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特許7620809ウェブの搬送方法、ウェブの製造方法、及びウェブの搬送装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-31
(54)【発明の名称】ウェブの搬送方法、ウェブの製造方法、及びウェブの搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 43/04 20060101AFI20250124BHJP
   B65H 26/02 20060101ALI20250124BHJP
【FI】
B65H43/04
B65H26/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021022026
(22)【出願日】2021-02-15
(65)【公開番号】P2022124323
(43)【公開日】2022-08-25
【審査請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 郷
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 靖直
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-287768(JP,A)
【文献】特開2011-207572(JP,A)
【文献】特開平11-91467(JP,A)
【文献】特開2002-372496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 43/04
B65H 26/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送方法であって、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性をセンサ部によって検知する検知工程、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を加工部によって施す加工工程と、
前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報取得工程において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御工程と、
を含み、
前記位置情報取得工程は、
前記ウェブの搬送ラインの側面視における上方又は下方に、レンズを備える焦点距離測定部が少なくとも2つ配置され、かつ、一方の前記焦点距離測定部は、前記搬送ウェブの搬送方向において、他方の前記焦点距離測定部よりも上流側となる位置に配置され、
前記搬送ウェブについて、それぞれの前記焦点距離測定部が、前記搬送ウェブの表面までの焦点距離を取得し、取得された前記焦点距離から前記搬送ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの前記位置変化量として取得する
ェブの搬送方法。
【請求項2】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送方法であって、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性をセンサ部によって検知する検知工程、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を加工部によって施す加工工程と、
前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報取得工程において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御工程と、
を含み、
前記位置情報取得工程は、
前記ウェブの搬送ラインの側面視における上方又は下方に、エネルギー線が照射可能な照射部と、前記エネルギー線を受光可能な受光部と、を備える位置測定部が、少なくとも2つ配置され、かつ、一方の前記位置測定部は、前記搬送ウェブの搬送方向において、他方の前記位置測定部よりも上流側となる位置に配置され、
前記搬送ウェブに対して、それぞれの前記位置測定部の前記照射部から前記搬送ウェブの表面に向けて前記エネルギー線を照射し、前記表面から反射された前記エネルギー線の反射波を前記受光部によって受光することによって、前記搬送ウェブまでの距離を取得し、取得された前記距離から前記ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を前記ウェブの前記位置変化量として取得する
ェブの搬送方法。
【請求項3】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送方法であって、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性をセンサ部によって検知する検知工程、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を加工部によって施す加工工程と、
前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報取得工程において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御工程と、
を含み、
前記位置情報取得工程は、
前記ウェブの搬送ラインの側面視における上方又は下方に、レンズを備える撮像部が少なくとも1つ配置され、
前記搬送ウェブについて、前記撮像部が前記搬送ウェブの表面上の所定の箇所を撮像して撮像画像を取得し、取得された前記撮像画像の画像ぼけから前記搬送ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの前記位置変化量として取得する
ェブの搬送方法。
【請求項4】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送方法であって、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性をセンサ部によって検知する検知工程、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を加工部によって施す加工工程と、
前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得工程と、
前記位置情報取得工程において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御工程と、
を含み、
前記位置情報取得工程は、
前記ウェブの搬送ラインの側方に、側方撮像部が少なくとも1つ配置され、
前記側方撮像部が、前記搬送ウェブの側面から前記搬送ウェブを撮像することによって、前記ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を前記ウェブの前記位置変化量として取得する
ェブの搬送方法。
【請求項5】
前記位置情報取得工程は、前記搬送ウェブの前記位置変化量をリアルタイムで取得し、
前記位置制御工程は、前記リアルタイムで取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置をリアルタイムで制御する、
請求項のいずれか一項に記載のウェブの搬送方法。
【請求項6】
前記検知工程として、
前記搬送ウェブの帯電量を前記センサ部によって測定する工程、
前記搬送ウェブの表面を撮像して、前記表面への異物の付着を検知する前記センサ部によって、異物の有無を検知する工程、
前記搬送ウェブの表面を撮像して、前記表面の欠陥を検知する前記センサ部によって、欠陥の有無を検知する工程、
前記搬送ウェブの表面のコート量を測定する前記センサ部によって、コート量を測定する工程、及び、
前記搬送ウェブの表面の凹凸形状を検知する前記センサ部によって、凹凸形状を検知する工程
からなる群より選ばれる少なくとも1つを行う、
請求項1~のいずれか一項に記載のウェブの搬送方法。
【請求項7】
前記加工工程として、
前記搬送ウェブの側縁をカットする前記加工部によって、前記搬送ウェブにスリット加工を施す工程、
前記搬送ウェブにレーザー照射する前記加工部によって、前記搬送ウェブにレーザー加工を施す工程、
前記搬送ウェブにエアーを噴射する前記加工部によって、前記搬送ウェブの表面から異物を除去する工程、
前記搬送ウェブの表面のエアーを吸引する前記加工部によって、前記搬送ウェブの表面から異物を吸引して除去する工程、
前記搬送ウェブの蛇行を制御するガイドロール機構を備える前記加工部によって、前記搬送ウェブのたるみ及び/又はシワを補正する工程、並びに、
前記搬送ウェブの表面に放電処理を施す前記加工部によって、前記搬送ウェブの表面を改質する工程からなる群より選ばれる少なくとも1つを行う、
請求項1~のいずれか一項に記載のウェブの搬送方法。
【請求項8】
前記ローラーから繰り出される繰り出し工程、又は、前記ローラーに巻き取られる巻き取り工程と、
請求項1~のいずれか一項に記載のウェブの搬送方法によって、前記ウェブを搬送する搬送工程と、
を含む、ウェブの製造方法。
【請求項9】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送装置であって、
前記ウェブを搬送する搬送部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性を検知するセンサ部、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を施す加工部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である、搬送ウェブについて、前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御部と、
