(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-01-16
(45)【発行日】2025-01-24
(54)【発明の名称】ビル管理設備構築支援システム
(51)【国際特許分類】
G06F 30/13 20200101AFI20250117BHJP
H04Q 9/00 20060101ALI20250117BHJP
【FI】
G06F30/13
H04Q9/00 301C
(21)【出願番号】P 2024166003
(22)【出願日】2024-09-25
(62)【分割の表示】P 2024072439の分割
【原出願日】2024-04-26
【審査請求日】2024-09-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】309000967
【氏名又は名称】株式会社 ネットワーク・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100173680
【氏名又は名称】納口 慶太
(72)【発明者】
【氏名】馬越 伸太郎
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-285201(JP,A)
【文献】特開2022-181628(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0327010(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2122588(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/13
H04Q 9/00
G06Q 50/08
G06Q 50/16
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビル管理設備の構築を支援するビル管理設備構築支援システムであって、
設置予定の設備機器に係る設備機器情報の入力と、前記設備機器情報に予め対応付けられている対応情報の出力と、が可能な対応情報作成部を備え、
前記設備機器には、第1次設備機器と、前記第1次設備機器に接続が可能な第2次設備機器と、を少なくとも含み、
前記設備機器情報には、前記第1次設備機器に係る第1次設備機器情報と、前記第2次設備機器に係る第2次設備機器情報とを少なくとも含み、
前記対応情報作成部は、
前記第1次設備機器情報の人手による入力が可能であり、
前記第1次設備機器の配置に係る座標情報の入力が可能であり、
前記第1次設備機器の、前記第2次設備機器との接続に係る情報を、前記第1次設備機器情報に係る前記対応情報の付帯情報として出力し、
複数種類の通信規格の種類毎に対応して設けられたデータベースである個別構造化体と、
前記個別構造化体の情報を所定の構造で集約するデータベースである統合構造化体と、を備え、
前記対応情報作成部が、前記統合構造化体の情報を使用して前記付帯情報を作成する、ビル管理設備構築支援システムであり、
前記ビル管理設備では、前記統合構造化体が引き継いで使用される、ビル管理設備構築支援システム。
【請求項2】
前記ビル管理設備では、前記統合構造化体に集約され
た情報に基づく所定の情報が、公衆通信回線に出力され、携帯情報端末から、ブラウザと前記公衆通信回線を介した
所定の管理項目の遠隔での監視を可能としている、請求項1に記載のビル管理設備構築支援システム。
【請求項3】
ビル管理設備の構築を支援するビル管理設備構築支援方法であって、
設置予定の設備機器に係る設備機器情報の入力と、前記設備機器情報に予め対応付けら
れている対応情報の出力と、が可能な対応情報作成部を用い、
前記設備機器には、第1次設備機器と、前記第1次設備機器に接続が可能な第2次設備機器と、を少なくとも含み、
前記設備機器情報には、前記第1次設備機器に係る第1次設備機器情報と、前記第2次設備機器に係る第2次設備機器情報とを少なくとも含み、
前記対応情報作成部は、
前記第1次設備機器情報の人手による入力が可能であり、
前記第1次設備機器の配置に係る座標情報の入力が可能なビル管理設備構築支援システムを用い、
前記対応情報作成部により、前記第1次設備機器の、前記第2次設備機器との接続に係る情報を、前記第1次設備機器情報に係る前記対応情報の付帯情報として出力し、
前記ビル管理設備構築支援システムが、
複数種類の通信規格の種類毎に対応して設けられたデータベースである個別構造化体と、
前記個別構造化体の情報を所定の構造で集約するデータベースである統合構造化体と、を備え、
前記対応情報作成部により、前記統合構造化体の情報を使用して前記付帯情報を作成する、ビル管理設備構築支援方法であり、
前記ビル管理設備では、前記統合構造化体が引き継いで使用される、ビル管理設備構築支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ビルの管理設備の構築を支援するビル管理設備構築支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル管理設備を構築する場合には、多種類の図面や表を作成する必要がある。作成される図面や表には、例えば、(1)外形図、(2)機器一覧表、(3)銘板一覧表、(4)電源回路図、(5)展開接続図、(6)端子配列図、(7)システム構成図、(8)ポイントリスト、(9)システム系統図、(10)システム機能図などがある。また、ビル管理設備の構築に係る先行特許文献としては、後掲の特許文献1~3などがある。これらの特許文献1~3には、各種図面や表の作成を省力化するような発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3021766号公報
【文献】特許第3209535号公報
【文献】特許第4431945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年のビル(所謂インテリジェントなど)では、多種多様な設備機器が設置されている。また、ビルの建設や改修等には、例えば、施主、ゼネコン、設計業者、工事業者、ビル管理業者、テナント等といった多様な関係者が、相互に協議しながら関与する。しかし、これらの関係者には、設備機器の技術仕様について詳細な知識を持たない者や、特定の製造事業者(メーカー)の設備機器についてのみ詳しい者なども含まれる。このため、従来は、協議結果に従って作成された図面や表について、作り直しが必要となるような場合が多かった。そして、関係者間の不十分なコミュニケーションによって、ビル管理設備の構築やビルの施工における省力化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化が妨げられる場合があった。
【0005】
本発明の目的とするところは、多様な関係者の間での適切なコミュニケーションを可能とするビル管理設備構築支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明に係るビル管理設備構築支援システムは、
ビル管理設備の構築を支援するビル管理設備構築支援システムであって、
設置予定の設備機器に係る設備機器情報の入力と、前記設備機器情報に予め対応付けられている対応情報の出力と、が可能な対応情報作成部を備え、
前記設備機器には、第1次設備機器と、前記第1次設備機器に接続が可能な第2次設備機器と、を少なくとも含み、
前記設備機器情報には、前記第1次設備機器に係る第1次設備機器情報を少なくとも含み、
前記対応情報作成部は、
前記第1次設備機器情報の人手による入力が可能であり、
前記第1次設備機器の配置に係る座標情報の入力が可能であり、
前記第1次設備機器の、前記第2次設備機器との接続に係る情報を、前記第1次設備機器情報に係る前記対応情報の付帯情報として出力し、
複数種類の通信規格の種類毎に対応して設けられたデータベースである個別構造化体と、
前記個別構造化体の情報を所定の構造で集約するデータベースである統合構造化体と、を備え、
前記対応情報作成部が、前記統合構造化体の情報を使用して前記付帯情報を作成する、ビル管理設備構築支援システムであり、
前記ビル管理設備では、前記統合構造化体が引き継いで使用される。
【発明の効果】
【0007】
上記発明によれば、多様な関係者の間での適切なコミュニケーションを可能とするビル管理設備構築支援システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るビル管理設備構築支援システムにより構築することが可能なビル管理システムの一例を概略的に示す説明図である。
【
図2】ビル管理システムに用いることが可能な無線式センサー装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【
図3】ビル管理システムに係るデータベースの作成手順を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】ビル管理システムに係るデータベースの情報を概略的に示す説明図である。
【
図6】(a)はマッピングに係る従来技術を示す説明図、(b)同じく実施形態のプロダクティビティ・ツールを用いたマッピングの一例を示す説明図である。
【
図7】(a)は
図6と同じくマッピングに係る従来技術を示す説明図、(b)は
図6と同じく実施形態のプロダクティビティ・ツールを用いたマッピングの一例を示す説明図である。
【
図8】(a)はプロダクティビティ・ツールを用いた場合に表示される初期画面例を画像を用いて示す説明図、(b)は所定のプロトコルのためのテンプレートの一例を画像を用いて示す説明図である。
【
図9】(a)は他の所定のプロトコルのためのテンプレートの一例を画像を用いて示す説明図、(b)は所定の管理システムのためのテンプレートの一例を画像を用いて示す説明図である。
【
図10】実施形態に係るビル管理設備構築支援システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【
図11】設備機器の配置の協議に用いられるレイアウト図の一例を示す説明図である。
【
図12】CADにおける操作画面の一例を示す説明図である。
【
図13】(a)は制御盤自動作図メニューバーの一例を示す説明図、(b)は自動作図機能ボタンによって選択可能な各機能の内容を概略的に示す図表である。
【
図14】「属性情報設定」の自動作図機能ボタンを選択した場合における表示例を示す説明図である。
【
図18】「機器配置」の自動作図機能ボタンを選択した場合における表示例を示す説明図である。
【
図22】「MicroエッジLevel配置」の自動作図機能ボタンを選択した場合における表示例を示す説明図である。
【
図30】「センサー/操作端末配置」の自動作図機能ボタンを選択した場合における表示例を示す説明図である。
【
図34】(a)は「機器一覧表」を示す説明図、(b)は「デバイス種別」の図を示す説明図、(c)は「信号種別」の図を示す説明図、(d)は「電源系統図」を示す説明図、(e)は「外形図」を示す説明図、(f)は「展開接続図」を示す説明図である。
【
図35】対応情報の作成が可能になるまでの流れを示すフローチャートである。
【
図37】ビル管理システムを構成する機器の一例を示す図表である。
【
図38】ビル管理設備構築支援システムにおいて取り扱うデータの一例を示す説明図である。
【
図39】データのゾーン分けの一例を示す説明図である。
【
図40】上下階層の分け方の一例を示す説明図である。
【
図41】プロファイルの種類の一例を示す説明図である。
【
図42】「実行スケジュール」画面に係るメニューバーを示す説明図でさる。
【
図43】スケジューラー機能に係る画面の一覧を示す説明図である。
【
図44】(a)はスケジューラーに係る画面表示例を示す説明図、(b)はスケジューラーの設定に係る画面表示例を示す説明図である。
【
図45】(a)はデマンドメニューバーの一例を示す説明図、(b)はトレンド画面例を示す説明図、(c)は日次レポート例を示す説明図である。
【
図46】デマンドコントロール機能を実行するための構造の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態における説明順序]
本発明の一実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100(
図10)について説明する。ただし、ビル管理設備構築支援システム100(
図10)の技術的な特徴の理解を容易にするため、先ずは、構築の対象(設計対象)となるビル管理システムの一例について説明する。
【0010】
本実施形態において構築の対象となるビル管理システムは、例えば、本出願人による特許第7249078号公報(及び、特許第7262035号公報、特許第7262036号公報)や、特願2023-040742号(明細書及び図面)に開示されているようなビル管理システムである。以下に、上記特願2023-040742号の明細書及び図面に開示されているビル管理システムの実施形態について、記載内容(他の2件も同様の内容)を転記して説明する。その後に、ビル管理設備構築支援システムの発明に係る実施形態(ビル管理設備構築支援システム100)について説明する。
【0011】
[構築対象となるビル管理設備及びビル管理システムの一例]
<実施形態に係るビル管理システムの概要>
以下、本発明の実施形態に係るビル管理システムについて説明する。本実施形態のビル管理システムは、空調(エアコン)、照明、衛生、警報(セキュリティー、アラーム)、エネルギー等といった各種の管理項目を、ビル内やビル外、及び、遠隔地から自在に、一元管理したり、分散制御したりすることを可能としている。
【0012】
本実施形態のビル管理システムは、ビル内の各設備機器を含んでいる。設備機器には、例えば、エアコン、照明機器、扉等のように様々な設備機器が含まれている。また、設備機器には、部屋内の温度を検出する温度センサー、湿度を検出する湿度センサー、照明機器の照度を検出する照度センサー、扉の開閉を検出するコンタクトセンサーなど(センサー類)も含まれる。
【0013】
また、設備機器には、エアコンの操作パネルやリモコン(リモートコントローラ)、照明の操作パネルやリモコン、壁に設置された各種のスイッチなど(スイッチ類)も含まれる。さらに、設備機器には、電力の使用状況の把握に係る変流器、電力量モニタ、サーキットプロテクタ、パワー・サプライ・ユニット、コンパクト・ゲートウェイなど(その他の電気機器類)も含めることが可能である。
【0014】
これらは設備機器の一例であり、一般にビル管理に用いられるその他の機器も、本実施形態の設備機器に含めることが可能である。
【0015】
本実施形態のビル管理システムでは、各設備機器により収集された情報に基づき、ビルの設備機器の監視を行うビル管理者や、各設備機器の一般利用者(フロアや区画を利用するテナントの社員など)が、自ら所有する情報携帯端末(スマートフォンやタブレットなど)から、設備機器を選択して指示(コマンド)を入力する、といったことを可能としている。
【0016】
さらに、本実施形態のビル管理システムにおいては、ビル管理のためのソフトウェア(アプリケーションソフトを含む)の種類が、システムの統合により、最小限に止められている。また、本実施形態のビル管理システムにおいては、全体の監視を可能とする監視システムが標準装備されている。
【0017】
当たり前のことのように思えるかもしれないが、従来のビル管理システムでは、メーカー(製造業者)やベンダー(販売業者)毎の各種情報の仕様(信号規格、通信規格、OS(オペレーティング・システム)、プログラミング言語など)の違いに関わらず、横断的に(横方向に跨って)情報を収集して、ビル管理者や、設備機器の一般利用者等に対し、統合されたサービスを提供することは難しかった。本実施形態のビル管理システムは、このことを可能とした。
【0018】
より具体的には、本実施形態のビル管理システムは、「ビル内監視ルーム(中央監視ルーム)からの解放」を図っている。これは、従来、ビル内に設置されていた中央監視ルームを廃止したり、中央監視に係る人員を一人等のように最小限に止めたりすることが可能であることを意味している。
【0019】
従来のビル管理システムにおいては、ビル内に中央監視ルームが不可欠であった。しかも、空調、照明、衛生、警報、エネルギー等といった各種の管理項目について設置された機器毎に、独立した管理が行われていた。前述したように、例えば前掲の特許文献1(注:特開2003-134120号公報のこと)に開示された発明では、メーカー毎の設備制御機器の選定が必要である(段落0009)。このため、機器類の制御が、システム構成上の縦方向に(縦断的に)は統合できたとしても、メーカーやベンダー毎の各種情報の仕様の違いに関わらず、水平方向に(横断的に)統合することはできず、分断されていた
。
【0020】
図1は、本実施形態のビル管理システム10の構成を概略的に示している。図中には、設備機器に係る複数の系(項目系)の一例が示されている。
図1に示されているのは、空調関連系12、照明・コンセント系14、衛生・水回り系16、状態・警報系18、エネルギー系20である。
【0021】
空調関連系12は、エアコン(エアーコンディショナー、空気調和機)や、温度センサー、湿度センサー等といった空調に係る複数の設備機器の系(まとまり、グループ)を示している。
【0022】
照明・コンセント系14は、照明機器、照度センサー、商用電源への接続機器等に係る設備機器の系を示している。衛生・水回り系16は、トイレ、洗面所、給湯等といった衛生や水回りに係る複数の設備機器の系を示している。
【0023】
状態・警報系18は、ドアの開閉、地震、権限のない者の侵入等に対処に係る複数の設備機器の系を示している。エネルギー系20は、使用電力量(電力消費量)や、太陽光発電量、燃料使用量等の把握に係るセンサー類やスイッチ類等の複数の設備機器の系を示している。
【0024】
ここで、項目系の分類は、上述の例に限られるものではない。例えば、「空調・照明・コンセント系」のように、複数の系を統合してもよい。また、「照明系」、「コンセント系」、「衛生系」、「水回り系」のように、それぞれを独立させてもよい。さらに、「空調1」、「空調2」、「照明1」、「照明2」のように分割してもよい。
【0025】
上述したような各種の項目系(空調関連系12、照明・コンセント系14、衛生・水回り系16、状態・警報系18、エネルギー系20など)では、様々なメーカーやベンダーの設備機器が用いられるのが一般的である。このため、従来は、各項目系において、メーカーやベンダー毎に、情報通信の抱え込みが生じており、ビルの改修工事や新築工事の際には、メーカーやベンダーの指定の工事業者に工事を発注する必要があった。
【0026】
また、メーカーやベンダー毎には共通の信号規格や通信規格が使用されていることが多い。このため、メーカーやベンダー毎に、共通の信号規格、通信規格、OS、プログラミング言語などを用いて管理システムを構築することは可能である。また、マルチプロトコル通信規格に対応するよう予め定められた設備機器を用いた場合には、それらの設備機器のみを統合的に取り扱うことは可能である。しかし、これらの場合は、メーカーやベンダーに対応したサーバーを設置して、管理システムを構築する必要がある。
【0027】
例えば、1つの項目系(例えば空調関連系12など)において、複数のメーカーやベンダーの設備機器が採用されている場合には、1つの項目系につき複数のサーバーを設置して、複数の管理システムを構築する必要があった。
【0028】
また、例えば、各項目系(空調関連系12、照明・コンセント系14、衛生・水回り系16、状態・警報系18、エネルギー系20など)毎に、メーカーやベンダーが統一されているような場合は、項目系毎にサーバーを設置して、管理システムを構築する必要があった。
【0029】
このように、メーカーやベンダー毎の統合(システム構成上の縦方向の統合)は比較的容易にできるが、各項目系(空調関連系12、照明・コンセント系14、衛生・水回り系16、状態・警報系18、エネルギー系20など)を横断した統合(システム構成上の横
方向の統合)は容易ではなかった。そして、従来のビル管理システムにおいては、IT(情報技術)とOT(運用技術)が分離されていた。
【0030】
図1に示す本実施形態のビル管理システム10は、各種の管理項目に係る設備機器の項目を統合し、且つ、適正なクラウド化を行うことで、中央監視ルームを廃止可能としている。本実施形態のビル管理システム10は、各種の管理項目を、ビル管理者のスマートフォンやタブレット等の携帯情報端末22から、多数のアプリケーションソフトをインストールすることなく、遠隔で監視できるようにしている。この結果、中央監視ルームに人を縛り付ける必要がなくなり、管理に要する人員の人数や人件費の削減が可能となった。
