(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20250117BHJP
C08L 7/00 20060101ALI20250117BHJP
C08K 13/00 20060101ALI20250117BHJP
C08K 5/54 20060101ALI20250117BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20250117BHJP
C08L 101/02 20060101ALN20250117BHJP
C08K 3/04 20060101ALN20250117BHJP
C08K 3/36 20060101ALN20250117BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L7/00
C08K13/00
C08K5/54
B60C1/00 A
C08L101/02
C08K3/04
C08K3/36
(21)【出願番号】P 2020186063
(22)【出願日】2020-11-06
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩
(72)【発明者】
【氏名】土田 和孝
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 満
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-021149(JP,A)
【文献】特開2020-158724(JP,A)
【文献】香田拓哉 他,溶融混練による熱可塑性樹脂中でのシリカと異種ナノ粒子のヘテロ凝集体の解砕・分散,第48回中部化学関係学協会支部連合秋季大会講演予稿集,2017年,p. 12
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
B60C 1/00
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、複合フィラーと、を含むゴム組成物であって、
前記複合フィラーが、炭素系充填剤と、
少なくともシリカを含む無機充填剤と、カチオン性高分子化合物と、を含有
し、
前記複合フィラーの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して10~100質量部であることを特徴とする、ゴム組成物。
【請求項2】
前記炭素系充填剤が、少なくともカーボンブラックを含むことを特徴とする、請求項
1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記カチオン性高分子化合物の重量平均分子量が、5000~100000であることを特徴とする、請求項1
又は2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
さらに、シランカップリング剤を含むことを特徴とする、請求項1~
3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のゴム組成物からなることを特徴とする、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項
5に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたことを特徴とする、タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、自動車の低燃費化に対する要求が強くなっており、転がり抵抗の小さいタイヤが求められている。そのため、タイヤのトレッド等に使用するゴム組成物として、tanδが低く、低発熱性に優れたゴム組成物が望まれている。
【0003】
従来の空気入りタイヤにおいては、低発熱性を実現することを目的として、ゴム組成物中のカーボンブラックの粒子径を大きくしたり、カーボンブラックの配合量を減少させる等の対策が考えられるが、同時にトレッドゴムの耐摩耗性の低下や、ゴムの耐カット性や耐チッピング性等の耐破壊性を低下させるという問題があった。
そのため、強度等の他の物性を低下させることなく、低発熱性を改善できる技術の開発が望まれていた。
【0004】
低発熱性の改善を図った技術の一つとして、例えば特許文献1には、ゴム組成物におけるカーボンブラックの分散性を向上させることを目的として、天然ゴムを含むエラストマーに、カーボンブラック及び特定のヒドラジド化合物を配合したゴム組成物が開示されている。
【0005】
また、ゴム組成物中に含まれるフィラーの分散性を高める技術としては、例えば特許文献2に、シリカが付着又は沈積したシリカ添着カーボンブラック表面に、シランカップリング剤を反応させて表面処理を行った表面処理シリカ添着カーボンブラックを、ゴム組成物に配合する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-27315号公報
【文献】特開2009-185115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1や特許文献2に開示された技術については、いずれもゴム組成物中のフィラーの分散性が高まり、低発熱性の改善を図ることが可能になる。
しかしながら、さらなる低燃費化や耐久性向上の観点から、優れた破壊強度を有しつつ、フィラーの分散性がより改善されたゴム組成物の開発が望まれていた。