を備え、
前記位置情報取得部は、
前記ウェブの搬送ラインの側面視における上方又は下方に、レンズを備える焦点距離測定部を少なくとも2つ含み、かつ、一方の前記焦点距離測定部は、前記搬送ウェブの搬送方向において、他方の前記焦点距離測定部よりも上流側となる位置に配置され、
前記搬送ウェブについて、それぞれの前記焦点距離測定部が、前記搬送ウェブの表面までの焦点距離を取得し、取得された前記焦点距離から前記搬送ウェブの前記傾きを検知する、
ウェブの搬送装置。
【請求項10】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送装置であって、
前記ウェブを搬送する搬送部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性を検知するセンサ部、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を施す加工部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である、搬送ウェブについて、前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御部と、
を備え、
前記位置情報取得部は、
前記ウェブの搬送ラインの側面視における上方又は下方に、エネルギー線が照射可能な照射部と、前記エネルギー線を受光可能な受光部と、を備える位置測定部を、少なくとも2つ含み、かつ、一方の前記位置測定部は、前記搬送ウェブの搬送方向において、他方の前記位置測定部よりも上流側となる位置に配置され、
前記搬送ウェブに対して、それぞれの前記位置測定部の前記照射部から前記搬送ウェブの表面に向けて前記エネルギー線を照射し、前記表面から反射された前記エネルギー線の反射波を前記受光部によって受光することによって、前記搬送ウェブまでの距離を取得し、取得された前記距離から前記ウェブの前記傾きを検知する、
ウェブの搬送装置。
【請求項11】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送装置であって、
前記ウェブを搬送する搬送部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性を検知するセンサ部、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を施す加工部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である、搬送ウェブについて、前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御部と、
を備え、
前記位置情報取得部は、
前記ウェブの搬送ラインの側面視における上方又は下方に、レンズを備える撮像部を少なくとも1つ含み、
前記搬送ウェブについて、前記撮像部が前記搬送ウェブの表面上の所定の箇所を撮像して撮像画像を取得し、取得された前記撮像画像の画像ぼけから前記搬送ウェブの前記傾きを検知する、
ウェブの搬送装置。
【請求項12】
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送装置であって、
前記ウェブを搬送する搬送部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性を検知するセンサ部、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を施す加工部と、
前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である、搬送ウェブについて、前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得部と、
前記位置情報取得部において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御部と、
を備え、
前記位置情報取得部は、
前記ウェブの搬送ラインの側方に、側方撮像部を少なくとも1つ含み、
前記側方撮像部が、前記搬送ウェブの側面から前記搬送ウェブを撮像することによって、前記ウェブの前記傾きを検知する、
ウェブの搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブの搬送方法、ウェブの製造方法、及びウェブの搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェブと呼ばれる各種フィルム、金属箔、紙、及び布等の長尺媒体の製造プロセスでは、繰り出しロールからウェブを繰り出したり、巻き取りロールにウェブを巻き取ったりするが、搬送ライン上ではウェブを高速で搬送しながら、トラブルなく、高精度の品質を維持できることが求められている。
【0003】
そして、ウェブの製造プロセスでは、搬送されているウェブ(搬送ウェブ)の品質を管理するために、搬送ライン上にセンサを配置する。例えば、搬送ウェブの帯電量等を測定するセンサや、異物や欠陥等を検知するセンサ等を搬送ライン上に配置してセンサェブの物性や品質を把握する。
【0004】
また、ウェブの製造プロセスでは、搬送ウェブに所望の加工を施すために、搬送ライン上に各種加工ユニットを配置する。例えば、搬送ウェブにスリット加工を施すスリット装置等を搬送ライン上に配置して、搬送ウェブの周縁をカットするスリット加工を施す。
【0005】
このように、搬送ライン上にセンサや加工ユニットを設けることで、搬送ウェブの物性を検知したり、搬送ウェブに所望の加工を施したりする。
【0006】
例えば、特許文献1には、シート状物に発生する静電気の電位を測定する静電気電位測定装置に関するものとして、長尺のシート状物をロール状に巻回してなるシートロールの近傍に設けられ、シート状物に発生する静電気の電位を測定する装置であって、静電気の電位を測定する測定器と、シートロールを支承している機枠に着脱可能となされ、シートロールの表面にその上方から転接して該表面から所定距離離れた位置に測定器をシートロールの軸芯に沿って移動可能に保持しつつシートロールの外径変化に伴って昇降動する測定器保持手段とを備えてなる静電気電位測定装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平05-170369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述したローラーからの繰り出しやローラーへの巻き取りを伴うウェブの搬送を行う場合、搬送ライン上にセンサや加工ユニットを設けることで、搬送ウェブの物性を検知したり、搬送ウェブに所望の加工を施したりするが、その精度が十分でないという問題がある。
【0009】
例えば、特許文献1に記載の静電気電位測定装置は、ウェブに発生する静電気の電位を測定するものであるが、測定器の測定対象は、搬送ウェブではなく、ロール状に巻き取られたウェブであるため、正確には、搬送ウェブ(例えば、巻き取られたウェブではなく、搬送ウェブ1層)の静電気の電位を検知するものではない。さらに、この静電気電位測定装置は、シートロールの外径変化に伴って昇降動する測定器保持手段を備えているが、ガイドローラーをシートロールの表面に接触させているため、製品ウェブの品質に影響を与えてしまうといった問題もある。
【0010】
そして、搬送ウェブの物性を検知したり、搬送ウェブに所望の加工を施したりする場合、ローラーからの繰り出しやローラーへの巻き取りを伴うウェブの搬送では、搬送が進むにつれてロール径が大径から小径へ、又は、小径から大径へと変化する。そのため、搬送ウェブの位置が徐々に変化する。この位置変化は、繰り出しロール又は巻き取りロールと、その近傍に配置されるガイドローラーとの間の搬送ライン区画で顕著となる。
【0011】
しかしながら、従来のウェブの搬送技術では、上述したような搬送ウェブの位置変化を十分に考慮した上で、搬送ウェブの物性を高い精度で検知できる技術や、搬送ウェブに対して高い精度で加工を施すことができる技術は、未だ開発されていないのが実情である。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ローラーからの繰り出しやローラーへの巻き取りを伴うウェブの搬送を行う際に、高い精度で、搬送されるウェブの物性を検知でき、又は、搬送されるウェブの加工を行うことができるウェブの搬送方法、ウェブの製造方法、及びウェブの搬送装置を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上述した目的を達成するために鋭意検討した結果、ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送方法であって、ローラーからの繰り出し後又はローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、搬送ウェブの所定の物性をセンサ部によって検知する検知工程、又は、搬送ウェブに対して所定の加工を加工部によって施す加工工程と、搬送ウェブに接触することなく、側面視における搬送ウェブの傾きを検知し、傾きの変化量を、搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得工程と、位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部又は加工部の位置を制御する位置制御工程と、を含む、ウェブの搬送方法とすることに知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0015】