【0031】
また、本実施形態のビル管理システム10は、テナントの社員などの一般利用者も、所定の管理項目を、スマートフォンやタブレット等の携帯情報端末24から、多数のアプリケーションソフトをインストールすることなく、遠隔で操作できるようにしている。
【0032】
<階層構造>
図1に示すように、本実施形態に係るビル管理システム10は、大きく分けて、レベル0~レベル4の5つの階層構造を有している。レベル0はセンサーの階層であり、レベル1はセンサー・コントローラー(マイクロ・エッジ・デバイス)の階層である。レベル2はアプリケーション・エッジ・デバイスの階層であり、レベル3は統合コントローラー(統合・エッジ・デバイス)の階層である。レベル4は、エンタープライズ・エッジ・サーバーの階層である。以下に各階層について説明する。
【0033】
<レベル0:センサー>
ビル管理システム10の最も下位レベルの階層はセンサーである。従来、例えば、温度や湿度等といった各種のアナログ情報をデジタル情報に変換するために、シーケンサーを設け、各種の情報に対する閾値を設定して管理する必要があった。
【0034】
センサーから送出されるデータは、閾値、電流値、レンジ変換等といったいろいろな要素が加わり、一つの塊として形成されている。つまり、シーケンサーの中でデータが処理され、設計者や作業者により閾値が設定され、出力されたデータの一部がビル管理に使用されるだけであった。
【0035】
従来型のビル管理システムの特徴といってもよいが、従来のビル管理システムは、機器間を物理的に接続して、特定のシリアルバス(RS485)で繋いでいるだけであった。通信は、シリアルバス(RS485)のインターフェースを使って行われており、信号処理は、CPUを持たない通信用チップを使用して行われていた。このため、従来のビル管理システムには、限られた機能しか備えられておらず、インテリジェンスに欠けていた。
【0036】
本実施形態に係るビル管理システム10では、レベル0のセンサーとして、
図2に示すような、無線式のインテリジェントセンサー装置(以下では「無線式センサー装置」と称する)30が用いられている。無線式センサー装置30は、複数種類(例えば、温度、湿度、照度、加速度、コンタクトの5種類)の検出項目(物理量)の検出が可能である。
【0037】
無線式センサー装置30は、複数の項目系(例えば、空調関連系12、照明・コンセント系14、衛生・水回り系16、状態・警報系18、エネルギー系20など)において使用されている。さらに、無線式センサー装置30には、複数の機種があり、それぞれの通信規格で無線通信を行う。このため、無線式センサー装置30には、異なる通信規格で無線通信を行うものが含まれる。さらに、無線式センサー装置30については、マルチプロトコル対応の設計がされているか否かは問題とならない。
【0038】
無線式センサー装置30は、例えば、ビルの壁面、天井、及び、ドア等に設置され、検出した情報をレベル1のセンサー・コントローラー(後述する)に無線送信する。無線式センサー装置30としては、複数のメーカーやベンダーから提供されている各種のものを混合して採用することが可能である。
【0039】
無線式センサー装置30は、
図2に示すように、内部に、温度センサー部32、湿度センサー部34、照度センサー部36、加速度センサー部38、及び、コンタクトセンサー部40を備えている。さらに、無線式センサー装置30は、CPU42、記憶部44、情報形式変換部46、情報入力部48、無線通信部50、及び、発電部52等を備えている。
【0040】
温度センサー部32は、温度センサーを備えており、例えば、室内の空気等の温度を検出可能である。湿度センサー部34は、湿度センサーを備えており、例えば、室内の空気等の湿度を検出可能である。照度センサー部36は、照度センサーを備えており、例えば、室内等の明るさを検出可能である。
【0041】
加速度センサー部38は、加速度センサーを備えており、例えば、壁に伝わる衝撃等を検出可能である。コンタクトセンサー部40は、コンタクトセンサー(マグネットコンタクトセンサー)を備えており、例えば、ドアの開閉等を検出可能である。
【0042】
無線式センサー装置30に備えられる温度センサー、湿度センサー、照度センサー、加速度センサー、及び、コンタクトセンサーとしては、一般的な各種のセンサーを採用することが可能である。
【0043】
無線式センサー装置30においては、エネルギー・ハーベスティング技術を利用して発電し、無線送信する通信規格(EnOcean)が採用されている。無線式センサー装置30においては、発電部52の発電(ここでは光発電)により、CPU42やセンサー部32、34、36、38、40の正常な動作に必要な電力が供給される。
【0044】
無線式センサー装置30は、どの検出項目の検出機能を使用するかを選択することが可能である。また、無線式センサー装置30は、すべての検出機能を同時に使用することも可能である。
【0045】
使用する検出機能の設定は、選択された検出機能を識別する情報(検出機能識別情報)を記憶部44に記憶させて行われる。上記検出機能識別情報の記憶は、無線通信が可能な外部通信機器を利用して行うことが可能である。
【0046】
上述の外部通信機器としては、例えば、スマートフォンやタブレット端末等の携帯情報端末(携帯情報端末22、24など)を例示できる。この場合、携帯情報端末に、所定のアプリケーションソフトをインストールし、このアプリケーションソフトを操作することにより行うことが可能である。所定のアプリケーションソフトには、ビル管理者が使用する管理者用機器管理アプリや、一般利用者用機器管理アプリなどがある。
【0047】
無線式センサー装置30においては、CPU42の情報処理により、使用されるセンサー部(センサー部32、34、36、38、40のうちの少なくとも一部)の信号が、工業単位の情報に変換され、デジタルデータが生成される。無線式センサー装置30においては、生成されたデジタルデータを利用して無線パケットが作成され、無線パケットが、後述するレベル1のセンサー・コントローラー(マイクロ・エッジ・デバイス)に送られる。
【0048】
温度センサー部32、湿度センサー部34、照度センサー部36などのように、連続量を検出するセンサー部については、情報の送信は、所定時間(例えば数十秒~3分など)毎に行われる。また、加速度センサー部38やコンタクトセンサー部40の信号に係る情報の送信は、所定の閾値に達するほどの大きさの加速度やコンタクト(接触圧力など)が検出された場合に行われる。
【0049】
温度センサー部32、湿度センサー部34、照度センサー部36など情報送信間隔を大きくするほど、情報送信量を減らすことができる。上記の所定時間内に、温度センサー部32、湿度センサー部34、照度センサー部36に係る情報を送信してもよく、上記の所定時間毎に、温度センサー部32、湿度センサー部34、照度センサー部36係る情報を順に送信してもよい。
【0050】
従来のビル管理システムにおいて、情報通信の無線化は、頻繁なバッテリー(電池)交換が必要になることや、無線信号が途切れること等の問題により、敬遠されることが多かった。本実施形態のビル管理システム10は、このような無線化におけるバッテリーの課題を、エネルギー・ハーベスティング技術により解決している。
【0051】
なお、エネルギー・ハーベスティング技術に用いられる発電部52は、光発電を行うものに限らず、例えば、熱電発電、電磁波発電、振動力発電等であってもよい。
【0052】
熱電発電においては、例えば、ゼーベック効果(温度差が電圧に変換される現象)を利用した熱電変換素子(熱と電力を変換する素子)が用いられ、物体の温度差が電圧に変換される。例えば、空調装置や、ビル内の配管等から発生する熱が、電気エネルギーに変換される。
【0053】
電磁波発電においては、例えば、ビル内の無線LANなどが発する電波のエネルギーをレクテナ(rectifying antenna)により直流電流に変換して発電が行われる。
【0054】
振動力発電においては、振動によって発生する圧力が、圧電素子などを介して電力に変換される。例えば、ビルのフロア内に圧力センサーが設置され、人が通路を歩く際に発生する圧力や、振動による圧力が、電気エネルギーに変換される。
【0055】
なお、本実施形態のビル管理システム10では、照明をオン/オフするためのスイッチとして、無線式スイッチ(図示略)が使用されている。無線式スイッチは、スイッチ機構部や無線通信部を内蔵しており、エネルギー・ハーベスティング技術を利用して、スイッチ機構部の状態を示す情報を、無線により外部に送信する。
【0056】
無線式スイッチを管理者や一般利用者が手指で操作することにより、オン/オフの情報(オン/オフ情報)が、誘起電力を利用して無線送信される。無線式スイッチは、ビス止めや、マグネットシートの貼付等の方法により、壁面への設置が可能である。
【0057】
無線式スイッチを使用することにより、配線を要することなく、照明のオン/オフが可能である。配線不要であることから、スイッチ類の置き場所に制約がなく、スイッチの配置の自由度が高い。加えて、バッテリーが不要であり、このことによっても、多くの手間を要していた電池交換作業が不要になる。
【0058】
以上のように、必要なセンサー類やスイッチ類に対して、可能な限り多くの無線式センサー装置30や無線式スイッチを用いることで、配線を引き回して、システムの末端を構成するセンサー類やスイッチ類をシーケンサーに接続する作業が不要になる。このため、センサー類やスイッチ類の設置工事を容易に行うことが可能となる。
【0059】
センサー類やスイッチ類は、前述の項目系12、14、16、18、20の中に多数含まれている。また、1つのビルに使用されるセンサー類やスイッチ類は、フロア内の部屋数等によっても異なるが、ビルのインテリジェント化が進むほど多くなる。
【0060】
このため、部屋数の多いビルや、高度にインテリジェント化されたビルの改築工事や新築工事の際に、センサー類やスイッチ類の配線作業に要する工数(人員数×時間)は相当な値となる。したがって、無線式センサー装置30や無線式スイッチを用いることで、配線作業の多くを不要にすることができ、工数を大幅に削減することが可能となる。
【0061】
従来、配線作業に要する作業内容や工数は、作業現場任せになりがちであり、工期の見積りや、人件費の見積りを不正確にする大きな要因であった。例えば、センサー装置とシーケンサーの間の配線や、シーケンサーと上記の機器の配線等をどのように行うかは、作業現場の判断により行われることが多かった。また、設置されるセンサー装置の数は、ビルの形態や規模によって、数百~数十万といった数に達する。さらに、ビルの改修コストや新築コストの多くの部分は、人件費に依って占められている。したがって、配線に要する工数を削減することは、コスト削減に大きく寄与する。
【0062】
なお、本実施形態に係るビル管理システム10では、すべてのセンサーやスイッチ類が無線式であることに限られるものではなく、一部のセンサーやスイッチは有線で信号をシーケンサー等に送出するものであってもよい。また、前述したその他電気機器類には、無線通信するものや有線通信するものが含まれていてもよい。
【0063】
<レベル1:センサー・コントローラー(マイクロ・エッジ・デバイス)>
各無線式センサー装置30から送信されたデジタルデータは、レベル1のセンサー・コントローラー(マイクロ・エッジ・デバイス60)により受信される。センサー・コントローラーは、マイクロ・エッジ・デバイス60により構成される。
【0064】
本実施形態のビル管理システム10では、管理対象のビルの規模や棟数等の条件に応じて、複数個のマイクロ・エッジ・デバイス60が用いられる。
図1には、一例として3つのマイクロ・エッジ・デバイス60が示されている。1つのマイクロ・エッジ・デバイス60には、例えば、100個以上(最大200個程度)の各無線式センサー装置30の対応付けや、図示は省略するが、有線式のセンサー類やスイッチ類に接続されたシーケンサー類の対応付けが可能である。そして、1つのマイクロ・エッジ・デバイス60では、100~200点程度の監視点数についてのデータ処理が可能である。
【0065】
従来、例えば、ビルの窓に設置されたブラインドの制御に関して、ブラインド専用のコントローラー(専用コントローラ)が用いられていた。専用コントローラーでは、ブラインド制御プログラムが実行されて、ブラインドの制御に係る処理が行われていた。つまり、ブラインドと専用コントローラーにより構成される制御系において、制御対象(ここではブラインド)の制御が完結していた。
【0066】
従来より、ビル管理システムにおいては、空調、照明、衛生、セキュリティー、エネルギー等に係る多くの管理項目について監視制御が行われている。これらの管理項目に係る制御(監視制御)においては、前述したように、使用される機器や、機器の製造業者、機種等の違いに応じて、様々な信号規格、通信規格、OS、プログラム言語等を用いた制御が行われるのが一般的であった。
【0067】
そして、ビル管理の技術分野において、IT(情報技術)やOT(運用技術)に関する様々な規格が存在し、これらの規格の内容が異なるため、1つのコントローラーに、既存
の各種のセンサー類や、ビルの建設業者が選定したセンサー類等の多種類のセンサー類を通信可能に接続することはできなかった。
【0068】
これに対し、本実施形態のビル管理システム10では、すべての情報の出発点となるアナログデータ(無線式センサー装置30より収集したデータ)が、レベル0の無線式センサー装置30自身によりデジタル化される。1つのマイクロ・エッジ・デバイス60に対し、多数の無線式センサー装置30のデジタル情報が、マイクロ・エッジ・デバイス60に集約される。
【0069】
無線式センサー装置30には、同じデジタル無線通信規格による情報通信を行うものや、互いに異なるデジタル無線通信規格による情報通信を行うものが含まれる。マイクロ・エッジ・デバイス60は、多数(例えば150以上)の数の通信規格(通信プロトコル)を取り扱うことが可能なように構成されている。
【0070】
マイクロ・エッジ・デバイス60では、多数の無線式センサー装置30の情報を、無線式センサー装置30に採用されている通信規格毎に、共通仕様の通信規格(ここではIP(インターネット・プロトコル))に変換して取り扱うことが可能である。つまり、マイクロ・エッジ・デバイス60においては、異なる通信規格の信号が入力されて、統一された共通仕様の信号が出力される。マイクロ・エッジ・デバイス60は、対応付けられた設備機器にIPアドレスを割り振り、IPアドレスを用いて識別する。
【0071】
マイクロ・エッジ・デバイス60は、個々に、異なる通信規格の信号を集約して共通仕様の信号が出力されるゲートウェイとして機能する。マイクロ・エッジ・デバイス60を、管理対象のビルの規模や棟数等に応じて多数備えることにより、複数のゲートウェイにより構成されるゲートウェイ群を大規模に形成することが可能である。なお、各項目系12、14、16、18、20と、マイクロ・エッジ・デバイス60との間に、他のゲートウェイ(細分化されたゲートウェイ)が存在する場合もある。ここでいうゲートウェイ群には、マイクロ・エッジ・デバイス60とは別の機器として存在するゲートウェイも含まれる。マイクロ・エッジ・デバイス60とゲートウェイとの関係(位置づけ)は、マイクロ・エッジ・デバイスが上位であり、ゲートウェイが下位である。
【0072】
マイクロ・エッジ・デバイス60では、無線式センサー装置30からの情報が吸い上げられ、必要な情報の整理が行われて、上層のアプリケーション・エッジ・デバイス62(レベル2)に送信される。マイクロ・エッジ・デバイス60の階層(レベル1)では、例えば、多数のマイクロ・エッジ・デバイス60によりマイクロ・エッジ・デバイス群60Aが構成される。マイクロ・エッジ・デバイス群60Aは、概念上、前述のゲートウェイ群に含まれものとすることができる。
【0073】
マイクロ・エッジ・デバイス群60Aは、ゲートウェイの機能を発揮してデータの変換(コンバート)を行い、統一化された仕様の情報(パターン化された形式の情報)を上層の、対応付けられたアプリケーション・エッジ・デバイス62に送信する。
【0074】
このように、無線式センサー装置30やシーケンサー類によりデジタル化されたアナログデータは、マイクロ・エッジ・デバイス60で前段階処理され、統一化された仕様の情報となって上位層に送出される。マイクロ・エッジ・デバイス60では、末端の無線式センサー装置30でデジタル化された情報が、レベル2でのデータベース化のために前段階処理される。
【0075】
マイクロ・エッジ・デバイス60としては、図示は省略するが、例えば、CPU、記憶部、無線通信部等を備え、マルチプロトコルのデジタル情報を、時分割等の処理や、情報
変換の処理により、共通の通信規格に変換するものを採用できる。
【0076】
<レベル2:アプリケーション・エッジ・デバイス>
マイクロ・エッジ・デバイス60の上層(レベル2)にあるのがアプリケーション・エッジ・デバイス62である。アプリケーション・エッジ・デバイス62は、ビルの空調、電気、衛生、中央監視等といった管理項目(アプリケーション)毎にデータを集める役割を担う。
【0077】
前述したように、マイクロ・エッジ・デバイス60(レベル1)において、センサー(レベル0)のデータが集約され、センサー(レベル0)でデジタル化されたデータが、マイクロ・エッジ・デバイス60(レベル1)からアプリケーション・エッジ・デバイス62(レベル2)に送出される。
【0078】
管理対象のビルの規模にもよるが、例えば、100個程度のマイクロ・エッジ・デバイス60に対して、1つのアプリケーション・エッジ・デバイス62が設置される。所謂中小ビルのレベルであれば、1台のアプリケーション・エッジ・デバイス62により、ビル全体の管理が可能である。この場合、後述のレベル3及びレベル4は省略することが可能である。
【0079】
アプリケーション・エッジ・デバイス62には、中央監視機能が備えられている。中央監視機能は、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)の監視や制御のための処理を行い、得られた情報を外部機器に提供できるようにした機能である。中央監視機能部により、各無線式センサー装置30で収集された情報に基づき、電力量等の情報がリアルタイムに処理され、統計的に視覚化されて、表示可能な情報として出力される。つまり、エネルギー・マネジメント・システム(EMS)の監視・制御システムが、アプリケーション・エッジ・デバイス62の中に組み込まれている。
【0080】
アプリケーション・エッジ・デバイス62では、
図3に示すように、マイクロ・エッジ・デバイス60から送られた情報が、データベース作成用のソフトウェアに読み込まれ(S(ステップ)11)、自動的にデータベースが作成される(S12)。さらに、個別の認識データの設定(パラメータ設定など)には、プロダクティビティ・ツールが用いられている。
【0081】
プロダクティビティ・ツールは、本実施形態のビル管理システム10で使用されるアプリケーションソフトの1つとして開発されたものである。プロダクティビティ・ツールについては後述する。データベース作成用のソフトウェアとしては、一般的な種々のものを採用できる。
【0082】
作成されたデータベースには、
図4に示すように、収集されたデータの各種の属性(プロパティを含む)が記録されている。記録される属性としては、IPアドレス、ビル名、フロア、エリア、管理項目、情報種別、情報取得日、情報取得時刻などの情報が含まれる。また、センサー類の情報である場合には、各センサーの検出値などの情報(検出値情報)や、オン/オフの情報なども含まれる。
【0083】
従来、インテリジェントセンサーや、マイクロ・エッジ・デバイス60への設定データの登録は、一つずつ手作業で打ち込む必要があった。このような作業は、打ち込み作業そのものが多くの手間を要するほか、データの特性や仕組み等を理解していなければ行うことができなかった。本実施形態のビル管理システム10によれば、自動的にデータベースが作成されるので、手作業や、仕組み等の理解を要することなく、データ登録を行うことが可能である。
【0084】
さらに、アプリケーション・エッジ・デバイス62では、中央監視機能部を用いて、データベース化された情報に基づき、各設備機器から収集した温度や湿度、電力量といった情報をリアルタイムに、統計的に視覚化して表示するための情報を出力できる。出力された情報は、インターネット回線(公衆無線通信回線、及び、公衆有線通信回線)68を介して、ビル管理者のPC(パーソナルコンピュータ)に接続された表示装置や、携帯情報端末などに表示される。ビル管理者のPCや携帯情報端末にインストールされているブラウザを介して、中央監視用アプリケーションソフトへの接続が行われる。
