(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】油水分離装置及び油水分離方法
(51)【国際特許分類】
B01D 17/00 20060101AFI20250117BHJP
B01D 17/025 20060101ALI20250117BHJP
B01D 17/04 20060101ALI20250117BHJP
B01D 17/12 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
B01D17/00 503B
B01D17/025 501A
B01D17/04 501A
B01D17/04 501B
B01D17/04 501F
B01D17/04 501E
B01D17/04 501L
B01D17/04 504D
B01D17/04 504B
B01D17/04 501G
B01D17/12 C
(21)【出願番号】P 2021050447
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(73)【特許権者】
【識別番号】523419521
【氏名又は名称】エム・エーライフマテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 莉奈
(72)【発明者】
【氏名】清水 香里
(72)【発明者】
【氏名】倉石 晃一
(72)【発明者】
【氏名】三保 慶明
(72)【発明者】
【氏名】池田 充志
(72)【発明者】
【氏名】今西 克磨
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅也
(72)【発明者】
【氏名】宮地 清
(72)【発明者】
【氏名】天野 整一
(72)【発明者】
【氏名】内海 貴光
(72)【発明者】
【氏名】山田 達也
【審査官】萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288435(JP,A)
【文献】特開昭53-096570(JP,A)
【文献】特開昭57-144008(JP,A)
【文献】特開2001-046805(JP,A)
【文献】特開2015-009184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び油の混合液に対して油分を浮上分離する処理を行う油水分離装置であって、
内部空間が上下の第一室及び第二室に仕切られており、前記第一室に混合液が供給される密閉容器と、
前記第一室に混合液が通過するように設けられた第一コアレッサーであって、混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる第一コアレッサーと、
前記第二室に前記第一コアレッサーを通過後の混合液が通過するように設けられた第二コアレッサーであって、混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる第二コアレッサーと、
前記第一室を前記第一コアレッサー側の上部空間及び前記第二室側の下部空間に区画する支持板に支持されたノズルであって、上端開口が前記上部空間から混合液を導入し下端開口が前記下部空間に混合液を導出するとともに前記下端開口が水平方向を向くようにL字型を呈するノズルと、
を備える、油水分離装置。
【請求項2】
前記ノズルの前記下端開口から前記下部空間に導出される混合液の流速が0.1m/s以上2.0m/s以下である、請求項1に記載の油水分離装置。
【請求項3】
前記下部空間から供給される混合液中の固形物を除去する濾過器をさらに備え、
前記第二コアレッサーは、円形筒状の粗粒化フィルターを含み、かつ、前記粗粒化フィルターの軸方向が水平方向に延びるように前記第二室に横向きにして配置されるとともに前記粗粒化フィルターの中空内部に前記濾過器を通過後の混合液が導入されるように構成されている、請求項1又は2に記載の油水分離装置。
【請求項4】
前記粗粒化フィルターの中空内部に導入される混合液の流速が0.1m/s以上1.0m/s以下である、請求項3に記載の油水分離装置。
【請求項5】
前記第二コアレッサーは、前記粗粒化フィルターの中空内部に挿入された散液管をさらに含み、かつ、前記散液管の中空内部に前記濾過器を通過後の混合液が導入されるように構成されており、
前記散液管は、その軸方向及び周方向に沿って間隔をあけて複数の通液孔が形成されている、請求項3又は4に記載の油水分離装置。
【請求項6】
前記散液管の前記通液孔から前記粗粒化フィルターの中空内部に導出される混合液の流速が0.4m/s以上1.0m/s以下である、請求項5に記載の油水分離装置。
【請求項7】
前記粗粒化フィルターが疎水性材料からなる、請求項3~6のいずれかに記載の油水分離装置。
【請求項8】
前記密閉容器には、前記第二室に前記第二コアレッサーを横向きに挿入可能な挿入部が設けられ、
前記第二コアレッサーは、取付手段により前記粗粒化フィルターの軸方向が水平方向に延びるようにして前記第二室に横向きにして配置され、
前記取付手段は、前記挿入部から内側に水平方向に延びる少なくとも二本の平行なガイドレールと、前記第二コアレッサーの前記挿入部に先に挿入される側の端部に取り付けられた押え板と、を含み、
前記押え板には、対応するガイドレールを受け入れることにより前記押え板を前記少なくとも二本の平行なガイドレール上で摺動させるとともに前記第二コアレッサーの周方向の回転を規制する切欠きが少なくとも二つ形成されている、請求項3~7のいずれかに記載の油水分離装置。
【請求項9】
水及び油の混合液に対して油分を浮上分離する処理を行う油水分離方法であって、