(1)
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送方法であって、前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性をセンサ部によって検知する検知工程、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を加工部によって施す加工工程と、前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得工程と、前記位置情報取得工程において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御工程と、を含む、ウェブの搬送方法である。
(2)
前記位置情報取得工程は、前記ウェブの搬送ラインの上方又は下方に、レンズを備える焦点距離測定部が少なくとも2つ配置され、前記搬送ウェブについて、それぞれの前記焦点距離測定部が、前記搬送ウェブの表面までの焦点距離を取得し、取得された前記焦点距離から前記搬送ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの前記位置変化量として取得する、(1)に記載のウェブの搬送方法である。
(3)
前記位置情報取得工程は、前記ウェブの搬送ラインの上方又は下方に、エネルギー線が照射可能な照射部と、前記エネルギー線を受光可能な受光部と、を備える位置測定部が、少なくとも2つ配置され、前記搬送ウェブに対して、それぞれの前記位置測定部の前記照射部から前記搬送ウェブの表面に向けて前記エネルギー線を照射し、前記表面から反射された前記エネルギー線の反射波を前記受光部によって受光することによって、前記搬送ウェブまでの距離を取得し、取得された前記距離から前記ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を前記ウェブの前記位置変化量として取得する、(1)又は(2)に記載のウェブの搬送方法である。
(4)
前記位置情報取得工程は、前記ウェブの搬送ラインの上方又は下方に、レンズを備える撮像部が少なくとも1つ配置され、前記搬送ウェブについて、前記撮像部が前記搬送ウェブの表面上の所定の箇所を撮像して撮像画像を取得し、取得された前記撮像画像の画像ぼけから前記搬送ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの前記位置変化量として取得する、(1)~(3)のいずれかに記載のウェブの搬送方法である。
(5)
前記位置情報取得工程は、前記ウェブの搬送ラインの側方に、側方撮像部が少なくとも1つ配置され、前記側方撮像部が、前記搬送ウェブの側面から前記搬送ウェブを撮像することによって、前記ウェブの前記傾きを検知し、前記傾きの変化量を前記ウェブの前記位置変化量として取得する、(1)~(4)のいずれかに記載のウェブの搬送方法である。
(6)
前記位置情報取得工程は、前記搬送ウェブの前記位置変化量をリアルタイムで取得し、前記位置制御工程は、前記リアルタイムで取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置をリアルタイムで制御する、(1)~(5)のいずれかに記載のウェブの搬送方法である。
(7)
前記検知工程として、前記搬送ウェブの帯電量を前記センサ部によって測定する工程、前記搬送ウェブの表面を撮像して、前記表面への異物の付着を検知する前記センサ部によって、異物の有無を検知する工程、前記搬送ウェブの表面を撮像して、前記表面の欠陥を検知する前記センサ部によって、欠陥の有無を検知する工程、前記搬送ウェブの表面のコート量を測定する前記センサ部によって、コート量を測定する工程、及び、前記搬送ウェブの表面の凹凸形状を検知する前記センサ部によって、凹凸形状を検知する工程からなる群より選ばれる少なくとも1つを行う、(1)~(6)のいずれかに記載のウェブの搬送方法である。
(8)
前記加工工程として、前記搬送ウェブの側縁をカットする前記加工部によって、前記搬送ウェブにスリット加工を施す工程、前記搬送ウェブにレーザー照射する前記加工部によって、前記搬送ウェブにレーザー加工を施す工程、前記搬送ウェブにエアーを噴射する前記加工部によって、前記搬送ウェブの表面から異物を除去する工程、前記搬送ウェブの表面のエアーを吸引する前記加工部によって、前記搬送ウェブの表面から異物を吸引して除去する工程、前記搬送ウェブの蛇行を制御するガイドロール機構を備える前記加工部によって、前記搬送ウェブのたるみ及び/又はシワを補正する工程、並びに、前記搬送ウェブの表面に放電処理を施す前記加工部によって、前記搬送ウェブの表面を改質する工程からなる群より選ばれる少なくとも1つを行う、(1)~(7)のいずれかに記載のウェブの搬送方法である。
(9)
前記ローラーから繰り出される繰り出し工程、又は、前記ローラーに巻き取られる巻き取り工程と、(1)~(8)のいずれかに記載のウェブの搬送方法によって、前記ウェブを搬送する搬送工程と、を含む、ウェブの製造方法である。
(10)
ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送装置であって、前記ウェブを搬送する搬送部と、前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、前記搬送ウェブの所定の物性を検知するセンサ部、又は、前記搬送ウェブに対して所定の加工を施す加工部と、前記ローラーからの繰り出し後又は前記ローラーへの巻き取り前である、搬送ウェブについて、前記搬送ウェブに接触することなく、側面視における前記搬送ウェブの傾きを検知し、前記傾きの変化量を、前記搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得部と、前記位置情報取得部において取得された前記位置変化量に基づき、前記センサ部又は前記加工部の位置を制御する位置制御部と、を備える、ウェブの搬送装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ローラーからの繰り出しやローラーへの巻き取りを伴うウェブの搬送を行う際に、高い精度で、搬送されるウェブの物性を検知でき、又は、搬送されるウェブの加工を行うことができるウェブの搬送方法、ウェブの製造方法、及びウェブの搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、第1実施形態に係る搬送方法を説明するための側面図である。
図2図2は、第1実施形態に係る搬送方法を説明するための上面図である。
図3図3は、第1実施形態における傾きの変化量の取得を説明するための側面図である。
図4図4は、第2実施形態に係る搬送方法の説明に供する側面図である。
図5図5は、第2実施形態におけるカメラの撮像画像に基づく傾きの変化量の取得を説明するための概略図である。
図6図6は、第3実施形態に係る搬送方法を説明するための上面図である。
図7図7は、第3実施形態に係る搬送方法を説明するための側面図である。
図8図8は、繰り出し試験において、模擬フィルムまでの測定距離と、そのときの帯電量の測定値をプロットしたグラフである。
図9図9は、実施例の繰り出し試験における帯電量の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0019】
そして、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
また、本明細書において、「略」を付した用語は、当業者の技術常識の範囲内でその「略」を除いた用語の意味を示すものであり、「略」を除いた意味自体をも含むものとする。
【0021】
<ウェブの搬送方法>
【0022】
本実施形態に係るウェブの搬送方法は、ローラーから繰り出される又はローラーに巻き取られる、ウェブの搬送方法であって、
(1)ローラーからの繰り出し後又はローラーへの巻き取り前である搬送ウェブについて、搬送ウェブの所定の物性をセンサ部によって検知する検知工程、又は、搬送ウェブに対して所定の加工を加工部によって施す加工工程と、
(2)搬送ウェブに接触することなく、側面視における搬送ウェブの傾きを検知し、傾きの変化量を、搬送ウェブの位置変化量として取得する位置情報取得工程と、
(3)位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部又は加工部の位置を制御する位置制御工程と、
を含む、ウェブの搬送方法である。
【0023】
以下、検知工程として帯電量を測定する場合を一例として、図面を用いながら説明する。
【0024】
図1は、第1実施形態に係る搬送方法を説明するための側面図であり、図2は、第1実施形態に係る搬送方法を説明するための上面図であり、図3は、第1実施形態における傾きの変化量の取得を説明するための側面図である。
【0025】
図1に示す搬送方法は、ローラー10から繰り出される又はローラー10に巻き取られるウェブWの搬送方法であり、搬送されているウェブ(搬送ウェブ)Wの帯電量を測定する。なお、本明細書において、「ウェブW」はローラー10に巻き取られているウェブ(ロール体R1,R2のウェブ)と搬送ウェブ(ローラー10に巻き取られておらず、搬送ラインにおいて搬送されているウェブ)の両方を包含する意味で用いられる場合がある。
【0026】