【0085】
前述のEMS(エネルギー・マネジメント・システム)は、情報の見える化を行っている。すなわち、センサーや照明、空調、衛生、エネルギーといった各機器から集められた情報は、それらが単に存在するだけでは価値を生まない。これらのデータ(情報)を、種類別に分類し、必要な部分、必要な時間だけを集計し、統計処理した上で、画面表示してこそ価値が生まれる。
【0086】
本実施形態のビル管理システム10におけるEMSは、電気の使用量を様々なグラフで見ることができるよう構成されている。もちろん、使用している様々な設備機器毎の電気量も見ることが可能である。
【0087】
一般に、ビルで消費するエネルギーの65%は、空調と照明である。点きっぱなしになっている空調と照明を、外部温度や日光などの周辺環境の状態や、人の在室・在籍の状況に応じてコントロールすることができれば、消費エネルギーを大きく節減することができる。
【0088】
電力の使用量を解析するためには、機器の運転状況、温度、外気温等の複合要素の分析も必要である。本実施形態におけるビル管理システム10では、エネルギー管理については、トレンドデータの表示が可能となっている。トレンドデータは、最速1秒単位で多くのテータを取り込むことが可能である、このため、エネルギー分析には最適である。
【0089】
このようなEMSを使用して、エネルギー種別毎の使用量、時系列のエネルギー解析が可能である。さらに、設備機器を選択して、設定や状況表示をリアルタイムに行うことが可能である。
【0090】
前述のプロダクティビティ・ツールは、同一ネットワーク上に設置されたセンサー類やスイッチ類、及び、各設備機器等の情報を自動収集し、データベース化する(
図4)。作成されたデータベースに対して、一つひとつの設定情報を効率的に登録することができる。
【0091】
従来は、ビル内の照明器具や空調、衛生などの各機器やセンサーから情報を収集して、現在の使用状況を表示したり、制御したりするためには、すべての機器とその機能に対して、一つずつ設定作業を行う必要があった。
【0092】
例えば、接点情報(監視点数)が数十万点もある巨大ビルに限らず、数百点であっても、その設定を一つずつ手で行わなければならず、非常に多くの時間を要していた。しかも、その情報が現在どうなっているのかといった事項を確認する状態管理にも多くの手間を要していた。
【0093】
本実施形態のビル管理システム10では、このような問題を解決するために、前述のプロダクティビティ・ツールが用いられている。プロダクティビティ・ツールを用いることにより、従来、設定するだけで何十日もかかっていた作業がわずかな時間で行えるように
なる。しかも登録するデータは、遠隔地からのダウンロードにより設定可能である。プロダクティビティ・ツールにより、工事作業が大幅に簡便化されるとともに、工事費用も大きく削減されることとなる。
【0094】
<レベル3:統合コントローラー(統合・エッジ・デバイス)>
ビル内には、空調、電気、衛生、中央監視といったアプリケーション別のシステム(アプリケーション別システム)が多く構築されている。本実施形態のビル管理システム10における統合コントローラー(統合・エッジ・デバイス64)は、これらのアプリケーション別システムを統合し、受信した情報を、インターネット回線(公衆無線通信回線、及び、公衆有線通信回線)68を介して、さらに上位のシステムへと順次伝達する。情報の伝達には、LAN(ローカル・エリア・ネットワーク、構内ネットワーク)も適宜利用される。
【0095】
本実施形態のビル管理システム10において、統合コントローラー(統合・エッジ・デバイス64)のハードウェア及びソフトウェアは、1台が、床面積が10万平米のビルを管理できる程度の処理能力を有するよう構築されている。10万平米は10haであり、316m×316mのフロア、又は、1フロアが50m×50mの40階建てビルに相当する。このように、1台の統合コントローラー(統合・エッジ・デバイス64)により、相当程度の規模の管理が可能である。
【0096】
<レベル4:エンタープライズ・エッジ・サーバー>
本実施形態のビル管理システム10においては、マイクロ・エッジ・デバイス60(レベル1)、アプリケーション・エッジ・デバイス62(レベル2)、統合エッジ・デバイス64(レベル3)の上層に、エンタープライズ・エッジ・サーバー66(レベル4)の階層が構築されている。これらのデバイスやサーバーは、いずれも、コンピュータ機器を用いて構成されるが、これらの間の大きな違いは、コンピュータ機器としての性能(処理容量、処理速度など)と、メモリ領域の利用形態である。
【0097】
従来は、監視点数の制約が大きかったが、本実施形態のビル管理システム10におけるエンタープライズ・エッジ・サーバー66は、管理対象のビルの規模や棟数が増えて、性能が足りない場合には、未使用のスロット使用し、CPUの数を増やすことにより対応できるようにしている。また、より処理能力の高いCPUを搭載した基板(ボード)に交換することでも、性能を向上できる。
【0098】
さらに、エンタープライズ・エッジ・サーバー66としては、VM(Virtual Machine、仮想マシン)を構成することが可能なコンピュータ機器が用いられている。VMを構成することにより、管理システムの多重化(ここでは二重化)が可能である。
【0099】
VMは、システムの他の部分から分離され、1台のハードウェア上で複数が共存するよう構築される。VMにより、複数の異なるOS(オペレーティング・システム)を1台のコンピュータ機器上で同時に実行できるようになる。
【0100】
例えば、ビル管理のシステムを改修しようとした場合、改修後にも、Windows NT(登録商標)やXPなどといった、近年では新たに導入されることがない古いOS(オペレーティング・システム)を使用し続けなければならないことがある。
【0101】
従来のビル管理システムでは、監視サーバーがOSに依存しているため、上位層の機器を変更すると、上位層に合わせて下位層の機器をもすべて変えなければならない。このため、下位層の機器の少なくとも一部を維持したままシステムを新しくしようとしても、過去のシステムに引きずられ、古いOSを残しておく必要がある。
【0102】
本実施形態のビル管理システム10においては、エンタープライズ・エッジ・サーバー66は、仮想サーバーを構成できる。このため、新たにエンタープライズ・エッジ・サーバー66を導入した場合に、エンタープライズ・エッジ・サーバー66において、多様なOSを並行して動作させることが可能である。そして、例えば、Linux(登録商標)とWindows NT(登録商標)を並行して動作させる、といったことが可能である。
【0103】
したがって、ビル管理システムの改修の際に、下位層の機器を残し、上位層だけを新しいものに交換するといったことが可能となる。しかも、複数のOSに係るシステムをそれぞれ構築することが可能である。このような考え方そのものが、従来と違って、新しい取り組みを示すものである。そして、VMに古いOSを残すことができるため、システム改修時のサーバー機器の置き換えが、従来に比べて非常に楽なものとなる。
【0104】
エンタープライズ・エッジ・サーバー66を用いるメリットは大きい。単に構成する機器のサイズが小さくなっただけではなく、所定期間(7年程度)毎に発生する改修作業をも容易にする。
【0105】
従来では、大規模システムの改修には保有システムの退避・保存・リロード等を行うためには丸1日要していた。さらに、サーバー台数分の作業を行う必要があったため、改修作業全体として、何日もの日程を要していた。
【0106】
本実施形態のビル管理システム10では、エンタープライズ・エッジ・サーバー66を用いることにより、このような問題が解決され、システムを停止させることなく、ホット・スワップ(電源を入れたまま)での機器改修(交換・増設等)が可能となった。ホット・スワップでの機器改修を行えるようにするためには、エンタープライズ・エッジ・サーバー66を二重化構成として冗長化することが可能である。この場合、一方のエンタープライズ・エッジ・サーバー66を稼働させながら、もう一方のエンタープライズ・エッジ・サーバー66を改修する。
【0107】
<エッジ・デバイスの働き>
<<分散システム>>
本実施形態に係るビル管理システム10の一つの大きな特徴は、無線通信やインターネット通信を適切に組み合わせることにより、監視点数の増大を容易に行えるようにしていることである。従来のビル管理システムでは監視点数に制限があり、その制限は、数千から、多ければ数万程度である。ビルのインテリジェント化や、複数のビルの管理を行う多棟管理を進めようとすると、管理能力が容易に限界に達してしまう。従来のビル管理システムにより、管理点数の制限を超えるシステムを導入する場合は、特別にプログラムを組み、複数のサーバーをブリッジさせる必要があった。
【0108】
本実施形態のビル管理システム10では、エンタープライズ・エッジ・サーバー66が仮想サーバーを構成するため、CPUの増加により処理能力を容易に増強することが可能である。これにより、無限のリソースといえるハードディスク(記憶手段)も利用して、巨大なビル管理システムを構築することが可能となる。
【0109】
また、ビル管理システム10の一つの大きな特徴は、分散システムである。例えば、一つのサーバーを二つに分散することができる。サーバーを分割するが、すべてのデータを一つに集めなくてもよく、分散しておいて、必要に応じて取ってくる(オンデマンドで集める)ことができるようにしている。つまり、すべてのサーバーを繋ぐ必要がない。
【0110】
必要な時に、必要な操作を行うことにより、複数のサーバーから、必要なデータを集め
ることが可能である。本実施形態のビル管理システム10では、例えば、「データAとデータBとデータCだけが欲しい」旨のコマンドをPCや携帯情報端末に入力すると、必要なデータが出力される。本実施形態のビル管理システム10は、あたかも1つのコンピュータが処理しているように動作する。
【0111】
従来のビル管理システムは、ほとんどがクライアント・サーバー型であり、このような動作はできない。従来のビル管理システムは、分散型にはなることはできず、大きなシステムにならざるを得なかった。この限界を超える仕組みを構築したことが、本実施形態のビル管理システム10の特徴の一つである。
【0112】
<<エッジ・サーバーの活用>>
従来のビル管理システムは、一つのサーバーの中にデータを集約し、その中を統括して管理していた。このため、システム自体が大きくなっていた。しかし、本実施形態のビル管理システム10は、エッジ・サーバーを使うことでシステムを分散化している。そして、分散化は行っているが、例えば「マイクロ・エッジ・デバイス60の特定のデータを見たい」旨のコマンドを入力すると、オンデマンドでデータを見ることができる。
【0113】
<<統一データ様式>>
本実施形態のビル管理システム10における他の特徴の一つは、情報の管理がすべて、統一された様式で行われることである。前述のように、無線式センサー装置30を用いることにより、統一された様式のデータが自動的に収集される。しかもその様式は、先に述べた4種類のエッジ・デバイス(マイクロ・エッジ・デバイス60、アプリケーション・エッジ・デバイス62、統合・エッジ・デバイス64、及び、エンタープライズ・エッジ・サーバー66)のすべてで共通化されている。
【0114】
マイクロ・エッジ・デバイス60(レベル1)で取り扱われるデータ様式の構造と、その上位にあるアプリケーション・エッジ・デバイス62(レベル2)、統合エッジ・デバイス64(レベル3)、及び、エンタープライズ・エッジ・サーバー66(レベル4)の構造は同じである。このため、上位レベルのエッジ・デバイスにおいて、上位レベルのエッジ・デバイスのデータを引き継ぐことができる。
【0115】
以上のようにして統一様式のデータが作成され、作成されたデータが、多様な管理項目(空調、電気、衛生、中央監視等といった種々のアプリケーション)において活用される。統一様式のデータを利用することにより、あたかも、共通な接続構造を有するブロック玩具を組み合わせて目的の造形を作り上げるように、全体的に統合されたビル管理システム10を構築できるようになる。
【0116】
<クラウドの活用>
<<遠隔監視>>
本実施形態のビル管理システム10では、クラウドが活用されている。このため、ビル監視者や一般利用者が、それぞれ独自にサーバーや記憶装置を持たずに、公共通信網を利用して、ビル管理のサービスを受けることが可能である。このようにクラウドを使用する理由の一つは、遠隔監視を行うためである。
【0117】
ただし、複数の下位機器からデジタル化されたデータをそのまま上位層に上げてしまうと、データを受け取る上位機器で、通信量が増大し、データ処理速度の低下を招きかねない。
【0118】
発明者等の知見では、ビル管理のためにクラウドを使用する場合、センサー類やスイッチ類により現場(ビル管理システム10の末端)から集められたデータのうち、クラウド
に上げるべきデータは、実際のところ、全収集データの数%(例えば3%程度)で十分である。その数%は、例えば、EMS(エネルギー・マネジメント・システム)、エネルギーのデータ、FMS(施設管理システム)である。これらのデータを、例えば、30分に一度や、1時間に一度程度の頻度で収集するだけでも、十分なビル管理を行うことは可能である。
【0119】
ビル管理に必要なデータは、時々刻々とダイナミックに変化するようなものよりも、スタティックなデータ、つまり静的データである。静的データについては、一定の時間間隔で収集して累積するだけでも、ビル管理においては十分である。このため、後述するように、オンプレミスによるデータ収集と、クラウドによるデータ収集とを併用したビル管理が行われる。何をクラウドに上げれば、全体のパフォーマンスが最大化するかを考慮し、何をスタティックデータとしてクラウドに上げ、何をダイナミックデータとしてアプリケーション・エッジ・デバイスに残しておくかが選定される。
【0120】
<<オンプレ・クラウド>>
現在、クラウドサービスは、情報処理サービスの主流となっている。クラウドサービスについては、とにかく多くのデータを集めてビッグデータを集積すればよいと考えられがちであるが、ビル管理システムに応用した場合、実際に膨大なデータを集めても、有効なビル管理システムを構築することは難しかった。
【0121】
有効なビル管理システムの構築が難しかった原因として、集積されたデータの情報をどのように取り扱えばよいかが分かり難く、せっかく集められたデータの90%以上は使う必要さえない、といった場合もあった。
【0122】
現場(ビル管理システム10の末端)で収集されたデータの100%すべてをクラウドに乗せても(アップロードしても)、そのうちの90%以上のデータは、何らかのトラブルが発生したような場合以外は使われない。
【0123】
クラウドに上げる(アップロードする)には、通信費が発生し、CPU使用料も発生し、クラウドに上げるための情報を記憶しておく保存領域(「使用領域」ともいう)も必要になる。もし、すべての発生データを保存しておけるような保存領域を確保する場合には、保存領域の大きさは、ギガバイトやテラバイトといった単位の大きさでは済まず、ペタバイト以上に達すると予想される。そのうえ、クラウドの保存容量が巨大なり、クラウドの維持や管理に、当然、莫大な費用を要することとなる。
【0124】
そこで、本実施形態のビル管理システム10は、エッジ・デバイス(現場で前処理するシステム)を活用し、オンプレミスなデータ処理とクラウドサービスとを適切に使い分けることにより、有効なビル管理システムの構築を可能としている。
【0125】
本実施形態のビル管理システム10では、すべてのデータをクラウドに乗せる(アップロードする)のではなく、選択されたデータがクラウドに乗せられる。平常時は、スタティックなデータのみを選択的に上げ、所定の条件が成立した場合(例えば、警報(アラーム)が発せられた場合など)に限り、その他のデータ(例えば履歴データ)がオンプレミスのデータから利用される。
【0126】
このようにすることで、例えば、警報が出た場合に、警報の原因となった事象が発生した時間帯のオンプレミスのデータを参照することで、原因を調査するための処理プログラムを実行する、といったことが可能となる。そして、通信量と保存領域の抑制、通信速度やレスポンス(応答)速度の向上が図られている。
【0127】
<<技術の統合>>
本実施形態のビル管理システム10では、収集したデータをクラウドで活用したり、オンプレミスで活用したりするために種々の機器類や、ツール(アプリケーションソフト)類が備えられている。これらの機器類やツール類は、個別に存在しているのではなく、互いに連携している。そして、これらの機器類やツール類は、システムのパフォーマンスを最大化するために不可欠のものとなっている。
【0128】
<中央監視機能>
<<ITとOTの融合による多彩な見える化を実現>>
ビル管理システムの大きな目的は、ビル内に設置された機器類の一元的な状態監視と制御である。従来は、このような全体的な管理が難しかった。しかし、本実施形態のビル管理システム10は、様々な工夫を組み合わせて、全体的な管理を実現している。例えば、電力量については、所定期間(指定期間)における全体の合計や、機器毎の合計について、可視化(見える化)が行われている。そして、いつ、どこで、どの機器が、どのくらいの電力を使用しているか、といった事項が確認できるようになっている。
【0129】
<<照明・温度・湿度等の見える化>>
本実施形態のビル管理システム10において、照明については、照明の点灯状況のほか、オン/オフ、及び、調光制御の状況等を、特定の態様で画面表示することが可能である。また、室内環境については、室内のCO2濃度、温度、湿度などを、特定の態様(ヒートマップなど)で画面表示することが可能である。
【0130】
<<環境の見える化-トレンドグラフ>>
本実施形態のビル管理システム10においては、温度、湿度、照度等を、トレンドグラフによっても画面表示することが可能である。
【0131】
<<利用状況や連携アプリケーション>>
本実施形態のビル管理システム10においては、スケジュール、操作履歴、帳票、地震警報システム、クラウドアプリケーションなども画面表示することが可能である。
【0132】
<遠隔監視機能>
<<多棟管理を可能にするクラウド監視システム>>
本実施形態のビル管理システム10においては、ビル内の空調、照明、衛生、警報、エネルギーに関する各種の機器類について、スマートフォンやタブレット等の携帯情報端末を介して、監視や制御を行うことができる。また、ビルから離れた遠隔地からも、携帯情報端末を介して、監視や制御を行うことができる。
【0133】
携帯情報端末では、インストールされたブラウザを介して、ビル管理のためのアプリケーションソフトに接続し、アプリケーションソフトを利用することが可能である。携帯情報端末のブラウザを介して、操作し易く、レスポンス(応答性)の良い管理画面が提供される。
【0134】
前述したように、クラウドに乗せるのはスタティックデータのみであり、利用頻度の少ないダイナミックデータはエッジ・デバイスに配置される。このため、クラウドの使用領域が小さく、費用低減や、レスポンス(応答性)の向上が実現される。データ処理量そのものを削減することで、処理に要する時間を削減できる。集計しやすい形(少ない量)でのデータの保管を行う保管形式を採用できる。これらによってもレスポンス(応答性)の向上が実現される。
【0135】
<<CBMの実現>>
複数のビルの管理を行う多棟管理においては、どのビルで障害(異常)が発生しているかを知ることが重要である。従来は、異常の発生を常時確認しているような常時監視が行われていた。これに対し、本実施形態のビル管理システム10においては、定期的にデータを採取したうえで、異常が発生した場合にだけ対応が行われる「予防保全」(CBM:
Condition Based Maintenance)が実現されている。
【0136】
定期的に採取されるデータに基づき、異常が発見された場合には、携帯情報端末に警報(アラーム)が通知される、といった対策が施されている。さらに、アラームが発生したビルを指定し、ドリルダウンすることで、遠隔地からでもより詳細な状況把握を行うことができる。ドリルダウンにおいては、アラームが発生したビルの属性に紐付けられたデータを選んで、予め定められた各種の分析が実行される。
【0137】
<手のひらで監視・制御が可能なスマートパーム(登録商標)>