内部空間が上下の第一室及び第二室に仕切られるとともに前記第一室が支持板により上部空間及び下部空間に区画された密閉容器の前記上部空間に混合液を供給する工程と、
前記上部空間に設けられた第一コアレッサーに混合液を通過させて混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる工程と、
前記第一コアレッサーを通過した前記上部空間の混合液を、前記支持板に支持されたL字型のノズルの上端開口から導入して前記下部空間において水平方向を向く下端開口から前記下部空間に導出する工程と、
前記第二室に設けられた第二コアレッサーに前記下部空間の混合液を通過させて混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる工程と、
を含む、油水分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば船舶におけるビルッジ水等の廃水のような、水及び油の混合液から油分を分離する処理を行うための油水分離装置及び油水分理法方に関する。
【背景技術】
【0002】
従来例の油水分離装置として、特許文献1には、
図12に示すように、縦型円筒形の密閉容器101内が、第一コアレッサー102を備えた第一室103、第一室103よりも下方の第二コアレッサー104を備えた第二室105、及び、第二室105よりも下方の第三コアレッサー106を備えた第三室107に仕切られた上下3段式の油水分離装置100が開示されている。第一コアレッサー102、第二コアレッサー104及び第三コアレッサー106は、それぞれ多孔質体のフィルターを備えており、下方のコアレッサーほど目の細かいフィルターを備えている。
【0003】
特許文献1の油水分離装置100では、混合液は密閉容器101内の第一室103に供給され、始めに浮上油が比重差で分離する。浮上油が除去された混合液は第一コアレッサー102を通過し、このとき混合液中に混濁する大きな油滴が第一コアレッサー102に捕捉され、捕捉された油滴同士が結合して粗粒化する。これにより、粗粒化した油滴が第一コアレッサー102から脱離した後に浮力を増して浮上することにより混合液から分離する。第一コアレッサー102を通過後の混合液は、第一室103及び第二室105を仕切る仕切板108に設けられた第二コアレッサー104を通過して第二室105に供給される。このとき第一コアレッサー102で捕捉されなかった混合液中に混濁する小さな油滴が第二コアレッサー104に捕捉され、捕捉された油滴同士が結合して粗粒化する。これにより、粗粒化した油滴が第二コアレッサー104から脱離した後に浮力を増して浮上することにより混合液から分離する。第二コアレッサー104を通過後の混合液は、第二室105及び第三室107を仕切る仕切板109に設けられた第三コアレッサー106を通過して第三室107に供給される。このとき第二コアレッサー104で捕捉されなかった混合液中に混濁するより小さい油滴が第三コアレッサー106に捕捉され、捕捉された油滴同士が結合して粗粒化する。これにより、粗粒化した油滴が第三コアレッサー106から脱離した後に浮力を増して浮上することにより混合液から分離する。
【0004】
なお、第二室105は仕切板113により上部空間と下部空間に区画されており、第二コアレッサー104を通過後の混合液は、上部空間に連通する導出口110を介して第二室105から濾過器112に供給され、濾過器112において混合液中に含まれる固形物が除去された後、下部空間に連通する導入口111を介して第二室105に再び戻される。これにより、混合液中に含まれる固形物により、最も密な第三コアレッサー106のフィルターの目が詰まることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の油水分離装置100は、第一コアレッサー102、第二コアレッサー104及び第三コアレッサー106の三段式の構成のため、装置高さが必然的に高くなり、装置を搬送する際の作業負担が大きくなるうえ、装置自体のコストが高くなるとの課題がある。ここで、油水分離装置の高さを低くするために、
図13に示すように、単に第二室(第二コアレッサー)を油水分離装置から省き、第一コアレッサー102を通過した混合液を、そのまま濾過器112を通過させた後に第三コアレッサー106を通過させるように構成することも考えられる。しかし、
図13に示す構成の油水分離装置では、油は第一コアレッサー102で捕捉されて粗粒化して浮上するとともに第一コアレッサー102を通過しその下方に溜まって油層を形成し、この油層を上方から流れてくる水が押す形となることで、第一室103の第一コアレッサー102の下方の空間に油泡(外側が油で内側が水)が発生し、当該空間が油泡で充満する現象が起こる。そして、この油泡が濾過器112や第三コアレッサー106に供給されると、濾過器112による濾過抵抗が油分により著しく増大して濾過処理が阻害される、あるいは、第三コアレッサー106のフィルターが油分により目詰まりを起こすなどの課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記課題を解消できる油水分離装置及び油水分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様は、水及び油の混合液に対して油分を浮上分離する処理を行う油水分離装置に関する。