【0008】
そのため、本発明の目的は、優れた強度を有しつつ、フィラーの分散性が改善されたゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、低発熱性及び耐久性に優れたタイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく検討を行った結果、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、複合フィラーと、を含むゴム組成物を用いることで、強度を良好に維持しつつ、フィラーの分散性をある程度高めることができること着目した。そして、さらに鋭意研究を行った結果、前記複合フィラーについて、炭素系充填剤と、無機充填剤と、カチオン性高分子化合物と、を含有させることによって、通常の配合に比べて大幅にフィラーの分散性を高めることができ、ゴム組成物の強度についても向上させることができることを見出した。
【0010】
即ち、本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、複合フィラーと、を含むゴム組成物であって、前記複合フィラーが、炭素系充填剤と、無機充填剤と、カチオン性高分子化合物と、を含有することを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた強度を有しつつ、フィラーの分散性を向上させることができる。
【0011】
また、本発明のゴム組成物については、前記複合フィラーの含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して10~100質量部であることが好ましい。フィラーの分散性を低下させることなく、より優れた強度を実現できるためである。
【0012】
さらに、本発明のゴム組成物については、前記炭素系充填剤が、少なくともカーボンブラックを含むことが好ましい。より優れた強度及びフィラーの分散性を実現できるためである。
【0013】
さらにまた、本発明のゴム組成物については、前記無機充填剤が、少なくともシリカを含むことが好ましい。より優れた強度及びフィラーの分散性を実現できるためである。
【0014】
また、本発明のゴム組成物については、前記カチオン性高分子化合物の重量平均分子量が、5000~100000であることが好ましい。より優れたフィラーの分散性を実現できるためである。
【0015】
さらにまた、本発明のゴム組成物については、さらに、シランカップリング剤を含むことが好ましい。ゴム組成物の弾性率を高めることができるためである。
【0016】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物からなることを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた強度を有しつつ、フィラーの分散性を向上させることができる。
【0017】
本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物を用いたことを特徴とする。
上記構成を具えることによって、優れた低発熱性及び耐久性を実現できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、優れた強度を有しつつ、フィラーの分散性が改善されたゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性及び耐久性に優れたタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】各実施例及び比較例のサンプルについて、組織の状態を拡大して示した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を具体的に例示説明する。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、ジエン系ゴムを含有するゴム成分と、複合フィラーと、を含む。
そして、本発明のゴム組成物は、前記複合フィラーが、炭素系充填剤と、無機充填剤と、カチオン性高分子化合物と、を含有することを特徴とする。
【0021】
前記複合フィラーを構成する前記炭素系充填剤は、正の電荷を有しており、前記複合フィラーを構成する前記無機充填剤は、負の電荷を有している。そのため、これらの充填剤を複合フィラーとして用いることで、前記炭素系充填剤と前記無機充填剤とが吸着した状態でゴム組成物中に配合される結果、前記炭素系充填剤及び前記無機充填剤のそれぞれが個別に凝集することを抑え、フィラーの分散が阻害されることを防ぐことができる。
さらに、本発明では、ゴム組成物に配合するフィラーとして、カチオン性高分子化合物を含有させることによって、上述した炭素系充填剤と無機充填剤との吸着を促進できるため、上述した充填剤ごとの凝集をさらに抑制でき、複合フィラーを配合したゴム組成物のフィラーの分散性を大きく向上させることが可能となる。
【0022】
以下、本発明のゴム組成物を構成する各成分について説明する。
(ゴム成分)
本発明のゴム組成物に含まれるゴム成分については、ジエン系ゴムを含有する。ジエン系ゴムを含有することによって、ゴムの強度を高めることができる。