本実施形態のビル管理システム10では、最新のテクノロジーを駆使し、新しい時代にふさわしい、照明とエアコンを制御するインテリジェントなツールが実現されている。ビル管理者や一般利用者等にブラウザを介して提供されるスマートパーム(登録商標)は、照明と空調の両方のリモコン(遠隔操作)を携帯情報端末上で実現して、オフィス内の照明やエアコンを制御・監視することを可能とする。スマートパーム(登録商標)は、あたかも手のひらがスイッチになったような操作性を提供するツールである。
<<ネットワークをまたいだ遠隔監視が可能>>
本実施形態のビル管理システム10においては、スマートフォンやタブレット等の携帯情報端末を利用することにより、場所や時間等の制約に縛られず、どこからでもビル管理システムを制御することが可能である。
【0138】
<<照明・空調の制御>>
本実施形態のビル管理システム10においては、携帯情報端末を使って、空調や照明等の制御を直接行うことができる。このため、例えば、オフィスの照明や空調(エアコン)の温度を変更するために、オフィス内の人員が壁のスイッチまで移動することが不要になる。
【0139】
例えば、照明に関しては、フロア内の全灯について、一括してオン/オフしたり、グループ別にオン/オフしたりすることができるよう、システムが構築されている。また、輝度を上下させる調光についても、手元から操作することができるように、システムが構築されている。
【0140】
また、ブラウザを介して提供されるスマートパーム(登録商標)には、例えば、フロア単位、グループ単位、及び、照明単位で、電気使用量を表示する機能が備えられている。このため、携帯情報端末を介して、対象の範囲での電気使用量がどの程度であるのかを確認できる。
【0141】
<<設定とQRコード(登録商標)の生成>>
本実施形態のビル管理システム10においては、一度設定された照明や空調(エアコン)のグループを、携帯情報端末において変更することが可能となっている。このようにすることにより、例えば、空調の工事業者や、システムの工事業者に、ビル内のテナントが休業している週末を利用してグループ変更の作業を実施してもらう、といったことが不要になる。
【0142】
このような作業を行う際には、照明や空調(エアコン)を制御するために、例えば、設定管理用の一般利用者のグループにおいて、予め定められたグループ管理者にQRコード(登録商標)が配布される。QRコード(登録商標)は、グループ管理者から、他のグル
ープ員に配布される。グループは、設定が許容されるよう予め定め指定された範囲の一般利用者(ビル管理者や、その他の管理者が含まれていてもよい)により構成される。設定が許容される照明の範囲は、後述する照明のデザインツールを用いて行われる。
【0143】
配布されたQRコード(登録商標)は、グループ員のPCに接続された表示装置や携帯情報端末等に表示される。QRコード(登録商標)は、グループ員の他の携帯情報端末のカメラで読み取られ、URL等が表示される。URL等は、対応するアプリケーション・エッジ・デバイス62に係る設定変更サイトにリンクしている。
【0144】
グループ員が、URL等を選択すると、対応するアプリケーション・エッジ・デバイス62に係る設定変更サイトが、グループ員の携帯情報端末に表示される。グループ員は、設定変更サイトにおいて、設定を変更したい設備機器の設定を操作する。
【0145】
このようにすることで、一般利用者は、設定変更用のアプリケーションソフトをインストールすることなく、ブラウザを介して、照明やエアコンのグループ変更を行うことができる。
【0146】
<<複数のプロジェクトを設定可能>>
携帯情報端末を介して設定された内容は、プロジェクトとして保存することが可能である。プロジェクトは、複数保存することが可能である。これにより、例えば、時間帯毎に設定を変えたり、平日と週末で、照明や空調のグループを変えたりすることが可能となる。このようにすることで、グループの変更のために、壁に新たにスイッチや操作盤を取り付ける必要がない。また、スイッチや操作盤に配線を繋げて壁内や床下等に引き回す工事を行う必要もない。さらに、工事業者に作業を依頼することなく、利用者が自社内で設定変更することが可能である。
【0147】
<<照明のデザインツール>>
照明器具を設置するにあたっては、フロア内にどれくらいの機器を設置すればよいのか、設置した照明と電源をオン・オフするスイッチとの間のグループ化(グルーピング)をどのように行えばよいのか、といった事項が重要な焦点となる。過度に細かく設計してしまうと、制御が複雑になり、多くの制御用の機械が必要となる。逆に、過度に粗く設計してしまうと、例えば、人がいないところも照明が点灯するなどといった無駄が発生する。
【0148】
このため、本実施形態のビル管理システム10では、アプリケーションソフトの1つとして、照明のデザインツールを開発している。照明のデザインツールは、例えば、ビル監視者が、アプリケーション・エッジ・デバイス62(レベル2)に接続し、表示された照明のデザインツールのサイト内において、設計のための操作を行う。
【0149】
<プロダクティビティ・ツールの詳細>
これまで、本実施形態に係るビル管理システム10の全体像について説明した。以下では、前述したプロダクティビティ・ツールに焦点をあて、プロダクティビティ・ツールの開発に至った背景や、プロダクティビティ・ツールの詳細について説明する。
【0150】
<<ビル管理システムの歴史>>
ビル管理システムの歴史は意外と古く、1950年代からその考え方はある。1980年代半ばからインテリジェントビルとして、コンピュータ制御のしくみが構築されてきたという経緯がある。
そうした歴史のある業界であるため、ビル管理システムを構築するための手順も伝統的に合理的なしくみが取られてきた。
ビル管理システムの対象となる範囲は、照明、空調、衛生、エネルギー、施設管理等が
ある。これらは、ビルの設計段階から、どの位置に配置され、どのような情報を収集し、どのように機能を持たせるかということが計画される。
それは、温度であれば、設定する最低温度はいくらで、最高温度はいくらとするか。さらに、どれくらいの刻みで通知するかという定義が行われる。
こうした細かな規定が、機器の種類ごとに決められている。
【0151】
<設計書の存在>
ビル内で使用される機器類は、何が、何階の、どの位置に置かれ、その設定内容はどうであるかが、事細かく設計書に記述される。その設計書に基づいて、一つひとつの機器に対して設定を行うとともに、ビル管理システムへの登録も行われる。
当たり前のことであるが、大きなビルになればなるほど、設置される機器類も多くなり、設定される項目も多くなる。この設定作業は当然のことながら、一つひとつ手作業で行わなければならず、非常に手間がかかっていた。
プロダクティビティ・ツールが解決しようとしているのはまさにこの手間がかかるという部分にある。
【0152】
<プロコトルの違い>
ビル管理システムにはもう一つの課題がある。それが機器類の相互接続の問題である。
ビル管理に使われている機器は様々あるが、機器同士を接続するにあたって、互いに通信するための取り決めがある。
従来、各機器メーカーは、自社のネットワークに接続するためのプロトコルを使用していたが、公開はしておらず、そのため、メーカーが異なると、互いに接続ができなかった。
この問題解決策の一つとして、オープン化の名のもとに、異なるメーカー製の機器類を、互いに接続することを目的としていくつものプロトコルが制定されてきた。代表的なものがModbus(商品名)やLonWorks(商品名)、BACnet(商品名)、である。
LonWorks は、アメリカのエシュロン(ECHELON社)が提供するオープン化を目指したネットワーク技術である。
BACnet は、ASHRAE(米国冷暖房空調工業会)が制定した規格をもとにして、国際標準規格として登録されたものである。
【0153】
<プロトコルが異なることの影響>
相互接続を目指したオープン化であったが、その後も課題として残ったのが、オープン化といっても、自分たちの領域の中だけの限られた範囲でのオープン化であったことである。
つまり、LonWorks やBACnet のプロトコルを採用する機器類は、BACnet対応やLonWorks対応のビル管理システムでは管理できたが、LonWorks とBACnet が同時に混在するビル管理システムで使用することが難しかった。何が難しいかというと、プロトコルごとに属性がバラバラで、共通のデータを構成しないといけないが、これが大変であった。
たとえば、LonWorks とBACnet のプロトコルを持ったものを混在させると、両者間のデータの変換・取り扱いが難しく、トラブルが続出していた。さらに、シーケンサーやModbus も含めて統合的に処理しなければならなかった。
これらが混在しているのがビル管理システムの課題であった。
【0154】
<<設定の難しさ>>
<<<ビル管理システムを作るときの難しさ>>>
ビルの管理システムは、照明や空調、エネルギーといった、各種のセンサーから情報を得て、監視システム上で状態や過去のトレンドを表示したり、制御したりするシステムである。
センサーから上がってくるアナログ情報は、シーケンサーやアナログ/デジタル変換機
能を備えたセンサーそのものを介してデジタル化され、上位システムに送出される。一つのセンサーから上がってくる情報を上位システムで受け取るにあたっては、そのセンサーの持つ、各情報に特有の名称を付与して、区別する必要がある。ここに、各種の設定を登録する必要性が生じている。
【0155】
<<<プロトコルそのものの理解>>>
従来、使用しているセンサーや上位機器の設定には、以下の課題があった。
(a)データは、プロトコルごとに構成しなければならない。
(b)機器の特性やプロトコルの特性を理解しておかないといけなかった。
(c)しかも、ものすごく複雑で、取り扱いも、理解することも難しかった。
(d)理解しないで使用したり、そのルールを間違ったりすると、「動かない」という制約がある。
(e)そのため、理解不足によるミスも多かった。
【0156】
<<<専用ツールの存在>>>
プロトコルごとに、設定するための専用のツールがあり、専用のツールは複数ある。さらにプラグインがあったりする。
例えば、LonWorks にはLonMaker というツールがあるが、LonMaker はLonWorks しか設定できない。
これを習得するのが大変であるし、プロトコルごとに一つずつ切り替えて使わなければならない。
【0157】
<<<設定量の多さ>>>
各プロトコルには多くの設定があり、それらに対しての設定を入れなければならなかった。
LonWorks のSNVT(Standard Network Variable Type)の構成は、219 もの設定項目がある。
設定は手作業であり、その設定の登録に相当の手間がかかっていた。BACnet にも同様に、設定項目が多数ある。
図5は、SNVT対応表の一例を示している。
【0158】
<<解決手段としての構造化体>>
<<<実現するための手段>>>
これらの課題や問題を解決するために、取り扱うデータを変換する機能として、構造化体を用意した。この部分が従来にない機能である。
ここで言う「構造化体」は、データストレージに配置される前に事前定義され、ある定められた構造となるように整形されたデータ(情報)のことである。
要は、ビル管理システム内で扱われるデータをもとにしたデータベースを構築し、ビル管理システムで統合的に使用できるようになっている。
【0159】
<<<様々なデータを受け入れるしくみ>>>
具体的には、ビル内で使用される、照明、センサー、ゲートウェイ、コントローラー等、機器の種類毎にどの場所にデータを保存するかを定め、機器の設定をやりやすくした。また同時に、収集されるデータの取り扱いも容易にした。
LonWorks やBACnet といったプロトコル以外の様々なデータに対応できるようにするため、150 ものプロトコルも用意した。
このようにして、様々な情報を一元的に取り扱えるように整えた。
【0160】
<<<データを登録するためのプロダクティビティ・ツール>>>
その上で、各種プロトコルに対応し、様々な設定を入れるためのツールとして、前述し
たようにプロダクティビティ・ツールを用意した。
プロダクティビティ・ツールは、設定を容易にするためのツールである。
<<<プロダクティビティ・ツールの特徴>>>
プロダクティビティ・ツールの特徴は以下である。
(a)LonWorks もBACnet も一つのツールで登録できる。
(b)ゲートウェイを使って、外側で変換をかけなくてもよい。
(c)設定データを登録する時間が短くてすむ。
(d)類似データの登録は、データの複写で行える。
【0161】
<<<構成図例>>>
ここで、ビル管理システム(例えば、ビル管理システム10)で使用される機器類とプロトコル、プロダクティビティ・ツールの関係図(
図7(b))を示す。
アプリケーション・エッジ・デバイス62には、LonWorks やBACnet といった各種プロトコルを使用したゲートウェイやシーケンサー、センサー類が接続される。
なお、アプリケーション・エッジ・デバイス62は、監視システムを表示する仕組みを有している。
【0162】
<<<データベースの工夫>>>
前述した問題を解決するために、一つには、データベースの持ち方を工夫した。具体的には、プロトコルの違いを、構造化体を介すことで解決した。その構造化体に合わせてデータを入れるデータベースを構築した。
そのデータベースは、アナログの入力と出力、デジタルの入力と出力、電力量の積算とカウンターの6種類に集約した。この中に、上限値、下限値等、200項目くらいの大きなデータベースがある。
【0163】
<<<レジスターの紐付け>>>
プロダクティビティ・ツールは、従来、手作業で設定しなければならなかったことを自動化する。たとえば、アプリケーション・エッジ・デバイス62に関し、コントローラーのレジスターの紐付けを行う。
LonWorksのプロトコルで使用されているオブジェクトにはさまざまな情報が登録されている。例えば、1秒おきに送られてくるものや、何秒毎、あるいは何分毎に送られてくる等といったルールが厳密に定義されている。それらの情報を読んで、決められた場所にデータを登録する。
【0164】
<<<データマッピング>>>
コントローラーにはレジスターがあり、その中のコードにオブジェクトの何番が使われるということが規定されている。このマッピングが最も重要である。
何番目のデータが欲しいとなると、そのレジスターを読みにいく。それを自動的に、WEB アクセスを使って、自分のデータベースにマッピングしている。
プロダクティビティ・ツールは、LonWorks やBACnet のデータをWEB アクセスにデータマッピングする際、そのアドレスを理解しなくてもよいようにした。
【0165】
<<<拡張性>>>
新しく登場してくるビル管理用機器に対しては、プロダクティビティ・ツールでデータの登録ができるようにするため、REST(Representational State Transfer) とREST API
(REST Application Programing Interface)のコマンド操作(例えば、ビル管理者が予め携帯情報端末22を用いて行ったコマンド入力操作など)によって、コマンドの送出ができるように機能を付け足す。こうすることで、新製品の設定を容易にすることができる。
大事なのは、機器とのデータの受け渡しがコマンドで対応できるようにすることである
。データの受け渡しができる主要なプロトコルは、Modbus、LonWorks、BACnet他、5種類ある。
【0166】
図6(a)、(b)、及び、
図7(a)、(b)は、本実施形態のビル管理システム10におけるデータマッピングについて、従来例と比較できるように示している。
例えば、
図6(a)に示すように従来は、SCADA(Supervisory Control And Data Acquisition)のレジスター上に各センサーから上がってきた情報を、プロトコルを介して、一つずつ手作業でアドレスを指定し、WEB アクセスにデータマッピングするようなことが行われていた。
これに対し、本実施形態に係るマッピングでは、
図6(b)に示すように、プロダクティビティ・ツールが、各種のプロトコルごとの構造化体(ここではModbus構造化体、LonWorks構造化体、BACnet構造化体など)のデータ変換を行い、統合化された構造化体(ここではNWC構造化体、データベース)を作成する。そして、統合化された構造化体は、SCADAへ渡すことができるよう、データ形式が整えられている。ここで、「NWC」は本出願人を示す。
【0167】
従来のビル管理システムは、例えば、
図7(a)に示すように、各プロトコルを介して、各センサー類等の情報をSCADAに集め、画面表示させていた。
このため、各プロトコルを介した情報を、直接SCADAの項目に手作業でアドレスを指定し、マッピングを行わなければならなかった。
特に、接続されるすべての機器別に情報を登録する必要があり、この手作業での登録量が膨大なものになっていた。ここで、
図7(a)の「HMI」は、画面表示(Human Machine Interface)の略である。
これに対し、本実施形態に係るマッピングでは、
図7(b)に示すように、プロダクティビティ・ツールが、各種のプロトコルごとの構造化体(ここではModbus構造化体、LonWorks構造化体、BACnet構造化体など)を用いて、統合化された構造化体(ここではNWC構造化体)を作成し、統合化された構造化体を、上位のシステム(ここではSCADA)へ渡せるようにする。つまり、各プロトコルごとの構造化体にデータが登録され、その後、NMC構造化体に集約されて、構造化体がSCADAに渡されるため、アドレスを理解しなくてもよくなった。
したがって、データ登録を大幅に省力化することが可能となった。なお、データベースは、アプリケーション・エッジ・デバイス62だけでなく、統合・エッジ・デバイス64やエンタープライズ・エッジ・サーバー66でも行うことが可能である。
【0168】
<<プロダクティビティ・ツールによる効果(見た目での効果)>>
もしプロダクティビティ・ツールがなかったらどうなるか。それは、設定作業にものすごい時間がかかるということが一つ。もう一つは、設定ミスが起きやすいため、エラーが発生する可能性が高くなる。
プロダクティビティ・ツールの特徴の一つは、いろんな構造化体を理解していなくとも、マッピングできる点にある。これまでは、マッピングを行うときには、人が判断しないといけなかった。例えば、「スペース・テンプ(室内温度)」というと、それがいったい何の略なのかを覚えておかないといけなかった。プロダクティビティ・ツールにより、この問題が解消した。そして、設定をパターン化することで、プロトコルを深く理解しなくても設定ができるようにした。設定の難しさからの解放が可能となった。
さらに、手作業で一つ一つ入力しなくてもよいように、設定がテンプレート化された。フロアごとのコピー(データコピー)のように、一度設定したデータを、すべて書き換えたり追記したりせずに、利用できるようにした。そして、設定量の多さからの解放を図ることができた。
また、Modbus、LonWorks、BACnet等、例えば150種類ものプロトコルを用意した上で、設定データを構造化体として構築し、プロトコル間の相違を吸収することで、異なるプロ
トコル間での相互接続を可能にした(構造化体を介してプロトコルの違いの吸収)。
また、従来、手作業で設定しなければならなかった事項について、コントローラーのレジスターへの紐付けを自動的に行えるようになった(レジスターの紐付け)。手作業で設定しなければならなかった事項としては、例えば、処理のタイミングをどのように設定するかや、データの登録位置等がある。
また、データの読み出しにおいて、BACnetやLonWorks等のデータをWEBアクセスしてデータマッピングする際、それらのアドレスを理解しなくても読み出しができるようになった。これにより、従来はすべてのデータ設定をアナログ的作業により作らなければならなかったが、デジタル的な作業により処理することが可能となった。
これらのことをまとめると、本実施形態のビル管理システム10については、以下のようなことがいえる。
(a)マルチベンダー下の一元管理システムを構築した。
(b)BACnet もLonWorks も同じツールで設定できる。
(c)プロトコルを詳しく知らなくても設定ができる。
(d)150 ものプロトコルに対応している。
(e)様々な設定をテンプレートとして持てる。
(f)一度設定した内容を複写して利用することで、ゼロから設定しなくてもすむ。
(g)属性を与えると画面ができ、ダッシュボードも1対1で作れるようになった。
(h)設定作業が楽。
(i)設定ミスで機能しないということが激減した。
