好中球、Bリンパ球及びTリンパ球についてのBLUEPRINTプロジェクトのデータベースから検索した。
【0107】
[00127] メチル化マーカーについて、以下の判断基準を確立した。
[00128] 1.CpG部位は、CpG部位のメチル化密度が標的組織内で>50%、且つ他の血液細胞及び組織内で<20%であった場合、標的組織(即ち、肝臓又は結腸)内で過剰メチル化されたものと定義した。
[00129] 2.少なくとも5つの過剰メチル化CpG部位の区間は、分化メチル化領域(DMR)内に存在することになり、後者のシグナル対ノイズ比及びメチル化マーカーの分析特異性が改善された。
[00130] 3.循環DNA分子の大部分が短い断片であり、ピークサイズが166bpであることから、DMRは166bpよりも短い必要がある。
【0108】
[00131]肝臓及び結腸におけるDMR
[00132] 上記判断基準を用いて、1つの肝特異的マーカーと1つの結腸特異的マーカーとを同定した。肝特異的DMRは、染色体8上のタンパク質チロシンキナーゼ2β(PTK2B)遺伝子のエクソン領域内に位置した。肝特異的DMR内の8つのCpG部位は、肝臓内で過剰メチル化されたが、他の組織及び血液細胞内で低メチル化された(
図7)。PTK2B遺伝子は染色体8上に位置し、CpG部位のゲノム座標を
図7中のX軸上に示す。DMR(2つの垂直な点線間の領域)内に位置する8つすべてのCpG部位は、肝臓においては他の組織と比べて過剰メチル化される。黄色で強調された領域は、デジタルPCRアッセイの蛍光プローブ内に3つのCpG部位を有する(表3を参照)。DMR内の強調された領域の各側面上の他のCpG部位は、デジタルPCRアッセイのプライマーによってカバーされた。結腸特異的DMRは、染色体11上のセストリン3(SESN3)遺伝子のエクソン領域内に存在した。結腸特異的DMR内の6つすべてのCpG部位は、結腸組織内で過剰メチル化された(
図8)が、他の組織内で低メチル化された。SESN3は染色体11上に位置し、CpG部位のゲノム座標を
図8中のX軸上に示す。DMR(2つの垂直な点線間の領域)内に位置する6つすべてのCpG部位は、結腸においては他の組織と比べて過剰メチル化される。黄色で強調された領域内に位置する3つのCpG部位は、結腸特異的メチル化アッセイの蛍光プローブによってカバーされた(表3を参照)。DMR内の強調された領域の各側面上の他のCpG部位は、デジタルPCRアッセイのプライマーによってカバーされた。例示を目的として、肝臓、膀胱、食道、心臓、肺、膵臓、及び小腸についての
図7及び8中の個別結果は示さず、それらの平均値を「他の組織」によって表す。
【0109】
[00133]液滴デジタルPCRの設計及び性能
[00134] 肝特異的及び結腸特異的メチル化マーカー各々におけるメチル化及び非メチル化DNA分子を定量するため、2つの液滴デジタルPCRアッセイを開発した。アッセイ用のプライマー及びプローブの配列を表3に列挙する(プライマー及びプローブにおけるヌクレオチド下線部は、CpG部位で差次的にメチル化されたシトシンであった)。2つの液滴デジタルPCRアッセイでは、FAM及びVICで標識されたプローブ各々を用いて、(標的組織からの)メチル化及び(非標的組織からの)非メチル化を定量することができる。肝特異的マーカーは、PTK2B遺伝子マーカー部位(chr8:27,183,116-27,183,176)であり、結腸特異的マーカーは、SESN3遺伝子マーカー部位(chr11:94,965,508-94,965,567)であった。
【0110】