本発明の油水分離装置は、内部空間が上下の第一室及び第二室に仕切られており、前記第一室に混合液が供給される密閉容器と、前記第一室に混合液が通過するように設けられた第一コアレッサーであって、混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる第一コアレッサーと、前記第二室に前記第一コアレッサーを通過後の混合液が通過するように設けられた第二コアレッサーであって、混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる第二コアレッサーと、前記第一室を前記第一コアレッサー側の上部空間及び前記第二室側の下部空間に区画する支持板に支持されたノズルであって、上端開口が前記上部空間から混合液を導入し下端開口が前記下部空間に混合液を導出するとともに前記下端開口が水平方向を向くようにL字型を呈するノズルと、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の油水分離装置において好ましくは、前記ノズルの前記下端開口から前記下部空間に導出される混合液の流速が0.1m/s以上2.0m/s以下であることを特徴とするように構成することができる。
【0010】
また、本発明の油水分離装置において好ましくは、前記下部空間から供給される混合液中の固形物を除去する濾過器をさらに備え、前記第二コアレッサーは、円形筒状の粗粒化フィルターを含み、かつ、前記粗粒化フィルターの軸方向が水平方向に延びるように前記第二室に横向きにして配置されるとともに前記粗粒化フィルターの中空内部に前記濾過器を通過後の混合液が導入されるように構成されていることを特徴とするように構成することができる。
【0011】
また、本発明の油水分離装置において好ましくは、前記粗粒化フィルターの中空内部に導入される混合液の流速が0.1m/s以上1.0m/s以下であることを特徴とするように構成することができる。
【0012】
また、本発明の油水分離装置において好ましくは、前記第二コアレッサーは、前記粗粒化フィルターの中空内部に挿入された散液管をさらに含み、かつ、前記散液管の中空内部に前記濾過器を通過後の混合液が導入されるように構成されており、前記散液管は、その軸方向及び周方向に沿って間隔をあけて複数の通液孔が形成されていることを特徴とするように構成することができる。
【0013】
また、本発明の油水分離装置において好ましくは、前記散液管の前記通液孔から前記粗粒化フィルターの中空内部に導出される混合液の流速が0.4m/s以上1.0m/s以下であることを特徴とするように構成することができる。
【0014】
また、本発明の油水分離装置において好ましくは、前記粗粒化フィルターが疎水性材料からなることを特徴とするように構成することができる。
【0015】
また、本発明の油水分離装置において好ましくは、前記密閉容器には、前記第二室に前記第二コアレッサーを横向きに挿入可能な挿入部が設けられ、前記第二コアレッサーは、取付手段により前記粗粒化フィルターの軸方向が水平方向に延びるようにして前記第二室に横向きにして配置され、前記取付手段は、前記挿入部から内側に水平方向に延びる少なくとも二本の平行なガイドレールと、前記第二コアレッサーの前記挿入部に先に挿入される側の端部に取り付けられた押え板と、を含み、前記押え板には、対応するガイドレールを受け入れることにより前記押え板を前記少なくとも二本の平行なガイドレール上で摺動させるとともに前記第二コアレッサーの周方向の回転を規制する切欠きが少なくとも二つ形成されていることを特徴とするように構成することができる。
【0016】
本発明の第二態様は、水及び油の混合液に対して油分を浮上分離する処理を行う油水分離方法に関する。本発明の油水分離方法は、内部空間が上下の第一室及び第二室に仕切られるとともに前記第一室が支持板により上部空間及び下部空間に区画された密閉容器の前記上部空間に混合液を供給する工程と、前記上部空間に設けられた第一コアレッサーに混合液を通過させて混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる工程と、前記第一コアレッサーを通過した前記上部空間の混合液を、前記支持板に支持されたL字型のノズルの上端開口から導入して前記下部空間において水平方向を向く下端開口から前記下部空間に導出する工程と、前記第二室に設けられた第二コアレッサーに前記下部空間の混合液を通過させて混合液中の油滴を捕捉して粗粒化させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
本発明の油水分離方法において好ましくは、前記ノズルの前記下端開口から前記下部空間に導出される混合液の流速が0.1m/s以上2.0m/s以下であることを特徴とするように構成することができる。
【0018】
また、本発明の油水分離方法において好ましくは、前記第二コアレッサーは、円形筒状の粗粒化フィルターを含み、かつ、前記粗粒化フィルターの軸方向が水平方向に延びるように前記第二室に横向きにして配置されており、前記粗粒化フィルターの中空内部に混合液を導入する際の混合液の流速が0.1m/s以上1.0m/s以下であることを特徴とするように構成することができる。
【0019】
また、本発明の油水分離方法において好ましくは、前記第二コアレッサーは、円形筒状の粗粒化フィルターと、前記粗粒化フィルターの中空内部に挿入された散液管と、を含み、かつ、前記粗粒化フィルターの軸方向が水平方向に延びるように前記第二室に横向きにして配置されており、前記散液管は、その軸方向及び周方向に沿って間隔をあけて複数の通液孔が形成されており、前記散液管の中空内部に混合液を導入することを特徴とするように構成することができる。
【0020】
また、本発明の油水分離方法において好ましくは、前記散液管の前記通液孔から前記粗粒化フィルターの中空内部に導出される混合液の流速が0.4m/s以上1.0m/s以下であることを特徴とするように構成することができる。