(j)従来は何日もかかっていた設定に要する時間が数時間で済む。
【0169】
<<その他の効果>>
プロダクティビティ・ツールは、見た目での効果としては上記のようなものが挙げられるが、一番大きな効果としては、複数のプロトコルを理解する必要性から解放されたことが挙げられる。
従来であれば、LonWorks のプロトコルを理解するのにも相当な時間を要した。それに加えて、BACnet や他のプロトコルを理解することが憚られることが多かった。
本発明により、この問題も解消した。
【0170】
<<<エンジニアリング作業の改善>>>
従来、ビル管理システムを構築しようとすると、要求仕様、設計、機器選定、ラダー作成等の中間の作業、動作確認、及び、納品・工事の作業(工程)が発生していた。
これに対して、プロダクティビティ・ツールを使用することで、ラダー作成等の中間の作業を行う必要がなくなった。
【0171】
<<事例>>
あるビルのプロジェクトでは、パッケージエアコンを84台使用している。1台のパッケージエアコンには16 の監視ポイントがある。そうすると、合計で16点×84台=1,344点のポイントを登録しないといけない。従来であれば、この1,344 のポイントを手作業で登録しており、その設定に何日もかかっていた。それに対し、プロダクティビティ・ツールを使えば、5分~10分もあれば設定は終わってしまう。しかも、1つの設定を行い、それを複数作るといった作業は、とても早くできる。
【0172】
監視対象のポイントの名称も、プロダクティビティ・ツールが自動付与する名前をそのまま使ってもよいならば、あっという間に設定は終わる。実際には、名称をわかりやすくするために、日本語で独自のものをつけることが多いため、この部分には、やや時間がかかる。それでも、この部分は、情報設定の付随部分でしかない。
重要なのは、機器そのものに付随する、センサーに定義をする情報の設定部分。プロダクティビティ・ツールは、この作業を簡便化する。
【0173】
<<アナログ作業のデジタル化>>
以上のように、プロダクティビティ・ツールは、これまでアナログ的に作業していたものをデジタル化した。このことが、プロダクティビティ・ツールを用いたこと大きな利点である。
【0174】
図8及び
図9は、プロダクティビティ・ツールを用いた場合に表示される画面例を示している。これらの画面は、ビル管理者のPCに接続された表示装置や、携帯情報端末などに表示することが可能である。
【0175】
図8(a)は、初期画面の一例を示している。プロダクティビティ・ツールを立ち上げると、
図8(a)に示すような初期画面が表示される。
【0176】
図8(b)、
図9(a)、(b)は、テンプレートの作成を行う際の画面例を示している。プロダクティビティ・ツールは、設定を要するパラメーターをテンプレートとして持っており、必要に応じてテンプレートを呼び出して、登録できるようになっている。また、一度、設定したテンプレートを利用して、類似のパラメーターの設定を行うこともできるようになっている。
【0177】
図8(b)、
図9(a)、(b)は、各種のプロトコルや管理システムに対応したテンプレートの一例を示している。
図8(b)は、LonWorks(商品名)のためのテンプレートの一例を示しており、
図9(a)は、BACnet (商品名)のためのテンプレートの一例を示している。
図9(b)は、SCADAのためのテンプレートの一例を示している。
【0178】
プロダクティビティ・ツールは、設定を要するパラメーターをテンプレートとして持っており、必要に応じてテンプレートを呼び出して、登録するだけでよい(設定できる)ようになっている。また、一度、設定したテンプレートを利用して、類似のパラメーターの設定を行うこともできるようになっている。
【0179】
なお、本実施形態に係るビル管理システム10によって行われるビル管理の方法は、ビル管理方法として捉えることが可能である。また、ビル管理システム10により実行されるコンピュータプログラムは、ビル管理プログラムとして捉えることが可能である。さらに、ビル管理システム10は、ビル管理装置として捉えることが可能である。
【0180】
<ビル管理システムの実施形態から抽出可能な発明>
これまでに説明したような実施形態から、以下のような発明を抽出することが可能である。
(1)複数の管理項目(空調、照明、衛生、警報、エネルギーなど)のいずれかに分類される複数種類の設備機器(エアコン、照明機器、扉、無線式センサー装置30等のセンサー類、スイッチ類、その他の電気機器類など)と、
複数種類の検出項目(温度、湿度、照度、加速度、コンタクトなど)の検出が可能なセンサー装置(無線式センサー装置30など)と、
昇順に上位層となる第1階層装置(マイクロ・エッジ・デバイス60など)、第2階層装置(アプリケーション・エッジ・デバイス62など)、第3階層装置(統合・エッジ・デバイス64など)、第4階層装置(エンタープライズ・エッジ・サーバー66など)のうちの少なくとも前記第1階層装置、及び、前記第2階層装置と、を備え、
少なくとも1つの前記管理項目を1つの項目系として複数の項目系(空調関連系12、照明・コンセント系14、衛生・水回り系16、状態・警報系18、エネルギー系20など)を定めることが可能であり、
複数の前記項目系が、少なくとも、空調系、照明系、警報系、及び、エネルギー系を含
む、ビル管理システムであって、
前記センサー装置が複数備えられ、
複数の前記センサー装置が、
少なくとも1つの無線通信規格により前記第1階層装置に対してデジタル情報を出力可能であり、
複数の前記項目系に跨るセンサー装置群を構成し、
前記第1階層装置で共通仕様の通信規格に基づき統一化された情報が前記第2階層装置へ送出され、
前記第2階層装置が、
所定のアプリケーションソフトであるプロダクティビティ・ツールを用いて、予め定められた構造化体として、前記第1階層装置からの前記情報をデータベース化することが可能な、ビル管理システム。
(2)前記第2階層装置は、前記第3階層装置が備えられていない場合には、
ユーザーの端末装置(携帯情報端末22、24など)から、少なくとも、公衆無線通信回線(インターネット回線68など)を介して、特定の前記管理項目(空調など)に係る要求があると、前記データベース化された情報から前記ユーザーへの応答に必要な処理前情報(空調の温度、部屋の湿度の情報など)を選択し、
前記処理前情報に基づき、前記特定の前記管理項目についての情報である提供情報(携帯情報端末22、24の操作により空調の温度設定が可能な空調温度設定画面など)を、前記共通通信規格により、前記公衆無線通信回線を介して前記ユーザーの端末装置に提供する、上記(1)に記載のビル管理システム。
(3)前記第2階層装置が複数備えられている場合には、複数の前記第2階層装置に対して1つの前記第3階層装置が備えられ、
前記第3階層装置は、前記第4階層装置が備えられていない場合には、
ユーザーの端末装置(携帯情報端末22、24など)から、少なくとも、公衆無線通信回線(インターネット回線68など)を介して、特定の前記管理項目(空調など)に係る要求があると、前記第2階層装置に対し、前記データベース化された情報から前記ユーザーへの応答に必要な処理前情報(空調の温度、部屋の湿度の情報など)を選択して送出するよう要求し、
前記第2階層装置から前記共通通信規格により、前記公衆無線通信回線を介して送出された前記処理前情報に基づき、前記特定の前記管理項目についての情報である提供情報(携帯情報端末22、24の操作により空調の温度設定が可能な空調温度設定画面など)を、前記共通通信規格により、前記公衆無線通信回線を介して前記ユーザーの端末装置に提供する、上記(1)に記載のビル管理システム。
(4)前記第2階層装置が複数備えられている場合には、複数の前記第2階層装置に対して1つの前記第3階層装置が備えられ、
前記第3階層装置が複数備えられている場合には前記第4階層装置が備えられ、
前記第4階層装置は、
ユーザーの端末装置(携帯情報端末22、24など)から、少なくとも、公衆無線通信回線(インターネット回線68など)を介して、特定の前記管理項目(空調など)に係る要求があると、前記第3階層装置を介して、前記第2階層装置に、前記データベース化された情報から前記ユーザーへの応答に必要な処理前情報(空調の温度、部屋の湿度の情報など)を選択して送信するよう要求し、
前記第3階層装置は、
前記第2階層装置から、前記共通通信規格により、少なくとも、前記公衆無線通信回線を介して送出された前記処理前情報を、前記第4階層装置に中継し、
前記第4階層装置は、
前記第3階層装置により中継された前記処理前情報に基づき、前記特定の前記管理項目についての情報である提供情報(携帯情報端末22、24の操作により空調の温度設定が可能な空調温度設定画面など)を、前記共通通信規格により、少なくとも、前記公衆無線
通信回線を介して前記ユーザーの端末装置に提供する、上記(1)に記載のビル管理システム。
(5)上記(1)~(5)のビル管理システムで行われるビル管理方法。
(6)上記(1)~(5)の「ビル管理システム」を「ビル管理装置」に置き換えた発明。
【0181】
[実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100]
<ビル管理設備構築支援システム100の概要>
以上、構築対象となるビル管理システム10について説明した。以下では、上述のようなビル管理システム10について、各種設備機器の組み合わせの設計(ビル管理設備構築)に適したビル管理設備構築支援システム100について説明する。
【0182】
先ず、ビルの改築や新築には、例えば、施主、ゼネコン、設計業者、工事業者、ビル管理業者等といった多様な関係者が関与する。さらに、これらの関係者の間で、前述のように多様な設備機器の選定や、多様な設備機器に係る設置工事等に関する協議(会議、打ち合わせ、相談等)が実施され、ビル管理設備が構築される。そして、設備機器の種類や個数、施工の計画などといった事項が決定され、設備機器の購買や輸送、保管、及び、設置工事等が順次行われる。
【0183】
ビル管理設備構築の過程では、各種の資料が作成され、参照される。作成や参照がされる資料としては、(1)外形図、(2)機器一覧表、(3)銘板一覧表、(4)電源回路図、(5)展開接続図、(6)端子配列図、(7)システム構成図、(8)ポイントリスト、(9)システム系統図、(10)システム機能図等といった図や表がある。これらの図や表は、協議や施工の各段階で、その都度、必要に応じて作成される。
【0184】
ビル管理設備の設計に係る関係者には、例えば、営業担当者、開発技術者、設計技術者、購買担当者、及び、工事担当者などが含まれる。これらの担当者については、設備機器の技術仕様についての知識に差があるのが通常である。また、これらの担当者においては、特定の製造事業者(メーカー)の設備機器については詳しいが、他の製造事業者の同種の設備機器については詳細な知識を持たない、といったこともある。
【0185】
そして、ビル管理設備の構築にあたっては、これらの担当者が、段階的に協議を行い、設備機器の選定や、配置の決定が進められるのが実情である。また、選定された設備機器機に対して接続される設備機器について、選定や、配置の決定が行われる場合もある。設備機器の接続には、機械的な接続(機械接続)、電気的な接続(電気接続)、及び、通信上の接続(無線又は有線による通信接続)等が含まれる。
【0186】
設備機器に関する協議においては、協議対象となる設備機器の技術的な情報(以下では「技術仕様」と称する)について詳細な知識を持つ関係者が、常に参加しているわけではない。このため、ビル管理設備構築においては、予期しない見直し作業や、やり直し作業が発生していた。例えば、設備機器の技術仕様について詳細な知識を持たない関係者同士で合意した費用の見積り金額について、その後、詳細な知識を持った関係者が確認を行うと、実際に必要となる金額に対して低過ぎ、見積り作業をやり直さなければならなくなる、といった事態などが多く生じていた。
【0187】
このような協議内容の見直しや、作業のやり直しが必要となる状況は、ビル管理設備の工事に係る省力化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化を妨げる要因となっていた。発明者等の知見では、ビル管理設備の設計や施工に係る労力の約8割が、上述のように省力化やDX化を妨げる作業に費やされている。こうした実情の下で発明者等は、省力化やDXを進めるためには、多様な関係者間において、技術的なコミュニケーションの
質を向上できるようにすることが不可欠であるという考えに至った。
【0188】
本実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100は、多様な関係者間において、技術的なコミュニケーションに係る質の向上を可能とする。本実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100は、
図10に示すように、設備機器情報入力部102、対応情報作成部104、及び、対応情報出力部106を備えている。これらのうち、対応情報作成部104としては、各種のコンピュータ機器を利用できるが、対応情報作成部104の詳細については後述する。
【0189】
設備機器情報入力部102としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネルなどの操作入力手段を利用できる。設備機器情報入力部102は、対応情報作成部104に一体に備えられたものであってもよい。設備機器情報入力部102は、キーボード、マウス、タッチパネルなどの複数の入力装置を包括していてもよい。さらに、設備機器情報入力部102は、対応情報作成部104に有線接続されたものであっても、無線接続されたものであってもよい。
【0190】
設備機器情報入力部102は、対応情報作成部104と、通信網を介して接続されていてもよい。通信網としては、例えば、インターネット、LAN、WAN、公衆電話回線、基地局、移動体通信網、及び、ゲートウェイなどを介して相互に接続されたもの(所謂クラウドを含む)を例示できる。
【0191】
対応情報出力部106としては、各種の表示装置(ディスプレイ装置)を利用できる。対応情報出力部106は、対応情報作成部104に一体に備えられたものであってもよい。また、対応情報出力部106は、設備機器情報入力部102と一体化されたようなものであってもよい。対応情報出力部106と設備機器情報入力部102とを一体化したものとして、例えば、タッチパネルとディスプレイを一体に備えたものや、タッチパネル機能とディスプレイ機能との切り替えが可能なもの、などを挙げることができる。
【0192】
対応情報作成部104としては、一般的なパーソナルコンピュータ(以下では「PC」と称する)機器、ノートPC、スマートフォン、又は、タブレット端末などを使用できる。対応情報作成部104は、内部に、制御部107、記憶部108、通信部109等を備えている。記憶部108や通信部109は外付けされたものであってもよい。
【0193】
制御部107は、図示は省略するが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などにより構成されている。制御部107のCPUは、ROMや記憶部108に記憶されている各種コンピュータプログラムをRAM上に展開して実行する。制御部107は、複数のCPU、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、マイコン、揮発性又は不揮発性のメモリ等を備える任意の処理回路又は演算回路であってもよい。
【0194】
記憶部108は、各種の情報を記憶するROMやRAMなどの半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、又は、SSD(Solid State Drive)などを含む不揮発性の記憶部である。記憶部108には、プロセッサ(ここでは制御部107)における処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、及び、データ等が記憶されている。
【0195】
記憶部108に記憶されるプログラムは、当該プログラムを読み取り可能に記録した非一時的な記録媒体(図示略)により提供されてもよい。記録媒体としては、例えば、CD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード、マイクロSDカード、コンパクトフラッシュ(登録商標)などの可搬型メモリを例示できる
。この場合、制御部107は、読取装置(図示略)を用いて記録媒体からプログラムを読み取り、読み取ったプログラムを記憶部108にインストールする。
【0196】
記憶部108に記憶されるプログラムは、通信部109を介した通信により提供されてもよい。この場合、制御部107は、通信部109を通じてプログラムを取得し、取得したプログラムを記憶部108にインストールする。
【0197】
通信部109は、設備機器情報入力部102や対応情報出力部106との通信が可能なインターフェース回路を備える。インターネット等の通信網を介して、設備機器情報入力部102や対応情報出力部106と接続されていてもよい。
【0198】
対応情報作成部104の記憶部108には、CAD(Computer Aided Design)のアプリケーションプログラムが記憶されている。CADとしては、一般的な種々のものを利用可能であるが、本実施形態では、CADに、後述する「制御盤自動作図」の機能のためのアプリケーションプログラムが追加(アドイン)されている。
【0199】
ここで、対応情報作成部104は、複数のコンピュータ機器の組み合わせにより構成されていてもよい。
【0200】
<レイアウト図上における設備機器の配置>
本実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100は、例えば、以下のように利用することが可能である。例えば、複数の関係者が、ビル管理設備の構築について協議する場面を想定する。関係者は、設備機器情報入力部102を操作し、仮定的に、ビル管理設備に含まれる設備機器の種類や、設備機器の配置を、対応情報作成部104に入力する。
【0201】
具体的には、例えば、
図11に示すような、レイアウト
図110の情報(レイアウト図情報)を、対応情報作成部104に入力し、対応情報出力部106に表示する(図示略)。レイアウト
図110は、予め、ビルの建物の設計段階において作成されている。レイアウト図の情報(レイアウト図情報)は、CADを使用したレイアウト
図110の作成と同時に得ることができる情報(CADデータ情報)である。
【0202】
レイアウト図情報には、ビル内における部屋の各部の実寸法に係る3次元(XYZの3軸方向)の情報が含まれている。なお、レイアウト図情報は、他のCADや他のコンピュータ機器で作成され、対応情報作成部104に読み込まれたものであってもよい。
【0203】
続いて、関係者が、画面上のレイアウト
図110に対し、協議対象の設備機器を配置する(ロケーションの定義を行う)。
図11の例では、関係者がCAD上において、レイアウト
図110を用い、マルチセンサー(黒塗りのブロックで示す)、ゲートウェイ(斜線入りのブロックで示す)、及び、CO2センサー(白塗りのブロックで示す)の配置を協議している状態が示されている。ここで、「マルチセンサー」は、前述したビル管理システム10(
図1~
図9)における無線式センサー装置30に該当する。「ゲートウェイ」には、前述したビル管理システム10(
図1~
図9)におけるマイクロ・エッジ・デバイス60が含まれる。
【0204】
図11に示す、一点鎖線の3つの円111A~111Cは、各ゲートウェイの無線通信が可能なエリア(無線通信可能エリア)を示している。CADにおいて、レイアウト
図110上にマルチセンサー、及び、CO2センサーの図形(又は記号)を配置することで、レイアウト
図110に係るXY座標上における座標値が決まる。
【0205】
円111A~111Cのいずれの範囲内の座標値も、CAD上において予め判明してい
る。このため、マルチセンサーやCO2センサーが、円111A~111Cのどの円の範囲内に配置されるかにより、接続されるゲートウェイが自動的に決まる。
【0206】
関係者は、各設備機器を有効活用できるよう、ゲートウェイ、マルチセンサー、及び、CO2センサーの配置を決める。なお、ゲートウェイの配置を予め決めてから、マルチセンサー、及び、CO2センサーの配置を決めることも可能である。
【0207】
設備機器(ここではゲートウェイ、マルチセンサー、及び、CO2センサー)の位置の情報は、CADの操作画面上での配置に伴い、3次元の情報として記憶される。この際、レイアウト