[00135] 各サンプルにおいて、デジタルPCR分析を二通りに実行した。亜硫酸水素塩変換済みDNA8μL、最終濃度450nMのフォワードプライマー及びリバースプライマーの各々、250nMの非メチル化特異的プローブ、及び350nM(肝臓アッセイ)又は250nM(結腸アッセイ)のメチル化特異的プローブを含有する全体積20μLの反応混合物を、結腸アッセイ用に調製した。反応混合物に対し、PCR反応前、BioRad QX200 ddPCR液滴発生装置を用いて液滴生成を施した。普遍的にメチル化されたDNA(EMD Millipore製のCpGenome Human Methylated DNA)及び普遍的に非メチル化されたDNA(Qiagen製のEpiTect Unmethylated Human Control DNA)を、陽性及び陰性対照として各プレート上で実行させた。熱的特性は、95℃で10分間、次いで45サイクルの94℃で15秒間、及び60℃(肝臓アッセイ)又は56℃(結腸アッセイ)で1分間、そして98℃で10分間の最終インキュベーションであった。PCR後、各サンプルからの液滴をQX200液滴リーダーにより分析し、QuantaSoft (version 1.7)ソフトウェアを用いて結果を解釈した。陽性蛍光シグナルにおけるカットオフ値は、対照を参照して決定した。各サンプル中のメチル化及び非メチル化DNA配列の数は、二連ウェルからの組み合わせ数、その後のポアソン補正を用いて計算した。血漿中のメチル化又は非メチル化DNA配列の濃度の計算は、次の通りである。
【数1】
(式中、Crは、血漿中の標的分子(即ち、メチル化又は非メチル化DNA配列)の濃度を表し、Pは、標的分子(メチル化又は非メチル化DNA配列のいずれか)に対する増幅シグナルを有する液滴の数を表し、Rは、(増幅シグナルの存在下及び不在下で)分析された全液滴の数を表し、V
dは、液滴の平均体積(即ち、本実施例において0.9×10
-3μL)を表し、V
eは、実験に用いられた血漿の体積(即ち、本実施例において320μL)を表す。)
【0111】
【0112】
[00136]サンプルの異なるタイプ由来のDNAの分析
[00137] 組織の10タイプ(例えば、肝臓、肺、食道、胃、小腸、結腸、膵臓、膀胱、心臓、及び脳)のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルを、Hong Kongのthe Department of Anatomical and Cellular Pathology of the Prince of Wales Hospitalから回収した。これらの組織は、組織学的検査時、正常であることが確認された。バフィーコートサンプルを健常対象から収集した。QIAamp DNA Mini Kit (Qiagen)を用いて、FFPE組織からDNAを抽出した。バフィーコート由来のDNAは、QIAamp DNA Blood Mini Kit (Qiagen)を用いて抽出した。1μgの細胞DNAを用いて、亜硫酸水素塩変換を実施した。変換したDNAを水20μLに溶出させ、次に50倍に希釈し、下流分析に備えた。
【0113】
[00138]肝移植レシピエントの血漿中のドナー由来DNAの測定
[00139] Illumina iScanシステムを用いて、ドナーの肝組織及びレシピエントのバフィーコートから抽出したDNAを分析し、ドナー及びレシピエントの遺伝子型情報を決定した。各レシピエントにおける血漿4mLから抽出したDNAを、配列決定ライブラリー調製用に用いた。血漿DNA配列決定ライブラリーは、KAPA Library Preparation Kit (KAPA Biosystems)を用いて、製造業者の使用説明書に従って調製した。次に、Illumina HiSeq 2500プラットフォーム(75×2サイクル)を用いて、インデックスライブラリーを多重化し、配列決定した。各サンプルに対して、少なくとも2000万の対形成末端リードを得た。Short Oligonucleotide Alignment Program 2 (SOAP2)を用いて、対形成末端リードを非リピートマスクヒト参照ゲノムに整列した(GRCh 37/hg 19)。