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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】重力感受性障害治療装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 11/00 20220101AFI20250117BHJP
   A61H 23/02 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
A61F11/00
A61H23/02 330
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021103141
(22)【出願日】2021-06-22
(65)【公開番号】P2023002111
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2024-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】507126487
【氏名又は名称】公立大学法人奈良県立医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】599091704
【氏名又は名称】株式会社ユニメック
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】和田 佳郎
(72)【発明者】
【氏名】田里 博
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第109009663(CN,A)
【文献】国際公開第2019/230941(WO,A1)
【文献】特開2014-221131(JP,A)
【文献】特表2021-514782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0089049(US,A1)
【文献】和田 佳郎ら,頭部傾斜時の重力感受性を評価する臨床検査法の開発,日本耳鼻咽喉科学会会報,2016年,119,9,pp.1201-1209,DOI: https://doi.org/10.3950/jibiinkoka.119.1201
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 11/00-11/30
A61H 23/02
Japio-GPG/FX
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
Science Direct
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドセット(100)及びコントローラ(200)を備える重力感受性障害治療装置(900)であって、
前記ヘッドセット(100)は、
所定幅の板状物が屈曲された略円弧形状であり、被験者の頭部に装着される可撓性を有するメインフレーム(110)と、
重力方向からの傾きを頭部傾斜情報として検出する頭部傾斜センサ(120)と、
前記頭部傾斜情報を被験者にフィードバックする略直方体形状の制御部(130)と、
一端部側に略U字形状の軸受部を有する振動子アーム(140)と、
前記被験者の口角部位に接触して、振動刺激を該被験者の口角部位に与える一対の略ドラム形状の振動子(150)と、を有し、
前記振動子(150)は前記振動子アーム(140)の前記略U字形状の軸受部(141)に回動自在に取り付けられ、
前記振動子アーム(140)はその他端部(142)が前記制御部(130)の一端部(131)に回動自在に取り付けられ、
前記制御部(130)はその他端部(132)が前記メインフレーム(110)の略円弧先端部(111)に回動自在に取り付けられており、
前記コントローラ(200)は、
前記頭部傾斜センサ(120)で感知された頭部傾斜情報を受信し、該頭部傾斜情報を被験者にフィードバックするための電気信号を前記制御部(130)に送信するプロセッサ(210)と、
前記振動子(150)の振動刺激強度についての情報を入力する入力部(220)と、を有し、
前記ヘッドセット(100)と前記コントローラ(200)とは無線接続されており、
前記頭部傾斜センサ(120)で検出された頭部傾斜情報を被験者の口角部位に振動刺激としてフィードバックすることで重力感受性障害を治療する、
ことを特徴とする重力感受性障害治療装置(900)。
【請求項2】
前記頭部傾斜センサ(120)は前記メインフレーム(110)の略円弧形状の中央部に設けられ、重力方向からの変異を検出する圧電素子を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項3】
前記振動子アーム(140)の前記略U字形状の軸受部(141)には、U字先端部の内側面に対向する軸受凹部がそれぞれ設けられ、
前記略ドラム形状の振動子には支軸が固着され、
前記振動子の支軸が前記振動子アームの前記軸受凹部に回動自在に軸支されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項4】
前記振動子と前記制御部とは有線接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項5】