図110内の座標(XY座標)の情報のみでなく、ビル内の階数の情報からZ座標の情報も取得できる。また、平面内の座標情報(X座標情報とY軸座標情報)だけでなく、ビル内における高さ方向の情報(Z座標情報)入力することが可能である。Z座標の情報の基準位置(Z=0の位置)は、例えば、該当階の床面や、床下の所定の位置、或いは、地表などとすることが可能である。
【0208】
CAD上において、設備機器の配置が確定されると、設置予定の設備機器の情報が保存され、接続される設備機器の情報(機器の種類、技術仕様、台数等の情報)が紐付けされる。紐付けされた情報は、後述する構造化体(統合構造化体206、
図36)に格納される。ビル管理設備構築支援システム100における構造化体については後述する。
【0209】
<第1次設備機器情報及び第2次設備機器情報の概要>
対応情報作成部104のCADでは、後述するように、「制御盤自動作図」の機能を使用可能である。「制御盤自動作図」を行う場合、CADにおいて、設備機器(以下では「第1次設備機器」と称する)の選択や配置を行うことで、第1次設備機器に係る技術仕様の情報(第1次設備機器情報の1種)や、第1次設備機器に接続可能な設備機器(第2次設備機器)に係る情報(第2次設備機器情報)が、自動的に呼び出される。
【0210】
第1次設備機器に係る技術仕様(第1次設備機器情報の1種)には、第1次設備機器の各部の寸法情報や、通信規格等といった情報が含まれる。第2次設備機器情報には、例えば、第1次設備機器がゲートウェイ(マイクロ・エッジ・デバイス60)である場合には、無線接続される各センサー類(センサー装置30など)に係る、名称、メーカー名、型番、技術仕様等といった情報が含まれる。
【0211】
なお、1つの第1次設備機器に対して、複数の第2設備機器を接続し得る場合がある。また、第2設備機器に対して、後段の設備機器(第3次設備機器、第4次設備機器、・・・、第n次設備機器(nは自然数))を接続し得る場合もある。
【0212】
第1次設備機器情報、及び、第2設備機器情報は、様々な状況で利用される。詳細は後述するが、本実施形態では、例えば、後述する
図14~
図33に示すような、制御盤自動作図の実行中に、第1次設備機器情報、及び、第2設備機器情報は、自動的に呼び出される場合がある。
【0213】
また、第1次設備機器情報、及び、第2設備機器情報は、例えば、
図34(a)~(f)に例を示すような図や表の作成にあたり、自動的に呼び出され、必要に応じた態様で利用される場合もある。
【0214】
ここで、
図34(a)~(f)は、「機器一覧表」、「デバイス種別」の図、「信号種別」の図、「電源系統図」、「外形図」、及び、「展開接続図」の一例を示している。これらのうち、
図34(a)の「機器一覧表」は、ビル管理システム10で利用される設備機器を一覧で表す。「機器一覧表」は、CADにデータリンクの機能が備わっている場合
には、CADの既存の機能を利用して作図することが可能である。
【0215】
図34(b)の「デバイス種別」の図は、ビル管理システム10で利用される設備機器の外観や寸法を表す。
図34(c)の「信号種別」の図は、IO(入/出力)機器の信号のIN/OUTを表す。
図34(d)の「電源系統図」は、電気設備の系統に係る配置を表す。
図34(e)の「外形図」は、設備機器の外観、寸法、装置本体(設備機器本体)と操作盤との位置関係などを表す。
図34(f)の「展開接続図」は、設備機器間の接続状況を表す。
【0216】
<制御盤自動作図の概要>
図14~
図33に一例を示すような、制御盤自動作図は、CAD上において、「制御盤自動作図」の機能を選択して行われる。
図12には、CADにおける操作画面112の一例が示されている。操作画面112には、基本操作メニューバー114が表示されており、基本操作メニューバー114には、「ホーム」、「挿入」、「注釈」、・・・、「注目アプリ」の各種ボタンほか、「制御盤自動作図」のボタンが表示されている。
【0217】
「制御盤自動作図」のボタンが選択されると、
図13(a)に拡大して示すように、制御盤自動作図メニューバー116が展開表示され、制御盤自動作図の機能(制御盤自動作図機能)が有効になる。制御盤自動作図メニューバー116には、複数(本実施形態では11個)の自動作図機能ボタン118~128が表示される。複数の自動作図機能ボタン118~128には、「属性情報設定」、「機器配置」、「信号種別配置」、「ユニット接続配置」、「電源系統図配置」、「展開接続図配置」、「ENT・エッジserver/監視端末配置」、「統合エッジLevel配置」、「AppエッジLevel配置」、「MicroエッジLevel配置」、及び、「センサー/操作端末配置」のボタンがある。
【0218】
これらの自動作図機能ボタン118~128は、表示された名称(機能名)の機能を選択する際に操作される。自動作図機能ボタン118~128によって選択可能な機能は、盤図グループとシステム構成図グループの2グループに分かれている。盤図グループには、「属性情報設定」、「機器配置」、「信号種別配置」、「ユニット接続配置」、「電源系統図配置」、及び、「展開接続図配置」の自動作図機能ボタン118~123によって選択可能な6種類の機能が含まれる。
【0219】
システム構成図グループには、「ENT・エッジserver/監視端末配置」、「統合エッジLevel配置」、「AppエッジLevel配置」、「MicroエッジLevel配置」、及び、「センサー/操作端末配置」の自動作図機能ボタン124~128によって選択可能な5種類の機能が含まれる。
【0220】
図13(b)は、自動作図機能ボタン118~128によって選択可能な各機能の内容を概略的に示している。「属性情報設定」の自動作図機能ボタン118を選択した場合には、配置されているブロック図形の属性情報を設定するための機能が有効となる。「機器配置」の自動作図機能ボタン119を選択した場合には、名称を設定する必要があるブロック図形を配置する機能が有効となる。「信号種別配置」の自動作図機能ボタン120を選択した場合には、IO(入/出力)パターンを含んだ信号種別のブロック図形を配置する機能が有効となる。
【0221】
「ユニット接続配置」の自動作図機能ボタン121を選択した場合には、ユニット接続を配置する機能が有効となる。「電源系統図配置」の自動作図機能ボタン122を選択した場合には、電源系統機器(ブロック図形)の選択、設定、配置を行う機能が有効となる。「展開接続図配置」の自動作図機能ボタン123を選択した場合には、[HUB]、[
I/F-P](ブロック図形)から選択、設定を行い配置する機能が有効となる。
【0222】
「ENT・エッジserver/監視端末配置」の自動作図機能ボタン124を選択した場合には、ENT・エッジserver/監視端末配置の選択、配置を行う機能が有効となる。「統合エッジLevel配置」の自動作図機能ボタン125を選択した場合には、統合エッジLevel機器の選択、配置を行う機能が有効となる。「AppエッジLevel配置」の自動作図機能ボタン126を選択した場合には、AppエッジLevel機器の選択、配置を行う機能が有効となる。
【0223】
「MicroエッジLevel配置」の自動作図機能ボタン127を選択した場合には、MicroエッジLevel機器の選択、配置を行う機能が有効となる。「センサー/操作端末配置」の自動作図機能ボタン128を選択した場合には、センサー/操作端末機器の選択、配置を行う機能が有効となる。
【0224】
<「属性情報設定」を選択した場合>
図13(a)に示す自動作図機能ボタン118~128のうち、「属性情報設定」の自動作図機能ボタン118を選択した場合には、属性情報を設定する設備機器(ブロック図形)の選択が行われる(図示略)。設備機器の選択により、
図14に示すように、選択された設備機器の画像表示(設備機器画像130の表示)が行われる。このときの設備機器は、前述の第1次設備機器に該当する。なお、
図14~
図33において、黒色背景で示されている作図画面中に符号を配置する場合は、符号が見にくくなるのを避けるため、符号の周囲の領域(矩形の領域)が白く反転表示されている。
【0225】
続いて、
図15に示すように、属性情報設定画面132がポップアップ表示される。
図15の例では、属性情報設定画面132に、IPアドレス入力欄134と、ディスクリプション欄136が表示されている。これらのIPアドレス入力欄134と、ディスクリプション欄136には、
図16に示すように、IPアドレスと記述事項が入力される。
【0226】
図16の例では、IPアドレス入力欄134に「190.0.2.100」の値(IPアドレス値)が入力され、ディスクリプション欄136に「16階会議室」の文字が入力されている。IPアドレス入力欄134と、ディスクリプション欄136への入力は、設備機器情報入力部102を介し、関係者の手入力により行われる。
【0227】
設備機器情報入力部102を介して入力される情報は、設備機器情報である。
図14~
図16の例のような情報の入力は、第1次設備機器に係る設備機器情報の入力である。
【0228】
IPアドレス入力欄134と、ディスクリプション欄136への入力が終わった後には、属性情報設定画面132に表示されている「保存」のボタン(保存ボタン138)が選択されることで、属性情報の保存が行われる。ここでの属性情報は、
図14に示された設備機器画像130に対応した設備機器(第1次設備機器)の属性情報である。属性情報は、前述の設備機器情報の入力に伴い、対応情報作成部104において作成される情報である。
【0229】
また、IPアドレス入力欄134に入力されるIPアドレスは、前述したビル管理システム10で割り振られるIPアドレスと同様に、個別の設備機器を特定するものである。さらに、
図16の例において、ディスクリプション欄136に入力されている内容は、IPアドレス入力欄134に入力されたIPアドレスを有する設備機器が設置される部屋の名称である。
【0230】
属性情報が設定され、保存されると、
図16に示す属性情報設定画面132が消去され
、
図17に示すように、設備機器画像130が表示された画面が残る。
図17の例の表示が行われている状況は、属性情報が設定される前の表示(
図14)が行われている状況と、見た目上は同様であるが、対応情報作成部104の内部において、属性情報が保存されている点で相違している。
【0231】
<各種情報の区別>
上述の属性情報は、付帯情報(後述する)の作成に用いることが可能な情報である。本実施形態では、上述したように、設備機器情報入力部102を介した設備機器の入力と、保存の操作により属性情報が保存される。
【0232】
図35は、主要な情報の作成や出力の手順を概略的に示している。
図35に示すように、設備機器情報入力部102を介した設備機器情報の入力(S21)の後、属性情報の保存が行われる(S22)。そして、属性情報に基づき、対応情報の作成が可能となる(S23)。
【0233】
対応情報は、入力された設備機器情報に基づき作成可能な種々の情報であり、相対的に広義である。例えば、
図14の例のように表示される設備機器の情報、
図15の例のように入力に応答してIPアドレス入力欄134やディスクリプション欄136に表示される文字などは、対応情報に含まれる。また、前述した
図34(a)~(f)の「機器一覧表」~「展開接続図」なども、対応情報に含まれる。
【0234】
対応情報には、付帯情報も含まれる。付帯情報は、設備機器情報(及び属性情報)に基づき自動的に作成されて出力される情報である。付帯情報は、第1次設備機器情報の入力に伴い、第2設備機器情報として自動的に呼び出される場合がある。
【0235】
また、付帯情報には、第1次設備機器と第2次設備機器が、有線接続される場合には、接続配線の長さ情報なども含まれる。配線の長さ情報は、CADにおける3次元座標を利用して、高さ方向(Z方向)も含めて立体的に算出することが可能である。
【0236】
なお、
図14~
図17の例では、本実施形態における付帯情報の表示までは行われていないため、付帯情報の具体例については、
図18~
図23の各種の例に基づき後述する。
【0237】
<「機器配置」を選択した場合>
次に、
図13(a)に示す自動作図機能ボタン118~128のうち、「機器配置」の自動作図機能ボタン119を選択した場合には、
図18に示すように、機器選択画面(機器配置情報入力画面142)がポップアップ表示される。
図18の例では、機器配置情報入力画面142に、名称欄144、メーカー欄146、型番欄148、及び、選択メニュー欄150が表示されている。
【0238】
名称欄144には、配置される設備機器の名称が入力される。
図19の例では、関係者による設備機器情報入力部102を介した文字入力により、名称欄144に「ECY-1」の文字が表示されている。
【0239】
メーカー欄146には、「Distech」の文字が入力されている。メーカー欄146には、ドロップダウンメニューが設定されている。図示は省略するが、名称欄144に入力された名称(ここでは「ECY-1」)の設備機器を供給しているメーカーの名前(製造業者名や販売事業者名など)が、ドロップダウンメニューに表示される。
【0240】
「ECY-1」の名称の構成機器を供給しているメーカーが複数存在する場合には、該当する複数のメーカー名がドロップダウンメニューに表示される。「ECY-1」の名称
の構成機器を供給しているメーカーが1社のみである場合には、該当する1社のメーカー名がドロップダウンメニューに表示される。関係者が、表示されたメーカー名のうち、適切なメーカー名を選択することで、選択されたメーカー名が、メーカー欄146に表示される。
【0241】
関係者が、ドロップダウンメニューから、設備機器情報入力部102を介してメーカー名を選択することにより、メーカー欄146に、メーカー名が自動入力される。
【0242】
図19の例では、型番欄148には、型番「ECY-S1000」の文字が入力されている。型番欄148にも、ドロップダウンメニューが設定されている。図示は省略するが、名称欄144に入力された名称の条件、及び、メーカー欄146に表示されているメーカー名の条件の両方を満たす型番が、ドロップダウンメニューに表示される。
【0243】
型番欄148欄に表示された型番を、関係者が、設備機器情報入力部102を介して選択すると、選択された型番が、下方の選択メニュー欄150に表示される。名称欄144及びメーカー欄146の条件を満たす型番が複数存在する場合には、該当する複数の型番が、選択メニュー欄150に表示される。名称欄144及びメーカー欄146の条件を満たす型番が1つのみである場合には、該当する複数の型番が、選択メニュー欄150に表示される。
図19の例では、両方の条件を満たす型番は1つのみとなっている。
【0244】
型番「ECY-S1000」は、「ECY-1」の設備機器に含まれる複数の設備機器のうちの1つの設備機器を示している。このように、設備機器の一部を構成する設備機器を、以下では「構成機器」と称する場合がある。
図18及び
図19の例では、型番「ECY-S1000」の設備機器は、名称が「ECY-1」の設備機器の構成機器である。
【0245】
このように、構成機器(ここでは「ECY-S1000」)と、当該構成機器のメーカー名及び型番とは、予め作成されているデータベースにおいて紐付けられている。
【0246】
機器配置情報入力画面142には、配置ボタン152が設けられている。選択メニュー欄150に表示されている型番を、関係者が、設備機器情報入力部102を介して選択し、型番を反転させた状態で配置ボタン152を選択すると、機器配置情報入力画面142が消去される。さらに、
図20に示すような作図画面が表示される。
【0247】
作図画面には、
図19の例において入力された設備機器のブロック
図154が表示される。ブロック
図154は、設備機器の技術仕様の1つである実際の寸法(実寸)を反映しており、各部の寸法関係は、同一の縮尺で描かれている。関係者は、設備機器情報入力部102を介して、ブロック
図154をドラッグし、適切な位置に移動させる。
【0248】
図20の例では、「ECY-1」への設置対象となっている設備機器(ここでは構成機器「ECY-S1000」)が、他の2つの設備機器(構成機器)に係るブロック
図156、158の下に配置されている。関係者は、他の2つの設備機器に係るブロック
図156、158が表示されているプレビュー画面を見ながら、適切な位置に挿入(配置)し、ブロック
図154の位置を確定させる。
【0249】
図20の例において、設置対象の設備機器に係るブロック
図154の挿入位置は、挿入位置表示欄160に、X軸及びY軸の座標値として表示されている。また、
図20の例のようなプレビュー時には、各ブロック
図154、156、158に対応する設備機器の属性情報の表示は行われていない。
図21は、プレビュー画面に、「ECY-S1000」の配置が完了し、「ECY-1」が表示されている状態が示されている。
【0250】
図18~
図21の例において、
図19の例の段階で入力される情報(名称、メーカー、型番)は、設備機器情報に含まれる。
図20及び21の例の段階で表示されるブロック
図154は、実寸を反映した図であり、付帯情報(対応情報の1種)に該当する。さらに、
図21の例の段階で表示される組み合わせ後の設備機器の図(ブロック
図154、156、158を含む設備機器の図)も、実寸を反映した図であり、付帯情報(対応情報の1種)に該当する。
【0251】
<付帯情報を作成するための構成>
図1~
図9に基づき説明したビル管理システム10においては、多大な手間の解消を可能とするプロダクティビティ・ツールが用いられていた。本実施形態のビル管理設備構築支援システム100においては、プロダクティビティ・ツールに係る技術が応用されて、付帯情報が作成されている。
【0252】
図1~
図9に基づき説明したビル管理システム10におけるプロダクティビティ・ツールは、同一ネットワーク上に設置されたセンサー類やスイッチ類、及び、各設備機器等の情報を自動収集し、データベース化する(
図4)。作成されたデータベースに対して、一つひとつの設定情報を効率的に登録することができる。
【0253】
本実施形態のビル管理設備構築支援システム100においても、前述のプロダクティビティ・ツールと同様の機能を発揮するツールを採用できる。具体的には、対応情報作成部104は、ビル管理設備構築支援システム100におけるプロダクティビティ・ツールの機能を有している。対応情報作成部104において、オープン化のための多種類の通信プロトコル(以下では「オープン化通信プロトコル」と称する)に係る情報が、共通の構造化体(データーベース等)に集約され、格納先や出力先が割り当てられる。格納先には、情報の種類毎に予め定められた、一定のレジスターが割り当てられる。
【0254】
多種類のオープン化通信プロトコルには、例えば、
図36に示すように、Modbus(商品名)、LonWorks(商品名)、BACnet(商品名)、及び、その他のプロトコルが含まれる。これらのオープン化通信プロトコルは、各々が、メーカー等が異なる複数の設備機器(ゲートウェイやシーケンサー、センサー類等)の相互接続を可能とするものである。
【0255】
対応情報作成部104では、これらのオープン化通信プロトコルにおいて取り扱われる個々の構造化体(以下では「個別構造化体」と称する)202~205が、共通の構造化体(統合構造化体)206に集約される。そして、統合構造化体206において集約された情報に基づき、
図36に示す付帯情報作成部105が、必要な情報を抽出して付帯情報を作成し、作成された情報が、対応情報出力部106に出力される。
【0256】
付帯情報作成部105は、対応情報作成部104に含まれる一部の機能的構成部分であり、対応情報作成部104のハードウェア(制御部107、記憶部108、CADのアプリケーションプログラム等)により構成される。
【0257】
対応情報作成部104においては、ビル管理システム10(
図1~
図9)のプロダクティビティ・ツール(
図7(b))と同様に、統合構造化体206におけるデータマッピングを行う。
図36の例では、各種のプロトコルごとの構造化体(ここではModbus構造化体202、LonWorks構造化体203、BACnet構造化体204、その他の構造化体205など)のデータ変換を行い、統合化された構造化体(ここでは統合構造化体206、データベース)を作成する。そして、統合構造化体206では、付帯情報作成部105へ渡すことができるよう、データ形式が整えられる。
【0258】
ここで言う「構造化体」は、個別構造化体202~205、統合構造化体206ともに