正確な配向性で同じ染色体に整列された末端とヒトゲノム中で単一位置に整列された末端の双方を有する対形成末端リードのみを含めた。挿入サイズ≦600bpに及ぶ対形成末端リードを分析用に回収した。2以上のリード対が同じゲノム位置にマッピングされた場合(即ち、二重リード)、後の分析用に1つのリード対のみを保持した。対形成末端リードのいずれかのメンバーに対して、最大で2のヌクレオチドミスマッチを許容した。循環中のドナー特異的DNAの分画濃度は、レシピエントにおいてホモ接合性であり、且つドナーにおいてヘテロ接合性である一塩基多型(SNP)対立遺伝子を有する配列決定リードを計数することにより判定した。
【0114】
[00140]実施例2.肝臓及び結腸マーカーの組織特異性
[00141] 肝特異的及び結腸特異的マーカー双方においては、標的組織由来のDNA分子は、過剰メチル化され、非標的組織由来のものは、低メチル化されることになった。したがって、全分子の百分率は、肝臓アッセイにおけるメチル化をL%として表し、全分子の百分率は、結腸アッセイにおけるメチル化をC%として表した。肝臓及び結腸マーカーの特異性を確認するため、バフィーコートサンプル及び正常組織の10タイプから抽出されたDNAを、これら2つのデジタルPCRアッセイセットを用いて分析した。組織の各タイプにおいては、異なる個体からの4つのサンプルを含めた。
【0115】
[00142] 肝組織における平均L%は、67%(範囲:57%~76%)であり、他の組織タイプにおける平均L%は、0.6%(範囲:0.0%~2.2%)であった。各組織タイプについての結果を表4にまとめる。これらの結果は、肝臓アッセイにより肝臓由来DNAを特異的に検出可能であることを示唆した。
【0116】
【0117】
[00143] 結腸組織の平均C%は、22%(範囲:17%~33%)であった。すべての他の組織における平均C%は、1.2%(範囲:0.1%~4.1%)であり、結腸由来であるときのメチル化配列の特異性が示された。結腸組織内での比較的低いC%は、おそらくは結腸組織の非均質な細胞構成に起因するものであった。結腸組織内でのこの比較的低いC%は、異なる病状を有する対象のレベルを比較するために同じアッセイを用いても、その臨床適用を有意に妨害することはなかった。
【0118】
[00144]実施例3.肝移植レシピエントにおける肝臓由来DNAの血漿濃度
[00145] 肝特異的アッセイの定量的正確性を、肝移植レシピエントの血漿の分析を通じて検証した。これらの対象では、移植肝臓由来DNAの分画濃度は、次世代配列決定法を用いて、ドナー特異的対立遺伝子を保有する血漿DNA分子の割合から正確に判定することができた。肝移植を受けていた患者13名から収集された14の血漿サンプルを、肝特異的メチル化マーカー及び配列決定の双方により分析した。これら2つの方法により測定された濃度間で正の直線関係が認められ(R=0.99、P<0.0001、ピアソン相関、
図2)、肝特異的メチル化マーカーが血漿中の肝臓由来DNAの濃度を正確に反映し得ることが示された。
【0119】
[00146] ここで示されたように、肝特異的メチル化マーカーによる肝DNA濃度の百分率寄与の測定値は、ドナー特異的対立遺伝子の測定値に基づく結果と十分に相関した。これらの結果により、血漿中の肝臓由来DNAの濃度を反映することにおける肝特異的マーカーの正確性が確認された。
【0120】
[00147]実施例4.HCC患者の血漿中の肝臓由来DNAの増加
[00148] 肝臓由来DNAの絶対及び分画濃度を、HCC患者40名、硬変患者9名、慢性HBVキャリア20名及び健常対象30名における肝特異的メチル化パターンを有する配列を標的にするデジタルPCRにより測定した。
【0121】