搬送装置1は、ウェブWが巻き取られたローラー10と、ガイドローラー11と、を備える。そして、搬送ラインの上方(図1における上方)に、搬送ウェブWの帯電量を測定するセンサ部12が配置されており、ローラー10側に第1焦点距離測定部13と、ガイドローラー11側に第2焦点距離測定部14と、がそれぞれ配置されている。なお、「(搬送ラインの)上方」とは、特に断りがない限り、搬送ラインの側面視(例えば、図1参照)における上方を意味する。そして、「(搬送ラインの)下方」とは、特に断りがない限り、搬送ラインの側面視(例えば、図1参照)における下方を意味する。
【0027】
例えば、ローラー(この場合、巻取軸と呼ばれることもある。)10にウェブWが巻き取られる場合、ガイドローラー11からローラー10に向けて(矢印F1参照)、ウェブWが搬送される。この場合、ローラー10にウェブWが巻き取られたロール体のロール径は、小径(ロール体R1参照)から大径(ロール体R2参照)となるように徐々に大きくなる。それに伴い、搬送ウェブWの位置も、下方(搬送ウェブW1参照)から上方(搬送ウェブW2参照)に向けて徐々に移動する。
【0028】
一方、ローラー(この場合、繰出軸と呼ばれることもある。)10からウェブWが繰り出される場合、ローラー10からガイドローラー11に向けて(矢印F2参照)、ウェブWが搬送される。この場合、ウェブWが繰り出されるロール体のロール径は、大径(ロール体R2参照)から小径(ロール体R1参照)となるよう徐々に小さくなる。それに伴い、搬送ウェブWの位置も、上方(搬送ウェブW2参照)から下方(搬送ウェブW1参照)に向けて徐々に移動する。
【0029】
このように、ローラー10からウェブWが繰り出される場合、及びローラー10にウェブWが巻き取られる場合のいずれにおいても、搬送ウェブWの位置が変化する。本実施形態によれば、傾きの変化量θを位置変化量として取得することによって、搬送ウェブWの位置の変化を正確かつ簡便に把握できる。そして、傾きの変化量θを非接触で取得できるため、搬送ラインや製品ウェブに悪影響を及ぼすことがない。
【0030】
(検知工程)
【0031】
第1実施形態に係る搬送方法では、(1)ローラー10からの繰り出し後又はローラー10への巻き取り前である、搬送ウェブWの帯電量をセンサ部12によって測定する検知工程を行う。ここでは一例として、ウェブWの物性として帯電量を測定する場合を例示するが、それ以外の物性を検知するセンサ部12としてもよい。例えば、塵埃や欠陥の有無、厚み、屈折率、表面のうねり状態等を検知することができる。ここでいう表面のうねり状態とは、表面における意図しない微細な凹凸形状の発生等である。センサ部12が検知する物性は、これらの1種のみである必要はなく、これらのうちの2種以上を同時に又は時間差を設けて異時に検知するものであってもよい。
【0032】
センサ部12は、帯電量を測定する帯電量測定センサ120と、帯電量測定センサ120を前後(矢印F3参照)に移動させる前後移動部121と、帯電量測定センサ120を搬送方向に周回転(矢印F4参照)させる回転移動部122と、を備える。これにより、搬送ウェブWに対して上下左右の任意の方向に、センサ部12を移動させることができる。
【0033】
センサ部12は、搬送ウェブWの任意の1か所の帯電量を測定する構成でもよいし、上面視における搬送ウェブWの幅方向(図1の紙面の垂直方向、図2の上下方向参照)にセンサ部12を移動可能とすることで、搬送ウェブWの任意の幅位置の帯電量を測定する構成としてもよい。
【0034】
そして、ローラー(繰出軸)10からの繰り出し後の搬送ウェブWを測定する場合、センサ部12による測定は繰り出し直後に行うことが好ましい。繰り出し直後とは、具体的には、搬送ラインにおいてローラー10の中心軸から50mm以上2000mm以下に位置する箇所で、センサ部12によって搬送ウェブWを測定することがより好ましく、100mm以上600mm以下に位置する箇所であることが更に好ましく、200mm以上500mm以下に位置する箇所であることがより更に好ましい。これにより、ローラー10やガイドローラー11の影響を受けることなく、ウェブWの特性や異物や静電気等を、精度良く測定及び/又は検知することができる。
【0035】
同様に、ローラー(巻取軸)10への巻き取り前の搬送ウェブWを測定する場合、センサ部12による測定は巻き取り直前に行うことが好ましい。巻き取り直前とは、具体的には、搬送ラインにおいてローラー10の中心軸から50mm以上2000mm以下に位置する箇所で、センサ部12によって搬送ウェブWを測定することがより好ましく、100mm以上600mm以下に位置する箇所であることが更に好ましく、200mm以上500mm以下に位置する箇所であることがより更に好ましい。これにより、ローラー10やガイドローラー11の影響を受けることなく、ウェブWの特性や異物、静電気等を精度良く測定及び/又は検知することができる。
【0036】
(位置情報取得工程)
【0037】
続いて、(2)ローラー10からの繰り出し後又はローラー10への巻き取り前である、搬送ウェブWについて、搬送ウェブWに接触することなく、側面視における搬送ウェブWの傾きを検知し、その傾きの変化量θを、搬送ウェブWの位置変化量として取得する位置情報取得工程を行う。
【0038】
なお、ここでいう傾きの変化量θとは、搬送時の特定の時点におけるウェブW1の傾きと、この時点から所定時間が経過した後の時点におけるウェブW2の傾きとの差をいう。
【0039】
そして、上記の特定の時点における搬送ウェブW1の傾きは、例えば、搬送ラインの側面視における(例えば、図1参照)、水平方向に対する搬送ウェブW1の傾斜を「傾き」としてもよい。あるいは、搬送ラインの側面視における(例えば、図1参照)、所定の方向(例えば、搬送開始時の搬送ラインの傾斜)を基準線とし、これに対する搬送ウェブW1の傾斜を「傾き」としてもよい。
【0040】
また、上記の所定時間が経過した後の時点における搬送ウェブW2の傾きも、同様に、搬送ラインの側面視における、水平方向に対する搬送ウェブW2の傾斜を「傾き」としてもよい。あるいは、搬送ラインの側面視における(例えば、図1参照)、所定の方向(例えば、搬送開始時の搬送ラインの傾斜)を基準線とし、これに対する搬送ウェブW2の傾斜を「傾き」としてもよい。
【0041】
本実施形態では、側面視における搬送ウェブWの傾きの変化量θを取得できればよく、個々の時点の傾きの具体的な傾斜角度を算出しなくてもよい。すなわち、本実施形態では、上述した側面視における搬送ウェブWの傾きを検知すればよく、その具体的な傾斜角度を必ずしも算出しなくともよい。
【0042】
そして、位置情報取得工程は、搬送ウェブWの搬送ラインの上方(図1の上方参照)又は下方(図1の下方参照)に、レンズを備える第1焦点距離測定部13及び第2焦点距離測定部14が少なくとも2つ配置され、搬送ウェブWについて、第1焦点距離測定部13及び第2焦点距離測定部14のそれぞれが、搬送ウェブWの表面までの焦点距離を取得し、取得された焦点距離から搬送ウェブWの傾きを検知し、傾きの変化量θを、搬送ウェブWの位置変化量として取得することが好ましい。
【0043】
焦点距離から搬送ウェブWの傾きを検知する方法の一例を、図3を参照しつつ説明する。
【0044】
図3は2か所に焦点距離測定部13,14を設ける場合を例示しているが、本実施形態では2か所に限定されず、3か所以上に配置してもよい。配置箇所を増やすことで、より高い精度で傾きの変化量θを算出できることになるため、より高い精度でセンサ部12の位置を制御できる。
【0045】
例えば、ローラー10にウェブW1を巻き取る場合、ウェブW1に対して第1焦点距離測定部13の焦点距離aを測定するとともに(図1の矢印F5参照)、ウェブW1に対して第2焦点距離測定部14の焦点距離cを測定する(図1の矢印F6参照)。そして、所定時間が経過して、ウェブW2まで更に巻き取られると、ウェブW2に対して第1焦点距離測定部13の焦点距離bを測定するとともに(図1の矢印F5参照)、ウェブW2に対して第2焦点距離測定部14の焦点距離dを測定する(図1の矢印F6参照)。このようにして取得された焦点距離a,b,c,d、及び、第1焦点距離測定部13と第2焦点距離測定部14との配置距離等から、傾きの変化量θを求める。
【0046】
あるいは、ローラー10からウェブW2を繰り出す場合、ウェブW2に対して第1焦点距離測定部13の焦点距離bを測定するとともに(図1の矢印F5参照)、ウェブW2に対して第2焦点距離測定部14の焦点距離dを測定する(図1の矢印F6参照)。そして、所定時間が経過して、ウェブW1まで更に繰り出されると、ウェブW1に対して第1焦点距離測定部13の焦点距離aを測定するとともに(図1の矢印F5参照)、ウェブW1に対して第2焦点距離測定部14の焦点距離cを測定する(図1の矢印F6参照)。このようにして取得された焦点距離a,b,c,d、及び、第1焦点距離測定部13と第2焦点距離測定部14との配置距離等から、傾きの変化量θを求める。
【0047】
また、図2に示すように、第1焦点距離測定部13及び第2焦点距離測定部14は、搬送ラインの上面視において、ウェブWの搬送ラインの側縁(エッジライン)に設けることが好ましい。これにより焦点距離をより正確に測定することができる。
【0048】
なお、図示はしないが、本実施形態によれば、上述した第1焦点距離測定部13及び第2焦点距離測定部14の代わりに、レーザー光等のエネルギー線をウェブWに照射する第1照射部及び第2照射部を設けて、第1照射部及び第2照射部のそれぞれにおいてウェブWとの距離を取得し、これらの距離から、傾きの変化量θを取得する構成としてもよい。照射部は、焦点距離測定部13,14と同様に、搬送ラインに2か所以上設けることができる。
【0049】