【0021】
また、本発明の油水分離方法において好ましくは、前記粗粒化フィルターが疎水性材料からなることを特徴とするように構成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、第一コアレッサー及び第二コアレッサーの二段式の構成のため、装置高さを低くすることができる。よって、装置を搬送する際の作業負担を低減できるとともに、装置自体のコストを低下することができる。
【0023】
また第一コアレッサーを通過後の混合液に油泡が発生しても、ノズルを通って油泡が第一室の上部空間から下部空間に導かれることで油泡が小さくなり、小さな油泡がノズルから導出された後に浮上して下部空間の頂部に溜まるので、下部空間が油泡で充満することを抑制できる。よって、油泡が混合液とともに後段の第二コアレッサー等に供給されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態の油水分離装置の概略構成を示す。
【
図2】第二コアレッサーの外観及び内部構造を示す。
【
図8】密閉容器の第二室に第二コアレッサーを設置した状態を示す。
【
図9】密閉容器の第二室に第二コアレッサーを設置した状態を示す。
【
図10】本実施形態の油水分離装置により混合液を処理した状態を示す。
【
図11】変形例の第二コアレッサーの内部構造を示す。
【
図13】従来例の油水分離装置の変形例の概略構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である油水分離装置1の概略構成を示す。油水分離装置1は、例えば船舶におけるビルッジ水等の廃水のような、水及び油の混合液から油分を浮上分離する処理を行うためのものである。
【0026】
図1に示すように、油水分離装置1は、仕切板26により内部空間が上下の第一室20及び第二室21に仕切られた密閉容器2と、第一室20に設けられた第一コアレッサー3と、第二室21に設けられた第二コアレッサー4と、第一室20を第一コアレッサー3側の上部空間20A及び第二室21側の下部空間20Bに区画する支持板25に支持されたノズル5とを備える。
【0027】
密閉容器2は、上下に長い円形筒状の周壁部22と、周壁部22の下端開口を塞ぐ底部23と、周壁部22の上端開口を塞ぐ上蓋部24とを含む。密閉容器2の内部空間は、仕切板26を水平に横架することによって、上段の第一室20及び下段の第二室21に混合液の流通が不能に仕切られている。また、第一室20は、中央に貫通孔を有する支持板25を水平に横架することによって、上部空間20A及び下部空間20Bに混合液の流通が可能に区画されている。
【0028】
密閉容器2の第一室20の上部空間20Aを囲む周壁部22には、混合液を第一室20の上部空間20Aに供給するための円形筒状の供給部10が設けられている。供給部10は、第一コアレッサー3の上方に位置する。供給部10には流路及びポンプPが接続されており、ポンプPの駆動により処理対象の混合液が供給部10から密閉容器2内に連続供給される。
【0029】
密閉容器2の第一室20の上部空間20Aを囲む周壁部22には、供給部10よりも上方の位置に、混合液から浮上分離した油分を第一室20の上部空間20Aから排出するための円形筒状の排出部11が設けられている。排出部11は、上端開口が鉛直方向上側を向いて上蓋部24と向かい合うとともに下端開口が水平方向を向くようにL字型を呈している。排出部11には流路及び開閉弁V1が接続されており、開閉弁V1が開くことにより油分が排出部11から密閉容器2外に排出される。
【0030】
密閉容器2の第一室20の上部空間20Aを囲む周壁部22には、供給部10よりも上方の位置であって排出部11とは周方向の異なる位置に、油分の液面位置を検知する油面検知器8が設けられている。油面検知器8により適当な量の油分が溜まったことが検知されると開閉弁V1が開き、それ以外の場合は開閉弁V1が閉じるように開閉弁V1は自動制御される。
【0031】
第一コアレッサー3は、供給部10及び支持板25の間に位置するように水平に第一室20の上部空間20Aに横架されており、混合液が上方から下方に向かって通過する。第一コアレッサー3の平面視形状は密閉容器2の横断面と同形状かつ同じ大きさである。
【0032】
第一コアレッサー3は、多孔質体の粗粒化フィルターを含む。粗粒化フィルターは、複数の孔を混合液が通過する間に混合液中に混濁する油滴を捕捉し、油滴同士を結合して粗粒化させることで油滴径を大きくする機能を有する。粗粒化した油滴は浮力が増加するため、第一コアレッサー3から脱離した後に浮上することにより混合液から分離し、第一室20の上部空間20Aの頂部(上蓋部24の下方)に溜まる。
【0033】
第一コアレッサー3の粗粒化フィルターは、混合液中に混濁する比較的大きな油滴を捕捉して粗粒化させる。第一コアレッサー3の粗粒化フィルターには、例えばシート状をなすタングステンやステンレス等の金属メッシュを上下に複数積層させた積層体を用いることができる。第一コアレッサー3の粗粒化フィルターの目の大きさ(目開き)は特に限定されるものではない。第一コアレッサー3の粗粒化フィルターは、上述した金属メッシュの積層体に限定されず、従来から公知の種々の構成のものを用いることができる。
【0034】
第一室20を上部空間20A及び下部空間20Bに区切る支持板25は、第一コアレッサー3の下方に位置するように水平に第一室20に横架されている。支持板25の中央には貫通孔が形成されており、支持板25の下面にはノズル5が取り付けられている。
【0035】
