特許 7620966 杭のカゴ筋、その製造方法、余盛内構造の設置方法、並びに杭頭処理方法

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B1)

(11)【特許番号】

(24)【登録日】2025-01-16

(45)【発行日】2025-01-24

(54)【発明の名称】杭のカゴ筋、その製造方法、余盛内構造の設置方法、並びに杭頭処理方法

(51)【国際特許分類】

   E02D 5/34 20060101AFI20250117BHJP

【ＦＩ】

E02D5/34 A

【請求項の数】 11

(21)【出願番号】P 2024024140

(22)【出願日】2024-02-20

【審査請求日】2024-06-18

【早期審査対象出願】

(73)【特許権者】

【識別番号】310011273

【氏名又は名称】有限会社神政興業

(74)【代理人】

【識別番号】100194869

【弁理士】

【氏名又は名称】榎本 慎一

(72)【発明者】

【氏名】中村 祥之

(72)【発明者】

【氏名】中村 稔

【審査官】七字 ひろみ

(56)【参考文献】

【文献】特開２００１－３４８８６５（ＪＰ，Ａ）

【文献】特開２００９－２５００１７（ＪＰ，Ａ）

【文献】国際公開第２０１４／１８８９６７（ＷＯ，Ａ１）

(58)【調査した分野】(Int.Cl.，ＤＢ名)

Ｅ０２Ｄ ５／２２－１３／１０

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

杭のカゴ筋において、余盛内部に位置することになる主筋に、
介在が、隣り合う主筋同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に、巻き付けられてなることを特徴とする杭のカゴ筋。

【請求項2】

前記介在を、
さらに、
前記余盛内部に位置することになる主筋の上下方向に、全体として螺旋状に巻き付けられてなることを特徴とする請求項１に記載の杭のカゴ筋。

【請求項3】

前記介在を、
さらに、
前記余盛内部に位置することになる主筋の上下方向に、輪状かつ複数列巻き付けられてなることを特徴とする請求項１に記載の杭のカゴ筋。

【請求項4】

上下方向に隣り合う前記介在の隙間は、コンクリートが流入できる距離であることを特徴とする請求項１に記載の杭のカゴ筋。

【請求項5】

前記隙間は、１００ｍｍ～５００ｍｍの範囲であることを特徴とする請求項４に記載の杭のカゴ筋。

【請求項6】

前記介在が、樹脂製ホースであることを特徴とする請求項１に記載の杭のカゴ筋。

【請求項7】

前記介在が、折りたたみできる樹脂製ホースであることを特徴とする請求項１に記載の杭のカゴ筋。

【請求項8】

前記介在が、幅２５ｍｍ～３００ｍｍで帯状であることを特徴とする請求項１に記載の杭のカゴ筋。

【請求項9】

杭のカゴ筋において、余盛内部に位置することになる主筋に、介在を、隣り合う主筋同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に、巻き付けることを特徴とする杭のカゴ筋の製造方法。

【請求項10】

杭のカゴ筋において、余盛内部に位置することになる主筋に、介在を、隣り合う主筋同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に、巻き付けることを特徴とする余盛内構造の設置方法。

【請求項11】

請求項１～請求項８の何れか１項に記載の杭のカゴ筋を用いた杭の余盛の除去において、
芯抜き工法で、或いは余盛を油圧式圧砕大割機又は／及びハンドブレーカーで粉砕し、除去することを特徴とする杭頭処理方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、建物基礎の杭孔内に打設するコンクリート杭の上部（余盛）の除去（杭頭処理）に際して、余盛の粉砕、剥離、取り出しを容易にするため、杭のカゴ筋、その製造方法、余盛内構造の設置方法、杭頭処理方法に関する発明である。

【背景技術】

【0002】

図１に示すような、杭においては縦に配置される主筋２と主筋に直交する水平方向に配置されるフープ筋３（帯筋）を組んだカゴ筋１に、杭孔内でコンクリートを打設した杭の上部は「余盛」と呼ばれ、流入したコンクリートに混ざったスライム、汚泥等の不純物が浮いて集まって固化したもので、埋設される杭の品質を一定にし、強度を確保するために必要な部分で、杭の固化後には除去される。余盛の除去を杭頭処理という（非特許文献１）。

【0003】

杭頭処理としては、非特許文献１に説明されるように、余盛下部の周囲をカッターで縁切りし、人力による粉砕（ハンドブレーカーなどによる斫り（ハツリ）や、液体の固化膨張を利用して余盛部分を分離、クレーンで引き抜く芯抜き工法（非特許文献２）、静的破砕工法（通電や薬剤によるクラック誘発）などがある。