、データストレージに配置される前に事前定義され、ある定められた構造となるように整形されたデータ(情報、データベースに格納された情報)のことである。さらに、統合構造化体206は、各種プロトコル毎に個別構造化体202~205で取りまとめられ情報を、ビル管理設備構築支援システム100において、より汎用性のある情報として取り扱えるよう、データベースに統合する。
【0259】
このようにビル管理設備構築支援システム100にもプロダクティビティ・ツールを備えるにあたり、具体的には、ビル内で使用される設備機器(照明、センサー、ゲートウェイ、コントローラー等)の種類毎に、構造化体のどの場所にデータを保存するかを定め、機器の設定をやりやすくした。また同時に、収集される予定のデータの取り扱いも容易にした。
LonWorks やBACnet といったプロトコル以外の様々なデータに対応できるようにするため、150 ものプロトコルも用意した。
このようにして、様々な情報を一元的に取り扱えるように整えた。そして、プロトコルの違いを、構造化体(統合構造化体)を介すことで解決した。
このような対応情報作成部104は、ビル管理設備の構築における設備機器の組み合わせを、適切に、且つ、容易に行うためのツールである。
【0260】
<「信号種別配置」~「AppエッジLevel配置」を選択した場合>
「信号種別配置」~「AppエッジLevel配置」の自動作図機能ボタン120~126を選択した場合の具体例については省略する。
【0261】
<「MicroエッジLevel配置」を選択した場合>
「MicroエッジLevel配置」の自動作図機能ボタン127を選択した場合には、
図22に示すように、機器選択画面(システム構成図配置情報入力画面162)がポップアップ表示される。
図22の例では、システム構成図配置情報入力画面162の機器欄164にドロップダウンメニューが設定されている。
【0262】
ドロップダウンメニューにおいて、関係者が、設備機器情報入力部102を介し、ドロップダウン表示された設備機器(図示略)の選択を行う。選択された設備機器は、
図23に示すように、機器欄164に表示される。
図23の例では、機器欄164に「enocean」が表示されている。
【0263】
続いて、「次へ」のボタン(次へボタン166)が選択されると、
図24に示すような機器選択画面(ゲートウェイ機器選択画面168)がポップアップ表示される。
図24の例では、ゲートウェイ機器選択画面168の機器欄170にドロップダウンメニューが設定されており、関係者が、設備機器情報入力部102を介して、ドロップダウン表示された設備機器(図示略)を選択することにより、設備機器の選択を行う。ここで選択される設備機器は、ゲートウェイ(ゲートウェイ機器)である。
【0264】
ゲートウェイ機器選択画面168には、台数入力欄171が設けられている。台数入力欄171に対して、関係者が、設備機器情報入力部102を介し、ゲートウェイ機器の台数が入力される。
図24には、ゲートウェイ機器の名称が未入力で、台数の数値が「0」(ゼロ)である状態が示されている。
図25には、ゲートウェイ機器の名称が「e-G/W」で、台数の数値が「10」である状態が示されている。
【0265】
図25に示すように、ゲートウェイ機器の名称や台数の入力が終わった後、「次へ」のボタン(次へボタン172)が選択されると、
図26に示すような機器選択画面(センサー機器選択画面174)がポップアップ表示される。
図26の例では、センサー機器選択画面174の機器欄176にドロップダウンメニューが設定されており、関係者が、設備
機器情報入力部102を介して、ドロップダウン表示された設備機器(図示略)を選択することにより、設備機器の選択を行う。
【0266】
ここで選択される設備機器は、センサー(センサー機器)である。
図26の例では、センサー機器として、「CO2センサー」、「スイッチ関連」、「マルチセンサー」、「リレー回路関連」、「人感センサー」、「在室センサー」、及び、「照度センサー」の選択肢が表示されている。
【0267】
図27の例では、関係者により、「CO2センサー」、「スイッチ関連」、「マルチセンサー」、「リレー回路関連」、「人感センサー」、及び、「在室センサー」が選択され、選択された設備機器の名称が反転表示されている状態が示されている。
図27に示すように、センサー機器の入力が終わった後、配置ボタン177が選択され、センサー機器選択画面174が消去される。さらに、
図28に示すような作図画面が表示される。
【0268】
作図画面には、
図25の例において入力されたゲートウェイ機器である「e-G/W」のブロック
図178が表示される。ブロック
図178におけるブロック内には、「e-G/W」の文字が表示されている。さらに、ブロック
図178には、
図23の例で機器欄164に表示されていた「enocean」の文字や、「×□□□_□」の表示(台数表示)が付帯している。
【0269】
関係者は、設備機器情報入力部102を介して、ブロック
図178をドラッグし、適切な位置に配置(挿入)して確定する。
図28の例において、ブロック
図178の挿入位置は、挿入位置表示欄180に、X軸及びY軸の座標値として表示されている。
【0270】
ゲートウェイ機器に係るブロック
図178の位置が確定されると、
図29に示すように、MicroエッジLevelの自動配置が行われる。
図29の例では、
図27の例で選択された「CO2センサー」、「スイッチ関連」、「マルチセンサー」、「リレー回路関連」、「人感センサー」、及び、「在室センサー」のブロック
図182~187が表示されている。
【0271】
これらのセンサー機器に係るブロック
図182~187は、ゲートウェイ機器に係るブロック
図178の配置が終わると、自動的に表示される。
図29の例では、センサー機器に係るブロック
図182~187は、ゲートウェイ機器に係るブロック
図178の近傍の領域に表示されている。
【0272】
図22~
図29の例において、
図23の例の段階で入力される情報(機器欄164の「enocean」の情報)は、対応情報作成部104に入力される設備機器情報である。に含まれる。機器欄164での入力に応じて、選択肢が表示される設備機器の情報(選択肢となるゲートウェイ機器の情報など)は、対応情報の1種である。
【0273】
さらに、選択肢から選択され、
図25の例の段階で入力されている情報(「e-G/W」の情報や、「10」の情報)は、対応情報作成部104に入力される設備機器情報に含まれる。また、
図26の例で表示されている各種センサー機器の名称の情報は、対応情報である。さらに、
図27の例で選択されて配置される各種センサー機器の名称の情報は、設備機器情報である。
【0274】
図28の例におけるブロック
図178は、
図25の例のゲートウェイ機器(「e-G/W」)の情報を設備機器情報とした対応情報である。さらに、
図28の例におけるブロック
図178は、ゲートウェイ機器を第1次設備機器とし、第1次設備機器の技術仕様情報に応じた表示(「enocean」の文字や電波の記号の表示)が付加された付帯情報で
ある。
【0275】
また、
図29の例において、ブロック
図178に付加された他のブロック
図182~187は、
図25の例のゲートウェイ機器(「e-G/W」)の情報を設備機器情報とした対応情報である。さらに、ブロック
図182~187は、技術仕様に従って第1次設備機器に接続される第2次設備機器(n=2の第n次設備機器)を示した付帯情報である。
【0276】
<「センサー/操作端末配置」を選択した場合>
「センサー/操作端末配置」の自動作図機能ボタン128を選択した場合には、
図30に示すように、機器選択画面(システム構成図配置情報入力画面192)がポップアップ表示される。
図30の例では、システム構成図配置情報入力画面192の機器欄193にドロップダウンメニューが設定されており、関係者が、設備機器情報入力部102を介して、ドロップダウン表示された設備機器(図示略)を選択することにより、設備機器の選択を行う。そして、「次へ」のボタン(次へボタン199)が選択されると、
図31の例のように、選択済みの設備機器が表示される。
【0277】
図31には、選択済みの設備機器としてインターフェース機器である「PAC」が選択された状態が示されている。図示は省略するが、選択された設備機器は、選択済設備機器の表示欄(選択済設備機器表示欄)に表示される。選択済設備機器表示欄には、配置ボタンが設けられている。関係者が、配置ボタンを選択すると、選択済設備機器表示欄が消去され、
図32の例のような作図画面が表示される。
【0278】
作図画面には、「PAC」のブロック
図194が表示される。
図32の例の「PAC」は、エアコン用のインターフェースとして用いられる。ブロック
図194におけるブロック内には、「PAC_I/F」の文字が表示されている。
【0279】
さらに、ブロック
図194には、他のブロック
図196~198が、直接的又は間接的に接続されている。これらのブロック
図196~198は、「PAC」のブロック
図194の表示に伴い、自動的に表示されている。ここで、各ブロック
図196~198は、それぞれ「室外機」、「室内機」、「全熱交換機」を表しているが、
図32の例の段階では、具体的な文字は表示されておらず、文字の代わりに記号(ここでは正四角形の記号)が示されている。
【0280】
関係者は、設備機器情報入力部102を介して、プレビューを見ながら、エアコンのブロック
図196~198が付帯した「PAC」のブロック
図194をドラッグし、適切な位置に配置(挿入)して確定する。
図32の例において、ブロック
図194の挿入位置は、挿入位置表示欄190に、X軸及びY軸の座標値として表示されている。
図33には、「PAC」の配置が完了した状態が示されている。各ブロック
図196~198の内側には、それぞれ「室外機」、「室内機」、「全熱交換機」の文字が表示されている。
【0281】
図30~
図33の例において、
図31の例の段階で選択される情報(機器欄195の「PAC」の情報)は、設備機器情報である。
図32の例におけるブロック
図194は、設備機器情報に基づく対応情報である。また、ブロック
図194は、技術仕様に従って接続されるエアコンの室内機や室外機のブロック
図196~198が追加された、付帯情報である。
【0282】
さらに、付加されているブロック
図196~198により表されたエアコンの室内機や室外機は、接続元のブロック
図194が示す設備機器を第1次設備機器とした第2次設備機器(n=2の第n次設備機器)である。また、第2次設備機器に係るブロック
図196~198は、付帯情報の一部である。
【0283】
<ビル管理設備構築支援システム100の基本的メリット>
以上説明したようなビル管理設備構築支援システム100によれば、対応情報作成部104に入力された第1次設備機器情報の入力に基づいて、技術仕様上、接続が可能な第2次設備機器の情報(第2次設備機器情報)が、付帯情報として、自動的に出力される。したがって、技術仕様の理解にばらつきがある関係者の協議において、設備機器の接続に関するコミュニケーションを正確に行うことが可能である。さらに、多様な関係者間において、技術的なコミュニケーションに係る質を向上できる。この結果、多様な関係者の間での適切なコミュニケーションが可能になる。
【0284】
また、本実施形態のビル管理設備構築支援システム100によれば、CADを介して、盤図の作成までの作業を自動的に行うことが可能であるから、従来、盤図作成までに要していた労力を大幅に削減でき、省力化が可能である。この結果、ビル管理設備構築のDX化を推進することが可能となる。
【0285】
また、接続される設備機器の情報(第1~第n次設備機器情報)が、対応情報作成部104によって取り扱われる。このため、設備機器の見積り時や購買時において、関係者が、1つの設備機器毎に分けて、設備機器情報を各々のコンピュータ機器に入力したりする作業を省略できる。
【0286】
なお、本実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100は、統合構造化体206により、設備機器の情報の水平分散(横断的な情報の集約)を図り、ビル管理設備構築のDX化を推進するものであるということができる。また、第1次設備機器に接続可能な第2次設備機器が、ロジック化されたものであるということもできる。
【0287】
また、本実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100は、第2次設備機器に、個々の識別情報としてIPアドレス割り当てられる無線機器(無線式のセンサー類など)を利用した場合に、配線の設計や敷設を廃止でき、省力化の効果が一層顕著になるといえる。
【0288】
<ビル管理設備構築支援システム100に係る追加的説明>
<<1 追加説明>>
<<<1.1 技術の特徴>>>
これまでのビル管理設備構築支援システム100に係る説明の中では、CADの一利用形態についての説明が展開されている。本実施形態において、CADの利用は、業務を効率化するための一つの手段である。ビル管理設備構築支援システム100において、一層重要な役割を果たしているのは、各機器の情報を調整しているデータベース(マスターデータベース、統合構造化体206)である。このデータベースおいて、ゾーン分けや、制御用の情報や集計用の情報を含むか各種情報が格納される。
【0289】
また、データベースの構築に主要な役割を果たしているものとして、IPアドレス、プロダクティビティ・ツール、及び、CADがある。これらの役割を要約すると、例えば以下のように説明できる。
・機器のセグメント情報(識別のための情報)を明確にしているのがIPアドレスである。
・機器毎に特徴のある設定情報を司るのがプロダクティビティ・ツールである。
・CADは、従来は手作業で設定・登録していたような設定情報を、図面作成に伴い、デジタル化(された)情報として、プロダクティビティ・ツールに自動的に渡す。
【0290】
<<<1 .2 追加説明する事項>>>
以降に追加説明する事項は、大きくは、3つのパートに分けることができる。
(1)一つ目のパートは、CADに設計機能を組み込んだことによるシステム設計の生産性向上についてのパートである。
(2)二つ目のパートは、設定情報や収集したデータをデータベース化している構造化体についてのパートである。
(3)最後に、三つ目のパートは、設定情報の登録を容易にするプロダクティビティ・ツールについてのパートである。
【0291】
ビル管理設備構築支援システム100が支援対象としているビル管理システム10の一例については、
図1~
図9に基づき説明した。このような、ビル管理システム10における機器構成は、例えば、
図37の図表のように整理することができる。ビル管理システム10(及びビル管理設備構築支援システム100)においては、各々の機器が、階層構造を構成している。
【0292】
図37に「機器」として示されているのは、「クラウド」、「アプリケーション・エッジ・デバイス」、「マイクロ・エッジ・デバイス」、「センサー」、及び、「対象物」である。これらのうち、「クラウド」は、管理項目の遠隔での監視を可能とする前述のクラウドに対応する。
【0293】
「アプリケーション・エッジ・デバイス」は、アプリケーション・エッジ・デバイス62に対応する。「マイクロ・エッジ・デバイス」は、マイクロ・エッジ・デバイス60に対応し、ゲートウェイとして機能する。「センサー」は、無線式センサー装置30を含むレベル0のセンサーに対応する。「対象物」は、センサーにより検出される熱源等に対応する。
【0294】
<<2 CAD利用による設計情報(アナログ情報)から設定情報(デジタル情報)への連携の実現>>
ビル管理設備構築支援システム100において、CADを用いて実現されることの大きな点は、従来、「設計作業」と「設定作業」が分断されていたのに対し、「設計作業をすること」そのものが、「設定作業をすること」そのものと一致するようにしたことである。この結果、生産性の向上が可能となる。
【0295】
具体的には、CADを用いて実現されることは、以下の(1)~(5)のような点であるといえる。
(1)IPアドレスの付与やIPアドレスに紐付けた設備機器の事前登録により、
(2)容量制限や規定された仕様に合致するかの検証が行え、
(3)設計作業により、ケーブル配線図が作成でき、
(4)パラメーター生成による次の作業で不可欠な設定情報がここで作成されること。
(5)つまり、従来のアナログ情報のデジタル化が実現する。
【0296】
<<3 構造化体>>
<<<3.1 解決すべきであった課題>>>
本実施形態のビル管理設備構築支援システム100において、設計~見積~設定~設置~試験~監視制御の作業を通して言えることは、システムが構造化体により構成されている、ということである。 このように構造化体を構成している理由として、従来の(ビル管理システム10(
図1~
図9)が提供される前の)ビル管理システムでは、以下のような問題があったことが挙げられる。
(1)使用する機器が多数あり、それらの仕様がバラバラで、とりまとめるためには相当の手作業が発生していた。
(2)機器の入れ替え、バージョンが変わる等、仕様変更が起きると、それに対してプロ
グラムの作り直しになっていた。
(3)対象となる機器の数が問題になるだけでなく、監視対象のネットワーク構造が変わると、プログラムを組み直さないといけなかった。
(4)これらのことは、フロア変更や階数変更等の発生においても同様に、プログラムの組み直しが必要であるということを意味した。
【0297】
<<<3.2 対策>>>
これらの問題を解決するために、ビル管理システム10(
図1~
図9)では以下の施策をとった。
(1)取り扱う機器の種類が変わっても、数量が変わっても、フロアやゾーンが変わっても、取り扱うデータの形式を同じとし、プログラムの再構築を不要にした。もちろん、照明、空調、衛生、エネルギー等、種類によって構造が変わることから、それらを考慮した上で、どのような情報にも対応できる構造を持った。
(2)センサー部は基本的にアナログ情報をデジタル化するが、上がってきたデータを受け入れるマイクロ・エッジ・デバイスにおいて、NWCが規定する構造化体になるように統一した。
(3)一旦、NWCの構造化体で統一されたデータ様式は、その上位階層(マイクロ・エッジ・デバイス以上の階層)において統一された様式そのままに扱える。しかも、フロアが増えたり、取り扱う機器の数や種類が増えたりしたとしても、このデータの様式そのものは統一されているため、単にデータの数が増えただけのように見えるようにした。
(4)この効果は大きく、フロア数の増加、機器数の増加、種類の異なる機器が増えても、プログラムを作り直す必要がなくなった。
【0298】
そして、このようなビル管理システム10の構築支援のために開発されたビル管理設備構築支援システム100でも、構築支援の段階で、ビル管理システム10と同様の構造化体が構築されるよう、アプリケーションが構成された。また、ビル管理設備構築支援システム100で作成され、使用された構造化体(統合構造化体206等)は、ビル管理システム10で引き継いで使用できる。そして、構造化体の情報の、少なくともIPアドレスに紐付けられた少なくとも一部の情報は、構築対象のビル管理システム10で共用することが可能である。
【0299】
<<<3 .3 データベース>>>
ビル管理システム10(
図1~
図9)、及び、ビル管理設備構築支援システム100において取り扱うデータは、温度、空調、照明、警報・状態、エネルギー等である。ビル管理システム10(
図1~
図9)、及び、ビル管理設備構築支援システム100では、それらが、構造化体において、領域ごとにデータベース化されて保持される仕組みが構成されている。データベースに格納されるデータの形式は、機器のメーカー(製造業者)やベンダー(販売業者)、各種情報の仕様(信号規格、通信規格、OS(オペレーティング・システム)、プログラミング言語など)の違いに関わらず、ほぼ同じとなっている。このため、どのような機器の情報であっても、データベースのどこの領域に格納すべきかが、予め決められている。
【0300】
図38は、このことを模式的に示している。
図38の例においては、「機器」において扱われる「温度」について、対応する情報が、例えば、データベースに設けられた「Header部」、「機器種別」、「制御情報」、「セグメントデータ部」、「データ部」、「データ部」、及び、「誤判定」の領域に格納される。IPアドレスは、「機器種別」の領域に格納される。これらの領域は、
図4に示されたデータベースの一例と相違しているが、
図4の例と同じにしてもよい。また、
図4の例に代えて、
図38の例を適用してもよい。
【0301】
<<<3 .4 データの構造の持ち方>>>