ノズル5は、所定の内径を有した円形筒状を呈するとともに縦断面視でL字型を呈しており、上端開口51が鉛直方向上側を向くとともに下端開口50が水平方向を向くように支持板25に支持されている。ノズル5の上端開口51は支持板25の貫通孔の直下に位置し、第一室20の上部空間20Aと連通している。ノズル5の下端開口50は第一室20の下部空間20Bにおいて密閉容器2の周壁部22と向かい合っている。ノズル5は、上端開口51から上部空間20Aの混合液が内部に導入し、下端開口50から混合液を下部空間20Bに導出する。なお、ノズル5は、鉛直方向に延びる直管部と、L字に曲がる曲管部とが一体形成されていてもよいし、直線型のパイプにL字型のエルボを連結して構成してもよい。
【0036】
ノズル5のサイズは装置のサイズ等に応じて適宜設定される。特に限定されるものではないが、例えば第一室20の下部空間20Bにおける密閉容器2の内径が300mmから950mm程度、高さが150mmから400mm程度の場合、ノズル5の内径は10mm以上55mm以下とすることができ、ノズル5の長さは50mm以上200mm以下とすることができる。ノズル5は、詳細は後述するが、第一コアレッサー3を通過後の混合液に発生する油泡を小さな油泡に変えて第一室20の下部空間20Bに排出するためのものである。この目的を効果的に達成するためには、ノズル5の内径は、後述するノズル5の下端開口50から導出される混合液の流速V1が所定の範囲となるように設定することが好ましい。
【0037】
密閉容器2の第一室20の下部空間20Bを囲む周壁部22には、支持板25のすぐ下方の位置に、混合液から浮上分離した油分を第一室20の下部空間20Bから排出するための円形筒状の排出部12が設けられている。排出部12には流路及び開閉弁V2が接続されており、開閉弁V2が開くことにより油分が排出部12から密閉容器2外に排出される。
【0038】
密閉容器2の第一室20の下部空間20Bを囲む周壁部22には、仕切板26のすぐ上方の位置に、第一室20に沈殿した水分及びスラッジ等のドレンを第一室20から排出するための円形筒状の排出部13が設けられている。排出部13には流路及び開閉弁V3が接続されており、開閉弁V3が開くことによりドレンが排出部13から密閉容器2外に排出される。
【0039】
密閉容器2の第一室20の下部空間20Bを囲む周壁部22には、仕切板26のすぐ上方の位置であって排出部13とは周方向の異なる位置に、混合液を第一室20の下部空間20Bから濾過器6に導くための円形筒状の導出部14が設けられている。導出部14には流路及び開閉弁V4が接続されており、開閉弁V4が開くことにより混合液が導出部14から密閉容器2外に排出される。
【0040】
導出部14から導出された混合液は濾過器6に供給され、濾過器6により混合液に含まれている固形物(懸濁物質(SS)も含む)が混合液から分離、除去される。濾過器6は、ハウジング60と、ハウジング60内に着脱自在に取り付けられたフィルター61とを含む。フィルター61は、混合液中の固形物(懸濁物質(SS)も含む)を混合液から分離、除去できるものであれば特に限定されず、例えばろ紙や、織布、不織布、編物等の繊維集合体からなるシートフィルター、バッグフィルター、メンブレンフィルター、プリーツ式等のカートリッジフィルター等、従来から公知の種々の構成のものを用いることができる。繊維集合体を構成する繊維としては、特に限定されず、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、あるいはこれらの組み合わせであってもよい。
【0041】
ハウジング60には、濾過前の混合液をハウジング60内に流入させる円形筒状の流入部62、及び、濾過後の混合液をハウジング60外に流出させる円形筒状の流出部63が設けられている。流入部62は導出部14と流路及びバルブV4を介して接続され、流出部63は後述する導入部15と流路及びバルブV5を介して接続されている。濾過器6によって混合液から固形物が分離、除去されることにより、後段の目の細かい第2コアレッサー4に固形物による目詰まりが発生することを抑制可能である。
【0042】
図1及び
図6~
図9に示すように、密閉容器2の第二室21を囲む周壁部22には、円形筒状の挿入部27が外周面から水平に突き出るように設けられている。挿入部27は、第二室21に第二コアレッサー4を横向きに挿入可能である。挿入部27の先端部はフランジが形成されており、フランジには周方向に沿って等しい間隔をあけて複数の貫通孔28が形成されている。挿入部27の内面には、一対の固定部29が間隔をあけて設けられており、一対の固定部29にはそれぞれガイドレール72が固定されている。一対のガイドレール72は、挿入部27から内側の第二室21に向かって水平方向に互いに平行に延びており、その終端は挿入部27と反対側の周壁部22の近傍に位置している。ガイドレール72は、挿入部27から第二室21に第二コアレッサー4を横向きに挿入する際に第二コアレッサー4を下方より支持する。なお、ガイドレール72は少なくとも二本あればよく、ガイドレール72の数が三本以上であっても構わない。
【0043】
図2及び
図5に示すように、第二コアレッサー4は、多孔質体の粗粒化フィルター40と、粗粒化フィルター40を補強する内側及び外側の補強材41,42とを含む。粗粒化フィルター40は、複数の孔を混合液が通過する間に混合液中に混濁する油滴を捕捉し、油滴同士を結合して粗粒化させることで油滴径を大きくする機能を有する。粗粒化した油滴は浮力が増加するため、第二コアレッサー4から脱離した後に浮上することにより混合液から分離し、第二室21の頂部(仕切板26の下方)に溜まる。
【0044】