前記ジエン系ゴムについては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)等を挙げられるが、これらの中でも、天然ゴム及びスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のうちの少なくとも一種を用いることが好ましい。より優れた強度や低発熱性を実現できるからである。
なお、前記ジエン系ゴムについては、1種単独で含有してもよいし、2種以上のブレンドとして含有してもよい。
【0023】
なお、前記ゴム成分におけるジエン系ゴムの含有量については、特に限定はされないが、優れた強度を維持するという点からは、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましい。
【0024】
(複合フィラー)
本発明のゴム組成物は、上述したゴム成分に加えて、複合フィラーを含む。
前記複合フィラーとは、ゴム組成物中に配合する際、フィラーそれぞれを配合するのではなく、フィラーを予めまとめ、疑似的に1つのフィラー(複合フィラー)としたものである。各種充填剤を複合フィラーとしてゴム組成物中に配合することで、充填剤ごとに凝集することを抑制できるため、各充填剤を個別に配合した場合に比べて分散性を高めることができる。
【0025】
ここで、前記複合フィラーは、炭素系充填剤と、無機充填剤と、カチオン性高分子化合物と、を含有する。正の電荷を有するカーボンブラック等の炭素系充填剤は、負の電荷を有するシリカ等の無機充填剤と吸着(結合)する。そして、前記カチオン性高分子化合物が、前記炭素系充填剤の電荷を増幅させ、複合フィラーにおける前記炭素系充填剤と前記無機充填剤との結合力を促進させる働きを行う。その結果、本発明のゴム組成物では、含有する各充填剤の分散性が高まり、それによって、ゴム組成物の補強性についても向上が可能となる。
【0026】
前記複合フィラーの含有量については、特に限定されるものではないが、前記ゴム成分100質量部に対して10~100質量部であることが好ましく、20~80質量部であることがより好ましく、30~70質量部であることがさらに好ましい。前記複合フィラーの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して10質量部以上とすることで、充填剤を含有することによる補強性向上の効果が十分に得られ、前記複合フィラーの含有量を、前記ゴム成分100質量部に対して100質量部以下とすることで、フィラーの分散性の悪化をより確実に抑えることができる。
【0027】
また、前記複合フィラーを構成する炭素系充填剤については、炭素を主成分とする充填剤のことであり、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。これらの中でも、入手が容易で且つ、ゴム組成物の強度をより高められる観点から、カーボンブラックを少なくとも含むことが好ましい。前記カーボンブラックとしては、例えば、GPF、FEF、SRF、HAF、ISAF、IISAF、SAFグレード等のカーボンブラックが挙げられる。なお、これらの炭素系充填剤については、一種のみ含有することもできるし、複数種を含有することもできる。
ここで、前記複合フィラーにおける前記カーボンブラックの含有割合(質量%)は、特に限定はされないが、フィラーの分散性向上や、ゴム組成物の強度を高める観点から、5~50質量%であることが好ましく、10~40質量%であることがより好ましい。
【0028】
また、前記複合フィラーを構成する無機充填剤については、例えば、シリカ、又は、アルミニウム、マグネシウム、チタン、カルシウム、ジルコニウム等の金属の酸化物若しくは水和物などが挙げられる。これらの中でも、前記無機充填剤は、ゴム組成物の強度をより高められ、フィラーの分散性向上に寄与できる観点から、シリカを少なくとも含むことが好ましい。前記シリカとしては、湿式シリカ、乾式シリカ及びコロイダルシリカ等を用いることができる。なお、これらの無機充填剤については、一種のみ含有することもできるし、複数種を含有することもできる。
ここで、前記複合フィラーにおける前記シリカの含有割合(質量%)は、特に限定はされないが、フィラーの分散性向上や、ゴム組成物の強度を高める観点から、50~95質量%であることが好ましく、60~90質量%であることがより好ましい。
【0029】
前記複合フィラーを構成するカチオン性高分子化合物については、カチオン性の高分子電解質のことであり、複合フィラー中に含有されることによって、前記炭素系充填剤に付着し、前記炭素系充填剤の電荷を増幅させる作用を発揮する。
【0030】
前記カチオン性高分子化合物については、正の電荷を高めることができるものであれば特に限定はされないが、より確実にフィラーの分散性を高めることができる観点から、その重量平均分子量が、5000~100000であることが好ましく、10000~100000であることがより好ましい。なお、前記カチオン性高分子化合物の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算値として求められる。
このような重量平均分子量を有するカチオン性高分子化合物としては、例えば、ポリエチレンイミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、ジアルキルアミン・アンモニア・エピクロルヒドリン重縮合物、ジアリルアミン塩酸塩・アクリルアミド共重合物、ジシアンジアミド・ポリアルキレンポリアミン重縮合物等が挙げられる。