照射部によって傾きの変化量θを取得する場合、位置情報取得工程は、ウェブWの搬送ラインの上方又は下方に、エネルギー線が照射可能な照射部と、エネルギー線を受光可能な受光部と、を備える位置測定部が、少なくとも2つ配置され、搬送ウェブWに対して、それぞれの位置測定部の照射部(例えば、上述した第1照射部及び第2照射部)から搬送ウェブWの表面に向けてエネルギー線を照射し(図1の矢印F5,F6参照)、表面から反射されたエネルギー線の反射波を受光部によって受光することによって(図1の矢印F5の反対方向、矢印F6の反対方向参照)、搬送ウェブWまでの距離a,b,c,dを取得し、取得された距離a,b,c,d、及び、第1焦点距離測定部13と第2焦点距離測定部14との配置距離等からウェブWの傾きの変化量θを算出し、傾きの変化量θをウェブWの位置変化量として取得することが好ましい。
【0050】
(位置制御工程)
【0051】
そして、(3)位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部12の位置を制御する位置制御工程を行う。
【0052】
センサ部12の位置制御は、センサ部12と搬送ウェブWとの距離が一定の距離を維持するように制御することが好ましい。センサ部12の位置制御は、アクチュエーター等によって行うことができる。第1実施形態では、センサ部12に備えられた前後移動部121及び回転移動部122によって、センサ部12の位置制御を高い精度で行うことができる。例えば、アクチュエーター等によって、搬送時における搬送ウェブWの位置変化に応じて、常に所定の距離を保つように位置制御することができる。このように位置制御することで、搬送時の搬送ウェブWの位置変化に追従して、センサ部12を移動させることができるため、高い精度で搬送ウェブWの物性を検知できる。
【0053】
なお、ローラー10の外径(直径)は、特に限定されないが、3インチ以上10インチ以下であることが好ましい。本実施形態によればこのような外径のローラー10を用いる場合であっても、センサ部12と搬送ウェブWとの距離が一定の距離を維持することが可能であるため、高い精度で搬送ウェブWの物性を検知できる。
【0054】
また、搬送ラインの搬送速度は、特に限定されないが、1m/分以上2000m/分以下であることが好ましい。搬送速度が比較的高速である場合、搬送に伴う搬送ウェブWの不具合の発生が起こりやすくなるところ、本実施形態によれば高い精度でウェブWの不具合を検知できるため、製造プロセス上の不具合発生を効果的に防止できる。
【0055】
さらに、ウェブWは、長尺である略矩形の形状であり、シートやフィルム等と呼ばれることもある。ウェブWの素材は、特に限定されないが、例えば、樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンナフタレート、6,6-ナイロン等のポリアミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリイミドフィルム等のエンプラフィルム等)、紙(グラシン紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙等)、布(不織布等)等が挙げられる。
【0056】
本実施形態によれば、リアルタイムでモニタリングすることが好ましい。具体的には、位置情報取得工程は、搬送ウェブWの位置変化量をリアルタイムで取得し、位置制御工程は、リアルタイムで取得された搬送ウェブWの位置変化量に基づき、センサ部12の位置をリアルタイムで制御することがより好ましい。そして、後述する加工部によって加工を施す場合には、センサ部12を用いる場合と同様に、リアルタイムで取得された搬送ウェブWの位置変化量に基づき、加工部の位置をリアルタイムで制御することがより好ましい。
【0057】
上述したように、本実施形態によれば、搬送時の搬送ウェブWの位置変化に追従してセンサ部12を移動させることができるため、位置情報取得工程においてリアルタイムで取得された位置変化量に基づき、位置制御工程においてセンサ部12の位置をリアルタイムで調整することができる。その結果、搬送ラインを停止することなく、搬送ウェブWの状態をセンサ部12によって連続的にモニタリングできる。
【0058】
リアルタイムで連続的にモニタリングすることにより、センサ部12によるセンシング(例えば、帯電量等の種々の物性の経時的な変化の検知や、異物や欠陥の速やかな検知等)を、搬送ラインを駆動させながら、リアルタイムで行うことができる。特に、本実施形態によれば、搬送ウェブWに非接触でセンシングできるため、搬送ラインを停止することなく、かつ、高精度にリアルタイムのセンシングができる。よって、製造方法としても歩留まりがよく、製造効率に優れるといった利点も有する。
【0059】
図4は、第2実施形態に係る搬送方法の説明に供する側面図であり、図5は、第2実施形態におけるカメラの撮像画像に基づく傾きの変化量の取得を説明するための概略図である。
【0060】
第2実施形態に係る搬送方法では、搬送ウェブWを上方から撮像し、その撮像画像の画像ぼけの状態等を利用して距離計測を行い、これによって搬送ウェブWの傾きの変化量θを検知する。
【0061】
搬送装置2は、ウェブWが巻き取られたローラー10と、ガイドローラー11と、を備える。そして、搬送ラインの上方(図4における上方)に、搬送ウェブWの帯電量を測定するセンサ部12が配置されており、ローラー10側に撮像部15が配置されている。
【0062】
第2実施形態における位置情報取得工程では、搬送ウェブWの搬送ラインの上方又は下方に、レンズを備える撮像部15が少なくとも1つ配置され、搬送ウェブWについて、撮像部15が搬送ウェブWの表面上の所定の箇所を撮像して(図4の矢印F7参照)撮像画像150を取得し、取得された撮像画像150の画像ぼけから搬送ウェブWの傾きを検知し、この傾きの変化量θを、搬送ウェブWの位置変化量として取得できる。
【0063】
例えば、ローラー10にウェブW1を巻き取る場合、撮像部15によって搬送ウェブWの所定の箇所を撮像することによって撮像画像150を得る(図4の矢印F7、図5参照)。その際、搬送ウェブW1が撮像部15のレンズに対して水平方向でない場合(すなわち、搬送ウェブWが撮像部15のレンズに対して傾斜がかかっている場合)は、撮像画像150に画像ぼけが生じる。例えば、図5の場合、撮像画像150の紙面の右側領域A1には画像ぼけが少なく鮮明な画像である一方で、左側領域A2には画像ぼけが強く表れている。このように、画像ぼけの状態の強弱を利用して、右側領域A1と撮像部15との距離、及び左側領域A2と撮像部15との距離を算出し、撮像時点における搬送ウェブWの傾きを検知することができる。
【0064】
そして、さらに所定時間経過後に、同様にして、撮像部15によって搬送ウェブW2の所定の箇所を撮像することによって撮像画像150を得て(図4の矢印F7、図5参照)、撮像時点における搬送ウェブW2の傾きを検知する。
【0065】
このようにして搬送時の特定の時点における搬送ウェブW1の傾きと、この時点から所定時間が経過した後の時点における搬送ウェブW2の傾きとの差をとり、傾きの変化量θを取得する。
【0066】
ローラー10からウェブW2を繰り出す場合も、ローラー10にウェブW1を巻き取る場合と同様にして、少なくとも2つの時点におけるウェブW2,W1の傾きをそれぞれ取得し、これらの差をとることによって、傾きの変化量θを取得できる。
【0067】
撮像画像150の画像ぼけを利用して傾きを検知する方法としては、例えば、画像ぼけの輝度値、大きさ、色等に基づいて距離を算出することによって取得できる。一例として輝度値の場合について説明すると、画像の輝度値と実際の距離との関係から得られた校正曲線に基づき、距離を算出することができる。例えば、カメラとウェブWの端部付近の実際の距離と、ウェブWの端部付近におけるウェブWの表面とウェブWから外れた箇所にかけての輝度値プロファイルを把握しておき、それをもとに校正曲線を作成する。実運用時には、カメラで撮像したウェブWの端部付近の輝度値プロファイルを、上記方法で作成した校正曲線と比較することによって、距離を算出することができる。
【0068】
撮像部15は、レンズを備え、画像を撮像可能なカメラであればよく、特に限定されないが、例えば、ステレオカメラ、単眼カメラ等を使用することが好ましく、電波や光等を発することなくパッシブで測距でき、装置間の干渉による誤差等も少なく、データベース等によるパターン認識が不要であるため物体依存性も低い等の観点から、ステレオカメラを使用することがより好ましい。例えば、予め収集された画像データに基づくディープラーニングによって、推定距離を取得し、この推定距離から傾きを検知するようにしてもよい。このようなディープラーニングによる方法では、例えば、単眼カメラを用いる場合であっても、複合カメラと同程度の精度で推定距離を取得することができる。また、予め収集された画像データから距離推定のアルゴリズムを構築しておき、実使用時には、このアルゴリズムと組み合わせることによって、より高い精度で推定距離を取得して、傾きを検知するようにしてもよい。
【0069】
例えば、リアルタイムで撮像画像150を撮像する場合、最初のうちは撮像画像150に画像ぼけの領域の広さが狭く、画像ぼけの程度は小さいが、搬送が進むにつれて画像ぼけの程度が大きくなってくる(あるいはその逆)等によって、上述した傾きの変化量θをリアルタイムで取得することもできる。例えば、搬送開始時には焦点が合っていたが、搬送が進むにつれて焦点が合わなくなってくる(あるいはその逆)といった現象を利用できる。
【0070】
第2実施形態によれば、少なくとも1台の撮像部15を搬送ライン上に設置すればよい。撮像部15の設置位置は特に限定されないが、センサ部12の位置変化を高い精度で検知する観点から、搬送方向においてセンサ部12の近傍に設けることが好ましい。
【0071】
図6は、第3実施形態に係る搬送方法を説明するための上面図であり、図7は、第3実施形態に係る搬送方法を説明するための側面図である。
【0072】