[00149] 健常対象、慢性HBVキャリア、硬変患者及びHCC患者における肝臓由来メチル化配列の中央値濃度は各々、40コピー/mL(四分位範囲(IQR):18~86)、122コピー/mL(IQR:47~185)、118コピー/mL(IQR:86~159)、及び487(IQR:138~1151)であった(
図3A)。濃度は、4群を通じて有意に異なった(P<0.001、クラスカル・ウォリス検定)。事後分析では、HCC患者の肝臓由来DNAの血漿濃度は、健常対象(P<0.001、ダン検定)及び慢性HBVキャリア(P=0.015、ダン検定)よりも有意に高かったが、硬変患者群(P=0.248、ダン検定)ではそうならなかった。健常対象、慢性HBVキャリア及び硬変患者の濃度は、統計学的に異ならなかった(P>0.05、ダン検定)。
【0122】
[00150] 健常対象、慢性HBVキャリア、硬変患者及びHCC患者における血漿中の肝臓由来DNAの中央値分画濃度は各々、1.4%(IQR:0.94%~3.2%)、4.6%(IQR:1.7%~6.0%)、3.0%(四分位範囲:1.8%~7.3%)及び9.4%(IQR:4.1%~16.0%)であった(
図3B)。分画濃度は、4群を通じて有意に異なった(P<0.001、クラスカル・ウォリス検定)。事後分析では、HCC患者の肝臓由来DNAの血漿濃度は、健常対象(P<0.001、ダン検定)よりも有意に高かったが、慢性HBVキャリア(P=0.129、ダン検定)及び硬変患者(P=0.592、ダン検定)ではそうならなかった。健常対象、慢性HBVキャリア及び硬変患者の濃度は、統計学的に異ならなかった。
【0123】
[00151] これらの結果は、血漿中の肝臓由来DNAの絶対及び分画濃度双方の分析により、HCC患者と(健常対象、慢性HBVキャリア及び硬変患者を含む)非HCC対象と区別することができることを示した。HCC対象と非HCC対象とを区別するのに絶対又は分画濃度が優位であるかをさらに判定するため、受信者動作特性(ROC)曲線分析を実施した(
図9)。絶対及び分画濃度における曲線下面積(AUC)は各々、0.82及び0.78であった。AUCにおける差異は、統計学的に有意であった(P=0.022、Delong検定)。
【0124】
[00152] HCC患者における血漿中の肝臓由来DNAの濃度(絶対及び分画)と(コンピュータ断層撮影スキャンにより測定された又は腫瘍切除後に測定された)腫瘍の最大寸法との間の相関をさらに分析した。興味深いことに、腫瘍の最大寸法は、絶対濃度(R=0.74、P<0.0001、スピアマン相関)と、分画濃度(R=0.56、P=0.0002、スピアマン相関)とよりも強い正の相関を示した(
図4A及び4B)。HCC患者において、肝臓由来DNAの濃度は腫瘍の最大寸法と正の相関を示し、肝臓から放出されたDNAの量が腫瘍負荷を反映することが示された。
【0125】
[00153]実施例5.肝転移を有する及び有しないCRC患者における肝臓及び結腸由来DNAの分析
[00154] 健常対象30名、肝転移を有しないCRC患者35名、及び肝転移を有するCRC患者27名において、肝臓由来DNA及び結腸由来DNAの血漿濃度を測定した。3群における結腸由来DNAの中央値血漿濃度は各々、0コピー/mL(IQR:0~0)、4コピー/mL(IQR:0~31)、及び138コピー/mL(IQR:0~6850)であった(
図5A)。濃度は、3群間で有意に異なった(P<0.001、クラスカル・ウォリス検定)。事後分析では、肝転移を有する及び有しないCRC患者の濃度は、健常対象よりも有意に高かった(P<0.001及びP=0.042、各々、ダン検定)。肝転移を有する及び有しないCRC患者間の差異は、統計学的に有意でなかった(P=0.079、ダン検定)。
【0126】
[00155] 健常対照対象、肝転移を有しないCRC患者、及び肝転移を有するCRC患者における血漿中の結腸由来DNAの中央値分画濃度は各々、0%(IQR:0%~0%)、0.09%(IQR:0%~1.1%)、及び0.84%(IQR:0%~49.5%)であった(