前記振動子アームの他端部に第1ボルトが取り付けられ、前記制御部の一端部に前記第1ボルトと螺合するナットが取り付けられることで、前記振動子アームの他端部が前記制御部の一端部に回動自在に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項6】
前記メインフレームの略円弧先端部に第2ボルトが取り付けられ、前記制御部の他端部に前記第2ボルトと螺合するナットが取り付けられることで、前記制御部の他端部が前記メインフレームの略円弧先端部に回動自在に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項7】
前記振動子(150)が被験者の口角部位に与える振動刺激の周波数は120Hz~180Hzである、
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項8】
前記被験者の疾患は、メニエール病、末梢前庭障害、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、前庭神経炎、突発性難聴、起立性低血圧、聴神経腫瘍、真珠腫性中耳炎、片頭痛関連めまい、心因性めまい、又は、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)である、
ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項9】
前記ヘッドセット(100)は疾患の治療対象である被験者に取り付けられるための被験者専用具であり、前記コントローラ(200)は疾患を治療する医師のための医師専用具であることを特徴とする請求項1乃至8の何れか1項に記載の重力感受性障害治療装置。
【請求項10】
前記ヘッドセット(100)と前記コントローラ(200)とはインターネットを介して無線接続されていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の重力感受性障害治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難治性めまいの一因として考えられている重力感受性障害の治療装置に関する。
【背景技術】
【0002】
めまいには既存の臨床検査では異常が検出できず、通常のめまい治療では改善しない難治性めまいがある。そのため難治性めまいは長期化・高齢化し、患者の不安感増大、活動量低下、転倒リスク増加、QOL低下、健康寿命短縮、医療費増額、家族・医療・社会の負担増大など様々な問題を生じさせている。
【0003】
難治性めまいの多くはフワフワ感・浮動感を訴えることから(非特許文献1)、本発明者は重力感受性障害がその一因であると考え、重力を感受する耳石器の機能を検査する方法として頭部傾斜SVV検査方法(特許文献1)及びその診断補助方法(特許文献2)を提案している。この方法では、頭部傾斜角度Xと自覚的視性垂直位Aとの差である頭部傾斜感覚Yを算出し、頭部傾斜角度Xを横軸の座標とし、頭部傾斜感覚Yを縦軸の座標としてデータをプロットして近似直線を求め、その直線の傾きを頭部傾斜感覚ゲインであるZとして定義する。頭部傾斜感覚ゲインZが、1.25以上又は0.80以下の場合、被験者の耳石器に異常すなわち重力感受性障害があると判断する。
【0004】
現在、難治性めまいの治療として、抗めまい薬、抗ヒスタミン薬、鎮静薬、制吐剤、内耳循環改善剤などの内服治療が広く用いられているが、いずれも対処療法にすぎない。さらに、前庭機能の促進を目的とした平衡訓練が強く勧められているが、長期的に取り組む必要があり、前庭機能が亢進している状況では逆効果となる場合がある。また、重力感受性障害に基づく治療として、平衡感覚代行システム(Brainport Balance Device:BBD)が提案されている(非特許文献2)。BBDは、頭部傾斜情報を舌に置いた電極アレイを介して電気刺激することにより、重力センサである耳石器の機能を代用する装置である。しかしながら、BBDでは舌を電気刺激することによる侵襲性、口腔内に電極アレイを置くことによる衛生面の問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許6105383号
【文献】特許6482583号
【非特許文献】
【0006】
【文献】Meniere’s disease with unremitting floating sensation is associated with canal paresis, gravity sensitive dysfunction,mental illness and bilaterality Auris Nasus Larynx 2019;46(2):186-192.