第3実施形態に係る搬送方法は、搬送ウェブWを側方から撮像し、側面視した際の搬送ウェブWの傾斜角度を取得し、これによって搬送ウェブWの傾きの変化量θを検知する。
【0073】
搬送装置3は、ウェブWが巻き取られたローラー10と、ガイドローラー11と、を備える。そして、搬送ラインの上方(図7における上方)に、搬送ウェブWの帯電量を測定するセンサ部12が配置されており、搬送ウェブWの搬送ラインの側方(図6参照)に側方撮像部16が配置されている。
【0074】
第3実施形態における位置情報取得工程では、ウェブWの搬送ラインの側方に、側方撮像部16が少なくとも1つ配置され、側方撮像部16が、搬送ウェブWの側面から搬送ウェブWを撮像することによって(矢印F8参照)、搬送ウェブWの傾きを検知し、この傾きの変化量θを、搬送ウェブWの位置変化量として取得できる。
【0075】
なお、ここでいう傾きの変化量θとは、搬送時の特定の時点におけるウェブW1の傾きと、この時点から所定時間が経過した後の時点におけるウェブW2の傾きとの差をいう。
【0076】
そして、上記の特定の時点における搬送ウェブW1の傾きは、例えば、搬送ラインの側面視における(例えば、図7参照)、水平方向に対する搬送ウェブW1の傾斜を「傾き」としてもよい。あるいは、搬送ラインの側面視における、所定の方向(例えば、搬送開始時の搬送ラインの傾斜)を基準線とし、この基準線に対する搬送ウェブW1の傾斜を「傾き」としてもよい。いずれにおいても、側方撮像部16(図6参照)によって搬送ウェブW1の所定の箇所を撮像することによって撮像画像(側面画像、図7参照)を得て、搬送ウェブW1の傾きを検知することができる。
【0077】
また、上記の所定時間が経過した後の時点における搬送ウェブW2の傾きも、同様に、搬送ラインの側面視における、水平方向に対する搬送ウェブW2の傾斜を「傾き」としてもよい。あるいは、搬送ラインの側面視における(例えば、図7参照)、所定の方向(例えば、搬送開始時の搬送ラインの傾斜)を基準線とし、この基準線に対する搬送ウェブW2の傾斜を「傾き」としてもよい。いずれにおいても、側方撮像部16(図6参照)によって搬送ウェブW2の所定の箇所を撮像することによって撮像画像(側面画像、図7参照)を得て、搬送ウェブW2の傾きを検知することができる。
【0078】
本実施形態では、側面視における搬送ウェブWの傾きの変化量θを取得できればよく、個々の時点の傾きの具体的な傾斜角度を算出しなくてもよい。すなわち、本実施形態では、上述した側面視における搬送ウェブWの傾きを検知すればよく、その具体的な傾斜角度を必ずしも算出しなくともよい。
【0079】
ローラー10にウェブW1を巻き取る場合も、ローラー10からウェブW2を繰り出す場合も、同様に、少なくとも2つの時点における搬送ウェブWの傾きを検知し、これらの差をとることによって、傾きの変化量θを取得できる。
【0080】
ここでいう側方撮像部16は、搬送ウェブWの傾きを検知できるカメラを使用することができ、特に限定されないが、例えば、ステレオカメラ、単眼カメラ等を使用することが好ましく、電波や光等を発することなくパッシブで測距でき、装置間の干渉による誤差等も少なく、データベース等によるパターン認識が不要であるため物体依存性も低い観点から、ステレオカメラを使用することがより好ましい。例えば、側方撮像部16の撮像画像に基づき搬送ウェブWの傾きを検知する場合、第2実施形態において説明したように、撮像部15の上方からの撮像画像150に基づき傾きを検知する方法に準拠して行うことができる。例えば、予め収集された画像データに基づくディープラーニングによって、傾きを推定し、この推定された傾きを採用するようにしてもよい。このようなディープラーニングによる方法では、例えば、単眼カメラを用いる場合であっても、複合カメラと同程度の精度で上記傾きを取得することができる。また、予め収集された画像データから上記傾きのアルゴリズムを構築しておき、実使用時には、このアルゴリズムと組み合わせることによって、より高い精度で上記傾きを検知するようにしてもよい。
【0081】
第3実施形態によれば、少なくとも1台の側方撮像部16を搬送ラインの側方に設置すればよい。側方撮像部16の設置位置は特に限定されないが、センサ部12の位置変化を高い精度で検知する観点から、搬送方向においてセンサ部12の近傍に設けることが好ましい。
【0082】
上述した第1実施形態~第3実施形態では、検知工程としてセンサ部12によってウェブWの帯電量を測定する場合を例示したが、これらに限定されない。本実施形態では、種々の検知工程、種々の加工工程、及びその両方を行うことができる。
【0083】
本実施形態において行うことができる検知工程としては、例えば、
(ア)搬送ウェブWの帯電量を上述したセンサ部12によって測定する工程、
(イ)搬送ウェブWの表面をカメラ等によって撮像して、搬送ウェブWの表面への異物の付着が検知可能なセンサ部12によって、異物の有無を検知する工程、及び
(ウ)搬送ウェブWの表面をカメラ等によって撮像して、搬送ウェブWの表面の欠陥が検知可能なセンサ部12によって、欠陥の有無を検知する工程、
(エ)搬送ウェブWの表面のコート量を測定するセンサ部12によって、コート量を測定する工程、及び
(オ)搬送ウェブWの表面の凹凸形状を検知するセンサ部12によって、凹凸形状を検知する工程、
からなる群より選ばれる少なくとも1つを行う構成とすることができる。
【0084】
第1実施形態のように(ア)搬送ウェブWの帯電量をセンサ部12によって測定する場合について説明する。ウェブWの搬送が進むにつれてウェブWが帯電する。ウェブWが帯電してしまうと、ウェブWに静電気が発生したり、ウェブWの表面に塵埃等が付着してしまったりして、搬送トラブルの原因となる。そのため、製造ラインにおいて、ウェブWの帯電量(例えば、帯電電位、電荷量等)を把握して、適切な除電処理を施す必要がある。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、ウェブWの帯電量を高い精度で測定できるため、除電処理等を適切に行うことができる。この場合、位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部12の位置をウェブWとの位置関係を一定に保つようにするように制御することで、巻径に依存することなく真の帯電量を精度よく測定することができる。
【0085】
(イ)搬送ウェブWの表面をカメラ等によって撮像して、搬送ウェブWの表面への異物の付着が検知可能なセンサ部12によって、異物の有無を検知する場合について説明する。搬送ウェブWに塵埃、粉塵、パーティクル、虫、人皮等の異物が付着すると、搬送ウェブWを汚染し、製品不良の原因となる。このような異物は、例えば、ウェブ加工時に発生したり(スリットカス等)、ゴムローラーのゴム部材の摩耗や劣化によって発生したり、空気中の粉塵が搬送ウェブWに付着することによって発生したりする。そのため、製造ラインにおいて、搬送ウェブWに異物が付着したら、適切な除塵処理を施す必要がある。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、搬送ウェブWの異物の付着の有無を高い精度で検知できるため、ウェブクリーナーや除塵装置等を用いた除塵処理を適切に行うことができる。検出対象とする異物は、例えば、上述した、塵埃、粉塵、パーティクル、虫、及び人皮からなる群より選ばれる少なくとも1つとすることができる。この場合、位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部12の位置をウェブWとの位置関係を一定に保つようにするように制御することで、巻径に依存することなく常に同じ条件で異物を検知することができる。
【0086】
(ウ)搬送ウェブWの表面をカメラ等によって撮像して、搬送ウェブWの表面の欠陥が検知可能なセンサ部12によって、欠陥の有無を検知する場合について説明する。搬送ウェブWが搬送されている際に、例えば、ピンホール、折れ、シワ、たるみ、スリップ、スキュー、スクラッチ、擦り傷、気泡、色ムラ等の欠陥が発生すると、製品不良の原因となる。そのため、製造ラインにおいて、搬送ウェブWに欠陥が発生した場合には、それを速やかに検知し、搬送速度等の搬送条件をコントロールする必要がある。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、搬送ウェブWの欠陥の発生を高い精度で速やかに検知できるため、ウェブハンドリングを適切に行うことができる。検出対象とする欠陥は、例えば、上述した、ピンホール、折れ、シワ、たるみ、スリップ、スキュー、スクラッチ、擦り傷、気泡、及び色ムラからなる群より選ばれる少なくとも1つとすることができる。この場合、位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部12の位置をウェブWとの位置関係を一定に保つようにするように制御することで、巻径に依存することなく常に同じ条件で欠陥を検知することができる。
【0087】
(エ)搬送ウェブWの表面のコート量を測定するセンサ部12によって、コート量を測定する場合について説明する。例えば、搬送ウェブWが、樹脂製の基材である場合、印字印刷を施す目的等で設けられるインク受理層がコーティングされており、本実施形態に係る搬送方法によれば、高い精度でコート量を測定することが可能である。この場合、位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部12の位置を巻径に依存することなく常に同じ条件で異物を検知するように制御することで、巻径に依存することなく常に同じ条件でコート層のコート量を測定することができる。さらには、このようにして得られたコート量の情報に基づきコーティング装置(不図示)の塗布量等の塗布条件を制御可能とする構成としてもよい。