図5B)。分画濃度は、3群間で有意に異なった(P<0.001、クラスカル・ウォリス検定)。事後分析では、肝転移を有する及び有しないCRC患者の濃度は、健常対象よりも有意に高かった(P<0.001及びP=0.041、各々、ダン検定)。肝転移を有する及び有しないCRC患者間の差異は、統計学的に有意でなかった(P=0.084、ダン検定)。
【0127】
[00156] 健常対照対象、肝転移を有しないCRC患者、及び肝転移を有するCRC患者における血漿中の肝臓由来DNAの中央値濃度は各々、40コピー/mL(IQR:18~86)、23コピー/mL(IQR:13~108)、及び233コピー/mL(IQR:56~2290)であった(
図5C)。分画濃度は、3群間で有意に異なった(P<0.001;クラスカル・ウォリス検定)。事後分析では、肝転移を有するCRC患者の濃度は、肝転移を有しないCRC患者及び健常対照よりも有意に高かった(各々、P<0.001及びP<0.001;ダン検定)。興味深いことに、肝転移を有しない患者と健常対照との間で有意差は認められなかった(P=1.0;ダン検定)。
【0128】
[00157] 健常対照対象、肝転移を有しないCRC患者、及び肝転移を有するCRC患者における血漿中の肝臓由来DNAの中央値分画濃度は各々、0.8%(IQR:0.3%~2.8%)、1.4%(IQR:0.9%~3.3%)、及び3.1%(IQR:1.5%~5.3%)であった(
図5D)。分画濃度は、3群間で有意に異なった(P<0.001、クラスカル・ウォリス検定)。事後分析では、肝転移を有するCRC患者の濃度は、肝転移を有しないCRC患者よりも有意に高かった(P<0.003、ダン検定)。健常対象の分画濃度は、肝転移を有する及び有しないCRC患者と統計学的に有意に異ならなかった(各々、P=0.114及びP=0.717)。
【0129】
[00158] 血漿中の肝臓及び結腸由来DNAの絶対及び分画濃度において肝転移を有する及び有しないCRC患者間で有意差が認められたことから、2群を区別するのにどのパラメータが最も有用となるかを判定するため、ROC曲線分析を用いた。肝臓由来DNAの絶対及び分画濃度におけるAUCは各々、0.85及び0.75(P=0.01、Delong検定)、結腸由来DNAの絶対及び分画濃度におけるAUCは各々、0.69及び0.69(P=0.75、Delong検定)であった(
図6)。
【0130】
[00159] 肝臓由来DNAの絶対濃度の分析は、ROC分析において肝転移を有する及び有しないCRC患者を区別する場合、分画濃度よりも優位であった(AUC:0.85対0.75、P=0.01、
図6)。理論によって拘束されない限り、有望な説明は、肝臓への転移性CRCを有する一部の患者では、肝臓及び結腸由来DNA双方の絶対濃度が増加すると思われることである。一部の患者では、肝臓由来DNAの絶対濃度は増加したが、結腸由来DNAにおけるさらなる増加に起因し、肝臓の分画濃度は不変又は低減が維持される。同様に、肝臓由来DNAの絶対濃度が、分画濃度と比べて腫瘍サイズとより十分な相関を有することも示された(R=0.74対0.56、スピアマン相関、
図4)。
【0131】
[00160] 本開示の好ましい実施形態が本明細書中に示され、説明されている一方で、かかる実施形態があくまで例として提供されることは当業者にとって明白であろう。当業者は、ここで極めて多数のバリエーション、変更、及び置換を、本開示から逸脱することなく設けるであろう。本開示を実行する場合、本明細書に記載の開示の実施形態に対する様々な選択肢が使用可能であるは理解されるべきである。以下の特許請求の範囲が本開示の範囲を規定し、且つこれら特許請求の範囲の範囲内の方法及び構造並びにそれらの均等物がそれによって網羅されることは意図される。
【配列表】