【0004】

通常、余盛部分の主筋のそれぞれに布（被覆２ａ）を巻くが、主に、ハツリ時の主筋へのキズ防止であったり、余盛除去後の主筋の露出による錆び防止などであったりの養生のためである。

【0005】

他方、余盛の引き抜きを容易にするため、主筋に被せる発砲ポリウレタン製のカバーが知られている（非特許文献３）。余盛を主筋から剥離し、容易に引き抜くためには便利であるが、基礎工事は面積が広くクレーンのアームが届かなかったり、引き上げ重量オーバーであったりして、大型クレーンを利用できない杭頭が殆どである。また、当該カバーの利用コストも大きい。また、ハンドブレーカー、油圧式圧砕大割機を用いても、カバーの有無による割れかたに大差はなく、主筋にカバーを用いたことによる粉砕効率が格段に向上するわけではない。

【先行技術文献】

【非特許文献】

【0006】

【文献】https://www.rise-jms.jp/media/kensetsu_yougo/a764

【文献】https://www.toda.co.jp/news/2023/20230925_003260.html

【文献】https://www.yo-jo.jp/item/md1434

【文献】https://metoree.com/categories/7657/

【文献】https://aka-bane.com/products/detail.php?product_id=4356&gad_source=1&gclid=CjwKCAiAiP2tBhBXEiwACslfnlJ0SLF83M4NYDLNihCLfhW-Js_KwXc7g4kpGPYettL145VQx8FAExoCjEwQAvD_BwE

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0007】

そこで、建物基礎の杭孔内に打設するコンクリート杭の上部（余盛）の除去（杭頭処理）に際して、余盛の粉砕、剥離、取り出しを容易にするため、杭のカゴ筋、その製造方法、余盛内構造の設置方法、杭頭処理方法を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0008】

本発明は、上記の課題を解決するために、
（１）
杭のカゴ筋において、余盛内部に位置することになる主筋に、
介在が、隣り合う主筋同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に、巻き付けられてなることを特徴とする杭のカゴ筋。
（２）
前記介在を、
さらに、
前記余盛内部に位置することになる主筋の上下方向に、全体として螺旋状に巻き付けられてなることを特徴とする（１）に記載の杭のカゴ筋。
（３）
前記介在を、
さらに、
前記余盛内部に位置することになる主筋の上下方向に、輪状かつ複数列巻き付けられてなることを特徴とする（１）に記載の杭のカゴ筋。
（４）
上下方向に隣り合う前記介在の隙間は、コンクリートが流入できる距離であることを特徴とする（１）に記載の杭のカゴ筋。
（５）
前記隙間は、１００ｍｍ～５００ｍｍの範囲であることを特徴とする（１）に記載の杭のカゴ筋。
（６）
前記介在が、樹脂製ホースであることを特徴とする（１）に記載の杭のカゴ筋。
（７）
前記介在が、折りたたみできる樹脂製ホースであることを特徴とする（１）に記載の杭のカゴ筋。
（８）
前記介在が、幅２５ｍｍ～３００ｍｍで帯状であることを特徴とする（１）に記載の杭のカゴ筋。
（９）
杭のカゴ筋において、余盛内部に位置することになる主筋に、介在を、隣り合う主筋同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に、巻き付けることを特徴とする杭のカゴ筋の製造方法。
（１０）
杭のカゴ筋において、余盛内部に位置することになる主筋に、介在を、隣り合う主筋同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に、巻き付けることを特徴とする余盛内構造の設置方法。
（１１）
（１）～（８）の何れか１に記載の杭のカゴ筋を用いた杭の余盛の除去において、
芯抜き工法で、或いは余盛を油圧式圧砕大割機又は／及びハンドブレーカーで粉砕し、除去することを特徴とする杭頭処理方法。
の構成とした。

【発明の効果】

【0009】

本発明は、上記構成であるので、以下の効果を奏する。即ち、建物基礎の杭孔内に打設するコンクリート杭の上部（余盛）の除去（杭頭処理）に際して、余盛の粉砕、剥離、取り出しを容易にするため、杭のカゴ筋、その製造方法、余盛内構造の設置方法、杭頭処理方法を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

【0010】

【図1】従来のカゴ筋１の説明図である。

【図2】本発明の杭のカゴ筋１ａの説明である。主筋２及びその被覆２ａは、手前と奥とを区別し易くするため、濃淡の違いを付けてある。

【図3】図２におけるＡ－Ａ矢視断面模式図である。なお、フープ筋３は、介在４を見やすくするため点線とした。

【発明を実施するための形態】

【0011】

以下、添付の図面を参照し、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

【実施例1】

【0012】

図２－３に示すように、本発明である杭のカゴ筋１ａは、従来のカゴ筋１において、介在４が、余盛内部に位置することになる主筋群に、隣り合う主筋２、２同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に巻き付けられてなる。