【0031】
ここで、前記複合フィラーにおける前記カチオン性高分子化合物の含有割合(質量%)は、特に限定はされないが、フィラーの分散性向上の観点から、0.05~4%であることが好ましく、0.1~2%であることがより好ましい。
【0032】
なお、前記複合フィラーを得る方法については、特に限定はされず、公知の方法によって前記炭素系充填剤、前記無機充填剤及び前記カチオン性高分子化合物を混合し、複合フィラー化させることができる。
例えば、、前記炭素系充填剤、前記無機充填剤及び前記カチオン性高分子化合物を含有するスラリー溶液を作製し、攪拌混合させた後、乾燥させることで複合フィラーを得ることが可能である。
【0033】
(その他の成分)
本発明のゴム組成物は、前記ゴム成分及び前記複合フィラーの他に、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、シランカップリング剤、架橋剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、ステアリン酸、亜鉛華等(以下、まとめて「その他の成分」という。)を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含むことができる。これらその他の成分としては、市販品を好適に使用することができる。
【0034】
また、前記その他の成分のうちシランカップリング剤は、ゴム組成物の弾性率を高めることができる点から、含有することが好ましい。
なお、シランカップリング剤は、公知のものを適宜使用することができる。前記シランカップリング剤として、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらシランカップリング剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
さらに、前記シランカップリング剤の含有量については、シランカップリング剤の種類などによっても異なるが、前記複合フィラーの含有量100質量部に対して、0.5質量部~20質量部であることがより好ましい。前記シランカップリング剤の含有量を、前記複合フィラーの含有量100質量部に対して0.5質量部以上とすることで、弾性率向上効果がより確実に得られ、前記複合フィラーの含有量100質量部に対して20質量部以下と小さくすることで、ゴム組成物の耐カット性の低下等を抑えることができる。
【0036】
また、前記架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、硫黄系架橋剤、有機過酸化物系架橋剤、無機架橋剤、ポリアミン架橋剤、樹脂架橋剤、硫黄化合物系架橋剤、オキシム-ニトロソアミン系架橋剤等が挙げられる。なお、タイヤ用のゴム組成物としては、これらの架橋剤の中でも硫黄系架橋剤(加硫剤)がより好ましい。
前記架橋剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記ゴム成分100質量部に対し0.1~20質量部であることが好ましい。
【0037】
また、前記架橋剤として硫黄を用いる場合には、加硫促進剤を含むことが好ましい。該加硫促進剤としては、従来公知のものを用いることができ、特に制限されるものではないが、例えば、CBS(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBBS(N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)、TBSI(N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンイミド)等のスルフェンアミド系の加硫促進剤;DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系の加硫促進剤;テトラオクチルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;ジアルキルジチオリン酸亜鉛等が挙げられる。その含有量としては、前記硫黄の含有量よりも少ないことが好ましく、前記ゴム成分100質量部に対し、1~10質量部程度であることがより好ましい。
【0038】
なお、加硫前のゴム組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、各配合成分を、同時又は任意の順序で添加して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られる。
【0039】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上述した本発明のゴム組成物からなることを特徴とする。
本発明のゴム組成物は、優れた強度を有しつつ、フィラーの分散性が改善されているため、タイヤに用いるゴム組成物として適している。
なお、本発明のタイヤ用ゴム組成物のその他の事項については、上述の本発明のゴム組成物中で説明した内容と同様である。
【0040】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、上述した本発明のタイヤゴム組成物を用いてなることを特徴とする。本発明のタイヤは、優れた強度を有しつつフィラーの分散性が改善された本発明のタイヤ用ゴム組成物を、材料として用いているため、優れた低発熱性及び耐久性性を実現できる。