【文献】Neurogenesis in the cochlear nucleus following hearing loss :potential implications for tinnitus treatment, Equilibrium Res Vol. 68(5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、難治性めまいの一因となる重力感受性障害を適切に治療する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる重力感受性障害治療装置(900)は、ヘッドセット(100)及びコントローラ(200)を備える重力感受性障害治療装置(900)であって、前記ヘッドセット(100)は、所定幅の板状物が屈曲された略円弧形状であり、被験者の頭部に装着される可撓性を有するメインフレーム(110)と、重力方向からの傾きを頭部傾斜情報として検出する頭部傾斜センサ(120)と、前記頭部傾斜情報を被験者にフィードバックする略直方体形状の制御部(130)と、一端部側に略U字形状の軸受部を有する振動子アーム(140)と、前記被験者の口角部位に接触して、振動刺激を該被験者の口角部位に与える一対の略ドラム形状の振動子(150)と、を有し、前記振動子(150)は前記振動子アーム(140)の前記略U字形状の軸受部(141)に回動自在に取り付けられ、前記振動子アーム(140)はその他端部(142)が前記制御部(130)の一端部(131)に回動自在に取り付けられ、前記制御部(130)はその他端部(132)が前記メインフレーム(110)の略円弧先端部(111)に回動自在に取り付けられており、前記コントローラ(200)は、前記頭部傾斜センサ(120)で感知された頭部傾斜情報を受信し、該頭部傾斜情報を被験者にフィードバックするための電気信号を前記制御部(130)に送信するプロセッサ(210)と、前記振動子(150)の振動刺激強度についての情報を入力する入力部(220)と、を有し、前記ヘッドセット(100)と前記コントローラ(200)とは無線接続されており、前記頭部傾斜センサ(120)で検出された頭部傾斜情報を被験者の口角部位に振動刺激としてフィードバックすることで重力感受性障害を治療する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、重力感受性障害を適切に治療することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明にかかる重力感受性障害治療装置の概略を説明する図である。
図2】ヘッドセットの側面図である。
図3】ヘッドセットの上面図である。
図4】ヘッドセットの一部分解図である。
図5】本発明にかかる重力感受性障害治療装置の写真図である。
図6】重力感受性障害の治療効果を示す図であり、そのうち(A)は重力感受性の左右差は小さくなり、患者の重力感受性の適正化がみられたことを示す図であり、(B)は過大な重力感受性が小さくなり、患者の重力感受性の適正化がみられたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態について具体的に説明するが、当該実施形態は本発明の原理の理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲は、下記の実施形態に限られるものではなく、当業者が以下の実施形態の構成を適宜置換した他の実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【0012】
図1は本発明にかかる重力感受性障害治療装置900の概略を説明する図である。本発明にかかる重力感受性障害治療装置900は、図1に示されるように、ヘッドセット100及びコントローラ200を備える。
【0013】
重力感受性障害(Gravity Perception Disturbance, GPD)はめまい・平衡障害の一因となる重力を感知する能力の障害である。本発明にかかる重力感受性障害治療装置は、頭部直立及び左右傾斜時における正しい重力情報を、耳石器以外の感覚入力で身体に伝えることにより重力感受性を適正化する装置である。
【0014】
図2はヘッドセット100の側面図である。図3はヘッドセット100の上面図である。図4はヘッドセット100の一部分解図である。
【0015】
図1乃至図3に示されるように、ヘッドセット100は、メインフレーム110と、頭部傾斜センサ120と、制御部130と、振動子アーム140と、振動子150と、を有する。
【0016】
メインフレーム110は、可撓性を有する所定幅の板状物が屈曲された略円弧形状であり、被験者の頭部に密着して装着される。メインフレーム110の被験者頭部への装着方法は、特に限定されるものではなく例えば頭部傾斜センサ120を被験者の頭頂部近傍に位置させるカチューシャ方式や、また頭部傾斜センサ120を被験者の後頭部近傍に位置さえる耳かけ方式等が挙げられる。
【0017】
頭部傾斜センサ120は、メインフレーム110の略円弧形状の中央部に設けられている。頭部傾斜センサ120は頭部傾斜情報を被験者にフィードバックする。頭部傾斜センサ120は、傾斜センサ本体121が外部衝撃から保護されるように傾斜センサカバーにて保護されている。頭部傾斜センサ120は、被験者の頭部が例えば左右に傾いた場合に重力方向(垂直方向)からの変異を検出する。頭部傾斜センサ120は重力方向からの変異を検出できるものであればその構成は特に限定されるものではない。例えば頭部傾斜センサ120は圧電素子を有し、この圧電素子は圧電薄膜の上面に形成された上部電極と、圧電薄膜の下面に形成された下部電極とを有するものとすることができる。圧電素子の上部電極及び下部電極から引き出されたセンサ配線は、制御部130内に設けられた電源部137と有線接続されている。また例えば頭部傾斜センサ120は加速度計を有し、重力方向からの変異に応じた重力加速度ベクトルを検出するものとすることも可能である。
【0018】