【0013】

介在４を備えることで、余盛を、ハンドブレーカー又は／及び油圧式圧砕大割機で、粉砕、ハツリしたとき、主筋２付近では、割れ方向が主筋２を結んだ仮想円方向に進み、粉砕効率が向上するとともに、主筋からの余盛の剥離が容易で、また除去し易い大きさ形状に割れる傾向がある。

【0014】

さらに、望ましくは、介在４は、余盛内部に位置することになる主筋２に、上下方向に全体として螺旋状に巻き付ける。１本の介在４を巻き付けるので設置作業が容易なうえ、余盛粉砕効率、粉砕物の持ち出しの作業性がよい。

【0015】

他方、介在４が輪状であって、余盛内部に位置することになる主筋２の上下方向に複数列、隙間を設けて設置してもよい。介在４が伸び縮みすれば、目的位置に係止でき、後の固定作業がし易い。

【0016】

介在４としては、布、ホースなどが例示でき、特に帯状が望ましい。ホースとしては樹脂製ホースが例示でき、折りたためる樹脂製ホースが特に好適で、非特許文献４、５に記載のように、化学繊維と軟質塩化ビニールを原料とした多目的ホースである「サニーホース」（登録商標）などが知られている。

【0017】

折りたためる樹脂製ホースは、低圧用ホースとして、高低差の少ない場所での排水作業や、農業用の散水などに用いられている。その厚みと素材により強度、耐薬品性があり、土木工事の送排水、液肥・農薬の散布などにも適している。折りたためる樹脂製ホースであれば、巻き取りの手間がなく、使用後は小さく折りたたみ、コンパクトに収納することができ、コスト、強度、輸送、作業性、収納の観点から、好適である。

【0018】

介在４の幅としては、「サニーホース」（登録商標）として供給（非特許文献５）されているものは概ね採用できるが、幅が細すぎると主筋２方向への割れ効果が小さく、太すぎるとコスト、作業性がよくない。介在４の幅として、望ましいくは２５ｍｍ～３００ｍｍ、さらに望ましくは５０ｍｍ～３００ｍｍ、より望ましくは１００ｍｍ～３００ｍｍ、余盛の割れ方向、割れ方、コストを総合的に勘案した最適な範囲は１５０ｍｍ～３００ｍｍ程度である。なお、厚みは、コンクリート打設に耐える強度を備えれば特に限定されるものではない。

【0019】

上下方向に隣り合う介在４の隙間４ｂは、コンクリートが流入できる距離である。隙間が狭すぎるとコンクリートが出入りできず、空間形成され余盛りの機能を十分に発揮せず、広すぎると割れ方向、割れ方がハツリを容易にする効果が低い。隙間４ｂは、具体的には、１００ｍｍ～５００ｍｍが望ましく、余盛の割れ方向、割れ方、コストを総合的に勘案した最適な範囲は１００ｍｍ～２００ｍｍである。図２においては、余盛内部に位置することになる主筋２は約１．５ｍで、介在４は螺旋条に、主筋２の群に２周巻き付けられている。隙間４ｂは約４００ｍｍ、介在の幅４ａは１５０ｍｍである。

【0020】

介在４は、予めカゴ筋１の組み立てと工場内で巻き付けてもよいし、コンクリート杭打設現場において巻き付けてもよく、杭孔にカゴ筋１を挿入した後、コンクリート杭打設前に介在４を設置してもよい。

【0021】

このようにしてなる杭のカゴ筋１に形成される余盛の除去は、油圧式圧砕大割機又は／及びハンドブレーカーで粉砕し、除去する。介在４があることで、余盛の粉砕、剥離、取り出しを容易にすることができる。

【符号の説明】

【0022】

１ カゴ筋
１ａ 杭のカゴ筋
２ 主筋
２ａ 被覆
３ フープ筋
４ 介在
４ａ 幅
４ｂ 隙間

【要約】

【課題】建物基礎の杭孔内に打設するコンクリート杭の上部（余盛）の除去（杭頭処理）に際して、余盛の粉砕、剥離、取り出しを容易にするため、杭のカゴ筋、その製造方法、余盛内構造の設置方法、杭頭処理方法を提供する。
【解決手段】杭のカゴ筋において、余盛内部に位置することになる主筋に、介在が、隣り合う主筋同士ではカゴ筋の内部中心と外側方向に対して内側と外側に交互に千鳥足状に、巻き付けられてなることを特徴とする杭のカゴ筋の構成とした。
【選択図】図２

【図1】

【図2】

【図3】