粗粒化フィルター40は、混合液中に混濁する小さい油滴を捕捉して粗粒化させる。粗粒化フィルター40には、例えば織布、不織布、編物等の繊維集合体からなるシートを所定の厚さとなるように円筒状に巻いた筒状体、好ましくはプリーツが周方向に複数重ねて形成されるように円筒状に巻いた筒状体を用いることができる。繊維集合体を構成する繊維としては、特に限定されず、天然繊維、合成繊維、ガラス繊維、あるいはこれらの組み合わせであってもよいが、好ましくはガラス繊維等の疎水性繊維を用いることが好ましい。粗粒化フィルター40を疎水性繊維で形成することにより、効果的に小さい油滴を捕捉して粗粒化することができる。粗粒化フィルター40の目の大きさ(目開き)は特に限定されるものではないが、例えば0.1μm以上10μm以下である。なお、粗粒化フィルター40は、上述した繊維集合体から筒状体に限定されず、従来から公知の種々の構成のものを用いることができる。
【0045】
外側の補強材41は粗粒化フィルター40よりも大きい円形筒状を呈しており、補強材41の内面が粗粒化フィルター40の外面と当接している。内側の補強材42は粗粒化フィルター40よりも小さい円形筒状を呈しており、補強材42の外面が粗粒化フィルター40の内面と当接している。二つの補強材40,41は、例えば金属製であり、その全域に等しい間隔をあけて混合液を通過させる複数の貫通孔が形成されている。
【0046】
図1~
図9に示すように、第二コアレッサー4は、取付手段7を用いることにより、粗粒化フィルター40の軸方向が水平方向に延びるようにして、第二室21に横向きにして配置される。取付手段7は、第二コアレッサー4の一方側の端部に取り付けられる固定板70と、第二コアレッサー4の他方側の端部に取り付けられて固定板70とで第二コアレッサー4を挟持する押え板71と、上述した少なくとも二本のガイドレール72とを含む。
【0047】
固定板70は円形状を呈しており、その直径は第二コアレッサー4よりも大きくて挿入部27のフランジとほぼ同じ大きさである。固定板70の外周縁近傍には、周方向に沿って間隔をあけて複数の貫通孔73が形成されている。固定板70は、挿入部27のフランジに重ね合わせた状態でそれぞれの貫通孔28,73に図示しないボルトを通してナットで締め付けることで、挿入部27に固定される。固定板70の内面には、第二コアレッサー4の周囲となる位置に、内面に雌ねじが形成された複数の筒状部75が周方向に間隔をあけて設けられている。複数の筒状部75には両端部の外面に雄ねじが形成された連結棒74の一端部が結合されている。
【0048】
押え板71は円形状を呈しており、その直径は第二コアレッサー4よりも大きくて押え板71よりも小さい。押え板71の内面には、第二コアレッサー4の周囲となる位置であって固定番70の複数の筒状部75と対向する位置に、複数の貫通孔が周方向に間隔をあけて設けられている。押え板71は、固定板70との間に第二コアレッサー4を挟んだ状態で対向する固定板70の複数の筒状部75からそれぞれ突き出る連結棒74の他端部を複数の貫通孔に通してナット76で締め付けることで、第二コアレッサー4を固定板70に押し付ける。これにより、固定板70及び押え板71により第二コアレッサー4が挟持される。
【0049】
押え板71には、外周縁に一対の切欠き77が形成されている。この切欠き77は、それぞれ対応するガイドレール72を受け入れることにより押え板71を各ガイドレール72上で摺動させるとともに押え板71(第二コアレッサー4)の周方向の回転を規制する役割を果たす。切欠き77の形状は、上述した役割を果たすことができれば、種々の形状を採用することができる。
【0050】
固定板70及び押え板71の外面には、それぞれ取っ手78,79が設けられている。取っ手78,79を掴むことで、第二コアレッサー4を挿入部27から密閉容器2の第二室21に挿入する際に第二コアレッサー4を持ち上げ易く、押え板71の切欠き77にガイドレール72が入るようにして押え板71を一対のガイドレール72上に置き、押え板71を一対のガイドレール72上を摺動させながら第二コアレッサー4を押し込むことで、挿入部27から密閉容器2の第二室21に第二コアレッサー4を挿入し易くなる。そして、固定板70を挿入部27のフランジに固定することで、第二コアレッサー4を第二室21に横向きにして配置できる。
【0051】
固定板70の中央には貫通孔700が形成されるとともに、貫通孔700と連通するように円形筒状の導入部15が設けられている。導入部15には流路及び開閉弁V5を介して濾過器6の流出部63が接続されており、開閉弁V5が開くことにより濾過器6で固形物が除去された混合液が導入部15から第二コアレッサー4の粗粒化フィルター40の中空内部43に供給される。そして混合液は、内側の補強材41の複数の貫通孔から粗粒化フィルター40に伝わり、粗粒化フィルター40を内面から外面に向かって通過後に外側の補強材40の複数の貫通孔から第二室21に供給される。上述した導出部14、導入部15及びこれらに繋がる流路が密閉容器2の第一室20の下部空間20Bから濾過器6に混合液を誘導した後に第二室21に供給する循環路を構成する。
【0052】
図1に示すように、密閉容器2の第二室21を囲む周壁部22には、第二コアレッサー4の上方の位置であって仕切板26のすぐ下方の位置に、混合液から浮上分離した油分を第二室21から排出するための円形筒状の排出部16が設けられている。排出部16には流路及び開閉弁V6が接続されており、開閉弁V6が開くことにより油分が排出部16から密閉容器2外に排出される。
【0053】