前記ゴム組成物を適用する部位については、特に限定はされず、例えば、トレッド部、ショルダー部、サイドウォール部、ビード部、ベルト層(ベルトコーティングゴム)及びカーカス(プライコーティングゴム)の少なくとも一か所に用いることができる。これらの部位の中でも、トレッド部に好適に用いることができる。前記ゴム組成物をタイヤトレッド部に適用することで、低転がり抵抗性や耐摩耗性等の性能を向上させることができる。
なお、本発明のタイヤは、上述した本発明のゴム組成物をタイヤ部材のいずれかに用いる以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。なお、該タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
<サンプル1~6>
表1に示す配合処方で、ゴム組成物の各サンプルを調製した。
調製したゴム組成物の各サンプルに対して、下記の方法で評価を行った。
【0043】
(1)引張強さ
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。JIS K 6251(2017年)に準拠して、25℃で、規定速度(300±25mm/min)で破断するまで試験片を引っ張り、破断させるのに要する最大の引張り力(単位:MPa)を測定した。
なお、引張強さの測定結果については表1に示し、数値が大きい程、強度が良好であることを示す。
【0044】
(2)200%弾性率
各サンプルのゴム組成物を、145℃で33分間加硫して得た。得られた加硫ゴムについて、JIS K 6251(2010年)に準拠して、200%伸長時の弾性率(200%モジュラス)の測定を行った。
200%弾性率の測定結果については表1に示し、数値が大きい程、弾性率が良好であることを示す。また、各サンプルの加硫ゴムの断面を観察した結果を
図1に示す。
【0045】
(3)フィラーの分散性(White Area)
各ゴム組成物を145℃で33分間加硫して加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムに対し、ディスパグレーダー(米TECH PRO社製)を用いて、White Area(%)を測定し、カーボンの分散性を評価した。
なお、White Areaは、大きいほどフィラーの凝集物が大きいことを示すものであり、値が小さい程、分散性に優れることを示す。
【0046】
【0047】
*1:スチレンブタジエンゴム、JSR(株)製「SBR♯1500」
*2:デンカ(株)製「HS-100」
*3:公立大学法人富山県立大学が合成したシリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックス(登録商標)YL」を乾燥させたもの)
*4:カーボンブラック及びシリカを含む複合フィラー、カーボンブラック(デンカ株式会社製「デンカ ブラック(登録商標)HS-100」)約2質量%、シリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックス(登録商標)YL」)約12.5質量%を、水スラリー溶液として攪拌混合した後、乾燥させたもの
*5:カーボンブラック、シリカ及びカチオン性高分子化合物を含む複合フィラー、カーボンブラック(デンカ株式会社製「デンカ ブラック(登録商標)HS-100」)約2質量%、シリカ(日産化学工業株式会社製「スノーテックス(登録商標)YL」)約12.5質量%、カチオン性高分子化合物(ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド、センカ株式会社製「ユニセンスFPA100L」)約0.05質量%を、水スラリー溶液として攪拌混合した後、乾燥させたもの
*6:ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、Evonik社製「Si69」
*7:N-(1,3-ジメチルブチル)-N‘-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業(株)製「ノックラック6C」
*8:ジフェニルグアニジン、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーD」
*9:ベンゾチアジルジスルフィド、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーDM-P」
*10:N-t-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業(株)製「ノクセラーNS-P」
【0048】
表1の結果から、各実施例のゴム組成物は、いずれも、強度及び伸びを示すことがわかった。一方、各比較例のゴム組成物は、強度及び伸びのいずれかについて、実施例よりも劣る結果となっている。また、表1及び
図1の結果から、各実施例のゴム組成物は、いずれも、フィラーの分散性に優れることがわかる。一方、比較例のゴム組成物は、いずれもフィラー分散性が十分に得られていないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、優れた強度を有しつつ、フィラーの分散性が改善されたゴム組成物及びタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、低発熱性及び耐久性に優れたタイヤを提供することができる。