図4に示されるように、制御部130は、制御部ケース135と、制御部ケース蓋136と、制御基板134と、電源部137と、を有する。制御部ケース135は略直方体形状であり、その内部には制御基板134及び電源部137が収納され、制御部ケース蓋136にて蓋されて密閉化される。図4では制御部130の一方のみに制御基板134が搭載され、他方にのみ電源部137が搭載されているが、これは図の簡略化のため他方には電源部137が省略されており、一方には電源部137が省略されているにすぎない。電源部137は制御基板134に電力を供給し、図示されない制御部LEDは点灯をオンオフすることで稼働状態を明示する。なお、制御部130は、図面右側と図面左側とで構造を相違するものとすることも可能である。例えば、図面右側の制御部130には、プロセッサが内蔵され、コントローラ200からの頭部傾斜角度と刺激強度のパラメータを受信・保持し、パラメータに沿って振動子150を左右個別に刺激する機能と、治療中の頭部傾斜角度と刺激強度値をコントローラ200へ送信する機能と、を有するものとすることができる。そして図面左側の制御部130には、バッテリー充電及び電圧安定化を制御する機能を有するものとすることが可能である。これによりコントローラ200で設定した頭部傾斜角度と刺激強度のパラメータを図面右側の制御部130で受信・保持し、パラメータに沿って振動子150を左右個別に刺激制御を行い、同時に頭部傾斜角度と刺激強度値をコントローラ200へ送信する。コントローラ200は受信した頭部傾斜角度と刺激強度値を表示することで可視化する。医師は、コントローラ200に可視化された頭部傾斜角度と刺激強度値と、患者の状態とを診察し、頭部傾斜角度と刺激強度値の組み合わせを複数回試し患者個別に適切なパラメータを設定する。 振動子アーム140はその一端部側に略U字形状の軸受部141を有する。軸受部141には、U字先端部の内側面に対向する軸受凹部がそれぞれ設けられている。なお軸受部141の形状は図4に記載されたものに限定されるものではなく、その先端部が二股に分かれ内側面に対抗する軸受凹部が設けられているものであれば適宜利用可能である。
【0019】
振動子150は略ドラム形状であり、被験者の口角部位に接触して、振動刺激を該被験者の口角部位に与える。刺激の種類としては、耳石器感覚が原始的な感覚であることから、視覚や聴覚のような高次感覚ではなく同じ原始的な感覚である振動刺激とした。
【0020】
振動子150には支軸が固着されており、その支軸が振動子アーム140の軸受凹部に回動自在に軸支されている。これにより振動子150は振動子アーム140の前記略U字形状の軸受部141に回動自在に取り付けられ、被験者の顔が多少移動したとしても振動子150は被験者の口角部位に適切に接触できる。振動に対して感度の高い部位は舌、指先、口角等があるが、舌は侵襲性や衛生面で問題があり、指先は腕を交叉すると左右を区別しにくくなる等の理由から振動部位を伝達する部位として口角部位が選択されている。
【0021】
振動子150は、制御部130の制御基板134と電気的に接続されている振動発生部と、該振動発生部を被覆して被験者の口角部位に当接する振動被覆部と、を有する。振動被覆部は振動発生部を外部衝撃から保護するとともに振動発生部で発生した振動を被験者の口角部位に効果的に伝達可能な例えばポリウレタン等の材質から形成される。
【0022】
振動子150が被験者の口角部位に与える振動刺激の周波数は、特に限定されるものではないが低周波のほうが高感度であるため好ましい。具体的には例えば100Hz~200Hzであり、好ましくは120Hz~180Hzであり、更に好ましくは150Hz~170Hzであり、最も好ましくは160Hzである。
【0023】
振動子アーム140の他端部142にはボルト孔が穿設され、制御部130の一端部131にもボルト孔が穿設されている。振動子アーム140の他端部142のボルト孔に第1ボルトが取り付けられ、制御部130の一端部131に第1ボルトと螺合するナットが取り付けられる。これにより振動子アーム140の他端部142が制御部130の一端部131に回動自在に取り付けられる。
【0024】
制御部130の他端部132にはボルト孔が穿設され、メインフレーム110の略円弧先端部111にもボルト孔が穿設されている。メインフレーム110の略円弧先端部111に第2ボルトが取り付けられ、制御部130の他端部132に第2ボルトと螺合するナットが取り付けられる。これにより制御部130の他端部132がメインフレーム110の略円弧先端部111に回動自在に取り付けられる。
【0025】
図1に示されるように、コントローラ200は、プロセッサ210と、入力部220と、を有する。ヘッドセット100とコントローラ200とは無線接続されている。無線接続されているため装着性に優れ安価で簡便という点で従来の治療法や装置に比較して技術的・経済的に優れている。またヘッドセット100とコントローラ200とは無線接続されているので例えばコントローラ200を医師専用としヘッドセット100を患者専用として取り扱いを分離することができ、医師がコントローラ200により患者個別の頭部傾斜角度と刺激強度パラメータを設定した後は、患者はヘッドセット100のみを装着しコントローラ200を持つ必要がなく、これにより患者は日常生活しながらの治療がより効果的に実施可能となる。更にはヘッドセット100とコントローラ200とは無線接続されているので、本発明によればインターネットを利用した在宅医療支援システムの構築が可能となり、患者宅と診察室をインターネットで結び治療経過を診察しながら、医師はコントローラ200を操作して適切なパラメータを再設定することができる。コントローラ200はデータロガーの機能を有することも可能であり、自宅に置くことで長期間のデータを保持し経過観察に適している。院内での再診時に有益な情報だけでなく、インターネットでの診察、診断に貴重な情報源となる。頭部傾斜センサ120は重力方向からの傾き角度に関する無線信号を送信する傾き角度信号送信部を有し、該傾き角度信号送信部からの傾き角度に関する無線信号を受信する傾き角度信号受信部がコントローラ200のプロセッサ210の内部に設けられている。