密閉容器2の第二室21を囲む周壁部22には、底部23のすぐ上方の位置に、油分が分離して油分濃度が低下した処理済の混合液を第二室21から排出するための円形筒状の排出部17が設けられている。排出部17には流路及び開閉弁V7が接続されており、開閉弁V7が開くことにより処理済の混合液が排出部16から密閉容器2外に排出される。
【0054】
密閉容器2の第二室21を囲む周壁部22には、底部23のすぐ上方の位置であって排出部17とは周方向の異なる位置に、第二室21に沈殿した水分及びスラッジ等のドレンを第二室21から排出するための円形筒状の排出部18が設けられている。排出部18には流路及び開閉弁V8が接続されており、開閉弁V8が開くことによりドレンが排出部18から密閉容器2外に排出される。
【0055】
次に上述した構成の本実施形態の油水分離装置1による混合液の油水分離の処理方法について
図10を参照して説明する。まず、混合液は密閉容器2内の第一室20の上部空間20Aに供給され、始めに浮上油が比重差で分離して上部空間20Aの頂部に溜まる。浮上油が除去された混合液は第一コアレッサー3を通過し、このとき混合液中に混濁する大きい油滴が第一コアレッサー3に捕捉され、捕捉された油滴同士が結合して粗粒化する。これにより、粗粒化した油滴が第一コアレッサー3から脱離した後に浮力を増して浮上することにより混合液から分離し、上部空間20Aの頂部に溜まる。上部空間20Aの頂部に溜まった油分は、開閉弁V1が開くことによって排出部11から密閉容器2外に排出される。
【0056】
第一コアレッサー3を通過後の混合液は、第一室20の上部空間20A及び下部空間20Bを区切る支持板25に支持されたノズル5を通って下部空間20Bに供給される。このとき、第一コアレッサー3を通過後の混合液には油泡が発生し、第一コアレッサー3よりも下方の空間が油泡で充満する現象が起こる。しかし、混合液とともに油泡が径の小さなL字型のノズル5を通ることにより油泡が小さくなり、小さな油泡がノズル5から導出された後に浮上することにより、油泡が下部空間20Bの頂部(支持板25の下方)に溜まり、下部空間20Bの下部には水分が溜まる層ができる。下部空間20Bの頂部に溜まった油泡は、開閉弁V2が開くことによって排出部12から密閉容器2外に排出される。これにより、油泡が導出部14を通って濾過器6や第二コアレッサー4に供給されることを抑制することができる。
【0057】
ノズル5は、第一コアレッサー3を通過後の混合液に発生する大きな油泡を小さな油泡に変えて排出部12から密閉容器2外に排出に排出し易くする目的で設けられている。ここで、ノズル5の下端開口50から第一室20の下部空間20Bに導出される混合液の流速V1は、ノズル5から導出される油泡を効果的に小さくする、混合液がノズル5を通過する際の圧力損失を低減する、ノズル5から混合液が導出されることによる第一室20の下部空間20Bにおける混合液の流動が激しくならないようにして油水分離を効率よく生じさせる、等の観点からは、0.1m/s以上2.0m/s以下であることが好ましく、0.1m/s以上1.0m/s以下であることが好ましい。
【0058】
流速V1は、ノズル5を流れる単位時間当たりの混合液の体積及びノズル5の断面積により算出することができ、ノズル5の内径や混合液の流量等を制御することにより流速V1を上述した範囲に調整することができる。なお、流速V1は上述した範囲には限定されない。
【0059】
第一コアレッサー3を通過後の下部空間20Bに供給された混合液は、導出部14を介して密閉容器2から濾過器6に供給され、濾過器6において混合液中に含まれる固形物(懸濁物質(SS)も含む)が分離、除去された後、導入部15を介して第二コアレッサー4に供給される。これにより、混合液中に含まれる固形物によって最も密な第二コアレッサー4のフィルターの目が詰まることを抑制することができる。
【0060】
第二コアレッサー4に供給された混合液は、第二コアレッサー4を通過し、このとき第一コアレッサー3で捕捉されなかった混合液中の小さい油滴が第二コアレッサー4に捕捉され、捕捉された油滴同士が結合して粗粒化する。これにより、粗粒化した油滴が第二コアレッサー4から脱離した後に浮力を増して浮上することにより混合液から分離し、第二室21の頂部に溜まる。第二室21の頂部に溜まった油分は、開閉弁V6が開くことによって排出部16から密閉容器2外に排出される。
【0061】
導入部15から第二コアレッサー4に混合液を供給する際には、混合液は粗粒化フィルター40の中空内部43に供給され、その後は内側の補強材41、粗粒化フィルター40、外側の補強材40の順(内から外)に混合液が通過していく。このとき、粗粒化フィルター40の中空内部43における混合液の流れが速いと、粗粒化フィルター40の端部(押え板71)で混合液がぶつかるような流れになり、この端部周辺において流束が他の部分と比較して大きくなって油分の漏れが生じるおそれがある。そのため、上述した油分の漏れを抑制するとの観点から、導入部14(循環路)から粗粒化フィルター40の中空内部に導入される混合液の流速V2は、0.1m/s以上1.0m/s以下であることが好ましく、0.3m/s以上0.7m/s以下であることが好ましい。
【0062】
流速V2は、導入部14を流れる単位時間当たりの混合液の体積及び導入部14の断面積により算出することができ、導入部14の内径や混合液の流量等を制御することにより流速V2を上述した範囲に調整することができる。なお、流速V2は上述した範囲には限定されない。
【0063】
上述した構成の本実施形態の油水分離装置1によれば、第一コアレッサー3及び第二コアレッサー4の2段式の構成のため、装置高さを低くすることができる。よって、装置を搬送する際の作業負担を低減できるとともに、装置自体のコストを低下することができる。