【0088】
(オ)搬送ウェブWの表面の凹凸形状を検知するセンサ部12によって、凹凸形状を検知する場合について説明する。ウェブ表面への加工を施す際、ある一定上の凹凸を有すると欠陥につながる可能性がある。本実施形態に係る搬送方法によれば、高い精度で凹凸形状を検知可能である。この場合、位置情報取得工程において取得された位置変化量に基づき、センサ部12の位置をウェブWとの位置関係を一定に保つようにするように制御することで、巻径に依存することなく常に同じ条件で凹凸形状を検知することができる。
【0089】
本実施形態において行うことができる加工工程としては、例えば、
(カ)搬送ウェブWの側縁をカットする加工部によって、搬送ウェブWにスリット加工を施す工程、
(キ)搬送ウェブWにレーザー照射する加工部によって、搬送ウェブWにレーザー加工を施す工程、及び、
(ク)搬送ウェブWにエアーを噴射する加工部によって、搬送ウェブWの表面から異物を除去する工程、
(ケ)搬送ウェブWの表面のエアーを吸引する加工部によって、搬送ウェブWの表面から異物を吸引して除去する工程、
(コ)搬送ウェブWの蛇行を制御するガイドロール機構を備える加工部によって、搬送ウェブWのたるみ及び/又はシワを補正する工程、並びに、
(サ)搬送ウェブWの表面に放電処理を施す加工部によって、搬送ウェブWの表面を改質する工程、
からなる群より選ばれる少なくとも1つを行う構成とすることができる。
【0090】
(カ)搬送ウェブWの側縁をカットする加工部によって、搬送ウェブWにスリット加工を施す場合について説明する。例えば、ウェブWの搬送ライン上にスリッター装置を設け、搬送方向に沿って搬送ウェブWの側縁等をカットして、ウェブWを所望の幅長となるよう加工する。このようなスリット加工を行う場合、加工製品の寸法形状の精度が高いことが望まれる。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、位置情報取得工程によって位置変化量を取得し、これによって搬送ウェブWの搬送に伴う位置変化量を正確に把握できるため、高い精度でスリット加工を施すことができる。例えば、微細な形状であっても正確に加工することができる。
【0091】
(キ)搬送ウェブWにレーザー照射する加工部によって、搬送ウェブWにレーザー加工を施す場合について説明する。例えば、レーザー照射することによってレーザー加工を施すことができる光源を備えるレーザー加工部(不図示)を設けることによって、搬送ウェブWに対して所望の加工を施すことができる。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、位置情報取得工程によって位置変化量を取得し、これによって搬送ウェブWの搬送に伴う位置変化量を正確に把握できるため、高い精度でレーザー加工を施すことができる。例えば、微細な形状であっても正確に加工することができる。
【0092】
(ク)搬送ウェブWにエアーを噴射する加工部によって、搬送ウェブWの表面から異物を除去する場合について説明する。搬送ウェブWにエアーを噴射することによって搬送ウェブWの表面に付着した異物を吹き飛ばすことができる。これによって、搬送ウェブの表面から異物を除去することができる。その際、例えば、エアーを吐出可能なノズル又はブロー部を搬送ウェブWの上方近傍又は下方近傍に設置する。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、位置情報取得工程によって位置変化量を取得し、これによって搬送ウェブWの搬送に伴う位置変化量を正確に把握できるため、巻径に依存することなく常に同じ条件でウェブWにエアーを吹き付けることができるため、搬送ウェブWの全長にわたって異物をもれなく除去することができる。
【0093】
(ケ)搬送ウェブWの表面のエアーを吸引する加工部によって、搬送ウェブWの表面から異物を吸引して除去する場合について説明する。搬送ウェブWの表面のエアーを吸引することによって、搬送ウェブWの表面に付着した異物を吸い取ることができる。これによって、搬送ウェブの表面から異物を除去することができる。その際、例えば、吸引装置を搬送ウェブWの上方近傍又は下方近傍に設置する。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、位置情報取得工程によって位置変化量を取得し、これによって搬送ウェブWの搬送に伴う位置変化量を正確に把握できるため、巻径に依存することなく常に同じ条件で搬送ウェブWから異物を吸引することができるため、異物をもれなく除去することができる。
【0094】
(コ)搬送ウェブWの蛇行を制御するガイドロール機構を備える加工部によって、搬送ウェブWのたるみ及び/又はシワを補正する場合について説明する。搬送ウェブWの蛇行を制御するガイドロール機構を設置することによって、搬送によって生じる搬送ウェブWのたるみやシワを補正することができる。その際、例えば、搬送ウェブWの蛇行状態を検知する装置が設置される。この点、本実施形態に係る搬送方法によれば、位置情報取得工程によって位置変化量を取得し、これによって搬送ウェブWの搬送に伴う位置変化量を正確に把握できるため、巻径に依存することなく常に同じ条件で搬送ウェブWの蛇行を検知することができるため、たるみやシワを正確にもれなく補正することができる。
【0095】
(サ)搬送ウェブWの表面に放電処理を施す加工部によって、搬送ウェブWの表面を改質する場合について説明する。例えば、搬送ウェブWの濡れ性について表面改質する場合、搬送ウェブWの表面に放電処理を施すことによって、搬送ウェブWの表面を他材料との密着性が向上するように改質することができる。その際、例えば、放電処理装置を設置する。これによって搬送ウェブWの搬送に伴う位置変化量を正確に把握できるため、巻径に依存することなく常に同じ条件で搬送ウェブWに放電処理を施すことができる。放電処理としては、例えば、コロナ放電やプラズマ処理等が挙げられる。
【0096】
<ウェブの製造方法>
【0097】
本実施形態によれば、ローラー10からウェブWが繰り出される繰り出し工程、又は、ローラー10にウェブWが巻き取られる巻き取り工程と、上述したウェブWの搬送方法によって、ウェブWを搬送する搬送工程と、を含む、ウェブWの製造方法を提供することができる。
【0098】
本実施形態に係る製造方法では、上記工程の他に、ウェブWの製造において行われる公知の工程を更に行ってもよい。本実施形態に係る製造方法によれば、上述したウェブWの搬送方法において得られる種々の利点を製品ウェブの品質に反映させることができる。
【0099】
<ウェブの搬送装置>
【0100】
本実施形態によれば、上述したウェブWの搬送方法を実施するウェブWの搬送装置を提供することができる。
【0101】
例えば、ローラー10から繰り出される又はローラー10に巻き取られる、ウェブWの搬送装置であって、
ウェブWを搬送する搬送部(不図示)と、
ローラー10らの繰り出し後又はローラー10への巻き取り前である、搬送ウェブWの所定の物性を検知するセンサ部12、又は、搬送ウェブWに対して所定の加工を施す加工部(不図示)と、
ローラー10からの繰り出し後又はローラー10への巻き取り前である、搬送ウェブWについて、搬送ウェブWに接触することなく、側面視における搬送ウェブWの傾きを検知し、傾きの変化量θを、搬送ウェブWの位置変化量として取得する位置情報取得部と、
位置情報取得部において取得された位置変化量に基づき、センサ部12又は加工部(不図示)の位置を制御する位置制御部と、
を備える、ウェブWの搬送装置1とすることができる(例えば、図1等参照)。
【0102】
図示はしないが、搬送部については、搬送ラインを駆動させることができればよく、公知の手段を採用することができる。例えば、上述した搬送方法の第1実施形態の場合、搬送ラインを駆動させることができる駆動ローラー等を搬送部として用いることができる。また、本実施形態に係る製造装置では、上述した搬送方法の第2実施形態及び第3実施形態等において説明した内容を適宜採用することもできる。
【0103】
センサ部12としては、上述したように、(ア)~(オ)の検知工程で使用されるセンサ部12を採用することができる。例えば、(ア)帯電量を測定する場合には、表面電位センサを用いた静電気測定装置を採用できる。(イ)異物を検知する場合には、撮像画像によって異物を検知可能な異物・欠点検査装置を採用できる。(ウ)欠陥を検知する場合には、撮像画像によって欠陥を検知可能な異物・欠点検査装置を採用できる。(エ)コート量を測定する場合には、分光干渉法によるインライン膜厚測定装置を採用できる。(オ)凹凸形状を検知する場合には、光源及び光源からの反射光の受光強度を検知するセンサを採用できる。
【0104】
また、上述したように、(カ)~(サ)の加工工程で使用される加工部を採用できる。例えば、(カ)スリット加工を施す場合には、搬送ウェブWの側縁等をカットできるスリッター装置等を採用することができる。(キ)レーザー加工を施す場合には、搬送ウェブWに対してレーザー照射可能なレーザー照射部を採用できる。(ク)搬送ウェブWにエアー噴射を行う場合には、搬送ウェブWに対して全幅又は局所的にエアー噴射できる非接触異物除去装置を採用できる。(ケ)搬送ウェブWにエアー吸引を行う場合には、搬送ウェブWに対して全幅又は局所的にエアー噴射できる非接触異物除去装置を採用できる。(コ)搬送ウェブWの蛇行を制御する場合には、搬送ウェブWに対して基準位置からのずれを修正できる蛇行防止装置(EPC(Edge Position Control)装置やCPC(Center Position Control)装置等)を採用できる。(サ)搬送ウェブWの表面改質を行う場合には、コロナ放電によりウェブの表面の活性を高めるコロナ処理装置や、プラズマ処理によりウェブの表面の活性を高めるプラズマ処理装置等を採用できる。上述したこれらの加工部は、センサ部12と併用してもよいし、単独で使用してもよい。