【0026】
プロセッサ210は、頭部傾斜センサ120で感知された頭部傾斜情報を受信し、該頭部傾斜情報を被験者にフィードバックするための電気信号を制御部130に送信する。即ち、コントローラ200のプロセッサ210の内部には傾きの角度に応じた無線信号を送信する傾き強度信号送信部を有し、該傾き強度信号送信部からの傾きの角度に応じた無線信号を受信する傾き強度信号受信部が制御部130の制御基板134内部に設けられている。
【0027】
制御部130は、頭部傾斜センサ120で感知された頭部傾斜情報に対応する電気信号を振動子150に送信し、振動子150は被験者の口角部位に振動刺激を与える。即ち、頭部傾斜センサ120で感知された頭部傾斜角度が大きいほど、振動子150が被験者の口角部位に与える振動刺激は大きくなる。これにより頭部傾斜情報が被験者に適格にフィードバックされ重力感受性障害が治療される。
【0028】
本発明にかかる重力感受性障害治療装置によれば、被験者の重力感受性を適正化する効果があり、具体的には、過大な重力感受性を小さくすることにより正常化することが可能であり、また、過小な重力感受性を大きくすることにより正常化することも可能であり、更には、重力感受性の左右差を減少することも可能である。
【0029】
また本発明にかかる重力感受性障害治療装置による治療効果は、装置装着直後の即時効果はもちろんのこと、装置を外した後も長時間持続する持ち越し効果も認められる。
【0030】
コントローラ200には、振動子150の振動刺激強度についての情報を入力する入力部220が設けられている。同じ頭部傾斜情報であっても被験者ごとに口角部位への振動刺激の感受性が異なる場合があるため、この入力部220により振動刺激強度を可変させることができる。またコントローラ200には図示されていない電源部、LED部などがある。
【0031】
本発明にかかる重力感受性障害治療装置が適用される被験者は、重力感受性が障害されているめまい患者はもちろん、重力感受性が正常範囲の健常人も含まれる。そのため本発明にかかる重力感受性障害治療装置はめまい治療のみならずスポーツパフォーマンス向上や健康寿命延長にも応用可能と考えられる。
【0032】
本発明にかかる重力感受性障害治療装置がめまい患者に適用される場合、そのような被験者の疾患としては、特に限定されるものではないが、例えばメニエール病、末梢前庭障害、良性発作性頭位めまい症(BPPV)、前庭神経炎、突発性難聴、起立性低血圧、聴神経腫瘍、真珠腫性中耳炎、片頭痛関連めまい、心因性めまい、又は、持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)等が挙げられる。
【実施例
【0033】
図5に示されるように重力感受性障害治療装置を作製した。この重力感受性障害治療装置はGravity Perception Adjustment Device(GPAD)と称することができる。頭部傾斜SVV検査方法にてGPAD20分間装着前後の重力感受性を測定し、重力感受性の左右差減少効果について評価した。なお頭部傾斜SVV方法は、頭部roll傾斜時の自覚的視性垂直位(Subjective Visual Vertical, SVV)と頭部傾斜角度から頭部傾斜感覚ゲイン(Head Tilt Perception Gain, HTPG)を算出する評価手法で、健常人434人の測定結果から頭部傾斜SVV方法における重力感受性の指標の基準値を定めた。図6(A)は重力感受性の左右差が認められた患者の治療例である。図6(A)に示されるように、頭部傾斜SVV検査にてGPAD20分間装着前後の重力感受性を測定すると、左右差のあった重力感受性の左右差は小さくなり、患者の重力感受性の適正化がみられた。図6(B)は過大な重力感受性が認められた患者の治療例である。図6(B)に示されるように、頭部傾斜SVV検査にてGPAD20分間装着前後の重力感受性を測定すると、過大な重力感受性は小さくなり、患者の重力感受性の適正化がみられた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
平衡障害のリハビリテーションに利用できる。
【符号の説明】
【0035】
100:ヘッドセット
111:略円弧先端部
120:頭部傾斜センサ
130:制御部
131:一端部
132:他端部
134:制御基板
135:制御部ケース
136:制御部ケース蓋
137:電源部
140:振動子アーム
141:軸受部
142:他端部
150:振動子
200:コントローラ
210:プロセッサ
220:入力部
900:重力感受性障害治療装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6