【0064】
また第一コアレッサー3を通過後の混合液に油泡が発生しても、ノズル5を通って油泡が第一室20の上部空間20Aから下部空間20Bに導かれることで油泡が小さくなり、小さな油泡がノズル5から導出された後に浮上して下部空間20Bの頂部に溜まるので、下部空間20Bが油泡で充満することを抑制できる。よって、導出部14から油泡が混合液とともに濾過器6や第二コアレッサー4に供給されることを抑制でき、濾過器6における濾過処理が阻害されないうえ、第二コアレッサー4の粗粒化フィルター40が油泡により目詰まりを起こすことを防止できる。
【0065】
加えて、本実施形態の油水分離装置1によれば、ノズル5の下端開口50から第一室20の下部空間20Bに導出される混合液の流速V1が0.1m/s以上2.0m/s以下であることにより、ノズル5から導出される油泡を効果的に小さくできる、混合液がノズル5を通過する際の圧力損失を低減できる、ノズル5から混合液が導出されることによる第一室20の下部空間20Bにおける混合液の流動を穏やかにできるために油水分離を効率よく生じさせることができる、との効果を奏する。
【0066】
加えて、本実施形態の油水分離装置1によれば、導入部15(循環路)から第二コアレッサー4の粗粒化フィルター40の中空内部43に導入される混合液の流速V2が0.1m/s以上1.0m/s以下であるであることにより、粗粒化フィルター40の端部(押え板71)での油分の漏れが生じるのを抑制できる、との効果を奏する。
【0067】
加えて、本実施形態の油水分離装置1によれば、第二コアレッサー4は粗粒化フィルター40の軸方向が水平方向に延びるように第二室21に横向きにして配置されるが、第二コアレッサー4を挿入部27から取付手段7のガイドレール72上を押え板71を介して滑らせながら第二室21に向けて押し込んだ後、固定板70を挿入部27に固定することにより、第二コアレッサー4を第二室21に設置することができる。よって、第二コアレッサー4の設置作業の作業性が向上し、作業負担を低減できる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0069】
一変形例として、例えば
図11に示すように、第二コアレッサー4は、粗粒化フィルター40の中空内部43に散液管44が挿入されていてもよい。散液管44は、一端が開口しかつ他端が閉塞しており、閉塞した側の端が押え板71の近傍に位置するよう粗粒化フィルター40に挿入されている。散液管44の開口した側の端は固定板70に固定されており、散液管44の一端開口は固定板70の貫通孔700と隣接して導入部15と連通している。これにより、濾過器6で固形物が除去された混合液は、導入部15(循環路)から散液管44の中空内部45に導入される。
【0070】
散液管44は、その軸方向及び周方向に沿って間隔をあけて複数の通液孔46が形成されている。通液孔46の径、散液管44の軸方向に隣り合う二つの通液孔46の間隔、及び散液管44の周方向に隣り合う二つの通液孔46の間隔は特に限定されるものではないが、後述する流速V3が所定の範囲となるように設定することが好ましい。
【0071】
図11に示す変形例では、濾過器6で固形物が除去された混合液が導入部15から第二コアレッサー4の散液管44の中空内部45に供給される。そして混合液は、散液管44の複数の通液孔46を通って粗粒化フィルター40の中空内部43に供給され、内側の補強材41の複数の貫通孔から粗粒化フィルター40に伝わり、粗粒化フィルター40を内面から外面に向かって通過後に外側の補強材40の複数の貫通孔から第二室21に供給される。これにより、導入部15から第二コアレッサー4に混合液を供給した際に、混合液の流れが速くても、粗粒化フィルター40の端部(押え板71)に混合液が勢いよくぶつかることがなく、粗粒化フィルター40の軸方向に均等に混合液が分配されるので、端部周辺において油分の漏れが生じるのを防止することができる。
【0072】
ここで、散液管44の通液孔46から粗粒化フィルター40の中空内部43に導出される混合液の流速V3は、粗粒化フィルター40の軸方向に均等に混合液を分配するとの観点からは、0.4m/s以上1.0m/s以下であることが好ましい。
【0073】
流速V3は、散液管44を流れる単位時間当たりの混合液の体積及び通液孔46の総断面積により算出することができ、通液孔46の径や数、混合液の流量等を制御することにより流速V2を上述した範囲に調整することができる。なお、流速V3は上述した範囲には限定されない。
【0074】
他の一変形例として、図示は省略するが、複数のノズル5が支持板25に支持されていて、複数のノズル5により第一室20上部空間20Aから混合液を下部空間20Bに導出するようにしてもよい。
【0075】
他の一変形例として、図示は省略するが、第二コアレッサー4は、粗粒化フィルター40の軸方向が鉛直方向に延びるように第二室21に縦向きにして配置されていてもよい。
【0076】
他の一変形例として、図示は省略するが、複数の第二コアレッサー4が第二室21に設置されていてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 油水分離装置
2 密閉容器
20 第一室
20A 第一室の上部空間
20B 第二室の下部空間
21 第二室
25 支持板
3 第一コアレッサー
4 第二コアレッサー
40 粗粒化フィルター
43 粗粒化フィルターの中空内部
44 散液管の中空内部
45 散液管
46 通液孔
5 ノズル
50 ノズルの下端開口
51 ノズルの上端開口
6 濾過器
7 取付手段
71 押え板
72 ガイドレール
77 切欠き