【0105】
以上説明してきたように、本実施形態によれば、上述した位置情報取得工程によって、非接触で搬送ウェブの傾きの変化量を取得するため、ライン上を搬送されているウェブ(搬送ウェブ)の位置変化をリアルタイムで高い精度で把握することができる。このようにして得られる搬送ウェブの位置変化に基づき、センサ部又は加工部の位置を制御するため、搬送ウェブの物性をセンサ部によって高い精度で検知できるし、又は、搬送ウェブに対して高い精度で所定の加工を施すことができる。さらに、本実施形態に係る搬送方法は、傾きの変化量を非接触で取得できるため、搬送ラインや製品ウェブに悪影響を及ぼすことがない。
【0106】
また、本実施形態によれば、ウェブの所定の物性(例えば、ウェブの帯電量、異物や欠陥の有無、ウェブの表面のコート量や凹凸形状等)を検知する検知工程、ウェブに所定の加工(例えば、スリット加工、レーザー加工、表面の異物除去、ウェブのたるみやシワの補正、ウェブの表面改質等)を施す加工工程、又はその両方も採用できる。検知工程、加工工程のいずれにおいても、上述した位置情報取得工程において取得された搬送ウェブの位置情報変化量に基づき、センサ部や加工部の位置を制御できるため、検知精度や加工精度が高い。
【0107】
さらに、本実施形態によれば、非接触で、連続的に搬送ウェブの位置変化量を取得できるため、刻々と変化する位置変化量をセンサ部や加工部の位置制御部等にフィードバックすることで、リアルタイムでセンサ部や加工部を位置制御することもできる。その結果、センサ部や加工部を搬送ラインから常に一定の距離を維持するように制御することができる。よって、本実施形態は、リアルタイムで高い精度で、搬送されるウェブの物性を検知でき、又は、搬送されるウェブの加工を行うこともできる。
【実施例
【0108】
以下の実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0109】
まず、繰り出し試験において、ウェブまでの測定距離を変えつつ、そのときの帯電量値を測定することで、ウェブの繰り出しによって生じる搬送ウェブの位置変動によって、帯電量値がどの程度変動するのかを検証した(参考例参照)。
【0110】
次に、図1に示す搬送装置1を用いて、ロール体RからウェブWを繰り出し、その搬送ウェブWの帯電量をリアルタイムで測定し、その精度について検証した(実施例参照)。
【0111】
<参考例>
【0112】
まず、搬送ウェブの模擬フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、「ルミラー(商標) T-60」、厚さ50μm、東レ社製)を準備した。そして、模擬フィルムの帯電量の測定には、帯電量測定機(「APB-01」、原田産業社製)を用いた。
【0113】
そして、模擬フィルムの表面から帯電量測定機までの距離(測定距離)を、0mm(すなわち、模擬フィルム上)、25mm、50mm、75mm、100mm、125mm、150mm、175mm、200mm、300mm、500mmとし、それぞれの場合の帯電量を測定した。この測定距離は、後述する図1における搬送装置1において、搬送ウェブWとセンサ部12の帯電量測定センサ120までの距離に相当する。その結果を図8に示す。
【0114】
図8は、繰り出し試験において、模擬フィルムまでの測定距離と、そのときの帯電量の測定値をプロットしたグラフである。図8は、搬送ウェブの模擬フィルムまでの測定距離(単位:mm)を横軸にとり、そのときの帯電量の測定値(単位:kv)を縦軸にとった。
【0115】
図8に示すように、測定距離が0mmである場合は-5.5kVであったが、測定距離が50mmである場合は、-4kVとなり、さらに測定距離が大きくなるにつれて、帯電量が0kVに近づいていき、測定距離が500mmである場合には、-0.5kVとなった。このように、模擬フィルムの測定距離が変動することによって、帯電量の測定値が-5.5kV~-0.5kVの範囲に大きくバラツキが生じることが確認された。
【0116】
<実施例>
【0117】
次に、本発明の一例として、図1に示す搬送装置1を用いて、ロール体RからウェブWを繰り出し、その搬送ウェブWの帯電量をリアルタイムで測定し、その測定精度を検証した。
【0118】
まず、ウェブWとしてポリエチレンテレフタレートフィルム(PET、「ルミラー(商標) T-60」、厚さ50μm、東レ社製)がローラー10に巻き取られたロール体Rを準備した。ウェブ長は500mであり、ウェブ幅は280mmである。また、ローラー10のロール径は3インチであった。
【0119】
次に、ローラー10の中心軸から200mm手前の位置に、センサ部12の帯電量測定センサ120として帯電量測定機(「APB-01」、原田産業社製)を設置した。繰り出し開始時のセンサ部12から搬送ウェブWまでの距離を50mmに設定した。すなわち、帯電量測定センサ120から搬送ウェブWまでの測定距離を50mmに設定した。
【0120】
そして、センサ部12の前後移動部121及び回転移動部122として電動アクチュエーター(「EAC2-E10-ARAK」、オリエンタルモーター社製)を用いて、搬送時には帯電量測定センサ120から搬送ウェブWまでの測定距離が常に50mmを維持するように、帯電量測定センサ120の位置を自動制御できるように設定した。
【0121】
さらに、センサ部12から上流側に50mmの位置に第1焦点距離測定部13を設置し、センサ部12から下流側に50mmの位置に第2焦点距離測定部14を配置した。第1焦点距離測定部13及び第2焦点距離測定部14は、いずれも搬送ラインのエッジ部分に配置した。これらの第1焦点距離測定部13及び第2焦点距離測定部14は、いずれも、レンズを備えたカメラ(「CS41-C」、松電舎社製)であり、各カメラから搬送ウェブWまでの焦点距離を測定した(図3参照)。
【0122】
上記の搬送ラインについて、搬送速度20m/分でローラー10から搬送ウェブW2を繰り出して(図1の矢印F2参照)、ロール体Rの繰り出し試験を行った。
【0123】
繰り出し試験では、以下の手法によって、搬送ウェブWの傾きの変化量θを算出した(図3参照)。
【0124】
まず、繰り出し開始時から所定の時点において、第1焦点距離測定部13が搬送ウェブW1に対する焦点距離aを測定し、第2焦点距離測定部14が搬送ウェブW1に対する焦点距離cを測定し、第1焦点距離測定部13と第2焦点距離測定部14との配置距離、焦点距離a、焦点距離cとの位置関係から、搬送ウェブW1の傾きを検知した。
【0125】
続いて、上記の測定から所定の時間が更に経過した時点で、第1焦点距離測定部13が搬送ウェブW2に対する焦点距離bを測定し、第2焦点距離測定部14が搬送ウェブW2に対する焦点距離dを測定し、第1焦点距離測定部13と第2焦点距離測定部14との配置距離、焦点距離b、焦点距離dとの位置関係から、搬送ウェブW2の傾きを検知した。
【0126】
このようにして検知した搬送ウェブW1の傾きと搬送ウェブW2の傾きから、両時点の傾きの変化量θを取得し、搬送ウェブWの位置変化量とした。
【0127】
上記の手法をリアルタイムで行うことによって、傾きの変化量θを繰り出し開始時からリアルタイムで取得して、搬送ウェブWの位置変化量をリアルタイムでモニタリングした。このようにして得られたリアルタイムの搬送ウェブWの位置変化量に基づき、アクチュエーターを制御した。具体的には、センサ部12が搬送ウェブ搬送の位置変化量に追従して移動することで、センサ部12が搬送ウェブWに対して当初の測定距離(50mm)を常に維持するようにリアルタイムで自動制御した。その結果を図9に示す。
【0128】
図9は、実施例の繰り出し試験における帯電量の測定結果を示すグラフである。図9は、この巻き返し試験における搬送ウェブWの繰出量(単位:m)を横軸にとり、センサ部12による帯電量(単位:kv)を縦軸にとった。
【0129】
参考例の結果(図8)に基づけば、ウェブWの測定距離が、例えば、50mmの位置を基準とすると、基準である50mmの位置から-50mm~+50mm変動した際に、測定値に±50%程度の位置変動によるばらつきが生じたと考えられる。一方、実施例(図9)では、繰り出し開始時(表層側)から繰り出し終了時(芯部側)までにおいて、特に繰り出し終了時(芯部側)のバラつきは、50%よりも低い値に抑えることができた。
【0130】
なお、実施例の図9において、繰り出し開始時(表層側)から繰出量400mまでの中間層付近には、瞬間的に帯電量が0Vに近づくピークが多数測定されているが、これは搬送時によるウェブWの位置変化量によるバラツキが原因ではなく、繰り出し直後にウェブW表面に帯電した電荷が放電し、瞬間的な電圧変化が生じたためと考えられる。
【0131】
以上より、本実施例の搬送方法によれば、繰り出し開始時(繰出量0m)から繰り出し終了時(繰り出し量500m)までのセンサ部12の帯電量の測定値にバラツキが少なく、高い精度でセンサ部12によって連続的にセンシングできていたことが確認された。
【符号の説明】
【0132】
1,2,3:搬送装置、
10:ローラー、
11:ガイドローラー、
12:センサ部、
13:(第1)焦点距離測定部、
14:(第2)焦点距離測定部、
15:撮像部、
16:側方撮像部、
120:帯電量測定センサ、
121:前後移動部、
122:回転移動部、
150:撮像画像、
W,W1,W2:(搬送)ウェブ、
R,R1,R2:ロール体、
F1,F2,F3,F4,F5,F6,F7,F8:矢印、
A1:右側領域、
A2:左側領域、
θ:傾きの変化量、
a,b,c,d:焦点距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9