データ構造の持ち方(データ格納の態様)として、例えば、異なる「機器種別」について、一方の「機器種別」に係る情報(例えば「制御情報」)を、他方の「機器種別」に係る情報(例えば「制御情報」)として利用することも可能である。例えば、空調と照明は異なる「機種種別」のものであるが、両者に共通する情報(例えば「制御情報」)を設定する。より具体的には、オフィスに誰もおらず、照明の「制御情報」がオフを示す情報(フラグ)である場合に、当該情報を空調の「制御情報」として利用し、暖房時の空調に係る設定温度を下げる(又は、冷房時には上げる)、といったことが可能である。
【0302】
<<<3 .5 セグメント分け>>>
ビル管理システム10(
図1~
図9)、及び、ビル管理設備構築支援システム100では、その他の特徴として、データをセグメント分けできるようにしている。例えば、フロアごとやフロア内の領域(ゾーン)ごとに区切ることができるようにセグメント分けしている。
図39の例では、1つのフロアが6つの領域(ゾーンA~ゾーンF)に区切られている。これにより、関係のない領域(ゾーン)に、余計な(不必要な)パケットを送出しないようにすることができる(ブロードキャストの制限)。
【0303】
<<<3.6 垂直・水平の区分>>>
従来(ビル管理システム10(
図1~
図9)が提供される前)、温度、空調、照明、警報・状態、エネルギー等のデータを管理するためには、各々の領域に管理システムが分かれて、別々の管理をしていた。これは縦割り(あるいは水平方向)の区分であった。
【0304】
これに対し横割り(あるいは垂直方向)の区分は、
図40に示すように、上下階層を分ける。この考え方は、ビル管理システム10(
図1~
図9)、及び、ビル管理設備構築支援システム100に採用されている。横割りの区分は、ビル管理システム10(
図1~
図9)、及び、ビル管理設備構築支援システム100において、センサー、マイクロ・エッジ・デバイス、アプリケーション・エッジ・デバイス、エンタープライズ・エッジ・サーバーの階層分けに相当する。
【0305】
図40は、
図1における「レベル0」の階層を、「MicroエッジLevel」と「センサー/操作端末」の2階層に分けて表した図に相当する。なお、各機器の通信は、無線通信であっても有線通信であってもよく、或いは、これらを選択及び/又は併用できるようになっていてもよい。
【0306】
また、ローカルのオンプレミスには全体の9割超のダイナミックデータを持ち、クラウドには全体の数%のスタティックデータを持つというのも、横割りの区分である。ビル管理システム10(
図1~
図9)及び、ビル管理設備構築支援システム100において、これらが容易に実現できるようになっているのも、データ構造の持ち方を工夫しているからである。
【0307】
<<4 プロダクティビティ・ツール>>
<<<4.1 解決すべきであった課題>>>
構造化体を構成することで、データの様式を統一したが、機器には、IPアドレス等を含む設定データを登録する必要があることには変わりない。
【0308】
従来(ビル管理システム10(
図1~
図9)が提供される前)は、機器毎の異なる仕様に合わせて、設定作業も手作業で、監視ポイント数が多ければ多いほど、設定情報も多くなるし、それに加えて機器の数分だけ手作業で登録しなくてはいけなかった。
【0309】
ビル管理システム10(
図1~
図9)、及び、ビル管理設備構築支援システム100では、構造化体(データベース)を構成することで、登録するデータの形式が標準化された
。このことに伴い、登録作業を簡便化するために「プロダクティビティ・ツール」が開発された。
【0310】
<<<4.2 設定情報のテンプレート化>>>
プロダクティビティ・ツールにより、使えば、機器毎に登録するデータを容易に設定することができるようになった。その方法は、使用する機器毎に「テンプレート」を設け、標準的な設定データを登録しておき、変更があるところだけを変えればよいようにしたことにより実現された。これにより、例えば、1つの機器に20ヶ所の設定を登録しなくてはならなかったものが、1回で済むようになった。
【0311】
また、従来であれば、機器1つ1つに対して、例えば20ヶ所の設定があれば、その20回の設定作業を機器毎に毎回、繰り返さなければならなかった。これに対して、「プロダクティビティ・ツール」を使えば、機器の標準設定はテンプレートで用意されているし、機器固有の設定情報(たとえば、機器を特定する名前)のみを当初に設定しておけば、他の情報はすべてコピーして使うことができるようになった。これにより、使用する機器の数が多ければ多いほど、設定作業にかかる時間も大幅に削減することができた。
【0312】
さらに、今回開発したビル管理設備構築支援システム100のCADを使って設計を行えば、設定データが生成されることから、この生成された設定データを、設計段階において、機器に対して登録することができるようになった。
【0313】
<<<4.3 登録する情報>>>
機器に設定を登録するツールとして用意されているプロダクティビティ・ツールであるが、プロダクティビティ・ツールは、各機器への設定登録を効率的に行えるようにしている。
【0314】
例えば、所定のマルチセンサー(前述したビル管理システム10(
図1~
図9)における無線式センサー装置30に該当する。)では、温度・湿度・照度・加速度・コンタクトの名称、Tag Description、Tag Prefixのほか、プロファイルの選択を行う。標準仕様の場合、例えば、
図41の最下行に示す「D2-14-41」のプロファイルが使用される。
図41に一例を示すように、仕様はある程度パターン化されているものの、それでもいくつかの項目については指定しなければならない。
【0315】
本実施形態に係るビル管理設備構築支援システム100において作成されるCADデータに基づき、ここで設定必要な情報が準備される。そして、プロダクティビティ・ツールとの連携により、データ登録の手間を軽減できる。
【0316】
<<5 機能例―タイムスケジュール機能>>
<<<5.1 機能概要>>>
続いて、ビル管理設備構築支援システム100に標準、又は、オプションで付加することが可能な機能について説明する。先ず、ここでは、タイムスケジュール機能について説明する。
【0317】
例えば、CADの操作画面とは別に、機能設定画面を設ける。
図42は、機能設定画面の一例を示している。機能設定画面における操作を有効にするには、
図43の最上段にブロックで示すように、ログイン画面において、ログイン操作を行う。ログイン画面は、ポップアップ画面であってもよい。
【0318】
図43は、階層的に設けられた画面の構成を示している。最上段のログイン画面においてログイン操作が適正に行われると、メニュー画面に移行する。メニュー画面は、例えば
、「実行スケジュール」、「グループ管理」、「カレンダー」、「連動発停」、「ポイント設定」、「操作履歴」、「ユーザー管理」、及び、「設定」の各画面を選択できるよう構成されている。
【0319】
これらのうち「実行スケジュール」画面では、
図43に示すように、実際に実行されるスケジュールを日にちごとに表示及び設定できる。「グループ管理」画面では、実行スケジュールを作成するためのテンプレートとなるスケジュールの表示及び設定が可能である。また、複数の付加を一つの機器グループとしてまとめる設定が可能である。
【0320】
「カレンダー」画面では、運転パターン、祝日、及び、季節切替日等の表示及び設定が可能である。「連動発停」画面では、指定機器の状態によって発停を行う設定が可能である。「ポイント設定」画面では、本システムで利用するタグ情報の設定が可能である。「操作履歴」画面では、本システムの操作履歴の表示が可能である。「ユーザー管理」画面では、本システムのアクセスユーザーの追加、変更、及び、削除が可能である。「設定」画面では、本システムの設定画面の表示が行われる。
【0321】
上述の「グループ管理」画面において、タイムスケジュール機能をオンにすると、タイムスケジュール機能が使用できるようになる。タイムスケジュール機能を用いて、例えば、空調や照明のオン/オフ制御に係るタイムスケジュールが決定される。
【0322】
従来は、タイムスケジュール機能を実現しようとした場合、機能を一つひとつプログラミングしなくてはならないことに加え、機器にその設定を組み込む必要があった。それに対し、ビル管理設備構築支援システム100、及び、ビル管理設備構築支援システム100により構築されたビル管理システム10では、データベースにおけるデータ構造の持ち方により、必要な機能のフラグをオンにするだけで、その機能が動作する。
【0323】
図44(a)、(b)は、スケジューラー設定に係る表示例を示している。
図44(a)のスケジューラー画面例では、カレンダーの表示が行われている。
図44(b)のスケジューラー設定例では、空調の電源オンとオフに係るタイムスケジューラーの表示が行われている。具体的には、
図44(b)のスケジューラー設定例では、指定温度になると空調の電源をオンにする、あるいは、指定温度になると電源をオフにする等の指定(設定)が可能である。
【0324】
<<<5.2 札掛け>>>
ビル管理設備構築支援システム100を利用して設計されたビル管理システム10では、メンテナンス等を行う場合、特定の機器グループをスケジュールの自動運転から外すことができる。これは、「札掛け機能」と表現され、「札掛けを有効にする」ボタンを押すことで有効になる。この機能のオン/オフも、フラグのオン/オフによって機能する。
【0325】
<<6 機能例―デマンドコントロール機能>>
<<<6.1 機能概要>>>
続いて、デマンドコントロール機能について説明する。工場などで利用する電気の基本料金は、例えば、30分間の平均使用電力(デマンド値)で決定され、一度決定すると1年間変更できないのが通常である。そのため、電気料金を抑えるには、あらかじめ設定した優先順位に基づいて電源のオン/オフを自動で行う。
【0326】
このような設定そのものは、デマンドコントロールのソフトウェアを用いて行われるが、制御対象の空調用の機器にオン/オフの指示を出す機能を、データベース(統合構造化体206、
図36)の所定の領域にフラグとして組み込むことが可能である。ビル管理設備構築支援システム100を利用して設計されたビル管理システム10における、こうし
たデマンドコントロール機能・製品では、制御を行うマイクロ・エッジ・デバイス、状態監視するシステム、制御を操作する制御システムを一元化して提供される。
【0327】
従来は、これらの各種機器(及びソフトウェア)が、互いに分離されており、各々を接続することが困難であったり、あるいは対象となる範囲が限定的であったり、導入費用が高価であったり、といった課題があった。
【0328】
これに対して、ビル管理設備構築支援システム100を利用して設計されたビル管理システム10では、管理システム(アプリケーション・エッジ・デバイス)、制御機器(マイクロ・エッジ・デバイス)、ソフトウェア(デマンドコントロール機能)が一元的に提供される。加えて、特別なプログラミングを行わなくとも、また追加の制御機器を導入しなくとも、更には高価な費用を払わなくとも、デマンドコントロールを容易に導入することが可能となっている。
【0329】
これらの機能を発揮するのは、以下の機能が備わっているからである。
(1)マイクロ・エッジ・デバイス、アプリケーション・エッジ・デバイスの階層構造による機器類。
(2)データベースの持ち方を規定している構造化体。
(3)データ設定を容易にするプロダクティビティ・ツール。
【0330】
<<6.2 デマンドメニュー例>>
図45(a)は、デマンドコントロール機能を使用する際に表示されるデマンドメニューバーの一例である。
図45(b)はトレンド画面例を示しており、このトレンド画面例では、図中にタイトルを付加して示すように、(1)タブメニュー、(3)デマンドグラフ、及び、(4)日次レポートが表示されている。ここで、
図45(b)では、タイトルに係る(1)、(3)、(4)の数字の表示が、丸数字を用いて行われている。
【0331】
図45(c)は日次レポート例を示しており、この日次レポート例では、(2)情報パネルが表示されている。ここで、
図45(c)では、タイトルに係る(2)の数字の表示が、丸数字を用いて行われている。
【0332】
<<<6.3 構造>>>
図46は、デマンドコントロール機能を実行するための構造(構成)の一例を示している。デマンドコントロールのためのソフトウェア(デマンドコントロールソフトウェア)は、アプリケーション・エッジ・デバイス62にインストールされている。そして、マイクロ・エッジ・デバイス60を介して、各機器(ここでは空調機器1~n)のデマンドコントロールが行われる。この場合、マイクロ・エッジ・デバイス60は、空調管理デバイスとして機能する。
【0333】
<ビル管理設備構築支援システムの実施形態から抽出可能な発明>
これまでに説明したような実施形態から、以下のような発明を抽出することが可能である。
(1)ビル管理設備の構築を支援するビル管理設備構築支援システム(ビル管理設備構築支援システム100など)であって、
設置予定の設備機器(センサー装置30、マイクロ・エッジ・デバイス60、IOインターフェース、エアコンの室内機、エアコンの室外機など)に係る設備機器情報の入力と、前記設備機器情報に予め対応付けられている対応情報(設備機器情報の入力に応じて出力される情報一般など)の出力と、が可能な対応情報作成部(対応情報作成部104など)を備え、
前記設備機器には、第1次設備機器(マイクロ・エッジ・デバイス60など)と、前記
第1次設備機器に接続(機械接続、電気接続、通信接続など)が可能な第2次設備機器(センサー装置30など)と、を少なくとも含み、
前記設備機器情報には、前記第1次設備機器に係る第1次設備機器情報と、前記第2次設備機器に係る第2次設備機器情報とを少なくとも含み、
前記対応情報作成部は、
前記第1次設備機器情報の人手による入力(キーボードやタッチパネル等を介した入力など)が可能であり、
前記第1次設備機器の配置に係る座標情報(XYZ座標など)の入力が可能であり、
前記第1次設備機器の、前記第2次設備機器との接続に係る情報を、前記第1次設備機器情報に係る前記対応情報の付帯情報(選択されたゲートウェイに接続されるセンサー装置を表す情報など)として出力し、
複数種類の通信規格(Modbus(商品名)、LonWorks(商品名)、BACnet(商品名)、及び、その他のプロトコルなど)の種類毎に対応して設けられたデータベースである個別構造化体(個別構造化体202~205など)と、
前記個別構造化体の情報を所定の構造で集約するデータベースである統合構造化体(統合構造化体206など)と、を備え、
前記対応情報作成部が、前記統合構造化体の情報を使用して前記付帯情報を作成する、ビル管理設備構築支援システムであり、
前記ビル管理設備では、前記統合構造化体が引き継いで使用される、ビル管理設備構築支援システム。
(2)前記ビル管理設備では、前記統合構造化体に集約された前記情報に基づく所定の情報が、公衆通信回線に出力され、携帯情報端末から、ブラウザと前記公衆通信回線を介した前記管理項目の遠隔での監視を可能としている、上記(1)に記載のビル管理設備構築支援システム。
(3)ビル管理設備の構築を支援するビル管理設備構築支援方法(ビル管理設備構築支援システム100で行われるビル管理設備構築支援方法など)であって、
設置予定の設備機器(センサー装置30、マイクロ・エッジ・デバイス60、IOインターフェース、エアコンの室内機、エアコンの室外機など)に係る設備機器情報の入力と、前記設備機器情報に予め対応付けられている対応情報(設備機器情報の入力に応じて出力される情報一般など)の出力と、が可能な対応情報作成部(対応情報作成部104など)を用い、
前記設備機器には、第1次設備機器(マイクロ・エッジ・デバイス60など)と、前記第1次設備機器に接続(機械接続、電気接続、通信接続など)が可能な第2次設備機器(センサー装置30など)と、を少なくとも含み、
前記設備機器情報には、前記第1次設備機器に係る第1次設備機器情報と、前記第2次設備機器に係る第2次設備機器情報とを少なくとも含み、
前記対応情報作成部は、
前記第1次設備機器情報の人手による入力(キーボードやタッチパネル等を介した入力など)が可能であり、
前記第1次設備機器の配置に係る座標情報(XYZ座標など)の入力が可能なビル管理設備構築支援システムを用い、
前記対応情報作成部により、前記第1次設備機器の、前記第2次設備機器との接続に係る情報を、前記第1次設備機器情報に係る前記対応情報の付帯情報(選択されたゲートウェイに接続されるセンサー装置を表す情報など)として出力し、
前記ビル管理設備構築支援システムが、
複数種類の通信規格(Modbus(商品名)、LonWorks(商品名)、BACnet(商品名)、及び、その他のプロトコルなど)の種類毎に対応して設けられたデータベースである個別構造化体(個別構造化体202~205など)と、
前記個別構造化体の情報を所定の構造で集約するデータベースである統合構造化体(統合構造化体206など)と、を備え、
前記対応情報作成部により、前記統合構造化体の情報を使用して前記付帯情報を作成する、ビル管理設備構築支援方法であり、
前記ビル管理設備では、前記統合構造化体が引き継いで使用される、ビル管理設備構築支援方法。
(4)前記第1次設備機器が、
複数の管理項目(空調、照明、衛生、警報、エネルギーなど)のいずれかに分類される複数種類の前記設備機器を含み、
前記第2次設備機器が、複数種類の検出項目(温度、湿度、照度、加速度、コンタクトなど)の検出が可能なセンサー装置(センサー装置30など)を含み、
少なくとも1つの前記管理項目を1つの項目系(空調関連系12、照明・コンセント系14、衛生・水回り系16、状態・警報系18、エネルギー系20など)として複数の前記項目系を定めることが可能であり、
複数の前記項目系が、少なくとも、空調系、照明系、警報系、及び、エネルギー系を含み、
前記センサー装置が複数備えられ、
複数の前記センサー装置が、
少なくとも1つの無線通信規格により前記第1次設備機器に対してデジタル情報を出力可能であり、
複数の前記項目系に跨るセンサー装置群を構成し、
前記付帯情報が、前記センサー装置の情報を含む、上記(1)又は(2)に記載のビル管理設備構築支援システム。
(5)前記第1次設備機器情報、及び、前記第2次設備機器情報には、前記設備機器を識別するIPアドレスが含まれ、
前記統合構造化体の情報には、前記IPアドレスを含む、上記(1)又は(2)又は(4)のいずれか1項に記載のビル管理設備構築支援システム。
(6)前記統合構造化体の情報の、少なくとも前記IPアドレスに紐付けられた少なくとも一部の情報は、構築対象のビル管理システム(ビル管理システム10など)で共用される、上記(5)に記載のビル管理設備構築支援システム。
【0334】
<その他>
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換、及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0335】
10 :ビル管理システム
12 :空調関連系
14 :コンセント系
16 :水回り系
18 :警報系
20 :エネルギー系
22、24 :携帯情報端末
30 :無線式センサー装置
60 :マイクロ・エッジ・デバイス
60A :デバイス群
62 :アプリケーション・エッジ・デバイス
64 :統合・エッジ・デバイス
66 :エンタープライズ・エッジ・サーバー
100 :ビル管理設備構築支援システム
102 :設備機器情報入力部
104 :対応情報作成部
105 :付帯情報作成部
106 :対応情報出力部
116 :制御盤自動作図メニューバー
118~128 :自動作図機能ボタン
202~205 :個別構造化体
206 :統合構造化体
【要約】
【課題】多様な関係者の間での適切なコミュニケーションを可能とするビル管理設備構築支援システムを提供する。
【解決手段】設置予定のマイクロ・エッジ・デバイスやセンサー装置等に係る設備機器情報の入力と、設備機器情報に予め対応付けられている対応情報の出力と、が可能な対応情報作成部104を備え、設備機器には、マイクロ・エッジ・デバイスなどと、マイクロ・エッジ・デバイスに接続が可能なセンサー装置などと、を少なくとも含み、設備機器情報には、マイクロ・エッジ・デバイスに係る情報と、センサー装置に係る情報とを含み、対応情報作成部104は、第1次設備機器情報の人手による入力が可能であり、マイクロ・エッジ・デバイスの配置に係るXYZ座標の入力が可能であり、マイクロ・エッジ・デバイスの、センサー装置等との接続に係る情報を、マイクロ・エッジ・デバイスに係る対応情報の付帯情報として出力する。
【選択図】
図36